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特表2023-517545固体電解質、それを含む電気化学電池、及び固体電解質の製造方法
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  • 特表-固体電解質、それを含む電気化学電池、及び固体電解質の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】固体電解質、それを含む電気化学電池、及び固体電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/10 20060101AFI20230419BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230419BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230419BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20230419BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230419BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230419BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20230419BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H01B1/10
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/131
H01M4/136
H01B1/06 A
H01B1/08
H01B13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553161
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 KR2021001011
(87)【国際公開番号】W WO2021177598
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0028590
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】北島 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻村 知之
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンソク・キム
(72)【発明者】
【氏名】セボム・リュ
(72)【発明者】
【氏名】相原 雄一
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA05
5G301CA11
5G301CA14
5G301CA16
5G301CA17
5G301CA19
5G301CA27
5G301CA28
5G301CD01
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029DJ09
5H029EJ07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ19
5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB13
5H050DA02
5H050DA13
5H050EA15
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
下記化学式1で表され、アルジロダイト結晶構造を有する化合物を含む固体電解質、それを含む電気化学電池及び異意製造方法が提示される。
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、
0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x<3-(a+b)/2である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、アルジロダイト結晶構造を有する化合物を含む、固体電解質:
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、
0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x<3-(a+b)/2である。
【請求項2】
前記化学式1で、|2-(a+b+x)|≦1である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記化学式1で、1≦a/b≦1.5である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記化学式1でxは、0.1ないし1である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記化学式1の化合物が、下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載の固体電解質:
Li7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式2
化学式2で、0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、x<3-(a+b)/2である。
【請求項6】
前記化学式1の化合物が下記化学式3の化合物である、請求項1に記載の固体電解質:
Li5.3PS4.3-xClBr0.7 化学式3
化学式3で、0<x≦1である。
【請求項7】
前記化学式1の化合物が、下記化学式4の化合物、化学式5の化合物、化学式6の化合物、またはその組み合わせである、請求項1に記載の固体電解質:
Li5.5PS4.5-xCl0.75Br0.75 化学式4
化学式4で、0<x≦1であり、
Li5.5PS4.5-xCl0.5B 化学式5
化学式5で、0<x≦1であり、
Li5.3PS4.3-xCl0.7Br 化学式6
化学式6で、0<x≦1である。
【請求項8】
前記化学式1の化合物が、Li5.5PS4.30.2Cl0.75Br0.75、Li5.5PS4.10.4Cl0.75Br0.75、Li5.5PS3.51.0Cl0.75Br0.75、Li5.3PS4.20.1ClBr0.7、Li5.3PS4.10.2ClBr0.7、Li5.3PS4.00.3ClBr0.7、Li5.3PS3.90.4ClBr0.7、Li5.3PS3.80.5ClBr0.7、Li5.5PS4.30.2Cl0.5Br、Li5.5PS4.10.4Cl0.5Br、Li5.5PS3.51.0Cl0.5Br、Li5.3PS4.20.1Cl0.7Br、Li5.3PS4.10.2Cl0.7BrLi5.3PS4.00.3Cl0.7Br、Li5.3PS3.90.4Cl0.7Li5.3PS3.80.5Cl0.7Br、またはその組み合わせである、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記固体電解質の常温(25℃)で、イオン伝導度が1mS/cm以上である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項10】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配される固体電解質層と、を含み、
前記正極層、前記負極層及び前記固体電解質層のうちから選択された1以上が、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の固体電解質を含む、電気化学電池。
【請求項11】
前記正極層は、下記化学式1で表される化合物を含み、アルジロダイト結晶構造を有する固体電解質を含む、請求項10に記載の電気化学電池:
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、
0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x≦3-(a+b)/2である。
【請求項12】
前記正極層は、正極活物質、固体電解質及び導電材を含み、前記正極層において、固体電解質の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、2ないし70重量部である、請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項13】
前記電気化学電池は、4V以上条件において、45℃で50時間放置した後、容量維持率が90%以上である、請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項14】
前記負極層が、負極集電体、及び前記負極集電体上に配された負極活物質を含む第1負極活物質層を含み、
前記負極活物質が炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含む、請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項15】
