(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-28
(54)【発明の名称】PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを用いてネオエピトープ特異的T細胞を誘導する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230320BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230320BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230320BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230320BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230320BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230320BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230320BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230320BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230320BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230320BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230320BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K31/7105
A61P37/04
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/24
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545335
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 US2021015710
(87)【国際公開番号】W WO2021155149
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519258736
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー, ラルス
(72)【発明者】
【氏名】サバド, レイチェル ルボン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダヴ, マヘーシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チンピン
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン, ウグル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD49
4C076DD63
4C085AA03
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB23
4C085CC23
4C085CC31
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、RNAワクチンを使用して、またはPD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせてRNAワクチンを使用して、個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法、または個体において腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法を提供する。ネオエピトープ特異的CD8+T細胞を個体において誘導する方法において使用するための、またはネオエピトープ特異的CD8+T細胞の腫瘍への輸送を個体において誘導するための、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンも本明細書で提供される。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、方法。
【請求項2】
前記末梢血試料が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的な約5%または約6%のCD8+T細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって前記末梢血試料中で検出される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記個体への前記RNAワクチンの投与が、前記RNAワクチンの投与前と比較して、前記個体の前記末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、前記ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、エクスビボELISPOT分析によって前記個体から得られた末梢血試料中で検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の個体への前記RNAワクチンの投与が、前記RNAワクチンの投与前と比較して、前記複数の個体の少なくとも約70%の前記末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、前記ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の前記誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって評価される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記個体への前記RNAワクチンの投与が、前記RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、前記個体の前記末梢血中の前記1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの前記上昇が、前記RNAワクチンの投与後約4~約6時間の間に前記個体の前記末梢血中に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の炎症性サイトカインが、IFNγ、IFNα、IL-12およびIL-6からなる群から選択される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記腫瘍に輸送された前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、方法。
【請求項11】
前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がメモリー表現型を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
メモリー表現型を有する前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(T
em)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エフェクターメモリーT細胞(T
em)がCD45ROポジティブおよびCCR7ネガティブである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記個体が、低~中程度の変異負荷を有する腫瘍を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記個体が低い腫瘍負荷を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍がPD-L1発現が低いかまたはネガティブである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞の5%未満がPD-L1を発現する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍から得られた試料中の免疫細胞の5%未満がPD-L1を発現する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞または免疫細胞の、PD-L1を発現するパーセンテージが、免疫組織化学を用いて決定される、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記RNAワクチンの投与が、前記個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記個体が、局所進行型もしくは転移性の固形腫瘍を有するか、または1つ以上の転移性再発を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍が、非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍、膀胱腫瘍、腎腫瘍、頭頸部腫瘍、肉腫腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、肝臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、結腸腫瘍、腎臓腫瘍、子宮頸部腫瘍、メルケル細胞癌(MCC)腫瘍、子宮内膜腫瘍、軟部組織肉腫腫瘍、食道腫瘍、食道胃接合部腫瘍、骨肉腫腫瘍、甲状腺腫瘍または結腸直腸腫瘍である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記乳房腫瘍がトリプルネガティブ乳がん(TNBC)腫瘍である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍が尿路上皮腫瘍であり、複数の個体への前記RNAワクチンの投与が、前記複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍が腎腫瘍であり、複数の個体への前記RNAワクチンの投与が、前記複数の個体の少なくとも約22%において客観的奏効をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍が黒色腫腫瘍であり、複数の個体への前記RNAワクチンの投与が、前記複数の個体の少なくとも約30%において客観的奏効をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍がTNBC腫瘍であり、複数の個体への前記RNAワクチンの投与が、前記複数の個体の少なくとも約4%において客観的奏効をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍がNSCLC腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与が、前記複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記RNAワクチンの投与前に、前記個体が1つ以上のがん治療または3つから5つのがん治療で治療されている、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記RNAワクチンの投与前に、前記個体が約1つから約17個、または約1つから約9個の事前全身がん治療で治療されている、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記RNAワクチンの投与前に、前記個体がチェックポイント阻害剤治療で治療されている、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記RNAワクチンの投与前に、前記個体がチェックポイント阻害剤治療で治療されていない、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記RNAワクチンが、前記腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する10~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記RNAワクチンが、リポプレックスナノ粒子またはリポソームに製剤化されている、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記リポプレックスナノ粒子またはリポソームが、前記RNAワクチンのRNAをカプセル化する多層構造を形成する1つ以上の脂質を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の脂質が、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つのヘルパー脂質を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上の脂質が、(R)-N,N,N-トリメチル-2,3-ジオレイルオキシ-1-プロパンアミニウムクロリド(DOTMA)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
生理学的pHにおいて、前記リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比が1.3:2(0.65)である、請求項38に記載のリポソーム。
【請求項40】
前記RNAワクチンが、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で前記個体に投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記RNAワクチンが前記個体に静脈内投与される、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記RNAワクチンが、7日間または1週間の間隔で前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記RNAワクチンが、14日間または2週間の間隔で前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記RNAワクチンが、12週間または84日間、前記個体に投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記RNAワクチンが21日間サイクルで前記個体に投与され、前記RNAワクチンがサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
サイクル13の1日目およびその後24週間または168日ごとに前記RNAワクチンを投与することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記RNAワクチンの投与が、前記個体における疾患進行の発生まで継続される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記RNAワクチンが、誘導段階および前記誘導段階後の維持段階中に前記個体に投与され、前記RNAワクチンが、1または2週間の間隔で前記誘導段階中に前記個体に投与され、前記RNAワクチンが、24週間の間隔で前記維持段階中に前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記RNAワクチンが、誘導段階および前記誘導段階後の維持段階中に前記個体に投与され、前記RNAワクチンが、7または14日間の間隔で前記誘導段階中に前記個体に投与され、前記RNAワクチンが、168日間の間隔で前記維持段階中に前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記RNAワクチンが誘導段階および前記誘導段階後の維持段階中に前記個体に投与され、前記RNAワクチンが21日間サイクルで前記個体に投与され;
前記誘導段階中、前記RNAワクチンが、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に前記個体に投与され;かつ
前記維持段階の間、前記RNAワクチンが、サイクル13の1日目、およびその後24週間または168日ごとに1回、前記個体に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記誘導段階が、前記RNAワクチンの最大9回の投与を含む、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記維持段階が、前記個体における疾患進行の発生まで継続される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記RNAワクチンが、5’→3’方向に、
(1)5’キャップ;
(2)5’非翻訳領域(UTR);
(3)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;
(4)前記腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する前記1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;
(5)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;
(6)3’UTRであって、
(a)Split(AES)mRNAのアミノ末端エンハンサーの3’非翻訳領域またはその断片;および
(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNAまたはその断片、を含む
3’UTR;ならびに
(7)ポリ(A)配列
を含むRNA分子を含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記RNA分子が、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、前記アミノ酸リンカーおよび前記1つ以上のネオエピトープの第1のエピトープをコードする前記ポリヌクレオチド配列が、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成し、前記第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成する前記ポリヌクレオチド配列が、5’→3’方向に、前記分泌シグナルペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列と、前記MHC分子の前記膜貫通ドメインおよび前記細胞質ドメインの前記少なくとも一部をコードする前記ポリヌクレオチド配列との間にある、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記アミノ酸リンカーが、配列GGSGGGGSGG(配列番号39)を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記アミノ酸リンカーをコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列GGCGGCUCUGGAGGAGGCGGCUCCGGAGGC(配列番号37)を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記RNA分子が、5’→3’方向に、少なくとも1つの第2のリンカー-エピトープモジュールをさらに含み、前記少なくとも1つの第2のリンカー-エピトープモジュールが、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列と、ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列とを含み、前記第2のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成する前記ポリヌクレオチド配列が、5’→3’方向に、前記第1のリンカー-ネオエピトープモジュールの前記ネオエピトープをコードする前記ポリヌクレオチド配列と、前記MHC分子の前記膜貫通ドメインおよび前記細胞質ドメインの前記少なくとも一部をコードする前記ポリヌクレオチド配列との間にあり、かつ前記第1のリンカー-エピトープモジュールの前記ネオエピトープが、前記第2のリンカー-エピトープモジュールの前記ネオエピトープとは異なる、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記RNA分子が5つのリンカー-エピトープモジュールを含み、前記5つのリンカー-エピトープモジュールがそれぞれ異なるネオエピトープをコードする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記RNA分子が10のリンカー-エピトープモジュールを含み、前記10のリンカー-エピトープモジュールがそれぞれ異なるネオエピトープをコードする、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記RNA分子が20のリンカー-エピトープモジュールを含み、前記20のリンカー-エピトープモジュールがそれぞれ異なるネオエピトープをコードする、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記RNA分子が、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列をさらに含み、前記アミノ酸リンカーをコードする前記第2のポリヌクレオチド配列が、3’方向に、最も遠位にあるネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、前記MHC分子の前記膜貫通ドメインおよび前記細胞質ドメインの前記少なくとも一部をコードする前記ポリヌクレオチド配列との間にある、請求項53~60のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項62】
前記5’キャップが、以下の構造:
のD1ジアステレオマーを含む、請求項53~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記5’UTRが配列UUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号23)を含む、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記5’UTRが配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号21)を含む、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記分泌シグナルペプチドが、アミノ酸配列MRVMAPRTLILLLSGALALTETWAGS(配列番号27)を含む、請求項53~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記分泌シグナルペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド配列が配列AUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号25)を含む、請求項53~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記MHC分子の前記膜貫通ドメインおよび前記細胞質ドメインの前記少なくとも一部が、アミノ酸配列IVGIVAGLAVLAVVVIGAVVATVMCRRKSSGGKGGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA(配列番号30)を含む、請求項53~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記MHC分子の前記膜貫通ドメインおよび前記細胞質ドメインの前記少なくとも一部をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCC(配列番号28)を含む、請求項53~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記AES mRNAの前記3’非翻訳領域が配列CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC(配列番号33)を含む、請求項53~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記ミトコンドリアにコードされた12S RNAの前記非コードRNAが配列CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG(配列番号35)を含む、請求項53~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記3’UTRが配列CUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号31)を含む、請求項53~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記ポリ(A)配列が120のアデニンヌクレオチドを含む、請求項53~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記RNAワクチンが、5’→3’方向に、
ポリヌクレオチド配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号19);
前記腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する前記1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;
ポリヌクレオチド配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCCUAGUAACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号20)を含むRNA分子を含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
PD-1軸結合アンタゴニストを前記個体に投与することをさらに含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記PD-1軸結合アンタゴニストがPD-1結合アンタゴニストである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記PD-1結合アンタゴニストが抗PD-1抗体である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブまたはペムブロリズマブである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記PD-1軸結合アンタゴニストがPD-L1結合アンタゴニストである、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記PD-L1結合アンタゴニストが抗PD-L1抗体である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記抗PD-L1抗体が、アベルマブまたはデュルバルマブである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記抗PD-L1抗体が、
(a)GFTFSDSWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-2、およびアミノ酸RHWPGGFDY(配列番号3)を含むHVR-3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(b)RASQDVSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、SASFLYS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、およびQQYLYHPAT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記抗PD-L1抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
L)とを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、個体に静脈内投与される、請求項74~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記抗PD-L1抗体が、前記個体に、約1200mgの用量で投与される、請求項79~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、21日間または3週間の間隔で前記個体に投与される、請求項74~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記アテゾリズマブが、21日間サイクルで前記個体に投与され、アテゾリズマブが、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12のそれぞれの1日目に投与される、請求項83~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
サイクル13の1日目およびその後3週間または21日ごとにアテゾリズマブを投与することをさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
アテゾリマブの投与が、前記個体における疾患進行の発生まで継続される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記アテゾリマブが誘導段階および前記誘導段階後の維持段階中に21日サイクルで前記個体に投与され、
前記誘導段階中、アテゾリズマブが、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目に投与され、かつ
前記誘導段階後の前記維持段階中、アテゾリマブが、サイクル13の1日目、およびその後3週間または21日ごとに投与される、請求項83~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記維持段階が、前記個体における疾患進行の発生まで継続される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記個体がヒトである、請求項1~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量の前記RNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、RNAワクチン。
【請求項94】
個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量の前記RNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記腫瘍に輸送された前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、RNAワクチン。
【請求項95】
前記方法が、PD-1軸結合アンタゴニストを前記個体に投与することをさらに含む、請求項93または請求項94に記載の使用のためのRNAワクチン。
【請求項96】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量の前記PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記PD-1軸結合アンタゴニストおよび前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、PD-1軸結合アンタゴニスト。
【請求項97】
個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量の前記PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記PD-1軸結合アンタゴニストおよび前記RNAワクチンの投与後に前記腫瘍に輸送された前記ネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、PD-1軸結合アンタゴニスト。
【請求項98】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、方法。
【請求項99】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量の前記RNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、RNAワクチン。
【請求項100】
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量の前記PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを前記個体に投与することを含み、前記RNAワクチンが、前記個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、前記PD-1軸結合アンタゴニストおよび前記RNAワクチンの投与後に前記個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、前記RNAワクチンの前記1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記ネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、PD-1軸結合アンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月19日に出願された米国仮特許出願第63/041,707号、および2020年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/968,818号の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的免疫応答を誘導する方法に関する。
【0003】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(computer readable form:CRF)の配列表(ファイル名:146392050140SEQLIST.TXT、記録日:2021年1月22日、サイズ:41KB)。
【背景技術】
【0004】
背景
免疫阻害経路の調節は、がん治療における最近の大きなブレークスルーである。細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4、YERVOY/イピリムマブ)およびプログラム細胞死タンパク質1(PD-1、OPDIVO/ニボルマブまたはKEYTRUDA/ペムブロリズマブ)、およびPD-L1(アテゾリズマブ)を標的とするチェックポイント遮断抗体は、種々の腫瘍適応症の患者において許容される毒性、有望な臨床応答、永続的な疾患制御、および改善された生存を実証した。しかしながら、免疫チェックポイント遮断(ICB)治療に対して永続的な応答を経験する患者はごく少数であり、残りの患者は一次耐性または二次耐性を示す。
【0005】
腫瘍は、顕著な数の体細胞変異を特徴的に有する。次いで、変異を含むペプチドの発現は、適応免疫系によって非自己ネオエピトープとして認識し得る。非自己抗原を認識すると、細胞傷害性T細胞は免疫応答を誘発し、これは、非自己ネオエピトープを提示する細胞のアポトーシスをもたらす。したがって、免疫系を活性化するための免疫原性エピトープを標的とする治療ワクチンが開発されており、がん治療に使用するために研究されている。しかしながら、これまでのところ、治療ワクチンは、有望ではあるが、歴史的に期待を下回っている。潜在的な理由の1つは、がん特異的T細胞ががん細胞への慢性曝露中に機能的に疲弊することである。
【0006】
したがって、2つ以上の標的化がん免疫療法(CIT)剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤および免疫原性エピトープを標的化する治療ワクチンを使用する併用治療レジメンは、宿主免疫系の抗腫瘍能に完全に関与するために必要とされ得る。
【0007】
したがって、当技術分野において、宿主免疫系の抗腫瘍免疫応答を誘導する改善された方法が必要とされている。
【0008】
特許出願、特許公報、およびUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
概要
がんを治療するためのPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD1抗体または抗PD-L1抗体)およびRNAワクチンを含む方法、キットおよび使用が本明細書で提供される。
【0010】
一局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、方法が提供される。いくつかの実施形態において、末梢血試料は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的な約5%または約6%のCD8+T細胞を含む。いくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって末梢血試料中で検出される。いくつかの実施形態において、個体へのRNAワクチンの投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、個体の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である。いくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、エクスビボELISPOT分析によって個体から得られた末梢血試料中で検出される。いくつかの実施形態において、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、RNAワクチンの投与前と比較して、複数の個体の少なくとも約70%の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+TまたはCD8+細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって評価される。いくつかの実施形態において、個体へのRNAワクチンの投与は、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血中の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇は、RNAワクチンの投与後約4~約6時間の間に個体の末梢血中に存在する。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IL-12またはIL-6から選択される。
【0011】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンは、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0012】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法であって、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、方法が提供される。
【0013】
前述の実施形態のいずれかと組み合わされ得るいくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、メモリー表現型を有する。いくつかの実施形態において、メモリー表現型を有するネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、エフェクターメモリーT細胞(Tem)である。いくつかの実施形態において、エフェクターメモリーT細胞(Tem)は、CD45ROポジティブおよびCCR7ネガティブである。いくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞はPD-1+である。
【0014】
いくつかの実施形態において、個体は、低~中程度の突然変異負荷を有する腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、個体は、低腫瘍負荷を有する。
【0015】
先の実施形態のいずれかと組み合わされ得るいくつかの実施形態において、腫瘍は低い、またはネガティブなPD-L1発現を有する。いくつかの実施形態において、腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞の5%未満がPD-L1を発現する。いくつかの実施形態において、腫瘍から得られた試料中の免疫細胞の5%未満がPD-L1を発現する。いくつかの実施形態において、腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞または免疫細胞の、PD-L1を発現するパーセンテージは、免疫組織化学を用いて決定される。
【0016】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす。
【0017】
先の実施形態のいずれかと組み合わせられ得るいくつかの実施形態において、個体は、局所進行性もしくは転移性固形腫瘍を有するか、または1つ以上の転移性再発を有する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍、膀胱腫瘍、腎腫瘍、頭頸部腫瘍、肉腫腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、肝臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、結腸腫瘍、腎臓腫瘍、子宮頸部腫瘍、メルケル細胞がん(MCC)腫瘍、子宮内膜腫瘍、軟部組織肉腫腫瘍、食道腫瘍、食道胃接合部腫瘍、骨肉腫腫瘍、甲状腺腫瘍または結腸直腸腫瘍である。いくつかの実施形態において、乳癌腫瘍は、トリプルネガティブ乳癌(triple negative breast:TNBC)腫瘍である。
【0018】
いくつかの実施形態において、腫瘍は尿路上皮腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は腎腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約22%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は黒色腫腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約30%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍はTNBC腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約4%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍はNSCLC腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす。
【0019】
いくつかの実施形態において、腫瘍は以前にチェックポイント阻害剤で治療されていない尿路上皮腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は以前にチェックポイント阻害剤で治療されていない腎腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約22%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は以前にチェックポイント阻害剤で治療されていない黒色腫腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約30%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は以前にチェックポイント阻害剤で治療されていないTNBC腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約4%において客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は以前にチェックポイント阻害剤で治療されていないNSCLC腫瘍であり、複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約10%において客観的奏効をもたらす。
【0020】
いくつかの実施形態において、先行する実施形態のいずれかと組み合わせてもよいが、RNAワクチンの投与前に、個体は、1つまたは複数のがん治療または3つから5つのがん治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療で治療されていない。いくつかの実施形態において、前記RNAワクチンの投与前に、個体は約1つから約17個または約1つから約9個の全身がん治療で治療されている。
【0021】
先の実施形態と組合せ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する10~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0022】
先の実施形態のいずれかと組み合わせることができるいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、リポプレックスナノ粒子またはリポソームに製剤化される。いくつかの実施形態において、リポプレックスナノ粒子またはリポソームは、RNAワクチンのRNAをカプセル化する多層構造を形成する1つ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂質は、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つのヘルパー脂質を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂質は、(R)-N,N,N-トリメチル-2,3-ジオレイルオキシ-1-プロパンアミニウムクロリド(DOTMA)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。いくつかの実施形態において、生理学的pHでは、リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は1.3:2(0.65)である。
【0023】
先の実施形態と組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、個体へ静脈内投与される。
【0024】
先の実施形態と組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、7日間または1週間の間隔で個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、14日または2週間の間隔で個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、12日または84週間の間隔で個体に投与される。
【0025】
先の実施形態と組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは21日間サイクルで個体に投与され、ここで、RNAワクチンはサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル4の1日目に個体に投与される。
【0026】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは21日間サイクルで個体に投与され、ここで、RNAワクチンはサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供する方法は、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日ごとにRNAワクチンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記RNAワクチンの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0027】
先の実施形態のいずれかと組合せ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、21日間サイクルで個体に投与され、ここで、RNAワクチンは、サイクル2の1、8および15日;サイクル3の1日目および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供する方法は、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日ごとにRNAワクチンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0028】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、1または2週間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、24週間の間隔で維持段階中に個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、7または14日間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、168日間の間隔で維持段階中に個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、4回の21日間のサイクルで誘導段階中に個体に投与され、ここで、RNAワクチンは、サイクル1の第1、8、および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル4の1日目に誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、サイクル5の1日目の維持段階中およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、誘導段階は、RNAワクチンの最大9回の投与を含む。
