(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】金属結合用の銅合金を含有する銀焼結組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20230405BHJP
C22C 5/06 20060101ALI20230405BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20230405BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20230405BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20230405BHJP
B22F 1/062 20220101ALI20230405BHJP
B22F 1/107 20220101ALI20230405BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20230405BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20230405BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20230405BHJP
【FI】
B22F1/00 K
C22C5/06 Z
C22C9/00
C22C13/00
H01L21/52 E
B22F1/062
B22F1/00 L
B22F1/107
B22F1/14 500
B22F9/00 B
B22F1/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537707
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2019126894
(87)【国際公開番号】W WO2021120154
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ティ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジアウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チーリー
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5F047
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA05
4K017CA04
4K017CA07
4K017DA01
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4K018AA02
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4K018KA33
5F047AA11
5F047BA14
5F047BA15
5F047BA34
(57)【要約】
銅、金または銀などの様々な金属基材上で、良好な接着性および焼結強度で安定して焼結可能な銅合金を含有する銀焼結組成物が開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀焼結組成物であって、
(A)少なくとも1つの銀フィラー、
(B)該組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~20重量%の量の少なくとも1つの銅合金、および
(C)樹脂、溶媒、およびそれらの組み合わせから選択されるマトリックス成分を含んでなる、組成物。
【請求項2】
前記銀フィラーは、0.5~6.0μm、好ましくは0.8~5.0μm、より好ましくは1.0~5.0μm、より好ましくは1.1~1.4μm、さらにより好ましくは1.1~3.0μmのD
50粒度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記銀フィラーは、2~15g/cm
3、好ましくは3~7.5g/cm
3のタップ密度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記銅合金は、錫(Sn)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、金(Au)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、およびアンチモン(Sb)、好ましくはSn、Ag、Pb、およびZnからの少なくとも1つの金属を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂から選択され、好ましくはエポキシ、アクリレート、イソシアネート、シアネートエステル、マレイミド、ポリウレタンシリコーン、およびそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、70℃を超える、好ましくは90℃を超える、より好ましくは120℃を超える引火点を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記銀フィラーは、前記組成物の総重量に基づいて、80重量%~96重量%、好ましくは85重量%~95重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記銅合金は、前記組成物の総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは1.5~7.0重量%、より好ましくは2.5~5.0重量%の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記銅合金は、該合金の総重量に基づいて、95重量%以下の銅、好ましくは20~90重量%の銅、より好ましくは28~90重量%の銅、より好ましくは73~90重量%の銅、さらにより好ましくは60~90重量%の銅を含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記マトリックス成分は、前記組成物の総重量に基づいて、15重量%以下、好ましくは2~10重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、フラックス剤、過酸化物、流動添加剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、強化剤、およびそれらの混合物から選択される添加剤をさらに含んでなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記添加剤は、前記組成物の総重量に基づいて、2重量%以下、好ましくは0.5重量%~2重量%の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の銀焼結組成物の焼結物。
