(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】リアルタイム等価時間オシロスコープ
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
G01R13/20 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549895
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021019102
(87)【国際公開番号】W WO2021168440
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】タン・カン
(57)【要約】
アナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有するオシロスコープのような試験測定装置であって、この試験測定装置は、反復パターンを有する被試験信号を受けるように構成された入力部と、被試験信号を受けて複数の反復パターンにわたって被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングするように構成された単一のアナログ・デジタル・コンバータと、被試験信号の周波数を求め、信号の求めた周波数、被試験信号のパターン長、サンプル・レートに基づいて、トリガなしで被試験信号を再現するように構成された1つ以上のプロセッサとを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有するオシロスコープであって、
反復パターンを有する被試験信号を受信するように構成された入力部と、
上記被試験信号を受けて、複数の反復パターンにわたって上記被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングするように構成された単一のアナログ・デジタル・コンバータと、
上記被試験信号の周波数を求め、上記被試験信号の求めた周波数及び上記サンプル・レートに基づいてトリガなしで上記被試験信号を再現するよう構成された1つ以上のプロセッサと
を具えるオシロスコープ。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサが、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、該アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、上記被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、上記被試験信号の周波数を求めるように構成される請求項1のオシロスコープ。
【請求項3】
ユーザから上記被試験信号の周波数を受けるように構成されたユーザ入力部を更に具える請求項1のオシロスコープ。
【請求項4】
上記サンプル・レートが、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である請求項1のオシロスコープ。
【請求項5】
上記サンプル・レートが、毎秒2ギガ・サンプルから毎秒25ギガ・サンプルの間である請求項4のオシロスコープ。
【請求項6】
上記単一のアナログ・デジタル・コンバータは、少なくとも12ビットのアナログ・デジタル・コンバータである請求項1のオシロスコープ。
【請求項7】
上記1つ以上のプロセッサは、求めた上記周波数及び上記サンプル・レートに基づいて、再現された上記被試験信号における上記被試験信号のサンプリングされた構成要素夫々の対応する位置を求めることによって、上記被試験信号の求めた周波数及び上記サンプル・レートに基づいてトリガなしで上記被試験信号を再現するよう構成される請求項1のオシロスコープ。
【請求項8】
上記1つ以上のプロセッサは、上記アナログ・デジタル・コンバータの上記サンプル・レートを調整し、上記アナログ・デジタル・コンバータに様々なサンプル・レートで上記被試験信号をサンプリングさせるように更に構成される請求項1のオシロスコープ。
【請求項9】
上記1つ以上のプロセッサは、様々なサンプル・レートでサンプリングされた上記被試験信号に基づいて、上記被試験信号の周波数を求めるように更に構成される請求項8のオシロスコープ。
【請求項10】
アナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有するオシロスコープにおいて被試験信号を再現する方法であって、
反復パターンを有する上記被試験信号を受ける処理と、
単一のアナログ・デジタル・コンバータを使用して複数の反復パターンにわたって上記被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングし、上記信号をデジタル化する処理と、
サンプリングされた上記被試験信号の周波数を求める処理と、
求めた上記周波数と上記サンプリング・レートに基づいてトリガを使用せずに上記被試験信号を再現する処理と
を具える被試験信号を再現する方法。
【請求項11】
被試験信号の周波数を求める処理が、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、上記被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整する処理を含む請求項10の方法。
【請求項12】
ユーザ入力部から上記被試験信号の周波数を受ける処理を更に具える請求項10の方法。
【請求項13】
上記サンプル・レートは、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である請求項10の方法。
【請求項14】
上記サンプル・レートは、毎秒2ギガ・サンプルと毎秒25ギガ・サンプルの間である請求項13の方法。
【請求項15】
上記単一のアナログ・デジタル・コンバータは、少なくとも12ビットのアナログ・デジタル・コンバータである請求項10の方法。
【請求項16】
上記アナログ・デジタル・コンバータの上記サンプル・レートを調整し、上記アナログ・デジタル・コンバータに、様々なサンプル・レートで上記被試験信号をサンプリングさせる処理を更に具える請求項10の方法。
【請求項17】
上記被試験信号の上記周波数を求める処理が、様々なサンプル・レートでサンプリングされた上記被試験信号に基づいて、上記被試験信号の上記周波数を求める処理を含む請求項16の方法。
【請求項18】
試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記試験測定装置に、
反復パターンを有する被試験信号を受ける処理と、
単一のアナログ・デジタル・コンバータを用いて複数の上記反復パターンにわたって上記被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングして上記信号をデジタル化する処理と、
サンプリングされた上記被試験信号の周波数を求める処理と、
求めた上記周波数と上記サンプル・レートに基づいてトリガを使用せずに被試験信号を再現する処理と
を行わせる命令を含む1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
上記試験測定装置に、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、該アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、上記被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、上記被試験信号の周波数を求める処理を行わせる命令を更に含む請求項18の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
上記サンプル・レートが、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である請求項18の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
リアルタイム・モード及びリアル等価時間モードを有するオシロスコープであって、
第1及び第2チャンネルと、
第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータと、
上記リアルタイム・モードの間、上記第1チャンネルを上記第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータの両方に電気的に結合し、上記第2チャンネルを上記第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータから電気的に切り離し、
上記リアル等価時間モードの間、上記第1チャンネルを上記第1アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合し、上記第2チャンネルを上記第2アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合するよう構成される1つ以上のプロセッサと
を具えるオシロスコープ。
【請求項22】
上記リアル等価時間モードの間、上記1つ以上のプロセッサが、上記第1チャンネルで受けた上記被試験信号の周波数を求め、上記被試験信号の求めた周波数及び上記第1アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートに基づいてトリガなしで上記被試験信号を再現するように構成される請求項21のオシロスコープ。
【請求項23】
上記被試験信号が、反復パターンを含む請求項22のオシロスコープ。
【請求項24】
