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特表2023-515454ディスプレイ装置用の偏光板及びそれを備えるディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ディスプレイ装置用の偏光板及びそれを備えるディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230406BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20230406BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230406BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1347
G02F1/1335 510
G09F9/30 349E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549744
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 KR2021013950
(87)【国際公開番号】W WO2022080787
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134636
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハ-ソン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ナ-ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン-キュン・クォン
【テーマコード(参考)】
2H149
2H189
2H291
5C094
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB01
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA08X
2H149FA66
2H149FD12
2H149FD47
2H189AA21
2H189HA16
2H189LA17
2H189LA19
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA42X
2H291FA42Z
2H291FA46X
2H291FA46Z
2H291FB04
2H291FB23
2H291FD07
5C094AA03
5C094BA43
5C094ED14
(57)【要約】
本発明は、自動車用などのディスプレイ装置と、このようなディスプレイ用の偏光板に関し、偏光板は、特定の方向へ偏光された光のみを透過させる偏光子と、偏光子のいずれか一面に位置し、ディスプレイ装置に接着可能に構成され、ディスプレイ装置のデュアルセル構造によって発生するモアレを解消するように、ヘイズが49~65%であるヘイズ接着フィルムと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルセル構造を有するディスプレイ装置に使用される偏光板であって、
前記偏光板は、
特定の方向へ偏光された光のみを透過させる偏光子と、
前記偏光子のいずれか一面に位置し、前記ディスプレイ装置に接着可能に構成され、前記ディスプレイ装置のデュアルセル構造によって発生するモアレを解消するように、ヘイズが49~65%であるヘイズ接着フィルムと、を備えることを特徴とする、ディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項2】
前記ヘイズ接着フィルムのヘイズが、50~60%であることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項3】
前記ヘイズ接着フィルムの厚さが、20~22μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項4】
前記偏光板が、前記偏光子の一面と前記ヘイズ接着フィルムとの間及び前記偏光子の他面に積層された保護フィルムをさらに備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項5】
前記ヘイズ接着フィルムは、ヘイズを有するビーズがアクリル系高分子に均一に分散して形成されたことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項6】
前記ヘイズを有するビーズが、シリカビーズであることを特徴とする、請求項5に記載のディスプレイ装置用の偏光板。
【請求項7】
上下に配置され、各々マトリクス形態からなって画像を表示する上部表示セル及び下部表示セルを含む少なくとも二つの層の表示セルと、
前記上部表示セルの上部に位置する上部偏光板と、前記上部表示セルと前記下部表示セルとの間に位置する中間偏光板と、前記下部表示セルの下部に位置する下部偏光板と、を含む少なくとも三つの層の偏光板と、を備えるディスプレイ装置であって、
前記上部偏光板、前記中間偏光板及び前記下部偏光板のいずれか一つの偏光板が、請求項1から6のいずれか一項に記載の偏光板であることを特徴とする、ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記ディスプレイ装置が視野角を制限する要素を含まないことを特徴とする、請求項7に記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置が自動車に搭載される自動車用ディスプレイ装置であることを特徴とする、請求項7または8に記載のディスプレイ装置。