【請求項14】
銀の第1基材、請求項13に記載の焼結物、および、銅、金または銀から選択される第2基材を含んでなり、前記焼結物は、第1基材と第2基材との間に分配される組立体。
【請求項15】
半導体パッケージまたはタッチスクリーンの製造における、請求項1~12のいずれか一項に記載の銀焼結組成物、または請求項13に記載の焼結物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀焼結組成物、特に、金属結合用の銅合金を含有する組成物、焼結物、組立体、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス業界では、高い処理温度と動作温度に適用できる相互接続材料に対するニーズがますます高まっている。歴史的に、鉛(Pb)系のはんだは、コンポーネントを電子回路基板に接続するため、または外部リードを電子コンポーネントに接続するために使用されてきた。最近では、ヨーロッパのRoHS法に代表されるように、電気および電子機器での有害物質の使用により、はんだでの鉛(Pb)の使用が制限され、業界はさまざまな代替手段を模索している。
【0003】
現在の解決策の1つは、遷移的液相焼結(TLPS)である。TLPS接着剤は、鉛フリー、フラックスレス、特に低温加工性などの様々な利点により、多くの潜在的な用途向けに開発されており、設計において熱に敏感なコンポーネントの使用が可能である。以下の特許は、導電性結合の形成に関するTLPSの材料とプロセスを説明している。
【0004】
米国特許第5,853,622号は、TLPSプロセスによって作製された金属表面間の金属間界面の結果として、電気伝導率が改善された導電性接着剤を作製するために、TLPS材料を架橋ポリマーと組み合わせたTLPS配合物を開示している。
【0005】
米国特許第5,964,395号は、低温融解材料を有する1つの面および適合性のより高い融解温度材料を有する合わせ面を含む2つのマット表面の噴霧が、より低い温度材料の融点まで加熱するときに接合部を形成することを開示している。
【0006】
米国特許第5,221,038号は、TLPSプロセスを使用して抵抗器などの個別部品をプリント回路基板にはんだ付けするためのSnBiまたはSnInの使用を開示している。
【0007】
米国特許第6,241,145号は、電子モジュールを基材に取り付けるために2つの合わせ面に被覆されたAg/SnBiの使用を開示している。
【0008】
しかしながら、TLPSは脆く、基材を結合する硬化物にボイドが発生するため、依然として問題がある。あるいは、樹脂と導電性フィラーを含んでなる銀焼結組成物は、半導体パッケージとマイクロエレクトロニクスデバイスの製造と組立てに使用され、機械的に取り付けられ、集積回路デバイスとその基材の間に電気伝導性と熱伝導性を生み出す。最も一般的に使用される導電性フィラーは銀フレークである。銀フレークは、典型的に、半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイスをそれらの基材に十分に接着しないため、接着性樹脂が導電性組成物に使用される。しかしながら、樹脂の存在は、銀の高い熱的および電気コンダクタンスを制限する。
【0009】
近年、樹脂の存在下で銀フィラーを有する導電性組成物は、銀または金基材に熱圧着または圧着なしで接着できる。しかしながら、接着強度は十分ではない。さらに、エレクトロニクスデバイスの製造に一般的に使用される基材は銅リードフレーム(copper lead-frames)であるが、銀導電性組成物は、銅との金属間結合を容易に形成しない。高出力および高温のアプリケーションでは、融点に近い温度でサイクルすると故障する。他の不利な点は、そのような組成物が、金属間結合を形成した後に、フラックス残留物を残すフラックス剤を必要とし、これにより、製造プロセス中に基材の洗浄ステップを必要とすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,853,622号
【特許文献2】米国特許第5,964,395号
【特許文献3】米国特許第5,221,038号
【特許文献4】米国特許第6,241,145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、樹脂を含むまたは含まない銀焼結組成物はすべて、半導体パッケージおよびマイクロエレクトロニクスデバイスの製造および組立てにおいてそれらの制限がある。その結果、銅、金または銀、特に銅などの様々な金属基材上で、良好な接着性と焼結強度で安定して焼結可能な鉛を含まない銀焼結組成物を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意研究の結果、本発明者らは、上記の問題は、
(A)少なくとも1つの銀フィラー、
(B)該組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~20重量%の量の少なくとも1つの銅合金、および
(C)樹脂、溶媒、およびそれらの組み合わせから選択されるマトリックス成分を
含んでなる銀焼結組成物により解決できることを見出した。
【0013】
本発明の銀焼結組成物は、銅、金または銀、特に銅などの様々な金属基板上で、良好な接着性と焼結強度で安定して焼結できる。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明の導電性組成物の焼結物が提供される。