前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素及び結晶質炭素のうちから選択された1以上を含み、
前記金属負極活物質または準金属負極活物質が、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含む、請求項14に記載の電気化学電池。
【請求項16】
前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間、及び固体電解質層と第1負極活物質層との間のうち1以上に配された第2負極活物質層をさらに含み、
前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である、請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項17】
前記正極層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、層状結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、オリビン結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、及びスピネル結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物のうちから選択された1以上である、請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項18】
前記電気化学電池は、全固体二次電池である、請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項19】
リチウム前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン原子(X)前駆体を混合し、前駆体混合物を提供する段階と、
前記前駆体混合物を反応させて熱処理する段階と、を含み、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の固体電解質を製造する、固体電解質の製造方法。
【請求項20】
前記熱処理が、250℃ないし700℃で実施される、請求項19に記載の固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、それを含む電気化学電池、及び固体電解質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求により、エネルギー密度と安全性とが高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器の分野だけではなく、自動車分野でも実用化されている。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含む電解液が利用されているために、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。従って、電解液の代わりに、固体電解質を利用した全個体電池が提案されている。
【0004】
全個体電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発が生じる可能性を大きく下げることができ、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べ、大きく安全性を高めることができる。
【0005】
全個体電池の固体電解質として、硫化物系固体電解質が使用される。ところで、該硫化物系固体電解質は、イオン伝導度低下なしに、耐酸化性とイオン伝導度とが満足されるレベルに至ることができず、それに対する改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面は、改善された酸化安定性とイオン度とを有する固体電解質を提供するものである。
【0007】
他の一側面は、前述の固体電解質を含み、エネルギー密度及び寿命特性が改善された電気化学電池を提供するものである。
【0008】
さらに他の一側面は、前記固体電解質の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面により、下記化学式1で表され、アルジロダイト(argyrodite)結晶構造を有する化合物を含む固体電解質が提供される。
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、
0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x<3-(a+b)/2である。
【0010】
他の側面により、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配される固体電解質層と、を含み、
前記固体電解質層が、前述の固体電解質を含む電気化学電池が提供される。
【0011】
さらに他の側面により、リチウム前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン原子(X)前駆体を混合し、前駆体混合物を提供する段階と、
前記前駆体混合物を反応させて熱処理する段階と、を含み、前述の固体電解質を製造する固体電解質の製造方法が提供される。
【0012】
前記熱処理は、250℃ないし700℃で実施されうる。
【発明の効果】
【0013】
一側面により、正極との界面安定性が改善され、酸化安定性が向上されながら、イオン伝導度にすぐれる固体電解質を提供することができる。そのような固体電解質を利用すれば、エネルギー密度及び寿命特性が向上された電気化学電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1ないし8、比較例1,2及び参照例1ないし10の固体電解質につき、常温におけるイオン伝導度を示した図である。
図2】実施例1ないし3、及び比較例1の酸化物のX線回折分析(XRD)スペクトルを示した図である。
図3】実施例9ないし11、及び比較例5の全固体二次電池において、容量維持率変化を示したグラフである。
図4】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
図5】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
図6】例示的な一具現例による全固体二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一具現例による固体電解質、それを含む固体電解質を含む電気化学電池及びその製造方法につき、さらに詳細に説明する。
【0016】
下記化学式1で表され、アルジロダイト(argyrodite)結晶構造を有する化合物を含む固体電解質が提供される。
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、
0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x<3-(a+b)/2である。
【0017】
化学式1で、a/bが前記範囲を外れれば、イオン伝導度が低下されて望ましくない。また、前記化合物が化学式1の条件を満たすことができなければ、硫黄が残存してしまう。そのように、硫黄が残存すれば、水分と反応し、硫化水素のような有毒ガスが生じてしまい、安全性及び安定性の問題が提起されてしまい、望ましくない。
【0018】
前記化学式1で、0<a≦2、0<b<2である。aは、0.1ないし1.5、0.1ないし1、0.2ないし1、0.3ないし0.85、または0.75ないし1である。bは、0.1ないし0.9、または0.7ないし0.75である。そして、化学式1で、塩素と臭素との総含量(a+b)は、例えば、0.1ないし4、例えば、1.5ないし1.7である。
【0019】
前記化学式1でa/bは、0.6ないし1.45、0.7ないし1.45、0.8ないし1.45、0.9ないし1.43、または1ないし1.43である。xは、0.2ないし1.0、0.3ないし1.0、0.4ないし1.0、または0.5ないし1.0である。
【0020】
アルジロダイト結晶構造を有する硫化物系固体電解質のイオン伝導度を高くするために、硫黄(S)に酸素(O)を導入することが提案された。ところで、そのような硫化物系固体電解質は、酸化安定性は、改善されるが、イオン伝導度が十分ではなく、それに対する改善が必要である。
【0021】
それにより、本発明者らは、前述の問題点を改善すべく、硫黄で酸素を置換しながら、硫黄の含量を、酸素の含量に比べて大きく制御しながら、2種のハロゲン原子であるClとBrとを、前述のように、所定の混合比で同時に導入した化合物を利用し、高い耐酸化性を維持しながら、イオン伝導度が改善された固体電解質を提供する。
【0022】
一具現例による固体電解質は、常温(25℃)におけるイオン伝導度が1mS/cm以上、5mS/cm以上、5.5mS/cm以上、6mS/cm以上、6.5mS/cm以上、7mS/cm以上、8mS/cm以上、4.0ないし20mS/cm、4.0ないし15mS/cm、または4.0ないし10mS/cmである。該固体電解質が、1mS/cm以上の高いイオン伝導度を有することにより、電気化学電池の電解質に適用可能である。
【0023】
前記化学式1の化合物は、前述のように、x≦3-(a+b)/2を満足し、該条件を満足するとき、化合物に硫黄(S)が残存しうる。
