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特表2023-514541組換えVWFの投与による重症のフォンヴィレブランド病患者における過多月経の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(54)【発明の名称】組換えVWFの投与による重症のフォンヴィレブランド病患者における過多月経の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20230330BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230330BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20230330BHJP
   C07K 14/755 20060101ALN20230330BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
A61K38/36
A61P15/00 ZNA
A61P7/04
C07K14/745
C07K14/755
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547192
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021016592
(87)【国際公開番号】W WO2021158777
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,998
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】プローダー ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルオン-ベルトス フランソワーズ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA22
4C084CA53
4C084DC10
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA53
4H045BA56
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA65
4H045DA66
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象における過多月経の治療のための方法であって、治療量の組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を対象に投与することを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症のフォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、
約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量の組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を前記対象に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記過多月経出血エピソードが、軽度の過多月経出血エピソード及び重度の過多月経出血エピソードからなる群から選択される、請求項1に記載の治療の方法。
【請求項3】
前記VWDが、1型VWD、2型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される、請求項1または2に記載の治療の方法。
【請求項4】
30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が前記対象に投与され、前記過多月経出血エピソードが軽度の過多月経出血エピソードである、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項5】
30~60IU/kgのrVWFの第2の用量を前記対象に投与することを更に含む、請求項4に記載の治療の方法。
【請求項6】
40~50IU/kgのrVWFの第1の用量が前記対象に投与され、前記過多月経出血エピソードが軽度の過多月経出血エピソードである、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項7】
40~50IU/kgのrVWFの第2の用量を前記対象に投与することを更に含む、請求項6に記載の治療の方法。
【請求項8】
前記VWDが、1型VWDである、請求項1~7のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項9】
前記VWDが、2A型、2B型、2N型、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項10】
40~90IU/kgのrVWFの第1の用量が前記対象に投与され、前記過多月経出血エピソードが重度の過多月経出血エピソードである、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項11】
前記VWDが1型VWDである、請求項10に記載の治療の方法。
【請求項12】
前記VWDが、2A型VWD、2B型VWD、2N型VWD、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される、請求項10に記載の治療の方法。
【請求項13】
複数の用量のrVWFを前記対象に投与することを更に含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項14】
40~90IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項10~13のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項15】
40~90IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、40~60IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項10~13のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項16】
40~90IU/kgのrVWFの前記第1の用量と40~60IU/kgのrVWFの第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項17】
前記出血エピソードの残りの期間、30~70IU/kgのrVWFの第3の用量を前記対象に毎日投与することを更に含む、請求項10~16のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項18】
前記方法の合計期間が約7日以内である、請求項10~17のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項19】
前記対象に投与されるrVWFの第1の用量が50~80IU/kgのrVWFであり、前記過多月経出血エピソードが重度の過多月経出血エピソードである、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項20】
前記VWDが1型VWDである、請求項19に記載の治療の方法。
【請求項21】
複数の用量のrVWFを前記対象に投与することを更に含む、請求項19または20に記載の治療の方法。
【請求項22】
50~80IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項19~21のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項23】
50~80IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、40~60IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項19~21のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項24】
50~80IU/kgのrVWFの第1の用量と40~60IU/kgのrVWFの第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項25】
前記出血エピソードの残りの期間、30~70IU/kgのrVWFの第3の用量を前記対象に毎日投与することを更に含む、請求項19~24のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項26】
前記方法の合計期間が約7日以内である、請求項19~25のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項27】
前記対象に投与される前記rVWFの第1の用量が、60~80IU/kgであり、前記VWDが、2A型VWD、2B型VWD、2N型VWD、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される、請求項19に記載の治療の方法。
【請求項28】
複数の用量のrVWFを前記対象に投与することを更に含む、請求項19または27に記載の治療の方法。
【請求項29】
60~80IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項19、27及び28のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項30】
60~80IU/kgのrVWFの前記第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含み、
前記第2の用量のそれぞれが、40~80IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される、
請求項19、27及び28のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項31】
60~80IU/kgのrVWFの第1の用量と40~80IU/kgのrVWFの第2の用量とを含む複数の用量を、前記対象に投与することを更に含む、請求項19、27及び28のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項32】
前記出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を前記対象に毎日投与することを更に含む、請求項19~31のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項33】
前記方法の合計期間が約7日以内である、請求項19~32のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項34】
組換え第VIII因子(rFVIII)を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項35】
前記rFVIIIが、1以上の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項34に記載の治療の方法。
【請求項36】
前記rFVIIIが、前記第1の用量及び/または前記第2の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項34または35に記載の治療の方法。
【請求項37】
前記rFVIIIが、各用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項34~36のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項38】
前記rFVIIIが、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で前記対象に投与される、請求項1~37のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項39】
前記rVWF対FVIII比が、約1.5:0.8、約1.3:1、約1.1:0.8、約1.5:1、及び約1.1:1.2からなる群から選択されるように、前記rFVIIIが前記対象に投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項40】
重症の1型フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の重度の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、
a)50~75IU/kgのrVWFの第1の用量を前記対象に投与することと、
b)40~60IU/kgのrVWFの複数の第2の用量を前記対象に投与することであって、前記用量のそれぞれが、VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持されるように、3日間、8~12時間ごとに投与される、前記投与することと、
c)前記出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を前記対象に1日1回投与することと
を含み、
ステップ(a)~(c)の合計期間が、約7日以内である、前記方法。
【請求項41】
前記VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.40IU/mLに維持されるか、または前記VWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.40IU/mLの前記VWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される、請求項40に記載の治療の方法。
【請求項42】
前記VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.50IU/mLに維持されるか、または前記VWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.50IU/mLの前記VWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される、請求項40または41に記載の治療の方法。
【請求項43】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が6日以内である、請求項40~42のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項44】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が5日以内である、請求項40~42のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項45】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が4日以内である、請求項40~42のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項46】
重症の2型または3型フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の重度の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、
a)60~80IU/kgのrVWFの第1の用量を前記対象に投与することと、
b)40~60IU/kgのrVWFの複数の第2の用量を前記対象に投与することであって、前記用量のそれぞれが、VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持されるように、3日間、8~12時間ごとに投与される、前記投与することと、
c)前記出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を前記対象に1日1回投与することと
を含み、
ステップ(a)~(c)の合計期間が、約7日以内である、前記方法。
【請求項47】
前記VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.40IU/mLに維持されるか、または少なくとも0.40IU/mLの前記VWF:RCoのトラフレベルと同等である前記VWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが維持される、請求項46に記載の治療の方法。
【請求項48】
前記VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.50IU/mLに維持されるか、または前記VWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.50IU/mLの前記VWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される、請求項46または47に記載の治療の方法。
【請求項49】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が6日以内である、請求項46~48のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項50】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が5日以内である、請求項46~48のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項51】
ステップ(a)~(c)の前記合計期間が4日以内である、請求項46~48のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項52】
組換え第VIII因子(rFVIII)を前記対象に投与することを更に含む、請求項46~51のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項53】
前記rFVIIIが、少なくとも1用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項52に記載の治療の方法。
【請求項54】
前記rFVIIIが、前記第1の用量及び/または前記複数の第2の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項52~53のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項55】
前記rFVIIIが、前記第1の用量及び前記複数の第2の用量の両方のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される、請求項52~54のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項56】
前記対象に投与される前記rFVIIIの用量が、約20IU/kg~約50IU/kgである、請求項52~55のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項57】
前記対象に投与される前記rFVIIIが、約1.5:0.8、約1.3:1、約1.1:0.8、約1.5:1、及び約1.1:1.2からなる群から選択されるrVWF対FVIII比である、請求項52~56のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項58】
前記rVWFが、約20mU/μg~約150mU/μgの比活性を有する、請求項1~57のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項59】
前記対象に投与される前記rFVIII及びrVWFが、約3:1~約1:5のrFVIII凝血活性(IU rFVIII:C)対rVWFリストセチン補因子活性(IU rVWF:RCo)比を有する、請求項1~58のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項60】
重症のフォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、
約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量の組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を前記対象に投与すること
を含み、
前記対象が患う前記出血エピソードの期間及び/または重症度が、前記rVWFが投与されていない場合において前記対象が患う前記出血エピソードの期間及び/または重症度と比較して低減される、前記方法。
【請求項61】
前記出血エピソードの期間中に、1用量のrVWFが投与される、請求項1~60のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項62】
前記出血エピソードの期間中に、2用量のrVWFが投与される、請求項1~61のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項63】
前記出血エピソードの期間中に、3用量のrVWFが投与される、請求項1~62のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項64】
前記出血エピソードの期間中に、4用量のrVWFが投与される、請求項1~63のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項65】
前記出血エピソードの期間中に、5用量以上のrVWFが投与される、請求項1~64のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項66】
前記出血エピソードの期間中に前記対象に投与される前記rVWFが、約20IU/kg~約200IU/kgのrVWFの範囲である、請求項1~65のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項67】
前記出血エピソードの期間中に前記対象に投与される前記rVWFが、約20IU/kg~約100IU/kgのrVWFの範囲である、請求項1~66のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項68】
前記rVWFが、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~67のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項69】
前記rVWFが、rVWFの断片であり、前記rVWFが、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~68のいずれか1項に記載の治療の方法。
【請求項70】
前記rVWFが、ユビキチン化、グリコシル化、治療用または診断用薬剤とのコンジュゲーション、標識化、共有結合による高分子化合物の結合、非加水分解性結合の導入、及び1つ以上のアミノ酸の化学合成による挿入または置換からなる群からの1つ以上の技術を使用して化学修飾されている、請求項1~69のいずれか1項に記載の治療の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月4日に出願された米国仮特許出願第62/969,998号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表への参照
本明細書とともに提出された配列表のテキストコピーは、2021年2月3日に作成され、008073-5215-WO_Sequence_Listing.txtというタイトルで、サイズは53,961バイトであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
フォンヴィレブランド病(VWD)などの凝固系疾患は、一般に、凝固カスケード不全に起因する。フォンヴィレブランド病(VWD)は、フォンヴィレブランド因子の欠損によって引き起こされる疾患群を指す。フォンヴィレブランド因子(VWF)は、血小板同士を凝集させ、血管壁に粘着するのを助けるものであり、これは、正常な血液凝固に必要である。
【0004】
フォンヴィレブランド病(VWD)は、最も一般的な遺伝性出血性疾患であり、推定有病率は1%である(Veyradier A,et al.,Medicine(Baltimore).2016,95(11):e3038(非特許文献1))。しかしながら、より軽症の病型の疾患を除くと、実際に治療を必要とする患者は約10,000人に1人のみである。現在、これらの凝固異常の治療には、正常な凝固因子を含む医薬調製物を使用する補充療法が含まれる。
【0005】
VWFは、約500~20,000kDの範囲の大きさの一連のマルチマーとして血漿中を循環する糖タンパク質である。VWFの全長cDNAがクローニングされており、そのプロポリペプチドは、全長プレプロVWFのアミノ酸残基23~764に相当する(Eikenboom et al(1995)Haemophilia 1,77 90(非特許文献2))。VWFのマルチマー形態は、ジスルフィド結合によって一緒に連結された250kDのポリペプチドサブユニットで構成される。VWFは、損傷を受けた血管壁の内皮下への初期血小板粘着を媒介し、より大きなマルチマーは、高い止血活性を示す。マルチマー化したVWFは、VWFのA1ドメインにおける相互作用を介して血小板表面糖タンパク質Gp1bαに結合し、血小板粘着を促進する。VWF上の他の部位は、血管壁への結合を媒介する。このようにして、VWFは、血小板と血管壁との間に架橋を形成し、これは、高ずり応力の条件下での血小板粘着及び一次止血に不可欠である。通常、内皮細胞は、大きな高分子形態のVWFを分泌し、分子量の小さい形態のVWFは、タンパク質分解による切断から生じる。超巨大分子量のマルチマーは、内皮細胞のワイベルパラーデ小体内に貯蔵され、トロンビン及びヒスタミンなどのアゴニストによって刺激されると放出される。
【0006】
VWDの患者に対しては、特に大手術での長期間の止血が必要とされることから、VWF補充による治療が推奨されている(Mannucci PM and Franchini M.,Haemophilia,2017,23(2):182-187(非特許文献3);National Institutes of Health.National Heart,Lung,and Blood Institute.The Diagnosis,Evaluation,and Management of von Willebrand Disease NIH Publication No.08-5832;December,2007(非特許文献4))。血漿由来VWF(pdVWF)治療薬は、第VIII因子(FVIII)を含有し、反復投与によりFVIIIが蓄積する可能性がある。組換えVWF(rVWF)濃縮製剤(VONVENDI(登録商標)、VEYVONDI(登録商標)、ボニコグアルファとしても知られる(Takeda Pharmaceutical Company Limited))は、血漿由来VWF治療薬と比較して、臨床上の利益が改善されている(Turecek PL,et al.Hamostaseologie.2009;29(suppl 1):S32-38(非特許文献5);Mannucci PM,et al.Blood,2013;122(5):648-657(非特許文献6);Gill JC,et al.Blood,2015;126(17):2038-2046(非特許文献7))。
【0007】
VWDの女性に最も一般的な症状は、重度月経出血(HMB)または過多月経であり、VWDの女性の最大80%がこの症状を患い、中等症または重症VWDの女性の20%が主にHMBのために子宮摘出を必要とする。過多月経/HMBは、一般に、症候性鉄欠乏性貧血、心理的ストレス、及び生活の質の低下と関連する。仕事、学校、及び日常生活に悪影響を及ぼし、医療費の増加につながり得る。
【0008】
過多月経の診断及び効果的な治療がないことは、VWDの女性におけるアンメット・ヘルス・ニーズである。rVWFは、重症VWDを有する成人患者における出血エピソード(BE)のオンデマンド治療に使用した場合、止血効果及び良好なベネフィット・リスクプロファイルを示した。しかしながら、特にrVWFを伴う過多月経の管理に関する情報は限られている。したがって、rVWFを使用して重症VWDの女性を治療するための改善された方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Veyradier A,et al.,Medicine(Baltimore).2016,95(11):e3038
【非特許文献2】Eikenboom et al(1995)Haemophilia 1,77 90
【非特許文献3】Mannucci PM and Franchini M.,Haemophilia,2017,23(2):182-187
【非特許文献4】National Institutes of Health.National Heart,Lung,and Blood Institute.The Diagnosis,Evaluation,and Management of von Willebrand Disease NIH Publication No.08-5832;December,2007
【非特許文献5】Turecek PL,et al.Hamostaseologie.2009;29(suppl 1):S32-38
【非特許文献6】Mannucci PM,et al.Blood,2013;122(5):648-657
【非特許文献7】Gill JC,et al.Blood,2015;126(17):2038-2046
【発明の概要】
【0010】
本開示は、重症のフォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量の組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、過多月経出血エピソードは、軽度の過多月経出血エピソード及び重度の過多月経出血エピソードからなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、VWDは、1型VWD、2型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が対象に投与され、過多月経出血エピソードは軽度の過多月経出血エピソードである。いくつかの実施形態において、方法は、30~60IU/kgのrVWFの第2の用量を対象に投与することを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、40~50IU/kgのrVWFの第1の用量が対象に投与され、過多月経出血エピソードは軽度の過多月経出血エピソードである。いくつかの実施形態において、方法は、40~50IU/kgのrVWFの第2の用量を対象に投与することを更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、VWDは、1型VWDである。いくつかの実施形態において、VWDは、2A型、2B型、2N型、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量が対象に投与され、過多月経出血エピソードは重度の過多月経出血エピソードである。いくつかの実施形態において、VWDは、1型VWDである。いくつかの実施形態において、VWDは、2A型VWD、2B型VWD、2N型VWD、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量が対象に投与され、VWDは1型VWDである。いくつかの実施形態において、50~90IU/kgのVWFの第1の用量が対象に投与され、VWDは2A型VWD、2B型VWD、2N型VWD、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、記載される方法は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量を含む複数の用量を、対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、各用量は、約3日間、8~12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、方法は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、約3日間、8~12時間ごとに投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、方法は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、40~60IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、方法は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量と40~60IU/kgのrVWFの第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、出血エピソードの残りの期間、30~70IU/kgのrVWFの第3の用量を対象に毎日投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法の合計期間は、約7日以内である。
【0021】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるrVWFの第1の用量は、50~80IU/kgのrVWFであり、過多月経出血エピソードは重度の過多月経出血エピソードである。
