(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】C-1インヒビター欠乏血漿から免疫グロブリン製剤を生産する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/14 20060101AFI20230508BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20230508BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20230508BHJP
A61P 7/08 20060101ALI20230508BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230508BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230508BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230508BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230508BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C07K1/14
C07K1/18
C07K1/34
A61P7/08
A61K39/395 X
A61P37/04
A61P37/06
A61P29/00
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559480
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021024644
(87)【国際公開番号】W WO2021202373
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マイス-パウル ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】テシュナー ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ブルックシュバイガー レオポルト
(72)【発明者】
【氏名】グナウアー ルシア
(72)【発明者】
【氏名】タリアー ブリギッテ
(72)【発明者】
【氏名】グラント サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ポト ジョフリー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA33
4C085BB31
4C085BB36
4C085CC14
4C085CC22
4C085DD34
4C085DD37
4C085DD41
4C085EE01
4H045AA20
4H045BA09
4H045CA42
4H045DA75
4H045EA20
4H045GA10
4H045GA21
4H045GA23
(57)【要約】
C1-INH欠乏血漿上清から免疫グロブリンG(IgG)濃縮画分を調製する方法が記載されている。C1-INH欠乏血漿上清からの免疫グロブリンG(IgG)濃縮画分の単離は、製造工程のための代替的な出発原料をもたらした。本発明では、C1-INH欠乏血漿上清は、更なる処理の前にヘパリンにより処理される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンG(IgG)を含むC1-INH欠乏上清画分からIgG濃縮画分を調製する方法であって、
(a)前記C1-INH欠乏上清画分をヘパリンと接触させ、それによって、ヘパリン添加画分を形成することと、
(b)前記ヘパリン添加画分からIgGを単離し、それによって、IgG濃縮画分を形成することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記上清画分が、C1インヒビター吸着の後の上清である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上清画分が、血漿上清である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記血漿上清が、C1-INH欠乏脱クリオ血漿である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記上清画分が、第II、第VII、第IX、第X因子から選択される他の血液凝固因子のうちの1つもしくは複数、またはそれらの混合物が欠乏している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記上清画分が、更なる処理の前に正常血漿のタンパク質値まで濃縮される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヘパリンは、上清画分1mlあたり約1~約20単位の量で添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘパリンは、上清画分1mlあたり約5単位の量で添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘパリンは、上清画分1mlあたり約10単位の量で添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)の前に、C1-INHを含有する脱クリオ血漿画分からC1-INHエステラーゼインヒビター(C1-INH)を取り除き、それによって、前記C1-INH欠乏上清画分を形成すること
を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記IgG濃縮画分は、前記上清画分中に見られるIgG含有量の少なくとも約50%を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記IgG濃縮画分中のIgGの純度が、少なくとも95%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
b)における前記ヘパリン添加画分からIgGを単離することが、
(i)画分I沈殿物及び画分I上清を得るために、約6%~約10%のエタノールを用いて、約7.0~7.5のpHで、前記ヘパリン添加画分を沈殿させることと、
(ii)画分II+III沈殿物を形成するために、約18%~約27%のアルコールを用いて、約6.7~約7.3のpHで、前記画分I上清からIgGを沈殿させることと
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
b)における前記ヘパリン添加画分からIgGを単離することが、
(i)画分I+II+III沈殿物を形成するために、約18%~約27%のアルコールを用いて、約6.7~約7.3のpHで、前記ヘパリン添加画分からIgGを沈殿させること
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(iii)懸濁緩衝液内で画分II+IIIまたは画分I+II+IIIの沈殿物を懸濁し、それによって、IgG懸濁物を形成することと、
(iv)微細に分割された二酸化ケイ素(SiO
2)を前記IgG懸濁物と少なくとも約30分間混合することと、
(v)前記IgG懸濁物を濾過し、それによって、濾液及びフィルタケーキを形成することと
を更に含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
(vi)約4.9~約5.3のpHを有する、少なくとも1フィルタプレス死容積(filter press dead volume)の洗浄緩衝液によりフィルタケーキを洗浄し、それによって、洗浄溶液を形成することと、
(vii)前記濾液を前記洗浄溶液と合わせ、それによって、溶液を形成し、洗浄剤により前記溶液を処理することと、
(viii)ステップ(vii)の前記溶液のpHを約7.0に調整して、エタノールを約20%~約30%の最終濃度まで添加し、それによって、沈殿G沈殿物を形成することと、
(ix)1種の溶媒および/または1種もしくは複数種の洗浄剤を含む水溶液内で沈殿G沈殿物を溶解し、前記溶液を少なくとも60分間保持することと、
(x)前記溶液をカチオン交換クロマトグラフィカラムに通して、前記カラム上に吸収されたタンパク質を溶出液に溶出させることと、
(xi)フロースルー流出液を生成するために、前記溶出液をアニオン交換クロマトグラフィカラムに通すことと、