【0024】
また、前記化合物は、|2-(a+b+x)|≦1をさらに満足することができる。
【0025】
前記式は、例えば、|2-(a+b+x)|<1である。該条件を満足する化合物において、リン(P)が残ることになり、それにより、リチウムホスフェート(LPO)が生成されうる。該リチウムホスフェートは、低伝導特性を有し、そのようなリチウムホスフェートを含めば、該化合物は、全体的な伝導度を制御することができる。該化合物において、該リチウムホスフェート相は、X線回折分析を介して確認可能であり、回折角2θが、22ないし25°領域で観察される。
【0026】
また、前記固体電解質は、リチウム金属に対する安定性にすぐれ、正極層と電解質との界面反応による抵抗層発生が低減され、界面安定化効果を示す。前記固体電解質は、高電圧において安定しており、正極層と電解質との界面反応における副反応を低減させ、放電容量が増大し、寿命及びレート別の特性が向上された電気化学電池を製造することができる。
【0027】
一具現例によるアルジロダイト系固体電解質は、例えば、下記化学式2で表される化合物である。
Li7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式2
化学式2で、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0.5≦a/b≦1.5、x<3-(a+b)/2である。
【0028】
前記化学式2で、|2-(a+b+x)|≦1であり、前記式は、例えば、|2-(a+b+x)|<1である。
【0029】
前記化学式1の化合物は、例えば、Li5.3PS4.3-xClBr0.7(0<x≦1)、Li5.5PS4.5-xOxCl0.75Br0.75(0<x≦1)、またはその組み合わせである。ここで、xは、0.1ないし1.0、0.2ないし0.8、または0.3ないし0.6である。
【0030】
前記化学式1の化合物は、下記化学式3の化合物、下記化学式4の化合物、化学式5の化合物、化学式6の化合物、またはその組み合わせである。
Li5.3PS4.3-xClBr0.7 化学式3
化学式3で、0<x≦1であり、
Li5.5PS4.5-xCl0.75Br0.75 化学式4
化学式4で、0<x≦1であり、
Li5.5PS4.5-xCl0.5B 化学式5
化学式5で、0<x≦1であり、
Li5.3PS4.3-xCl0.7Br 化学式6
化学式6で、0<x≦1である。
【0031】
化学式1で表され、アルジロダイト結晶構造を有する化合物は、例えば、
Li5.5PS4.30.2Cl0.75Br0.75、Li5.5PS4.10.4Cl0.75Br0.75、Li5.5PS3.51.0Cl0.75Br0.75、Li5.3PS4.20.1ClBr0.7、Li5.3PS4.10.2ClBr0.7、Li5.3PS4.00.3ClBr0.7、Li5.3PS3.90.4ClBr0.7、Li5.3PS3.80.5ClBr0.7、Li5.5PS4.30.2Cl0.5Br、Li5.5PS4.10.4Cl0.5Br、Li5.5PS3.51.0Cl0.5Br、Li5.3PS4.20.1Cl0.7Br、Li5.3PS4.10.2Cl0.7BrLi5.3PS4.00.3Cl0.7Br、Li5.3PS3.90.4Cl0.7Li5.3PS3.80.5Cl0.7Br、またはその組み合わせである。
【0032】
一具現例による固体電解質は、全個体電池用電解質及び/または正極層電解質の素材としても使用される。そして、前記固体電解質は、リチウム・硫黄電池の正極層及び/または電解質としても利用される。
【0033】
一具現例による固体電解質は、正極電解質に利用され、リチウム金属電池用負極層保護膜としても利用される。
【0034】
他の一具現例による電気化学電池は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配される固体電解質層と、を含み、該固体電解質が、前述の固体電解質を含む。該固体電解質層が、前述の一具現例による固体電解質を含むことにより、正極との界面特性が改善され、耐酸化性が改善される。その結果、4V以上の条件において、45℃で50時間放置した後の容量維持率が90%以上、例えば、90ないし98%である。高温放置後の容量維持率の測定条件は、後述する評価例3に記載されている通りである。例えば、45℃において、初期一次充放電サイクルを実施し、4.25Vにおける定電流(CC)/定電圧(CV)の充電後、45℃で50時間放置後、2.5V定電流放電した場合の容量変化率を言う。
【0035】
また、一具現例による電気化学電池は、負極層が含むリチウム金属との副反応が抑制されるので、電気化学電池のサイクル特性が向上される。
【0036】
該電気化学電池は、例えば、全固体二次電池、またはリチウム空気電池でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されうる電気化学電池であるならば、いずれも可能である。
【0037】
一具現例による電気化学電池において正極層は、下記化学式1で表される化合物を含み、アルジロダイト結晶構造を有する固体電解質を含む。
(Li1-k7-(a+b)PS6-(a+b+x)ClBr 化学式1
化学式1で、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはその組み合わせであり、0.5≦a/b≦1.5、0<a<2、0<b<2、0<x≦1、0≦k<1であり、x<3-(a+b)/2である。
【0038】
前記式は、例えば、x<3-(a+b)/2でもある。
【0039】
該正極層において、前記固体電解質の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、2ないし70重量部、例えば、3ないし70重量部、例えば、3ないし60重量部、例えば、10ないし60重量部である。該正極層において、固体電解質の含量が前記範囲であるとき、電気化学電池の高電圧安定性が改善される。
【0040】
以下、一具現例による電気化学電池の一例として、全固体二次電池を挙げ、さらに詳細に説明する。
【0041】
図4ないし図6を参照すれば、全固体二次電池1は、負極集電体層21及び第1負極活物質層22を含む負極層20と、正極活物質層12を含む正極層10と、負極層20と正極層10との間に配された固体電解質層30と、を含む。正極層10は、一具現例による固体電解質を含むものでもある。正極層は、10は、例えば、正極活物質、固体電解質及び導電材を含む。
【0042】
(負極層)
図4ないし図6を参照すれば、負極層20は、負極集電体層21及び第1負極活物質層22を含み、第1負極活物質層22が負極活物質を含む。
【0043】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nmないし4μm以下、10nmないし3μm以下、10nmないし2μm以下、10nmないし1μm以下、または10nmないし900nm以下である。該負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時、リチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易でもある。該負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)径(D50)である。
【0044】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属、または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含む。
【0045】
炭素系負極活物質は、特に、非晶質炭素(amorphous carbon)である。該非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(CB:carbon black)、アセチレンブラック(AB:acetylene black)、ファーネスブラック(FB:furnace black)、ケッチェンブラック(KB:ketjen black)、グラフェンなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。該非晶質炭素は、結晶性を有さないか、あるいは結晶性が非常に低い炭素であり、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0046】
金属負極活物質または準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと、合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、該金属負極活物質ではない。
【0047】
第1負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、あるいは複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、あるいは金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上を含む。代案としては、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上との混合物を含む。該非晶質炭素と、金などとの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1でもあるが、必ずしもそのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。該負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上される。
