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特表2023-514020熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
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  • 特表-熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20230329BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20230329BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20230329BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L33/10
C08J5/00 CET
C08J3/20 Z CEY
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539255
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2021019010
(87)【国際公開番号】W WO2022158720
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0009292
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダウン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・ジョ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA18
4F070AA32
4F070AA34
4F070AB08
4F070AB09
4F070AB11
4F070AE03
4F070AE09
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4F071AA22X
4F071AA33
4F071AA33X
4F071AA34X
4F071AA81
4F071AF15
4F071AF17
4F071AF23Y
4F071AF25
4F071AF30Y
4F071AF32Y
4F071AF54Y
4F071AH03
4F071AH07
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002BG06X
4J002BN12W
4J002FA08W
4J002FD040
4J002FD060
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD180
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
本記載は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と;(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%と;を含み、数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
本発明によれば、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、
(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含み、
下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【請求項2】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、重量平均分子量が50,000~150,000g/molであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、メタクリレート単量体を55重量%以上含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、メチルメタクリレート65~85重量%、スチレン5~30重量%及びアクリロニトリル5~10重量%を含んでなることを特徴とする、請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)グラフト共重合体は、(a-1)アルキルアクリレートゴム20~60重量%、及び(a-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体40~80重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)グラフト共重合体は、下記数式3で算出したグラフト率が60%以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
(前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量(g)からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム成分の重量(g)である。)
【請求項8】
熱安定剤、光安定剤、染料、顔料、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定した全光線透過率(total light transmittance;Tt)が75%以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定したヘイズが11%以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
ASTM D2457方法によって入射角45°で測定した光沢度が120以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
ガードナー衝撃試験機(Gardner impact tester)を用いて1kg重量の錘を50cmの高さから厚さ0.15mm×横5cm×縦5cmの押出フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃を受けた衝撃部で衝撃前後のヘイズをASTM D1003に準拠して測定したヘイズ差(△haze)が10以下であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、
下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年01月22日付の韓国特許出願第10-2021-0009292号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐老化性、耐化学性、剛性、耐衝撃性及び加工性をすべて備えており、用途が多様であるため、自動車、雑貨及び建材分野などで広範囲に使用される。
【0004】
一方、市場で感性品質に対するニーズとそのレベルが高くなるにつれ、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、鉄板などの基材をASA樹脂で仕上げ処理することによって高級な外観、優れた着色性及び耐候性を実現しようとする研究が進められている。
【0005】
しかし、ASA樹脂の特性上、常温で仕上げ処理時に、基材の仕上げ処理過程で製品の形状に応じて裁断、折り曲げ、成形などの加工工程において製品の表面で白化現象が発生してしまい、本来の色を失って美観を害するようになる。このような現象は、ASA樹脂の内部に存在するクラックによる空隙により発生するため、これを改善するために、既存にはゴム含量を高めるなど、樹脂の軟質化を通じて解決しようとしたが、既存のASA樹脂と異なる機械的物性により、用途に制限があった。
【0006】
