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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20230309BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20230309BHJP
   C08F 8/34 20060101ALI20230309BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230309BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CER
C08F220/06
C08F8/34
A61F13/15 141
A61F13/53 300
A61F13/15 142
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544806
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2021013594
(87)【国際公開番号】W WO2022119095
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168657
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
【テーマコード(参考)】
3B200
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BB17
3B200BB22
3B200BB24
3B200DB02
3B200DB20
4F070AA32
4F070AB13
4F070AC12
4F070AC20
4F070AC38
4F070AC50
4F070AC66
4F070AE08
4F070AE28
4F070DC16
4F070GA08
4F070GB09
4F070GC09
4J100AK08P
4J100AL66Q
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100CA29
4J100CA31
4J100EA05
4J100HA53
4J100HC10
4J100HC69
4J100HE12
4J100JA19
4J100JA60
4J100JA64
(57)【要約】
本発明は、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性などを均一に長時間維持し、保水能および加圧吸水能などの基本的物性を優れたものに維持できる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、
前記表面架橋層は、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を含む、
高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩(Sodium diethyldithiocarbamate)である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ベース樹脂100重量部に対して0.1~5重量部の含有量で含まれる、
請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記表面架橋層は、キレート剤または有機酸をさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記表面架橋剤は、ジオール化合物、アルキレンカーボネート化合物または多価エポキシ化合物を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
下記式1で表されるバクテリア(Escherichia Coli;ATCC25922)抑制率が90%以上である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂:
[式1]
バクテリア抑制率=[1-{CFU(12h)/CFUcontrol(12h)}]×100(%)
上記式1中、CFU(12h)は、栄養分が含まれている人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)2,500CFU/mlを接種した後、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂2gを加えた後、35℃で12時間培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示し、CFUcontrol(12h)は、前記高吸水性樹脂の代わりにジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を使用せずに製造された高吸水性樹脂を用い、前記栄養分が含まれている人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)2,500CFU/mlを接種し、人工尿を同一の条件で培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示す。
【請求項7】
酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を製造する段階(段階2);および
表面架橋剤を含む表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂に対する表面架橋反応を行って表面架橋層が形成された高吸水性樹脂を製造する段階(段階3)を含み、
前記段階3の実施後に、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤とを混合する段階(段階4)をさらに含むか、
前記段階3において、前記表面架橋液がジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤をさらに含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩(Sodium diethyldithiocarbamate)である、
請求項7に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ベース樹脂100重量部に対して0.1~5重量部の含有量で使用される、
請求項7または8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記段階4において、キレート剤または有機酸をさらに含んで混合するか、
前記段階3において、表面架橋液がキレート剤または有機酸をさらに含む、
請求項7から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記段階4の混合は、乾式混合または湿式混合である、
