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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(54)【発明の名称】バイポーラ膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/22 20060101AFI20230502BHJP
   B01J 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20230502BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08J5/22 CEY
B01J43/00
C08F2/50
B32B5/28 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559826
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2021058641
(87)【国際公開番号】W WO2021198430
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2004897.1
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2004899.7
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2015030.6
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509077761
【氏名又は名称】フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ファン ライエン,アドリアヌス・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ウエルタ・マルティネス,エリサ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J011
【Fターム(参考)】
4F071AA22X
4F071AA35X
4F071AC03A
4F071AC12A
4F071AE06A
4F071AE09
4F071AF29Y
4F071AG02
4F071AG15
4F071AH02
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC02
4F071FA05
4F071FA10
4F071FB03
4F071FC02
4F071FC05
4F100AB10C
4F100AK07C
4F100AK41A
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AK80A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB02A
4F100EH66C
4F100GB15
4F100JA06A
4F100JK06
4F100JL11
4F100YY00A
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CC10
4J011PA36
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA06
4J011SA04
4J011SA16
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
(57)【要約】
カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むバイポーラ膜(BPM)であって、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なる、前記バイポーラ膜。CELおよびAELは容易に識別可能であり、その結果、BPMを含む膜スタックを、迅速に、層の順序のミスなしで、構築することが可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むバイポーラ膜(BPM)であって、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なる、前記バイポーラ膜。
【請求項2】
AELおよびCELの少なくとも1つが染料を含有する、請求項1に記載のBPM。
【請求項3】
AELおよびCELの少なくとも1つが、水、エタノールおよびトルエンのうち1以上の溶媒中、23℃の温度で測定して、400nmより長い波長に吸収極大を有するノリッシュII型光開始剤である染料を含有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項4】
AELおよびCELが、光を照射したときにイオンを形成する染料を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項5】
AELおよびCELがそれぞれ染料を含有し、AEL中に存在する染料がCEL中に存在する染料とは異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項6】
AELおよびCELがそれぞれ染料を含有し、AEL中に存在する染料の化学式がCEL中に存在する染料の化学式と同じである、請求項1~4のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項7】
色特性の可視的差異が、CIEDE2000に従って表されるΔE00で少なくとも4の差異を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項8】
AELおよびCELの少なくとも1つが、CIEDE2000に従ったL’により表して90未満の明度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項9】
AELおよびCELの少なくとも1つが、CIEDE2000に従ったL’により表して少なくとも10の明度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項10】
AELおよびCELの少なくとも1つが、CIEDE2000に従った彩度C’によって表して少なくとも5の飽和度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項11】
