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特表2023-518756光学部材およびそれを含む光学表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】光学部材およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230426BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230426BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20230426BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230426BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230426BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20
G02B1/111
C08L25/08
C08K5/00
C08L33/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556165
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2021003782
(87)【国際公開番号】W WO2021194305
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037164
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039564
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スン ハク
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チェ スン
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4J002
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA18
2H148AA24
2H148AA25
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA19
2H148CA23
2H148CA24
2K009AA02
2K009AA15
4J002BC041
4J002BG051
4J002EU026
4J002FD096
4J002GP00
(57)【要約】
基材フィルムおよび前記基材フィルムの下部面に積層された光透過調節層を含み、前記光透過調節層は、最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料または染料の混合物;および水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂を含有するものである、光学部材およびそれを含む光学表示装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムおよび前記基材フィルムの下部面に積層された光透過調節層を含み、
前記光透過調節層は、最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料または染料の混合物;および水酸基値(OH value)が5mgKOH/g以下の樹脂を含有するものである、光学部材。
【請求項2】
前記基材フィルムを含み、前記光透過調節層の上部面に積層される積層体は、反射率が約5%以下のものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記積層体は、前記基材フィルムおよび前記基材フィルムの上部面に積層された、低屈折率層、高屈折率層、ハードコート層の1種以上の層を含むものである、請求項2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、熱および/または光に対する反応性官能基を有さない樹脂を含むものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項5】
前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基の1種以上を有さない樹脂を含むものである、請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、シアノ基(-C≡N)を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、非置換の炭素数5~10のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、非置換の芳香族ビニル系単量体、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する芳香族ビニル系単量体の1種以上を含む単量体混合物のポリマーを含むものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項7】
前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、メチル(メタ)アクリレート-スチレン-(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリアリーレン系樹脂の1種以上を含むものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項8】
前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニリデンフルオリド系樹脂の1種以上を含むものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項9】
前記光透過調節層は、前記第1染料を含有するものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項10】
前記第1染料は、ポルフィリン系染料を含むものである、請求項9に記載の光学部材。
【請求項11】
前記第1染料は、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して約0.0001重量部~約10重量部で含まるものである、請求項9に記載の光学部材。
【請求項12】
前記光透過調節層は、前記第2染料、前記第3染料、前記第4染料の1種以上をさらに含むものである、請求項9に記載の光学部材。
【請求項13】
前記第2染料はメロシアニン系染料で、前記第3染料はボロンジピロメテン系染料で、前記第4染料はフタロシアニン系染料である、請求項12に記載の光学部材。
【請求項14】
前記光透過調節層において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、前記第2染料は約0重量部~約10重量部、前記第3染料は約0重量部~約10重量部、前記第4染料は約0重量部~約10重量部である、請求項12に記載の光学部材。
【請求項15】
前記光透過調節層は、光安定剤をさらに含むものである、請求項1に記載の光学部材。
【請求項16】
前記光学部材は、下記数式1の光透過率の変化量が5%以下で、下記数式2の反射率の変化量が1%以下である、請求項1に記載の光学部材:
【数1】

(前記数式1で、光透過率の変化量の絶対値の総和は、光透過調節層に含有されるそれぞれの染料の最大吸収波長において下記数式1-1で表される値の総和である。
【数2】

(前記数式1-1で、T0は染料の最大吸収波長における光学部材の初期光透過率(単位:%)
T1は、染料の最大吸収波長における光学部材に対して耐光信頼性評価後の光透過率(単位:%))、
【数3】

(前記数式2で、R0は光学部材の初期反射率(単位:%)
R1は、光学部材に対して耐光信頼性評価後の反射率(単位:%))。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学部材を含む、光学表示装置。
【請求項18】
前記光学表示装置は、前記光学部材の下部面に量子ドット層および光散乱粒子を含む層、または量子ドットおよび光散乱粒子を含むパネルをさらに備えるものである、請求項17に記載の光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材およびそれを含む光学表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、バックライトユニットから出た光が液晶パネルを通じて出射されることにより作動する。しかし、液晶表示装置は、液晶の特性上、リアルブラック(real black)の具現が容易ではないため、コントラストの限界が発生することから、天然色を再現するための新たなディスプレイに対する開発が行われている。これに対する改善として、量子ドット(QD,quantum dot)粒子をバックライトユニットに適用して輝度および色再現性を向上させたり、自発光OLED等を適用してリアルブラックを具現する製品が市販されており、また、改善も行われている。
【0003】
このような新たな試みのうち、近年新たな開発方向としてバックライトユニットの代わりにブルー波長の光を発光するブルー光源を使用し、液晶パネルの液晶の代わりに量子ドット粒子を使用することにより、リアルブラックおよび色再現性を改善したディスプレイの開発が行われている。しかし、このようなディスプレイは、外光による明室でのコントラストが低下するため、反射率の改善が必要な状況にある。
