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  • 特表-ポンプモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/02 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
F04B37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022552479
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 IB2021051504
(87)【国際公開番号】W WO2021176301
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2003216.5
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ティエルリー マーカス ハンス ロバート
【テーマコード(参考)】
3H076
【Fターム(参考)】
3H076AA22
3H076AA37
3H076BB38
3H076CC47
3H076CC51
(57)【要約】
真空装置のためのポンプモジュールは、真空装置に真空密閉状態で結合することができるフランジと、少なくとも1つのイオンゲッターポンプと、少なくとも1つのボリュームゲッターポンプ(NEG)とを備え、イオンゲッターポンプは、フランジに直接結合され、NEGは、イオンゲッターポンプに直接結合され、NEG及びフランジは互いに離れて配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空装置に真空密閉状態で結合することができるフランジ(12)と、
少なくとも1つのイオンゲッターポンプ(18)と、
少なくとも1つのボリュームゲッターポンプ(NEG)(20)と、
を備える真空装置のためのポンプモジュールであって、
前記イオンゲッターポンプ(18)は、前記フランジ(12)に直接結合され、前記NEG(20)は、前記イオンゲッターポンプ(18)に直接結合され、前記NEG(20)及び前記フランジ(12)は互いに離れて配置される、ポンプモジュール。
【請求項2】
前記イオンゲッターポンプ(18)及び前記NEG(20)は、前記フランジ(12)の面の中に配置される、請求項1に記載のポンプモジュール。
【請求項3】
設置状態において、前記イオンゲッターポンプ(18)及び前記NEG(20)は、真空装置の中に突出する、請求項1又は2に記載のポンプモジュール。
【請求項4】
前記NEG(20)及び前記イオンゲッターポンプ(18)への供給ラインのための共通の導出部(22)が、前記フランジを貫通して設けられる、請求項1から3のいずれかに記載のポンプモジュール。
【請求項5】
前記フランジ(12)は、第1の側面(14)と、反対側の第2の側面(16)を有し、前記NEG(20)及び前記イオンゲッターポンプ(18)は、前記第1の側面(14)上に配置され、詳細には前記第1の側面(14)から突出する、請求項1から4のいずれかに記載のポンプモジュール。
【請求項6】
前記第1の側面(14)は、設置状態において真空装置の中にあり、前記第2の側面(16)は、設置状態において真空装置の外側に配置される、請求項5に記載のポンプモジュール。
【請求項7】
2以上のイオンゲッターポンプ(18.1、18.2)が設けられ、前記イオンゲッターポンプ(18.1、18.2)の各々は、前記フランジ(12)に直接結合される、請求項1から6のいずれかに記載のポンプモジュール。
【請求項8】
2以上のNEG(20.1、20.2)が設けられ、前記NEG(20.1、20.2)の各々は、前記イオンゲッターポンプ(18.1、18.2)に直接結合され、前記NEG(20.1、20.2)の各々及び前記フランジ(12)は互いに離れて配置される、請求項7に記載のポンプモジュール。
【請求項9】
少なくとも1つのイオンゲッターポンプ(18)は、前記フランジ(12)及び/又は前記NEG(20)に恒久的に結合され、詳細には本質的に一体的に結合される、請求項1から8のいずれかに記載のポンプモジュール。
【請求項10】
少なくとも1つのイオンゲッターポンプ(18)は、前記フランジ(12)及び/又は前記NEG(20)に取り外し可能に結合される、請求項1から9のいずれかに記載のポンプモジュール。
【請求項11】