【0048】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子と、金属または準金属からなる第2粒子との混合物を含む。該金属または該準金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。該準金属は、代案としては、半導体である。該第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%である。該第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上される。
【0049】
第1負極活物質層22は、例えば、バインダを含む。該バインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。該バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダによっても構成される。
【0050】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程において、第1負極活物質層22の体積変化、及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22の亀裂が抑制される。例えば、第1負極活物質層22がバインダを含まない場合、第1負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離されてしまう。負極集電体21から第1負極活物質層22が離脱された部分は、負極集電体21が露出され、固体電解質層30と接触することにより、短絡が生じる可能性が上昇する。第1負極活物質層22は、例えば、第1負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを、負極集電体21上に塗布して乾燥させて作製される。該バインダを第1負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することが可能である。
【0051】
第1負極活物質層の厚みd22は、例えば、正極活物質層の厚みd12の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下である。第1負極活物質層の厚みd22は、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmである。第1負極活物質層の厚みd22が過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上され難い。第1負極活物質層の厚みd22が過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下され、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上され難い。
【0052】
第1負極活物質層の厚みd22が低減すれば、例えば、第1負極活物質層22の充電容量も低減する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べ、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に少なければ、第1負極活物質層22の厚みが非常に薄くなるので、反復される充放電過程において、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上され難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下され、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上され難い。
【0053】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12における正極活物質の質量を乗じて得られる。該正極活物質が何種類か使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度X質量値を計算し、その値の和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も同じ方法によって計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22における負極活物質の質量を乗じて得られる。該負極活物質が何種類か使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、該正極活物質及び該負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。該全固体半電池を利用した充電容量測定により、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量が直接測定される。測定された充電容量を、それぞれ活物質の質量で割れば、充電容量密度が得られる。代案としては、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量は、最初サイクル充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0054】
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物のいずれも形成しない材料によって構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、電極集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。負極集電体21は、前述の金属のうち1種によって構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金または被覆材料によっても構成される。負極集電体21は、例えば、板状またはホイル(foil)の形態である。
【0055】
第1負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラ、分散剤、イオン導電材などをさらに含むことが可能である。
【0056】
図5を参照すれば、全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間に配される。薄膜24は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。薄膜24は、それら金属のうち一つで構成されるか、あるいはさまざまな種類の金属の合金によって構成される。薄膜24が負極集電体21上に配されることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される、例えば、第2負極活物質層23(図6)の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上されうる。
【0057】
薄膜の厚みd24は、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmである。薄膜の厚みd24が1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難くもなる。薄膜の厚みd24が過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵し、負極層20において、リチウムの析出量が減少し、全固体電池のエネルギー密度が低下され、全固体二次電池1のサイクル特性が低下されてしまう。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、負極集電体21上に配されうるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において、薄膜24を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【0058】
図6を参照すれば、全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21と固体電解質層30との間に配される第2負極活物質層23をさらに含む。全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配される第2負極活物質層23をさらに含む。図面に図示されていないが、全固体二次電池1は、充電により、例えば、固体電解質層30と第1負極活物質層22の間に配される第2負極活物質層23をさらに含む。図面に図示されていないが、全固体二次電池1は、充電により、例えば、第1負極活物質層22内部に配される第2負極活物質層23をさらに含む。
【0059】
