(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 279/02 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
C08F279/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549179
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2021014752
(87)【国際公開番号】W WO2022092693
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141238
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ジュン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ファン・オ
【テーマコード(参考)】
4J026
【Fターム(参考)】
4J026AA17
4J026AA68
4J026BA05
4J026BA29
4J026BA50
4J026BB03
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA18
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB12
4J026DB13
4J026DB26
(57)【要約】
本発明は、充填剤親和性に優れた変性共役ジエン系重合体およびその製造方法に関し、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖と、オリゴマー由来の単位を含み、前記第1鎖にグラフト結合された1以上のグラフト鎖と、を含み、前記オリゴマー由来の単位はラジカル反応性官能基由来の残基を含み、数学式1に定義される分子量分布増加率が20%以下である、変性共役ジエン系重合体およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖と、
オリゴマー由来の単位を含み、前記第1鎖にグラフト結合された1以上のグラフト鎖と、を含み、
前記オリゴマー由来の単位はラジカル反応性官能基由来の残基を含み、
下記数学式1に定義される分子量分布増加率が20%以下である、変性共役ジエン系重合体。
[数学式1]
分子量分布増加率(%)=[(PDI
1/PDI
2)×100]-100
前記数学式1中、
PDI
1は、変性共役ジエン系重合体の分子量分布であり、PDI
2は、第1鎖の分子量分布である。
【請求項2】
前記分子量分布増加率が8%~15%である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記ラジカル反応性官能基は、硫黄-含有官能基または酸素-含有官能基である、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記オリゴマーは、アミノ(メタ)アクリレート系単量体由来の繰り返し単位、および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記オリゴマーは、重量平均分子量が350g/mol以上20,000g/mol以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
前記オリゴマーは、下記化学式1で表される化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化1】
前記化学式1中、
R
1、R
2、およびR
6は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、
R
3は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、
R
4およびR
5は、互いに独立して、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、
aおよびbは、互いに独立して、1~200の整数である。
【請求項7】
前記化学式1中、
R
1およびR
2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
R
3は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
4およびR
5は、互いに独立して、非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、 R
6は、水素原子であり、
aおよびbは、互いに独立して、2~50の整数である、請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項8】
下記数学式2に定義されるムーニー粘度増加率が55%以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
[数学式2]
ムーニー粘度増加率(%)=[(MV
1/MV
2)×100]-100
前記数学式2中、
MV
1は、100℃で測定された変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度であり、MV
2は、100℃で測定された第1鎖のムーニー粘度である。
【請求項9】
前記第1鎖は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項10】
前記第1鎖は、少なくとも片末端に変性剤由来の官能基をさらに含み、
前記変性剤は、アルコキシシラン系化合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項11】
100℃で測定されたムーニー粘度が50~150である、請求項1から10のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項12】
ラジカル開始剤の存在下で、第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させるステップを含み、
前記第1重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖を含み、
前記グラフト反応は、ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して行い、この際、前記ラジカル開始剤の総使用量は、第1重合体100重量部に対して0.1重量部~1.0重量部である、請求項1から11のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記オリゴマーは、下記化学式1で表される化合物である、請求項12に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化2】
前記化学式1中、
R
1、R
2、およびR
6は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、
R
3は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、
R
4およびR
5は、互いに独立して、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、
aおよびbは、互いに独立して、1~200の整数である。
【請求項14】
前記オリゴマーは、第1重合体100重量部に対して1重量部~50重量部で用いる、請求項12または13に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項15】
