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特表2023-513027二次電池用正極活物質前駆体、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-二次電池用正極活物質前駆体、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質前駆体、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230323BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230323BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546106
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 KR2021001197
(87)【国際公開番号】W WO2021154021
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0010699
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・フ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ギ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウク・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュ・イ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA11
5H050HA02
5H050HA03
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、正極活物質前駆体、その製造方法、前記正極活物質前駆体を用いて製造された正極活物質に関し、本発明の正極活物質前駆体は、化学式1で表される水酸化物からなる正極活物質前駆体であり、前記正極活物質前駆体が複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される水酸化物からなる正極活物質前駆体であって、
前記正極活物質前駆体は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む、二次電池用正極活物質前駆体:
[化学式1]
Nix1Coy1Mnz1Als1(OH)
前記化学式1中、0.7≦x1≦0.99、0<y1<0.3、0<z1<0.3、0.01≦s1≦0.1である。
【請求項2】
前記一次粒子のアスペクト比(aspect ratio)は3以上である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項3】
前記一次粒子のアスペクト比(aspect ratio)は3~15である、請求項1または2に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項4】
前記化学式1において、0.85≦x1≦0.98、0.01≦y1<0.14、0.01≦z1<0.14である、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項5】
前記正極活物質前駆体は、二次粒子の全体にアルミニウム(Al)が均一に分布する、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項6】
前記正極活物質前駆体は、ニッケル、マンガン、コバルトおよびアルミニウムが濃度勾配なしに二次粒子の全体で均一な濃度で分布する、請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項7】
前記正極活物質前駆体は、二次粒子の平均粒径D50が3μm~20μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項8】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のカチオンを含む遷移金属含有溶液およびアルミニウム(Al)のカチオンを含むアルミニウム含有溶液を準備するステップと、
反応器に前記遷移金属含有溶液およびアルミニウム含有溶液をそれぞれ投入し、塩基性水溶液およびアンモニウム溶液を投入して共沈反応させて正極活物質前駆体を形成するステップとを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項9】
前記共沈反応時に、反応溶液のpHが10.5~12.2である、請求項8に記載の二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項10】
前記共沈反応時に、反応器内の温度は45℃~65℃である、請求項8または9に記載の二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウム含有溶液は、アルミニウムクロライド(Aluminum Chloride)、アルミニウムアセテート(Aluminum Acetate)、アルミニウムナイトレート(Aluminum Nitrate)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum Hydroxide)またはこれらの組み合わせを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質前駆体の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法で製造された正極活物質前駆体とリチウムソースを混合し焼成してリチウム遷移金属酸化物を形成する、二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
下記化学式2で表されるリチウム遷移金属酸化物を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、
前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、
前記一次粒子が、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む、二次電池用正極活物質:
[化学式2]
Li[NiCoMnAl1-f
前記化学式2中、Mは、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.7≦b≦0.99、0<c<0.3、0<d<0.3、0.01≦e≦0.1、0≦f≦0.1である。
【請求項14】