第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。該金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、第2負極活物質層23は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用されるものであるならば、いずれも可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金のうち一つまたはリチウムによってもなるか、あるいはさまざまな種類の合金によってなる。
【0060】
第2負極活物質層の厚みd23は、特別に制限されるものではないが、例えば、1μmないし1000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。第2負極活物質層の厚みd23が過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫の役割を果たし難い。第2負極活物質層の厚みd23が過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下される可能性がある。第2負極活物質層23は、例えば、そのような範囲の厚みを有する金属ホイルでもある。
【0061】
全固体二次電池1において第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配されるか、あるいは全固体二次電池1の組み立て後、充電により、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。
【0062】
全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層であるので、リチウム貯蔵庫として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上される。例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配される。
【0063】
全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層23が配される場合、全固体二次電池1の組み立て時、第2負極活物質層23を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増大する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超えて充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。すなわち、第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動して来たリチウムイオンと、合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超えて充電を行えば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主に、リチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質が、リチウムと合金または化合物を形成する物質によって構成されることによって得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化され、正極層10方向に移動する。従って、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、第1負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するために、第2負極活物質層23、すなわち、金属層の保護層の役割を行うとともにに、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割を行う。従って、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層23が配される場合、負極集電体21及び前記第1負極活物質層22、並びにそれら間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)金属またはリチウム(Li)合金を含まないLiフリー(free)領域である。
【0064】
全固体二次電池1は、正極集電体21上に、第2負極活物質層23が配され、第2負極活物質層23上に、固体電解質層30が直接配される構造を有する。第2負極活物質層23は、例えば、リチウム金属層またはリチウム合金層である。
【0065】
固体電解質層30が、一具現例による固体電解質を含むことにより、リチウム金属層である第2負極活物質層23と固体電解質層30との副反応が抑制されるので、全固体二次電池1のサイクル特性が向上されうる。
【0066】
(固体電解質層)
図4ないし図6を参照すれば、固体電解質層30は、正極層10及と負極層20との間に配された一具現例による固体電解質を含む。
【0067】
該固体電解質は、一具現例による固体電解質以外に、従来の一般的な硫化物系固体電解質をさらに含むことが可能である。固体電解質は、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)のうちから選択された1以上の硫化物系固体電解質をさらに含む。該固体電解質がさらに含む硫化物系固体電解質は、非晶質であるか、結晶質であるか、あるいはそれらが混合された状態である。
【0068】
一般的な硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式7で表されるアルジロダイト型(argyrodite type)固体電解質をさらに含むものでもある。
Li 12-n-xn+2- 6-x 化学式7
前記化学式7で、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Yは、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCNまたはNであり、0<x<2である。
【0069】
アルジロダイト型固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0<x<2)、Li7-xPS6-xBr(0<x<2)及びLi7-xPS6-x(0<x<2)のうちから選択された1以上を含む。該アルジロダイト型固体電解質は、特に、LiPSCl、LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1以上を含む。
【0070】
固体電解質層30は、例えば、バインダをさらに含む。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と負極活物質層22とのバインダと同種でもあり、異なってもいる。
【0071】
(正極層)
正極層10は、正極集電体11及び正極活物質層12を含む。
【0072】
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイルなどを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0073】
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、あるいは異なる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。一具現例によれば、前記固体電解質は、一具現例による固体電解質を含む。
【0074】
正極層10は、正極活物質を含み、該正極活物質は、リチウムイオンを、可逆的に吸蔵し(absorb)かつ放出する(desorb)ことができる化合物であり、例えば、層状結晶構造(layered crystal structure)を有するリチウム遷移金属酸化物、オリビン結晶構造(olivine crystal structure)を有するリチウム遷移金属酸化物、及びスピネル結晶構造(spinel crystal structure)を有するリチウム遷移金属酸化物のうちから選択された1以上である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)・リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)・リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)・リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)・リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)・リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)・リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)のようなリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄、または酸化バナジウムなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、正極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。該正極活物質は、それぞれ単独であるか、あるいは2種以上の混合物である。