【0015】
本発明の追加の態様では、銀の第1基材、本発明の焼結物、および、銅、金または銀から選択される第2基材を含んでなり、焼結物は、第1基材と第2基材との間に分配される組立体が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、半導体パッケージおよびマイクロエレクトロニクスデバイスのタッチスクリーンの製造における本発明の導電性組成物の使用が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、半導体パッケージおよびマイクロエレクトロニクスデバイスのタッチスクリーンにおける本発明の焼結物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1による銀焼結組成物のセル構造の拡大率が5000である走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【
図2】
図2は、実施例6による半焼結組成物のセル構造の拡大率が5000であるSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定することを意図するものではないことは、当業者によって理解されるべきである。そのように記述された各態様は、明確に反対に示されない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
特に明記しない限り、本発明の文脈において、使用される用語は、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」および「the」は、単数形および複数形の両方の指示対象を含む。
【0022】
本明細書で使用される「含んでなる(comprising)」および「含んでなる(comprises)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンド形式であり、追加の、引用されていない部材、要素またはプロセスステップを除外しない。
【0023】
「合金」という用語は、2つ以上の金属、および任意に追加の非金属を含有する混合物を示し、該合金の元素は、溶融時に互いに融合または溶解する。本明細書で合金組成物に使用される表記法は、スラッシュ(「/」)で区切られたそれらのIUPAC記号を使用する2つ以上の元素を示している。与えられた場合、合金中の元素の比率は、合金中の元素の重量%に対応する元素の後にある数字により示される。例えば、Cu/Snは、銅(Cu)とスズ(Sn)の合金を表し、これら2つの元素は任意の比率であり得る。Cu75/Sn25は、75重量%の銅と25重量%の錫を含有する銅と錫の特定の合金を表す。合金中の元素の重量%の範囲が示されている場合、その範囲は、示された範囲内の任意の量で元素が存在し得ることを示す。例えば、Sn(70-90)/ Bi(10-30)は、70重量%~90重量%の錫、および10重量%~30重量%のビスマスを含有する合金を表す。したがって、「Sn(70-90)/ Bi(10-30)」範囲に含まれる合金は、限定されないが、Sn70/Bi30、Sn71/Bi29、Sn72/Bi28、Sn73/Bi27、Sn74/Bi26、Sn75/Bi25、Sn76/Bi24、Sn77/Bi23、Sn78/Bi22、Sn79/Bi21、Sn80/Bi20、Sn81/Bi19、Sn82/Bi18、Sn83/Bi17、Sn84/Bi16、Sn85/Bi15、Sn86/Bi14、Sn87/Bi13、Sn88/Bi12、Sn89/Bi11、およびSn90/Bi10を包含する。さらに、Sn(70-90)/ Bi(10-30)は、元素SnおよびBiの特定の比率が、Sn70/Bi30からSn90/Bi10まで変化する可能性がある合金を表し、これは70重量%から90重量%まで変化する錫の比率、および、逆に30重量%から10重量%まで変化するビスマスの比率を包含する。
【0024】
本明細書で使用される「融解温度」または「融点」という用語は、大気圧で固体が液体になる温度(点)を指す。
【0025】
特に明記されていない限り、数値の端点(end point)の記載には、それぞれの範囲内に含まれるすべての数値と分数、および記載された端点が含まれる。
【0026】
本明細書で引用されているすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む本発明で使用されるすべての用語は、本発明が属する当技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0028】
本発明は、
(A)少なくとも1つの銀フィラー、
(B)組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~20重量%の量の少なくとも1つの銅合金、および
(C)樹脂、溶媒、およびそれらの組み合わせから選択されるマトリックス成分
を含んでなる銀焼結組成物に関する。
【0029】
<(A)銀フィラー>
本発明の銀焼結組成物は、少なくとも1つの銀フィラーを含んでなる。
【0030】
好ましい実施形態では、銀フィラーは、0.5~6.0μm、好ましくは0.8~5.0μm、より好ましくは1.0~5.0μm、より好ましくは1.1~1.4μm、さらにより好ましくは1.1~3.0μmのD50粒度を有する。銀フィラーの粒度が上記の範囲内にある場合、フィラーは接着剤組成物により良く分散し、接着剤組成物の保存安定性を改善し、均一な結合強度を提供できる。本明細書において、銀フィラーの「D50粒度」は、レーザー回折粒度分析器での測定によって得られる体積ベースの粒度分布曲線における直径の中央値を表す。
【0031】