上記1つ以上のプロセッサが、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、該アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態に達するまで、上記被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、上記被試験信号の周波数を求めるように構成される請求項23のオシロスコープ。
【請求項25】
上記1つ以上のプロセッサが、更に、求めた上記周波数及び上記サンプル・レートに基づいて、再現された上記被試験信号中の上記被試験信号のサンプリングされた構成要素夫々の対応する位置を求めることによって、上記被試験信号の求めた上記周波数及び上記サンプル・レートに基づいてトリガなしで上記被試験信号を再現するように構成される請求項23のオシロスコープ。
【請求項26】
上記1つ以上のプロセッサが、更に、上記アナログ・デジタル・コンバータの上記サンプル・レートを調整し、上記アナログ・デジタル・コンバータに、様々なサンプル・レートで上記被試験信号をサンプリングさせるように構成される請求項23のオシロスコープ。
【請求項27】
上記1つ以上のプロセッサは、更に、様々なサンプル・レートでサンプリングされた上記被試験信号に基づいて上記被試験信号の周波数を求めるように構成される請求項26のオシロスコープ。
【請求項28】
ユーザから上記被試験信号の周波数を受けるように構成されたユーザ入力部を更に具える請求項22のオシロスコープ。
【請求項29】
複数のスイッチを更に具え、上記1つ以上のプロセッサが、上記試験測定装置のモードに基づいて、上記第1及び第2チャンネルを上記第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合するように、上記複数のスイッチの夫々を制御するように更に構成される請求項21のオシロスコープ。
【請求項30】
上記1つ以上のプロセッサが、更に、
公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して第1周期を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、
上記平均第1ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、上記サンプルの第1ウィンドウに関する上記ユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、
上記サンプルの第1ウィンドウ及び上記サンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、
正規化された上記サンプリング時間に基づいて上記被試験信号を再現する処理と
によって、上記リアルタイム・モード又は上記リアル等価時間モードのいずれかで上記被試験信号をサンプリングし、上記被試験信号を再現するように構成される請求項21のオシロスコープ。
【請求項31】
被試験信号をサンプリングする処理と、
上記被試験信号に基づいて公称ユニット・インターバル値を求める処理と、
上記公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して第1周期値を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、
上記平均第1ユニット・インターバルに近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、上記サンプルの第1ウィンドウに関する上記ユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、
上記サンプルの第1ウィンドウ及び上記サンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、
正規化された上記サンプリング時間に基づいて上記被試験信号を再現する処理と
を具えるオシロスコープにおいて被試験信号を再現する方法。
【請求項32】
上記被試験信号が反復パターンを含む請求項31の方法。
【請求項33】
上記被試験信号をサンプリングする処理は、上記被試験信号をサンプリングするアナログ・デジタル・コンバータのナイキスト周波数よりも大きいアナログ帯域幅を有する被試験信号を取り込む処理を含む請求項31の方法。
【請求項34】
上記サンプルの第2ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲は、上記サンプルの第1ウィンドウに関する上記ユニット・インターバルの調査範囲よりも狭く、上記平均第2ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第3ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第3ウィンドウを取得する処理と、
上記サンプルの第1ウィンドウ、上記サンプルの第2ウィンドウ及び上記サンプルの第3ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と
を更に具える請求項31の方法。
【請求項35】
試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記試験測定装置に、
リアルタイム・モードの間、第1チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータ及び第2アナログ・デジタル・コンバータの両方に電気的に結合させ、第2チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータ及び第2アナログ・デジタル・コンバータから電気的に切り離して、被試験信号を取り込む処理を行わせ、
リアル等価時間モードの間、上記第1チャンネルを上記第1アナログ・デジタル・コンバータだけに電気的に結合し、上記第2チャンネルを上記第2アナログ・デジタル・コンバータだけに電気的に結合し、上記被試験信号を上記第1チャンネル又は上記第2チャンネルのいずれかで取り込む処理を行わせる
命令を含む1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項36】
上記試験測定に、上記リアル等価時間モードの間に、上記第1チャンネルで受けた被試験信号の周波数を求める処理と、上記被試験信号の求めた上記周波数及び上記第1アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現する処理を行わせる命令を更に含む請求項35の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項37】
上記被試験信号が、反復パターンを含む請求項36の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項38】
上記1つ以上のプロセッサが、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、該アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態に達するまで、上記被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、上記被試験信号の上記周波数を求めるように構成される請求項37の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項39】
リアルタイム・モード又はリアル等価時間モードのいずれかの上記試験測定装置に、
上記第1チャンネル又は上記第2チャンネルのいずれかで被試験信号をサンプリングする処理と、
上記被試験信号に基づいて公称ユニット・インターバル値を求める処理と、
上記公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して、第1周期値を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、
上記平均第1ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、上記サンプルの第1ウィンドウに関する上記ユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、
上記サンプルの第1ウィンドウ及び上記サンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、
正規化された上記サンプリング時間に基づいて上記被試験信号を再現する処理と
を行わせる命令を含む請求項35の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関連するシステム及び方法に関し、特に、試験測定装置におけるリアル等価時間等データ・アクイジションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイエンド等価時間(equivalent-time)オシロスコープ及び従来のリアルタイム・オシロスコープは、生産時や研究開発において、高速な信号のインテグリティ(integrity:忠実性、品質)測定やデバッグに使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0109159号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0003502号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3754349号明細書
【0004】
