(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ネオジム触媒化共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 4/54 20060101AFI20230324BHJP
C08F 4/52 20060101ALI20230324BHJP
C08F 4/606 20060101ALI20230324BHJP
C08F 36/06 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C08F4/54
C08F4/52
C08F4/606
C08F36/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548043
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2021013011
(87)【国際公開番号】W WO2022065902
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125164
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、テ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス-ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、トン-フィ
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J015DA04
4J015DA05
4J015DA37
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100AS04P
4J100AS11P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100FA04
4J100FA08
4J100FA10
4J100FA19
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4J100FA29
4J100FA30
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4J100GA01
4J100GB03
4J100GC25
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC49
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4J128BA03A
4J128BB01B
4J128BB03A
4J128BC16A
4J128BC25A
4J128BC27A
4J128BC27B
4J128EA02
4J128EB12
4J128EB13
4J128EB14
4J128EC01
4J128EF10
4J128FA02
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA06
4J128GA26
(57)【要約】
本発明は、高い加工性を有しながらも、配合物性に優れた共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物に関し、(a)~(c)の条件を全て満たすネオジム触媒化共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)の条件を全て満たすネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
(a)ICP(誘導結合プラズマ)で測定したネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、
(b)β値(β-value)が0.20未満であり、ここで、β値は、RPA(Rubber Process Analyzer)により100℃でtanδを測定した結果から得たlog(frequency)(x軸)-log(1/tanδ)(y軸)グラフの傾きを意味し、および
(c)下記式1を満たす。
[式1]
0.3X+4<Y<0.3X+6
前記式1中、
Xは、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)であり、
Yは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)である。
【請求項2】
前記(a)条件において、
ネオジム触媒の残留量が20~45重量ppm未満である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記(b)条件において、
β値が0.160~0.199である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記(c)条件において、
Xは40~50であり、Yは15以上である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記ネオジム触媒は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【化5】
前記化学式1中、
R
a~R
cは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、
ただし、R
a~R
cが全て同時に水素ではない。
【請求項6】
前記R
aは、炭素数4~12のアルキル基であり、
前記R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基である、請求項5に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項7】
重量平均分子量が500,000~1,200,000g/molである、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項8】
分子量分布が1.5~3.5である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項9】
(S1)ネオジム化合物を含む触媒組成物および分子量調節剤の存在下で、85℃以上の第1反応器において重合転換率80%以上に共役ジエン系単量体を重合し、重合生成物を排出させるステップと、
(S2)前記重合生成物を第2反応器に移送して重合するステップと、を含み、
前記触媒組成物中のネオジム化合物は共役ジエン系単量体100gを基準として0.01~0.03mmolであり、分子量調節剤は0.01~0.20phmである、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1反応器において30~100分間重合する、請求項9に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記触媒組成物は、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体をさらに含む、請求項9に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記触媒組成物に含まれたネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体のモル比は、1:(50~200):(30~70):(1~5):(10~50)である、請求項11に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、および2,4-ヘキサジエンからなる群から選択された1つ以上である、請求項11に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体を含むゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年09月25日付けの韓国特許出願第10-2020-0125164号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に記載された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高い加工性を有しながらも、配合物性に優れたネオジム触媒化共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、省エネルギーおよび環境問題に対する関心が高くなるにつれて自動車の低燃費化が求められている。それを実現するための方法の1つとして、タイヤ形成用ゴム組成物中のシリカまたはカーボンブラックなどの無機充填剤を用いてタイヤの発熱性を下げる方法が提案されたが、ゴム組成物中の前記無機充填剤の分散が容易ではないため、かえって耐摩耗性、耐クラック性、または加工性などをはじめとするゴム組成物の物性が全体的に低下するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ゴム組成物中のシリカまたはカーボンブラックなどの無機充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いたアニオン重合により得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を無機充填剤と互いに作用可能な官能基で変性する方法が開発された。具体的には、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物で変性するか、またはアミノ基を導入する方法またはアルコキシシラン誘導体で変性する方法などが提案された。
【0005】
しかしながら、前述した方法で変性された共役ジエン系重合体を用いてゴム組成物を製造する際に、低発熱性は確保できるものの、耐摩耗性、加工性などのゴム組成物に対する物性改善効果は充分ではなかった。
【0006】
