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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(54)【発明の名称】真空含浸のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/02 20060101AFI20230331BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B05C3/02
B05D1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022543111
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021013088
(87)【国際公開番号】W WO2021146197
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/961,240
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィン、 ダニエル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コザック、 ウィリアム ジー.
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
【Fターム(参考)】
4D075AB01
4D075AB16
4D075AB35
4D075AB41
4D075AB55
4D075BB24Z
4D075BB56Y
4D075CA33
4D075DA23
4D075DB01
4D075DB64
4D075DC19
4D075EA05
4D075EB22
4F040AA17
4F040AB20
4F040CC02
4F040CC05
4F040CC18
(57)【要約】
部品を真空にさらし、部品をポリマー含浸液に浸漬し、部品に陽圧を加えて部品の間隙にポリマー含浸液を入り込ませ、圧力を大気圧に解放し、好ましくは活性重合工程無しでポリマー含浸液を固化させる、真空含浸システム及びプロセス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と取り外し可能な蓋とを備えた真空タンクであって、前記容器及び前記蓋は、前記蓋が前記容器上にあるときに、全体として密閉された真空チャンバを形成する、前記真空タンクと、
前記真空チャンバ内に固定又は取り外し可能に支持され、かつ1つ又は複数の物品を保持するように構成されたラックと、
前記容器に移動可能に取り付けられ、内部に所定量の含浸液を保持するように構成された内側タンクであって、前記内側タンクは、前記1つ又は複数の前記物品が前記含浸液に浸漬されない第1の位置と、前記1つ又は複数の前記物品が少なくとも部分的に前記含浸液に浸漬される第2の位置との間で垂直方向に移動可能である、前記内側タンクと、
前記蓋が前記容器上にあるときに前記真空チャンバと流体連結する1つ又は複数のガス制御回路を備える真空及び圧力制御システムと、
を備える真空含浸システム。
【請求項2】
前記ラックは、少なくとも1つのアタッチメントによって前記真空チャンバ内に取り外し可能に支持されている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項3】
前記ラックは、前記蓋又は前記容器に固定されている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項4】
前記内側タンクは、前記容器の底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項5】
前記内側タンクは、前記シャフトに取り外し可能に取り付けられている、請求項4に記載の真空含浸システム。
【請求項6】
前記シャフトはリニアスライダを備える、請求項4に記載の真空含浸システム。
【請求項7】
前記シャフトに取り付けられ、かつ前記内側タンクを前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項6に記載の真空含浸システム。
【請求項8】
前記内側タンクから含浸液の供給源へ延びる流体制御回路をさらに備える、請求項7に記載の真空含浸システム。
【請求項9】
前記流体制御回路は、前記内側タンクから前記容器内の流体ポートへ延びる可撓性の管を備える、請求項8に記載の真空含浸システム。
【請求項10】
前記流体制御回路は、前記シャフトを通って延びる通路を備える、請求項8に記載の真空含浸システム。
【請求項11】
前記真空制御システムは、真空ポンプと連通する第1のガス制御回路と、加圧ガス源と連通する第2のガス制御回路と、選択的に開放可能な通気孔とのうちの1つ又は複数を備える、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項12】
前記内側タンクは、非粘着性の被膜でコーティングされている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項13】
前記内側タンクは取り外し可能なインナーライナを含む、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項14】
前記ライナは、金属又はプラスチック材料からなる再使用可能又は使い捨て可能なライナである、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項15】
前記内側タンクは、内側タンク内に配置された取り外し可能な内周バンドを備える。請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項16】
前記バンドは、前記内側タンクの内面に押し付けられた平らなリングを含み、かつ空気/含浸剤界面で前記内側タンクを前記含浸液から隔離する、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項17】
真空含浸システムを操作する方法であって、
(a)周囲気圧の真空タンク内に1つ又は複数の物品を配置することと、
(b)工程(a)の後に、前記真空タンクを密閉することと、
(c)前記真空タンク内に、かつ前記1つ又は複数の物品の下に配置された内側タンク内に所定量の含浸液を供給することと、
(d)工程(a)及び(b)の後に、前記真空タンク内の内圧を前記周囲気圧よりも下に低下させることと、
(e)工程(c)及び(d)の後に、前記1つ又は複数の物品を前記含浸液に少なくとも部分的に浸すために前記内側タンクを上昇させることと、
(f)工程(e)の後に、前記真空タンク内の前記内圧を前記周囲気圧よりも上に上昇させることと、
(g)工程(f)の後に、前記1つ又は複数の物品が前記内側タンク内の前記含浸液に浸されない位置まで前記内側タンクを降下させることと、
(h)工程(g)の後に、前記真空タンク内の前記内圧を前記周囲気圧まで低下させることと、
(i)工程(h)の後に、前記真空タンクを開け、前記1つ又は複数の物品を前記真空タンクから取り出すことと、
を含む方法。
【請求項18】
