(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(54)【発明の名称】半導体ウェハの温度制御装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230322BHJP
F25B 40/00 20060101ALI20230322BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230322BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230322BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B40/00 V
H01L21/02 Z
F25B49/02 510C
F25B1/00 304Z
F25B5/02 A
F25B1/00 101Z
F25B1/00 361J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022548421
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2021051070
(87)【国際公開番号】W WO2021161183
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ケイル カウスタブ
(57)【要約】
半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの半導体ウェハの温度を制御するために流体を供給する温度制御装置であって、温度制御装置は、混合冷媒の冷凍システムを備え、温度制御装置は、混合冷媒を半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの調整回路に供給し、混合冷媒を少なくとも1つの調整回路から受け取るように構成される。温度制御装置は、少なくとも1つの調整回路の温度を複数の予め定められた温度のうちの1つに制御するための温度制御回路を備え、温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満であり、温度制御回路は、少なくとも1つの調整回路に供給される混合冷媒の質量流量、組成又は温度のうちの少なくとも1つを制御することによって、少なくとも1つの調整回路の温度を制御するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの半導体ウェハの温度を制御するために流体を供給する温度制御装置であって、
前記温度制御装置は、混合冷媒の冷凍システムを備え、
前記温度制御装置は、前記混合冷媒を前記半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの調整回路に供給し、前記混合冷媒を前記少なくとも1つの調整回路から受け取るように構成され、
前記温度制御装置は、前記少なくとも1つの調整回路の温度を複数の予め定められた温度のうちの1つに制御するための温度制御回路を備え、前記温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満であり、
前記温度制御回路は、少なくとも1つの温度センサから前記少なくとも1つの調整回路の温度を示す信号を受け取り、前記受け取った信号及び前記予め定められた温度に基づいて、前記少なくとも1つの調整回路に供給される前記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記少なくとも1つの調整回路の前記温度を制御するように構成されている、温度制御装置。
【請求項2】
前記温度制御装置は、前記少なくとも1つの温度センサを備える、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記温度制御装置は、複数の半導体ウェハを冷却又は調整するための複数の調整回路に前記混合冷媒を供給するように構成され、前記複数の調整回路は、互いに並列に配置されており、
前記温度制御装置は、処理サイクル時に前記複数の調整回路の選択されたものを通る前記混合冷媒の循環を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記温度制御回路は、前記複数の調整回路の各々に供給される前記混合冷媒の質量流量、温度、又は組成のうちの少なくとも1つを制御することにより、前記複数の調整回路の温度を個別に制御するように構成されている、請求項3に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記温度制御回路は、複数の温度センサから前記複数の調整回路の各々の温度を示す信号を受け取り、前記受け取った信号及び前記予め定められた温度に基づいて前記複数の調整回路の各々に供給される前記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度のうちに少なくとも1つを制御することによって、前記複数の調整回路の前記温度を制御するように構成されている、請求項4に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記圧縮機から出力される前記混合冷媒の一部を前記冷凍システムの少なくとも一部を迂回して導くためのバイパス混合冷媒流路を備え、前記バイパス混合冷媒流路内の混合冷媒は、前記冷凍システムによって出力され混合冷媒よりも暖かくなっており、
前記温度制御回路は、前記バイパス混合冷媒流路からの前記混合冷媒及び前記冷凍システムから出力される前記混合冷媒のうちの少なくとも一方から、前記少なくとも1つのウェハ調整回路への供給を制御することによって、前記複数の調整回路の前記選択されたものの各々へ出力される前記混合冷媒の温度を制御するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記温度制御装置は、前記少なくとも1つの調整回路への冷媒の流れを制御するための少なくとも1つの弁を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弁は、ON/OFF弁及び比例流量制御弁のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の温度制御装置。