(x)ナノ濾液を生成するために、前記流出液をナノフィルタに通すことと、
(xi)第1の限外濾液を生成するために、限外濾過によって前記ナノ濾液を濃縮することと、
(xii)透析濾液を生成するために、前記第1の限外濾液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過することと、
(xiii)約8%(w/v)~約22%(w/v)のタンパク質濃度を有する第2の限外濾液を生成するために、限外濾過によって前記透析濾液を濃縮して、それによって、IgG濃縮画分を形成することと
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(iv)は、画分II+IIIまたは画分I+II+IIIの沈殿物の1グラムあたり約0.02~約0.10グラムの最終濃度までSiO
2を添加することを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
(vi)は、少なくとも2フィルタプレス死容積の洗浄緩衝液により前記フィルタケーキを洗浄することを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
x)は、少なくとも35mMのリン酸二水素ナトリウム二水和物により前記タンパク質を溶出させることを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(xii)における前記透析濾過緩衝液は、約200mM~約300mMのグリシンを含む、請求項16~[エラー!参照元が見つかりません]のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(vii)における1種の溶媒および/または1種もしくは複数種の洗浄剤により前記溶液を処理することは、少なくとも1回のウイルス不活性化または除去のステップを含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルス不活性化は、溶媒/洗浄剤(S/D)ウイルス不活性化ステップである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
約4.0~約5.2の低pHでのインキュベーションステップを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
約4.4~約4.9の低pHでのインキュベーションステップを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
IgGを含む、C1インヒビター吸着後の上清画分であって、脱クリオ血漿画分に存在する全C1-INHの少なくとも約70%が欠乏した脱クリオ血漿画分である、前記画分。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載の方法に従って調製されたIgG濃縮画分を含む医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物は、該組成物1リットルあたり少なくとも約80~220グラムのIgGを含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物のpHは、約4.4~約4.9である、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/002,791号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
様々な血液疾患のみでなく、他の原因の病気を治療するために、血漿由来血液製剤が使用される。例えば、ヒト血漿由来の免疫グロブリン(IgG)製剤は、免疫不全を治療するために1952年に最初に使用された。それ以来、IgG調製剤は、医学的状態の少なくとも3つの主要なカテゴリ:(1)低抗体レベルを特徴とする、X連鎖無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症(原発性免疫不全)、及び後天的な易感染性免疫状態(続発性免疫不全)などの免疫不全、(2)炎症性及び自己免疫疾患、並びに(3)急性感染症、における広範囲の使用が見出されてきた。
【0003】
IVIG治療が原発性免疫不全疾患に対処するために非常に効果的であることがあるが、この療法は、病気の治癒ではなく、体内で生成されない抗体についての一時的な置換にすぎない。したがって、IVIG療法に依存した患者は、典型的には月1回程度の投薬を生涯繰り返す必要がある。この必要性は、IVIG組成物の継続的な生産に対する大きな需要を生じさせる。しかしながら、組み換えDNAベクターのインビトロ発現を介して生産される他の生物製剤とは異なり、IVIGは、ヒトから提供された血液及び血漿から分画される。よって、IVIG製剤は、生産量を単純に増大させることによっては増大することができない。むしろ、商業的に利用可能なIVIGのレベルは、提供される血液及び血漿の利用可能な供給量によって制限される。
【0004】
いくつかのIVIG調製方法が、IVIG製剤の商業的な供給者によって使用される。現在のIVIG生産方法に関する1つの共通の問題は、出発原料の総IgG含有量の少なくとも30%~35%であると予測される、精製工程でのIgGの大量の損失である。1つの課題は、ウイルス不活性化の品質、及び有害反応を生じさせることがある不純物がないことを維持すると共に、IgGの収率を高めることである。
【0005】
IVIGの現在の生産レベルでは、僅かと思われる収率の増加も、実際には非常に重要である。例えば、2007年の生産レベルでは、効率性における2%の増大(56ミリグラム/リットルの増加に等しい)は、IVIGの1.5メートルトンの増加を生じさせる。
【0006】
血漿由来の生物学的治療剤を製造及び製剤化するとき、様々な安全予防措置が考慮される必要がある。それらは、提供された血漿の使用から起こる血液感染性病原体(例えば、ウイルス及び細菌性病原体)、抗補体活性、並びに他の望ましくない混入物質を除去及び/または不活性化する方法を含む。高レベルのアミド分解活性の投与が、望ましくない血栓塞栓性イベントを結果としてもたらすことがあるということを研究が示唆してきた(Wolberg AS et al.,Coagulation factor XI is a contaminant in intravenous immunoglobulin preparations.Am J Hematol 2000;65:30-34(非特許文献1);及びAlving BM et al.,Contact-activated factors:contaminants of immunoglobulins preparations with coagulant and vasoactive properties.J Lab Clin Med 1980;96:334-346(非特許文献2);これらの開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0007】
この懸念事項に光を当てたのが、米国におけるOctagam(登録商標)(Octapharma)の最近の自主的な取り下げ、並びに血栓塞栓性イベントの報告が増大したことによる欧州委員会によるOctagam(登録商標)及びOctagam 10%の市場承認の差し止めであった。第XI、第XIa、第XII、及び第XIIa因子など、セリンプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼチモーゲン不純物によって生じる、当該生物製剤における高レベルのアミド分解活性によって、増大した塞栓イベントが生じた可能性が高い(FDA Notice:Voluntary Market Withdrawal-September 23,2010 Octagam[Immune Globulin Intravenous(Human)]5% Liquid Preparation;Octagam 50 mg/ml,solution-Octapharma France-Mise en quarantaine de tous les lots,AFSSAPSにより2010年9月9日にオンラインで発表(非特許文献3);及びQuestions and answers on the suspension of the marketing authorisations for Octagam(human normal immunoglobulin 5% and 10%),European Medicines Agencyにより2010年9月23日にオンラインで発表(非特許文献4))。
【0008】