また他の方法として、ランタン系希土類元素化合物を含む触媒を用いた配位重合により得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤により変性する方法が開発された。しかし、従来知られたランタン系希土類元素化合物を含む触媒では、生成されるリビング末端の活性が弱く、末端変性率が低いため、ゴム組成物の物性改善効果が微々たるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】KR10-2020-0078405A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い加工性を有しながらも、配合物性に優れた共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記共役ジエン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記(a)~(c)の条件を全て満たすネオジム触媒化共役ジエン系重合体を提供する。
【0011】
(a)ICP(Inductively Coupled Plasma)で測定したネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、
(b)β値(β-value)が0.20未満であり、ここで、β値は、RPA(Rubber Process Analyzer)により100℃でtanδを測定した結果から得たlog(frequency)(x軸)-log(1/tanδ)(y軸)グラフの傾きを意味し、および
(c)下記式1を満たす。
【0012】
[式1]
0.3X+4<Y<0.3X+6
前記式1中、
Xは、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)であり、
Yは、GPC(Gel Permeation Chromatography)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全体個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)である。
【0013】
また、本発明は、(S1)ネオジム化合物を含む触媒組成物および分子量調節剤の存在下で、85℃以上の第1反応器において重合転換率80%以上に共役ジエン系単量体を重合し、重合生成物を排出させるステップと、(S2)前記重合生成物を第2反応器に移送して重合するステップと、を含み、前記触媒組成物中のネオジム化合物は共役ジエン系単量体100gを基準として0.01~0.03mmolであり、分子量調節剤は0.01~0.20phmである、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、分岐度が高く、充填剤に対する優れた親和性を示し、ゴム組成物に適用時に分散性が高いため、優れた加工性を示すことができる。また、それにより製造された成形品は、引張強度、耐摩耗性、粘弾性特性などの物性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例および比較例による共役ジエン系重合体において、式1で定義したXおよびYのグラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0018】
ネオジム触媒化共役ジエン系重合体
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、誘導結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)で測定したネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、β値(β-value)が0.20未満であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel Permeation Chromatography)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)、およびムーニー粘度(ML1+4、@100℃)が下記式1を満たすことを特徴とする。
【0019】
[式1]
0.3X+4<Y<0.3X+6
前記式1中、
Xは、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)であり、
Yは、GPC(Gel Permeation Chromatography)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)である。
【0020】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、製造時にネオジム化合物の含量、重合温度、分子量調節剤の含量などといった重合条件などの制御により、加工性に優れながらも、ゴム組成物の粘弾性特性、引張特性、および加工性などの物性のバランスが改善されるように最適化された特性を有することができる。
【0021】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、誘導結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)で測定したネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、具体的には、45重量ppm以下、40重量ppm以下、20重量ppm以上であってもよく、この際、重量ppmは、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体を基準としたものである。
【0022】
前記ネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であるとは、共役ジエン系重合体中に残留して不純物とみなされるネオジム触媒が少なく含まれていることを意味するものであって、本発明の共役ジエン系重合体は、後述するように、触媒として用いられるネオジム化合物の含量を少なくするとともに、分子量調節剤の含量を多く調節して製造されたものである。これにより、重合体中のネオジム触媒の残留量が少なく、使用触媒量が低いため、重合体の分子量が高く示され、機械的物性が向上するという効果がある。
【0023】
前記ネオジム触媒の残留量が50重量ppm以上である場合、鎖末端のネオジムとアルミニウムの連鎖移動の発生が増加し、本発明の定義のようにムーニー粘度と対比して高い分子量を有する重合体を製造することができず、優れた機械的物性もまた実現することができない。また、重合体中の塩素(chlorine)の含量が増加し、最終的に共役ジエン系重合体での変色のような物性の低下をもたらし得る。
【0024】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、β値(β-value)が0.20未満であり、ここで、β値は、RPA(Rubber Process Analyzer)により100℃でtanδを測定した結果から得たlog(frequency)(x軸)-log(1/tanδ)(y軸)グラフの傾きを意味する。ここで、tanδは、一般的な粘弾性特性を示す指標であって、弾性係数(elastic modulus、G’)に対する粘性係数(viscosus modulus、G’’)の割合として示される値である。前記β値は、0.20未満であり、具体的に、0.200未満、0.199以下、0.195以下、0.160以上、0.170以上、0.175以上であってもよい。
【0025】
具体的に、前記β値は、振動数の関数として共役ジエン系重合体の分岐程度を示すものである。β値が小さいほど分岐度が増加し、β値が大きいほど分岐度が減少することを意味する。
【0026】
本発明の共役ジエン系重合体は、高分子量として優れた機械的物性を示しながらも、後述するように高い重合温度で製造されたため、上記のように小さいβ値を示して分岐度が高く、優れた加工性を示す。
【0027】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、前述したように、ネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、β値(β-value)が0.20未満であるとともに、下記式1を満たす。
【0028】
[式1]
0.3X+4<Y<0.3X+6
前記式1中、
Xは、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)であり、
Yは、GPC(Gel Permeation Chromatography)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)である。
【0029】
前記式1のように、本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度と対比して高分子量(分子量が1,000,000g/mol以上)を有する重合体鎖の含量がムーニー粘度と対比して高く示される。これは、本発明の重合体が高分子量の重合体鎖を高い割合で含有しているため、優れた機械的物性が実現されることを意味する。
【0030】
前記式1のX、すなわち、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)は、40~50であってもよい。具体的に、40以上、41以上、50以下、48以下であってもよい。本発明に係る共役ジエン系重合体は、前述した範囲内のムーニー粘度を有しながらも、同等なレベルのムーニー粘度を有する従来の共役ジエン系重合体と比べて機械的物性が向上するという特徴がある。
【0031】
前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定してもよい。具体的に、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させ、トルクを印加しながら測定してもよい。
【0032】
前記式1のY、すなわち、分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の割合(%)は、15%以上であってもよく、具体的に、15.0%以上、16.0%以上、16.5%以上17.0%以上であってもよく、高い分子量を有する重合体鎖により加工性が低下するのを防止するという面で、具体的に、30.0%以下、25.0%以下、22.0%以下、20.0%以下であってもよい。ここで、分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の割合(%)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布曲線において、重合体を構成する全体重合体鎖の個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)を意味する。
