(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】干渉形状計測用の測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230315BHJP
G01B 9/02055 20220101ALI20230315BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/02055
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544202
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2021050975
(87)【国際公開番号】W WO2021148363
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102020200628.8
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン へッツラー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ドレハー
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064BB03
2F064CC04
2F064DD00
2F064EE05
2F064FF01
2F064GG02
2F064GG12
2F064GG52
2F064GG64
2F064HH03
2F065AA45
2F065AA53
2F065AA54
2F065BB05
2F065DD03
2F065EE00
2F065FF52
2F065GG04
2F065JJ03
2F065LL42
2F065MM16
2F065NN05
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】測定精度が高く、かつ所要時間が短縮される干渉形状計測を可能とする測定装置及び較正方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る試験対象物(14)の表面(12)を干渉形状計測するための測定装置(10)は、測定放射波(18)から試験対象物の表面上に照射する試験波(28)を生成するよう構成された試験光学ユニット(26;226‐1,226‐2)と、測定放射波(18)から生成されると共に、試験対象物の表面と相互作用した後の試験波と重ね合わることによってインターフェログラムを生成する参照波(30,30r)と相互作用する、光学有効面(33;233)を有する参照素子(32;232)と、参照素子を保持すると共に、その参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で参照波に対して移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点が光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成された、保持装置(48;148)と、を備え、少なくとも2つの剛体自由度は、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して横方向に向けられる並進自由度と、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して回転軸線が実質的に平行に向けられる回転自由度とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置であって、
・測定放射波から前記試験対象物の前記表面上に照射する試験波を生成するよう構成された、試験光学ユニットと、
・前記測定放射波から生成されると共に、前記試験対象物の前記表面と相互作用した後の前記試験波と重ね合わることによってインターフェログラムを生成する参照波と相互作用する、光学有効面を有する参照素子と、
・前記参照素子を保持すると共に、該参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で前記参照波に対して移動させることにより、前記参照素子における前記光学有効面の周辺点が前記光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成された、保持装置と、
を備え、
前記少なくとも2つの剛体自由度は、前記参照素子から放射される前記参照波の伝播方向に対して横方向に向けられる並進自由度と、前記参照素子から放射される前記参照波の伝播方向に対して回転軸線が実質的に平行に向けられる回転自由度とを含む、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、前記保持装置は、前記参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で移動させることにより、前記参照素子における前記光学有効面の前記周辺点がそれぞれの場合に前記光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成されている、測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、前記参照素子が移動可能な前記剛体自由度は、2つの並進自由度を含む、測定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の測定装置であって、前記少なくとも2つの剛体自由度は、少なくとも1つの回転自由度を含み、該少なくとも1つの回転自由度の回転軸線は、前記参照素子によって放射される前記参照波の伝播方向に対して横方向に向けられている、測定装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の測定装置であって、前記少なくとも2つの剛体自由度は、少なくとも2つの回転自由度を含む、測定装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の測定装置であって、前記保持装置は、前記参照素子を前記少なくとも2つの剛体自由度で移動させるための複数のアクチュエータを含む、測定装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の測定装置であって、フィゾー素子を有するフィゾー干渉計を含み、前記参照素子は、前記フィゾー素子である、測定装置。