【0029】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、21日間のサイクルで誘導段階中に個体に投与され、ここで、RNAワクチンは、サイクル1の1、8、および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目に誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、サイクル13の1日目の維持段階中およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、誘導段階は、RNAワクチンの最大9回の投与を含む。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0030】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、21日間のサイクルで個体に投与され、ここで、誘導段階中に、RNAワクチンは、サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目に個体に投与され、維持段階中、RNAワクチンは、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、誘導段階は、RNAワクチンの6回の投与を含む。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0031】
先の実施形態のいずれかと組み合わせることができるいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、5’→3’方向に:(1)5’キャップ;(2)5’非翻訳領域(UTR);(3)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(4)腫瘍標本に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;(5)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;(6)3’UTRであって、(a)Split(AES)mRNAのアミノ末端エンハンサーの3’非翻訳領域またはその断片;および(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNAまたはその断片を含む3’UTR;ならびに(7)ポリ(A)配列を含むRNA分子を含む。いくつかの実施形態において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、アミノ酸リンカーおよび1つ以上のネオエピトープの第1のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成し、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。いくつかの実施形態において、アミノ酸リンカーは、配列GGSGGGGSGG(配列番号39)を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列は、配列GGCGGCUCUGGAGGAGGCGGCUCCGGAGGC(配列番号37)を含む。
【0032】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNA分子は、5’→3’方向に、少なくとも1つの第2のリンカー-エピトープモジュールをさらに含み、ここで、少なくとも1つの第2のリンカー-エピトープモジュールは、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列と、ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列とを含み、ここで、第2のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールのネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にあり、ここで、第1のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープは、第2のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープとは異なる。いくつかの実施形態において、RNA分子は5つのリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、5つのリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、RNA分子は10のリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、10のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、RNA分子は20のリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、20のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。
【0033】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列をさらに含み、ここで、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、3’方向において最も遠位にあるネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。
【0034】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、5’キャップは、構造:
のD1ジアステレオ異性体を含む。
【0035】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、5’UTRは、配列UUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号23)を含む。いくつかの実施形態において、5’UTRは、配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号21)を含む。
【0036】
先の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、分泌シグナルペプチドは、アミノ酸配列MRVMAPRTLILLLSGALALTETWAGS(配列番号27)を含む。いくつかの実施形態において、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列AUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号25)を含む。
【0037】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部は、アミノ酸配列IVGIVAGLAVLAVVVIGAVVATVMCRRKSSGGKGGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA(配列番号30)を含む。いくつかの実施形態において、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列は、配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCC(配列番号28)を含む。
【0038】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、AES mRNAの3’非翻訳領域は、配列CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC(配列番号33)を含む。いくつかの実施形態において、ミトコンドリアによりコードされる12S RNAの非コードRNAは、配列CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態において、3’UTRは、配列CUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号31)を含む。いくつかの実施形態において、ポリ(A)配列は120のアデニンヌクレオチドを含む。
【0039】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、5’→3’方向に、ポリヌクレオチド配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号19);腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;およびポリヌクレオチド配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCCUAGUAACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号20)を含む。
【0040】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、本明細書において提供する方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0041】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体はニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0042】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体はアベルマブまたはデュルバルマブである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、以下:(a)GFTFSDSWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-2、およびRHWPGGFDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)RASQDVSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、SASFLYS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、およびQQYLYHPAT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0043】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、個体に静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、個体に、約1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、21日または3週間の間隔で個体に投与される。
【0044】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブであり、ここで、アテゾリズマブは、21日間サイクルで個体に投与され、ここで、アテゾリズマブは、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12のそれぞれの1日目に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される方法は、サイクル13の1日目およびその後3週間または21日ごとにアテゾリズマブを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0045】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストはアテゾリズマブであり、アテゾリズマブは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に21日サイクルで個体に投与され、ここで、誘導段階中に、アテゾリズマブは、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目に投与され、誘導段階後維持段階中、アテゾリズマブは、サイクル13の1日目およびその後3週間または21日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0046】
前述の実施形態のいずれかと組み合わされ得るいくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0047】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、RNAワクチンが提供される。いくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0048】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、RNAワクチンが提供される。いくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0049】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、RNAワクチンが提供される。いくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0050】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0051】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0052】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0053】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって末梢血試料中で検出される、RNAワクチンが提供される。
【0054】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、末梢血試料が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である約5%または約6%のCD8+細胞を含む、RNAワクチンが提供される。
【0055】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、個体の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、RNAワクチンが提供される。
【0056】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの複数の個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、複数の個体の少なくとも約70%の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって評価される、RNAワクチンが提供される。
【0057】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血における1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす、RNAワクチンが提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IL-12またはIL-6から選択される。
【0058】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、RNAワクチンが提供される。
【0059】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、RNAワクチンが提供される。
【0060】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの投与が個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、RNAワクチンが提供される。
【0061】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与される、RNAワクチンが提供される。
【0062】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが21日間のサイクルで個体に投与され、RNAワクチンが、個体にサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目ならびに任意にサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0063】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間のサイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、維持段階中、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目ならびに維持段階中、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0064】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、RNAワクチンが提供される。
【0065】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、RNAワクチンが提供される。
【0066】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、RNAワクチンの投与が個体における完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、RNAワクチンが提供される。
【0067】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、RNAワクチンが個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは、約100μgの用量で投与される、RNAワクチンが提供される。
【0068】
他の局面において、個体において腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが21日間のサイクルで個体に投与され、RNAワクチンが、個体にサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目ならびに任意にサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0069】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間のサイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、誘導段階中、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目ならびに維持段階中、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0070】
前述の局面のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0071】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって末梢血試料中で検出される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0072】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、末梢血試料が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である約5%または約6%のCD8+細胞を含む、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0073】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、個体の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0074】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの複数の個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、複数の個体の少なくとも約70%の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって評価される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0075】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血における1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IL-12またはIL-6から選択される。
【0076】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0077】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0078】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与が、個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0079】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが、21日間または3週間の間隔で約1200mgの用量で個体に投与され、RNAワクチンが21日間サイクルにおいて約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは、約100μgの用量で投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0080】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および任意にサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および任意に、サイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0081】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、誘導段階および誘導段階後の維持段階中、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、誘導段階中、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および誘導段階後の維持段階中に、アテゾリズマブがサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、誘導段階中、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および維持段階中に、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0082】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0083】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0084】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、RNAワクチンの投与が個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0085】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが、21日間または3週間の間隔で約1200mgの用量で個体に投与され、RNAワクチンが21日間サイクルにおいて約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは、約100μgの用量で投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0086】
他の局面において、個体における腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および任意にサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および任意に、サイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0087】
他の局面において、個体において腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、誘導段階および誘導段階後の維持段階中、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、誘導段階中、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および誘導段階後の維持段階中に、アテゾリズマブがサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、誘導段階中、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および維持段階中に、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0088】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって末梢血試料中で検出される、RNAワクチンが提供される。
【0089】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、個体の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、RNAワクチンが提供される。
【0090】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの複数の個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、複数の個体の少なくとも約70%の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって評価される、RNAワクチンが提供される。
【0091】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血における1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす、RNAワクチンが提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IL-12またはIL-6から選択される。
【0092】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、RNAワクチンが提供される。
【0093】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、RNAワクチンが提供される。
【0094】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンの投与が個体において完全奏効果(CR)または部分奏効(PR)をもたらす、RNAワクチンが提供される。
【0095】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与される、RNAワクチンが提供される。
【0096】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンが、個体にサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および任意にサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0097】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのRNAワクチンであって、前記方法が、有効量のRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、RNAワクチンが個体に、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、維持段階中、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目ならびに維持段階中、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、RNAワクチンが提供される。
【0098】
前述の局面のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与することをさらに含む。
【0099】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって末梢血試料中で検出される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0100】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、個体の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0101】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの複数の個体への投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、複数の個体の少なくとも約70%の末梢血におけるネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導をもたらし、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であり、ネオエピトープ特異的CD4+またはCD8+T細胞の誘導が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体解析によって評価される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0102】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの個体への投与が、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血における1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IL-12またはIL-6から選択される。
【0103】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がエフェクターメモリーT細胞(Tem)である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0104】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞がPD-1+である、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0105】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与が、個体において完全奏効(CR)または部分奏効果(PR)をもたらす、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0106】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが、21日間または3週間の間隔で約1200mgの用量で個体に投与され、RNAワクチンが21日間サイクルにおいて約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μg、または約100μgの用量で投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0107】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および任意にサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および任意に、サイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、PD-1軸結合アンタゴニストが提供される。
【0108】
他の局面において、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法において使用するためのPD-1軸結合アンタゴニストであって、前記方法が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを個体に投与することを含み、RNAワクチンが、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約1%が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞であり、PD-1軸結合アンタゴニストがアテゾリズマブであり、アテゾリズマブが個体に、誘導段階および誘導段階後の維持段階中、21日間サイクルにおいて約1200mgの用量で投与され、誘導段階中、アテゾリズマブがサイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれの1日目および誘導段階後の維持段階中に、アテゾリズマブがサイクル13の1日目ならびにその後3週間または21日ごとに投与され、RNAワクチンが、個体に約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で投与され、RNAワクチンが誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンが、21日間サイクルで個体に投与され、誘導段階中、RNAワクチンが個体に、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目および維持段階中に、RNAワクチンがサイクル13の1日目ならびにその後24週間または168日ごとに投与される、アンタゴニストが提供される。
【0109】
本明細書に記載の種々の実施形態の特性の1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本発明のこれらおよび他の局面は、等技術分野の当業者には明らかであろう。本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
本特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、申請に応じて、必要な手数料を支払うことにより、特許庁から提供されることになる。
【0111】
【
図1】
図1は、例示的RNAワクチン(すなわち、ポリネオエピトープRNA)の一般構造を示す。この図は、定常5’キャップ(β-S-ARCA(D1))、5’および3’非翻訳領域(それぞれhAg-コザックおよびFI)、N末端およびC末端融合タグ(それぞれsec
2.0およびMITD)、ならびにポリ(A)尾部(A120)ならびに、GSリッチリンカーによって融合されたネオエピトープ(neo1~10)をコードする腫瘍特異的配列を有するRNA薬物物質の一般構造の概略図である。
【0112】
【
図2】
図2は、例示的RNAワクチン(配列番号42)の定常領域のリボヌクレオチド配列(5’→3’)である。最初の2つのG残基間の結合は、5’キャップ構造について表3に示すような異常な結合(5’→5’)-pp
sp-である。患者のがん特異的配列の挿入部位は、C131残基とA132残基との間である(太字でマークされている)。「N」は、(任意のリンカーによって分離された)1つ以上の(例えば、1~20の)ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列の位置を指す。
【0113】
【
図3】
図3は、RNA定常領域の5’末端で使用される5’-キャッピング構造β-S-ARCA(D1)(m
2
7 2’ OGpp
spG)である。ステレオジェニックP中心は、「D1」異性体においてRp配置である。注:β-S-ARCA(D1)と基本的なキャップ構造m
7GpppGとの相違を赤色で示し;構成要素m
7GのC2’位に-OCH3基を有し、β-ホスフェートの非架橋酸素が硫黄で置換されている。ステレオジェニックP中心(*で標識されている)の存在により、ホスホロチオエートキャップ類縁体β-S-ARCAは2つのジアステレオマーとして存在する。逆相高速液体クロマトグラフィーにおける溶出順序に基づいて、これらを01および02と命名した。
【0114】
【
図4】
図4は、実施例1~5に記載された試験の第Ia/Ib相の設計の概略図である。第Ia相用量漸増試験の対象には、25μg、38μg、50μg、75μg、または100μgの用量で単剤療法としてRNAワクチンを投与した。誘導段階の間、RNAワクチンは、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与された(各サイクルは21日間であった)。初期治療後の維持段階に、RNAワクチンをサイクル13の1日目に投与し、その後、疾患進行(PD)(各サイクルは21日間であった)まで8サイクルごと(すなわち、その後24週間ごと、またはその後168日ごと)に投与した。第Ib相試験の対象には、15μg(図示せず)、25μg、38μg、または50μgの用量のRNAワクチンを、1200mgのアテゾリズマブと組み合わせて投与した。第Ib相試験には、RNAワクチンの用量漸増期と、示されたチェックポイント阻害剤未経験またはチェックポイント阻害剤を経験した腫瘍型を有する患者に、アテゾリズマブと組み合わせて15μgまたは25μgの用量でRNAワクチンを投与する拡張期が含まれていた(第Ib相拡張期のさらなる腫瘍型は実施例1に示されている)。初期治療(誘導段階)の間、アテゾリズマブは、サイクル1~12のそれぞれの1日目に投与され、RNAワクチンは、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に投与された(各サイクルは21日間であった)。初期治療後の維持段階中に、アテゾリズマブが疾患進行(PD)まで、3週間ごとに、サイクル13の1日目に開始して投与し、RNAワクチンをサイクル13の1日目およびその後、疾患進行(PD)まで8サイクルごと(すなわち、その後24週間ごと、またはその後168日ごと)に投与した(各サイクルは21日間であった)。
【0115】
【
図5A-5C】
図5A~
図5Cは、単剤療法(第Ia相)として、またはアテゾリズマブと組み合わせて(第Ib相)投与されたRNAワクチンによって誘導された自然免疫応答を示す。
図5Aは、試験の第Ia相において25μgのRNAワクチンを投与された患者の血漿中のIFNgのレベル(pg/ml)を示す。各線は個々の患者を表す。「C」=サイクル(すなわち、C1=サイクル1;C2=サイクル2等)。「D」=日(すなわち、D1=1日目、D8=8日目等)。「hr」=RNAワクチンの用量の投与後の時間。RNAワクチンを投与した日を実線の矢印で示す。
図5Bは、RNAワクチンを示された用量で単剤療法として投与した患者(相Ia;Ph1a)またはアテゾリズマブと組み合わせて投与した患者(相Ib;Ph1b)におけるRNAワクチンの各投与後4時間における血漿IFNgレベルの中央値を示す。各円は、各個々の患者に対する全てのRNAワクチン投与後4時間におけるIFNgレベルについての中央値を表す。
図5Cは、RNAワクチンを示された用量で単剤療法として投与した患者(相Ia;Ph1a)またはアテゾリズマブと組み合わせて投与した患者(相Ib;Ph1b)におけるRNAワクチンの各投与後4時間におけるIFNa血漿レベルの中央値を示す。各円は、各個々の患者に対する全てのRNAワクチン投与後4時間におけるIFNaレベルについての中央値を表す。
【0116】
【
図6】
図6は、単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)またはアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)の投与後のネオ抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞免疫応答を評価するために使用されるエクスビボEliSpotアッセイの図を提供する。
【0117】
【
図7A-7D】
図7A~
図7Dは、単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)またはアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)の投与後のネオ抗原特異的免疫応答を評価したEliSpotアッセイの結果を提供する。
図7Aは、サイクル4、1日目に単剤療法(第Ia相)としてRNAワクチンを投与された患者におけるネオ抗原特異的免疫応答を示す。
図7Bは、サイクル4、1日目にアテゾリズマブと組み合わせて(第Ib相)RNAワクチンを投与された患者におけるネオ抗原特異的免疫応答を示す。アスタリスクは、RNAワクチンのサイクル1、1日目およびサイクル1、8日目の用量は30μgであり、続いて15μgの用量であったことを示す。
図7A~7Bにおいて、y軸は、EliSpotアッセイで試験したネオ抗原の数を示す。暗色のバーおよび対応する数字は、EliSpotアッセイで同定されたポジティブなネオ抗原ヒットの数を表す。明色のバーは、ネガティブなネオ抗原ヒットの数を表す。RNAワクチン用量を示す。EliSpot応答は、30万細胞あたり15超のスポットとして定義され、バックグラウンドウェルと統計的に異なっており(一般に10未満のスポットである);全てのネオ抗原を二連で試験した。ポジティブヒット(「+veヒット」)は、サイクル4、1日目にEliSpotアッセイ応答を有し、ベースラインでEliSpotアッセイ応答を有さなかったネオ抗原を指す。ネガティブなヒット(「ヒットなし」)は、サイクル4、1日目にネガティブなEliSpotアッセイ応答を有したネオ抗原を指す。
図7Cは、示された用量でRNAワクチンを投与した第Ib相試験における患者についてのEliSpotアッセイによってポジティブなヒットとして同定された各ネオ抗原についてのIFNg形成スポットの合計を示す。各色のボックスは、個々のネオ抗原に対するIFNg形成スポットの数を表す。EliSpot応答は、30万細胞あたり15超のスポットとして定義され、バックグラウンドウェルと統計的に異なっており(一般に10未満のスポットである);全てのネオ抗原を二連で試験した。
図7Dは、RNAワクチンを示された用量で投与した第Ib相試験における患者におけるIFNg形成スポットの平均数を示す。ボックスプロットの中央線は、IFNg形成スポットの中央数を示し、ボックスは四分位範囲を示し、エラーバーは最小値および最大値を示す。
【0118】
【
図8】
図8は、単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)またはアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)の投与後のネオ抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞免疫応答を評価するために使用されるMHC多量体染色アッセイの図を示す。
【0119】
【
図9A-9G】
図9A~
図9Gは、RNAワクチンを25μgの用量でアテゾリズマブ(相Ib;患者22)と組み合わせて投与したCIT未経験トリプルネガティブ乳がん患者におけるネオ抗原特異的免疫応答を評価したEliSpotアッセイおよびMHC多量体染色アッセイの結果を示す。
図9Aは、ベースラインおよびサイクル4、1日目に患者22のネオ抗原特異的免疫応答を評価したバルクPBMC EliSpotアッセイの結果を示す。試験したネオ抗原および対照はx軸上にあり、y軸は、30万個のPBMC当たりのIFNg形成スポットの数を示す。ネオ抗原R3およびR8をボックスに示す。水平の破線は、EliSpotアッセイにおけるポジティブヒットを決定するための閾値を示す。ポジティブヒットは、30万細胞あたり15超のスポットとして定義され、バックグラウンドウェルと統計的に異なっていた(一般に的10未満のスポットである)。ネオ抗原を2連で試験し;CEFT=サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、および破傷風毒素由来のエピトープ;CEF=サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルスおよびインフルエンザウイルス由来のエピトープ。
図9Bは、MHC多量体染色アッセイによって評価された、示された時間における患者22におけるR8ネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を示す。散布図は、x軸およびy軸上の2つの異なる構成のMHC多量体で染色されたCD8+T細胞を示す。ダブルポジティブ細胞をネオ抗原特異的として標識した。ネオ抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを、散布図の右上象限に示す。
図9Cは、サイクル3、1日目における
図9Bに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるCD45ROおよびCCR7発現の分析を示す。右側の凡例に示されるように、CD8+ナイーブ細胞は、散布図の左上象限にあり、セントラルメモリーT細胞(Tcm)は、散布図の右上象限にあり、CD45RA+エフェクターメモリーT細胞(TEMRA)は、散布図の左下象限にあり、エフェクターメモリーT細胞(Tem)は、散布図の右下象限にある。
図9Dは、サイクル3、1日目における
図9Bに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるPD-1発現の分析を示す。
図9Eは、MHC多量体染色アッセイによって評価された、示された時間における患者22におけるR3ネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を示す。散布図は、x軸およびy軸上の2つの異なる構成のMHC多量体で染色されたCD8+T細胞を示す。ネオ抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを、散布図の右上象限に示す。
図9Fは、サイクル3、1日目における
図9Eに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるCD45ROおよびCCR7発現の分析を示す。右側の凡例に示されるように、CD8+ナイーブ細胞は、散布図の左上象限にあり、セントラルメモリーT細胞(Tcm)は、散布図の右上象限にあり、CD45RA+エフェクターメモリーT細胞(TEMRA)は、散布図の左下象限にあり、エフェクターメモリーT細胞(Tem)は、散布図の右下象限にある。
図9Gは、サイクル3、1日目における
図9Eに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるPD-1発現の分析を示す。
【0120】
【
図10A-10B】
図10A~
図10Bは、RNAワクチンの製造作業フローおよび提案された作用機序の概要を示す。
図10Aは、RNAワクチンの製造プロセスを示す。製造中、血液試料および腫瘍試料(例えば、腫瘍生検)を患者から採取し、腫瘍DNAおよび非腫瘍DNA(例えば、末梢血単核細胞DNA)を配列決定(例えば、次世代シーケンシングおよび/または全エクソームシーケンシング)に供して、患者の腫瘍に特異的に存在する非同義体細胞変異を同定する。腫瘍試料からのRNAをまた配列決定に供し、同定された非同義体細胞変異を有するタンパク質の発現を評価する。ネオ抗原は、それらの可能性のある免疫原性をランク付けするバイオインフォマティクスワークフローを使用して予測される。健常な組織におけるそれぞれの野生型遺伝子の発現レベルに関する包括的な情報を提供するデータベースは、好ましくないリスクプロファイルを有する標的候補を除去することによる個人向けリスク軽減戦略の開発に使用される。重要な器官における可能性のあるより高い自己免疫リスクを有するタンパク質に生じる変異は除外され、ワクチン産生のために考慮されない。個々の患者についてCD8
+T細胞および/またはCD4+T細胞応答を誘発すると予測される最大20のネオ抗原が、ワクチンへの包含のために選択される。RNAワクチンは、5’キャップ、5’非翻訳領域(UTR)、N末端融合タグ(例えば、SEC)、各ネオ抗原間にリンカー配列を有する最大20のネオ抗原(例えば、2つのデコープ)、C末端融合タグ(例えば、MITD)、3’UTR、およびポリ(A)尾部を含む。RNAワクチンは、例えばリポプレックスに製剤化される。RNAワクチンは、患者への静脈内投与の前に保存され得る。