【0033】
これとともに、本発明の共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が500,000~1,200,000g/molであってもよく、具体的に、600,000g/mol以上、660,000g/mol以上、680,000g/mol以上、1,200,000g/mol以下、1,000,000g/mol以下、800,000g/mol以下であってもよい。また、数平均分子量が200,000~350,000g/molであってもよく、具体的に、210,000g/mol以上、220,000g/mol以上、230,000g/mol以上、320,000g/mol以下、310,000g/mol以下、300,000g/mol以下であってもよい。
【0034】
また、前記共役ジエン系重合体は、分子量分布(MWD、Mw/Mn)が1.5~3.5、具体的に、1.5以上、1.7以上、2.0以上、2.2以上、2.3以上、3.5以下、3.2以下、3.0以下であってもよく、それをゴム組成物に適用時に引張特性および粘弾性特性が改善されることができる。
【0035】
さらに、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に適用時にゴム組成物の機械的物性、弾性率、および加工性が均一に改善されるように、上記のような分子量分布範囲を有しながらも、重量平均分子量および数平均分子量が同時に前述した範囲の条件を満たしてもよい。
【0036】
ここで、前記重量平均分子量および数平均分子量は、それぞれGPCにより分析されるポリスチレン換算分子量であり、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で計算した。また、前記数平均分子量は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総計を求めてnで割って計算した個別重合体の分子量の共通平均(common average)であり、重量平均分子量は、重合体の分子量分布を示すものである。
【0037】
本発明において、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、ネオジム化合物を含む触媒組成物に由来した、すなわち、触媒から活性化された有機金属部位を含む共役ジエン系重合体を示してもよい。具体的に、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位を含むネオジム触媒化ブタジエン系重合体であってもよい。
【0038】
前記共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位とは、共役ジエン系重合体の末端の活性化された有機金属部位(分子鎖末端の活性化された有機金属部位)、主鎖中の活性化された有機金属部位、または側鎖中の活性化された有機金属部位であってもよい。中でも、アニオン重合または配位アニオン重合により共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位を得る場合、前記活性化された有機金属部位は、末端の活性化された有機金属部位であってもよい。
【0039】
前記共役ジエン系単量体としては、通常、共役ジエン系重合体の製造に用いられるものであれば、特に制限されずに使用可能である。前記共役ジエン系単量体は、具体的に、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、または2,4-ヘキサジエンなどであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。より具体的に、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンであってもよい。
【0040】
また、前記共役ジエン系単量体と共重合可能なその他の単量体をさらに用いてもよく、具体的に、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどのような芳香族ビニル単量体などであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。前記その他の単量体は、重合反応に用いられる単量体の総重量に対して20重量%以下の含量で用いられてもよい。
【0041】
具体的な例として、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位80~100重量%、および選択的に1,3-ブタジエンと共重合可能なその他の共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位20重量%以下を含んでもよい。前記範囲内にて、重合体中の1,4-シス結合含量が低下しないという効果がある。この際、前記1,3-ブタジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、または2-エチル-1,3-ブタジエンなどの1,3-ブタジエンまたはその誘導体が挙げられ、前記1,3-ブタジエンと共重合可能なその他の共役ジエン系単量体としては、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、または2,4-ヘキサジエンなどが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の化合物が用いられてもよい。
【0042】
好ましくは、本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエンを重合して製造したネオジム触媒化ブタジエン重合体であってもよい。
【0043】
本発明のネオジム触媒化共役ジエン系重合体において、ネオジム触媒は、ネオジム化合物を含んでもよく、具体的に、前記ネオジム化合物としては、そのカルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(ベルサテート)など);有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、またはネオジムジデシルリン酸塩など);有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、またはネオジムオクタデシルホスホン酸塩など);有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、またはネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩など);カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、またはネオジムジベンジルカルバミン酸塩など);ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、またはネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩など);キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、またはネオジムベンジルキサントゲン酸塩など);β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、またはネオジムベンゾイルアセトネートなど);アルコキシドまたはアリルオキシド、例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド、またはネオジムノニルフェノキシドなど);ハロゲン化物または擬ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、またはネオジムアジドなど);オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、またはネオジムオキシブロミドなど);または1以上のネオジム元素-炭素結合を含む有機ネオジム含有化合物(例えば、Cp3Nd、Cp2NdR、Cp2NdCl、CpNdCl2、CpNd(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2NdR、NdR3、Nd(アリル)3、またはNd(アリル)2Clなど、前記Rはヒドロカルビル基である)などが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0044】
より具体的に、前記ネオジム触媒は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0045】
【0046】
前記化学式1中、
Ra~Rcは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、
ただし、Ra~Rcが全て同時に水素ではない。
【0047】
また、オリゴマー化に対する恐れがなく溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、およびそれに応じた触媒活性の改善効果の優秀性を考慮すると、前記化学式1中、Raは、炭素数4~12のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基であってもよい。
【0048】
より具体的な例として、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~10のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~4のアルキル基であってもよい。
【0049】
さらに具体的に、前記化学式1中、前記Raは、炭素数8~10のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素であってもよい。
【0050】