WO2014113659A1(特許文献1)は、インターアルファ阻害タンパク質(IαIp)欠乏血液製剤原料から1種または複数種の血液製剤を単離する方法を開示している。血液製剤は、先述のIαIp欠乏脱クリオ血漿をDEAE担体に接触させることによって、IαIp欠乏脱クリオ血漿からクロマト分離される。この参考文献は、IgGの製造のためのC1-INH欠乏血漿上清の使用を開示していない。それは、ヘパリンにより血漿上清を処理し、それによって、IgGにおけるアミド分解活性及びプロコアグラント活性を減少させることも開示してない。
【0009】
IgG調製剤のための出発原料の供給量が制限されること、及び精製工程で相当な量のIgGが損失することに対する懸念に起因して、IgGを製造するための相当な量の代替的な出発原料の利用可能性を増大させる方法を提供する即時的な必要性が当技術分野において存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wolberg AS et al.,Coagulation factor XI is a contaminant in intravenous immunoglobulin preparations.Am J Hematol 2000;65:30-34
【非特許文献2】Alving BM et al.,Contact-activated factors:contaminants of immunoglobulins preparations with coagulant and vasoactive properties.J Lab Clin Med 1980;96:334-346
【非特許文献3】FDA Notice:Voluntary Market Withdrawal-September 23,2010 Octagam[Immune Globulin Intravenous(Human)]5% Liquid Preparation;Octagam 50 mg/ml,solution-Octapharma France-Mise en quarantaine de tous les lots,AFSSAPSにより2010年9月9日にオンラインで発表
【非特許文献4】Questions and answers on the suspension of the marketing authorisations for Octagam(human normal immunoglobulin 5% and 10%),European Medicines Agencyにより2010年9月23日にオンラインで発表
【発明の概要】
【0012】
本発明は、それらの問題及び他の問題を解決する。1つの実施形態では、本発明は、免疫グロブリンG(IgG)濃縮画分の調製のための出発原料としてC1-INH欠乏血漿上清を使用することができ、よって、IgGの調製のための別の出発原料を利用可能にすることを発見したことに基づいている。血漿由来タンパク質組成物が投与されている患者における血栓塞栓性イベントの発生と対となるそれらの組成物のアミド分解性含有物に対する最近の懸念事項は、それらの生物製剤の製造の間にセリンプロテアーゼ(例えば、FXIa及びFXIIa)並びにセリンプロテアーゼチモーゲン(例えば、FXI及びFXII)を低減させる方法についての当技術分野における必要性を強調してきた。有利なことに、本発明は、分画工程の間にプロコアグラント活性及びアミド分解活性を許容可能なレベルに低減させるためにヘパリンを使用することができるという予期せぬ発見に少なくとも部分的に基づいている。また、セリンプロテアーゼ活性、セリンプロテアーゼ含有量、及び/またはセリンプロテアーゼチモーゲン含有量を低減させた血漿由来のタンパク質医薬組成物も提供される。また、本発明の組成物の投与によって病気を治療または予防する方法も提供される。
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、免疫グロブリンG(IgG)を含むC1-INH欠乏上清画分からIgG濃縮画分を調製する方法を提供する。方法は、
(a)C1-INH欠乏上清画分をヘパリンと接触させ、それによって、ヘパリン添加C1-INH欠乏画分を形成することと、
(b)ヘパリン添加C1-INH欠乏画分からIgGを単離し、それによって、IgG濃縮画分を形成することと
を含む。
【0014】
本明細書で説明される方法の1つの実施形態では、上清画分は、C1インヒビター吸着によって生成された上清である。
【0015】
例示的な実施形態では、上清画分は、血漿上清である。
【0016】
1つの実施形態では、血漿上清は、C1-INH欠乏脱クリオ血漿である。
【0017】
様々な実施形態では、血漿上清は、二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP)に由来する。
【0018】
例示的な実施形態では、上清画分は、第II、第VII、第IX、第X因子、及びその混合物から選択される1つまたは複数の他の血液凝固因子が欠乏している。
【0019】
1つの実施形態では、上清画分は、更なる処理の前に正常血漿のタンパク質値まで濃縮される。
【0020】
例示的な実施形態では、ヘパリンは、上清画分1mLあたり約1~約20単位の量で添加される。
【0021】
例示的な実施形態では、ヘパリンは、上清画分1mLあたり約5~約10単位の量で添加される。
【0022】
1つの実施形態では、ヘパリンは、上清画分1mLあたり約5単位の量で添加される。
【0023】
様々な実施形態では、ヘパリンは、上清画分1mLあたり約10単位の量で添加される。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、
(c)C1-INHを含有する脱クリオ血漿画分からC1-INHエステラーゼインヒビター(C1-INH)を取り除き、それによって、C1-INH欠乏上清画分を形成すること
を更に含む。
【0025】
1つの実施形態では、IgG濃縮画分は、上清画分中に見られるIgG含有量の約60%~約80%を含有する。
【0026】
1つの実施形態では、IgG濃縮画分は、上清画分中のIgG含有量の少なくとも約50%を含有する。
【0027】
上記説明された方法の1つの実施形態では、IgG濃縮画分中のγ-グロブリンの純度は、少なくとも約95%である。
【0028】
上記説明された方法の1つの実施形態では、IgG濃縮画分中のγ-グロブリンの純度は、約95%~約99.9%である。
【0029】
例示的な実施形態では、本発明は、いずれかの順序または組み合わせでの以下のステップ:
(i)画分I沈殿物及び画分I上清を得るために、約7.0~約7.5のpHにおいて、約6%~約10%のエタノール、例えば、水性エタノールによりヘパリン添加画分を沈殿させることと、
(ii)画分II+III沈殿物を形成するために、約6.7~約7.3のpHにおいて、約18%~約27%のエタノール、例えば、水性エタノールにより画分I上清からIgGを沈殿させることと
のうちの1つまたは複数を含む、ヘパリン添加画分からIgGを単離する方法を提供する。
【0030】
上記説明された方法の1つの実施形態では、方法は、画分I+II+III沈殿物を形成するために、約6.7~約7.3のpHにおいて、約18%~約27%のエタノール、例えば、水性エタノールによりヘパリン添加画分からIgGを沈殿させることを更に含む。
【0031】
1つの実施形態では、方法は、いずれかの順序または組み合わせでの以下のステップ:
(iii)懸濁緩衝液内で画分II+IIIまたは画分I+II+IIIの沈殿物を懸濁しそれによって、IgG懸濁物を形成することと、
(iv)例えば、少なくとも約30分間、微細に分割された二酸化ケイ素(SiO2)をIgG懸濁物と混合することと、
(v)IgG懸濁物を濾過し、それによって、濾液及びフィルタケーキを形成することと
のうちの1つまたは複数を更に含む。
【0032】
1つの実施形態では、方法は、いずれかの順序または組み合わせでの以下のステップ:
(vi)約4.9~約5.3のpHを有する、少なくとも1フィルタプレス死容積(filter press dead volume)の洗浄緩衝液によりフィルタケーキを洗浄し、それによって、洗浄溶液を形成することと、
(vii)濾液を洗浄溶液と合わせ、それによって、混合溶液を形成し、洗浄剤により混合溶液を処理することと、
(viii)ステップ(vii)の混合溶液のpHを約7.0に調整して、それにエタノールを約20%~約30%の最終濃度まで添加し、それによって、沈殿G沈殿物を形成することと、
(ix)溶媒、洗浄剤、またはそれらの組み合わせから選択される剤を含む水溶液内で沈殿G沈殿物を溶解し、例えば、少なくとも約60分間、溶液をインキュベーションし、インキュベーション溶液を形成することと、