前記一次粒子は、アスペクト比(aspect ratio)が1.5以上である、請求項13に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項15】
前記化学式2において、0.85≦b≦0.98、0.01≦c<0.14、0.01≦d<0.14である、請求項13または14に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項16】
前記正極活物質は、ニッケル、マンガン、コバルトおよびアルミニウムが濃度勾配なしに二次粒子の全体で均一な濃度で分布する、請求項13から15のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項17】
前記正極活物質は、二次粒子の平均粒径D50が3μm~20μmである、請求項13から16のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項18】
請求項13に記載の正極活物質を含む、二次電池用正極。
【請求項19】
請求項18に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月29日付けの韓国特許出願第10-2020-0010699号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用正極活物質前駆体、正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノート型パソコン、電気自動車など、電池を使用する電子機器の急速な普及に伴い、小型軽量であるとともに相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増加している。特に、リチウム二次電池は、軽量であるとともに高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。そのため、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発の努力が活発になされている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalations)および脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電させた状態で、リチウムイオンが正極および負極で挿入/脱離される時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生成される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO)などが使用されていた。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)は、作動電圧が高く容量特性に優れるという利点から広く使用されており、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の値上がりおよび供給不安定のため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界があり、これを代替可能な正極活物質開発の必要性が高まっている。
【0006】
したがって、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、簡単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」とする)が開発された。最近、高容量バッテリーに対する需要が増加するに伴い、NCM系正極活物質内のニッケル含有量を増加させて容量を増加させる技術が研究されている。ニッケルを高濃度で含むハイ-ニッケルNCM系正極活物質の場合、容量特性には優れるが、構造安定性が低くて、寿命特性が低下するという問題があった。そのため、ハイ-ニッケルNCM系正極活物質にAlをドープして構造安定性を改善する方法が提案された。従来、NCM系正極活物質にAlをドープする方法としては、正極活物質前駆体とリチウム原料の混合時にアルミニウム含有原料物質をともに混合した後、焼成する乾式ドーピング方法や、正極活物質前駆体の製造時にニッケル、マンガン、コバルト、アルミニウムを含む金属溶液を用いて共沈反応を行って前駆体にAlをドープする湿式ドーピング方法が使用されていた。
【0007】
しかし、乾式ドーピングの場合、アルミニウム(Al)がNCM系正極活物質内に均一に分布され難く、リチウム層にドープされることを制御することができないという問題がある。また、NCM系正極活物質前駆体の共沈時にアルミニウム(Al)をドープするアルミニウム(Al)湿式ドーピングの場合、従来のようにニッケルコバルトマンガンカチオンを含有する遷移金属溶液にアルミニウムカチオンをともに溶解して使用すると、アニオンとの所望しなかった副反応が起こり、前駆体の成長を妨げるか、結晶配向性を制御することが困難であった。
【0008】
したがって、リチウム二次電池に適用時に優れた寿命特性および抵抗特性を示すことができる正極活物質前駆体および正極活物質の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2017-0063418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、リチウム二次電池に適用時に、寿命特性および抵抗増加を著しく改善することができる正極活物質前駆体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、前記正極活物質前駆体を使用して製造された正極活物質、これを含む二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記化学式1で表される水酸化物からなる正極活物質前駆体であって、前記正極活物質前駆体は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む二次電池用正極活物質前駆体を提供する。
[化学式1]
Nix1Coy1Mnz1Als1(OH)
前記化学式1中、0.7≦x1≦0.99、0<y1<0.3、0<z1<0.3、0.01≦s1≦0.1である。
【0013】
また、本発明はニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のカチオンを含む遷移金属含有溶液およびアルミニウム(Al)のカチオンを含むアルミニウム含有溶液を準備するステップと、反応器に前記遷移金属含有溶液およびアルミニウム含有溶液をそれぞれ投入し、塩基性水溶液およびアンモニウム溶液を投入して共沈反応させて正極活物質前駆体を形成するステップとを含む前記による二次電池用正極活物質前駆体の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記のように製造された正極活物質前駆体とリチウムソースを混合し焼成してリチウム遷移金属酸化物を形成する二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、下記化学式2で表されるリチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む二次電池用正極活物質を提供する。