しかし、従来のハイエンドの等価時間オシロスコープは、ハードウェア・トリガのためにアクイジション速度が遅く、コストが高い。従来のリアルタイム・オシロスコープは、アクイジション速度が極めて速いが、多数のアナログ・デジタル・コンバータなど、速いアクイジション速度を実現するのに必要となる多数のハードウェア・コンポーネントのために、コストが高い。また、アナログ・デジタル・コンバータが複数ある結果として、複数のトラック・ホールド回路及びアナログ・デジタル・コンバータ間の不整合(ミスマッチ)が原因で、エラーを生じることがある。
【0005】
本開示技術の実施例は、先行技術のこれら及び他の欠点に対処する。
【0006】
本開示技術の実施例の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照した以下の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示技術の実施例に係る試験測定装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の試験測定装置によってサンプリングされて、エイリアシングが生じた被試験信号の一例である。
【
図3】
図3は、本開示技術のいくつかの実施例によるアイ・ダイアグラムの一例である。
【
図4】
図4は、本開示技術の他の実施例によるアイ・ダイアグラムの一例である。
【
図5】
図5は、
図2のエイリアス信号に基づいて再現された信号の例である。
【
図6】
図6は、本開示技術の実施例による被試験信号のアクイジション及び再現方法の一例のフローチャートである。
【
図7】
図7は、リアルタイム・モードで動作する試験測定装置のブロック図である。
【
図8】
図8は、リアルタイム・モードで動作する試験測定装置の別のブロック図である。
【
図9】
図9は、リアル等価時間モードで動作する試験測定装置のブロック図である。
【
図10】
図10は、
図8の試験測定装置のリアルタイム・モード時に取得したリカバリ波形のプロットである。
【
図11】
図11は、
図9の試験測定装置のリアル等価時間モード中に取得したリカバリ波形のプロットである。
【
図12】
図12は、クロック・データをリカバリし、サンプリングした波形を再現する動作例である。
【
図13】
図13は、スペクトラム拡散クロックをオフにして、
図12の動作に基づいて生成されたアイ・ダイアグラムである。
【
図15】
図15は、スペクトラム拡散クロックをオフにして、
図12の動作に基づいて再現された波形である。
【
図16】
図16は、スペクトラム拡散クロックをオンにして、
図12の動作に基づいて生成されたアイ・ダイアグラムである。
【
図18】
図18は、スペクトラム拡散クロックをオンにした
図12の動作に基づいて再現された波形である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願は、広いアナログ帯域幅を有し、ソフトウェア・クロック・リカバリを使用して、データ信号からクロックを抽出し、抽出されたクロックに基づいて、取り込まれた信号のパターンを再現(reconstruct:再構成、再構築)するリアル等価時間オシロスコープを開示する。
【0009】
大量生産の環境では、従来の等価時間(equivalent-time)オシロスコープや従来のリアルタイム・オシロスコープよりも低コストでありながら、生産試験の要件を満たす試験測定装置が求められている。以下でより詳細に説明する本開示技術の実施例としては、広帯域幅、低ジッタ、より低い垂直ノイズ及びクロック・リカバリ能力を有する試験測定装置100がある。
【0010】
被試験信号の速度は、より高いレートへと絶え間なく進歩しており、このため、試験測定装置100が信号成分を忠実に捕捉するのには、十分に広い帯域幅が必要となる。被試験信号のビット・レートやボー・レートが増加すると、ユニット・インターバル(UI)が小さくなり、水平ジッタの許容誤差が低下する。また、被試験信号のビット・レートやボー・レートが増加すると、トランスミッタとレシーバでイコライザを使用しても、被試験信号に対するシンボル間干渉の影響が大きくなり、垂直方向のアイ・マージンが減少することになる。また、被試験デバイスで広く使用されている低電力シグナリング方式も、垂直方向のアイ・マージンを減少させることになる。多くの試験測定装置は、擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)信号やSSPRQ(short stress pattern random-quaternary)信号などのデータ・パターンを繰り返す被試験信号をモニタ又は取り込むために使用される。試験測定装置100は、以下でより詳細に説明するように、データ信号からクロックをリカバリ(再生)することができる。
【0011】
従来のリアルタイム・オシロスコープは、入力波形全体を1回の通過でサンプリングできる。即ち、アクイジション(acquisition:取り込み)と表示は、同じ時間フレームで行える。これを行うのに、従来のリアルタイム・オシロスコープは、被試験信号を高速で取り込む際のエイリアシングを防止するため、アナログ帯域幅に比較して十分に高いサンプリング・レートを備えている。例えば、リアルタイム・オシロスコープは、アナログ帯域幅が70GHz、サンプル・レートが200ギガ・サンプル/秒(GS/s)であっても良い。そのナイキスト周波数100GHzは、アナログ帯域幅よりも高いため、エイリアシングは生じない。従来のリアルタイム・オシロスコープでは、ナイキスト・レートが非常に高いため、トリガなしで、かつ、エイリアシングなしでアナログの被試験信号を取り込むことができる。従来のリアルタイム・オシロスコープは、全て、アナログ帯域幅よりも高いナイキスト周波数を提供するサンプル・レートを備えている。しかし、従来のリアルタイム・オシロスコープは高価であり、生産試験用としては、過大なコストがかかる可能性がある。
【0012】
従来のハイエンドの等価時間サンプリング・オシロスコープは、信号の反復する特性を利用し、複数のトリガ・イベントからのサンプルを使用して波形をデジタル的に再現(reconstruct:再構築)する。等価時間オシロスコープのハードウェア・トリガにサンプルを取得させるのに、クロック及びデータ・リカバリ・ユニットを利用できる。反復信号がサンプリングされるため、等価時間スコープの帯域幅はサンプル・レートをはるかに超えることができる。例えば、等価時間サンプリング・オシロスコープは、200キロ・サンプル/秒(kS/s)など、非常に低いサンプル・レートが可能で、高い垂直分解能(通常、12ビット以上の分解能)を持つことができる。従来の等価時間オシロスコープは、等価時間サンプリング技術を使用して、パターン・トリガに基づいて信号のパターン波形を再現する。
【0013】
図1は、本開示技術のいくつかの実施形態によるリアル等価時間試験測定装置100のブロック図の例を示す。試験測定装置100には、任意の電気信号媒体であっても良い1つ以上のポート102がある。ポート102は、トランスミッタ(受信回路)、レシーバ(送信回路)やトランシーバを有していても良い。各ポート102は、試験測定装置100のチャンネルである。
【0014】
ポートからの信号は、次いで、受信信号のオフセット又はベース・ラインを調整できる垂直オフセット104に送られる。いくつかの構成又は実施例では、垂直オフセット104が、更に垂直利得調整を行っても良い。もし垂直利得調整がない場合、垂直ノイズを低減できるが、ダイナミック・レンジも小さくなる。これに対処するために、いくつかの例では、入力される被試験信号を減衰や増幅するために、外部の減衰回路や増幅回路を利用しても良い。信号は、垂直オフセット104からサンプラ・トラック・ホールド回路106へ送られる。トラック・ホールド回路106は、高分解能のアナログ・デジタル・コンバータ108でアクイジションするのに充分な期間、各信号を安定して保持する。
【0015】
アナログ・デジタル・コンバータ108は、トラック・ホールド回路106からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。アナログ・デジタル・コンバータ108のサンプリング・レートは、等価時間試験測定装置よりも大きく、リアルタイム試験測定装置よりも小さい。例えば、アナログ・デジタル・コンバータ108は、数GS/sから数10GS/sまでの信号をサンプリングできる。実施形態によっては、アナログ・デジタル・コンバータ108は、1GS/s~100GS/sの間のアナログ信号をサンプリングできる。別の実施形態では、アナログ・デジタル・コンバータは、2GS/s~25GS/secondのアナログ信号をサンプリングできる。次いで、アナログ・デジタル・コンバータ108からのデジタル化された信号は、アクイジション・メモリ110に記憶される。つまり、サンプリング・レートは、サンプリング・レートの半分であるナイキスト周波数が、アナログ・デジタル・コンバータ108のアナログ帯域幅よりも低くなるように設定される。アナログ・デジタル・コンバータ108は、12ビット・アナログ・デジタル・コンバータなどの単一の高分解能アナログ・デジタル・コンバータであっても良い。
【0016】
1つ以上のプロセッサ112は、メモリからの命令を実行するように構成されても良く、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップ、例えば、アクイジション・メモリ110から取り込まれた信号を受けて、ハードウェア・トリガを使用せずに被試験信号を再現する処理、あるいは、高いアクイジション・レートでサンプルを取り込む処理などを実行しても良い。
【0017】
試験測定装置100上のメモリ110その他のメモリは、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ、その他の任意のメモリ形式で実装されても良い。メモリは、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト、その他の命令を記憶するための媒体として機能する。