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の測定装置であって、前記試験光学ユニットは、入射する前記測定放射波を前記試験波及び前記参照波に分割するための回折光学素子を含み、前記参照素子は、前記参照波のビーム経路に配置されている、測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の測定装置であって、前記参照素子は、ミラーの形態で構成されている、測定装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の測定装置であって、マイクロリソグラフィ光学素子の表面を干渉形状計測するよう構成されている、測定装置。
【請求項11】
試験対象物の表面を干渉形状計測する測定装置を較正するための方法であって、前記測定装置は、前記試験対象物の前記表面と相互作用した後の試験波を、参照素子と相互作用した後の参照波と重ね合わせることによってインターフェログラムを生成するよう構成され、前記方法は、
・前記参照素子を、前記参照波に対して別々の較正位置に配置するステップであって、前記別々の較正位置は、少なくとも2つの剛体自由度での動きにより異なる、該ステップと、
・前記異なる較正位置で生成されたインターフェログラムを記録するステップと、
・前記記録したインターフェログラムを評価することにより、前記参照波の波面に対する前記参照素子の光学効果と意図された効果との間の逸脱に基づいて、較正偏差を確認するステップと、
を含み、
前記少なくとも2つの剛体自由度は、前記参照素子から放射される前記参照波の伝播方向に対して横方向に向けられる並進自由度と、前記参照素子から放射される前記参照波の伝播方向に対して回転軸線が実質的に平行に向けられる回転自由度とを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記試験対象物を、マイクロリソグラフィ光学素子として構成する、方法。
【請求項13】
試験対象物の表面を干渉形状計測するための方法であって、
・請求項11又は12に記載の方法により、測定装置における較正偏差を判定するステップと、
・ある測定位置において、前記試験対象物の前記表面と相互作用した後の試験波を、参照素子と相互作用した後の参照波と重ね合わせることにより、前記測定装置で測定インターフェログラムを記録するステップと、
・較正偏差を考慮しつつ、前記測定インターフェログラムを評価することにより、前記試験対象物の表面形状を判定するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年1月21付の独国特許出願第10 2020 200 628.8号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容の全体が参照により本願明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置、そのような測定装置を較正するための方法、並びに上述した表面を干渉形状計測するための方法に関する。試験対象物としては、例えば、マイクロリソグラフィ光学素子が測定される。構造をより小型化する必要性により、マイクロリソグラフィで使用される光学素子の光学特性に対する要求がこれまで以上に高まっている。従って、これら光学素子の光学面形状を可及的に高精度で判定する必要がある。
【背景技術】
【0003】
光学面をサブナノメートル領域まで高精度で干渉測定するために、回折光学素子が入力波から試験波及び参照波を生成する干渉測定装置及び方法が既知である。試験波の波面は、回折光学素子により、目標(ターゲット)形状上の全ての位置に対して実質的に垂直に入射すると共にその目標形状から自身に向けて反射するよう、試験対象物の目標面に適合させることができる。次いで、反射した試験波を参照波と重ね合わせることによって形成されるインターフェログラムに基づいて、目標形状からの偏差を判定することができる。
【0004】
特許文献1(米国特許出願公開第2015/0198438号明細書)においては、参照波を生成するための参照素子としてフィゾー素子を備えるそのような干渉測定装置が記載されている。特許文献2(米国特許出願公開第2018/0106591号明細書)においては、導入部に記載された測定装置の代替的な実施形態が記載されている。この場合、複合符号化された計算機合成ホログラム(CGH)が回折光学素子として使用される。このCGHは、入力波から、測定すべき表面に向けられると共に光学面の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する試験波と、独自の参照アームに放射される平面参照波とを生成する。この場合、参照波は、反射光学参照素子によってCGHに反射される。
【0005】