【0004】
ブルー光源と量子ドット粒子を使用するディスプレイの場合は、ブルー光源のブルー波長が量子ドット粒子を励起させることにより、レッドとグリーン波長の光を発生させることができる。このとき、量子ドット粒子を含む量子ドット含有層には、TiO等のような光散乱粒子を一緒に使用することにより、バックライトユニットから出たブルー波長は光散乱粒子によって光散乱が発生して発光効率をさらに増加させ、より鮮明なレッドとグリーン波長の光が発生するようになる。
【0005】
しかし、パネルがブラック状態、つまり電源がoff状態では、外部光がディスプレイに入射されるとTiO等の光散乱粒子が外部光をむしろ散乱させることにより、反射光を発生させてブラック視感を阻害するようになる。このような散乱によるブラック視感を改善するために選択的波長吸収染料を適用したりカーボンブラック等を使用して外光による反射率を改善することができる。カーボンブラックの場合は、耐光信頼性に優れ、可視光全体波長領域の光を遮断して反射率は改善し得るが、全体の透過率が低くなるという問題点がある。
【0006】
本発明の背景技術は、日本公開特許第2015-010192号等に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐光信頼性評価後の反射率変化を下げることができる光学部材を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、耐光信頼性評価後の光透過率変化を下げることができる光学部材を提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、光散乱粒子を含む被着体に積層する際、光学表示装置画面のブラック視感を改善する光学部材を提供することである。
【0010】
本発明のまた別の目的は、反射率を著しく下げることにより、反射色感を改善し、全体光透過率が高い光学部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点は、光学部材である。
【0012】
1.光学部材は、基材フィルムおよび前記基材フィルムの下部面に積層された光透過調節層を含み、前記光透過調節層は、最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料または染料の混合物;および水酸基値(OH value)が5mgKOH/g以下の樹脂を含有する。
【0013】
2.1において、前記基材フィルムを含み、前記光透過調節層の上部面に積層される積層体は、反射率が約5%以下になり得る。
【0014】
3.1~2において、前記積層体は、前記基材フィルムおよび前記基材フィルムの上部面に積層された、低屈折率層、高屈折率層、ハードコート層の1種以上の層を含み得る。
【0015】
4.1~3において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、熱および/または光に対する反応性官能基を有さない樹脂を含み得る。
【0016】
5.4において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基の1種以上を有さない樹脂を含み得る。
【0017】
6.1~5において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、シアノ基(-C≡N)を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、非置換の炭素数5~10のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、非置換の芳香族ビニル系単量体、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する芳香族ビニル系単量体の1種以上を含む単量体混合物のポリマーを含み得る。
【0018】
7.1~6において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、メチル(メタ)アクリレート-スチレン-(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリアリーレン系樹脂の1種以上を含み得る。
【0019】
8.1~7において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニリデンフルオリド系樹脂の1種以上を含み得る。
【0020】
9.1~8において、前記光透過調節層は、前記第1染料を含有し得る。
【0021】
10.9において、前記第1染料は、ポルフィリン系染料を含み得る。
【0022】
11.9~10において、前記第1染料は、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して約0.0001重量部~約10重量部で含まれ得る。
【0023】
12.9~12において、前記光透過調節層は、前記第2染料、前記第3染料、前記第4染料の1種以上をさらに含み得る。
【0024】
13.12において、前記第2染料はメロシアニン系染料で、前記第3染料はボロンジピロメテン系染料で、前記第4染料はフタロシアニン系染料になり得る。
【0025】
14.12~13において、前記光透過調節層において、前記水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、前記第2染料は約0重量部~約10重量部、前記第3染料は約0重量部~約10重量部、前記第4染料は約0重量部~約10重量部になり得る。
【0026】
15.1~14において、前記光透過調節層は、光安定剤をさらに含み得る。
【0027】
16.1~14において、前記光学部材は、下記数式1の光透過率の変化量が5%以下で、下記数式2の反射率の変化量が1%以下になり得る:
【0028】
【数1】
【0029】
(前記数式1で、光透過率の変化量の絶対値の総和は、光透過調節層に含有されるそれぞれの染料の最大吸収波長において下記数式1-1で表される値の総和である。
【0030】
【数2】
【0031】
(前記数式1-1で、T0は染料の最大吸収波長における光学部材の初期光透過率(単位:%)
T1は、染料の最大吸収波長における光学部材に対して耐光信頼性評価後の光透過率(単位:%))、
【0032】
【数3】
【0033】
(前記数式2で、R0は光学部材の初期反射率(単位:%)
R1は、光学部材に対して耐光信頼性評価後の反射率(単位:%))。
【0034】
本発明の別の観点は、光学表示装置である。
【0035】
17.光学表示装置は、本発明の光学部材を含む。
【0036】
18.17において、前記光学表示装置は、前記光学部材の下部面に量子ドット層および光散乱粒子を含む層、または量子ドットおよび光散乱粒子を含むパネルをさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、耐光信頼性評価後の反射率の変化を下げることができる光学部材を提供する。
【0038】
本発明は、耐光信頼性評価後の光透過率の変化を下げることができる光学部材を提供する。
【0039】
本発明は、光散乱粒子を含む被着体に積層時する際の光学表示装置画面のブラック視感を改善する光学部材を提供する。
【0040】
本発明は、反射率を著しく下げることにより反射色感を改善し、全体の光透過率が高い光学部材を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[発明を実施するための最善の形態]
添付の実施例を参考して本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明を詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されるのではない。
【0042】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0043】
本明細書において、数値範囲記載時の「X~Y」は、「X以上Y以下」(X≦、そして≦Y)を意味する。
【0044】
本明細書において、樹脂の「水酸基値(OH value)」は、樹脂に対してJISK8004-1961による無水酢酸-ピリジン方法を用いて測定された値である。
【0045】
測定器具:三角フラスコ(200mL)、空気冷却管(30cm)、ピペット(5mL,10mL)、ビュレット(50mL)、およびオイルバス(oil bath)
測定方法:三角フラスコに樹脂(約1g)と5mLの無水酢酸-ピリジン混合液(無水酢酸20mLにピリジンを添加して400mLにしたもの)20mLを入れ、5回以上振盪させた後に冷却器を付着してオイルバスで1時間30分反応させた。蒸留水1mLを添加し、5回以上振盪させた後、10分間、加水分解促進のためにオイルバスにそのまま放置した。オイルバスから取り出し、常温で10分間放置した後、アセトン10mLで冷却器の内壁を洗浄し、5回以上振盪させ、フェノールフタレイン指示薬約3~4滴を添加して0.5N(mol/L)KOH標準溶液(水酸化カリウムエタノール溶液)で滴定した。樹脂の水酸基値は下記の計算式を用いて計算した:
【0046】
【数4】
【0047】
(前記計算式で、Bは、空試験(試料を含まない場合)に使用した0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
Cは、滴定に使用した0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