AELおよび/またはCELの色特性が実質的に均一である、請求項1~10のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項12】
過フッ素化ポリマーを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項13】
CELおよびAELの少なくとも1つが、水、エタノールおよびトルエンのうち1以上の溶媒中、23℃の温度で測定して、400nmより長い波長に吸収極大を有する染料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項14】
CELおよび/またはAELが、光開始剤として機能する染料と、該染料が電子的励起状態にあるときに該染料との反応においてフリーラジカルを生成することができる共開始剤とを含む硬化性組成物を硬化させることによって得ることができる、請求項1~13のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項15】
前記染料がAELまたはCELに共有結合していない、請求項2~14のいずれか一項に記載のBPM。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のBPMを含む膜スタック。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のBPMまたは請求項16に記載の膜スタックを含む、電気化学的装置。
【請求項18】
カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むバイポーラ膜の製造プロセスであって、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なる前記プロセス、該プロセスは、いずれかの順序で、または同時に、第1の硬化性組成物を硬化してAELを形成すること、および第2の硬化性組成物を硬化してCELを形成することを含む。
【請求項19】
第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物の一方または両方が、着色光開始剤である染料と、該染料が電子的励起状態にあるときに該染料との反応においてフリーラジカルを生成することができる共開始剤とを含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
第1の硬化性組成物および/または第2の硬化性組成物が染料を含み、該染料が、CELおよび/またはAELに色を提供し、光を照射したときにイオンを形成しない、請求項18または19に記載のプロセス。
【請求項21】
第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物の両方が、着色光開始剤と、該着色光開始剤が電子的励起状態にあるときに該着色光開始剤と反応してフリーラジカルを生成することができる共開始剤とを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物の両方が染料を含み、第1の硬化性組成物中に存在する染料が、第2の硬化性組成物中に存在する染料とは異なる化学式を有する、請求項18~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
CELおよびAELを一緒に付着させることを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
第1の硬化性組成物を硬化してAELまたはCELを形成し、形成したAELまたはCELに第2の硬化性組成物を施用し、第2の硬化性組成物を硬化し、それによってCELまたはAELを形成することを含む、請求項18~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーライオン交換膜、ならびにその調製および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換膜は、電気透析、逆電気透析、電気分解、拡散透析、およびいくつかの他のプロセスにおいて使用される。典型的には、膜を通るイオン輸送は、イオン濃度勾配、または電位勾配などの駆動力の影響を受けて起こる。イオン交換膜は一般に、それらの電荷に応じてカチオン交換膜(CEM)、アニオン交換膜(AEM)として、または、それらが正に帯電した基および負に帯電した基の両方を含む場合、バイポーラ膜(BPM)として分類される。CEMは、カチオンの通過を可能にするがアニオンを拒絶する負に帯電した基を含むが、AEMは、アニオンの通過を可能にするがカチオンを拒絶する正に帯電した基を含む。BPMは、例えばカチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)の形態で、正に帯電した基および負に帯電した基の両方を含む。
【0003】
いくつかのイオン交換膜は、機械的強度を提供する多孔質支持体を含む。そのような膜は、逆帯電したイオンを識別するイオン的に帯電したポリマーと、機械的強度を提供する多孔質支持体の両方が存在するため、しばしば「複合膜」または「細孔充填膜」とよばれる。
【0004】
イオン交換膜は、AEMおよびCEMの両方を含むスタックの形態で、例えば、AEMおよびCEMが交互に存在する電気透析および電気脱イオンにおいて使用されることが多い。特定の用途では、アニオン交換特性を有する機能層(AEL)およびカチオン交換特性を有する機能層(CEL)を有するBPMが使用される。いくつかの用途において、膜のスタックは、BPMおよびAEMおよび/またはCEMを含む。
【0005】
多くの場合、スタックまたは装置に使用される膜はすべて、同様の、通常は白っぽい外観を有し、これらを区別することが難しくなっている。BPMの場合、AELとCELとの視覚的差異が小さいため問題が生じる。手動または自動化プロセスのいずれかでスタックを組み立てる際に、BPMのAELとCELとの視覚的差異の小ささは、すべての膜が同じ方向に配置されているとは限らないBPMスタックなどのミスにつながる可能性がある。このようなミスは、膜の深刻なダメージ、ひいてはスタックの低い性能につながる可能性があり、回避すべきである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CELおよびAELが容易に可視的に識別可能であるBPMを提供するためのいくつかの手段を提供する。このような手段としては、AELおよびCELの色特性が挙げられる。
【0007】
