(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(54)【発明の名称】選択的原子層エッチングにおける超薄型エッチストップ層の使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230323BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547101
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 US2021016076
(87)【国際公開番号】W WO2021158482
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】509001010
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ コロラド,ア ボディ コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ザンディ,オミッド
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファゲ,ジャックス
(72)【発明者】
【氏名】ザイウォッコ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ,スティーヴン エム.
【テーマコード(参考)】
5F004
5F058
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA20
5F004DB13
5F004DB14
5F004EA28
5F004EA34
5F004FA08
5F058BA20
5F058BC03
5F058BD01
5F058BD05
5F058BF22
5F058BF24
5F058BF29
5F058BF37
5F058BH12
(57)【要約】
超薄型エッチストップ層(ESL)を使用する材料の選択的エッチングの方法において、ESLは、原子層エッチング(ALE)を使ってほぼ1つの単分子層と同程度に薄い厚さにおいて有効である。基板加工方法は、第一の膜を基板の上に堆積させるステップと、第二の膜を第一の膜の上に堆積させるステップと、ALEプロセスを使って第二の膜を第一の膜に関して選択的にエッチングするステップであって、エッチングは第二の膜と第一の膜との界面において自己停止するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板加工方法であって、
基板上に第一の膜を堆積させるステップと、
前記第一の膜の上に第二の膜を堆積させるステップと、
原子層エッチング(ALE)プロセスを使って前記第二の膜を前記第一の膜に関して選択的にエッチングするステップであって、前記エッチングは前記第二の膜と前記第一の膜との界面において自己停止するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ALEプロセスは、第一の反応物質及び第二の反応物質の交互のガス曝露を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ALEプロセスは、前記第一の反応物質と前記第二の反応物質をプラズマ励起させずに行われる熱ALEプロセスを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一及び第二の膜は誘電膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一及び第二の膜は、Al
2O
3、ZrO
2、及びHfO
2からなる群より選択される異なる金属酸化膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の膜はAl
2O
3膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記Al
2O
3膜は、原子層堆積(ALD)プロセスにおいてAl(CH
3)
3及びH
2Oの交互のガス曝露を使って堆積される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ALEプロセスは、1)HF、及び2)Sn(acac)
2、Al(CH
3)
3、Al(CH
3)
2Cl、SiCl
4、又はTiCl
4の交互のガス曝露を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の膜はZrO
2膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ZrO