【0022】
いくつかの実施形態において、VWDは、1型VWDである。いくつかの実施形態において、方法は、複数の用量のrVWFを対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、記載される方法は、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、約3日間、8~12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、方法は、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、40~60IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、方法は、出血エピソードの残りの期間、30~70IU/kgのrVWFの第3の用量を対象に毎日投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法の合計期間は、約7日以内である。
【0023】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるrVWFの第1の用量は、60~80IU/kgであり、VWDは、2A型VWD、2B型VWD、2N型VWD、2M型VWD、及び3型VWDからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、複数の用量のrVWFを対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、60~80IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、約3日間、8~12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、方法は、60~80IU/kgのrVWFの第1の用量と複数の第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含み、第2の用量のそれぞれは、40~80IU/kgのrVWFであり、約3日間、8~12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、方法は、60~80IU/kgのrVWFの第1の用量と40~80IU/kgのrVWFの第2の用量とを含む複数の用量を、対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を対象に毎日投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法の合計期間は、約7日以内である。
【0024】
いくつかの実施形態において、方法は、組換え第VIII因子(rFVIII)を対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、1以上の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。
【0025】
いくつかの実施形態において、rFVIIIは、第1の用量及び/または第2の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、各用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で対象に投与される。
【0026】
いくつかの実施形態において、rFVIIIは、当該rVWF対FVIII比が、約1.5:0.8、約1.3:1、約1.1:0.8、約1.5:1、及び約1.1:1.2からなる群から選択されるように、対象に投与される。
【0027】
一態様において、重症の1型フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の重度の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、(a)50~75IU/kgのrVWFの第1の用量を対象に投与することと、(b)40~60IU/kgのrVWFの複数の第2の用量を対象に投与することであって、用量のそれぞれは、VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持されるように、3日間、8~12時間ごとに投与される、投与することと、(c)出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を対象に1日1回投与することとを含み、ステップ(a)~(c)の合計期間は、約7日以内である、方法が提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、VWF:RCoのトラフレベルは、少なくとも0.40IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルは、少なくとも0.40IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される。
【0029】
いくつかの実施形態において、VWF:RCoのトラフレベルは、少なくとも0.50IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルは、少なくとも0.50IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、6日以内である。いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、5日以内である。いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、4日以内である。
【0031】
いくつかの態様において、重症の2型または3型フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の重度の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、(a)60~80IU/kgのrVWFの第1の用量を対象に投与することと、(b)40~60IU/kgのrVWFの複数の第2の用量を対象に投与することであって、用量のそれぞれは、VWF:RCoのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが少なくとも0.30IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持されるように、3日間、8~12時間ごとに投与される、投与することと、(c)出血エピソードの残りの期間、40~60IU/kgのrVWFの第3の用量を対象に1日1回投与することとを含み、ステップ(a)~(c)の合計期間は、約7日以内である、方法が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態において、VWF:RCoのトラフレベルは、少なくとも0.40IU/mLに維持されるか、または少なくとも0.40IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等であるVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルが維持される。いくつかの実施形態において、VWF:RCoのトラフレベルは、少なくとも0.50IU/mLに維持されるか、またはVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbRのトラフレベルは、少なくとも0.50IU/mLのVWF:RCoのトラフレベルと同等に維持される。
【0033】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、6日以内である。いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、5日以内である。いくつかの実施形態において、ステップ(a)~(c)の合計期間は、4日以内である。
【0034】
いくつかの実施形態において、方法は、組換え第VIII因子(rFVIII)を対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、少なくとも1用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、第1の用量及び/または複数の第2の用量のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、第1の用量及び複数の第2の用量の両方のrVWFと同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、対象に投与されるrFVIIIの用量は、約20IU/kg~約50IU/kgである。
【0035】
いくつかの実施形態において、rFVIIIは、rVWF対FVIII比が、約1.5:0.8、約1.3:1、約1.1:0.8、約1.5:1、及び約1.1:1.2からなる群から選択されるように、対象に投与される。いくつかの実施形態において、rVWF対FVIII比は、約1.5:0.8である。いくつかの実施形態において、rVWF対FVIII比は、約1.3:1である。いくつかの実施形態において、rVWF対FVIII比は、約1.1:0.8である。いくつかの実施形態において、rVWF対FVIII比は、約1.5:1である。いくつかの実施形態において、rVWF対FVIII比は約1.1:1.2である。
【0036】
いくつかの実施形態において、rVWFは、約20mU/μg~約150mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、約20IU/mgタンパク質~約150IU/mgタンパク質の比活性を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、約20IU rVWF:RCo/mgタンパク質~約150IU rVWF:RCo/mgタンパク質、または別のVWF活性測定を使用して決定した場合のそれと同等の値の比活性を有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、rFVIII及びrVWFは、rFVIII凝血活性(IU rFVIII:C)対rVWFリストセチン補因子活性(IU rVWF:RCo)が約3:1~約1:5の比になるように、対象に投与される。
【0038】
また、重症のフォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の過多月経出血エピソードを治療するための方法であって、約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量の組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を対象に投与することを含み、対象が患う出血エピソードの期間及び/または重症度が、rVWFが投与されていない場合において対象が患う出血エピソードの期間及び/または重症度と比較して低減される、方法が提供される。
【0039】
記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態において、出血エピソードの期間中に、1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、出血エピソードの期間中に、2用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、出血エピソードの期間中に、3用量のrVWFが投与される。多くの実施形態において、出血エピソードの期間中に、4用量のrVWFが投与される。他の実施形態において、出血エピソードの期間中に、5以上用量のrVWFが投与される。
【0040】
いくつかの実施形態において、出血エピソードの期間中に、約20IU/kg~約200IU/kgの範囲のrVWFが対象に投与される。多くの実施形態において、出血エピソードの期間中に、約40IU/kg~約200IU/kgの範囲のrVWFが対象に投与される。いくつかの実施形態において、出血エピソードの期間中に、約20IU/kg~約100IU/kgの範囲のrFVIIIが対象に投与される。
【0041】
多くの実施形態において、本明細書で概説されるrVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。多くの実施形態において、rVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、アミノ酸配列は、配列番号1に対して、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列またはその断片によってコードされる。
【0042】
多くの実施形態において、記載されるrVWFは、rVWFの断片であり、rVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、rVWFの断片であり、rVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、rVWFは、ユビキチン化、グリコシル化、治療用または診断用薬剤とのコンジュゲーション、標識化、共有結合による高分子化合物の結合、非加水分解性結合の導入、及び1つ以上のアミノ酸の化学合成による挿入または置換からなる群からの1つ以上の技法を使用して化学修飾される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】重症VWD患者におけるrVWFの第3相オープンラベル試験のプロセス全体を示す。
図2】rVWFの第3相オープンラベル試験における出血イベント(BE)の治療のためのrVWF推奨用量を示す。rVWF投与量は、IU VWF:RCo/kg体重として測定した。
図3】BEに対するrVWF治療の臨床効果を評価する際に試験責任医師らが使用した総合的な基準を示す。
図4】本試験においてrVWFで治療された過多月経を有する患者の人口統計学的特徴を示す。
図5】rVWFのみ(例えば、血漿由来VWFではない)で治療した合計45件の過多月経エピソードのうち、軽症、中等症または重症であった過多月経エピソードの割合をパーセントで示す。
図6】45件の過多月経エピソードに対するrVWF治療の概要を示す。
図7】試験責任医師らによって決定されたrVWF治療の臨床効果の評価を示す。評価は、rVWFのみ(すなわち、血漿由来VWFではない)で治療した合計45件の過多月経エピソードに基づく。
図8】過多月経患者の試験においてrVWFと併用した薬の下で報告された有害事象(AE)を示す。各AEは、1名の患者で報告された。
図9A】プレプロVWFの核酸配列を示す。
図9B】プレプロVWFの核酸配列を示す。
図9C】プレプロVWFの核酸配列を示す。
図10A】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10B】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10C】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10D】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10E】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10F】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10G】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10H】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10I】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図10J】プレプロVWFのアミノ酸配列を示す。
図11A】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11B】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11C】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11D】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11E】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11F】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
図11G】成熟VWFのアミノ酸配列を示す(全長プレプロVWFのアミノ酸残基764~2813に相当する)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
序文
本発明は、フォンヴィレブランド病(VWD)を有する女性における過多月経の治療のための方法を提供する。そのような治療は、組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)の投与を含む。本発明によるrVWFの投与及び重症VWDを有する成人患者における出血エピソード(BE)のオンデマンド治療のためのrVWFの投与は、止血効果及び良好なベネフィット・リスクプロファイルを患者に提供する。
【0046】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上、別途明記されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「抗体」への言及は、複数のそのような抗体を含み、「宿主細胞」への言及は、1つ以上の宿主細胞及び当業者に知られているその同等物への言及を含むなどとなる。更に、特許請求の範囲は、何らかの任意選択の要素を除外するように作成される場合があることにも留意されたい。したがって、本記述は、請求項の要素の詳述に関連する「だけ」、「のみ」などの排他的用語の使用、または「否定的な」限定の使用に対する先行的な根拠として働くことが意図される。
【0047】
本発明を更に説明する前に、本発明が、記載される特定の実施形態に限定されず、当然のことながら、それ自体多様であり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的にしており、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0048】
本明細書で使用される場合、「rVWF」は、組換えVWFを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「rFVIII」は、組換えFVIIIを指す。
【0050】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターを参照して使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入によってまたは天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいは、その細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞内ではみられない遺伝子を発現するか、あるいは、異常発現されるか、過少発現されるか、または全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「組換えVWF」は、組換えDNA技術を介して得られるVWFを含む。ある特定の実施形態において、本発明のVWFタンパク質は、コンストラクト、例えば、WO1986/06096及びUS8,597,910におけるように調製されるものを含み得、それらの内容は、組換えVWFを作製する方法に関して、参照により本明細書に援用される。本開示のVWFは、モノマー形態及びマルチマー形態を含む、全ての可能な形態を含み得る。また、本発明は、組み合わせて使用される様々な形態のVWFも包含することも理解されたい。例えば、本開示のVWFは、異なるマルチマー、異なる誘導体、ならびに生物学的に活性な誘導体及び生物学的に活性でない誘導体の両方を含み得る。
【0052】
本開示の文脈において、組換えVWFは、例えば、霊長類、ヒト、サル、ウサギ、ブタ、齧歯類、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、イヌ科動物、ネコ科動物などの哺乳動物に由来するVWFファミリーの任意のメンバー、及び生物学的に活性なその誘導体を含む。また、活性を有する変異体及びバリアントのVWFタンパク質も包含され、VWFタンパク質の機能性断片及び融合タンパク質も同様である。更に、本発明のVWFは、精製、検出、またはその両方を容易にするタグを更に含み得る。本明細書に記載されるVWFは、治療部分またはin vitroもしくはin vivoでのイメージングに好適な部分により更に修飾されてもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「血漿由来VWF(pdVWF)」は、血液中でみられる当該タンパク質の全ての形態を含み、少なくとも1つのFVIII分子をin vivoで安定化させる特性、例えば、結合特性を有する、哺乳動物から得られる成熟VWFを含む。
【0054】
「高マルチマーVWF」または「高分子量VWF」という用語は、少なくとも10サブユニット、または12、14、もしくは16サブユニット~約20、22、24、もしくは26以上のサブユニットを含むVWFを指す。「サブユニット」という用語は、VWFのモノマーを指す。当該技術分野で知られているように、重合してより高次のマルチマーを形成するのは、一般にVWFのダイマーである(Turecek et al.,Semin.Thromb.Hemost.2010,36(5):510-521を参照されたく、あらゆる目的のため、特にVWFのマルチマー分析に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0055】
本明細書で使用される場合、「第VIII因子」または「FVIII」という用語は、患者にとって内因性であるか、血漿に由来するか、または組換えDNA技術の使用により作製されるかにかかわらず、血液凝固第VIII因子の典型的な特徴を有する任意の形態の第VIII因子分子を指し、第VIII因子の全ての修飾形態を含む。第VIII因子(FVIII)は、単一遺伝子産物から生じる不均一な分布のポリペプチドとして、天然において及び治療用調製物中に存在する(例えば、Andersson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:2979-2983(1986)参照)。第VIII因子を含有する市販の治療用調製物の例としては、HEMOFIL M(登録商標)、ADVATE(登録商標)、及びRECOMBINATE(登録商標)(Takeda Pharmaceutical Company Limited,Lexington,MA)の商標名で販売されているものが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「血漿FVIII活性」及び「in vivo FVIII活性」は、区別なく使用される。標準的なアッセイを使用して測定されるin vivo FVIII活性は、内因性FVIII活性、治療投与されたFVIII(組換えまたは血漿由来)の活性、または内因性FVIII活性及び投与されたFVIII活性の両方であり得る。同様に、「血漿FVIII」は、内因性FVIII、または投与された組換えもしくは血漿由来FVIIIを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「フォンヴィレブランド病」は、フォンヴィレブランド因子の欠損によって引き起こされる疾患群を指す。フォンヴィレブランド因子は、血小板同士を凝集させ、血管壁に粘着するのを助けるものであり、これは、正常な血液凝固に必要である。本明細書で更に詳しく記載されるように、フォンヴィレブランド病には、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、及び3型を含む、いくつかの病型がある。
【0058】
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態において見出される場合に通常は付随している成分が実質的または本質的に含まれていない物質を指す。純度及び均一性は、典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して決定される。VWFは、調製物中に存在する主な種であり、実質的に精製されている。「精製された」という用語は、いくつかの実施形態において、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルに本質的に1本のバンドで現れることを示す。他の実施形態において、核酸またはタンパク質は、少なくとも50%純粋、より好ましくは、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上純粋であることを意味する。他の実施形態において、「精製する」または「精製」とは、少なくとも1つの夾雑物を、精製される組成物から除去することを意味する。この意味では、精製は、精製された化合物が均質である必要はなく、例えば、100%純粋である必要はない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「投与すること」(及び文法上の全ての同等表現)には、対象に対する、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、坐剤としての投与、局所接触、腹腔内投与、病巣内投与、もしくは鼻腔内投与、または徐放性デバイス、例えば、小型浸透圧ポンプの埋め込みが含まれる。投与は、非経口、及び経粘膜(例えば、経口、経鼻、膣、直腸、または経皮)を含む、任意の経路による。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内が含まれる。他の送達様式には、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチの使用などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
「治療上有効な量または用量」または「治療上十分な量または用量」または「有効または十分な量または用量」という用語は、投与される目的に対して治療効果をもたらす用量を指す。例えば、血友病の治療に有用な薬物の治療上有効な量は、血友病に伴う1つ以上の症状を予防または緩和することが可能な量であり得る。正確な用量は、治療の目的によって異なり、当業者であれば、既知の技法を使用して見極めることができる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkins参照)。
【0061】
本明細書で使用される場合、「患者」及び「対象」という用語は、区別なく使用され、疾患を有するか、または疾患に罹患する可能性を有する哺乳動物(好ましくは、ヒト)を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定した値からプラスマイナス10%のおよその範囲を示す。例えば、「約20%」という文言は、18~22%の範囲を包含する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「半減期」という用語は、崩壊を受けている物質の量(または試料もしくは患者からのクリアランス)が半減するのに要する期間を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「トラフレベル」という用語は、次の用量の直前の、血漿中の薬物濃度、または2用量間の最小薬物濃度を指す。例えば、12時間ごとに実施されるレジメンの場合、トラフレベルは、通常、最終用量から12時間後に生じる。トラフレベルは、臨床転帰と相関し得ることが示されており、例えば、トラフレベルが低いと、治療レジメンの有効性に悪影響を及ぼし得る耐性が生じる場合があるため、トラフレベルは、重要である。例えば、トラフレベルは、血漿レベルの≧30%に維持することができ、例えば、低トラフレベルは、<30%のレベルで示される。例えば、トラフレベルは、血漿レベルの≧35%に維持することができ、例えば、低トラフレベルは、<35%のレベルで示される。例えば、トラフレベルは、血漿レベルの≧40%に維持することができ、例えば、低トラフレベルは、<40%のレベルで示される。例えば、トラフレベルは、血漿レベルの≧45%に維持することができ、例えば、低トラフレベルは、<45%のレベルで示される。例えば、トラフレベルは、血漿レベルの≧50%に維持することができ、例えば、低トラフレベルは、<50%のレベルで示される。いくつかの場合において、推奨される目標トラフ血漿レベル及び最小治療期間には、≧30IU/dL(軽度)及び>50IU/dL(重度)の、VWF:RCo目標トラフ血漿レベルが含まれる。いくつかの場合において、推奨される目標トラフ血漿レベル及び最小治療期間には、≧35IU/dL(軽度)及び>55IU/dL(重度)の、VWF:RCo目標トラフ血漿レベルが含まれる。いくつかの場合において、推奨される目標トラフ血漿レベル及び最小治療期間には、≧40IU/dL(軽度)及び>65IU/dL(重度)の、VWF:RCo目標トラフ血漿レベルが含まれる。いくつかの場合において、推奨される目標トラフ血漿レベル及び最小治療期間には、≧45IU/dL(軽度)及び>70IU/dL(重度)の、VWF:RCo目標トラフ血漿レベルが含まれる。
【0065】
「過多月経」という用語は、本明細書で使用される場合、月経出血量が1周期あたり約80mL以上である月経出血エピソード(周期的な子宮出血イベント)を指す。いくつかの場合、過多月経は、7日間を超えて続く重度の月経出血を含む。
【0066】
I.重症VWD患者における過多月経を治療する方法のためのrVWFの投与
本明細書で提供されるのは、重症VWDを有する対象における過多月経(すなわち、異常な子宮出血)を治療する方法である。そのような対象にrVWFを投与することの利点の1つは、rVWFの比活性がpdVWFと比較して高いことにより、投与されるrVWFの量及び対象に再投与される回数に柔軟性が出ることである。理解されるように、また本明細書で更に考察されるように、同時投与されるFVIIIは、組換えであっても血漿由来であってもよい。
【0067】
いくつかの態様において、rVWFは、30~100IU/kgの範囲、例えば、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、30~60、30~70、40~100、40~80、50~80、60~80、70~80、40~50、40~60、40~70、40~50、50~60、50~75、60~70、70~80、40~90、50~90、60~90、70~90、80~90、または90~100IU/kgで対象に投与される。いくつかの実施形態において、rVWFは、過多月経出血エピソード中に少なくとも1回投与される。他の実施形態において、rVWFは、出血エピソード中に2回以上、例えば、2、3、4、5回またはそれ以上投与される。いくつかの場合において、対象は、1回以上のrVWFの注入投与を受ける。各注入は、約30~90IU/kgの範囲のrVWF、例えば、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、30~60、30~70、60~70、40~50、40~60、40~70、40~75、50~75、60~75、40~80、50~75、50~80、60~80、70~80、40~85、50~85、60~85、70~85、45~50、45~60、45~70、50~60、40~90、50~90、60~90、70~90、または80~90IU/kgのrVWFを含み得る。いくつかの実施形態において、各注入は、rVWFの量が実質的に等しくあり得る。例えば、第1の注入及び第2の注入(すなわち、第1の用量及び第2の用量)は、rVWFの量が実質的に等しくあり得る。いくつかの実施形態において、第2の注入及び第3の注入(すなわち、第2の用量及び第3の用量)は、rVWFの量が実質的に等しくあり得る。いくつかの実施形態において、出血エピソードあたりに対象に投与されるrVWFの総用量は、約30~150IU/kg、例えば、40~50、40~90、40~150、40~125、40~100、40~90、40~75、50~150、50~100、75~150、または100~150IU/kgである。
【0068】
いくつかの実施形態において、軽度及び中程度の過多月経の出血イベントの場合、出血エピソードを管理するには、推定よりも更に1~2回の注入のみが必要であり、追加のVWF含有製品は必要とされなかった。いくつかの実施形態において、重度の出血イベントの場合、出血エピソードを管理するには、推定よりも更に1.5回未満の注入が必要であり、追加のVWF含有製品は必要とされなかった。いくつかの実施形態において、軽度、中程度、及び重度の出血イベントでの実際の注入回数は、出血イベントを治療するのに必要な推定回数以下であり、追加のVWF含有製品は必要とされなかった。
【0069】
いくつかの実施形態において、rVWFは、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、8~12時間ごとなどに投与される。いくつかの場合において、rVWFは、合計1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日などの間、投与される。いくつかの実施形態において、rVWFは、8時間ごと、9時間ごと、10時間ごと、11時間ごと、または12時間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、rVWFは、約3日間~約7日間、8~12時間ごとに投与される。
【0070】