fは、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の濃度係数(factor)
Sは、樹脂試料の質量(g)
D:酸価
本明細書において、染料の「最大吸収波長(λmax)」は、メチルエチルケトン中の10ppm濃度の染料溶液に対して吸光度を測定した時の最大吸光度が示す波長を意味する。前記最大吸光度は、当業者に知られている方法に従って測定することができる。
【0048】
本明細書において、基材フィルムを含む積層体の「反射率」は、前記積層体中の基材フィルム側に屈折率1.46~1.50を有する粘着剤が形成されたNitto樹脂のCL-885ブラックアクリルシートを70℃でラミネートして製造された試片に対して、反射率測定機を使用して反射モードで、波長380nm~780nmの領域で測定した反射率の平均反射率を意味する。反射率測定機は、Perkin Elmer社のUV/VIS spectrometer Lambda 1050が使用できるが、これに制限されるのではない。
【0049】
本明細書において、光学部材の「反射率」は、散乱反射率(SCE,Specular Component Exclude)であり、SCE Mode測定方法で測定された値を意味する。
【0050】
本明細書において、光学部材の「耐光信頼性」評価は、光学部材に対してXenon Test Chamber(Q-SUN)で[光源ランプ:Xenonランプ、照射波長:340nm、照射強度:0.35W/cm、照射温度:63℃、照射時間:500時間、照射方向:基材フィルムを含む積層体側から照射]の条件で、照射する前と照射した後の光学部材の光透過率の変化量または反射率の変化量を評価したものである。
【0051】
本明細書において、光学部材の「数式1の光透過率の変化量」は、前記耐光信頼性評価で照射する前と照射した後において、光学部材の光透過調節層中の含有染料それぞれの最大吸収波長で光透過率の変化量の絶対値を測定し、(光透過率の変化量の絶対値の総和)/(光透過調節層中の含有染料の個数)から計算された光透過率の変化量の平均値を意味する。
【0052】
本明細書において、光学部材の「数式2の反射率の変化量」は、前記耐光信頼性評価で照射する前と照射した後において、上述の方法で測定された光学部材の反射率の変化量の絶対値を意味する。
【0053】
本発明の発明者は、量子ドットおよび光散乱粒子(例:TiO)を含む被着体に被着される光学部材として、電源offの状態では外部光中の前記光散乱粒子によって散乱される光を吸収して画面のブラック視感を改善し、電源onの状態では光透過率を高めて光学表示装置の内部光の光効率と輝度を高め、反射率を著しく下げ、反射色感を改善できると同時に、光透過率と反射率共に耐光信頼性を改善できる光学部材を開発した。
【0054】
以下、本発明の一実施例にかかる光学部材を説明する。
【0055】
光学部材は、基材フィルムおよび前記基材フィルムの下部面に積層された光透過調節層を含み、前記光透過調節層は、最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料または染料の混合物;および水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂を含有する。
【0056】
光学部材は、反射率が低い。光学部材は、反射率が約0.5%以下、例えば約0%超過約0.1%以下になり得る。前記範囲で、光散乱粒子(例:TiO)を含む被着体に積層する際の反射色感を改善し、優れた外観を提供することができる。最も好ましくは、光学部材は反射率が約0%超過約0.12%以下になり得る。
【0057】
光学部材は、基材フィルムを含む積層体よりも反射率が低い。これは下記で詳述するように、本発明の光透過調節層によって具現され得る。一般的に、被着体に前記積層体を積層させることにより、反射率を下げることができる。一方、本発明では染料含有光透過調節層をさらに含むことにより、基材フィルムを含む積層体に比べて光学部材の反射率をさらに下げることができる。光透過調節層は、光学部材の反射率をさらに下げることができる。これについては、下記で詳述する。
【0058】
一具体例において、基材フィルムを含む積層体と光学部材間の反射率の差は約2.0%以下、具体的には約0%超過約2.0%以下、より具体的には約0%超過約1.0%以下になり得る。前記範囲で、反射防止効果を奏し得る。
【0059】
光透過調節層は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂を含有する。水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、反射率の変化および光透過率の変化共に光学部材の耐光信頼性を改善することができる。反射率と光透過率は、本発明の光学部材の用途でのように量子ドットおよび光散乱粒子(例:TiO)を含む被着体に被着される光学部材において、光学表示装置の画面品質等を決定する主要要因となる。本発明の光学部材は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂を使用することにより、耐光信頼性を改善することができた。前記水酸基値5mgKOH/g以下は、下記で詳述する染料、または染料の混合物を含む光透過調節層で耐光信頼性を評価した際の反射率と光透過率の変化量を下げることができるように選択された値である。
【0060】
一具体例において、耐光信頼性に関して、光学部材は下記数式1の光透過率の変化量が5%以下、具体的には0%~5%、より具体的には0%~3%、0%~1.5%になり得る。前記範囲で、光学部材は耐光信頼性に優れるため光学表示装置の信頼性を高めることができる:
【0061】
【数5】
【0062】
(前記数式1で、光透過率の変化量の絶対値の総和は、光透過調節層に含有されるそれぞれの染料の最大吸収波長において下記数式1-1で表される値の総和である。
【0063】
【数6】
【0064】
(前記数式1-1で、T0は染料の最大吸収波長における光学部材の初期光透過率(単位:%)
T1は、染料の最大吸収波長における光学部材に対して耐光信頼性評価後の光透過率(単位:%))、
一具体例において、耐光信頼性に関して、光学部材は下記数式2の反射率の変化量が1%以下、具体的には0%~1%、より具体的には0%~0.05%になり得る。前記範囲で、光学部材は耐光信頼性に優れるため光学表示装置の信頼性を高めることができる:
【0065】
【数7】
【0066】
(前記数式2で、R0は光学部材の初期反射率(単位:%)
R1は、光学部材に対して耐光信頼性評価後の反射率(単位:%))。
【0067】
光学部材は、最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料または染料の混合物を含有する。好ましくは、光学部材は第1染料を必須的に含有する。前記最大吸収波長を有する染料を含むことにより、光散乱粒子を含む被着体に光学部材を積層させた際、外部光による光の散乱を全て吸収することにより、外部光の反射率をさらに下げてブラック視感を改善し、色再現率を高めることができる。また、前記染料を含むことにより、光学部材の反射率を、基材フィルムを含む積層体単独に比べてより下げることができる。
【0068】
基材フィルムを含む積層体
以下、基材フィルムを含む積層体の一具体例を説明する。
【0069】
基材フィルムを含む積層体は、反射率が約5%以下、例えば約0%超過約3%以下、具体的には約0%超過約0.5%以下、より具体的には約0%超過約0.3%以下になり得る。前記範囲で、本発明の光透過調節層と積層する際の反射色感の改善効果および光透過率範囲に到達する効果を奏し得る。
【0070】
一具体例において、基材フィルムを含む積層体は、上述の反射率を有し得る反射防止フィルムを採用することができる。
【0071】
基材フィルムを含む積層体は、基材フィルムおよび基材フィルムの上部面に積層された反射防止層を含むことができる。
【0072】
基材フィルムは、光学的に透明な光学フィルムを含むことができる。例えば、基材フィルムは、波長380nm~780nmで光透過率が約95%以上、具体的には約95%~約100%になり得る。
【0073】
基材フィルムは、トリアセチルセルロース等を含むセルロースエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を含むポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂の1種以上で形成されたフィルム等を含むことができる。好ましくは、トリアセチルセルロースフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することができる。
【0074】
基材フィルムの厚さは、約10μm~約500μm、例えば約50μm~約300μm、具体的には約50μm~約150μmになり得る。前記範囲で、光透過調節層、反射防止層を支持する効果を奏し得る。
【0075】
基材フィルムは、無延伸フィルムでもよいが、所定の1軸または2軸延伸を通じて延伸させて所定範囲の位相差を有するフィルムでもよい。例えば、基材フィルムは、波長550nmで面内位相差Reが0nm~15,000nm、好ましくは無位相差フィルムであってReが0nm~10nmになり得る。前記Reは、(nx-ny)xd(nx,nyは、波長550nmにおける基材フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率で、dは基材フィルムの厚さ)によって計算される値である。
【0076】
反射防止層は、低屈折率層、高屈折率層、ハードコート層の1種以上の層を含むことができる。
【0077】
反射防止層は、低屈折率層だけからなったり、低屈折率層を含み得る。