2膜はほぼ1つの単分子層の均一な厚さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ZrO
2膜は、原子層堆積(ALD)プロセスにおいてZrCl
4及びH
2Oの交互のガス曝露を使って堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
除去するステップの後に、追加のALEプロセスを使って前記第一の膜をエッチングするステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ALEプロセスは第一の反応物質及び第二の反応物質の交互のガス曝露を含み、前記追加のALEプロセスは、前記第一の反応物質、及び前記第二の反応物質とは異なる第三の反応物質の交互のガス曝露を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ALEプロセスと前記追加のALEプロセスは、前記第一の反応物質、前記第二の反応物質、及び前記第三の反応物質のプラズマ励起を行わずに実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一の膜はZrO
2膜を含み、前記第二の膜はAl
2O
3膜を含み、前記第一の反応物質はHFを含み、前記第二の反応物質はAl(CH
3)
3を含み、前記第三の反応物質はAl(CH
3)
2Clを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
基板加工方法であって、
基板上の第一の膜と、前記第一の膜上の第二の膜を含む基板を提供するステップと、
前記第二の膜を前記第一の膜に関して選択的にエッチングする熱原子層エッチング(ALE)プロセスを使って前記第二の膜のエッチングを開始するステップと、
前記ALEプロセスを使って前記第二の膜を除去するステップであって、前記エッチングは前記第二の膜と前記第一の膜との界面において自己停止するステップと、
前記除去するステップの後に、前記第一の膜を追加のALEプロセスを使ってエッチングするステップと、
を含み、
前記ALEプロセスは、第一の反応物質及び第二の反応物質の交互のガス曝露を含み、前記追加のALEプロセスは、前記第一の反応物質、及び前記第二の反応物質とは異なる第三の反応物質の交互のガス曝露を含み、
前記ALEプロセスと前記追加のALEプロセスは、前記第一の反応物質、前記第二の反応物質、及び前記第三の反応物質のプラズマ励起を行わずに実行される、方法。
【請求項17】
基板加工方法であって、
ZrO
2膜を基板の上に堆積させるステップと、
Al
2O
3膜を前記ZrO
2膜の上に堆積させるステップと、
前記Al
2O
3膜を前記ZrO
2膜に関して選択的にエッチングする熱原子層エッチング(ALE)プロセスを使って前記Al
2O
3膜のエッチングを開始するステップと、
前記熱ALEプロセスを使って前記Al
2O
3膜を除去するステップであって、前記エッチングは、前記Al
2O
3膜と前記ZrO
2膜との界面において自己停止するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記熱ALEプロセスは、HF及びAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ZrO
2膜はほぼ1つの単分子層の均一な厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記除去するステップの後に、HF及びAl(CH
3)
2Clの交互のガス曝露を含む追加の熱ALEプロセスを使って前記ZrO
2膜をエッチングするステップ
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月3日に出願された、“METHOD FOR USING ULTRA-THIN ETCH STOP LAYERS IN SELECTIVE ATOMIC LAYER ETCHING”と題する米国仮特許出願第62/969,567号の優先権を主張するものであり、その開示の全体を参照によって本願に援用することを明記する。
【0002】