[化学式2]
Li[NiCoMnAl1-f
前記化学式2中、Mは、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.7≦b≦0.99、0<c<0.3、0<d<0.3、0.01≦e≦0.1、0≦f≦0.1である。
【0016】
また、本発明は、前記正極活物質を含む正極およびリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、寿命特性および抵抗増加を著しく改善することができる正極活物質前駆体およびこれを使用して製造された正極活物質を提供することができる。
【0018】
また、前記正極活物質を適用したリチウム二次電池の寿命特性および抵抗特性を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で製造した正極活物質前駆体の断面のTEMイメージである。
図2】実施例2で製造した正極活物質の断面のTEMイメージである。
図3】比較例1で製造した正極活物質前駆体のSEMイメージである。
図4】比較例2で製造した正極活物質の断面のTEMイメージである。
図5】実施例2、比較例2で製造した正極活物質を使用したリチウム二次電池のサイクル特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0021】
本発明において、「結晶粒(Crystalline)」は、規則的な原子配列を有する単結晶粒子単位を意味する。本発明において、結晶粒の結晶面の配置は、測定しようとする正極活物質前駆体または正極活物質粒子の断面を透過電子顕微鏡(TEM)分析して確認することができ、この際、前記TEM分析は、制限視野回折パターン(selected area diffraction pattern、SADP)および/またはFASTフーリエ変換(FFT)を使用して行われることができる。
【0022】
本発明において、「一次粒子」は、透過電子顕微鏡(Transmission electron microscopy、TEM)を介して正極活物質粒子または正極活物質前駆体粒子の断面を観察した時に、1つの塊として区別される最小粒子単位を意味し、1個の結晶粒からなることもでき、複数個の結晶粒からなることもできる。
【0023】
本発明において、前記一次粒子のアスペクト比は、正極活物質前駆体または正極活物質粒子の断面のTEMイメージでそれぞれの一次粒子の短軸の長さおよび長軸の長さを測定した後、測定された短軸の長さに対する長軸の長さの比で計算することができ、平均値は、測定されたそれぞれの一次粒子のアスペクト比の算術平均値を求める方法で測定されることができる。
【0024】
本発明において、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成される二次構造体を意味する。前記二次粒子の平均粒径は、粒度分析装置を用いて測定されることができ、本発明では、粒度分析装置として、Microtrac社製のs3500を使用した。
【0025】
本発明において、正極活物質の「粒径Dn」は、粒径による体積累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は、粒径による体積累積分布の50%地点での粒径であり、D90は、粒径による体積累積分布の90%地点での粒径を、D10は、粒径による体積累積分布の10%地点での粒径である。前記Dnは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒(蒸留水)の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子がレーザビームを通過する時に、粒子径による回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による体積累積分布の10%、50%および90%の地点での粒子径を算出することで、D10、D50およびD90を測定することができる。
【0026】
<正極活物質前駆体>
先ず、本発明による正極活物質前駆体の製造方法について説明する。
【0027】
本発明の正極活物質前駆体の製造方法は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のカチオンを含む遷移金属含有溶液およびアルミニウム(Al)のカチオンを含むアルミニウム含有溶液を準備するステップと、反応器に前記遷移金属含有溶液およびアルミニウム含有溶液をそれぞれ投入し、塩基性水溶液およびアンモニウム溶液を投入して共沈反応させて正極活物質前駆体を形成するステップとを含む。
【0028】
前記正極活物質前駆体の製造方法について、ステップ別に具体的に説明する。
【0029】
先ず、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のカチオンを含む遷移金属含有溶液およびアルミニウム(Al)のカチオンを含むアルミニウム含有溶液を準備する。
【0030】
前記遷移金属含有溶液は、例えば、ニッケル(Ni)含有原料物質、コバルト(Co)含有原料物質およびマンガン(Mn)含有原料物質を含むことができる。
【0031】
前記ニッケル(Ni)含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであることができ、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記コバルト(Co)含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであることができ、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HOまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記マンガン(Mn)含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであることができ、具体的には、Mn、MnO、Mnなどのマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガンまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記遷移金属含有溶液は、ニッケル(Ni)含有原料物質、コバルト(Co)含有原料物質およびマンガン(Mn)含有原料物質を溶媒、具体的には、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、またはニッケル(Ni)含有原料物質の水溶液、コバルト(Co)含有原料物質の水溶液およびマンガン(Mn)含有原料物質を混合して製造されたものであることができる。一方、前記遷移金属含有溶液は、全体の遷移金属のうちニッケルを70atm%~99atm%、80atm%~98atm%、85atm%~98atm%、または88atm%~95atm%含むことができる。