【請求項10】
前記いずれか一つの偏光板が前記上部偏光板であり、
前記上部偏光板の前記ヘイズ接着フィルムが前記偏光子の下部に位置するように、前記上部偏光板が前記上部表示セルの上部に積層されたことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
【請求項11】
前記いずれか一つの偏光板が前記下部偏光板であり、
前記下部偏光板の前記ヘイズ接着フィルムが前記偏光子の上部に位置するように、前記下部偏光板が前記下部表示セルの下部に積層されたことを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
【請求項12】
前記いずれか一つの偏光板が前記中間偏光板であり、
前記中間偏光板の前記ヘイズ接着フィルムが前記偏光子の上部または下部に位置するように、前記中間偏光板が前記上部表示セルと前記下部表示セルとの間に積層されたことを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
前記上部表示セル及び下部表示セルのいずれか一つがカラーLCDセルであり、他の一つが黒白LCDセルまたはカラーLCDセルであることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に使用される偏光板及びそれを備えるディスプレイ装置に関し、より詳しくは、デュアルセル(Dual Cell)構造を有するディスプレイ装置に使用される偏光板及びそれを備えるディスプレイ装置に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月16日出願の韓国特許出願第10-2020-0134636号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)や有機発光ダイオード(OLED)のような光学素子には、光学活性や複屈折性を制御するか、または外光の反射を防止するために偏光板が使用されている。
【0004】
一方、最近、LCD装置のハイエンド級の画質の解像度を具現するために二つの層のLCDセルを積層した、所謂デュアルセル構造のディスプレイが適用されている。このようなデュアルセル構造のディスプレイは、特にLCDの弱点であるブラック(暗)表示を補完してコントラストを向上させる。
【0005】
ところで、このように偏光板を使用するディスプレイ装置においては、モアレ現象や虹ムラ現象、即ち、二つ以上の周期的なパターンが重畳されながら画面に干渉縞が現われ、使用者にとって目障りであり、視認性を低下させるという問題がある。特に、このようなデュアルセル構造のディスプレイにおいては、周期的なパターンを有するLCDセルが一つさらに積層されることによって、モアレ現象や虹ムラ現象がさらに深化する問題点が発生しつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本発明が解決しようとする課題は、デュアルセル構造を有するディスプレイ装置のモアレ現象や虹ムラ現象が改善可能なディスプレイ装置用の偏光板を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、モアレ現象や虹ムラ現象が改善されたデュアルセル構造のディスプレイ装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によると、ディスプレイ装置用の偏光板が提供される。
【0009】
即ち、第1実施形態による偏光板は、デュアルセル構造を有するディスプレイ装置に使用される偏光板であって、偏光板は、
特定の方向へ偏光された光のみを透過させる偏光子と、
偏光子のいずれか一面に位置し、ディスプレイ装置に接着可能に構成され、ディスプレイ装置のデュアルセル構造によって発生するモアレを解消するように、ヘイズが49~65%であるヘイズ接着フィルムと、を備える。
【0010】
本発明の第2実施形態によると、第1実施形態において、ヘイズ接着フィルムのヘイズは50~60%であり得る。
【0011】
本発明の第3実施形態によると、第1実施形態または第2実施形態において、ヘイズ接着フィルムの厚さは20~22μmであり得る。
【0012】
本発明の第4実施形態によると、第1実施形態から第3実施形態のいずれか一実施形態において、偏光板は、偏光子の一面とヘイズ接着フィルムとの間及び偏光子の他面に積層された保護フィルムをさらに備え得る。
【0013】
本発明の第5実施形態によると、第1実施形態から第4実施形態のいずれか一実施形態において、ヘイズ接着フィルムは、ヘイズを有するビーズがアクリル系高分子に均一に分散して形成されたものであり、本発明の第6実施形態によると、ヘイズを有するビーズはシリカビーズであり得る。
【0014】
なお、上記の課題を解決するため、本発明の他の様態によると、ディスプレイ装置が提供される。
【0015】
即ち、第7実施形態のディスプレイ装置は、上下に配置され、各々マトリクス形態からなって画像を表示する上部表示セル及び下部表示セルを含む少なくとも二つの層の表示セルと、
上部表示セルの上部に位置する上部偏光板と、上部表示セルと下部表示セルとの間に位置する中間偏光板と、下部表示セルの下部に位置する下部偏光板と、を含む少なくとも三つの層の偏光板と、を備えるディスプレイ装置であって、
上部偏光板、中間偏光板及び下部偏光板のいずれか一つの偏光板が前述した第1実施形態から第6実施形態のいずれか一実施形態による偏光板であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第8実施形態によると、第7実施形態において、ディスプレイ装置が視野角を制限する要素を含まない。
