(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】誘導体化ポリアミノ酸
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230308BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230308BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230308BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541850
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020065212
(87)【国際公開番号】W WO2021141741
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ナー チャン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ピー.ドッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ローマン エー.イバノブ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック シュクラ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
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5F057EA32
(57)【要約】
組成物が、誘導体化アミノ酸モノマー単位を含むポリマーを含み、このポリマーから成り、又はこのポリマーから本質的に成る。化学機械的ポリッシング組成物が、水性液体キャリアと、液体キャリア中に分散された研磨粒子と、誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーとを含む。化学機械的にポリッシングする方法が、化学機械的ポリッシング組成物を利用して、基板から金属層又は誘電層の少なくとも一部を除去し、これにより基板をポリッシングすることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械的ポリッシング組成物であって、
水性液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散された研磨粒子と、
誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと
を含む、組成物。
【請求項2】
前記研磨粒子が、少なくとも10mVの正電荷を有するコロイドシリカ研磨剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記誘導体化アミノ酸モノマー単位が前記モノマー単位中のアルファアミノ基に結合された誘導基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性ポリマーが、誘導体化ポリリシン、誘導体化ポリアルギニン、及び誘導体化ポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性ポリマーが誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約1~約1000ppmのカチオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性ポリマーが、約6~約11の酸解離定数(pK
a)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが下記式:
【化1】
に基づく化合物を含み、
Qは任意の連結基であり、X
1及びX
2は実質的に任意の基であり、R
1はH、OH、又はアルキル基であり、R
2は誘導基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
R
2が、アルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基、アルキルスルホン基、及びアルキルエステル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルキルカルボニル基が、アセチル基、ピバロイル基、及びエチルカルボニル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記二価カルボアシル基が、スクシニル基、オクテニルスクシニル基、グルタル酸基、及びメチルスクシニル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記アルキル尿素基が、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記アルキルスルホネート基がメチルスルホネート基、ジメチルスルホネート基、エチルスルホネート基、プロピルスルホネート基、ブチルスルホネート基、及びペンタスルホネート基を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記アルキルスルホン基が、メチルスルホン基、及びエチルスルホン基、プロピルスルホン基、ブチルスルホン基、及びペンタスルホン基のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記アルキルエステル基が、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、及びペンタエステル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記カチオン性ポリマーが、QがC
2H
4であり且つX
1、X
2及びR
1がHである誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含み、
R
2が、アセチル基、スクシニル基、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基、又はプロピルスルホネート基のうちの少なくとも1つを含む、
請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
nが200未満である、請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
m/nが2/3未満である、請求項8に記載の組成物。
【請求項19】
鉄含有促進剤と安定剤とをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
過酸化水素をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
約1~約5のpHを有している、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
コバルトポリッシング促進剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
約6~約10のpHを有している、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記研磨粒子がセリアを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
基板を化学機械的にポリッシングする方法であって、前記方法が、
(a)前記基板を、
(i)水性液体キャリアと、
(ii)前記液体キャリア中に分散された研磨粒子と、
(iii)誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーと
を含むポリッシング組成物と接触させること、
(b)前記基板に対して前記ポリッシング組成物を動かすこと、並びに
(c)前記基板から金属層及び誘電層のうちの少なくとも一方の層の一部を除去するために前記基板を研磨し、これにより前記基板をポリッシングすること
を含む、方法。
【請求項26】
前記金属層がタングステン及びコバルトのうちの少なくとも一方を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記研磨粒子が、少なくとも10mVの永久正電荷を有するコロイドシリカを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記金属層がタングステンを含み、前記ポリッシング組成物が、
(i)過酸化水素と、
(ii)鉄含有促進剤と、
(iii)安定剤であって、前記安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、及びこれらの混合物から成る群から選択された安定剤と、
(iv)約1~約5のpHと、
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記金属層がコバルトを含み、前記ポリッシング組成物が、
(i)コバルトポリッシング促進剤と、
(ii)約6~約10のpHと
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記誘電層が酸化ケイ素材料及び窒化ケイ素材料のうちの少なくとも一方を含み、前記研磨粒子がセリアを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記カチオン性ポリマーが下記式:
【化2】
に基づく化合物を含み、
Qは任意の連結基であり、X
1及びX
2は実質的に任意の基であり、R
1はH、OH、又はアルキル基であり、R
2は誘導基である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
R
2が、アルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基のうちの少なくとも1つを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カチオン性ポリマーが、QがC
2H
4であり且つX
1、X
2及びR
1がHである誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし
【0002】
開示された実施態様は誘導体化ポリアミノ酸に関する。具体的な実施態様は、誘導体化ポリアミノ酸、例えば誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含む化学機械的なポリッシングスラリーに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスのフロントエンド(FEOL)処理及びバックエンド(BEOL)処理の両方において、数多くの化学機械的ポリッシング(CMP)作業が用いられる。例えば、シャロートレンチアイソレーション(STI)は、シリコンウエハー内にインレイ型テトラエチルオルトシリケート(TEOS)のパターンを形成するために、トランジスタの形成前に用いられるFEOLプロセスである。タングステン・プラグ・インターコネクトプロセス及び銅インターコネクト・デュアルダマシンプロセスは、デバイストランジスタを接続する金属ワイヤのネットワークを形成するために用いられるBEOLプロセスである。これらのプロセスにおいて、金属層は誘電材料(例えばTEOS)内に形成された開口内に堆積される。化学機械的ポリッシング(CMP)を用いることにより、誘電材料から余剰の金属を除去し、これにより導電性プラグ及び/又はインターコネクトをその中に形成する。金属インターコネクトレベル間に中間層誘電(ILD)材料(例えばTEOS)を堆積することにより、レベル間に電気絶縁を提供する。