本発明は、半導体製造及び半導体装置の分野に関し、より詳しくは、半導体加工における超薄型無機エッチストップ層の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体及び関連業界では、ナノ構造及びナノパターンの製作によって、異なる材料の堆積及びエッチングにおけるほぼ原子レベルでの精度及び選択性を達成することが求められるようになった。例としては、微細相互接続手段の金属充填並びに、電界効果トランジスタ及び10nmスケール未満のその他のナノデバイスで使用される超薄型ゲート誘電体及び超薄型チャネルの形成が含まれる。原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)及び原子層エッチング(ALE:atomic layer etching)プロセスは高精度の半導体製造に必要な原子層の成長及び除去を画定でき、堆積/エッチバック方式及び高アスペクト比構造の共形エッチングに基づく超平滑薄膜が得られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
超薄型エッチストップ層(ESL:etch stop layer)を使用する材料の選択的エッチング方法を説明するが、このESLはALEプロセスを使用したときにほぼ1つの単分子膜と同程度に薄い厚さにおいて有効である。
【0005】
1つの実施形態によれば、基板加工方法は、基板の上に第一の膜を堆積させるステップと、第一の膜の上に第二の膜を堆積させるステップと、ALEプロセスを使って第二の膜を第一の膜に関して選択的にエッチングするステップであって、エッチングは第二の膜と第一の膜との界面において自己停止するステップと、を含む。
【0006】
他の実施形態によれば、基板加工方法は、基板上の第一の膜と、第一の膜上の第二の膜を含む基板を提供するステップと、第二の膜を第一の膜に関して選択的にエッチングするALEプロセスを使って、第二の膜のエッチングを開始するステップと、ALEプロセスを使って第二の膜を除去するステップであって、エッチングは第二の膜と第一の膜との界面において自己停止するステップと、を含む。方法は、除去するステップの後に、第一の膜を追加のALEプロセスを使ってエッチングするステップをさらに含み、ALEプロセスは、第一の反応物質と第二の反応物質の交互のガス曝露を含み、追加のALEプロセスは、第三の反応物質と第四の反応物質の交互のガス曝露を含み、ALEプロセスと追加のALEプロセスは、第一の反応物質、第二の反応物質、第三の反応物質、及び第四の反応物質のプラズマ励起を行わずに実行される。1つの実施形態によれば、第一の膜はほぼ1つの単分子膜の均一な厚さを有する。
【0007】
他の実施形態によれば、基板加工方法は、ZrO2膜を基板上に堆積させるステップと、Al2O3膜をZrO2膜上に堆積させるステップと、Al2O3膜をZrO2膜に関して選択的にエッチングする熱ALEプロセスを使ってAl2O3膜のエッチングを開始するステップと、熱ALEプロセスを使ってAl2O3膜を除去するステップであって、エッチングは、Al2O3膜とZrO2膜との界面において自己停止するステップと、を含む。1つの実施形態によれば、ZrO2膜は、ほぼ1つの単分子層の均一な厚さを有する。1つの実施形態によれば、熱ALEプロセスは、HF及びAl(CH3)3の交互のガス曝露を含む。1つの実施形態によれば、方法は、除去するステップの後に、HFとAl(CH3)2Clの交互のガス曝露を含む追加の熱ALEプロセスを使ってZrO2膜をエッチングするステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
【
図1B】本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
【
図1C】本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
【
図1D】本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
【
図1E】本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
【
図2】本発明のある実施形態による堆積/エッチングプロセス中の、水晶振動子マイクロバランス(QCM)により追跡された基板質量変化を示す。
【
図3】本発明の実施形態による堆積/エッチングプロセス中に、QCMにより追跡された基板質量の変化を示す。
【
図4】本発明のある実施形態による、QCMにより測定されたエッチング速度を示す。
【
図5】本発明の実施形態によるALEプロセス中に、QCMにより追跡された基板質量の変化を示す。
【
図6】本発明の実施形態による選択的ALEに使用され得るエッチング反応物質と物質との組合せの例を表で示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体装置の製造において、ESLは異なる材料の界面でエッチングプロセスを停止させるため、又は下地材料をエッチングから保護するために材料スタックの中で使用される。本発明の実施形態は、わずか1つの単分子層(原子層)の厚さであり得、1つ又は複数のプロセスチャンバ内でその場で堆積され、その後除去され得るESLの使用を説明する。本明細書で説明する方法は、半導体装置の製造における加工時間及び材料使用の大幅な削減を提供でき、ナノサイズのスペース及び3D特徴物における堆積/エッチングプロセスを可能にする。さらに、この方法は、半導体装置における材料の複数のスタックの統合中の応力発生に係わる問題も軽減させることができる。