請求項7から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂を含む衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年12月4日付で韓国特許出願第10-2020-0168657号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料や電気絶縁分野に至るまで幅広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、幼児用紙おむつや、成人用おむつなどの衛生用品または使い捨て吸水製品に最も幅広く適用されている。なかでも、成人用おむつに適用される場合、バクテリアの増殖に起因した2次的な臭いは消費者に不快感を大きく呼び起こす問題を招いている。このような問題を解決するために、前から高吸水性樹脂などに多様なバクテリア増殖抑制成分や、消臭または抗菌機能性成分を導入しようとする試みが行われている。
【0005】
しかし、このようにバクテリアの増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入するにあたり、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示しながらも、人体に無害であり、経済性を満たしながら、高吸水性樹脂の基本的な物性を低下させない抗菌剤成分を選択して導入することはそれほど容易ではなかった。
【0006】
一例として、酸化銅などのように、銀、銅などの抗菌性金属イオンを含有した抗菌剤成分を高吸水性樹脂に導入しようと試みられている。このような抗菌性金属イオン含有成分は、バクテリアなどの微生物の細胞壁を破壊して高吸水性樹脂に悪臭も誘発しうる酵素を有するバクテリアを死滅させて消臭特性を付与できる。しかし、前記金属イオン含有成分の場合、人体に有益な微生物まで死滅しうるBIOCIDE物質として分類されている。その結果、前記高吸水性樹脂を幼児用または成人用おむつなどの衛生用品に適用する場合、前記金属イオン含有抗菌剤成分の導入は最大限に排除されている。
【0007】
一方、かつては、前記バクテリアの増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入するにあたり、前記抗菌剤を高吸水性樹脂に少量ブレンディングする方法を主に適用した。しかし、このようなブレンディング方法を適用する場合、時間の経過によりバクテリア増殖抑制特性を均一に維持しにくかったのが事実である。しかも、このようなブレンディング方法の場合、高吸水性樹脂および抗菌剤を混合したり、高吸水性樹脂の使用過程などで抗菌剤成分の不均一な塗布性および脱離現象を招くことがある。その結果、前記抗菌剤のブレンディングのための新規設備を設ける必要があり、高吸水性樹脂の使用過程で多量の粉塵が発生するなどの欠点も存在していた。
【0008】
これによって、金属イオン含有成分などを導入することなく、バクテリアの増殖抑制特性および消臭特性などを長時間均一に維持し、高吸水性樹脂の基本的物性を低下させず、粉塵の発生なども抑制できる高吸水性樹脂関連技術の開発が要請され続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性などを均一に長時間維持し、保水能および加圧吸水能などの基本的物性を優れたものに維持できる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記高吸水性樹脂を含むことで、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性などを均一に長時間示しながらも、基本的な吸水特性も優れたものに維持する衛生用品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、前記表面架橋層は、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を含む、高吸水性樹脂を提供する。
【0012】
また、本発明は、酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を製造する段階(段階2);および
表面架橋剤を含む表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂に対する表面架橋反応を行って表面架橋層が形成された高吸水性樹脂を製造する段階(段階3)を含み、
前記段階3の実施後に、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤とを混合する段階(段階4)をさらに含むか、
前記段階3において、前記表面架橋液がジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤をさらに含む、
前記高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記方法で製造された高吸水性樹脂を含む衛生用品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法で製造された高吸水性樹脂は、特定の物質を含むことで、人体に有害で2次的悪臭を誘発するバクテリアのみを選択的に増殖抑制する優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示すことができる。
【0015】
また、前記高吸水性樹脂は、前記特定の化合物を含む添加剤を表面架橋時または表面架橋後に適用して、ベース樹脂粉末をなす架橋重合体または表面架橋層の内部に硬く固定させることによって、前記優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間均一に示すことができ、前記抗菌剤の付加による物性の低下なく優れた保水能および加圧吸水能などを維持できる。
【0016】
したがって、前記高吸水性樹脂は、2次的悪臭が特に問題になる成人用おむつなどの多様な衛生用品に非常に好ましく適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0018】
発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂およびその製造方法などについてより詳しく説明する。
【0020】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含み、前記表面架橋層は、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を含む。
【0021】
本発明者らは、銀、銅などの抗菌性金属イオンを含む抗菌剤成分の代わりに高吸水性樹脂に好ましく適用できる抗菌剤成分に関する研究を継続した。このような継続的な研究の結果、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を高吸水性樹脂に導入する場合、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の基本的物性を低下させることなく、人体皮膚内に存在する悪臭を誘発するバクテリアの増殖を抑制する優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を高吸水性樹脂に付与できることを確認した。
【0022】
前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、人体に無害で安全性が確保された成分であって、BIOCIDE物質に相当せず、既存の金属イオン含有抗菌剤が抱えていた問題点を解決することができる。同時に、前記物質は、無臭の親水性特徴を有し、高吸水性樹脂の製造工程への使用が容易である。
【0023】