好ましい実施形態では、接着剤組成物に使用される銀粒子は、形状がフレークである粒子を含む。このような形状のフィラーは、フィラー間の接触面積が大きく、硬化物の隙間(void)を低減できる。銀粒子の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察で解析した形状であり、SEMの観察装置としてPhilips XL30を使用できる。フレーク粒子としては、板状、皿状、鱗状、および薄片状と呼ばれる形状の粒子が挙げられる。フレーク銀粒子同士を接触する場合は、顆粒状の銀粒子同士を接触させる場合に比べて接触面積が大きくなる。したがって、フレーク銀粒子を含有する接着剤組成物を熱硬化させると、銀粒子同士の焼結密度が高くなり、その結果、接着剤組成物の硬化物の熱伝導率および電気伝導率だけでなく、ベース金属表面への接着強度も向上する。
【0032】
好ましい実施形態では、銀フィラーは、2~15g/cm3、好ましくは3~7.5g/cm3のタップ密度を有する。
【0033】
本発明で使用される銀フィラーは、還元法、粉砕法、電解法、噴霧法、または熱処理法などの公知の方法により製造できる。
【0034】
特定の実施形態では、銀フィラーの表面は、有機物質でコーティングされていてよい。
【0035】
本明細書において、銀フィラーが「有機物質でコーティングされている」状態は、銀フィラーを有機溶媒に分散させることにより、銀フィラーの表面に有機溶媒が付着している状態を含む。
【0036】
銀フィラーをコーティングする有機物質としては、炭素数1~5のアルキルアルコール、炭素数1~5のアルカンチオール、炭素数1~5のアルカンポリオール、または炭素数1~5の低級脂肪酸などの親水性有機化合物;並びに炭素数15以上の高級脂肪酸およびその誘導体、炭素数6~14の中級脂肪酸およびその誘導体、炭素数6以上のアルキルアルコール、炭素数16以上のアルキルアミン、または炭素数6以上のアルカンチオールが挙げられる。
【0037】
高級脂肪酸としては、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸(セリン酸)またはオクタコサン酸などの直鎖飽和脂肪酸;2-ペンチルノナン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘプチルドデカン酸、またはイソステアリン酸などの分岐飽和脂肪酸;およびパルミトール酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、レシノール酸、ガドレイン酸、エルカ酸、およびセラコリン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0038】
中性脂肪酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、またはテトラデカン酸などの直鎖飽和脂肪酸;イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、2-プロピルヘプタン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、2-ブチルオクタン酸、イソドデカン酸、およびイソトリデカン酸などの分岐飽和脂肪酸;および10-ウンデセン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0039】
有機物質で表面をコーティングされた銀フィラーの製造方法としては、有機溶媒の存在下で還元法により銀フィラーを製造する方法が挙げられるが、これに限定されない。具体的には、銀フィラーは、カルボン酸銀塩を第一級アミンと混合し、有機溶媒の存在下で還元剤を使用して導電性フィラーを沈殿させることによって得ることができる。
【0040】
本発明では、市販されている銀フィラーを使用することが可能である。その例としては、Tokuriki Chemical Research Co., Ltdから入手可能なTC-505C、およびDowa Hightechから入手可能なFA-SAB-238が挙げられる。
【0041】
銀フィラーの表面を有機物でコーティングすると、接着剤組成物中の銀フィラーの凝集をより防止または低減できる。
【0042】
銀フィラーは、単独で使用することも、2つ以上を組み合わせて使用することもできる。異なる形状または異なるサイズのフィラーの組み合わせは、硬化物の多孔性を低下させ得る。組み合わせの例としては、フレーク状銀フィラーと、フレーク状銀フィラーよりも中心粒子径が小さいほぼ球形の銀フィラーとの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
特に好ましくは、銀フィラーは、組成物の総重量に基づいて、80重量%~96重量%、好ましくは85重量%~95重量%の量で、銀焼結組成物に組み込まれ得る。
【0044】
<(B)銅合金>
銀焼結組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~20重量%の量の少なくとも1つの銅合金を含んでなる。本発明者らは、驚くべきことに、焼結組成物に銅合金を組み込むことにより、銅表面などの金属への銀焼結接着剤の接着性能を大幅に改善できることを見出した。
【0045】
好ましい実施形態では、銀焼結組成物は、200℃~1000℃、好ましくは300℃~900℃、より好ましくは400℃~800℃の融点を有する銅合金を含んでなる。
【0046】
好ましい実施形態では、銀焼結組成物は、100nm~100μm、好ましくは0.5μm~50μm、より好ましくは1μm~25μmのD50粒度を有する銅合金を含んでなる。
【0047】
銅合金は、該合金の重量に基づいて、95重量%以下の銅(Cu)、好ましくは20~90重量%の銅(Cu)、より好ましくは28~90重量%の銅(Cu)、より好ましくは73~90重量%の銅(Cu)、さらにより好ましくは60~90重量%の銅(Cu)を含んでなる限り、銅合金の種類は限定されない。
【0048】
好ましい実施形態では、銅合金は、錫(Sn)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、金(Au)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、およびアンチモン(Sb)、好ましくはSn、Ag、PbおよびZnからの少なくとも1つの金属を含んでなる。
【0049】