CGHは更に、入力波から、平面波面を有する較正波と、球面波面を有する較正波とを生成する。較正波は、平面較正ミラー及び球面較正ミラーによって自身に向けて反射される。CGHは、較正波の助けによって較正される。これにより、例えば、CGHの変形又はCGHの歪みなどの局所的な位置変化が補正され、従って測定誤差を低減することができる。
【0006】
高精度な測定を保証するために、参照素子の形状誤差も干渉計を使用して測定され、これにより試験対象物の形状の測定結果から形状誤差が計算で除去される。これは従来、付加的な較正光学ユニット及び/又は付加的な較正プレートを必要とする。参照素子としてフィゾー素子を備える上述した測定装置の場合、試験波のビーム経路に試験対象物の代わりに付加的な較正プレートを配置し、参照素子を較正するための機構によって較正プレートを移動又は傾斜させることができる。
【0007】
しかしながら、そのためには、先ず試験対象物を取り外さなくてはならず、測定方法に要する時間が大幅に増加する。独自の参照アームを有する上述した実施形態で想定可能なように、付加的な較正光学ユニット又は付加的な較正プレートが試験波又は参照波のビーム経路の異なる位置に配置される場合であっても、試験対象物の取り外し又は少なくともシャドウイングが必要である。
【0008】
参照素子の較正及び試験対象物の測定は、測定装置の構造を変更しなければならないことに起因して著しく異なる時点で行われるため、較正結果は、例えば熱ドリフトに起因し、試験対象物を測定する時点において、参照素子の表面形状をもはや正確に反映しない可能性があり、従ってやはり測定精度の低下につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0198438号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0106591号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述した問題点を解決する測定装置及び較正方法、特に、測定精度が高く、かつ所要時間が短縮される干渉形状計測を可能とする測定装置及び較正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、例えば、試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置により解決することができる。本発明に係る測定装置は、測定放射波から試験対象物の表面上に照射する試験波を生成するよう構成された試験光学ユニットと、やはり測定放射波から生成されると共に、試験対象物の表面と相互作用した後の試験波と重ね合わることによってインターフェログラムを生成する参照波と相互作用する、光学有効面を有する参照素子と、参照素子を保持すると共に、その参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で参照波に対して移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点が光学有効面の直径の少なくとも0.1%、特に少なくとも0.5%又は少なくとも1%だけシフトするよう構成された保持装置とを備える。少なくとも2つの剛体自由度は、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して横方向に向けられる並進自由度と、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して回転軸線が実質的に平行に向けられる回転自由度とを含む。
【0012】
保持装置は、参照素子を、放射された参照波に対してのみならず、特に試験光学ユニットに対しても移動させるよう構成されている。剛体自由度とは、並進自由度又は回転自由度を意味すると理解される。
【0013】
参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で移動させるよう構成された保持装置により、独自の較正光学ユニット又は較正プレートを設置することによって、及び/又は、試験対象物を試験波のビーム経路における測定位置から取り外すか又は試験対象物をシャドウイングすることによって、測定装置の構造を変更する必要なく参照素子を較正することができる。換言すれば、本発明に係る保持装置は、参照素子を異なる較正位置に移動させると共に、参照素子と相互作用した後の参照波を、試験対象物と相互作用した後の試験波を重ね合わせることによって生成される対応のインターフェログラムを記録することにより、参照素子の「in-situ較正」、即ち測定装置の構造を変更する必要なく参照素子の較正を行うことを可能にする。参照素子の異なる較正位置で生成されたインターフェログラムを評価することにより、試験対象物における表面形状の測定結果から、参照素子の表面誤差を計算で除去することが可能である。参照素子の「in-situ」又は試験対象物の設置位置での較正により、(参照素子の較正を含む)試験対象物の干渉測定法に必要な時間が短縮されるのみならず、参照素子の較正と試験対象物の形状測定との間の迅速な連続性により、形状測定の測定精度が高まる。
【0014】
参照素子によって放射される参照波の伝播方向に対する回転自由度における回転軸線の実質的に平行な配置は、完全に平行な配置から最大で±10°だけ逸脱する配置を意味すると理解される。
【0015】
一実施形態によれば、測定装置は、記録したインターフェログラムを評価することにより、参照波の波面に対する参照素子の光学効果と意図された効果との間の逸脱に基づいて、参照素子の較正偏差を確認するための評価装置を備える。
【0016】
本発明に係る保持装置のおかげで、参照素子を較正するのに試験対象物を取り外す必要がないため、較正と試験対象物の測定との間の時間間隔を短縮することが可能であり、これにより試験対象物の形状を測定する際に較正結果がより最新であり、従って測定精度が高まる。更に、干渉測定に要する時間が短縮される。