工程(c)は、工程(a)又は工程(b)の前及び/又は工程(a)又は工程(b)と同時に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)は工程(b)の後に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
工程(d)は工程(c)を完了した後に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、前記1つ又は複数の物品を保持するラックを前記容器に取り付けることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、前記1つ又は複数の物品を保持するラックを前記蓋に取り付けることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)は、前記所定量の含浸液を前記真空タンクの外部から可撓性の管を介して前記内側タンク内にポンプで注入することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記内側タンクは前記真空タンクの底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられており、工程(e)は前記シャフトを上昇させることを含み、工程(g)は前記シャフトを下降させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)は、前記真空タンクの外部から前記シャフトを通って延びる通路を介して前記内側タンク内に前記所定量の含浸液をポンプで注入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(j)工程(i)の後に、架橋が無い場合は前記真空タンクからの前記1つ又は複数の物品を乾燥する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
工程(j)は、前記含浸液を固体に変質させる空気乾燥又は加熱を含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、部品を真空にさらし、部品を含浸液に浸漬し、含浸液が固化する部品孔隙内に含浸液を入り込ませるために部品に陽圧を加える真空含浸システム及びプロセスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
真空含浸システムは、単一部品又は組立部品等の物品における孔及び小さな間隙を封止するために使用される。このような封止は、例えば、水、油、土及び他の汚染物質の部品又は組立品への侵入を低減又は防止するために有用であり、物品の腐食を防止するのに役立つ。物品には、鋳造金属及び他の材料(金属とプラスチック材料との組合せを含む)が含まれ得る。一般的に、真空含浸は、物品を真空にさらし、物品を含浸液に接触させ、次いで含浸液を孔及び間隙に移動させるのを促進させるために任意に陽圧を加えることによって行われる。真空含浸プロセスは、乾式真空と湿式真空との2つのグループに分類することができる。
【0003】
乾式真空含浸は、周囲空気のような気相環境を含む密閉されたチャンバ内に部品があることを意味し、真空をかけて、チャンバから(物品内の孔及び間隙からを含む)気相を除去すると、真空が維持されている間、封止剤が貯留容器から密閉されたチャンバ内に移され、真空が解放されると、封止剤が孔内に引き入れられ、未使用の封止剤が貯留容器に戻される。乾式真空含浸は、真空が解放された後に、通常約4~7バール(400~700kPa)の陽圧を加え、封止剤が孔隙に浸透できるように、選択された時間の間その圧力を保持するステップを含むことができる。
【0004】
湿式真空は、真空チャンバ内の含浸液に部品を浸し、容器及び封止剤から空気が完全に除去されるまで真空をかけて保持することを意味する。湿式真空は、真空チャンバ内の封止剤の水頭圧を克服し、穴や間隙にかかる負圧を小さくすることが課題である。このため、有限量の空気が孔に閉じ込められ、最終的に封止品質の低下につながり得るという欠点がある。第2のステップにおいて、真空を開放し、物品を大気圧の封止剤の中に残して、封止剤が物品内の孔及び間隙に浸透できるようにする。
【0005】
最も一般的には、含浸液は、部品の含浸後にスピニング又は同様の機械的手段によって部品の外部から容易に除去される低粘度モノマー溶液であり、孔及び間隙の中に液体が残る。低粘度モノマー溶液は、次に、後処理工程においてその場重合される。低粘度モノマー材料は、部品の孔及び間隙に送り込むことが容易であるため、少なくとも部分的には商業的に成功している。一般的なモノマー材料としては、例えば、典型的には23℃で約5MPa・s~約65MPa・s(5~65センチポアズ)の粘度を有するメタクリレートモノマーが挙げられる。これらは、重合及び架橋して硬質のポリアクリレート固体になる熱硬化性材料である。様々な理由により、これらのその場重合封止は、シミュレーションされた寿命耐久性テストにおいて、携帯電話アセンブリ等の特定の電子アセンブリ上の隣接する金属部品とプラスチック部品との間の間隙の封止に失敗する傾向があることが分かっている。
【0006】
その場重合による封止の欠点を克服するために、含浸後に重合又は架橋を必要とせず、封止を形成するために乾燥のみを必要とするポリマー含浸液を、その場重合されたモノマー溶液に置き換えることができる。ポリマーは、水等の溶媒内に溶解又は分散させることができる。多量の溶媒を添加することによってモノマー溶液と同様の粘度で作られるポリマー/溶媒含浸液の1つの欠点は、それらを乾燥するのに必要なエネルギー/時間である。別の起こり得る欠点は、含浸液に十分なポリマー固体がないために乾燥時にポリマー封止剤が収縮することにより、孔及び間隙の効果的な封止ができないことである。
【0007】
この問題を解決するために、本出願人は、ポリマーの非ニュートン挙動(50~3000センチポイズ)に依存して約50Pa・s~3000MPa・s及びそれより大きい範囲の粘度を有する、より多くのポリマー固体及びより少ない溶媒を含有する濃い(すなわち粘性の)ポリマー材料を選択した。濃いポリマー溶液又はポリマー分散液は、改善された封止性能をもたらし、架橋を必要としないことが分かっているが、他の不利益の原因となる。液体溶液の水頭圧は、吸引される真空に対して液体の陽圧及び任意の溶媒の蒸気圧が作用する、特に液体の表面よりさらに下の部分では、孔及び間隙から除去できる空気の量が制限されるので、例えば、濃いポリマー溶液は湿式真空プロセスで使用するのにあまり適していない。これは、ポリマー含浸剤のより高い粘度と組み合わされて、封止性能低下の原因となる。液体の水頭圧によって引き起こされる問題は、浅いタンクで真空含浸プロセスを実施することによって低減することができるが、小さな部品の商業的生産量には多数の比較的大きな直径の圧力定格化されたタンクが必要であり、特にある種のポリマー含浸液による腐食に耐えるためにステンレス鋼が必要とされる場合には、法外なコストとなる。
【0008】