【0010】
1つの実施形態によれば、超薄型ESLを使って材料を選択的にエッチングする方法が説明され、ESLはほぼ1つの単分子層程度に薄い厚さでのALE加工において有効である。ALEは、逐次的な自己制御性反応を利用して材料の薄層を除去するためのエッチング技術である。熱ALEは、プラズマ励起を行わずに行われ、自己飽和性と自己停止性を有する逐次的熱駆動反応ステップを使用する等方性原子レベルエッチング制御を提供する。熱ALEのエッチングメカニズムは、フッ素付加及び配位子交換、変換-エッチング、並びに酸化及びフッ素付加反応を含み得る。エッチング精度は、原子スケールの寸法に到達でき、大きい面積の均一な基板エッチングを実現できる。本発明の実施形態を用いて加工され得る基板の例としては、半導体材料(例えば、Si)の薄いウェハが含まれ、これは従来、半導体製造において見られ、直径は100mm、200mm、300mm、又はそれより大きくすることができる。しかしながら、他の種類の基板も使用され得て、これは例えばソーラーパネルを製作するための基板である。
【0011】
図1A~1Eは、本発明のある実施形態による層構造の加工方法を概略的に示す。
図1Aに概略的に示されているように、方法は、基底材料100(例えば、Siウェハ)と基底材料100の上の下側膜102を含む基板1を提供するステップを含む。
図1Aには図示されていないが、基板1は1つ又は複数の追加の膜及び材料と1つ又は複数の単純又は高精度パターニングを有する特徴物を含み得る。
【0012】
図1Bで、方法は第一の膜104を下側膜102の上に堆積させるステップをさらに含む。本発明の実施形態によれば、第一の膜104はESLとしての役割を果たし得る。1つの例において、第一の膜104は誘電膜である。幾つかの例において、第一の膜102は一般式M
xO
yの金属酸化膜を含むことができ、xとyは整数である。例としては、ZrO
2及びAl
2O
3が含まれる。1つの例において、第一の膜104はZrO
2を含むことができ、これはALD加工を使って基底材料100の上に均一に堆積され得る。しかしながら、第一の膜102は金属酸化物に限定されず、他の材料、例えば酸化物、窒化物、酸窒化物、及び半導体装置において見られるその他の材料を含み、又はそれからなり得る。
【0013】
図1Cで、方法は、第二の膜106を第一の膜104の上に堆積させるステップをさらに含み、第二の膜106は第一の膜104とは異なる材料を含む。本発明の実施形態によれば、第一の膜104はその後のエッチングプロセスを第二の膜106と第一の膜104との界面で停止させるため、又は第一の膜102をエッチングから保護するために使用され得る。1つの例において、第二の膜106は誘電膜である。幾つかの例において、第二の膜106は一般式M
xO
yの金属酸化膜を含むことができ、xとyは整数である。例としては、ZrO
2、HfO
2、及びAl
2O
3が含まれる。1つの例において、第二の膜106はAl
2O
3を含むことができ、これはALD加工を使って第一の膜104の上に均一に堆積され得る。しかしながら、第二の膜106は金属酸化物に限定されず、他の材料、例えば酸化物、窒化物、酸窒化物、及び半導体装置において見られるその他の材料を含み、又はそれからなり得る。
【0014】
方法は、第二の膜106を第一の膜104に関して選択的にエッチングするALEプロセス(例えば、熱ALEプロセス)を使って第二の膜106のエッチングを開始するステップをさらに含む。ALEプロセスは、エッチングがALEプロセスの選択的エッチング特性によって第二の膜106と第一の膜104の界面で自己停止するまで第二の膜106を除去する。
図1Dは、第二の膜106が基板1から除去された基板1を概略的に示す。その後、1つの実施形態によれば、第一の膜104は基板1から、例えば追加のALEプロセスを使って除去され得る。これは、
図1Dに概略的に示されている。
【0015】
図2は、本発明のある実施形態による堆積/エッチングプロセス中に水晶振動子マイクロバランス(QCM)により追跡された基板質量の変化を示す。質量トレース200は、時間に応じたQCM上での基板質量の増加/損失をng/cm
2の単位で示しており、質量増加及び質量損失はそれぞれ堆積及びエッチングプロセスに対応する。膜構造は下側Al
2O
3膜、下側Al
2O