いくつかの実施形態において、重症VWDを有する対象は、1型VWDを有する。いくつかの実施形態において、重症VWDを有する対象は、2型VWDを有する。いくつかの更なる実施形態において、重症VWDを有する対象は、2A型VWDを有する。いくつかの更なる実施形態において、重症VWDを有する対象は、2B型VWDを有する。いくつかの更なる実施形態において、重症VWDを有する対象は、2M型VWDを有する。いくつかの更なる実施形態において、重症VWDを有する対象は、2N型VWDを有する。他の実施形態において、重症VWDを有する対象は、3型VWDを有する。他の実施形態において、重症VWDを有する対象は、重症の非3型VWDを有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、対象は、3型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、3型VWDと診断され、≦3IU/dLのベースラインVWF抗原レベルを有する。いくつかの実施形態において、対象は、3IU/dL以下の範囲のベースラインVWF抗原レベルを有する。いくつかの実施形態において、対象は、重症の非3型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、1型または2A型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、<20IU/dLまたは20%のベースラインVWFリストセチン補因子活性(VWF:RCo)を有する。いくつかの実施形態において、対象は、<20IU/dLまたはそれ以下(すなわち、<0.2IU/mLもしくは20%またはそれ以下)の範囲のベースラインVWF:RCoを有する。いくつかの実施形態において、対象は、<20IU/dLまたはそれ以下(すなわち、<0.2IU/mLもしくは20%またはそれ以下)の範囲のベースラインVWF:RCoと同一または同等であるベースラインVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRを有する。いくつかの実施形態において、対象は、2B型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、遺伝子タイピングによって診断された2B型VWDを有する。いくつかの実施形態において、対象は、2N型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、<10%または10%以下の範囲のベースラインFVIII活性(FVIII:C)を有する。いくつかの実施形態において、対象は、2N型VWDと診断され、<10%のベースラインFVIII活性(FVIII:C)を有する。いくつかの実施形態において、対象は、2M型VWDと診断される。
【0072】
いくつかの実施形態において、対象は、ASH ISTH NHF WFH 2021ガイドライン(James et al.,Blood Advances,2021,5(1):280-300)に従ってVWDと診断されており、当該文献の内容は、図及び表を含め、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、対象は、VWF抗原活性(VWF:Ag)、血小板依存性VWF活性(例えば、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)、及び/またはFVIII凝固活性(FVIIlI:C)によって診断され、VWFレベルが<30(<0.30IU/mLのVWFレベルを指す)であり、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比が>0.7である、1型VWDを有する。いくつかの場合において、1型VWDを有する対象は、臨床医によって決定されるように、出血プロファイルに関係なく、<0.30IU/mLのVWFレベルを有する。いくつかの場合において、1型VWDを有する対象は、臨床医によって決定されるように、<0.60IU/mLのVWFレベル及び異常な出血プロファイルを有する。いくつかの実施形態において、VWFレベルは、VWF:Agを指す。いくつかの実施形態において、VWFレベルは、血小板依存性VWF活性(例えば、VWF:GPIbMまたはVWF:GPIbR)を指す。いくつかの実施形態において、VWFレベルは、VWF:Ag及び/または血小板依存性VWF活性(例えば、VWF:GPIbMまたはVWF:GPIbR)を指す。いくつかの実施形態において、対象は、VWF抗原活性(VWF:Ag)、血小板依存性VWF活性(例えば、VWF糖タンパク質IbM(VWF:GPIbM)及びVWF糖タンパク質IbR(VWF:GPIbR))、FVIII凝固活性(FVIIlI:C)、及び/またはデスモプレシン(DDAVP)試験によって診断され、VWFレベルが<30(<0.30IU/mLのVWFレベルを指す)であり、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比が>0.7である、1C型VWDを有する。いくつかの実施形態において、DDAVP試験は、1C型の対象におけるVWFクリアランス増強を確認するために、注入後1時間及び4時間の血液検査を含む。いくつかの実施形態において、対象は、VWF:Ag、血小板依存性VWF活性、及びFVIII:C評価によって診断され、VWFレベルが<30、<0.30IU/mLのVWFレベルであり、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比が<0.7である、2型VWDを有する。いくつかの実施形態において、対象は、VWF:Ag活性、血小板依存性VWF活性、FVIII:C活性、VWFコラーゲン結合と抗原の比(VWF:CB/Ag)アッセイ、VWFマルチマー分析、及び/または遺伝子タイピングによって診断され、VWFレベルが<30、<0.30IU/mLのVWFレベルであり、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比が<0.7であり、異常なVWFマルチマープロファイルを有する、2A型または2B型VWDを有する。いくつかの場合において、対象は、遺伝子検査で更に確認された2B型を有する。いくつかの実施形態において、対象は、VWF:Ag活性、血小板依存性VWF活性、FVIII:C活性、VWFコラーゲン結合と抗原の比(VWF:CB/Ag)アッセイ、VWFマルチマー分析、及び/または遺伝子タイピングによって診断され、VWFレベルが<30(<0.30IU/mLのVWFレベル)であり、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比が<0.7であり、正常なVWFマルチマープロファイルを有する、2M型VWDを有する。いくつかの実施形態において、対象は、VWF FVIIIの結合(VWF:FVIIIB)及び/または遺伝子検査によって診断された2N型VWDを有する。いくつかの場合において、対象は、2N型VWDを有し、FVIII<VWFレベルまたは異常なレベルに基づいても診断される。いくつかの場合、遺伝子検査は、1つ以上の2N型VWD遺伝子バリアントの存在を検出する。VWF糖タンパク質IB結合、VWFコラーゲン結合、VWFマルチマー、DDAVP負荷試験のアッセイを含む、VWFアッセイを評価するための方法は、当業者に知られており、例えば、Patzke and Favaloro,Methods Mol Biol,2017,1646:453-460;Higgins and Goodwin,Am J Hematol,2019,94:496-503;Stufano et al.,Haemophilia,2020,26(2):298-305;Ni et al.,Int J Lab Hematol,2013,35(2):170-176;Michiels et al.,Clinical and Applied Thrombosis/Hemostatis,2017,23(6):518-531;Mohammed and Favaloro,Methods Mol Biol,2017,1646:461-472に記載されている。
【0073】
いくつかの実施形態において、対象は、過去12ヶ月間に1以上の出血エピソードを治療するために、血漿由来VWF(pdVWF)の投与を受けたことがある。いくつかの実施形態において、対象は、過去12ヶ月にpdVWFの投与を受けたことがある。いくつかの実施形態において、対象は、過去12ヶ月間に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の出血エピソードを治療するために、pdVWFの投与を受けたことがある。いくつかの実施形態において、対象は、rVWFの初回投与前の過去12ヶ月間にpdVWFの投与を受けたことがある。言い換えれば、対象は、過多月経出血エピソードを治療するためにrVWFの投与を受ける前の過去12ヶ月以内にpdVWFの投与を受けている。
【0074】
いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCo活性が、投与後、0.6IU/mL(すなわち、60IU/dL)以上の範囲となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの用量は、対象のVWF:RCo活性が、投与後、0.6IU/mL(すなわち、60IU/dL)より大きくなるように投与される。いくつかの実施形態において、対象は、投与後、対象のVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbR活性が、0.6IU/mL(すなわち、60IU/dL)以上の範囲のVWF:RCo活性と同一または同等となるように、rVWFの用量が投与される。
【0075】
いくつかの実施形態において、対象は、対象のFVIII:C活性が、投与後、0.4IU/mL(すなわち、40IU/dL)以上の範囲となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの用量は、対象のFVIII:C活性が、投与後、0.4IU/mL(すなわち、40IU/dL)より大きくなるように投与される。
【0076】
いくつかの実施形態において、対象は、投与後、対象のVWF:RCo活性が、0.6IU/mL(すなわち、60IU/dLまたは60%または正常レベル)以上の範囲となるように(または対象のVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbR活性が0.6IU/mL(すなわち、60IU/dL)以上の範囲のVWF:RCo活性と同一もしくは同等となるように)、また、FVIII:C活性が、0.4IU/mL(すなわち、40IU/dLまたは正常レベルの40%)以上の範囲となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの用量は、投与後、対象のVWF:RCo活性が0.6IU/mL(すなわち、60IU/dLまたは正常レベルの60%)以上に大きくなるように(または対象のVWF:GPIbMもしくはVWF:GPIbR活性が0.6IU/mL(すなわち、60IU/dLまたは正常レベルの60%)以上の範囲のVWF:RCo活性と同一もしくは同等となるように)、また、FVIII:C活性が0.4IU/mL(すなわち、正常レベルの40%)よりも大きくなるように、投与される。
【0077】
当業者であれば、本明細書に包含されるVWFのトラフレベルは、VWF:RCoだけでなく、VWF:GPIbM、VWF:GPIbR、及び他の既知の方法に従って測定することができることを認識している。したがって、VWFトラフレベルがVWF:RCoを基準にして記載されていても、本明細書の実施形態のいずれも、VWF:RCoによって測定された記載のトラフレベルと同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRによって測定されたVWFのトラフレベルを包含することを理解すべきである。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも30%(すなわち、30IU/dLまたは0.3IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも35%(すなわち、35IU/dLまたは0.35IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも40%(すなわち、40IU/dLまたは0.4IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも45%(すなわち、45IU/dLまたは0.45IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも50%(すなわち、50IU/dLまたは0.5IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも55%(すなわち、55IU/dLまたは0.55IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも60%(すなわち、60IU/dLまたは0.6IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも65%(すなわち、65IU/dLまたは0.65IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも70%(すなわち、70IU/dLまたは0.70IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも75%(すなわち、75IU/dLまたは0.75IU/mL)となるように、rVWFの用量が投与される。
【0078】
いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.6IU/mLまたは60IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.6IU/mLまたは60IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.5IU/mLまたは50IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.5IU/mLまたは50IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.4IU/mLまたは40IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.4IU/mLまたは40IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.3IU/mLまたは30IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持する。いくつかの実施形態において、rVWFの投与は、0.3IU/mLまたは30IU/dLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持する。
【0079】
いくつかの実施形態において、対象が重症の過多月経エピソードを経験する場合、約1~7日間またはそれ以上の間、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持するように、1以上の用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルは、約1~2日間、約1~3日間、約2~5日間、約1~5日間、約1~7日間、約2~7日間、約3~7日間、約4~7日間、約5~7日間、約6~7日間またはそれ以上の間維持される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルは、1週間、2週間、3週間またはそれ以上の間、出血エピソードが解決するまで。いくつかの実施形態において、対象が重症の過多月経エピソードを経験する場合、約1~7日間またはそれ以上の間、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持するように、1以上の用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルは、約1~2日間、約1~3日間、約2~5日間、約1~5日間、約1~7日間、約2~7日間、約3~7日間、約4~7日間、約5~7日間、約6~7日間またはそれ以上の間維持される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルは、1週間、2週間、3週間またはそれ以上の間、出血エピソードが解決するまで、維持される。
【0080】
いくつかの実施形態において、対象が軽症から中等症の過多月経エピソードを経験する場合、約1~7日間またはそれ以上の間、0.3IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルを維持するように、1以上の用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、0.3IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルは、約1~2日間、約1~3日間、約2~5日間、約1~5日間、約1~7日間、約2~7日間、約3~7日間、約4~7日間、約5~7日間、約6~7日間またはそれ以上の間維持される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルは、1週間、2週間、3週間またはそれ以上の間、出血エピソードが解決するまで、維持される。いくつかの実施形態において、対象が軽症から中等症の過多月経エピソードを経験する場合、約1~7日間またはそれ以上の間、0.3IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルを維持するように、1以上の用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、0.3IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルは、約1~2日間、約1~3日間、約2~5日間、約1~5日間、約1~7日間、約2~7日間、約3~7日間、約4~7日間、約5~7日間、約6~7日間またはそれ以上の間維持される。いくつかの実施形態において、0.5IU/mLより大きいVWF:RCoのトラフレベルと実質的に同等であるVWF:GPIbMまたはVWF:GPIbRのトラフレベルは、1週間、2週間、3週間またはそれ以上の間、出血エピソードが解決するまで、維持される。
【0081】
いくつかの実施形態において、組換え第VIII因子(rFVIII)はまた、過多月経出血エピソードを治療するために、重症VWDを有する対象に投与される。いくつかの場合において、投与される治療薬は、rVWF及びrFVIIIを含む。他の場合において、投与される治療薬は、rFVIIIを含まない。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約10~70IU/kgの範囲、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、または60~70IU/kgで対象に投与される。いくつかの場合において、rFVIIIは、初回(第1)用量または初回(第1)注入で投与される。いくつかの場合において、rFVIIIは、第2の用量または第2の注入の一部として投与されない。いくつかの実施形態において、過多月経出血エピソードを経験するVWDの対象は、rVWF及びrFVIIIの単回注入を受ける。いくつかの実施形態において、rVWFの第2の投与は、rFVIIIと一緒に行われない。
【0082】
方法のいくつかの実施形態において、rVWF及びFVIIIが一緒に投与される場合、rVWFとFVIIIの比は、約1.5:0.8である。方法のいくつかの実施形態において、rVWF及びFVIIIが一緒に投与される場合、rVWFとFVIIIの比は、約1.3:1である。方法のいくつかの実施形態において、rVWF及びFVIIIが一緒に投与される場合、rVWFとFVIIIの比は、約1.1:0.8である。方法のいくつかの実施形態において、rVWF及びFVIIIが一緒に投与される場合、rVWFとFVIIIの比は、約1.5:1である。方法のいくつかの実施形態において、rVWF及びFVIIIが一緒に投与される場合、rVWFとFVIIIの比は、約1.1:1.2である。
【0083】
いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、40~50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、約40IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、約45IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、約50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、1または2用量の40~50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、1または2用量の約40IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、1または2用量の約45IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合、1または2用量の約50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経である場合及び対象が重症1型または2型VWDである場合、1または2用量の40~50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、1または2用量の約40IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、1または2用量の約45IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、1または2用量の約50IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが2型VWDである場合、1または2用量の約40IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが2型VWDである場合、1または2用量の約45IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が軽度または中程度の過多月経であり、重症VWDが2型VWDである場合、1または2用量の約50IU/kgのrVWFが投与される。
【0084】
いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約40~90IU/kgまたは約50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約40~90IU/kgのrVWFの第1の用量。いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50~75IU/kgのrVWFの第1の用量。いくつかの更なる実施形態において、約50IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約55IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約60IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約65IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約70IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。更なる実施形態において、約75IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの実施形態において、約80IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。更なる実施形態において、約85IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの実施形態において、約90IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、rVWFの第1の用量が投与された後、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。
【0085】
いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約50IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約55IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約55IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約55IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約55IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約55IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが1型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。
【0086】
いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約50~80IU/kgのrVWFまたは約60~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60~80IU/kgのrVWFの第1の用量。いくつかの更なる実施形態において、約60IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約65IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約70IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約75IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、約80IU/kgのrVWFの第1の用量及び過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、rVWFの第1の用量が投与された後、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。
【0087】
いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの初回用量(第1の用量とも呼ばれる)が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約65IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約70IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約75IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約45IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約50IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約55IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経であり、重症VWDが2型または3型VWDである場合、約80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与される。
【0088】
いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、約50~80IU/kgのrVWFまたは約60~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで40~60IU/kgのrVWFが更に投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、約40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで約40IU/kgのrVWFが更に投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで約45IU/kgのrVWFが更に投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで約50IU/kgのrVWFが更に投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで約55IU/kgのrVWFが更に投与される。いくつかの更なる実施形態において、過多月経が重度または重症の過多月経である場合、50~80IU/kgのrVWFの第1の用量が投与され、次いで、40~60IU/kgのrVWFが8~12時間ごとに約3日間投与され、次いで、治療合計期間が7日間になるまで約60IU/kgのrVWFが更に投与される。
【0089】
一般に、1型VWDは、<30IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、<30IU/dLのVWF:Ag、低いまたは正常なFVIII、及び>0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。2A型VWDは、<30IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、<30~200IU/dLのVWF:Ag、低いまたは正常なFVIII、及び<0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。2B型VWDは、<30~200IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、<30IU/dLのVWF:Ag、低いまたは正常なFVIII、及び通常<0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。2M型VWDは、<30IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、<30~200IU/dLのVWF:Ag、低いまたは正常なFVIII、及び<0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。2N型VWDは、30~2000IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、30~200IU/dLのVWF:Ag、非常に低いFVIII、及び>0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。3型VWDは、<3IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、<3IU/dLのVWF:Ag、極めて低い(<10IU/dL)FVIIIによって示され、VWF:RCo/VWF:Ag比は適用されない。正常は、50~200IU/dLのVWF:RCoまたはVWFの血小板結合活性(すなわち、VWF:GPIbM及びVWF:GPIbR)によって決定した場合のそれと同等の値、50~200IU/dLのVWF:Ag、正常なFVIII、及び>0.5~0.7IU/dLのVWF:RCo/VWF:Ag比またはVWF/VWF:Ag比の血小板結合活性に基づいたそれと同等の値によって示される。いくつかの実施形態において、対象は、3型VWDを有する。いくつかの実施形態において、対象は、重症の1型VWDを有する。いくつかの実施形態において、対象は、重症の2型VWDを有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、対象は、過去12ヶ月以内に少なくとも1回の出血イベントに対して治療を受けている。いくつかの実施形態において、対象は、過去12ヶ月以内に1回を超える出血イベントに対して治療を受けている。
【0091】
一態様において、VWDを有する対象は、過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、VWDを有する対象は、軽度の過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、VWDを有する対象は、中程度の過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、VWDを有する対象は、重度の過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、1型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、2型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、2A型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、2B型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、2M型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、2N型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、3型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、重症3型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、非重症3型VWDを有する対象は、軽度、中程度、または重度の過多月経エピソードを含む過多月経の治療のために約30IU/kg~約90IU/kgの範囲の少なくとも1用量のrVWFが投与される。