【0035】
また、前記遷移金属含有溶液は、全体の遷移金属のうちコバルトを0atm%超0.3atm%未満、0.01atm%以上0.2atm%未満、0.01atm%以上0.15atm%未満、0.01atm%以上0.12atm%未満で含むことができる。
【0036】
また、遷移金属含有溶液は、全体の遷移金属のうちマンガンを0atm%超0.3atm%未満、0.01atm%以上0.2atm%未満、0.01atm%以上0.15atm%未満、0.01atm%以上0.12atm%未満で含むことができる。
【0037】
前記アルミニウム(Al)含有溶液は、アルミニウム(Al)含有原料物質を含み、前記アルミニウム(Al)含有原料物質は、例えば、アルミニウムクロライド(Aluminum Chloride)、アルミニウムアセテート(Aluminum Acetate)、アルミニウムナイトレート(Aluminum Nitrate)、アルミニウムヒドロキシド(Aluminum Hydroxide)またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記アルミニウム(Al)含有溶液は、アルミニウム(Al)含有原料物質を、溶媒、具体的には、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されることができる。
【0039】
次に、反応器に、前記遷移金属含有溶液およびアルミニウム含有溶液をそれぞれ投入し、塩基性水溶液およびアンモニウム溶液を投入して共沈反応させて正極活物質前駆体を形成する。
【0040】
本発明の一実施形態による製造方法は、前記遷移金属含有溶液およびアルミニウム含有溶液をそれぞれ反応器に投入する。従来、アルミニウムドープされた正極活物質前駆体の製造時に、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、マンガン含有原料物質およびアルミニウム含有原料物質をすべて混合して金属水溶液を製造し、前記金属水溶液を共沈反応させて前駆体粒子を形成することが一般的であった。しかし、このような従来方法によると、金属水溶液内に含まれたアルミニウムカチオンが金属水溶液の中に存在するアニオンと反応してアルミニウムサルフェートなどが形成されて粒子成長の妨害要因になることがあった。特に、金属水溶液のうちニッケル含有量が70atm%以上であり、アルミニウム含有量が1atm%以上である場合には、このような問題が特に顕著になり、所望のサイズの前駆体の製造が困難であった。
【0041】
しかし、本発明の一実施形態によってニッケル、コバルトおよびマンガンを含む遷移金属含有溶液とアルミニウム含有溶液を別に形成した後、反応器に投入すると、ニッケル含有量が70atm%以上であり、アルミニウム含有量が1モル%以上である場合にも、前駆体粒子の成長が阻害されず、前駆体粒子を所望のサイズまで成長させることができる。
【0042】
また、本発明のように別に形成された遷移金属含有溶液とアルミニウム含有溶液を用いて共沈反応を行う場合、一次粒子の配向性および結晶面の配置を特定して制御することができる。具体的には、本発明の方法によって正極活物質前駆体を製造する場合、一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、(001)面が一次粒子の長軸と平行に配置された結晶粒を含む正極活物質前駆体を製造することができる。
【0043】
一方、正極活物質の一次粒子の配列および結晶粒構造は、正極活物質前駆体の一次粒子配列および結晶粒構造の影響を受ける。一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列された構造、すなわち、放射状配列構造を有する正極活物質前駆体を用いて正極活物質を製造する場合、正極活物質の一次粒子も二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列される。一方、正極活物質粒子内でリチウムイオンは、一次粒子の間の界面に沿って移動するため、一次粒子が放射状に配列される場合、粒子の内部でのリチウムイオンの移動経路が短くなり、リチウム移動性が改善する効果を得ることができる。
【0044】
一方、正極活物質前駆体の(001)面は、焼成後に(003)面に変換される。したがって、(001)面が一次粒子の長軸と平行に配置された結晶粒を含む正極活物質前駆体を用いて製造された正極活物質は、(003)面に一次粒子の長軸方向と平行に配置された結晶粒を含む。リチウム遷移金属酸化物で(003)面は、リチウムの挿入/脱離が不可能な安定した結晶面である。(003)面が一次粒子の長軸方向と平行に配置される場合、一次粒子の表面に安定した(003)面が広く形成されることから、リチウムイオンの挿入/脱離による構造劣化を最小化することができ、寿命特性を改善する効果を得ることができる。
【0045】
一方、前記遷移金属含有溶液と前記アルミニウム含有溶液は、遷移金属含有溶液に含まれた全体の遷移金属(すなわち、Ni+Co+Mn):アルミニウム含有溶液に含まれたアルミニウムのモル比が、0.99:0.01~0.90:0.10、好ましくは0.99:0.01~0.92:0.08、より好ましくは0.99:0.01~0.95~0.05になるようにする量で投入されることができる。遷移金属含有溶液とアルミニウム含有溶液の投入量が前記範囲を満たす時に、所望の組成を有する正極活物質前駆体を製造することができる。
【0046】
一方、前記アンモニウム溶液は、錯体形成剤として、例えば、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、(NHCOまたはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。一方、前記アンモニウム溶液は、水溶液の形態で使用されることもでき、この際、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0047】
前記塩基性溶液は、沈殿剤として、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせのアルカリ化合物を含むことができる。前記塩基性溶液も水溶液の形態で使用可能であり、この際、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されることができる。
【0048】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであり、塩基性化合物の量を調節して、共沈反応時に、反応溶液のpHが10.5~12.2に維持されるようにすることができ、より好ましくはpH11.0~11.5、さらに好ましくはpH11.3~11.45に維持されるようにすることができる。