【請求項9】
前記温度制御装置は、前記混合冷媒が前記少なくとも1つの調整回路に供給される前に、前記混合冷媒の組成及び相を変化させる組成制御デバイスを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項10】
前記組成制御デバイスは、相分離器を備え、前記混合冷媒の前記組成は、前記相分離器を出る液相冷媒の質量流量及びその後の膨張の少なくとも一方を制御することによって制御される、請求項9に記載の温度制御装置。
【請求項11】
前記組成制御デバイスは、前記混合冷媒の相組成を制御するためのデバイスを備える、請求項9又は10に記載の温度制御装置。
【請求項12】
前記温度制御装置は、前記少なくとも1つの調整回路に供給される又は前記少なくとも1つの調整回路から受け取る、前記混合冷媒の圧力を制御するための蒸発器圧力調整器を備える、請求項11に記載の温度制御装置。
【請求項13】
前記温度制御装置は、前記混合冷媒の少なくとも一部が流れる熱交換器を備え、前記熱交換器は、前記冷媒システムの別の部分からの少なくとも1つの暖かい流体の制御された流れを受け取るように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項14】
前記温度制御装置は、前記混合冷媒の膨張を、従って、前記少なくとも1つの調整回路内の前記混合冷媒の圧力及び温度を制御するための膨張デバイスを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項15】
前記冷凍システムは、少なくとも1つの圧縮機を備え、前記温度制御回路は、前記少なくとも1つの圧縮機の吐出質量流量を制御するための制御回路を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項16】
前記冷凍システムは、並列に配置された複数の圧縮機を備え、前記温度制御回路は、
前記複数の圧縮機のうちの運転可能な数、
前記複数の圧縮機のうちの少なくとも1つの制御速度、
前記複数の圧縮機のうちの少なくとも1つのアンローディング、
の少なくとも1つを制御することにより、前記複数の圧縮機の吐出質量流量を制御するための制御回路を備える、請求項15に記載の温度制御装置。
【請求項17】
少なくとも1つの調整回路を含む半導体処理チャンバと、請求項1から16のいずれか一項に記載の温度制御装置とを備える装置であって、前記温度制御装置は、前記温度制御装置からの混合冷媒が前記少なくとも1つの調整回路に供給されるように配置されている装置。
【請求項18】
半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの調整回路の温度を複数の予め定められた温度のうちの1つに制御することによって、前記半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの半導体ウェハの温度を制御する方法であって、前記温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満であり、前記方法は、
冷凍システムからの混合冷媒を前記半導体処理チャンバ内の前記少なくとも1つの調整回路に供給するステップと、
前記少なくとも1つの調整回路から前記混合冷媒を受け取るステップと、
少なくとも1つの温度センサから前記少なくとも1つの調整回路の温度を示す信号を受け取り、前記受け取った信号及び前記予め定められた温度に基づいて、前記少なくとも1つの調整回路に供給される前記混合冷媒の質量流量、組成又は温度の少なくとも1つを制御することによって前記温度を制御するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、半導体ウェハの温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体処理方式では、半導体ウェハは熱伝導流体を用いて加熱又は冷却される。この熱伝導流体は、冷凍チラーを用いて冷却/加熱される。これにはいくつかの利点があるが、低いエネルギー効率、複数の熱伝達ステップに関する損失、装置の大きな占有面積、関連する資本コスト及び経常コストなどの点でいくつかの欠点もある。
【0003】
さらに、限定されるものではないが、低温エッチング及び蒸着などの次世代半導体デバイスの製造プロセスでは、現在よりも低温が要求される。このような低温環境は、従来から使用されている多くの熱伝導流体にとって問題である。特に、流体は-80℃から-90℃の範囲に近づくと、粘度、伝導率、比熱が低下する。次世代プロセスでは、チャック/ウェハの温度が-180℃まで下がることが要求される。-110℃から-115℃の温度範囲に至るまで機能する熱伝導流体もあるが、これらは引火性が高い。引火性の流体を使用することは安全上のリスクがあり、このリスクを軽減するために設計上の工夫が必要であり、システム全体のコスト及び複雑性が増える。従来の半導体チラーのさらなる問題は、チラー内で冷却を引き起こす熱力学的サイクルが約-90℃未満では一般的に非常に効率が悪いことである。-90℃の温度を達成することですら、複数のシステム(各々が1つの圧縮機を有する)は直列であることが必要であり(カスケード冷凍)、これは、エネルギー的及びサブファブの空間的に非効率的な配置である。
【0004】