【0092】
いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有するVWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有するVWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量、及び30~60IU/kgのrVWFの第2の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有する1型VWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有するVWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量、及び30~60IU/kgのrVWFの第2の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有する2型VWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有するVWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量、及び30~60IU/kgのrVWFの第2の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有する3型VWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経を有するVWDの対象は、30~60IU/kgのrVWFの第1の用量、及び30~60IU/kgのrVWFの第2の用量が投与される。
【0093】
いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有するVWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有するVWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量及び8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有するVWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量、8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの追加用量、及び1日1回の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与され、rVWF治療合計期間は、7日間以内である。特定の実施形態において、rVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。
【0094】
特定の実施形態において、rVWFの各用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、8~12時間ごとに投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、毎日に投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの場合において、rVWF及びrFVIIIは、対象に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で対象に投与される。
【0095】
いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する1型VWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する1型VWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量及び8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する1型VWDの対象は、40~90IU/kgのrVWFの第1の用量、8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの追加用量、及び1日1回の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与され、rVWF治療合計期間は、7日間以内である。特定の実施形態において、rVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。特定の実施形態において、rVWFの各用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、8~12時間ごとに投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、毎日に投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの場合において、rVWF及びrFVIIIは、対象に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で対象に投与される。
【0096】
いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する2型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する2型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量及び8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する2型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量、8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの追加用量、及び1日1回の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与され、rVWF治療合計期間は、7日間以内である。特定の実施形態において、rVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。特定の実施形態において、rVWFの各用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、8~12時間ごとに投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、毎日に投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの場合において、rVWF及びrFVIIIは、対象に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で対象に投与される。
【0097】
いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する3型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する3型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量及び8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経を有する3型VWDの対象は、50~90IU/kgのrVWFの第1の用量、8~12時間ごとの約3日間の30~70IU/kgのrVWFの追加用量、及び1日1回の30~70IU/kgのrVWFの後続用量が投与され、rVWF治療合計期間は、7日間以内である。特定の実施形態において、rVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。特定の実施形態において、rVWFの各用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、8~12時間ごとに投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの実施形態において、毎日に投与されるrVWFの用量の少なくとも1つは、組換え第VIII因子とともに投与される。いくつかの場合において、rVWF及びrFVIIIは、対象に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rFVIIIは、約20IU/kg~約50IU/kgの用量で対象に投与される。
【0098】
いくつかの実施形態において、重症1型VWDを有し、重度の過多月経エピソードを体験している対象は、7日間以内の合計期間に、(a)50~75IU/kgのrVWFの第1の用量;(b)対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも50%となるような8~12時間ごとの3日間の40~60IU/kgのrVWFの第2セットの用量;及び(c)1日1回の40~60IU/kgのrVWFの第3セットの用量が対象に投与される。
【0099】
いくつかの実施形態において、重症2型VWDを有し、重度の過多月経エピソードを体験している対象は、7日間以内の合計期間に、(a)60~80IU/kgのrVWFの第1の用量;(b)対象のVWF:RCoのトラフレベルが少なくとも50%となるような8~12時間ごとの3日間の40~60IU/kgのrVWFの第2セットの用量;及び(c)1日1回の40~60IU/kgのrVWFの第3セットの用量が対象に投与される。
【0100】
いくつかの実施形態において、対象が軽度から中程度の過多月経エピソードを経験している場合、1以上の用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、軽度から中程度の出血エピソードの場合、対象は、1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、軽度から中程度の出血エピソードの場合、対象は、2用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経出血エピソードの場合、対象は、1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、重度の出血エピソードの場合、対象は、2用量のrVWFが投与される。
【0101】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、中程度の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または40~60IU/kgの範囲のrVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、軽度の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの用量が投与される。いくつかの実施形態において、対象は、1、2またはそれ以上の用量のrVWFが投与される。
【0102】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第1の用量が投与される。ある特定の実施形態において、対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第2の用量が投与される。
【0103】
いくつかの実施形態において、重度の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第1の用量が投与される。ある特定の実施形態において、対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第2の用量が投与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、中程度の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第1の用量が投与される。ある特定の実施形態において、対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第2の用量が投与される。
【0105】
いくつかの実施形態において、軽症の過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第1の用量が投与される。ある特定の実施形態において、対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲のrVWFの第2の用量が投与される。
【0106】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを有する対象は、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲の第1の用量が投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの後続用量は、4~12時間ごとに、約30~90IU/kg、約30~60IU/kg、約40~80IU/kg、約50~75IU/kg、約50~90IU/kg、約50~80IU/kg、約70~90IU/kg、または約40~60IU/kgの範囲である。
【0107】
いくつかの実施形態において、rVWFの後続用量は、4~12時間、6~12時間、8~12時間、10~12時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、及び12時間ごとに、約30~70IU/kgまたは約40~60IU/kgの範囲である。いくつかの実施形態において、rVWFの後続用量は、出血エピソードの期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの後続用量は、出血エピソードが解決するまで投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの後続用量は、約1~2日間、約1~3日間、約2~5日間、約1~5日間、約1~7日間、約2~7日間、約3~7日間、約4~7日間、約5~7日間、約6~7日間またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態において、第1の用量の後、rVWFは、約30~70IU/kgまたは約40~60IU/kgの範囲の用量で、8~12時間ごとに約3日間投与される。
【0108】
いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、治療の初日に投与され、後続用量は、最大7日の治療合計期間で投与される。いくつかの実施形態において、rVWFの第1の用量は、1日目に投与され、次の用量は、2日間、3日間、4日間、5日間またはそれ以上投与される。ある特定の実施形態において、rVWFの投与は、0.5IU/mL以上のVWF:RCoまたは同等のVWF活性アッセイ、限定するものではないが、VWF:GPIbMアッセイ及びVWF:GPIbRアッセイなどによって決定した場合のそれと同等の値のトラフレベルを維持する。
【0109】
いくつかの実施形態において、軽度または中程度の過多月経エピソードを有する対象は、40~50IU/kgを1用量または2用量(すなわち、1または2回の注入)で投与される。いくつかの実施形態において、対象は、重症1型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、重症1型VWDと診断され、20%のベースラインVWF:RCo活性または同等のVWF活性アッセイ、限定するものではないが、VWF:GPIbMアッセイ及びVWF:GPIbRアッセイなどによって決定した場合のそれと同等の値である。
【0110】
いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約50~75IU/kgの初回用量(すなわち、第1の用量または第1セットの用量)、8~12時間ごとの3日間の約40~60IU/kgの第2の用量または第2セットの用量、及び毎日の約40~60IU/kgの第3の用量または第3セットの用量が最大7日の治療合計期間で投与される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約60~80IU/kgの第1の用量及び8~12時間ごとの3日間の約40~60IU/kgの追加の後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約60~80IU/kgの第1の用量及び毎日の約40~60IU/kgの追加後続用量が最大7日の治療合計期間で投与される。いくつかの場合において、第1の用量後の追加用量により、0.5IU/mL以上のVWF:RCoまたは同等のVWF活性アッセイによって決定した場合のそれと同等の値のトラフレベルが維持される。いくつかの実施形態において、対象は、重症1型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、重症1型VWDと診断され、20%のベースラインVWF:RCo活性または同等のVWFアッセイ、限定するものではないが、VWF:GPIbMアッセイ及びVWF:GPIbRアッセイなどによって決定した場合のそれと同等の値である。
【0111】
いくつかの実施形態において、軽度または中程度の過多月経エピソードを有する対象は、40~50IU/kgを1用量または2用量(すなわち、1または2回の注入)で投与される。いくつかの実施形態において、対象は、2A型、2B型、2N型または2M型を含むがこれらに限定されない2型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、3型VWDと診断される。
【0112】
いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約60~80IU/kgの第1の用量(すなわち、第1の用量または第1セットの用量)、8~12時間ごとの3日間の約40~60IU/kgの第2の用量または第2セットの用量、及び毎日の約40~60IU/kgの第3の用量または第3セットの用量が最大7日の治療合計期間で投与される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約60~80IU/kgの第1の用量及び8~12時間ごとの3日間の約40~60IU/kgの追加の後続用量が投与される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを有する対象は、約60~80IU/kgの第1の用量及び毎日の約40~60IU/kgの追加後続用量が最大7日の治療合計期間で投与される。いくつかの場合において、第1の用量後の用量により、0.5IU/mL以上のVWF:RCoまたは同等のVWF活性アッセイによって決定した場合のそれと同等の値のトラフレベルが維持される。いくつかの実施形態において、対象は、2A型、2B型、2N型または2M型VWDを含むがこれらに限定されない2型VWDと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、3型VWD、すなわち、重症または非重症3型VWDと診断される。
【0113】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを有する対象は、出血エピソードの期間中(すなわち、継続期間中)、約40IU/kg~約200IU/kg(例えば、約40IU/kg~約200IU/kg、約40IU/kg~約195IU/kg、約40IU/kg~約190IU/kg、約40IU/kg~約185IU/kg、約40IU/kg~約180IU/kg、約40IU/kg~約175IU/kg、約40IU/kg~約170IU/kg、約40IU/kg~約165IU/kg、約40IU/kg~約160IU/kg、約40IU/kg~約155IU/kg、約40IU/kg~約150IU/kg、約41IU/kg~約200IU/kg、約42IU/kg~約200IU/kg、約43IU/kg~約200IU/kg、約44IU/kg~約200IU/kg、約45IU/kg~約200IU/kg、約46IU/kg~約200IU/kg、約47IU/kg~約200IU/kg、約48IU/kg~約200IU/kg、約49IU/kg~約200IU/kg、約50IU/kg~約200IU/kg、約52IU/kg~約200IU/kg、約55IU/kg~約200IU/kg、約58IU/kg~約200IU/kg、約60IU/kg~約200IU/kg、約62IU/kg~約200IU/kg、約64IU/kg~約200IU/kg、約66IU/kg~約200IU/kg、約68IU/kg~約200IU/kg、約69IU/kg~約200IU/kg、約70IU/kg~約200IU/kg、約72IU/kg~約200IU/kg、約74IU/kg~約200IU/kg、約75IU/kg~約200IU/kg、約77IU/kg~約200IU/kg、約79IU/kg~約200IU/kg、約80IU/kg~約200IU/kg、約40IU/kg~約160IU/kg、約40IU/kg~約159IU/kg、約44IU/kg~約185IU/kgなど)の範囲のrVWFが投与される。
【0114】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを有する対象は、出血エピソードの期間中、約15IU/kg~約100IU/kg(例えば、約15IU/kg~約100IU/kg、約17IU/kg~約100IU/kg、約18IU/kg~約100IU/kg、約19IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約100IU/kg、約21IU/kg~約100IU/kg、約22IU/kg~約100IU/kg、約23IU/kg~約100IU/kg、約24IU/kg~約100IU/kg、約25IU/kg~約100IU/kg、約26IU/kg~約100IU/kg、約27IU/kg~約100IU/kg、約28IU/kg~約100IU/kg、約29IU/kg~約100IU/kg、約30IU/kg~約100IU/kg、約31IU/kg~約100IU/kg、約32IU/kg~約100IU/kg、約33IU/kg~約100IU/kg、約34IU/kg~約100IU/kg、約35IU/kg~約100IU/kg,約36IU/kg~約100IU/kg、約37IU/kg~約100IU/kg、約38IU/kg~約100IU/kg、約39IU/kg~約100IU/kg、約40IU/kg~約100IU/kg、約41IU/kg~約100IU/kg、約42IU/kg~約100IU/kg、約43IU/kg~約100IU/kg、約44IU/kg~約100IU/kg、約45IU/kg~約100IU/kg、約46IU/kg~約100IU/kg、約47IU/kg~約100IU/kg、約48IU/kg~約100IU/kg、約49IU/kg~約100IU/kg、約50IU/kg~約100IU/kg、約15IU/kg~約75IU/kg、約20IU/kg~約75IU/kg、約25IU/kg~約75IU/kg、約30IU/kg~約75IU/kg、約25IU/kg~約45IU/kg、約28IU/kg~約40IU/kg、約25IU/kg~約74IU/kg、約30IU/kg~約74IU/kg、約31IU/kg~約74IU/kgなど)の範囲のrFVIIIが投与される。
【0115】
いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを治療するためにrVWFを投与される対象は、以前の過多月経エピソードを治療するためにホルモン療法を以前に受けたことがある。多くの実施形態において、以前の過多月経エピソードは、混合型避妊薬またはレボノルゲストレル放出子宮内システムを使用して治療された。いくつかの実施形態において、以前の過多月経エピソードは、トランセキサム酸を使用して治療された。他の実施形態において、以前の過多月経エピソードは、デスモプレシンを使用して治療された。VWDを有する対象における過多月経エピソードを治療するための他の方法の説明は、例えば、Connell et al.,Blood,2021,5(1):301-325;Rimmer et al.,Haemophilia,2013,19(6):933-938;Adeyemi-Fowode et al.,;J Pediatr Adolesc Gynecol,2017,30(4):479-483;Chi et al.,Contraception,2011,83(3):242-247;Kouides et al.,Br J Haematol,2009,145(2):212-220;Kingman et al.,BJOG,2004,111(12):1425-1428;Amesse et al.,J Pediatr Hemaltol Oncol,2005,27(7):357-363;及びLukes et al.,Fertil Steril,2008,90(3):673-677に見出すことができ、その内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0116】
いくつかの実施形態において、対象は、rVWFのみで治療される。いくつかの実施形態において、対象は、血漿由来VWFで治療されない。いくつかの実施形態において、対象は、組換えFVIIIが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、過多月経エピソードを治療するために、組換えFVIIIの投与を受けない。
【0117】
いくつかの実施形態において、対象は、過多月経エピソードのために、1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、過多月経エピソードのために、少なくとも1用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、過多月経エピソードのために、2~6用量、例えば、2用量、3用量、4用量、5用量または6用量のrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、過多月経エピソードのために、2~6回の注入、例えば、2回の注入、3回の注入、4回の注入、5回の注入または6回の注入のrVWFが投与される。
【0118】
過多月経、または重度月経出血(HMB)は、VWDなどの出血性疾患を有する女性が経験する一般的な症状である。出血性疾患のない女性の場合、平均的な月経出血量は、25~80mlで、大きな血塊はない。いくつかの場合、対象は、対象の平均的な月経出血量ではなく、対象が自己申告した症状及びそのような症状が生活の質に与える影響に基づいて、過多月経を経験しているとみなされる。したがって、過多月経を有する対象は、過多月経出血エピソード1回につき80ml未満の平均出血量を有し得る。過多月経の分類及び管理の指針は、例えば、National Institute for Health and Care Excellence(NICE)Heavy menstrual bleeding:assessment and management.NICE guideline,2018;Quinn and Higham,Women’s Health(Lond.),2016,122(1):21-26;及びMagnay et al.,BMC Women’s Health,2020,20:24に見出すことができる。いくつかの場合において、過多月経は、PALM-COEINシステムに従って分類される(Management of acute abnormal uterine bleeding in nonpregnant reproductive-aged women.Committee Opinion No.557.American College of Obstetricians and Gynecologists.Obstet Gynecol 2013;121:891-6)。
【0119】
過多月経出血エピソードは、当業者によって認識される測定及び評価によって評価することができる。評価の非限定的な例としては、Ruta Menorrhagia Score、FIGO AUB System 1、FIGO AUB System 2、絵図式出血量評価チャート(PBAC)、周期重症度スコア(CSR)、周期長(CL)、質問票、健康調査、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0120】
いくつかの実施形態において、軽度の過多月経は、対象のヘモグロビンレベルが12g/dLを超える月経出血エピソードを指す。いくつかの実施形態において、中程度の過多月経は、対象のヘモグロビンレベルが約9~12g/dLである月経出血エピソードを指す。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経は、対象のヘモグロビンレベルが約9g/dL未満となる月経出血エピソードを指す。いくつかの場合において、過多月経は、次の因子のうちの1つ以上に基づく(a)対象自身の経験に基づく月経出血量、(b)過多月経の発生率、(c)月経頻度、(d)月経の期間、及び(e)月間出血量の体積。
【0121】
いくつかの実施形態において、軽度の過多月経は、重度の過多月経と比較して出血の重症度が低いことを特徴とする月経出血エピソードを含む。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経は、軽度の過多月経と比較して出血の重症度が大きいことを特徴とする月経出血エピソードを含む。いくつかの場合において、軽度、中程度、または重度の過多月経出血エピソードは、対象の身体的、社会的、感情的及び/または物質的な生活の質に対する出血エピソードの影響を評価/査定することで、対象によって決定される。
【0122】
一般に、軽度の出血は、多量出血、大出血及び/または臨床的に関係のある非大出血(CRNM出血)(Aristotle臨床定義)の基準を満たさない急性または亜急性の臨床的に明らかな出血を特徴とする。一般に、大出血は、International Society on Thrombosis and Haemostasis(ISTH)の基準によって特徴付けられ、生命を脅かす及び/または致死的なあらゆる出血ならびに重要な領域または臓器への症状性出血を含む。大出血イベントは、ヘモグロビンの少なくとも20g/Lの低下または>2単位の全血輸血があるものを含み得る(生命を脅かす出血の定義で言及されているのは濃縮赤血球;生命を脅かす出血のRE-LY定義:以下の基準のうちの1つ以上:少なくとも5.0g/Lのヘモグロビンレベルの低下;少なくとも4Uの血液もしくは濃縮赤血球の輸血;静脈内強心薬の使用を必要とする低血圧を伴うもの;ヘモグロビンの>2g/dLの低下もしくは>2単位の全血/赤血球の輸血(ISTHまたはRocket-AF臨床定義);及び/または手術もしくは≧2Uの輸血を必要とする出血もしくは≧2.0g/Lのヘモグロビン低下エピソードを伴う出血。例えば、Rodeghiero et al.,Journal of Thrombosis and Haemostasis,2010,8:2063-2065 and supplementary materials for the ISTH Blood Assessment Tool;“The Diagnosis,Evaluation,and Management of von Willebrand Disease,”NIH Publication No.08-5832,December 2007;及びConnell et al.,Blood Advances,2021,5(1):301-325を参照されたい。
【0123】
II.重症VWD患者における過多月経を治療するためのrVWFの投与の治療効果
いくつかの実施形態において、本発明は、重症フォンヴィレブランド病(VWD)を有する対象の過多月経エピソードを治療することを提供する。いくつかの実施形態において、治療は、過多月経エピソードを管理するために、組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを管理することは、出血の重症度、出血期間、出血頻度、及び過多月経エピソードの解決までの時間を減らすことが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、過多月経エピソードを管理することは、治療効果を示すものである。
【0124】
いくつかの実施形態において、rVWF投与の治療効果は、rVWFによる治療前のレベルと比較して、rVWFによる治療後のFVIII、FVIII:C、VWF:RCo、VWF:GPIbM、VWF:GPIbR、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比、VWFコラーゲン結合と抗原の比(VWF:CB/VWF:Ag比)及び/またはVWF:Ag活性レベルの改善によって示される。いくつかの実施形態において、FVIII、FVIII:C、VWF:RCo、VWF:GPIbM、VWF:GPIbR、血小板依存性VWF活性/VWF:Ag比、VWFコラーゲン結合と抗原の比(VWF:CB/VWF:Ag比)及び/またはVWF:Ag活性レベルの改善は、活性レベルが正常レベル、すなわち、VWDを有しない対象におけるレベルに近付くような活性レベルの変化を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、治療効果は、臨床評価スケールに従って決定される。いくつかの実施形態において、臨床評価スケールは、3、4、または5つの分類または基準を含む。いくつかの実施形態において、臨床評価スケールは、「優良」、「良好」、「中程度」及び「なし」の評価を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードを経験する患者に本明細書で提供される方法に従ってrVWFを投与することは、「優良」または「良好」に分類される治療上の効果をもたらす。いくつかの場合において、rVWF投与の治療上の効果は、「中程度」と定義される。いくつかの実施形態において、軽度及び/または中程度の過多月経エピソードを経験する患者に本明細書で提供される方法に従ってrVWFを投与することは、「優良」または「良好」に分類される治療上の効果をもたらす。いくつかの場合において、rVWF投与の治療上の効果は、「中程度」と定義される。