【0078】
低屈折率層は、基材フィルムおよび/または下記で詳述する高屈折率層との屈折率の差によって前記積層体の反射率を下げることができる。
【0079】
低屈折率層は、硬化型バインダー樹脂、フッ素原子含有モノマーおよび平均粒子径5nm~300nmの微粒子(例えば、中空シリカ)を含有しており、低屈折率層の厚さは、0.01μm~0.15μmになり得る。低屈折率層の屈折率は1.20~1.40になり得る。
【0080】
低屈折率層の一面、つまり、低屈折率層の上部面には機能性コーティング層がさらに形成されることにより、光学部材に追加的な機能を提供することができる。機能性コーティング層は、耐指紋性層、帯電防止層、ハードコート層、アンチグレア層、バリア層等を含むことができるが、これに制限されるのではない。
【0081】
反射防止層は、高屈折率層をさらに含むことができる。
【0082】
高屈折率層は、基材フィルムと低屈折率層間に形成されて基材フィルムと低屈折率層間の屈折率を有することにより、前記積層体の反射率を下げることができる。高屈折率層は、基材フィルムおよび低屈折率層とそれぞれ直接的に形成されている。
【0083】
高屈折率層は、厚さが0.05μm~20μm、屈折率が1.45~2で、JIS-K7361に規定されるヘーズ値が基材フィルムのヘーズ値と違いがなかったり、或いは基材フィルムのヘーズ値との差が10%以下であると、透明性に優れ、且つ反射防止性に優れ得る。
【0084】
反射防止層は、ハードコート層をさらに含んでもよい。
【0085】
ハードコート層は、前記積層体の硬度を高めることにより、前記積層体を光学表示装置の最外郭に使用してもスクラッチ等が発生しないようにすることができる。ハードコート層は、必ずしも備えなければならないものではない。高屈折率層または低屈折率層で目標とする硬度を確保できるのであれば、ハードコート層は省略することができる。
【0086】
ハードコート層は、基材フィルムと高屈折率層間、または基材フィルムと低屈折率層間に形成することができる。
【0087】
ハードコート層は、平均粒子径が1nm~30nmで粒度分布範囲が平均粒子径±5nm以下の範囲にある金属酸化物超微粒子が硬化したバインダー中に均一に混合されてなる硬化層である。ハードコート層は、厚さが1μm~15μmで、ハードコート層は屈折率が1.54以上になり得る。
【0088】
前記積層体は、厚さが50μm~500μm、例えば50μm~300μm、具体的には50μm~150μmになり得る。前記範囲で、光学表示装置に使用することができる。
【0089】
好ましくは、前記積層体は基材フィルムおよび基材フィルム上に順に形成されたハードコート層、高屈折率層および低屈折率層を含むことができる。これを通じて、下記で詳述するように、光学部材が上部偏光板がない光学表示装置に適用されても、外部衝撃による光学部材の破損を防止することができる。
【0090】
光透過調節層
以下、光透過調節層の一具体例を説明する。
【0091】
一具体例において、光透過調節層は、基材フィルムの下部面に「直接的に積層」されている。前記「直接的に積層」は、光透過調節層と基材フィルム間に任意の粘着層、接着層または粘接着層が形成されてないことを意味する。光学部材は、光透過調節層に基材フィルムが直接的に形成されることにより、光学部材の薄型化効果を達成することができる。
【0092】
別の具体例において、光学部材に追加的な機能を提供するために、基材フィルムと光透過調節層間に任意の別の光学素子または光学層、或いは機能層がさらに積層されてもよい。例えば、基材フィルムと光透過調節層間に水分および/または酸素を遮断するためのバリア層がさらに積層され得る。
【0093】
光透過調節層は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂および下記で詳述する染料または染料の混合物を含有する。下記で詳述する染料、染料の混合物は、本発明の光学部材の用途で必須的に含まれなければならない。下記で詳述する染料、染料の混合物は、詳述する耐光信頼性評価時の光学部材の光透過率の変化量および反射率の変化量を高めることができる。しかし、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、耐光信頼性評価後の光学部材の反射率の変化量および光透過率の変化量を著しく下げることができる。
【0094】
水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、水酸基値が0mgKOH/g~5mgKOH/g、例えば、0,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9または5mgKOH/g、具体的には、0mgKOH/g~4.5mgKOH/g、0.1mgKOH/g~1mgKOH/gになり得る。前記範囲で、耐光信頼性評価後の光学部材の反射率の変化量および光透過率の変化量を著しく下げることができ、製造が容易であるという効果を奏し得る。
【0095】
一具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、非硬化性樹脂を含むことができる。別の具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は硬化性樹脂を含むことができる。
【0096】
水酸基値5mgKOH/g以下は、下記で詳述する単量体を使用して樹脂を製造する際、単量体の種類、重合時の単量体のモル比率、重合温度および/または重合時間等を調節することにより達成できる。
【0097】
一具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、熱および/または光に対する反応性官能基、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基の1種以上を有さない樹脂を含むことができる。水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、硬化剤、開始剤(例:光開始剤、熱開始剤の1種以上)を使用せず溶媒キャスト法によって光透過調節層のマトリックスを形成できる樹脂を含むことができる。
【0098】
別の具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、熱および/または光に対する反応性官能基、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基の1種以上を有する樹脂を含むことができる。但し、エポキシ基、水酸基、カルボン酸基は、樹脂の水酸基値が5mgKOH/g以下になる限度内で樹脂に含まれなければならない。
【0099】
水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ガラス転移温度が約40℃~約200℃になり得る。前記範囲で、本発明の光透過調節層のガラス転移温度に到達し得、光透過調節層のブリトル(brittle)現象を改善することができる。好ましくは、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ガラス転移温度が、例えば、約40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190、または200℃、約100℃~約200℃になり得る。
【0100】
一具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、熱および/または光に対する反応性官能基を有さない、(メタ)アクリル系単量体またはビニル系単量体を含む単量体、または単量体混合物のポリマーを含み得る。前記ポリマーは、ホモポリマーまたはヘテロポリマーを含み得る。前記「ホモポリマー」はポリマーを構成する単量体が同じポリマーであり、「ヘテロポリマー」はポリマーを構成する単量体が2種以上のポリマーである。
【0101】
前記単量体または単量体混合物は、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、シアノ基(-C≡N)を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、非置換の炭素数5~10のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、非置換の芳香族ビニル系単量体、非置換の炭素数1~10のアルキル基を有する芳香族ビニル系単量体の1種以上を含み得る。
【0102】
前記単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、イソプロフェニルトルエン、イソプロフェニルメチルベンゼン、イソプロフェニルエチルベンゼンの1種以上を含み得る。
【0103】
前記単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルをさらに含んでもよい。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、エステル部位に1個以上の水酸基を有する炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含み得る。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、当業者に知られている通常の種類を採用することができる。但し、前記単量体中、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含量は、水酸基値が5mgKOH/g以下になるようにする範囲内で含まれなければならない。
【0104】