【0017】
本発明の第9実施形態によると、第7実施形態または第8実施形態において、ディスプレイ装置が自動車に搭載される自動車用ディスプレイ装置であり得る。
【0018】
本発明の第10実施形態によると、第7実施形態から第9実施形態のいずれか一実施形態において、いずれか一つの偏光板が上部偏光板であり、
上部偏光板のヘイズ接着フィルムが偏光子の下部に位置するように、上部偏光板が上部表示セルの上部に積層され得る。
【0019】
本発明の第11実施形態によると、第7実施形態から第9実施形態のいずれか一実施形態において、いずれか一つの偏光板が下部偏光板であり、
下部偏光板のヘイズ接着フィルムが偏光子の上部に位置するように、下部偏光板が下部表示セルの下部に積層され得る。
【0020】
本発明の第12実施形態によると、第7実施形態から第9実施形態のいずれか一実施形態において、いずれか一つの偏光板が中間偏光板であり、
中間偏光板のヘイズ接着フィルムが偏光子の上部または下部に位置するように、中間偏光板が上部表示セルと下部表示セルとの間に積層され得る。
【0021】
本発明の第13実施形態によると、第7実施形態から第9実施形態のいずれか一実施形態において、上部表示セル及び下部表示セルのいずれか一つがカラーLCDセルであり、他の一つが黒白LCDセルまたはカラーLCDセルであり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明のディスプレイ装置用の偏光板は、所定の範囲のヘイズを有する接着フィルムを有することで、ディスプレイ装置のデュアルセル構造に起因するモアレ現象や虹ムラ現象を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一態様によるディスプレイ装置用の偏光板を概略的に示した断面図である。
図2】本発明の他の態様によるディスプレイ装置を概略的に示した断面図である。
図3】他の実施形態によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
図4】さらに他の実施形態によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的な意味や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0025】
図1は、本発明の一態様によるディスプレイ装置用、特に、デュアルセル構造のLCD用の偏光板の構造を概略的に示した断面図である。
【0026】
本発明の一態様による偏光板は、デュアルセル構造のディスプレイ装置に用いられる偏光板であって、図1に示したように、特定の方向へ偏光された光のみを透過させる偏光子11と、偏光子11のいずれか一面に位置し、ディスプレイ装置に接着可能に構成され、ディスプレイ装置のデュアルセル構造によって発生するモアレを解消するように、ヘイズが49~65%であるヘイズ接着フィルム13と、を備える。
【0027】
前述したように、二つの層のLCDセルを積層したデュアルセル構造のディスプレイにおいては、モアレまたは虹ムラ現象が深刻に現われる。
【0028】
本発明者は、このようなディスプレイ装置に使用される偏光板として所定の範囲のヘイズを有する偏光板を使用することで、このような問題点が改善可能であることを確認し、本発明を完成した。
【0029】
即ち、ヘイズ接着フィルム13のヘイズが49%未満であると、前述したモアレ現象の改善程度が足りないことがあり、ヘイズが65%を超過すると、ディスプレイ装置に十分な明るさを提供しにくくなり得る。ヘイズ接着フィルムのヘイズは、50~60%であることがさらに望ましい。
【0030】
偏光子11は、自然光や偏光から任意の偏光へ変換可能なフィルムであって、一般的には、特定の直線偏光へ変換可能である。偏光子11は、公知の偏光子を使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系偏光子を使用することができ、より具体的には、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルムなどのようにポリビニルアルコールやその誘導体を含むフィルムに、ヨードや二色性染料などの二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物などが挙げられ得る。特に、ヨードを含有するポリビニルアルコール系フィルムが挙げられ得るが、これに限定されることではない。
【0031】
ヘイズ接着フィルム13は、通常的にディスプレイ装置の偏光板に使用される接着フィルム成分、例えば、アクリル系高分子成分の接着フィルムベースにヘイズを有するビーズが均一に分散して形成されたものであり得る。ヘイズを有するビーズは、例えば、シリカビーズであり得る。ヘイズを有するビーズをベース高分子樹脂中に均一に分散させる方法はよく知られている。例えば、架橋性官能基を有する架橋性アクリル系高分子とエポキシ硬化剤、トルエンジイソシアネートやキシレンジイソシアネートのようなイソシアネート系硬化剤を含むアクリル系接着剤組成物を溶媒で溶解して接着剤組成物を製造し、ここにヘイズを有するビーズを添加して撹拌して分散させた後、この組成物を基材上にコーティングして熱硬化することでヘイズ接着フィルムを製造することができる。以下、より具体的に説明する。
【0032】