【0075】
該リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-bB’(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-bB’2-c(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’4-c(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI’O;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。そのような化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。該コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物である。該コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内において選択される。該コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に十分に理解されうる内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0076】
該正極活物質は、例えば、前述のリチウム遷移金属酸化物において、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。該層状岩塩型構造は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが交互に規則的に配され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。該立方晶岩塩型構造は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(FCC:face centered cubic lattice)が互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAlzO(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上される。
【0077】
正極活物質は、前述のように、被覆層によって覆われてもいる。該被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであるならば、いずれでもよい。該被覆層は、例えば、LiO-ZrOなどである。
【0078】
該正極活物質が、例えば、LiNiCoAlzO(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態におけるサイクル特性が向上される。
【0079】
該正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形などの粒子形状である。該正極活物質の粒径は、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極層に適用可能な範囲である。
【0080】
正極層10は、前述の正極活物質及び固体電解質以外に、例えば、導電材、バインダ、フィラ、分散剤、イオン伝導性助剤のような添加剤をさらに含むことが可能である。そのような導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、炭素ファイバ、金属粉末などである。該バインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどである。正極層10に配合可能なコーティング剤、分散剤、イオン伝導性助剤などとしては、一般的に、固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用する。
【0081】
以下、一具現例による固体電解質の製造方法について述べる。
【0082】
一具現例による固体電解質の製造方法は、リチウム前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン原子(X)前駆体を混合し、前駆体混合物を提供し、前記前駆体混合物を反応させ、固体電解質前駆体を得て熱処理して製造することができる。
【0083】
前記ハロゲン原子前駆体のXは、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはそれらの組み合わせである。
【0084】
該リチウム前駆体は、例えば、LiSなどを挙げることができ、該リン前駆体は、例えば、P、レッドホスホラス(red phosphorus)、ホワイトホスホラス(white phosphorus)、ホスホラスパウダー(phosphorus powder)、P、(NHHP0、(NH)HP0、NaHP0、NaP0などを使用することができる。
【0085】
X前駆体は、例えば、リチウムハライドとして、LiClとLiBrとを使用する。
前駆体混合物には、M前駆体がさらに付加されうる。該M前駆体のMは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせである。
【0086】
前述のリチウム前駆体、リン前駆体、ハロゲン原子前駆体及びM前駆体の含量は、目的物の組成により、化学量論的にも制御される。
【0087】
前記前駆体混合物の反応は、例えば、混合物を反応させ、固体電解質前駆体を得て、それを250ないし700℃の温度範囲で行われうる。
【0088】
熱処理温度は、例えば、300ないし700℃、400ないし650℃、400ないし600℃、400ないし550℃、または400ないし520℃の範囲である。該熱処理を前記温度範囲で実施すれば、アルジロダイト系結晶構造を有する固体電解質を得ることができる。
【0089】
混合物を反応させる方法は、特別に限定されていないが、例えば、機械的ミリング法(MM:mechanical milling)である。例えば、機械的ミリング法を使用する場合、ボールミルなどを利用し、LiS、Pのような出発原料を撹拌させて反応させることにより、固体電解質前駆体を製造する。機械的ミリング法の撹拌速度及び撹拌時間は、特別に限定されるものではないが、撹拌速度が速いほど、固体電解質前駆体の生成速度が速くなり、撹拌時間が長いほど、固体電解質前駆体への原料転換率が高くなる。
【0090】
次に、機械的ミリング法などによって得られた固体電解質前駆体を、所定温度で熱処理した後で粉砕し、粒子形状の固体電解質を製造する。該固体電解質がガラス転移特性を有する場合は、熱処理により、非晶質から結晶質に変わることが可能である。熱処理温度は、例えば、400ないし600℃である。そのような熱処理温度を有することにより、均一な組成の固体電解質が容易に得られる。
【0091】
熱処理時間は、熱処理温度によって異なり、例えば、1ないし100時間、10ないし80時間、20ないし28時間、または24時間である。そのような範囲の熱処理時間で得られる固体電解質において、優秀なイオン伝導度と高温安定性とが同時に得られる。
熱処理雰囲気は、不活性雰囲気である。該熱処理雰囲気は、窒素、アルゴンなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、不活性雰囲気として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0092】
他の一具現例による全固体二次電池製造方法は、前述の方法によって固体電解質を製造し、製造された固体電解質を利用し、例えば、正極層10、負極層20及び/または固体電解質層30をそれぞれ製造した後、そのような層を積層することによって製造する。
前記固体電解質30の厚みは、10ないし200μm、10ないし100μm、15ないし90μm、例えば、15ないし80μmである。固体電解質の厚みが前記範囲であるとき、全固体二次電池の高率特性及び寿命特性の改善効果にすぐれる。
【0093】
(負極層の製造)
第1負極活物質層22を構成する材料である負極活物質、導電材、バインダ、固体電解質などを、極性溶媒または非極性溶媒に添加し、スラリーを準備する。準備されたスラリーを負極集電体21上に塗布して乾燥させ、第1積層体を準備する。次に、乾燥された第1積層体を加圧し、負極層20を準備する。該加圧は、例えば、ロール加圧(roll press)、平板加圧(flat press)などであるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野で使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧段階は、省略可能である。
【0094】
前記負極層20は、負極集電体21、及び前記負極集電体上に配された負極活物質を含む第1負極活物質層22を含み、前記負極活物質が炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または準金属負極活物質のうちから選択された1以上を含み、前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素及び結晶質炭素(crystalline carbon)のうちから選択された1以上を含む。そして、前記金属負極活物質または前記準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群のうちから選択される1以上である。