【0018】
ユーザ入力部114は、1つ以上のプロセッサ112に結合される。ユーザ入力部114には、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、その他、ディスプレイ116上でGUIを使ってインタラクティブに利用できる任意の操作装置が含まれても良い。ディスプレイ116は、デジタルスクリーン、ブラウン管ベースのディスプレイ、又は、波形、測定値、及び他のデータをユーザに表示するための他の任意のモニタであっても良い。試験測定装置100のコンバータは、試験測定装置100内に統合されているものとして描かれているが、当業者にはわかるように、これらのコンポーネントのいずれかが試験測定装置100の外部にあっても良く、任意の従来の方法(有線や無線の通信媒体や機構)で試験測定装置100に結合されても良い。例えば、実施例によっては、ディスプレイ116が、試験測定装置100から遠隔にあっても良い。
【0019】
図2は、
図1の試験測定装置を用いて取り込むことができるサンプリング波形のプロット200を示す。被試験信号はサイン(sine:正弦)波信号であるが、
図2に見られるように、試験測定装置100がサンプルした信号には、エイリアスがあるように見える。これは、ナイキスト周波数が試験測定装置100のアナログ帯域幅よりも低く、サイン信号の周波数よりも低いためである。
図2の波形例では、13.28125GHzのサイン信号を3.124GS/sのサンプリング・レートで取り込み、
図2のプロット200に示すエイリアスのある波形が生じている。
【0020】
被試験信号が取り込まれると、プロセッサ112は、信号の正確なビット・レート又はボー・レートを決定でき、アクイジション・メモリ110で受けた信号のサンプルを再現できる。実施例によっては、ビット・レートは、ユーザがユーザ入力部114を介して被試験信号の周波数を入力することによって決定されても良い。しかし、被試験信号の周波数が不明な別の例では、プロセッサ112が、エイリアスのある波形信号を調整してアイ・ダイアグラムを生成する処理を、アイ・ダイアグラムが最も広い水平開口部を有するまで、繰り返しても良い。つまり、アイ・ダイアグラムのアイが最も開かれるまで、異なるビット・レートやボー・レートを選択できる。実施例によっては、ユーザが、ビット・レートやボー・レートの検出を、どの程度正確なものとするかを、ユーザ入力部114によって設定しても良い。例えば、
図3及び
図4は、アクイジション・メモリ110内に取り込まれたサンプルから求めたアイ・ダイアグラム300及び400を図示する。
図3のアイ・ダイアグラム300は、
図4のアイ・ダイアグラム400よりも開いており、従って、
図4のアイ・ダイアグラムよりも正確なビット・レートやボー・レートを有する。アイ・ダイアグラムから、ビット・レートやボー・レートは、アイの水平開口部に基づいて決定できる。
【0021】
ビット・レートやボー・レートが決定されると、試験測定装置100のサンプリング・レートは既知であるため、プロセッサ112は、次に、被試験信号を再現し、各受信サンプルを信号内の適切な位置に配置できる。プロセッサ112は、次いで、再現された信号をディスプレイその他の装置に出力できる。例えば、ビット・レート(即ち、信号の各ビットが受信される頻度)が既知であって、かつ、サンプルが取得される頻度が既知である場合、プロセッサ112は、この情報を使用して、再現された信号中に各サンプルを適切に配置できる。つまり、受信した全てのサンプルについて、ビット・レートやボー・レートと、サンプル・レートとがわかっている場合、再現された信号にサンプルを配置する前にスキップするべきビット数がわかる。試験測定装置100では、クロックをリカバリするのに、ハードウェア・トリガやハードウェア・クロック・リカバリを使用しない。
【0022】
図5は、
図2の取り込まれた信号を再現(reconstruct:再構築)した信号を示すプロット500の一例である。プロセッサ112が、各ビットの正しい位置を決定すると、ビットはそれらの適切な位置に配置され、そして、再現された信号は、試験測定装置100のディスプレイ116に表示されても良い。
【0023】
実施例によっては、試験測定装置100が、位相ロック・ループ(PLL)を含んでもよい。PLLは、出力クロック信号を生成し、その位相を入力信号の位相に関連させる制御システムである。PLLが低周波ジッタをトラッキングするためにいくつかの例で使用される場合、プロセッサ112は、PLLの効果を模倣するために、再現された波形のセクションに沿ってビット・レートやボー・レートを調整できる。アナログ・デジタル・コンバータ108は、数ギガ・サンプル毎秒でサンプルし、これは数十メガ・ヘルツの典型的なPLL帯域幅よりもはるかに高い。これにより、波形の局所的なセクションに十分なビット又はシンボルを用意して、ビット・レートやボー・レートを調整して低周波ジッタをトラッキングできる。
【0024】
プロセッサ112は、パターン長が正しく検出されるとアイ・ダイアグラムがパターン波形となることに基づいて、パターン長を検出することもできる。アイ・ダイアグラムとパターン波形の違いは、水平位置の夫々について、アイ・ダイアグラムでは、
図3~4に示すように、垂直方向に複数の値を持つことがある一方、パターン波形では、
図5に示すように垂直方向の値が1つである。
図2~5に示すサンプルでは、被試験サイン信号は、パターン長が2の繰り返しパターンとして扱うことができる。サイン波の各周期に2つのビットがあるからである。パターン長を2に設定すると、パターン波形は、
図5に示す再現波形500となる。例えば、PRBS15のパターンの場合、パターンの長さは、2^15-1である。パターン内の各ビットは、整数個のパターンが繰り返された後に繰り返される。
【0025】
いくつかの例では、プロセッサ112は、サンプル・レートが信号ビット・レートやボー・レートに同期する状況を回避するために、アナログ・デジタル・コンバータ108のサンプル・レートを調整しても良い。また、プロセッサ112がサンプル・レートを調整できるので、プロセッサ112は、同じ被試験信号を、多種多様なサンプル・レートを用いてサンプリングできる。1つの信号中の同じ周波数成分を、異なるサンプル・レートを使うことで、異なる周波数にエイリアスが生じるようにしても良い。プロセッサ112は、これら異なって取り込まれた信号の各々を使用することで、被試験信号を再現するのに、最も正確なクロック・リカバリを決定できる。
【0026】
図6は、本願に記載の実施例による試験測定装置100の動作を示すフローチャートである。工程600では、試験測定装置100(そのアナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有する)が、被試験信号を受信する。試験測定装置100において、サンプル・レートは、少なくとも2GS/sである。
【0027】
工程602において、試験測定装置100のプロセッサ112は、工程600中に取得してアクイジション・メモリ110に記憶された取得した信号に基づいて、被試験信号の周波数を求める。周波数を求めるために、いくつかの例では、プロセッサ602が、アイ・ダイアグラムを生成し、アイ・ダイアグラムが最も広い水平開口部を持つようになるまで、ビット・レート又はボー・レートを繰り返し調整する。
【0028】
ビット・レート又はボー・レートが求まると、プロセッサ112は、試験測定装置100のサンプリング・レートと、工程604において求めた被試験信号のビット・レート又はボー・レートとに基づいて、被試験信号を再現(reconstruct:再構築、再構成)できる。プロセッサ112は、ビット・レートやボー・レートを決定し、ハードウェア・パターン・トリガを使用せずに被試験信号を再現できる。これにより、試験測定装置100は、より速い速度でデータをサンプリングできるが、リアルタイム・サンプリング・オシロスコープを使用するよりも低コストである。
【0029】
本開示技術の実施例は、従来のリアルタイム試験測定装置及び等価時間試験測定装置に勝る利点を提供する。例えば、本開示技術の実施例は、リアルタイム試験測定装置及び等価時間試験測定装置と比較して、低い垂直ノイズ、少ない水平ジッタ、速いアクイジション速度が可能であり、どれも低コストである。
【0030】
等価時間試験測定装置は、そのストレートなアナログのシングル・パス、サンプリング技術及び高分解能アナログ・デジタル・コンバータに由来する非常に低いノイズ・フロアを備えている。リアルタイム試験測定装置は、ノイズが高くなるが、これは、アナログ信号パスに利得段があり、複数のトラック・ホールド回路及びアナログ・デジタル・コンバータの間のインタリーブは、これらインタリーブのパイプ処理間のミスマッチ(不整合)を完全には回避できないためである。ミスマッチは、校正によって軽減できるが、残存ミスマッチ・エラーがあるため、環境の変更がミスマッチに影響を与える可能性がある。しかし、本開示の実施例では、単一の高分解能アナログ・デジタル・コンバータを使用し、これは、リアルタイム試験測定装置で使用される複数の8ビットアナログ・デジタル・コンバータと比較して、量子化誤差(エラー)を低減できる。
【0031】
本開示の実施例では、アクイジションが短時間で行われ、リアルタイムの試験測定装置のようにインタリーブ誤差がないため、水平ジッタが少ない。等価時間試験測定装置では、高価な追加ハードウェアを使用することによってのみ水平ジッタを改善できる。
【0032】