本発明では、市販品を使用することが可能である。その例としては、Cu90/Sn10、Cu75/Sn25、Cu60/Sn40、およびSn80/Cu20などのCu(20-97)/Sn(3-80):Cu62/Pb38などのCu(57-65)/Pb(35-43);Ag72/Cu28などのCu(20-60)/Ag(40-80);Cu64/Zn31/Ni5、Cu70/Zn24/Ni6などのCu(64-70)/Zn(24-31)/Ni(5-6);Cu73/Sn23/Ag4などのCu(60-70)/Sn(25-38)/Ag(2-5)が挙げられ、すべて5N Plus Incから入手可能である。
【0050】
本発明によれば、銀焼結組成物に組み込まれる銅合金は、0.01~20重量%、好ましくは0.01~10重量%、好ましくは1.5~7.0重量%、より好ましくは2.5~5.0重量%の量である。
【0051】
<(C)マトリックス成分>
銀焼結組成物は、樹脂、溶媒、およびそれらの組み合わせから選択されるマトリックス成分をさらに含んでなる。
【0052】
<樹脂>
いくつかの実施形態では、銀焼結組成物は、例えば、本発明の組成物から調製される粘着性、湿潤能力、柔軟性、作業寿命、高温接着、および/または樹脂フィラー適合性などの1つ以上の性能特性を改善するために少なくとも1つの樹脂を含んでなる。さらに、樹脂成分は、本明細書に記載の組成物に提供されて、例えば、レオロジー、本発明の組成物から調製される分散性などの1つ以上の性能特性を改善する。
【0053】
存在する場合、樹脂は、組成物に上記の特性の1つ以上を付与できる熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であり得る。そのような熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂には、限定されないが、アセタール、(メタ)アクリルモノマー、オリゴマー、またはポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ポリマーまたはコポリマー、またはポリカーボネート/ABS合金、アルキッド、ブタジエン、スチレン-ブタジエン、セルロース類、クマロン-インデン、シアネートエステル、フタル酸ジアリル(DAP)、エポキシモノマー、オリゴマー、またはポリマー、エポキシ官能基を有する可撓性エポキシまたはポリマー、フルオロポリマー、メラミン-ホルムアルデヒド、ネオプレン、ニトリル樹脂、ノボラック、ナイロン、石油樹脂、フェノール類、ポリアミドイミド、ポリアリレートおよびポリアリレートエーテルスルホンまたはケトン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステルおよびコポリエステルカーボネート、ポリエーテルエステル、ポリエチレン、ポリイミド、マレイミド、ナジイミド、イタコナミド、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキシド、スルフィド、エーテル、ポリプロピレンおよびポリプロピレン-EPDMブレンド、ポリスチレン、ポリ尿素、ポリウレタン、ビニルポリマー、ゴム、シリコーンポリマー、シロキサンポリマー、スチレンアクリロニトリル、スチレンブタジエンラテックスおよびその他のスチレンコポリマー、スルホンポリマー、熱可塑性ポリエステル(飽和)、フタレート、不飽和ポリエステル、ウレアホルムアルデヒド、ポリアクリルアミド、ポリグリコール、ポリアクリル酸、ポリ(エチレングリコール)、本質的に導電性のポリマー、フルオロポリマー等、ならびにそれらの任意の2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0054】
本明細書での使用が企図される例示的なマレイミド、ナジイミド、またはイタコンアミドには、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジイフェニルスルホンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどが含まれる。
【0055】
好ましい実施形態では、樹脂は、エポキシ、アクリレート、イソシアネート、シアネートエステル、マレイミド、ポリウレタンシリコーン、およびそれらの混合物から選択され、より好ましくはエポキシ樹脂である。
【0056】
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルまたはビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの芳香族および/または脂肪族骨格を含有する液体エポキシ樹脂または固体エポキシ樹脂であり得、好ましくは液体エポキシ樹脂である。任意に、エポキシ樹脂は可撓性エポキシである。可撓性エポキシは、短鎖長または長鎖長のポリグリコールジエポキシド液体樹脂などの可変長の鎖長(例えば、短鎖または長鎖)を有し得る。エポキシ樹脂を用いた接着剤組成物では、組成物を約150℃の温度で加熱すると、エポキシ樹脂は自己架橋して硬化する。組成物の加熱は、限定されないが、従来の炉およびオーブン、ならびに可変周波数マイクロ波放射に依存するものなどのマイクロ波オーブンを含む任意の既知の加熱メカニズムによって起こり得る。アミンおよび/またはカルボキシ含有化合物を含むがこれらに限定されない他の化学成分が、エポキシ樹脂と架橋するために接着剤成分に組み込まれ得ることは、当業者には理解される。
【0057】
特定の実施形態において、本明細書で使用することが企図されるエポキシには、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂のジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、エポキシクレゾール樹脂などが含まれる。
【0058】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂は、エポキシ化カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)オリゴマーまたはポリマー、エポキシ化ポリブタジエンジグリシジルエーテルオリゴマーまたはポリマー、複素環式エポキシ樹脂(例えば、イソシアネート変性エポキシ樹脂)などの強化エポキシ樹脂であり得る。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書での使用が企図されるエポキシ樹脂は、ゴムまたはエラストマー変性エポキシを含む。ゴムまたはエラストマーで変性されたエポキシには、次のエポキシ化誘導体が含まれる。