本発明の目的は、丈夫で、BPMなどの膜スタックを迅速にミスなしで構築することができるようにCELおよびAELが容易に識別可能である、BPMを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の観点に従って、カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むバイポーラ膜(BPM)であって、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なる、前記バイポーラ膜を提供する。
【0009】
この文書(その特許請求の範囲を含む)において、動詞「含む(comprise)」およびその活用形は、その非限定的な意味で用いられ、その単語に続く項目は包含されるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する。さらに、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素への言及は、要素が1つだけ存在することを文脈が明確に要求しない限り、1より多くの要素が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0010】
BPMのAELとCELの間の色特性の可視的差異により、層は、人の目によって、および自動センサーまたは同様の認識システムによって、識別可能になる。人間が操作する場合、AELとCELの間の色特性の可視的差異は、AELおよびCELを、例えば日光および/または人工光(例えば、電気的手段によってもたらされる光、例えば、工業的環境で使用される光)で見るときに、可視的であることが好ましい。BPMの自動製造の場合、AELとCELの間の色特性の可視的差異は、日光および/または人工光において可視的であることが好ましい。人工光は、典型的には電気的手段によって生成され、例えば、可視光(例えば、白色、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色および紫色光)、紫外光および赤外光を包含する。
【0011】
好ましい一態様において、AELとCELの間の色特性の可視的差異は、青色光に敏感(例えば、分解する)なAELおよび/またはCELからBPMを工業的に作製するのに特に有用であるため、好ましくは黄色光、特に人工黄色光(例えば、490nmを超える波長の光)の下で可視的である。
【0012】
CELおよびAELの色特性およびそれらの間の可視的差異は、例えば、8mmのMAV測定エリアを使用するなどして、分光光度計、例えばKonica Minolta CM-3600d分光光度計を使用して、分光光学的に定量化することができる。
【0013】
CELおよびAELの色特性およびそれらの間の可視的差異を定量化するのに適したパラメーターは、CIEDE2000から導出される。CIEDE2000は、国際照明委員会によって明記された国際規格であり、例えば、デカルト座標a、bの代わりに円筒座標C’(彩度、相対的飽和度)およびh’(色相角)を規定する、CIE L色空間またはCIELCh色空間を使用して色の特性および差異を表す。明度Lは、両方の色空間に関して同じである。
【0014】
CIE Lの3つの座標は、色の明度(L=0は黒をもたらし、L=100は拡散白色を示す;鏡面反射白色は、より高い可能性がある)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a、負の値は緑を示す一方、正の値はマゼンタを示す)、および黄色と青の間の位置(b、負の値は青を示し、正の値は黄を示す)を表す。
【0015】
本発明の目的は、カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むBPMであって、CELの色特性が、好ましくはAELおよびCELの少なくとも一方に染料を包含させることによって、AELの色特性と可視的に異なっている、前記BPMを提供することである。しかしながら、過剰量の染料は、製造コストを増加させるので望ましくない。
【0016】
AELとCELの間の色特性の可視的差異は、好ましくは、CIEDE2000に従って表されるΔE00での差で少なくとも4である。
AELとCELの間の色特性の差異を容易に見えるようにするためには、AELおよび/またはCELの色は、白すぎないことが好ましい。したがって、AELおよび/またはCELは、好ましくは90未満、より好ましくは80未満、例えば70未満の明度L’を有する。
【0017】
一方、AELおよび/またはCELの色は、暗すぎるべきではない。したがって、AELおよび/またはCELは、好ましくは5より高い、より好ましくは8より高い、特に10より高い、さらに特に少なくとも15、例えば少なくとも20の明度L’を有する。
【0018】
AELおよび/またはCELの相対的飽和度彩度C’(aおよびbの正規化平均とみなすことができる)は、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、特に少なくとも8である。
【0019】
色差は、CIELab 2000ともよばれるCIEDE2000の周知の式であるΔE00として表すことが好ましい。詳細は、例えば、Luo M.R. (編集) Encyclopedia of Colour Science and Technology. Springer, New York, NY. https://doi.org/10.1007/978-1-4419-8071-7_7のLuo M.R. (2016) CIEDE2000, History, Use, and Performance、およびISO規格ISO 11664-6:2014に見出すことができる。
【0020】
AELとCELの間の色差ΔE00は、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも8、特に少なくとも15である。一般的に、ΔE00は、95未満、特に90未満である。
【0021】
AELとCELの間の明度の差(ΔL’)およびAELとCELの間の彩度の差(ΔC’)が非常に小さい場合、色特性の可視的差異は依然として存在する可能性がある。これは、Δh’>20度、好ましくはΔh’>50度によって特徴付けることができる。
【0022】
AELおよび/またはCELの色特性は実質的に均一であることが好ましい、すなわち、AELの異なる部分間の色差ΔE00は好ましくは5未満であり、および/またはCELの異なる部分間の色差ΔE00は好ましくは5未満である。
【0023】