【0004】
半導体デバイスフィーチャのサイズが縮小し続けるのに伴って、局所的及び全体的な平坦性要件を満たすことは、CMP作業(具体的には金属CMP作業)においてますます困難になってきている。アレイ・エロージョン(単にエロージョン又は酸化物エロージョンとも呼ばれる)、並びにプラグ及びラインの後退(ディッシングとも呼ばれる)が、平坦性及びデバイス完全性全体を損なうことが知られている。さらに、局所的な金属エッチング/コロージョン損失は、電気性能を低下させる電気接触問題を引き起こすおそれがある。平坦性を改善し、金属CMP作業中の金属損失を低減する、金属CMPスラリー(又は組成物)、例えばタングステンCMP組成物が業界において必要である。
【0005】
さらに、半導体製造の当業者に知られているように、改善された電気性能のためレベル1のインターコネクト材料として、タングステンよりもコバルトが選択されることがある。しかしながら、コバルトはコロージョンを著しく被りやすい。したがってコバルトのコロージョンを抑制することは、コバルトCMPポリッシング組成物において極めて重要である。コバルトコロージョンの抑制は、タングステンCMP作業にも著しく重要であり得る(コバルトコロージョンを阻止するためには、タングステンポリッシング組成物は、スタック内の下側のコバルト構造に移動しなければならない)。コバルトを効率的に平坦化し得る、そしてコバルトコロージョンを抑制するCMPスラリーが新たに必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
組成物が、誘導体化アミノ酸モノマー単位を含むポリマーを含み、このポリマーから成り、又はこのポリマーから本質的に成る。ポリマーは、液体キャリア中に分散されていてよい。基板をポリッシングするための化学機械的ポリッシング組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリア中に分散された研磨粒子と、誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーとを含む。1実施態様では、研磨粒子はコロイドシリカを含んでよく、そしてカチオン性ポリマーは誘導体化ポリリシンを含んでよい。基板を化学機械的にポリッシングする方法がさらに開示される。この方法は、基板を上記ポリッシング組成物と接触させ、基板に対してポリッシング組成物を動かし、そして基板から金属層又は誘電層の一部を除去するために基板を研磨し、これにより基板をポリッシングすることを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】開示された主題、及びその利点をより完全に理解するために、添付の
図1と併せて下記説明をここで参照する。
図1は、実施例1における組成物1Aの陽子NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
組成物が、誘導体化アミノ酸モノマー単位を含むポリマーを含み、このポリマーから成り、又はこのポリマーから本質的に成る。例えば、組成物は誘導体化アミノ酸モノマー(すなわち誘導体化ポリアミノ酸)を有するポリマーを含んでよい。ある特定の実施態様では、誘導体化ポリアミノ酸は液体キャリア(例えば水性液体キャリア)中に溶解されていてよい。組成物は金属コロージョン、具体的にはタングステン金属及びコバルト金属、並びに合金のコロージョンを抑制できるので有利である。
【0009】
基板をポリッシングするための化学機械的ポリッシング(CMP)組成物も開示されている。ポリッシング組成物は、水性液体キャリアと、液体キャリア中に分散された研磨粒子と、誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマー(本明細書中では誘導体化ポリアミノ酸又は誘導体化ポリアミノ酸化合物とも呼ばれる)とを含む。CMP組成物は、ホモポリマー及びコポリマーを含む誘導体化アミノ酸モノマーを含有する、実質的に任意のカチオン性ポリマーを含んでよい。当業者に知られているように、コポリマーは2つ又は3つ以上の異なるモノマー単位を含む。好適なコポリマーにおいて、モノマー単位の少なくとも1つが誘導体化アミノ酸である。
【0010】
開示された組成物及び方法は、従来技術を凌ぐ種々の技術的利点及び改善点を提供することができる。例えば、開示された組成物は、具体的にはタングステン金属層及びコバルト金属層の金属コロージョン及び/又はエッチングを抑制することができる。開示された組成物はさらに、タングステン除去速度を改善し、そして金属CMP作業のトポグラフィを改善する(パターンウエハー性能を改善する)ことができる。
【0011】
言うまでもなく、開示されたCMP組成物は、タングステンCMP作業、コバルトCMP作業、及び改良型誘電材料CMP作業を含む、金属又は誘電材料のCMP作業のために有利に利用することができる。開示された組成物は、バルク除去及び/又はバフ金属CMP作業(これらは第1・第2工程CMP作業と当業者に呼ばれることがある)に特に適している。当業者に知られているように、バルク除去作業はより高い除去速度を必要とするのに対して、バフ作業はより低い欠陥レベルを必要とする。開示されたCMP組成物は、単一ステップCMP作業のためにも有利に利用することができる。開示された実施態様はタングステン及びコバルトのCMP作業に特に適しているものの、これらは、特定の金属CMP作業又は誘電材料CMP作業に限定されるように意図されてはいない。
【0012】
ポリッシング組成物は、液体キャリア中に懸濁された研磨粒子を含有している。液体キャリアは、ポリッシング(例えば平坦化)されるべき基板の表面に研磨粒子及び任意の化学的添加剤を被着するのを容易にするために使用される。液体キャリアは、低級アルコール(例えばメタノール、エタノールなど)、エーテル(例えばジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水、及びこれらの混合物を含む任意の適宜のキャリア(例えば溶剤)であってよい。好ましくは、液体キャリアは水、より好ましくは脱イオン水を含み、これから本質的に成り、又はこれから成る。
【0013】
液体キャリア中に懸濁された研磨粒子は、実質的に任意の適宜の研磨材料、例えば金属酸化物粒子、ダイヤモンド粒子、及び/又はセラミック粒子を含んでよい。金属酸化物粒子は、例えばコロイド及び/又はヒュームド金属酸化物粒子を含むシリカ、セリア、及び/又はアルミナ研磨粒子を含んでよい。セラミック粒子は、立方晶窒化ホウ素又は炭化ケイ素のような材料を含んでよい。開示された実施態様は研磨粒子に関しては明示的に限定されない。
【0014】
ある特定の実施態様(例えば下に開示された実施例1~9)では、研磨剤はコロイドシリカを含んでよい。本明細書中に使用されるコロイドシリカ粒子という用語は、構造的に異なる粒子を製造する発熱プロセス又は火炎加水分解プロセスではなく湿式プロセスを介して調製されたシリカ粒子を意味する。コロイドシリカ粒子は凝集型又は非凝集型であってよい。非凝集型粒子は個々に不連続な粒子である。これらの粒子は球状又はほぼ球状の形状であってよいが、しかし他の形状(例えばほぼ楕円形、正方形、又は長方形断面)を有することもできる。凝集型粒子は、複数の不連続粒子をクラスター化又は互いに結合することにより、概ね不規則な形状を有する凝集体を形成する。凝集型コロイドシリカ粒子は、例えば同一譲受人による米国特許第9,309,442号明細書中に開示されている。
【0015】
ある特定の他の実施態様(例えば下に開示された実施例10)では、研磨剤はセリア粒子を含んでよい。セリア粒子の使用は、例えば所定の誘電材料CMP作業及び改良型誘電材料CMP作業において有利であり得る。湿式プロセスセリア(例えばRhodiaから商業的に入手可能なHC60(登録商標))、焼結セリア(例えば同一譲受人による米国特許第9,505,952号明細書中に開示)、及び立方体状セリア(例えば同一譲受人による米国仮特許第62/924,328号明細書中に開示)を含む、実質的に任意の適宜のセリア研磨粒子を利用することができる。開示された実施態様はこれらに関して限定されない。
【0016】
研磨粒子は、実質的に任意の適宜の粒径を有していてよい。液体キャリア中に懸濁された粒子の粒径は、種々の手段を用いて業界において定義することができる。例えば粒径は、粒子を含む最小球体の直径と定義することができ、例えばCPS Disc Centrifuge, Model DC24000HR(ルイジアナ州Prairieville 在CPS Instrumentsから入手可能)、又はMalvern Instruments(登録商標)から入手可能なZetasizer(登録商標)を含む、数多くの商業的に入手可能な機器を使用して測定することができる。研磨粒子の平均粒径は約5nm以上(例えば約10nm以上、約20nm以上、約30nm以上、約40nm以上、約50nm以上、又は約60nm以上)であってよい。研磨粒子の平均粒径は300nm以下(例えば約250nm以下、約200nm以下、約180nm以下、又は約150nm以下)であってよい。したがって、研磨粒子は、上記エンドポイントのいずれか2つによって仕切られた範囲内の平均粒径を有することができる。例えば、研磨粒子の平均粒径は、約5nm~約300nm(例えば約20nm~約200nm、約40nm~約200nm、又は約50nm~約150nm)であってよい。
【0017】
ポリッシング組成物は実質的に任意の適宜の量の研磨粒子を含んでよい。ポリッシング組成物は、ユースポイントにおいて約0.01重量%以上(例えば約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は0.5重量%以上)の研磨粒子を含んでよい。ポリッシング組成物は、ユースポイントにおいて約20重量%以下(例えば約10重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下、又は約1重量%以下)の研磨粒子を含んでよい。したがって、ポリッシング組成物中の研磨粒子のユースポイント濃度は、上記エンドポイントのいずれか2つによって仕切られた範囲内にあってよい。例えば、ポリッシング組成物中の研磨粒子の量は、約0.01重量%~約20重量%(例えば約0.02重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約1重量%)であってよい。
【0018】