(a)米国特許第4,020,036号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、30,000から400,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する共役ジエンのホモポリマーまたはコポリマー。共役ジエンが、1分子あたり4~11個の炭素原子を含有する(1,3-ブタジエン、イソプレンなど);
(b)米国特許第4,101,604号(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、エピハロヒドリンホモポリマー、2つ以上のエピハロヒドリンモノマーのコポリマー、または、エピハロヒドリンモノマーと約800から約50,000まで変化する数平均分子量(Mn)を有する酸化物モノマーとのコポリマー;
(c)米国特許第4,161,471号に記載されているような、エチレン/プロピレンコポリマー、およびエチレン/プロピレンと少なくとも1つの非共役ジエンとのコポリマー(例えばエチレン/プロピレン/ヘキサジエン/ノルボルナジエンなど)を含む炭化水素ポリマー;または
(d)共役ジエンブチルエラストマー、例えば85~99.5重量%のC4-C5オレフィンと約0.5重量%~約15重量%の炭素数4~14の共役マルチオレフィンとを組み合わせてなるコポリマー、結合されたイソプレン単位の大部分が共役ジエン不飽和を有するイソブチレンおよびイソプレンのコポリマーなど(例えば、米国特許第4,160,759号参照;その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0060】
特定の実施形態において、エポキシ樹脂は、エポキシ化されたポリブタジエンジグリシジルエーテルオリゴマーまたはポリマーである。
【0061】
いくつかの実施形態では、追加のエポキシ材料は、本明細書での使用が企図される多種多様なエポキシ官能化樹脂、例えば、ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂(例えばEpon resin 834)、ビスフェノールFに基づくエポキシ樹脂(例えばRSL-1739またはJERYL980)、フェノールノボラック樹脂に基づく多機能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えばEpiclon HP-7200L)、ナフタレン型エポキシ樹脂など、およびそれらの任意の2つ以上の混合物であり得る。
【0062】
任意に、エポキシ樹脂は、モノマー単位の混合物である骨格(すなわち、ハイブリッド骨格)を有するコポリマーであり得る。エポキシ樹脂は、直鎖または分岐鎖セグメントを含み得る。特定の実施形態において、エポキシ樹脂は、エポキシ化されたシリコーンモノマーまたはオリゴマーであり得る。任意に、エポキシ樹脂は、可撓性エポキシ-シリコーンコポリマーであり得る。本明細書での使用が企図される例示的な可撓性エポキシ-シリコーンコポリマーには、両方ともEvonik Industries (ドイツ)から市販されているALBIFLEX296およびALBIFLEX348が含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つのエポキシモノマー、オリゴマー、またはポリマーが組成物中に存在する。特定の実施形態では、エポキシモノマー、オリゴマー、またはポリマーの組み合わせが、組成物中に存在する。例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上のエポキシモノマー、オリゴマー、またはポリマーが組成物中に存在する。エポキシ樹脂の組み合わせを選択して使用することにより、組成物から調製されたフィルムまたはペーストについて所望の特性を達成できる。例えば、エポキシ樹脂の組み合わせは、組成物から調製されたフィルムが、1つ以上の以下の改善された特性;フィルム品質、粘着性、湿潤能力、可撓性、作業寿命、高温接着、樹脂フィラー適合性、焼結力などを示すように選択し得る。エポキシ樹脂の組み合わせは、組成物から調製されたペーストが、レオロジー、分散性、作業寿命、焼結力などの1つ以上の改善された特性を示すように選択できる。
【0064】
本明細書に記載の組成物は、アクリルモノマー、ポリマー、またはオリゴマーをさらに含むことができる。本発明の実施において使用することが企図されているアクリレートは、当技術分野でよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号を参照されたい。その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
本明細書での使用が企図される例示的な(メタ)アクリレートには、単官能性(メタ)アクリレート、二官能性(メタ)アクリレート、三官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレートなど、ならびにそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0066】
本明細書に記載の組成物での使用が企図される追加の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂成分には、ポリウレタン、シアネートエステル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ尿素、ポリビニルアセタール樹脂、およびフェノキシ樹脂を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、マレイミド、ナジイミド、イタコンイミド、ビスマレイミド、またはポリイミドなどのイミド含有モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含み得る。