そのため、一実施形態の高吸水性樹脂は、前記優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間均一に示すことができ、前記抗菌剤の付加による物性の低下なく優れた保水能および加圧吸水能などを維持できる。その結果、前記一実施形態の高吸水性樹脂は、2次的悪臭が特に問題になる成人用おむつなどの多様な衛生用品に非常に好ましく適用可能である。
【0024】
好ましくは、前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩(sodium diethyldithiocarbamate)であってもよい。
【0025】
一方、前記一実施形態の高吸水性樹脂において、前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩は、ベース樹脂100重量部に対して、0.1~5重量部、または0.1~4重量部、または0.1~3重量部の含有量で含まれる。前記有機酸塩の含有量が過度に小さくなると、適切なバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示しにくく、逆に、その含有量が過度に大きくなると、高吸水性樹脂の保水能などの基本的物性が低下しうる。
【0026】
また、前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を含む表面架橋層は、キレート剤または有機酸をさらに含むことができる。前記キレート剤は、一例として、EDTA-2NaまたはEDTA-4Naのナトリウム塩、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレングリコール-ビス-(アミノエチルエーテル)-N,N,N’-トリ酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-トリ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、およびこれらのアルカリ金属塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。前記キレート剤は、抗菌剤として作用して、様々な細菌の増殖速度、特に、臭いを誘発するプロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)菌の増殖を抑制する抗菌作用が可能である。
【0027】
前記有機酸は、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、マレイン酸(maleic acid)および乳酸(lactic acid)からなる群より選択される1種以上であってもよい。前記有機酸は、キレート剤と共に使用される場合、相乗効果を起こすことが可能で消臭/抗菌特性を示すことができる。
【0028】
前記キレート剤または有機酸は、ベース樹脂粉末の100重量部に対して、0.1~3重量部、あるいは0.3~2重量部、あるいは0.4~1重量部の含有量で含まれる。このようなキレート剤または有機酸を追加的に用いて、悪臭を誘発するバクテリアの成長速度をさらに抑制して優れた抗菌および消臭特性を示すことができる。ただし、前記キレート剤または有機酸の含有量が過度に大きくなると、高吸水性樹脂の吸水特性の低下を起こすことがあるので、好ましくない。
【0029】
一方、上述した一実施形態の高吸水性樹脂は、ベース樹脂粉末をなす架橋重合体の内部架橋構造、または表面架橋層の架橋構造の内部に前記添加剤成分を含むことを除けば、通常の高吸水性樹脂の構造を有することができる。例えば、前記酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および表面架橋剤を介して前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含む構造を有することができる。
【0030】
この時、前記水溶性エチレン系不飽和単量体としては、高吸水性樹脂に通常用いられる任意の単量体を特別な制限なく使用可能である。これには、陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されるいずれか1つ以上の単量体を使用することができる。
【0031】
具体的には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されたいずれか1つ以上を使用することができる。
【0032】
さらに好ましくは、アクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を使用することができるが、このような単量体を用いてより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として用いる場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)などの塩基性化合物で少なくとも一部中和させて使用することができる。
【0033】
また、前記ベース樹脂粉末は、このような単量体が内部架橋剤を介して架橋重合された架橋重合体を含む微細粉末形態を有することができる。
【0034】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有しかつ、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0035】
このような内部架橋剤の具体例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択された1つ以上を使用することができる。
【0036】
また、前記ベース樹脂粉末は、150~850μmの粒径を有する微細粉末形態を有することができる。
【0037】
一方、前記高吸水性樹脂は、このようなベース樹脂粉末の架橋重合体が表面架橋剤を介して追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成された表面架橋層を含む。
【0038】
このような表面架橋剤の例としては、ジオール化合物、アルキレンカーボネート化合物または多価エポキシ化合物などが挙げられ、そのより具体的な例としては、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、グリセロール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート、またはエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル系化合物などが挙げられ、その他にも高吸水性樹脂の表面架橋剤として使用可能と知られた任意の多価化合物を特別な制限なくすべて使用可能である。
【0039】
上述した一実施形態の高吸水性樹脂は、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を、例えば、表面架橋液中に含ませて表面架橋層を形成するか、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と前記添加剤とを混合することによって、前記表面架橋層の追加架橋構造の内部またはその表面に前記抗菌剤成分が物理的または化学的に硬く固定または結合した状態で含まれている。その結果、既存のブレンディング時とは異なり、抗菌剤成分の不均一な塗布、脱離および運送中の分離などが発生せず、全体的に抗菌剤成分が均一に含まれて長時間優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を安定的に示すことができる。また、高吸水性樹脂の使用時、前記抗菌剤成分に由来した粉塵の発生も大きく低減可能である。
