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特表2023-519690高懸念物質不含有の硬化性ポッティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】高懸念物質不含有の硬化性ポッティング組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20230502BHJP
   C08G 61/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08G61/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559431
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021056921
(87)【国際公開番号】W WO2021197856
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20382247.3
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】フロレス ペナルバ,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】バルリオス アントゥネス,ディエゴ-ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ロジョ リベルテル,マリ カルメン
(72)【発明者】
【氏名】サカリテ,アスタ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ミラリェス,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ペレス,ロサ マリア
(72)【発明者】
【氏名】マルケト コルテス,ホルヘ
【テーマコード(参考)】
4J032
4M109
【Fターム(参考)】
4J032CA61
4J032CA62
4J032CB11
4J032CC05
4J032CD00
4J032CE22
4J032CG00
4J032CG06
4J032CG07
4M109CA04
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB13
4M109EC04
(57)【要約】
本発明は、アセトアセテートをベースとした硬化性ポッティング組成物、およびその電子デバイスでの使用に関する。特に、本発明は、多官能アセトアセテートと多官能(メタ)アクリレートをベースとした硬化性ポッティング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能アセトアセテート化合物、
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物、
触媒、および
フィラーを含み、ここで、
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比が1.5超である、硬化性ポッティング組成物。
【請求項2】
多官能アセトアセテート化合物は少なくとも2つのアセトアセテート基、好ましくは2~10個のアセトアセトキシ基、およびより好ましくは3~4個のアセトアセトキシ基を有する、請求項1に記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項3】
少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比は1.6~2.0、好ましくは1.7~1.9である、請求項1または2に記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項4】
多官能アセトアセテート化合物は、グリセロール、トリメチロールプロパン、エタノールイソソルビド、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、プロポキシ化単糖類、トリメチロールエタン、およびそれらの組み合わせから得られたアセトアセチル化ポリオールである、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリレート化合物は、少なくとも4つの(メタ)アクリレート基を有し、好ましくは4~6個の(メタ)アクリレート基を有する、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリレート化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項7】
硬化剤は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、トリアザビシクロデセン(TBD)、テトラメチルグアニジン(TMG)、トリオクチルホスフィン(TOP)、トリフェニルホスフィン(TPP)、(水酸化テトラブチルアンモニウム)TBAOH、NaOH、KOH、NaOEt、KOEt、ホスファザンおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項8】
ポッティング組成物の硬化生成物のガラス転移温度は130℃以上、130℃~200℃、好ましくは130℃~160℃である、請求項1~7のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項9】
触媒の多官能アセトアセテート化合物に対するモル比は0.01~5、好ましくはが0.05~1である、請求項1~8のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項10】
フィラーは硬化性ポッティング組成物の50~90重量%、好ましくは65~80重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項11】