一具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリアルキル(メタ)アクリル系樹脂等を含むポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂、スチレン-アクリロニトリル(SAN)系樹脂、メチルメタアクリレート-スチレン-アクリロニトリル(m-SAN)系樹脂等を含むメチル(メタ)アクリレート-スチレン-(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリアリーレン系樹脂の1種以上を含み得る。
【0105】
別の具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、ポリカーボネート(PC)系樹脂、熱可塑性ポリウレタン(TPU)系樹脂等を含むポリウレタン系樹脂、非改質されたポリビニリデンフルオリド(PVDF)系樹脂、改質されたポリビニリデンフルオリド(modified-PVDF)系樹脂等を含むポリビニリデンフルオリド系樹脂の1種以上を含み得る。
【0106】
また別の具体例において、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂は、上述で羅列した樹脂と水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物から重合された(形成された)樹脂になり得る。このとき、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含量は、樹脂の水酸基値が5mgKOH/g以下になる限度内で含まれなければならない。
【0107】
光透過調節層は、光源から入射される光の透過を調節して本発明の光学部材の効用性を高くすることができる。また、光透過調節層は、基材フィルムを含む積層体単独に比べて反射率をさらに下げることにより、光学部材を使用する場合、反射色感も改善することができる。そのために、光透過調節層は最大吸収波長が約540nm~約630nmの第1染料、最大吸収波長が約390nm~約470nmの第2染料、最大吸収波長が約480nm~約530nmの第3染料、最大吸収波長が約640nm~約760nmの第4染料の1種以上を含む染料、または染料の混合物を含有する。
【0108】
好ましくは、光透過調節層は第1染料を必須的に含有する。このとき、光透過調節層は、第2染料、第3染料、第4染料の1種以上をさらに含むことができる。一具体例において、光透過調節層は、第2染料をさらに含むことができる。別の具体例において、光透過調節層は、第2染料と第3染料をさらに含むことができる。また別の具体例において、光透過調節層は、第2染料、第3染料および第4染料をさらに含むことができる。
【0109】
第1染料は、最大吸収波長が約540nm~約630nmであり、ネオン(neon)波長における光を遮断することにより反射色感を改善し、色再現率を高めることができ、本発明の光学部材の反射率をさらに下げることができる。好ましくは、第1染料は最大吸収波長が約540,550,560,570,580,590,600,610,620または630nm、約580nm~約610nmになり得る。
【0110】
第1染料を含有することにより、光学部材は波長540nm~630nm領域で光透過率の最小値が約2%~約70%、より具体的には、約2%~約40%、約5%~約20%になり得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射視感改善効果を奏することができる。
【0111】
第1染料は、光透過調節層中に、約0.0001重量%~約10重量%、例えば、0.0001,0.0005,0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量%、好ましくは約0.001重量%~約1重量%で含まれ得る。前記範囲で、反射視感改善と反射率減少効果を奏することができる。より好ましくは、第1染料は光透過調節層中に、約0.001重量%~約0.5重量%、より好ましくは約0.01重量%~約0.1重量%で含まれ得る。前記範囲で、光学部材の耐光信頼性の改善効果がより表れ得る。
【0112】
第1染料は、ポルフィリン系、ローダミン系、スクアリン系、シアニン系、アントラキノン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系の1種以上を含み得る。例えば、第1染料は、ポルフィリン系、ローダミン系、スクアリン系、シアニン系の1種以上、具体的には、テトラアザポルフィリン系染料を含むことができる。
【0113】
一具体例において、第1染料はポルフィリン系染料になり得る。この場合、別の波長領域の光透過率に影響を与えないと共に、色再現率を高め、コントラストを高めつつ、反射色感を改善してブラック視感を高めることができる。
【0114】
一具体例において、ポルフィリン系染料は、下記化学式1で表すことができる:
【0115】
【化1】
【0116】
(前記化学式1で、
Mは、Zn,V,Ag,Cu,Co,Pd,InまたはTiで、
,L,L,Lは、それぞれ独立して、単一結合または2価の連結基で、
,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数10のアルキル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルキル基、炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、炭素数2~炭素数10のアルケニル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のアルキニル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数1~炭素数10のアルキルチオ基、炭素数6~炭素数20のアリールエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリールチオエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリール基、炭素数2~炭素数10のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン、炭素数1~炭素数10のハロアルキル基、炭素数2~炭素数10のハロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のハロアルキニル基、シアノ基、炭素数2~炭素数10のアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基または炭素数1~炭素数10のシリル基である)。
【0117】
一具体例において、第1染料は、テトラアザポルフィリン系染料になり得る。この場合、別の波長領域の光透過率に影響を与えないと共に、色再現率を高め、コントラストを高めつつ、反射色感を改善してブラック視感を高めることができる。テトラアザポルフィリン系染料は、下記化学式2で表すことができる。
【0118】
【化2】
【0119】
(前記化学式2で、
Mは、Zn,V,Ag,Cu,Co,Pd,InまたはTiで、
,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数10のアルキル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルキル基、炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、炭素数2~炭素数10のアルケニル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のアルキニル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数1~炭素数10のアルキルチオ基、炭素数6~炭素数20のアリールエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリールチオエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリール基、炭素数2~炭素数10のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン、炭素数1~炭素数10のハロアルキル基、炭素数2~炭素数10のハロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のハロアルキニル基、シアノ基、炭素数2~炭素数10のアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基または炭素数1~炭素数10のシリル基である)。
【0120】
第1染料は、前記化学式1、化学式2でそれぞれ置換基を調節することによって具現することができる。
【0121】
光透過調節層中、第1染料は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0.0001重量部~約10重量部、例えば、0,0.0001,0.0005,0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量部で含まれ得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感改善効果を改善することができる。より好ましくは、第1染料は約0.001重量部~約0.5重量部、最も好ましくは約0.01重量部~約0.1重量部で含まれ得る。
【0122】