そのため、従来のASA樹脂と類似の機械的物性及び表面硬度を有しながらも、透明性及び着色性に優れ、かつ白化現象が発生しない熱可塑性樹脂組成物の開発が要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7-033470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本記載は、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本記載は、前記の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本記載は、前記の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供することを目的とする。
【0011】
本記載の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本記載によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と;(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%と;を含み、下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【0014】
また、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と;(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%と;を含み、前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、重量平均分子量が50,000~150,000g/molであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
また、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と;(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%と;を含み、ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定した全光線透過率(total light transmittance;Tt)が75%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0016】
また、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0017】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【0018】
また、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、重量平均分子量が50,000~150,000g/molであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0019】
また、本記載は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出するステップを含み、ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定した全光線透過率(total light transmittance:Tt)が75%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0020】
また、本記載は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1、2、4、5及び比較例2~5で製造された0.15Tの押出シート試験片を手で折り畳み、曲げ面で白化現象を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、所定の平均粒径を有するゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、ポリメタクリレート樹脂とを所定の比率で配合し、これに、アルキルアクリレートカバレッジ値を所定の範囲内に調整する場合、従来のASA系樹脂と比較して機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性が改善され、白化現象が発生しない無白化特性に優れることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0025】
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と;(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%と;を含み、下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする。このような場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れる。
【0026】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【0027】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0028】
(A)アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記(A)グラフト共重合体のアルキルアクリレートゴムは、一例として平均粒径が50~120nm、好ましくは60~120nm、より一層好ましくは80~110nmであってもよく、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた衝撃強度、耐光性及び光沢性を付与することができる。
【0029】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、総固形分含量35~50重量%であるラテックス0.1gを蒸留水で1,000~5,000倍希釈して準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(Dynamic light scattering)/インテンシティ(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μsecとして測定することができる。
【0030】
前記(A)グラフト共重合体は、(A)及び(B)成分の総重量に対して、一例として35~85重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~80重量%、さらに好ましくは60~80重量%、より一層好ましくは60~75重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0031】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として、(a-1)アルキルアクリレートゴム20~60重量%及び(a-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体40~80重量%を含んでなり、好ましくは、(a-1)アルキルアクリレートゴム30~50重量%及び(a-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~70重量%を含んでなり、より好ましくは、(a-1)アルキルアクリレートゴム40~50重量%及び(a-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~60重量%を含んでなり、この範囲内で、機械的物性、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0032】
前記アルキルアクリレートゴムは、一例として、アルキルアクリレートを乳化重合して製造してもよく、具体的な一例として、アルキルアクリレート、乳化剤、開始剤、グラフト剤、架橋剤、電解質及び溶媒を混合して乳化重合して製造してもよく、この場合、グラフト効率に優れるため、耐衝撃性などの物性に優れるという効果がある。
【0033】
本記載において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0034】