実験室で使用される1つの可能性のある解決策は、液体窒素(LN2)を使用することであり、沸点は約-196℃であり、ほとんどの新しいプロセス用途に十分な低温である。しかしながら、液体窒素は実験室での使用には好都合であるが、その使用は非常に高価な経常コストであるためあらゆる種類の商業運転での実現が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次世代のプロセス装置で必要とされる低温まで冷却できる、費用効果の高い半導体ウェハ温度制御装置を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの半導体ウェハの温度を制御するために流体を供給する温度制御装置を提供し、上記温度制御装置は、混合冷媒の冷凍システムを備え、上記温度制御装置は、上記混合冷媒を上記半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの調整回路に供給し、上記混合冷媒を、上記少なくとも1つの調整回路から受け取るように構成され、上記温度制御装置は、上記少なくとも1つの調整回路の温度を複数の予め定められた温度のうちの1つに制御するための温度制御回路を備え、上記温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満であり、上記温度制御回路は、少なくとも1つの温度センサから上記少なくとも1つの調整回路の温度を示す信号を受け取り、上記受け取った信号及び上記予め定められた温度に基づいて、上記少なくとも1つの調整回路に供給される上記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度のうちの少なくとも1つを制御することによって、上記少なくとも1つの調整回路の上記温度を制御するように構成されている。
【0007】
本発明は、半導体ウェハを冷却するために二次調整流体を使用するのではなく、混合冷媒冷凍システムの混合冷媒を調整回路に供給してウェハを冷却又は加温する温度制御装置を提案する。このようにして、二次流体の使用に関連する問題は発生せず、そのような二次システムに必要なエネルギー及び効率の損失及び追加の占有面積に関する問題も解決される。
【0008】
この冷凍システムは、混合冷媒、すなわち沸点が異なる冷媒の混合物を有する冷媒を使用する。これらの冷媒の少なくともいくつかは、冷凍システムの動作冷却温度及び圧力における沸点を有する。この種類の冷凍システムを使用する利点は、冷媒の少なくとも一部が2相平衡状態にある異なる冷媒を含むので、冷媒は蒸発潜熱を利用して効果的な冷却を提供できるだけでなく、その間に実質的に安定した温度を維持することができる点である。いくつかの実施形態では、冷凍システムは、オートカスケード冷凍サイクルに基づくジュールトンプソン冷凍システムである。このような冷凍システムは、優れたエネルギー効率で非常に小さな占有面積でもって-180℃の低温を達成することができる。カスケード冷凍チラーとは異なり、このような冷凍システムは、この超低温を実現するために唯一の圧縮機を使用する。また、このような冷凍システムは、全ての構成要素の、特に可動部を有する構成要素の数が著しく少なく、このことは、より小さな占有面積及びポンプのメンテナンス間の非常に長い時間につながる。
【0009】
温度制御装置は、フィードバック制御を有し、制御回路は、温度センサからの信号を温度制御に使用し、制御回路は、検知された温度が所望の予め定められた温度から逸脱することを示すことに応答して、前記少なくとも1つの調整回路に供給される前記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度のうちの少なくとも1つを調整する。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの温度センサは、調整回路上又はその近くに配置されて温度制御装置の一部ではなく、温度制御回路は、無線又は有線接続を介してセンサから1又は複数の信号を受け取る。他の実施形態では、上記温度制御装置は、上記少なくとも1つの温度センサを備え、上記温度制御回路は、上記少なくとも1つの調整回路に供給される上記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度を制御することにより、上記少なくとも1つの調整回路の上記温度を制御するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記温度制御回路は、上記少なくとも1つの調整回路の温度を、150℃から-180℃の間の複数の予め定められた温度のうちの1つに制御するように構成され、上記予め定められた温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満である。
【0012】
次世代半導体プロセスは、150℃から-180℃の間とすることができる大きな温度範囲を必要とする。実施形態は、実施形態の温度制御装置を用いて、このような温度範囲内で冷却された混合冷媒の形態で調整流体を提供することができる。この点で、一般にシステムは半導体ウェハを冷却するように構成されているが、いくつかの実施形態では、ウェハ処理装置に熱を供給するために暖かい冷媒を出力するように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記装置は、複数の半導体ウェハを冷却又は調整するための複数の調整回路に上記混合冷媒を供給するように構成され、上記複数の調整回路は互いに並列に配置され、上記温度制御装置は、処理サイクル時に上記複数の調整回路の選択したものを通して上記混合冷媒を循環させるように構成されている。
【0014】
温度制御装置は、1つの半導体処理チャンバ内の単一のウェハを冷却するように構成することができるが、いくつかの実施形態では、並列に配置された複数のウェハを冷却するために混合冷媒を供給するように構成されている。このようにして、装置は、半導体製造工場の多数の半導体処理チャンバ内の温度を効果的に制御することができる。この点で、調整回路が混合冷媒の供給によって直接冷却されるので、供給される混合冷媒の質量流量、温度、又は組成を適切に制御することによって、単一の冷凍システムから異なる温度を得ることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記温度制御回路は、上記複数の調整回路の各々に供給される上記混合冷媒の質量流量、温度、又は組成の少なくとも1つを制御することによって、上記複数の調整回路の温度を個別に制御するように構成されている。