(x)溶出溶液をカチオン交換クロマトグラフィカラムに通して、カラム上に吸収されたタンパク質を溶出液に溶出させることと、
(xi)フロースルー画分を生成するために、インキュベーション溶液をアニオン交換クロマトグラフィカラムに通すことと、
(x)ナノ濾液を生成するために、フロースルー画分をナノフィルタに通すことと、
(xi)第1の限外濾液を生成するために、限外濾過によってナノ濾液を濃縮することと、
(xii)透析濾液を生成するために、第1の限外濾液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過することと、
(xiii)約8%(w/v)~約22%(w/v)のタンパク質濃度を有する第2の限外濾液を生成するために、限外濾過によって透析濾液を濃縮して、それによって、IgG濃縮画分を形成することと
のうちの1つまたは複数を更に含む。
【0033】
1つの実施形態では、方法は、画分II+IIIまたは画分I+II+IIIの沈殿物の1グラムあたり約0.02~約0.10グラムの最終濃度のSiO2となるまでSiO2を添加することを含む。
【0034】
1つの実施形態では、方法は、少なくとも約3フィルタプレス死容積の洗浄緩衝液によりフィルタケーキを洗浄することを含む。
【0035】
1つの実施形態では、方法は、少なくとも約2フィルタプレス死容積の洗浄緩衝液によりフィルタケーキを洗浄することを含む。
【0036】
1つの実施形態では、方法は、少なくとも約35mMのリン酸二水素ナトリウム二水和物により少なくとも1つのタンパク質を溶出させることを含む。
【0037】
1つの実施形態では、透析濾過緩衝液は、約200mM~約300mMのグリシンを含む。
【0038】
1つの実施形態では、方法は、少なくとも1回のウイルス不活性化または除去のステップにおいて溶媒及び/または洗浄剤によりIgG溶液を処理することを更に含む。
【0039】
上記説明された方法の1つの実施形態では、方法は、約4.0~約5.2の低pHにおけるインキュベーションステップを更に含む。
【0040】
上記説明された方法の1つの実施形態では、方法は、約4.4~約4.9の低pHにおけるインキュベーションステップを更に含む。
【0041】
例示的な実施形態では、本発明は、IgGを含む、C1インヒビター吸着後の上清画分を提供し、当該画分は、脱クリオ血漿画分内に存在する全C1-INHのうち少なくとも約70%欠乏した脱クリオ血漿画分である。
【0042】
第4の態様では、本発明は、本発明に従って調製されたIgG濃縮画分を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
1つの実施形態では、組成物は、組成物1リットルあたり少なくとも約80~220グラムのIgGを含む。
【0044】
1つの実施形態では、医薬組成物のpHは、約4.4~約4.9である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
A.導入
宿主細胞株内でDNAベクターの組み換え発現を介して生産される他の生物製剤とは異なり、血漿由来タンパク質は、ヒトから提供された血液及び血漿から分画される。よって、それらの製剤の供給量は、生産量を単純に増大させることによっては増大することができない。むしろ、商業的に利用可能な血液製剤のレベルは、提供される血液及び血漿の利用可能な供給量によって制限される。このダイナミクスは、補体因子H(CFH)及びインターアルファ-トリプシン阻害タンパク質(IαIp)を含む、商業市場があまり確立されていない新たな血漿由来血液因子の製造のために未加工のヒト血漿の利用可能性が不足する結果をもたらす。
【0046】
血漿由来の組成物のアミド分解性含有物に対する懸念は、当該技術分野において、IgGや他の生物製剤の製造の間にセリンプロテアーゼ(例えば、FXIa及びFXIIa)並びにセリンプロテアーゼチモーゲン(例えば、FXI及びFXII)を低減させる方法の必要性を強調してきた。
【0047】
C1インヒビター(C1-INH、C1エステラーゼインヒビター)は、血漿カリクレイン、第XIa因子、及び第XIIa因子の最も重要な生理学的インヒビターである。C1インヒビターの欠乏は、GAMMAGARD(登録商標)LIQUID(GGL)など、商業的IgG治療薬の製造のための出発原料におけるそれらの因子の蓄積を結果としてもたらし、血栓塞栓性イベントのリスクを高めることなく静脈内投与のためのIgG調製剤を生産することを困難にする。二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP)と呼ばれる、C1インヒビターの吸着の後の血漿上清からの免疫グロブリン生産の複雑度に起因して、天然血漿上清は、IgGの製造のために出発原料として使用されない。よって、低濃度のC1インヒビターでの血漿カリクレイン、第XIa因子、及び第XIIa因子の適切な除去を保証するために、計算量で10,000IU/Lのヘパリンが、アルコール分画工程が開始される前にDDCPPに添加される。
【0048】
本開示は、C1-INH欠乏血漿上清、ならびに、第II、第VII、第IX、第X因子並びにそれらの混合物から選択される他の血液凝固因子のうちの1つまたは複数が欠乏した上清画分が、免疫グロブリンG(IgG)濃縮画分の調製のための出発原料として使用されることができ、よって、IgGの調製のための別の出発原料を利用可能にするという発見に部分的に基づいている。有利なことに、本発明は、分画工程の間にプロコアグラント活性低減を増大させるためにヘパリンを使用することができるという予期せぬ発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0049】
それらの事項を克服するために、発明者らは、ヘパリンと共にC1-INH欠乏血漿上清を共沈し、それによって、ヘパリン添加画分を形成し、次いで、ヘパリン添加画分からIgGを単離する、精製ステップ、例えば、初期精製ステップを組み込む工程を開発した。よって、ヘパリン処理されたC1-INH欠乏血漿上清を、免疫グロブリンG(IgG)濃縮画分の調製のための出発原料として使用することができ、IgGの調製のための新たな出発原料を提供する。
【0050】
ある種の態様では、本発明は、プロコアグラント活性及びアミド分解活性を低減させたIVIG製造のための方法を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で提供される改善した製造方法に従って調製されたIgG組成物を提供する。有利なことに、それらの組成物は、本明細書で提供される方法によってもたらされる改善した収率に起因して、現在利用可能な商業的製剤よりも安価に調製できる。更に、それらの組成物は、商業的方法を使用して製造された組成物以上に純粋ではないとしても、同程度に純粋である。重要なことに、それらの組成物は、免疫不全、炎症性及び自己免疫疾患、並びに急性感染症のためのIVIG療法における使用に適切である。1つの実施形態では、IgG組成物は、静脈内投与のために10%または約10%のIgGである。別の実施形態では、IgG組成物は、皮下投与または筋肉内投与のために20%または約20%である。
【0052】
様々な実施形態では、本発明は、本明細書で提供されるようなC1-INH欠乏血漿上清から調製されたIgG組成物の医薬組成物及び製剤を提供する。ある種の実施形態では、それらの組成物及び製剤は、現在市販されている他のIVIG組成物と比較して改善した特性を提供する。例えば、ある種の実施形態では、本明細書で提供される組成物及び製剤は、長期間安定である。
【0053】
例示的な実施形態では、本発明は、C1-INH欠乏血漿上清から調製されたIgG組成物の投与を含む、免疫不全、炎症性及び自己免疫疾患、並びに急性感染症を治療する方法を提供する。様々な実施形態では、IgG組成物は、本発明の方法によって調製される。
【0054】
C1-INHを単離するために、酸性pH(すなわち、pH7未満)におけるアニオン交換体の使用を記述したWO2001046219A2において、C1-INHエステラーゼインヒビター(C1-INH)含有組成物の生産のための例示的な方法を見出すことができる。
【0055】
B.定義