第2染料は、最大吸収波長が約390nm~約470nmであって、ブルー光源から発光される波長中のバイオレット(violet)領域を遮断することによって反射率を下げ、反射色感を改善することができる。好ましくは、第2染料は最大吸収波長が約390,400,410,420,430,440,450,460または470nm、約400nm~約450nm、より好ましくは約400nm~約445nmになり得る。
【0123】
第2染料を含有することにより、光学部材は波長390nm~470nm領域で光透過率の最小値が約2%~約80%、より具体的には、約2%~約60%、約20%~約60%になり得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射視感改善効果を奏することができる。
【0124】
第2染料は、光透過調節層中に、約0重量%~約10重量%、例えば、0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量%、好ましくは約0.0001重量%~約1重量%で含まれ得る。前記範囲で、反射視感改善と反射率減少効果を奏することができる。より好ましくは、第2染料は光透過調節層中に、約0.001重量%~約0.5重量%、より好ましくは約0.01重量%~約0.1重量%で含まれ得る。前記範囲で、耐光信頼性改善効果をさらに奏することができる。
【0125】
第2染料は、メロシアニン系、シアニン系、アゾ系、ポルフィリン系の1種以上を含み得るが、これに制限されるのではない。好ましくは、第2染料はメロシアニン系染料になり得る。この場合、別の波長領域の光透過率に影響を与えないと共に、色再現率を高め、コントラストを高めつつ、反射色感を改善してブラック視感を高めることができる。
【0126】
光透過調節層のうち、第2染料は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0重量部~約10重量部、例えば、0,0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量部、具体的には、約0.0001重量部~約1重量部で含まれ得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感改善効果が改善され得る。より好ましくは、第2染料は約0.001重量部~約0.5重量部、最も好ましくは約0.01重量部~約0.1重量部で含まれ得る。
【0127】
第3染料は、最大吸収波長が約480nm~約530nmであり、シアン(cyan)波長の光を遮断することにより、反射色感を改善することができる。好ましくは、第3染料は最大吸収波長が約480,490,500,510,520、又は530nm、約480nm~約520nm、例えば、約490nm~約510nmになり得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感を改善し、色再現率を高めることができる。
【0128】
第3染料を含有することにより、光学部材は波長約480nm~約530nm領域で光透過率の最小値が約2%~約80%、より具体的には、約2%~約60%、約20%~約60%になり得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射視感改善効果を奏し得る。
【0129】
第3染料は、光透過調節層中に、約0重量%~約10重量%、例えば、0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量%、好ましくは約0.0001重量%~約1重量%で含まれ得る。前記範囲で、反射視感改善と反射率減少効果を奏することができる。より好ましくは、第3染料は光透過調節層中に、約0.001重量%~約0.5重量%、より好ましくは約0.01重量%~約0.1重量%で含まれ得る。前記範囲で、耐光信頼性改善効果を奏することができる。
【0130】
第3染料は、ピロメテン(pyrromethene)系、シアン系、ローダミン系、ボロンジピロメテン(boron dipyrromethene,BODIPY)系、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系の1種以上を含むことができる。例えば、第3染料は、ボロンジピロメテン系を含むピロメテン系、シアン系、ローダミン系の1種以上、具体的にはボロンジピロメテン系染料を含むことができる。
【0131】
一具体例において、第3染料はピロメテン系染料になり得る。この場合、別の波長領域の光透過率に影響を与えないと共に、色再現率を高め、コントラストを高めつつ、反射色感を改善してブラック視感を高めることができる。
【0132】
一具体例において、ピロメテン系染料は下記化学式3の染料を含むことができる:
【0133】
【化3】
【0134】
(前記化学式3で、
,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数10のアルキル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルキル基、炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、炭素数2~炭素数10のアルケニル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のアルキニル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数1~炭素数10のアルキルチオ基、炭素数6~炭素数20のアリールエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリールチオエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリール基、炭素数2~炭素数10のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン、炭素数1~炭素数10のハロアルキル基、炭素数2~炭素数10のハロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のハロアルキニル基、シアノ基、炭素数2~炭素数10のアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基または炭素数1~炭素数10のシリル基で、
Mはmが元素を表し、mは2~6の整数である)。
【0135】
前記化学式3で、Rはハロゲン、好ましくはフルオリン(F)になり得る。
【0136】
前記化学式3で、R,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ炭素数1~炭素数6のアルキル基、水酸基、アミノ基、炭素数6~炭素数20のアリール基、ハロゲン、ニトロ基、チオール基の一つ以上で置換されてもよい。
【0137】
前記化学式3で、Mは2価~6価の元素であり、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)の1種以上になり得る。
【0138】
一具体例において、第3染料は下記化学式3-1で表すことができる:
【0139】
【化4】
【0140】
(前記化学式3-1で、R,R,R,R,R,R,R,Rは、前記化学式3で定義した通りである)。
【0141】
第3染料は、前記化学式3、化学式3-1でそれぞれ置換基を調節することにより具現することができる。
【0142】
光透過調節層のうち、第3染料は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0重量部~約10重量部、例えば、0,0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量部、具体的には約0.0001重量部~約1重量部で含まれ得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感改善効果を改善することができる。より好ましくは、第3染料は、約0.001重量部~約0.5重量部、より好ましくは約0.01重量部~約0.1重量部で含まれ得る。
【0143】
第4染料は、最大吸収波長が約640nm~約760nmであり、マゼンタ(magenta)波長の光を吸収することにより、反射色感を改善し、色再現率を高めることができる。好ましくは、第4染料は、最大吸収波長が約640,650,660,670,680,690,700,710,720,730,740,750または760nm、約640nm~約700nmになり得る。前記範囲で、反射色感を改善し、色再現率を高めることができる。
【0144】
第4染料を含むことにより、光学部材は波長約640nm~約760nm領域で光透過率の最小値が約2%~約80%、より具体的には、約50%~約70%になり得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射視感改善効果を奏し得る。
【0145】
第4染料は、光透過調節層中に、約0重量%~約10重量%、例えば、0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量%、具体的には約0.0001重量%~約3重量%、好ましくは約0.001重量%~約1重量%で含まれ得る。前記範囲で、反射視感改善と反射率減少効果を奏し得る。より好ましくは、第4染料は、光透過調節層中に、約0.001重量%~約0.5重量%、より好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%で含まれ得る。前記範囲で、耐光信頼性改善効果がさらに表れ得る。
【0146】