湿式真空プロセスを使用する場合の問題は、乾式真空プロセスを使用することによってある程度対処することができる。乾式真空プロセスでは、克服すべき水頭圧がないので容器の高さが封止品質に影響を与えないため、同じ生産量に対してより少数のより深い小径タンクを使用することができる。しかしながら、乾式真空プロセスにも欠点がある。例えば、空のタンクの真空環境に最初に濃い含浸液が入ったときに激しい発泡が起こりやすい。この発泡は、真空含浸システムの広い領域を覆い、乾燥して硬質被膜になることが観察されている。また、薄いモノマーとは異なり、濃い含浸液は、サイクルの終わりにタンクの側壁から十分に排出されない。そのため、発泡した含浸液及びプロセス中にタンクの壁に接触する他の含浸液は、わずか数回の運転サイクルの後に、タンクの側壁に厚い除去することが困難な付着物を形成する。この問題は、含浸液は粘着性が非常に高く、かつ耐溶剤性が非常に高いという事実によって一層ひどくなる。したがって、タンク内部の洗浄にはオペレータが容器へ入ることがほぼ確実に必要となり、これは、運転休止時間をスケジューリングする必要性や、オペレータの安全性を確保するための厳格化された要件等の運用上の複雑さを招く。
【0009】
したがって、従来技術の真空含浸システムはさらに改善することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人の発明は、本明細書に開示されるような乾式真空含浸システム及び乾式含浸プロセスにより1つ又は複数の上記の欠点を解決することを対象とする。
【0011】
本発明の一態様(態様1)によれば、
容器と取り外し可能な蓋とを備えた真空タンクであって、容器及び蓋は、蓋が容器上にあるときに、全体として密閉された真空チャンバを形成する、真空タンクと、
真空チャンバ内に固定又は取り外し可能に支持され、かつ1つ又は複数の物品を保持するように構成されたラックと、
容器に移動可能に取り付けられ、内部に所定量の含浸液を保持するように構成された内側タンクであって、内側タンクは、1つ又は複数の物品が含浸液に浸漬されない第1の位置と、1つ又は複数の物品が少なくとも部分的に含浸液に浸漬される第2の位置との間で垂直方向に移動可能である、内側タンクと、
蓋が容器上にあるときに真空チャンバと流体連結する1つ又は複数のガス制御回路を備える真空及び圧力の制御システムと、
で構成される、から基本的に成る、又はから成る、真空含浸システムが提供される。
【0012】
態様2. ラックは、少なくとも1つのアタッチメントによって真空チャンバ内に取り外し可能に支持されている、態様1に記載の真空含浸システム。
【0013】
態様3. ラックは、蓋又は容器に固定されている、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0014】
態様4. 内側タンクは、容器の底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられている、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0015】
態様5. 内側タンクは、シャフトに取り外し可能に取り付けられている、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0016】
態様6. シャフトはリニアスライダを備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0017】
態様7. シャフトに取り付けられ、かつ内側タンクを第1の位置と第2の位置との間で移動させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0018】
態様8. 内側タンクから含浸液の供給源へ延びる流体制御回路をさらに備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0019】
態様9.流体制御回路は、内側タンクから容器内の流体ポートへ延びる可撓性の管を備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0020】
態様10. 流体制御回路は、シャフトを通って延びる通路を備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0021】
態様11. 真空制御システムは、真空ポンプと連通する第1のガス制御回路と、加圧ガス源と連通する第2のガス制御回路と、選択的に開放可能な通気孔とのうちの1つ又は複数を備える、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0022】
態様12. 内側タンクは、非粘着性の被膜でコーティングされている、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0023】
態様13. 内側タンクは取り外し可能なインナーライナを含む、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0024】
態様14. ライナは、金属又はプラスチック材料からなる再使用可能又は使い捨て可能なライナである、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0025】
態様15. 内側タンクは、内側タンク内に配置された取り外し可能な内周バンドを備える。上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0026】
態様16. バンドは、内側タンクの内面に押し付けられた平らなリングを含み、かつ空気/含浸剤界面で内側タンクを含浸液から隔離する、上記のいずれかの態様に記載の真空含浸システム。
【0027】
本発明の他の態様(態様17)によれば、真空含浸システムを操作する方法であって、
(a)周囲気圧の真空タンク内に1つ又は複数の物品を配置する工程と、
(b)工程(a)の後に、真空タンクを密閉する工程と、
(c)真空タンク内に、かつ1つ又は複数の物品の下に配置された内側タンク内に所定量の含浸液を供給する工程と、
(d)工程(a)及び(b)の後に、真空タンク内の内圧を周囲気圧よりも下に低下させる工程と、
(e)工程(c)及び(d)の後に、1つ又は複数の物品を含浸液に少なくとも部分的に浸すために内側タンクを上昇させる工程と、
(f)工程(e)の後に、真空タンク内の内圧を周囲気圧よりも上に上昇させる工程と、
(g)工程(f)の後に、1つ又は複数の物品が内側タンク内の含浸液に浸されない位置まで内側タンクを降下させる工程と、
(h)工程(g)の後に、真空タンク内の内圧を周囲気圧まで低下させる工程と、
(i)工程(h)の後に、真空タンクを開け、1つ又は複数の物品を真空タンクから取り出す工程と、
で構成される、から基本的に成る、又はから成る方法が提供される。
【0028】
態様18. 工程(c)は、工程(a)又は工程(b)の前及び/又は工程(a)又は工程(b)と同時に行われる、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0029】
態様19. 工程(c)は工程(b)の後に行われる、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0030】
態様20. 工程(d)は工程(c)を完了した後に行われる、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0031】
態様21. 真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、1つ又は複数の物品を保持するラックを容器に取り付けることを含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0032】