【0067】
1つの特定の実施形態において、熱硬化性または熱可塑性樹脂成分は、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシポリマー、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、シアネートエステル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ尿素、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、マレイミド、ビスマレイミド、ナジイミド、イタコナミド、ポリイミド、およびそれらの混合物から選択される。好ましくは、熱硬化性または熱可塑性樹脂成分は、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシポリマー、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルポリマー、マレイミド、ビスマレイミド、およびそれらの混合物から選択される。
【0068】
本発明では、市販品を使用することが可能である。その例には、Broadview Technologiesから入手可能なドデセニルコハク酸無水物、CVC Specialtiesから入手可能な脂環式グリシジルエステル、ERISYS RDGE、Total Groupから入手可能なPoly bd(登録商標)605E、Momentive Performance Materialsから入手可能なSilquest A-186シラン、Silquest A-187が含まれる。
【0069】
<溶媒>
銀焼結組成物が樹脂を含む場合、溶媒は、本発明において必要な成分ではないが、接着剤組成物の粘度を低下させるために添加できる。銀焼結組成物が樹脂を含まない場合、接着剤組成物中に銀フィラーを分散させるために溶媒が必要である。
【0070】
凝集を防止するために、有機物質のコーティングを有する多くの銀フィラーが商業的に提供されている。有機物質は焼結を妨げる可能性がある。つまり、焼結にはより高い温度が必要になる。溶媒は、銀フィラーの表面から有機物を溶解または置換するように作用する。溶媒はコーティングを除去し、銀が分散されて焼結されるまで溶媒中に分散したままになるのに効果的な極性のバランスを有さなければならない。銀フレークの製造業者により使用される典型的な有機物質には、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、デカン酸、デカン酸、オレイン酸、パルミチン酸、またはイミダゾールなどのアミンで中和された脂肪酸が含まれる。そして、効果的な溶媒とは、銀フィラーの表面から、これらのおよび他の潤滑剤等を除去する溶媒である。
【0071】
引火点が70℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは120℃以上である限り、溶媒の種類に制限はない。溶媒は、2-(2-エトキシ-エトキシ)-エチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルエトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネート、シクロオクテノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、直鎖状または分枝状アルカン、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0072】
本発明では、市販品を使用することが可能である。その例としては、Sinopharm Chemical Reagent Co.、Ltdから入手可能なジイソブチルアジペート、およびBASFから入手可能な2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアセテートが挙げられる。
【0073】
好ましい実施形態では、銀焼結組成物は、樹脂と溶媒の両方を含有するマトリックス成分を含んでなる。
【0074】
特に好ましくは、樹脂、溶媒、およびそれらの組み合わせから選択されるマトリックス成分は、前記組成物の総重量に基づいて、15重量%以下、好ましくは2~10重量%の量で銀焼結組成物に組み込まれてよい。
【0075】
<(D)添加剤>
他の一般的に使用される添加剤は、銀焼結組成物にさらに添加されてよい。そのような一般的な添加剤には、フラックス剤、過酸化物、流動添加剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、強化剤、およびそれらの混合物が含まれる。
【0076】
特に好ましくは、添加剤は、任意に、組成物の総重量に基づいて、2重量%以下の量で銀焼結組成物に組み込まれてよい。
【0077】
本発明の別の態様では、本発明の導電性組成物の焼結物が提供される。
【0078】
本明細書に記載の焼結組成物は、室温で調製される。半導体製造で使用される場合、これらの組成物は、金属コーティングされたダイを、金属コーティングされた基材に接着するために、焼結時に十分な接着性を有する。特に、組成物は、銀または金でコーティングされた半導体ダイを、銅リードフレームに接着するために使用できる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、150℃~300℃、好ましくは200℃~250℃の温度で焼結する。焼結を誘発するために圧力は必要ない。焼結温度では、溶媒(存在する場合)、過酸化物などの添加剤、またはフラックス剤(存在する場合)、および組成物に使用される銀フィラーに含有される有機物質が燃焼し、焼結銀と銅合金を含んでなる焼結物のみが残る。
【0079】
本発明の別の態様では、本発明の第1基材、焼結物、および銅、金または銀から選択される第2基材を含んでなり、該焼結物が第1基材と第2基材との間に分配される組立体が提供される。
【0080】
本発明のさらに別の態様では、半導体パッケージまたはタッチスクリーンの製造における本発明の焼結組成物の使用が提供される。
【0081】