好ましい態様において、BPMのどちら側がCELで、どちら側がAELであるかを容易に決定するために、AELおよびCELの一方または両方は、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なるように染料または染料の組み合わせを含み、例えば、AELおよびCELは、異なる染料または異なる染料の組み合わせを含有し、同じ染料または染料の組み合わせを、異なる量および/または異なる比率で含有する。
【0024】
好ましくは、AELおよびCELの少なくとも1つは染料を含有する。所望により、AELおよびCELは両方とも染料を含有する。一態様において、AELおよびCELはそれぞれ異なる染料を含有する。他の態様において、AELおよびCELは同じ染料を含有するが、異なる量で含有する。特定の態様において、AELおよびCELは同じ染料を同じ量で含有し、深色シフトまたは淡色シフトをもたらす可能性がある、染料と該当層の他の成分との間の相互作用の差異に起因して、可視的に異なる。
【0025】
経済的な理由から、CELおよび/またはAELは、可視色を提供することに加えて別の機能を有する染料を含むことが好ましい。好ましい態様において、CELおよび/またはAELは、光開始剤である染料を含む。光開始剤でもある染料は、適切な波長および強度の光線を照射すると励起状態に達し、そのエネルギーが電子または水素原子を引き抜くことによって共開始剤に移動し、その結果として共開始剤が反応性ラジカル種を形成する染料であることが好ましい。したがって、好ましくは、CELおよび/またはAELは、励起状態にあるときに、共開始剤と反応してラジカルを生じさせることができる染料を含む。CELおよび/またはAEL中に存在する染料(1以上)は、好ましくは、光を照射したときにイオンを形成しない染料である。言い換えれば、好ましくは、AELおよびCELは、光を照射したときにイオンを形成する染料を含まない。CELおよび/またはAEL中に存在する染料(1以上)は、正に帯電したイオンおよび負に帯電したイオンを生成するために、再生的で可逆的な光駆動 (light-driven) 解離または光駆動会合反応を経ることができない染料であることが、特に好ましい。
【0026】
CELおよび/またはAEL中に存在することができる染料(1以上)は、健康上のリスクをもたらさないことが好ましく、例えば、染料(1以上)は、好ましくは遷移金属イオンを含まない。遷移金属の例としては、Cr、Co、Cu、Ir、Mn、Ni、Os、Ru、Pd、PtおよびReが挙げられる。
【0027】
染料は、少なくとも最初は、AELおよび/またはCELに共有結合していないことが好ましい。例えば、染料は、CELまたはAEL内に物理的に閉じ込められていることができる。これにより、より安価な染料など、染料の選択をより柔軟性にすることが可能になり、BPMの製造がより容易になり得る。
【0028】
光開始剤でもある染料の使用(別個の染料および未着色光開始剤を使用する代わりに)は、AELとは可視的に異なる色特性を有するCELを達成するための別個の染料の必要性を排除することによって、コスト上の利益をもたらす。したがって、染料は、着色光開始剤であることが好ましい。
【0029】
場合によっては、染料の化学構造は照射後に変化する。照射後、染料は、照射前の染料とは異なる色を有する反応生成物を形成することができ、または、染料は色を失う可能性がある。後者は好ましくないが、未反応染料が残存し、したがって、形成したAELまたはCELに色を提供する可能性がある。
【0030】
一態様において、AELおよび/またはCELは、光開始剤(すなわち、「着色光開始剤」)である染料を過剰に含む硬化性組成物に照射することから形成される。結果として、照射後にAELおよび/またはCEL中に未反応着色光開始剤がいくらか存在し、したがって、CELおよびAELは、それらを形成するために使用される未反応着色光開始剤の色に対応する色を有する。
【0031】
AELおよびCELの両方が光硬化によって形成され、両方とも光開始剤を必要とする場合、好ましくは、AELおよびCELを形成するために用いられる硬化性組成物は、異なる量の同じ着色光開始剤および/または異なる着色光開始剤を含む。しかしながら、AELの調製に用いられる硬化性組成物中のモノマーと、CELの調製に用いられる硬化性組成物中のモノマーとの間の電荷および構造の差異に起因して、驚くべきことに、多くの場合、AELおよびCELは、それぞれの硬化性組成物中に同じ着色光開始剤を同じ量または濃度で使用した場合であっても、可視的に異なる色特性を有するようになる。これにより、CELおよびAELの両方に着色光開始剤として同じ染料を使用しても、依然としてAELとは可視的に異なる色特性を有するCELを達成することが可能であるので、より効率的な製造プロセスが可能になる。
【0032】
好ましくは、AELおよび/またはCELは、光開始剤として機能する染料を含む硬化性組成物に光を照射することによって得ることができる。好ましくは、硬化性組成物は以下を含む:
(a)少なくとも1つのアニオン性またはカチオン性基を含む1以上の硬化性モノマー;
(b)染料;
(c)所望により、共開始剤;
(d)所望により、アニオン性基およびカチオン性基を含まない硬化性モノマー;ならびに
(e)所望により、好ましくは不活性溶媒である溶媒。
【0033】
好ましくは、染料は、着色光開始剤、特にノリッシュII型光開始剤である。
好ましくは、CELおよびAELの少なくとも1つは、(例えば、上記硬化性組成物における成分(a)として)、水、エタノールおよびトルエンのうち1以上の溶媒中、23℃の温度で測定して、400nmより長い波長、より好ましくは400~800、例えば430nm~800nmの波長に吸収極大を有する染料を含む。
【0034】
吸収極大は、23℃において、関連溶媒(すなわち、水、エタノールまたはトルエン)中に溶解した0.01重量%の濃度の染料(例えば、着色光開始剤)を用い、例えば、1mmの経路長(例えば、光が通過する内部長さが1mmである石英キュベット)を用いて測定することが好ましい。例えば、Agilent TechnologiesからのVarian CaryTM 100集中(conc.)ダブルビームUV/VIS分光光度計を用いて、吸収極大を測定することができる。
【0035】
染料の吸収極大(すなわち400nmより長い)におけるモル減衰係数は、好ましくは少なくとも7500M-1cm-1(750mmol-1)、より好ましくは少なくとも10000M-1cm-1である。モル減衰係数は、UV-VIS分光光度計、例えば、Agilent TechnologiesからのCaryTM 100 UV-可視分光光度計を用いて測定することができる。