前記(a-1)アルキルアクリレートゴムは、一例として、芳香族ビニル化合物をさらに含むことができ、この場合、耐化学性及び耐衝撃性がさらに優れるという効果がある。前記(a-1)アルキルアクリレートゴム中に含まれる芳香族ビニル化合物の含量は、一例として前記アクリレートゴムの総100重量%に対して0.1~35重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは7~30重量%、さらに好ましくは10~20重量%であってもよく、この範囲内で、物性の低下なしに、機械的物性、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0035】
前記(a-2)共重合体は、一例として、アルキルアクリレートをさらに含んでなってもよく、この場合、耐衝撃性、耐候性、加工性及び無白化特性の物性バランスに優れるという効果がある。
【0036】
前記(a-2)共重合体は、一例として、(a-2)共重合体の総100重量%に対して芳香族ビニル化合物55~85重量%、ビニルシアン化合物10~30重量%及びアルキルアクリレート0.1~35重量%を含んでなるものであり、好ましくは、芳香族ビニル化合物60~80重量%、ビニルシアン化合物15~25重量%及びアルキルアクリレート1~25重量%を含んでなるものであり、より好ましくは、芳香族ビニル化合物65~75重量%、ビニルシアン化合物15~22重量%及びアルキルアクリレート5~20重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び耐候性がさらに優れるという効果がある。
【0037】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として乳化重合により製造されてもよく、この場合、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0038】
前記アルキルアクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルアクリレートであってもよく、好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート及びラウリルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートであってもよく、さらに好ましくは、ブチルアクリレート、またはエチルヘキシルアクリレートであってもよく、より一層好ましくは、ブチルアクリレートであってもよい。
【0039】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、スチレン及びα-メチルスチレンからなる群から選択された1種以上、さらに好ましくはスチレンであってもよく、この場合、流動性が適切であるため加工性に優れ、耐衝撃性などの機械的物性に優れるという効果がある。
【0040】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0041】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0042】
前記(A)グラフト共重合体は、一例として、下記数式3で算出したグラフト率が60~150%、好ましくは62~140%、より好ましくは65~130%、さらに好ましくは65~100%であってもよく、この範囲内で、光沢性、着色性及び透明度に優れるという利点がある。
【0043】
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
(前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量(g)からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム成分の重量(g)である。)
【0044】
前記不溶性物質(gel)の重量(g)は、(A)グラフト共重合体の乾燥粉末0.5gをアセトン50mlに加えた後、常温で12時間撹拌し、これを遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して12時間乾燥させた後に測定した重量であり、ゴム質の重量(g)は、(A)グラフト共重合体の乾燥粉末0.5g中に投入された理論上のゴム成分の重量(g)である。
【0045】
具体的な測定例として、前記不溶性物質(gel)の重量(g)は、グラフト共重合体の乾燥粉末0.5gをアセトン50mlに加えた後、常温で撹拌機(Orbital Shaker、装置名:Lab companion SKC-6075)を用いて210rpmで12時間撹拌し、これを遠心分離機(ハンイル科学社のSupra R30)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して、オーブン(Forced Convection Oven;装置名:Lab companion OF-12GW)で85℃で強制循環乾燥方式で12時間乾燥させた後、重量を測定する。
【0046】
(B)ポリメタクリレート樹脂
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、(A)及び(B)成分の総重量に対して、一例として15~65重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは20~50重量%、さらに好ましくは20~40重量%、より一層好ましくは25~40重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れる。
【0047】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、一例として、重量平均分子量が50,000~150,000g/mol、好ましくは60,000~140,000g/mol、より好ましくは70,000~130,000g/mol、さらに好ましくは80,000~120,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0048】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒はTHF、カラム温度は40℃、流速は0.3ml/min、試料の濃度は20mg/ml、注入量は5μlとし、カラムモデルは、1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、測定機器は、Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度は35℃、データの処理はAgilent ChemStation S/W、及び試験方法(Mn、Mw及びPDI)はOECD TG 118の条件で測定することができる。
【0049】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、好ましくは、メタクリレート単量体を55重量%以上含み、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上含み、この範囲内で、耐候性が大きく向上し、光沢性及び着色性に優れるという効果がある。
【0050】
前記メタクリレート単量体は、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数1~4個のアルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、さらに好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0051】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、好ましくは、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であり、より好ましくは、ポリメチルメタクリレート樹脂、またはメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体であり、さらに好ましくはポリメチルメタクリレート樹脂であり、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、透明性及び着色性に優れるという利点がある。