本明細書で使用する場合、用語「静脈内IgG」または「IVIG治療」は、例えば、免疫不全、炎症性疾患、及び自己免疫疾患などの状態を治療するために、患者にIgG免疫グロブリンの医薬組成物を静脈内に、皮下に、または筋肉内に投与する療法学的方法を全体的に指す。IgG免疫グロブリンは典型的には、血漿からプール及び調製される。抗体全体または断片が使用されてもよい。IgG免疫グロブリンは、皮下投与のためにより高い濃度で(例えば、10%よりも高く)製剤されてもよく、または筋肉内投与のために製剤されてもよい。これは特に、特定の抗原(例えば、Rho D因子、百日咳毒素、破傷風毒素、ボツリヌス毒素、狂犬病など)のための平均力価よりも高く調製される特殊IgG調製剤に対して一般的である。議論を容易にするために、そのような皮下または筋肉内用に製剤されたIgG組成物も、本出願では、用語「IVIG」に含まれる。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「アミド分解活性」は、別のポリペプチド内の少なくとも1つのペプチド結合の加水分解を触媒するポリペプチドの能力を指す。IgG免疫グロブリン組成物についてのアミド分解活性プロファイルは、これらに限定されないが、PL-1(広域スペクトル)、S-2288(広域スペクトル)、S-2266(FXIa、腺性カリクレイン)、S-2222(FXa、トリプシン)、S-2251(プラスミン)、及びS-2302(カリクレイン、FXIa、及びFXIIa)を含む、ヒト血漿内で見られるプロテアーゼについての異なる特異性を有する、様々な発色性基質により検査することによって決定されてもよい。組成物のアミド分解活性を決定する方法は、例えば、M.Etscheid et al.(Identification of kallikrein and FXIa as impurities in therapeutic immunoglobulins:implications for the safety and control of intravenous blood products,Vox Sang 2011;これらの開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)に説明されるように、当該技術分野において公知である。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、検体(抗原)を特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子もしくは複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされたポリペプチド、またはそれらの断片を指す。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ミュー定常領域遺伝子と共に、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、それらは次いで、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ定める。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、ポリペプチド鎖の2つのペアから構成され、各々のペアは、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各々の鎖のN末端は、抗原認識を主に担当する約100~110またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域を定める。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それらの軽鎖及び重鎖のそれぞれを指す。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「限外濾過(UF)」は、静水圧が半浸透膜に液体を押し付ける、様々な膜濾過方法を包含する。高分子質量の懸濁固体及び溶質が保持されると共に、水及び低分子質量溶質が膜を通る。この分離工程は、高分子(103~106Da)溶液、特に、タンパク質溶液を精製及び濃縮するために使用されることが多い。それらが保持する分子のサイズに応じて、いくつかの限外濾過膜が利用可能である。限外濾過は典型的には、1~1000kDaの膜細孔サイズ及び0.01~10barの動作圧力によって特徴付けられ、特に、糖及び塩のような小分子からタンパク質を分離するようなコロイドの分離に有用である。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「透析濾過」は、限外濾過と同一の膜により実行され、タンジェンシャルフロー濾過である。透析濾過の間、緩衝液がリサイクルタンクに導入されると共に、濾液が単位操作から取り除かれる。生成物が残余分に存在する工程では(例えば、IgG)、透析濾過は、生成物のプールから濾液に構成成分を洗い流し、それによって、緩衝液を交換し、望ましくない種の濃度を低減させる。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、指定された値からのおおよその範囲を表す。いくつかの実施形態では、範囲は、指定された値からの1%~10%のプラスまたはマイナスである。よって、「約」は、述べられた値からの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、及び10%のプラスまたはマイナスを包含する。例えば、「約20%」という言葉は、18~22%の範囲を包含する。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「溶媒」は、1つまたは複数の他の物質を溶解または分散することが可能ないずれかの液体物質を包含する。溶媒は、水など、本質的に無機であってもよく、またはそれは、エタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、石油エーテルなどの有機液体であってもよい。用語「溶媒洗浄剤処理」において使用する場合、溶媒は、溶液内の脂質エンベロープウイルスを不活性化するために使用される溶媒洗浄剤混合物の一部である、有機溶媒(例えば、リン酸トリ-N-ブチル)を表す。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「洗浄剤」は、用語「界面活性剤(surfactant)」または「界面活性剤(surface acting agent)」と交換可能に使用される。界面活性剤は典型的には、両親媒性、すなわち、疎水性基(「尾部」)及び親水性基(「頭部」)の両方を含有した有機化合物であり、これらは界面活性剤を有機溶媒及び水の両方において可溶性にする。界面活性剤は、その頭部における形式電荷を有する基の存在によって分類できる。非イオン性界面活性剤は、その頭部に荷電基を有さず、一方で、イオン性界面活性剤は、その頭部に正味の電荷を帯びている。両性イオン性界面活性剤は、2つの反対に荷電された基を有する頭部を含有する。一般的な界面活性剤のいくつかの実施例は、アニオン性(硫酸塩、スルホン酸塩またはカルボン酸塩のアニオンに基づく):ペルフルオロオクタン酸(PFOAまたはPFO)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、及び他のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウムまたはSLESとしても知られる)、アルキルベンゼンスルホン酸塩;カチオン性(第四級アンモニウムカチオンに基づく)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)別名ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、並びに他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT);長鎖脂肪酸及びそれらの塩基:カプリル酸塩、カプリル酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ナノ酸、及びデカン酸などを含む;両性イオン性(両性):ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ココアンフォグリシネート;非イオン性:アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)の共重合体(PoloxamersまたはPoloxaminesとして商業的に既知)、並びにオクチルグルコシドを含むアルキルポリグルコシド、デシルマルトシド、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール及びオレイルアルコール)、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート(Tween 20、Tween 80など)、Triton洗浄剤、並びにドデシルジメチルアミンオキシドを含む。