【0095】
前記負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間、及び固体電解質層30と第1負極活物質層22との間のうち1以上に配された第2負極活物質層23をさらに含み、前記第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。
【0096】
(正極層の製造)
正極活物質層12を構成する材料である正極活物質、導電材、バインダ、固体電解質などを非極性溶媒に添加し、スラリーを製造する。製造されたスラリーを、正極集電体11上に塗布して乾燥させる。得られた積層体を加圧し、正極層10を製造する。該加圧は、例えば、ロール加圧、平板加圧、静水圧を利用した加圧などであるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野で使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧工程は、省略してもよい。代案としては、正極活物質層12を構成する材料の混合物をペレット(pellet)形態に圧密化成形するか、あるいはシート形態に延伸(成形)することにより、正極層10を作製する。そのような方法により、正極層10を作製する場合、正極集電体11は、省略されうる。
【0097】
(固体電解質層の製造)
固体電解質層30は、一具現例による固体電解質を含む。
【0098】
固体電解質層30は、前述の固体電解質以外に、全固体二次電池で使用される一般的な硫化物系固体電解質をさらに含むものでもある。
【0099】
一般的な硫化物系固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質、溶媒及びバインダを混合して塗布し、乾燥させて加圧して作製することができる。代案としては、前述の硫化物系固体電解質製造方法で得られた硫化物系固体電解質を、例えば、エアロゾル蒸着(aerosol deposition)法、コールドスプレー(cold spray)法、スパッタリング法のような公知の成膜法を利用して蒸着することにより、固体電解質を作製することができる。代案としては、該固体電解質は、固体電解質粒子単体(simple substance)を加圧して作製することができる。
【0100】
(全固体二次電池の製造)
前述の方法で作製した正極層10、負極層20及び固体電解質30を、正極層10と負極層20とが固体電解質30を挟むように積層して加圧することにより、全固体二次電池1を作製する。
【0101】
例えば、正極層10上に固体電解質層30を配し、第2積層体を準備する。次に、固体電解質層30と第1負極活物質層22とが接触するように第2積層体上に負極20を配して第3積層体を準備し、第3積層体を加圧し、全固体二次電池10を製造する。該加圧は、例えば、常温(20℃ないし25℃)ないし90℃の温度の温度で行われる。代案としては、加圧が100℃以上の高温で行われる。該加圧が加えられる時間は、例えば、30分以下、20分以下、15分以下または10分以下である。該加圧が加えられる時間は、1msないし30分、1msないし20分、1msないし15分、または1msないし10分である。該加圧方法は、例えば、静水圧加圧(isotactic press)、ロール加圧、平板加圧などであるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野で使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧時に加えられる圧力は、例えば、500MPa以下、400MPa以下、300MPa以下、200MPa以下または100MPa以下である。加圧時に加えられる圧力は、例えば、50MPaないし500MPa、50MPaないし480MPa、50MPaないし450MPa、50MPaないし400MPa、50MPaないし350MPa、50MPaないし300MPa、50MPaないし250MPa、50MPaないし200MPa、50MPaないし150MPa、または50MPaないし100MPaである。そのような加圧により、例えば、固体電解質粉末が焼結され、1つの固体電解質を形成する。
【0102】
以上で説明された全固体二次電池の構成及び作製方法は、実施例の一例であり、構成部材及び作製手続きなどを適切に変更することができる。
【0103】
以下においては、実施例及び比較例を参照し、実施例と係わる固体電解質の製造方法に対して具体的に説明する。付け加えて、以下に示す実施例は、例示的な目的に提供されるものであるのみ、本発明は、下記のような例に限定されるものではない。
【0104】
(固体電解質の製造)
実施例1
Ar雰囲気のグローブボックス(glove box)内で、リチウム前駆体であるLiS、リン前駆体であるP、ハロゲン原子前駆体であるLiCl、LiBr及びLiOを混合し、前駆体混合物を得て、前駆体混合物を製造するとき、LiS、P、LiCl、LiBrの含量を、化合物(Li5.5PS4.30.2Cl0.75Br0.75)を得ることができるように化学量論的に制御し、それぞれ秤量した後、ジルコニア(YSZ)ボールを含むAr雰囲気の遊星ボールミル(planetary ball mill)でもって、100rpmで1時間粉砕して混合した後、次に、800rpmで30分間粉砕して混合し、混合物を得た。得られた混合物を短軸圧力(uniaxial pressure)でプレスし、厚み約10mm及び直径約13mmのペレットを準備した。準備されたペレットを金箔で覆った後、カーボンるつぼに入れ、カーボンるつぼを、石英ガラス管を利用して真空封入した。真空封入されたペレットを、電気炉を利用し、常温から450℃まで1.0℃/分で昇温した後、500℃で12時間熱処理した後、1.0℃/分で室温まで冷却させ、固体電解質を得た。
【0105】
実施例2ないし実施例8
下記表1の固体電解質を得ることができるように、LiS、P、LiCl及びLiBrの含量を化学量論的に変化させたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、固体電解質を得た。
【0106】
比較例1ないし4
下記表1の比較例1ないし4の固体電解質を得ることができるように、実施例1と同一方法によって実施し、固体電解質を得た。
【0107】
【表1】
【0108】
製造例1
aLiO-ZrOコーティング膜を有する正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942号に開示された方法によって製造するが、下記方法によって製造されたものを使用した。
【0109】
正極活物質LiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)、リチウムメトキシド、ジルコニウムプロポキシド、エタノールと、アセトアセト酸エチルとの混合液内で30分間撹拌して混合し、aLiO-ZrO(a=1)のアルコール溶液(aLiO-ZrO被覆用塗布液)を製造した。ここで、該リチウムメトキシド及び該ジルコニウムプロポキシドの含量は、正極活物質の表面に被覆されるaLiO-ZrO(a=1)の含量が0.5モル%になるように調節した。
【0110】
次に、前記aLiO-ZrO被覆用塗布液を、前述の正極活物質微細粉末と混合し、その混合溶液を撹拌しながら、40℃ほどに加熱し、アルコールなどの溶媒を蒸発乾燥させた。そのとき、該混合溶液には、超音波を照射した。
【0111】
前記過程を実施し、正極活物質微細粉末の粒子表面に、aLiO-ZrOの前駆体を担持させることができた。
【0112】
また、正極活物質の粒子表面に担持されたaLiO-ZrO(a=1)の前駆体を、約350℃で1時間、酸素雰囲気下で熱処理した。その熱処理過程において、正極活物質上部に存在するaLiO-ZrO(a=1)の前駆体が、aLiO-ZrO(a=1)に変化した。LiO-ZrO(LZO)の含量は、LiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)100重量部を基準にし、約0.4重量部である。
【0113】
前述の製造過程によれば、aLiO-ZrOコーティング膜を有するLiNi0.8Co0.15Mn0.0(NCM)を得ることができた。aLiO-ZrOにおいてaは、1である。
【0114】
(全固体二次電池の製造)
実施例9
(正極層)
正極活物質として、製造例1によって得たLiO-ZrO(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。
【0115】
固体電解質として、実施例1で製造された固体電解質粉末を準備した。導電材として、炭素ナノファイバ(CNF)を準備した。そのような材料を、正極活物質:固体電解質:導電材=60:35:5の重量比で混合し、混合物をシート形態に大きく成形し、正極シートを製造した。製造された正極シートを1、8μm厚のカーボンコーティングされたアルミニウムホイルからなる正極集電体上に圧着して正極層を製造した。正極活物質層の厚みは、約100μmであった。
【0116】
(負極層)
負極層として、厚みが約30μmであるリチウム金属を利用した。
【0117】
(固体電解質層)