3膜の上のZrO
2膜、及びZrO
2膜の上の上側Al
2O
3膜を含んでいた。質量トレース200は3つの区間に分割され、第一の区間201は下側Al
2O
3膜の上の単分子層の厚さを有するZrO
2のALD中の質量増加を示し、第二の区間202は、ZrO
2膜上の上側Al
2O
3膜のALD中の質量増加を示し、第三の区間203は、ALEプロセスを使った上側Al
2O
3膜のエッチング及び除去中の質量損失を示す。ZrO
2膜のALDは、四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)と水(H
2O)の交互のガス曝露を使って実行され、上側Al
2O
3膜のALDは、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3)とH
2Oの交互のガス曝露を使って実行された。上側Al
2O
3膜のALEでは、フッ化水素(HF)とAl(CH
3)
3の交互のガス曝露が使用され、各ALDサイクルはHF曝露及びそれに続くAl(CH
3)
3への曝露が使用されるAl
2O
3表面フッ素付加を含み、それによって配位子交換反応を通じたフッ素付加表面層(すなわち、AlF
3)のエッチングが行われる。
【0016】
上側Al2O3膜の非平衡ALE反応は以下を含む:
Al2O3+HF(g)→AlF3+H2O(g) (1)
AlF3+Al(CH3)3(g)→AlFx(CH3)y(g) (2)
【0017】
上側Al2O3膜のエッチングは、上側Al2O3膜が完全に除去され、ALEプロセスが上側Al2O3膜とZrO2膜との界面で自己停止するまで進行する。ALEプロセスは、ZrO2膜がHFとAl(CH3)3の交互のガス曝露によるエッチングに対して高い耐性を有するため、自己停止する。ZrO2膜はHFとの反応によりフッ素付加されてZrF4を形成するものの、Al(CH3)3との配位子交換反応はALE条件下では熱力学的に不利であり、これがエッチングプロセスを中断させ、停止させる。
【0018】
ZrO2膜のための非平衡ALE反応は以下を含む:
ZrO2+HF(g)→ZrF4+H2O(g) (3)
ZrF4+Al(CH3)3(g)→反応なし (4)
【0019】
ZrO
2膜のエッチング耐性は
図2の区間203に明瞭に示されており、そこでは、上側Al
2O
3膜の除去中、測定された質量トレース200はALEサイクルを何度も経た後にZrO
2膜の質量に漸近的に近づく。ZrO
2のフッ素付加は各ALEサイクル内の質量増加として観察されるが、その後のフッ素付加表面のAl(CH
3)
3(g)曝露の後は質量の正味変化が観察されず、これは、交換反応に対し非活性表面であることを示している。それゆえ、エッチングプロセスは、上側Al
2O
3膜を完全にエッチングし、除去した後にZrO
2膜で停止し、それによってZrO
2膜が、1つの単分子層の厚さしかないものの、ESLとして機能し、下地材料(すなわち、下側Al
2O
3膜)をエッチングから有効に保護することが実証される。熱力学的観点から、ZrO
2膜のESLとしてのエッチングブロック能力は、理論上、無限であり、これは、配位子交換反応がALE条件の下では熱力学的に不利であるからである。これによって、単分子層の厚さの超薄型ESLは、ESLとして適切な材料を使用することにより、ALEプロセスを有効にブロックできる。
【0020】
図3は、本発明の実施形態による堆積/エッチングプロセス中にQCMにより追跡された基板質量の変化を示す。トレース300は、ZrCl
4とH
2Oの交互のガス曝露を使用したZrO
2膜のALD中の質量増加と、HFとAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を使用したZrO
2のその後のALE加工中の質量変化を示す。ESLとしてのZrO
2膜の堅牢性は明瞭に実証され、ESLプロセスが100サイクル行われた後でも、ZrO
2膜のZrF
4表面の100%のブロック効率を示している。
【0021】
図4は、本発明の実施形態による、QCMにより測定されたエッチング速度を示す。Al
2O
3膜上に事前に堆積されたZrO
2の量の違いに応じたALEプロセス中のAl
2O
3膜のエッチング速度が図に示されている。ZrO
2は、Al(CH
3)
3とH
2Oの交互のガス曝露を用いたALDにより堆積され、ALEプロセスは、HFとAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を使用して行われた。黒丸400の実験データは、Al
2O
3膜上に堆積されたZrO
2の量の増加によって、下地のAl
2O
3膜のエッチング量が減少することを示している。特に、Al
2O