第4染料は、フタロシアニン系、スクアリン系の1種以上を含み得る。
【0147】
一具体例において、第4染料はフタロシアニン系染料になり得る。この場合、別の波長領域の光透過率に影響を与えないと共に、色再現率を高め、コントラストを高めつつ、反射色感を改善してブラック視感を高めることができる。
【0148】
一具体例において、フタロシアニン系染料は、下記化学式4で表すことができる:
【0149】
【化5】
【0150】
(前記化学式4で、
,R,R,Rは、それぞれ独立して、炭素数1~炭素数10のアルキル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルキル基、炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、炭素数2~炭素数10のアルケニル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のアルキニル基、水酸基、メルカプト基、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数1~炭素数10のアルキルチオ基、炭素数6~炭素数20のアリールエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリールチオエーテル基、炭素数6~炭素数20のアリール基、炭素数2~炭素数10のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン、炭素数1~炭素数10のハロアルキル基、炭素数2~炭素数10のハロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のハロアルキニル基、シアノ基、炭素数2~炭素数10のアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基または炭素数1~炭素数10のシリル基で、
Mは、Pd,Cu,Ru,Pt,Ni,Co,Rh,Zn,VO,TiO,Si(Y),Sn(Y)またはGe(Y)(前記Yは、ハロゲン原子、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数6~炭素数20のアリールオキシ基、水酸基、炭素数2~炭素数10のアクリルオキシ基、炭素数1~炭素数10のアルキル基、炭素数6~炭素数20のアリール基、炭素数1~炭素数10のアルキルチオ基、炭素数6~炭素数20のアリールチオ基で、
a,b,c,dは、それぞれ独立して、0~4の整数である。)
第4染料は、前記化学式4でそれぞれ置換基を調節することによって具現することができる。
【0151】
光透過調節層中、第4染料は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0重量部~約10重量部、例えば、0,0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10重量部、具体的には、約0.0001重量部~約1重量部で含まれ得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感改善効果が改善され得る。より好ましくは、第4染料は、約0.001重量部~約0.5重量部、さらに好ましくは約0.01重量部~約0.5重量部で含まれ得る。
【0152】
光透過調節層中、染料または染料混合物は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0.001重量部~約40重量部、例えば、0.001,0.005,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19または20重量部、具体的には、約0.001重量部~約20重量部、約0.001重量部~約10重量部、約0.01重量部~約1重量部で含まれ得る。前記範囲で、反射率を下げ、反射色感改善効果を奏し得る。
【0153】
光透過調節層は、熱および/または光に対する反応性官能基(例:エポキシ基、水酸基またはカルボン酸基)を少なくとも1個有する、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂の1種以上をさらに含むことができる。但し、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂の1種以上は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂含量に対して、約10重量%以下で含まなければならない。前記範囲で、耐光信頼性評価後の光透過率の変化量および反射率の変化量が増えなくなり得る。
【0154】
光透過調節層は、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、リワーク剤等の通常の添加剤をさらに含み得る。好ましくは、耐光信頼性の追加的な改善のために、光安定剤を含み得る。
【0155】
光安定剤は、HALS(hindered amine light stabilizer)系、フェノール系、オキサニリド系等の当業者に知られている通常の光安定剤を含み得る。
【0156】
添加剤は、水酸基値が5mgKOH/g以下の樹脂100重量部に対して、約0重量部~約20重量部、具体的には約0.001重量部~約20重量部、より具体的には、約0.01重量部~約20重量部で含まれ得る。前記範囲で、光透過調節層の物性に影響を与えないと共に、添加剤効果を得ることができる。
【0157】
光透過調節層用組成物は、無溶剤形になり得る。または光透過調節層用組成物は、溶剤をさらに含むことができる。光透過調節層用組成物が溶剤を含む場合、光透過調節層を薄型にすることができ、塗布性を良くすることができる。溶剤は、当業者に知られている通常の溶剤を使用できる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、エチルアセテート、トルエンの1種以上を含み得る。
【0158】
一具体例において、光透過調節層は、粘着性のない非粘着性になり得、この場合、基材フィルムに所定の厚さで光透過調節層用組成物を塗布した後、溶媒乾燥させて製造することができる。溶媒乾燥は、当業者に知られている通常の方法で行うことができる。
【0159】
光透過調節層は、厚さが約0.5μm~約10μm、例えば約1μm~約5μmになり得る。前記範囲において、光学部材に使用することができる。
【0160】
光学部材の下部面、つまり、光透過調節層の下部面には粘着層をさらに含むことができる。粘着層は、光学部材をパネル等に貼り付けることができる。粘着層は、当業者に知られている通常の粘着樹脂で形成できる。例えば、粘着層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有する組成物で形成できる。
【0161】
光学部材の下部面には、量子ドット層および光散乱粒子を含む層、または量子ドットおよび光散乱粒子を含むパネルがさらに備えられてもよい。
【0162】
以下、本発明の一実施例の光学表示装置を説明する。光学表示装置は、本発明の光学部材を含む。
【0163】
一具体例において、光学表示装置は、量子ドット層および光散乱粒子を含む層を備え、前記層の一面に本発明の光学部材を備えることができる。
【0164】
別の具体例において、光学表示装置は、量子ドットおよび光散乱粒子を含むパネルを備え、前記パネルの一面に本発明の光学部材を備えることができる。
【0165】
一具体例において、光学表示装置は、前記量子ドット層として非パターン化された量子ドット層またはパターン化された量子ドット層を備えることができる。
【0166】
量子ドットは、ナノサイズの半導体粒子が中心を成す粒子である。量子ドットの蛍光は、伝導帯(conduction band)から価電子帯(valence band)に浮いた状態の電子が落ちて来ながら発生する光である。量子ドットは、II-VI族、III-V族、IV-VI族、IV族半導体およびこれらの混合物等の任意の半導体を含み得る。例えば、半導体は、Si,Ge,Sn,Se,Te,B,C,P,BN,BP,BAs,AlN,AlP,AlAs,AlSb,GaN,GaP,GaAs,GaSb,InN,InP,InAs,InSb,AlN,AlP,AlAs,AlSb,GaN,GaP,GaAs,GaSb,ZnO,ZnS,ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe,CdxSeySz,CdTe,HgS,HgSe,HgTe,BeS,BeSe,BeTe,MgS,MgSe,GeS,GeSe,GeTe,SnS,SnSe,SnTe,PbO,PbS,PbSe,PbTe,CuF,CuCl,CuInS2,Cu2SnS3,CuBr,CuI,Si3N4,Ge3N4,Al2O3,(Al,Ga,In)2(S,Se,Te)3,CIGS,CGS,(ZnS)y(CuxSn1-xS2)1-yのいずれか、或いはこれら半導体を少なくとも2個以上混合した混合半導体を含む。量子ドットは、コア-シェル構造またはアロイ構造を有し得る。コア-シェル構造またはアロイ構造を有する量子ドットの非制限的な例として、CdSe/ZnS,CdSe/ZnSe/ZnS,CdSe/CdSx(Zn1-yCdy)S/ZnS,CdSe/CdS/ZnCdS/ZnS,InP/ZnS,InP/Ga/ZnS,InP/ZnSe/ZnS,PbSe/PbS,CdSe/CdS,CdSe/CdS/ZnS,CdTe/CdS,CdTe/ZnS,CuInS2/ZnS,Cu2SnS3/ZnS等がある。
【0167】