図10Aに示すように、RNAワクチンは、自然免疫応答(例えば、内因性TLR 7/8アゴニストとして作用することによって)を刺激し、ネオ抗原の発現およびその後の抗原提示細胞によるネオ抗原提示を刺激することによって機能すると考えられる。
図10Bは、RNAワクチンの提案された作用機序の詳細を示す。Kranzら(2016)Nature,16;534(7607):396-401)も参照されたい。
【0121】
【
図11】
図11は、RNAワクチン単剤療法の第Ia相試験で10%を超える患者に発生した有害事象の要約を提供する。全ての報告されたAEおよび試験治療に関連するAEの相対頻度を提供する。報告されたAEの重症度は、右側の凡例(グレード1~5)に示されている。
a悪性腫瘍進行の重篤な有害事象(SAE)が16%の患者で報告された(データは示さない)。注入関連反応およびサイトカイン放出症候群の全身反応が示される。
bNational Cancer Institute(NCI)Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)バージョン5.0に従う。
【0122】
【
図12A-12B】
図12A~
図12Bは、25μgの用量での単剤療法(第Ia相)としてRNAワクチンを投与された患者の血漿中のIFNγのレベルを示す。
図12Aは、25μgの用量での単剤療法としてRNAワクチンを投与された患者の血漿中のIFNγのレベル(pg/ml)を示す。各線は個々の患者を表す。
図12Bは、25μgの用量での単剤療法としてRNAワクチンを投与された9人の患者の血漿中のIFNγのレベル(pg/ml)の代表的なパターンを示す。RNAワクチン投与レジメンを
図12Bのプロットの下に示す。各矢印はRNAワクチン用量の投与を表す。「C」=サイクル(すなわち、C1=サイクル1;C2=サイクル2等);「D」=日(すなわち、D1=1日目、D8=8日目等);「HR」=ある用量のRNAワクチン投与後の時間。
【0123】
【
図13】
図13は、示された時間における25μgの用量での単剤療法としてRNAワクチンを投与された患者の血漿中のIL-6およびIFNαのレベル(pg/ml)を示す。各線は個々の患者を表す。「C」=サイクル(すなわち、C1=サイクル1;C2=サイクル2等);「D」=日(すなわち、D1=1日目、D8=8日目等);「HR」=ある用量のRNAワクチン投与後の時間。
【0124】
【
図14A-14B】
図14A~
図14Bは、14人の患者における単剤療法(第Ia相)としてのRNAワクチンの投与によって誘導されたネオ抗原特異的免疫応答の概要を示す。
図14Aは、EliSpotおよび/またはMHC多量体染色アッセイによって決定された少なくとも1つのネオ抗原特異的免疫応答を有した第Ia相試験の患者の数を示す。
図14Bは、示された患者におけるエクスビボEliSpotアッセイによってネオ抗原免疫応答を示したネオ抗原の数を示す。
【0125】
【
図15】
図15は、75μgの用量での単剤療法としてRNAワクチンで治療した前立腺がん患者の腫瘍におけるT細胞受容体(TCR)配列決定実験の結果を示す。y軸は、RNAワクチンの投与前(ベースライン)の腫瘍におけるTCR(Log
10)の頻度を示す。x軸は、RNAワクチンによる治療後の腫瘍におけるTCR(Log
10)の頻度を示す。RNAワクチン特異的TCRを網掛け円で示し、他のTCRを白丸で示す。
【0126】
【
図16A-16C】
図16A~
図16Cは、38μgの用量での単剤療法としてRNAワクチンで治療した前立腺がん患者におけるネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を評価したMHC多量体染色アッセイの結果を示す。
図16Aは、示された時間におけるネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答を示す。散布図は、x軸およびy軸上の2つの異なる構成のMHC多量体で染色されたCD8+T細胞を示す。ネオ抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを、散布図の右上象限に示す。「C」=サイクル(すなわち、C1=サイクル1;C2=サイクル2等);「D」=日(すなわち、D1=1日目、D8=8日目等)。
図16Bは、サイクル4、1日目における
図16Aに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるCD45ROおよびCCR7発現の分析を示す。CD8+ナイーブ細胞は、散布図の左上象限にあり(Tn)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)は、散布図の右上象限にあり、エフェクターメモリーT細胞(Tem)は、散布図の右下象限にある。Tem細胞のパーセンテージを示す。
図16Cは、サイクル4、1日目における
図16Aに示されるネオ抗原特異的CD8+T細胞集団におけるPD-1発現の分析を示す。PD-1+CD8+T細胞のパーセンテージを示す。
【0127】
【
図17】
図17は、単剤療法としてRNAワクチンで治療された患者で観察された臨床応答の要約を示す。各バーは個々の患者を表し、各患者の腫瘍型はx軸上に示されている。y軸は、各患者について観察された標的病変の最長径の和(SLD)の最良の変化を示す。各患者に投与されるRNAワクチンの用量は、右側の凡例および各バーの上に示されている。SP142 Ventanaアッセイによって分析された腫瘍浸潤免疫細胞(IC)または腫瘍細胞(TC)上のベースラインPD-L1発現を、各患者のグラフの下に示す(N=なし;Y=はい)。試験中の各患者についての最良総合効果(BOR)をグラフの下に示す(PD=疾患進行;SD=安定疾患;CR=完全奏効)。さらに、各患者がチェックポイント阻害剤による事前の治療を受けたかどうか(「CPI経験あり」)をグラフの下に示す(N=なし;Y=はい)。HNC=頭頸部がん;STS=軟部組織肉腫;EGJ=食道胃接合部。水平の破線は、固形腫瘍応答評価基準(RECIST)基準(すなわち、ベースラインからのSLDの20%以上の増加=疾患進行(PD);およびベースラインからのSLDの30%以上の減少=部分奏効(PR))による疾患進行および部分奏効の閾値を示す。
【0128】
【
図18】
図18は、50μgの用量での単剤療法としてのRNAワクチンによる治療後に完全奏効(CR)を示した1人の胃がん患者におけるベースラインおよびサイクル4、1日目でのEliSpotアッセイによって測定されたネオ抗原特異的免疫応答を示す。個々のネオ抗原および対照をx軸に示す。y軸は、30万個の末梢血単核細胞(PBMC)あたりのIFNγ形成スポットを示す。水平の破線は、EliSpotアッセイにおけるポジティブヒットを決定するための閾値を示す。EliSpotポジティブヒットは、30万細胞あたり15超のスポットとして定義され、バックグラウンドウェルと統計的に異なっており(一般に10未満のスポットである);全てのネオ抗原を二連で試験した。
a悪性腫瘍進行の重篤なAE(SAE)が14%の患者で報告された(データは示さない)。
【0129】
【
図19】
図19は、アテゾリズマブと組み合わせて投与したRNAワクチンの第Ib相試験で10%を超えて患者に発生した有害事象の要約を示す。全ての報告されたAEおよび試験治療に関連するAEの相対頻度を提供する。報告されたAEの重症度は、右側の凡例(グレード1~5)に示されている。注入関連反応およびサイトカイン放出症候群およびインフルエンザ様疾患の全身反応が示される。
【0130】
【
図20】
図20は、EliSpotおよび/またはMHC多量体染色アッセイによって決定された少なくとも1つのネオ抗原特異的免疫応答を有した第Ib相試験の患者の数を示す。
【0131】
【
図21】
図21は、アテゾリズマブおよび38μgの用量のRNAワクチン治療した直腸がん患者の腫瘍におけるT細胞受容体(TCR)配列決定実験の結果を示す。y軸は、アテゾリズマブおよびRNAワクチンの投与前(ベースライン)の腫瘍におけるTCR(Log
10)の頻度を示す。x軸は、アテゾリズマブおよびRNAワクチンによる治療後の腫瘍におけるTCR(Log
10)の頻度を示す。RNAワクチン特異的TCRを網掛け円で示し、他のTCRを白丸で示す。
【0132】
【
図22】
図22は、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンで治療された患者で観察された臨床応答の要約を示す。各バーは個々の患者を表し、各患者の腫瘍型はx軸上に示されている。y軸は、各患者について観察された最長径の合計(SLD)の最良の変化を示す。各患者に投与されるRNAワクチンの用量は、右側の凡例および各バーの上に示されている。
a各患者のSP142 Ventanaアッセイによって分析された腫瘍浸潤免疫細胞(IC)または腫瘍細胞(TC)上のベースラインPD-L1発現を、グラフの下に示す(N=なし;Y=はい)。試験中の各患者についての最良総合効果(BOR)をグラフの下に示す(PD=疾患進行;SD=安定疾患;PR=部分奏効;CR=完全奏効)。さらに、各患者がチェックポイント阻害剤による事前の治療を受けたかどうか(「CPI経験あり」)をグラフの下に示す(N=なし;Y=はい)。HNC=頭頸部がん;STS=軟部組織肉腫;NSCLC=非小細胞肺がん;MCC=メルケル細胞癌腫。ボックスは、アテゾリズマブと組み合わせて38μgの用量でRNAワクチンを投与されたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有するCPI経験患者を示す。水平の破線は、固形腫瘍応答評価基準(RECIST)基準(すなわち、ベースラインからのSLDの20%以上の増加=疾患進行(PD);およびベースラインからのSLDの30%以上の減少=部分奏効(PR))による疾患進行および部分奏効の閾値を示す。
【0133】
【
図23A-23B】
図23A~
図23Bは、RNAワクチンをアテゾリズマブと組み合わせて38μgの用量で投与したトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者で観察された腫瘍およびネオ抗原特異的免疫応答を示す(
図22のボックスで示されている)。
図22に示すように、このTNBC患者は、治療に対して部分応答を示し、5%以上の腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞でベースラインPD-L1発現を有し(SP142 Ventanaアッセイによって評価)、チェックポイント阻害剤で以前に治療されていた(CPI経験)。
図23Aに提供されるコンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像は、患者がスクリーニング時に転移性疾患に関連するいくつかの腫瘍塊を有していたこと、および治療のサイクル4で腫瘍が減少したことを示している(腫瘍は矢印で示されている)。
図23Bは、患者がスクリーニング時にネオ抗原特異的CD8+T細胞についてネガティブであること(0.01%;バックグラウンドレベル)、およびネオ抗原特異的CD8+T細胞のレベルが治療のサイクル4で2.2%に増加したことを示す(MHC多量体染色によって評価)。散布図は、x軸およびy軸上の2つの異なる構成のMHC多量体で染色されたCD8+T細胞を示す。
【0134】
【
図24A-24E】
図24A~
図24Eは、本明細書中に記載される第Ib相試験の適応症特異的拡大期におけるチェックポイント阻害剤未経験患者についての最長直径(SLD)および客観的奏効率(ORR)の合計の経時的変化を示す。
図24Aは、チェックポイント阻害剤未経験尿路上皮癌腫(UC)患者についてのSLDおよびORRの経時的変化を示す。
図24Bは、チェックポイント阻害剤未経験腎細胞癌腫(RCC)患者についてのSLDおよびORRの経時的変化を示す。
図24Cは、チェックポイント阻害剤未経験黒色腫患者についてのSLDおよびORRの経時的変化を示す。
図24Dは、チェックポイント阻害剤未経験トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者についてのSLDおよびORRの経時的変化を示す。
図24Eは、チェックポイント阻害剤未経験非小細胞肺がん(NSCLC)患者についてのSLDおよびORRの経時的変化を示す。矢印は、積極的治療を継続する患者を示す。
図24A~24Eにおいて、水平の破線は、固形腫瘍応答評価基準(RECIST)基準(すなわち、ベースラインからのSLDの20%以上の増加=疾患進行(PD);およびベースラインからのSLDの30%以上の減少=部分奏効(PR))による疾患進行および部分奏効の閾値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0135】
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物または生物学的系に限定されず、これらは言うまでもなく変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0136】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子等の組合せを任意に含む。
【0137】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0138】
本明細書に記載の本発明の局面および実施形態が、局面および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0139】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)復元または増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストを含む。
【0140】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性を軽減する(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。PD-1結合アンタゴニストの具体的な例を以下に提示する。
【0141】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L1とその結合パートナーの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球上で発現された細胞表面タンパク質によって、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。PD-L1結合アンタゴニストの具体的な例を以下に提示する。
【0142】
用語「PD-L2結合アンタゴニスト」は、PD-L2と1つ以上の結合パートナーのいずれか、例えばPD-1との相互作用の結果として生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑制または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一局面において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L2とその結合パートナーの1つ以上のいずれか、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性を軽減する(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0143】
「持続応答」は、治療の休止後に腫瘍成長を低減させることに対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態において、持続応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍または3.0倍の期間を有する。
【0144】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒なさらなる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。「薬学的に許容され得る」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0145】
本明細書で使用されるとき、「治療」という用語は、臨床的病変の経過中に治療される個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および予後の寛解または改善が挙げられる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、および/または個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「治療」に成功している。
【0146】
本明細書で使用されるとき、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(がん等)の発症を延期、妨害、減速、遅らせ、安定させ、および/または延期することを意味する。この遅延は、病歴および/または治療される個体に応じて様々な期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分または著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症等の末期がんを遅延させることができる
【0147】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な改善または予防の達成に必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上の有益な効果が治療の任意の毒性作用または有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、および/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除または低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、および/または生存期間の延長等の臨床結果が挙げられる。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回の投与でも、複数回の投与でもよい。本発明の目的のためには、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療剤の投与との関連で考慮することができ、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見ることができる。
【0148】
本明細書において使用される「と併せて」または「と組み合わせて」は、他の治療様式に追加された、1つの治療様式の投与を表す。したがって、「と併せた」または「と組み合わせた」とは、個体への1つの治療様式の適用前、適用中、または施行後の別の治療様式の適用を指す。
【0149】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹患させる病態を含む、慢性および急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益を得るであろういずれかの状態である。
【0150】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。一実施形態において、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0151】
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるとき、相互排他的ではない。
【0152】
治療の目的のための「対象」または「個体」は、哺乳類に分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜および農場動物、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば犬、馬、猫、牛などを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0153】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
【0154】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定および分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の夾雑物成分は、抗体の試験的、診断的、または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95wt%超、いくつかの実施形態において、99wt%超になるまで、(2)例えば、スピニング・カップ・シークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたは銀染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイチュ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0155】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0156】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、およびCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0157】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
【0158】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体の特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0159】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの一方に割り当てられ得る。
【0160】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的および抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0161】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられる場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、およびμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成が周知であり、例えば、Abbasら、Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と一または複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0162】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0163】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0164】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0165】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン治療は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0166】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態において、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0167】
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメインおよび第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されているという点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生されたものであった。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0168】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0169】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、他の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudsonら、Nat.Med.9:129-134(2003)、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)に、より完全に記載されている。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudsonら、Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
【0170】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態において、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するようにさら改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
【0171】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongoら、Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);HammerlingらMonoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)におけるもの)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature,352:624-628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);およびLeeら、J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全てを有する動物において、ヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号、国際公開第1996/34096号、国際公開第1996/33735号、国際公開第1991/10741号、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255-258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、および同第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonbergら、Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);およびLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照されたい)によって作製され得る。
【0172】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0173】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでいてもよい。これらの修飾を加えて、抗体の性能をさらに洗練させることができる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature 321:522-525(1986);Riechmannら、Nature 332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。
【0174】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当技術分野で既知の様々な技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991).Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boernerら、J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に使用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた、参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0175】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に」結合する(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0176】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。天然抗体では、H3およびL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xuら、Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363:446-448(1993);Sheriffら、Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0177】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含されている。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
【0178】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおける、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)、および93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0179】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97又は89~96(L3)、ならびにVHにおいて、26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、および93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0180】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0181】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、およびそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0182】
Kabatナンバリングシステムは一般的に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、KabatらSequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、一般的に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されるEUインデックス)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0183】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapataら(1995 Protein Eng,8(10):1057-1062)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0184】
本明細書で使用されるとき、「結合する」、「特異的に結合する」、または「特異的な」という用語は、生物学的分子等の異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態において、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態において、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、必須ではない。
【0185】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特性に基づいて、特徴づけおよび/または特定される細胞および/または他の分子の実体を含有する、目的とする対象および/もしくは個体から得られるか、またはそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という句およびその変形は、特徴づけられるべき細胞および/または分子実体を含有することが期待されるかまたは含有することが知られている、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料としては、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、および組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、試料は、腫瘍細胞および任意に腫瘍浸潤免疫細胞を含む個体のがんから得られた試料(例えば、腫瘍試料)である。例えば、試料は、パラフィンブロックに包埋された腫瘍標本、または新たに切断された連続非染色切片を含む腫瘍標本であり得る。いくつかの実施形態において、試料は生検からのものであり、50以上の生存腫瘍細胞(例えば、コアニードル生検によるものであり、任意にパラフィンブロックに埋め込まれる;切除生検、切開生検、パンチ生検または鉗子生検;または腫瘍組織切除によるものである)を含む。
【0186】
「組織試料」、「組織生検」または「細胞試料」は、対象または個体の組織、例えば腫瘍から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結した、および/または保存された器官、組織試料、生検、および/または吸引液から等の固形組織(例えば腫瘍);血漿等の血液または任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液等の体液;対象の妊娠または発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織試料は、初代または培養細胞または細胞株であってもよい。任意に、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、または抗生物質等の天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
【0187】
本明細書で使用される場合、「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、罹患細胞または組織に隣接する健康なおよび/または罹患していない細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)。他の実施形態において、参照試料は、同じ対象または個体の身体の未治療の組織および/または細胞から得られる。さらに別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未治療の組織および/または細胞から得られる。
【0188】
薬品を用いた治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」および類似の単語は、がん等の疾患もしくは障害の危険性があるか、またはそれを患う患者に付与される臨床的または治療的有益性を指す。一実施形態において、そのような利益としては、生存期間(全生存期間および無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効もしくは部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候もしくは症状を改善することのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0189】
治療に「有効な応答を示さない」患者とは、生存期間(全体的な生存および無増悪生存期間を含む)が延長すること、客観的奏効(完全奏効もしくは部分奏効を含む)がもたらされること、またはがんの兆候または症状が改善されることのうちのいずれも有しない患者を指す。
【0190】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例:B細胞受容体;BCR)等のダウンレギュレーションが含まれる。そのようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とし、そして、例えば、本明細書の定義に開示されているように、様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0191】
「ヒトエフェクター細胞を有する」がんまたは生体試料は、診断試験において、試料中に存在するヒトエフェクター細胞(例えば、浸潤性ヒトエフェクター細胞)を有するものである。
【0192】
「FcR発現細胞を有する」がんまたは生体試料は、診断試験において、試料中に存在するFcR発現(例えば、浸潤性FcR発現細胞)を有するものである。いくつかの実施形態において、FcRはFcγRである。いくつかの実施形態において、FcRは、活性化FcγRである。
【0193】
II.ネオエピトープ特異的免疫応答を誘導する方法
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法が本明細書で提供される。特定の実施形態において、方法は、個体に有効量のRNAワクチンを投与する皇帝を含み、ワクチンは、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも1%(例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、またはそれ以上)が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1%~約6%(例えば約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、または約6%のいずれか)が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なCD8+T細胞の約5%または約6%を含む。
【0194】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約0.1%(例えば、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.18%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.27%、少なくとも約0.29%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.87%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1%、少なくとも約1.25%、少なくとも約1.5%、少なくとも約1.75%、少なくとも約2%、少なくとも約2.25%、少なくとも約2.5%、少なくとも約2.5%、少なくとも約2.75%、少なくとも約3%、少なくとも約3.25%、少なくとも約3.5%、少なくとも約3.75%、少なくとも約4%、少なくとも約4.25%、少なくとも約4.5%、少なくとも約4.75%、少なくとも約5%、少なくとも約5.25%、少なくとも約5.5%、少なくとも約5.67%以上)はRNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0195】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約0.27%(例えば、少なくとも約0.27%、少なくとも約0.29%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.87%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1%、少なくとも約1.25%、少なくとも約1.5%、少なくとも約1.75%、少なくとも約2%、少なくとも約2.25%、少なくとも約2.5%、少なくとも約2.5%、少なくとも約2.75%、少なくとも約3%、少なくとも約3.25%、少なくとも約3.5%、少なくとも約3.75%、少なくとも約4%、少なくとも約4.25%、少なくとも約4.5%、少なくとも約4.75%、少なくとも約5%、少なくとも約5.25%、少なくとも約5.5%、少なくとも約5.67%以上)はRNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0196】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約0.1%~約5.67%(例えば、約0.1%、約0.18%、約0.2%、約0.27%、約0.29%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.87%、約0.9%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、約4%、約4.25%、約4.5%、約4.75%、約5%、約5.25%、約5.5%、または約5.67%のいずれか)が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0197】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の少なくとも約0.27%~約5.67%(例えば、約0.27%、約0.29%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.87%、約0.9%、約1%、約1.25%、約1.5%、約1.75%、約2%、約2.25%、約2.5%、約2.75%、約3%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、約4%、約4.25%、約4.5%、約4.75%、約5%、約5.25%、約5.5%、または約5.67%のいずれか)が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0198】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約0.18%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約0.27%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約0.29%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約0.87%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1.89%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約3.1%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約5.67%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約1.95%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約2.49%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約4.7%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のCD8+T細胞の約2.2%は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD8+T細胞である。
【0199】
ネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中で、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析等の当技術分野で公知の任意の方法によって検出し得る。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のいずれかに特異的である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3または1~2のいずれかに特異的である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの約2.6または約3に特異的である。
【0200】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%またはそれ以上)のいずれかに特異的である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの約5%~約70%(例えば約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70%のいずれか)のいずれかに特異的である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られた末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの約5%~約35%(例えば約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、または約35%のいずれか)のいずれかに特異的である。
【0201】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供する方法による個体へのRNAワクチンの投与が、RNAワクチンの投与前と比較して、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導(例えば増加)をもたらす。いくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、個体の末梢血試料中で検出される。いくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、個体から得られた末梢血試料中で検出される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のいずれかに特異的である。いくつかの実施形態において、個体から得られた末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD4+T細胞は、エクスビボELISPOT分析によって検出される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法に従って個体にRNAワクチンを投与すると、RNAワクチンの投与前と比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10倍以上のいずれかのRNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導(例えば、増加)がもたらされる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法に従って個体にRNAワクチンを投与すると、RNAワクチンの投与前と比較して、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、少なくとも約200倍、少なくとも約210倍、少なくとも約220倍、少なくとも約230倍、少なくとも約240倍、少なくとも約250倍、少なくとも約260倍、少なくとも約270倍、少なくとも約280倍、少なくとも約290倍、少なくとも約300倍以上のいずれかのRNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的であるネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導(例えば、増加)がもたらされる。特定の実施形態において、本明細書に提供される方法に従った、RNAワクチンの個体への投与により、RNAワクチンの投与前と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも約220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、少なくとも300%以上のいずれかのRNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なネオエピトープ特異的CD4+T細胞の誘導(例えば増加)がもたらされる。