【0036】
好ましくは、染料は、それぞれの場合において、水、エタノ-ルおよびトルエンのうち1以上の溶媒中、23℃の温度で測定して、400nmより長い波長に吸収極大を有するという条件で、キサンテン、フラビン、クルクミン、ポルフィリン、アントラキノン、フェノキサジン、カンファーキノン、フェナジン、アクリジン、フェノチアジン、キサントン、チオキサントン、チオキサンテン、アクリドン、フラボン、クマリン、フルオレノン、キノリン、キノロン、ナフタキノン、キノリノン、アリールメタン、アゾ、ベンゾフェノン、カロテノイド、シアニン、フタロシアニン、ジピリン、スクアリン、スチルベン、スチリル、トリアジンまたはアントシアニン由来の光開始剤、あるいはそれらの2以上(例えば、2~5種のそのような光開始剤)を含む混合物である。
【0037】
上記で明記した吸収極大を有する光開始剤として機能することができる染料の例としては、エオシンY、エオシンY二ナトリウム塩、フルオレセイン、ウラニン、エリスロシンB、ローズベンガル、フロキシンB、4,5-ジブロモフルオレセイン、ローダミンB、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、アクリフラビン、クルクミン、レサズリン、サフラニン-O、フェノサフラニン、ニュートラルレッド、アクリジンオレンジ、アシッドブルー43、1,4-ジアミノ-アントラキノン、1,4-ジヒドロキシ-アントラキノン、ブロマミン酸ナトリウム塩、カルミン酸、エチルバイオレット、パテントブルーV、メチルオレンジ、ナフトールイエローS、メチレンブルー、インジゴカルミン、(4-ジメチルアミノスチリル)メチルピリジニウムヨージド、キノリンイエロー、キノリンイエローWS、酢酸チオニン、ベータ-カロテン、クマリン6、クマリン343、クマリン153、亜鉛-プロトポルフィリンIX、亜鉛-テトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸、亜鉛-フタロシアニン、シアニジンクロリド、インドモノカルボシアニン(indomonocarbocyanine)ナトリウム、レゾルフィン、ナイルレッド、ピロニンY、9-フルオレノンカルボン酸、3-ブトキシ-5,7-ジヨード-6-フルオロン、3-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-6-フルオロン、2-クロロチオキサントン、およびケルセチンが挙げられる。好ましい染料としては、サフラニン-O、アクリジンオレンジ、ブロマミン酸ナトリウム塩、エチルバイオレット、メチルオレンジ、クルクミン、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、メチレンブルー、亜鉛フタロシアニン、テトラフェニルスルホン酸ポルフィリン、キノロンイエローWS、キナルジンレッド、エオシンY、エオシンY二ナトリウム塩、エリスロシンB、ローズベンガル、ローダミンB、フロキシンBおよびジブロモフルオレセインが挙げられる。
【0038】
染料は、好ましくは少なくとも10個(より好ましくは少なくとも12個)の非局在化(π)電子を有する共役系を含む。共役系は、分子中に非局在化電子を有する接続されたp軌道系であり、一般に交互に単結合および多重結合を有する。
【0039】
食品または医薬用途での使用を意図したBPMの場合、染料(1以上)は、好ましくは無害であることが公知であり、ならびに/あるいは食品および/または医薬用途について(例えば、米国食品医薬品局(FDA)によって)承認されており、例えば、エリスロシンB、フラビンモノヌクレオチド、クルクミン、リボフラビン、タートラジン、キノロンイエロー、アゾルビン、アマランス、ポンソー4R、アルラレッドAC、パテントブルーV、インジゴカルミン、ブリリアントブルーFCF、クロロフィル誘導体、クロロフィルまたはクロロフィリン誘導体の銅錯体、カロテノイド、サンセットイエローFCF、カルミン酸、グリーンS、キサントフィル誘導体、ブリリアントブラックBN、またはそれらの1以上である。
【0040】
染料は、典型的には400nmより長い波長の光を吸収して励起光開始剤分子を生成し、これは、共開始剤から電子、陽子またはその両方を引き抜いてフリーラジカルをもたらす。したがって、硬化性組成物は共開始剤を含むことが好ましい。次いで、フリーラジカルは、硬化性モノマーを硬化させる。共開始剤は、染料が電子的励起状態にあるとき、例えば、硬化性組成物に染料の吸収スペクトルにマッチする光を照射したときに、染料との反応においてフリーラジカルを生成することができる任意の化学物質であることができる。
【0041】
好ましくは、共開始剤(すなわち、成分(c))は、第三級アミン、アクリル化アミン、オニウム塩(例えば、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムまたはジアゾニウムイオンの塩)、トリアジン誘導体、有機ハロゲン化合物、エーテル基、ケトン、チオール、ホウ酸塩、硫化物(例えば、チオエーテル)、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、またはそれらの2以上を含む。
【0042】
好ましい共開始剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチレンジアミン-テトラ(2-プロパノール)、1,4-ジメチルピペラジン、n-フェニルジエタノールアミン、4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、四臭化炭素、ジフェニルヨードニウムクロリド、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジフェニルヨードニウムニトラート、N-フェニルグリシン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、ヘキサエチルメラミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピペロニルアルコール、N,N-ジメチル-p-トルイジン、L-アルギニン、およびそれらの2以上を含む混合物が挙げられる。
【0043】
硬化性組成物は、好ましくは0.002~4重量%、より好ましくは0.005~2重量%、特に0.005~0.9重量%の染料(成分(b))を含む。