態様22. 真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、1つ又は複数の物品を保持するラックを蓋に取り付けることを含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0033】
態様23. 工程(c)は、所定量の含浸液を真空タンクの外部から可撓性の管を介して内側タンク内にポンプで注入することを含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0034】
態様24. 内側タンクは真空タンクの底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられており、工程(e)はシャフトを上昇させることを含み、工程(g)はシャフトを下降させることを含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0035】
態様25. 工程(c)は、真空タンクの外部からシャフトを通って延びる通路を介して内側タンク内に所定量の含浸液をポンプで注入することを含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0036】
態様26. (j)工程(i)の後に、架橋が無い場合は真空タンクからの1つ又は複数の物品を乾燥する工程をさらに含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0037】
態様27. 工程(j)は、含浸液を固体に変質させる空気乾燥又は加熱を含む、上記のいずれかの態様に記載の方法。
【0038】
一実施形態において、乾式真空含浸システムは、出口の無い下側部分と密閉可能な開口部で終端している上側部分とを有する耐圧性の外側タンク内に配置された頂部開口型の内側タンク内に含浸ポリマーが収容される、タンク内タンク構造を含む。内側タンクは外側タンクの上側部分の下方に配置され、含浸される部品が密閉可能な開口部を通して内側タンクへ導入される。含浸ポリマーを容器から容器へ移動させる代わりに、ポリマーを含む内側タンクを外側タンク内に移動可能に配置し、被覆される部品が含浸ポリマーに浸漬されるまでその部品を包囲するように使用時に内側タンクを上方に移動させる。これにより、貯留タンクと真空含浸タンクとの間のポリマーの乱流によって生じる含浸ポリマーの発泡と、真空下でタンク内にポリマーを導入することによって生じる過剰な発泡とが大幅に低減される。
【0039】
ポリマー溶液を収容する内側タンクがそのトラバースの底部にある状態で、封止する部品が好ましくは巻き上げ機等によって外側タンク内に降下され、これらの部品は通常はラック又は他の支持体の上でポリマー液体の上方に吊り下げられる。次に、外側タンクの頂部が閉じられ、耐圧性の外側タンクが密閉され、部品の孔/間隙を含む真空含浸システムの耐圧性の外側タンク内から空気を排気するために真空がかけられる。次に、内側タンクが上昇し、それによって部品がポリマー溶液に浸漬され、真空が解放されて、ポリマー液体を間隙及び孔の中に移動させるのを助ける。次に、外側タンクが大気圧より高い圧力に加圧され、それにより追加の濃いポリマーを部品の孔/間隙の中に押し込む。約30秒~300秒の選択された時間の後、圧力が開放されて大気圧に戻り、内側タンクが降下させられ、余分なポリマーが部品の外表面及びラックから滴下して内側タンク内に戻る。ラックが上昇させられ、オプションで過剰ポリマー用のキャッチトレイがラックの下に配置され、次いでラックが取り外されて洗浄ステーションに搬送され、そこで部品の表面の過剰なポリマーが除去され、次いでそこから乾燥ステーションに搬送され、そこでポリマーが乾燥され、粘性を有するポリマー液体をオプションでエラストマー特性を有する固形に変質させ、それにより物品の孔及び間隙を封止する。
【0040】
特に、乾式真空が使用される場合、真空含浸容器は、湿式真空プロセスの水頭圧の問題に対応するために複数の浅いタンクの大きな設置面積を有する必要がない。したがって、より小さい直径のより深いタンクを、封止品質に悪影響を与えることなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】例示的な真空含浸システムの概略図である。
図2】第1の動作状態における図1の実施形態を示す図である。
図3】第1の動作状態における、例示的な含浸システムの代替実施形態を示す図である。
図4】第2の動作状態における図1の実施形態を示す図である。
図5】第3の動作状態における図1の実施形態を示す図である。
図6】真空含浸システムを操作するための例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図において、同様の参照番号は同様の特徴を示している。
【0043】
本明細書に記載される実施形態は、真空含浸システム及び真空含浸システムを操作する方法に関する。本明細書に記載される実施形態は例示であり、他の実施形態は本明細書に記載される特徴の様々な異なる態様又は組み合わせを包含し得ることが理解されるであろう。
【0044】
図1は、真空含浸システム100の第1の例示的な実施形態を示す。システム100は、容器102及び蓋104によって形成された真空タンクを含む。容器102は、真空タンクの下側部分として構成され、概ね液密である。蓋104は、真空タンクの上側部分として構成され、同様に概ね液密である。容器102は、その上端で上向きの開口部106で終端しており、蓋104は、同様の形状の下向きの開口部108を有している。蓋104は、概ね液密及び気密の真空チャンバ112を形成するように、容器102に固定可能である。開口部106,108の一方又は両方は、Oリング110又はその他のシールによって囲まれてもよく、又はこれを含むことができ、これは、概ね液密の筐体を形成するのを補助するために半径方向に延びるフランジ上に設けられてもよい。本明細書中で用いられているように、「概ね液密」は、全ての作動通路及び開口部が閉じられているときに、ガス又は液体が構造を通過し得ないか、あるいは、システムの動作に影響を及ぼさない公称量のガス又は液体のみが構造を通過し得ることを意味する。
【0045】
容器102及び蓋104は、好ましくは、ドーム状、半球状、トリ球形状又は半楕円状のヘッドで終端する円筒状の側壁を有する、従来の圧力容器の形状に形成され得る。しかしながら、容器102及び蓋104は、全体として球形状又は他の形状を形成することができる。真空タンクは、所望の作動圧力及び真空を封じ込めるように構成することができ、また、予想される作動温度に耐えるように構成することができる。例えば、真空タンクは、10mmHg~20気圧の陽圧、より好ましくは20mmHg~10気圧の陽圧の範囲の内圧で動作するように定格として定められ得る。また、真空タンクは、5℃~200℃、より好ましくは15℃~100℃で動作するように定格として定められ得る。
【0046】