【0017】
参照素子が移動可能な剛体自由度は、記載された並進自由度と、記載された回転自由度を含むため、回転・シフト較正により、参照素子の絶対較正が可能になる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、保持装置は、参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点がそれぞれの場合に光学有効面の直径の少なくとも0.1%、特に少なくとも0.5%又は少なくとも1%だけシフトするよう構成されている。
【0019】
一実施形態によれば、参照素子が移動可能な剛体自由度は、2つの並進自由度を含む。これにより、シフト・シフト較正による参照素子の絶対較正が可能になる。この実施形態によれば、保持装置は、参照素子を参照波に対して少なくとも3つの剛体自由度、特に少なくとも4つの自由度又は少なくとも5つの自由度で移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点が光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成されている。
【0020】
特に、両方の並進自由度は、参照素子によって放射される参照波の伝播方向に対して横方向に向けられている。
【0021】
更なる実施形態によれば、少なくとも2つの剛体自由度は、少なくとも1つの回転自由度を含み、その少なくとも1つの回転自由度の回転軸線は、参照素子によって放射される参照波の伝播方向に対して横方向、特に垂直に向けられている。この実施形態によれば、保持装置は、参照素子を参照波に対して少なくとも3つの剛体自由度、特に少なくとも4つの自由度又は少なくとも5つの自由度で移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点が光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成されている。特に、互いに横方向、とりわけ互いに垂直な2つの回転自由度が提供される。一実施形態において、参照素子は、球面形状を有するのが好適である。
【0022】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つの剛体自由度は、2つの回転自由度を含む。これは、例えば、参照素子によって放射される参照波の伝播方向に実質的に平行に向けられた回転軸線を有する1つの回転自由度と、その伝播方向に対して横方向に向けられた回転軸線を有する1つの回転自由度との組み合わせ、又はその伝播方向に対してそれぞれ横方向に向けられた回転軸線を有する2つの回転自由度を含むことができる。この実施形態によれば、保持装置は、参照素子を参照波に対して少なくとも3つの剛体自由度、特に少なくとも4つの自由度又は少なくとも5つの自由度で移動させることにより、参照素子における光学有効面の周辺点が光学有効面の直径の少なくとも0.1%だけシフトするよう構成されている。
【0023】
更なる実施形態によれば、保持装置は、参照素子を少なくとも2つの剛体自由度で移動させるための複数のアクチュエータを含む。並進自由度に沿って移動させるために、例えば、リニア駆動装置を使用することができる。アクチェータの代案として、1個以上の手動調整モジュールを使用してもよい。
【0024】
更なる実施形態によれば、測定装置は、フィゾー素子を有するフィゾー干渉計を含み、その参照素子は、フィゾー素子である。
【0025】
代替的な実施形態によれば、試験光学ユニットは、入射する測定放射波を試験波及び参照波に分割するための回折光学素子を含み、参照素子は、参照波のビーム経路に配置されている。一実施形態の変形例によれば、参照素子は、ミラーとして構成されている。換言すれば、参照素子は、参照アームを有する干渉計の参照ミラーとして構成されている。参照波は、参照アーム内を進行する。参照アームは、試験波が進行する試験アームとは異なる方向を有する。代替的に、参照素子は、レンズ素子として構成することもでき、そのレンズ素子は、例えば、レンズ素子及び関連するミラーで構成される反射モジュールの一部である。
【0026】
更なる実施形態によれば、測定装置は、マイクロリソグラフィ光学素子の表面を干渉形状計測するよう構成されている。特に、光学素子は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のレンズ素子又はミラーなどの光学素子、とりわけそのような投影露光装置の投影レンズである。一実施形態によれば、光学素子は、EUVマイクロリソグラフィ用に構成されている。
【0027】
更に、上述した課題は、例えば、試験対象物の表面を干渉形状計測する測定装置を較正するための方法により解決することができる。この測定装置は、試験対象物の表面と相互作用した後の試験波を、参照素子と相互作用した後の参照波と重ね合わせることによってインターフェログラムを生成するよう構成されている。この方法は、参照素子を、参照波に対して別々の較正位置に配置するステップであって、別々の較正位置は、少なくとも2つの剛体自由度での動きにより異なる該ステップと、異なる較正位置で生成されたインターフェログラムを記録するステップと、記録したインターフェログラムを評価することにより、参照波の波面に対する参照素子の光学効果と意図された効果との間の逸脱に基づいて、較正偏差を確認するステップとを含む。少なくとも2つの剛体自由度は、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して横方向に向けられる並進自由度と、参照素子から放射される参照波の伝播方向に対して回転軸線が実質的に平行に向けられる回転自由度とを含む。