このように、前記化学式1で表されるネオジム化合物は、α位置に炭素数2以上の多様な長さのアルキル基を置換基として含むカルボキシレート配位子を含むことで、ネオジム中心金属の周りに立体的な変化を誘導して化合物同士の絡み合い現象を遮断することができ、これにより、オリゴマー化を抑制できるという効果がある。また、かかるネオジム化合物は、溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換に困難がある中心部分に位置するネオジムの割合が減少し、触媒活性種への転換率が高いという効果がある。
【0051】
より具体的に、前記ネオジム化合物は、Nd(ネオデカノエート)3、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(2,2-ジメチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0052】
また、前記ネオジム化合物の溶解度は、常温(23±5℃)で、非極性溶媒6g当たりに約4g以上であってもよい。前記ネオジム化合物の溶解度は、濁る現象なく清く溶解される程度を意味するものであって、このように高い溶解度を示すことで優れた触媒活性を示すことができる。
【0053】
また、前記ネオジム化合物は、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基により、ネオジム化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、安定した状態で長期間貯蔵できるという効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、ネオジム元素1モル当たりに30モル以下、または1~10モルの割合で用いられてもよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、または1価または2価のアルコールなどであってもよい。
【0054】
ネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法
本発明の共役ジエン系重合体は、(S1)ネオジム化合物を含む触媒組成物および分子量調節剤の存在下で、85℃以上の第1反応器において重合転換率80%以上に共役ジエン系単量体を重合し、重合生成物を排出させるステップと、(S2)前記重合生成物を第2反応器に移送して重合するステップと、を含み、前記触媒組成物中のネオジム化合物は共役ジエン系単量体100gを基準として0.01~0.03mmolであり、分子量調節剤は0.01~0.20phmである、製造方法により製造されてもよい。
【0055】
前記製造方法は、少なくとも2器以上の反応器を用いる連続式重合であってもよい。触媒として用いられるネオジム化合物を少量使用し、分子量調節剤の含量を高く使用する調節により、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体の分子量を制御して機械的物性を向上させながらも、高い温度で重合を行って分岐度を高めることで加工性も確保できるという特徴がある。
【0056】
前記触媒組成物は、共役ジエン系単量体100gを基準としてネオジム化合物が0.01~0.03mmolとなる量で用いてもよく、具体的には、前記ネオジム化合物が重合に用いられる共役ジエン系単量体100gを基準として0.01mmol以上、0.010mmol以上、0.015mmol以上、0.020mmol以上、0.030mmol以下であってもよい。
【0057】
前記ネオジム化合物は、後述するアルキル化剤により活性化された後、共役ジエン系単量体の重合のための触媒活性種を形成する。ネオジム触媒に関する説明は前述したとおりである。
【0058】
前記ネオジム化合物が共役ジエン系単量体100gを基準として0.01mmol未満である場合には、共役ジエン系単量体と比べてネオジム化合物が少なすぎるため、重合反応がろくに進行せず、重合反応をさらに進行させるために滞留時間を増やすと、共役ジエン系重合体の分子量分布が広くなり、機械的物性が下がる現象が発生し得る。前記ネオジム化合物が共役ジエン系単量体100gを基準として0.03mmol超過である場合には、共役ジエン系重合体の生産原価が増加するだけでなく、製造された重合体中の塩素(chlorine)の含量が増加して生産設備の副食または製品の変色などの品質低下をもたらし得るという問題がある。また、本発明で定義したように、ムーニー粘度と対比して高い分子量を有する重合体を製造することができないため、優れた機械的物性を実現し難くなる。
【0059】
前記製造方法は、触媒組成物とは別に分子量調節剤を用いる条件下で行われる。前記分子量調節剤は、0.01~0.20phm(part hundred monomer)であり、具体的に、0.01phm以上、0.02phm以上、0.03phm以上、0.05phm以上、0.20phm以下、0.15phm以下、0.10phm以下であってもよい。前記phmは、共役ジエン系単量体の総100重量部を基準として重量部を示したものである。
【0060】
前記分子量調節剤により、本発明においては、ネオジム化合物を少なく用いながらも、製造される重合体の分子量を適正レベルに容易に制御し、所望の物性の共役ジエン系重合体を製造することができる。分子量調節剤が前記範囲から外れる場合には、本発明のように少ない含量のネオジム化合物を用いて高い分子量を有する共役ジエン系重合体を製造することが難しい。前記分子量調節剤の含量は、本発明で定義した重合温度、重合転換率、ネオジム化合物の含量を有する際に優れた配合物性および加工性を何れも実現する最適の共役ジエン系重合体を製造するための含量である。
【0061】
特に、本発明においては、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体が混合されてエージングされた触媒組成物の他に、分子量調節剤を別に投入して重合を行う。この場合に、分子量調節剤を触媒組成物中に含ませるよりも分子量の制御がさらに容易であるため、本発明のように高い分子量を示す共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0062】
具体的に、分子量調節剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドまたはヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであってもよく、具体的に、前記分子量調節剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n-オクチルアルミニウムジヒドリドなどのヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド;またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0063】
より好ましくは、前記分子量調節剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、およびジイソブチルアルミニウムヒドリドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0064】
前記分子量調節剤は、触媒組成物中に混合されるかまたは活性種をなしているのではなく、触媒組成物とは別に分子量調節剤自体として重合反応に投入されて用いられており、この意味で、触媒組成物中に含まれた第2アルキル化剤とは区別される意味で使用できる。
【0065】
前記触媒組成物は、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体をさらに含んでもよく、具体的に、有機溶媒中で、ネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を混合することで製造されてもよい。前記混合は、5時間以上、7時間以上、10時間以上、11時間以上、20時間以下で撹拌させることで行われてもよい。
【0066】
この際、前記有機溶媒は、前記触媒組成物の構成成分との反応性がない炭化水素溶媒であってもよい。具体的に、前記炭化水素溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、またはメチルシクロヘキサンなどのような直鎖状、分岐状もしくは環状の炭素数5~20の脂肪族炭化水素;石油エーテル(petroleum ether)または石油スピリット(petroleum spirits)、またはケロセン(kerosene)などのような炭素数5~20の脂肪族炭化水素の混合溶媒;またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような芳香族炭化水素系溶媒などであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。より具体的に、前記炭化水素溶媒は、前記直鎖状、分岐状もしくは環状の炭素数5~20の脂肪族炭化水素または脂肪族炭化水素の混合溶媒であってもよく、n-ヘキサン、シクロヘキサン、またはこれらの混合物であってもよく、好ましくは、n-ヘキサンが用いられてもよい。
【0067】
この際、触媒活性種の生成を促進させるために、前記混合工程は、-30~-20℃で、5時間以上、7時間以上、10時間以上、11時間以上、20時間以下で撹拌させることで行われてもよい。また、前記混合後、触媒組成物を24~36時間静置させてもよい。
【0068】
前記触媒組成物は、ネオジム化合物:第1アルキル化剤:第2アルキル化剤:ハロゲン化物:共役ジエン系単量体が1:(50~200):(30~70):(1~5):(10~50)のモル比で混合されてもよい。
【0069】
より具体的に、前記ネオジム化合物1モルを基準として、第1アルキル化剤は、50モル以上、70モル以上、100モル以上、110モル以上、200モル以下、150モル以下、130モル以下、例えば、120モルであってもよい。前記ネオジム化合物1モルを基準として、第2アルキル化剤は、30モル以上、35モル以上、40モル以上、70モル以下、60モル以下、50モル以下であってもよい。前記ネオジム化合物1モルを基準として、ハロゲン化物は、1.0モル以上、1.5モル以上、5.0モル以下、4.0モル以下、3.5モル以下であってもよい。前記ネオジム化合物1モルを基準として、共役ジエン系単量体は、10モル以上、20モル以上、25モル以上、50モル以下、40モル以下、35モル以下であってもよい。