また、システム100は、真空タンク内の真空チャンバ112の内側に配置されるように構成されたラック114(又は複数のラック)を含み、それらは、真空チャンバ内に固定されるか、又は真空チャンバの内側に取り外し可能に支持される。ラック114又は複数のラックは、容器102及び蓋104の一方又は両方に固定されてもよい。ラック114は、真空タンク内に取り外し可能に支持及び/又は固定されることが好ましい。例えば、容器102は、容器の内壁面114から半径方向内方に延びる内側リップ116を含むことができ、ラック114は、内側リップ116と係合して真空チャンバ112内の所定の垂直位置にラック114を保持するように、ラック116から半径方向外方に延びる外側リップ120を含むことができる。他の実施形態は、ラック114を容器102又は蓋104に固定するために、フック等の他の機構を使用してもよい。
【0047】
接続機構は、真空チャンバ112に対するラック114の自動化された設置及び除去に適した構成としてもよい。例えば、内側及び外側のリップ116,120は、ラック114を垂直方向に支持するように構成されてもよいが、ローディング装置(例えば、クレーン又は天井巻き上げ機)の動作における不正確さを考慮して、半径方向及び回転方向のある程度の移動を許容する。必要に応じて、ラックが所定の位置に配置された後にラックが移動しないようにするためのボルト又はクランプのような、ラック114の位置を全方向に固定するための機構を設けてもよい。他の代替例及び変形例は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0048】
他の実施形態では、ラック114は、容器102又は蓋104に取り外せないように固定されてもよい。例えば、ラック114は、所定の位置に溶接されてもよいし、又は通常の動作及び洗浄方法の間にラックの取り外しを可能にすることを意図していない留め具によって固定されてもよい。この場合、以下にさらに説明するように、取り外し可能なホルダ、支持体、バスケット等が、含浸及び場合によっては搬送のためにラック内に部品を配置するために使用され得る。
【0049】
ラック114はまた、真空含浸される1つ又は複数の物品を保持し、かつ含浸液が物品に接触することを可能にするように構成される。例えば、ラック114は、物品を底部から支持するメッシュバスケット若しくは一連の入れ子状のメッシュバスケット、又は物品における対応する開口部を保持することができる1つ又は複数のフックを含むことができる。ラック114はまた、ラック114が含浸液に浸漬されることなく1つ又は複数の物品を吊り下げるように構成されてもよい。例えば、各々の物品は、プラスチック材料からなるストランド又はループ等の中間の使い捨てコネクタによってラック114から吊り下げられてもよい。他の代替例及び変形例は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0050】
システム100は、所定量の含浸液を保持することができるように通常は下端で閉鎖されているが、ラック114及び/又はラックに保持された又はラックから吊り下げられた物品を受け入れるような寸法及び形状を有する開口頂部124を有する内側タンク122をさらに含む。例えば、内側タンク122は、容器の内壁面118の隣接部分よりも径がわずかに小さい円筒形のチャンバを備えてもよい。内側タンク122は、いわゆる非粘着性材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の被膜を有していてもよく、かつ/又は、金属又はプラスチック材料からなる再使用可能又は使い捨て可能なライナのような取り外し可能なインナーライナ122’を含んでいてもよく、これにより、内側タンク122の定期的な洗浄を容易にし、かつ内側タンク122及び容器102を製造するためのより安価な材料の選択を可能にすることが期待される。例えば、腐食性であり得るポリマー含浸液によって直接接触されない表面については、ステンレス鋼を、炭素鋼等のより低品質の鋼、アルミニウム又は本発明の目的を妨げない他の適切な金属等に置き換えることができる。
【0051】
内側タンク122は、ラックに保持された物品がタンク内の含浸液に浸漬されない第1の位置と、物品が含浸液に少なくとも部分的に(好ましくは完全に)浸漬される第2の位置との間を垂直に移動することができるように、容器102に移動可能に取り付けられている。内側タンク122の動作については、以下に詳細に説明する。
【0052】
内側タンク122は、任意の適切な機構を用いて容器102に移動可能に取り付けられ得る。図示した例では、内側タンク122は、容器102の底部の封止部128を通って延びるシャフト126の上に取り付けられている。シャフト126及び封止部128は、気密又は圧力耐性を有するシールを形成するために任意の適切な構造を有してもよい。例えば、シャフト126は、容器102の底部の開口部を通って延びる研磨されたステンレス鋼のシリンダを備えてもよく、上記開口部内に取り付けられた1つ又は複数のメカニカルシール又はグランドシールが、半径方向に延び、かつシャフト126と接触して、摺動封止部128を形成する。封止部128は、油圧シールの技術分野において知られているような、ワイパー、シールリップ、圧縮リング、Oリング、Vリング、くさび、パッキン材料等の任意の適切な配置構成を含むことができる。この場合、シャフト126は、シャフト126の長さに沿って軸方向に動くリニアスライダであり、必ずしもシャフトの軸を中心に回転する必要はない。他の場合、シャフト126は、容器102の底部内の雌ねじに係合するリードスクリューを備えるか、又は他の構成を有することができる。
【0053】
アクチュエータ130は、シャフト126に取り付けられ、かつ内側タンク122を第1(下げられた)位置と第2(上げられた)位置との間で移動させるように構成されている。図示した例では、アクチュエータ130は、油圧式又は空気圧式のピストン132とシリンダ134との組立体を備えており、これにより、周知のようにシリンダ室を加圧することによって動力を発生させる。この場合、ピストン132は剛性のコネクタ136によってシャフト126に取り付けられている。そのため、アクチュエータ130を作動させるとピストン132が上方に移動し、これにより、内側タンク122を第1位置から第2位置に移動させる。この構成は様々な手法で変更可能であることが、容易に理解されるであろう。例えば、ピストン132が所定の位置に固定され、シリンダ134がシャフト126に連結されてもよい。他の例として、シャフト126は、対応する油圧式又は空気圧式のシリンダ内に直接嵌合するピストンとして形成されてもよい。他の例として、コネクタ136は、ピストン132の運動をシャフト126の運動に変換するために、チェーン及びスプロケット、ベルト及びプーリ、歯車、トランスミッション、レバー、リンク機構等の1つ又は複数の機構を備えてもよい。アクチュエータ130は、電気モータ又は他の運動動力源を代替的に備えてもよいことも理解されるであろう。アクチュエータ130及びシャフト126へのその接続部の特定の機能は本発明にとって重要ではなく、本開示を考慮すれば多くの変形例が理解されるであろう。
【0054】
真空含浸システム100はまた、含浸液を内側タンク122に供給するように構成された流体制御回路138を含む。流体制御回路138は、含浸液を内側タンク122に(及び任意に内側タンクから)搬送するためのバルブ、通路及び/又はポンプの任意の適切な配置構成を含む。例えば、流体制御回路138は、含浸液液供給源144(例えば、タンク又は供給通路)に順次に流体接続されたポンプ140と含浸液バルブ142とを含み得る。
【0055】