【0016】
温度制御装置は、各調整回路に同じ冷媒を送ることができるが、いくつかの実施形態では、現在処理中の選択された複数の調整回路の各々に送る冷媒の質量流量、温度、又は組成を個別に制御するように構成されている。このようにして、温度制御装置は、処理サイクル内の異なる段階にある可能性がある複数の処理チャンバ内の温度を独立して制御するために使用することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記温度制御回路は、複数の温度センサから上記複数の調整回路の各々の温度を示す信号を受け取り、上記受け取った信号及び前記予め定められた温度に基づいて、上記複数の調整回路の各々に供給される上記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度の少なくとも1つを制御することによって、上記複数の調整回路の上記温度を制御するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、温度制御装置は、上記圧縮機から出力される上記混合冷媒の一部を上記冷凍システムの少なくとも一部を迂回して導くためのバイパス混合冷媒流路を備え、上記バイパス流路内の混合冷媒は前記冷凍システムによって出力される混合冷媒よりも暖かくなっており、上記温度制御回路は、上記バイパス混合冷媒流路からの上記混合冷媒及び上記冷凍システムから出力される上記混合冷媒のうちの少なくとも一方から上記少なくとも1つのウェハ調整回路への供給を制御することによって、上記複数の調整回路の上記選択されたものの各々へ出力される上記混合冷媒の温度を制御するように構成されている。
【0019】
各調整回路に送られる冷媒の温度を制御する1つの方法は、圧縮機から出力される混合冷媒の一部を調整回路に向かって流すことであり、暖かい混合冷媒、又は冷凍システムを通過して冷却された混合冷媒の一方を、又は両方の混合物を各調整回路に供給することができるようになっている。本実施形態では、暖かい冷媒を冷却された冷媒と混合して所望の温度を達成することができるが、他の実施形態では、暖かい冷媒を熱交換器で使用して、冷却された冷媒を調整回路に入る前に所望の温度に暖めることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、圧縮機からの混合冷媒と冷凍システムからの混合冷媒を混合することによって提供される温度制御は、巨視的な温度制御を提供するために使用することができ、より細かい温度制御は、混合冷媒の質量流量制御など、温度制御機構の他のものによって提供することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記温度制御装置は、上記少なくとも1つの調整回路への冷媒の流れを制御するための少なくとも1つの弁を備える。
【0022】
調整回路内の温度を制御する比較的簡単な1つの方法は、弁を用いて調整回路内への冷媒の流れを制御することである。
【0023】
上記少なくとも1つの弁は、ON/OFF弁及び比例流量制御弁のうちの少なくとも1つを備える。
【0024】
混合冷媒の流れを制御するために使用される弁は、単純なON/OFF弁及び/又は比例制御弁とすることができる。いずれの場合も、必要な反応時間及び感度をもたらすために、急速サイクル弁又は急速反応弁を使用することが好都合であろう。ON/OFF弁、高速サイクルソレノイド弁とすることができる。比例制御弁は、サーボモータ又はステッピングモータ駆動弁とすることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記温度制御装置は、上記混合冷媒が上記少なくとも1つの調整回路に入る前に、上記混合冷媒の組成を変化させるための組成制御デバイスを備える。
【0026】
冷媒は、異なる複合物を含む混合冷媒であり、複合物は異なる相であるので、このような混合冷媒の温度を調節する1つの方法は、冷媒が調整回路に入るときに冷媒の組成及び相を調節することとすることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記組成制御デバイスは、相分離器を備え、上記混合冷媒の上記組成は、上記相分離器を出る液相冷媒の質量流量及びその後の膨張の少なくとも一方を制御することによって制御される。
【0028】
混合冷媒は沸点の異なる冷媒で生成されているので、相分離器を用いて、混合冷媒から少なくとも一部の低沸点冷媒を除去することができ、このようにして混合冷媒の組成が変えられる。分離される低沸点冷媒の量を制御することによって、混合冷媒の組成を制御することができ、結果的に温度制御は混合冷媒によりもたらされる。
【0029】
混合冷媒の温度及び冷却能力は、混合冷媒流内の冷媒の気相と液相の比率に基づくことになるので、温度を制御する1つの方法は、混合冷媒の相組成を制御することとすることができる。これは、例えば膨張デバイスを使用することによって行うことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記温度制御装置は、上記少なくとも1つの調整回路において上記混合冷媒の圧力を制御するための蒸発器圧力調整器を備える。
【0031】
一部の例として、蒸発器圧力調整器は、調整回路における混合冷媒の圧力、及びこのようにしてその温度を制御するための膨張弁の形態とすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記温度制御装置は、上記混合冷媒の少なくとも一部が流れる熱交換器を備え、上記熱交換器は、上記冷媒システムの別の部分からの少なくとも1つの暖かい流体の制御された流れを受け取るように構成されている。
【0033】