【0063】
本出願において使用する場合、用語「噴霧」は、液体物質の微細液滴または霧の形態で、液体物質を系に、例えば、修正されたCohn分画(Fractionation)IまたはCohn分画II+IIIの沈殿ステップなどのアルコール沈殿ステップの間に、送達する手段を指す。噴霧は、噴霧ヘッドまたはノズルを有する容器(例えば、噴霧ボトル)などの任意の加圧デバイスによって達成されてもよく、液体から微細な霧を生成するために手動または自動で動作する。典型的には、噴霧は、液体物質を受ける系が系内に液体を急速且つ均一に分散するように継続して攪拌され、または別の方法で混合される間に、実行される。
【0064】
本明細書で使用する場合、「脱クリオ血漿」は、凍結に近い温度、例えば、約10℃を下回る温度において、血漿またはプール血漿の冷却沈殿(クリオ沈殿)の後に形成された上清を指す。本発明のコンテキストでは、血漿は、全血血漿(すなわち、生体外で全血から分離された血漿)、または成分血漿(すなわち、血漿交換を介して収集された血漿)を交換可能に指す。クリオ沈殿は、例えば、安全性及び品質の考慮事項のために既に検査されている、あらかじめ凍結されたプール血漿を解凍することによって一般的に実行されるが、新鮮な血漿も使用されてもよい。解凍は典型的には、6℃以下の温度において行われる。低温度において凍結した血漿の解凍が完了した後、液体上清から固体クリオ沈殿物を分離するために、低い(例えば、≦6℃)において遠心分離が実行される。代替的に、分離ステップは、遠心分離ではなく濾過によって実行されてもよい。
【0065】
本明細書で使用する場合、「Cohnプール」は、血漿サンプルの分画または血漿サンプルのプールのために使用される出発原料を指す。Cohnプールは、前処理ステップを受けてもよく、または受けなくてもよい、血漿全体、脱クリオ血漿サンプル、及び脱クリオ血漿サンプルのプールを含む。ある種の実施形態では、Cohnプールは、脱クリオ血漿サンプルであり、脱クリオ血漿サンプルから、前処理ステップ、例えば、固相への吸着(例えば、アルミニウム水酸化物、微細に分割された二酸化ケイ素など)、またはクロマトグラフステップ(例えば、イオン交換もしくはヘパリン親和性クロマトグラフィ)において、1つまたは複数の血液因子が取り除かれている。Cohnプールを形成するために、これらに限定されないが第VIII因子インヒビター迂回活性(Factor Eight Inhibitor Bypass Activity;FEIBA)、第IX因子複合体、第VII因子濃縮物、またはアンチトロンビンIII複合体を含む様々な血液因子が、脱クリオ血漿サンプルから単離されてもよい。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「血漿サンプル」は、いずれかの適切な原料、例えば、全血血漿もしくは成分血漿、または血漿画分もしくは血漿上清、または血漿由来タンパク質調製剤を指す。例示的な「血漿サンプル」は、血漿または血漿画分由来のIgG、脱クリオ血漿由来のIgG、脱クリオ血漿のC-1エステラーゼインヒビター吸着からのIgG、二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP)由来のIgGを含む。
【0067】
本明細書で使用する場合、「二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP/C-1エステラーゼインヒビター欠乏脱クリオ血漿としても知られる)」は、凍結に近い温度、例えば、約8℃を下回る温度において脱クリオ血漿のC1インヒビターの吸着の後に形成された吸着上清を指す。GAMMAGARD(登録商標)LIQUID(Baxter Healthcare Corporation、Westlake Village、CA)の製造工程は、凍結したヒト血漿プールから、沈殿G(PptG)と称される中間免疫グロブリンG(IgG)画分を単離する修正されたCohn-Oncley低温エタノール分画手順を採用する。PptGは、弱カチオン及び弱アニオン交換クロマトグラフィの後続の使用を通じて更に精製される。PptGの下流精製には、溶媒/洗浄剤処理、ナノ濾過、及び最終製剤内での低pH及び上昇した温度におけるインキュベーションの3つの専用ウイルス除去ステップが含まれる。エタノール分画工程のための出発原料は、凝固因子及び血漿タンパク質インヒビターの精製のための中間体を得るために、異なる吸着ステップを経てもよい。CINRYZE(登録商標)の製造工程におけるC1インヒビターの吸着の後に得られた吸着上清は、二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP)と称される。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「天然またはバリアント天然(variant native)」は、出発原料として、あらゆる調整/修正を行わないDDCPPの使用を指し、「バリアントヘパリン」は、出発原料への5000 IUヘパリン/L DDCPPまたは10000 IUヘパリン/L DDCPPの添加を指す。「バリアントNaCl」は、DDCPPの導電率を増大させるための塩化ナトリウムの添加を指す。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「C1インヒビター(C1-inh、C1エステラーゼインヒビター)」は、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼインヒビターである。その主な機能は、自然発生する活性化を防止する補体系の阻害である。C1インヒビターは、約0.25g/Lのレベルで血液内を循環する急性期タンパク質である。レベルは、炎症の間に約2倍上昇する。C1インヒビターは不可逆的に、補体の古典経路のC1複合体内のC1r及びC1sプロテアーゼに結合し、それらを不活性化する。レクチン経路のマンノース結合レクチン(MBL)複合体内のMASP-1及びMASP-2プロテアーゼも不活性化される。このように、C1インヒビターは、C1及びMBLによって後の補体構成要素C4及びC2のタンパク質分解開裂を防止する。C1インヒビターは、その補体阻害的活性から命名されているが、線維素溶解、凝固、及びキニン経路のプロテアーゼも阻害する。C1インヒビターは、血漿カリクレイン、FXIa、及びFXIIaの最も重要な生理学的インヒビターであることに留意されよう。
【0070】
1.C1-INH欠乏上清画分の調製
IgG濃縮画分を調製するために使用される出発原料は、C1インヒビター吸着の後の上清またはC1インヒビター吸着の後の凍結した血漿またはC1インヒビター吸着の後の凍結していない血漿から全体的に構成される。例示的なサンプル、例えば、血漿上清は、CINRYZE(登録商標)製造工程においてC1インヒビターの吸着の後に得られた吸着上清から構成される。精製工程は典型的には、安全性及び品質の考慮事項のために好ましくは既に検査されている、あらかじめ凍結したプール血漿を解凍することにより開始する。解凍は典型的には、6℃以下の温度において行われる。低温での凍結した血漿の解凍が完了した後、液体上清から固体冷凍沈殿物を分離するために、冷却して(例えば、≦6℃)遠心分離が実行される。代替的に、遠心分離ではなく濾過によって分離ステップが実行される。液体上清(冷却不溶性タンパク質が、新鮮な解凍した血漿から遠心分離によって取り除かれた後の上清、「脱クリオ血漿」とも称される)は次いで、凝固因子及び血漿タンパク質インヒビターの精製のための中間体を得る1回以上の吸着ステップを経る。脱クリオ血漿からのC1インヒビターの吸着の後に得られた吸着上清は、二重欠乏脱クリオ血漿(DDCPP)とも称される。
【0071】
2.ヘパリン添加画分の調製
C1-INH欠乏上清画分は、C1-INHの欠乏が血漿カリクレイン、第XIa因子、及び第XIIa因子の蓄積を結果としてもたらすため、IgGの製造のための理想的な出発原料とは一般的に考えられない。C1-INHの明らかに低減した濃度によるそれらの因子の適切な除去を保証するために、アルコール分画工程が開始される前に、計算量のヘパリン(5000U/kg DDCPPまたは10,000U/kg DDCPP)がC1-INH欠乏上清画分に添加される。得られた最終的なIgG生成物は、1IU/mL未満の残余ヘパリン濃度を含有することが示される。
【0072】
3.第1の沈殿イベント-修正分画I