研磨粒子がシリカ(例えばコロイドシリカ又は焼成シリカ)を含む実施態様では、シリカ粒子は好ましくはポリッシング組成物中に正電荷を有する。分散された粒子、例えばシリカ粒子上の電荷は一般に当該技術分野においてゼータ電位(又は運動電位)と呼ばれる。粒子のゼータ電位は、粒子を取り囲むイオンの電荷と、ポリッシング組成物のバルク溶液(例えば液体キャリア及び液体キャリア中に溶解された任意の他の成分)の電荷との差を意味する。ゼータ電位は典型的には水性媒体のpHに依存する。所与のポリッシング組成物において、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロであるときのpHと定義される。pHが等電点から増大又は減少すると、表面電荷(ひいてはゼータ電位)はこれに対応して(負又は正のゼータ電位値へ)減少又は増大する。分散体、例えばポリッシング組成物のゼータ電位は、商業的に入手可能な機器、例えばMalvern Instrumentsから入手可能なZetasizer、Brookhaven Instrumentsから入手可能なZetaPlus Zeta Potential Analyzer、及び/又はDispersion Technologies, Inc.から入手可能な電気音響分光計を使用して得ることができる。
【0019】
ある特定の実施態様では、研磨粒子は正電荷が約6mV以上 (例えば約10mV以上、約15mV以上、又は約20mV以上)であるコロイドシリカ粒子を含む。ポリッシング組成物中のコロイドシリカ粒子の正電荷は、約50mV以下(例えば約45mV以下、又は約40mV以下)であってよい。したがって、コロイドシリカ粒子の正電荷は、上記エンドポイントのいずれか2つによって仕切られた範囲内にあってよい。例えば、コロイドシリカ粒子の正電荷は、約6mV~約50mV(例えば約10mV~約45mV、約15mV~約45mV、又は約20mV~約40mV)であってよい。
【0020】
開示された実施態様はこれに関して限定されることはないが、コロイドシリカ粒子は永久正電荷を有すると有利であり得る。永久正電荷とは、シリカ粒子上の正電荷が、例えばフラッシング、希釈、濾過、及びこれに類するものを介して容易に可逆的にならないことを意味する。永久正電荷は、例えばカチオン性化合物とコロイドシリカとの共有結合の結果であってよい。永久正電荷は、例えばカチオン性化合物とコロイドシリカとの静電相互作用の結果であり得る可逆正電荷と対照を成す。とは言え、本明細書中に用いられる少なくとも6mVの永久正電荷とは、同一譲受人による米国特許第9,238,754号明細書(全体的に参照することにより本明細書中に援用される)に詳述された3工程限外濾過試験後に、コロイドシリカ粒子のゼータ電位が6mVを上回ったままであることを意味する。
【0021】
ポリッシング組成物中に永久正電荷を有するコロイドシリカ粒子は、例えば同一譲受人による米国特許第7,994,057号明細書及び同第9,028,572号明細書に開示された少なくとも1種のアミノシラン化合物で粒子を処理することを介して得ることができる。或いは、ポリッシング組成物中に永久正電荷を有するコロイドシリカ粒子は、例えば同一譲受人による米国特許第9,422,456号明細書に開示されているように、コロイドシリカ粒子中に化学種、例えばアミノシラン化合物を取り込むことにより得ることもできる。
【0022】
ポリッシング組成物はさらに、誘導体化アミノ酸モノマーを有するカチオン性ポリマーを含む。CMP組成物は、ホモポリマー及びコポリマーを含む誘導体化アミノ酸モノマー単位を含有する実質的に任意のカチオン性ポリマーを含んでよい。当業者に知られているように、コポリマーは2種又は3種以上の異なるモノマー単位を含む。適宜のコポリマーにおいて、モノマー単位の少なくとも1つは誘導体化アミノ酸である。以下に詳述するように、開示されたカチオン性ポリマーの多くは、これらが非誘導体化アミノ酸モノマー単位と誘導体化アミノ酸モノマー単位とを含むコポリマーとして考えることができる。
【0023】
カチオン性ポリマーは非誘導体化ポリアミノ酸から誘導体化されてよい。言うまでもなく、ポリアミノ酸化合物はアミノ酸モノマーから誘導体化されたポリマーである。誘導に適したポリアミノ酸の一例が下記式1に示される。
【化1】
【0024】
式1 1に示されたカチオン性ポリマー例において、Qは任意の連結基であり、そして例えば分枝又は直鎖アルキル基を含む実質的に任意の連結基を含んでよい。X1及びX2は、例えば水素又はアルキル基を含む実質的に任意の基であってよい。R1は、例えばOH、H、又はアルキル基を含む実質的に任意の適宜の置換基であってもよい。
【0025】
上述のように、式1のカチオン性ポリマーは、誘導体化アミノ酸モノマーを有するカチオン性ポリマーを得るように誘導体化されてよい。誘導体化ポリアミノ酸の一例が式2に示されている。
【化2】
【0026】
式2に示された誘導体化ポリマーの例において、Q,X1,X2,及びR1は、式1に関連して上記に定義した通りである。下付き文字m及びnは、ポリマーの反復単位を示すために用いられる。nは、元の非誘導体化ポリアミノ酸における反復単位数を表し、そしてmは、誘導体化アミノ酸モノマー単位数を表すので、n-mは残留する非誘導体化モノマー単位数を表す。誘導体化度(又は誘導体化パーセント)はm/nとして定義されてよい。特定の有利な実施態様において、例えば溶解性を促進するためには、nは200未満であってよく、そしてm/nは約2/3未満であってよい。
【0027】
引き続き式2を参照すると、言うまでもなく、誘導体化モノマー単位は、誘導体化アミノ酸モノマーのアルファアミノ基に結合された誘導基R2を含む。開示された実施態様では、R2は実質的に任意の適宜の誘導基を含んでよい。例えば、適宜の基はアルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基、アルキルスルホン基、及びアルキルエステル基を含む。
【0028】
アルキルカルボニル基の例は、アセチル基、ピバロイル基、エチルカルボニル基、及びこれに類するものを含む。二価カルボアシル基の例はスクシニル基、オクテニルスクシニル基、グルタル酸基、及びメチルスクシニル基、及びこれに類するものを含む。二価カルボアシル基の中では、スクシニル基及びグルタル酸基が溶解性により好ましいことがある。アルキル尿素基の例はエチル尿素、ブチル尿素、シクロヘキシル尿素、及びこれに類するものを含む。アルキルスルホネート基の例は、メチルスルホネート、ジメチルスルホネート、エチルスルホネート、プロピルスルホネート、ブチルスルホネート、ペンタスルホネート、及びこれに類するものを含む。アルキルスルホン基の例は、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン基、ペンタスルホン、及びこれに類するものを含む。アルキルエステル基の例は、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、及びペンタエステル、及びこれに類するものを含む。
【0029】
誘導体化アミノ酸モノマーの例が、式3A,3B,3C,及び3D(まとめて式3)に示されている。R
2はアセチル基(2A)、スクシニル基(2B)、エチル尿素基(2C)、及びプロピルスルホネート基(2D)である。
【化3】
【0030】
引き続き式1,2及び3を参照すると、誘導体化カチオン性ポリマーは例えば、(例えば
図1に示されている)カチオン性ポリアミノ酸と適量の誘導体化化合物とを合体させることにより得ることができる。
【0031】
ある特定の実施態様では、例えばカチオン性ポリアミノ酸の水溶液に二価カルボアシル基を含む適量の無水化合物を添加することによって、二価カルボアシル基を有する誘導体化カチオン性ポリマーを得ることができる。溶液のpHを、7を上回る値まで調節することによって、縮合反応を介してポリアミノ酸の誘導体化を促進することができる。誘導体化度は、ポリアミノ酸及び無水化合物の相対的な量によって制御することができる。
【0032】
他の実施態様では、適量のアルキルカルボニル化合物、及びアルキルイソシアネート化合物、又はスルトン化合物を、メタノール中のカチオン性ポリアミノの溶液に添加することによって、アルキルカルボニル基、アルキル尿素基、又はアルキルスルホネート基を有する誘導体化カチオン性ポリマーを得ることができる。溶液を加熱することによって、縮合反応を介してポリアミノ酸の誘導体化を促進することができる。次いでメタノールを次いで蒸発を介して除去することによって、誘導体化ポリアミノ酸化合物を得ることができる。この化合物を次いで水中に溶解することができる。誘導体化度は、ポリアミノ酸及び誘導体化用化合物の相対的な量によって、且つ/又は反応時間によって制御することができる。
【0033】
前記開示は、ポリアミノ酸(ポリマー)と誘導体化化合物とを合体させることにより、誘導体化カチオン性ポリマーを得るプロセスを記載しているが、言うまでもなく、開示された実施態様はこのように限定されるものではない。例えば、別の実施態様では、アミノ酸モノマーはまず(例えば上述の基のうちの1つ又は2つ以上との反応を介して)誘導化されてよく、そして続いて重合することができる。開示された実施態様は、誘導体化カチオン性ポリマーが得られる任意の方法に関連して明示的に限定されない。
【0034】
開示されたポリッシング組成物は実質的に任意の適宜の誘導体化ポリアミノ酸を含んでよい。例えば、誘導体化ポリアミノ酸は誘導体化ポリアルギニン、誘導体化ポリオルニチン、誘導体化ポリヒスチジン、及び誘導体化ポリリシンを含んでよい。好ましい実施態様では、誘導体化ポリアミノ酸化合物は、誘導体化ポリリシン、誘導体化ポリアルギニン、及び誘導体化ポリヒスチジンを含む。最も好ましい誘導体化ポリアミノ酸化合物は誘導体化ポリリシンを含む。
【0035】
言うまでもなく、ポリリシンは、D-リシン及び/又はL-リシンから成るε-ポリリシン及び/又はα-ポリリシンを含んでよく、ひいてはα-ポリ-L-リシン、α-ポリ-D-リシン、ε-ポリ-L-リシン、ε-ポリ-D-リシン、及びこれらの混合物を含んでよい。ある特定の好ましい実施態様では、誘導体化ポリリシンは誘導体化ε-ポリ-L-リシンである(ε-ポリ-L-リシンは一般に化学技術分野ではεPLL又はEPLと呼ばれている)。言うまでもなく、式1はε-ポリ-L-リシンを示し、そして式2は、QがC2H4であり、X1,X2,及びR1がHである場合には誘導体化ε-ポリ-L-リシンを示す。
【0036】
誘導体化カチオン性ポリマーは、約5超(例えば約6超)である酸解離係数(pKa)を有する滴定可能な基を含んでよい。例えば、滴定可能な基は解離定数が約5~約14、又は好ましくは約6~約11であってよい。
【0037】
さらに言うまでもなく、誘導体化ポリアミノ酸化合物は任意のアクセス可能な形態で使用されてよく、例えば誘導体化ポリアミノ酸の共役酸又は塩基及び塩の形態を酸の代わりに(又はこれに加えて)使用することができる。有用な誘導体化ポリアミノ酸化合物を説明するためにこの文脈で使用される「酸」という用語は、誘導体化ポリアミノ酸、及び存在し得る任意の滴定可能な官能基を改変するためにpHを調節することによってアクセスし得る任意の形態を意味するように意図される。このような形態は、その共役塩基又は酸、及びこの任意の他の塩を含む。例えば「ポリリシン」という用語は、ポリリシンアミノ酸、並びに、アミン官能基をプロトン化することによって形成されたその共役酸を意味する。
【0038】