硬化性組成物は、好ましくは0.01~40重量%、より好ましくは0.05~20重量%、さらにより好ましくは0.1~5重量%の共開始剤(成分(c))を含む。
【0044】
硬化性組成物中に存在する染料と共開始剤のモル比は、好ましくは1:1より大きく、より好ましくは1:2より大きく、特に1:5より大きく、さらに特に1:10より大きい。
【0045】
硬化性組成物は、好ましくは、少なくとも1つのアニオン性またはカチオン性基、すなわち、AELについてはカチオン性基およびCELについてはアニオン性基を含む、硬化性モノマー(成分(a))を含む。硬化性モノマー中に存在することができる好ましいアニオン性基(1以上)としては、酸性基、例えば、スルホ、カルボキシおよび/またはホスファト基、特にスルホ基が挙げられる。硬化性モノマー中に存在することができる好ましいカチオン性基(1以上)としては、第四級アンモニウムおよびホスホニウム基、特に第四級アンモニウム基が挙げられる。
【0046】
好ましくは、硬化性モノマーはポリマーではなく、モノマーまたはオリゴマーである。すなわち、硬化性モノマーは、以下の式を満たす分子量(MW)を有することが好ましい:
MW<(3000+300n)
[式中:
MWは、硬化性モノマーの分子量であり;
nは、1~6の値を有し、硬化性モノマー中に存在するイオン性基の数である]。
【0047】
硬化性モノマーは、好ましくは、アニオン性基またはカチオン性基と、1以上のエチレン性不飽和基、例えば、重合可能なエチレン不飽和基とを含む。
硬化性組成物のpHに応じて、硬化性モノマー中に存在するアニオン性またはカチオン性基は、対イオン、例えば、アニオン性基の場合はナトリウム、リチウム、アンモニウム、カリウムおよび/またはピリジニウム、ならびにカチオン性基の場合は塩化物および/または臭化物と、部分的または全体的に塩を形成することができる。
【0048】
硬化性モノマー中に存在することができる好ましいエチレン性不飽和基は、ビニル基、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基またはスチレン基の形態にある。(メタ)アクリル基は、好ましくは(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド基、より好ましくは(メタ)アクリルアミド基、例えば、アクリルアミドまたはメタクリルアミド基である。
【0049】
環境および健康への配慮に起因して、ポリ(テトラフルオロエチレン)などの過フッ素化ポリマー主鎖の使用は好ましくない。一般に、非過フッ素化モノマーは、より低コストである。このため過フッ素化モノマーは好ましくなく、したがって、BPMは、好ましくは過フッ素化ポリマーを含まない。
【0050】
好ましい硬化性モノマーの例としては、以下の式(A)、(B)、(CL)、(SM)、(MA)、(MB-α)、(C)、(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)、および/または(AM-B)の化合物が挙げられる:
【0051】
【化1】
【0052】
式(A)および(B)において、
A1~RA3は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し;
B1~RB7は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表し;
A1~ZA3は、それぞれ独立して、-O-または-NRa-[式中、Raは水素原子またはアルキル基を表す]を表し;
A1~LA3は、それぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基、またはこれらの組み合わせの二価の連結基を表し;
は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、またはこれらの組み合わせの二価の連結基を表し;そして
A1~XA3は、それぞれ独立して、有機または無機アニオン、好ましくは、ハロゲンイオンまたは脂肪族もしくは芳香族カルボン酸イオンを表す。
【0053】
式(A)または(B)の化合物の例としては、以下が挙げられる:
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
合成方法は、例えば、米国特許公報US2015/0353721、US2016/0367980およびUS2014/0378561に見出すことができる。
【0057】
【化4】
【0058】
式(CL)および(SM)において、
は、アルキレン基またはアルケニレン基を表し;
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、線状もしくは分枝状のアルキル基またはアリール基を表し、
およびR、ならびに/またはRおよびRは、互いに結合することにより環を形成していてもよく;
、R、およびRは、それぞれ独立して、線状もしくは分枝状のアルキル基またはアリール基を表し、
およびR、またはR、RおよびRは、互いに結合することにより脂肪族複素環を形成していてもよく;
n1、n2およびn3は、それぞれ独立して、1~10の整数を表し;そして
、X およびX は、それぞれ独立して、有機または無機アニオンを表す。
【0059】
式(CL)および(SM)の例としては、以下が挙げられる:
【0060】
【化5】
【0061】
【化6】
【0062】
合成方法は、欧州特許EP3184558および米国特許公報US2016/0001238に見出すことができる。
【0063】
【化7】
【0064】
式(MA)および(MB-α)において、
A1は、水素原子またはアルキル基を表し;
は、-O-またはNRa-[式中、Raは水素原子またはアルキル基を表す]を表し;
は、有機または無機カチオン、好ましくは水素イオンまたはアルカリ金属イオンを表し;
A2は、水素原子またはアルキル基を表し、
A4は、スルホン酸基を含み、エチレン性不飽和基を有さない有機基を表し;そして
は、-NRa-[式中、Raは水素原子またはアルキル基、好ましくは水素原子を表す]を表す。
【0065】
式(MA)および(MB-α)の例としては、以下が挙げられる:
【0066】
【化8】
【0067】
合成方法は、例えば、米国特許公報US2015/0353696に見出すことができる。
【0068】
【化9】
【0069】
合成方法は、例えば、米国特許公報US2016/0369017に見出すことができる。
【0070】
【化10】
【0071】
式(C)において、
は、アルキレン基を表し;
nは、1~3、好ましくは1または2の整数を表し;
mは、1または2の整数を表し;
は、n価の連結基を表し;