フランジを有する真空装置であって、請求項1から10のいずれかに記載のポンプモジュール(10)が、前記フランジに結合される、真空装置。
【請求項12】
イオンゲッターポンプ(18)及びNEG(20)の両方が前記真空装置の中に突出する、請求項11に記載の真空装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置のためのポンプモジュール及びそのような真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業用及び科学用の機器及びシステムでは、10-7mbarより低い超高真空が必要とされる。真空装置でこのような真空を発生させるために、通常、異なるタイプのポンプを組み合わせたものが使用される。従って、通常、メインポンプ(粗引きポンプ又はバッキングポンプ)が設けられ、10-1mbar未満から10-3mbarまでの圧力の低真空を発生させる。メイン真空ポンプは、10-1mbar未満から10-8mbarまでの圧力を発生させるために高真空ポンプと組み合わされ、場合によっては10-7mbarより低い圧力を発生させるために超高真空ポンプ(UHVポンプ)と組み合わされる。このような場合、UHVポンプは、超高真空に必要な圧力を実現するための吸着ポンプを含む。もちろん、吸着ポンプは、イオンゲッターポンプ及びボリュームゲッター真空ポンプを含み、ボリュームゲッター真空ポンプは、ゲッターポンプ又はボリュームゲッターポンプとも呼ばれる。
【0003】
また、イオンゲッターポンプによって、多数のガスをポンプ送給することができる。一般に、イオンゲッターポンプは、2つの陰極と1つの陽極を有し、その間に高電圧が印加される。高電圧により電子は陰極から陽極に向かって加速され、その結果、ガス粒子をイオン化し、次に、イオン化されたガス粒子は陰極に向かって加速され、そこで吸着されるか、さもなければ陽極に到達し、そこでその運動エネルギーによって陽極に注入されるが、いずれの場合もガス圧に寄与することはない。永久磁石によって外部から加えられる磁場は、加速された電子によるガス粒子のイオン化の可能性を高める。この場合、イオンゲッターポンプのポンプ容量は、陽極及び陰極の大きさで表されるので、真空装置内で利用できる設置スペースに制限される。
【0004】
公知のボリュームゲッターポンプは、特に酸素、窒素、水素などの反応性ガス状媒体では化学収着の原理に基づいて動作するが、水素の場合は物理収着が優勢である。また、公知のボリュームゲッターポンプは、「非蒸発型ゲッター材料」(NEG)を有する。これらのボリュームゲッターポンプは、そのゲッター材料に基づいてNEGとして指定される。これらのポンプは、高い吸着速度を有し、結果的に高いポンプ速度を有し、通常、ポンプ速度は同じサイズのイオンゲッターポンプよりも高い。ボリュームゲッターポンプのさらなる利点は、水素をより効率的にポンプ送給できる点である。しかしながら、水素-炭素化合物に対するNEGのポンピング効果は低く、特にNEGは希ガスをポンピングできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、イオンゲッターポンプ及びボリュームゲッターポンプを備えた真空装置のためのポンプモジュールにおいて、コンパクト設計で、真空装置への結合が容易なポンプモジュールを作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載のポンプモジュール及び請求項11に記載の真空装置によって解決される。
【0007】
本発明による真空装置のためのポンプモジュールは、真空装置に真空密閉状態で結合することができるフランジを有する。本発明によれば、ポンプモジュールは、少なくとも1つのイオンゲッターポンプと、少なくとも1つのボリュームゲッターポンプ(非蒸発型ゲッターポンプ(NEG))とをさらに備える。この場合、イオンゲッターポンプは、フランジに直接結合される。さらに、NEGはイオンゲッターポンプに直接結合され、NEG及びフランジは互いに離れて配置される。従って、NEG及びフランジは、イオンゲッターポンプの反対側に配置され、イオンゲッターポンプに結合される。その結果、フランジを起点として、フランジ-イオンゲッターポンプ-NEGの順番で、積み重ね構造又は層状構造となる。具体的には、イオンゲッターポンプ及びNEGは、フランジ上の異なる位置で結合されることはない。その結果、イオンゲッターポンプ及びNEGを横並びに配置できるフランジ径を選択する必要がなく、イオンゲッターポンプ及びNEGのために2つのフランジを設ける必要もないため、小径のポンプモジュールとなる。この少ない数量及び小径を選択できる事実に起因して、真空装置又はフランジの気密性が高くなる。従って、真空装置の漏洩の発生が抑制される。その結果、ポンプモジュール用の小さなフランジを使用して、イオンゲッターポンプ及びNEGを省スペースで配置することが可能となり、これは、真空装置へ容易かつ低コストで溶接することができる。