【0052】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、メチルメタクリレート65~85重量%、スチレン5~30重量%及びアクリロニトリル5~10重量%を含んでなり、好ましくは、メチルメタクリレート70~80重量%、スチレン15~25重量%及びアクリロニトリル5~10重量%を含んでなることができ、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、透明性及び着色性に優れるという利点がある。
【0053】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、重量平均分子量が70,000~140,000g/molであってもよく、好ましくは70,000~90,000g/mol、90,000g/mol超~140,000g/mol以下、またはこれらの混合であってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、引張強度、曲げ強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0054】
前記(B)ポリメタクリレート樹脂は、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0055】
熱可塑性樹脂組成物
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上、好ましくは70~150%、より好ましくは75~140%、さらに好ましくは80~130%、より一層好ましくは85~110%であってもよく、この範囲内で、透明性及び着色性に優れると共に、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れるという効果がある。
【0056】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【0057】
前記数式1において、熱可塑性樹脂組成物のゲル中のアルキルアクリレートの含量は、ゲル含量を求める過程で採取した不溶分中のアルキルアクリレートの含量(投入された熱可塑性樹脂組成物の総100重量%基準)を示す。ここで、ゲル含量は、熱可塑性樹脂の総100重量%を基準とした不溶分の含量を示す。
【0058】
前記ゲル中のアルキルアクリレートの含量は、NMR(核磁気共鳴)分析又はFT-IR(フーリエ変換赤外線分光)分析を通じて定量的に測定することができる。
【0059】
本記載において、NMR分析は、別途に限定しない限り、H NMRによる分析を意味する。
【0060】
本記載において、NMR分析は、本技術分野で通常行われる方法を用いて測定することができ、具体的な測定例は、次の通りである。
-装置名:Bruker 600MHz NMR(AVANCE III HD) CPP BB(1H 19F tunable and broadband,with z-gradient) Prodigy Probe
-測定条件:H NMR(zg30):ns=32、d1=5s、TCE-d2、室温
【0061】
本記載において、FT-IR分析は、本技術分野で通常行われる方法を用いて測定することができ、具体的な測定例は、次の通りである。
-装置名:Agilent Cary 660
-測定条件:ATRモード
【0062】
前記ゲル含量は、熱可塑性樹脂組成物1gをアセトン30gに加えた後、常温で12時間撹拌し、これを遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して12時間乾燥させた後に重量を測定し、下記数式2で算出する。このとき、具体的な測定例として、前記ゲル含量は、熱可塑性樹脂組成物1gをアセトン30gに加えた後、常温で12時間、撹拌機(Orbital Shaker、装置名:Lab companion SKC-6075)を用いて210rpmで撹拌し、これを遠心分離機(ハンイル科学社のSupra R30)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して、オーブン(Forced Convection Oven;装置名:Lab companion OF-12GW)で85℃で強制循環乾燥方式で12時間乾燥させた後、重量を測定することができる。
【0063】
[数式2]
ゲル含量(%)=[不溶分(ゲル)の重量(g)/試料の重量(g)]×100
【0064】
本記載において、アルキルアクリレートカバレッジ値は、熱可塑性樹脂組成物中のアルキルアクリレートゴムにグラフトされた芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物重合体の分散の程度を知ることができるパラメータである。この値が高いほど、アルキルアクリレートゴムに芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物重合体が均一にグラフトされてゴムを囲む形態となるため、光沢性が高く、引張強度及び着色性に優れるという効果がある。また、アルキルアクリレートカバレッジ値が高いほど、ゴム粒子間の距離が狭くなり、熱可塑性樹脂組成物の内部に発生するクラックによる空隙が減少することで、折り曲げ時に白化現象が抑制される効果がある。
【0065】
前記アルキルアクリレートカバレッジ値と前記グラフト率との差は、アルキルアクリレートカバレッジ値は、熱可塑性樹脂組成物中に実際に存在するアルキルアクリレートの含量がNMR(核磁気共鳴)分析又はFT-IR(フーリエ変換赤外線分光)分析を通じて定量的に算出され、グラフト率は、重合時に投入されたゴム質成分の含量から算出されるという差がある。
【0066】
また、グラフト率は、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体において、アルキルアクリレートゴムに芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物重合体がグラフトされた程度を知ることができるパラメータである。
【0067】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定した全光線透過率(total light transmittance;Tt)が、一例として75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは80~95%、さらに好ましくは82~90%であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、透明性、着色性及び無白化特性に優れる。
【0068】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1003に準拠して試験片の厚さ3Tで測定したヘイズが、一例として11%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは0.1~6%であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、透明性、着色性及び無白化特性に優れる。
【0069】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D2457に準拠して45°で光沢度測定器(Gloss Meter)を用いて測定した光沢度が、一例として120以上、好ましくは125以上、より好ましくは125~150、さらに好ましくは133~145であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、透明性、着色性及び無白化特性に優れる。