【0127】
いくつかの実施形態において、軽度及び/または中程度の過多月経エピソードの治療に対する「優良」という治療上の効果の評価は、注入回数が、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な推定注入回数と同等またはそれ以下であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。いくつかの実施形態において、軽度及び中程度の過多月経エピソードの治療に対する「良好」という治療効果の評価は、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な回数と比較して、更に1~2回の追加注入がエピソードを解決するために必要であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。いくつかの実施形態において、軽度及び中程度の過多月経エピソードの治療に対する「中程度」という治療効果の評価は、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な回数と比較して、3回以上の追加注入がエピソードを解決するために必要であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。いくつかの実施形態において、軽度及び中程度の過多月経エピソードの治療に対する「なし」という治療効果の評価は、重症及びコントロール不良の出血がrVWF治療によって変化せず、追加のVWF含有凝固因子療法が必要である場合に示される。
【0128】
いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードの治療に対する「優良」という治療効果の評価は、注入回数が、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な推定注入回数と同等またはそれ以下であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードの治療に対する「良好」という治療効果の評価は、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な回数と比較して、更に1.5倍未満の注入がエピソードを解決するために必要であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードの治療に対する「中程度」という治療効果の評価は、1型、2A型、2B型、2M型、2N型、または3型VWDを有しない対象における同等のエピソードを治療するのに必要な回数と比較して、更に少なくとも1.5倍(例えば、≧1.5倍)の注入がエピソードを解決するために必要であり、過多月経エピソードを解決するために追加のVWF含有凝固因子療法が必要でない場合に示される。
【0129】
いくつかの実施形態において、重度または重症の過多月経エピソードの治療に対する「なし」という治療効果の評価は、重症及びコントロール不良の出血または出血の強度がrVWF治療によって変化せず、追加のVWF含有凝固因子療法が必要である場合に示される。
【0130】
治療効果はまた、過多月経を評価するのに有用な以下の尺度のうちの1つ以上を使用して評価することができる:PBACによる月経出血、周期重症度、周期期間、及び健康関連の生活の質(HRQoL)質問票、例えば、Rand Short Form 36-Question Health Survey(SF-36)、Ruta Menorrhagia Severity Scale、Center for Disease Control Health-Related Quality of Life-14 Question Form(CDC-HRQoL14)、及びCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)。
【0131】
III.組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)
本発明は、過多月経出血エピソードを経験したことがあるまたは経験している重症VWDを有する対象を治療するための、rVWFを含む組成物を利用する。いくつかの実施形態において、rVWFを含む組成物は、重症VWDを有する対象における過多月経出血エピソードの発症を予防するためのものである。
【0132】
ある特定の実施形態において、本発明のVWFタンパク質は、組換えVWFを作製するためのWO1986/06096及びUS8,597,910に記載されているものなどのコンストラクトを含み得る。提供される有用なVWFは、モノマー形態及びマルチマー形態を含む、全ての可能な形態を含み得る。VWFの特に有用な形態の1つは、少なくとも2つのVWFのホモマルチマーである。VWFタンパク質は、生物学的に活性な誘導体であってもよいし、FVIIIの安定剤としてのみ使用される場合には、VWFは、生物学的に活性でない形態であってもよい。また、本発明は、組み合わせて使用される様々な形態のVWFも包含することも理解されたい。例えば、本発明に有用な組成物は、異なるマルチマー、異なる誘導体、ならびに生物学的に活性な誘導体及び生物学的に活性でない誘導体の両方を含み得る。
【0133】
提供されるrVWF組成物のpdVWFに対する利点は、rVWFがpdVWFよりも高い比活性を示すことである。pdVWFの比活性は、約40mU/μg~約70mU/μg(すなわち、約40IU VWF:RCo/mgタンパク質~約70IU VWF:RCo/mgタンパク質)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、少なくとも約20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、52.5、55、57.5、60、62.5、65、67.5、70、72.5、75、77.5、80、82.5、85、87.5、90、92.5、95、97.5、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mU/μgまたはそれ以上の比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約20~約30mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約30~約40mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約40~約50mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約50~約60mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約60~約70mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約70~約80mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約80~約90mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約90~約100mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約100~約110mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約110~約120mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約120~約130mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約130~約140mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約140~約150mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、約150mU/μgを超える比活性を有する。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書で概説される方法に従って精製されたrVWFは、少なくとも約20、22.5、25、27、5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、52.5、55、57.5、60、62.5、65、67.5、70、72.5、75、77.5、80、82.5、85、87.5、90、92.5、95、97.5、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mU/μgまたはそれ以上の比活性を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWFは、20mU/μg~150mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、30mU/μg~120mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、40mU/μg~90mU/μgの比活性を有する。いくつかの実施形態において、rVWFは、WO2012/171031の表1の再掲である以下の表1に見出される変形形態1~133から選択される比活性を有する。
【0135】
(表1)本明細書で提供される組成物中に存在する及び本明細書で提供される方法において使用されるrVWFの比活性の例示的な実施形態
Var.=変形形態
【0136】
本明細書で概説されるrVWF組成物は、約10~約40サブユニットを含む高マルチマーである。いくつかの実施形態において、以下に概説される方法を使用して作製されるマルチマーrVWFは、約10~30、12~28、14~26、16~24、18~22、20~21サブユニットを含む。更なる実施形態において、rVWFは、ダイマーから40サブユニットを超えるマルチマー(100万ダルトン超)までの様々な大きさのマルチマーで存在する。最も大型のマルチマーは、血小板受容体及び内皮下マトリックスの損傷部位の両方と相互作用することができる複数の結合部位を提供し、VWFのうち最も止血活性の高い形態である。超大型rVWFマルチマーはADAMTS13の適用により経時的に切断されるが、産生中(一般に細胞培養での発現による)、本発明のrVWF組成物は一般にADAMTS13に曝露されることはなく、高マルチマー構造を保持する。VWFマルチマーに関する更なる詳細は、以下のセクションに見出される。
【0137】
特定の態様において、rVWFは、任意のコンジュゲーション、翻訳後または共有結合による修飾によって修飾されない。特定の実施形態において、本発明のrVWFは、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、ヒドロキシルエチルデンプン、ポリ炭水化物部分などを含む、水溶性ポリマーで修飾されない。
【0138】
他の態様において、rVWFは、コンジュゲーション、翻訳後修飾、または共有結合による修飾により修飾され、これらには、N末端またはC末端残基の修飾、ならびに選択された側鎖、例えば、遊離スルフヒドリル基、第一級アミン、及びヒドロキシル基における修飾が含まれる。一実施形態において、水溶性ポリマーは、リシン基または他の第一級アミンによってタンパク質に(直接またはリンカーを介して)連結される。一実施形態において、本発明のrVWFタンパク質は、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、ヒドロキシルエチルデンプン、ポリ炭水化物部分などを含む、水溶性ポリマーのコンジュゲーションによって修飾され得る。
【0139】
rVWF及び/またはFVIIIの修飾に使用され得る水溶性ポリマーは、線状及び分枝状の構造を含む。コンジュゲートされるポリマーは、本発明の凝固タンパク質に直接結合されてもよいし、あるいは、連結部分を介して結合されてもよい。水溶性ポリマーとのタンパク質コンジュゲーションの非限定的な例としては、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、及び同第4,179,337号、ならびにAbuchowski and Davis “Enzymes as Drugs,” Holcenberg and Roberts,Eds.,pp.367 383,John Wiley and Sons,New York(1981)、及びHermanson G.,Bioconjugate Techniques 2nd Ed.,Academic Press,Inc.2008に見出すことができる。
【0140】
IV.組換えVWFの産生
本発明の遊離成熟組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF)は、組換え的に産生することができる。当業者であれば、組換えタンパク質を宿主細胞中で発現させる有用な方法を認識している。いくつかの場合において、方法は、rVWFをコードする核酸配列をCHO細胞などの宿主細胞中で発現させ、得られた宿主細胞をある特定の条件下で培養して、rVWF、プレプロVWF、プロVWFなどを産生させることを含む。
【0141】
ある特定の実施形態において、VWFをコードする配列を含む核酸配列は、発現ベクターであり得る。ベクターは、ウイルスにより送達され得るか、またはプラスミドであり得る。タンパク質をコードする核酸配列は、特定の遺伝子またはその生物学的に機能性である部分であり得る。一実施形態において、タンパク質は、少なくともVWFの生物学的に活性な部分である。核酸配列は、プロモーター配列、エンハンサー、TATAボックス、転写開始部位、ポリリンカー、制限部位、ポリA配列、タンパク質プロセシング配列、選択マーカー、及び当業者に一般に知られている同様のものなどのタンパク質の発現制御に好適な他の配列を更に含むことができる。
【0142】
VWFの発現には、多種多様なベクターを使用することができ、真核細胞発現ベクターから選択することができる。真核細胞発現用ベクターの例としては、(i)酵母での発現の場合、AOX1、GAP、GAL1、AUG1などのプロモーターを使用する、pAO、pPIC、pYES、pMETなどのベクター;(ii)昆虫細胞での発現の場合、PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、polhなどのプロモーターを使用する、pMT、pAc5、pIB、pMIB、pBACなどのベクター、ならびに(iii)哺乳動物細胞での発現の場合、CMV、SV40、EF-1、UbC、RSV、ADV、BPV、及びβ-アクチンなどのプロモーターを使用する、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、pBPVなどのベクター、及びワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスなどのウイルス系由来のベクターが挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明の方法で使用されるrVWFは、当該技術分野において既知の方法を使用して、哺乳動物細胞の培養物における発現によって産生される。特定の実施形態において、哺乳動物の培養物は、CHO細胞を含む。更なる実施形態において、rVWFは、同じ培養物中で、組換え第VIII因子(rFVIII)と共発現される。このような実施形態において、rVWF及びrFVIIIは、当該技術分野において既知の方法を使用して、一緒に精製(同時精製)されるか、または別個に精製される。他の実施形態において、rVWFは、rFVIIIを含有しない培養物中で発現される。
【0144】
いくつかの実施形態において、rVWFは、好適な真核生物宿主系から発現及び単離される。真核細胞の例としては、限定するものではないが、CHO、COS、HEK 293、BHK、SK-Hep、及びHepG2などの哺乳動物細胞;昆虫細胞、例えば、SF9細胞、SF21細胞、S2細胞、及びHigh Five細胞;ならびに酵母細胞、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)細胞またはシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)細胞が挙げられる。一実施形態において、VWFは、酵母細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞などおいて発現させることができる。例えば、ヒト細胞株、ハムスター細胞株、またはマウス細胞株においてである。特定の一実施形態において、細胞株は、CHO細胞株、BHK細胞株、またはHEK細胞株である。典型的に、哺乳動物細胞、例えば、連続継代性細胞株由来のCHO細胞を使用して、本発明のVWFを発現させることができる。ある特定の場合、VWFタンパク質は、CHO細胞発現系から発現及び単離される。
【0145】
VWFは、細胞培養系において、または当業者により認識されている任意の細胞培養方法に従って産生させることができる。いくつかの実施形態において、細胞培養は、高い細胞密度及びタンパク質発現を達成するような高い体積比培養表面積を得るのに好適な条件下で、大型バイオリアクターで実施することができる。そのような成長条件を得るための手段の一つは、攪拌槽型バイオリアクターで細胞培養用マイクロキャリアを使用することである。マイクロキャリアでの細胞成長の概念は、van Wezelによって最初に記載されており(van Wezel,A.L.,Nature,1967,216:64-5)、これは、成長培地中に懸濁した小さな固体粒子の表面に細胞が付着するのを可能にするものである。これらの方法により、高い表面積対体積比が得られるため、効率的な栄養利用が可能となる。更に、真核細胞株で分泌タンパク質を発現させる場合、表面積対体積比の増大により、分泌レベルがより高くなることから、培養物の上清中のタンパク質収量が高くなる。最終的に、これらの方法により、真核細胞発現培養のスケールアップが容易になる。
【0146】
VWFを発現する細胞は、細胞培養の成長中に、球状または多孔質のマイクロキャリアに結合し得る。マイクロキャリアは、デキストラン、コラーゲン、プラスチック、ゼラチン及びセルロースをベースにしたマイクロキャリア、ならびにButlerに記載されるような他のマイクロキャリアの群から選択されるマイクロキャリアであり得る(1988.In:Spier & Griffiths,Animal Cell Biotechnology 3:283-303)。また、細胞を球状マイクロキャリア上である生物量まで成長させ、細胞が発酵槽の最終生物量に達したときに細胞を継代培養してから、多孔質マイクロキャリア上で発現タンパク質を産生させることも可能であり、またはその逆も可能である。好適な球状マイクロキャリアには、Cytodex(商標)1、Cytodex(商標)2、及びCytodex(商標)3(GE Healthcare)などの表面が滑らかなマイクロキャリア、ならびにCytopore(商標)1、Cytopore(商標)2、Cytoline(商標)1、及びCytoline(商標)2(GE Healthcare)などのマクロ孔質マイクロキャリアが含まれ得る。
【0147】
更なる実施形態において、VWFプロペプチドは、プロVWFのフューリンへの曝露を介して、in vitroで非成熟VWFから切断される。いくつかの実施形態において、ペプチド切断に使用されるフューリンは、組換えフューリンである。
【0148】
ある特定の実施形態において、rVWFは、高分子量rVWFを産生する細胞培地中で培養された細胞で発現される。「細胞培養液」、「細胞培地(複数可)」、及び「細胞培養上清」という用語は、当該技術分野において一般によく知られている細胞培養プロセスの側面を指す。本発明の文脈において、細胞培養液は、細胞培地及び細胞培養上清を含み得る。細胞培地は、細胞培養液に、任意選択により添加物とともに、外部から加えられ、VWFを発現する細胞を培養するための栄養素及び他の成分を供給する。細胞培養上清は、細胞培地からの栄養素及び他の成分ならびに培養中に細胞から放出、代謝、及び/または排泄された産物を含む細胞培養液を指す。更なる実施形態において、培地は、動物性タンパク質を含まず、化学的に成分が明らかであり得る。動物性タンパク質を含まず、化学的に成分が明らかな培地を調製する方法は、当該技術分野、例えば、US2006/0094104、US2007/0212770、及びUS2008/0009040において知られており、あらゆる目的のため、特に細胞培地に関するあらゆる教示のために、いずれも本明細書に援用される。「タンパク質を含まない」及び関連用語は、成長中にタンパク質を自然に放出する培養中の細胞に対して外来であるかまたはそれらの細胞以外の供給源に由来するタンパク質を指す。別の実施形態において、培地は、ポリペプチドを含まない。別の実施形態において、培地は、血清を含まない。別の実施形態において、培地は、動物性タンパク質を含まない。別の実施形態において、培地は、動物性成分を含まない。別の実施形態において、培地は、タンパク質、例えば、ウシ胎児血清などの血清由来の動物性タンパク質を含有する。別の実施形態において、培養物は、外因的に加えられた組換えタンパク質を有する。別の実施形態において、タンパク質は、認定されている病原体を含まない動物に由来する。本明細書で使用される「化学的に成分が明らかな」という用語は、培地が、成分が明らかでない添加物、例えば、動物性成分、器官、腺、植物、または酵母の抽出物などをいかなるものも含まないことを意味するものとする。したがって、化学的に成分が明らかな培地の各成分は、正確に定義される。好ましい実施形態において、培地は、動物性成分もタンパク質も含まない。
【0149】
ある特定の実施形態において、VWFを発現する細胞の培養は、少なくとも約7日間、または少なくとも約14日間、21日間、28日間、または少なくとも約5週間、6週間、7週間、または少なくとも約2ヶ月、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18ヶ月またはそれ以上の間、維持することができる。組換えVWFタンパク質の産生のために細胞培養が維持される細胞密度は、タンパク質発現に使用される培養条件及び培地によって異なる。当業者であれば、VWFを産生する細胞培養に最適な細胞密度を容易に決定することができるであろう。一実施形態において、培養は、約0.5×10~4×10細胞/mlの細胞密度で長期間維持される。他の実施形態において、細胞密度は、約1.0×10~約1.0×10細胞/mlの濃度で長期間維持される。他の実施形態において、細胞密度は、約1.0×10~約4.0×10細胞/mlの濃度で長期間維持される。他の実施形態において、細胞密度は、約1.0×10~約4.0×10細胞/mlの濃度で長期間維持される。更に他の実施形態において、細胞密度は、約2.0×10~約4.0×10、または約1.0×10~約2.5×10、または約1.5×10~約3.5×10、または他の任意の同様な範囲の濃度で長期間維持され得る。細胞培養において適切な時間の後、rVWFは、当該技術分野において既知の方法を使用して、発現系から単離することができる。
【0150】
具体的な一実施形態において、rVWFの産生のための連続細胞培養の細胞密度は、2.5×10細胞/mL以下の濃度で長期間維持される。具体的な他の一実施形態において、細胞密度は、2.0×10細胞/mL以下、1.5×10細胞/mL以下、1.0×10細胞/mL以下、0.5×10細胞/mL以下に維持される。一実施形態において、細胞密度は、1.5×10細胞/mL~2.5×10細胞/mLに維持される。
【0151】
上記の細胞培養の一実施形態において、細胞培養液は、銅を含む培地添加物を含む。そのような細胞培養液は、例えば、米国特許第8,852,888号及び米国特許第9,409,971号に記載されており、あらゆる目的のため、特に組換えVWFを産生するための細胞培養方法及び組成物に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0152】
プレプロVWFのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、配列番号1及び配列番号2にそれぞれ記載され、GenBankアクセッション番号NM_000552(ホモサピエンスフォンヴィレブランド因子(VWF)mRNA)及びNP_000543でそれぞれ入手可能である。成熟VWFタンパク質に相当するアミノ酸配列は、配列番号3に示される(全長プレプロVWFアミノ酸配列のアミノ酸764~2813に相当する)。いくつかの実施形態において、VWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を示す。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、配列番号3の配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を示す。例えば、米国特許第8,597,910号、米国特許公開第2016/0129090号、及び図6を参照されたい。
【0153】
有用なrVWFの一形態は、少なくとも1つの第VIII因子(FVIII)分子をin vivoで安定化させる特性、すなわち、結合特性を少なくとも有し、任意選択により、薬理学的に許容されるグリコシル化パターンを有する。その具体例としては、A2ドメインを含まないことからタンパク質分解に耐性であるVWF(Lankhof et al.,Thromb.Haemost.77:1008-1013,1997)、ならびに糖タンパク質lb結合ドメインと、コラーゲン及びヘパリンに対する結合部位とを含むVal449~Asn730のVWF断片(Pietu et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.164:1339-1347,1989)が挙げられる。少なくとも1つのFVIII分子を安定化させるVWFの能力の決定は、一態様において、当該技術分野において知られている方法に従って、VWF欠損哺乳動物で実施される。
【0154】
本発明のrVWFは、当該技術分野において知られている任意の方法によって産生することができる。したがって、(i)遺伝子操作、例えば、RNAの逆転写及び/またはDNAの増幅による組換えDNAの生成、(ii)トランスフェクション、例えば、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによる組換えDNAの原核細胞または真核細胞への導入、(iii)形質転換細胞の培養、例えば、連続式またはバッチ式での培養、(iv)VWFの発現、例えば、構成的発現または誘導時の発現、及び(v)VWFの単離、例えば、培地からの単離または形質転換細胞を回収することによる単離、その結果として、(vi)精製されたrVWFの取得、例えば、アニオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーによる取得のための方法が当該技術分野において知られている。組換えVWFは、一態様において、当該技術分野においてよく知られている組換えDNA技術を使用して、形質転換した宿主細胞において作製される。例えば、ポリペプチドをコードする配列は、好適な制限酵素を使用して、DNAから切り出され得る。別の方法としては、DNA分子は、別の態様において、ホスホロアミデート法どの化学合成技法を使用して合成される。また、更に別の態様において、これらの技法の組み合わせが使用される。
【0155】
本発明はまた、適切な宿主において、本発明のポリペプチドをコードするベクターを提供する。ベクターは、適切な発現制御配列に作動可能に連結されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドがベクターに挿入される前または後のいずれかに、この作動可能な連結を行う方法は、よく知られている。発現制御配列としては、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、終止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、及び転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルが含まれる。得られたベクターは、その中にポリヌクレオチドを有し、適切な宿主を形質転換するために使用される。この形質転換は、当該技術分野においてよく知られている方法を使用して実施され得る。
【0156】
本発明の実施には、よく知られている利用可能な多数の宿主細胞のうちのいずれかが使用される。特定の宿主の選択は、当該技術分野で認識されているいくつかの要因によって決定され、これらには、例えば、選択した発現ベクターとの適合性、DNA分子によりコードされるペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収容易性、発現特性、バイオセーフティ及び費用が含まれる。これらの要因のバランスは、全ての宿主細胞が特定のDNA配列の発現に等しく有効であるわけではないという理解の下で達成する必要がある。これらの一般的なガイドライン内で、有用な微生物宿主細胞としては、限定するものではないが、細菌、酵母及び他の真菌、昆虫、植物、哺乳動物(ヒトを含む)の培養細胞、または当該技術分野において知られている他の宿主が挙げられる。
【0157】
形質転換された宿主細胞は、所望の化合物が発現されるように、従来の発酵条件下で培養される。そのような発酵条件は、当該技術分野においてよく知られている。最後に、ポリペプチドは、当該技術分野においてよく知られている方法によって、培地または宿主細胞自体から精製される。
【0158】
本発明の化合物を発現させるために利用される宿主細胞に応じて、炭水化物(オリゴ糖)基が、任意選択により、タンパク質中のグリコシル化部位として知られている部位に結合される。一般に、O結合型オリゴ糖は、セリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基に結合され、N結合型オリゴ糖は、アスパラギン(Asn)残基に結合され、この場合、これらは、配列Asn-X-Ser/Thrの一部であり、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であり得る。Xは、好ましくは、プロリンを除く19個の天然アミノ酸のうちの1つである。N結合型及びO結合型オリゴ糖の構造と各タイプにみられる糖残基の構造は異なる。N結合型及びO結合型の両オリゴ糖で一般にみられる糖の1種は、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸と呼ばれる)である。シアル酸は、通常、N結合型及びO結合型の両オリゴ糖の末端残基であり、その負の電荷のため、一態様において、グリコシル化化合物に酸性特性を付与する。そのような部位(複数可)は、本発明の化合物のリンカーに組み込まれてもよく、好ましくは、ポリペプチド化合物の組換え産生中に細胞によって(例えば、CHO、BHK、COSなどの哺乳動物細胞において)グリコシル化される。他の態様において、そのような部位は、当該技術分野で知られている合成法または半合成法によってグリコシル化される。
【0159】
いくつかの実施形態において、シアル化(シアリル化とも呼ばれる)は、本明細書に記載される精製手順(アニオン交換、カチオン交換、サイズ排除、及び/またはイムノアフィニティー法を含む)の一環として、カラム上で実施することができる。いくつかの実施形態において、シアリル化により、rVWFの安定性が、シアリル化を受けていないrVWFと比較して増加する。いくつかの実施形態において、シアリル化により、血液循環中のrVWFの安定性が、シアリル化を受けていないrVWFと比較して増加する(例えば、対象への投与後)。いくつかの実施形態において、シアリル化されたrVWFの安定性の増加は、シアリル化を受けていないrVWFと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、シアリル化により、rVWFの半減期が、シアリル化を受けていないrVWFと比較して増加する。いくつかの実施形態において、シアリル化により、血液循環中のrVWFの半減期が、シアリル化を受けていないrVWFと比較して増加する(例えば、対象への投与後)。いくつかの実施形態において、シアリル化されたrVWFの半減期の増加は、シアリル化を受けていないrVWFと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、シアリル化されたrVWFの半減期の増加は、シアリル化を受けていないrVWFと比較して、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、12時間、24時間以上、血液循環中で安定であるrVWFをもたらす(例えば、対象への投与後)。いくつかの実施形態において、シアリル化により、2,3シアリル化及び/または2,6シアリル化の数が増加する。いくつかの実施形態において、シアリル化は、追加の緩衝ステップとして、2,3シアリルトランスフェラーゼ及び/または2,6シアリルトランスフェラーゼならびにCMP-NANA(シチジン-5’-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩)を添加することによって増加される。いくつかの実施形態において、シアリル化は、追加の緩衝ステップとして、2,3シアリルトランスフェラーゼ及びCMP-NANA(シチジン-5’-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩)を添加することによって増加される。いくつかの実施形態において、2,3シアリル化は、追加の緩衝ステップとして、2,3シアリルトランスフェラーゼ及びCMP-NANA(シチジン-5’-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩)を添加することによって増加される。