本質的に界面活性剤を含まず、好ましくは組成物の0.1重量%未満であり、より好ましくは界面活性剤を含まない、請求項1~10のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物。
【請求項12】
EU REACH規則による高懸念物質およびEU CLP規則による発癌性、変異原性または生殖毒性化合物を、本質的に含有せず、好ましくは組成物の0.1重量%未満であり、より好ましくは含有しない、請求項1~11のいずれかに記載の硬化性ポッティング用組成物。
【請求項13】
多官能アセトアセテート化合物を含んでなる第1部材、および
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物を含んでなる第2部材
を含み、ここで、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらに触媒を含み、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらにフィラーを含み、および
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比が1.5超である、
二液硬化型ポッティング組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物または請求項13に記載の二液硬化型ポッティング組成物の硬化生成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の硬化性ポッティング組成物または請求項13に記載の二液硬化型ポッティング組成物の電子デバイスの製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアセテートをベースとした硬化性ポッティング組成物、およびその電子デバイスでの使用に関する。特に、本発明は、多官能アセトアセテートと多官能(メタ)アクリレートをベースとした硬化性ポッティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポッティング材は、電子デバイスの永久的な保護ソリューションである。高温用途に使用される材料には、熱安定性、高いガラス転移温度、低い熱膨張係数が要求される。現在の方法は、エポキシ樹脂を無水物やアミン硬化剤で硬化させる方法である。しかし、このような硬化剤には、一般的に高懸念物質(SVHC)や発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)化合物が含まれている。
【0003】
例えば、US6,462,108B1には、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(CTE)、低い硬化収縮率を示すエポキシベースのポッティング組成物が開示されている。ただし、使用されている無水物硬化剤はSVHCに該当する。より具体的には、実施例で使用したメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)は、REACHで全身性健康障害に分類されている。
【0004】
そのため、現在の方法論に代わる、より安全で有害な化合物を含まない方法を見つける努力がなされてきた。
【0005】
WO2016/054367A1は、中空糸ろ過ポッティング用途に使用されるマルチパック無溶剤硬化性組成物を開示している。それは硬化したポッティング材に、洗浄・除菌試薬などの薬品に対する耐性を持たせることを目的としている。しかし、ポッティング材料はより低いガラス転移温度を示すため、この組成物は電子機器用ポッティングには適さないだろう。
【0006】
WO2016/054380は、らせん巻き式ろ過用途の接着剤として使用されるマルチパック、無溶媒、室温硬化型、イソシアネート不使用の調製物を開示している。硬度(ショアA)、ゲル化時間、耐薬品性および気泡形成を評価した。ただし、材料のガラス転移温度は報告されていない。
【0007】
WO2014/052644は、材料間の熱伝達を低減するために高温用途で使用される炭素-マイケル化合物を開示している。そのために、炭素-マイケル化合物は、熱を供給する側と熱を受容する側の間に位置する。熱源は100℃から290℃の温度で有し得る。材料はフォーム状であってもよく、このため、調製物では界面活性剤の添加剤を導入している。また、触媒として有害なDBUが使用されている。熱重量分析(TGA)による劣化開始温度と動的機械分析(DMA)による貯蔵弾性率を提供する。しかし、材料のガラス転移温度は報告されていない。
【0008】
WO2015/047584A1は、多官能性マイケル供与体および受容体を含む、ケーブル接合用の熱硬化性エラストマー接合組成物を開示している。記載されているマイケル受容体基は、ヒドロキシエチルアクリレートとさらに反応するポリイソシアネート化合物でキャップされたポリエーテルポリオールに基づいている。得られたPUベースのアクリレートは、触媒としてDBUの存在下でAATMP中にて反応する。この特許は、有毒なイソシアネートやDBUなどの有害物質を使用している。硬化は、追加の熱を加えることなく、比較的長い時間(約2日間)室温で行われる。ゲル化時間、吸水率、ガラス転移温度(-53~90oC)、および重量損失(3.5~7.1%)が報告されている。
【0009】
さらに、エステル結合の加水分解により材料の最終的な安定性を損なう可能性のある強塩基性無機塩が触媒として使用されることが報告されている。例えば、US4,408,018Bは、マイケル付加を触媒するために溶媒の存在下で強塩基性塩(NaOH、KOH、EtOHおよびTBAOH)を使用することを開示している。EP1283235B1は、ラミネート接着剤のための溶剤ベースのマイケル付加組成物の使用を報告している。エタノール中のナトリウムエトキシドを触媒として使用し、剥離強度を測定している。EP1435383A1は、ラミネート、フォームおよびエラストマーにおけるマイケル付加組成物の使用を開示している。剥離強度とTg(最大Tgは33℃)を測定している。US7,514,528B2は、KOAcの水溶液をマイケル付加における触媒として使用することを開示し、剥離強度およびポットライフを測定した。US8,013,368B2は、ラミネート用のエタノール触媒マイケル付加においてナトリウムエトキシドを使用することを教示している。T剥離試験が行なわれた。