本開示の実施例では、概して、数GS/sから数十GS/s(例えば、いくつかの実施形態では1GS/sから100GS/s、あるいは、別の実施形態では2GS/sから25GS/s)の間に、高速アクイジション速度を備えており、これは、低垂直ノイズを達成するために200KS/sのような低いサンプル・レートで発生する等価時間試験測定装置よりもはるかに速い。リアルタイム試験測定装置は、200GS/sの非常に高速なアクイジションを備えているが、上述したインタリーブ方式を使用してこれを行っており、そのために、垂直ノイズと水平ジッタが発生し、コストが増加する。
【0033】
即ち、リアルタイム試験測定装置は、非常に高いサンプル・レートを達成するために必要なハードウェアのためにコストが高い。等価時間試験測定装置も、サンプラをトリガするクロック信号源を必要とするため、コストが高くなる。しかし、本開示の実施例は、単一のアナログ・デジタル・コンバータを使用し、トリガ回路を使用しないで、高いアクイジション・レートを備えた低コストの試験測定装置を提供する。
【0034】
本開示のいくつかの実施例において、試験測定装置は、リアルタイム(real-time)モード及びリアル等価時間(real-equivalent-time)モードの両方を含むことができる。試験測定装置のリアルタイム・モードは、信号の全体像を提供し、リアル等価時間モードは、オシロスコープ内の同じ数のアナログ・デジタル・コンバータで、より広い帯域幅のチャンネルを提供できる。リアルタイム・モードでは、試験測定装置は、各チャンネルに複数のアナログ・デジタル・コンバータを使用するため、サンプル・レートが高くなる。リアル等価時間モードでは、各チャンネルに1つのアナログ・デジタル・コンバータのみを使用し、サンプル・レートは低くなるが、アクイジション速度は速くなる。
【0035】
図7~9は、リアルタイム・モードとリアル等価時間モードの両方を含む試験測定装置の一部分の例示的なブロック図を示している。当業者であればわかるように、
図7~9の試験測定装置は、限定するものではないが、図示されていないコンポーネント、例えば、
図1に示されるようなユーザ入力部、ディスプレイその他のハードウェア・コンポーネントを有していても良い。
【0036】
図7~9の試験測定装置700では、説明を簡単にするため、4つのチャンネルを示しているが、本開示技術の実施例は、4つのチャンネルに限定されるものではない。各チャンネルには、上述した垂直オフセット104、サンプル・トラック・ホールド回路106及びアナログ・デジタル・コンバータ108と同様の、垂直利得/オフセット702、サンプラ・トラック・ホールド回路704及びアナログ・デジタル・コンバータ706がある。
【0037】
図7及び
図8は、リアルタイム・モードで動作する試験測定装置700を図示し、
図8は、リアル等価時間モードで動作する試験測定装置700を示す。この例では、
図7に示すリアルタイム・モードの間、チャンネル2、3及び4のそれぞれが切断され、チャンネル1は、リアルタイム・モード・チャンネルとして動作する。被試験デバイスからの信号は、チャンネル1で受信され、垂直利得/オフセット702及びサンプラ・トラック・ホールド回路704を通して処理される。スイッチ708及びリレーが、多数の異なるアナログ・デジタル・コンバータ706に信号を配信(route)するために設けられても良い。
【0038】
この例では、スイッチが操作されて、サンプラ・トラック・ホールド回路704からの信号を、4つのアナログ・デジタル・コンバータ706の夫々に配信する。この例では、アナログ・デジタル・コンバータ706は、それぞれ50GS/sであるため、サンプラ・トラック・ホールド回路704からの信号を4つのA/D変換器706の夫々に配信すると、200GS/sのサンプリング・レートを達成できる。スイッチ708は、試験測定装置の選択されたモードに基づいて、プロセッサ712、又は、試験測定装置内の別のコントローラ・コンポーネントのいずれかによって操作されても良い。当業者であればわかるように、試験測定装置の選択されたモードは、例えば、
図1に示すようなユーザ・インタフェースから選択されても良い。
【0039】
信号は、4つのアナログ・デジタル・コンバータ706によってサンプリングされても良く、リアルタイム・モードで、これらアナログ・デジタル・コンバータ706を時間インタリーブ処理するような既知の任意の方法を用いて、プロセッサ712によって再現(再構築)されても良い。
【0040】
試験測定装置700は、オペレータが必要に応じて、また、被試験信号に基づいて、多数の異なるリアルタイム・モードの設定で使用できる。例えば、
図7に示すようにリアルタイム・モードにおいて単一のチャンネルをアクティブにする代わりに、2つのチャンネルがリアルタイム・チャンネルとして設定され、アクティブ化されても良い。
【0041】
図8において、チャンネル1及び3を、この例では、2つのリアルタイム33GHzチャンネルとして設定でき、1チャンネルあたり100GS/sである。即ち、2つのチャンネル1及び3の夫々は、2つの50GS/sアナログ・デジタル・コンバータ706を利用している。一方、チャンネル2及び4は切断され、このモード中、使用されない。リアルタイム・モードのサンプル・レートは、例えば、ユーザ・インタフェースを介して選択されても良い。次いで、試験測定装置内のコントローラ又はプロセッサが、スイッチを操作し、ユーザ・インタフェースは、どのチャンネルが現在リアルタイム・モードで動作しているかをユーザに通知しても良い。
【0042】
図9は、リアル等価時間モードにある試験測定装置を示し、チャンネル1~4の夫々が、それぞれの対応するアナログ・デジタル・コンバータ706に接続されている。このモードは、
図1~
図8に関して上述したように動作できる。リアルタイム・モードであろうとリアル等価時間モードであろうと、アナログ・デジタル・コンバータ706の出力は、
図1に関して先に詳細に説明したように、アクイジション・メモリ710に送られ、プロセッサ712によって更に処理される。
【0043】
図7~9は、4つのチャンネル及び4つのアナログ・デジタル・コンバータ706のみを示すが、当業者にはわかるように、追加のチャンネルや追加のアナログ・デジタル・コンバータ706が、試験測定装置700に用意されても良い。
図7~
図9で4つのチャンネルを示したのは、単に図示と説明を簡単にするためである。
【0044】
リアルタイム・モード及びリアル等価時間モードの両方を含む試験測定装置700は、信号の取り込みデータ中にエイリアシングが無いか又はほとんど無いので、リアルタイム・モードを使用して、被試験信号の全ての成分をチェックできる。リアルタイム・モードは、シンボル・レートとパターンの長さを検出するためにも使用できる。リアル等価時間モードにおいて、リアルタイム・モードから検出されたシンボル・レート及びパターン長は、次いで、いくつかの例においてリアル等価時間モードにおいて使用されても良い。リアル等価時間モードでは、試験測定装置700が、複数の信号を同時に測定するのに、より広い帯域幅のチャンネルを使うことができ、これを、例えば、被試験デバイスのコンプライアンス試験中に使用しても良い。
【0045】
上述のように、リアルタイム・モードでは、リアルタイム・アクイジションに使用されるチャンネルのサンプル・レートが高くなる。しかし、一部の広帯域幅の試験測定装置では、アナログ帯域幅とナイキスト周波数のギャップが小さい場合がある。例えば、リアルタイム・チャンネルが、50GS/sのアナログ・デジタル・コンバータ706を使って、アナログ帯域幅が20GHz、ナイキスト周波数が25GHzということもありえる。20GHzにおいてマイナス3デシベル(dB)の利得を持つアナログ・フロントエンドであっても、25GHzのアナログ帯域幅を超える信号成分のある程度を、ある程度の減衰で通過させることができる。これらの減衰された高周波成分には、トラック・ホールド・サンプラ704及びアナログ・デジタル・コンバータ706の後に、エイリアスが生じる。そのような状況では、以下で詳しく説明するように、ソフトウェア・データ・クロック・リカバリを使用して、試験測定装置のアナログ・フロントエンドを通過しているナイキスト周波数を超える大きな高周波成分があるかどうかを確認するのに、リアル等価時間モードを利用できる。
【0046】
また、試験測定装置700のリアル等価時間モードは、いくつかの実施例では、反復パターンを持たない信号を測定するのに使用されても良い。反復的でないデータ信号の場合、リアル等価時間モードを使用してアイ・ダイアグラムを取得し、上述したアイ・ダイアグラムの測定を実行することができる。
【0047】
試験測定装置700の動作の一例としては、スペクトラム拡散クロック(SSC)を伴い、PRBS13Qような擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)を使った32GBaudの4値パルス振幅変調(PAM4)のデータ・パターンを生成する信号源からの信号が取り込まれる。リアルタイム・モードでは、信号は、33GHzのアナログ帯域幅で、200GS/sでサンプリングされ、リアル等価時間モードでは、信号は、33GHzのアナログ帯域幅で50GS/sでサンプリングされる。
【0048】
図10は、試験測定装置700のリアルタイム・モードを用いてリカバリされた波形のプロット1000を示す。リアルタイム・モードのサンプル・レートは、33GHz帯域幅の信号には十分に高く、リカバリされた波形中にPAM4のパターンを見ることができる。一方、
図11は、リアル等価時間モードを用いたリカバリ波形のプロット1100を示し、この例では、サンプル・レートは50GS/sである。ナイキスト周波数は25GHzで、アナログ帯域幅の33GHzよりも低くなっている。しかし、信号には、25GHzを超えたところに大きなエネルギーがあるため、リカバリされた波形には、エイリアスが見られ、PAM4のパターンは見ることができない。
【0049】