混合冷媒の温度を制御する1つの方法は、熱交換器を使用することである。熱交換器は、より高い温度の流体の流れを有することができ、これは、圧縮機からのような冷凍システムの別の部分からの流体とすること、相分離器の1つからの流体とすること、又は、より暖かい温度での流体プロセスとすることができる。流量制御弁は、両方の流体の流れ、従って冷媒の温度を制御するために使用することができる。熱交換器は、少なくとも1つの調整回路の前に配置することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記温度制御装置は、上記混合冷媒の膨張を、従って、上記少なくとも1つの調整回路内の上記混合冷媒の圧力を制御するための膨張デバイスを備える。
【0035】
混合冷媒の温度は、混合冷媒が少なくとも1つの調整回路に入る前に、混合冷媒の膨張を制御する膨張デバイスを用いて制御することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記冷凍システムは、少なくとも1つの圧縮機を備え、上記温度制御回路は、上記少なくとも1つの圧縮機の吐出質量流量を制御するための制御回路を備える。
【0037】
代替的に及び/又は追加的に、温度制御回路は、圧縮機によって圧縮されて出力される冷媒の量を制御することができる。これは、結果的に冷媒の温度を制御することになり、この制御を可能にするエネルギー効率の良い方法となるであろう。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記冷凍システムは、並列に配置された複数の圧縮機を備え、上記温度制御回路は、上記複数の圧縮機のうちの運転可能な数、上記複数の圧縮機のうちの少なくとも1つの制御速度、及び上記複数の圧縮機のうちの少なくとも1つのアンローディングの少なくとも1つを制御することにより、上記複数の圧縮機の吐出質量流量を制御するための制御回路を備える。
【0039】
多くのシステムにおいて、冷凍システムは、複数の圧縮機を有することができ、このことは、より高い信頼性をもたらし、システムのメンテナンスを運転停止する必要なしで行うことを可能にする。これらの圧縮機は並列に配置することができ、温度制御装置は、これらの圧縮機のうちの1又は2以上の吐出質量流量を制御するための温度制御回路を用いて温度を制御することができる。これは、運転可能な圧縮機の数、及び/又は圧縮機のうちの少なくとも1つの速度、及び/又は圧縮機のうちの少なくとも1つの少なくとも部分的なアンローディングを制御することによって行うことができる。これもまた、圧縮機の出力を減少させるエネルギー効率の良い方法である。
【0040】
第2の態様は、少なくとも1つの調整回路を含む半導体処理チャンバと、第1の態様による温度制御装置とを備える装置を提供し、上記温度制御装置は、上記温度制御装置からの混合冷媒が上記少なくとも1つの調整回路に供給されるように配置されている。
【0041】
第3の態様は、半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの調整回路の温度を複数の予め定められた温度のうちの1つに制御することによって、上記半導体処理チャンバ内の少なくとも1つの半導体ウェハの温度を制御する方法を提供し、上記温度のうちの少なくとも1つは-100℃未満であり、上記方法は、冷凍システムからの混合冷媒を上記半導体処理チャンバ内の上記少なくとも1つの調整回路に供給するステップと、上記少なくとも1つの調整回路から上記混合冷媒を受け取るステップと、少なくとも1つの温度センサから上記少なくとも1つの調整回路の温度を示す信号を受け取り、上記受け取った信号及び上記予め定められた温度に基づいて、上記少なくとも1つの調整回路に供給される上記混合冷媒の質量流量、組成、又は温度の少なくとも1つを制御することによって上記温度を制御するステップと、を含む。
【0042】
さらなる特定及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、また、請求項に明示的に規定されている以外の組み合わせで組み合わせることができる。
【0043】
装置の特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると説明される場合、これは、その機能を提供する、又はその機能を提供するように適合又は構成される装置の特徴を含むことを理解されたい。
【0044】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照してさらに説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】一実施形態によるウェハ温度制御装置を示す。
【
図2】一実施形態による複数のウェハの温度を制御するための装置を示す。
【
図3】一実施形態による複数の半導体ウェハを異なる温度で調整するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施形態を詳細に説明する前に、最初に、以下に概要を説明する。
【0047】
実施形態では、オートカスケード冷凍サイクルに基づく、混合冷媒ジュールトンプソン冷凍システムなどの混合冷媒を使用する冷凍システムを提案する。このような冷凍システムは、優れたエネルギー効率及び非常に小さな占有面積で、-180℃の低い温度を達成することができる。カスケード冷凍チラーとは異なり、冷凍システムは、極低温を実現するために唯一の圧縮機を使用する。また、冷凍システムは、全ての構成要素の、特に可動部を有する構成要素の数が著しく少なく、このことは、より小さな占有面積及びポンプのメンテナンス間の非常に長い時間につながる。
【0048】
実施形態は、二次熱伝達流体(冷却剤)を必要とすることなく、-180℃から+150℃の温度範囲で、場合によってはチャックを用いて半導体ウェハを調整(加熱及び冷却の両方)する装置を説明する。ウェハ又はチャックは、これを混合冷媒ジュールトンプソン冷凍システムに直接接続することで調整され、この冷凍システムは、混合冷媒をチャック内に存在し得る調整回路の調整流路に導入する。冷媒混合物は、2から5の冷媒の混合物とすることができる。実施形態は、冷媒の温度制御のための手段を提供する。