【0010】
EP1323760B1は、α,β-不飽和カルボニル基とCH-酸性メチレン基を含む化合物間の架橋反応に適した触媒としてホスフィンを記載している。トリアルキルホスフィンが使用され、特にトリオクチルホスフィン(TOP)は、毒性のある一般的に使用されるDBUと比較され、TOPの安定性が大幅に良好であった。アセトアセテートとマロネートがアクリレートで硬化されている。ポットライフ、耐溶剤性、鉛筆硬度、黄変が評価されている。材料のTg値は報告されていない。
【0011】
US2009/0283213は、マイケル反応によって架橋できる2成分結合系を開示している。混合樹脂をマロン酸エチルとポリオール(ネオペンチルグリコール)で合成し、ポリエステルポリオール(OH末端マロネート-ポリエステル)を作っている。得られたポリエステルをMDIと反応させ、次いでヒドロキシアクリレートと反応させて、アクリレート末端鎖を得ている。酢酸エチルに溶解したDBNを触媒として使用している。この場合、同じ分子にマイケル供与体とマイケル受容体が含まれている。触媒含有成分は、他の成分に添加され、弾性フィルムを得ている。この特許は、有害なイソシアネートと揮発性有機化合物を溶媒として使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6462108号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/054367号
【特許文献3】国際公開第2016/054380号
【特許文献4】国際公開第2014/052644号
【特許文献5】国際公開第2015/047584号
【特許文献6】米国特許第4408018号明細書
【特許文献7】欧州特許第1283235号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1435383号明細書
【特許文献9】米国特許第7514528号明細書
【特許文献10】米国特許第8013368号明細書
【特許文献11】欧州特許第1323760号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2009/0283213号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、電子ポッティングで現在使用されている系へのマイケル付加に基づくより安全な代替手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、多官能アセトアセテート化合物、触媒とフィラーの存在下で多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性ポッティング組成物によって解決され、そのポッティング生成物は、良好な熱特性、高いガラス転移温度、低い反りおよび低い熱膨張係数を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様では、本発明は、
多官能アセトアセテート化合物、
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物、
触媒、および
フィラー、
を含む硬化性ポッティング組成物に関し、ここで、
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比は1.5超である。
【0016】
別の態様では、本発明は、
多官能アセトアセテート化合物を含んでなる第1部材、および
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物を含んでなる第2部材、
を含む二液硬化性ポッティング組成物に関し、ここで、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらに触媒を含み、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらにフィラーを含み、また、
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比が1.5超である。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、電子デバイスにおける硬化性ポッティング組成物または二液型硬化性ポッティング組成物の使用に関する。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態は、特許請求の範囲に記載されている。
【0019】
本明細書において、「a(1つ)」および「an(1つ)」および「少なくとも1つ」という用語は、「1以上の」という用語と同じであり、交換可能に使用できる。
【0020】
本明細書で使用される「1以上の」は、言及された種の少なくとも1つに関連し、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上を含む。同様に、「少なくとも1つ」とは、1以上の、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上を意味する。任意の成分に関して本明細書で使用される「少なくとも1つ」は、化学的に異なる分子の数値、すなわち参照種の異なるタイプの数値を指すが、分子の数値全体を指すものではない。
【0021】
本明細書で使用する「(物質を)実質的に含まない」とは、その物質が硬化性ポッティング組成物の配合において意図的に添加されておらず、硬化性ポッティング組成物中に少量しか存在せず、ポッティング組成物の性能を損なわないという事実を指す。好ましい実施形態では、硬化性ポッティング組成物はそのような成分を含まない。しかしながら、このような物質は、例えば不純物として、意図して添加された成分中に不可避的に存在する可能性があるため、別の実施形態では、硬化性ポッティング組成物は、組成物の1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下のそのような物質を含む。