架橋性官能基を有する架橋性アクリル系高分子の架橋性官能基とは、具体的には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などである。これらの中でもカルボキシル基及び水酸基が望ましく、後述するイソシアネート系硬化剤との反応によって高い接着力を得るという観点で、特にカルボキシル基が望ましい。
【0033】
架橋性官能基を有する架橋性アクリル系高分子を形成するための架橋性単量体の具体的な例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸などのようなエチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルのような(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルなどが挙げられ得る。これらは、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用し得る。
【0034】
架橋性アクリル系高分子は、前述した架橋性官能基を有する架橋性単量体の他に、(メタ)アクリル酸エステル単量体を混合して共重合して製造することが望ましい。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を共に意味する。他の類似の用語も同様である。(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられ得る。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、架橋性アクリル系高分子は、架橋性アクリル系高分子100重量部を基準にして、メチルアクリレート10~30重量部を含む共重合体であり得る。
【0035】
また、良好な接着力を付与することから、窒素含有エチレン性不飽和単量体を構成成分としてさらに含み得る。窒素含有エチレン性不飽和単量体の例には、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられ得る。場合によっては、前述した単量体成分の他に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル系単量体などのその他の単量体をさらに含んで重合し得る。
【0036】
溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素やヘキサンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチルなどのエステルやメチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0037】
接着剤組成物は、必要に応じて各種添加剤を含有し得る。例えば、帯電防止剤、連鎖移動剤、界面活性剤、可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などを、使用用途によって適切に使用し得る。
【0038】
アクリル系接着剤組成物は、例えば、アクリル系接着剤組成物の総重量に対して固形分の重量が20~25重量%であり得る。
【0039】
前述したアクリル系着剤組成物は、例えば、前述した各成分を混合して撹拌して製造することができ、各種支持体の片面または両面に塗布し、熱硬化を行うことで本発明のヘイズ接着フィルム13を製造し得る。支持体である離型フィルムとしては樹脂フィルムが使用可能であり、樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルカーボネート及びこれらのラミネート体などを使い得る。
【0040】
ヘイズ接着フィルム13は、偏光子11のいずれか一面、即ち、図1の(a)に示したように偏光子11の下部、または図1の(b)に示したように偏光子11の上部に位置し得る。ここで、上部は、後述するディスプレイ装置において使用者に向かう方向である。但し、図1では、ヘイズ接着フィルム13の位置によって二つの偏光板10a、10bを別体として示したが、これは偏光板をディスプレイ装置に積層するときの方向を示すためであり、実際のフィルム形態の製品として発売される偏光板10a、10bは、同じ一つである。
【0041】
一方、偏光板10a、10bは、偏光子11の両面、即ち、ヘイズ接着フィルム13が付着された偏光子11の一面とヘイズ接着フィルム13との間及びヘイズ接着フィルム13が付着されていない偏光子11の他面に積層された保護フィルム12をさらに備え得る。保護フィルム12は、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステルなどの樹脂からなったフィルムとして当業界によく知られている。また、図示していないが、ヘイズ接着フィルム13が付着されていない側の保護フィルム12の上には、ヘイズを付与していない(ヘイズを有するビーズが分散していない)接着フィルムがさらに積層され得る。この接着フィルムとしては、前述したようにアクリル系高分子の熱硬化物からなった接着フィルムがよく知られている。
【0042】
図1に示した偏光板10a、10bにおいてヘイズ接着フィルム13を除いた偏光子11及び両面に付着された保護フィルム12からなる構成、またはこれにヘイズを付与していない接着フィルムがさらに積層された構成は、ヘイズを付与していない通常の偏光板10といえる。また、図1を含めた添付図面において10a及び10bは、本発明によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板といえる。
【0043】