【0160】
いくつかの実施形態において、2,6シアリル化は、追加の緩衝ステップとして、2,6シアリルトランスフェラーゼ及びCMP-NANA(シチジン-5’-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩)を添加することによって増加される。いくつかの実施形態において、2,3シアリル化及び/または2,6シアリル化は、追加の緩衝ステップとして、2,3シアリルトランスフェラーゼ及び/または2,6シアリルトランスフェラーゼならびにCMP-NANA(シチジン-5’-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩)を添加することによって増加される。いくつかの実施形態において、CMP-NANAは、修飾されたシアル酸が電位フリーな位置に移動するように、化学的または酵素的に修飾される。いくつかの実施形態において、シアリル化は、rVWFを樹脂上にロードし、本明細書に記載される1つ以上の緩衝液で洗浄して望ましくない不純物を除去し、シアリルトランスフェラーゼ及びCMP-NANAを含有する1つ以上の緩衝液を追加のシアリル化が可能となる条件下で適用し、1つ以上の緩衝液で洗浄して過剰なシアリル化試薬を除去し、増強されたrVWF(例えば、シアリル化が増加したrVWF)を1つ以上の緩衝液で溶出することによって実施される。いくつかの実施形態において、シアリル化プロセスは、本明細書に記載されるように、カチオン交換法、アニオン交換法、サイズ排除法、またはイムノアフィニティー精製法の一環として実施される。
【0161】
別の方法としては、化合物は、例えば、固相合成法を使用する合成方法によって作製される。好適な技法は、当該技術分野においてよく知られており、これには、Merrifield(1973),Chem.Polypeptides,pp.335-61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149;Davis et al.(1985),Biochem.Intl.10:394-414;Stewart and Young(1969),Solid Phase Peptide Synthesis;US3,941,763;Finn et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:105-253;及びErickson et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:257-527に記載されるものが含まれる。固相合成は、費用対効果が最も高い小ペプチド作製法であることから、個々のペプチドを作製するのに好ましい技法である。
【0162】
VWFの断片、バリアント及び類似体は、当該技術分野においてよく知られている方法に従って産生することができる。ポリペプチドの断片は、限定するものではないが、酵素切断(例えば、トリプシンまたはキモトリプシンによる切断)を使用して調製することができ、また、組換え手段を使用して特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片を生成することで調製することもできる。マルチマー化ドメインまたは当該技術分野において知られている任意の他の同定可能なVWFドメインなどの特定の活性を有するタンパク質の領域を含むポリペプチド断片が作製されてもよい。
【0163】
ポリペプチド類似体を作製する方法もよく知られている。ポリペプチドのアミノ酸配列類似体は、置換、挿入、付加または欠失の類似体であり得る。ポリペプチドの断片を含め、欠失類似体は、機能または免疫原性活性にとって必須ではない天然タンパク質の1つ以上の残基が欠如している。挿入類似体は、ポリペプチドの非末端点における付加、例えば、アミノ酸(複数可)の付加を伴う。この類似体は、例えば、限定するものではないが、免疫反応性エピトープまたは単に単一残基の挿入を含み得る。ポリペプチドの断片を含め、付加類似体は、タンパク質のいずれかの末端または両末端における1つ以上のアミノ酸の付加を含み、例えば、融合タンパク質を含む。前述の類似体の組み合わせもまた企図される。
【0164】
置換類似体は、典型的に、タンパク質内の1つ以上の部位において、野生型の1つのアミノ酸が別のアミノ酸と交換され、ポリペプチドの1つ以上の特性を、他の機能または特性を完全に喪失させることなく調節するよう設計され得る。一態様において、置換は、保存的置換である。「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸を、側鎖または同様の化学的特性を有するアミノ酸で置換することである。保存的置換を行うための類似アミノ酸には、酸性側鎖(グルタミン酸、アスパラギン酸)、塩基性側鎖(アルギニン、リシン、ヒスチジン)、極性アミド側鎖(グルタミン、アスパラギン)、疎水性脂肪族側鎖(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン)、芳香族側鎖(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、小さな側鎖(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン)、または脂肪族ヒドロキシル側鎖(セリン、トレオニン)を有するものが含まれる。
【0165】
一態様において、類似体は、その由来となる組換えVWFと実質的に相同であるかまたは実質的に同一である。類似体には、野生型ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも一部、例えば、血液凝固活性を保持するものが含まれる。
【0166】
企図されるポリペプチドバリアントには、限定するものではないが、ユビキチン化、ポリシアル化(またはポリシアリル化)を含むグリコシル化、治療用または診断用薬剤とのコンジュゲーション、標識化、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有結合による高分子化合物の結合、非加水分解性結合の導入、及びオルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換などの技術によって化学修飾された、ヒトタンパク質では通常生じないポリペプチドが含まれる。バリアントは、本発明の非修飾分子の結合特性と同じかまたは本質的に同じ結合特性を保持する。そのような化学修飾には、薬剤のVWFポリペプチドへの直接的または間接的(例えば、リンカーを介する)結合が含まれ得る。間接的結合の場合、リンカーは、加水分解性であっても非加水分解性であってもよいことが企図される。
【0167】
ペグ化ポリペプチド類似体の調製は、一態様において、(a)結合コンストラクトポリペプチドが1つ以上のPEG基に結合した状態になる条件下でポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)とポリペプチドを反応させるステップ、及び(b)反応生成物(複数可)を得るステップを含む。一般に、アシル化反応のための至適反応条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に基づいて決定される。例えば、PEG:タンパク質の比が大きいほど、ポリペグ化生成物の割合は大きくなる。いくつかの実施形態において、結合コンストラクトは、N末端に単一のPEG部分を有する。ポリエチレングリコール(PEG)は、例えば、より長いin vivo半減期を得るために、血液凝固因子に結合させてもよい。PEG基は、任意の簡便な分子量のものであってよく、線状または分枝状である。PEGの平均分子量は、約2キロダルトン(「kD」)~約100kDa、約5kDa~約50kDa、または約5kDa~約10kDaの範囲である。ある特定の態様において、PEG基は、PEG部分上の天然もしくは操作された反応性基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)と、血液凝固因子上の反応性基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)によるアシル化もしくは還元アルキル化を介して、または当該技術分野において知られている任意の他の技法によって、血液凝固因子に結合される。
【0168】
ポリシアリル化ポリペプチドを調製するための方法は、US 2006/160948、Fernandes et Gregoriadis;Biochim.Biophys.Acta 1341:26-34,1997、及びSaenko et al.,Haemophilia 12:42-51,2006に記載されている。簡潔に述べると、0.1M NaIOを含有するコロミン酸(CA)の溶液を室温の暗所で攪拌して、CAを酸化させる。活性化されたCA溶液を、例えば、pH7.2の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液に対して暗所で透析し、この溶液をrVWF溶液に加え、穏やかな振盪下、室温の暗所で18時間インキュベートする。遊離試薬を、任意選択により、例えば、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、rVWFポリシアル酸コンジュゲートから分離する。rVWFとポリシアル酸とのコンジュゲーションは、グルタルアルデヒドを架橋試薬として使用することで達成される(Migneault et al.,Biotechniques 37:790-796,2004)。
【0169】
また、別の態様において、プレプロVWF及びプロVWFポリペプチドは、本発明の製剤に治療上の利益をもたらすことも企図される。例えば、米国特許第7,005,502号は、in vitroでトロンビン生成を誘導する相当量のプロVWFを含む医薬調製物を記載している。天然に存在する成熟VWFの組換えによる生物学的に活性な断片、バリアント、または他の類似体に加えて、本発明は、本明細書に記載される製剤におけるプレプロVWF(配列番号2に記載)またはプロVWFポリペプチド(配列番号2のアミノ酸残基23~764)の組換えによる生物学的に活性な断片、バリアント、または類似体の使用を企図する。
【0170】
断片、バリアント及び類似体をコードするポリヌクレオチドは、天然に存在する分子と同じかまたは類似した生物学的活性を有する、天然に存在する分子の生物学的に活性な断片、バリアント、または類似体をコードするように、当業者によって容易に生成され得る。様々な態様において、これらのポリヌクレオチドは、PCR法、分子をコードするDNAの消化/ライゲーションなどを使用して調製される。したがって、当業者であれば、限定するものではないが、部位特異的変異誘発を含む、当該技術分野において知られている任意の方法を使用して、DNA鎖の単一塩基の変更を生じさせ、改変コドン及びミスセンス変異をもたらすことができる。本明細書で使用される場合、「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という文言は、例えば、50%ホルムアミド中42℃でハイブリダイゼーションし、0.1×SSC、0.1%SDS中60℃で洗浄することを意味する。これらの条件は、ハイブリダイズされる配列の長さ及びGCヌクレオチド塩基含量に基づいて変更されることが当業者には理解されるであろう。正確なハイブリダイゼーション条件の決定には、当該技術分野で標準的な処方が適切である。Sambrook et al.,9.47-9.51 in Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)を参照されたい。
【0171】
A.VWFマルチマー
一実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWF組成物は、オリゴマーの95%が6サブユニット~20サブユニットを有することを特徴とするrVWFオリゴマー分布を有する。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が6サブユニット~10サブユニットを有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が10サブユニット~15サブユニットを有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が15サブユニット~20サブユニットを有することを特徴とする。他の実施形態において、rVWF組成物は、オリゴマーの95%が、WO2012/171031の表2の再掲である以下の表2に見出される変形形態458~641から選択されるサブユニットの範囲を有することを特徴とするrVWFオリゴマー分布を有する。
【0172】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される精製方法によって調製されるrVWF組成物は、オリゴマーの95%が6サブユニット~20サブユニットを有することを特徴とするrVWFオリゴマー分布を有する。いくつかの実施形態において、rVWF組成物は、オリゴマーの95%が、WO2012/171031の表2の再掲である以下の表2に見出される変形形態458~641から選択されるサブユニットの範囲を有することを特徴とするrVWFオリゴマー分布を有する。
【0173】
(表2)本明細書で提供される組成物中に存在する及び本明細書で提供される方法において使用されるrVWFオリゴマーの分布の例示的実施形態
Var.=変形形態
【0174】
いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が460サブユニット~500サブユニットを有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が500サブユニット~550サブユニットを有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が550サブユニット~600サブユニットを有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、rVWFオリゴマー分布は、オリゴマーの95%が600サブユニット~640サブユニットを有することを特徴とする。
【0175】
一実施形態において、rVWF組成物は、特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマーで存在するrVWF分子の割合に従って特徴付けることができる。例えば、一実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWF組成物中のrVWF分子の少なくとも20%は、少なくとも10サブユニットのオリゴマー複合体で存在する。別の実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWF組成物中のrVWF分子の少なくとも20%は、少なくとも12サブユニットのオリゴマー複合体で存在する。更に他の実施形態において、本明細書で提供される方法において使用されるrVWF組成物は、WO2012/171031の表3~表5の再掲である以下の表3~5に見出される変形形態134~457のいずれか1つに従った、特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマー(例えば、少なくともYサブユニットのマルチマー)で存在するrVWF分子の最小割合(例えば、少なくともX%)を有する。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法によって調製されるrVWF組成物は、特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマーで存在するrVWF分子の割合に従って特徴付けることができる。例えば、一実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWF組成物中のrVWF分子の少なくとも20%は、少なくとも10サブユニットのオリゴマー複合体で存在する。別の実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるrVWF組成物中のrVWF分子の少なくとも20%は、少なくとも12サブユニットのオリゴマー複合体で存在する。更に他の実施形態において、本明細書で提供される方法において使用されるrVWF組成物は、WO2012/171031の表3~表5の再掲である以下の表3~5に見出される変形形態134~457のいずれか1つに従った、特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマー(例えば、少なくともYサブユニットのマルチマー)で存在するrVWF分子の最小割合(例えば、少なくともX%)を有する。
【0177】
(表3)本明細書で提供される組成物中に存在する及び本明細書で提供される方法において使用される特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマーで存在するrVWF分子の割合の例示的実施形態
Var.=変形形態
【0178】
(表4)本明細書で提供される組成物中に存在する及び本明細書で提供される方法において使用される特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマーで存在するrVWF分子の割合の例示的実施形態
Var.=変形形態
【0179】
(表5)本明細書で提供される組成物中に存在する及び本明細書で提供される方法において使用される特定のより高次のrVWFマルチマーまたはより大型のマルチマーで存在するrVWF分子の割合の例示的実施形態
Var.=変形形態
【0180】
上記に従って、対象に投与されるrVWF組成物(FVIIIありまたはなし)は、一般に、かなりの割合の高分子量(HMW)rVWFマルチマーを含む。更なる実施形態において、HMW rVWFマルチマー組成物は、少なくとも10%~80%のrVWFデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。更なる実施形態において、組成物は、約10~95%、20~90%、30~85%、40~80%、50~75%、60~70%のデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。更なる実施形態において、HMW rVWFマルチマー組成物は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。
【0181】
更なる実施形態において、本発明のより高次のrVWFマルチマーは、投与後、約1~約90時間安定である。更に別の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、投与後、約5~80、10~70、15~60、20~50、25~40、30~35時間安定である。更に別の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、投与後、少なくとも3、6、12、18、24、36、48、72時間安定である。ある特定の実施形態において、rVWFマルチマーの安定性は、in vitroで評価される。
【0182】
rVWFは、約10~約40サブユニットを含む高マルチマーである。更なる実施形態において、本発明の方法を使用して産生されるマルチマーrVWFは、約10~30、12~28、14~26、16~24、18~22、20~21サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、rVWFは、ダイマーから40サブユニットを超えるマルチマー(100万ダルトン超)までの様々な大きさのマルチマーで存在する。最も大型のマルチマーは、血小板受容体及び内皮下マトリックスの損傷部位の両方と相互作用することができる複数の結合部位を提供し、VWFのうち最も止血活性の高い形態である。いくつかの実施形態において、本発明のrVWFは、超大型マルチマー(ULM)を含む。一般に、高マルチマー及び超大型マルチマーは、止血効果が最も高いと考えられる(例えば、Turecek,P.,Hamostaseologie,(Vol.37):Supplement 1,pages S15-S25(2017)参照)。いくつかの実施形態において、rVWFは、500kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、任意の所望のマルチマーパターンは、記載される方法を使用して得ることができる。いくつかの実施形態において、アニオン交換法及び/またはカチオン交換法が採用される場合、1つ以上の洗浄ステップ(複数可)の緩衝液またはグラジエント緩衝液のpH、伝導率、及び/または対イオン濃度は、所望のマルチマーパターンを得るために操作することができる。いくつかの実施形態において、次いで、サイズ排除クロマトグラフィー法が採用され、所望のマルチマーパターンを得るための回収基準が採用され得る。いくつかの実施形態において、記載されるマルチマーパターンは、超大型マルチマーを含む。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、少なくとも10,000kDa、少なくとも11,000kDa、少なくとも12,000kDa、少なくとも13,000kDa、少なくとも14,000kDa、少なくとも15,000kDa、少なくとも16,000kDa、少なくとも17,000kDa、少なくとも18,000kDa、少なくとも19,000kDa、少なくとも20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約10,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約11,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約12,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約13,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約14,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約15,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約16,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約17,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約18,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、超大型マルチマーは、約19,000kDa~20,000kDaである。いくつかの実施形態において、本方法を使用して得られるrVWFは、rVWFのローディング試料中に存在する任意のマルチマーパターンを含む。いくつかの実施形態において、本方法を使用して得られるrVWFは、生理学的に生じるマルチマーパターン及び超大型VWFマルチマーパターンを含む。
【0183】
上記に従って、rVWFは、かなりの割合の高分子量(HMW)rVWFマルチマーを含む。更なる実施形態において、HMW rVWFマルチマー組成物は、少なくとも10%~80%のrVWFデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。更なる実施形態において、組成物は、約10~95%、20~90%、30~85%、40~80%、50~75%、60~70%のデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。更なる実施形態において、HMW rVWFマルチマー組成物は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のデカマーまたはそれより高次のマルチマーを含む。
【0184】
更なる実施形態において、本発明のより高次のrVWFマルチマーは、投与後、約1~約90時間安定である。更に別の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、投与後、約5~80、10~70、15~60、20~50、25~40、30~35時間安定である。更に別の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、投与後、少なくとも3、6、12、18、24、36、48、72時間安定である。ある特定の実施形態において、rVWFマルチマーの安定性は、in vitroで評価される。
【0185】
一実施形態において、本明細書で提供される組成物及び方法において使用されるより高次のrVWFマルチマーは、投与後、少なくとも12時間の半減期を有する。別の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、投与後、少なくとも24時間の半減期を有する。更に他の実施形態において、より高次のrVWFマルチマーは、WO2012/171031の表6の写しである以下の表6に見出される変形形態642~1045から選択される半減期を有する。
【0186】
(表6)本明細書で提供される方法によって調製された組成物中に存在する高次rVWFマルチマーの半減期についての例示的実施形態
Var.=変形形態
【0187】
rVWFマルチマーの数及び割合の評価は、限定するものではないが、例えば、Cummingらによって考察されているように(J Clin Pathol.,1993 May;46(5):470-473;あらゆる目的のため、特にVWFマルチマーの評価に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される)、VWFマルチマーをサイズによって分離する電気泳動及びサイズ排除クロマトグラフィー法を使用する方法を含む、当該技術分野で知られている方法を使用して実施することができる。そのような技術には、VWFに対する放射標識抗体でゲルを免疫ブロットし、続いて、化学発光を検出する免疫ブロット法(ウェスタンブロットなど)が更に含まれ得る(例えば、Wen et al.,J.Clin.Lab.Anal.,1993,7:317-323を参照されたく、あらゆる目的のため、特にVWFマルチマーの評価に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される)。いくつかの実施形態において、本方法を使用して得られるrVWFは、rVWFのローディング試料中に存在する任意のマルチマーパターンを含む。いくつかの実施形態において、本方法を使用して得られるrVWFは、生理学的に生じるマルチマーパターン及び超大型VWFマルチマーパターンを含む。
【0188】
b.VWFアッセイ
一次止血において、VWFは、血小板とコラーゲンなどの細胞外マトリックスの特定成分との間の架け橋として働く。このプロセスにおけるVWFの生物学的活性は、様々なin vitroアッセイによって測定することができる(Turecek et al.,Semin.Thromb.Hemost.28:149-160,2002)。リストセチン補因子アッセイは、VWFの存在下で、抗生物質リストセチンによって誘導される、新鮮なまたはホルマリン固定された血小板の凝集に基づく。血小板凝集の程度は、VWF濃度に依存し、比濁法により、例えば、血小板凝集計の使用によって測定することができる(Weiss et al.,J.Clin.Invest.52:2708-2716,1973;Macfarlane et al.,Thromb.Diath.Haemorrh.34:306-308,1975)。本明細書で提供されるように、本発明のVWFの具体的なリストセチン補因子活性(VWF:RCo)は、一般に、in vitroアッセイを使用して測定した場合のVWFのmU/μgまたはVWFタンパク質のIU/mg単位で記載される。
【0189】
2つ目の方法は、ELISA法に基づくVWFコラーゲン結合(VWF:CB)アッセイである(Brown et Bosak,Thromb.Res.43:303-311,1986;Favaloro,Thromb.Haemost.83:127-135,2000)。マイクロタイタープレートにI型またはIII型コラーゲンをコーティングする。次いで、VWFをコラーゲン表面に結合させ、その後、酵素標識ポリクローナル抗体で検出する。最終ステップは基質反応であり、この反応をELISAリーダーで光度測定的にモニターすることができる。いくつかの実施形態において、VWFコラーゲン結合(VWF:CB)/VWF:Agは、VWFコラーゲン結合と抗原の比とも呼ばれ、VWF及び/またはVWDの診断を評価するために使用される。
【0190】
VWFの更なるアッセイには、VWF:抗原(VWF:Ag)、VWF:リストセチン補因子(VWF:RCo)、及びVWF:コラーゲン結合活性アッセイ(VWF:CB)が含まれ、フォンヴィレブランド病の診断及び分類に使用されることが多い。VWF糖タンパク質IB結合、VWFコラーゲン結合、VWFマルチマー、DDAVP負荷試験のアッセイを含む、VWFアッセイを評価するために有用な追加の方法は、当業者に知られており、例えば、Patzke and Favaloro,Methods Mol Biol,2017,1646:453-460;Higgins and Goodwin,Am J Hematol,2019,94:496-503;Stufano et al.,Haemophilia,2020,26(2):298-305;Ni et al.,Int J Lab Hematol,2013,35(2):170-176;Michiels et al.,J Hematol Thrombo Dis,2019,6:299;Michiels et al.,Clinical and Applied Thrombosis/Hemostatis,2017,23(6):518-531;Mohammed and Favaloro,Methods Mol Biol,2017,1646:461-472;Favaloro et al.,Pathology,1997,29(4):341-456に記載されており、VWFのアッセイに関するあらゆる教示を含め、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0191】
いくつかの実施形態において、VWFコラーゲン結合(VWF:CB)/VWF:Agは、VWFコラーゲン結合と抗原の比とも呼ばれ、VWF及び/またはVWDの診断を評価するために使用される。
【0192】
いくつかの実施形態において、本発明の方法に従って調製されるrVWFのrFVIII凝血活性(IU rFVIII:C)とrVWFリストセチン補因子活性(IU rVWF:RCo)の比は、3:1~1:5である。更なる実施形態において、比は、2:1~1:4である。更に別の実施形態において、比は、5:2~1:4である。更なる実施形態において、比は、3:2~1:3である。更に別の実施形態において、比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、2:3、2:4、2:5、3:1、3:2、3:4、または3:5である。更なる実施形態において、比は、1:1~1:2である。更に別の実施形態において、比は、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、または2:1である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法に有用な組成物におけるrFVIII凝血活性(IU rFVIII:C)のrVWFリストセチン補因子活性(IU rVWF:RCo)比は、WO2012/171031の表7の写しである以下の表7に見出される変形形態1988~2140から選択される。
【0193】
(表7)本明細書で提供される方法で使用される組成物におけるrFVIII凝血活性(IU rFVIII:C)とrVWFリストセチン補因子活性(IU rVWF:RCo)の比についての例示的実施形態
Var.=変形形態
【0194】
いくつかの実施形態において、本発明に従って精製されたプロVWF及び/または精製rVWFは、いかなるコンジュゲーション、翻訳後または共有結合による修飾によっても修飾されない。特定の実施形態において、本発明のプロVWF及び/または精製rVWFは、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、ヒドロキシルエチルデンプン、ポリ炭水化物部分などを含む、水溶性ポリマーで修飾されない。
【0195】
いくつかの実施形態において、本発明に従って精製されたプロVWF及び/または精製rVWFは、コンジュゲーション、翻訳後修飾、または共有結合による修飾により修飾され、これらには、N末端またはC末端残基の修飾、ならびに選択された側鎖、例えば、遊離スルフヒドリル基、第一級アミン、及びヒドロキシル基における修飾が含まれる。一実施形態において、水溶性ポリマーは、リシン基または他の第一級アミンによってタンパク質に(直接またはリンカーを介して)連結される。いくつかの実施形態において、本発明のプロVWF及び/または精製rVWFは、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、ヒドロキシルエチルデンプン、ポリ炭水化物部分などを含む、水溶性ポリマーのコンジュゲーションによって修飾され得る。
【0196】
プロVWF及び/または精製rVWFの修飾に使用され得る水溶性ポリマーは、線状及び分枝状の構造を含む。コンジュゲートされるポリマーは、本発明の凝固タンパク質に直接結合されてもよいし、あるいは、連結部分を介して結合されてもよい。水溶性ポリマーとのタンパク質コンジュゲーションの非限定的な例としては、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、及び同第4,179,337号、ならびにAbuchowski and Davis “Enzymes as Drugs,” Holcenberg and Roberts,Eds.,pp.367 383,John Wiley and Sons,New York(1981)、及びHermanson G.,Bioconjugate Techniques 2nd Ed.,Academic Press,Inc.2008に見出すことができる。