前記第1重合体は、変性剤由来の官能基をさらに含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月28日付けの韓国特許出願第10-2020-0141238号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、充填剤親和性に優れた変性共役ジエン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐摩耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性に代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるためには、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられる。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、またはtanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい長所は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などにより分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であり、鎖末端の結合や変性により鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられる。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させ、走行抵抗および制動力などのタイヤに求められる物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させるか、または変性させて末端に官能基を導入する技術が用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、重合体の鎖末端に官能基を導入させるための変性剤としては、充填剤の分散性および反応性を極大化するために、分子内にアルコキシシラン基とアミン基を同時に含むアミノアルコキシシラン系変性剤を適用する技術が広く知られている。しかし、変性剤中にアミン基の数が多くなると、重合体の製造に用いられる炭化水素溶媒に対する溶解度が下がり、そこで、変性反応が容易に行われ難いという問題がある。また、重合体の鎖末端に官能基を過量導入することはできるが、この場合、走行抵抗性の改善効果が微々たるものであり、鎖中に官能基を導入させる場合にも、充填剤との相互作用が十分に起こらないため、走行抵抗性の改善効果がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、充填剤親和性官能基を含むオリゴマーに由来した単位を含むグラフト鎖が共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖にグラフト結合されており、充填剤親和性に優れた変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させるステップを含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖と、オリゴマー由来の単位を含み、前記第1鎖にグラフト結合された1以上のグラフト鎖と、を含み、前記オリゴマー由来の単位はラジカル反応性官能基由来の残基を含み、下記数学式1に定義される分子量分布増加率が20%以下である、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0012】
[数学式1]
分子量分布増加率(%)=[(PDI1/PDI2)×100]-100
前記数学式1中、
PDI1は、変性共役ジエン系重合体の分子量分布であり、PDI2は、第1鎖の分子量分布である。
【0013】
また、本発明は、ラジカル開始剤の存在下で第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させるステップを含み、前記第1重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖を含み、前記グラフト反応は、ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して行われ、この際、前記ラジカル開始剤の総使用量は、第1重合体100重量部に対して0.1重量部~1.0重量部である、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、分子量分布の減少した増加率を有しながらも、オリゴマー由来の単位を含むグラフト鎖が共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖にグラフト結合されていることで、前記オリゴマーに由来した官能基を重合体中に含むことができ、それにより、前記重合体の充填剤親和性に優れることができる。
【0015】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体の製造方法は、ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させるステップを含むことで、分子量分布の増加率を適宜調節しながらも、前記オリゴマー由来の単位を含むグラフト鎖を前記第1鎖にグラフト結合させ、充填剤親和性に優れた変性共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
定義
本発明において、用語「鎖(chain)」は、1つ以上の単量体が重合反応して単量体由来の単位が繰り返し連結されているものを意味し、「重合体(polymer)」は、幾つかの前記鎖が集まっている集合体を意味し得る。
【0018】
本発明において、用語「第1鎖」は、重合体の骨格をなす幹分子鎖を意味し、「グラフト鎖」は、前記第1鎖にグラフト結合され、側鎖(side chain)のように付いている分子鎖を意味し得る。
【0019】
本発明において、用語「グラフト結合」は、グラフト反応により第1鎖にグラフト鎖がグラフトされた状態を意味し、「グラフト反応」は、ラジカルグラフト反応によりラジカル開始剤のラジカルによってオリゴマーの末端ラジカル反応性官能基から水素原子が抜けて第1鎖にグラフトされる反応現象を意味し得る。
【0020】
本発明において、用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されたものを意味し得、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合には、前記官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて1個または2個以上の複数の置換基が存在してもよく、複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0021】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基;イソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基;並びに環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1個または2個以上含む環状の不飽和炭化水素を何れも含む意味であり得る。
【0022】
本発明において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
本発明において、用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0023】