高速シグナリングでは、ノン・リターン・トゥ・ゼロ(non-return to zero)又はPAM4の夫々について、公称UIがあり、これは、公称ビット・レート又はボー・レートの逆数である。例えば、32ギガ・ボー(GBaud)が、シリアル・コンピュータ拡張バス規格のPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)6.0の公称ボー・レートである。ただし、実際のボー・レートは、データ伝送中に常に変化している。UI/ボー・レートの変化は、一部は仕様によるものである。例えば、SSC方式は、システム・クロックを公称ボー・レートの5000ppm(つまり、0.5%)分、意図的に下げている。UI又はボー・レートが変化するもう1つの要因は、システム・クロックが完全なクロックではないことによる、固有の(intrinsic:内在的な)システム・クロック・ジッタに由来する。試験測定装置内のクロック・データ・リカバリ・ユニット(プロセッサの一機能であっても良い)は、リカバリされたクロックを、データ信号に埋め込まれたシステム・クロックの低周波成分に追跡させることによって、SSCを含む低周波ジッタの影響を除去又は低減するように設計されている。サンプリングされた生(raw:未加工)の波形データにエイリアスがない場合では、リアルタイム・オシロスコープ用に開発された様々なソフトウェア・クロック・データ・リカバリ(SCDR)がある。しかし、このようなSCDRは、生のサンプリング波形にエイリアスがある場合には機能しない。
【0050】
本開示の実施例は、リアル等価時間試験測定装置のためのクロック・データ・リカバリ、又は、試験測定装置のリアル等価時間モードのためのクロック・データ・リカバリに関する。リアル等価時間モード又はリアル等価時間試験測定装置用のクロック・データ・リカバリは、UIの変化の低周波成分を追跡(track:トラック)できる。
【0051】
図12は、本開示技術のいくつかの例によるリアル等価時間モード又は装置のソフトウェア・クロック・リカバリ及び被試験信号の再現を説明するフローチャートである。工程1200において、装置は、電気信号に関して時間対電圧の組(t,y)又は光信号に関して時間対パワーの形式で波形をサンプリング又は取り込む。説明を簡単にするため、以下では電気信号を説明するが、当業者にはわかるように、信号は、いくつかの実施例では、光信号であっても良い。サンプリング時間tのベクトルは、一定間隔が開けられている。例えば、サンプル・レートが3.125GS/sの場合、ベクトルtの間隔は、一定のサンプル・レートの逆数になる。
【0052】
工程1202では、サンプルの第1ウィンドウ(t_i, y_i, i=1, 2, …, w)が得られる。ウィンドウ・サイズwは、局所的な(ローカル)平均UI値を計算するのに十分なサンプルを得られるほど十分な大きさでありつつ、UI値のゆっくりとした変化を捕捉するのには十分な小ささに設定される。
【0053】
サンプルの第1ウィンドウを得るため、公称UI値の近辺で、推定UI値の集合{period_1_j, j=1, 2,…, p}が定義される。サンプルの第1ウィンドウの場合、この集合には、大量の推定UI値がある。例えば、試験測定装置でSSCがオンの場合、第1ウィンドウの平均UI値は、5000ppmの範囲内の任意の値に、システム・クロックの不確実性を加えたものであるため、周期値pは、非常に大きな値に設定される。推定UIの分解能は、反復調査(iterative search)によって改善できる。
【0054】
推定UI値「period_1_j」の夫々について、数式1に示すような時間ベクトルが、アイ・ダイアグラムの正規化された時間のオフセットとして定義される。
【0055】
t_eye_ij=mod(t_i, period_1_j)/period_1_j (1)
【0056】
t_eye_ijは、t_iとの1対1のマッピングを持っているので、組(t_eye_ij, y_i, i=1, 2, …, w)を決定することができ、この組からアイ・ダイアグラムを生成できる。period_1_jの推定UI値ごとに、アイ・ダイアグラムを生成できる。最適なアイ開口部を生じる最適なj値を選択するために、様々な処理を利用できる。
【0057】
例えば、最適なj値を選択するための処理の1つには、例えば、中央交差レベルの周辺のような、得られるサンプルの中央部分の範囲をカバーする垂直範囲{y_low, y_high}を定義する処理がある。jの夫々についてのt_mid_crossing_j={t_eye_j}の集合について、y_jは、垂直範囲{y_low, y_high}内に収まることがわかる。
【0058】
次に、数式2を使用して、e_j_kを求めることができる。
【0059】
e_j_k=std(mod(t_mid_crossing_j + t_offset_1_k, 1)), k=1, 2, …, q (2)
【0060】
ここで、t_offset_1_k, k=1, 2, …, q は、[0, 1]の間のオフセット値の集合である。
【0061】
すると、各j値に関して、最適なk値が見つかり、これは、jkOptimal(Optimal:最適な)と表記される。
【0062】
e_jkOptimal=min({e_j_k}), k=1, 2, …, q (3)
【0063】
jOptimalと表記される最適なj値は、次のように得られる。
【0064】
e_jOptimal=min({e_jkOptimal}), j=1, 2, …, p (4)
【0065】
(jkOptimal, jOptimal)の組は、後で使用するために保存しても良い。ここで jkOptimal は jOptimal に対応する。この時点で、第1ウィンドウの平均UI値は、period_1_jOptimalであり、水平オフセットは、t_offset_1_jkOptimalである。
【0066】
工程1202において、サンプルの第1ウィンドウに関する平均化されたUIを取得した後、工程1204において、同じウィンドウ・サイズwを有するサンプルの第2ウィンドウ(t_i, y_i, i=w+1,w+2, …, 2w)を取得する。同じプロセスを使用して、第2ウィンドウ内のサンプルについて、平均UI値の周期「period_2_jOptimal」と、水平オフセット「t_offset_2_jkOptimal」を決定できる。サンプルの第2ウィンドウのユニット・インターバルの調査範囲は、サンプルの第1ウィンドウのユニット・インターバルの調査範囲よりも狭くなる。
【0067】
サンプルの第2集合を取得するプロセスは、推定UI値の集合{period_2_j}が、公称UI値の近辺ではなく、period_1_jOptimalの近辺に設定されるという点で若干異なる。また、クロック・データ・リカバリ速度を向上させるためには、UI値の低周波変化が大きすぎないように、又は、変化が速すぎないようにする必要があるので、周期値pがはるかに小さい値に設定される。
【0068】
工程1206では、残りの波形サンプルを、工程1204と同じ方法で反復処理して、平均UI値の配列{period_n_jOptimal, n=1, 2, …, N}と、水平オフセットの配列{t_offset_n_jkOptimal, n=1, 2, …, N}を求める。後続の各サンプルのウィンドウのUIの調査範囲は、サンプルの第1ウィンドウのユニット・インターバルの調査範囲よりも狭くなる。
【0069】
工程1208では、平均UI値の配列{period_n_jOptimal, n=1, 2, …, N}と、水平オフセットの配列{t_offset_n_jkOptimal, n=1, 2, …, N}とに基づいて、絶対サンプリング時間tが、オリジナル波形の組{t, y}の形式から、{t_normalized, y}に変換される。この正規化されたサンプリング時間t_normalizedは、サンプリング時間tで表される絶対時間ではなく、UIを単位とする形式でサンプリング時間を表す。正規化サンプリング時間t_normalizedを計算するには、平均UI値{period_n_jOptimal, n=1,2,….,N}をフィルタ処理することを含め、当業者には知られているであろう多種多様なアプローチを利用できる。
【0070】
工程1208では、既知のパターン長「PatternLength」を用いて、パターン正規化サンプリング時間を以下のように導出できる。
【0071】
t_pattern_normalized=mod(t_normalized, PatternLength) (5)
【0072】
次に、工程1210において、{t_pattern_normalized, y}の組をt_pattern_normalizedに基づいて並べ替えて、{t_pattern, y_pattern}の組を生成できる。{t_pattern, y_pattern}の組は、リアル等価時間アクイジションからのリカバリ又は再現されたパターン波形を表す。いくつかの例では、このプロセス又は処理を用いて得られたリアル等価時間アクイジションからのパターン波形は、時間的に一定間隔でないことがある。しかし、いくつかの例では、パターン波形を時間的に一定間隔となるように再サンプリングしても良い。
【0073】
いくつかの例では、
図12に示すクロック・データ・リカバリの動作を、リアルタイム・オシロスコープで取り込まれたエイリアスのない信号のサンプルに用いても良い。
【0074】
数値的な例としては、SSCが有るか又は無い32ギガ・ボー(GBaud)のPAM4PRBS13Qデータ・パターンを生成する信号源からの信号が得られる。リアル等価時間モード又はリアル等価時間装置は、この信号を3.125GS/sでサンプリングする。この例のサンプル・レートは、32ギガ・ボーの信号を捕捉するためのアナログ帯域幅よりもはるかに低いため、サンプリングされた波形には、エイリアスが生じる。
【0075】