【0070】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ガードナー衝撃試験機(Gardner impact tester)を用いて1kg重量の錘を50cmの高さから、厚さ0.15mmに押出成形した押出フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃を受けた衝撃部で衝撃前後のヘイズをASTM D1003に準拠して測定したヘイズ差(△haze)が10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下、より一層好ましくは3以下、特に好ましくは0.1~3であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、外観品質及び無白化特性に優れるという利点がある。
【0071】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度(試験片の厚さ1/4”、常温)が3kgf・cm/cm以上、好ましくは3.5kgf・cm/cm以上、より好ましくは3.5~10kgf・cm/cm、さらに好ましくは4~9kgf・cm/cm、より一層好ましくは4.5~8.5kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランス及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0072】
本記載において、常温は、20±5℃の範囲内で一地点であってもよい。
【0073】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D638に準拠して、試験片の厚さ3.2mm及び速度10mm/min下で測定した引張強度が、一例として200kgf/cm以上、好ましくは250kgf/cm以上、より好ましくは300kgf/cm以上、さらに好ましくは300~600kgf/cm、より一層好ましくは350~600kgf/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランス及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0074】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D790に準拠して、試験片の厚さ3.2mm、間隔(span)64mm及び試験速度10mm/min下で測定した曲げ強度が350kgf/cm以上、好ましくは450kgf/cm以上、より好ましくは500kgf/cm以上、さらに好ましくは500~900kgf/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランス及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0075】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D785に準拠してRスケール(R-scale)で測定したロックウェル(Rockwell)硬度が70以上、好ましくは80以上、より好ましくは80~110であってもよく、この範囲内で、押圧跡が発生せず、物性バランスに優れるという効果がある。
【0076】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に熱安定剤、光安定剤、染料、顔料、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、前記(A)グラフト共重合体と(B)ポリメタクリレート樹脂を合わせた100重量部を基準として、それぞれ0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部、さらに好ましくは0.2~1.5重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0077】
前記熱安定剤は、好ましくは、1次熱安定剤及び2次熱安定剤を含むことができる。
【0078】
前記1次熱安定剤は、好ましくは、フェノール系熱安定剤であってもよく、より好ましくは、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-t-ブチル-2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-フェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシハイドロシンナモイルオキシ)エトキシフェニル]プロパン、及びβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステルからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸(octadecyl-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propanoate;IR1076)であってもよい。
【0079】
前記2次熱安定剤は、好ましくは、リン系熱安定剤であってもよく、より好ましくは、ビス(ジアルキルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトエステル、ホスファイトエステル、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、(オクチル)ジフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12-C15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(モノ-及びジ-混合ノニルフェニル)ホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、フェニル(4,4’-イソプロピリデンジフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[4,4’-イソプロピリデンビス(2-t-ブチルフェノール)]ホスファイト、ジ(イソデシル)フェニルホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(2-t-ブチルフェノール)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、2-[{2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]-ジオキサ-ホスフェピン-6-イル}オキシ]-N,N-ビス[2-[{2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-ジベンズ[d,f][1.3.2]-ジオキサホスフェピン-6-イル}オキシ]エチル]-エタンアミン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]-ジオキサホスフェピンからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Tris(2,4-di-tert-butylphenyl)phosphite;IF168)であってもよい。
【0080】
前記滑剤は、好ましくは、脂肪族アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0081】
前記脂肪族アミド系滑剤は、好ましくは、ステアルアミド(stearamide)、オレアミド(oleamide)、エルカミド(erucamide)、エチレンビスステアロアミド(ethylene bis stearamide)、及びエチレンビスオレアミド(ethylene bis oleamide)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0082】
前記脂肪酸エステル系滑剤は、好ましくは、アルコールまたは多価アルコールの脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、テトラステアリン酸ペンタエリトリトール、ステアリン酸ステアリル、エステルワックス及びアルキルリン酸エステルからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0083】
前記オレフィン系ワックスは、好ましくはポリエチレンワックスであってもよい。
【0084】