【0022】
本明細書においてポリマーまたはその成分の分子量に言及する場合、この言及は、他に明確に述べられていない限り、数平均分子量Mnを指す。数平均分子量Mnは、末端基分析(DIN 53240によるOH価)に基づいて計算するか、溶離剤としてTHFを使用するDIN 55672-1:2007-08によるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定できる。特に明記しない限り、与えられたすべての分子量は、末端基分析によって決定されたものである。重量平均分子量Mwは、Mnについて記載したように、GPCによって決定できる。
【0023】
組成物または調製物に関して本明細書で与えられるすべてのパーセンテージは、他に明確に述べられていない限り、それぞれの組成物または処方の総重量に対する重量%に関する。
【0024】
本発明によれば、SVHCを含まない硬化性ポッティング組成物は、多官能アセトアセテート化合物、(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物、触媒、およびフィラーを含んでなる。
【0025】
その組成物は、本明細書に記載の2つ以上の部材を含む。各部材の成分は、適用前にすべての容器の内容物が一緒に混合されて接着剤組成物の混合物を形成するまで、他の部材とは別の容器(部材)に保管される。塗布して硬化すると、ポッティング領域に固体材料が形成される。
【0026】
電子デバイスは、比較的高い動作温度にさらされ、季節的な周囲温度から高い使用温度(100oC以上)まで繰り返される温度サイクルにさらされる。デバイスの性能と信頼性を保証する材料の主なパラメータには、動作温度での低熱膨張係数(CTE)、またはポッティングされる部品よりも低いこと、低硬化収縮、および低反りが含まれる。このため、熱安定性が高く、Tgが高い(作業温度を超える)材料を使用する必要がある。
【0027】
硬化性ポッティング組成物は、DMAで測定して、130℃以上、好ましくは130℃から200℃、より好ましくは130℃から160℃のTgを有する硬化した生成物を提供するように調製される。
【0028】
硬化性ポッティング組成物は、熱機械分析によって測定された150℃で0~100、好ましくは15~70μm/m・℃のCTEを示す硬化生成物を与えるように調製される。
【0029】
硬化性ポッティング組成物は、TGAで測定して、空気雰囲気下180℃で0~1.5%の重量損失を示す硬化生成物を提供するように調製される。
【0030】
硬化性ポッティング組成物は、0~150μm、好ましくは0~50μmの反りを示す硬化生成物を提供するように調製される。
【0031】
さらに、硬化性ポッティング組成物は他の利点を有する。例えば、接着剤組成物は無溶剤で、使用可能な粘度とポットライフを持ち、硬化も早い。最後に、硬化性ポッティング組成物は、湿気や化学薬品に耐性のある強力な接着結合を提供する。
【0032】
本発明の硬化性ポッティング組成物において、マイケル受容体としての多官能(メタ)アクリレート化合物のマイケル供与体としての多官能アセトアセテート化合物に対する相対比率は、反応当量比によって特徴付けることができ、これは硬化性組成物中のすべての官能基数の多官能アセトアセテート化合物中のマイケル活性水素原子数に対する比である。多官能(メタ)アクリレートおよび多官能アセトアセテート化合物は、官能性(メタ)アクリレート基の多官能アセトアセテート化合物の活性水素に対する当量比が1.5を超えるように、好ましくは1.6から2.0、より好ましくは1.7から1.9となるように、適用の直前に一緒にブレンドされる。ここで、当量比とは、多官能(メタ)アクリレート化合物中の(メタ)アクリレート基数の多官能アセトアセテート化合物中のアセトアセトキシ基数に対する比で定義される。
【0033】
本発明によれば、多官能アセトアセテート化合物は、少なくとも2個のアセトアセトキシ基、好ましくは2~10個のアセトアセトキシ基、およびより好ましくは2~4個のアセトアセテート基を有し得る。したがって、この成分は、少なくとも2つのアセトアセトキシ基を有する単一化合物、またはそれぞれが少なくとも2つのアセトアセトキシ基を有する2つ以上の化合物の混合物のいずれかを含み得る。各前記化合物は、望ましくは、12000g/mol未満、例えば10000g/mol未満の数平均分子量(Mn)によって特徴付けられるべきである。
【0034】
好ましい実施形態では、硬化性ポッティング組成物は、少なくとも1つのアセトアセチル化ポリオールを含み、前記アセトアセチル化ポリオールは、次式(反応1)に従って得ることができる:
(1)
式中:RはC-C12アルキル基であり;
Lはポリオールの主鎖構造を示し;および
q≧2である。
【0035】
上記の反応1は、以下の式(I)で定義されるアセトアセテート化合物によるポリオールのエステル交換反応、またはより具体的にはアセチル交換反応として説明できる。
式(I)
式中、Rは前記C-C12アルキル基である。より典型的には、構成要素のアルキル基Rは、1~8個、好ましくは1~6個の炭素原子を有する。例示的なアルキルアセトアセテートには以下が含まれる:t-ブチルアセトアセテート;イソブチルアセトアセテート;n-ブチルアセトアセテート;イソプロピルアセトアセテート;n-プロピルアセトアセテート;アセト酢酸エチル;およびアセト酢酸メチル。t-ブチルアセトアセテートがここでは好ましい。
【0036】
上記の反応1のポリオールは、以下の式(II)によって表される:
L-(OH) 式(II)
式中、q≧2であり、Lは主鎖構造を表す。そのようなポリオール(II)は、必要に応じて、それらの主鎖またはペンダント側鎖にヘテロ原子を含んでもよい。さらに、ポリオール(II)は、単量体の多価アルコールであってもよいし、オリゴマーまたはポリマーの主鎖を有していてもよい。これに関係なく、ポリオール(II)は、12000g/モル未満の数平均分子量(Mn)、2~10、好ましくは2~4のヒドロキシル官能基qを有することが好ましい。