【0049】
実施形態は、MRAM及び3D-NANDなどのHARデバイスの製造に必要な次世代低温エッチング及び蒸着プロセスに適している。
【0050】
図1は、半導体真空処理チャンバ内で半導体ウェハチャックに取り付けられた半導体ウェハを冷却又は昇温する半導体ウェハ温度制御装置を示す。
【0051】
半導体ウェハ温度制御装置は、本実施形態ではウェハチャック内の流路を備える調整回路20に接続された一実施形態による温度制御装置100を備える。温度制御装置100は、混合冷媒を圧縮するための圧縮機1と、随意的な油分離器2とを含む超低温冷凍システムを備え、油分離器2の第1の出口は、凝縮器3に接続する。分離器2の第2の出口は、油戻りライン130を介して圧縮機の吸引ライン122に戻る。オイルフリー圧縮機が使用される場合、油分離器2は不要である。
【0052】
冷凍システムは、オートカスケード冷凍システムであり、さらに、熱交換器4、相分離器5、熱交換器6、相分離器7、及び熱交換器8と、流量計量デバイス(FMD)10の形態の膨張デバイスとをさらに含む。熱交換器は、高圧の冷媒から低圧の冷媒への熱伝達を行う。FMDは、より高圧の冷媒をより低圧に絞り、絞りプロセスの結果として冷凍効果を生じさせる。
【0053】
冷凍プロセスを通る供給冷媒流路は以下の通りである。熱交換器4の供給入口は液体ライン110によって接続され、熱交換器4の供給出口は相分離器5の供給入口に接続される。相分離器5の供給出口は、熱交換器6の供給入口に接続され、熱交換器6の供給出口は、相分離器7の供給入口に接続される。相分離器7の供給出口は、熱交換器8の供給入口に接続される。熱交換器8の供給出口は、ウェハ調整回路への冷媒供給ラインに接続される。
【0054】
冷凍プロセスを通る戻り冷媒流路は以下の通りである。熱交換器8の戻り入口は、ウェハ調整回路20からの冷媒戻りラインが接続され、熱交換器8の戻り出口は、熱交換器6の戻り入口に接続される。熱交換器6の戻り出口は、熱交換器4の戻り入口に接続される。熱交換器4の戻り出口は、圧縮機1への吸引ライン122に接続される。
【0055】
加えて、相分離器5の第2の出口は、FMD12に接続し、FMD12は熱交換器6と熱交換器8との間のノードで冷媒戻り経路に接続する。相分離器7の第2の出口は、FMD11に接続し、FMD11は熱交換器8とウェハ調整回路20の戻りラインとの間のノードで冷媒戻り経路に接続する。
【0056】
各々の場合において、相分離器7及び8は、蒸気冷媒から液体冷媒を分離するように作用する。分離効率は40%から100%まで変化する(つまり、概して液体の60%から0%が第1の出口から出る可能性がある)。第1の出口は、優先的に蒸気である。戻り経路への第2出口は、選択的に液体である。各相分離器からの液体は、絞りデバイス、典型的には、流量計量デバイス(FMD)として特定され膨張弁又は毛細管によって膨張される。従って、液体は、相分離器5及び7から出るときは高圧であり、戻りの低圧冷媒と混合されるときは低圧である。
【0057】
また、
図1は、半導体ウェハ回路に供給される混合冷媒の温度を制御するように構成された温度制御回路30を示す。この実施形態では、温度制御回路は、温度センサ32から信号を受け取り、冷凍システム100内の構成要素の1つを制御することによって温度を制御する。
【0058】
1つの実施形態では、温度制御回路30は、圧縮機1を制御し、調整回路20に送られる混合冷媒の温度を制御する。温度制御回路30は、冷凍システムの制御装置から、1又は2以上の処理チャンバで必要とされる温度を示す信号を受け取ることができる。この実施形態では、圧縮機1は、並列に配置された複数の圧縮機であり、温度制御回路30は、処理チャンバが必要とする温度に基づいて及び測定温度を示す信号を制御回路30に送る温度センサ32が測定した温度に基づいて、常に動作可能な圧縮機の数を制御する。他の実施形態では、制御回路32は、1又は複数の圧縮機1の負荷又は速度のうちの一方を制御することによって、1又は複数の圧縮機の流量を制御することができる。
【0059】
代替的に及び/又は追加的に、温度制御は、相分離器5からの液相冷媒の流れ及び膨張を制御する流量制御弁12の適切な制御によって行うことができる。相分離器5からの液体の膨張を制御することによって、残りの混合冷媒の組成及び相を制御することができる。これは、調整回路20に送られる混合冷媒の熱物理特性を制御する能力をもたらす。
【0060】
いくつかの実施形態では、半導体ウェハ調整回路を収容する半導体処理チャンバは、冷凍システムから遠く離れることができ、そのような場合、調整回路に供給される混合冷媒の温度を監視する温度センサを有するのではなく、調整回路の温度を示す信号は、ウェハの温度を監視する半導体チャンバ制御回路から受け取ることができる。
【0061】
図2は、別の実施形態を示し、冷凍システム100は、複数の半導体ウェハを調整するための複数の調整回路20を提供する。この実施形態では、温度制御回路30は、それぞれの膨張デバイス10a及び10bを制御することにより、各調整回路に供給される冷媒の温度を制御する。この実施形態では、膨張デバイス10a及び10bは、電子膨張弁の形態であり、結果として冷媒の温度を制御する。
【0062】
図3は、別の実施形態を示し、圧縮機1からの暖ガスは、随意的な油分離器2に導かれ、そこから3つの異なる流路のうちの1又は2以上に導かれる。1つの流路は、流体が冷却されるようにオートカスケード冷凍システムを通って流れを導き、他の2つの流路は、2つの調整回路20の各々に向かって流体を導く。調整回路に向かう流路は、流れを制御する弁26a及び26bを備える。これらの流路の中の流れは、調整回路に向かって流れ、調整回路に流入する前に、冷凍システムからの冷却された流体と合流することができる。2つの調整回路が示されているが、任意数の調整回路及び対応するガス流路が存在できることに留意されたい。