3膜上に堆積されたZrO
2のほぼ1つの単分子層に対応する約200ngのZrO
2では、Al
2O
3エッチング速度がほぼゼロの値まで低下した。ZrO
2膜の厚さを1つの単分子層の厚さより厚くしてもエッチング速度は影響を受けなかったが、これはZrO
2がすでにAl
2O
3膜を完全に被覆しているからである。ZrO
2のほぼ1単分子層分のみの厚さで有効にエッチングが停止することは、エッチング反応の不利な熱力学と一致しており、Al
2O
3表面反応部位はZrO
2で不動態化される。さらに、約1単分子層の厚さでのZrO
2の有効なエッチングブロックは、ZrO
2の第一の単分子層がAl
2O
3膜を均一に被覆していることと、ZrCl
4前駆体がAl
2O
3膜を被覆するZrO
2より露出したAl
2O
3表面部位によく反応することを示している。
【0022】
図5は、本発明の実施形態によるALEプロセス中のQCMによりトレースされた基板質量の変化を示す。ZrO
2膜は、HFとAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を使ってAl
2O
3膜をエッチングする熱ALE加工ではエッチングされないが、ZrO
2膜は、ALE加工中のガスエッチング反応物質の1つ又は複数を置き換えることによってエッチングされ、除去され得る。
図5では、ZrO
2膜はトレース500により示されるように、HFとジメチルアルミニウムクロリド(DMAC、Al(CH
3)
2Cl)の交互のガス曝露を使用する熱ALE加工によりエッチングされた。Al(CH
3)
3をAl(CH
3)
2Clに置き換えることにより、配位子交換反応が熱力学的に有利となり、それによってZrO
2膜を以下の非平衡ALE反応にしたがってエッチングすることが可能となる:
ZrO
2+HF
(g)→ZrF
4+H
2O
(g) (5)
ZrF
4+Al(CH
3)
2Cl
(g)→ZrF
xCl
y(g) (6)
【0023】
ZrO2膜のエッチングは、QCMトレース内の階段状の質量損失により示されている。
【0024】
図6は、本発明の実施形態による選択的ALE使用され得るエッチング反応物質と材料との組合せの例を表で示している。示された組合せは、実験的及び熱力学的情報に基づく。
図6に示される1つの例において、ZrO
2膜はHFとAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を使用したAl
2O
3及びHfO
2膜の熱ALE加工のためのESLとして使用され得る。その後、希望に応じて、ZrO
2膜は、例えばHFとAl(CH
3)
2Clの交互のガス曝露を使って除去され得る。他の例において、Al
2O
3膜はHFとSiCl
4の交互のガス曝露を使用したZrO
2とHfO
2の熱ALE加工のためのESLとして使用され得る。その後、希望に応じて、Al
2O
3膜は、例えばHFとAl(CH
3)
3の交互のガス曝露を使って除去され得る。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、ALD加工、ALE加工、又はそれらの両方は、約100℃~約400℃、約200℃~約400℃、又は約200℃~約300℃の基板温度で行われ得る。1つの例において、ALD加工、ALE加工、又はそれらの両方は、約250℃~約280℃の基板温度で実行され得る。
【0026】
幾つかの例において、ALD加工及びALE加工は、同じ基板温度で、又はほぼ同じ基板温度で実行され得る。当業者であれば、これによって、ALD加工とALE加工の両方を同じプロセスチャンバで実行するとき、及びALD加工とALE加工に異なるプロセスチャンバを使用するときに、高い基板スループットが得られることが容易にわかるであろう。
【0027】
幾つかの例において、ALD加工、ALE加工、及び追加のALE加工のうちの2つ以上は同じ基板温度で、又はほぼ同じ基板温度で実行され得る。例えば、ALE加工と追加のALE加工は同じ基板温度で、又はほぼ同じ基板温度で実行され得る。
【0028】
超薄型エッチストップ層(ESL)を使った材料の選択的エッチング方法の複数の実施形態を説明した。本発明の実施形態の上記の説明は、例示と解説のために提示されている。これは網羅的である、又は本発明を開示された通りの形態に限定することが意図されたものではない。この説明と後述の特許請求の範囲に含まれる用語は、説明を目的として使用されており、限定するものとは解釈されないものとする。当業者であれば、上記の教示を参照して多くの改良及び変更が可能であることがわかる。したがって、本発明の範囲はこの詳細な説明によってではなく、付属の特許請求の範囲によって限定されるものとする。
【国際調査報告】