【0070】
前記第1アルキル化剤は、アルミノキサンであってもよく、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されてもよい。具体的に、前記アルミノキサンは、下記化学式2aの直鎖状アルミノキサンまたは下記化学式2bの環状アルミノキサンであってもよい。
【0071】
【0072】
【0073】
前記化学式2aおよび2b中、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する1価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってもよく、xおよびyは、互いに独立して、1以上の整数、具体的には1~100、より具体的には2~50の整数であってもよい。
【0074】
より具体的には、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、または2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンなどであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0075】
また、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基を修飾基(R)、具体的には、炭素数2~20の炭化水素基で置換したものであって、具体的には、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【0076】
【0077】
前記化学式3中、Rは、先に定義したとおりであり、mおよびnは、互いに独立して、2以上の整数であってもよい。また、前記化学式3中、Meは、メチル基(methyl group)を示す。
【0078】
具体的に、前記化学式3中、前記Rは、炭素数2~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、アリル基、または炭素数2~20のアルキニル基であってもよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基などのような炭素数2~10のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってもよい。
【0079】
より具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%~90モル%を前記炭化水素基で置換してもよい。変性メチルアルミノキサン中の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内である際に、アルキル化を促進させて触媒活性を増加させることができる。
【0080】
かかる変性メチルアルミノキサンは、通常の方法により製造されてもよく、具体的には、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されてもよい。この際、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはトリオクチルアルミニウムなどであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0081】
より好ましくは、第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン、変性メチルアルミノキサン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0082】
前記第2アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドまたはヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであってもよく、具体的に、前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、およびn-オクチルアルミニウムジヒドリドなどのヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド;またはこれらの組み合わせであってもよく、好ましくは、ジイソブチルアルミニウムヒドリドであってもよいが、これに制限されない。
【0083】
より好ましくは、第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、およびジイソブチルアルミニウムヒドリドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0084】
前記アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に伝達可能な有機金属化合物として助触媒の役割をしてもよい。
【0085】
また、前記触媒組成物は、必要に応じて、上記の第1および第2アルキル化剤の他に、共役ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として通常用いられる通常のアルキル化剤をさらに含んでもよい。かかるアルキル化剤としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、またはジベンジルマグネシウムのようなアルキルマグネシウム化合物などが挙げられ、有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウムなどのようなアルキルリチウム化合物などが挙げられる。
【0086】
前記ハロゲン化物としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン単体、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、または有機金属ハライドなどが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。中でも、触媒活性の向上およびそれに応じた反応性の改善効果の優秀性を考慮すると、前記ハロゲン化物としては、有機ハライド、金属ハライド、および有機金属ハライドからなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0087】
前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0088】
また、前記ハロゲン間化合物としては、ヨードモノクロリド、ヨードモノブロミド、ヨードトリクロリド、ヨードペンタフルオリド、ヨードモノフルオリド、またはヨードトリフルオリドなどが挙げられる。
【0089】
また、前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素が挙げられる。
【0090】
また、前記有機ハライドとしては、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも称される)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも称される)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも称される)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド、またはメチルヨードホルメートなどが挙げられる。
【0091】
また、前記非金属ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン、または四ヨウ化セレンなどが挙げられる。
【0092】
また、前記金属ハライドとしては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン、または二ヨウ化マグネシウムが挙げられる。
【0093】
また、前記有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド、またはジ-t-ブチルスズジヨージドなどが挙げられる。
【0094】
また、本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、前記ハロゲン化物の代わりにまたは前記ハロゲン化物とともに、非配位性アニオン含有化合物または非配位性アニオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0095】
具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物において、非配位性アニオンは、立体障害により触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積の大きいアニオンであって、テトラアリールボレートアニオンまたはフッ化テトラアリールボレートアニオンなどであってもよい。また、前記非配位性アニオンを含む化合物は、前記非配位性アニオンとともに、トリアリールカルボニウムカチオンのようなカルボニウムカチオン;N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンなどのようなアンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンなどの対カチオンを含んでもよい。より具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、またはN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートなどであってもよい。
【0096】
また、前記非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、この際、Eは、ペンタフルオロフェニル基または3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのような強い電子求引性のアリール基である)が挙げられる。
【0097】