【0202】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約70%、例えば、複数の個体の少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100%のいずれかの末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導(例えば、増加)をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約73%の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導(例えば、増加)をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約86%の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導(例えば、増加)をもたらす。いくつかの実施形態において、末梢血試料中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞は、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって検出される。いくつかの実施形態において、末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導(例えば、増加)は、RNAワクチン投与前と比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、少なくとも約200倍、少なくとも約210倍、少なくとも約220倍、少なくとも約230倍、少なくとも約240倍、少なくとも約250倍、少なくとも約260倍、少なくとも約270倍、少なくとも約280倍、少なくとも約290倍、少なくとも約300倍以上のいずれかのRNAワクチンの投与後のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の増加を含む。いくつかの実施形態において、末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導(例えば増加)は、RNAワクチンの投与前と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも約220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、少なくとも300%以上のいずれかのRNAワクチンの投与後の個体の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の増加をもたらす。
【0203】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの投与は、1つ以上の炎症性サイトカインのレベルの上昇をもたらす。炎症性サイトカインの例としては、IFNγ(すなわち、IFNg)、IFNα(すなわち、IFNa)、IL-12またはIL-6が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法による個体へのRNAワクチンの投与は、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカインのレベルと比較して、個体の末梢血(例えば血漿)中の1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12および/またはIL-6)のレベルの上昇をもたらす。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与後の、1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12および/またはIL-6)のレベルの上昇は、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12および/またはIL-6)のレベルと比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10倍以上のいずれかの上昇である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを投与した後の、1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12、および/またはIL-6)のレベルの上昇は、RNAワクチンの投与前の1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12、および/またはIL-6)の上昇と比較して、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、少なくとも約200倍、少なくとも約210倍、少なくとも約220倍、少なくとも約230倍、少なくとも約240倍、少なくとも約250倍、少なくとも約260倍、少なくとも約270倍、少なくとも約280倍、少なくとも約290倍、少なくとも約300倍以上のいずれかの上昇である。いくつかの実施形態において、1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12、および/またはIL-6)のレベルの上昇は、RNAワクチンの投与後約4時間、約5じかん、または約6時間以上いずれかにおいて個体の末梢血(例えば血漿)中に存在する。末梢血(例えば、血漿)中の炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12および/またはIL-6)のレベルは、ELISA、アプタマーベースのアッセイ、ウェスタンブロッティング、および質量分析等のイムノアッセイを含む、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して定量することができる。いくつかの実施形態において、末梢血(例えば、血漿)中における炎症性サイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、IL-12および/またはIL-6)のレベルが、ELISAアッセイを使用して定量される。
【0204】
個体における腫瘍にネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法も本明細書で提供される。特定の実施形態において、方法は、個体に有効量のRNAワクチンを投与する皇帝を含み、ここで、RNAワクチンは、個体から得られた腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されたネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のいずれかに特異的である。ネオエピトープ特異的CD8+T細胞の個体における腫瘍への輸送は、例えば、Cowell LG(2019)Cancer Res,1457.2019に記載されているように、当技術分野で公知の任意の方法によって測定され得る。例えば、腫瘍から採取した試料中のT細胞受容体を配列決定して、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的なT細胞受容体の頻度を同定および測定することができる。
【0205】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、メモリー表現型(例えば、ネオエピトープ特異的T細胞はCD8+メモリーT細胞である)を有する。いくつかの実施形態において、メモリー表現型を有するネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、CD45ROポジティブおよびCCR7ネガティブである。特定の実施形態において、メモリー表現型を有するネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、エフェクターメモリーT細胞(すなわちTem)である。特定の実施形態において、ネオエピトープ特異的CD8+T細胞のメモリー表現型は、当技術分野で公知の任意のマーカーを使用して決定し得る。メモリー表現型(例えば、CD45ROポジティブおよびCCR7ネガティブ)は、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別およびフローサイトメトリー等の当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。
【0206】
いくつかの本明細書に提供する方法の実施形態において、個体は、低~中程度の突然変異負荷を有する腫瘍を有する。特定の実施形態において、腫瘍の変異負荷は、腫瘍における体細胞変異を定量することによって決定される。特定の実施形態において、個体は、300以下の体細胞変異(例えば、300以下、250以下、200以下、150以下、100以下、50以下、25以下、10以下、5以下または1つの体細胞変異のいずれか)を有する腫瘍を有する。特定の実施形態において、個体は、少なくとも約100(例えば、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、またはそれ以上のいずれか)の体細胞変異を有する腫瘍を有する。特定の実施形態において、個体は、最大1000の体細胞変異(例えば、1以上、10以上、20以上、40以上、50以上、100以上、150以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、または1000以上のいずれかの体細胞変異)を有する腫瘍を有する。特定の実施形態において、個体は約100~約2000(例えば、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900は約2000のいずれか)の体細胞変異を有する腫瘍を有する。特定の実施形態において、個体は、約300~約1000個の体細胞変異を有する腫瘍を有する。腫瘍の変異負荷は、全エクソームシーケンシング(WES)等の当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。
【0207】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態において、個体は、低い腫瘍負荷を有する。特定の実施形態において、個体は、その個体における腫瘍と同じ型の腫瘍またはがんを有する個体についての腫瘍負荷の中央値の25%以下(例えば、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2.5%以下、1%以下のいずれか)である腫瘍負荷を有する。特定の実施形態において、個体は、その個体における腫瘍と同じ型の腫瘍またはがんを有する個体についての腫瘍負荷の中央値の50%以下(例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2.5%以下または1%以下のいずれか)である腫瘍負荷を有する。個体における腫瘍量は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Caiら(2018)Chronic Diseases and Translational Medicine,4(1):18-28;Nishino M(2018)ASCO Educational Book,28:1019-29およびAkbarら、(2019)Scientific Reports,9:14099.に記載されているような方法を用いて測定され得る。例えば、腫瘍負荷は、腫瘍直径(例えば、最大腫瘍直径および/または組み合わせ腫瘍直径)を定量化し、腫瘍体積を定量化し、転移の数を定量化することによって測定し得る。特定の実施形態において、個体における腫瘍負荷は、手動で(例えば、臨床医および/または放射線科医によって)または自動で(例えば、計算手法を用いて)測定される。本明細書で使用される場合、個体における腫瘍負荷はまた、個体における腫瘍負荷を指す。
【0208】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、腫瘍はPD-L1発現が低いかまたはネガティブである。一定の実施形態において、腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞の約5%未満(例えば、約5%未満、約4.5%未満、約4%未満、約3.5%未満、約3%未満、約2.5%未満、約2%未満、約1.5%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.25%未満のいずれか)はPD-L1を発現する。一定の実施形態において、腫瘍から得られた試料中の免疫細胞の約5%未満(例えば、約5%未満、約4.5%未満、約4%未満、約3.5%未満、約3%未満、約2.5%未満、約2%未満、約1.5%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.25%未満のいずれか)はPD-L1を発現する。PD-L1を発現する腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞および/または免疫細胞のパーセンテージは、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別またはフローサイトメトリー等の当技術分野で公知の任意の方法に従って決定することができる。特定の実施形態において、腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞または免疫細胞の、PD-L1を発現するパーセンテージは、免疫組織化学を用いて決定される。いくつかの実施形態において、PD-L1を発現する腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞および/または免疫細胞のパーセンテージは、免疫組織化学または当技術分野で公知の任意の方法に従ってPD-L1の膜染色のレベルを定量することによって決定することができる。いくつかの実施形態において、腫瘍から得られた試料中の腫瘍細胞および/または免疫細胞の、PD-L1を発現するパーセンテージは、Ventana SP142アッセイを用いて決定される。
【0209】
RNAワクチンおよびPD-1軸アンタゴニストの投与
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、約15μg~約100μg(例えば、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μgまたは約100μgのいずれか)の用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、個体へ静脈内投与される。
【0210】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、7日または1週間の間隔で個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、14日または2週間の間隔で個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、12週間は84日間の間隔で個体に投与される。
【0211】
本明細書で提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは4回の21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンがサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル4の1日目に個体に投与される。
【0212】
本明細書で提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは21日間サイクルで個体に投与され、RNAワクチンがサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供する方法は、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日ごとにRNAワクチンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0213】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、21日間サイクルで個体に投与し、RNAワクチンは、サイクル2の1、8および15日目ならびにサイクル3の1および15日目ならびにサイクル7の1日目に個体に投与する。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供する方法は、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日ごとにRNAワクチンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0214】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、1または2週間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、24週間の間隔で維持段階中に個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、7または14日間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、168日間の間隔で維持段階中に個体に投与される。
【0215】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、4回の21日間サイクルで誘導段階中に個体に投与され、ここで、RNAワクチンは、サイクル1の第1、8、および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル4の1日目に誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、維持段階中にサイクル5の1日目のおよびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。
【0216】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、21日間サイクルで個体に投与され、ここで、誘導段階中に、RNAワクチンは、サイクル1の1、8、および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目に個体に投与され、維持段階中、RNAワクチンは、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、誘導段階は、RNAワクチンの最大9回の投与を含む。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0217】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、21日間サイクルで個体に投与され、ここで、誘導段階中に、RNAワクチンは、サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル7の1日目に個体に投与され、維持段階中、RNAワクチンは、サイクル13の1日目およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。いくつかの実施形態において、誘導段階は、最大9回のRNAワクチンの投与を含む。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0218】
特定の実施形態において、維持段階は、個体による疾患進行または治療からの離脱まで継続される。
【0219】
特定の実施形態において、個体は、少なくとも3用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、個体は、少なくとも6用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、個体は、少なくとも9用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、個体は、約3用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、個体は、約6用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、個体は、約9用量のRNAワクチンが投与される。特定の実施形態において、誘導段階は、最大9回のRNAワクチンの投与を含む。特定の実施形態において、個体は、9回未満のRNAワクチンが投与される。
【0220】
本明細書で提供する方法のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニストを個体に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、個体に静脈内投与する。
【0221】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の実施形態において、抗PD-1抗体はニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0222】
本明細書で提供する方法の特定の実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。特定の実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体はアベルマブまたはデュルバルマブである。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、以下を含む:(a)GFTFSDSWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-2、およびRHWPGGFDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-3を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)RASQDVSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、SASFLYS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、およびQQYLYHPAT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。特定の実施形態にお知恵、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、個体に、約1200mgの用量で投与される。
【0223】
特定の実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、21日間または3週間の間隔で(例えば21日サイクルの1日目に)個体に投与する。
【0224】
本明細書に提供する方法のいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブであり、ここで、アテゾリズマブは、21日間サイクルで個体に投与され、ここで、アテゾリズマブは、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12のそれぞれの1日目に投与される。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、サイクル13の1日目およびその後3週間または21日ごとにさらに投与される。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブの投与は、個体における疾患進行の発生まで継続される。
【0225】
本明細書に提供する方法いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストはアテゾリズマブであり、アテゾリズマブは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に21日サイクルで個体に投与され、ここで、誘導段階中に、アテゾリズマブは、サイクル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12のそれぞれ1日目に投与され、誘導段階後の維持段階中、アテゾリズマブは、サイクル13の1日目およびその後3週間または21日に1回、投与される。いくつかの実施形態において、維持段階は、個体における腫瘍進行の発生まで継続される。
【0226】
いくつかの実施形態において、疾患進行が、固形腫瘍応答評価基準バージョン1.1(RECIST v1.1)に従って評価される。
【0227】
投与に対する応答
腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する方法、個体において腫瘍へのネオエピトープ特異的CD8+T細胞の輸送を誘導する方法、および/または本明細書で提供される治療方法(例えば、下記の第VII節を参照されたい)のいくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体において完全奏効(CR)または部分奏効(PR)をもたらす。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体において完全奏効(CR)をもたらす。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与は、個体において完全奏効(CR)をもたらす。特定の実施形態において、完全奏効または部分奏効は、固形腫瘍応答評価基準バージョン1.1(RECIST v1.1)または免疫改変RECISTに従って評価される。特定の実施形態において、完全または部分応答は、ベースラインからRNAワクチンの最後の投与、別の全身性抗がん治療の開始、疾患進行、または死亡まで評価される。
【0228】
本明細書に提供する方法の特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、少なくとも約4%(例えば、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも90%またはそれ以上のいずれか)の複数の個体における完全奏効または部分奏効をもたらす。
【0229】
特定の実施形態において、完全奏効または部分奏効が約6ヶ月以上持続する(例えば、約6ヶ月以上、約7ヶ月以上、約8ヶ月以上、約9ヶ月以上、約10ヶ月以上、約11ヶ月以上、約12ヶ月以上、約14ヶ月以上、約15ヶ月以上、約20ヶ月以上、約24ヶ月以上、約30ヶ月以上、約36ヶ月以上、約42ヶ月以上、約48ヶ月以上、約54ヶ月以上、または約60ヶ月以上のいずれか)。特定の実施形態において、完全奏効が約10ヶ月以上持続する。
【0230】
特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、少なくとも約20%(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%)の複数の個体における安定疾患をもたらす。特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約42%が安定した疾患を有することをもたらす。特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、複数の個体の少なくとも約49%が安定疾患を有することをもたらす。
【0231】
いくつかの実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、個体の少なくとも60%(例えば、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも60%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれか)が、RNA-ワクチン誘導性ネオ抗原特異的CD8+T細胞応答(例えば、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的な少なくとも約1%(例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、またはそれ以上)のCD8+T細胞を含有する、または、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されるネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である)を有することをもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、個体の少なくとも60%(例えば、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれか)が、RNA-ワクチン誘導性ネオ抗原特異的CD8+T細胞応答(例えば、RNAワクチンの投与後に個体から得られる末梢血試料が、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的な少なくとも約1%~約6%のCD8+T細胞を含むか、または、RNAワクチンの投与後に腫瘍に輸送されるネオエピトープ特異的CD8+T細胞は、RNAワクチンの1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるネオエピトープの少なくとも1つに特異的である)を有することをもたらす。特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、個体の約77%がRNAワクチン誘導ネオ抗原特異的CD8+T細胞応答を有する安定疾患を有することをもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、個体の約87%がRNAワクチン誘導ネオ抗原特異的CD8+T細胞応答を有することをもたらす。RNA-ワクチン誘導性ネオ抗原特異的CD8+T細胞応答は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば、ELISPOTアッセイ、T細胞受容体配列決定またはMHC多量体分析を使用してアッセイすることができる。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約70%、例えば、複数の個体の少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約73%の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約86%の末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞の誘導をもたらす。RNA-ワクチン誘導性ネオ抗原特異的CD8+および/またはCD4+T細胞応答は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば、ELISPOTアッセイ、T細胞受容体配列決定またはMHC多量体分析を使用してアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、末梢血中のネオエピトープ特異的CD4+および/またはCD8+T細胞は、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって検出される。
【0233】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与は、投与されたRNAワクチンの各用量で炎症促進性サイトカインの放出をもたらす。
【0234】
いくつかの実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、RNAワクチンを投与されていない腫瘍を有する複数の個体と比較して、無増悪生存期間(PFS)の増加(例えば、PFSの平均値または中央値の増加)をもたらす。いくつかの実施形態において、PFSは、日、週、月、または年単位で測定される。特定の実施形態において、PFSは、RECIST v1.1に従って決定される。特定の実施形態において、腫瘍を有する複数の個体へのRNAワクチンの投与は、RNAワクチンを投与されていない腫瘍を有する複数の個体と比較して、全生存の増加(例えば、OSの平均値または中央値の増加)をもたらす。特定の実施形態において、全生存は、日、週、月、または年単位で測定される。特定の実施形態において、全生存は、RNAワクチンの投与後の特定の時点、例えば数日、数週間、数ヶ月または数年で生存している個体のパーセンテージを指す。
【0235】
特定の実施形態において、治療は、RNAワクチンの不在下でのPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含む治療と比較して、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する。いくつかの実施形態において、治療は、RNAワクチンの不在下でのPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含む治療と比較して全奏効率(ORR)を改善する。いくつかの実施形態において、ORRは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を伴う患者の割合を指す。いくつかの実施形態において、治療は、RNAワクチンの不在下でのPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含む治療と比較して、個体における応答期間(DOR)を延長する。いくつかの実施形態において、治療は、RNAワクチンの不在下でのPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含む治療と比較して、個体における健康に関連した生活の質(HRQoL)スコアを改善する。
【0236】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法によるRNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約2%(例えば、複数の個体の少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は尿路上皮腫瘍(例えばチェックポイント阻害剤で以前に治療されていない)であり、RNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約10%(例えば、複数の個体の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は腎腫瘍(例えばチェックポイント阻害剤で以前に治療されていない)であり、RNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約22%(例えば、複数の個体の少なくとも約22%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍は黒色腫腫瘍(例えばチェックポイント阻害剤で以前に治療されていない)であり、RNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約30%(例えば、複数の個体の少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍はTNBC腫瘍(例えばチェックポイント阻害剤で以前に治療されていない)であり、RNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約4%(例えば、複数の個体の少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。いくつかの実施形態において、腫瘍はNSCLC腫瘍(例えばチェックポイント阻害剤で以前に治療されていない)であり、RNAワクチンの複数の個体への投与は、複数の個体の少なくとも約10%(例えば、複数の個体の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のいずれか)における客観的奏効をもたらす。客観的奏効は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)v1.1評価基準による、個体における完全奏効または部分奏効の発生を指す(例えば、Eisenhauerら(2009)Eur J Cancer,45:228-47.を参照のこと)。
【0237】
腫瘍を有する個体
本明細書に提供される方法の特定の実施形態において、個体は、ヒトである。
【0238】
本明細書において提供する方法のいくつかの実施形態において、個体は局所進行性、再発性または転移性の不治悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、個体は、局所進行性もしくは転移性の固形腫瘍を有するか、または1つ以上の転移性再発を有する。特定の実施形態において、腫瘍または悪性腫瘍は、RNAワクチンの投与前の少なくとも1つの標準治療後に進行している。特定の実施形態において、標準治療は、RNAワクチンの投与前に、個体にとって無効、忍容できない、または不適切であることが証明されている。特定の実施形態において、個体は、RNAワクチンの投与前に、0、または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG:Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステータスを有する。特定の実施形態において、個体は、RNAワクチンの投与前にRECIST v1.1による測定可能な疾患を有する。
【0239】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍、膀胱腫瘍、腎腫瘍、頭頸部腫瘍、肉腫腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、肝臓腫瘍、または結腸直腸腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍は乳癌腫瘍であり、乳癌腫瘍は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)腫瘍である。本明細書において提供する方法のいくつかの実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍、膀胱腫瘍、腎腫瘍、頭頸部腫瘍、肉腫腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、肝臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、結腸腫瘍、腎臓腫瘍、子宮頸部腫瘍、メルケル細胞がん(MCC)腫瘍、子宮内膜腫瘍、軟部組織肉腫腫瘍、食道腫瘍、食道胃接合部、骨肉腫腫瘍、甲状腺腫瘍または結腸直腸腫瘍である。
【0240】
本明細書において提供する方法のいくつかの実施形態において、前記RNAワクチンの投与前に、個体は1つ以上のがん治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は1つ以上のがん治療または3~5のがん治療で治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は約1~約20(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20以上)のがん治療により治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は少なくとも1つのがん治療で治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は少なくとも約3つのがん治療で治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は少なくとも約5つのがん治療で治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は少なくとも3つから5つのがん治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は約1~約17の間(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17のいずれか)または約1~約9の間(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9のいずれか)のがん治療により治療されている。全身がん療法の例としては、化学療法、ホルモン治療、放射線治療、標的治療、免疫療法、または例えばPalumboら(2013)Front Pharmacol,4:57に記載されているような他の治療が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
本明細書において提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は免疫療法で治療されている。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、抗CTLA4治療、またはそれらの任意の組合せ)で治療されている。特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、抗CTLA4治療、またはそれらの任意の組合せ)で治療されている。
【0242】
本明細書において提供する方法のいくつかの実施形態において、腫瘍はNSCLC腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されている。特定の実施形態において、腫瘍はNSCLC腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。
【0243】
特定の実施形態において、腫瘍はTNBC腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されている。特定の実施形態において、腫瘍はTNBC腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。本明細書で使用される場合、TNBC腫瘍は、乳房のエストロゲン受容体(ER)ネガティブ、プロゲステロン受容体ネガティブ、およびヒト上皮成長因子受容体2(HER2)ネガティブ腺癌を指す。
【0244】
特定の実施形態において、腫瘍は結腸直腸がん腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されている。特定の実施形態において、腫瘍は結腸直腸がん腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。
【0245】
特定の実施形態において、腫瘍は頭頸部扁平上皮癌腫であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されている。特定の実施形態において、腫瘍は頭頸部扁平上皮癌腫であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。
【0246】
特定の実施形態において、腫瘍は尿路上皮癌腫腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されていない。特定の実施形態において、腫瘍は尿路上皮癌腫腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。
【0247】
特定の実施形態において、腫瘍は腎細胞癌腫であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されてい内。特定の実施形態において、腫瘍は腎細胞癌腫であり、RNAワクチンの投与前に、個体は抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で治療されている。
【0248】
特定の実施形態において、腫瘍は黒色種腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されていない。特定の実施形態において、腫瘍は黒色種腫瘍であり、RNAワクチンの投与前に、個体は以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されている。
【0249】
特定の実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は免疫調節剤、例えばトール様受容体(TLR)アゴニスト、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)/トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)の阻害剤、またはOX40のアゴニストが投与されている。
【0250】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、個体は、臨床的に有意な肝疾患を有さない。特定の実施形態において、個体は、RNAワクチンの投与前に脾臓摘出を受けていない。特定の実施形態において、個体は、原発性免疫不全、細胞性免疫不全(例えば、DiGeorge症候群、T-ネガティブ重症複合免疫不全症[SCID])またはT-細胞およびB-細胞の複合免疫不全(例えば、T-およびB-ネガティブSCID、Wiskott-Aldrich症候群、毛細血管拡張性運動失調症、一般的可変免疫不全)を有さない。一定の実施形態において、個体は、原発性中枢神経系(CNS)悪性腫瘍、未治療CNS転移または活動性CNS転移を有さない。特定の実施形態において、個体は、軟膜疾患を有さない。特定の実施形態において、個体は、自己免疫疾患を有さない。特定の実施形態において、個体は、特発性肺線維症、肺臓炎、器質化肺炎、または胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンのスクリーニングでの活動性肺臓炎の証拠;ヒト免疫不全ウイルス感染;活動性B型肝炎またはC型肝炎;活動性または潜伏性結核感染;または重度の感染症を有さない。特定の実施形態において、個体は、同種骨髄移植または固形臓器移植を受けたことがない。
【0251】
III.RNAワクチン
本開示の特定の局面は、個別化がんワクチン(PCV)に関する。いくつかの実施形態において、PCVはRNAワクチンである。例示的なRNAワクチンの特徴を以下に記載する。いくつかの実施形態において、本開示は、以下に記載される1種以上のRNAワクチンの特徴/配列を含むRNAポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、RNAポリヌクレオチドは一本鎖mRNAポリヌクレオチドである。他の実施形態において、本開示は、以下に記載される1つ以上のRNAワクチンの特徴/配列を含むRNAをコードするDNAポリヌクレオチドを提供する。
【0252】
個別化がんワクチンは、潜在的な免疫刺激活性を有すると同定された個別化ネオ抗原(すなわち、患者のがんにおいて特異的に発現される腫瘍関連抗原(TAA))を含む。本明細書に記載の実施形態において、PCVは核酸、例えばメッセンジャーRNAである。したがって、理論に拘束されることを望むものではないが、投与されると、個別化がんワクチンは、抗原提示細胞(APC)によって取り込まれ、翻訳され、発現されたタンパク質は、APCの表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子を介して提示されると考えられる。これは、TAAを発現するがん細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびメモリーT細胞依存性免疫応答の両方の誘導をもたらす。
【0253】
PCVは、典型的には、複数のネオ抗原エピトープ(「ネオエピトープ」)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、28、29もしくは30のネオエピトープまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、28、29、または30のネオエピトープを含み、任意に個々のネオエピトープ間にリンカー配列を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で使用されるネオエピトープは、患者のがんに特異的であるが、患者の正常細胞には見られない新規エピトープを指す。いくつかの実施形態において、ネオエピトープは、MHCに結合した場合にT細胞に提示される。いくつかの実施形態において、PCVは、5’mRNAキャップ類縁体、5’UTR、シグナル配列、抗原発現を促進するドメイン、3’UTR、および/またはポリA尾部も含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する10~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する少なくとも5のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する5~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する5~10のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0254】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAワクチンの製造は多段階プロセスであり、それによって患者の腫瘍における体細胞変異が次世代シーケンシング(NGS)によって同定され、免疫原性ネオ抗原エピトープ(または「ネオエピトープ」)が予測される。選択されたネオエピトープを標的とするRNAがんワクチンは、患者ごとに製造される。いくつかの実施形態において、ワクチンは、患者の腫瘍に特異的な最大10個のネオエピトープ(合計で最大20個のネオエピトープ)をそれぞれコードする最大2個のメッセンジャーRNA分子からなるRNAベースのがんワクチンである。
【0255】