本発明のさらに別の態様では、半導体パッケージおよびマイクロエレクトロニクスデバイスタッチスクリーンにおける本発明の焼結物の使用が提供される。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実施するのを助けることを意図している。本発明の範囲は、実施例によって限定されないが、添付の特許請求の範囲で定義される。特に明記されない限り、すべての部と%は重量に基づく。
【0083】
<原材料:>
TC-505C銀粉末は、Tokuriki Chemical Research Co., Ltdから入手できる。
【0084】
銀粉末FA-SAB-238は、Dowa Hightechから入手できる。
【0085】
ドデセニルコハク酸無水物は、Broadview Technologiesから入手可能な無水物樹脂である。
【0086】
Epalloy(商標)5200は、CVC Specialtiesから入手可能な脂環式グリシジルエステルである。
【0087】
ERISYS RDGEは、CVC Specialtiesから入手可能なエポキシ樹脂である。
【0088】
Poly bd(登録商標)605Eは、Total Groupから入手可能なエポキシ官能性ポリブタジエン樹脂である。
【0089】
Silquest A-186シランは、Momentive Performance Materialsから入手可能なシラン樹脂である。
【0090】
Silquest A-187シランは、Momentive Performance Materialsから入手可能なシラン樹脂である。
【0091】
ジイソブチルアジペートは、Sinopharm Chemical Reagent Co.、Ltdから入手可能な溶媒である。
【0092】
2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアセテートは、BASFから入手可能な溶媒である。
【0093】
Cu75/Sn25は、5N Plus Inc.から入手可能で、約800℃の融点を有する75重量%のCuおよび25重量%のSnからなる銅合金である。
【0094】
Ag72/Cu28は、5NPlusInc.から入手可能で、約780℃の融点を有する28重量%のCuおよび72重量%のAgからなる銅合金である。
【0095】
Cu90/Sn10は、5NPlusInc.から入手可能で、約860℃の融点を有する90重量%のCuおよび10重量%のSnからなる銅合金である。
【0096】
Cu60/Sn40は、5N Plus Inc.から入手可能で、約725℃の融点を有する60重量%のCuおよび40重量%のSnからなる銅合金である。
【0097】
Cu73/Sn23/Ag4は、5NPlusIncから入手可能で、約645℃の融点を有し、72.5重量%のCu、3.5重量%のAg、22.5重量%のSn、0.1重量%のFe、0.3重量%のAs、0.3重量%のSb、0.3重量%のBi、および0.5重量%のOからなる銅合金である。
【0098】
Sn80/Cu20は、5N Plus Inc.から入手可能で、約480℃の融点を有する20重量%のCuおよび80重量%のSnからなる銅合金である。
【0099】
<調製方法:>
以下の実施例では、サンプルは、Speedmixer(登録商標)を用いて、1000rpm、30℃未満の温度、好ましくは室温で混合および攪拌して、均一な組成のペーストを得ることによって調製した。次に、すべてのサンプルを使用して、N2雰囲気下、5℃/分で130℃まで30分間、次に5℃/分で220℃まで60分間焼結した。圧力は使用しなかった。
【0100】
[試験方法:]
<ダイ剪断強度:>
ダイ剪断強度(DSS)は、260℃に到達可能なヒーターアダプタープレートを備えたDAGE4000を使用して測定された。組成物は、2×2mm2の銀コーティングされたダイ上にコーティングされ、半導体産業で使用される市販タイプの銅リードフレーム(CDA151)に使用された。サンプルは、上記の焼結プロファイルに従って焼結された。各サンプルを同じ条件で8回試験し、平均ダイ剪断強度を計算して、誤差をなくすために単純平均法で記録した。平均ダイ剪断強度の目標は4.0Kg/mm2以上の大きさであった。
【0101】
<実施例1~4および比較例1>
この一連の例では、樹脂を含むが銅合金を含まない1つの銀焼結組成物(比較例1)と、本発明による異なる含有量の銅合金を含む4つの組成物(実施例1~実施例4)を、以下の表に特定されている重量%に基づいて調製した。銅リードフレーム(CDA151)に使用されたサンプルのダイ剪断強度を試験した。
【0102】
【0103】
<実施例5および比較例2>
この一連の例では、樹脂が存在せず、銅合金を含まない1つの銀焼結組成物(比較例2)と本発明による銅合金を含む1つの銀焼結組成物(実施例5)を、以下の表に特定されている重量%に基づいて調製した。タイプ2のCuリードフレームに使用されたサンプルのダイ剪断強度をそれぞれ試験した。
【0104】
【0105】
<実施例6~11および比較例3>
この一連の例では、樹脂が存在せず、銅合金を含まない1つの銀焼結組成物(比較例3)と本発明による異なる種類の銅合金を含む6つの銀焼結組成物(実施例6~実施例11)を、以下の表に指定された重量%に基づいて調製した。タイプ2のCuリードフレームに使用されたサンプルのダイ剪断強度を試験した。
【0106】
【0107】
上記の3セットの例の結果は、樹脂が存在しない純銀焼結接着剤または樹脂を含有する銀焼結接着剤に関係なく、銅合金を含まない組成物よりも銅合金を含む組成物の銅リードフレームに対する平均ダイ剪断強度が高いことを示す。
【0108】
図からわかるように、銅合金は銀焼結マトリックス(
図1)および半焼結マトリックス(
図2)の銀粒子の拡散を増加させ、金属基材への接着を改善できる。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態を説明してきたが、上記の教示に照らして、それに多くの修正および変形を行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、具体的に記載されている以外の方法で実施し得ることを理解されたい。
【国際調査報告】