本発明において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1個の環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2個以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を何れも含む意味であり得る。
【0024】
本発明において、用語「由来の単位」、「由来の繰り返し単位」、および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0025】
測定方法および条件
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「数平均分子量(Mn)」、および「分子量分布(MWD)」は、GPC(Gel permeation chromatography)分析により測定し、分子量分布曲線を確認することで測定したものである。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて行い、GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を混ぜて製造する。
【0026】
本明細書において、「ムーニー粘度(MV)」は、MV-2000(ALPHA Technologies社製)を用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定する。
【0027】
変性共役ジエン系重合体
本発明は、充填剤との親和性に優れ、加工性、引張特性、および粘弾性特性が改善された変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖と、オリゴマー由来の単位を含み、前記第1鎖にグラフト結合された1以上のグラフト鎖と、を含み、前記オリゴマー由来の単位はラジカル反応性官能基由来の残基を含み、下記数学式1に定義される分子量分布増加率が20%以下であることを特徴とする。
【0029】
[数学式1]
分子量分布増加率(%)=[(PDI1/PDI2)×100]-100
前記数学式1中、
PDI1は、変性共役ジエン系重合体の分子量分布であり、PDI2は、第1鎖の分子量分布である。
【0030】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む共役ジエン系重合体と、ラジカル反応性官能基を含むオリゴマーとをグラフト反応させるステップを含む、後述の製造方法により製造されたものであって、これにより、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖に、側鎖として前記オリゴマー由来の単位を含むグラフト鎖が1以上結合されているグラフト共重合体構造を有してもよい。
【0031】
前記オリゴマーは、ラジカル反応性官能基を含む化合物であって、具体的に、前記ラジカル反応性官能基は、ラジカル開始剤により第1重合体と反応可能な官能基であって、例えば、硫黄-含有官能基、または酸素-含有官能基であってもよく、前記硫黄-含有官能基は、チオール基であってもよく、前記酸素-含有官能基は、アルコール基(-OH)であってもよい。
【0032】
また、前記ラジカル反応性官能基は、ラジカル反応の開始から反応が起こることができる官能基であれば、特に制限されないが、好ましくは、前記ラジカル反応性官能基は、硫黄-含有官能基であってもよく、より具体的には、チオール基であってもよい。
【0033】
また、前記オリゴマーは、片末端にはチオール基を含み、他の片末端にはシアノ基を含んでもよく、具体的には、分子内にアミノ(メタ)アクリレート系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含み、両末端にそれぞれシアノ基とチオール基を含んでもよい。この場合、前記オリゴマーは、ラジカル開始剤により、前記チオール基から水素原子が抜け、第1鎖にグラフト結合されてもよい。
【0034】
ここで、前記アミノ(メタ)アクリレート系単量体は、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(dimethylamino)ethyl methacrylate)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(3-(dimethylamino)propyl methacrylate)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(diehtylamino)ethyl methacrylate)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0035】
また、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0036】
また、前記オリゴマーは、重量平均分子量が350g/mol以上20,000g/mol以下、具体的には、500g/mol以上15,000g/mol以下、または1,000g/mol以上10,000g/mol以下であってもよく、この範囲内でこれを含む重合体の充填剤との親和性を容易に改善させることができる。
【0037】
他の一例として、前記オリゴマーは、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0038】
【0039】
前記化学式1中、
R1、R2、およびR6は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、R3は、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、R4およびR5は、互いに独立して、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~30のアリール基であり、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択された1種以上であり、aおよびbは、互いに独立して、1~200の整数である。
【0040】
より具体的に、前記化学式1中、R1およびR2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R3は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R4およびR5は、互いに独立して、非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、R6は、水素原子であり、aおよびbは、互いに独立して、2~50の整数であってもよい。
【0041】
前記化学式1中、aおよびbは、それぞれオリゴマー中のアミノ(メタ)アクリレート系単量体由来の繰り返し単位の数および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位の数を示すものであって、前記aおよびbは、前述したオリゴマーの重量平均分子量範囲を満たす範囲内で適宜調節された数を有してもよい。
【0042】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖と、オリゴマー由来の単位を含み、前記第1鎖にグラフト結合された1以上のグラフト鎖と、を含んでもよく、ここで、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味し、オリゴマー由来の単位は、オリゴマーに由来した単位を意味し得る。
【0043】
また、本発明の他の一実施形態によると、前記第1鎖は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位、およびオリゴマー由来の単位を含む共重合体であってもよい。