いくつかの実施形態において、発現された非同義変異は、腫瘍DNAおよび末梢血単核細胞(PBMC)DNAの全エクソームシーケンシング(WES)(患者由来の健康な組織の供給源として)ならびに腫瘍RNAシーケンシング(発現を評価するため)によって同定される。得られた変異タンパク質のリストから、個々の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に対する予測エピトープの結合親和性、および関連RNAの発現レベルを含む複数の因子に基づいて、それらの可能性のある免疫原性をランク付けするバイオインフォマティクスワークフローを使用して、潜在的ネオ抗原を予測する。突然変異の発見、優先順位付け、および確認プロセスは、健康な組織におけるそれぞれの野生型遺伝子の発現レベルに関する包括的な情報を提供するデータベースによって補完される。この情報は、好ましくないリスクプロファイルを有する対象候補を除去することによって、個人向けリスク軽減戦略の開発を可能にする。重要な器官における可能性のあるより高い自己免疫リスクを有するタンパク質に生じる変異は除外され、ワクチン産生のために考慮されない。いくつかの実施形態において、個々の患者についてそれぞれCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞応答を誘発すると予測される最大20のMHCIおよびMHCIIネオエピトープが、ワクチンへの包含のために選択される。複数のネオエピトープに対するワクチン接種は、PCVに対する全体的な免疫応答の幅および規模を増加させると予想され、腫瘍が有効な免疫応答の選択圧に曝露された場合に起こり得る免疫回避のリスクを軽減するのに役立ち得る(Tran E,Robbins PF,Lu YCらN Engl J Med 2016;375:2255-62;Verdegaal EM,de Miranda NF,Visser MらNature 2016;536:91-5)。
【0256】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、アミノ酸リンカーをコードする1種以上のポリヌクレオチド配列を含む。例えば、アミノ酸リンカーは、2つの腫瘍特異的ネオエピトープ配列の間、腫瘍特異的ネオエピトープ配列と融合タンパク質タグ(例えば、MHC複合体ポリペプチドに由来する配列を含む)の間、または分泌シグナルペプチドと腫瘍特異的ネオエピトープ配列の間で使用することができる。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは複数のリンカーをコードする。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する5~20個のネオエピトープをコードする1種以上のポリヌクレオチドを含み、各エピトープをコードするポリヌクレオチドは、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドによって分離されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する5~10個のネオエピトープをコードする1種以上のポリヌクレオチドを含み、各エピトープをコードするポリヌクレオチドは、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドによって分離されている。幾つかの実施形態において、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドはまた、N末端融合タグ(例えば、分泌シグナルペプチド)をコードするポリヌクレオチドとネオエピトープのうちの1つをコードするポリヌクレオチドとの間、および/またはネオエピトープのうちの1つをコードするポリヌクレオチドとC末端融合タグ(例えば、MHCポリペプチドの一部を含む)をコードするポリヌクレオチドとの間に存在する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンによってコードされる2つ以上のリンカーは、異なる配列を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、複数のリンカーをコードし、その全てが同じアミノ酸配列を共有する。
【0257】
様々なリンカー配列が当技術分野で公知である。いくつかの実施形態において、リンカーは可動性リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、G、S、Aおよび/またはT残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーはグリシン残基およびセリン残基からなる。いくつかの実施形態において、リンカーは、約5~約20アミノ酸長または約5~約12アミノ酸長、例えば、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、リンカーは、配列GGSGGGGSGG(配列番号39)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンのリンカーは、配列GGCGGCUCUGGAGGAGGCGGCUCCGGAGGC(配列番号37)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンのリンカーは、配列GGCGGCTCTGGAGGAGGCGGCTCCGGAGGC(配列番号38)を含むDNAによってコードされる。
【0258】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは5’キャップを含む。基本的なmRNAキャップ構造は、2つのヌクレオシド(例えば、2つのグアニン)と遠位グアニン上の7-メチル基、すなわち、m
7GpppGとの間に5’-5’三リン酸結合を含むことが知られている。例示的なキャップ構造は、例えば、米国特許第8,153,773号および同第9,295,717号、ならびにKuhn,A.N.ら(2010)Gene Ther.17:961-971に見ることができる。いくつかの実施形態において、5’キャップは、構造m
2
7,2’-OGpp
spGを有する。いくつかの実施形態において、5’キャップはベータ-S-ARCAキャップである。S-ARCAキャップ構造は、(例えば、m
7GのC2’位に)2’-Oメチル置換およびリン酸基の1種以上にS置換を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップは、以下:
の構造を含む。
【0259】
いくつかの実施形態において、5’キャップは、β-S-ARCAのD1ジアステレオ異性体(例えば、米国特許第9,295,717号を参照)である。上記構造中の*は、2つのジアステレオ異性体(D1およびD2と命名)中に存在することができるステレオジェニックP中心を示す。ベータ-S-ARCAまたはベータ-S-ARCAのD1ジアステレオマー(D1)は、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマー(ベータ-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出し、したがってより短い保持時間を示すβ-S-ARCAのジアステレオマーである。HPLCは、好ましくは分析HPLCである。一実施形態において、好ましくは以下のフォーマット:5μm、4.6×250mmのフォーマットのSupelcosil LC-18-T RPカラムを用いることにより、流速1.3ml/分を適用することができる。一実施形態において、15分以内の酢酸アンモニウム中のメタノールの勾配、例えば0.05M酢酸アンモニウム中のメタノールの0~25%の直線勾配(pH=5.9)が使用される。UV検出(VWD)は260nmで行うことができ、蛍光検出(FLD)は280nmでの励起および337nmの検出で行うことができる。
【0260】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは5’UTRを含む。mRNA中のタンパク質コード配列に対して5’に見出される特定の非翻訳配列は、翻訳効率を高めることが示されている。例えばKozak,M.(1987)J.Mol.Biol.196:947-950を参照されたい。いくつかの実施形態において、5’UTRは、ヒトアルファグロビンmRNAからの配列を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、UUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号23)の5’UTR配列を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの5’UTR配列は、配列TTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号24)を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの5’UTRは、配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号21)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの5’UTR配列は、配列GGCGAACTAGTATTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号22)を含むDNAによってコードされる。
【0261】
本明細書において提供される方法のいくつかの実施形態において、例示的RNAワクチンの定常領域は、配列番号42のリボヌクレオチド配列(5’→3’)を含む。最初の2つのG残基間の結合は、5’キャップ構造について表1および
図3に示されるような異常な結合(5’→5’)-pp
sp-である。「N」は、(任意のリンカーによって分離された)1つ以上の(例えば、1~20の)ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列の位置を指す。腫瘍特異的配列(C131~A132;太字テキストでマークする)の挿入部位を太字で示す。例示的なRNA配列中の修飾塩基および一般的でない連結については表1を参照されたい。
【表1】
【0262】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。当技術分野で公知のように、分泌シグナルペプチドは、翻訳時にポリペプチドを小胞体から分泌経路に輸送するように指示するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、MHCポリペプチド等のヒトポリペプチドに由来する。例えば、ヒト樹状細胞におけるMHCクラスIおよびIIエピトープのプロセシングおよび提示を改善する例示的な分泌シグナルペプチドを記載するKreiter,S.ら(2008)J.Immunol.180:309-318を参照されたい。いくつかの実施形態において、翻訳時に、シグナルペプチドは、RNAワクチンによってコードされる1種以上のネオエピトープ配列(複数可)に対してN末端にある。いくつかの実施形態において、分泌シグナルペプチドは、配列MRVMAPRTLILLLSGALALTETWAGS(配列番号27)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの分泌シグナルペプチドは、AUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号25)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの分泌シグナルペプチドは、配列ATGAGAGTGATGGCCCCCAGAACCCTGATCCTGCTGCTGTCTGGCGCCCTGGCCCTGACAGAGACATGGGCCGGAAGC(配列番号26)を含むDNAによってコードされる。
【0263】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインは、MHC分子の膜貫通/細胞質ドメインに由来する。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および略語「MHC」は、全ての脊椎動物で生じる遺伝子の複合体に関する。正常な免疫応答におけるリンパ球と抗原提示細胞との間のシグナル伝達におけるMHCタンパク質または分子の機能は、それらがペプチドに結合し、T細胞受容体(TCR)による可能な認識のためにそれらを提示することを含む。MHC分子は、細胞内プロセシング区画内のペプチドに結合し、抗原提示細胞の表面上のこれらのペプチドをT細胞に提示する。HLAとも呼ばれるヒトMHC領域は、6番染色体上に位置し、クラスI領域およびクラスII領域を含む。クラスIアルファ鎖は、約44kDaの分子量を有する糖タンパク質である。ポリペプチド鎖は、350アミノ酸残基を幾分超える長さを有する。これは、3つの機能的領域、すなわち外部、膜貫通および細胞質領域に分けることができる。外部領域は、283アミノ酸残基の長さを有し、アルファ1、アルファ2およびアルファ3の3つのドメインに分けられる。ドメインおよび領域は、通常、クラスI遺伝子の別個のエクソンによってコードされる。膜貫通領域は、原形質膜の脂質二重層に及ぶ。これは、通常、アルファヘリックスに配置された23個の疎水性アミノ酸残基からなる。細胞質領域、すなわち細胞質に面し、膜貫通領域に接続している部分は、典型的には32アミノ酸残基の長さを有し、細胞骨格の要素と相互作用することができる。アルファ鎖は、ベータ2-ミクログロブリンと相互作用し、したがって、細胞表面上にアルファ-ベータ2二量体を形成する。「MHCクラスII」または「クラスII」という用語は、主要組織適合遺伝子複合体クラスIIタンパク質または遺伝子に関する。ヒトMHCクラスII領域内には、クラスIIα鎖遺伝子およびβ鎖遺伝子のDP、DQおよびDRサブ領域がある(すなわち、DPα、DPβ、DQα、DQβ、DRαおよびDRβ)。クラスII分子は、それぞれアルファ鎖およびベータ鎖からなるヘテロ二量体である。両方の鎖は、31~34kDa(a)または26~29kDA(ベータ)の分子量を有する糖タンパク質である。アルファ鎖の全長は229~233アミノ酸残基まで変動し、ベータ鎖の全長は225~238残基まで変動する。アルファ鎖およびベータ鎖はいずれも、外部領域、接続ペプチド、膜貫通領域および細胞質尾部からなる。外部領域は、2つのドメイン、アルファ1およびアルファ2、またはベータ1およびベータ2からなる。接続ペプチドは、それぞれアルファ鎖およびベータ鎖の9残基長である。これは、アルファ鎖およびベータ鎖の両方において23アミノ酸残基からなる膜貫通領域に二つのドメインを接続する。細胞質領域、すなわち細胞質に面し、膜貫通領域に接続している部分の長さは、アルファ鎖では3~16残基、ベータ鎖では8~20残基で変化する。例示的な膜貫通/細胞質ドメイン配列は、米国特許第8,178,653号および同第8,637,006号に記載されている。いくつかの実施形態において、翻訳時に、膜貫通および/または細胞質ドメインは、RNAワクチンによってコードされる1種以上のネオエピトープ配列(複数可)のC末端にある。いくつかの実施形態において、RNAワクチンによってコードされるMHC分子の膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインは、配列IVGIVAGLAVLAVVVIGAVVATVMCRRKSSGGKGGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA(配列番号30)を含む。いくつかの実施形態において、MHC分子の膜貫通および/または細胞質ドメインは、配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCC(配列番号28)を含む。いくつかの実施形態において、MHC分子の膜貫通および/または細胞質ドメインは、配列ATCGTGGGAATTGTGGCAGGACTGGCAGTGCTGGCCGTGGTGGTGATCGGAGCCGTGGTGGCTACCGTGATGTGCAGACGGAAGTCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCTACAGCCAGGCCGCCAGCTCTGATAGCGCCCAGGGCAGCGACGTGTCACTGACAGCC(配列番号29)を含むDNAによってコードされる。
【0264】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、1種以上のネオエピトープ配列に対してN末端である分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、1種以上ネオエピトープ配列(複数可)に対してC末端である膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインをコードするポリヌクレオチド配列の両方を含む。そのような配列を組み合わせることにより、ヒト樹状細胞におけるMHCクラスIおよびIIエピトープのプロセシングおよび提示が改善されることが示されている。例えば、Kreiter,S.ら(2008)J.Immunol.180:309-318を参照されたい。
【0265】
骨髄DCでは、RNAは再王室に放出され、ポリ-ネオエピトープペプチドに翻訳される。ポリペプチドは、抗原提示を増強するための追加の配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのN-末端のMHCI重鎖からのシグナル配列(sec)を使用して、新生分子を小胞体に標的化し、これはMHCI提示効率を高めることが示されている。理論に拘束されることを望むものではないが、MHCI重鎖の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、MHCII提示を改善することが示されたエンドソーム/リソソーム区画にポリペプチドを誘導すると考えられる。
【0266】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは3’UTRを含む。mRNA中の3’対タンパク質コード配列に見られる特定の非翻訳配列は、RNA安定性、翻訳、およびタンパク質発現を改善することが示されている。3’UTRとしての使用に適したポリヌクレオチド配列は、例えば、PG公開番号、米国特許出願公開第20190071682号に記載されている。いくつかの実施形態において、3’UTRは、AESの3’非翻訳領域もしくはその断片および/またはミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNAを含む。「AES」というは、スプリットのアミノ末端エンハンサー(Amino-Terminal Enhancer Of Split)に関し、AES遺伝子を含む(例えば、NCBI遺伝子ID:166を参照)。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、タンパク質のgroucho/TLEファミリーに属し、ホモオリゴマーとして、または他のファミリーメンバーと共にヘテロオロジマーとして機能して、他のファミリーメンバー遺伝子の発現を優位に抑制することができる。例示的なAES mRNA配列は、NCBI参照配列アクセッション番号NM_198969で提供される。「MT_RNR1」という用語は、ミトコンドリアにコードされた12S RNAに関し、MT_RNR1遺伝子(例えば、NCBI遺伝子ID:4549を参照)を含む。このRNA遺伝子はMt_rRNAクラスに属する。MT-RNR1に関連する疾患には、拘束性心筋症および聴覚神経障害が含まれる。その関連経路の中には、真核生物におけるリボソーム生合成およびCFTR翻訳忠実度(クラスI変異)がある。例示的なMT_RNR1RNA配列は、NCBI参照配列アクセッション番号NC_012920の配列内に存在する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC(配列番号33)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC(配列番号33)および配列CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG(配列番号35)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号31)を含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCC(配列番号34)を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCG(配列番号36)を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCC配列番号34)の配列およびCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCG(配列番号36)の配列を含むDNAによってコードされる。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの3’UTRは、配列CTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCCCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCGAGACCTGGTCCAGAGTCGCTAGCCGCGTCGCT(配列番号32)を含むDNAによってコードされる。
【0267】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、その3’末端にポリ(A)尾部を含む。いくつかの実施形態において、ポリ(A)尾部は、50個超または100個超のアデニンヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリ(A)尾部は120個のアデニンヌクレオチドを含む。このポリ(A)尾部は、RNA安定性および翻訳効率を高めることが実証されている(Holtkamp,Sら(2006)Blood 108:4009-4017)。いくつかの実施形態において、ポリ(A)尾部を含むRNAは、少なくとも50、100または120のアデニン連続ヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド配列およびIIS型制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列を転写の5’→3’方向に含むDNA分子を転写することによって生成される。翻訳を改善する例示的なポリ(A)尾部および3’UTR配列は、例えば、米国特許第9,476,055号に見られる。
【0268】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAワクチンまたは分子は、以下の一般構造(5’→3’方向)を含む:(1)5’キャップ;(2)5’非翻訳領域(UTR);(3)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(4)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;(5)3’UTRであって、(a)Split(AES)mRNAのアミノ末端エンハンサーの3’非翻訳領域またはその断片;および(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNAまたはその断片を含む3’UTR;ならびに(6)ポリ(A)配列。いくつかの実施形態において、本開示のRNAワクチンまたはRNA分子は、5’→3’方向に、ポリヌクレオチド配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号19);およびポリヌクレオチド配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCCUAGUAACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号20)を含む。有利には、構造または配列のこの組合せおよび配向を含むRNAワクチンは、RNA安定性の改善、翻訳効率の向上、抗原提示および/またはプロセシングの改善(例えば、DCによる)、ならびにタンパク質発現の増加のうちの1つ以上を特徴とする。
【0269】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAワクチンまたは分子は、配列番号42の配列(5’→3’方向)を含む。例えば、
図2を参照されたい。いくつかの実施形態において、Nは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21つ、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または30のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態において、Nは、1つ以上のリンカー-エピトープモジュール(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または30の異なるリンカー-エピトープモジュール)をコードするポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態において、Nは、1つ以上のリンカー-エピトープモジュール(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または30の異なるリンカー-エピトープモジュール)および3’末端に追加のアミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列を指す。
【0270】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンまたはRNA分子は、少なくとも1種のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列をさら含み、少なくとも1種のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。いくつかの実施形態において、RNA分子は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または20個の異なるネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0271】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンまたは分子は、5’→3’方向に、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列、およびネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸リンカーおよびネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、リンカー-ネオエピトープモジュール(例えば、同じオープンリーディングフレーム内の5’→3’方向の連続配列)を形成する。いくつかの実施形態において、リンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間、または配列番号19の配列と配列番号20の配列との間にある。いくつかの実施形態において、RNAワクチンまたはRNA分子は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、28個、29個、または30個のリンカー-エピトープモジュールを含む。いくつかの実施形態において、リンカー-エピトープモジュールのそれぞれは、異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、RNAワクチンまたはRNA分子は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個のリンカー-エピトープモジュールを含み、RNAワクチンまたはRNA分子は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個または20個の異なるネオエピトープをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンまたはRNA分子は、5個、10個、または20個のリンカー-エピトープモジュールを含む。いくつかの実施形態において、リンカー-エピトープモジュールのそれぞれは、異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、リンカー-エピトープモジュールは、同じオープンリーディングフレーム内で5’→3’方向に連続配列を形成する。いくつかの実施形態において、第1のリンカー-エピトープモジュールのリンカーをコードするポリヌクレオチド配列は、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の3’である。いくつかの実施形態において、最後のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列の5’である。
【0272】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、または少なくとも1200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは2000ヌクレオチド未満の長さである。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、少なくとも800ヌクレオチドであるが2000ヌクレオチド未満の長さ、少なくとも1000ヌクレオチドであるが2000ヌクレオチド未満の長さ、少なくとも1200ヌクレオチドであるが2000ヌクレオチド未満の長さ、少なくとも1400ヌクレオチドであるが2000ヌクレオチド未満の長さ、少なくとも800ヌクレオチドであるが1400ヌクレオチド未満の長さ、または少なくとも800ヌクレオチドであるが2000ヌクレオチド未満の長さである。例えば、上記の要素を含むRNAワクチンの定常領域は、およそ800ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、5つの腫瘍特異的ネオエピトープ(例えば、それぞれが27個のアミノ酸をコードする)を含むRNAワクチンは、1300ヌクレオチド長を超える。いくつかの実施形態において、10の腫瘍特異的ネオエピトープ(例えば、それぞれが27のアミノ酸をコードする)を含むRNAワクチンは、1800ヌクレオチド長を超える。
【0273】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンはリポプレックスナノ粒子またはリポソームに製剤化される。いくつかの実施形態において、RNA(RNA-リポプレックス)のためのリポプレックスナノ粒子製剤を使用して、本開示のRNAワクチンのIV送達を可能にする。いくつかの実施形態において、合成カチオン性脂質(R)-N,N,N-トリメチル-2,3-ジオレイルオキシ-1-プロパンアミニウムクロリド(DOTMA)およびリン脂質1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含むRNAがんワクチン用のリポプレックスナノ粒子製剤を、例えばIV送達を可能にするために使用する。DOTMA/DOPEリポソーム含有物は、脾臓および他のリンパ器官における抗原提示細胞のIV送達および標的化のために最適化されている。
【0274】
一実施形態において、ナノ粒子は少なくとも1種の脂質を含む。一実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも1種のカチオン性脂質を含む。カチオン性脂質は、モノカチオン性またはポリカチオン性であり得る。任意のカチオン性両親媒性分子、例えば、少なくとも1つの親水性および親油性部分を含む分子は、本発明の意味の範囲内のカチオン性脂質である。一実施形態において、正電荷は少なくとも1種のカチオン性脂質によって占められ、負電荷はRNAによって占められる。一実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも1種のヘルパー脂質を含む。ヘルパー脂質は、中性またはアニオン性脂質であり得る。ヘルパー脂質は、天然脂質、例えばリン脂質もしくは天然脂質の類縁体、または完全合成脂質、または天然脂質と類似性のない脂質様分子であり得る。一実施形態において、カチオン性脂質および/またはヘルパー脂質は、二重層形成脂質である。
【0275】
一実施形態において、少なくとも1種のカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)またはその類縁体もしくは誘導体、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)またはその類縁体もしくは誘導体を含む。
【0276】
一実施形態において、少なくとも1種のヘルパー脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)またはその類縁体もしくは誘導体、コレステロール(Chol)またはその類縁体もしくは誘導体、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)またはその類縁体もしくは誘導体を含む。
【0277】
一実施形態において、少なくとも1種のカチオン性脂質対少なくとも1種のヘルパー脂質のモル比は、10:0~3:7、好ましくは9:1~3:7、4:1~1:2、4:1~2:3、7:3~1:1、または2:1~1:1、好ましくは約1:1である。一実施形態において、この比において、カチオン性脂質のモル量は、カチオン性脂質のモル量にカチオン性脂質の正電荷の数を乗じたものから生じる。
【0278】
一実施形態において、脂質は、当該RNAをカプセル化する小胞に含まれる。小胞は、多層小胞、単層小胞、またはそれらの混合物であり得る。小胞は、リポソームであってもよい。
【0279】
本明細書に記載のナノ粒子またはリポソームを、RNAに対するカチオン性脂質の(+/-)電荷比に応じて正電荷対負電荷を調整し、RNAとカチオン性脂質を混合することによって形成することができる。本明細書に記載のナノ粒子中のRNAに対するカチオン性脂質の+/-電荷比を、以下の式によって計算することができる。(+/-電荷比)=[(カチオン性脂質量(mol))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]:[(RNA量(mol))*(RNA中の負電荷の総数)]。RNA量およびカチオン性脂質量は、ナノ粒子の調製時の負荷量を考慮して当業者が容易に決定することができる。例示的なナノ粒子のさらなる説明については、例えば、PGの米国特許出願公開第20150086612号を参照されたい。
【0280】
一実施形態において、ナノ粒子またはリポソーム中の正電荷対負電荷の全電荷比(例えば、生理学的pHで)は、1.4:1~1:8、好ましくは1.2:1~1:4、例えば1:1~1:3、例えば1:1.2~1:2、1:1.2~1:1.8、1:1.3~1:1.7、特に1:1.4~1:1.6、例えば約1:1.5である。いくつかの実施形態において、生理学的pHにおいて、ナノ粒子の正電荷対負電荷の全電荷比は、
である。いくつかの実施形態において、生理学的pHにおいて、ナノ粒子またはリポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は、1.6:2(0.8)~1:2(0.5)または1.6:2(0.8)~1.1:2(0.55)である。いくつかの実施形態において、生理学的pHにおいて、ナノ粒子またはリポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は1.3:2(0.65)である。いくつかの実施形態において、生理学的pHでは、リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は1.0:2.0以上である。いくつかの実施形態において、生理学的pHでは、リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は1.9:2.0以下である。いくつかの実施形態において、生理学的pHでは、リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は、1.0:2.0以上1.9:2.0以下である。
【0281】
一実施形態において、ナノ粒子は、10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比でDOTMAおよびDOPEを含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTMA中の正電荷の電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。一実施形態において、ナノ粒子は、10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比でDOTMAおよびコレステロールを含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTMA中の正電荷の電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。一実施形態において、ナノ粒子は、10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比でDOTAPおよびDOPEを含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTMA中の正電荷の電荷比は、1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMAとDOPEとを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTMA中の正電荷の電荷比は1.4:1以下である。一実施形態において、ナノ粒子は、DOTMAとコレステロールとを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTMA中の正電荷の電荷比は1.4:1以下である。一実施形態において、ナノ粒子は、DOTAPとDOPEとを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、RNA中の負電荷に対するDOTAP中の正電荷の電荷比は1.4:1以下である。
【0282】
一実施形態において、ナノ粒子またはリポソームのゼータ電位は、-5以下、-10以下、-15以下、-20以下または-25以下である。様々な実施形態において、ナノ粒子またはリポソームのゼータ電位は、-35以上、-30以上または-25以上である。一実施形態において、ナノ粒子またはリポソームは、0mV~-50mV、好ましくは0mV~-40mVまたは-10mV~-30mVのゼータ電位を有する。
【0283】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子またはリポソームの多分散指数は、動的光散乱によって測定される場合、0.5以下、0.4以下、または0.3以下である。
【0284】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子またはリポソームは、動的光散乱によって測定される場合、約50nm~約1000nm、約100nm~約800nm、約200nm~約600nm、約250nm~約700nm、または約250nm~約550nmの範囲の平均径を有する。
【0285】
いくつかの実施形態において、PCVを、例えばリポソーム製剤中で、15μg、25μg、38μg、50μg、または100μgの用量で静脈内投与する。いくつかの実施形態において、15μg、25μg、38μg、50μgまたは100μgのRNAが、用量あたりで送達される(すなわち、用量重量は投与されたRNAの重量を反映し、投与された製剤またはリポプレックスの総重量を反映しない)。1種を超えるPCVを対象に投与してもよく、例えば、対象に、ネオエピトープの組合せを有する1種のPCVを投与し、ネオエピトープの異なる組合せを有する別個のPCVも投与する。いくつかの実施形態において、10個のネオエピトープを有する第1のPCVを、10個の代替エピトープを有する第2のPCVと組み合わせて投与する。
【0286】
いくつかの実施形態において、PCVを、脾臓に送達されるように投与する。例えば、1つ以上の抗原(例えば、腫瘍特異的ネオ抗原)が抗原提示細胞(例えば、脾臓において)に送達されるように、PCVを投与することができる。
【0287】
本開示のPCVまたはRNAワクチンのいずれも、本明細書に記載の方法において用途を見出すことができる。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のPD-1軸結合アンタゴニストを、個別化がんワクチン(PCV)、例えば上記のRNAワクチンと組み合わせて投与する。
【0288】
本開示のRNAワクチンのいずれかをコードするDNA分子を、本明細書中にさら提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のDNA分子は、以下の一般構造(5’→3’方向)を含む:(1)5’非翻訳領域(UTR)をコードするポリヌクレオチド配列;(2)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(3)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;(4)3’UTRをコードするポリヌクレオチド配列であって、(a)Split(AES)mRNAのアミノ末端エンハンサーまたはその断片の3’非翻訳領域;および(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAまたはその断片の非コードRNAを含む3’UTR;ならびに(5)ポリ(A)配列をコードするポリヌクレオチド。いくつかの実施形態において、本開示のDNA分子は、5’→3’方向に、ポリヌクレオチド配列GGCGAACTAGTATTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACCATGAGAGTGATGGCCCCCAGAACCCTGATCCTGCTGCTGTCTGGCGCCCTGGCCCTGACAGAGACATGGGCCGGAAGC(配列番号40)およびポリヌクレオチド配列ATCGTGGGAATTGTGGCAGGACTGGCAGTGCTGGCCGTGGTGGTGATCGGAGCCGTGGTGGCTACCGTGATGTGCAGACGGAAGTCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCTACAGCCAGGCCGCCAGCTCTGATAGCGCCCAGGGCAGCGACGTGTCACTGACAGCCTAGTAACTCGAGCTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCCCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCGAGACCTGGTCCAGAGTCGCTAGCCGCGTCGCT(配列番号41)を含む。
【0289】
いくつかの実施形態において、DNA分子は、5’→3’方向に、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列、およびネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸リンカーおよびネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、リンカー-ネオエピトープモジュール(例えば、同じオープンリーディングフレーム内の5’→3’方向の連続配列)を形成する。いくつかの実施形態において、リンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間、または配列番号40の配列と配列番号41の配列との間にある。いくつかの実施形態において、DNA分子は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、28、29、または30のリンカー-エピトープモジュールを含み、各リンカー-エピトープモジュールは異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、DNA分子は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のリンカー-エピトープモジュールを含み、DNA分子は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19または20の異なるネオエピトープをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、DNA分子は、5、10、または20のリンカー-エピトープモジュールを含む。いくつかの実施形態において、リンカー-エピトープモジュールのそれぞれは、異なるネオエピトープをコードする。いくつかの実施形態において、リンカー-エピトープモジュールは、同じオープンリーディングフレーム内で5’→3’方向に連続配列を形成する。いくつかの実施形態において、第1のリンカー-エピトープモジュールのリンカーをコードするポリヌクレオチド配列は、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の3’である。いくつかの実施形態において、最後のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列の5’である。
【0290】
本開示のDNA分子を転写すること(例えば、直鎖状の二本鎖DNAまたはプラスミドDNAの転写によって、例えばin vitro転写によって)を含む、本開示のRNAワクチンのいずれかを製造する方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、該方法は、転写されたRNA分子をDNA分子から単離および/または精製する工程をさらに含む。
【0291】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAまたはDNA分子は、5’RNAポリメラーゼプロモーターの制御下でRNAが転写されることを可能にし、ポリアデニルカセット(ポリ(A)配列)を含むIIS型制限切断部位を含み、認識配列はポリ(A)配列の3’側に位置するが、切断部位は上流側に位置し、したがってポリ(A)配列内に位置する。IIS型制限切断部位での制限切断は、米国特許第9,476,055号および同第10,106,800号に記載されるように、プラスミドをポリ(A)配列内で線状化することを可能にする。次いで、線状化プラスミドをin vitro転写のための鋳型として使用することができ、得られた転写物はマスクされていないポリ(A)配列で終わる。米国特許第9,476,055号および同第10,106,800号に記載されているIIS型制限切断部位のいずれかを用いてもよい。
【0292】
本明細書で提供する方法のいくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する10~20(10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のいずれか)のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、RNAワクチンはリポプレックスナノ粒子またはリポソームに製剤化される。特定の実施形態において、リポプレックスナノ粒子またはリポソームは、RNAワクチンのRNAをカプセル化する多層構造を形成する1つ以上の脂質を含む。特定の実施形態において、1つ以上の脂質は、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つのヘルパー脂質を含む。特定の実施形態において、1つ以上の脂質は、(R)-N,N,N-トリメチル-2,3-ジオレイルオキシ-1-プロパンアミニウムクロリド(DOTMA)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。特定の実施形態において、生理学的pHでは、リポソームの正電荷対負電荷の全電荷比は1.3:2(0.65)である。
【0293】
特定の実施形態において、RNAワクチンは、5’→3’方向に、(1)5’キャップ;(2)5’非翻訳領域(UTR);(3)分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;(4)腫瘍標本に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;(5)主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列;(6)3’UTRであって、(a)Split(AES)mRNAのアミノ末端エンハンサーの3’非翻訳領域またはその断片;および(b)ミトコンドリアにコードされた12S RNAの非コードRNAまたはその断片を含む3’UTR;ならびに(7)ポリ(A)配列を含むRNA分子を含む。
【0294】
いくつかの実施形態において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、アミノ酸リンカーおよび1つ以上のネオエピトープの第1のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列は、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成し、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。特定の実施形態において、アミノ酸リンカーは、配列GGSGGGGSGG(配列番号39)を含む。特定の実施形態において、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列は、配列GGCGGCUCUGGAGGAGGCGGCUCCGGAGGC(配列番号37)を含む。
【0295】
特定の実施形態において、RNA分子は、5’→3’方向に、少なくとも第2のリンカー-エピトープモジュールをさら含み、少なくとも第2のリンカー-エピトープモジュールは、アミノ酸リンカーをコードするポリヌクレオチド配列と、ネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列とを含み、第2のリンカー-ネオエピトープモジュールを形成するポリヌクレオチド配列は、5’→3’方向に、第1のリンカー-ネオエピトープモジュールのネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にあり、第1のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープは、第2のリンカー-エピトープモジュールのネオエピトープとは異なる。特定の実施形態において、RNA分子は5つのリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、5つのリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。特定の実施形態において、RNA分子は10のリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、10のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。特定の実施形態において、RNA分子は20のリンカー-エピトープモジュールを含み、ここで、20のリンカー-エピトープモジュールはそれぞれ異なるネオエピトープをコードする。