【0040】
このような優れたバクテリア増殖抑制特性は、後述する試験例からも立証されるように、下記式1で表されるバクテリア(Escherichia Coli;ATCC25922)抑制率が、90%以上、あるいは93%以上、あるいは95~100%の高い値を有するという特性から裏付けられる:
【0041】
[式1]
バクテリア抑制率=[1-{CFU(12h)/CFUcontrol(12h)}]×100(%)
【0042】
上記式1中、CFU(12h)は、栄養分が含まれている人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)を2,500CFU/mlで接種し、バクテリア抑制率の測定対象になる高吸水性樹脂2gを加えた後、35℃で12時間培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示し、CFUcontrol(12h)は、前記高吸水性樹脂の代わりにジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を使用せずに製造された高吸水性樹脂を用い、前記栄養分が含まれている人工尿50mlに前記バクテリアを接種し、同一の条件で培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示す。
【0043】
前記栄養分が含まれている人工尿は、下記のように製造することができる。
【0044】
1)ストック溶液(Stock solution)の製造
1Lフラスコに各化合物(塩化ナトリウム(sodium chloride)(0.15M)、リン酸水素二カリウム(dipotassium hydrogen phosphate)(0.02M)、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)(0.01M)、塩化アンモニウム(ammonium chloride)(0.05M)、硫酸二ナトリウム(disodium sulphate)(0.02M)、乳酸(lactic acid)(90%)(0.05M)、酵母エキス(yeast extract)(Becton Dikinson))を濃度に合わせて入れて、1000mlとなるように蒸留水を満たして溶解させた後、オートクレーブ(autoclave)で滅菌する。製造された溶液は4℃で保管する。
【0045】
2)尿素/グルコース溶液(Urea/Glucose Solution)の製造
100mlフラスコに各化合物(尿素(Urea)(6M)、D-グルコース(D-glucose)(0.01M))を濃度に合わせて入れて、100mlとなるように蒸留水を満たして溶解させる。これを0.22ミクロンのフィルタを用いて菌を除去する。製造後の溶液は4℃で保管する。
【0046】
3)カチオン性溶液(Cationic Solution)の製造
100mlフラスコに各化合物(塩化マグネシウム(六水和物)(magnesium chloride(hexahydrate))(0.3M)、塩化カルシウム(無水物)(calcium chloride(dehydrate))(0.3M))を濃度に合わせて入れて、20mlとなるように蒸留水を満たして溶解させ、オートクレーブ(autoclave)で滅菌する。製造後の溶液は4℃で保管する。
【0047】
4)栄養分が含まれている人工尿
ストック溶液(Stock solution)94ml、尿素/グルコース溶液(urea/glucose solution)5ml、そして1mlのカチオン性溶液(cationic solution)を混合して製造する。製造後の溶液は4℃で保管し、製造日から7日以内に使用する。
【0048】
一方、上述した一実施形態の高吸水性樹脂は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合を進行させて得られた含水ゲル状重合体に対して乾燥、粉砕、分級および表面架橋などを進行させて得られ、必要に応じて微粉再造粒工程などをさらに行うことができる。
【0049】
より具体的には、前記高吸水性樹脂の製造方法は、酸性基の少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を製造する段階(段階2);および
表面架橋剤を含む表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂に対する表面架橋反応を行って表面架橋層が形成された高吸水性樹脂を製造する段階(段階3)を含み、
前記段階3の実施後に、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤とを混合する段階(段階4)をさらに含むか、
前記段階3において、前記表面架橋液がジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤をさらに含む方法で行われる。
【0050】
具体的な一例において、前記段階3は、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を含む表面架橋液を用いて行われる。これによって、前記添加剤が表面架橋層の追加架橋構造内に含まれている一実施形態の高吸水性樹脂が得られる。
【0051】
具体的な他の例において、前記段階4が行われる場合、前記添加剤が表面架橋層の表面に含まれている一実施形態の高吸水性樹脂が得られる。
【0052】
このように、表面架橋層形成段階(段階3)において、表面架橋液に添加剤成分を含ませて高吸水性樹脂の製造工程を進行させるか、前記添加剤を表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と混合する段階(段階4)を進行させることによって、抗菌剤成分が表面架橋層の内外に硬く固定されてその脱離や不均一な塗布などを抑制することができ、高吸水性樹脂が長時間優れていながらも均一なバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を維持させることができる。
【0053】
一方、前記製造方法で使用可能な各成分、つまり、単量体、内部架橋剤および表面架橋剤の種類については、すでに一実施形態の高吸水性樹脂について詳しく説明したので、これに関する追加的な説明は省略する。
【0054】
また、前記製造方法で使用される各添加剤成分の種類および使用量も、すでに上述した各添加剤成分の種類および含有量に対応することができる。
【0055】
以下、添加剤の含有量範囲に関する追加の説明は省略し、高吸水性樹脂の製造工程を中心に説明する。
【0056】
具体的な一例において、前記含水ゲル重合体の製造段階(段階1)では、前記水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造することができる。
【0057】
上述した単量体および内部架橋剤と共に単量体水溶液に含まれる重合開始剤としては、高吸水性樹脂の製造に一般に使用される開始剤を特別な制限なくすべて使用可能である。
【0058】
具体的には、前記重合開始剤としては、重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用可能である。