好適な誘導体化ポリアミノ酸化合物は実質的に任意の分子量及び多分散指数を有してよい。例えば、誘導体化ポリアミノ酸化合物の分子量は約1~約100kDaであってよい。しかしながら言うまでもなく、開示された実施態様は、誘導体化ポリアミノ酸化合物の分子量又は多分散指数によって限定されない。
【0039】
ある特定のCMP組成物(例えば金属CMP組成物)において、1種又は2種以上の誘導体化ポリアミノ酸化合物の使用は、金属コロージョン、例えばICデバイス内のタングステン及び/又はコバルトのプラグ及びラインのコロージョンを抑制するために意図されている。このようなコロージョン抑制はさらに、プラグ及びラインの後退(すなわちディッシング)を低減し、そしてアレイ・エロージョンを低減することができるので有利である。
【0040】
ポリッシング組成物中の誘導体化ポリアミノ酸化合物の量は、例えば使用される具体的な誘導体化ポリアミノ酸化合物、誘導体化度、及び組成物中の他の任意の成分に応じて変化することができる。言うまでもなく、誘導体化ポリアミノ酸化合物の量を選択する際にはトレードオフが存在し得る。例えば、誘導体化ポリアミノ酸の量を増大させるとコロージョン速度をさらに低下させることができるものの、CMP除去速度全体の低下という犠牲を払う。したがって、誘導体化ポリアミノ酸の量は、CMP作業のプロセス目標全体に応じて変化させることもできる。
【0041】
誘導体化ポリリシンが過酸化水素酸化剤及び可溶性鉄含有触媒との組み合わせでタングステンCMP組成物中に使用される(例えば誘導体化ε-ポリ-L-リシン)場合、誘導体化ポリリシンはユースポイントにおいて、組成物の総重量を基準として約1~約1000ppmの量で組成物中に存在してよい。ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約1ppm以上(例えば約5ppm以上、約10ppm以上、約15ppm以上又は約20ppm以上)の誘導体化ポリリシンを含んでよい。ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約1000ppm以下(例えば約500ppm以下,約400ppm以下、約200ppm以下、又は約100ppm以下)の誘導体化ポリリシンを含んでもよい。したがって、誘導体化ポリリシンはユースポイントにおいて上記エンドポイントのいずれかによって仕切られた量で組成物中に存在してよい。例えば、誘導体化ポリリシンはユースポイントにおいて、約1~約1000ppm(例えば約5~約500ppm、約10~約400ppm、又は約20~約200ppm)の濃度で組成物中に存在してよい。
【0042】
誘導体化ポリリシン(例えば誘導体化ε-ポリ-L-リシン)がコバルトCMP組成物中に使用される場合、ポリッシング組成物は、ユースポイントにおいて、約1ppm以上(例えば約10ppm以上、約20ppm以上、約30ppm以上、又は約50ppm以上)の誘導体化ポリリシンを含んでよい。ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約1000ppm以下(例えば約800ppm以下、約500ppm以下、約400ppm以下、又は約300ppm以下)の誘導体化ポリリシンを含んでもよい。したがって、誘導体化ポリリシンはユースポイントにおいて上記エンドポイントのいずれかによって仕切られた量でポリッシング組成物中に存在してよい。例えば、誘導体化ポリリシンは約1~約1000ppm(例えば約10~約800ppm、約20~約500ppm、又は約40~約400ppm)の濃度で組成物中に存在してよい。
【0043】
誘導体化ポリリシン(例えば誘導体化ε-ポリ-L-リシン)が、セリア研磨剤を含む改良型誘電材料CMP組成物中に使用される場合、ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約1ppm以上(例えば約2ppm以上、約5ppm以上、又は約10ppm以上)の誘導体化ポリリシンを含んでよい。ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約200ppm以下(例えば約150ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下)の誘導体化ポリリシンを含んでもよい。したがって、誘導体化ポリリシンはユースポイントにおいて上記エンドポイントのいずれかによって仕切られた量でポリッシング組成物中に存在してよい。例えば、誘導体化ポリリシンは、約1~約200ppm(例えば約2~約100ppm、約5~約100ppm、又は約10~約50ppm)の濃度で組成物中に存在してよい。
【0044】
ポリッシング組成物は、最終用途に応じて実質的に任意の適宜のpHを有してよい。例えば、タングステンCMP組成物は概ね酸性であって、pHが約7未満であってよい。タングステンポリッシング組成物のpHは、約1以上(例えば約1.5以上、約2以上、約2.5以上、又は約3以上)であってよい。タングステンポリッシング組成物のpHは、約6以下(例えば約5以下、約4.5以下、約4以下、又は約3.5以下)であってよい。したがって、ポリッシング組成物は上記値のいずれかによって仕切られた範囲のpHを有してよい。例えば、タングステンポリッシング組成物のpHは、約1~約6(例えば約2~約5、約2~約4.5、又は約2.5~約4.5)であってよい。バルクタングステン除去のために使用されるポリッシング組成物の好ましいpHは、約2~約4(例えば約2~約3.5)であってよい。タングステンバッフィング作業のために使用されるポリッシング組成物の好ましいpHは、約3~約5(例えば約3~約4.5)であってよい。
【0045】
コバルトポリッシング組成物は概ね、ほぼ中性又はわずかにアルカリ性であり、約6~約10のpHを有していてよい。例えば、コバルトポリッシング組成物のpHは、約6以上(例えば約6.5以上、約7以上、約7.5以上、又は約8以上)であってよい。ポリッシング組成物のpHはさらに約10以下(例えば約9以下、約8.5以下、又は約8以下)であってよい。したがって、ポリッシング組成物は上記エンドポイントのうちのいずれか2つによって仕切られた範囲のpHを有してよい。例えば、pHは約6~約10(例えば約7~約9)であってよい。
【0046】
言うまでもなく、ポリッシング組成物のpHは、(もちろん所期pHに応じて)任意の適宜の手段によって達成且つ/又は維持することができる。ポリッシング組成物は、実質的に任意の適宜のpH調節剤又は緩衝システムを含んでよい。例えば、適宜のpH調節剤は硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及びこれに類するものを含んでよく、これに対して、適宜の緩衝剤はリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩、プロピオン酸塩、これらの混合物、及びこれに類するものを含んでよい。
【0047】
ポリッシング組成物は特定の用途に応じて、他の任意の化合物を含んでよい。例えば、タングステンCMP組成物は任意には、鉄含有促進剤、安定剤、及び/又は酸化剤をさらに含んでよい。本明細書中に使用される鉄含有促進剤は、タングステンCMP作業中にタングステンの除去速度を高める鉄含有化合物である。例えば、鉄含有促進剤は、米国特許第5,958,288号及び同第5,980,775号に開示されているような可溶性鉄含有触媒を含んでよい。このような鉄含有触媒は液体キャリア中に可溶性であってよく、例えば第二鉄(鉄III)又は第一鉄(鉄II)化合物、例えば硝酸鉄、硫酸鉄、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物、並びに過塩素酸塩、過臭素酸塩、及び過ヨウ素酸塩を含む鉄ハロゲン化物、及び有機鉄化合物、例えば酢酸鉄、カルボン酸、アセチルアセトネート、クエン酸塩、グルコン酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、及びコハク酸塩、及びこれらの混合物を含んでよい。
【0048】
鉄含有促進剤は、米国特許第7,029,508号及び同第7,077,880号に開示されているようなコロイドシリカ粒子の表面と連携させられる(例えば被覆又は結合される)、鉄含有アクチベータ(例えばフリーラジカル生成化合物)又は鉄含有触媒を含んでもよい。例えば、鉄含有促進剤は、コロイド表面粒子の表面上のシラノール基と結合されてよい。
【0049】
ポリッシング組成物中の鉄含有促進剤の量は、使用される酸化剤及び促進剤の化学形態に応じて変化してよい。酸化剤が過酸化水素(又はその類似体の1つ)であり、可溶性鉄含有触媒(例えば硝酸第二鉄又は硝酸第二鉄の水和物)が使用される場合、触媒はユースポイントにおいて、組成物の総重量を基準として約0.5~約3000ppmのFeを提供するのに十分な量で組成物中に存在してよい。ポリッシング組成物は、ユースポイントにおいて約1ppm以上(例えば約2ppm以上、約5ppm以上、又は約10ppm以上)のFeを含んでよい。ポリッシング組成物はユースポイントにおいて、約500ppm以下(例えば約200ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下)のFeを含んでよい。したがって、ポリッシング組成物は上記エンドポイントのうちのいずれか1つによって仕切られた範囲のFeを含んでよい。組成物はユースポイントにおいて、約1~約500ppm(例えば約2~約200ppm、約5~約100ppm、又は約10~約50ppm)のFeを含んでよい。バルクタングステン除去のために使用されるポリッシング組成物は好ましくは、約5~約50ppmのFe(例えば約10~約40ppmのFe)を含んでよい。タングステンバッフィング作業のために使用されるポリッシング組成物は好ましくは約0.5~約20ppmのFe(例えば約1~約10ppmのFe)を含んでよい。
【0050】
鉄含有促進剤を含むポリッシング組成物の実施態様は安定剤をさらに含んでよい。このような安定剤がないと、鉄含有促進剤と、もし存在するならば酸化剤とは、酸化剤を時間とともに急速に劣化させる形で反応し得る。安定剤の添加は、鉄含有促進剤の効果を低減する傾向があるので、ポリッシング組成物に添加される安定剤のタイプ及び量の選択は、CMP性能に著しい影響を及ぼし得る。安定剤の添加は、安定剤/促進剤複合体を形成させ得る。この複合体は、促進剤が、もし存在するならば酸化剤と反応するのを抑制し、これと同時に、促進剤が急速なタングステンポリッシング速度を促進するのに十分に活性のままであることを可能にする。
【0051】
有用な安定剤はリン酸、有機酸、リン酸塩化合物、ニトリル、及び金属に結合して過酸化水素分解に向かう反応性を低減する他のリガンド、及びこれらの混合物を含む。酸安定剤はこれらの共役形態で使用することができ、例えばカルボン酸塩をカルボン酸の代わりに使用することができる。有用な安定剤を説明するために本明細書中に使用される「酸」という用語はまた、酸安定剤の共役塩基を意味する。安定剤は単独又は組み合わせで使用することができ、そして酸化剤、例えば過酸化水素が分解する速度を著しく低減することができる。
【0052】