分画Iのための出発原料は、DDCPP(C1インヒビター吸着の後の上清)であった。DDCPPは典型的には、約0±2℃に冷却され、pHは、酸、例えば、酢酸の添加によって、約7.0~約7.5、好ましくは、約7.1~約7.3、最も好ましくは、約7.2に調整される。1つの実施形態では、脱クリオ血漿のpHは、約7.2のpHに調整される。次いで、血漿を攪拌しながら、事前冷却されたエタノールが、8%v/vまたは約8%v/vの目標濃度まで添加される。同時に、温度を約-2℃~約+2℃に更に下げる。好ましい実施形態では、α2-マクログロブリン、β1A-及びβ1C-グロブリン、フィブリノゲン、並びに第VIII因子などの混入物質を沈殿させるために、温度を-1.5℃または約-1.5℃に下げる。典型的には、沈殿イベントは、少なくとも約1時間の保持時間を含むが、より短いまたはより長い保持時間も採用されてもよい。その後、DDCPP中に存在するIgG含有量の大部分を理想的に含有した上清(上清I)は次いで、遠心分離、濾過、または別の適切な方法によって収集される。
【0073】
脱クリオ血漿のための第1の分画ステップとして採用される従来の方法と比較して(上記のCohn et al.,;上記のOncley et al.,)、本発明は、いくつかの実施形態では、上清I画分からの改善したIgG収率を結果としてもたらす方法を提供する。1つの実施形態では、改善したIgG収率は、噴霧によってアルコールを添加することによって達成される。別の実施形態では、改善したIgG収率は、噴霧によってpH調整剤を添加することによって達成される。更なる別の実施形態では、改善したIgG収率は、アルコールの添加の後に溶液のpHを調整することによって達成される。関連する実施形態では、改善したIgG収率は、アルコールの添加の間に溶液のpHを調整することによって達成される。
【0074】
1つの特定の態様では、改善は、第1の沈殿ステップの沈殿画分内で損失するIgGの量が低減する方法に関連する。例えば、ある種の実施形態では、Cohn法6プロトコルの第1の沈殿ステップにおいて損失するIgGの量と比較して、第1の沈殿ステップの沈殿画分内で損失するIgGの量が低減する。
【0075】
ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の後に約7.0~約7.5に溶液のpHを調整することによって、工程改善が実現される。他の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の後に約7.1~約7.3に調整される。更なる他の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の後に約7.0または約7.1、7.2、7、3、7.4、もしくは7.5に調整される。特定の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の後に約7.2に調整される。したがって、ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の後でなくその前に溶液のpHが調整される同様の沈殿ステップと比較して、第1の沈殿ステップの沈殿画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、pHは、溶液のpHを継続的に調整することによって、沈殿保持またはインキュベーション時間の間に所望のpHにおいて維持される。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0076】
他のある種の実施形態では、流動的添加ではなく噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、工程改善が実現される。したがって、ある種の実施形態では、アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液が流動的添加によって導入される同様の沈殿ステップと比較して、第1の沈殿ステップの沈殿画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0077】
更なる他のある種の実施形態では、約7.0~約7.5に溶液のpHを調整することによって、改善が実現される。好ましい実施形態では、溶液のpHは、約7.1~約7.3に調整される。他の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の後、流動的添加によってではなく噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5に調整される。特定の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の後、流動的添加によってではなく噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、約7.2に調整される。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0078】
4.第2の沈殿イベント-修正分画II+III
分画のIgG含有量及び純度を更に高めるために、上清Iを、修正Cohn-Oncley画分II+III分画である、第2の沈殿ステップに供する。一般的に、溶液のpHは、約6.6~約6.8のpHに調整される。好ましい実施形態では、溶液のpHは、約6.7に調整される。次いで、画分内でIgGを沈殿させるために、溶液を攪拌しながら、アルコール、好ましくはエタノールを約20%~約25%(v/v)の最終濃度まで溶液に添加する。好ましい実施形態では、画分内でIgGを沈殿させるために、約25%(v/v)の最終濃度までアルコールが添加される。一般的に、α1-リポタンパク質、α1-抗トリプシン、Gc-グロブリン、α1X-グリコプロテイン、ハプトグロブリン、セルロプラスミン、トランスフェリン、ヘモペキシン、クリスマス因子の画分、サイロキシン結合グロブリン、コリンエステラーゼ、ハイパーテンシノーゲン、及びアルブミンなどの混入物質は、それらの状態によって沈殿しない。
【0079】
アルコール添加の前またはそれと同時に、約-7℃~約-9℃に溶液が更に冷却される。好ましい実施形態では、約-7℃の温度に溶液が冷却される。アルコール添加の完了の後、溶液のpHは、約6.8~約7.0に直ちに調整される。好ましい実施形態では、溶液のpHは、約6.9に調整される。典型的には、沈殿イベントは、少なくとも約10時間の保持時間を含むが、より短いまたはより長い保持時間も採用されてもよい。その後、脱クリオ血漿中に存在するIgG含有量の、理想的には少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%を含有する沈殿物(修正画分II+III)は、遠心分離、濾過、または別の適切な方法によって上清から分離され、収集される。脱クリオ血漿のための第2の分画ステップとして採用される従来の方法と比較して(上記のCohn et al.,;上記のOncley et al.,)、本発明は、いくつかの実施形態では、修正画分II+III沈殿物内で改善したIgG収率を結果としてもたらす方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、修正画分II+III上清内でIgGの損失が低減することを結果としてもたらす方法を提供する。
【0080】
脱クリオ血漿のための第2の分画ステップとして採用される従来の方法と比較して(上記のCohn et al.,;上記のOncley et al.,)、本発明は、いくつかの実施形態では、修正画分II+III沈殿物内で改善したIgG収率を結果としてもたらす方法を提供する。1つの実施形態では、噴霧によるアルコール添加によって、改善が実現される。別の実施形態では、噴霧によるpH調整剤の添加によって、改善が実現される。別の実施形態では、アルコールの添加の後に溶液のpHを調整することによって、改善が実現される。関連する実施形態では、アルコールの添加の間に溶液のpHを調整することによって、改善が実現される。別の実施形態では、約25%(v/v)までアルコール(例えば、エタノール)の濃度を増大させることによって、改善が実現される。別の実施形態では、約-7℃~約-9℃まで沈殿ステップの温度を低下させることによって、改善が実現される。好ましい実施形態では、約25%(v/v)までアルコール(例えば、エタノール)の濃度を増大させ、約-7℃~約-9℃まで温度を低下させることによって、改善が実現される。比較すると、沈殿物内の混入物質のレベルを低減させるために、Cohn et al.及びOncley et al.の両方は、-5℃において沈殿を実行し、Oncley et al.は、20%のアルコールを使用する。有利なことに、本明細書で提供される方法は、最終生成物内の高レベルの混入なしに、最大IgG収率を可能にする。