前記光安定剤は、一例として、HALS系紫外線安定剤及びベンゾトリアゾール系紫外線安定剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、HALS系紫外線安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線安定剤との混合であってもよい。
【0085】
前記HALS系紫外線安定剤は、好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート(bis-(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)sebacate;UV 770)、ビス[N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル]セバケート(bis-[N-methyl-2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl] sebacate)及びコハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(succinic acid dimethyl-1-(2-hydroxyethyl)-4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine;Tinuvin 622)からなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート(bis-(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)sebacate;UV 770)である。
【0086】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線安定剤は、好ましくは、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-5’-t-octylphenyl)-benzotriazole;Cyasorb UV-541)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-5’-methylphenyl)benzotriazole;Tinuvin-P)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-3’-tert-butyl-5’-methylphenyl)-5-chloro-benzotriazole;Tinuvin-326)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ditert-ブチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-3’,5’-ditert-butylphenyl)-5-chloro-benzotriazole;Tinuvin-327)、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ditert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-3,5-ditert-amylphenyl)benzotriazole;Tinuvin-328)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(2-(2’-hydroxy-3’,5’-di(1,1-dimethylbenzyl)phenyl]-2H-benzotriazole;Tinuvin-234)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-(2’-hydroxy-3’,5’-di-t-butylphenyl)benzotriazole;Tinuvin-320)、及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazole-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol;UV 329)からなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazole-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol;UV 329)であってもよい。
【0087】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出するステップ;を含み、下記数式1で計算されるアルキルアクリレートカバレッジ値(X)が70%以上であることを特徴とする。このような場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れるという利点がある。
【0088】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。)
【0089】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0090】
前記溶融混練及び押出するステップは、好ましくは、押出混練機を用いて200~300℃下で10~199ファイの規格で行うものであってもよく、より好ましくは、210~260℃下で20~80ファイの規格で行うものであってもよく、さらに好ましくは、220~250℃下で25~75ファイの規格で行うものであり、この範囲内で、安定した押出が可能であり、混練効果に優れる。このとき、温度は、シリンダーに設定された温度であり、ファイは、スクリューの外径(単位:mm)を意味する。
【0091】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0092】
成形品
本記載の成形品は前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れる。
【0093】
前記成形品は、好ましくは、射出成形品、カレンダー加工成形品、またはTダイ押出成形品であってもよく、この場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性、着色性及び無白化特性が全て優れるという効果がある。
【0094】
前記成形品は、好ましくは、フィルム又はシートであってもよく、具体的に、仕上げ用デコシート、屋外用建築資材仕上げ材、または屋根用仕上げ材であってもよい。
【0095】
前記成形品の製造方法は、好ましくは、(A)平均粒径50~120nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体35~85重量%と、(B)ポリメタクリレート樹脂15~65重量%とを含んで200~300℃及び100~500rpmの条件下で混練及び押出して押出物を製造するステップと;前記押出物を成形温度180~300℃で射出成形、カレンダー成形またはTダイ押出成形して成形品を製造するステップとを含み、このような場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度、透明性及び着色性に優れ、特に折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れるという効果がある。
【0096】
前記押出物は、一例として、ペレット状または板状の形態であってもよい。
【0097】
本記載において、板状の形態は、本発明の属する技術分野で通常の板状の形態として定義するものであれば、特に制限されず、一例として、平たい形状、シート状、フィルム状などを含むことができる。
【0098】
前記成形品を製造するステップは、好ましくは、製造された押出物をカレンダー温度140~220℃の条件下でシートとしてカレンダー成形することを含むことができ、このような場合、加工性に優れ、表面が均一なシート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0099】