【0296】
いくつかの実施形態において、RNA分子は、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列をさらに含み、アミノ酸リンカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、3’方向において最も遠位にあるネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列と、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列との間にある。
【0297】
特定の実施形態において、5’キャップは、以下:
の構造のD1ジアステレオ異性体を含む。
【0298】
特定の実施形態において、5’UTRは、配列UUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号23)を含む。特定の実施形態において、5’UTRは、配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC(配列番号21)を含む。
【0299】
特定の実施形態において、分泌シグナルペプチドは、アミノ酸配列MRVMAPRTLILLLSGALALTETWAGS(配列番号27)を含む。特定の実施形態において、分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、配列AUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号25)を含む。
【0300】
特定の実施形態において、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部は、アミノ酸配列IVGIVAGLAVLAVVVIGAVVATVMCRRKSSGGKGGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA(配列番号30)を含む。特定の実施形態において、MHC分子の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列は、配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCC(配列番号28)を含む。
【0301】
特定の実施形態において、AES mRNAの3’非翻訳領域は、配列CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC(配列番号33)を含む。特定の実施形態において、ミトコンドリアにコードされる12S RNAの非コードRNAは、配列CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG(配列番号35)を含む。特定の実施形態において、3’UTRは、配列CUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号31)を含む。
【0302】
特定の実施形態において、ポリ(A)配列は120のアデニンヌクレオチドを含む。
【0303】
特定の実施形態において、RNAワクチンは、5’→3’方向に、ポリヌクレオチド配列GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC(配列番号19);腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する1つ以上のネオエピトープをコードするポリヌクレオチド配列;およびポリヌクレオチド配列AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCCUAGUAACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU(配列番号20)を含むRNA分子を含む。
【0304】
IV.PD-1軸結合アンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本開示のPCV(例えば、RNAワクチン)を、PD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて投与する。
【0305】
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストとしては、PD-1結合アンタゴニスト、PDL1結合アンタゴニスト、およびPDL2結合アンタゴニストが挙げられる。「PD-1」の代替名としては、CD279およびSLEB2が挙げられる。「PDL1」の代替名には、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hが含まれる。「PDL2」の別名には、B7-DC、Btdc、およびCD273が含まれる。いくつかの実施形態において、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトPD-1、PDL1、およびPDL2である。
【0306】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一局面において、PD-1のリガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。他の実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一局面では、PDL1の結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。他の実施形態において、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一局面において、PDL2の結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0307】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。
【0308】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号946414-94-4)である。ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb/Ono)、別名、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)は、国際公開第2006/121168号に記載の抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、アミノ酸配列:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWY DGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号11)を含み、および
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRAT GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を含む。
【0309】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号11および配列番号12からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号11の3つの重鎖HVRおよび配列番号12の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号11からの重鎖可変ドメインおよび配列番号12からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0310】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体はペムブロリズマブ(CAS登録番号:1374853-91-4)である。ペムブロリズマブ(Merck)、別名、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475は、国際公開第2009/114335号に記載の抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、アミノ酸配列:
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGG INPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYW GQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGV HTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCP APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAK GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENN YKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号13)を含み、および
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:
EIVLTQSPAT LSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLES GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVF IFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQ DSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号14)を含む。
【0311】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号13および配列番号14からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号13の3つの重鎖HVRおよび配列番号14の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号13からの重鎖可変ドメインおよび配列番号14からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0312】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MEDI-0680(AMP-514;AstraZeneca)である。MEDI-0680はヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0313】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、PDR001(CAS登録番号1859072-53-9;Novartis)である。PDR001は、PD-1へのPDL1およびPDL2の結合をブロックする、ヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0314】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、REGN2810(Regeneron)である。REGN2810は、LIBTAYO(登録商標)およびセミプリマブ-rwlcとしても知られるヒト抗PD1抗体である。
【0315】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、BGB-108(BeiGene)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、BGB-A317(BeiGene)である。
【0316】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、JS-001(Shanghai Junshi)である。JS-001はヒト化抗PD1抗体である。
【0317】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、STI-A1110(Sorrento)である。STI-A1110はヒト抗PD1抗体である。
【0318】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、INCSHR-1210(Incyte)である。INCSHR-1210は、ヒトIgG4抗PD1抗体である。
【0319】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、PF-06801591(Pfizer)である。
【0320】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011としても知られている、Tesaro/AnaptysBio)である。
【0321】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、AM0001(ARMO Biosciences)である。
【0322】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ENUM 244C8(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 244C8は、PDL1のPD-1に対する結合をブロックすることなく、PD-1の機能を阻害する抗PD-1抗体である。
【0323】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ENUM 388D4(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 388D4は、PDL1のPD-1に対する結合を競合的に阻害する抗PD-1抗体である。
【0324】
いくつかの実施形態において、PD-1抗体は、国際公開第2015/112800号(出願人:Regeneron)、国際公開第2015/112805号(出願人:Regeneron)、国際公開第2015/112900号(出願人:Novartis)、米国特許出願公開第20150210769号(Novartisに譲渡)、国際公開第2016/089873号(出願人:Celgene)、国際公開第2015/035606号(出願人:Beigene)、国際公開第2015/085847号(出願人:Shanghai Hengrui Pharmaceutical/Jiangsu Hengrui Medicine)、国際公開第2014/206107号(出願人:Shanghai Junshi Biosciences/Junmeng Biosciences)、国際公開第2012/145493号(出願人:Amplimmune)、米国特許第9205148号(MedImmuneに譲渡)、国際公開第2015/119930号(出願人:Pfizer/Merck)、国際公開第2015/119923号(出願人:Pfizer/Merck)、国際公開第2016/032927号(出願人:Pfizer/Merck)、国際公開第2014/179664号(出願人:AnaptysBio)、国際公開第2016/106160号(出願人:Enumeral)、および国際公開第2014/194302号(出願人:Sorrento)に記載されるPD-1抗体由来の6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVRおよび3つの軽鎖HVR)および/または重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。
【0325】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域に融合したPDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224(CAS登録番号1422184-00-6;GlaxoSmithKline/MedImmune)は、国際公開第2010/027827号および同第2011/066342号に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0326】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、ペプチドまたは低分子化合物である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AUNP-12(PierreFabre/Aurigene)である。例えば、国際公開第2012/168944号、同第2015/036927号、同第2015/044900号、同第2015/033303号、同第2013/144704号、同第2013/132317号および同第2011/161699を参照。
【0327】
いくつかの実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PD-1を阻害する低分子である。いくつかの実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1を阻害する低分子である。いくつかの実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1およびVISTAを阻害する低分子である。いくつかの実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、CA-170(AUPM-170としても知られている)である。いくつかの実施形態において、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1およびTIM3を阻害する低分子である。いくつかの実施形態において、低分子は、国際公開第2015/033301号および同第2015/033299号に記載されている化合物である。
【0328】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PDL1抗体である。本明細書では、様々な抗PDL1抗体が企図され、記載されている。本明細書における任意の実施形態において、単離された抗PDL1抗体は、ヒトPDL1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPDL1、またはそのバリアントに結合することができる。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、PDL1とPD-1との間の結合および/またはPDL1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFvおよび(Fab’)2断片からなる群より選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、ヒト抗体である。本発明の方法に有用な抗PDL1抗体の例、およびそれらの作製方法は、PCT特許出願第2010/077634号A1および米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0329】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖可変領域は、GFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)、およびRHWPGGFDY(配列番号3)の、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列をそれぞれ含み、そして、
(b)軽鎖可変領域は、RASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)、およびQQYLYHPAT(配列番号6)の、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列をそれぞれ含む。
【0330】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、WHO Drug Information(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances)、提案INN:リスト112、Vol.28,No.4、2015年1月16日出版に記載されている(485頁参照)、アテゾリズマブおよびTECENTRIQ(登録商標)(CAS登録番号:1422185-06-5)としても知られているMPDL 3280Aである。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)を含み、および
(b)軽鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号8)を含む。
【0331】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)を含み、および
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)を含む。
【0332】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体はアベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8)である。MSB0010718Cとしても知られるアベルマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗PDL1抗体(Merck KGaA、Pfizer)である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、アミノ酸配列:EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号15)を含み、および
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号16)を含む。
【0333】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号15および配列番号16からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号15の3つの重鎖HVRおよび配列番号16の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号15からの重鎖可変ドメインおよび配列番号16からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0334】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、デュルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7)MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、国際公開第2011/066389号および米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている、Fc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PDL1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、
(a)重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号17)を含み、および
(b)軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)を含む。
【0335】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号17および配列番号18からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号17の3つの重鎖HVRおよび配列番号18の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号17からの重鎖可変ドメインおよび配列番号18からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0336】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、MDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載の抗PDL1抗体である。
【0337】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、LY3300054(Eli Lilly)である。
【0338】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、STI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014はヒト抗PDL1抗体である。
【0339】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体はKN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリーから生成されたシングルドメイン抗体(dAB)である。
【0340】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、(例えば、腫瘍微小環境中のプロテアーゼによって)切断されると、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば、非結合性立体部位を除去することによって、その抗原を結合させることができるようにする、切断可能な部位またはリンカーから構成される。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体はCX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0341】
いくつかの実施形態において、PDL1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVRおよび3つの軽鎖HVR)、ならびに/または米国特許出願公開第20160108123号(Novartisに譲渡)、国際公開第2016/000619号(出願人:Beigene)、同第2012/145493号(出願人:Amplimmune)、米国特許第9205148号(MedImmuneに譲渡)、国際公開第2013/181634号(出願人:Sorrento)、および同第2016/061142号(出願人:Novartis)に記載されたPDL1抗体からの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。
【0342】
さらに特定の局面において、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる一局面において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。さらに特定の局面において、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる一局面において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一局面において、マウス定常領域は、IgG2Aである。
【0343】
さらに特定の局面において、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。さらなる具体的な一局面において、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタのないFc突然変異」またはグリコシル化突然変異から生じる。なおさらなる一実施形態において、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態において、単離された抗PDL1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0344】
なおさらなる一実施形態において、本開示は、上述の抗PDL1抗体のうちのいずれかと少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体とを組み合わせて含む組成物を提供する。
【0345】
なおさらなる一実施形態において、本開示は、本明細書に提供される抗PDL1、抗PD-1、もしくは抗PDL2抗体、またはその抗原結合断片と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、個体に投与される抗PDL1、抗PD-1、もしくは抗PDL2抗体、またはその抗原結合断片は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物である。本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体のいずれかが使用され得る。
【0346】
V.抗体の調製
本明細書に記載の抗体は、抗体を生成するための当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節により詳細に記載される。
【0347】
抗体は、目的の抗原(例えば、ヒトのPD-1またはPD-L1等のPD-1またはPD-L1)を対象とする。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
【0348】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体が、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下または0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0349】
一実施形態において、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的とする抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する(例えばChenら、J.Mol.Biol.293:865~881(1999)参照)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)内で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを保証してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20TM、Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNTTMガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0350】
他の実施形態において、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10の応答ユニット(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、pH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって、5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流速でインジェクトし、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答ユニット(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロックする。動態測定のため、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、およそ25μL/分の流量にて25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software第3.2版)を使用して、会合センサグラムおよび解離センサグラムを同時に適合することによって、算出する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、ChenらJ.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上述の表面プラズモン共鳴アッセイによりオン速度が106M-1 s-1を超える場合、オン速度を、ストップフローを装備した分光測色計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光測色計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される抗原の増加した濃度の存在下でPBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光クエンチ技法を使用することによって決定することができる。
【0351】
キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来の可変領域)、およびヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0352】
特定の実施形態において、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性および親和性は保持するようにヒト化される。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変ドメインを含み、FR(またはその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復するか、または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0353】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)でレビューされ、例えば、Riechmannら,Nature 332:323-329(1988);Queenら,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号、Kashmiriら、Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフトの記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「resurfacing」の記載)、Dall’AcquaらMethods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」の記載)、ならびにOsbournらMethods 36:61-68(2005)およびKlimkaらBr.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングの「ガイド付き選択」アプローチの記載)にさら記載されている。
【0354】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、、SimsらJ.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、CarterらProc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);およびPrestaらJ.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、BacaらJ.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)、およびRosokらJ.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)。
【0355】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を使用して作製され得る。ヒト抗体は一般的に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)およびLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0356】
ヒト抗体は、免疫原を、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含む。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号;および、VelociMouse(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさら修飾され得る。
【0357】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);およびBoernerら,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体もまた、Liら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0358】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても作製され得る。次いで、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する技法は以下に記載されている。
【0359】
抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段または組換え技法によって生成され得る。特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片に関する概説については、Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129-134を参照されたい。
【0360】
抗体断片を産生するために種々の技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解を介して得られていた(例えば、MorimotoらJournal of Biochemical and Biophysical Methods24:107~117(1992)、およびBrennanらScience,229:81(1985)を参照)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)で発現され、大腸菌(E.coli)から分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替的に、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成することができる(CarterらBio/Technology10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が増加したFabおよびF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号明細書に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。特定の実施形態において、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であるため、それらは、インビボ使用中の非特異的結合の低減に適し得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合をもたらすように構築され得る。上記のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0361】
単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。一実施形態において、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる。
【0362】
抗体バリアント
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本抗体のアミノ酸配列変異体は、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる改変としては、例えば、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれへの挿入、および/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
【0363】
置換、挿入、および欠失バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による突然変異誘発に関して目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換を表2に示す。より実質的な変化は、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下に記載される。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入することができ、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングする。
【表2】
【0364】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ化することができる。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.影響する残基
鎖配向:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0365】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0366】
一種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、得られた変異体(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、低減した免疫原性)における修飾(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換変異体は、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法等を使用して、簡便に作成されてもよい。簡潔には、1つ以上のHVR残基が突然変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0367】
変更(例えば、置換)は、抗体親和性を改善するために、例えば、HVRにおいて行われてもよい。このような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196(2008)を参照)、および/またはSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られた変異体VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築およびそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brienら編、Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異導入)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入またはモデリングを使用して、具体的に同定され得る。特にCDR-H3およびCDR-L3が標的とされることが多い。
【0368】
特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、このような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、HVR中になされてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外であり得る。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列の特定の実施形態において、各HVRは、変化していないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0369】
突然変異導入の標的となり得る抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング突然変異導入」と呼ばれる。この方法では、一残基または一群の標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、およびglu等の荷電残基)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかが判定される。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的にしても排除してもよい。バリアントを、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングしてもよい。
【0370】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100個以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異体としては、(例えば、ADEPTのために)抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0371】
グリコシル化バリアント
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化されている程度を増加または減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0372】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に付着される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、WrightらTIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNac)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびにバイアンテナリーオリゴ糖構造の「ステム」のGlcNacに付着したフコースを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ある特定の特性が改善された抗体変異体を作製するために、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0373】
一実施形態において、Fc領域を含む抗体変異体が提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが減少しているか、またはフコースを欠き、これによりADCC機能が改善され得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞等の天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。特定の実施形態において、抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。ある特定の実施形態において、本抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、本抗体は、フコースを全く有しないか、またはフコースを有しないか、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定する場合、Asn297に付着した全ての糖鎖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計と比較した、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体におけるマイナーな配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;OkazakiらJ.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-OhnukiらBiotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(RipkaらArch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;および国際公開第2004/056312A1号、Adamsら特に実施例11において)、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-OhnukiらBiotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Yら,Biotechnol.Bioeng,94(4):680-688(2006);および国際公開第2003/085107号を参照)が挙げられる。