【0049】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことができ、共沈反応時に、反応器内の温度は、45~65℃、より好ましくは50~60℃、さらに好ましくは53~58℃であることができる。
【0050】
反応溶液のpH、反応器の温度および雰囲気が前記条件を満たす時に、前駆体粒子の結晶性が増加し、(001)面の比率が増加して、寿命特性を改善する効果を得ることができる。
【0051】
次に、本発明による正極活物質前駆体について説明する。
【0052】
本発明による正極活物質前駆体は、前記本発明の方法によって製造されたものであり、下記化学式1で表される水酸化物からなり、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む。
【0053】
[化学式1]
Nix1Coy1Mnz1Als1(OH)
【0054】
前記x1は、遷移金属水酸化物内の全体の金属元素に対するニッケルのモル比を示し、0.7≦x1≦0.99、0.8≦x1≦0.98、0.85≦x1≦0.98、または0.88≦x1≦0.95であることができる。遷移金属水酸化物内のニッケル含有量が前記範囲を満たす場合、高容量特性を有する正極活物質を製造することができる。
【0055】
前記y1は、遷移金属水酸化物内の全体の金属元素に対するコバルトのモル比を示し、0<y1<0.3、0.01≦y1<0.2、0.01≦y1<0.14、または0.01≦y1<0.12であることができる。
【0056】
前記z1は、遷移金属水酸化物内の全体の金属元素に対するマンガンのモル比を示し、0<z1<0.3、0.01≦z1<0.2、0.01≦z1<0.14、または0.01≦z1<0.12であることができる。
【0057】
前記s1は、遷移金属水酸化物内の全体の金属元素に対するアルミニウムのモル比を示し、0.01≦s1≦0.1、0.01≦s1≦0.08または0.01≦s1≦0.05であることができる。遷移金属水酸化物内のアルミニウム(Al)含有量が前記範囲を満たす場合、正極活物質の製造時に、カチオン無秩序化(Cation Disordering)および酸素空孔(Oxygen Vacancy)の形成を抑制することができ、これにより、寿命特性および抵抗増加率特性を改善することができる。
【0058】
一方、前記正極活物質前駆体は、粒子の全体にアルミニウム(Al)が均一に分布することが好ましい。すなわち、正極活物質前駆体の二次粒子内でアルミニウムが濃度勾配なしに含有されることができる。アルミニウム(Al)が二次粒子内に濃度勾配なしに均一に分布することで、アルミニウム(Al)の絡み合い現象を抑制して容量減少を最小化し、少量のアルミニウム(Al)で寿命特性および抵抗増加率特性の改善効果を高めることができる。
【0059】
好ましくは、本発明の正極活物質前駆体は、ニッケル、マンガン、コバルトおよびアルミニウムが濃度勾配なしに二次粒子の全体で均一な濃度で分布するものであることができる。
【0060】
一方、本発明による正極活物質前駆体は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列されたものであることができる。上述のように、正極活物質の一次粒子配向性は、正極活物質前駆体の一次粒子配向性と同一の傾向性を示し、正極活物質粒子内でリチウムイオンは、一次粒子の間の界面に沿って移動するため、一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列された構造、すなわち、放射状構造を有する場合、正極活物質粒子の内部でのリチウムイオンの移動経路が短くなり、リチウム移動性が改善する効果を得ることができる。
【0061】
また、本発明による正極活物質前駆体の一次粒子は、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む。正極活物質前駆体の(001)面は、焼成後に(003)面に変換されるため、前記のような結晶粒を含む正極活物質前駆体を用いて製造された正極活物質の一次粒子は、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含むようになる。(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置される場合、一次粒子の間の界面に露出する(003)面の面積が広くなる。(003)面は、リチウムイオンが挿入/脱離が不可能な安定した結晶面であるため、(003)面の外部露出面積が大きい場合、リチウムイオンの挿入/脱離による活物質の構造劣化が抑制され、これにより、寿命特性が改善する効果を得ることができる。
【0062】
一方、前記正極活物質前駆体の一次粒子は、円柱(columnar)状であることができ、この際、一次粒子のアスペクト比が3以上であることができる。より好ましくは、前記正極活物質前駆体の一次粒子のアスペクト比は、3~15であることができ、さらに好ましくは5~8であることができる。正極活物質前駆体の一次粒子のアスペクト比が前記範囲を満たす時に、一次粒子内外部のリチウム移動経路を短く形成させることができる効果がある。
【0063】
本発明の正極活物質前駆体の二次粒子の平均粒径D50は、3~20μm、5~20μm、または8~20μmであることができる。正極活物質前駆体の二次粒子の平均粒径が前記範囲を満たす時に、エネルギー密度、寿命およびガス発生の面で有利な効果を得ることができる。
【0064】
<正極活物質>
次に、本発明による正極活物質およびその製造方法について説明する。
【0065】
本発明による正極活物質は、上述の本発明の正極活物質前駆体とリチウムソースを混合し焼成してリチウム遷移金属酸化物を形成するステップを経て製造することができる。
【0066】
前記正極活物質前駆体は、上述のとおりである。
【0067】
前記リチウムソースは、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などが使用されることができ、水に溶解されることができる限り特に限定されない。具体的には、前記リチウムソースは、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、またはLiなどであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0068】
前記正極活物質前駆体とリチウムソースを混合した後、730~830℃で焼成してリチウム遷移金属酸化物を形成することができる。より好ましくは750~810℃、さらに好ましくは780~800℃で焼成することができ、5~20時間、より好ましくは8~15時間焼成することができる。
【0069】