好ましい安定剤は、リン酸、酢酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、及びこれらの混合物を含む。好ましい安定剤は本発明の組成物に、鉄含有促進剤当たり約1当量~約3.0重量パーセント以上(例えば約3~約10当量)の量で添加することができる。本明細書中に使用される「鉄含有促進剤当たりの当量」という用語は、組成物中の鉄イオン1つ当たり1分子の安定剤を意味する。例えば鉄含有促進剤当たり2当量は、各触媒イオンに対して2分子の安定剤を意味する。
【0053】
ポリッシング組成物は任意には酸化剤をさらに含んでよい。酸化剤は、スラリー製造プロセス中、又はCMP作業直前に(例えば半導体製造設備に配置されたタンク内で)ポリッシング組成物に添加することができる。好ましい酸化剤は無機又は有機ペル化合物を含む。本明細書中に定義されたペル化合物は、少なくとも1つのペルオキシ基(-O--O-)を含有する化合物、又は最高酸化状態の元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の一例としては、過酸化水素、及びそのアダクト、例えば過酸化水素尿素、過炭酸塩、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酢酸、及びジ-t-ブチルペルオキシド、モノペルスルフェート(SO5
=)、ジペルスルフェート(S2O8
=)、及び過酸化ナトリウムが挙げられる。最高酸化状態の元素を含有する化合物の一例としては、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸、及び過ホウ酸塩、及び過マンガン酸塩が挙げられる。最も好ましい酸化剤は過酸化水素である。
【0054】
酸化剤は、ユースポイントにおいて例えば約0.1~約10重量パーセントの量でポリッシング組成物中に存在してよい。過酸化水素酸化剤、及び可溶性鉄含有促進剤が使用される実施態様では、酸化剤はユースポイントにおいて、約0.1~約6重量パーセント(例えば約0.2~約5重量パーセント、約0.3~約4重量パーセント、又は約0.5~約3重量パーセント)の量でポリッシング組成物中に存在してよい。
【0055】
コバルトCMP組成物は任意には、コバルトポリッシング促進剤をさらに含んでよい(しかし必ずしも含まなくてもよい)。任意のコバルトポリッシング促進剤は、窒素含有有機酸化剤、例えばニトロ化合物、ニトロソ化合物、N-オキシド化合物、オキシム化合物、及びこれらの組み合わせから選択されてよい。例えば、窒素含有有機酸化剤はアリールニトロ化合物、アリールニトロソ化合物、アリールN-オキシド化合物、アリールオキシム化合物、ヘテロアリールニトロ化合物、ヘテロアリールニトロソ化合物、ヘテロアリールN-オキシド化合物、ヘテロアリールオキシム化合物、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
【0056】
任意のコバルトポリッシング促進剤はさらに、非酸化化合物、例えばN-ジ(カルボキシルアルキル)アミン、N-ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、N,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-N-カルボキシルアルキルアミン、ジカルボキシヘテロ環、ヘテロシクリルアルキルαアミノ酸、N-アミノアルキルアミノ酸、無置換型ヘテロ環、アルキル置換型ヘテロ環、カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アルキルアミン、N-アミノアルキルαアミノ酸、及びこれらの組み合わせから選択することができる。例えば、ポリッシング組成物は任意には、イミノ二酢酸(「IDA」)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(「ADA」)、N-メチルイミダゾール、ピコリン酸、ジピコリン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、グリシン、ビシン、トリエチルアミン(「TEA」)、エチドロン酸、N-メチルモルホリン、マロン酸、2-ピペリジンスルホネート、クエン酸、及びこれらの組み合わせから選択されたコバルト促進剤を含んでよい。
【0057】
コバルトポリッシング促進剤を含む任意の実施態様では、促進剤はユースポイントにおいて、約1mM以上(例えば約5mM以上、約10mM以上、約20mM以上、又は約40mM以上)の濃度でポリッシング組成物中に存在してよい。コバルトポリッシング促進剤はユースポイントにおいて、約200mM以下(例えば約150mM以下、約100mM以下、約80mM以下、又は約60mM以下)の濃度でポリッシング組成物中に存在してもよい。言うまでもなく、コバルトポリッシング促進剤は、上記エンドポイントのいずれか2つによって仕切られた濃度でポリッシング組成物中に存在してよい。例えば、コバルトポリッシング促進剤はユースポイントにおいて、約1mM~約200mM(例えば約5mM~約150mM、約10mM~約100mM、又は約20mM~約60mM)の濃度で、ポリッシング組成物中に存在してよい。
【0058】
ポリッシング組成物は任意にはさらに殺生物剤を含んでよい。殺生物剤は任意の適宜の殺生物剤、例えばイソチアゾリノン殺生物剤を含んでよい。ポリッシング組成物中の殺生物剤の量は約1ppm~約500ppm(例えば約1ppm~約200重量ppmである)。
【0059】
ポリッシング組成物は、任意の適宜の技術を用いて調製することができる。これらの技術の多くは当業者に知られている。ポリッシング組成物はバッチ法又は連続法で調製することができる。大まかに言えば、ポリッシング組成物はその成分を任意の順番で合体することにより調製することができる。本明細書中に使用される「成分(component)」は個々の成分(ingredients)(例えば研磨粒子、誘導体化ポリアミノ酸など)を含む。
【0060】
例えば、研磨粒子(例えばシリカ)は、水性液体キャリア中に分散されてよい。次いで他の成分、例えば誘導体化ポリアミノ酸、及び殺生物剤を添加し、そしてこれらの成分をポリッシング組成物中に取り込むことができる任意の方法によって混合することができる。酸化剤を含む任意の組成物に関しては、言うまでもなく、酸化剤はポリッシング組成物の調製中の任意の時点に添加されてよい。例えば、酸化剤はCMP作業の直前(例えばCMP作業前の約1分以内、又は約10分以内、又は約1時間以内、又は約1日間以内、又は約1週間以内)に添加することができる。ポリッシング組成物は、ポリッシング作業中に(例えばポリッシングパッド上の)基板表面において成分を混合することにより、調製することもできる。
【0061】
本発明のポリッシング組成物は濃縮物として提供されてよい。濃縮物は使用前に適量の水で希釈されるように意図されている。このような実施態様では、ポリッシング組成物濃縮物は、濃縮物を適量の水(及びすでに適量で存在していない場合には任意の酸化剤)で希釈すると、ポリッシング組成物の各成分が、ユースポイントにおいて各成分に関して上述した適切な範囲内の量でポリッシング組成物中に存在することになるような量で、誘導体化ポリアミノ酸と他の任意の成分とを含むことができる。例えば、研磨粒子及び誘導体化ポリアミノ酸はそれぞれ、各成分に関して上述したユースポイント濃度の約2倍(例えば約3倍、約4倍、又は約5倍)である量でポリッシング組成物中に存在することができるので、濃縮物が等体積の水(例えばそれぞれ1等体積の水、2等体積の水、3等体積の水、又は4等体積の水)で、適量の任意の酸化剤と一緒に希釈されると、各成分は各成分に関して上述した範囲内の量でポリッシング組成物中に存在することになる。さらに、当業者には明らかなように、濃縮物は、他の成分が濃縮物中に少なくとも部分的又は完全に溶解されるのを保証するために、最終ポリッシング組成物中に存在する水の適宜の一部を含有してよい。
【0062】
本発明のポリッシング組成物を使用して、金属層及び/又は誘電層を含む実質的にいかなる基板をもポリッシングすることができる。ある特定の実施態様では、ポリッシング組成物は、少なくとも1種の金属材料と少なくとも1種の誘電材料とを含む基板をポリッシングするのに特に有用であり得る。例えば、ある特定の実施態様は、タングステンを含む基板をポリッシングするのに有用であり得る。他の実施態様は、コバルトを含む基板をポリッシングするのに有用であり得る。当業者に知られているように、金属導体は一般に、例えばチタン及び/又は窒化チタン(TiN)を含む1つ又は2つ以上のバリア層上に堆積される。誘電層は金属酸化物、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)から誘導された酸化ケイ素層、多孔質金属酸化物、多孔質又は無孔質炭素ドープ型酸化ケイ素、フッ素ドープ型酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、又は任意の他の適宜の高又は低k絶縁層であってよい。
【0063】
本発明のポリッシング方法は具体的には、化学機械的ポリッシング(CMP)装置と併せて用いるのに特に適している。当業者に知られているように、基板をポリッシングパッド及び本発明のポリッシング組成物と接触させた時に、基板のポリッシングを行い、次いでポリッシングパッドと基板とを相対運動させることにより、基板の少なくとも一部を研磨する。本発明の方法は、上記本発明の組成物を用意し、基板(例えばウエハー)を本発明のポリッシング組成物と接触させ、基板に対してポリッシング組成物を動かし、そして基板を研磨することによって、基板から酸化ケイ素材料の一部を除去し、これにより基板をポリッシングする。典型的には、装置は、使用中に運動して、軌道、直線、又は円形運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触して運動時にプラテンと一緒に運動するポリッシングパッドと、ポリッシングパッドの表面に対して接触し運動することによってポリッシングされるべき基板を保持するキャリアとを含む。基板のポリッシングは、基板がポリッシングパッド及び本発明のポリッシング組成物と接触した状態で配置され、次いで基板に対してポリッシングパッドが運動することにより行われ、これにより、基板(例えばタングステン、コバルト、チタン、窒化チタン、及び/又は本明細書中に記載された誘電材料)の少なくとも一部を研磨することによって基板をポリッシングする。
【0064】
基板は、任意の適宜のポリッシングパッド(例えばポリッシング表面)を用いて、化学機械的ポリッシング組成物によって平坦化又はポリッシングすることができる。好適なポリッシングパッドは例えば、織布及び不織布ポリッシングパッドを含む。さらに、好適なポリッシングパッドは多様な密度、硬さ、厚さ、圧縮性、圧縮時の反発能力、及び圧縮係数を有する任意の適宜のポリマーを含むことができる。好適なポリマーは例えばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらの同時形成生成物、及びこれらの混合物を含む。
【0065】