流体制御回路138は、流体通路の様々な配置構成によって内側タンク122に接続されてもよい。図1の例では、可撓性の管146が、内側タンク122から容器102を貫通する流体ポート148へ延びている。流体ポート148は、圧力容器設計の技術分野で周知の任意の適切な取付具の配置構成(例えば、ねじ付きコネクタを有する又は有しないパイプ等)であってもよい。可撓性の管146は、可撓性のホース等を備えていてもよく、内側タンク122の移動を妨げたりホースを塞いだりすることなく内側タンク122が第1位置と第2位置との間を移動できるように寸法決めされており、好ましくは、他の部品との繰り返し接触による損傷を防止するために耐磨耗性である。この目的のために、スチール編みの圧力定格化されたホース又は他の適切なホースが使用され得るが、本開示を考慮すれば他の代替例が当業者に明らかであろう。
【0056】
また、図1に示すように、流体制御回路138は、シャフト126を通って延びる通路150によって内側タンク122に接続されてもよい。これは、タンク環境の内部に可撓性の管146を設ける必要性を排除するが、シャフト通路150を流体制御回路138の他の部分に接続するために可撓性の管152を必要とし得る。
【0057】
可撓性の管146又はシャフト150を使用して含浸液を内側タンク122に供給する実施形態は、両方とも、逆流方向へ排出又はポンプで汲み出すことによって、内側タンク122から含浸液を選択的に除去するオプションを提供する。これは、後で使用するために含浸液を貯蔵所に戻したり、内側タンク122を洗浄のために準備したり、又は他の利点を提供するのに有利であり得る。
【0058】
上記にかかわらず、他の実施形態においては、流体制御回路138は、含浸液のみを内側タンク122に供給するように構成されてもよい。例えば、流体制御回路138は、含浸液を内側タンク122の開口頂部124を通して供給するように構成されてもよい。1つのそのような実施形態において、流体制御回路138は、内側タンク122が第1位置にあるときに開口頂部124より上の位置で容器102の内壁面118に取り付けられた出口ノズルを備えてもよい。この場合、含浸液は、ノズルを通してポンプで送り込まれて内側タンク122内に注入又は噴霧されてもよいが、逆流によって除去することはできない。また、流体制御回路138は、蓋104が取り付けられる前に、容器102の上端部106を通して、含浸液を内側タンク122内に注入するように構成されてもよい。他の代替例及び変形例は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0059】
複数の内側タンク122がいくつかの実施形態において使用され得ることも想定される。そのような複数のタンク122は、種々の含浸液を使用していくつかの物品の真空含浸を行うために、あるいは、単一の内側タンク122の全容積を充填することを必要とせずにより小さなバッチの物品の真空含浸を行うために有用であり得る。複数の内側タンク122は、一緒に移動可能であってもよく(例えば、同一のシャフト126に取り付けられても、あるいは、単一の統一的構造の個別の各部分として設けられてもよい)、あるいは、個別に移動可能であってもよい(例えば、別々のシャフトに取り付けられて、別々の作動装置を有する)。
【0060】
内側タンク122はまた、例えば、交換タンクを使用して部品の連続処理を容易にするために人が容器に入ることなく内側タンクを洗浄するために、取り外し可能であってもよい。内側タンク122はまた、種々の物品又は物品の組み合わせを真空含浸するために、異なる寸法を有するタンクと交換可能であってもよく、あるいは、異なる高さまで満たされてもよい。
【0061】
内側タンク122には、内側タンク内の含浸液の表面、例えば空気/含浸界面の付近に配置された取り外し可能な内周バンドが装着されていてもよい。このバンドは、内側タンク122の内側表面に押し付けられた平らなリングを形成し、例えばばねで留められた金属製リングであってもよい。このバンドは、空気/含浸界面で内側タンクを含浸液から隔離し、処理中に発生したポリマー堆積物をバンド表面に捕集することができ、それによって堆積物の容易な除去を促進する。この特徴は、ライナ122’に代えて、又はそれと組み合わせて使用することができる。
【0062】
真空含浸システム100はまた、真空チャンバ112内のガス圧力を制御するように動作する真空制御システムを含んでもよい。例えば、真空制御システムは、真空チャンバ112内のガス圧力を真空タンク外の周囲圧力よりも下に低下させる第1のガス制御回路154と、真空チャンバ112内のガス圧力を真空タンク外の周囲圧力よりも上に上昇させる第2のガス制御回路156と、真空チャンバ112内の圧力を真空タンク外の周囲圧力と等しくさせる第3のガス制御回路158とを含んでいてもよい。
【0063】
ガス制御回路154,156,158は、所望の機能を提供する機器の任意の適切な配置構成を組み込むことができる。例えば、図示した実施形態では、第1のガス制御回路154は、真空タンクを真空ポンプ162に接続する第1のバルブ160を備え、第2のガス制御回路156は、真空タンクをコンプレッサ166に接続する第2のバルブ164を備え、第3のガス制御回路は、真空タンクを周囲空気に接続する第3のバルブ168を備えてもよい。真空制御システムの構成要素はまた、フィルタ、液体トラップ、ゲージ等の他の装置を含んでもよい。真空制御システムの構成要素を操作するために、任意の自動化又は手動操作の制御システムを使用してもよい。他の代替例及び変形例は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0064】
真空含浸システム100はまた、好ましくは、含浸液、凝縮液、及び真空タンクの底部からの他の液体を排出するように構成された液体排出弁172等の液体排出回路170を含む。
【0065】
バルブ、真空ポンプ、コンプレッサ等の選択及び使用は、真空含浸システムの技術分野で周知であり、本明細書でさらに詳細に説明する必要はない。
【0066】
真空含浸システム100及び他の実施形態を操作するための例示的な方法を、図2から図6に示す。例示的なプロセスは、封止する物品200をラック114に載せ(ステップ600)、ラック114を容器102又は蓋104に載せ(ステップ602)、そして蓋104を容器102に固定することにより真空タンクを密閉する(ステップ604)ことから始まる。ステップ600及び602は任意の順序で実施することができる(すなわち、ラック114が容器102又は蓋104に固定される前又は後に、物品200をラック114に載せてもよい)。図2は、ラック114が容器102に固定される前に物品がラック114に固定されていることを示している。図3は、代替実施形態として、ラック114が蓋104に固定されていることを示している。ラック114が真空タンクに取り外せないように固定されている場合、ステップ602はデフォルトで実行される。図4は、ラック114が真空タンクに固定され、蓋104が容器102に固定されて密閉された真空チャンバ112を形成することを示している。
【0067】
ステップ606において、内側タンク122は、含浸液202で所望のレベルまで満たされる。ステップ606は、蓋104が容器102に密閉される前又は後に実施され得る。例えば、図2は、ラック114を載せている間は含浸液202が低レベル(又は完全に存在しない場合もある)であることを示しており、含浸液202は、蓋104が容器102に密閉されるまでこのレベルに維持されてもよい。それに対し、図3は、含浸液202が、蓋104を容器102に密閉する前に作業レベルまで満たされていることを示している。