【0044】
一方、前記第1鎖が芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体である場合、共重合体の骨格をなす第1鎖は、ランダム共重合体鎖であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れるという効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0046】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0047】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と共に、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来した繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよい。この範囲内にて、ゲルの生成を防止するという効果がある。
【0048】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、前述したように、数学式1に定義される分子量分布増加率が20%以下、具体的には、前記数学式1に定義される分子量分布増加率が8%~15%、または10%~14%であってもよい。
【0049】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、下記数学式2に定義されるムーニー粘度増加率が55%以下、具体的には10%~50%であってもよい。
【0050】
[数学式2]
ムーニー粘度増加率(%)=[(MV1/MV2)×100]-100
前記数学式2中、
MV1は、100℃で測定された変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度であり、MV2は、100℃で測定された第1鎖のムーニー粘度である。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖に、側鎖として前記オリゴマー由来の単位を含むグラフト鎖がグラフト結合されているグラフト共重合体構造を有し、この際、前記数学式1に定義される分子量分布増加率、または前記数学式1に定義される分子量分布増加率および数学式2に定義されるムーニー粘度増加率を満たすことで、分子量分布の過度な増加およびムーニー粘度の過度な増加が抑制され、加工性および転がり抵抗特性に優れることができる。
【0052】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000g/mol~2,000,000g/mol、10,000g/mol~1,000,000g/mol、または100,000g/mol~800,000g/molであってもよく、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~2,000,000g/molであってもよく、ピーク平均分子量(Mp)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。この範囲内にて、転がり抵抗およびウェットスキッド抵抗性に優れるという効果がある。また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD;Mw/Mn)が1.0以上~3.0以下、または1.1以上~2.5以下、または1.1以上2.0以下であってもよい。この範囲内にて、引張特性および粘弾性特性に優れ、各物性間のバランスが優れるという効果がある。
【0053】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が100℃で50~150、または55~145であってもよい。この範囲内にて、加工性および生産性に優れるという効果がある。
【0054】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではなく、1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0055】
一方、また他の例として、前記第1鎖は、少なくとも片末端に変性剤由来の官能基をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、変性剤由来の官能基、およびオリゴマー由来の単位を含んでもよく、前記第1鎖が芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む場合には、変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位、および変性剤由来の官能基を含む第1鎖、並びにオリゴマー由来の単位を含む第2重合体鎖を含む共重合体であってもよい。前記変性剤は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1鎖の少なくとも片末端を変性させるための変性剤であってもよく、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特にシリカ系充填剤との親和性に優れており、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との間の相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0056】
例示的に、前記変性剤は、アザシクロプロパン基、ケトン基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、炭酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸金属塩、酸ハロゲン化物、尿素基、チオ尿素基、アミド基、チオアミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化イソシアノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、イミン基、アルコキシシリル基、アミノアルコキシシリル基、およびM-Z結合(ただし、ここで、MはSn、Si、Ge、およびPの中から選択され、Zはハロゲン原子である)の中から選択された1種以上の官能基を含み、活性プロトンおよびオニウム塩を含まない化合物であってもよい。
【0057】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、ラジカル開始剤の存在下で第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させるステップを含み、前記第1重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1重合体鎖を含み、前記グラフト反応は、ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して行われ、この際、前記ラジカル開始剤の総使用量は、第1重合体100重量部に対して0.1重量部~1.0重量部であることを特徴とする。
前記オリゴマーの具体的な物質に関する説明は前述したとおりである。
【0058】
前記グラフト反応ステップは、第1重合体とオリゴマーをグラフト反応させ、第1重合体中の第1鎖に前記オリゴマー由来の単位を含むグラフト鎖をグラフト結合させることで、分岐構造の変性された重合体鎖を製造するためのステップであって、ラジカル開始剤の存在下で、前記第1重合体とオリゴマーをラジカルグラフト反応させて行ってもよい。
前記オリゴマーは、第1重合体100重量部に対して1重量部~50重量部、具体的には、1重量部~40重量部で用いてもよい。