【0374】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体変異体がさら提供される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);米国特許出願公開第2005/0123546号(Umanaら)、およびFerraraら、Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有しうる。このような抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら);国際公開第1998/58964号(Raju,S.)、および国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載される。
【0375】
特定の実施形態において、本明細書に記載のFc領域を有する抗体変異体は、FcγRIIIに結合することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載のFc領域を含む抗体変異体は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、またはヒトエフェクター細胞の存在下でヒト野生型IgG1Fc領域を有するという点以外は同じ抗体と比較して増加したADCC活性を有する。
【0376】
Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸改変が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域変異体が生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0377】
特定の実施形態において、本開示は、全てではないが一部のエフェクター機能を有し、それによりインビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC等)が不要または有害である用途にとって望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。CDCおよび/またはADCC活性の低下/消失を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確認することができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、一方で単球は、Fc(RI、Fc(RII、およびFc(RIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,IらProc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)、およびHellstrom,Iら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499~1502(1985);5,821,337(Bruggemann,MらJ.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI))。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボ、例えば、ClynesらProc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルで評価することができる。また、抗体がC1qに結合することができず、CDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号および同第2005/100402号における、C1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.らBlood 101:1045-1052(2003);およびCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)、FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定はまた、当技術分野で知られている方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova,S.BらInt’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)参照)。
【0378】
エフェクタ機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329において1つ以上の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265および297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0379】
FcRに対する結合が改善または減少したある特定の抗体バリアントが記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号およびShieldsらJ.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照)
【0380】
特定の実施形態において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態において、抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、およびK334Aを含む。
【0381】
いくつかの実施形態において、Fc領域内で改変を行い、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogieらJ.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の変化(すなわち向上または減少のいずれか)をもたらす。
【0382】
母体IgGの胎児への移入の原因である、増加した半減期および新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(GuyerらJ.Immunol.117:587(1976)and KimらJ.Immunol.24:249(1994))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載される。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つ以上の置換をその中に有するFc領域を含む。かかるFcバリアントは、Fc領域残基の1つ以上:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうち1つ以上における置換、例えばFc領域残基434における置換を伴うもの(米国特許第7,371,826号明細書)が挙げられる。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、および国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0383】
VI.薬学的組成物および製剤
例えば、がんの治療のための、または本明細書に記載の方法に従ってネオエピトープ特異的免疫応答を誘導するための医薬組成物および製剤も本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物および製剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0384】
目的の抗体を調製した後(例えば、本明細書に開示されているように製剤化することができる抗体を製造するための技術は、本明細書に精巧に記載されており、当技術分野で知られている)、それを構成する医薬製剤を調製する。ある特定の実施形態において、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。特定の実施形態において、抗体は、完全長抗体である。一実施形態において、製剤中の抗体はF(ab’)2などの抗体断片であり、この場合、完全長抗体には起こりえない問題(例えば、抗体のFabへのクリッピング)に対応する必要が生じうる。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積および投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。約25mg/mL~約150mg/mL、または約30mg/mL~約140mg/mL、または約35mg/mL~約130mg/mL、または約40mg/mL~約120mg/mL、または約50mg/mL~約130mg/mL、または約50mg/mL~約125mg/mL、または約50mg/mL~約120mg/mL、または約50mg/mL~約110mg/mL、または約50mg/mL~約100mg/mL、または約50mg/mL~約90mg/mL、または約50mg/mL~約80mg/mL、または約54mg/mL~約66mg/mLは、例示的な製剤中の抗体濃度である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗PDL1抗体(例えば、アテゾリズマブ)を、約1200mgの用量で投与する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗PD1抗体(ペムブロリズマブ等)を、約200mgの用量で投与する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗PD1抗体(ニボルマブ等)を、約240mg(例えば、2週間ごと)または480mg(例えば、4週間ごと)の用量で投与する。
【0385】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のRNAワクチンを、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、または約100μgの用量で投与する。
【0386】
本明細書に記載の医薬組成物および製剤は、所望の純度を有する活性成分(抗体またはポリペプチド等)を1つ以上の任意の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容され得る担体は一般的に、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容され得る担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤がさらに含まれる。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載される。一局面において、sHASEGPを、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わせる。
【0387】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号および国際公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジンバッファーを含む。
【0388】
本明細書における組成物および製剤は、治療される特定の適応症に必要な1つより多くの活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。そのような有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0389】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションに封入されてもよい。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0390】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜によりフィルタにかけることによって、容易に達成され得る。
【0391】
アテゾリズマブおよびペムブロリズマブの医薬製剤は市販されている。例えば、アテゾリズマブは、(本明細書の他の箇所に記載されるような)TECENTRIQ(登録商標)の商品名で知られている。ペムブロリズマブは、(本明細書の他の箇所に記載されているように)KEYTRUDA(登録商標)の商品名で知られている。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブおよびRNAワクチン、またはペムブロリズマブおよびRNAワクチンは、別々の容器で提供される。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブおよびペムブロリズマブは、市販製品と共に入手可能な処方情報に記載されているように、個体への投与のために使用および/または調製される。
【0392】
VII.治療方法
個体におけるがんを(例えば、本明細書中に提供される方法に従ってネオエピトープ特異的免疫応答を誘導することによって)治療するためまたはがんの進行を遅延させる方法であって、前記個体に、有効量のRNAワクチンを単剤として、またはPD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、個体は、ヒトである。
【0393】
本開示のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンのいずれも、本明細書中に記載の治療方法において使用が見出され得る。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する10~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、腫瘍標本中に存在するがん特異的体細胞変異に起因する5~20のネオエピトープをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、RNAワクチンはリポプレックスナノ粒子またはリポソームに製剤化される。いくつかの実施形態において、RNA(RNA-リポプレックス)のためのリポプレックスナノ粒子製剤を使用して、本開示のRNAワクチンのIV送達を可能にする。いくつかの実施形態において、PCVを、例えばリポソーム製剤中で、15μg、25μg、38μg、50μg、または100μgの用量で静脈内投与する。いくつかの実施形態において、15μg、25μg、38μg、50μgまたは100μgのRNAが、用量あたりで送達される(すなわち、用量重量は投与されたRNAの重量を反映し、投与された製剤またはリポプレックスの総重量を反映しない)。2種以上のPCVを対象に投与してもよく、例えば、対象に、ネオエピトープの組合せを有する1種のPCVを投与し、ネオエピトープの異なる組合せを有する別個のPCVも投与する。いくつかの実施形態において、10個のネオエピトープを有する第1のPCVを、10個の代替エピトープを有する第2のPCVと組み合わせて投与する。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、限定されないが、ペムブロリズマブを含む抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、限定されないが、アテゾリズマブを含む抗PD-L1抗体である。
【0394】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、21日または3週間の間隔で個体に投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、21日または3週間の間隔で、例えば約200mgの用量で個体に投与される抗PD-L1抗体(例えば、ペムブロリズマブ)である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、21日または3週間の間隔で、例えば約350mgの用量で個体に投与される抗PD-1抗体(例えば、セミプリマブ-rwlc)である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、21日または3週間の間隔で、例えば約1200mgの用量で個体に投与される抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)である。
【0395】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、14日または28日の間隔で個体に投与する。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、2週間または4週間の間隔で個体に投与する。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、14日間、2週間、28日間もしくは4週間の間隔で、例えば14日間もしくは2週間の間隔で約240mgの用量で、または28日間もしくは4週間の間隔で約480mgの用量で個体に投与する抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ)である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、21日間または3週間の間隔で、例えば、1、2、3、または4回の用量で約1mg/kgの用量で、任意に、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)と組み合わせて個体に投与する抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ)であり、任意に、続いて、14日間、2週間、28日間、または4週間の間隔で単独で、例えば14日間または2週間の間隔で約240mgの用量で、または28日間または4週間の間隔で約480mgの用量で、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ)を投与する。
【0396】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、14日または2週間の間隔で個体に投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、14日または2週間の間隔で、例えば約10mg/kgの用量で(任意に、60分間にわたる静脈内注入によって)個体に投与する抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、14日または2週間の間隔で、例えば約10mg/kgの用量で(任意に、60分間にわたる静脈内注入によって)個体に投与する抗PD-L1抗体(例えば、アベルマブ)である。
【0397】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、21日または3週間の間隔で個体に投与する。
【0398】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、8回の21日間サイクルで個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、サイクル2の第1、8、および15日目、ならびにサイクル3~7の1日目に個体に投与する。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストを、サイクル1~8の1日目に個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、サイクル2の第1、8および15日目ならびにサイクル3~7の1日目に個体に投与し、PD-1軸結合アンタゴニストは、サイクル1~8の1日目に個体に投与する。
【0399】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、サイクル8の後に個体にさら投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、17回の追加の21日間のサイクルで個体にさら投与し、PD-1軸結合アンタゴニストを、サイクル13~29の1日目に個体に投与し、および/またはRNAワクチンを、サイクル13、21、および29の1日目に個体に投与する。
【0400】
特定の実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、8回の21日間サイクルで個体に投与し、PD-1軸結合アンタゴニストはペムブロリズマブであり、PD-1軸結合アンタゴニストをサイクル1~8の1日目に約200mgの用量で個体に投与し、RNAワクチンを、サイクル2の1、8、および15日目、ならびにサイクル3~7の1日目に約25μgの用量で個体に投与する。特定の実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、8回の21日間サイクルで個体に投与し、PD-L1軸結合アンタゴニストはアテゾリズマブであり、PD-L1軸結合アンタゴニストをサイクル1~8の1日目に約1200mgの用量で個体に投与し、RNAワクチンを、サイクル2の1、8、および15日目、ならびにサイクル3~7の1日目に約25μgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、サイクル2の1日目に約25μg、サイクル2の8日目に約25μg、サイクル2の15日目に約25μg、およびサイクル3~7のそれぞれの1日目に約25μgの用量で個体に投与する(すなわち、合計約75μgのワクチンを、サイクル2の間に3回の用量にわたって個体に投与する)。いくつかの実施形態において、合計約75μgのワクチンを、RNAワクチンを投与するサイクル1の間に3回にわたって個体に投与する。
【0401】
特定の実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、8回の21日間サイクルで個体に投与し、PD-1軸結合アンタゴニストはペムブロリズマブであり、PD-1軸結合アンタゴニストをサイクル1~8の1日目に200mgの用量で個体に投与し、RNAワクチンを、サイクル2の1、8、および15日目、ならびにサイクル3~7の1日目に25μgの用量で個体に投与する。特定の実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、8回の21日間サイクルで個体に投与し、PD-L1軸結合アンタゴニストはアテゾリズマブであり、PD-L1軸結合アンタゴニストをサイクル1~8の1日目に1200mgの用量で個体に投与し、RNAワクチンを、サイクル2の1、8、および15日目、ならびにサイクル3~7の1日目に25μgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、サイクル2の1日目に25μg、サイクル2の8日目に25μg、サイクル2の15日目に25μg、およびサイクル3~7のそれぞれの1日目に25μgの用量で個体に投与する(すなわち、合計75μgのワクチンを、サイクル2の間に3回の用量にわたって個体に投与する)。いくつかの実施形態において、合計75μgのワクチンを、RNAワクチンを投与するサイクル1の間に3回にわたって個体に投与する。
【0402】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、約15μg~約100μgの間(例えば、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約35μg、約40μg、約45μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μgまたは約100μgのいずれか)の用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンを、約15μg、約25μg、約38μg、約50μg、約75μgまたは約100μgの用量で個体に投与する。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、個体へ静脈内投与される。
【0403】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、7日間または1週間の間隔で個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、14日または2週間の間隔で個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、12週間個体に投与される。
【0404】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは4回の21日間サイクルで個体に投与され、ここで、RNAワクチンはサイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル4の1日目に個体に投与される。
【0405】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、1または2週間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、24週間の間隔で維持段階中に個体に投与される。特定の実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、7または14日間の間隔で誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、168日間の間隔で維持段階中に個体に投与される。
【0406】
いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、誘導段階および誘導段階後の維持段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、4回の21日間のサイクルで誘導段階中に個体に投与され、ここで、RNAワクチンは、サイクル1の第1、8、および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;およびサイクル4の1日目に誘導段階中に個体に投与され、RNAワクチンは、サイクル5の1日目の維持段階中およびその後24週間または168日に1回、個体に投与される。
【0407】
PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、任意の順序で投与され得る。例えば、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、連続して(異なる時点で)または同時に(同じ時点で)投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストとRNAワクチンは別々の組成物中にある。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストとRNAワクチンは同じ組成物中にある。
【0408】
いくつかの実施形態において、がんは、黒色腫、非小細胞肺がん、膀胱がん、結腸直腸がん、トリプルネガティブ乳がん、腎がん、および頭頸部がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、がんは、局所進行性または転移性黒色種、非小細胞肺がん、膀胱がん、結腸直腸がん、トリプルネガティブ乳がん、腎がん、または頭頸部がんである。いくつかの実施形態において、がんは、非小細胞肺がん、膀胱がん、結腸直腸がん、トリプルネガティブ乳がん、腎がん、および頭頸部がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、がんは、局所進行性または転移性の、非小細胞肺がん、膀胱がん、結腸直腸がん、トリプルネガティブ乳がん、腎がん、または頭頸部がんである。
【0409】
いくつかの実施形態において、がんは、黒色腫である。いくつかの実施形態において、黒色腫は、皮膚黒色腫または粘膜黒色腫ではない。いくつかの実施形態において、黒色腫は、皮膚、粘膜または末端黒色腫である。いくつかの実施形態において黒色腫は、眼または先端黒色腫ではない。いくつかの実施形態において、黒色腫は、転移性または局所進行性黒色腫である。いくつかの実施形態において、黒色腫は、ステージIV黒色腫である。いくつかの実施形態において、黒色腫は、ステージIIICまたはステージIIIDの黒色腫である。特定の実施形態において、黒色腫は、切除不能または転移性黒色腫である。いくつかの実施形態において、方法は、黒色腫のアジュバント治療を提供する。
【0410】
いくつかの実施形態において、がん(例えば、黒色腫)は、以前に治療されていない。いくつかの実施形態において、がんは、以前に治療された進行性黒色腫である。
【0411】
いくつかの実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍、膀胱腫瘍、腎腫瘍、頭頸部腫瘍、肉腫腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、肝臓腫瘍、または結腸直腸腫瘍である。いくつかの実施形態において、乳癌腫瘍は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)腫瘍である。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体は1つ以上のがん治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療で治療されている。いくつかの実施形態において、RNAワクチンの投与前に、個体はチェックポイント阻害剤治療で治療されていない。
【0412】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法のいずれかによるPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンによる治療の前に、個体は、PD-1軸結合アンタゴニストに基づく単剤療法、例えばRNAワクチンの不在下でのペムブロリズマブによる治療による治療後に進行しているか、または治療に十分に応答しなかった。
【0413】
PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、同じ投与経路によって、または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態において、RNAワクチンは、(例えばリププレックス粒子またはリポソームで)静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンを、静脈内注入を介して投与する。有効量のPD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、疾患の予防または治療のために投与され得る。
【0414】
いくつかの実施形態において、これらの方法は、追加の治療をさら含み得る。追加の治療は、放射線治療、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、ウイルス治療、RNA治療、免疫療法、骨髄移植、ナノ治療、モノクローナル抗体治療または前記の組合せであり得る。追加の治療は、アジュバント治療またはネオアジュバント治療の形態であり得る。いくつかの実施形態において、追加の治療は、小分子酵素阻害剤または抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態において、追加の治療は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生および/または重症度を軽減するように意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤等)の投与である。いくつかの実施形態において、追加の治療は放射線治療である。いくつかの実施形態において、追加の治療は手術である。いくつかの実施形態において、追加の治療は放射線治療と手術の組合せである。いくつかの実施形態において、追加の治療はγ線照射である。
【0415】
VIII.製品またはキット
本開示のRNAワクチンを含む製造品またはキットを、本明細書中にさらに提供する。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブまたはペムブロリズマブ)を含む製造品またはキットを本明細書中にさら提供する。いくつかの実施形態において、製品またはキットは、RNAワクチンおよび/またはPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、RNAワクチンと組み合わせて)を使用して、個体においてがんを治療するかまたはがんの進行を遅延させる、がんを有する個体の免疫機能を増強する、腫瘍を有する個体においてネオエピトープ特異的T細胞を誘導する、および/または個体においてネオエピトープ特異的T細胞の腫瘍への輸送を誘導するための説明書を含む添付文書をさらに含む。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブまたはペムブロリズマブ)およびRNAワクチンを含む製品またはキットも本明細書で提供される。
【0416】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストおよびRNAワクチンは、同じ容器内または別々の容器内にある。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルもしくはポリオレフィン等)、または金属合金(ステンレス鋼もしくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、容器は、製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、および使用上の指示を有する添付文書等の商業的視点および使用者の視点から望ましい他の材料をさら含み得る。いくつかの実施形態において、製品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗腫瘍薬)のうちの1つ以上をさらに含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。
【0417】
本明細書は、当業者が本発明を実践することを可能にするのに充分なものであるとみなされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。本明細書で引用される全ての公報、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0418】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されることになる。しかしながら、本実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態が例示のみを目的とするものであり、それを考慮に入れたさまざまな改変または変化が当業者に提案され、本出願精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることは理解されよう。
【0419】
実施例1:局所進行性または転移性腫瘍を有する患者における単剤としてのおよびアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの試験
本実施例は、単剤としての、および抗PD-L1抗体アテゾリズマブと組み合わせたネオ抗原特異的RNAワクチンの安全性、忍容性、免疫応答および薬物動態を評価するように設計された第1a/1b相非盲検多施設グローバル用量漸増試験を記載する。
【0420】
試験目的
本試験の目的は、単剤としてのおよびアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの安全性、忍容性、免疫応答および薬物動態を評価することである。
【0421】
試験設計
第1a相
この試験の第1a相用量漸増コホートでは、患者に21日間サイクルで漸増用量で静脈内(IV)注入によってRNAワクチンを投与する。
【0422】
第1b相
本試験の第1b相には、用量漸増コホート、探索コホート、拡大コホート、および連続生検を伴う拡大コホートが含まれる。
【0423】
本試験の第1b相用量漸増コホートでは、患者に21日間サイクルで漸増用量で静脈内(IV)注入によってRNAワクチンが投与される。患者はまた、21日サイクルの1日目に1200mgのアテゾリズマブの固定用量を投与される。
【0424】
本試験の第1b相探索コホートでは、がん免疫療法(CIT)で以前に治療されている非小細胞肺がん(NSCLC)または黒色腫の患者に、21日間サイクルでIV注入によって最大耐量(MTD)よりも低い用量でRNAワクチンを投与する。患者はまた、21日サイクルの1日目に1200mgのアテゾリズマブの固定用量を投与される。
【0425】
本試験の第1b相拡大コホートでは、以下の試験包含基準に記載されている適応症を有する患者に、21日間サイクルでのIV注入によってMTDよりも低い複数の用量レベルでRNAワクチンを投与する。患者はまた、21日サイクルの1日目に1200mgのアテゾリズマブの固定用量を投与される。
【0426】
本試験の連続的な生検を伴う第1b相拡大コホートでは、以下の試験包含基準に記載されている腫瘍型を有するCIT未経験患者に、21日間サイクルでのIV注入によってMTDよりも低い複数の用量レベルでRNAワクチンを投与する。患者はまた、21日サイクルの1日目に1200mgのアテゾリズマブの固定用量を投与される。
【0427】
試験参加者
選択基準
以下の基準を満たす患者がこの試験に含まれる。
● 0、または1の、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)性能ステータス
● 少なくとも1つの利用可能な標準治療後に進行した、局所進行性、再発性、または転移性の不治の悪性腫瘍または標準的治療が、無効または容認されない、または不適切と考えられる悪性腫瘍の組織学的記録
● 固形腫瘍の応答評価基準バージョン1.1(RECIST v1.1)によって測定可能な疾患。
【0428】
さらに、以下の適応症特異的基準を満たす患者が、本試験の第1b相の探索または拡大コホートに含まれる。
● 非小細胞肺がん(NSCLC)コホート(CIT未経験):抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療されていない、組織学的に確認された不治進行型NSCLC患者。
● NSCLCコホート(CIT治療):抗CTLA-4治療を用いる、または用いない抗PD-L1/PD-1治療で以前に治療されている、組織学的に確認された不治進行型性NSCLC患者。
● トリプルネガティブ乳がん(TNBC)コホート(CIT未経験):抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療されていない、組織学的に確認された不治進行型エストロゲン受容体(ER)ネガティブ、プロゲステロン受容体ネガティブ、およびヒト上皮成長因子受容体2(HER2)ネガティブの乳房腺癌(トリプルネガティブ)を有する患者。
● 結腸直腸がん(CRC)コホート(CIT未経験):抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療されていない、組織学的に確認された不治進行型の結腸または直腸の腺癌を有する患者。
● 頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)コホート(CIT未経験):組織学的に確認された手術不能の、局所進行型または転移性の、再発性または持続性のHNSCC(口腔、中咽頭、下咽頭、または喉頭)であって、治癒的治療に適しておらず、抗PDL1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療されていない患者。
● 尿路上皮癌腫(UC)コホート(CIT未経験):抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で以前に治療されていない、腎盂、尿管、膀胱、および尿道を含む尿路上皮の組織学的に確認された不治の進行型移行細胞癌腫を有する患者。
● UCコホート(CIT治療):抗CTLA-4治療を用いて、または用いずに抗PD-L1/PD-1治療で以前に治療されている、腎盂、尿管、膀胱、および尿道を含む尿路上皮の組織学的に確認された不治の進行型移行細胞癌腫を有する患者。
● 腎細胞癌腫(RCC)コホート(CIT未経験):以前に抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で治療されていない明細胞組織学の成分および/または肉腫様組織学の成分を有する組織学的に確認された不治の進行型RCCを有する患者。
● 黒色腫コホート(転移状況でCIT未経験):転移性条件において抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療されていない、組織学的に確認された不治の進行型NSCLCを有する患者。
● 黒色腫コホート(CIT治療):抗PD-L1/PD-1および/または抗CTLA-4治療で以前に治療された、組織学的に確認された不治の進行型NSCLCを有する患者。
【0429】
さらに、以下の適応症特異的基準を満たす患者が、本試験の第1b相の連続生検拡大コホートに含まれる。
● 患者は、上記の試験選択基準で指定された局所進行型または転移性固形腫瘍型の1つを有する。
● 患者は、重大な手技上の合併症の許容できないリスクなしに、合計2~3回の生検(治療前および治療中)または1回の生検(治療前の生検の代わりに保管組織が利用可能である場合、治療中)を可能にするアクセス可能な病変を有する。RECIST病変は生検されない。
【0430】
除外基準
以下の基準を満たす患者がこの試験から除外される。
● 臨床的に重要な肝疾患。
● 以前の脾臓摘出。
● 既知の原発性免疫不全、細胞性免疫不全(例えば、DiGeorge症候群、T-ネガティブ重症複合免疫不全症[SCID])またはT-細胞およびB-細胞の複合免疫不全(例えば、T-およびB-ネガティブSCID、Wiskott-Aldrich症候群、毛細血管拡張性運動失調症、一般的可変免疫不全)のいずれか。
● 特に断らない限り、試験治療の開始前3週間以内の化学治療、ホルモン治療、または放射線治療を含む任意の抗がん治療:
● 特に断らない限り、事前のネオ抗原特異的または全腫瘍がんワクチン。
● サイトカインによる事前の治療は、この試験の最後の投与とサイクル1の1日目との間に、少なくとも6週間または薬剤の5半減期のいずれか短い方が経過したことを条件として許容される。
● 免疫チェックポイント阻害剤、免疫調節モノクローナル抗体(mAb)および/またはmAb由来治療による事前の治療は、特に断らない限り、本試験の最後の投与とサイクル1の1日目との間に少なくとも6週間(第1a相)または3週間(第1b相)が経過していることを条件として許容される。
● 第Ib相のCIT未経験拡大コホートでは、抗PD-L1/PD-1治療および/または抗CTLA-4治療による事前の治療は許可されない。
● 第Ib相の黒色腫CIT未経験拡大コホートでは、転移性条件における抗PD-L1/PD-1治療および/または抗CTLA-4治療による事前の治療は許可されない。
● 特に断らない限り、事前治療の最後の投与と本試験のサイクル1の1日目との間に少なくとも薬物の5半減期または最低3週間が経過しているならば、トール様受容体(TLR)アゴニスト、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)/トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)の阻害剤、またはOX40のアゴニストを含む免疫調節剤による事前治療が可能である。
● 以前のCITに起因する免疫関連グレード4有害事象の任意の病歴(補充治療で管理される内分泌不全症または血清アミラーゼもしくはリパーゼの無症候性上昇以外)
● 以前の免疫療法剤の永続的な中断をもたらした、および/または本試験のサイクル1の1日目の6ヶ月以内に発生した、以前のCIT(補充治療で管理された甲状腺機能低下症以外)に起因する免疫関連グレード3有害事象の病歴。
● 脱毛症、白斑、または補充治療で管理された内分泌障害を除いて、グレード1以下に回復していない以前の抗がん治療からの有害事象。
● ベースラインまで完全に回復していなければならない以前のCIT(補充治療で管理された内分泌不全症または安定白斑以外)に関連する全ての免疫関連有害事象。
● 原発性中枢神経系(CNS)悪性腫瘍、未治療CNS転移または活性CNS転移(進行しているか、または症状管理のためのコルチコステロイドを必要としている):
● 本試験のサイクル1の1日目より前の5年以内に試験中の疾患以外の悪性腫瘍(転移または死亡のリスクが無視できるものを除く)。
● 髄膜疾患。
● 患者はまた、疾患がスクリーニング前に2週間超にわたって臨床的に安定しているという証拠なしに、手術および/または放射線で確定的に治療されていない、または以前に診断および治療された脊髄圧迫を有していてはならない。
● 制御されない高カルシウム血症、胸水、心膜滲出液、または再発性排液処置を必要とする腹水、または腫瘍関連疼痛。
● 特に断らない限り、自己免疫疾患の病歴。
● 本試験のサイクル1、1日目の前の3週間以内のモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)による治療
● 本試験のサイクル1、1日目の前の2週間以内の全身性の免疫抑制薬剤による治療
● スクリーニング用胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンでの特発性肺線維症、肺臓炎、器質化肺炎の病歴、または活動性肺臓炎の証拠;ヒト免疫不全ウイルス感染の陽性試験;活動性B型肝炎またはC型肝炎;活動性または潜伏結核感染;または本試験のサイクル1の1日前の4週間以内の重度の感染症。
● 事前の同種骨髄移植または事前の固形臓器移植
【0431】
試験結果の測定
本試験の主要結果の尺度には以下が含まれる。
● 用量制限毒性(DLT)を有する患者のパーセンテージを、本試験の第1a相の1~14日目および本試験の第1b相の1~21日目から評価した。
● RNAワクチンの最大耐量(MTD)および推奨される第2相用量(RP2D)を、本試験の第1a相の1~14日目および本試験の第1b相の1~21日目から評価した。
● ベースラインから本試験の終了まで評価した有害事象(AE)を有する患者のパーセンテージ。AEの重症度は、National Cancer Institute(NCI)Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)バージョン5.0に従って評価する。
● ベースラインから本試験の終了まで評価した免疫媒介有害事象(imAE)(NCI CTCAEバージョン5.0)を有する患者のパーセンテージ。
● 患者が受けた治療サイクルの数を、ベースラインから試験終了まで評価した。
● RNAワクチンの用量強度を、ベースラインから本試験終了まで評価した。
● ベースラインから本試験終了まで評価したバイタルサイン、臨床検査結果およびECGのベースラインからの変化。
【0432】
本試験の二次結果の尺度には以下が含まれる:
● (R)-N,N,N-トリメチル-2,3-ジオレイルオキシ-1-プロパナミニウムクロリド(DOTMA)の血漿濃度を注入前から治療中止まで評価した。
● リボ核酸(RNA)の血漿濃度を注入前から治療中止まで評価した。
● アテゾリズマブの血漿濃度を注入前から治療中止2ヶ月後まで評価した。
● 注入前から治療中止まで評価した、末梢血中の抗原特異的T細胞応答の誘導を有する患者のパーセンテージ。
● 免疫関連サイトカインのレベルを、事前注入から治療中止まで評価した。
● RECIST v1.1による完全奏効(CR)または部分奏効(PR)の客観的奏効を有する患者のパーセンテージを、ベースラインから試験治療の最後の投与の90日後または他の全身性抗がん治療の開始のいずれか早い方まで評価した。
● RECIST v1.1による奏効期間(DoR)が実証されたCRまたはPRの最初の発生から、任意の原因による疾患進行または死亡まで、どちらが先に発生するかにかかわらず評価される。
● 免疫改変RECISTによるCRまたはPRの客観的奏効を有する患者のパーセンテージを、ベースラインから試験治療の最後の投与の90日後または他の全身性抗がん治療の開始のいずれか早い方まで評価した。
● 免疫改変RECISTによるDoRを、実証されたCRまたはPRの最初の発生から、任意の原因による疾患進行または死亡まで、どちらが先に発生するかにかかわらず評価する。
● RECIST v1.1による無増悪生存(PFS)を、ベースラインから試験治療の最後の投与の90日後または他の全身性抗がん治療の開始のいずれか早い方まで評価した。
● 全生存(OS)を、ベースラインから試験治療の最後の投与の90日後または他の全身性抗がん治療の開始のいずれか早い方まで評価した。
● アテゾリズマブに対する抗薬物抗体(ADA)を有する患者の割合事前注入から治療中止後2ヶ月まで評価した。
【0433】
実施例2:局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者における単剤としてのおよびアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの第Ia/Ib試験
体細胞変異から生じたネオ抗原は、免疫系によって異物として認識され得るので、がん免疫治療の魅力的な標的である。RNAリポプレックスワクチンを、ネオ抗原に対するT細胞応答を刺激するように設計した。実施例1に記載されるように、RNAワクチンのファーストインヒト第Ia相試験を、局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者において行った。
【0434】
RNAワクチンは、患者ごとに製造され、最大20の腫瘍特異的ネオエピトープを含有していた。RNAワクチンの9つの用量を、12サイクル誘導段階中および、維持段階中24週間ごとに毎週、または2週間に1回、全身静脈内投与した。特に、RNAワクチンは、4回の21日サイクルで、誘導段階中:サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に投与される。誘導段階後の維持段階中、RNAワクチンは、サイクル13の1日目、およびその後24週間または168日ごとに1回、投与された。追加の詳細については、実施例1を参照されたい。