より好ましくは、前記ハロゲン化物は、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、およびイソブチルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0098】
前記共役ジエン系単量体は、重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を触媒組成物と予め混合してプレ(pre)重合した予備重合(preforming)または予備混合(premix)触媒組成物の形態で用いることで、触媒組成物の活性を向上できるだけでなく、製造される共役ジエン系重合体を安定化させることができる。
【0099】
本発明において、前記「予備重合(preforming)」とは、ネオジム化合物、アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物、すなわち、触媒システムにおいてジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)などを含む場合、これとともに、多様な触媒組成物活性種の生成可能性を減らすために1,3-ブタジエンなどの共役ジエン系単量体を少量添加することになり、1,3-ブタジエンの添加とともに、触媒組成物システム内でプレ(pre)重合が行われることを意味し得る。また、「予備混合(premix)」とは、触媒組成物システムにおいて重合が行われず、各化合物が均一に混合された状態を意味し得る。
【0100】
この際、前記触媒組成物の製造に用いられる共役ジエン系単量体は、前記重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の総使用量の範囲内で一部の量が用いられてもよい。
【0101】
本発明において、ステップ(S1)は、85℃以上の第1反応器において80%以上の重合転換率で共役ジエン系単量体を重合して重合生成物を排出させ、重合生成物を第2反応器に移送する。
【0102】
前記重合転換率は、重合反応に用いられた単量体成分が重合体への転換された程度を示すものであって、最初に重合反応に用いられた単量体の重量に対して重合物に残っている単量体の割合で示したものである。
【0103】
第1反応器における重合温度および重合転換率は、反応初期の条件を決定し、第1反応器において単量体が最も多い条件下で活発に重合が起こるため、最終的に製造される共役ジエン系重合体の物性を決定付ける重要な要因となる。したがって、本発明の製造方法で用いられる反応器の数は制限されないが、第1反応器における重合温度および重合転換率を特定した。
【0104】
本発明において、前記第1反応器の温度は、85℃以上、100℃以下、95℃以下、90℃以下であってもよい。
【0105】
前記第1反応器の温度が85℃未満である場合、重合反応速度および効率が低下する恐れがある。また、本発明においては、重合温度を高くして共役ジエン系重合体の分岐化を誘導することで、本発明で定義したようにβ値(β-value)が0.20未満として低く示される共役ジエン系重合体を製造することができ、これにより、優れた配合加工性を示す。第1反応器の温度が85℃未満であると、このような効果を実現することができなくなる。
【0106】
前記重合転換率を満たすために、本発明の製造方法は、前記第1反応器において30~100分、具体的に、30分以上、35分以上、100分以下、50分以下、45分以下、例えば、40分間重合してもよい。
【0107】
第1反応器に続き、第2反応器においてもさらに重合が行われるため、温度の上昇によるSCBの形成および過重合による物性低下現象が発生し得る。これを防止するという面で、好ましくは、第2反応器における重合は、重合転換率95%以上、最大100%に至るまで、10~100℃の温度で10~60分間行われてもよい。
【0108】
また、前記重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。
【0109】
ここで、定温重合は、触媒組成物の投入後に任意に熱を加えず、それ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を示し、前記昇温重合は、触媒組成物の投入後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を示し、前記等温重合は、触媒組成物の投入後に熱を加えて熱を増加させるかまたは熱を奪うことで反応物の温度を一定に維持する重合方法を示すものである。
【0110】
本発明において、前記ステップ(S1)および(S2)により、共役ジエン系単量体の重合体として有機金属部位を含む活性重合体を製造することができる。前記有機金属部位は、重合体の末端の活性化された有機金属部位(分子鎖末端の活性化された有機金属部位)、主鎖中の活性化された有機金属部位、または側鎖(side chain)中の活性化された有機金属部位であってもよい。中でも、アニオン重合または配位アニオン重合により重合体の活性化された有機金属部位を得る場合、前記有機金属部位は、末端の活性化された有機金属部位を示してもよい。
【0111】
前記重合は、ラジカル重合により行われてもよく、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合などの多様な重合方法で行われてもよく、また、バッチ(batch)法、連続法、または反連続法で行われてもよい。具体的な例として、前記活性重合体を製造するための重合は、有機溶媒中で、前記触媒組成物に対して共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行われてもよい。
【0112】
本発明において、前記活性重合体の製造後、ポリオキシエチレングリコールホスフェートなどのような重合反応を完了させるための反応停止剤、または2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾールなどのような酸化防止剤などの添加剤をさらに用いて重合を終結させるステップを含んでもよい。この他にも、反応停止剤とともに、溶液重合を容易にする添加剤、例えば、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、または酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤を選択的にさらに用いてもよい。
【0113】
一方、前記共役ジエン系重合体の製造方法は、前記活性重合体の少なくとも片末端を変性させるための変性反応ステップを含んでもよい。
【0114】
具体的に、前記製造方法は、重合後に活性重合体の少なくとも片末端を変性させるために、前記活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせる変性反応ステップを含んでもよい。
【0115】
この際、前記変性剤としては、活性重合体の少なくとも片末端に官能基を付与するかまたはカップリングにより分子量の上昇が可能な化合物が用いられてもよく、例えば、アザシクロプロパン基、ケトン基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、炭酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸金属塩、酸ハロゲン化物、尿素基、チオ尿素基、アミド基、チオアミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化イソシアノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、イミン基、およびM-Z結合(ただし、ここで、MはSn、Si、Ge、およびPの中から選択され、Zはハロゲン原子である)の中から選択された1種以上の官能基を含み、活性プロトンおよびオニウム塩を含まない化合物であってもよい。
【0116】
前記変性剤は、触媒組成物中のネオジム化合物1モルに対して0.5~20モルで用いてもよい。具体的には、前記変性剤は、触媒組成物中のネオジム化合物1モルに対して1~10モルで用いてもよい。また、前記変性反応は、0~90℃で1分~5時間行ってもよい。
【0117】
前記変性反応の終了後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液などを重合反応系に添加して重合反応を停止させてもよい。その後、水蒸気の供給により溶剤の分圧を下げるスチームストリッピングなどの脱溶媒処理や真空乾燥処理を経て共役ジエン系重合体を得ることができる。また、前記変性反応の結果として得られる反応生成物中には、前記変性共役ジエン系重合体とともに、変性されていない活性重合体が含まれてもよい。
【0118】
また、本発明の共役ジエン系重合体は、それを含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品に適用することができる。
【0119】
前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体を0.1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、100重量%以下、90重量%以下で含んでもよい。仮に前記共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満である場合、結果的に前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐摩耗性および耐亀裂性などの改善効果が微々たるものである。
【0120】
また、前記ゴム組成物は、前記共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的には、前記共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0121】
前記ゴム成分は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン重合体、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0122】
また、前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部~150重量部の充填剤を含んでもよく、前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、前記充填剤は、カーボンブラックであってもよい。