図13~15は、SSCオフで得られた信号のアイ・ダイアグラム1300、再現されたパターン波形の一部分のプロット1400、時間の関数としてのUIのプロット1500を夫々示す。SSCをオフにすると、システム・クロックは比較的安定する。アイ・ダイアグラム1300は、工程1202、1204及び1206で生成されたアイ・ダイアグラムの各々をプロットする。プロット1400は、工程1200を用いて再現された波形を示す。図示するように、パターン波形は、PRBS13Q信号を示している。
図15のプロット1500は、SSCがオフの状態で、システム・クロックとボー・レートがかなり安定していることを示している。
【0076】
図16~18は、SSCをオンにして得られた信号のアイ・ダイアグラム1600、再現されたパターン波形の一部のプロット1700、時間の関数としてのUIのプロット1800を夫々示す。SSCをオンにすると、
図18は、SSCがボー・レートに、約5000ppmまで下への広がりを提供することを示す。
図16のアイ・ダイアグラム1600は、
図13のアイ・ダイヤグラム1300とかなり近くマッチングしており、
図12に示した動作がSSCの大部分を除去することを示していることから、
図16~
図18は、
図12に図示し、上述した動作が、SSCの大部分を除去できることを図示している。
図12の動作において、ウィンドウ・サイズを変更すると、より開いたアイ・ダイアグラムを可能にする位相ロック・ループ(PLL)の様々な設定の影響をエミュレートする。
【0077】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0078】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0079】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0080】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
実施例
【0081】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0082】
実施例1は、アナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有するオシロスコープであって、反復パターンを有する被試験信号を受信するように構成された入力部と、被試験信号を受けて、複数の反復パターンにわたって上記被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングするように構成された単一のアナログ・デジタル・コンバータと、被試験信号の周波数を求め、求めた被試験信号の周波数及び上記サンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現(再構築)するよう構成された1つ以上のプロセッサとを具えている。
【0083】
実施例2は、実施例1のオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサが、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、被試験信号の周波数を決定するように構成されている。
【0084】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかのオシロスコープであって、ユーザから被試験信号の周波数を受けるように構成されたユーザ入力部を更に具える。
【0085】
実施例4は、実施例1~3のいずれかのオシロスコープであって、サンプル・レートが、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である。
【0086】
実施例5は、実施例4のオシロスコープであって、サンプル・レートが、毎秒2ギガ・サンプルから毎秒25ギガ・サンプルの間である。
【0087】
実施例6は、実施例1~5のいずれかのオシロスコープであって、単一のアナログ・デジタル・コンバータは、少なくとも12ビットのアナログ・デジタル・コンバータである。
【0088】
実施例7は、実施例1~6のいずれかのオシロスコープであって、上記1つ以上のプロセッサは、求めた上記周波数及び上記サンプル・レートに基づいて、再現された被試験信号における被試験信号のサンプリングされた構成要素夫々の対応する位置を決定することによって、被試験信号の求めた周波数及び上記サンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現(再構築)するよう構成される。
【0089】
実施例8は、実施例1~7のいずれかのオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートを調整し、アナログ・デジタル・コンバータに様々なサンプル・レートで被試験信号をサンプリングさせるように更に構成されている。
【0090】
実施例9は、実施例8のオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、様々なサンプル・レートでサンプリングされた被試験信号に基づいて、被試験信号の周波数を求めるように更に構成されている。
【0091】
実施例10は、アナログ帯域幅よりも低いナイキスト周波数を有するオシロスコープにおいて被試験信号を再現(再構築)する方法であって、反復パターンを有する被試験信号を受ける処理と、単一のアナログ・デジタル・コンバータを使用して複数の反復パターンにわたって被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングし、上記信号をデジタル化する処理と、サンプリングされた被試験信号の周波数を求める処理と、求めた周波数とサンプリング・レートに基づいてトリガを使用せずに被試験信号を再現する処理とを具えている。
【0092】
実施例11は、実施例10の方法であって、被試験信号の周波数を求める処理が、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整する処理を含む。
【0093】
実施例12は、実施例10又は11のいずれかの方法であって、ユーザ入力部から被試験信号の周波数を受ける処理を更に具える。
【0094】
実施例13は、実施例10~12のいずれかの方法であって、サンプル・レートは、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である。
【0095】
実施例14は、実施例13の方法であって、サンプル・レートは、毎秒2ギガ・サンプルと毎秒25ギガ・サンプルの間である。
【0096】
実施例15は、実施例10~14のいずれかの方法であって、単一のアナログ・デジタル・コンバータは、少なくとも12ビットのアナログ・デジタル・コンバータである。
【0097】
実施例16は、実施例10~15のいずれかの方法であって、アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートを調整し、上記アナログ・デジタル・コンバータに、様々なサンプル・レートで被試験信号をサンプリングさせる処理を更に具える。
【0098】
実施例17は、実施例16の方法であって、被試験信号の周波数を求める処理が、様々なサンプル・レートでサンプリングされた被試験信号に基づいて被試験信号の周波数を求める処理を含む。
【0099】
実施例18は、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、試験測定装置に、反復パターンを有する被試験信号を受ける処理と、単一のアナログ・デジタル・コンバータを用いて複数の反復パターンにわたって被試験信号を特定のサンプル・レートでサンプリングして信号をデジタル化する処理と、サンプリングされた被試験信号の周波数を求める処理と、求めた周波数とサンプリング・レートに基づいてトリガを使用せずに被試験信号を再現する処理とを行わせる命令を含んでいる。
【0100】
実施例19は、実施例18の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、上記試験測定装置に、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態になるまで、被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、被試験信号の周波数を求める処理を行わせる命令を更に含む。
【0101】
実施例20は、実施例18又は19のいずれかの1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、サンプル・レートは、毎秒1ギガ・サンプルと毎秒100ギガ・サンプルの間である。
【0102】
実施例21は、リアルタイム・モード及びリアル等価時間モードを有するオシロスコープであって、第1及び第2チャンネルと、第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータと、リアルタイム・モードの間、第1チャンネルを第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータの両方に電気的に結合し、第2チャンネルを第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータから電気的に切り離し、リアル等価時間モードの間、第1チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合し、第2チャンネルを第2アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合するよう構成される1つ以上のプロセッサとを具えている。
【0103】