【0028】
本発明における較正方法の更なる実施形態において、試験対象物は、マイクロリソグラフィ光学素子として構成されている。特に、光学素子は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のレンズ素子又はミラーなどの光学素子、とりわけそのような投影露光装置の投影レンズである。一実施形態によれば、光学素子は、EUVマイクロリソグラフィ用に構成されている。
【0029】
本発明に係る測定装置の上述した実施形態、例示的な実施形態、並びに実施形態の変形例などは、本発明に係る較正方法に対応するよう適用することができる。本発明に係る実施形態のこれら特徴及び他の特徴は、図面の説明及び特許請求の範囲に説明する。個々の特徴は、別々に又は組み合わせて実現することができる。これら特徴は、独立的に保護可能であると共に、出願の係属中又は係属後にのみ、適切であれば保護が主張される有利な実施形態を記述することができる。
【0030】
更に、本発明によれば、試験対象物の表面を干渉形状計測するための方法が提供される。この方法は、上述した実施形態又は実施形態の変形例の1つに係る方法により、測定装置における較正偏差を判定するステップを含む。この方法は更に、ある測定位置において、試験対象物の表面と相互作用した後の試験波を、参照素子と相互作用した後の参照波と重ね合わせることにより、測定装置で測定インターフェログラムを記録するステップと、較正偏差を考慮しつつ、測定インターフェログラムを評価することにより、試験対象物の表面形状を判定するステップとを含む。
【0031】
この場合、参照素子の測定位置は、較正位置の1つと一致可能であり、従って較正インターフェログラムの1つを測定インターフェログラムとして使用することも可能である。
【0032】
本発明に係る上記の特徴及び更なる有利な特徴は、以下において、添付の概略図を参照しつつ、本発明に係る例示的な実施形態の詳細な説明で示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ミラーの形態の参照素子を保持するための本発明に係る第1実施形態の保持装置を備える、試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置の第1実施形態を示す説明図である。
【
図2】フィゾー素子の形態の参照素子を保持するための本発明に係る第1実施形態の保持装置を備える、試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置の更なる実施形態を示す説明図である。
【
図3】
図1又は
図2に係る保持装置の実施形態を示す断面図である。
【
図4】保持装置の更なる実施形態を示す説明図である。
【
図5】本発明に係る保持装置の更なる実施形態を備える、試験対象物の表面を干渉形状計測するための測定装置の更なる実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に説明する例示的な実施形態又は実施形態又は実施形態の変形例において、機能的又は構造的に互いに類似する要素(素子)には、可能な限り同じ又は類似の参照符号が付されている。従って、特定の例示的な実施形態における個々の要素の特徴を理解するために、他の例示的な実施形態の説明又は本発明の一般的な説明を参照するのが望ましい。
【0035】
説明を容易にするために、図面にはデカルトxyz座標系が示され、その座標系から図面における構成要素のそれぞれの位置関係が明らかである。
図1において、x方向は図面の平面に対して垂直に描かれ、y方向は斜め右上に向けて描かれ、z方向は斜め左上に向けて描かれている。
【0036】
図1は、試験対象物14の光学面12を干渉形状計測するための測定装置10の例示的な実施形態を示す。測定装置10は、特に、目標形状からの、表面12の実際形状の偏差を判定するのに使用することができる。試験対象物14としては、例えば、100 nm未満の波長、特に約13.5 nm又は約6.8 nmの波長のEUV放射波を反射するための非球面を有するEUVマイクロリソグラフィ用投影レンズのミラーを設けることができる。ミラーの非球面は、例えば、各回転対称非球面から5 μmを超える偏差と、各球面から少なくとも1 mmの偏差とを含む自由曲面を有することができる。
【0037】
測定装置10は、入力波として十分にコヒーレントな測定放射波18を提供するための放射源16を備える。図示の例示的な実施形態において、放射源16は、入力波が放射される出口面を含む導波路20を有する。導波路20は、例えば、レーザーの形態の放射波発生モジュール22に接続されている。この目的のために、例えば、約633 nmの波長を有するヘリウム‐ネオンレーザーを提供することができる。ただし、測定放射波18は、電磁放射波の可視又は非可視波長範囲における異なる波長を有してもよい。導波路20を有する放射源16は、測定装置に使用可能な放射源16の単なる一例を示すに過ぎない。代替的な実施形態においては、測定放射波18から適切な入力を提供するために、導波路20の代わりに、レンズ素子、ミラー素子などを有する光学装置を設けることができる。
【0038】
測定放射波18は、最初にビームスプリッタ24を通過し、その後に回折光学素子26に入射する。回折光学素子26は、試験光学ユニットを形成しており、その試験光学ユニットは、試験対象物14の表面12を照射するための試験波28を生成するよう機能する。試験波28に加えて、試験光学ユニットの回折光学素子26は、入射した測定放射波18から、独自の参照アームに放射される参照波30を生成する。
【0039】