【0037】
一実施形態では、硬化性ポッティング組成物は、単量体多価アルコールから得られるアセトアセチル化ポリオールを含む。好適な単量体多価アルコールの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2,4-ペンタンジオール;ブチルエチルプロパンジオール;1,4-ヘキサンジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール;ペンタエリスリトール;ジペンタエリスリトール;トリメチルオレエタン;トリメチロールプロパン;ジトリメチロールプロパン;トリシクロデカンジメタノール;ハイドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール類;グリセロール;ヒマシ油;ヒマシ蝋;グルコース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、マンノース、エリスロースなどの糖類;エリスリトール、キシリトール、マリトール、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール;および、o,o’-ビス(ジエタノールアミンメチル)-p-ノニルフェノール、N,N,N,N’-テトラ(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(BASFから入手できるクアドロールL)やN,N,N,N-テトラ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなどのヒドロキシアルキル化脂肪族ジアミン。好ましい実施形態において、多官能アセトアセテート化合物は、グリセロール、トリメチロールプロパン、エタノールイソソルビド、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、プロポキシル化単糖、トリメチロールエタンおよびそれらの組み合わせから得られたアセトアセチル化ポリオールである。
【0038】
また、本発明は、このような多官能アセトアセテート化合物が、オリゴマーまたはポリマーの多価アルコールから得られるアセトアセチル化ポリオールを含んでいることを妨げるものではない。特に、ポリオール(II)は、ポリエーテルポリオールとも呼ばれるポリオキシアルキレンポリオール;ポリカプロラクトンポリオールを含むポリエステルポリオール;ポリエステルアミドポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポロール;ポリウレタンポリオール;ポリアクリレートポロール;および、これらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。望ましくは、そのようなオリゴマーまたはポリマーポリオールは、以下の特徴を有するべきである:数平均分子量(Mn)が最大10000g/molであり、好ましくは250~6000g/molであること。さらに、出発物質として1以上のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを使用することが特に注目される。そして、ポリエーテルポリオールの市販例としては、Voranol CP260(DowDuPont社から入手可能)がある。
【0039】
当技術分野で知られているように、ポリエステルポリオールは、多塩基性カルボン酸または無水物と化学量論的に過剰の多価アルコールとの縮合反応から、または多塩基性カルボン酸、一塩基性カルボン酸および多価アルコールの混合物から調製できる。ポリエステルポリオールを調製する際に使用するのに適した多塩基性カルボン酸および無水物は、2~18個の炭素原子を有するもの、特に2~10個の炭素原子を有するものを含む。このような多塩基性カルボン酸および無水物の非限定的な例としては、アジピン酸;グルタル酸;コハク酸;マロン酸;ピメリン酸;セバシン酸;スベリン酸;アゼライン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸;フタル酸;無水フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;テトラヒドロフタル酸;ヘキサヒドロフタル酸;および、これらの組合せが含まれる。使用できる一塩基性カルボン酸には、1~18個の炭素原子、または好ましくは1~10個の炭素原子を有するものが含まれ、その例として以下のものが挙げられる:ギ酸;酢酸;プロピオン酸;酪酸;バレリック酸;カプロン酸;カプリル酸;カプリン酸;ラウリン酸;ミリスチン酸;パルミチン酸;ステアリン酸;および、これらの組合せ。好適な多価アルコールは、2~18個の炭素原子、望ましくは、2~10個の炭素原子を有する。例示的な多価アルコールとしては、エチレングリコール;プロピレングリコール;ヘキセン-1,6-ジオール;トリメチロールプロパン;グリセロール;ネオペンチルグリコール;ペンタエリスリトール;ブチレングリコール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;ヘキシレングリコール;および、これらの組み合わせなどがあるが、それらに限定はしない。
【0040】
ポリエーテルポリオールは、当技術分野で既知のプロセス、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシドまたは五塩化アンチモンのような適切な触媒の存在下でアルケン酸化物と多価スターター分子との反応によって製造できる。アルケンオキシドの例としては、テトラヒドロフラン;エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド;1,2-及び2,3-ブチレンオキシド;および、スチレンオキシドを挙げることができる。そして、好適なスターター分子の例としては、以下に限定されないが、水;エチレングリコール;1,2-および1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;ジエチレングリコール;および、トリメチロール-プロパンを挙げることができる。本明細書で使用するための好ましいポリエーテルポリオールは:ポリ(プロピレンオキシド)ポリオール;ポリ(エチレンオキシド)ポリオール;PTMEG;および、これらの混合物である。