【0059】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される1つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著の『UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)』p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0060】
前記光重合開始剤は、前記単量体水溶液に対して0.0001~2.0重量%の濃度で含まれる。このような光重合開始剤の濃度が低すぎる場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が高すぎると、高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になりうる。
【0061】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の『Principle of Polymerization(Wiley,1981)』p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0062】
前記熱重合開始剤は、前記単量体水溶液に対して0.001~2.0重量%の濃度で含まれる。このような熱重合開始剤の濃度が低すぎる場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果がわずかであり、熱重合開始剤の濃度が高すぎると、高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になりうる。
【0063】
これらの光重合開始剤および熱重合開始剤が共に使用される場合、熱重合開始剤は、重合開始直前に最後に単量体水溶液に添加される。この時、上述した抗菌剤の水溶液がこのような熱重合開始剤と共に混合されて単量体水溶液に添加される。
【0064】
また、前記製造方法において、高吸水性樹脂の前記単量体水溶液は、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤または酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0065】
一方、このような単量体水溶液を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法は、通常用いられる重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0066】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源によって、大きく、熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、発明が上述した重合方法に限定されない。
【0067】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、40~80重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、全体含水ゲル状重合体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式により、総乾燥時間は温度上昇段階の5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0068】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕および分級する(段階2)。
【0069】
含水ゲル状重合体の乾燥時、必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0070】
この時、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0071】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル状重合体の粒径が2~約10mmとなるように粉砕することができる。
【0072】
前記のように粗粉砕されるか、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。
【0073】
前記乾燥段階の乾燥方法も、含水ゲル状重合体の乾燥工程で通常用いられるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用可能である。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、0.1~10重量%であってもよい。
【0074】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する。
【0075】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が150~850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、上述した例に発明が限定されるものではない。
【0076】
そして、このような粉砕段階の後、最終的に製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が150~850μmの重合体を分級する。
【0077】
上述した過程を経てベース樹脂粉末を製造することができ、このようなベース樹脂粉末は、150~850μmの粒径を有する微細粉末形態を有することができる。
【0078】
一方、発明の一実施例によれば、前記粉砕および/または分級などの過程を経て製造されたベース樹脂粉末に表面架橋する段階をさらに行うことができる(段階3)。
【0079】
このような表面架橋段階は、前記ベース樹脂粉末の表面架橋密度を高めるために、表面架橋剤および溶液を含む表面架橋液を用いて追加架橋を行い、表面架橋層を形成させる段階で、架橋されずに表面に残っていた水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって追加架橋されて、表面架橋密度が高くなった高吸水性樹脂が形成される。このような熱処理工程で表面架橋密度、つまり、外部架橋密度は増加するのに対し、内部架橋密度は変化がなくて、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は、内部より外部の架橋密度が高い構造を有する。
【0080】
このような表面架橋段階では、すでに上述のように、前記表面架橋剤、ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤および水溶媒を含む表面架橋液を用いて進行させることができる。前記表面架橋液は、選択的にキレート剤または有機酸をさらに含むことができる。
【0081】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001~2重量部使用できる。例えば、前記表面架橋剤は、ベース樹脂粉末100重量部に対して0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上であり、1.5重量部以下、1重量部以下の含有量で使用できる。表面架橋剤の含有量範囲を上述した範囲に調節して、優れた吸水性能および通液性などの諸物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0082】