【0059】
前記ラジカル開始剤は、特に制限されないが、例えば、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(2,2-azobis(isobutyronitrile)、AIBN)、過酸化ジクミル(dicumyl peroxide、DCPO)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(di-t-butyl peroxide、DTBT)、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide、BPO)、過酸化ラウロイル(lauroyl peroxide、LPO)、過硫酸カリウム(potassium persulfate)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0060】
また、前記グラフト反応は、前記ラジカル開始剤を少なくとも2回分割投入して行ってもよく、この際、ラジカル開始剤の総使用量は、第1重合体100重量部に対して0.1重量部~2.0重量部、または0.3重量部~1.5重量部であってもよい。この場合、反応中の重合体鎖ラジカルの数を適宜調節して第1鎖間のカップリング反応などの副反応を減少させ、分子量分布増加率が低く調節されるとともに、ムーニー粘度増加率が低く調節されることができ、前述した分子量分布増加率および/またはムーニー粘度増加率を有する変性共役ジエン系重合体が製造されることができる。
【0061】
具体的に、前記(S2)ステップは、第1ラジカル開始剤の存在下で、第1鎖とオリゴマーのグラフト反応を開始し、開始後30分~2時間の時点に第2ラジカル開始剤を投入して反応を行い続けてもよく、ここで、前記第1ラジカル開始剤と第2ラジカル開始剤は、同一の物質であるかまたは異なる物質であってもよく、第2ラジカル開始剤は、前記時点に1回または少なくとも2回に分割して投入してもよい。
【0062】
また、前記第2ラジカル開始剤は、第1ラジカル開始剤1モルに対して0.1モル~1.5モルの割合で用いられてもよい。
また、前記(S2)ステップのグラフト反応は、40℃~120℃の温度で1時間~5時間行ってもよく、この場合にグラフト反応が容易に行われることができる。
【0063】
一方、本発明において、前記オリゴマーは、リビングラジカル重合、例えば、可逆的付加開裂連鎖移動重合(reversible addition-fragmentation chain-transfer polymerizaition、RAFT)により製造してもよい。
【0064】
具体的に、前記オリゴマーは、ラジカル開始剤および連鎖移動剤の存在下で、アミノ(メタ)アクリレート系単量体と芳香族ビニル系単量体をリビングラジカル重合反応させる合成ステップ、およびチオール基の生成ステップを含む製造方法により製造されてもよい。
【0065】
例示的に、前記オリゴマーは、下記反応式1のステップにより製造されてもよい。
【0066】
【0067】
前記反応式1中、化学式2はアミノ(メタ)アクリレート系単量体を、化学式3は芳香族ビニル系単量体を、RIはラジカル開始剤を、CTAは連鎖移動剤を示し、R1~R6は前述したとおりである。
【0068】
前記反応式1のように、前記オリゴマーは、ラジカル開始剤(RI)および連鎖移動剤(CTA)の存在下で、アミノ(メタ)アクリレート系単量体と芳香族ビニル系単量体の重合反応を行って末端に連鎖移動剤由来の単位が結合されているオリゴマー中間体4を得、前記連鎖移動剤由来の単位を除去し、チオール基を生成するためのチオール基の生成ステップを行って製造してもよい。
【0069】
ここで、前記ラジカル開始剤としては、前述したようなものを用いてもよい。
また、前記連鎖移動剤は、ジチオエステル系、トリチオカーボネート系、ジチオカルバメート系、およびキサンタン系の通常の連鎖移動剤を適宜選択して用いてもよく、例えば、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(4-cyano-4-[(dodecylsulfanylthiocarbonyl)sulfanyl]pentanoic acid、CPDA)、S-ドデシル-S’-(α,α’-ジメチル-α’’-酢酸)トリチオカーボネート(S-Dodecyl-S’-(α,α’-dimethyl-α’’-acetic acid)trithiocarbonate、DDMAT)、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート(2-cyano-2-propyl benzodithioate、CPDB)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0070】
一方、前記チオール基の生成ステップは、末端に存在する連鎖移動剤由来の単位をオリゴマー中間体から除去し、チオール基を生成するためのものであって、通常知られたラジカル開始剤を用いた反応、熱分解反応、およびアミン化反応中に用いられた連鎖移動剤に応じて適宜選択して行ってもよい。
【0071】
具体的に、前記チオール基の生成ステップは、前記反応式1のようにアミン類物質を用いたアミノ分解反応により行ってもよい。この際、アミノ分解反応は、少量のアミン類物質を用いるだけで連鎖移動剤由来の単位をオリゴマー前駆体から除去することができ、用いられた連鎖移動剤の種類に関係なく適用することができる。
【0072】
一方、前記第1重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む共役ジエン系重合体であって、通常の方法により共役ジエン系単量体を重合反応させて製造するか、または市販中の重合体を用いてもよい。また、前記共役ジエン系重合体は、必要に応じて、変性剤由来の官能基をさらに含んでもよい。
【0073】
例示的に、前記共役ジエン系重合体を製造して用いる場合、前記共役ジエン系重合体は、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物の存在下で、共役ジエン系単量体または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体を重合して製造してもよく、前記共役ジエン系重合体が変性剤由来の官能基を含む場合には、前記重合以後に変性剤と変性反応またはカップリング反応させるステップをさらに行って製造してもよい。
【0074】
ここで、前記共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、および変性剤は、前述したとおりであり、前記炭化水素溶媒は、特に制限されないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0075】
また、前記有機リチウム化合物は、特に制限されないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0076】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。ただし、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0077】
製造例1
500mlの丸底フラスコに、0.2Mの2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)28mlおよび2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート(2-cyano-2-propyl benzodithioate、CPDB)5gを入れ、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート21.7g、スチレン84.9g、およびトルエン95mlを添加した後、80℃で30時間反応させ、それを溶媒に沈殿して精製した。精製された固体を再びトルエンに溶かした後、常温(25℃)でヘキシルアミン33gおよび還元剤2.8gを添加し、30分間撹拌した。その後、冷たいヘキサンに沈殿させ、下記化学式1-1で表されるオリゴマーを製造した。1H-NMRにより、オリゴマーが合成されたことを確認した。