CMPポリッシング組成物及び方法が詳細に上述されているが、言うまでもなく、開示された実施態様は化学機械的なポリッシングに厳密には限定されない。開示された実施態様は誘導体化ポリアミノ酸、例えば誘導体化ポリリシンの水溶液を含んでよい。例えば、開示された組成物は、水を含む又は水から成る液体キャリア中に溶解された1種又は2種以上の誘導体化ポリアミノ酸を含んでよい。開示された組成物は、誘導体化アミノ酸モノマーを含むポリマーを含んでもよい。ポリマーは固形形態(例えば顆粒形態)を成していてよく、或いは液体キャリア中に溶解されてよい。誘導体化アミノ酸モノマーは、式1~3に関連して上述した誘導基のいずれかを含んでよい。例えば、誘導基は、アルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基、アルキルスルホン基、又はアルキルエステル基を含んでよい。
【0066】
言うまでもなく、開示は数多くの実施態様を含む。これらの実施態様の一例として、下記実施態様が挙げられる。
【0067】
第1実施態様では、組成物が、誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するポリマーを含み、前記ポリマーから成り、又は前記ポリマーから本質的に成る。
【0068】
第2実施態様は第1実施態様を含んでよく、前記ポリマーが下記式:
【化4】
に基づく化合物を含む。
【0069】
Qは任意の連結基であり、X1及びX2は実質的に任意の基であり、R1はH、OH、又はアルキル基であり、そしてR2は誘導基である。
【0070】
第3実施態様が第2実施態様を含んでよく、R2がアルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基のうちの少なくとも一方を含む。
【0071】
第4実施態様が第3実施態様を含んでよく、前記アルキル尿素基が、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基を含み、そして前記アルキルスルホネート基がメチルスルホネート基、ジメチルスルホネート基、エチルスルホネート基、プロピルスルホネート基、ブチルスルホネート基、及びペンタスルホネート基を含む。
【0072】
第5実施態様が第2実施態様を含んでよく、R2がエチル尿素基、ブチル尿素基、シクロヘキシル尿素基、又はプロピルスルホネート基を含む。
【0073】
第6実施態様において、組成物が、水と誘導体化アミノ酸モノマー単位を含むカチオン性ポリマーとを含み、これらから成り、又はこれらから本質的に成る。
【0074】
第7実施態様は第6実施態様を含んでよく、前記カチオン性ポリマーが下記式:
【化5】
に基づく化合物を含む。
【0075】
Qは任意の連結基であり、X1及びX2は実質的に任意の基であり、R1はH、OH、又はアルキル基であり、そしてR2は誘導基である。
【0076】
第8実施態様が第7実施態様を含んでよく、R2がアルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基のうちの少なくとも一方を含む。
【0077】
第9実施態様が第8実施態様を含んでよく、前記アルキル尿素基が、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基を含み、そして前記アルキルスルホネート基がメチルスルホネート基、ジメチルスルホネート基、エチルスルホネート基、プロピルスルホネート基、ブチルスルホネート基、及びペンタスルホネート基を含む。
【0078】
第10実施態様が第7実施態様を含んでよく、R2がエチル尿素基、ブチル尿素基、シクロヘキシル尿素基、又はプロピルスルホネート基を含む。
【0079】
第11実施態様では、化学機械的ポリッシング組成物が、水性液体キャリアと、前記液体キャリア中に分散された研磨粒子と、誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーとを含む。
【0080】
第12実施態様が第11実施態様を含んでよく、前記研磨粒子が、少なくとも10mVの永久正電荷を有するコロイドシリカ研磨剤を含む。
【0081】
第13実施態様が第1、第6、及び第11~12実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記誘導体化アミノ酸モノマー単位が前記モノマー単位中のアルファアミノ基に結合された誘導基を含む。
【0082】
第14実施態様が第1、第6、及び第11~13実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記ポリマーが、誘導体化ポリリシン、誘導体化ポリアルギニン、及び誘導体化ポリヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む。
【0083】
第15実施態様が第1、第6、及び第11~14実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記ポリマーが誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含む。
【0084】
第16実施態様が第6、及び第11~15実施態様のいずれか1つを含んでよく、約1~約1000ppmのカチオン性ポリマーを含む。
【0085】
第17実施態様が第6、及び第11~16実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーが、約6~約11の酸解離定数(pKa)を有する。
【0086】
第18実施態様が第1、第6、及び第11~17実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーが下記式:
【化6】
に基づく化合物を含む。
【0087】
Qは任意の連結基であり、X1及びX2は実質的に任意の基であり、R1はH、OH、又はアルキル基であり、そしてR2は誘導基である。
【0088】
第19実施態様が第2、第7、又は第18実施態様のいずれか1つを含んでよく、R2が、アルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基、アルキルスルホン基、及びアルキルエステル基のうちの少なくとも1つを含む。
【0089】
第20実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記アルキルカルボニル基が、アセチル基、ピバロイル基、及びエチルカルボニル基のうちの少なくとも1つを含む。
【0090】
第21実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記二価カルボアシル基が、スクシニル基、オクテニルスクシニル基、グルタル酸基、及びメチルスクシニル基のうちの少なくとも1つを含む。
【0091】
第22実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記アルキル尿素基が、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基のうちの少なくとも1つを含む。
【0092】
第23実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記アルキルスルホネート基がメチルスルホネート基、ジメチルスルホネート基、エチルスルホネート基、プロピルスルホネート基、ブチルスルホネート基、及びペンタスルホネート基を含む。
【0093】
第24実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記アルキルスルホン基が、メチルスルホン基、及びエチルスルホン基、プロピルスルホン基、ブチルスルホン基、及びペンタスルホン基のうちの少なくとも1つを含む。
【0094】
第25実施態様が第19実施態様を含んでよく、前記アルキルエステル基が、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、及びペンタエステル基のうちの少なくとも1つを含む。
【0095】
第26実施態様が第2、第7、及び第18~第25実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記ポリマー又はカチオン性ポリマーが、QがC2H4であり且つX1、X2及びR1がHであるような誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含み、そしてR2が、アセチル基、スクシニル基、エチル尿素基、ブチル尿素基、及びシクロヘキシル尿素基、又はプロピルスルホネート基のうちの少なくとも1つを含む。
【0096】
第27実施態様が第2、第7、及び第18~第26実施態様のいずれか1つを含んでよく、nが200未満である。
【0097】
第28実施態様が第2、第7、及び第18~第27実施態様のいずれか1つを含んでよく、m/nが2/3未満である。
【0098】
第29実施態様が第11~第27実施態様のいずれか1つを含んでよく、鉄含有促進剤と、鉄含有促進剤に結合された安定剤とをさらに含む。
【0099】
第30実施態様が第29実施態様を含んでよく、過酸化水素をさらに含む。
【0100】
第31実施態様が第29~第30実施態様のいずれか1つを含んでよく、約1~約5のpHを有している。
【0101】
第32実施態様が第11~第28実施態様のいずれか1つを含んでよく、コバルトポリッシング促進剤をさらに含む。
【0102】
第33実施態様が第31実施態様を含んでよく、約6~約10のpHを有している。
【0103】
第34実施態様が第11~第28実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記研磨粒子がセリアを含む。
【0104】
第34実施態様が基板を化学機械的にポリッシングする方法を含み、前記方法が、(a)前記基板を、(i)水性液体キャリアと、(ii)前記液体キャリア中に分散された研磨粒子と、(iii)誘導体化アミノ酸モノマー単位を有するカチオン性ポリマーとを含むポリッシング組成物と接触させ、(b)前記基板に対して前記ポリッシング組成物を動かし、そして(c)前記基板から金属層及び誘電層のうちの少なくとも一方の層の一部を除去するために前記基板を研磨し、これにより前記基板をポリッシングすることを含む。
【0105】
第36実施態様が第35実施態様を含んでよく、前記金属がタングステン及びコバルトのうちの少なくとも一方を含む。
【0106】
第37実施態様が第35~第36実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記研磨粒子が、少なくとも10mVの永久正電荷を有するコロイドシリカを含む。
【0107】
第38実施態様が第35~第37実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記金属層がタングステンを含み、そして前記ポリッシング組成物が、(i)過酸化水素と、(ii)鉄含有促進剤と、(iii)前記可溶性鉄含有促進剤に結合された安定剤であって、前記安定剤が、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタコン酸、ムコン酸、エチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、及びこれらの混合物から成る群から選択された安定剤と、(iv)約1~約5のpHと、をさらに含む。
【0108】