本発明の他の態様によるディスプレイ装置は、デュアルセル構造を有するディスプレイ装置であって、ディスプレイ装置に含まれる少なくとも三つの層の光板のうちいずれか一つの偏光板が前述した態様の偏光板からなる。即ち、本発明によるディスプレイ装置は、上下に配置され、各々マトリクス形態からなって画像を表示する上部表示セル及び下部表示セルを含む少なくとも二つの層の表示セルと、上部表示セルの上部に位置する上部偏光板、上部表示セルと下部表示セルとの間に位置する中間偏光板及び下部表示セルの下部に位置する下部偏光板を含む少なくとも三つの層の偏光板と、を備えるディスプレイ装置において、上部偏光板、中間偏光板及び下部偏光板のうちいずれか一つの偏光板が前述した態様の偏光板からなる。
【0044】
本発明によるディスプレイ装置は、視野角を制限する要素、所謂ルーバー(louver)フィルムのような要素を含んでも、含まなくてもよい。
【0045】
また、本発明によるディスプレイ装置は、自動車に搭載される自動車用ディスプレイ装置であり得る。この場合、自動車用ディスプレイ装置が通常ダッシュボードの中央(運転席と助手席との間)に搭載されることを考慮すると、自動車用ディスプレイ装置は、視野角を制限する要素を含まないことが望ましい。
【0046】
続いて、図面を参照して本発明の他の態様によるディスプレイ装置について説明する。
【0047】
図2は、本発明の他の態様によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
図2を参照すると、本実施形態によるディスプレイ装置100aは、所謂デュアルセル構造のLCD装置である。即ち、ディスプレイ装置100aの使用者に向かう方向を上部とするとき、少なくとも二つの層の表示セルは、上下に配置される上部表示セル21(上部LCDセル)及び下部表示セル22(下部LCDセル)を含み得る。ここで、上部表示セル21及び下部表示セル22のうちいずれか一つがカラーLCDセルであり、他の一つが黒白LCDセル(モノーセル)であるか、または二つともカラーLCDセルであり得る。
【0048】
また、少なくとも三つの層の偏光板は、上部表示セル21の上部に位置する上部偏光板31と、上部表示セル21と下部表示セル22との間に位置する中間偏光板32と、下部表示セル22の下部に位置する下部偏光板33と、を含み得る。
【0049】
また、図2に示したように、本実施形態によるディスプレイ装置100aは、最下部にバックライト50が配置され、最上部にはカバーガラス40が配置され得る。また、各層の間には、必要に応じて隣接する二つの層を接着する接着層60が介在され得る。接着層60は、ヘイズが付与されていない通常の透明接着層であって、OCA(Optically Clear Adhesive)と呼ばれる両面テープのようなフィルム形態のものや、OCR(Optically Clear Resin)と呼ばれる液状のものを使用し得る。
【0050】
一方、デュアルセル構造のLCD装置100aの各要素の具体的な構成と動作、製造方法などは公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0051】
前述したように、デュアルセル構造のLCD装置には総3層の偏光板、即ち、上部偏光板31、中間偏光板32及び下部偏光板33が含まれ、本実施形態のディスプレイ装置100aにおいては、上部偏光板31が前述した態様によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板10aをなす。この際、図2に示したように、上部偏光板31がなす偏光板10aのヘイズ接着フィルム13が上部偏光板31の下部、即ち、偏光子11(図1の(a)参照)の下部に位置するように、上部偏光板31が上部表示セル21に積層されることが望ましい。これは、ヘイズ接着フィルム13を偏光子11の上部に位置させる場合、実質的にディスプレイ装置の最上層にヘイズを付与するようになり、使用者がぼやけた画像を視認することがあり、また、光が偏光子によって偏光される前に散乱させること(ヘイズを付与すること)が光の回折と干渉によって発生するモアレや虹ムラを低減するのにさらに効果的であるためである。
【0052】
図3は、他の実施形態によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。図2を参照して説明した前述した実施形態によるディスプレイ装置100aとの差異点を中心にして本実施形態によるディスプレイ装置100bについて説明する。
【0053】
図3を参照すると、本実施形態によるディスプレイ装置100bもデュアルセル構造のLCD装置である。本実施形態によるディスプレイ装置100bが前述した実施形態によるディスプレイ装置100aと異なる点は、総3層の偏光板、即ち、上部偏光板31、中間偏光板32及び下部偏光板33のうち中間偏光板32が、前述した態様によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板10bをなすという点である。この際、図4には、中間偏光板32がなす偏光板10bのヘイズ接着フィルム13が中間偏光板32の上部、即ち、偏光子11(図1の(b)参照)の上部に位置するよう、中間偏光板32が下部表示セル22に積層されるように示したが、中間偏光板32がなす偏光板のヘイズ接着フィルム13が中間偏光板32の下部、即ち、偏光子11(図1の(a)参照)の下部に位置するように積層されてもよい。
【0054】
図4は、さらに他の実施形態によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。図2を参照して前述した実施形態によるディスプレイ装置100aとの相違点を中心にして本実施形態によるディスプレイ装置100cについて説明する。