【0041】
本明細書で使用するためのポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートジオールから選択できるが、これらに限定されるものではない。このようなポリカーボネートジオールは、ジオールとジアルキルもしくはジアリールカーボネートまたはホスゲンとの反応により製造できる。反応物ジオールは、以下から選択され得るが、これらに限定されない。1,2-プロパンジオール;1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;トリオキシエチレングリコール;および、これらの混合物。例示的なジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートである。
【0042】
トランスエステル化(トランスアセチル化)反応1は、高分子化学の技術分野で知られているような従来の方法によって実施できる。この点に関して、特に以下を参照できる。Witzmanら、「アセトアセチル化コーティング樹脂の調製方法の比較」、Journal of Coatings Technology、第62巻、第789号、1990年10月;および、Witzemanら、「アセト酢酸tert-ブチルによるトランスアセトアセチル化:Synthetic Applications」、J.Org.Chemistry 1991年、56、 1713-1718に記載されている。典型的には、オリゴマーまたはポリマーポリオールとアセトアセテートとの間の反応は、前記ポリオールとアセトアセテートとを適当な容器中で、溶媒とともにまたは溶媒なしで、例えば、50℃~200℃または80℃~150℃の昇温で混合する;好ましくは、溶媒の非存在下で実施することになる。生成したアルコール(R-OH)を減圧下で留去することにより、反応を完結に導く。さらに、反応は触媒量のトランスエステル化触媒の存在下で行うことができ、その好適な例としては、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸ビスマス、酸化鉛およびトリクロロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
反応は、水酸基のアセトアセトキシ官能基への少なくとも99%の変換まで進行すべきである:この変換の程度は、1H-NMRおよびTLCによってモニターおよび確認することが可能である。反応物は、各アセトアセトキシ基に対して1つのOH基が存在するような量で使用できるが、完全な反応を確実にするために、モル過剰のアセトアセテートを使用することも好ましい。
【0044】
上述したトランスアセチル化反応の生成物は、本発明のポッティング組成物に直接使用できるが、その反応生成物は、同様に、当技術分野で既知の方法を使用して最初に単離および精製できる。この点で、抽出、蒸発、蒸留、クロマトグラフィーが適切な技術であると言えるだろう。
【0045】
本発明によれば、多官能(メタ)アクリレート化合物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基、好ましくは少なくとも4つの(メタ)アクリレート基、好ましくは4~6つの(メタ)アクリレート基を有するものである。このような高官能(メタ)アクリレート化合物は、意外にも、硬化した生成物に対して高い架橋密度を実現でき、その結果、優れたガラス転移温度、CTE、反り等を示し、ポッティング材料として使用するのに適していることを見出したのである。
【0046】
多官能(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。1以上の本発明の実施形態は、多官能アクリレート化合物が、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエルスリトールペンタアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、およびこれらの組み合わせの群から選択されることを提供する。
【0047】
本発明のポッティング組成物には触媒が使用され、多官能アセトアセテート化合物と少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート化合物との間のマイケル付加の反応を室温から200℃、好ましくは100~180℃などの温度下で、架橋密度の高いポッティング材を形成する。
【0048】
本発明における好適な触媒の例は、特に、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、トリアザビシクロデセン(TBD)、テトラメチルグアニジン(TMG)、トリオクチルフォフィン(TOP)、トリフェニルフォフィン(TPP)、(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド)TBAOH、NaOH、KOH、NaOEt、KOEt、ホスファザンおよびそれらの組合せである。
【0049】
触媒の多官能アセトアセテート化合物に対するモル比は0.01~5、好ましくは0.05~1である。
【0050】
ポッティング材料の熱膨張係数、収縮率、反り、電気絶縁性などの様々な決定特性を実現するために、本発明の硬化性ポッティング組成物に充填剤を含有させる必要がある。充填剤は、通常、硬化性ポッティング組成物の50~90重量%、好ましくは65~80重量%の量で含有させるべきである。本明細書において充填剤として好適なものは、例えば、チョーク、石灰粉、沈降及び/又は発熱性ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、アルミナ、粘土、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、水晶、フリント、マイカ、ガラス粉等の研削鉱物性物質である。有機フィラーも使用でき、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木片、刻みわら、もみがら、クルミ殻などの刻み繊維を用いることができる。また、ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維などの短繊維を添加することも可能である。また、フィラーとしてアルミパウダーも適している。好ましい一実施形態では、充填剤は、シリカ、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