結晶性である(crystalline)アルジロダイト系固体電解質(LiPSCl)に、固体電解質の100重量部に対し、1重量部のスチレン・ブタジエンゴム(SBR)バインダを追加して混合物を準備した。その混合物に、キシレンとジエチルベンゼンとを添加しながら撹拌し、スラリーを製造した。製造されたスラリーを、不織布上にブレードコータ(blade coater)を利用して塗布し、空気中で40℃温度で乾燥させ、積層体を得た。得られた積層体を、40℃で12時間真空乾燥させた。以上の工程により、固体電解質層を製造した。
【0118】
負極層上に該固体電解質層を配し、該固体電解質層上に正極層を配し、積層体を準備した。準備された積層体に対し、25℃で100MPaの圧力で、10分間平板加圧処理した。そのような加圧処理により、固体電解質層が焼結され、電池特性が向上された。
【0119】
実施例10ないし16
正極層の製造時、実施例1の固体電解質の代わりに、実施例2ないし8の固体電解質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例9と同一方法により、全固体二次電池を製造した。
【0120】
実施例17
正極層の製造時、正極活物質:固体電解質:導電材=60:35:5の重量比で混合する代わりに、正極活物質:固体電解質:導電材=85:10:5の重量比で混合したことを除いては、実施例9と同一に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0121】
実施例18
正極層の製造時、正極活物質:固体電解質:導電材=60:35:5の重量比で混合する代わりに、正極活物質:固体電解質:導電材=55:40:5の重量比で混合したことを除いては、実施例9と同一に実施し、全固体二次電池を製造した。
【0122】
比較例5ないし8
正極層において、実施例1の固体電解質の代わりに、比較例1ないし4の固体電解質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例9と同一方法により、全固体二次電池を製造した。
【0123】
比較例9ないし16
下記表2の比較例10ないし17の固体電解質を得ることができるように、実施例1と同一方法によって実施し、固体電解質を得た。
【0124】
【表2】
【0125】
評価例1:イオン伝導度測定
実施例1ないし8、及び比較例1,2で製造された固体電解質の粉末を、直径10mmのフレームに入れ、350mPaの圧力で加圧してペレットに成形し、試片を準備した。
準備された試片の両面に、厚み50μm及び直径13mmのインジウム(In)電極をそれぞれ配し、対称セル(symmetry cell)を準備した。該対称セルの準備は、Ar雰囲気のグローブボックスで進められた。
【0126】
インジウム電極が両面に配された試片に対し、インピーダンス分析機(Material Mates 7260 impedance analyzer)を使用し、2プローブ法でペレットのインピーダンスを測定した。周波数範囲は、0.1Hzないし1MHz、振幅電圧は、10mVであった。Ar雰囲気の25℃で測定した。インピーダンス測定結果に係わるナイキスト線図(Nyguist plot)の円弧(arc)から抵抗値を求め、試片の面積と厚みとを考慮し、イオン伝導度を計算した。
【0127】
図1には、実施例1ないし8の固体電解質備えイオン伝導度を比較する、下記表4に示された参照例1ないし10の固体電解質のイオン伝導度(J. Power Sources 410-411 (2019) 162, Z.Zhang et al.)を共に示した。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
図1及び表3から分かるように、実施例1ないし8の固体電解質は、参照例1ないし10の固体電解質と比較し、常温(25℃)において、イオン伝導度が大きく改善された。特に、実施例4ないし7の固体電解質は、比較例1及び2の固体電解質と比較し、向上されたイオン伝導度を示した。
【0131】
実施例1の固体電解質は、25℃の温度において、比較例1の固体電解質と比較し、改善されたイオン伝導度を具現し、実施例2の固体電解質は、1mS/cm以上のイオン伝導度を具現し、全個体二次電池用固体電解質に適するイオン伝導度を有していることを確認することができた。
【0132】
また、実施例3の固体電解質に係わるイオン伝導度を、前記実施例1と同一方法によって評価した。該評価結果、実施例3の固体電解質は、実施例1の固体電解質と類似したレベルのイオン伝導度を具現した。
【0133】
また、比較例9ないし16の固体電解質のイオン伝導度を、前記実施例1,2及び比較例1,2の固体電解質のイオン伝導度と同一方法によって測定し、その結果を下記表5に示した。
【0134】
【表5】
【0135】
図1及び表5の結果を参照するとき、実施例1ないし8の固体電解質は、比較例9ないし16の固体電解質と比較し、イオン伝導度が大きく改善されることが分かった。
【0136】
評価例2:X線回折(XRD)分析
実施例1、実施例2及び比較例1で製造された固体電解質につき、XRD(X-ray diffraction)スペクトルを測定し、その結果を図1に示した。X線回折分析は、Bruker社のD8 Advanceを利用して実施し、XRDスペクトル測定にCu Kα放射線を使用した。
【0137】
図1を参照し、実施例1ないし3の固体電解質は、比較例1の場合と同様に、アジドダイト結晶構造を有するということが分かった。そして、実施例3の酸化物は、図1から分かるように、低伝導LiPOが形成された。低伝導LiPOは、回折角2θが22°ないし23°である領域で観察された。
【0138】
評価例3:耐酸化性
実施例9ないし11、及び比較例5の全固体二次電池の充放電特性を、次の充放電試験によって評価した。
【0139】
該充放電試験は、全固体二次電池を45℃のチャンバに入れて行った。
【0140】
第1サイクルは、電池電圧が4.25Vになるまで、0.1Cの定電流、及び4.25V定電圧で、0.05C電流値になるまで充電した。次に、電池電圧が2.5Vになるまで、0.1Cの定電流で放電を実施した。
【0141】
第1サイクルの放電容量を、標準容量(standard capacity)にした。
【0142】
第2サイクルは、電池電圧が4.25Vになるまで、0.1Cの定電流、及び4.25V定電圧で50時間充電した。次に、電池電圧が2.5Vになるまで0.1Cの定電流で放電を実施した。
【0143】
第2サイクルの放電容量を維持容量(retention capacity)で決めた。
【0144】
第3サイクルは電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流及び4.25V定電圧で0.05C電流値になるまで充電した。以後50時間放置した後次に、電池電圧が2.5Vになるまで0.1Cの定電流で放電を実施した。
【0145】
第3サイクルの放電容量を回復容量(recoverycapacity)に定めた。
【0146】
各サイクルごとに、充電段階後及び放電段階後、10分間休止期を置いた。
【0147】
実施例9ないし11、及び比較例5の全固体二次電池の高温保管後の容量維持率を図3に示した。図3において、標準(standard)は、標準容量を示し、回復(recovery)は、回復容量を示す。
【0148】
高温保管後の容量維持率は、下記数式1から計算される。
容量維持率(%)=[回復容量/標準容量]×100 数式1
【0149】
図3から分かるように、実施例9ないし11の全固体二次電池は、比較例5の全固体二次電池と異なり、容量維持率特性が改善されることが分かった。
【0150】
また、実施例7及び実施例8の固体電解質を採用した実施例15及び実施例16の全固体二次電池に係わる高温保管後の容量維持率を、前述の実施例9の全固体二次電池の高温保管後の容量維持率と同一方法によって実施した。その評価結果を下記表6に示した。表6には、実施例9ないし11、及び比較例5の全固体二次電池の高温保管後の容量維持率を共に示した。
【0151】
【表6】
【0152】
表6を参照すれば、実施例15及び16の全固体二次電池は、実施例9ないし11の場合と同様に、比較例5の全固体二次電池と比較し、高温保管後の容量維持率が向上されたことを確認することができた。また、比較例2ないし4の固体電解質を採用した比較例6ないし8の全固体二次電池につき、前述の実施例1の全固体二次電池の容量回復率の評価方法と同一に実施し、高温保管後の容量維持率を評価した。
【0153】
該評価結果、比較例6ないし8の全固体二次電池は、比較例5の全固体二次電池と比較し、容量回復率が同等なレベルを示した。そのように、化学式1の化合物に、ハロゲン原子1種のみを導入した化合物を含む比較例7及び8の固体電解質を採用した全固体二次電池は、比較例5の場合と同様に、高温放置後の容量回復率が88%以下と、耐酸化性が低下された結果を示した。
【0154】
以上を介し、一具現例について説明されたが、それらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付図面の範囲内において、さまざまに変形して実施することが可能であり、それらも、発明の範囲に属するということは、言うまでもないのである。
【符号の説明】
【0155】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体、負極集電体層
22 第1負極活物質層
23 第2負極活物質層
24 薄膜
30 固体電解質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】