【0008】
好ましくは、イオンゲッターポンプ及びNEGは、フランジの面の中に配置される。つまり、フランジは、NEGの基部面積及びイオンゲッターポンプの基部面積よりも大きい面を有する。このようにして、イオンゲッターポンプ及びNEGを備えたポンプモジュールは、フランジに導入し、それらをフランジと共に真空装置上に真空密閉状態でねじ留めすることができる。
【0009】
好ましくは、イオンゲッターポンプ及びNEGは、設置状態で真空装置の中に突出する。これは、効率的なポンプ性能を保証する。詳細には、イオンゲッターポンプ及びNEGは、フランジの真空装置から離れる方向を向いた側には取り付けられない又は結合されない。これは、イオンゲッターポンプ及び/又はNEGが真空装置から突出することを防ぎ、真空装置全体に必要な設置スペースを小さく抑えることができる。
【0010】
共通の導出部は、NEG及びイオンゲッターポンプへの供給ラインのためにフランジを貫通して設けることが好ましい。積み重ねられた構造は、供給ラインを真空装置の中に統合して、供給ラインが共通の導出部を通って導出することを特に容易にする。共通の導出部は、何らかの漏洩が低減されることを意味し、詳細には、さもなければ超高真空を効率的に達成する妨げとなる故障の潜在源の数及び/又は漏洩に対する脆弱性を低減する。
【0011】
好ましくは、フランジは、第1の側面と、反対側の第2の側面とを有し、NEG及びイオンゲッターポンプは、第1の側面に配置され、詳細には第1の側面から突出するように第1の側面に結合される。この場合、NEGは、さらにイオンゲッターポンプを介してフランジに単に間接的に結合される。従って、イオンゲッターポンプ及びNEGは、フランジの同じ側に配置される。詳細には、第1の側面は、設置状態で真空装置の中に配置されるので、第1の側面は真空中にある。一方、第2の側面は、設置状態で真空装置の外側に配置されるので、通常、大気圧にさらされる。
【0012】
好ましくは、2以上のイオンゲッターポンプが設けられ、各イオンゲッターポンプはフランジに直接結合される。ポンプモジュールのポンプ容量を増大させるためには、2以上のイオンゲッターポンプを設けることが必要な場合がある。その場合、これもフランジに結合して、各イオンゲッターポンプを例えば横並びに配置することができる。
【0013】
また、2以上のNEGを設け、各NEGをイオンゲッターポンプに直接結合し、各NEGをイオンゲッターポンプの1つによってフランジから離すことが好ましい。このポンプモジュール構成では、設けられるNEGの数は、常にイオンゲッターポンプの数よりも小さいか又は等しいので、NEG及びイオンゲッターポンプの各組み合わせに対して、ポンプモジュールのコンパクト設計をさらに発展させるために、本発明による直列又は積み重ね構造が選択される。
【0014】
別の方法として、少なくとも1つのNEGがフランジに直接結合されるような方法で、2以上のNEGを設けることもできる。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つのイオンゲッターポンプは、フランジに恒久的に結合され、詳細には、例えば溶接によってフランジに一体的に結合される。代替的に又は追加的に、少なくとも1つのイオンゲッターポンプは、NEGに恒久的に結合され、詳細には、例えば溶接によってNEGに一体的に結合される。また、イオンゲッターポンプは、フランジ及びNEGの両方に恒久的に結合され、詳細には、例えば溶接によってこれらに本質的に一体的に結合されることが好ましい。特に、設けられる全てのイオンゲッターポンプが、フランジ及び/又はNEGに同じ方法で結合されることが好ましい。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つのイオンゲッターポンプは、フランジに取り外し可能に結合される。代替的に又は追加的に、少なくとも1つのイオンゲッターポンプは、NEGに取り外し可能に結合される。詳細には、イオンゲッターポンプは、フランジ及びNEGの両方に取り外し可能に結合される。全てのイオンゲッターポンプがフランジ及び/又はNEGに取り外し可能に結合される場合が好ましい。このような取り外し可能な結合は、例えば、ねじ結合、スナップ嵌め、バヨネット結合又は同様の手段によって行うことができる。