【0068】
ステップ608は、蓋104を容器102に密閉した後に実施される。ステップ608では、例えば、真空チャンバ112から周囲空気をポンプで排出するために第1のガス制御回路154を作動させることによって、真空が真空チャンバ112内に生成される。必要に応じて、プロセスを妨げる可能性のある周囲空気中のガスを除去するのを促進するために、1又は複数のパージ工程をステップ608の前に実施してもよい。例えば、ステップ608を実施する前に窒素を真空チャンバ112内にポンプで注入して周囲空気を置換してもよい。
【0069】
ステップ608は、好ましくは、ステップ606において内側タンク122が含浸液で満たされた後に実施される。これは、液体が真空雰囲気に導入されたときに起こり得る含浸液20の発泡を防止するのに役立ち、真空タンクのより容易でより安全かつ/又は頻繁がより少ない洗浄を促進することによって顕著な改善をもたらす。しかしながら、含浸液202を内側タンク122の制限の範囲内に導入することによって、内側タンク122に対する発泡に関連する問題を少なくともある程度切り分けることができると考えられる。この場合、洗浄プロセスの大部分は内側タンク122を洗浄することに向けられ、このプロセスは、内側タンク122を取り外し可能にする(例えば、ナット174又は他の締結具によって内側タンクをシャフト126に取り付ける)か、あるいは、内側タンク122に取り外し可能なライナ122’を設けることによって、容易にすることができる。したがって、実施形態は、オプションとして、ステップ606において含浸液を導入する前に、又はこれと同時に、真空生成ステップ608を実施してもよい。
【0070】
次に、ステップ610において、真空含浸する物品200が含浸液202内に浸漬されるまで、アクチュエータ130を作動させることにより内側タンク122が上昇させられる。物品200は、全体が浸漬されてもよいし、物品200全体を含浸させる必要がない場合には所望の程度にのみ浸漬されてもよい。浸漬されると、含浸液は、物品並びに充填すべき孔及び間隙を取り囲み、そのような孔及び間隙にある程度入り込むことができる。
【0071】
ステップ608の後にステップ610を実施することにより、乾式真空含浸プロセスになる(すなわち、物品200を浸漬する前に真空が生成される)。これにより、孔の中における真空の生成が浸漬液によって生成される水頭圧と競合しないので、真空チャンバ112内の異なる位置における物品の非等質な含浸を低減又は排除することが期待される。これにより、真空タンクを垂直方向に比較的大きくすることが可能になり、処理装置への所与の投下資本に対して処理量がより大きくなる。
【0072】
物品200が浸漬されている間、処理はステップ612に進み、真空室112内の圧力を大気圧レベルよりも上に上昇させるために第2のガス制御回路156が作動させられる。密閉された容器内の圧力を上昇させることにより、真空にされた孔及び間隙の中に含浸液が押しやられ、封止性が向上する。
【0073】
次に、ステップ614において、含浸液がラック114上の最も下側の物品200より下になるまで内側タンク122を下げるためにアクチュエータ130を作動させることにより、物品200が含浸液から除去される。このステップの間及びこのステップの後、物品200上の残留含浸液202は、物品200から内側タンク122に排出され、再使用又はリサイクルされる。
【0074】
最後に、ステップ616及び618において、真空チャンバ112は第3のガス制御回路158を作動させることによって大気通気され、物品200が取り出される。
【0075】
前述のプロセス工程の一部又は全部が、様々な動作パラメータにしたがって実施されてもよいことが理解されよう。そのようなパラメータの例には、ステップ608で生成される真空の大きさ、ステップ912で生成される圧力の大きさ、ステップ610における浸漬時間、ステップ616においてタンクを大気通気させるまでの待ち時間等が含まれる。さらに、物品200の温度、真空チャンバ112内の気圧、及び含浸液202は、全て調節することができる。このような変数の正確な望ましい値又は範囲は、日常の実験によって決定することができる。
【0076】
実施形態は、比較的粘性のある含浸液と共に使用する場合に特に有用であると期待され、この含浸液は、物品が保守のために分解を必要とし得る組立品であるか否かに応じて、粘着性を多かれ少なかれ有するように選択することができる。好ましくは、含浸液は均一で等質な封止を形成するように選択され、封止材料と、組立品を構成する金属及びプラスチックを含む多種多様な材料との間に丈夫な封止が形成される。また、含浸液は溶媒、好ましくは水に溶解又は分散された不活性ポリマーとして用意されることが好ましく、これは、封止を完成させるために、別の硬化工程を必要とせず、残留しているキャリア又は溶媒、最も好ましくは水の蒸発しか要しない。不活性ポリマーは、ポリマーに特定の化学反応性を与える十分な官能基を欠くポリマーを意味するものであると、ポリマーの技術分野の当業者に理解されるであろう。好適な不活性ポリマーとしては、非限定的な例として、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリビニルアセテート等が含まれ得る。含浸液は、必要に応じて、レオロジー助剤、湿潤剤、抗エージング剤、安定剤、バイオスタット及び/又は着色顔料のような、粘着剤及び封止剤を配合するのに使用されることが知られている添加剤を含むことができる。一般に、濃い含浸ポリマー材料は、ポリマー(50~5000センチポアズ)溶液の非ニュートン挙動に依存して、約50Pa・sから5000mPa・s及びそれより大きい範囲の粘度を有する。
【0077】
実施形態は、金属部品とプラスチック部品との両方を有する物品を含む様々な物品の孔及び間隙を封止するように構成することができる。例示的な物品は、限定されるものではないが、電気通信機器(例えば、ラジオ、携帯電話等)、オーディオ機器(例えば、ヘッドフォン、スピーカ、マイクロフォン)、及びコンピュータ、処理装置、電子制御装置、配線用ハーネス、電気コネクタ等の他の電子機器を含む。
【0078】
上述したように、本発明は、特定の実施形態を参照して図示及び説明されているが、本発明は、示された細部に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲の均等物の範囲内で、細部に様々な変更を加えることができる。
【0079】
本明細書において、実施形態は、明瞭で簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で説明されてきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ又は分離され得ることが意図されており、かつ理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されている全ての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0080】