好ましくは本発明の硬化性ポッティング組成物は、EU REACH規則による高懸念物質およびEU CLP規則による発癌性、変異原性または生殖毒性化合物を本質的に含まず、好ましくは組成物の0.1重量%未満であり、より好ましくは含まない。例えば、DBUやイソシアネートなど、ポッティング材に一般的に使用されている物質が挙げられる。
【0052】
別の態様では、本発明は、二液型硬化型ポッティング組成物を対象とし、これは、
多官能アセトアセテート化合物を含んでなる第1部材、および
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物を含んでなる第2部材、
を含み、ここで、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらに触媒を含み、
第1部材および第2部材の少なくとも一方は、さらにフィラーを含み、
および
(メタ)アクリレート基を少なくとも3つ有する(メタ)アクリレート化合物の多官能アセトアセテート化合物に対する当量比が1.5超である。
【0053】
本発明の組成物は、もちろん、顔料、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、粘着付与剤、接着促進剤、エポキシ樹脂および、紫外線安定剤などのポッティング組成物の標準添加剤も含んでいてもよい。適切な添加剤の選択と使用量は、これらが組成物の他の成分と適合しなければならず、ポッティング用途での組成物の使用に有害であってはならないという点でのみ限定される。二液型組成物の場合、添加剤は、どちらかの部材に配置されていてもよいし、両方の部材に配置されていてもよい。一方、本発明の硬化性ポッティング組成物は、界面活性剤や発泡剤のようなポッティング材料に一般的に使用されない添加剤を本質的に含まず、好ましくは含まない。
【0054】
本発明による硬化性ポッティング組成物は、ベアダイ、例えば、金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、ダイオード、発光ダイオード(LED)などの電子デバイスの製造に用いることが好適である。
【0055】
本開示は、以下の実施例を参照してさらに理解され得る。これらの実施例は、本開示の特定の実施形態を代表することを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0056】
実施例

材料
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートはAldrichから入手した。
1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)はAldrichから入手した。
トリオクチルホスフィン(TOP)はAlfa Aesarから入手した。
溶融シリカは、DenkaからDenka FB-35の商品名で入手した。
シランカップリング剤は、Alfa AesarからSilane A147の商品名で入手した。
エポキシ樹脂は、Nantong SynasiaからSynasia S-720の商品名で入手した。
【0057】
試験方法

変換
変換は、810cm-1に位置するアクリレートバンドの消失を介してFTIRによって追跡した。赤外線スペクトルは、PerkinElmer UATR Two-FT IR分光計で記録した。スペクトルは、ニートまたは薄膜で記録した。
【0058】
TA InstrumentsのDSC Q1000を使用した示差走査熱量測定(DSC)。分析のために、窒素雰囲気下、10oC/分の昇温・冷却速度で、30oCから250oCまで、サンプルに対して2回の加熱サイクルとその間の1回の冷却を行う。報告されたガラス転移データは、DSCから2回目の加熱サイクルで得たものである。
【0059】
DMA分析によるTgの決定
材料のTgは、TA instruments社のDMA Q800装置を用いて測定した。30x10x3mmの試験片を適当な金型で作成し,周波数1Hz,ひずみレベル0.1%で0oCから250oCまで2oC/分のランプ温度で加熱した。Tgは温度に対するダンピング係数(tanθ)から算出した。
【0060】
TMA分析によるCTEの決定
熱膨張係数(CTE)の測定には、TA計測器による熱機械分析(TMA)を使用した。TMAにより、加圧されたサンプルの寸法変化(μm)を温度の関数として測定した。特定形状のプローブを、20x10x3mmの寸法のサンプルフィルムと接触させ、0oCから250oCまでの特定の加熱速度で分析した。報告されているCTEの値は、μm/(m・oC)で表される。
【0061】
TGA分析を使用した減量の決定
TA instrumentsからのTGA Q500装置を使用する熱重量分析によって重量損失を決定した。サンプルは、空気雰囲気下で10oC/分の加熱速度を使用して30oCから400oCに加熱した。重量損失は180oCで報告されている。
【0062】
反り判定
厚さ約2mmのガラス繊維強化テフロンPSAテープを50×50×0.5mmのアルミナ基材に接着した型に硬化させた。硬化後、テフロン枠を取り外した。反りの判定は、アルミナ基材の中央にゼロマークとなるマークを付け、左右に2つずつマークを付けた。透過光と反射光を備え、マイクロメートルのネジが付いたオリンパス社の光学顕微鏡Olympus BX51を用い、中心(ゼロマーク)に合わせた焦点距離と各辺のマークに合わせた距離の差で反り量を算出した。