【0063】
上述したように、冷凍システムは、
図1に関して説明したように、オートカスケードシステムを使用して圧縮機から出力される流体を冷却する。冷却された流体は、各調節回路20に接続された出力に向かって導かれる。また、圧縮機からの暖ガスは、これらの出力に向かって導かれる。
【0064】
温度制御は、各チャンバ、従って各調整回路に必要な温度を示す情報を半導体処理制御回路から受け取る温度制御回路30によって実現することができる。温度制御回路30は、暖ガスラインの各々の弁26a及び26bと冷凍ラインの弁27a及び27bとを制御して、より暖かい流体及びより冷たい流体の制御された流れを与え、調整回路で必要な温度を提供する。従って、1又は2以上の調整回路が暖められる場合、冷凍システムからの弁27a又は27bの一方又は両方が閉じられ、弁26a又は26bの一方又は両方が開かれ、圧縮機からの暖ガスがそれぞれの調整回路に入り、ウェハを暖めることができる。2つのチャンバがサイクルの異なるポイントにあり、一方が暖められるが他方が冷やされ、これは弁の制御により行うことができる。
【0065】
さらなる温度制御は、弁26、27の各々を所定量だけ又は所定時間だけ開くことにより2つの流れを混合することによって行うことができる。この場合、温度センサ32a、32bは温度制御回路に信号を送り、必要に応じて流れを調整することができる。
【0066】
他の実施形態では、膨張デバイスの制御又は圧縮機の制御、又は比例流量制御弁を用いた流量の制御などの他の手段によって、より多様な又は精密な温度制御が行われる。
【0067】
上述した冷凍システムは、複数の異なる冷媒を含む混合冷媒を使用する。冷媒混合物は、以下の種類、すなわち有機化合物、無機化合物、不飽和有機化合物、ゼオトロピック混合物、共沸混合物、自然冷媒(N2、NH3、メタン、エタン、CO2等)、不活性ガス(アルゴン、ネオン等)のうちの1又は2以上に属する個別の成分を含有することができる。
【0068】
この冷媒は、調整回路での調整流体として使用され、半導体ウェハチャックは、調整流体として冷媒混合物を使用して直接調整される。冷凍システムの最も冷たい点での冷媒混合物は、一般的に2から5の成分で構成される。冷媒混合物は、半導体チャック内など、処理装置の内部の調整回路に導入されることが提案される。このように、チャックは冷凍システムに直接接続される。この配置により、作動流体(冷媒混合物)は、効率的な方法で、ウェハチャックから熱を吸収すること、又は加熱サイクルでウェハチャックに熱を供給することができる。これは、二次熱伝達流体を使用した場合と比較して、少なくとも一桁大きい熱伝達効率につながる。
【0069】
ウェハから熱を抽出する場合のデューティサイクル(運転モード)では、冷媒混合物は熱除去の顕熱様式並びに潜熱様式を利用することができる。流体の潜熱容量は顕熱容量に比べ桁違いに大きい。しかし、潜熱容量が作用し始めるには、作動流体の相変化(液体から蒸気へ)が起こる必要がある。実施形態では、多成分冷媒混合物は、調整回路に入る際に混合相(液体-蒸気混合物)である。チャックからの熱にさらされると、混合物の液相成分は潜熱を吸収して蒸発するが、気相成分はウェハから顕熱を吸収する。流体が一定の圧力で相変化する場合、その温度も一定に保たれる。本発明は、この熱力学的な性質を利用して、均一な温度で熱を吸収する。潜熱容量は顕熱容量よりはるかに大きいので、熱の大部分は相変化している成分に吸収される。これは、結果的に調整回路内の温度が実質的に一定であることを意味し、これはあらゆる半導体処理用途の重要な要件である。
【0070】
実施形態の別の重要な利点は、複数のチャックを、いくつかの実施形態ではウェハチャックを同時に調整できる複数の独立したウェハ調整回路を有することができることである。これは、
図2及び
図3に示されている。
【0071】
ウェハチャックの加熱に関して、ウェハチャックに流入する冷媒は、電気ヒータを用いて、又は圧縮機からの高温吐出物との熱交換によって、又はシステムの中間部分からの高温冷媒との熱交換によって必要な設定温度まで加熱することができ、又は圧縮機吐出の高温冷媒は、半導体チャックを通って直接循環することができる。上記の方法の各々は、必要な加熱容量及び温度になるように独立して、又は並行して使用することができる。
【0072】
実施形態の温度制御装置は、ウェハを加熱又は冷却するために用いられる調整回路に送られる調整流体の温度を制御することにより、温度制御を行うことに留意されたい。調整回路は、チャック又は冷却板とすることができるウェハ支持体に配置することができる。
【0073】
温度制御は、その相組成、その圧力、質量流量、又は温度のいずれかを変更することによって、調整回路に出力される冷媒によって提供される冷却を変更するために冷凍システム内の構成要素を制御する温度制御回路を用いることによって、本発明の実施形態によって提供される。以下の設計は、独立して、又は並行して使用することができる。
【0074】
1.ON/OFF弁により、ウェハチャックに入る冷媒の質量流量を制御する。この弁は空気圧で又は電気的に作動させることができる。1つの例は、高速サイクルソレノイド弁とすることができる。
2.比例制御弁により、ウェハチャックに入る冷媒の流量を制御する。1つの例は、サーボモータ又はステッピングモータ駆動弁とすることができる。
3.半導体ウェハチャックに入る前の飽和液体流の膨張を膨張デバイスで制御する。このデバイスは、1又は2以上の毛細管、サーモスタット式膨張弁、電子膨張弁、又はこれらのオプションの組み合わせとすることができる。
4.熱交換器によって、ウェハチャックに入る前の冷たい冷媒に熱を加える。この熱交換器(単パス/多パス、単チャンネル/多チャンネル)は、冷たい冷媒と熱交換できる1又は複数の流体(暖かい温度で)の流れをもつことができる。熱交換器を通過するすべての流体の流量は、ON/OFF循環弁又は比例流量制御弁を使用して制御することができる。