本明細書では本発明の好ましい実施形態を示して説明したが、そのような実施形態は単なる例として提供されたものであることが理解されるであろう。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、多くの変形、変更及び置換が思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形例を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と取り外し可能な蓋とを備えた真空タンクであって、前記容器及び前記蓋は、前記蓋が前記容器上にあるときに、全体として密閉された真空チャンバを形成する、前記真空タンクと、
前記真空チャンバ内に固定又は取り外し可能に支持され、かつ1つ又は複数の物品を保持するように構成されたラックと、
前記容器に移動可能に取り付けられ、内部に所定量の含浸液を保持するように構成された内側タンクであって、前記内側タンクは、前記1つ又は複数の前記物品が前記含浸液に浸漬されない第1の位置と、前記1つ又は複数の前記物品が少なくとも部分的に前記含浸液に浸漬される第2の位置との間で垂直方向に移動可能である、前記内側タンクと、
前記蓋が前記容器上にあるときに前記真空チャンバと流体連結する1つ又は複数のガス制御回路を備える真空及び圧力制御システムと、
を備える真空含浸システム。
【請求項2】
前記ラックは、少なくとも1つのアタッチメントによって前記真空チャンバ内に取り外し可能に支持されている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項3】
前記ラックは、前記蓋又は前記容器に固定されている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項4】
前記内側タンクは、前記容器の底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項5】
前記内側タンクは、前記シャフトに取り外し可能に取り付けられている、請求項4に記載の真空含浸システム。
【請求項6】
前記シャフトはリニアスライダを備える、請求項4に記載の真空含浸システム。
【請求項7】
前記シャフトに取り付けられ、かつ前記内側タンクを前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項6に記載の真空含浸システム。
【請求項8】
前記内側タンクから含浸液の供給源へ延びる流体制御回路をさらに備える、請求項7に記載の真空含浸システム。
【請求項9】
前記流体制御回路は、前記内側タンクから前記容器内の流体ポートへ延びる可撓性の管を備える、請求項8に記載の真空含浸システム。
【請求項10】
前記流体制御回路は、前記シャフトを通って延びる通路を備える、請求項8に記載の真空含浸システム。
【請求項11】
前記真空制御システムは、真空ポンプと連通する第1のガス制御回路と、加圧ガス源と連通する第2のガス制御回路と、選択的に開放可能な通気孔とのうちの1つ又は複数を備える、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項12】
前記内側タンクは、非粘着性の被膜でコーティングされている、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項13】
前記内側タンクは取り外し可能なインナーライナを含む、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項14】
前記ライナは、金属又はプラスチック材料からなる再使用可能又は使い捨て可能なライナである、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項15】
前記内側タンクは、内側タンク内に配置された取り外し可能な内周バンドを備える。請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項16】
前記バンドは、前記内側タンクの内面に押し付けられた平らなリングを含み、かつ空気/含浸剤界面で前記内側タンクを前記含浸液から隔離する、請求項1に記載の真空含浸システム。
【請求項17】
真空含浸システムを操作する方法であって、
(a)周囲気圧の真空タンク内に1つ又は複数の物品を配置することと、
(b)工程(a)の後に、前記真空タンクを密閉することと、
(c)前記真空タンク内に、かつ前記1つ又は複数の物品の下に配置された内側タンク内に所定量の含浸液を供給することと、
(d)工程(a)及び(b)の後に、前記真空タンク内の内圧を前記周囲気圧よりも下に低下させることと、
(e)工程(c)及び(d)の後に、前記1つ又は複数の物品を前記含浸液に少なくとも部分的に浸すために前記内側タンクを上昇させることと、
(f)工程(e)の後に、前記真空タンク内の前記内圧を前記周囲気圧よりも上に上昇させることと、
(g)工程(f)の後に、前記1つ又は複数の物品が前記内側タンク内の前記含浸液に浸されない位置まで前記内側タンクを降下させることと、
(h)工程(g)の後に、前記真空タンク内の前記内圧を前記周囲気圧まで低下させることと、
(i)工程(h)の後に、前記真空タンクを開け、前記1つ又は複数の物品を前記真空タンクから取り出すことと、
を含む方法。
【請求項18】
工程(c)は、工程(a)又は工程(b)の前及び/又は工程(a)又は工程(b)と同時に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)は工程(b)の後に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
工程(d)は工程(c)を完了した後に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、前記1つ又は複数の物品を保持するラックを前記容器に取り付けることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記真空タンクは容器と取り外し可能な蓋とを備え、工程(a)は、前記1つ又は複数の物品を保持するラックを前記蓋に取り付けることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)は、前記所定量の含浸液を前記真空タンクの外部から可撓性の管を介して前記内側タンク内にポンプで注入することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記内側タンクは前記真空タンクの底部の封止部を通って延びるシャフトに取り付けられており、工程(e)は前記シャフトを上昇させることを含み、工程(g)は前記シャフトを下降させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)は、前記真空タンクの外部から前記シャフトを通って延びる通路を介して前記内側タンク内に前記所定量の含浸液をポンプで注入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(j)工程(i)の後に、架橋が無い場合は前記真空タンクからの前記1つ又は複数の物品を乾燥する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
工程(j)は、前記含浸液を固体に変質させる空気乾燥又は加熱を含む、請求項26に記載の方法。
【国際調査報告】