本記載において、カレンダー成形は、押出物をカレンダーロールを含むカレンダー工程によって圧延するもので、本発明の属する技術分野で通常用いる方法による場合、特に制限されないが、好ましくは、シート原料である熱可塑性樹脂組成物ペレットを130~200℃下でミキサーで混合するステップと、混合された原料を170~200℃下でベースシートとして製造するステップと、ベースシートを140~220℃下でカレンダーロールを用いてシートとして製造するステップとを含むことができる。ここで、ベースシート製造ステップは、一例として、ミキシングロールを用いることができる。
【0100】
前記成形品を製造するステップは、好ましくは、製造された押出物を射出温度200~260℃、射出圧力60~100bar及び保圧25~55barの条件下で射出成形することを含むことができ、このような場合、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0101】
前記射出温度は、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~220℃であり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0102】
前記射出圧力は、好ましくは70~90bar、より好ましくは75~85barであり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0103】
前記保圧は、好ましくは30~50barであってもよく、より好ましくは35~50barであり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0104】
前記成形品を製造するステップは、好ましくは、製造された押出物を押出温度200~300℃、押出スクリュー速度50~200rpm、3軸のロール温度60~100℃、及びロール回転速度1~5m/min下でTダイ押出成形することを含むことができ、このような場合、加工性に優れ、表面が均一なシート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0105】
本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装置などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0106】
以下、本記載の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本記載を例示するものに過ぎず、本記載の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0107】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で用いられた物質は、次の通りである。
*(A-1)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径100nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート38重量%、スチレン7重量%、シェル:ブチルアクリレート4重量%、スチレン40重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-2)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径100nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート32重量%、スチレン13重量%、シェル:ブチルアクリレート4重量%、スチレン40重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-3)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径100nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート37重量%、スチレン3重量%、シェル:ブチルアクリレート12重量%、スチレン37重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率120%)
*(A-4)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径150nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート30重量%、シェル:ブチルアクリレート12重量%、スチレン47重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-5)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径100nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート30重量%、シェル:ブチルアクリレート12重量%、スチレン47重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-6)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径30nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート38重量%、スチレン7重量%、シェル:ブチルアクリレート4重量%、スチレン40重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-7)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径150nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート38重量%、スチレン7重量%、シェル:ブチルアクリレート4重量%、スチレン40重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率70%)
*(A-8)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造されたアルキルアクリレートゴムの平均粒径100nmのASAグラフト共重合体(コア:ブチルアクリレート45重量%、シェル:スチレン44重量%及びアクリロニトリル11重量%、グラフト率50%)
*(B-1)ポリメタクリレート樹脂:重量平均分子量80,000g/molであるポリメチルメタクリレート樹脂(LG MMA社のIF850)
*(B-2)スチレン-アクリロニトリル樹脂:重量平均分子量100,000g/mol(LG化学社の90HR)
【0108】
実施例1~7及び比較例1~8
それぞれ、下記表1及び表2に記載された成分及び含量と共に、滑剤としてペンタエリスリトール誘導体(Patechfine chemical社のPasflow7501)1重量部、酸化防止剤としてIrgonox 1076(BASF社)及びIrgafos 168(BASF社)のそれぞれ0.5重量部、及び紫外線安定剤としてTinuvin 700(BASF社)及びSunsorb 329(Sunfine Global社)のそれぞれ1重量部を二軸押出機に投入し、230℃及び150rpm下で溶融混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットをもってアルキルアクリレートカバレッジ値を測定した。以降、製造されたペレットを、射出機(Engel社、Victory 330/80)を用いて成形温度220℃、射出圧力50bar及び保圧35bar下で射出して、外観及び物性測定用試験片を作製し、これを用いて、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、表面硬度、光沢性、光透過率及びヘイズを測定した。さらに、前記製造されたペレットを、Tダイ押出機(Collins社のTechline 20T、スクリュー20mm、L/D=25)を用いて成形温度230℃、成形圧力200kgf/cm、ロール温度85℃、ロール回転速度3.5m/minの条件下で、厚さ0.15Tのフィルムとして製造し、無白化特性を評価した。
【0109】
[試験例]
前記実施例1~7及び比較例1~8で製造された射出試験片及び押出試験片の特性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1、表2及び図1に示した。