は、水素原子またはアルキル基を表し;
は、-SO または-SO3-を表し、Rが複数である場合、各Rは、独立して-SO または-SO3-を表し;
は、水素イオン、無機イオンまたは有機イオンを表し;そして
は、アルキル基またはアリール基を表す。
【0072】
式(C)の例としては、以下が挙げられる:
【0073】
【化11】
【0074】
合成方法は、欧州特許EP3187516に見出すことができる。
【0075】
【化12】
【0076】
式(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)および(AM-B)において、
RおよびR’のそれぞれは、独立して、水素原子またはアルキル基を表し;
LLは、単結合または二価の連結基を表し;
LL、LL1’、LL、およびLL2’のそれぞれは、独立して、単結合または二価の連結基を表し;AおよびA’のそれぞれは、独立して、遊離酸または塩の形態にあるスルホ基を表し;そして
mは、1または2を表す。
【0077】
式(ACL-A)、(ACL-B)、(ACL-C)および(AM-B)の例としては、以下が挙げられる:
【0078】
【化13】
【0079】
合成方法は、米国特許公報US2016/0362526に見出すことができる。
他の例としては、以下を挙げることができる:
【0080】
【化14】
【0081】
所望により、硬化性組成物はさらに、成分(e)として1以上の溶媒を含む。溶媒は、他の成分と共重合しないか、または共開始剤として作用しない、任意の溶媒であることができる。一態様において、溶媒は、水および所望により有機溶媒を、特に有機溶媒の一部または全部が水混和性である場合、含むことが好ましい。水は硬化性モノマーを溶解するのに有用であり、有機溶媒は、硬化性組成物の他の有機成分を溶解するのに有用である。溶媒は、硬化性組成物の粘性および/または表面張力を低下させるのに有用である。
【0082】
いくつかの態様において、硬化性組成物は、好ましくは0~60重量%、より好ましくは4~50重量%、もっとも好ましくは10~45重量%の溶媒(例えば、成分(e)として)を含む。他の態様において、硬化性組成物は、35~95重量%、好ましくは60~90重量%の溶媒(例えば、成分(e)として)を含む。
【0083】
好ましくは、BPMは多孔質支持体を含む。多孔質支持体は、BPMを強化することができる。多孔質支持体の細孔に第1の硬化性組成物(1以上)を充填し、次いで、第2の硬化性組成物(第1の硬化性組成物の硬化性モノマー(1以上)と反対に帯電した少なくとも1つのイオン性基を含む硬化性モノマーを含む)を施用する前に硬化した後、第2の硬化性組成物を硬化することができる。
【0084】
多孔質支持体の例として、織布状および不織布状合成ファブリックならびに押出フィルムを挙げることができる。例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリアリールエーテルケトン、およびそれらのコポリマーから作製された、湿式(wetlaid)および乾式(drylaid)不織材料、スパンボンドおよびメルトブローンファブリックならびにナノ繊維ウェブが挙げられる。多孔質支持体はまた、多孔質膜、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテイルミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル1-ペンテン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンおよびポリクロロトリフルオロエチレン膜ならびにそれらの誘導体であってもよい。
【0085】
多孔質支持体は、好ましくは10~700μm、より好ましくは20~500μmの平均厚さを有する。
好ましくは、多孔質支持体は30~95%の多孔度を有する。支持体の多孔度は、ポロメーター、例えば、ドイツのIB-FT GmbHからのPoroluxTM 1000によって決定することができる。
【0086】
多孔質支持体は、存在する場合、所望により、その表面エネルギーを、例えば45mN/mを超える、好ましくは55mN/mを超える値に改変するように処理されている多孔質支持体である。例えば、多孔質支持体に対するポリマーの湿潤性および付着性を向上させるのに適した処理としては、コロナ放電処理、プラズマグロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、化学処理などが挙げられる。
【0087】
市販の多孔質支持体は、いくつかの供給源、例えば、Freudenberg Filtration Technologies(Novatexx材料)、Lydall Performance Materials、Celgard LLC、APorous Inc.、SWM(Conwed Plastics、DelStar Technologies)、Teijin、Hirose、Mitsubishi Paper Mills LtdおよびSefar AGから入手可能である。
【0088】
好ましくは、支持体はポリマー支持体である。
芳香族多孔質支持体としては、1以上の芳香族モノマー、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)、(スルホン化)ポリフェニレンスルホン、ポリ(フェニレンスルフィドスルホン)、芳香族ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT))、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドまたはこれらの2以上の組み合わせから誘導される多孔質支持体が挙げられる。一態様において、支持体はUV光(380nm以下)を強く吸収する。UV分光計で測定したときに、該支持体は340nmより長い波長において90%未満の透過率を有することから、吸収が強力であるとみなす。
【0089】
市販の芳香族多孔質支持体の例としては、Teijin、Hirose、Mitsubishi Paper Mills LtdおよびSefar AGが挙げられる。
本発明の第2の観点に従って、本発明の第1の観点に従ったBPMを含む膜スタックを提供する。
【0090】
本発明の第3の観点に従って、本発明の第1の観点に従ったBPMまたは本発明の第2の観点に従った膜スタック含む電気化学的装置を提供する。