実施例22は、実施例21のオシロスコープであって、リアル等価時間モードの間、1つ以上のプロセッサは、更に、第1チャンネルで受けた被試験信号の周波数を求め、被試験信号の求めた周波数及び第1アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現(再構築)するように構成される。
【0104】
実施例23は、実施例22のオシロスコープであって、被試験信号が、反復パターンを含む。
【0105】
実施例24は、実施例23のオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態に達するまで、被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、被試験信号の周波数を求めるように構成されている。
【0106】
実施例25は、実施例23又は24のいずれかのオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、更に、求めた周波数及びサンプル・レートに基づいて、再現された被試験信号中の被試験信号のサンプリングされた構成要素夫々の対応する位置を求めることによって、被試験信号の求めた周波数及びサンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現(再構築)するように構成されている。
【0107】
実施例26は、実施例23~25のいずれかのオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、更に、アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートを調整し、アナログ・デジタル・コンバータに、様々なサンプル・レートで被試験信号をサンプリングさせるように構成されている。
【0108】
実施例27は、実施例26のオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、更に、様々なサンプル・レートでサンプリングされた被試験信号に基づいて被試験信号の周波数を求めるように構成されている。
【0109】
実施例28は、実施例22~26のいずれかのオシロスコープであって、ユーザから被試験信号の周波数を受けるように構成されたユーザ入力部を更に具える。
【0110】
実施例29は、実施例21~28のいずれかのオシロスコープであって、複数のスイッチを更に具え、1つ以上のプロセッサは、試験測定装置のモードに基づいて、第1及び第2チャンネルを第1及び第2アナログ・デジタル・コンバータに電気的に結合するように、複数のスイッチの夫々を制御するように更に構成されている。
【0111】
実施例30は、実施例21~29のいずれかのオシロスコープであって、1つ以上のプロセッサは、更に、公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して第1周期を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、平均第1ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、サンプルの第1ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、サンプルの第1ウィンドウ及びサンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、正規化されたサンプリング時間に基づいて被試験信号を再現する処理とによって、リアルタイム・モード又はリアル等価時間モードのいずれかで被試験信号をサンプリングし、被試験信号を再現するように構成されている。
【0112】
実施例31は、オシロスコープにおいて被試験信号を再現する方法であって、被試験信号をサンプリングする処理と、被試験信号に基づいて公称ユニット・インターバル値を求める処理と、公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して第1周期値を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、平均第1ユニット・インターバルに近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、サンプルの第1ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、サンプルの第1ウィンドウ及びサンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、正規化されたサンプリング時間に基づいて被試験信号を再現する処理とを具えている。
【0113】
実施例32は、実施例31の方法であって、被試験信号が反復パターンを含む。
【0114】
実施例33は、実施例31又は32のいずれかの方法であって、被試験信号をサンプリングする処理は、被試験信号をサンプリングするアナログ・デジタル・コンバータのナイキスト周波数よりも大きいアナログ帯域幅を有する被試験信号を取り込む処理を含む。
【0115】
実施例34は、実施例31~33のいずれかの方法であって、サンプルの第2ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲は、サンプルの第1ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲よりも狭く、平均第2ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第3ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第3ウィンドウを取得する処理と、サンプルの第1ウィンドウ、サンプルの第2ウィンドウ及びサンプルの第3ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理とを更に具えている。
【0116】
実施例35は、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、試験測定装置に、リアルタイム・モードの間、第1チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータ及び第2アナログ・デジタル・コンバータの両方に電気的に結合させ、第2チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータ及び第2アナログ・デジタル・コンバータから電気的に切り離して、被試験信号を取り込む処理を行わせ、リアル等価時間モードの間、第1チャンネルを第1アナログ・デジタル・コンバータだけに電気的に結合し、第2チャンネルを第2アナログ・デジタル・コンバータだけに電気的に結合し、被試験信号を第1チャンネル又は第2チャンネルのいずれかで取り込む処理を行わせる命令を含む。
【0117】
実施例36は、請求項35の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、上記試験測定に、上記リアル等価時間モードの間に、第1チャンネルで受けた被試験信号の周波数を求める処理と、被試験信号の求めた周波数及び第1アナログ・デジタル・コンバータのサンプル・レートに基づいてトリガなしで被試験信号を再現する処理を行わせる命令を更に含んでいる。
【0118】
実施例37は、実施例36の1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、被試験信号は、反復パターンを含む。
【0119】
実施例38は、実施例38の1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、1つ以上のプロセッサが、アイ・ダイアグラムを自動的に生成し、アイ・ダイアグラムの水平開口部がその最も広い状態に達するまで、被試験信号の選択された周波数を繰り返し調整することによって、被試験信号の周波数を求めるように構成されている。
【0120】
実施例39は、実施例35~38のいずれかの1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、リアルタイム・モード又はリアル等価時間モードのいずれかの試験測定装置に、第1チャンネル又は第2チャンネルのいずれかで被試験信号をサンプリングする処理と、被試験信号に基づいて公称ユニット・インターバル値を求める処理と、公称ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して、第1周期値を有する平均第1ユニット・インターバル値を求める処理を含むサンプルの第1ウィンドウを取得する処理と、平均第1ユニット・インターバル値に近いユニット・インターバル値を推定して平均第2ユニット・インターバル値を求める処理を含む、サンプルの第1ウィンドウに関するユニット・インターバルの調査範囲よりも狭いユニット・インターバルの調査範囲を有するサンプルの第2ウィンドウを取得する処理と、サンプルの第1ウィンドウ及びサンプルの第2ウィンドウに基づいてサンプリング時間を正規化する処理と、正規化されたサンプリング時間に基づいて被試験信号を再現する処理とを行わせる命令を含んでいる。
【0121】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0122】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0123】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0124】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】