【0078】
【化3】
前記化学式1-1中、aは23であり、bは3である。
【0079】
製造例2
前記製造例1において、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを43.3gで、スチレンを63.7gで添加したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で、下記化学式1-2で表されるオリゴマーを製造した。1H-NMRにより、オリゴマーが合成されたことを確認した。
【0080】
【化4】
前記化学式1-2中、aは18であり、bは8である。
【0081】
実施例1
(1)第1重合体の製造
20Lのオートクレーブ反応器にn-ヘキサン5kg、スチレン211g、1,3-ブタジエン769g、n-ブチルリチウム、および極性添加剤として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン0.98gを投入した反応器の内部温度を60℃に合わせ、断熱昇温反応を行った([DTP]:[act.Li]=1.5:1モル比)。30分余り経過後、1,3-ブタジエン20gを投入して重合体の末端をブタジエンでキャッピング(capping)し、エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解している溶液33gを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0082】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例1で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)330gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル17.6gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0083】
実施例2
(1)第1重合体の製造
実施例1の(1)と同様の方法で第1重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0084】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例2で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)330gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル17.6gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0085】
実施例3
(1)第1重合体の製造
20Lのオートクレーブ反応器にn-ヘキサン4kg、スチレン162g、1,3-ブタジエン595g、n-ブチルリチウム、および極性添加剤として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン0.98gを投入した反応器の内部温度を60℃に合わせ、断熱昇温反応を行った([DTP]:[act.Li]=1.5:1モル比)。30分余り経過後、1,3-ブタジエン20gを投入して重合体の末端をブタジエンでキャッピング(capping)し、エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解している溶液33gを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0086】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例1で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)550gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル17.6gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0087】
実施例4
(1)第1重合体の製造
実施例3の(1)と同様の方法で第1重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0088】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例2で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)550gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル35.2gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル17.6gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0089】
実施例5
(1)第1重合体の製造
前記実施例1の(1)と同様の方法で第1重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0090】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例1で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)330gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル70.4gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル70.4gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル35.2gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0091】
比較例1
実施例1の(1)で製造された第1重合体を比較例として用いた。
【0092】
比較例2
実施例3の(1)で製造された第1重合体を比較例として用いた。
【0093】
比較例3
(1)第1重合体の製造
前記実施例1の(1)と同様の方法で第1重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0094】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例1で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)330gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル88gを一括投入して3時間反応させた。その後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0095】
比較例4
(1)第1重合体の製造
前記実施例1の(1)と同様の方法で第1重合体を製造した。一方、製造された第1重合体の一部を採取し、第1鎖分析用試料として用いた。
【0096】
(2)変性スチレン-ブタジエン共重合体の製造