また、前記表面架橋液をベース樹脂粉末と混合する方法については、その構成の限定はない。例えば、表面架橋液と、ベース樹脂粉末とを反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋液を噴射する方法、連続的に運転されるミキサにベース樹脂粉末と表面架橋液とを連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0083】
前記表面架橋工程は、80℃~250℃の温度で行われる。より具体的には、前記表面架橋工程は、100℃~220℃、または120℃~200℃の温度で、20分~2時間、または40分~80分間行われる。上述した表面架橋工程条件を満たす時、ベース樹脂粉末の表面が十分に架橋されて加圧吸水能や通液性が増加できる。
【0084】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを用いることができるが、これに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択可能である。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0085】
一方、発明の一実施例によれば、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂とジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩を含む添加剤を混合する段階をさらに行うことができる(段階4)。前記段階4が行われる場合、前記ジエチルジチオカルバミン酸(diethyldithiocarbamic acid)またはその塩が表面架橋層の表面に含まれている一実施形態の高吸水性樹脂が得られる。
【0086】
前記段階4の混合段階では、キレート剤または有機酸をさらに含んで混合することができる。
【0087】
前記段階4は、一般的な混合方法であれば特に限定されず、乾式混合または湿式混合のいずれでも構わない。
【0088】
一方、前記段階4は、0.1~2時間行われ、20℃~90℃の温度で行われる。段階4の実施時間が0.1時間未満であれば、粒子の不均一な分散が発生しうる問題があり、2時間を超える場合、粒子間の摩擦によってSAP樹脂表面の微細な破砕を誘発しうる問題がある。
【0089】
その結果、高吸水性樹脂の製造のための基本的な架橋重合または表面架橋などの工程条件の変更なくても、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間均一に示す高吸水性樹脂が製造される。また、前記抗菌剤成分が高吸水性樹脂の内部架橋構造などに影響を及ぼさないので、その付加による物性の低下なく優れた保水能および加圧吸水能などを維持できる。付加して、このような微細抗菌剤粒子が高吸水性樹脂の表面に均一に塗布されて比較的強く固定されることによって、前記抗菌剤の付加に起因して多量の粉塵が発生するという欠点も解決することができる。
【0090】
以上に例として説明した工程により、表面架橋工程までを進行させると、高吸水性樹脂が製造および提供される。このような高吸水性樹脂は、表面架橋層内に上述した特定の抗菌剤成分が堅く固定された状態で含まれて、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示すことができ、基本的な吸水特性も優れたものに維持できる。
【0091】
そこで、このような高吸水性樹脂は、多様な衛生用品、例えば、幼児用紙おむつや、成人用おむつまたは生理用ナプキンなどに好ましく含有および使用可能であり、特に、バクテリアの増殖に起因した2次的悪臭が特に問題になる成人用おむつに非常に好ましく適用可能である。
【0092】
このような衛生用品は、吸水体中に一実施形態の高吸水性樹脂が含まれることを除けば、通常の衛生用品の構成によることができる。
【0093】
以下、本発明の理解のためにより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0094】
<実施例:高吸水性樹脂の製造>
実施例1
撹拌機、温度計、冷却装置が備えられた3Lガラス容器に、アクリル酸484g、内部架橋剤のポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA400、Mw=400)2100ppmw、光開始剤のジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド80ppmwを添加して溶解させた後、31.5重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液643gをゆっくり添加して水溶性不飽和単量体水溶液を製造した(中和度:70mol%;固形分含有量:45.8重量%)。
【0095】
前記水溶性不飽和単量体水溶液の温度が中和熱によって上昇後40℃になると、この混合液を熱重合開始剤の過硫酸ナトリウム(sodium persulfate;SPS)2400ppmwが含まれている容器に入れた後、1分間紫外線を照射(照射量:10mV/cm)してUV重合を実施し、80℃のオーブンで120秒間熱を加えてエージング(aging)させて、含水ゲル状重合体シートを得た。
【0096】
得られた含水ゲル状重合体シートをホールサイズ(hole size)が16mmのチョッパ(chopper)を通過させて粉(crumb)を製造した。前記粉(crumb)を上下に風量転移可能なオーブンで乾燥した。185℃のホットエア(hot air)を15分は下方から上方に、15分は上方から下方に流れるようにして均一に乾燥し、乾燥後の乾燥体の含水量は2重量%以下となるようにした。このように乾燥工程を経て、ASTM規格の標準網篩で分級して、150~850μmの粒子サイズを有するベース樹脂粉末を得た。
【0097】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、プロピレングリコール0.2重量部および添加剤のナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩0.1重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させ、実施例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0098】
実施例2
ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩の含有量がベース樹脂粉末100重量部に対して0.3重量部であることを除けば、実施例1と同様の方法により実施例2の高吸水性樹脂を製造した。
【0099】
実施例3
実施例1と同様の方法によりベース樹脂粉末を製造した。
【0100】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部およびプロピレングリコール0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させた。
【0101】
表面架橋後、ベース樹脂粉末100重量部に対して、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩0.1重量部を含む1.5重量%水溶液を加水工程で混合して、最大温度90℃で40分間熱処理して、実施例3の高吸水性樹脂を製造した。
【0102】