【0435】
第Ia相試験では、29人の患者が25~100μgの範囲の用量でコホートに登録した。最も一般的な腫瘍型は、HR+/HER2+乳がん、前立腺がんおよび卵巣がんであった。以前の治療の数の中央値は5(範囲1~17)であった。患者の34%が事前の免疫治療を受けた。殆どの患者はPD-L1発現が低かった(腫瘍細胞上で5%未満のPD-L1発現を有する97%の患者、免疫細胞上で5%未満の発現を有する93%の患者)。受けたRNAワクチンの投与回数の中央値は6回であり;患者の28%は、6週間の治療を完了する前にPDのために中断した。有害事象(AE)の大部分はグレード1~2であった。患者の20%以上に生じるAEには、注入関連反応(IRR)/サイトカイン放出症候群(CRS)、疲労、悪心および下痢が含まれた。IRR/CRSは一過性および可逆的であり、主にグレード1~2の悪寒および発熱として示された。グレード3のCRSの単一のDLTが100μg用量レベルで生じた。AEが原因でRNAワクチンを中止した患者はいなかった。
【0436】
RNAワクチンは、RNAの自然免疫アゴニスト活性と一致して、各用量で炎症促進性サイトカインのパルス放出を誘導した。RNAワクチン誘導性ネオ抗原特異的T細胞応答が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって16人の患者のうち14人(87%)の末梢血で観察された。MHC多量体分析は、末梢血中のメモリー表現型を有する最大5%のネオエピトープ特異的CD8T細胞の誘導を示した。
【0437】
治療後の腫瘍生検において、複数のネオ抗原に対するRNAワクチン誘導性T細胞が検出された。少なくとも1つの腫瘍評価を受けた26人の患者のうち、胃がんを有する1人の患者(4%)は10ヶ月以上継続してCRの応答を有し、11人の患者(42%)はSDを有していた。
【0438】
RNAワクチンは、臨床的に関連するターンアラウンド時間を有する個々の患者のために製造することができる。本試験では、RNAワクチンは、その作用機序と一致する管理可能な安全性プロファイルを有し、低および中程度の変異負荷腫瘍型を有する患者において強いネオ抗原特異的免疫応答を誘導した。
【0439】
実施例1にさらに記載されるように、RNAワクチンのファーストインヒト第Ib相試験を、抗PD-L1抗体アテゾリズマブと組合わせて、局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者において行った。
【0440】
RNAワクチンを上記のように投与した。アテゾリズマブを各21日間の投与サイクルの1日目に投与した。追加の詳細については、実施例1を参照されたい。
【0441】
132人の患者を、1200mgのアテゾリズマブと組み合わせた15μg~50μgのRNAワクチンの範囲の用量でコホートに登録した。最も一般的な腫瘍型は、NSCLC、TNBC、黒色腫および結腸直腸がん(CRC)であった。以前の治療の数の中央値は3(範囲1~11)であった。患者の39%は事前の免疫治療を受けた。殆どの患者はPD-L1発現のレベルが低かった(腫瘍細胞上で5%未満のPD-L1発現を有する93%の患者、免疫細胞上で5%未満のPD-L1発現を有する79%の患者)。受けたRNAワクチンの投与回数の中央値は8であり;患者の16%は、6週間の治療を完了する前にPDのために中止した。有害事象(AE)の大部分はグレード1~2であった。患者の15%以上に生じるAEには、注入関連反応(IRR)/サイトカイン放出症候群(CRS)、疲労、悪心および下痢が含まれた。IRR/CRSは一過性および可逆的であり、主にグレード1~2の悪寒および発熱として示された。DLTはなかった。7人の患者(5%)は、試験薬物に関連するAEのために治療を中止した。
【0442】
RNAワクチンは、RNAの自然免疫アゴニスト活性と一致して、各用量で炎症促進性サイトカインのパルス性放出を誘導した。RNAワクチン誘導性ネオ抗原特異的T細胞応答が、エクスビボELISPOTまたはMHC多量体分析によって49人の患者のうち37人(77%)の末梢血で観察された。メモリー表現型を有する最大6%のMHC多量体染色CD8+T細胞の誘導が末梢血において観察された。治療後の腫瘍生検において、複数のネオ抗原に対するRNAワクチン誘導性T細胞が検出された。少なくとも1回の腫瘍評価を受けた108名の患者のうち、9名が応答し(ORR8%、1のCRを含む)、53名の患者がSDを有した(49%)。
【0443】
アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンは、試験薬物の作用機序と一致する管理可能な安全性プロファイルを有し、有意なレベルのネオ抗原特異的免疫応答を誘導した。
【0444】
要約すると、本明細書に記載の第Ia相および第Ib相試験は、黒色腫、非小細胞肺がん、膀胱がん、結腸直腸がん、TNBC、腎がん、頭頸部がん、肉腫の患者を含む非登録シグナルを求める試験であった。実施例1に示すように、試験は、事前チェックポイント阻害剤レジメンありおよびなしの両方の患者を登録するように設計された。本試験の主な目的は、安全性(用量制限毒性を含む)を評価することであり、さらなる目的には、免疫原性の評価および抗腫瘍活性の予備評価が含まれた。試験には、第1a相(単独治療)用量漸増、第1b相(組合せ)用量漸増、および複数の第1b相拡大コホートが含まれた。患者は、RNAワクチンの9つの用量を、誘導段階中に毎週、および2週間に1回、および維持段階中に8サイクルごとに全身静脈内投与した。試験の第1b相部分では、アテゾリズマブを各21日間サイクルの1日目に投与した。
【0445】
RNAワクチンは、がん突然変異プロファイルのインハウス決定、ネオ抗原の計算予測、およびリポソームに製剤化されたRNA(RNA-LPX)に基づくワクチンの設計および製造を含んで患者ごとに製造した。各ワクチンは、最大20の腫瘍特異的ネオエピトープを含有していた。重要なことに、臨床診療に適合するターンアラウンド時間内での個々の患者のためのワクチンの製造は、低いまたは中程度の腫瘍変異負荷を有するものを含む範囲の腫瘍型にわたって臨床生検または日常的な臨床検体を使用して実行可能であることが示された。
【0446】
予備的な臨床結果を、第1a相試験の29名の患者および第1b相試験の132名の患者から評価した。第1a相患者は中央値5の事前治療(範囲1~17)を受けており、第1b相患者は中央値3の事前治療(範囲1~11)を受けていた。RNAワクチンは、アテゾリズマブの有無にかかわらず、発熱および悪寒として現れる注入関連反応/サイトカイン放出症候群などの主に一過性および可逆性のグレード1およびグレード2の有害事象を伴う管理可能な安全性プロファイルを有していた。相補的定量的イムノアッセイによる分析は、アテゾリズマブの有無にかかわらず、RNAワクチンが、低および中程度の変異負荷の腫瘍を有する患者を含めて、強いネオエピトープ特異的免疫応答を誘導することを示した。ワクチン誘導性ネオ抗原特異的T細胞をワクチン後生検で検出した。以前のチェックポイント阻害剤レジメンありおよびなしの両方の患者を含む限られた数の患者における客観的奏効を含めて、安定疾患の最良応答がRNAワクチン治療患者のほぼ半分で観察された。これは、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの臨床活性のレベルを示すが、チェックポイント阻害剤に加えてRNAワクチンの個々の寄与を評価するためにはランダム化データが必要である。
【0447】
さらに、転移性黒色腫を有する患者における手術の補助としてのRNAワクチンの以前の試験に基づいて、理論に拘束されることを望まないが、RNAワクチンは、より低い腫瘍負荷を有する患者における転移性再発を制御するために潜在的に十分に適していると考えられる。
【0448】
実施例3:局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者における単剤としてのおよびアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの免疫応答
実施例1および2に記載されるように、単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)およびアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)のファーストインヒト第Ia相試験および第Ib相試験を、局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者において行った(
図4)。RNAワクチンは、患者ごとに製造され、最大20の腫瘍特異的ネオエピトープ(例えば、
図10AおよびTureciら(2016)Clin Canc Res,22(8):1885-96;Vormehrら(2019)、Ann Rev Med,70:395~407;およびSahinら(2018)Science,359(6382):1355-1360参照)を含有していた。本実施例は、RNAワクチン単独およびアテゾリズマブと組み合わせて誘導された自然およびネオ抗原特異的免疫応答を評価する試験の結果を記載する。
【0449】
材料および方法
ELISPOTアッセイ
バルク末梢血単核細胞(PBMC)または分離したCD8+T細胞およびCD4+T細胞を、RNAワクチンにおける最大20の個々のネオ抗原標的に対応する重複ペプチドによってインビトロで刺激した。一晩刺激した後、ELISPOT法を使用してIFNg産生を評価した。このアッセイにおけるスポットの数は、PBMC中または分離したCD8+T細胞およびCD4+T細胞中のネオ抗原特異的T細胞の頻度に対応する。各ネオ抗原標的を二重ウェルで試験した。ネオ抗原ペプチドを含まない内部対照を使用して、アッセイにおけるポジティブな染色を定義した。具体的には、試験ウェル中のスポットの平均数が15を超え、対照ウェルと統計学的に有意に差がある場合、ポジティブな反応と指定した。RNAワクチン特異的応答を定義するために、RNAワクチンでの治療後に得られた試料からのスポットの数を、同じネオ抗原についてベースライン試料(RNAワクチン治療前)と比較した。ポジティブヒットを、治療後試料におけるポジティブな反応およびベースライン試料におけるネガティブな反応、またはベースライン試料もポジティブであった場合の治療後試料におけるベースラインスポット数の2倍の増加と定義した。ELISPOTアッセイ法の図を
図6に示す。
【0450】
pMHC多量体アッセイ
個々のpMHC多量体を、患者のHLAクラスI対立遺伝子に基づき、RNAワクチンで使用されるネオ抗原標的中の予測エピトープに由来するペプチドを使用して、各患者に対して設計した。凍結末梢血単核細胞(PBMC)を蛍光活性化細胞選別(FACS)染色に使用した。各試料を、ネオ抗原特異的CD8+T細胞の表現型を定義するための複数のpMHC多量体および追加の抗体で染色した。FACSパネルは、(染色の特異性を高めるために)各ネオ抗原が2つの異なるフルオロフォアで標識された2つのpMHC多量体を有するように設計した。CD8+T細胞をPBMC間でゲートし、各ネオ抗原について2つの異なるフルオロフォアで標識された2つのpMHC多量体による染色について分析した。任意の所与のCD8+T細胞がポジティブな染色(すなわち、ネオ抗原特異的)と呼ばれるためには、2つの異なるフルオロフォアで標識されたpMHC多量体の両方についてポジティブに染色され、FACSヒストグラムの右上象限に入る必要があった。pMHC多量体染色アッセイ法の図を
図8に示す。
【0451】
結果
自然免疫応答
単剤療法(第Ia相)として、またはアテゾリズマブと組み合わせら(第Ib相)、RNAワクチンによって誘導された自然免疫応答をRNAワクチンおよびアテゾリズマブの治療開始前および投与後の複数の時点で酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)分析を使用して血漿中のサイトカイン(例えば、IFNgまたはIFNa)のレベルを測定することによって評価した。
【0452】
第Ia相試験について
図5Aに示されるように、第Ia相試験において25μgの用量でRNAワクチンを投与された患者は、血漿IFNgレベルにおけるパルス状の上昇を示した(5名の患者からの結果が示される)。加えて、RNAワクチンの各投与後4時間での血漿IFNgレベルは用量依存的様式で増加した(
図5B)。RNAワクチンの各投与後4時間でのIFNaレベルは用量依存的様式で増加した(
図5C)。50μgの用量でRNAワクチンを投与した数人の患者はステロイドを受け、25μgへとの用量が低下した。
【0453】
第Ib相試験の患者におけるRNAワクチンの各投与の4時間後にサイトカインレベルも評価した。加えて、
図5B~5Cに示すように、RNAワクチンの各投与後4時間での血漿IFNgレベルおよびIFNaレベルは用量依存的様式で増加した。
【0454】
全体として、これらの結果は、RNAワクチンを単剤療法として、またはアテゾリズマブと組み合わせて投与すると、TLR7/8アゴニズムを介した自然免疫刺激薬としてのRNAワクチンの提案された機能と一致して、堅牢で用量依存的な自然免疫活性化がもたらされることを示した(例えば、
図10A~10Bを参照されたい。)。さらに、自然免疫応答は、RNAワクチン単剤療法と比較して、RNAワクチンとアテゾリズマブの組み合わせによって増強された(
図5B~5C)。この効果は、25μg RNAワクチン用量で最も顕著であった。IL-6およびIL-12を含む他のサイトカインについても同様の結果が観察された(データは示さない)。
【0455】
ネオ抗原特異的免疫応答
単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)またはアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)の投与後のネオ抗原特異的免疫応答を、エクスビボElispotアッセイ(
図6)およびMHC多量体染色アッセイ(
図8)を用いて評価した。
【0456】
ELISpotアッセイ
単剤療法としてのRNAワクチン(第Ia相)またはアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチン(第Ib相)の投与後のネオ抗原特異的免疫応答を、サイクル4、1日目においてエクスビボIFNg Elispotアッセイ(
図6)を用いて最初に評価した。
【0457】
図7Aに示すように、RNAワクチンを単剤療法として投与した患者(第Ia相)は、幅(すなわち、免疫応答を誘導した抗原の数)が様々なネオ抗原特異的免疫応答を示した。例えば、100μgの用量でRNAワクチンを投与された患者1は、10の抗原のうちの1つ(10%)に対してネオ抗原特異的免疫応答を示した。他の実施例において、75μgの用量でRNAワクチンを投与された患者2は、20の抗原のうちの4つ(20%)に対してネオ抗原特異的免疫応答を示した。
【0458】
RNAワクチンをアテゾリズマブと組み合わせて投与した患者(第Ib相)もまた、幅(すなわち、免疫応答を誘導した抗原の数)が様々なネオ抗原特異的免疫応答を示した。例えば、
図7Bに示すように50μgの用量でRNAワクチンを投与された患者11は、20の抗原のうちの1つ(5%)に対してネオ抗原特異的免疫応答を示した。他の実施例において、25μgの用量でRNAワクチンを投与された患者20は、20の抗原のうちの7つ(35%)に対してネオ抗原特異的免疫応答を示した。
【0459】
観察されたネオ抗原特異的免疫応答の規模も、第Ib相試験の患者について決定した。
図7Cに示されるように、免疫応答を誘導した各ネオ抗原に対するIFNg形成スポットの数は変動した。患者27は、EliSpotアッセイによるいかなるポジティブなネオ抗原ヒットも有さなかったが、pMHC多量体染色アッセイによる1つのポジティブなネオ抗原ヒットを示した(下記参照)。
図7Cの患者20および14について示されているデータは、各ネオ抗原ヒットに対するCD4スポットおよびCD8スポットの両方を含む。患者12のデータはCD4+T細胞応答を示す。さらに、
図7Dおよび表3に示すように、観察された免疫応答の中央値の規模は、RNAワクチン用量内およびRNAワクチン用量間で患者間で変動した。
【表3】
【0460】
一例において、RNAワクチンを25μgの用量でアテゾリズマブと組み合わせて投与したCIT未経験トリプルネガティブ乳がん患者から得られたバルクPBMCに対して実施したIFNg EliSpotアッセイ(第Ib相;患者22)は、抗原R6およびR8がサイクル4、1日目にネオ抗原特異的免疫応答をもたらしたことを示した(
図9A)。対照的に、ネオ抗原R3はポジティブヒットとして検出されなかった。
【0461】
pMHC多量体アッセイ
患者22(
図9A参照)におけるネオ抗原特異的CD8+T細胞応答もまた、完全定量的ペプチドMHC(pMHC)多量体染色アッセイを使用して評価した(
図8)。
【0462】
図9Bに示すように、
図9Aに示すバルクPBMC EliSpotアッセイと一致して、pMHC多量体染色アッセイを使用して、ネオ抗原R8に特異的なCD8+T細胞応答を検出した。ネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答の動態は、ピーク応答(すなわち、約5.67%のネオ抗原特異的CD8+T細胞)が約3~約6ワクチン用量で発生し、免疫応答がC7D1の用量によって増強されることを示唆した(
図9BのC8D1参照)。サイクル3、1日目のネオ抗原特異的CD8+T細胞集団によって発現されたマーカーの分析は、集団がCD45+RA+エフェクターメモリー細胞(TEMRA;1.18%)、セントラルメモリー細胞(Tcm;1.28%)およびエフェクターメモリー細胞(Tem;93.10%)を含むことを示した(
図9C)。さらに、ネオ抗原特異的CD8+T細胞集団の99.1%がPD-1+であった(
図9D)。
【0463】
ネオ抗原R8で観察された結果とは対照的に、
図9Aに示すバルクPBMC EliSpotアッセイではネオ抗原R3をポジティブヒットとして検出することができなかったが、pMHC多量体アッセイを使用してネオ抗原R3に特異的なCD8+T細胞応答を検出した(
図9E)。ネオ抗原R3に対するネオ抗原特異的CD8+T細胞免疫応答の動態は、ピーク応答(すなわち、約0.27%のネオ抗原特異的CD8+T細胞)が約3~約6ワクチン用量で発生すれることを示唆した。サイクル3、1日目のネオ抗原特異的CD8+T細胞集団によって発現されたマーカーの分析は、集団がCD45+RA+エフェクターメモリー細胞(TEMRA;1.08%)、およびエフェクターメモリー細胞(Tem;95.7%)を含むことを示した(
図9F)。さらに、ネオ抗原特異的CD8+T細胞集団の100.00%がPD-1+であった(
図9G)。
【0464】
全体として、これらの結果は、ネオ抗原特異的T細胞応答が、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの投与後にEliSpotアッセイならびにpMHC多量体アッセイで検出されたこと、およびRNAワクチンによって誘導されたCD8+T細胞の規模が末梢血において5%超に達し得ることを示した(例えば、最大約6%)。さらに、結果は、pMHC多量体アッセイがEliSpotアッセイと比較してより高い感度を有することを示唆した。さらに、RNAワクチンによって誘導されたネオ抗原特異的免疫応答には、PD-1(すなわち、PD-1+)の高発現を有し、主にエフェクターメモリー表現型を有するCD8+T細胞が含まれた。これらの結果は、RNAワクチンが長時間持続するネオ抗原特異的免疫応答をもたらすことを示唆した。
【0465】
考察
本実施例に示された結果は、RNAワクチンの単剤療法またはアテゾリズマブとの組み合わせのいずれかとしての投与が、強い自然免疫活性化ならびにネオ抗原特異的免疫応答をもたらしたことを示した。これらの結果は、RNAワクチンの提案された作用機序と一致しており、これは、
図10A~10Bに示されるように、自然免疫刺激(例えば、内因性TLR7/8アゴニズム)を介して、ならびに樹状細胞によるネオ抗原の提示後にネオ抗原特異的T細胞応答(例えば、CD4+およびCD8+T細胞応答)を刺激することの両方によって作用すると考えられている(例えば、Kranzら(2016)、Nature、16;534(7607):396-401)を参照のこと。
【0466】
実施例4:局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者における単剤としてのRNAワクチンの第Ia試験からのさらなる結果
本実施例は、実施例1~3に記載の局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者における単剤療法としてのRNAワクチンの第Ia相試験の追加の安全性および有効性の結果を提供する。
【0467】
図4に示すように、第Ia相用量漸増試験の患者には、25μg~100μg(25μg、38μg、50μg、75μg、および100μg)の範囲の用量でRNAワクチンを投与した。初期治療(誘導段階)中、RNAワクチンを21日間サイクルで投与した。誘導段階(開始段階)の間、RNAワクチンは、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与された。初期治療後の維持段階に、RNAワクチンをサイクル13の1日目に投与し、その後、疾患進行まで8サイクルごと(すなわち、その後24週間ごと、またはその後168日ごと)に投与した。
【0468】
患者の人口統計および疾患の特徴
表4に示すように、本試験における患者の年齢の中央値は59歳であり、殆どの患者は女性(65%)であった。患者の55%が1のECOGパフォーマンスステータスを有し、患者の45%が0のECOGパフォーマンスステータスを有した。最も一般的な腫瘍型は、乳がん(HER2+またはHR+)、前立腺がん、卵巣がん、骨肉腫、子宮内膜がん、胃がんおよび軟部組織肉腫であった。患者は、転移性疾患のための5つの事前全身治療の中央値を受けており、患者の32%は、チェックポイント阻害剤による事前治療を受けていた。さらに、90%の患者が、5%未満の腫瘍浸潤免疫細胞および腫瘍細胞においてPD-L1発現を有し、10%の患者が、5%以上の腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞においてPD-L1発現を有していた。
【表4】
【0469】
露光および配置
表5に示すように、第Ia相の全患者の治療期間の中央値は43日であった。治療中、100μg RNAワクチン用量で一用量制限毒性(DLT)が観察された(グレード3サイトカイン放出症候群)。RNAワクチンの用量減少は、38μgの用量でRNAワクチンを投与された一人の患者で生じた。全体として、29人の患者が治療を中止しており、12人が第Ib相への交差のため、11人が疾患進行のため、5人が試験中止のためである。研究中の8人の患者は、6週間の治療を完了する前に疾患進行のために治療を中断した。
【表5】
【0470】
安全性
図11は、患者の10%超で発生する最も一般的なAEの要約を提供する。患者の10%超に生じる最も一般的な試験治療関連AEは、注入関連反応およびサイトカイン放出症候群を含む全身反応であった。患者の10%超に生じる他のAEには、疲労、下痢、嘔吐、悪心、筋痛、呼吸困難、脱水、四肢痛、食欲不振、便秘および腹痛が含まれた。悪性腫瘍進行の重篤な有害事象(SAE)が16%の患者で報告された(データは示さない)。
【0471】
殆どの全身反応は、RNAワクチンの注入後約2~4時間以内に起こり、約1~2時間以内に消散した。表6は、5%以上の患者で起こる全身反応の個々の徴候および症状の概要を提供する。低血圧症および低酸素症の殆どの事象は、グレード3の低血圧症およびグレード3の低酸素症の症状を有するDLT事象を除いて、グレード2であった。
【表6】
【0472】
全体として、安全性の結果は、RNAワクチンが一般的に忍容性が良好であり、治療関連AEは、低悪性度サイトカイン放出症候群、注入関連反応、またはインフルエンザ様症状として現れる主に一過性の全身反応であることを示した。全身反応は一過性であり、一般的に外来条件で管理可能であった。最大耐量(MTD)に達しなかった。
【0473】
自然免疫応答
単剤療法としてのRNAワクチンによる治療は、各RNAワクチン用量で血漿中で測定された炎症促進性サイトカインのパルス放出を誘導した。例えば、
図12A~
図12Bに示すように、25μgの用量でRNAワクチンを投与された患者は、各RNAワクチン投与後にIFNγのパルス状放出を示した。25μgの用量でRNAワクチンを投与した患者におけるIL-6およびIFNαのパルス状放出の同様のパターンも観察された(
図13)。観察される炎症促進性サイトカインのRNAワクチン誘導性パルス状放出は、RNAワクチンの提案される自然免疫アゴニスト活性と一致していた。
【0474】
ネオ抗原特異的免疫応答
エクスビボでのネオ抗原特異的T細胞応答を、評価した患者の86%において、EliSpotアッセイ(例えば、
図6を参照されたい。)およびMHC多量体染色アッセイ(例えば、
図8を参照されたい)によって検出した(
図14A)。患者におけるネオ抗原特異的応答の数の中央値は2(1~5の範囲)であった(
図14B)。
【0475】
75μgの用量のRNAワクチンで治療した前立腺がん患者の腫瘍におけるT細胞受容体配列決定によるT細胞受容体の分析は、RNAワクチンでの治療後にのみ腫瘍にネオ抗原特異的T細胞が存在することを示した(
図15)。これらの結果は、RNAワクチンが、RNAワクチンによって刺激されたT細胞の腫瘍への浸潤を誘導することを示唆した。
【0476】
38μgの用量のRNAワクチンで治療された前立腺がん患者のネオ抗原特異的CD8+T細胞応答を、完全定量的ペプチドMHC(pMHC)多量体染色アッセイを使用して末梢血で経時的に分析した(
図8)。
図16Aに示すように、末梢血中のCD8+ネオ抗原特異的T細胞は経時的に増加し、サイクル4、1日目に4.7%に達した。サイクル4、1日目においてネオ抗原特異的CD8+T細胞集団によって発現されたマーカーの分析により、それらの細胞の87.7%がエフェクターメモリーT細胞表現型(Tem;
図16B)を有し、細胞の99.6%がPD-1+(
図16C)であることが明らかになった。
【0477】
観察されたRNAワクチン誘導性ネオ抗原特異的免疫応答は、ネオ抗原提示の刺激因子としてのRNAワクチンの提案された機能と一致していた。
【0478】
臨床活性
図17は、単剤療法としてRNAワクチンで治療された患者で観察された臨床応答の要約およびベースラインからの最長直径の合計(SLD)の最良変化率を示す。50μgの用量のRNAワクチンで治療した胃がんを有する一人の患者は完全奏効(CR)を示した。この患者は、RNAワクチンを投与する前に3つの事前の治療(チェックポイント阻害剤を含まない)を受けており、RNAワクチン治療を継続して1.5年間追跡調査されている。
図18に示すように、この患者は、試験のサイクル4、1日目に、抗原R4、R8、R9、R12およびR15に対するIFNγ EliSpotアッセイによって測定されたネオ抗原特異的免疫応答を示した。
【0479】
考察
本実施例に記載される結果は、25μg~100μgの範囲の用量で単剤療法として投与されたRNAワクチンが一般に忍容性が高いことを示した。治療中の免疫モニタリングは、RNAワクチンが、投与された各用量での炎症促進性サイトカインのパルス性放出、ネオ抗原特異的T細胞免疫応答、および1人の患者の腫瘍への刺激T細胞の浸潤を誘導することを示した。さらに、臨床的有効性の結果は、RNAワクチンが1名の患者において完全奏効をもたらしたことを示した。全体として、これらの結果は、自然免疫応答およびネオ抗原提示の刺激因子としてのRNAワクチンの提案された二重の作用機序と一致している(例えば、
図10A~
図10Bを参照されたい)。
【0480】
実施例5:局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者におけるアテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの第Ib試験からのさらなる結果
本実施例は、実施例1~3に記載の局所進行型または転移性固形腫瘍を有する患者におけるアテゾリズマブと組み合わせて投与されたRNAワクチンの第Ib相試験のさらなる安全性および有効性の結果を提供する。
【0481】
図4に示すように、第Ib相試験において、患者は15μg、25μg、38μg、または50μgの用量のRNAワクチンを、1200mgのアテゾリズマブと組み合わせて投与された。第Ib相試験には、RNAワクチン用量の用量漸増段階と、表示されたチェックポイント阻害剤未経験または経験した腫瘍型を有する患者にアテゾリズマブと組み合わせてRNAワクチンを投与する拡大段階とを含んでいた。誘導段階(開始段階)の間、RNAワクチンは、サイクル1の1、8および15日目;サイクル2の1、8、および15日目;サイクル3の1および15日目;ならびにサイクル7の1日目に個体に投与された。初期治療後の維持段階に、RNAワクチンをサイクル13の1日目に投与し、その後、疾患進行まで8サイクルごと(すなわち、その後24週間ごと、またはその後168日ごと)に投与した。アテゾリズマブは、疾患進行(
図4参照)まで、サイクル1~12のそれぞれの1日目、サイクル13の1日目、およびその後3週間ごと(すなわち、その後21日ごと)に投与した。各サイクルは21日間であった。
【0482】
患者の人口統計および疾患の特徴
表7に示すように、用量漸増期では、患者の年齢の中央値は57.5歳であり、患者の56.6%は男性であった。患者の50%が0のECOGパフォーマンスステータスを有し、患者の50%が1のECOGパフォーマンスステータスを有した。用量漸増段階における最も一般的な腫瘍型は、結腸がん(30%)、直腸がん(16.7%)、腎がん(10%)およびトリプルネガティブ乳がん(10%)であった。転移性疾患に対する以前の全身治療の数の中央値は4(範囲:1~9)であり、患者の43.3%がチェックポイント阻害剤による事前の治療を受けていた。80%の患者が、5%未満の腫瘍浸潤免疫細胞および腫瘍細胞においてPD-L1発現を有し、16.7%の患者が、5%以上の腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞においてPD-L1発現を有していた。
【表7】
【0483】
表8に示すように、拡大期において、年齢の中央値は、チェックポイント阻害剤で以前に治療された患者(CPI経験)については61.5歳、CPI未経験患者については57.5歳であった。CPI経験患者の59.5%およびCPI未経験患者の43.1%は男性であった。CPI経験患者の45.2%およびCPI未経験患者の52.8%が0のECOGパフォーマンスステータスを有し、CPI経験患者の54.8%およびCPI未経験患者の47.2%が1のECOGパフォーマンスステータスを有していた。CPI経験患者における最も一般的な腫瘍型は、非小細胞肺がん(71.4%)および黒色腫(19%)であった。CPI未経験患者における最も一般的な腫瘍型は、非小細胞肺がん(13.9%)、黒色腫(12.5%)、腎細胞がん(33.3%)および尿路上皮がん(13.9%)であった。CPIを経験した患者は、転移性疾患のために中央値3回の事前全身治療を受けていたが、CPI未経験の患者は、転移性疾患のために中央値2回の事前全身治療を受けていた。50%のCPI経験患者が、5%未満の腫瘍浸潤免疫細胞および腫瘍細胞においてPD-L1発現を有し、28.6%の患者が、5%以上の腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞においてPD-L1発現を有していた。75%のCPI未経験患者が、5%未満の腫瘍浸潤免疫細胞および腫瘍細胞においてPD-L1発現を有し、13.9%の患者が、5%以上の腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞においてPD-L1発現を有していた。
【表8】
【0484】
暴露および配置
表9は、第Ib相試験における患者の治療曝露および患者の配置の概要を提供する。RNAワクチンによる治療期間の中央値は57日であり、アテゾリズマブによる治療期間の中央値は66日であった。合計6回のRNAワクチン用量減少および1回のRNAワクチン中止が発生した。患者の76.8%は両方の試験治療を中止しており、患者の23.2%は治療を継続している。RNAワクチンの中断の63.4%が疾患進行に起因して起こり、3.5%が死亡に起因して起こり、5.6%が有害事象に起因して起こり、1.4%が対象による中止に起因した。患者の16.9%は、6週間の治療を完了する前に疾患進行のために試験治療を中断した。
【表9】
【0485】
安全性
図19は、第Ib試験において患者の10%超で発生する最も一般的なAEの要約を示す。患者の10%超に発生する治療関連有害事象は、主に全身性反応、例えば注入関連反応、サイトカイン放出症候群およびインフルエンザ様疾患であった。患者の10%超に生じる他のAEには、疲労、悪心、発熱、下痢、食欲不振、嘔吐、頭痛、咳、呼吸困難、関節痛、便秘および貧血が含まれた。悪性腫瘍進行の重篤な有害事象が14%の患者で報告された(データは示さない)。実施例1~4に記載の第Ia相試験では、単剤療法としてRNAワクチンを投与した患者と比較して、免疫媒介性有害事象の増加は観察されなかった(データは示さない)。
【0486】
表10に示されるように、全身性反応の発症時間の中央値は、15μgのRNAワクチン投与患者では5.7時間、25μgのRNAワクチン投与患者では4.0時間、38μgのRNAワクチン投与患者では4.1時間、および50μgのRNAワクチン投与患者では3.2時間であった。全身性反応は、中央値1.8時間以下の時間内に解消した。
【表10】
【0487】
表11は、5%以上の患者で起こる全身性反応の個々の徴候および症状の概要を提供する。
【表11】
【0488】
用量制限毒性は観察されず、最大耐量に達しなかった。さらに、治療関連AEは、主に、低悪性度サイトカイン放出症候群(CRS)、注入関連反応(IRR)、またはインフルエンザ様症状として現れる全身性反応であった。全体的に、全身性反応は一過性、可逆的であり、外来条件で管理可能であった。
【0489】
自然免疫応答
試験中の血漿中のサイトカインの分析は、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの投与が、例えば実施例4に記載されているように、第Ia相試験で患者について観察されたものと同様の様式で炎症促進性サイトカインのパルス性放出を誘導することを示した(データは示さない)。
【0490】
ネオ抗原特異的免疫応答
エクスビボでのネオ抗原特異的T細胞応答を、評価した患者(n=63)の73%において、EliSpotアッセイ(例えば、
図6を参照されたい。)およびMHC多量体染色アッセイ(例えば、
図8を参照されたい)によって検出した(
図20)。患者におけるネオ抗原特異的応答の数の中央値は2.6であった(範囲1~9)。さらに、CD4+およびCD8+T細胞応答の両方が試験患者(n=14)で検出された(データは示さない)。
【0491】
1200mgアテゾリズマブおよび38μgの用量のRNAワクチンで治療した結腸がん患者の腫瘍におけるT細胞受容体配列決定によるT細胞受容体の分析は、RNAワクチンでの治療後にのみ腫瘍にネオ抗原特異的T細胞が存在することを示した(
図21)。これらの結果は、RNAワクチンが、RNAワクチンによって刺激されたT細胞の腫瘍への浸潤を誘導することを示唆した。
【0492】
全体として、これらの結果は、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンが、治療患者の大部分においてネオ抗原特異的T細胞応答を誘導したことを示した。
【0493】
臨床活性
図22に、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンで治療された患者で観察された臨床応答の要約を示す。
【0494】
38μgの用量のRNAワクチンで治療した直腸がんを有する一人の患者は完全奏効(CR)を示した。この患者は、チェックポイント阻害剤で以前に治療されておらず、SP142 Ventanaアッセイによって評価した場合、腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞の5%以上においてPD-L1を発現していなかった。
【0495】
38μgの用量のRNAワクチンで治療されたトリプルネガティブ乳がん(
図22のボックスで示されている)の別の患者は、部分奏効(PR)を示した。この患者は、チェックポイント阻害剤で以前に治療されており(CPI経験)、SP142 Ventanaアッセイによって評価した場合、腫瘍浸潤免疫細胞または腫瘍細胞の5%以上においてPD-L1を発現していた。
図23A~23Bに示すように、ベースラインで、この患者は、転移性疾患に関連するいくつかの目に見える腫瘍塊を有し、CD8+ネオ抗原特異的T細胞についてネガティブであった(0.01%;バックグラウンドレベル)。サイクル4では、腫瘍のサイズが減少し、患者は2.2%のCD8+ネオ抗原特異的T細胞を有していた。
【0496】
指標特異的拡大段階における臨床活性
実施例1に記載されるように、および、
図4に示されるように、第Ib相試験は、特定の腫瘍型(チェックポイント阻害剤未経験または経験のいずれか)を有する患者が、アテゾリズマブ(1200mg)と組み合わせて15μgまたは25μgの用量でRNAワクチンにより治療される適応症特異的拡大期を含んでいた。第Ib相試験の適応症特異的チェックポイント阻害剤未経験拡大段階に含まれる患者のベースライン患者および疾患特性の要約を表12に示す。
【表12】
【0497】
図24A~24Eは、尿路上皮癌腫(
図24A)、腎細胞癌腫(
図24B)、黒色腫(
図24C)、トリプルネガティブ乳がん(
図24D)および非小細胞肺がん(
図24E)を有するチェックポイント阻害剤未経験患者についての最長直径(SLD)および奏効率(ORR)の合計の経時的変化を提供する。尿路上皮癌腫患者は10%のORRを有し、腎細胞癌腫患者は22%のORRを有し、黒色腫患者は30%のORRを有し、トリプルネガティブ乳がん患者は4%のORRを有し、非小細胞肺がん患者は10%のORRを有していた。
【0498】
考察
この実施例に記載された結果は、アテゾリズマブと組み合わせて投与されたRNAワクチンが一般的に忍容性が高いことを示した。用量制限毒性は観察されず、最大耐量に達しなかった。治療中の免疫モニタリングは、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンの投与が、炎症促進性サイトカインの放出、大部分の患者における末梢T細胞応答、および1人の患者の腫瘍へのRNAワクチン誘導性T細胞の浸潤を誘導することを示した。さらに、アテゾリズマブと組み合わせたRNAワクチンによる治療後の完全奏効が1名の患者で観察され、様々な腫瘍型を有するいくつかの患者で客観的奏効が観察された。全体として、これらの結果は、自然免疫応答およびネオ抗原提示の刺激因子としてのRNAワクチンの提案された二重の作用機序と一致している(例えば、
図10A~
図10Bを参照されたい)。
配列
全てのポリヌクレオチド配列を5’→3方向に示す。全てのポリペプチド配列をN末端からC末端方向に示す。
抗PDL1抗体HVR-H1配列(配列番号1)
GFTFSDSWIH
抗PDL1抗体HVR-H2配列(配列番号2)
AWISPYGGSTYYADSVKG
抗PDL1抗体HVR-H3配列(配列番号3)
RHWPGGFDY
抗PDL1抗体HVR-L1配列(配列番号4)
RASQDVSTAVA
抗PDL1抗体HVR-L2配列(配列番号5)
SASFLYS
抗PDL1抗体HVR-L3配列(配列番号6)
QQYLYHPAT
抗PDL1抗体VH配列(配列番号7)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS
抗PDL1抗体VL配列(配列番号8)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR
抗PDL1抗体重鎖配列(配列番号9)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
抗PDL1抗体軽鎖配列(配列番号10)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
ニボルマブ重鎖配列(配列番号11)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWY DGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
ニボルマブ軽鎖配列(配列番号12)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRAT GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
ペムブロリズマブ重鎖配列(配列番号13)
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGG INPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYW GQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGV HTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCP APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAK GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENN YKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
ペムブロリズマブ軽鎖配列(配列番号14)
EIVLTQSPAT LSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLES GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVF IFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQ DSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
アベルマブ重鎖配列(配列番号15)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
アベルマブ軽鎖配列(配列番号16)
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
デュルバルマブ重鎖配列(配列番号17)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
デュルバルマブ軽鎖配列(配列番号18)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
完全PCV RNA5’定常配列(配列番号19)
GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC
完全PCV RNA3’定常配列(配列番号20)
AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCCUAGUAACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU
完全PCVコザックRNA(配列番号21)
GGCGAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC
完全PCVコザックDNA(配列番号22)
GGCGAACTAGTATTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACC
短コザックRNA(配列番号23)
UUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACC
短コザックDNA(配列番号24)
TTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACC
sec RNA(配列番号25)
AUGAGAGUGAUGGCCCCCAGAACCCUGAUCCUGCUGCUGUCUGGCGCCCUGGCCCUGACAGAGACAUGGGCCGGAAGC
sec DNA(配列番号26)
ATGAGAGTGATGGCCCCCAGAACCCTGATCCTGCTGCTGTCTGGCGCCCTGGCCCTGACAGAGACATGGGCCGGAAGC
secタンパク質(配列番号27)
MRVMAPRTLILLLSGALALTETWAGS
MITD RNA(配列番号28)
AUCGUGGGAAUUGUGGCAGGACUGGCAGUGCUGGCCGUGGUGGUGAUCGGAGCCGUGGUGGCUACCGUGAUGUGCAGACGGAAGUCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCUACAGCCAGGCCGCCAGCUCUGAUAGCGCCCAGGGCAGCGACGUGUCACUGACAGCC
MITD DNA(配列番号29)
ATCGTGGGAATTGTGGCAGGACTGGCAGTGCTGGCCGTGGTGGTGATCGGAGCCGTGGTGGCTACCGTGATGTGCAGACGGAAGTCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCTACAGCCAGGCCGCCAGCTCTGATAGCGCCCAGGGCAGCGACGTGTCACTGACAGCC
MITDタンパク質(配列番号30)
IVGIVAGLAVLAVVVIGAVVATVMCRRKSSGGKGGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA
完全PCV FI RNA(配列番号31)
CUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCGAGACCUGGUCCAGAGUCGCUAGCCGCGUCGCU
完全PCV FI DNA(配列番号32)
CTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCCCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCGAGACCTGGTCCAGAGTCGCTAGCCGCGTCGCT
FエレメントRNA(配列番号33)
CUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCC
FエレメントDNA(配列番号34)
CTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCC
IエレメントRNA(配列番号35)
CAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCG
IエレメントDNA(配列番号36)
CAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCG
リンカーRNA(配列番号37)
GGCGGCUCUGGAGGAGGCGGCUCCGGAGGC
リンカーDNA(配列番号38)
GGCGGCTCTGGAGGAGGCGGCTCCGGAGGC
リンカータンパク質(配列番号39)
GGSGGGGSGG
完全PCV DNA 5’定常配列(配列番号40)
GGCGAACTAGTATTCTTCTGGTCCCCACAGACTCAGAGAGAACCCGCCACCATGAGAGTGATGGCCCCCAGAACCCTGATCCTGCTGCTGTCTGGCGCCCTGGCCCTGACAGAGACATGGGCCGGAAGC
完全PCV DNA 3’定常配列(配列番号41)
ATCGTGGGAATTGTGGCAGGACTGGCAGTGCTGGCCGTGGTGGTGATCGGAGCCGTGGTGGCTACCGTGATGTGCAGACGGAAGTCCAGCGGAGGCAAGGGCGGCAGCTACAGCCAGGCCGCCAGCTCTGATAGCGCCCAGGGCAGCGACGTGTCACTGACAGCCTAGTAACTCGAGCTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCCCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCGAGACCTGGTCCAGAGTCGCTAGCCGCGTCGCT
キャップ由来の5’GGを有する完全PCV RNA(配列番号42)
GGGGCGAACU AGUAUUCUUC UGGUCCCCAC AGACUCAGAG AGAACCCGCC
ACCAUGAGAG UGAUGGCCCC CAGAACCCUG AUCCUGCUGC UGUCUGGCGC
CCUGGCCCUG ACAGAGACAU GGGCCGGAAG CNAUCGUGGGA AUUGUGGCAG
GACUGGCAGU GCUGGCCGUG GUGGUGAUCG GAGCCGUGGU GGCUACCGUG
AUGUGCAGAC GGAAGUCCAG CGGAGGCAAG GGCGGCAGCU ACAGCCAGGC
CGCCAGCUCU GAUAGCGCCC AGGGCAGCGA CGUGUCACUG ACAGCCUAGU
AACUCGAGCU GGUACUGCAU GCACGCAAUG CUAGCUGCCC CUUUCCCGUC
CUGGGUACCC CGAGUCUCCC CCGACCUCGG GUCCCAGGUA UGCUCCCACC
UCCACCUGCC CCACUCACCA CCUCUGCUAG UUCCAGACAC CUCCCAAGCA
CGCAGCAAUG CAGCUCAAAA CGCUUAGCCU AGCCACACCC CCACGGGAAA
CAGCAGUGAU UAACCUUUAG CAAUAAACGA AAGUUUAACU AAGCUAUACU
AACCCCAGGG UUGGUCAAUU UCGUGCCAGC CACACCGAGA CCUGGUCCAG
AGUCGCUAGC CGCGUCGCUA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA
AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA
AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAA
【配列表】
【国際調査報告】