20Lの反応器に、上記の(1)で製造された第1重合体であるスチレン-ブタジエン共重合体440g、n-ヘキサン2.49kg、テトラヒドロフラン5.8kgを投入し、窒素雰囲気でパージした。その後、製造例1で製造されたオリゴマーが溶解された溶液(20wt% in テトラヒドロフラン)330gを投入した後、反応器の内部温度を90℃に合わせ、20分余り経過後、2.5%の過酸化ラウロイル70.4gを投入して反応を始めた。反応から1時間経過後、2.5%の過酸化ラウロイル70.4gを投入して反応を行い続け、1時間経過後、2.56%の過酸化ラウロイル70.4gをさらに投入して反応を行い続けた。1時間経過後、少量のエタノールを添加した後にアセトンに沈殿し、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0097】
実験例1
前記実施例、比較例で製造された各重合体に対して、重量平均分子量(Mw、×103g/mol)、数平均分子量(Mn、×103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、分子量分布増加率、ムーニー粘度(MV)、およびムーニー粘度増加率をそれぞれ測定した。結果を下記表1および表2に示した。
【0098】
1)スチレン単位およびビニルの含量(重量%)
前記各重合体中のスチレン単位(SM)およびビニル(Vinyl)の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0099】
NMRの測定時、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとしてスチレン単位およびビニルの含量を計算した。
【0100】
2)重量平均分子量(Mw、×103g/mol)、数平均分子量(Mn、×103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、および分子量分布増加率
GPC(Gel permeation Chromatography)分析により前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて行った。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混ぜて製造した。
【0101】
また、分子量分布増加率は、実施例1~5、比較例3、および比較例4から採取した第1鎖分析用試料を用いて前記GPC分析により第1鎖の分子量分布を測定し、下記数学式1により計算した。
【0102】
[数学式1]
分子量分布増加率(%)=[(PDI1/PDI2)×100]-100
前記数学式1中、
PDI1は、変性共役ジエン系重合体の分子量分布であり、PDI2は、第1鎖の分子量分布である。
【0103】
3)ムーニー粘度およびムーニー粘度増加率
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社)を用いて、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0104】
また、ムーニー粘度増加率は、実施例1~5、比較例3、および比較例4から採取した第1鎖分析用試料を用いて前記ムーニー粘度分析により第1鎖のムーニー粘度を測定し、下記数学式2により計算した。
【0105】
[数学式2]
ムーニー粘度増加率(%)=[(MV1/MV2)×100]-100
前記数学式2中、
MV1は、100℃で測定された変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度であり、MV2は、100℃で測定された第1鎖のムーニー粘度である。
【0106】
【0107】
【0108】
前記表1および表2に示されたように、実施例1~実施例5は、分子量分布増加率が20%以下であり、ムーニー粘度増加率が55%以下であることを確認した。これに対し、比較例3および比較例4は、分子量分布増加率が20%を超過し、ムーニー粘度増加率も55%を超過した。この際、比較例3および比較例4は、重合体の製造時、ラジカル開始剤を分割投入していないか、または分割投入するものの使用量が本発明にて提示する範囲から外れた量を用いたものである。
【0109】
実験例2
前記実施例、比較例で製造された各重合体を含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品の物性を比較分析するために引張特性、粘弾性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表4および表5に示した。
【0110】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性または未変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとし、下記表3に示した配合条件で配合した。表3中の原料の含量は、原料ゴムの100重量部基準に対する各重量部である。
【0111】
【0112】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練においては、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練においては、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に一次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して二次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0113】
2)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度および200%伸長時の引張応力(200%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machine 4204(Instron社)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。一方、下記表4および表5における引張強度および200%モジュラスは、比較例1の結果値を基準としてIndex(%)で示したものであって、数値が高いほど優れることを示す。
【0114】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析器(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。測定結果値において、低温0℃でのtan値が高いほど、ウェットスキッド抵抗性に優れ、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、転がり抵抗性(燃費性)に優れることを示すが、表4および表5における結果値は、比較例1の結果値を基準としてIndex(%)で示したものであるため、数値が高いほど優れることを示す。
【0115】
【0116】
【0117】
前記表4および表5に示されたように、実施例1~実施例5は、比較例1および比較例2と比べて、同等レベルの引張強度を示し、且つ、200%モジュラス、粘弾性特性が大幅に向上し、比較例3および比較例4と比べても、同等レベルの引張強度を示し、且つ、200%モジュラスおよび/または粘弾性特性が改善された。
【0118】
前記表1、表2、表3、および表4の結果から、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、ラジカル開始剤を特定の範囲で用い、且つ、少なくとも2回分割投入する製造方法により製造されることで、特定の範囲に調節された分子量分布増加率を有し、且つ、オリゴマーに由来した官能基を重合体中に含むことができ、このような特性により、ゴム組成物に適用されてゴム組成物の引張特性および粘弾性特性を改善可能であることを確認した。
【国際調査報告】