【0123】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限されないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準じて測定)が20m2/g~250m2/gであってもよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100g~200cc/100gであってもよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/g超過であると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、20m2/g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微々たるものである。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100g超過であると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、80cc/100g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微々たるものである。
【0124】
また、前記シリカは、特に制限されないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよい。具体的には、前記シリカは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も顕著な湿式シリカであってもよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/g~180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/g~200m2/gであってもよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であると、シリカによる補強性能が低下する恐れがあり、180m2/g超過であると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であると、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する恐れがあり、200m2/g超過であると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。
【0125】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性の改善のためにシランカップリング剤が共に用いられてもよい。
【0126】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。より具体的には、補強性の改善効果を考慮すると、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0127】
また、本発明に係るゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、これにより加硫剤をさらに含んでもよい。
【0128】
前記加硫剤は、具体的に硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1~10重量部で含まれてもよい。前記含量範囲で含まれる際に、加硫ゴム組成物の必要な弾性率および強度を確保できるとともに、低燃費性を得ることができる。
【0129】
また、本発明に係るゴム組成物は、前記成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0130】
前記加硫促進剤は、特に限定されず、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が用いられてもよい。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0131】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、より具体的には、引張強度および耐摩耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が用いられてもよい。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、前記含量で含まれる際に、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止すことができる。
【0132】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などが挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1~6重量部で用いられてもよい。
【0133】
本発明のゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得ることができ、また、成形加工後、加硫工程により、低発熱性であるとともに耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0134】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0135】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0136】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明しようとする。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0137】
触媒組成物の製造
製造例1
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdV(neodymium versatate)を添加し、第1アルキル化剤としてメチルアルミノキサン(MAO)、第2アルキル化剤としてジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ハロゲン化物としてジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、および1,3-ブタジエン(BD)をNdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:120:43:2~3:30のモル比となるように順次投入した後に-20℃で12時間混合し、触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は、-30~-20℃で、窒素条件下で24時間保管後に用いた。
【0138】
実施例1
撹拌器およびジャケットを備えた2器の80Lのステンレス反応器が直列に連結された重合反応器を用いて共役ジエン系重合体を製造した。
【0139】
第1反応器を85℃および0~3barに維持しつつ、第1反応器の上部を通してヘキサン(42.18kg/h)、1,3-ブタジエン(11.67kg/h)、前記製造例1の触媒組成物(触媒組成物中のNdV:0.025mmol/100g BD)、分子量調節剤としてDIBAH(0.079phm)を投入しつつ40分間重合を行い、重合転換率が80%以上である際に85℃が維持される第2反応器に移送させた後、15分間さらに重合した。
【0140】
その後、重合停止剤1.0gが含まれたヘキサン溶液および酸化防止剤2.0gが含まれたヘキサン溶液を添加して反応を終了させ、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、Hot Rollを用いて乾燥し、共役ジエン系重合体を製造した。
【0141】
実施例2~4、比較例1~5
重合条件を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様に共役ジエン系重合体を製造した。
【0142】
【0143】
実験例1
(1)ネオジム触媒の残留量(Nd)
共役ジエン系重合体0.08gをバイアルに入れ、濃硫酸2mLを加えた後、ホットプレートにおいて加熱して炭化させた。その後、加熱された状態で濃硝酸0.02gを入れ、溶液の色が淡黄色(pale yellow)になるまで、この過程を繰り返し行った。試料の高さが2mm程度残ると、加熱を中止し、常温に冷却した後、濃硝酸1mLを加え、過酸化水素0.02gを加えて分解させた。このように製造された試料に1000mg/kgの内部標準物Sc 200μLを入れ、超純水20mLで希釈した後、ICP-OES(Optima 8300DV)を用いて試料中のネオジムの含量を測定した。
【0144】
(2)GPC分析
共役ジエン系重合体を40℃の条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィーに積載し流した。この際、カラムは、ポリマーラボラトリーズ社(Polymer Laboratories社)の商品名PLgel Olexisカラム2本とPLgel mixed-Cカラム1本を組み合わせて用いた。また、新たに取り替えたカラムは、何れも混床(mixed bed)タイプのカラムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー標準物質としては、ポリスチレン(polystyrene)を用いた。
【0145】
重量平均分子量(Mw、g/mol)、数平均分子量(Mn、g/mol)、分子量分布(MWD)値を確認した。また、GPCソフトウェアとしてEMPOWER3を用いてlog(MW)vs Cumulative%を求め、この際、log(MW)=6のCumulative%で分子量1,000,000g/mol以上の重合体鎖の含量を計算した。
【0146】
(3)ムーニー粘度(MV)