一方、必要に応じて、前記焼成時に、ドーピング元素Mを含有する原料物質をさらに混合することができる。前記Mは、例えば、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であることができ、ドーピング元素Mを含有する原料物質は、M含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであることができる。焼成時に、Mをさらに混合する場合、焼成によってM元素がリチウム遷移金属酸化物の内部に拡散してドープされ、正極活物質の構造安定性を改善する効果を得ることができる。
【0070】
このように製造された本発明の正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列され、前記一次粒子が、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む。
【0071】
[化学式2]
Li[NiCoMnAl1-f
【0072】
前記化学式2中、Mは、チウム遷移金属酸化物にドープされたドーピング元素であり、例えば、Zr、B、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、PおよびSからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0073】
前記aは、リチウム遷移金属酸化物のうちリチウムのモル比を示し、0.8≦a≦1.2、0.85≦a≦1.15、または0.9≦a≦1.1であることができる。
【0074】
前記bは、リチウム遷移金属酸化物内の遷移金属総モル数に対するニッケルのモル比を示し、0.7≦b≦0.99、0.8≦b≦0.98、0.85≦b≦0.98、または0.85≦b≦0.95であることができる。
【0075】
前記cは、リチウム遷移金属酸化物内の遷移金属総モル数に対するコバルトのモル比を示し、0<c<0.3、0.01≦c<0.2、0.01≦c<0.14または0.01≦c<0.12であることができる。
【0076】
前記dは、リチウム遷移金属酸化物内の遷移金属総モル数に対するマンガンのモル比を示し、0<d<0.3、0.01≦d<0.2、0.01≦d<0.14または0.01≦d<0.12であることができる。
【0077】
前記eは、リチウム遷移金属酸化物内の遷移金属総モル数に対するアルミニウムのモル比を示し、0.01≦e≦0.1、0.01≦e≦0.08または0.01≦e≦0.05であることができる。
【0078】
前記fは、リチウム遷移金属酸化物内の遷移金属層にドープされたドーピング元素Mのモル比を示し、0≦f≦0.1、0≦f≦0.05または0≦f≦0.03であることができる。
【0079】
一方、前記正極活物質は、アルミニウム(Al)が二次粒子の全体に均一に分布することが好ましい。すなわち、正極活物質の二次粒子内でアルミニウムが濃度勾配なしに含有されることができる。アルミニウム(Al)が二次粒子内に濃度勾配なしに均一に分布することで、アルミニウム(Al)の絡み合い現象を抑制して容量減少を最小化し、少量のアルミニウム(Al)で寿命特性および抵抗増加率特性の改善効果を高めることができる。
【0080】
好ましくは、本発明の正極活物質は、ニッケル、マンガン、コバルトおよびアルミニウムが濃度勾配なしに二次粒子の全体で均一な濃度で分布するものであることができる。
【0081】
一方、本発明による正極活物質は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記一次粒子の長軸が前記二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列されたものであることができる。正極活物質粒子内でリチウムイオンは、一次粒子の間の界面に沿って移動するため、正極活物質の一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列された構造、すなわち、放射状構造を有する場合、正極活物質粒子の内部でのリチウムイオンの移動経路が短くなり、リチウム移動性が改善する効果を得ることができる。
【0082】
また、本発明による正極活物質の一次粒子は、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置された結晶粒を含む。(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置される場合、一次粒子の間の界面に露出する(003)面の面積が広くなる。(003)面は、リチウムイオンが挿入/脱離が不可能な安定した結晶面であるため、(003)面の外部露出面積が大きい場合、リチウムイオンの挿入/脱離による活物質の構造劣化が抑制され、これにより、寿命特性が改善する効果を得ることができる。
【0083】
一方、前記正極活物質の一次粒子は、円柱(columnar)状であることができ、この際、一次粒子のアスペクト比が、1.5以上、好ましくは1.5~10、より好ましくは2.5~8、さらに好ましくは2.5~5であることができる。正極活物質の一次粒子のアスペクト比が前記範囲を満たす時に、一次粒子内外部のリチウム移動経路を短く形成させることができる効果がある。
【0084】
本発明の正極活物質の二次粒子の平均粒径D50は、3~20μm、5~20μm、または8~20μmであることができる。正極活物質の二次粒子の平均粒径が前記範囲を満たす時に、エネルギー密度、寿命およびガス発生の面でより有利な効果を得ることができる。
【0085】
<正極およびリチウム二次電池>
本発明の他の一実施形態によると、前記のように製造された正極活物質を含む二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供する。
【0086】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0087】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0088】
また、前記正極活物質層は、上述の正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0089】
この際、前記導電材は、電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、通常、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0090】
また、前記バインダーは、正極活物質粒子の間の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0091】