第39実施態様が第35~第37実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記金属層がコバルトを含み、そして前記ポリッシング組成物が、(i)コバルトポリッシング促進剤と、(ii)約6~約10のpHとをさらに含む。
【0109】
第40実施態様が第35実施態様を含んでよく、前記誘電層が酸化ケイ素材料及び窒化ケイ素材料のうちの少なくとも一方を含み、そして前記研磨粒子がセリアを含む。
【0110】
第41実施態様が第35~第40実施態様のいずれか1つを含んでよく、前記カチオン性ポリマーが下記式:
【化7】
に基づく化合物を含む。
【0111】
Qは任意の連結基であり、X1及びX2は実質的に任意の基であり、R1はH、OH、又はアルキル基であり、そしてR2は誘導基である。
【0112】
第42実施態様が第41実施態様を含んでよく、R2が、アルキルカルボニル基、二価カルボアシル基、アルキル尿素基、及びアルキルスルホネート基のうちの少なくとも1つを含む。
【0113】
第43実施態様が第41及び第42実施態様の一方を含んでよく、前記カチオン性ポリマーが、QがC2H4であり且つX1、X2及びR1がHであるような誘導体化ε-ポリ-L-リシンを含む。
【0114】
実施例1
5種の組成物(水性カチオン性ポリマー溶液)を以下のように調製した。ε-ポリ-L-リシン(εPLL)の25重量パーセント水溶液100グラムを脱イオン水175グラムとフラスコ内で合体した。出発εPLLの平均モノマー単位数nは約32であった。溶液に無水コハク酸の顆粒を混合しながら添加し、これを数分にわたって溶解した。KOHを使用して溶液のpHを、7を上回るように調節した。pH調節済み溶液を一晩にわたって撹拌することによって、ε-ポリ-L-リシンのアルファアミノ酸上の誘導体化を促進した。最終組成物は、約9重量パーセントの誘導体化ポリアミノ酸を有する水溶液を含んだ。各水溶液の調製並びに誘導体化度に関するさらなる詳細が表1に示されている。
表1
【表1】
【0115】
陽子NMR(1H NMR)によって組成物1A~1Eを評価することにより、誘導体化度を推定した。30~40mgの水性組成物試料を周囲条件において1.0g D2O中に溶解した。D1=30秒、DS=4走査、及びNS=8走査の設定で溶媒抑制技術を用いて、NMRスペクトルを400 MHz NMRで得た。
【0116】
組成物1Aから得られたスペクトルの例が図に示されている。なお、符号M02で示されたピークは、誘導体化εPLLのコハク酸側鎖(誘導基内)中のメチレン陽子に割り当てられている(下記式4のα及びβ陽子)。主鎖メチレン陽子(下記式中のγ、δ、ε及びγ’、δ’、ε’陽子)はピークM01に割り当てられている。
【化8】
【0117】
誘導体化度(この実施例ではスクシニル化)を下記式を用いて計算した。M01面積及びM02面積は、M01ピーク及びM02ピークの総ピーク面積を表す。
【数1】
【0118】
組成物1Aの誘導体化度は、図に示されたNMRスペクトルに基づいて約19パーセントと計算された。
【0119】
実施例2
2種のアセチル化組成物(水性カチオン性ポリマー溶液2A及び2B)を下記のように調製した。ジメチルホルムアミドを水性εPLL溶液(実施例1から)に、ジメチルホルムアミド:εPLL溶液の重量比7.5:1で添加することにより、εPLLを数時間にわたって沈殿させた。沈殿したεPLLを捕集し、メタノール中に溶解した。第1時間及び第2時間にわたって溶液を60℃で酢酸メチルと反応させた。9日間の反応時間後、置換度は34%(2A)であり、22日間の反応時間後、置換度は56%(2B)であった。置換度は、実施例に記載された陽子NMRを用いて割り出した。これらの水性組成物を表2に要約する。
表2
【表2】
【0120】
実施例3
5種の組成物(水性カチオン性ポリマー溶液)を下記のように調製した。ジメチルホルムアミドを水性εPLL溶液(実施例1から)に、ジメチルホルムアミド:εPLL溶液の重量比7.5:1で添加することにより、εPLLを数時間にわたって沈殿させた。沈殿したεPLLを捕集し(約4グラム)、メタノール中に溶解した。誘導体化化合物(この実施例ではプロパンスルトン、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、又はシクロヘキシルイソシアネート)をメタノール溶液へ添加した。溶液を一晩にわたって50℃で撹拌することにより、誘導体化(ε-ポリ-L-リシンのアルファアミノ酸上のアルキルスルホネート基(3A及び3B)又はアルキル尿素基(3C,3D,及び3E)の置換)を促進した。最終溶液を回転蒸発させることにより、メタノールを除去し、そして次いで水中に所期濃度まで溶解した。各水溶液の調製並びに誘導体化度に関するさらなる詳細を表3に示す。
表3
【表3】
【0121】
陽子NMRによって組成物3A~3Eを評価することにより、実施例1に上述したものと同じ手順を用いて誘導体化度を推定した。
【0122】
実施例4
21種のポリッシング組成物(対照A4,B4,C4,及びD4、並びに実施例4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H,4I,4J,4K,4L,4M,4N,4O,4P,及び4Q)に対して、タングステンの静的エッチング速度を評価した。これらの組成物を表4に、対応するタングステンエッチング速度とともに挙げる。各組成物は、0.17重量パーセンテージのカチオン性コロイドシリカと、0.04重量パーセントのマロン酸と、0.02重量パーセントの硝酸鉄九水和物と、2.5重量ppmのKathon(登録商標)LX殺生物剤と、3重量パーセントの過酸化水素と、タングステンエッチング抑制剤とを含んだ。pHを硝酸又は水酸化カリウムによって2.75に調節した。
【0123】
対照組成物A4,B4,C4,及びD4において、タングステンエッチング抑制剤は、表4に挙げられた濃度のε-ポリ-L-リシンであった。本発明の組成物4A~4Qにおいて、タングステンエッチング抑制剤は、表4に挙げられた濃度の誘導体化ε-ポリ-L-リシンであった。上記実施例1,2,及び3に開示された相応する組成物1A~1C,2A,2B,又は3A~3Eのうちの適量の1つの組成物を添加することによって、組成物4A~4Qを調製した。抑制剤の濃度は(i)重量パーツ・パー・ミリオン(ppm)及び(ii)マイクロモルカチオン電荷濃度の単位で、表4に挙げられている。残留する非誘導体化モノマー単位の数(式2におけるn-m)を誘導体化ポリアミノ酸のモル濃度で掛け算することによって、電荷濃度を計算することができ、電荷濃度は、誘導体化ポリアミノ酸中の非誘導体化アルファアミノ基の1リットル当たりのモルにおける尺度である。或いは、カチオン電荷濃度は下記等式に基づいてケイ酸することができる(μM)。(カチオン電荷濃度CC(μM)は誘導体化ポリアミノ酸の濃度(重量ppm)PPMの関数として挙げられる。
【数2】
【0124】
ρは組成物の密度を表し(密度はこれらの実施例組成物では約1.0~約1.1である)、そしてMW
αは、非誘導体化アルファアミノ酸当たりの誘導体化ポリアミノ酸化合物の分子量を表し、下記のように計算することができる。
【数3】
【0125】
ddは誘導体化度(式2に示されたm/n)を表し、MWmonは非誘導体化モノマーの分子量(この実施例ではポリリシンモノマー)の分子量を表し、そしてMWder-monは誘導体化モノマー(この実施例では誘導体化ポリリシンモノマー単位)の分子量を表す。
【0126】
各ポリッシング組成物に対応するタングステンエッチング速度を得るために、組成物を先ず60℃まで加熱し、その後、過酸化水素を3重量パーセントの濃度まで添加した。温度が60度に戻るのを5分間待った後、8000Å厚タングステン層を有するSilybタングステンウエハー1インチ平方のクーポンを、ポリッシング組成物中に5分間にわたって浸漬した。ポリッシング組成物中のウエハーの浸漬前後に行われた抵抗測定を介して、タングステン除去速度を割り出した。
表4
【表4】
【0127】
表4に示された結果から容易に明らかなように、誘導体化ポリリシン抑制剤を含む本発明の組成物の多くは、同じカチオン電荷濃度を有する対照組成物と同等であるか又はこれよりも低いタングステン静的エッチング速度を示す。例えば、組成物4Hは、対照C4の約半分のタングステンエッチング速度を有する。
【0128】
実施例5
10種のポリッシング組成物(対照A5,B5,C5,D5,及びE5、並びに実施例5A,5B,5C,5D,及び5E)に対して、タングステンの静的エッチング速度を評価した。各ポリッシング組成物は、カチオン性コロイドシリカと、0.04%のマロン酸と、0.02%の硝酸鉄九水和物と、2.5重量ppmのKathon(登録商標)LX殺生物剤と、3重量パーセントの過酸化水素と、タングステンエッチング抑制剤とを含んだ。pHを硝酸又は水酸化カリウムによって2.75に調節した。カチオン性コロイドシリカ粒子を米国特許第9,382,450号明細書の実施例7に記載されているように調製した。シリカ濃度は表5に挙げられている。タングステンエッチング抑制剤は、実施例1の組成物1Bに関して上述したように調製した。抑制剤の濃度も実施例4において上述した(i)重量パーツ・パー・ミリオン(ppm)及び(ii)マイクロモルカチオン電荷濃度の単位で、表5に挙げられている。
【0129】
Applied Materials Mirraポリッシング工具、NexPlanar E6088ポリッシングパッド(Cabot Microelectronicsから入手可能)、3M A122 コンディショナ(8ポンドでex situ モード)を使用して、ダウンフォース3.5psi、プラテン速度80rpm、ヘッド速度89rpm、及びスラリー流量90ml/minで、タングステンブランケットウエハー(Silyb 2k Wブランケット、200mm)をエンドポイント+10%までポリッシングした。タングステンRRを、W金属がクリアになり始める時点であるフラグタイムによって割り出した(除去速度は2000Åをフラグタイム(分)によって割り算したものである)。
表5
【表5】
【0130】
表5に示された結果から容易に明らかなように、誘導体化ポリアミノ酸抑制剤を含む本発明の組成物は、等しい抑制剤重量濃度の対照組成物よりも高い除去速度を達成した。
【0131】
実施例6
タングステンパターン化ウエハーのエロージョン及びディッシングを2種のポリッシング組成物(対照A6及び実施例6A)に対して評価した。対照組成物(A6)は実施例5の対照E5と同一であった。本発明の組成物(6A)は実施例5の組成物5Bと同一であった。
【0132】
Applied Materials Mirraポリッシング工具、及びNexPlanar E6088ポリッシングパッド(Cabot Microelectronicsから入手可能)を使用して、タングステンパターンウエハー(Silyb 2k W 854ライン及び間隔パターン、200mm)をエンドポイント+30%までポリッシングした。3M A122 コンディショナ(24秒間にわたって8ポンドでex situ モード)を使用して、パッドをコンディショニングした。ダウンフォース3.5psi、プラテン速度80rpm、ヘッド速度89rpm、及びスラリー流量90ml/minを用いて、ウエハーをポリッシングした。タングステンポリッシング速度を、W金属がクリアになり始める時点であるフラグタイムによって割り出した(除去速度は2000Åをフラグタイム(分)によって割り算したものである)。除去速度データを表6Aに示す。エロージョン及びディッシングの結果を表6Bに示す。エロージョン及びディッシングの測定値は、対応フィーチャ全体にわたる原子間力顕微鏡(AFM)プロフィロメータ測定を用いて得た。平均及びダイ内部不均一性(Average and Within Die Nonuniformity)(WIDNU)エロージョン及びディッシングの値も表6Bに示されている。WIDNUは、この実施例では、ディッシング又はエロージョンの値の範囲(最大値マイナス最小値)と定義される。パターンウェハーフィーチャはラインであった(ラインの幅及び間隔は報告される)。