各共役ジエン系重合体に対して、Monsanto社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件で、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)を測定した。この際に用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させ、トルクを印加しつつムーニー粘度を測定した。
【0147】
(4)β値(β-value)
β値(β-value)は、The Goodyear Tire & Rubber Companyで開発した測定法を用いて測定した。
【0148】
測定機器としては、Rubber Process Analyzer(RPA2000、AlphaTechnologies社)を用いた。具体的に、各重合体を100℃の条件でStrain 7%でFrequency sweepを行った。この際、Frequencyは、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000cpmに設定し、log(1/tanδ)vs log(frequency)の傾きをβ値として得た。
【0149】
【0150】
前記表2のように、本発明に係る実施例の共役ジエン系重合体は、ネオジム触媒の残留量、β値、分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の含量の何れも本発明で定義した範囲に該当した。
【0151】
一方、比較例1~5は、本発明で定義した数値範囲よりも過量のネオジム化合物を用い、比較例1~4は、第1反応器の温度もまた85℃未満であり、比較例4は、分子量調節剤を本発明の範囲から外れた少ない量で用いた。このような製造方法により共役ジエン系重合体を製造する場合、ネオジム触媒の残留量、β値、ムーニー粘度と対比して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の含量の何れも本発明の範囲を満たす共役ジエン系重合体を製造することができなかった。
【0152】
実験例2
前記実施例および比較例で製造された各共役ジエン系重合体を含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品の物性を比較分析するために、下記のようにゴム試験片を製造した。
【0153】
具体的に、前記各共役ジエン系重合体100重量部に、カーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部、およびステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合し、それぞれの一次配合物(CMB、compound master batch)を製造した。その後、前記各ゴム組成物に、硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部、および加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間50rpmで弱く混合した後、50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得られた加硫配合物を160℃で25分間加硫し、ゴム試験片(FMB、final master batch)を製造した。
【0154】
(1)加工性
一次配合物(CMB)およびゴム試験片(FMB)のムーニー粘度は、前記実験例1と同様の方法で測定した。各重合体(RP)のムーニー粘度とゴム試験片(FMB)のムーニー粘度との差(△MV、FMB-RP)で計算して示し、ムーニー粘度の差が小さいほど、加工性に優れることを示す。
【0155】
(2)加硫特性
MDR(moving die rheometer)を用いて150℃で50分間の加硫時、最小トルク(ML)、最大トルク(MH)、50%加硫するまでの所要時間(t50)、90%加硫するまでの所要時間(t90)、1%加硫時までの所要時間(ts1)、2%加硫時までの所要時間(ts2)を測定した。
【0156】
MH値は、その値が大きいほど架橋度が高いことを意味し、t値は、架橋速度と関連した要因であって、例えば、t90が小さいほど、架橋速度が速いことを意味する。
【0157】
(3)引張特性
ゴム組成物に対して、150℃でt90分加硫後、ASTM D412に準じて、300%伸長時のモジュラス(M-300、300% modulus、kg・f/cm2)、引張強度(T/S、tensile strength、kg・f/cm2)、伸び(elongation)を測定した。
【0158】
(4)粘弾性
TA社の動的機械分析器を用いた。ねじれモードで、周波数10Hz、各測定温度(50~70℃)で変形を変化させ、tanδ値を測定した。高温(50~70℃)でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、タイヤの低転がり抵抗性、すなわち、低燃費性に優れることを意味する。
【0159】
【0160】
前記表3に示されたように、本発明により製造された実施例の共役ジエン系重合体は、加工性だけでなく、引張特性および粘弾性特性の何れにも優れる。
【0161】
これに対し、本発明で定義したネオジム触媒の残留量、β値、ムーニー粘度と対比して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の含量を満たさない比較例の共役ジエン系重合体は、引張特性および粘弾性特性の何れも下がったことを確認した。
【0162】
このように、本発明によりネオジム触媒の残留量が少なく、特定範囲の分子量およびβ値を示す場合、共役ジエン系重合体の優れた加工性および配合物性が何れも実現されることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(c)の条件を全て満たすネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
(a)ICP(誘導結合プラズマ)で測定したネオジム触媒の残留量が50重量ppm未満であり、
(b)β値(β-value)が0.20未満であり、ここで、β値は、RPA(Rubber Process Analyzer)により100℃でtanδを測定した結果から得たlog(frequency)(x軸)-log(1/tanδ)(y軸)グラフの傾きを意味し、および
(c)下記式1を満たす。
[式1]
0.3X+4<Y<0.3X+6
前記式1中、
Xは、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)であり、
Yは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布曲線において、重合体鎖の全個数に対して分子量が1,000,000g/mol以上の重合体鎖の個数の割合(%)である。
【請求項2】
前記(a)条件において、
ネオジム触媒の残留量が20~45重量ppm未満である、請求項1に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記(b)条件において、
β値が0.160~0.199である、
請求項1または2に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記(c)条件において、
Xは40~50であり、Yは15以上である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記ネオジム触媒は、下記化学式1で表される化合物である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【化5】
前記化学式1中、
R
a~R
cは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、
ただし、R
a~R
cが全て同時に水素ではない。
【請求項6】
前記R
aは、炭素数4~12のアルキル基であり、
前記R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基である、請求項5に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項7】
重量平均分子量が500,000~1,200,000g/molである、
請求項1~6のいずれか一項に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項8】
分子量分布が1.5~3.5である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体。
【請求項9】
(S1)ネオジム化合物を含む触媒組成物および分子量調節剤の存在下で、85℃以上の第1反応器において重合転換率80%以上に共役ジエン系単量体を重合し、重合生成物を排出させるステップと、
(S2)前記重合生成物を第2反応器に移送して重合するステップと、を含み、
前記触媒組成物中のネオジム化合物は共役ジエン系単量体100gを基準として0.01~0.03mmolであり、分子量調節剤は0.01~0.20phmである、ネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1反応器において30~100分間重合する、請求項9に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記触媒組成物は、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体をさらに含む、
請求項9または10に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記触媒組成物に含まれたネオジム化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体のモル比は、1:(50~200):(30~70):(1~5):(10~50)である、請求項11に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、および2,4-ヘキサジエンからなる群から選択された1つ以上である、
請求項11または12に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載のネオジム触媒化共役ジエン系重合体を含むゴム組成物。
【国際調査報告】