前記正極は、上記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上記の正極活物質、および、選択的に、バインダーおよび導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集全体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造することができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0092】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0093】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0094】
本発明のさらに他の一実施形態によると、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的には、電池またはキャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0095】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0096】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0097】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0098】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む負極形成用組成物を塗布し乾燥するか、または前記負極形成用組成物を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0099】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質の材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0100】
また、前記バインダーおよび導電材は、先に正極で説明したとおりであることができる。
【0101】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタルレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造で使用されることができる。
【0102】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0103】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0104】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用したときに、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0105】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用可能である。前記リチウム塩は、0.1~2.0Mの濃度範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0106】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1~5重量%含まれることができる。
【0107】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0108】
したがって、本発明の他の一具現例よると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0109】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0110】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0111】
実施例1
反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、58℃の温度を維持し、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が88:5:7になるように混合した2.29mol/L濃度の遷移金属水溶液を500ml/hrで、1.145mol/L濃度のAl(NO水溶液を20ml/hrで反応器にそれぞれ投入し、9重量%のアンモニア水溶液を510ml/hrで反応器に連続して投入した。そして、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を306ml/hrで投入し、pHが11.4を維持するように水酸化ナトリウム水溶液の投入を調節した。
【0112】
最初の30分は600rpmで撹拌して核生成を行い、以降、250~600rpmで撹拌して粒子を成長させた。20時間共沈反応させてバッチ式反応器の内部が満たされると撹拌を停止し、前駆体粒子を沈殿させ、反応物を4L残して上澄み液を除去した後、また反応を行った。総40時間反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して水に洗浄した後、130℃の温風乾燥器で12時間以上乾燥させ、解砕および篩分けしてNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02(OH)の組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0113】
実施例2
実施例1で製造した正極活物質前駆体、LiOHおよびZrOを(Ni+Co+Mn+Al):Li:Zrのモル比が1:1.07:0.0015になるように混合し、酸素雰囲気下790℃で10時間焼成してZrが1,500ppmでドープされ、Ni:Co:Mn:Alのモル比が86:5:7:2である正極活物質を製造した。
【0114】
比較例1
反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、58℃の温度を維持し、NiSO、CoSO、MnSO、AlSOをニッケル:コバルト:マンガン:アルミニウムのモル比が86:5:7:2になるように混合した2.29mol/L濃度の遷移金属水溶液を500ml/hrで反応器に投入し、9重量%のアンモニア水溶液を510ml/hrで反応器に連続して投入した。そして、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を306ml/hrで投入し、pHが11.4を維持するように水酸化ナトリウム水溶液投入を調節した。
【0115】
最初の30分は600rpmで撹拌して核生成し、以降、250~600rpmで撹拌して粒子を成長させた。20時間共沈反応させてバッチ式反応器の内部が満たされると撹拌を停止し、前駆体粒子を沈殿させ、反応物を4L残して上澄み液を除去した後、また反応を行った。総40時間反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して水に洗浄した後、130℃の温風乾燥器で12時間以上乾燥させ、解砕および篩分けしてNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02(OH)の組成を有する正極活物質前駆体を製造した。