【0017】
別の方法として、関連用途の特定の要件に応じて、フランジ、イオンゲッターポンプ、及びNEGの間に、取り外し可能な結合及び恒久的な結合を用いることができる。例えば、イオンゲッターポンプ及びフランジを恒久的に結合することで、特に単純かつしっかり固定したポンプモジュール構造を保証することができる。しかしながら、取り外し可能な結合により、例えば、設けられたNEG材料が消費された場合に、イオンゲッターポンプからNEGを独立して取り外して交換することが可能になる。
【0018】
本発明はさらに、フランジを有する真空装置に関し、上述したポンプモジュールがフランジに結合される。
好ましくは、イオンゲッターポンプ及びNEGの両方は、真空装置の中に突出する。
以下、本発明は、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づいてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるポンプモジュールの第1の実施形態である。
図2】本発明によるポンプモジュールの第2の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるポンプモジュール10は、第1の側面14と、第1の側面と反対側にある第2の側面16とを有するフランジ12を備える。フランジ12が真空装置(図示せず)に結合される場合、第1の側面14は、真空装置に面し、特に真空装置内に生じる真空にさらされる。第2の側面16は、大気圧にさらされ、真空装置の外側に配置される。フランジ12は、ねじ及びシールなどの公知の手段を用いて真空装置に真空密閉状態で結合することができる。
【0021】
イオンゲッターポンプ18は、フランジ12の第1の側面14に結合される。ボリュームゲッターポンプ(NEG)20は、イオンゲッターポンプ18のフランジ12側とは反対側に配置される。このように、フランジ12及びNEG20は、イオンゲッターポンプの反対端に配置される。つまり、NEG20は、フランジ12に直接結合されず、イオンゲッターポンプ18によって間接的に結合される。従って、設置状態では、イオンゲッターポンプ18及びNEG20は、真空装置の中に突出し、その内部でガスをポンプ送給するように配置される。
【0022】
フランジ12は、共通の導出部(lead-through)22をさらに有し、それによってイオンゲッターポンプ18の動作のための高電圧、並びにNEGの再生用の加熱要素のための低電圧が導かれる。つまり、1つの導出部だけが必要であり、超高真空装置の潜在的な漏洩箇所を低減することができる。
【0023】
NEG20、イオンゲッターポンプ18、フランジ12の積み重ね構造又は直列構造により、フランジの直径すなわち真空中に直接位置するフランジ面24の直径は、イオンゲッターポンプ18又はNEG20の基部面積と正確に一致するか、又はそれより若干大きくなるので、フランジ12の直径を小さく抑えることができる。従って、設置に際しては、NEG20及びイオンゲッターポンプ18は、フランジ開口部を介して導入され、フランジ12の真空装置への取り付けによって、真空装置にしっかり取り付けられる。
【0024】
図2は、さらなる実施形態を示す。ここでは、フランジ12の第1の側面14に、第1のイオンゲッターポンプ18.1及び第2のイオンゲッターポンプ18.2が配置される。この場合、イオンゲッターポンプ18は、フランジに直接結合される。それぞれのイオンゲッターポンプ18.1,18.2のフランジ12側と反対側の側面には、NEG20.1、20.2がそれぞれ配置される。つまり、ポンプモジュールのポンプ容量は、容易に2倍にすることができる。同時に、イオンゲッターポンプ18及びNEGの積み重ね配置又は直列配置により、コンパクトな構造が維持される。このようにして、コンパクトな設計でイオンゲッターポンプ及びNEGを組み合わせたポンプモジュールが作られる。
【符号の説明】
【0025】
12 フランジ
18 イオンゲッターポンプ
20 ボリュームゲッターポンプ(NEG)
図1
図2
【国際調査報告】