更に、測定装置10は、反射光学素子として設計された参照素子32を備え、その参照素子32は、参照波30を反射させて反射参照波30rにするための反射面33の形態の光学有効面を有する。代替的な実施形態によれば、参照素子は、ミラーと協働して反射参照波36rを生成するレンズ素子として構成してもよい。レンズ素子の場合、光学有効面は、参照波30と相互作用するレンズ素子面を意味すると理解される。
【0040】
回折光学素子26は、複合符号化されたCGHの形態で設計されると共に、
図1の実施形態によれば、平面内で互いに重ね合わせて配置される2つの回折構造パターンを形成する回折構造34を含む。従って、回折光学素子30は、二重複合符号化された計算機合成ホログラム(CGH)とも称される。代替的に、回折構造は、較正波を更に生成するために、平面内で互いに重ね合わせて配置される2つを超える回折構造パターン、例えば互いに重ね合わせて配置される5つの回折構造パターンを有してもよい。更に、試験波28を生成するための試験光学ユニットは、2個以上の回折光学素子、例えば順次に配置された2個の回折光学素子で構成することもできる。
【0041】
図1に係る回折光学素子26における2つの回折構造パターンは、例えば、ボトム格子の形態の第1構造パターン、並びにトップ格子の形態の第2回折構造パターンによって形成することができる。回折構造パターンのうちの一方は、試験波28を生成するよう構成され、その試験波28は、試験対象物14に向けられると共に、光学面12の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する。試験波28は、試験対象物14の光学面で反射し、反射(戻り)試験波28rとして回折光学素子26に戻る。光学面12の目標形状に適合された波面により、試験波34は、光学面12上の全ての位置に対して実質的に垂直に入射し、自身に向けて反射する。
【0042】
他方の回折構造パターンは、参照波30を生成し、その参照波30は、参照素子32に向けられると共に、平面波面を有する。代替の例示的な実施形態においては、複合符号化されたCGHの代わりに、回折構造又は他の光学格子を有する単純符号化されたCGHを使用してもよい。この場合、試験波28は、回折構造において、例えば、一次回折で生成することができ、参照波30は、ゼロ又は他の任意の回折次数で生成することができる。
【0043】
図示の実施形態における参照素子32は、平面波面を有する参照波30を逆反射するために平面ミラーの形態で設計されている。以下に
図5を参照して説明する他の実施形態において、参照波30は、球面波面を有することができ、参照素子32は、球面ミラーとして設計することができる。
【0044】
表面12から戻ってきた試験波28rは、回折光学素子26を再び通過し、その過程で再び回折される。この場合、反射試験波28rは、ほぼ球面波に再び変換され、その波面は、試験対象物における表面12の目標形状からの偏差により、球面波面に対して対応する偏差を有する。
【0045】
参照素子32の参照面によって反射した反射(戻り)参照波30rも、回折光学素子26を再び通過し、その過程で再び回折される。この場合、反射参照波30rは、ほぼ球面波に再び変換される。平面波面を有する入力波を生成するために回折光学素子26に放射される測定放射波18のビーム経路にコリメータを含む代替的な実施形態において、反射参照波30rの波面は、回折光学素子30によって適合される必要はない。
【0046】
従って、回折光学素子26は、反射試験波28rを反射参照波30rと重ね合わせる機能も果たしている。更に、測定装置10は、反射試験波28r及び反射参照波30rの組み合わせを測定放射波18のビーム経路外にガイドするための上述したビームスプリッタ24を有する捕捉装置36と、試験波28rを参照波30rと重ね合わせることによって生成されるインターフェログラムを捕捉するための観測ユニット38とを備える。
【0047】
反射試験波28r及び反射参照波30rは、収束ビームとしてビームスプリッタ24に入射し、そのビームスプリッタによって観測ユニット38方向に反射される。両方の収束ビームは、観測ユニット38の絞り(ストップ)40及び接眼レンズ42を通過し、最終的に観測ユニット38の二次元解像検出器44に入射する。検出器44は、例えばCCDとして設計することができ、干渉波によって生成されたインターフェログラムを捕捉する。
【0048】
更に、測定装置10は、捕捉されたインターフェログラム又は複数のインターフェログラムから試験対象物14における光学面12の実際形状を判定するための評価装置46を備える。この目的のために、評価装置は、適切なデータ処理ユニットを有すると共に、当業者に知られている対応の計算方法を使用する。代替的又は付加的に、測定装置10は、データメモリ又はネットワークとのインターフェースを有することができ、記憶されたインターフェログラム又はネットワークを介して伝送されたインターフェログラムを使用し外部評価ユニットによって表面形状を判定することが可能である。評価ユニットは、表面形状を判定する際に、以下に詳細に説明するように、参照素子32の較正結果を参照素子32の較正偏差という形で考慮する。
【0049】
上述した参照素子32の較正は、反射面33の形状誤差、即ち図示の実施形態においては、完全な平面からの反射面33の偏差を測定するよう機能する。本発明に係る実施形態によれば、この測定は、試験対象物14を
図1に示す試験位置から取り外すことなく行われる。換言すれば、この較正測定は、適用される測定に関して「in-situ較正」であり、その測定においては、試験対象物14から反射された試験波28rを反射参照波と重ね合わせることによって形成された複数のインターフェログラムが記録及び評価される。
【0050】