非パターン化された量子ドット層は、量子ドットが所定の樹脂に含浸された層またはフィルムになり得る。前記樹脂としては、ポリスチレン、発泡性ポリスチレン(expandable polystyrene)、ポリビニルクロライド、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、アクリル、エポキシ、シリコン、不飽和ポリエステル樹脂の1種以上を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0168】
パターン化された量子ドット層は、所定のパターンが形成された量子ドット層を含み得る。例えば、パターン化された量子ドット層は、所定の基材上に量子ドット層を形成し、前記量子ドット層上に感光性フォトレジスト層を形成した後、マスキング、UV光照射、現象、エッチング等に形成され得る。
【0169】
前記層またはパネルは、内部光、特にブルー光を散乱させてレッド、グリーン光を発生させることができる。散乱粒子を含む層は、光散乱粒子としてTiO等を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0170】
光学表示装置は、量子ドット層または散乱粒子を含有する層、或いはパネルの一面または両面に配置された基板を含み、前記基板の光出射面に本発明の光学部材が配置され得る。一実施例において、前記基板の光出射面に本発明の粘着層、光透過調節層および基材フィルムが順に積層され得る。
【0171】
一具体例において、量子ドット層または散乱粒子を含有する層またはパネルは、液晶を含まない場合がある。
【0172】
一具体例において、光学表示装置は、前記層または前記パネルの一面または両面に偏光子または偏光板を備えない場合がある。
【0173】
別の具体例において、光学表示装置は、量子ドット層、基板以外に、偏光子、保護フィルム、機能性コーティング層の1種以上をさらに含むことができる。偏光子、保護フィルム、機能性コーティング層のそれぞれは、1個以上積層することができる。
【0174】
偏光子は、入射される光を一方向に偏光させて出射させる。偏光子は、当業者に知られている通常の偏光子を含むことができる。例えば、偏光子はポリビニルアルコールをヨウ素等の二色性染料で染色させた偏光子、ポリビニルアルコールを脱水反応させて製造されたポリエン系偏光子の1種以上を含み得る。偏光子の一面または両面には、下記で詳述する保護フィルムがさらに積層されてもよい。
【0175】
保護フィルムは、量子ドット層、偏光子等の一面または両面に形成されてこれらを保護することができる。保護フィルムは、前記で詳述した基材フィルムと実質的に同じである。
【0176】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の好ましい実施例を通じて、本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0177】
実施例1
スチレンアクリロニトリル(SAN,ロッテケミカル)樹脂(水酸基値:0.4mgKOH/g)20重量部、染料KIS001(テトラアザポルフィリン系,最大吸収波長が594nm,キョンインヤンヘン)0.012重量部(SAN樹脂100重量部に対して染料0.06重量部)、溶剤として、メチルエチルケトン27重量部とトルエン54重量部を混合して光透過調節層用組成物を製造した。
【0178】
前記の製造した光透過調節層用組成物を、反射防止フィルム(基材フィルムであるPETフィルム上部面にハードコート層、高屈折率層、低屈折率層が順に積層された反射防止フィルム、反射率:0.2%,DNP社)の基材フィルムであるPETフィルムの下部面にバーコーターで直接塗布し、120℃で2分間溶剤乾燥させて、基材フィルムであるPETフィルムの下部面に光透過調節層(厚さ:5μm)を形成することにより、光学部材を製造した。
【0179】
実施例2
実施例1において、SAN樹脂20重量部の代わりに、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂(水酸基値:0.8mgKOH/g)20重量部を使用した点を除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0180】
実施例3
実施例1において、SAN樹脂20重量部の代わりに、光安定剤としてTinuvin292(BASF社)3重量部をさらに含んだことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0181】
実施例4
実施例1において、SAN樹脂20重量部の代わりに、m-SAN(メチルメタアクリレートスチレンアクリロニトリル)樹脂(水酸基値:0.6mgKOH/g)20重量部を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0182】
実施例5
実施例1において、染料KIS001 0.012重量部の代わりに、KIS001 0.012重量部と染料FDB-003(メロシアニン系,最大吸収波長438nm,Yamada Chemical Co.)0.014重量部の混合物(SAN樹脂100重量部に対して染料混合物0.13重量部)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0183】
実施例6
実施例1において、染料KIS001 0.012重量部の代わりに、KIS001 0.012重量部、染料FDB-003 0.014重量部、染料VD500(ボロンジピロメテン系,最大吸収波長509nm,ウクソン化学)0.012重量部の混合物(SAN樹脂100重量部に対して染料混合物0.19重量部)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0184】
実施例7
実施例1において、染料KIS001 0.012重量部の代わりに、KIS001 0.012重量部、染料FDB-003 0.014重量部、染料VD500 0.012重量部、染料IN88(フタロシアニン系,最大吸収波長675nm,ウクソン化学)0.06重量部の混合物(SAN樹脂100重量部に対して染料混合物0.49重量部)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0185】
実施例8
実施例1において、SAN樹脂20重量部の代わりに、SAN樹脂20重量部と4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)0.6重量部の混合物から重合された樹脂(水酸基値:4.5mgKOH/g)を使用して光透過調節層用組成物を製造し、製造した光透過調節層用組成物を実施例1で使用した反射防止フィルム中の基材フィルムであるPETフィルムの下部面に塗布したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0186】
比較例1
実施例1において、SAN樹脂20重量部の代わりに、SAN樹脂20重量部と4-ヒドロキシブチルアクリレート1重量部の混合物から重合された樹脂(水酸基値:8mgKOH/g)を使用して光透過調節層用組成物を製造し、製造した光透過調節層用組成物を実施例1で使用した反射防止フィルム中の基材フィルムであるPETフィルムの下部面に塗布した後、光硬化方法で硬化させたことを除いては、実施例1と同じ方法を実施して光学部材を製造した。
【0187】
下記表1に、実施例、比較例の光透過調節層用組成物の詳細構成を表した。下記表1において「-」は、該当成分が含まれていないことを意味する。
【0188】
実施例、比較例で製造された光学部材に対して、下記表1の物性を評価した。
【0189】
(1)数式1の光透過率の変化量(単位:%):実施例と比較例で製造した光学部材に対して、Xenon Test Chamber(Q-SUN)で[光源ランプ:Xenonランプ,照射波長:340nm,照射強度:0.35W/cm,照射温度:63℃,照射時間:500時間,照射方向:基材フィルムを含む積層体側から照射]の条件で、照射する前と500時間照射した後の、光学部材の光透過調節層中の各使用染料の最大吸収波長における光透過率の変化量の絶対値を測定した。数式1の光透過率の変化量は、(光透過率の変化量の絶対値の総和)/(光透過調節層中の含有染料の個数)から計算した。
【0190】
(2)数式2の反射率の変化量(単位:%):実施例と比較例で製造した光学部材をブラックシート紙(現代シート社)の上に置き、50℃のラミネーターを用いて貼り合わせて試片を製造した。製造した試片に対してUV/VIS spectrometer Lambda1050(Perkin Elmer社)を利用して反射モード、SCEモードで、波長380nm~780nmにおける散乱反射率を測定し、平均した値を反射率として記録した。
【0191】
光学部材に対して、(1)と同じ条件で500時間照射した。その後、上と同じ方法で反射率を測定した。数式2の反射率の変化量は、照射する前と500時間照射した後の反射率の変化量の絶対値で計算した。
【0192】
(3)光透過率(単位:%):実施例と比較例で製造した光学部材に対して、光透過率測定装置(V-650,UV-Spectrophotometer,JASCO社)を使用して波長380nm~800nmでスキャンして光透過率を測定した。
【0193】
【表1】
【0194】
前記表1のように、本発明の光学部材は、耐光信頼性評価後の光透過率の変化量と反射率の変化量を共に著しく下げることができる。
【0195】
一方、水酸基値が5mgKOH/gを超過する樹脂を含有する光透過調節層を備える比較例1は、耐光信頼性評価後の光透過率の変化量と反射率の変化量が共に高かった。
【0196】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。
【国際調査報告】