実施例4
実施例1と同様の方法によりベース樹脂粉末を製造した。
【0103】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部およびプロピレングリコール0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させた。
【0104】
表面架橋後、ベース樹脂粉末100重量部に対して、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩0.3重量部を含む1.5重量%水溶液を加水工程で混合して、最大温度90℃で40分間熱処理して、実施例4の高吸水性樹脂を製造した。
【0105】
実施例5
実施例1と同様の方法によりベース樹脂粉末を製造した。
【0106】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部およびプロピレングリコール0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させた。
【0107】
表面架橋後、ベース樹脂粉末100重量部に対して、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩0.1重量部を最大温度50℃で10分間乾式混合して、実施例5の高吸水性樹脂を製造した。
【0108】
実施例6
実施例1と同様の方法によりベース樹脂粉末を製造した。
【0109】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部およびプロピレングリコール0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させた。
【0110】
表面架橋後、ベース樹脂粉末100重量部に対して、ナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩0.3重量部を最大温度50℃で10分間乾式混合して、実施例6の高吸水性樹脂を製造した。
【0111】
比較例1
実施例1と同様の方法によりベース樹脂粉末を製造した。
【0112】
一方、前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋(追加架橋)のために、ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、水4.2重量部、エチレンカーボネート0.2重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部およびプロピレングリコール0.2重量部を含む表面架橋液を混合および製造した。前記ベース樹脂100重量部に対して、前記表面架橋液を1000rpmのパドルタイプ(paddle type)ミキサを用いて噴射した。以後、最大温度185℃で60分間熱処理して表面架橋を進行させた。
【0113】
<実験例:高吸水性樹脂の物性評価>
前記実施例1~6および比較例1の高吸水性樹脂に対して下記の方法で物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0114】
(1)バクテリア増殖抑制性能テスト
栄養分が含まれている人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)を2,500CFU/mlで接種し、比較例1の高吸水性樹脂2gを加えた後、これを35℃のオーブンで12時間培養した。12時間培養後、150mlの塩水を追加して1分間振って洗浄し、これを固体培地(Nutrient agar plate、Difco社)で35℃のインキュベータで24時間培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定して、これによって対照群の物性として算出した[CFUcontrol(12h)]。
【0115】
前記および後述する「栄養分が含まれている人工尿」は、下記のように製造した。
【0116】
1)ストック溶液(Stock solution)の製造
1Lフラスコに、各化合物(塩化ナトリウム(sodium chloride)(0.15M)、リン酸水素二カリウム(dipotassium hydrogen phosphate)(0.02M)、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)(0.01M)、塩化アンモニウム(ammonium chloride)(0.05M)、硫酸二ナトリウム(disodium sulphate)(0.02M)、乳酸(lactic acid)(90%)(0.05M)、酵母エキス(yeast extract)(Becton Dikinson))を濃度に合わせて入れて、1000mlとなるように蒸留水を満たして溶解させた後、オートクレーブ(autoclave)で滅菌した。製造された溶液は4℃で保管した。
【0117】
2)尿素/グルコース溶液(Urea/Glucose Solution)の製造
100mlフラスコに、各化合物(尿素(Urea)(6M)、D-グルコース(D-glucose)(0.01M))を濃度に合わせて入れて、100mlとなるように蒸留水を満たして溶解させた。これを0.22ミクロンのフィルタを用いて菌を除去した。製造後の溶液は4℃で保管した。
【0118】
3)カチオン性溶液(Cationic Solution)の製造
100mlフラスコに、各化合物(塩化マグネシウム(六水和物)(magnesium chloride(hexahydrate))(0.3M)、塩化カルシウム(無水物)(calcium chloride(dehydrate))(0.3M))を濃度に合わせて入れて、20mlとなるように蒸留水を満たして溶解させ、オートクレーブ(autoclave)で滅菌した。製造後の溶液は4℃で保管した。
【0119】
4)栄養分が含まれている人工尿
ストック溶液(Stock solution)94ml、尿素/グルコース溶液(urea/glucose solution)5ml、そして1mlのカチオン性溶液(cationic solution)を混合して製造した。製造後の溶液は4℃で保管し、製造日から7日以内に使用した。
【0120】
実施例または比較例の高吸水性樹脂2gを前記のバクテリアが2,500CFU/mlで接種された、栄養分を含有する前記の人工尿50mlに加え、1分間振って均等に混合されるようにした。これを35℃のオーブンで12時間培養した。12時間培養した後の人工尿を150mlの塩水でよく洗浄し、これを固体培地(Nutrient agar plate、Difco社)で35℃のインキュベータで24時間培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定した[CFU(12h)]。
【0121】
このような各測定結果を下記式1で表されるバクテリア(Escherichia Coli;ATCC25922)増殖率で算出して、これを基づいて各実施例および比較例のバクテリア増殖抑制特性を評価した:
【0122】
[式1]
バクテリア抑制率=[1-{CFU(12h)/CFUcontrol(12h)}]×100(%)
【0123】