異なるインターフェログラムに関して、参照素子32は、別々の較正位置に配置され、その別々の較正位置は、少なくとも1つの剛体自由度、特に2つ又は3つの剛体自由度での(保持装置48による)参照素子32の動きにより異なる。参照素子32の異なる較正位置で測定されたインターフェログラムを比較することにより、反射面33の目標形状、特に完全な平面からの偏差を判定することができる。
【0051】
図1の実施形態において、測定装置10は、参照素子32を保持するための保持装置48を備え、その保持装置48は、参照素子32を並進自由度及び回転自由度で異なる較正位置に配置及び移動させるよう構成されている。これにより、いわゆる「回転・シフト較正」が可能である。
【0052】
図1において両矢印50で示す並進自由度は、y方向にシフトする能力、従って参照素子32によってz方向に放射される参照波30rの伝播方向に対して横方向にシフトする能力のことである。
図1において湾曲した両矢印で示す回転自由度は、回転軸線54を有し、z方向、従って参照波30rの伝播方向に対して平行に配置されている。
【0053】
図3は、
図1の線III‐IIIに沿った保持装置48及び参照素子32を通る断面図を示す。この図から分かるように、試験対象物14は、保持装置48の内側保持リング56に取り付けられている。内側保持リング56は、外側保持リング58内に回転可能に支持されている。回転運動は、回転アクチュエータ(図示せず)又は手動で行うことができる。外側保持リング58は、参照素子32をy方向にシフトさせるために、互いに対向する2つの側からリニア駆動装置の形態のyアクチュエータ60に接続されている。代替的に、外側保持リング58は、手動調整装置によってy方向にシフトさせてもよい。
【0054】
回転軸線54に関する上述した回転自由度は、内側保持リング56の回転支持によって実現される。参照素子32の回転位置の調整可能性は、少なくとも2 mrad、特に少なくとも10 mrad又は少なくとも20 mradである。回転位置が2 mradだけ変化すると、参照素子32における反射面33の周辺点Pは、反射面33の直径dの少なくとも0.1%だけシフトする(Δ1に亘るシフト参照(シフトされた点PはP'1で表されている))。
【0055】
yアクチュエータ60による参照素子32のy位置における調整可能性は、反射面33の直径dの少なくとも0.1%、特に少なくとも0.5%又は少なくとも1%である(Δ2に亘る点Pのシフト参照(シフトされた点PはP'2で表されている))。反射面33の例示的な直径dの場合、周辺点Pは、直径の0.1%に亘る並進で0.1 mmだけシフトする。
【0056】
図4は、
図1における測定装置10の保持装置48の代わりに使用可能な、保持装置の更なる実施形態148の断面図を示す。保持装置148は、参照素子22によって放射される参照波30rの伝播方向に対して横方向に向けられた2つの並進自由度、即ち
図4における座標系のx方向及びy方向に参照素子32をシフトさせるよう構成されている。これにより、いわゆる「シフト・シフト較正」が可能である。
【0057】
この目的のために、保持装置148は、2個のyアクチュエータ60を有し、これにより、両矢印50で示すように、参照素子32をy方向にシフトさせることができる。保持装置は更に、2個のxアクチュエータ62を有し、そのxアクチュエータは、両矢印64で示すように、yアクチュエータ60及び参照素子32の配置全体をx方向にシフトさせるよう構成されている。
【0058】
保持装置148のyアクチュエータ60による参照素子32のx位置及びy位置の両方の調整可能性は、それぞれ、反射面33の直径dの少なくとも0.1%、特に少なくとも0.5%又は少なくとも1%である(Δ
1又はΔ
2に亘る点Pのx又はy方向へのシフト参照(シフトされた点Pは、それぞれ、P'
1又はP'
2で表されている))。更なる実施形態によれば、保持装置48は、保持装置148と組み合わせ可能であり、これにより結果として得られる保持装置は、参照素子32をx方向及びy方向にシフトさせることができるのみならず、回転軸線54に関して回転させることができる。
図2は、試験対象物14における光学面12の形状を干渉計的に判定するための測定装置10の更なる実施形態を示す。
図2に係る測定装置10は、反射光学素子として設計された参照素子32の代わりに、フィゾー素子の形態の参照素子232が設けられている点で
図1に係る測定装置10と異なる。フィゾー素子は、
図1に係る回折光学素子26の代わりに、測定放射波から参照波30を生成するよう機能する。
【0059】
コリメータ226‐1及び場合によって回折光学素子226‐2は、
図2に係る測定装置10において試験波28を生成するための試験光学ユニットとして機能する。試験対象物における表面12の目標形状が平面形状又は球面形状から僅かにのみ逸脱している場合、コリメータ226‐1のみを使用することができる。より大きな偏差の場合、例えば目標形状が自由曲面として構成される場合、回折光学素子226‐2は、試験光学ユニットにおいて、コリメータ226‐1に加えて、又は代替として使用される。
【0060】
フィゾー素子として構成された参照素子232は、入射する測定放射波18のビーム経路において、コリメータ226‐1の下流及び場合によって使用される回折光学素子226‐2の上流に配置されると共に、入射する測定放射波18の一部が戻り参照波30rとして反射されるフィゾー面233を有する。このように、
図2に係る測定装置10は、フィゾー干渉計として構成されている。
【0061】
参照素子232は、
図1及び
図3を参照して上述した保持装置48に取り付けられている。代替的に、
図4を参照して説明した保持装置148、又は
図3及び
図4に係る保持装置48,148の組み合わせを使用してもよい。これにより、参照素子232は、別々の較正位置に配置することができ、その別々の較正位置は、少なくとも1つの剛体自由度、特に2つ又は3つの剛体自由度での参照素子232の動きにより異なる。