【0116】
比較例2
反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、58℃の温度を維持し、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が88:5:7になるように混合した2.29mol/L濃度の遷移金属水溶液を510ml/hrで反応器に投入し、9重量%のアンモニア水溶液を510ml/hrで反応器に連続して投入した。そして、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を306ml/hrで投入し、pHが11.4を維持するように水酸化ナトリウム水溶液投入を調節した。
【0117】
最初の30分は600rpmで撹拌して核生成を行い、以降、250~600rpmで撹拌して粒子を成長させた。20時間共沈反応させてバッチ式反応器の内部が満たされると撹拌を停止し、前駆体粒子を沈殿させ、反応物を4L残して上澄み液を除去した後、また反応を行った。総40時間反応させてNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)の組成を有する前駆体粒子を形成した。
【0118】
前記で製造した正極活物質前駆体、LiOH、Al、およびZrOを(Ni+Co+Mn):Li:Al:Zrのモル比が1:1.07:0.02:0.0015になるように混合し、酸素雰囲気下770℃で10時間焼成してZrが1,500ppmでドープされ、Ni:Co:Mn:Alのモル比が86:5:7:2である正極活物質を製造した。
【0119】
[実験例1:正極活物質前駆体および正極活物質の確認]
透過電子顕微鏡(TEM)分析により、実施例1~2、比較例1~2の正極活物質前駆体および正極活物質の結晶構造および一次粒子のアスペクト比を測定した。TEM分析は、制限視野回折パターン(selected area diffraction pattern、SADP)およびFASTフーリエ変換(FFT)を使用して行われた。
【0120】
その結果を図1図4に示した。
【0121】
図1は、実施例1で製造した正極活物質前駆体の断面のTEMイメージである。図1に示されているように、実施例1の正極活物質前駆体は、Alが粒子の全体に均一に分布されており、一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列されていた。
【0122】
また、TEMイメージ分析により一次粒子の短軸の長さにおよび長軸の長さを測定して一次粒子のアスペクト比を計算し、測定された一次粒子のアスペクト比は、平均6.7であった。
【0123】
また、SADPにより結晶粒構造を確認した結果、(001)面が一次粒子の長軸に平行に配置されていることを確認した。(001)面の方向は矢印で表示した。
【0124】
図2は、実施例2で製造した正極活物質の断面のTEMイメージである。図2に図示されているように、実施例2の正極活物質は、Alが二次粒子の全体に均一に分布し、一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列されていた。
【0125】
また、TEMイメージ分析により、一次粒子の短軸の長さおよび長軸の長さを測定して一次粒子のアスペクト比を計算し、測定された一次粒子のアスペクト比は、平均3.2であった、
【0126】
また、SADPにより結晶粒構造を確認した結果、(003)面が一次粒子の長軸に平行に配置されていることが確認された。(003)面の方向は矢印で表示した。
【0127】
図3は、比較例1で製造した正極活物質前駆体のSEMイメージである。図3に示されているように、比較例1の正極活物質前駆体は、小さいサイズのNCMシード(Seed)形態の粒子とAlと硫黄(Sulfur)の化合物が別に存在する様子を示している。また、40時間反応したにも関わらず、二次粒子のD50が5μm以下であり、粒子の成長がほとんど起こらなかったことが認められる。
【0128】
図4は、比較例2で製造した正極活物質の断面のTEMイメージである。図4に図示されているように、比較例2の正極活物質は、Alが二次粒子の全体に均一に分布し、一次粒子の長軸が二次粒子の中心から表面に向かう方向に配列されていた。
【0129】
また、TEMイメージ分析により一次粒子の短軸の長さおよび長軸の長さを測定して一次粒子のアスペクト比を計算し、測定された一次粒子のアスペクト比は、平均2.4であった、
【0130】
また、SADPにより結晶粒構造を確認した結果、(003)面が様々な方向に分布していることが確認された。(003)面の方向は矢印で表示した。
【0131】
[実験例2:寿命特性、抵抗増加率特性]
前記実施例2、比較例2で製造した正極活物質、カーボンブラック導電材およびPVdFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒の中で重量比96:2:2の比率で混合して正極合剤を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0132】
負極は、リチウムメタルを使用した。
【0133】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケースの内部に位置させた後、ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート/(EC/EMC/DECの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を溶解させて製造した。
【0134】
このように製造された各リチウム二次電池セル(cell)に対して、45℃で1Cの定電流で4.25Vまで3Cカットオフ(cut off)で充電した。以降、0.33Cの定電流で3.0Vになるまで放電した。前記充電および放電挙動を1サイクルとし、このようなサイクルを100回繰り返して実施した後、サイクルによる容量維持率および抵抗増加率を測定した。容量維持率の場合、100回目のサイクルでの容量を初期容量で除した後、100を乗じてその値を計算し、抵抗増加率の場合、100回目のサイクルでの抵抗を初期抵抗で除した後、100を乗じてその値を計算した。その結果を下記表1および図5に示した。
【0135】
【表1】
【0136】
前記表1および図5を参照すると、実施例2の正極活物質が、容量維持率および抵抗増加率の特性において著しく優れており、Al乾式ドーピングにより製造した比較例2の正極活物質の場合、容量維持率および抵抗増加率の特性が劣っていた。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】