【0197】
タンパク質コンジュゲーションは、当該技術分野においてよく知られているいくつかの技法によって実施され得、例えば、Hermanson G.,Bioconjugate Techniques 2nd Ed.,Academic Press,Inc.2008を参照されたい。例としては、凝固タンパク質もしくは水溶性ポリマー部分のいずれか一方上のカルボキシル基と他方のアミン基との間のペプチド結合、または一方のカルボキシル基と他方のヒドロキシル基との間のエステル結合を介した連結が挙げられる。本発明の凝固タンパク質を水溶性ポリマー化合物にコンジュゲートできる別の連結は、シッフ塩基を介したものであり、ポリマー部分上の遊離アミノ基と、過ヨウ素酸酸化によってポリマーの非還元末端に形成されるアルデヒド基とを反応させるものである(Jennings and Lugowski,J.Immunol.1981;127:1011-8;Femandes and Gregonradis,Biochim Biophys Acta.1997;1341;26-34)。生成されたシッフ塩基は、NaCNBHとの特異的還元により第二級アミンを形成させることで安定化させることができる。代替的なアプローチは、事前酸化後にNHClとの還元的アミノ化によってポリマー上に末端遊離アミノ基を生成することである。2つのアミノ基または2つのヒドロキシル基を連結させるには、二官能性試薬を使用することができる。例えば、アミノ基を含有するポリマーは、BS3(ビス(スルホスクシンイミジル)基質/Pierce,Rockford,Ill.)のような試薬を用いて、凝固タンパク質のアミノ基にカップリングすることができる。加えて、例えば、アミン基とチオール基を連結させるには、スルホ-EMCS(N-ε-マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル/Pierce)などのヘテロ二官能性架橋試薬を使用することができる。他の実施形態において、アルデヒド反応性基、例えば、PEGアルコキシド+ブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタール;PEG+DMSO及び無水酢酸、ならびにPEGクロリド+4-ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、スクシンイミジル活性エステル、活性化ジチオカルボナートPEG、2,4,5-トリクロロフェニルクロロギ酸及びP-ニトロフェニルクロロギ酸活性化PEGが凝固タンパク質のコンジュゲーションに使用され得る。
【0198】
VWFの生物学的活性を測定するための別の方法は、コラーゲン結合アッセイであり、これは、ELISA法に基づくものである(Brown and Bosak,Thromb.Res.,1986,43:303-311;Favaloro,Thromb.Haemost.,2000,83 127-135)。マイクロタイタープレートにI型またはIII型コラーゲンをコーティングする。次いで、VWFをコラーゲン表面に結合させ、その後、酵素標識ポリクローナル抗体で検出する。最終ステップは基質反応であり、この反応をELISAリーダーで光度測定的にモニターすることができる。
【0199】
フォンヴィレブランド因子(VWF:Ag)の免疫学的アッセイは、血漿中のVWFタンパク質濃度を測定するイムノアッセイである。これらでは、VWF機能に関する情報は何ら示されない。VWF:Agを測定する方法は多数存在し、これらには、酵素結合免疫吸着法(ELISA)または自動化ラテックスイムノアッセイ(LIA)の両方が含まれる。多くの研究室が全自動ラテックスイムノアッセイを使用している。歴史的には、Laurell電気イムノアッセイ「Laurell Rockets」を含む多様な技法が研究室で使用されていたが、今日では、ほとんどの研究室で使われていない。
【0200】
V.キット
追加の態様として、本発明は、対象への投与に使用し易いような様式でパッケージされた1つ以上の凍結乾燥組成物を含むキットを含む。一実施形態において、そのようなキットは、密封された瓶または器などの容器の中にパッケージされた本明細書に記載される医薬製剤(例えば、治療用タンパク質またはペプチドを含む組成物)を含み、本方法の実施における化合物または組成物の使用について説明するラベルが容器に貼付されているか、またはパッケージに含まれている。一実施形態において、医薬製剤は、容器のヘッドスペースの量(例えば、液体製剤と容器の上部との間の空気量)が極めて小さくなるように、容器にパッケージされる。好ましくは、ヘッドスペースの量は、ごくわずかである(例えば、ほとんどない)。一実施形態において、キットには、治療用タンパク質またはペプチド組成物を含む第1の容器と、生理学的に許容される組成物の再構成溶液を含む第2の容器が収容されている。一態様において、医薬製剤は、単位剤形にパッケージされる。キットは、特定の投与経路に従って医薬製剤を投与するのに好適なデバイスを更に含んでもよい。好ましくは、キットには、医薬製剤の使用について説明するラベルが収容されている。
【0201】
ある特定の実施形態において、提供される組成物は、シリンジまたは他の保存容器の使用による投与のための液体製剤である。更なる実施形態において、これらの液体製剤は、水溶液として再構成される本明細書に記載される凍結乾燥物質から生成される。
【0202】
VI.重症VWD患者における過多月経を治療する方法のためのrVWF
重症VWDの対象にrVWFを投与することの利点の1つは、rVWFの比活性がpdVWFと比較して高いことにより、投与されるrVWFの量及び対象に再投与される回数に柔軟性が出ることである。理解されるように、また本明細書で更に考察されるように、同時投与されるFVIIIは、組換えであっても血漿由来であってもよい。
【0203】
rVWFの単回投与または複数回投与は、担当医師によって選択される用量レベル及びパターンで実施される。疾患の予防または治療の場合、適切な投与量は、治療される疾患の種類(例えば、フォンヴィレブランド病)、疾患の重症度と経過、薬物の投与が予防または治療目的であるか、治療歴、患者の臨床歴と薬物に対する反応、及び主治医の判断によって決定される。
【0204】
いくつかの態様において、rVWFは、20~90IU/kgの範囲、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、20~90、30~60、30~70、35~70、20~40、35~60、40~50、40~60、40~85、45~60、45~55、45~50、50~55、50~60、50~75、50~90、55~60、または60~80IU/kgで対象に投与される。
【0205】
いくつかの実施形態において、rVWFは、~90IU/kg、例えば、5~90、5~50、10~90、15~90、20~90、30~60、30~70、30~90、40~50、40~60、40~85、40~90、50~75、50~90、60~80、60~90、70~90、80~90、5~80、10~70、20~60、30~50、35~60、5~50、5~40、5~30、5~20、10~90、10~50、または20~40IU/kgの範囲で対象に投与される。他の実施形態において、rVWFは、70~200IU/kg、例えば、70~200、80~200、90~200、100~200、110~200、120~200、130~200、130~200、140~200、150~200、160~200、170~200、180~200、190~200、70~170、80~180、60~160、50~150、40~140、30、130、20~120、10~110、70~100、または70~90IU/kgの用量で対象に投与される。
【0206】
いくつかの実施形態において、対象は、30~60IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、40~50IU/kgのrVWFが投与される。
【0207】
いくつかの実施形態において、対象は、40~85IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、50~75IU/kgのrVWFが投与される。他の実施形態において、対象は、55~70IU/kgのrVWFが投与される。
【0208】
いくつかの実施形態において、対象は、30~70IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、40~60IU/kgのrVWFが投与される。他の実施形態において、対象は、45~55IU/kgのrVWFが投与される。
【0209】
いくつかの実施形態において、対象は、50~90IU/kgのrVWFが投与される。いくつかの実施形態において、対象は、60~80IU/kgのrVWFが投与される。他の実施形態において、対象は、65~85IU/kgのrVWFが投与される。
【0210】
rVWFの組成物は、本明細書に記載されるように、医薬製剤中に含有させることができる。そのような製剤は、経口、局所、経皮、非経口、吸入用スプレー、経膣、経直腸、または頭蓋内注射により投与することができる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、槽内注射、または注入法を含む。静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、肺内への注射及び/または特定の部位への外科的植え込みによる投与も同様に企図される。一般に、組成物は、パイロジェン、及びレシピエントにとって有害となり得る他の不純物を本質的に含まない。
【0211】
一態様において、本発明の製剤は、医薬品の循環血中治療濃度を維持するために、最初のボーラス投与に続いて、持続注入される。別の例として、本発明の化合物は1回用量として投与される。当業者であれば、適正な医療行為及び個々の患者の臨床状態によって決定される有効な投与量及び投与レジメンを容易に最適化するであろう。投与経路は、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内の投与であり得るが、これらに限定されない。投与頻度は、薬剤の薬物動態パラメーター及び投与経路によって異なる。最適な医薬製剤は、投与経路及び所望の投与量に応じて当業者により決定される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042 pages 1435-1712を参照されたく、その開示は、あらゆる目的のため、特に医薬品のための製剤、投与経路及び投与量に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される。そのような製剤は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、及びin vivoクリアランス速度に影響を与え得る。好適な用量は、投与経路に応じて、体重、体表面積または臓器の大きさに従って算出される。適切な投与量は、適切な用量反応データと併せて、血中投与濃度を決定するために確立されたアッセイの使用により確定され得る。最終投与レジメンは、薬物の作用を変更する様々な因子、例えば、薬物の比活性、患者の損傷の重症度と反応性、患者の年齢、状態、体重、性別と食事、感染症があればその重症度、投与時間及び他の臨床的因子を考慮して、主治医によって決定される。例として、本発明の組換えVWFの典型的な用量は、およそ50IU/kgであり、500μg/kgに相当する。研究が進むにつれて、様々な疾患及び状態に対して適切な投与量及び治療期間に関する更なる情報が明らかになるであろう。
【0212】
a.凍結乾燥VWF製剤
本発明の方法はまた、本明細書で提供される治療方法において使用するためのrVWFの製剤を提供する。いくつかの実施形態において、rVWF組成物は、医薬組成物の製造に使用される。いくつかの実施形態において、rVWFは、凍結乾燥製剤に製剤化することができる。
【0213】
いくつかの実施形態において、本発明のVWFポリペプチドを含む製剤は、精製後、対象への投与前に凍結乾燥される。凍結乾燥は、当該技術分野において一般的な技法を使用して実施され、開発される組成物用に最適化される必要がある(Tang et al.,Pharm Res.21:191-200,(2004)及びChang et al.,Pharm Res.13:243-9(1996))。
【0214】
凍結乾燥サイクルは、一態様において、凍結、一次乾燥、及び二次乾燥という3つのステップで構成される(A.P.Mackenzie,Phil Trans R Soc London,Ser B,Biol 278:167(1977))。凍結ステップでは、溶液を、氷の形成が開始するまで冷却する。更に、このステップは、増量剤の結晶化を誘導する。氷は、一次乾燥段階で昇華し、これは、真空を利用してチャンバーの圧力を氷の蒸気圧を下回るまで減圧し、熱を導入して昇華を促進することによって行われる。最後に、二次乾燥段階で、チャンバーの圧力を減圧し、棚温度を上げることで、吸着または結合した水を除去する。このプロセスにより、凍結乾燥ケーキとして知られる物質が生成される。その後、ケーキは、注射用の滅菌水または好適な希釈剤のいずれかで再構成することができる。
【0215】
凍結乾燥サイクルは、賦形剤の最終的な物理的状態を決定するだけでなく、再構成時間、外観、安定性及び最終含水量などの他のパラメーターにも影響する。凍結状態の組成物の構造は、特定の温度で起こるいくつかの転移(例えば、ガラス転移、湿潤、及び結晶化)を経て進行し、その構造を使用して、凍結乾燥プロセスを理解し、最適化することができる。ガラス転移温度(Tg及び/またはTg’)により、溶質の物理的状態についての情報を得ることができ、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。Tg及びTg’は、凍結乾燥サイクルを設計するときに考慮しなければならない重要なパラメーターである。例えば、Tg’は、一次乾燥にとって重要である。更に、乾燥状態でのガラス転移温度から、最終生成物の保存温度に関する情報が得られる。
【0216】
b.医薬製剤及び賦形剤全般
賦形剤は、医薬品(例えば、タンパク質)の安定性及び送達性を付与または増大させる添加剤である。賦形剤は、それを含める理由にかかわらず、製剤の不可欠な成分であるため、患者にとって安全であり、忍容性が良好である必要がある。タンパク質薬物の場合、賦形剤の選択は、薬物の有効性と免疫原性の両方に影響を与え得るため、特に重要である。したがって、タンパク質製剤は、好適な安定性、安全性、及び市場性を与える賦形剤を適切に選択して開発する必要がある。
【0217】
凍結乾燥製剤は、一態様において、少なくとも緩衝液、増量剤、及び安定剤のうちの1つ以上で構成される。この態様において、凍結乾燥ステップ中または再構成中に凝集が問題となる場合には、界面活性剤の有用性が評価され、選択される。凍結乾燥中に製剤を安定なpH域に維持するために、適切な緩衝剤が含まれる。液体タンパク質製剤及び凍結乾燥タンパク質製剤について企図される賦形剤成分の比較が表8に記載される。
【0218】
(表8)凍結乾燥タンパク質製剤の賦形剤成分
【0219】
タンパク質の製剤開発における主な課題は、製造、輸送及び保存のストレスに対して製品を安定化させることである。製剤用賦形剤の役割は、これらのストレスに対する安定化を提供することである。賦形剤はまた、高濃度タンパク質製剤の粘度を下げて、製剤の送達を可能にし、患者の利便性を向上させるためにも利用される。一般に、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させるメカニズムに基づいて分類することができる。いくつかの賦形剤は、特定のストレスの影響を軽減するため、または特定のタンパク質の個々の感受性を調節するために使用される。他の賦形剤は、タンパク質の物理的及び共有結合による安定性に、より全般的な効果がある。本明細書に記載される賦形剤は、その化学的種類または製剤における機能的役割のいずれかで体系化されている。安定化の様式についての簡単な説明は、各種賦形剤を考察する際に提供される。
【0220】
本明細書で提供される教示及び指針を考慮すれば、当業者は、バイオ医薬製剤(例えば、タンパク質)の安定性の保持を促進する本発明のバイオ医薬製剤を達成するために、どの程度の量または範囲の賦形剤を任意の特定の製剤中に含めることができるかがわかるであろう。例えば、本発明のバイオ医薬製剤に含める塩の量及び種類は、最終溶液の所望のオスモル濃度(例えば、等張、低張または高張)ならびに製剤中に含める他の成分の量及びオスモル濃度に基づいて選択される。
【0221】
例として、約5%のソルビトールを含めることで等張性を達成することができるが、等張性を達成するには約9%のスクロース賦形剤が必要である。本発明のバイオ医薬製剤内に含めることができる1つ以上の賦形剤の量または濃度範囲の選択は、塩、ポリオール及び糖への言及により上記で例示されている。しかしながら、当業者は、本明細書に記載され、具体的な賦形剤への言及により更に例示される考慮事項が、例えば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定剤、増量剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/または保存剤を含む、賦形剤の全ての種類及び組み合わせに同様に適用可能であることを理解するであろう。
【0222】
更に、特定の賦形剤がモル濃度で報告される場合、当業者は、それと同等のパーセント(%)w/v(例えば、(試料溶液中の物質のグラム数/溶液のmL)×100%)の溶液もまた企図されることを認識するであろう。
【0223】
当然のことながら、当業者であれば、本明細書に記載される賦形剤の濃度は、特定の製剤内で相互依存性を持つことを認識するであろう。例として、増量剤の濃度は、例えば、タンパク質濃度が高い場合、または、例えば、安定化剤濃度が高い場合、低減され得る。加えて、当業者であれば、増量剤のない特定の製剤の等張性を維持するために、安定化剤の濃度が適宜調整されることを認識するであろう(例えば、「等張」量の安定剤が使用される)。一般的な賦形剤は、当該技術分野において知られており、Powell et al.,Compendium of Excipients fir Parenteral Formulations(1998),PDA J.Pharm.Sci.Technology,52:238-311に見出すことができる。
【0224】
c.医薬用緩衝液及び緩衝剤
薬理学的に活性なタンパク質製剤の安定性は、通常、狭いpH範囲で最大になることが観察されている。安定性が最適なこのpH範囲は、プレフォーミュレーション研究において早期に特定する必要がある。この取り組みにおいて、加速安定性試験及び熱量測定スクリーニング試験などのいくつかのアプローチが有用である(Remmele R.L.Jr.,et al.,Biochemistry,38(16):5241-7(1999))。製剤が最終的に決定したら、タンパク質は、製造され、その有効期間を通じて維持されなければならない。したがって、緩衝剤は、製剤のpHを調整するためにほぼ必ず使用される。
【0225】
緩衝種の緩衝能は、pKaと等しいpHで最大となり、pHがこの値から増減していくにつれ低下する。緩衝能の90パーセントは、そのpKaの1pH単位内に存在する。緩衝能はまた、緩衝液濃度の増大に比例して増大する。
【0226】
緩衝液を選択する際には、いくつかの要因を考慮する必要がある。最初に最も重要なことは、緩衝種及びその濃度がそのpKa及び所望の製剤pHに基づいて定義されることが必要である。同様に重要なのは、緩衝液がタンパク質及び他の製剤用賦形剤と適合性があり、いかなる分解反応も触媒しないことを確保することである。第3に考慮すべき重要な側面は、投与時に緩衝剤が誘発し得る刺すような痛み及び刺激である。例えば、クエン酸塩は、注射時に刺すような痛みを引き起こすことが知られている(Laursen T,et al.,Basic Clin Pharmacol Toxicol.,98(2):218-21(2006))。刺すような痛み及び刺激の可能性は、皮下(SC)または筋肉内(IM)経路を介して投与される薬物でより高く、これは、投与時に製剤が急速に血液中に希釈されるIV経路で投与される場合よりも、薬液が比較的長い時間その部位に留まるからである。直接IV注入によって投与される製剤の場合、緩衝剤(及び任意の他の製剤成分)の総量はモニターする必要がある。特に、患者に心血管系作用を誘発し得る、リン酸カリウム緩衝液の形態で投与されるカリウムイオンについては注意が必要である(Hollander-Rodriguez JC,et al.,Am.Fam.Physician.,73(2):283-90(2006))。
【0227】
凍結乾燥製剤用の緩衝液は、更なる考慮が必要である。リン酸ナトリウムなどの一部の緩衝液は、凍結中にタンパク質非晶相から結晶化し、pHのシフトが生じ得る。酢酸塩及びイミダゾールなどの他の一般的な緩衝液は、凍結乾燥プロセス中に昇華または蒸発することにより、凍結乾燥中または再構成後に製剤のpHがシフトし得る。
【0228】
組成物中に存在する緩衝系は、生理学的に適合するように、また、医薬製剤の所望のpHを維持するように選択される。一実施形態において、溶液のpHは、pH2.0~pH12.0である。例えば、溶液のpHは、2.0、2.3、2.5、2.7、3.0、3.3、3.5、3.7、4.0、4.3、4.5、4.7、5.0、5.3、5.5、5.7、6.0、6.3、6.5、6.7、7.0、7.3、7.5、7.7、8.0、8.3、8.5、8.7、9.0、9.3、9.5、9.7、10.0、10.3、10.5、10.7、11.0、11.3、11.5、11.7、または12.0であり得る。
【0229】
pH緩衝化合物は、製剤のpHを所定のレベルに維持するのに好適な任意の量で存在し得る。一実施形態において、pH緩衝濃度は、0.1mM~500mMである。例えば、pH緩衝剤は、少なくとも0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、または500mMであることが企図される。
【0230】
本明細書に記載される製剤を緩衝するために使用される例示的なpH緩衝剤としては、有機酸、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、Tris、HEPES、ならびにアミノ酸またはアミノ酸の混合物、例えば、限定するものではないが、アスパラギン酸、ヒスチジン、及びグリシンが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、緩衝剤は、クエン酸塩である。
【0231】
d.医薬用安定剤及び増量剤
本発明の医薬製剤の一態様において、安定剤(または安定剤の組み合わせ)は、保存により誘発される凝集及び化学分解を防止または低減するために添加される。再構成時の溶液の霞みまたは混濁は、タンパク質の沈殿または少なくとも凝集を示す。「安定剤」という用語は、水性状態での凝集または化学分解(例えば、自己分解、脱アミド、酸化など)を含む物理的分解を防ぐことが可能な賦形剤を意味する。企図される安定剤としては、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、ポリヒドロキシ化合物、例えば、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N-メチルピロリデン、セルロース及びヒアルロン酸などの多糖、塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない(Carpenter et al.,Develop.Biol.Standard 74:225,(1991))。本発明の製剤において、安定剤は、約0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、900、または1000mMの濃度で組み込まれる。本発明の一実施形態において、マンニトール及びトレハロースが安定化剤として使用される。
【0232】
所望される場合、製剤はまた、適量の増量剤及びオスモル濃度調節剤を含み得る。増量剤としては、例えば、限定するものではないが、マンニトール、グリシン、スクロース、高分子化合物、例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ラクトース、ソルビトール、トレハロース、またはキシリトールが挙げられる。一実施形態において、増量剤は、マンニトールである。増量剤は、約0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、900、または1000mMの濃度で組み込まれる。
【0233】
e.医薬用界面活性剤
タンパク質は、表面と相互作用する性質が強いため、気-液、バイアル-液体、及び液-液(シリコーンオイル)界面で吸着及び変性を受け易い。この分解経路は、タンパク質濃度に反比例することが観察されており、可溶性及び不溶性タンパク質凝集体の形成または表面への吸着による溶液からのタンパク質の消失のいずれかをもたらす。容器表面の吸着に加えて、表面により誘起される分解は、製品の輸送や取り扱い時に受ける物理的な攪拌によって悪化する。
【0234】
界面活性剤は、一般に、表面により誘起される分解を防止するためにタンパク質製剤に使用される。界面活性剤は、両親媒性分子であり、界面位置でタンパク質に競り勝つ能力がある。界面活性剤分子の疎水性部分が界面位置(例えば、気/液)を占め、当該分子の親水性部分はバルク溶媒の方向に配向された状態を保つ。十分な濃度(典型的には、洗浄剤の臨界ミセル濃度程度)であれば、界面活性剤分子の表面層がタンパク質分子の界面での吸着を防ぐように作用する。それにより、表面により誘起される分解が最小限に抑えられる。本明細書で企図される界面活性剤には、限定するものではないが、ソルビタンポリエトキシラートの脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80が挙げられる。この2つは、分子に疎水特性を付与する脂肪族鎖の長さが異なるだけであり、それぞれC-12及びC-18である。したがって、ポリソルベート80は、ポリソルベート20よりも表面活性が高く、臨界ミセル濃度が低い。
【0235】
洗浄剤はまた、タンパク質の熱力学的配座安定性にも影響し得る。ここでも同様に、所与の洗浄賦形剤の作用は、タンパク質特異的である。例えば、ポリソルベートは、一部のタンパク質の安定性を低下させ、他のタンパク質の安定性を増大させることがわかっている。洗浄剤によるタンパク質の不安定化は、洗浄剤分子の疎水性尾部が部分的または完全にアンフォールドな状態のタンパク質と特異的に結合することに関与し得ることから合理的に説明することができる。このようなタイプの相互作用は、より展開したタンパク質状態に向かう配座平衡のシフトを生じ得る(例えば、結合するポリソルベートと相補的にタンパク質分子の疎水性部分の露出が増加する)。あるいは、タンパク質の天然状態がある程度の疎水性表面を示す場合、洗浄剤が天然状態に結合することで、その立体配座が安定化し得る。
【0236】
ポリソルベートの別の側面として、本質的に酸化分解を受け易いことがある。多くの場合、ポリソルベートは、原材料として、タンパク質の残基側鎖、特にメチオニンの酸化を引き起こすのに十分な量の過酸化物を含有する。安定剤の添加により酸化劣化が生じる可能性があることから、賦形剤は、製剤中に最低有効濃度で使用されるべきである点が強調される。界面活性剤の場合、所与のタンパク質の有効濃度は、安定化のメカニズムによって異なる。
【0237】
界面活性剤もまた、凍結及び乾燥中の表面関連凝集現象を防ぐために適切な量で加えられる(Chang,B,J.,Pharm.Sci.,85:1325,(1996))。したがって、例示的な界面活性剤としては、限定するものではないが、天然アミノ酸に由来する界面活性剤を含む、アニオン性、カチオン系、非イオン性、双極性イオン、及び両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びジオクチルスルホン酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、ならびにグリコデオキシコール酸ナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。双極性界面活性剤としては、CHAPS、CHAPSO、SB3-10、及びSB3-12が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤としては、ジギトニン、TritonX-100、TritonX-114、TWEEN-20、及びTWEEN-80が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤としてはまた、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、40、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65及び80、大豆レシチンならびにジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、及び(ジオレイルホスファチジルグリセロール)DOPGなどの他のリン脂質;スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、これらの界面活性剤を個別にまたは異なる比率の組み合わせとして含む組成物が更に提供される。本発明の一実施形態において、界面活性剤は、TWEEN-80である。本発明の製剤において、界面活性剤は、約0.01~約0.5g/Lの濃度で組み込まれる。提供される製剤において、界面活性剤濃度は、0.005、0.01、0.02、0.03、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0g/Lである。
【0238】
f.医薬用塩
塩は、多くの場合、製剤のイオン強度を上げるために添加され、タンパク質の溶解性、物理的安定性、及び等張性に重要であり得る。塩は、様々な様式でタンパク質の物理的安定性に影響し得る。イオンは、タンパク質表面の荷電残基に結合することによってタンパク質の天然状態を安定化させることができる。あるいは、塩は、タンパク質骨格(-CONH-)に沿ったペプチド基に結合することによって変性状態を安定化させることができる。塩はまた、タンパク質分子内の残基同士の反発性静電相互作用を遮蔽することによってタンパク質の天然立体配座を安定化させることができる。タンパク質製剤中の塩はまた、タンパク質の凝集及び不溶性をもたらし得る、タンパク質分子同士の誘引性静電相互作用を遮蔽することができる。提供される製剤において、塩の濃度は、0.1、1、10、20、30、40、50、80、100、120、150、200、300から500mMの間である。
【0239】
g.他の一般的な賦形剤成分:医薬用アミノ酸
アミノ酸は、緩衝剤、増量剤、安定剤及び抗酸化剤として、タンパク質製剤に多目的に利用されている。したがって、一態様において、タンパク質製剤をそれぞれ5.5~6.5及び4.0~5.5のpH範囲に緩衝するために、ヒスチジン及びグルタミン酸が採用される。ヒスチジンのイミダゾール基はpKa=6.0であり、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基は4.3のpKaであることから、これらのアミノ酸はそれぞれのpH範囲での緩衝に好適である。グルタミン酸は、そのような場合に特に有用である。ヒスチジンは、一般に市販されているタンパク質製剤にみられ、このアミノ酸は、注射時の刺すような痛みで知られるクエン酸緩衝液の代替となる。興味深いことに、ヒスチジンはまた、液体及び凍結乾燥の両方の形態で高濃度で使用した場合、凝集に関して、安定化作用を有することが報告されている(Chen B,et al.,Pharm Res.,20(12):1952-60(2003))。ヒスチジンはまた、高タンパク質濃度製剤の粘度を下げることが他者によって観察された。しかしながら、同じ研究において、著者らは、ステンレス鋼製容器中の抗体の凍結融解試験中に、ヒスチジン含有製剤における凝集増加及び変色を観察した。ヒスチジンに関して注意すべき別の点は、ヒスチジンが金属イオン存在下では光酸化を受けることである(Tomita M,et al.,Biochemistry,8(12):5149-60(1969))。メチオニンの製剤の抗酸化剤としての使用は、有望であると考えられ、いくつかの酸化ストレスに対して有効であることが観察されている(Lam XM,et al.,J Pharm Sci,86(11):1250-5(1997))。
【0240】
様々な態様において、選択的排除のメカニズムによってタンパク質を安定化させることがわかっているアミノ酸のグリシン、プロリン、セリン、アルギニン及びアラニンのうちの1つ以上を含む製剤が提供される。グリシンはまた、凍結乾燥製剤に一般的に使用される増量剤である。アルギニンは、凝集阻害において有効な薬剤であることが示されており、液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方で使用されている。提供される製剤において、アミノ酸濃度は、0.1、1、10、20、30、40、50、80、100、120、150、200、300から500mMの間である。本発明の一実施形態において、アミノ酸は、グリシンである。
【0241】
h.他の一般的な賦形剤成分:医薬用抗酸化剤