【0062】
図2に係る測定装置10の作動モードは、
図1に係る測定装置10の上述した作動モードに類似している。即ち、反射参照波30rを反射試験波28rと重ね合わせることによって検出器44で生成された1つ以上のインターフェログラムが、参照素子232の較正偏差を考慮しつつ評価され、これにより試験対象物における光学面の実際形状が判定される。較正偏差は、フィゾー面233における実際形状の目標形状、特に平面形状からの偏差に関連する。較正においては、
図1に係る参照素子32を参照しつつ上述したように、参照素子232の複数の較正位置における、反射試験波28rと反射参照波30rとの重ね合わせによって生成されたインターフェログラムが評価される。
【0063】
図5は、干渉測定装置10の更なる実施形態を示す。
図5の測定装置は、
図1に係る測定装置10と比べて、平面波面の代わりに球面波面を有する参照波30を生成するための回折光学素子26の構成、参照波30の球面波面に適合された反射面33を有する参照素子32の構成、並びに参照素子32用の保持装置48の構成においてのみ異なる。保持装置48は、
図5に係る実施形態において参照符号248で表されている。
【0064】
保持装置248は、参照素子32を2つの回転自由度で移動させるよう構成されている。図示の第1回転自由度は、第1回転軸線254周りの回転運動266に関連し、その第1回転軸線254は、反射面33によって形成された球形セグメント又は球形参照波30の仮想原点の中心点270を通過する。
図5の実施形態において、第1回転軸線254は、図面の平面に対して垂直、即ちx方向に向けられている。第2回転自由度は、第2回転軸線256周りの回転運動268に関連し、その第2回転軸線は、やはり中心点270を通過すると共に、第1回転軸線254に対して垂直に向けられている(
図1におけるy方向)。回転軸線254,256の両方は、参照波30の伝播方向に対して垂直に向けられている。
【0065】
保持装置248は、回転運動266,268の実行中に、参照素子32をガイドするための球状ガイド面258を有する。球状ガイド面258は、点270を曲率中心として球形セクション260に沿って延びている。保持装置248は、回転軸線254,256に関する回転運動266,268をそれぞれ行うために、ガイド面258を有するモジュールに組み込まれたアクチュエータ262を含む。図示の実施形態において、アクチュエータ262は、参照素子32に沿って取り付けられたピン状引っ張り要素266を球形セクション260に沿って引っ張る。参照素子32の作動は、異なる構成のアクチュエータによって実現することも勿論可能である。
【0066】
図5に係る測定装置10の作動モードは、
図1に係る測定装置10の上述した作動モードに類似している。即ち、反射参照波30rを反射試験波28rと重ね合わせることによって検出器44で生成された1つ以上のインターフェログラムが、参照素子232の較正偏差を考慮しつつ評価され、これにより試験対象物における光学面の実際形状が判定される。
【0067】
較正偏差は、反射面33における実際形状の、球状目標形状からの偏差に関連する。較正においては、参照素子232の複数の較正位置における、反射試験波28rと反射参照波30rとの重ね合わせによって生成されたインターフェログラムが評価される。この場合、異なる較正位置は、回転軸線254又は回転軸線256周りで回転運動を行うことにより、又は両方の回転軸線254,256周りでそれぞれの回転運動を行うことにより設定される。回転軸線254,256のうちの少なくとも一方の周りにおける回転運動は、参照素子32における反射面33の周辺点が、反射面33の直径dの少なくとも0.1%だけシフトするよう行われる。更に、参照波30の放射方向に向けられた(
図1における回転軸線54と同様の)回転軸線周りで回転を行うことができる。
【0068】
更なる実施形態(図示せず)によれば、参照素子32は、上述した平面形状及び球面形状に加えて、並進対称性及び/又は回転対称性を含む他の種類の形状も有することができる。この場合、例えば、円柱、双曲面、又は回転対称非球面の形状が想定可能である。
【0069】
上述した例示的な実施形態、実施形態、又は実施形態の変形例は、例示として理解されるべきである。その開示は、一方では当業者が本発明及びその利点を理解することを可能にし、他方では当業者にとって自明であると共に、記載された構造及び方法の変更及び修正を包含する。従って、添付の特許請求の範囲の定義に従って本発明の範囲内にある限り、そのような変更及び修正の全て及び均等物は、特許請求の範囲の保護対象であることが意図されている。
【符号の説明】
【0070】
10 測定装置
12 光学面
14 試験対象物
16 放射源
18 測定放射波
20 導波路
22 放射波発生モジュール
24 ビームスプリッタ
26 回折光学素子
28 試験波
28r 反射(戻り)試験波
30 参照波
30r 反射(戻り)参照波
32 参照素子
33 反射面
34 回折構造
36 捕捉装置
38 観測ユニット
40 絞り(ストップ)
42 接眼レンズ
44 検出器
46 評価装置
48 保持装置
50 並進自由度
52 回転自由度
54 回転軸線
56 内側保持リング
58 外側保持リング
60 yアクチュエータ
62 xアクチュエータ
64 更なる並進自由度
148 保持装置
232 参照素子
233 フィゾー面
226‐1 コリメータ
226‐2 回折光学素子
248 保持装置
254 第1回転軸線
256 第2回転軸線
258 球状ガイド面
260 球形セクション
262 アクチュエータ
264 引っ張り要素
266 回転運動
268 回転運動
270 反射面の中心
【国際調査報告】