【0055】
図4を参照すると、本実施形態によるディスプレイ装置100cもデュアルセル構造のLCD装置である。本実施形態によるディスプレイ装置100cが前述した実施形態によるディスプレイ装置100aと異なる点は、総3層の偏光板、即ち、上部偏光板31、中間偏光板32及び下部偏光板33のうち下部偏光板33が前述した態様によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板10bをなすという点である。この際、図4に示したように、下部偏光板33がなす偏光板10bのヘイズ接着フィルム13が下部偏光板33の上部、即ち、偏光子11(図1の(b)参照)の上部に位置するように、下部偏光板33が下部表示セル22に積層され得る。これは、バックライト50がその上部のディスプレイパネル(下部偏光板33からカバーガラス40までの積層構造全体)とは別の部品から製造され、通常、接着フィルムや接着剤を介在せず積層固定されるためである。
【0056】
一方、図2図4を参照して説明した実施形態においては、デュアルセル構造のLCD装置100a、100b、100cに前述した様態によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板(10aまたは10b)を適用した場合を説明したが、単層のLCDセルのみを備えたLCD装置や、表示素子としてOLEDディスプレイ装置にも前述した態様によるヘイズ接着フィルム13付き偏光板(10aまたは10b)が適用可能である。
【0057】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0058】
実施例1及び比較例1-3
ポリビニルアルコールフィルム(厚さ60μm、クラレ社、VF-PS #6000)を25℃の水溶液で膨潤、30℃の染着槽で染着し、染着されたポリビニルアルコールフィルムを55℃のホウ酸水溶液でさらに延伸して最終延伸率を約5.9倍になるようにして偏光子(厚さ22μm)を製造した。
【0059】
一方、以下のように製造したヘイズ接着フィルムを偏光子の一面に接着して偏光板を製造した。
【0060】
シリカビーズ含有アクリル系接着剤組成物の製造
下記の表1の組成比による重量平均分子量180万のアクリル系高分子、硬化剤及び粒径4~5μmのシリカビーズ(モメンティブ社のT-145)を溶剤(エチルアセテート)と混合し、記載された固形分の含量を有するアクリル系接着剤組成物を製造した。
【0061】
下記の表1において、アクリル系高分子の重合に用いられた単量体の種類のうち、BAはブチルアクリレートであり、MAはメチルアクリレートであり、BzAはベンジルアクリレートであり、AAはアクリル酸であり、4-HBAは4-ヒドロキシブチルアクリレートである。また、SCAは、シランカップリング剤あり、帯電防止剤としては3M社の製品を使用した。
【0062】
表1においてアクリル系高分子以外の成分の含量は、アクリル系高分子の含量100重量部を基準にして記載した。
【0063】
【表1】
【0064】
ヘイズ接着フィルムの製造
離型フィルムに実施例及び比較例のアクリル系接着剤組成物を塗布した後、80℃で3分間乾燥し、厚さ20μmの水準に接着フィルムを製造した。
【0065】
<ヘイズ接着フィルムのヘイズ評価>
ヘイズメーターを用いて測定した。
【0066】
<ヘイズ接着フィルムの物性評価>
製造されたヘイズ接着フィルム付き偏光板を3日間常温で保管した後、下記のような方法でヘイズ接着フィルムの物性を評価した。
【0067】
ガラス接着力:幅25mm、長さ200mmのサンプルを製作した後、これをガラスに付着して1時間常温で保管した後、剥離機を用いて90゜に剥離を行うことでガラス接着力を評価した。
【0068】
耐熱信頼性:幅15cm、長さ20cmのサンプルを製作してガラスに付着した後、50℃、5気圧の条件で脱泡を行った。続いて、各サンプルを95℃で各々500時間保管した後、5×5cmの面積内で発生した気泡の数によって下記のように評価し、その結果を表2に示した。
◎:気泡未発生
○:気泡5個未満
Δ:気泡5~9個
X:気泡10個以上、または浮き発生
【0069】
<ヘイズ接着フィルムを備えるデュアルセル構造のLCD装置におけるモアレ現象の発生有無評価>
前述した方法で製造したヘイズ接着フィルム13付き偏光板10aを上部LCDセル21の上面に付着し、下部LCDセル22として上部LCDセルと同じLCDセルを積層し、モアレ現象(虹ムラの発生有無)をブラックモードで目視で確認した。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示したように、ヘイズが特定の範囲に調整されたヘイズ接着フィルム付き偏光板を用いた実施例1では、モアレ現象が発生しないことに対し、ヘイズを付与していないか、またはヘイズが特定の範囲を外れたヘイズ接着フィルム付き偏光板を用いた比較例では、モアレ現象が改善されないことを確認することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 偏光板
10a、10b ヘイズ接着フィルム付き偏光板
11 偏光子
12 保護フィルム
13 ヘイズ接着フィルム
14 1/4波長板
21 上部表示セル(上部LCDセル)
22 下部表示セル(下部LCDセル)
25 表示セル(OLEDセル)
31 上部偏光板
32 中間偏光板
33 下部偏光板
40 カバーガラス
50 バックライト
60 接着層
100a、100b、100c、100d ディスプレイ装置
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】