5.冷媒がウェハチャックに入る前に熱交換器によって冷媒に熱を加える。この熱交換器(単パス/多パス、単チャンネル/多チャンネル)は、冷たい冷媒と熱を交換することができる暖かい水又は他の利用可能なプロセス流体(クライオチラーの一部ではない)をもつことができる。熱交換器を通過するすべての流体の流量は、ON/OFF循環弁又は比例流量制御弁を使用して制御することができる。
6.目標温度での混合物を得るために、冷凍システムの別の部分からの制御された量の暖かい冷媒を冷たい冷媒流と混合する。流体の質量流量は、ON/OFF循環弁又は比例流量制御弁を使用して制御することができる。
7.ウェハチャックに流入する混合冷媒の組成を変化させる。これは、冷凍システムの「スタック」の動作パラメータ(温度及び圧力)を変更することによって行うことができる。スタックパラメータは、1又は2以上の相分離器から出る液体冷媒の流量を制御することによって変更することができる。これは、ON/OFF弁、比例制御弁、サーモスタット式膨張弁、電子膨張弁などの流量制御/圧力低減デバイス(要素11、12)によって行うことができる。
8.圧縮機の吐出質量流量を変化させる。これは、圧縮機アンローダ、可変速圧縮機などを用いて行うことができる。
9.圧縮機スキッド(並列運転の複数の圧縮機)が使用される場合、必要に応じて、個別の1又は複数の圧縮機のON/OFF、個別の1又は複数の圧縮機を減速するためのVFDの使用、又は個別の1又は複数の圧縮機のアンロードにより、圧縮機スキッド全体の吐出質量流量を変化させる。
10.冷凍システムの残りの部分を通過することなく圧縮機に再循環するように圧縮機の吐出質量流量の一部を迂回させる。本質的に冷媒の質量流量の一部を短絡させる。これは、吐出圧力制御弁、熱ガスバイパス弁、ON/OFFソレノイド弁/空気圧式流量制御弁、比例流量制御弁などを用いて行うことができる。
11.EPR(蒸発器圧力調整器)弁により、半導体ウェハチャックにおける冷媒混合物の飽和圧力、従って温度を制御する。
【0075】
実施形態では、冷凍システムは、圧力、温度、流量、圧縮機電流などを監視するために、半導体調整/処理産業で普及している測定/検知デバイス(熱電対、圧力変換器、流量計、電流計)を含む。これらは、標準的な又は特別注文の種類の測定デバイスとすることができる。これらの測定デバイスの数又は種類は、業界で広く普及している多種多様なオプションがあるため、詳しくは言及しないことにする。
【0076】
測定デバイス(温度、圧力、質量流量など)からの測定値は、クライオチラー内の1又は2以上の制御装置(標準的な又は特別注文の)により記録、格納、及び分析される。これらの制御装置は、いくつかの選択肢を挙げると、標準的な又は特別注文のマイクロプロセッサベースの制御装置、PLCタイプの制御装置、PIDタイプの制御装置である。制御装置は、上記のような複数の種類の制御装置の選択肢を組み合わせとすることができる(しかし、これに限定されない)。また、冷凍システムは、限定されるものではないが、温度、圧力、流量、電流、消費電力などのような、システム及び/又はプロセスパラメータに関するデータを格納する能力を有する。また、冷凍システムは、ユニットを遠隔の1又は複数のオペレータ又は1又は複数のコンピュータによって制御することができる遠隔操作の能力を有する。冷凍システムは、有線又は無線データ接続とすることができる標準的な又は特別注文のプロトコル(いくつを挙げると、イーサネット、イーサネットIP、USBなど)を用いて、他の冷凍システム、遠隔オペレータ(人間又はコンピュータ)と通信することができる。
【0077】
要約すると、実施形態は、以下の利点を提供することができる。
1.設定温度の範囲が広く、-180℃から+150℃まで可能
2.半導体ウェハチャックを-180℃まで、高い冷却能力(数kWの範囲)及び高いエネルギー効率で調整する能力
3.今日の半導体用チラーに比較してウェハチャック部での著しく高い熱伝達効率
4.半導体ウェハチャックから熱を除去するために冷媒の高い潜熱容量を利用する能力
5.今日の半導体用チラーと比較して著しく高い総合エネルギー効率(冷却能力のkW/kW)
6.-180℃から+150℃の範囲のユーザが設定可能な温度での半導体ウェハチャックの温度制御能力
7.今日の半導体用チラーと比較して一桁高い占有面積効率(冷却能力kW/冷凍機単位面積)
8.二次熱伝達媒体媒、及び関連の費用、空間、保守要件が不要
9.流体間の熱伝達の多段階化に関連する固有の非効率性の解消
10.システムの運転開始前に大量の流体を冷却/加熱する必要がないため起動時間の大幅な短縮
11.温度設定値又は運転モード(冷却、加熱)を変更するための、小さな熱慣性及びより高速の応答
12.複数の加熱/加熱回路による、複数の半導体ウェハチャックを同時に調整する能力
13.熱伝導流体がないことによる、漏洩の低い可能性
【0078】
要約すると、実施形態は、オートカスケード熱力学サイクルで動作する閉ループ温度制御装置を備える混合冷媒冷凍システムを提供する。この種のシステムにおける作動流体は、冷媒の混合物(ブレンド)である。冷媒混合物の各構成物質は、飽和温度、比熱、導電率、誘電率、他の冷媒との混和性等を含むがこれらに限定されない特性(熱物理的及び電気的)に基づいて選択される。
【0079】
本発明の例示的な実施形態は、添付図面を参照して本明細書に詳細に開示されているが、本発明は正確な実施形態に限定されず、添付の請求項及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって種々の変更及び修正をそこにもたらすことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0080】
1 圧縮機
2 油分離器
3 凝縮器
4 熱交換器
5、7、25 相分離器
6 熱交換器
8 熱交換器
9 圧力容器
10、11、12 膨張デバイス
20 調整回路
26a、26b、27a、27b 弁
30 温度制御回路
32、32a、32b 温度センサ
100 温度制御装置
【国際調査報告】