本発明の第4の観点に従って、カチオン交換層(CEL)およびアニオン交換層(AEL)を含むバイポーラ膜の製造プロセスであって、CELの色特性がAELの色特性と可視的に異なる、前記プロセスを提供する。このプロセスは、いずれかの順序で、または同時に、第1の硬化性組成物を硬化してAELを形成すること、および第2の硬化性組成物を硬化してCELを形成することを含む。
【0091】
好ましくは、第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物の一方または両方は、染料、好ましくは、着色光開始剤である染料を含む。染料および硬化性組成物に好ましいものは、本発明の第1の観点に関連して上記したとおりである。したがって、例えば、染料は、光を照射したときにイオンを形成しないことが好ましい。
【0092】
好ましい態様において、第1の硬化性組成物および第2の硬化性組成物は両方とも、着色光開始剤である染料、特に、光を照射したときにラジカルを形成する光開始剤を含む。第1の硬化性組成物中に存在する染料は、第2の硬化性組成物中に存在する染料とは異なる化学式を有することが好ましいが、これは必ずしも必須ではない。
【0093】
本発明の第4の観点に従ったプロセスはさらに、所望により加熱しながら、例えばCELおよびAELを一緒にプレスすることによって、CELおよびAELを一緒に付着させることを含むことが好ましい。
【0094】
AELおよびCELは、独立して作製した後、例えば、AELおよびCELに圧縮力および/または熱を加えてそれらを一緒に結合し、それによってBPMを形成することを含む積層プロセスによって、一緒に付着させることができる。あるいは、BPMは、第1の硬化性組成物を硬化してAELまたはCELを形成した後、形成したAELまたはCELに第2の硬化性組成物を施用し、該第2の硬化性組成物を硬化してその上にAELおよびCELの他方を形成することを含むプロセスによって調製することができる。所望により、AELおよびCELの一方または両方は、多孔質支持体を含む。
【0095】
好ましい態様において、バイポーラ膜の製造プロセスは、硬化性組成物(好ましくは染料を含有する)を、移動する(多孔質)支持体に、好ましくは、硬化性組成物施用ステーション(例えば、CEL用に1つ、AEL用にもう1つ)と、組成物を硬化するための1以上の照射源(1以上)と、膜収集ステーションと、支持体を硬化性組成物施用ステーションから照射源(1以上)そして膜収集ステーションへ移動させる手段とを含む製造ユニットにより、連続的に施用することを含む。
【0096】
硬化性組成物施用ステーションは照射源(1以上)に対し上流の位置に置くことができ、照射源(1以上)は膜収集ステーションに対し上流の位置に置く。
硬化性組成物を施用するのに適したコーティング技術の例としては、スロットダイコーティング、スライドコーティング、エアーナイフコーティング、ローラーコーティング、スクリーン印刷、および浸漬が挙げられる。用いられる技術および望ましい最終仕様に応じて、例えば、ロール・ツー・ロールスクイーズ、ロール・ツー・ブレードもしくはブレード・ツー・ロールスクイーズ、ブレード・ツー・ブレードスクイーズ、またはコーティングバーを使用した除去によって、基材から過剰なコーティングを除去する必要があり得る。光による硬化は、40~1500mJ/cm-2の線量を用いて400nm~800nmの波長で行うことが好ましい。場合によっては、40℃~200℃の温度を採用することができる追加の乾燥が必要になることもある。
【実施例
【0097】
ここで、本発明を非限定的な実施例を用いて例示するが、特記しない限り、すべての部およびパーセンテージは重量基準である。
実施例において、以下の特性は、以下に記載する方法によって測定した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
段階(a)BPMを作製するための組成物の調製
BPMを作製するために使用したAEL組成物は、以下の表3に示す構成成分を含有していた。ここで、光開始剤は、1173、EL、EB、MB、RZまたはQRである:
【0101】
【表3】
【0102】
BPMを作製するために使用したCEL組成物は、以下の表4に示す構成成分を含有していた。ここで、光開始剤は、1173、EL、EB、MB、RZまたはQRである:
【0103】
【表4】
【0104】
段階(b)-BPMの調製
表4(CELについて)および表3(AELについて)に示した組成物から6つのBPM(以下の表5に示すBPM1~BPM6)を調製するための一般的な方法は、以下のとおりであった:
上記表4(CEL組成物)に示した組成物を、100μmのMeyerバーを用いてPETシート上に100μmの層としてコーティングした。多孔質支持体(2223-10)を組成物の層に置き、過剰なCEL組成物をこすり落とした。その後、多孔質支持体中に存在する組成物を、中圧水銀バルブ(240W/cm、50%)を備えたHeraeus F450マイクロ波駆動UV硬化システムを装備し、5m/分に設定されたコンベヤーベルト上に置くことによって硬化して、BPMのCELになるものを得た。つぎに、上記表3(AEL組成物)に示した組成物を、先に形成したCEL上に100μmの層としてコーティングした。多孔質支持体(2223-10)を組成物(すなわち、AEL組成物)の層に置き、過剰なAEL組成物をこすり落とした。その後、多孔質支持体中に存在するAEL組成物を、中圧水銀バルブ(240W/cm、100%)を備えたHeraeus F450マイクロ波駆動UV硬化システムを装備し、5m/分に設定されたコンベヤーベルト上に置くことによって硬化して、それぞれが多孔質支持体を含んでいるAELおよびCELを含むBPMを得た。
【0105】
BPMの色特性
段階(b)から生じるBPMのAELおよびCELの色特性は、光学ツール試料ホルダーの8mmのMAV測定エリアおよび白色校正板(Minolta CM-A139)を用い、Konica Minolta CM-3600a分光光度計を用いて、CIEDE2000に従って測定した。AELおよびCELの色データを以下の表5に示す:
【0106】
【表5】
【0107】
表5では、以下の略語を使用する:
光開始剤は、AEL(上記表3に記載の組成物からのもの)またはCEL(上記表4に記載の組成物からのもの)を作製するために使用した光開始剤を意味する。
L’は、CIEDE2000に従った明度を意味する
C’は、CIEDE2000に従った彩度を意味する
h’は、CIEDE2000に従った色相角を意味する。
AELは、アニオン交換層を意味する。
CELは、カチオン交換層を意味する。
ΔE00は、CIEDE2000に従った、AELとCELの色差を意味する
【国際調査報告】