【0110】
測定方法
*アルキルアクリレートカバレッジ値(%):下記数式1で算出した。
【0111】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
【0112】
前記数式1において、Gは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル含量(重量%)、Yは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対してゲル中のアルキルアクリレートの含量(重量%)を示す。ここで、ゲル中のアルキルアクリレートの含量は、HNMR分析又はFT-IRを用いて定量的に測定した。
【0113】
H NMR
-装置名:Bruker 600MHz NMR(AVANCE III HD) CPP BB(1H 19F tunable and broadband,with z-gradient) Prodigy Probe
-測定条件:H NMR(zg30):ns=32、d1=5s、TCE-d2、at room temp.
【0114】
FT-IR
-装置名:Agilent Cary 660
-測定条件:ATRモード
【0115】
前記ゲル含量は、熱可塑性樹脂組成物で押出されたペレット1gをアセトン30mlに加えた後、常温で12時間、撹拌機(Orbital Shaker、装置名:Lab companion SKC-6075)を用いて210rpmで撹拌し、これを遠心分離機(ハンイル科学社のSupra R30)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して、オーブン(Forced Convection Oven;装置名:Lab companion OF-12GW)で85℃で強制循環乾燥方式で12時間乾燥させた後、重量を測定し、下記数式2で算出した。
【0116】
[数式2]
ゲル含量(%)=[不溶分(ゲル)の重量(g)/試料の重量(g)]×100
【0117】
*グラフト率(%):グラフト共重合体の乾燥粉末0.5gをアセトン50mlに加えた後、常温で12時間撹拌し、これを遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して12時間乾燥させた後、重量を測定し、下記数式3で算出した。下記のゴム質の重量は、グラフト共重合体の乾燥粉末0.5gの重合時に投入された理論上のゴム質成分の重量(g)である。
【0118】
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
【0119】
前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量(g)からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム質成分の重量(g)である。
【0120】
具体的に、前記不溶性物質(gel)の重量(g)は、グラフト共重合体の乾燥粉末0.5gをアセトン50mlに加えた後、常温で撹拌機(Orbital Shaker、装置名:Lab companion SKC-6075)を用いて210rpmで12時間撹拌し、これを遠心分離機(ハンイル科学社のSupra R30)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して、オーブン(Forced Convection Oven;装置名:Lab companion OF-12GW)で85℃で強制循環乾燥方式で12時間乾燥させた後、重量を測定した。
【0121】
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):ノッチ付き試験片(厚さ1/4”)を用いて、ASTM D256に準拠して23℃下で測定した。
【0122】
*引張強度(kgf/cm):ASTM D638に準拠して、クロスヘッド速度10mm/min及び試験片の厚さ3.2mmで測定した。
【0123】
*曲げ強度(kgf/cm):ASTM D790に準拠して、間隔(span)64mm及び試験速度10mm/min下で試験片の厚さ3.2mmで測定した。
【0124】
*表面硬度:ASTM D785に準拠して、Rスケール(R-scale)でロックウェル(Rockwell)硬度を測定した。
【0125】
*光沢度:ASTM D2457に準拠して、45°で光沢度測定器(Gloss Meter)を用いて測定した。
【0126】
*全光線透過率(Tt、%):ASTM D1003に準拠して、試験片の厚さ3Tでヘイズメーター(Murakami Lab社のHM-150)機器を用いて光透過率を測定した。
【0127】
*ヘイズ(%):ASTM D1003に準拠して、試験片の厚さ3Tでヘイズメーター(Murakami Lab社のHM-150)機器を用いてヘイズを測定した。
【0128】
*白化の発生の有無:厚さ0.15Tにシート押出した試験片(横5cm×縦5cm)を手で対角線方向に折り畳み、折曲面での白化の発生の有無を目視で観察し、次のように評価した。
○:白化現象が発生せず、無白化特性に優れる
△:白化現象が微量発生し、無白化特性が普通である
×:白化現象が多量発生し、無白化特性が不良である
【0129】
*落球によるヘイズ差(△haze):ガードナー衝撃試験機(Gardner impact tester)を用いて1kg重量の錘を25cmの高さから厚さ0.15mm×横5cm×縦5cmの押出フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃を受けた衝撃部で衝撃前後のヘイズをASTM D1003に準拠して測定し、下記数式4で計算した。
【0130】
[数式4]
ヘイズ差(△haze)=落球後のヘイズ値-落球前のヘイズ値
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
前記表1及び表2に示したように、本発明によって製造された実施例1~7は、本発明の範囲を外れた比較例1~8と比較して、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、表面硬度に優れると共に、光沢度及び全光線透過率が高く、ヘイズは低いため、透明性及び着色性に優れ、折り曲げ加工時に白化が発生しない無白化特性に優れた。具体的に、(A)ASA樹脂を本発明の範囲未満で含む比較例1は、衝撃強度は低くなり、ヘイズが高くなり、白化現象が発生し、(A)ASA樹脂を本発明の範囲を超えて含む比較例2は、引張強度、曲げ強度及び表面硬度が低下しただけでなく、光沢度が低くなって透明性が低下した。
【0134】
また、(A)ASA樹脂のアルキルアクリレートカバレッジ値が本発明の範囲未満であり、アルキルアクリレートゴムの平均粒径が120nmを超えるASA樹脂を含む比較例3は、光沢性、全光線透過率及びヘイズがいずれも劣悪であり、透明性が低下した。
【0135】
また、(B-1)ポリメタクリレート樹脂の代わりに(B-2)スチレン-アクリロニトリル樹脂を使用した比較例4は、光沢度、全光線透過率及びヘイズがいずれも劣悪であり、透明性が低下した。
【0136】
また、(B-2)スチレン-アクリロニトリル樹脂を含み、(A)ASA樹脂のグラフト率が高いが、アルキルアクリレートカバレッジ値が本発明の範囲未満である比較例5は、全光線透過率及びヘイズがいずれも劣悪になり、透明性が低下し、白化現象が発生した。
【0137】
また、アルキルアクリレートゴムの平均粒径が50nm未満であるASA樹脂を含む比較例6は、衝撃強度及び全光線透過率が非常に低くなり、アルキルアクリレートゴムの平均粒径が120nmを超えるASA樹脂を含む比較例7は、白化が発生し、ヘイズ及びヘイズ差が大きくなった。
【0138】
また、アルキルアクリレートカバレッジ値が50%である比較例8は、白化が発生し、ヘイズ差が大きくなった。
【0139】
また、下記図1に示したように、本発明に係る実施例1、2、4及び5は、比較例3~5と比較して、白化の発生が抑制されたことが確認できた。比較例2の場合、白化の発生は抑制されたが、引張強度、曲げ強度及び表面硬度が非常に低くなり、製品に適用し難いという問題があった。
図1
【国際調査報告】