【0063】
アセトアセテートモノマーの合成
トリメチロールプロパントリアセトアセテート(AATMP)とペンタエリスリトールテトラアセトアセテート(Penta-aa)の合成は、文献手順WO2019/120923A1に従って、若干の修正を加えて実施した。500mLの3つ口丸底フラスコに、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトール(1eq.)とTBAA(1.1eq.)を投入した。次に、フラスコの各ネック部にYアダプター、メカニカル攪拌バー、還流コンデンサーを適合させた。Yアダプターには、熱電対と窒素コネクタが調整されている。窒素雰囲気下で140℃に温度を設定した(還流は4時間で約92℃に達した)。その後、ゆっくりと温度を140℃まで上げながら、常圧で8時間蒸留を行った。最後に、蒸留が停止したら、140oCで900mbarから400mbarまで減圧蒸留を2時間行った。反応スキームを以下に示す。
【0064】
比較例
AATMP(1g)を適切な触媒と予備混合し、Speedミキサーを使用して3500rpmで1~3分間撹拌した。次いで、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを混合物に添加して、それぞれの当量比に到達させた。調製物を適当な型に流し込み、室温で4時間硬化させた。
Tg値と変換率の試験結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例3
部材Aとしての3.0gのペンタエリスリトールテトラアセトアセテートと0.039gのDBNをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。3.356gのペンタエリスリトールテトラアクリレートを部材Bとして使用した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。アクリレートのアセテートに対する当量比は1.5である。
【0067】
実施例1
部材Aとしての14.0gのペンタエリスリトールテトラアセトアセテートと0.18gのDBNをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。17.75gのペンタエリスリトールテトラアクリレートを部材Bとして使用した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。アクリレートのアセテートに対する当量比は1.7である。
【0068】
実施例2
部材Aとしてのトリメチロールプロパントリアセトアセテート3.0g、DBN 0.029gおよび溶融シリカ10.27gをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。部材Bとして使用される3.818gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよび10.27gの溶融シリカをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。アクリレートのアセテートに対する当量比は1.7である。
【0069】
実施例3
部材Aとしての2.7gのペンタエリスリトールテトラアセトアセテート、0.035gのDBN、および9.225gの溶融シリカをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。部材Bとして使用される3.423gのペンタエリスリトールテトラアクリレートと9.225gの溶融シリカを、スピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。
【0070】
実施例4
部材Aとしてのトリメチロールプロパントリアセトアセテート3.0g、DBN0.029g、および溶融シリカ10.27gをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。部材Bとして使用される3.818gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよび10.27gの溶融シリカを、スピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。
【0071】
実施例5
部材Aとしてのトリメチロールプロパントリアセトアセテート2.0g、DBN0.019g、および溶融シリカ7.112gを、スピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。部材Bとして使用される2.558gのペンタエリスリトールテトラアクリレート、0.164gのエポキシ樹脂、0.038gのシランカップリング剤、および7.112gの溶融シリカをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。
【0072】
実施例6
部材Aとしてのトリメチロールプロパントリアセトアセテート2.0g、DBN0.019g、および溶融シリカ7.475gをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。部材Bとして使用される2.8gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、0.164gのエポキシ樹脂、0.04gのシランカップリング剤、および7.475gの溶融シリカをスピードミキサーで3500rpmで3分間混合した。2つの部材をスピードミキサーで3500rpmで1分間混合した。次に、調製物をその後の試験に適した型に流し込み、150oCで1時間硬化させた。
【0073】
表2~3は、本発明の実施例の試験結果を示す。本発明の実施例が優れたTg、CTE、重量損失および反りを示したのに対し、硬化剤として二官能性メタクリレートを有する比較例は、より高いTgおよび他の特性を達成できなかったことが明らかである。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【国際調査報告】