表6A
【表6A】
表6B
【表6B】
【0133】
表6A及び6Bに示された結果から容易に明らかなように、組成物6Aは対照組成物と比較して優れたエロージョン及びディッシング性能を提供する。特に、組成物6Aは、著しく改善された平均(average (mean))エロージョン及びディッシングを提供し、そして広範なパターンフィーチャにわたって著しく改善されたエロージョン及びディッシングのWIDNUを提供する。当業者には明らかなように、広範なパターンフィーチャにわたって低いエロージョン及びディッシングのWIDNUを達成することは、特に改良型ノードCMP用途において、CMP操作者には手強い難題である。表6Bに示された改善は多大な利点を表す。
【0134】
実施例7
12種のポリッシング組成物(対照A7、並びに実施例7A,7B,7C,7D,7E,7F,7G,7H,7I,7J,及び7K)に対して、コバルトの静的エッチング速度を評価した。これらの組成物を表7に、対応するコバルトエッチング速度とともに挙げる。各組成物は、0.5重量パーセントのコロイドシリカと、0.75重量パーセントのグリシンと、100重量ppmのコバルト抑制剤とを含んだ。pHをKOHによって8.5に調節した。
【0135】
対照組成物A7において、コバルトエッチング抑制剤は、ε-ポリ-L-リシンであった。本発明の組成物7A~7Kにおいて、コバルトエッチング抑制剤は誘導体化ε-ポリ-L-リシンであった。上記実施例1,2,及び3に開示された相応する組成物1A~1E,2B,又は3A~3Eのうちの適量の1つの組成物を添加することによって、組成物7A~7Kを調製した。
【0136】
各ポリッシング組成物に対応するコバルトエッチング速度を得るために、組成物を35℃まで加熱した。2つの1インチ平方のSilyb Co 2kクーポンを、各組成物中に3分間にわたって浸漬した。浸漬前後に行われた抵抗測定を介して、コバルトエッチング速度を割り出した。平均値を表7に報告する。
表7
【表7】
【0137】
表7に示された結果から容易に明らかなように、本発明の組成物は、制御組成物と比較して、著しく低減されたコバルトエッチング速度を提供する。
【0138】
実施例8
15種のポリッシング組成物(対照A8,B8,C8,及びD8,及び実施例8A,8B,8C,8D,8E,8F,8G,8H,8I,8J,及び8K)に対して、コバルトの静的エッチング速度を評価した。これらの組成物は、対応するコバルトエッチング速度とともに、表8に挙げられている。各ポリッシング組成物は、0.5重量パーセントのコロイドシリカと、0.75重量パーセントのグリシンと、コバルト抑制剤とを含んだ。pHを水酸化カリウムで8.5に調節した。コバルト抑制剤のタイプ及び量は表8に挙げられている。
【0139】
対照組成物A8,B8,C8,及びD8において、コバルトエッチング抑制剤は、ε-ポリ-L-リシンであった。本発明の組成物8A~8Kにおいて、コバルトエッチング抑制剤は誘導体化ε-ポリ-L-リシンであった。上記実施例1,2,及び3に開示された相応する組成物1A-1C,2B,又は3B-3Eのうちの適量の1つの組成物を添加することによって、組成物8A~8Kを調製した。
【0140】
各ポリッシング組成物に対応するコバルトエッチング速度を得るために、組成物を35℃まで加熱した。2つの1インチ平方のSilyb Co 2kクーポンを、各組成物中に5分間にわたって浸漬した。時間を3分から5分へ延ばすことにより、信号を増大させる。それというのも、コバルトエッチング速度は時間とともに増大することがあることが知られているからである(コバルトエッチングは自己触媒的であり得るため)。浸漬前後に行われた抵抗測定を介して、コバルトエッチング速度を割り出した。平均値を表8に報告する。
表8
【表8】
【0141】
表8に示された結果から容易に明らかなように、本発明の組成物は、制御組成物と比較して、著しく低減されたコバルトエッチング速度を提供する。この実施例においてエッチング時間をより長くすることによって、改善はより顕著になる。
【0142】
実施例9
14種のポリッシング組成物(対照A9,及び実施例9A,9B,9C,9D,9E,9F,9G,9H,9I,9J,9K,9L,及び9M)に対して、コバルトの静的エッチング速度(除去速度)を評価した。各ポリッシング組成物は、0.5重量パーセントのコロイドシリカ(Fuso PL-2)と、0.75重量パーセントのグリシンと、コバルトエッチング抑制剤とを含んだ。pHを水酸化カリウムで8.5に調節した。コバルト抑制剤のタイプ及び量は表9に挙げられている。
【0143】
対照組成物A9において、コバルトエッチング抑制剤は、ε-ポリ-L-リシンであった。本発明の組成物9A~9Mにおいて、コバルトエッチング抑制剤は誘導体化ε-ポリ-L-リシンであった。上記実施例1,2,及び3に開示された相応する組成物1A-1E,2B,又は3A-3Eのうちの適量の1つの組成物を添加することによって、組成物9A~9Mを調製した。
【0144】
外側半径32mm及び内側半径16mmのフジボウ・ドーナツパッドとともにRheometer (ARG-2)を使用して、Silyb Co 2kクーポンに対してコバルト除去速度を測定した。ポリッシング温度は25℃であった。ダウンフォースは4N(1.2psi)であった。パッド回転速度は130 rpmであった。3mLのスラリーを利用した。ポリッシング時間は15秒であった。各組成物に対応するコバルト除去速度を表9に挙げる。
表9
【表9】
【0145】
表9に示された結果から容易に明らかなように、本発明の組成物の多くは、対照組成物を使用して達成されたものに対して同等のコバルト除去速度を提供する。このことは上記実施例7及び9に開示されたコバルトエッチング速度の低減を考えると、著しい改善を意味する。
【0146】
実施例10
誘電材料ポリッシング速度を4種のポリッシング組成物(対照A10及びB10、並びに本発明による組成物10A及び10B)に対して評価した。各組成物は150重量ppmのポリビニルピロリドン(5000g/mol)と、676重量ppmの酢酸と、0.1重量%のクロトン酸と、100ppmのピコリン酸と、75重量ppmのKordex MLX殺生物剤と、0.2重量%のセリアと、εPLL又は誘導体化εPLLとをpH4で含んだ。セリアは、同一譲受人による米国仮特許出願第62/924,328号の実施例1に記載されたものと同一であった。対照組成物A10及びB10は10及び30重量ppmのεPLLを含んだ。本発明の組成物10A及び10Bは、(上記実施例2に記載された水性組成物2Bに由来する)10及び30重量ppmのアセチル化εPLLを含んだ。
【0147】
ブランケットテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、及びSiN-PEウエハーをそれぞれMirra(登録商標)工具上で、プラテン速度100rpm、ヘッド速度85rpm、ダウンフォース3psi、及びスラリー流量150ml/minでポリッシングした。6ポンドのダウンフォースでSaesol DS8051コンディショナを使用して、in-situコンディショニングによってNexPlanar(登録商標) E6088パッド(Cabot Microelectronicss Corporationから入手可能)上で、ウエハーをポリッシングした。TEOSウエハーをWRS Materialsから得た。TEOSウエハーは20kÅのTEOS層を含んだ。HDPウエハーをSilybから得た。HDPウエハーは10kÅのHDP酸化物層を含んだ。SiN-PEウエハーをAdvantecから得た。SiN-PEウエハーは5kÅのPE SiN層を含んだ。ポリッシングデータを表10に示す。すべての除去速度は1分当たりのオングストローム(Å/min)で挙げる。
表10
【表10】
【0148】
表10に示された結果から容易に明らかなように、組成物10Bは、対照組成物B10と比較してより多量のポリマーが装入されると優れたTEOS及びHDP除去速度を達成する。
【0149】
“a”及び“an”及び“the”及び同様の指示対象を、本発明を説明するという文脈において(特に下記クレームの文脈において)使用する際には、これは特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきである。「含む“comprising”」、「有する“having”」、「含む“including”」及び「含有する“containing”」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち「含むが、しかしこれに限定されない」)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の記述は特に断りのない限り、単にその範囲内に含まれるそれぞれ別個の値に個別に言及する省略法として役立つように意図されているのにすぎず、そしてそれぞれの別個の値は、それがあたかも本明細書中に個別に記述されているかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中に特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、任意の適宜の順番で実施することができる。本明細書中に提供された任意のそして全ての例、又は例を意味する言語(例えば「~のような“such as”」)は、単に本発明をより良く例示するように意図されているにすぎない。明細書中のいかなる言語も、任意の非クレーム要素を本発明の実施に必須のものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0150】
本発明の好ましい実施態様が、本発明を実施するために発明者に知られた最善の態様を含めて本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施態様の変更は、前記説明を読めば当業者には明らかになり得る。発明者は、当業者がこのような変更形を必要に応じて採用することを予期し、発明者は、本発明が本明細書中に具体的に記載したものとは異なる形で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可される、ここに添付されたクレームに挙げられた主題のあらゆる改変形及び等価形を含む。さらに、あらゆる可能な変更形における上記要素のいかなる組み合わせも、本明細書中に特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾するのでない限り、本発明によって包含される。
【国際調査報告】