上記式1中、CFU(12h)は、栄養分が含有された人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)2,500CFU/mlを接種した後、実施例または比較例の高吸水性樹脂2gを加えた後、35℃で12時間培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示し、CFUcontrol(12h)は、前記高吸水性樹脂の代わりにナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩(sodium diethyldithiocarbamate)を含む添加剤を使用せずに製造された高吸水性樹脂(比較例1)を用い、前記栄養分が含有された人工尿50mlにバクテリア(Escherichia Coli、ATCC25922)2,500CFU/mlを接種し、同一の条件で培養させた時、増殖されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)、つまり、前記対照群に対して測定されたバクテリアの単位人工尿体積あたりの個体数(CFU/ml)を示す。
【0124】
(2)保水能(CRC、Centrifugal Retention Capacity)
欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.2により、吸水性樹脂に対して、無荷重下吸水倍率による保水能を測定した。高吸水性樹脂W(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後に、常温に0.9重量%の生理食塩水に浸水した。30分後に封筒を遠心分離機を用い、250Gで3分間水気を切った後に、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同一の操作をした後に、その時の質量W(g)を測定した。
【0125】
このように得られた各質量を用いて、次の式2によりCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
【0126】
[式2]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0127】
上記式2中、
(g)は、吸水性樹脂の重量(g)であり、
(g)は、吸水性樹脂を用いず、遠心分離機を用いて、250Gで3分間脱水した後に測定した装置の重量であり、
(g)は、常温に0.9重量%の生理食塩水に吸水性樹脂を30分間浸水した後に、遠心分離機を用いて、250Gで3分間脱水した後に、吸水性樹脂を含んで測定した装置の重量である。
【0128】
(3)加圧吸水能(AUP、Absorption under Pressure)
欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association)規格EDANA WSP242.2の方法により加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)を測定した。
【0129】
まず、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400meshの金網を装着させた。常温、湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W(g、0.90g)を均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストン(piston)は、外径が60mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0130】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmで厚さ5mmのガラスフィルタを置き、0.90重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルとなるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収した。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0131】
このように得られた各質量を用いて、次の式3によりAUP(g/g)を算出して加圧吸水能を確認した。
【0132】
[式3]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0133】
上記式3中、
(g)は、吸水性樹脂の重量(g)であり、
(g)は、吸水性樹脂の重量および前記吸水性樹脂に荷重を付与できる装置の重量の総和であり、
(g)は、荷重(0.7psi)下で1時間前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分が吸収された吸水性樹脂の重量および前記吸水性樹脂に荷重を付与できる装置の重量の総和である。
【0134】
(4)GPUP(Gel Permeability Under Pressure)
実施例および比較例の高吸水性樹脂を、0.3psiの加圧下、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に1時間膨潤させた後、前記生理食塩水を前記高吸水性樹脂に流した時、最初の滴が落ちる時点から5分間流れる流量でGPUPを測定した。具体的な測定方法/条件は、次のようにした。
【0135】
まず、内径60mmのプラスチックシリンダの円筒底にステンレス製400meshの金網を装着させた。その上に2.1kPa(0.3psi)の荷重を均一にさらに付与できる外径60mmより若干小さいピストンを円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないように設け、高さを測定した(t0)。シリンダに高吸水性樹脂(約1.8±0.05g)を均一に塗布し、ピストンを上げた後、直径200mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置き、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面から5mm程度高めに入れて、荷重下で1時間高吸水性樹脂に吸収/膨潤させた。以後、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水を流し、最初の一滴が膨潤した高吸水性樹脂ゲルを通過した後の時点から5分間通過した生理食塩水の重量を測定した(F)。5分間の生理食塩水通過時間後の測定装置の高さ(t1)を測定した。このような測定結果から、下記式4および5によりGPUPを算出した:
【0136】
[式4]
K(10-7s/g)=(F×t/ρ×A×P)
【0137】
=時間あたりのゲルを通過した生理食塩水の重量(g/s)
t(cm)=高吸水性樹脂ゲルの厚さ(t1-t0)/10
ρ=生理食塩水の密度(~1g/cm
A=シリンダ面積、28.27cm
P=静水圧、4920dyn/cm
【0138】
[式5]
GPUP(10-13)=(K×η×10/10000)×1000000
【0139】
η=生理食塩水の粘度(~0.0009[Pa.s])
【0140】
【表1】
【0141】
前記表1のナトリウムジエチルジチオカルバミン酸塩の含有量は、ベース樹脂100重量部を基準としたものである。
【0142】
前記表1を参照すれば、実施例の高吸水性樹脂は、比較例1と同等水準の保水能、加圧吸水能などの基本的な吸水特性を優れた水準に維持しながらも、バクテリア増殖抑制特性に優れていることを確認することができた。これによって優れた消臭特性を有することが期待される。
【国際調査報告】