タンパク質残基の酸化は、いくつかの異なる原因から生じる。タンパク質の酸化劣化を防ぐには、特定の抗酸化剤の添加だけでなく、大気中酸素、温度、光曝露、及び化学汚染など、製造プロセス及び製品の保存全体に関する様々な要因を注意深く管理することを必要とする。したがって、本発明は、限定するものではないが、還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、またはキレート剤を含む医薬用抗酸化剤の使用を企図する。治療用タンパク質製剤の抗酸化剤は、一態様において、水溶性であり、製品の有効期間全体にわたって活性を維持する。還元剤及び酸素/フリーラジカルスカベンジャーは、溶液中の活性酸素種を消失させることで作用する。EDTAなどのキレート剤は、フリーラジカル形成を促進する微量の金属汚染物質と結合することによって効果を示す。例えば、酸性線維芽細胞増殖因子の液体製剤では、金属イオンによるシステイン残基の触媒酸化を阻害するためにEDTAが利用された。
【0242】
タンパク質の酸化を防ぐ様々な賦形剤の有効性に加えて、抗酸化剤自体が他の共有結合または物理的な変化をタンパク質に誘導する可能性が懸念される。例えば、還元剤は、分子内ジスルフィド連結の破壊を引き起こす場合があり、ジスルフィドシャッフリングをもたらし得る。遷移金属イオンの存在下において、アスコルビン酸及びEDTAは、いくつかのタンパク質及びペプチドにおいてメチオニン酸化を促進することがわかっている(Akers MJ,and Defelippis MR.Peptides and Proteins as Parenteral Solutions.In:Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Sven Frokjaer,Lars Hovgaard,editors.Pharmaceutical Science.Taylor and Francis,UK(1999));Fransson J.R.,/.Pharm.Sci.86(9):4046-1050(1997);Yin J,et al.,Pharm Res.,21(12):2377-83(2004))。チオ硫酸ナトリウムは、rhuMab HER2における光及び温度誘導メチオニン酸化レベルを減少させることが報告されているが、この研究では、チオ硫酸-タンパク質付加物の形成も報告された(Lam XM,Yang JY,et al.,J Pharm Sci.86(11):1250-5(1997))。適切な抗酸化剤の選択は、タンパク質の特定のストレス及び感受性に従って行われる。ある特定の態様で企図される抗酸化剤には、限定するものではないが、還元剤及び酸素/フリーラジカルスカベンジャー、EDTA、ならびにチオ硫酸ナトリウムが含まれる。
【0243】
i.他の一般的な賦形剤成分:医薬用金属イオン
一般に、遷移金属イオンは、タンパク質の物理的及び化学的分解反応を触媒し得るので、タンパク質製剤に望ましくない。ただし、金属イオンがタンパク質の補因子である製剤、及び配位錯体を形成するタンパク質懸濁製剤(例えば、インスリンの亜鉛懸濁液)には、特定の金属イオンが含まれる。最近では、アスパラギン酸のイソアスパラギン酸への異性化を阻害するために、マグネシウムイオン(10~120mM)の使用が提案されている(WO2004039337)。
【0244】
金属イオンがタンパク質の安定性または活性の増加を付与する2つの例は、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))、及び第VIII因子である。rhDNaseの場合、Ca+2イオン(最大100mM)により、特異的結合部位を介して酵素の安定性が増加した(Chen B,et al.,/Pharm Sci.,88(4):477-82(1999))。実際に、EGTAで溶液からカルシウムイオンを除去すると、脱アミド及び凝集が増加した。しかしながら、この作用は、Ca+2イオンでのみ観察され、他の二価カチオンMg+2、Mn+2及びZn+2は、rhDNaseを不安定化させることが観察された。第VIII因子でも同様の作用が観察された。Ca+2及びSr+2イオンは、タンパク質を安定化させたが、Mg+2、Mn+2及びZn+2、Cu+2及びFe+2などの他ものは、酵素を不安定化させた(Fatouros,A.,et al.,Int.J.Pharm.,155,121-131(1997)。第VIII因子を用いた別の研究では、Al+3イオンの存在下で凝集率の大幅な増加が観察された(Derrick TS,et al.,Pharm.Sci.,93(10):2549-57(2004))。著者らは、緩衝塩などの他の賦形剤が多くの場合Al+3イオンで汚染されていることを指摘しており、製剤製品には、適切な品質の賦形剤を使用する必要性を説明している。
【0245】
j.他の一般的な賦形剤成分:医薬用保存剤
同一容器から2回以上の抽出を伴うマルチユース非経口製剤を開発する場合には、保存剤が必要である。それらの主な機能は、微生物の成長を阻害すること、及び医薬品の有効期間または使用期間全体にわたる製品の無菌性を確保することである。一般的に使用される保存剤としては、限定するものではないが、ベンジルアルコール、フェノール及びm-クレゾールが挙げられる。保存剤は、長い間使用されているが、保存剤を含むタンパク質製剤の開発は困難であり得る。保存剤は、ほぼ必ずタンパク質に対して不安定化作用(凝集)があり、このことが複数回用量のタンパク質製剤における使用を制限する主な要因になっている(Roy S,et al.,J Pharm Sci,94(2):382-96(2005))。
【0246】
現在まで、ほとんどのタンパク質薬物は、単回使用のみを目的に製剤化されている。しかしながら、複数回用量の製剤が可能であれば、患者の利便性、及び市場性の増大を可能にする追加の利点がある。良い例は、保存製剤の開発により、より簡便なマルチユース注射ペン形態の商品化に至ったヒト成長ホルモン(hGH)である。現在、hGHの保存製剤を含有するそのようなペンデバイスは、少なくとも4つ市販されている。Norditropin(登録商標)(液体、Novo Nordisk)、Nutropin AQ(登録商標)(液体、Genentech)&Genotropin(凍結乾燥-デュアルチャンバーカートリッジ、Pharmacia&Upjohn)は、フェノールを含有し、Somatrope(登録商標)(Eli Lilly)は、m-クレゾールを用いて製剤化されている。
【0247】
保存剤形の製剤開発では、いくつかの側面を考慮する必要がある。医薬品中の保存剤の有効濃度は、最適化する必要がある。これには、タンパク質の安定性を損なうことなく抗菌有効性を付与する濃度範囲で、剤形中の所与の保存剤を試験することが必要である。例えば、インターロイキン-1受容体(I型)の液体製剤の開発では、示差走査熱量測定(DSC)を使用した、3つの保存剤のスクリーニングが成功した。保存剤は、市販製品で一般的に使用されている濃度で安定性に与える影響に基づいてランク付けされた(Remmele RL Jr.,et al.,Pharm Res.,15(2):200-8(1998))。
【0248】
保存剤を含有する液体製剤の開発は、凍結乾燥製剤よりも困難である。フリーズドライ製品は、保存剤を用いることなく凍結乾燥させ、使用時に希釈剤を含有する保存剤で再構成することができる。これにより、保存剤がタンパク質と接触する時間が短くなり、関連する安定性リスクがかなり最小化される。液体製剤の場合、保存剤の有効性及び安定性は、製品の有効期間全体(約18~24ヶ月)にわたって維持される必要がある。留意すべき重要な点は、活性薬物及び賦形剤の全成分を含有する最終製剤で保存剤の有効性が実証されなければならないことである。
【0249】
いくつかの保存剤は、注射部位反応を引き起こす可能性があり、これは、保存剤を選択する際に考慮が必要な別の要素である。ノルディトロピンにおける保存剤及び緩衝液の評価に焦点を当てた臨床試験では、m-クレゾールを含有する製剤と比較して、フェノール及びベンジルアルコールを含有する製剤では、疼痛知覚が低いことが観察された(Kappelgaard A.M.,Horm Res.62 Suppl 3:98-103(2004))。興味深いことに、一般的に使用される保存剤のうち、ベンジルアルコールは、麻酔特性を有する(Minogue SC,and Sun DA.,AnesthAnalg.,100(3):683-6(2005))。様々な態様において、保存剤の使用は、いかなる副作用も上回る利益をもたらす。
【0250】
k.医薬製剤の調製方法
本発明は、医薬製剤の調製方法を更に企図する。
【0251】
本発明の方法は、次のステップのうちの1つ以上を更に含む:本明細書に記載される安定化剤を凍結乾燥前の混合物に加えること、それぞれ本明細書に記載される増量剤、オスモル濃度調節剤、及び界面活性剤から選択される少なくとも1つの剤を凍結乾燥前の混合物に加えること。
【0252】
凍結乾燥物質の標準的な再構成法は、ある体積の純水または注射用滅菌水(WFI)(典型的に凍結乾燥中に除去された体積と等量)を加えて戻すことであるが、非経口投与用医薬品の調製には抗菌剤の希釈液が使用されることもある(Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,18:1311-1354(1992))。したがって、本発明の凍結乾燥rVWF組成物に希釈剤を加えるステップを含む、再構成されたrVWF組成物の調製のための方法が提供される。
【0253】
凍結乾燥物質は、水溶液として再構成され得る。様々な水性担体、例えば、注射用滅菌水、複数回用量の使用のための保存剤を含む水、または適量の界面活性剤を含む水(例えば、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性化合物を含有する水性懸濁液)。様々な態様において、そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、限定するものではないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガムであり、分散剤または湿潤剤は、天然リン脂質、例えば、限定するものではないが、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えば、限定するものではないが、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、限定するものではないが、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、またはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、限定するものではないが、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンである。様々な態様において、水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、限定するものではないが、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、またはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルを含有する。
【0254】
l.投与のための例示的なrVWF製剤
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、治療の体積を小さくするために(100IU/ml~10000IU/ml)、高い効力(高濃度のrVWF及び増強された長期安定性)を有する最終製品を可能にする増強された製剤を提供する。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約100IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約500IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約1000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約2000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約3000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約4000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約5000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約6000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約7000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約8000IU/ml~10000IU/mlである。いくつかの実施形態において、投与用製剤中のrVWF濃度は、約9000IU/ml~10000IU/mlである。
【0255】
いくつかの実施形態において、投与用製剤は、例えば、ヒスチジン、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸を含む、1つ以上の双極性イオン化合物を含む。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、例えば、ポリソルベート80、オクチルピラノシド、ジペプチド、及び/または両親媒性ペプチドを含む、最低でも1つの疎水性基及び1つの親水性基を有する両親媒性の特徴を有する成分を含む。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、例えば、ソルビトール、マンニトール、スクロース、またはトレハロースを含む、非還元糖または糖アルコールまたは二糖を含む。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、例えば、塩化ナトリウムを含む、生理学的オスモル濃度をもたらす無毒性水溶性塩を含む。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、pHが6.0~8.0の範囲である。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、pHが約6.0、約6.5、約7、約7.5または約8.0である。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、例えば、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Mn2+及び/またはそれらの組み合わせを含む、rVWFを安定化させる1つ以上の二価カチオンを含む。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、約1mM~約50mMのグリシン、約1mM~約50mMのヒスチジン、約0~約300mMの塩化ナトリウム(例えば、300mM未満のナトリウム)、約0.01%~約0.05%ポリソルベート20(またはポリソルベート80)、及び約0.5%~約20%(w/w)スクロースを含み、投与の時点でpHが約7.0であり、生理学的浸透圧モル濃度を有する。
【0256】
特定の態様において、rVWFは、緩衝液、糖及び/または糖アルコール(限定するものではないが、トレハロース及びマンニトールを含む)、安定剤(グリシンなど)、及び界面活性剤(ポリソルベート80など)を含有する製剤中に含有される。更なる実施形態において、rFVIIIを含有する製剤の場合、製剤は、ナトリウム、ヒスチジン、カルシウム、及びグルタチオンを更に含み得る。
【0257】
いくつかの実施形態において、投与用製剤は、フリーズドライにすることができる。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、安定であり、液体状態で約2℃~約8℃、及び約18℃~約25℃で保存することができる。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、安定であり、液体状態で約2℃~約8℃で保存することができる。いくつかの実施形態において、投与用製剤は、安定であり、液体状態で約18℃~約25℃で保存することができる。
【0258】
VWF組成物をヒトまたは試験動物に投与するために、一態様において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に」または「薬理学的に」許容されるという文言は、安定であり、凝集及び切断による産物などのタンパク質分解を阻害し、なおかつ、以下に記載されるように、当該技術分野においてよく知られている経路を使用して投与した場合に、アレルギー反応または他の有害反応をもたらすことのない分子実体及び組成物を指す。「薬学的に許容される担体」には、上記で開示される薬剤を含む、臨床的に有用なあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などが含まれる。
【0259】
医薬製剤は、経口、局所、経皮、非経口、吸入用スプレー、経膣、経直腸、または頭蓋内注射により投与される。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、槽内注射、または注入法を含む。特定の部位での静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、球後、及び/または肺内への注射による投与も同様に企図される。一般に、組成物は、パイロジェン、及びレシピエントにとって有害となり得る他の不純物を本質的に含まない。
【0260】
rVWFの単回投与または複数回投与は、担当医師によって選択される用量レベル及びパターンで実施される。疾患の予防または治療の場合、適切な投与量は、治療される疾患の種類(例えば、フォンヴィレブランド病)、疾患の重症度と経過、薬物の投与が予防または治療目的であるか、治療歴、患者の臨床歴と薬物に対する反応、及び主治医の判断によって決定される。
【0261】
一態様において、製剤は、医薬品の循環血中治療濃度を維持するために、最初のボーラス投与に続いて、持続注入される。別の例として、本発明の化合物は1回用量として投与される。当業者であれば、適正な医療行為及び個々の患者の臨床状態によって決定される有効な投与量及び投与レジメンを容易に最適化するであろう。投与経路は、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内の投与であり得るが、これらに限定されない。投与頻度は、薬剤の薬物動態パラメーター及び投与経路によって異なる。最適な医薬製剤は、投与経路及び所望の投与量に応じて当業者により決定される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042 pages 1435-1712を参照されたく、その開示は、あらゆる目的のため、特に医薬品のための製剤、投与経路及び投与量に関するあらゆる教示のために、その全体が参照により本明細書に援用される。そのような製剤は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、及びin vivoクリアランス速度に影響を与え得る。好適な用量は、投与経路に応じて、体重、体表面積または臓器の大きさに従って算出される。適切な投与量は、適切な用量反応データと併せて、血中投与濃度を決定するために確立されたアッセイの使用により確定され得る。最終投与レジメンは、薬物の作用を変更する様々な因子、例えば、薬物の比活性、患者の損傷の重症度と反応性、患者の年齢、状態、体重、性別と食事、感染症があればその重症度、投与時間及び他の臨床的因子を考慮して、主治医によって決定される。
【0262】
本発明の実施は、特に指定のない限り、従来の技術ならびに有機化学、高分子技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び免疫学の記載を採用することができ、これらは、当業者の技術範囲内である。そのような従来技術は、ポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、及び標識を使用したハイブリダイゼーションの検出を含む。好適な技術の具体的な例示は、本明細書中、以下の実施例を参照することにより得ることができる。ただし、当然のことながら、同等の従来手順もまた使用することができる。そのような従来の技術及び説明は、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV)、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cells:A Laboratory Manual、PCR Primer:A Laboratory Manual、及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual(いずれもCold Spring Harbor Laboratory Press)、Stryer,L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)Freeman,Highly stabilized York,Gait,“Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach” 1984,IRL Press,London、Nelson and Cox(2000),Lehninger,Principles of Biochemistry 3rd Ed.,W.H.Freeman Pub.,Highly stabilized York,N.Y.ならびにBerg et al.(2002)Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,Highly stabilized York,N.Y.などの標準的な実験マニュアルに見出すことができ、それらは全て、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0263】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上、別途明記されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリメラーゼ」への言及は、1つの薬剤またはそのような薬剤の混合物を指し、「方法」への言及は、当業者に知られている同等のステップ及び方法への言及を含むなどとなる。
【0264】
別途の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書で言及される全ての公開物は、その公開物に記載されている及び本明細書に記載される発明との関連で使用され得るデバイス、組成物、製剤及び方法論を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に援用される。
【0265】
値の範囲が記載される場合、その範囲の上限値と下限値との間にある、別途明確な記載がない限りはその下限値の単位の10分の1までの各値、及びその指定範囲内の任意の他の指定値または間にある値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより狭い範囲の上限値及び下限値は、独立してより狭い範囲に含まれ得、指定範囲内で特に除外される任意の制限値を除き、本発明内に包含される。指定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、当該含まれる限界値の一方または両方を除いた範囲もまた本明細書に含まれる。
【0266】
上記の説明において、本発明をより深く理解するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細のうちの1つ以上がなくても実施され得ることは当業者には明らかであろう。他の場合には、発明が曖昧になるのを回避するために、よく知られた特徴及び当業者によく知られた手順は記載されていない。
【0267】
本発明は、主に具体的な実施形態を参照しながら説明されているが、本開示を読むことで、他の実施形態が当業者に明らかとなることもまた想定され、そのような実施形態も本発明の方法内に含まれることが意図される。
【実施例
【0268】
実施例1-重症フォンヴィレブランド病(VWD)患者における組換えフォンヴィレブランド因子(RVWF)の第3相オープンラベル試験での過多月経の管理:事後解析
序文
フォンヴィレブランド病(VWD)の女性に最も一般的な症状は、重度月経出血(HMB)または過多月経であり、VWDの女性の最大80%がこの症状を患い、中等症または重症VWDの女性の20%が主にHMBのために子宮摘出を必要とする。1,2
【0269】
過多月経/HMBは、一般に、症候性鉄欠乏性貧血、心理的ストレス、及び生活の質の低下と関連する。仕事、学校、及び日常生活に悪影響を及ぼし、医療費の増加につながり得る。3,4
【0270】
過多月経の診断及び効果的な治療がないことは、VWDの女性におけるアンメット・ヘルス・ニーズである。
【0271】
組換えフォンヴィレブランド因子(rVWF、ボニコグアルファ、VEYVONDI(商標);Baxalta Innovations GmbH、Takedaの子会社,Vienna,Austria)は、重症VWDを有する成人患者における出血エピソード(BE)のオンデマンド治療に使用した場合、止血効果及び良好なベネフィット・リスクプロファイルを示した。5,6しかしながら、特にrVWFを伴う過多月経の管理に関する情報は限られている。
【0272】
目的
本試験の目的は、重症VWD患者の過多月経エピソードに対するオンデマンドrVWF治療の有効性及び安全性を決定することであった。
【0273】
方法
重症VWDの成人のBEの治療におけるrVWFの薬物動態、安全性、及び止血効果を評価するために、第3相多施設一部無作為化試験(NCT01410227;EudraCT2010-024108-84)を実施した。
【0274】
試験の組み入れ基準には、以下の要因を含めた:
男性または女性;18~65歳;いずれかの3型VWDの診断(VWF抗原量≦3IU/dL);または以下のタイプの重症非3型VWD:
・1型もしくは2A型(VWFリストセチン補因子活性[VWF:RCo]<20IU/dL);
・2B型(遺伝子型によって診断);
・2N型(第VIII因子[FVIII]活性[FVIII:C]<10%及び過去に確認されている遺伝的性質);
・2M型;
及び過去12ヶ月に≧1のBEを治療するためにVWF濃縮製剤を受けたことがある。
【0275】
除外基準には、rVWFもしくはrFVIIIの任意の成分に対する過敏症の既往歴;VWFもしくはFVIII阻害薬の使用歴;免疫障害;または血栓塞栓症イベントを含めた。
【0276】
試験デザイン
患者を4つの治療コホートのうちの1つに登録し、薬物動態評価及び/またはBEの治療のために、rVWFを組換えFVIII(rFVIII;抗血友病因子[組換え][ADVATE(登録商標);Baxalta US Inc.,Takedaの子会社,Lexington,MA,USA])とともにまたはそれなしで投与した(図1)。
【0277】
治療
一般に、初回用量(第1の用量とも呼ばれる)は、VWFの完全補充を目標とし、VWF:RCo>0.6IU/mL(60%)及びFVIII:C>0.4IU/mL(40%)のレベルとした。
【0278】
重度のBEでは、後続用量は、VWF:RCoのトラフレベルを>50%に3日間維持することを目標とし、次いで、その後の数日間は、試験責任医師が必要と判断する場合とした(図2)。
【0279】
中程度のBEでは、試験責任医師が必要と判断する期間、VWF:RCoトラフレベル>30%を目標とした。軽度BEの治療は、ほとんどの場合、1用量または2用量のみとした(図2)。
【0280】
過多月経エピソードの事後データ解析
12ヶ月の試験期間中に1回以上の過多月経エピソードを報告したrVWFで治療した女性患者のサブセットについて、事後データ解析を実施した。rVWFのみで治療された過多月経エピソードをこの解析に含めた。
【0281】
試験責任医師による過多月経のBE評価には以下を含めた:
・BEの回数及び重症度(軽度、中程度、または重症)
・rVWFの総用量及びBEあたりの注入回数
・各BEが解決するまでの時間は、最初の注入開始日時及びBEが解決した日時から得、これらの日時が利用可能なBEのみ解析に含めた。
【0282】
BEの解決後、試験責任医師が客観的な評価スケールに基づいて総合的な臨床効果を決定した(図3)。
【0283】
以下の情報が、患者、患者の医療提供者(主要試験施設から離れた場所での治療の場合)、患者の法的代理人(在宅治療の場合)、または参加施設の権限を与えられた資格要件を満たす者(病院での治療の場合)よって記録された:
・BEの部位(例えば、関節、軟組織、筋肉);BEのタイプ(例えば、自然発生的、外傷性、不明);及びBEの重症度(例えば、軽度、中程度、重度)
・BEの開始日時及び解決日時
・BEの治療に使用されたrVWF-rFVIIIまたはrVWFの各注入日時
・止血効果の主観的評価日時
・必要とした鎮痛薬の種類及び数
【0284】
BEは、最初の注入後8時間以内に患者によって主観的に評価され、注入後8時間以内のうち最後に入手可能な評価を解析に使用した。複数回の注入で治療されたBEの場合、最初の注入の止血効果評価を解析に使用した。
【0285】
過多月経及び過多月経関連貧血に対して試験中に服用された併用薬を記録した。
【0286】
安全性評価には、有害事象(AE)の数、種類、重篤度、及び重症度、ならびにAEと試験治療との間の因果関係が含まれた。
【0287】
カテゴリー変数はn(%)で報告し、連続変数は中央値(範囲)で報告した。
【0288】
結果
患者
rVWFで治療した6名の患者が46件の過多月経エピソード(患者あたり2~15件のBE)を有し(図4)、そのうちの45件はrVWFのみ(例えば、血漿由来VWFではない)で治療されたので、これらの解析に含めた。
【0289】
1名の患者が2件の過多月経エピソードを有したが、そのうちの1件は、血漿由来VWFとrVWFの両方で治療されたことから、解析から除外した。
【0290】
過多月経エピソードの大部分は、医師または患者(自宅治療)によって軽症と評価された(図5)。
【0291】
過多月経の因子消費及び治療転帰
過多月経エピソードを管理するのに必要なrVWF用量は、出血の重症度とともに増加し、VWD3型のほうが2A型よりも多かった(図6)。
【0292】
各過多月経エピソードの治療に使用されたrVWFの注入回数は、一般に、出血の重症度とともに増加し(図6)、45件の過多月経エピソードのうち30件は1回のみの注入を要した。
【0293】
1回を超える注入を要した過多月経エピソードの場合、rFVIIIが同時投与され、1回目の注入では15件中12件(80%)、2回目の注入では15件中4件(26.7%)、3回目の注入では6件中1件(16.7%)、及び4回目の注入では1件中0件であった。
【0294】
最初の注入開始から過多月経エピソードの解決までの時間の中央値(範囲)は、24.3(0.3~202.7)時間であった(n=43)。過多月経エピソードの治療のためのrVWFの止血効果は、試験責任医師によってほとんどが「優良」と評価された(図7)。患者は、rVWFの止血効果を、39件(90.7%)の過多月経エピソードで「優良」、3件(7.0%)のエピソードで「良好」、及び1件(2.3%)のエピソードで「中程度」と評価した。
【0295】
併用薬及び試験治療の安全性
過多月経の併用治療として、3名の患者がトラネキサム酸を使用し、3名の患者が経口避妊薬を使用した。
【0296】
過多月経に起因する貧血を治療するために、6名の患者全員が鉄補充療法を受けた。
【0297】
6名のうち4名の患者で合計15件のAEが報告された(図8)。
・全AEは、試験責任医師によって試験治療と無関係であるとみなされた。
・1件の子宮ポリープのAEは、重篤かつ重症とみなされた。
・1件の自然流産のAEは、重篤だが、軽度の重症度とみなされた。
・13件のAEが非重篤とされ、12件が軽症、1件が中等症の重症度であった。
【0298】
注意事項
この第3相一部無作為化rVWF試験からのデータ事後解析は、12ヶ月の試験において過多月経/HMBエピソードに対して治療された少数の重症VWD患者を対象とした。
【0299】
結論
HMB(重度月経出血または過多月経)エピソード1回あたり中央値で1回の注入が必要であり、患者及び試験責任医師は、大部分のHMBエピソードを管理するためのrVWFによる治療の臨床効果を「優良」と評価した。
【0300】
この解析は、重症VWDの女性におけるHMBエピソードの管理のためのオンデマンドによるrVWFの有効性及び安全性を示す証拠を提供する。
【0301】
重症VWDを有する女性のこの消耗性の状態をrVWF治療レジメンが継続して管理するのに役立ち得るかどうか確認するために、更なる試験が実施される。
【0302】
参考文献
1.Nichols WL,et al.Haemophilia 2008;14:171-232.
【0303】
2.De Wee EM,et al.Thromb Haemost 2011;106:885-92.
【0304】
3.Ragni MV,et al.Haemophilia 2016P2:397-402.
【0305】
4.Kadir RA,et al.Haemophilia 2010;16:832-9.
【0306】
5.European Medicines Agency.VEYVONDI.Summary of Product Characteristics.https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/veyvondi-epar-product-information_en.pdf.Accessed December 18,2019.
【0307】
6.Gill JC,et al.Blood 2015;126:2038-46.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
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図10D
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図10F
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図11A
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【配列表】
2023514541000001.app
【国際調査報告】