【0081】
溶液のpHが沈殿アルコールの添加の前に約6.9のpHに調整されるとき、溶液のpHは、タンパク質沈殿に部分的に起因して、6.9から約7.4~約7.7に変化することが発見されてきた。溶液のpHが6.9から離れて変化するにつれて、IgGの沈殿には、好ましくなくなり、特定の混入物質の沈殿に、より好ましくなる。有利なことに、発明者は、沈殿アルコールの添加の後に溶液のpHを調整することによって、より高い割合のIgGが画分II+III沈殿物内で回収されることを発見した。
【0082】
様々な実施形態では、本発明によって実現される改善は、本発明の改善が組み込まれない同一の方法と比較するとき、修正画分II+III沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する方法に関連する。言い換えると、画分II+III沈殿物内に存在する開始IgGの割合が増大する。ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の直後または添加の間に約6.7~約7.1に溶液のpHを調整することによって、工程改善が実現される。いくつかの実施形態では、沈殿及び/またはインキュベーション期間の間に約6.7~約7.1に溶液のpHを継続して維持することによって、工程改善が実現される。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の直後もしくは添加の間に約6.8~約7.0に、または沈殿アルコールの添加の直後もしくは添加の間に約6.7、6.8、6.9、7.0、もしくは7.1のpHに調整される。特定の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の直後または添加の間に約6.9に調整される。ある種の実施形態では、溶液のpHは、沈殿インキュベーション期間の間に約6.8~約7.0に継続して維持され、または沈殿インキュベーション期間の間に約6.9のpHに継続して維持される。本発明の工程パラメータを適用することで、ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の後でなくその前に溶液のpHが調整される同様の沈殿ステップ、または沈殿インキュベーション期間の全体の間に溶液のpHが維持されない同様の沈殿ステップと比較して、第2の沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、pHは、溶液のpHを継続して調整することによって、沈殿保持またはインキュベーション時間の間に所望のpHに維持される。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0083】
いくつかの実施形態では、流動的添加ではなく噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、工程改善が実現される。したがって、ある種の実施形態では、アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液が流動的添加によって多量に導入される同様の沈殿ステップと比較して、第2の沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0084】
別の実施形態では、約-7℃~約-9℃の温度において沈殿ステップを実行することによって、工程改善が実現される。1つの実施形態では、沈殿ステップは、約-7℃の温度において実行される。例示的な実施形態では、沈殿ステップは、約-8℃の温度において実行される。様々な実施形態では、沈殿ステップは、約-9℃の温度において実行される。ある種の実施形態では、沈殿ステップのアルコール濃度は、約23%~約27%である。好ましい実施形態では、アルコール濃度は、約24%~約26%である。例示的な実施形態では、アルコール濃度は、約25%である。いくつかの実施形態では、アルコール濃度は、23%、24%、25%、26%、もしくは27%であってもよく、または約23%、24%、25%、26%、もしくは27%であってもよい。例示的な実施形態では、第2の沈殿ステップは、約25%のアルコール濃度により-7℃または約-7℃の温度において実行される。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0085】
上記のOncley et al.,において使用されるような20%から25%まで第2の沈殿におけるアルコール濃度を増大させ、Cohn及びOncleyの方法において使用されるような-5℃から約-7℃までインキュベーションの温度を低下させることで、修正画分II+III沈殿物中のIgG含有量における5%~6%の驚くべき増大の効果が得られる。
【0086】
別の実施形態では、沈殿アルコールの添加の直後または添加の間に約6.7~約7.1、好ましくは6.9または約6.9に溶液のpHを調整し、約6.7~約7.1、好ましくは6.9または約6.9のpHにおいて溶液のpHを維持し、沈殿インキュベーション期間の間にpHを継続して調整することによって、並びに流動的添加ではなく噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、工程改善が実現される。
【0087】
例示的な実施形態では、約-7℃~約-9℃、例えば、-7℃の温度において沈殿ステップを実行し、約23%~約27%、例えば、25%のアルコール濃度によりIgGを沈殿させることによって、工程改善が実現される。様々な実施形態では、上記提供された修正画分II+IIIの改善の全てを工程に組み込むことによって、工程改善が実現される。例示的な実施形態では、噴霧によって添加された25%のエタノールで、-7℃の温度においてIgGを沈殿させ、次いで、沈殿アルコールの添加の後に6.9に溶液のpHを調整することによって、工程改善が実現される。更なる別の好ましい実施形態では、沈殿インキュベーションまたは保持時間の全体の間で、溶液のpHが6.9において維持される。
【0088】
5.修正画分II+III沈殿物の抽出
修正画分II+III沈殿物のIgG含有量を可溶化するために、抽出緩衝液約15部に対して沈殿物約1部の比率で分画II+III沈殿物を再懸濁するために、冷却抽出緩衝液が使用される。例えば、約1:8~約1:30、例えば、約1:10~約1:20、約1:12~約1:18、約1:13~約1:17、約1:14~約1:16の他の適切な再懸濁比率が使用されてもよい。ある種の実施形態では、再懸濁比率は、約1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、またはそれよりも高くてもよい。
【0089】
修正II+III沈殿物の抽出のための適切な溶液は一般的に、約4.0~約5.5のpHを有する。ある種の実施形態では、溶液は、約4.5~約5.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、抽出溶液は、約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5のpHを有する。例示的な実施形態では、抽出緩衝液のpHは、約4.5である。例示的な実施形態では、抽出緩衝液のpHは、約4.7である。例示的な実施形態では、抽出緩衝液のpHは、約4.9である。一般的に、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、一塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸塩、及びそれらの混合物などから選択される緩衝剤を使用して、それらのpH要件を満たすことができる。適切な緩衝液濃度は典型的には、約5~約100mM、または約10~約50mM、または約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100mMの緩衝剤の範囲にある。
【0090】
例示的な抽出緩衝液は、約0.5mS・cm-1~約2.0mS・cm-1の導電率を有する。例えば、ある種の実施形態では、抽出緩衝液の導電率は、約0.5mS・cm-1、または約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、もしくは約2.0mS・cm-1である。当業者は、適切な導電率を有する抽出緩衝液をどのように生成するかを知っている。
【0091】
1つの特定の実施形態では、例示的な抽出緩衝液は、約5mMのリン酸一ナトリウム及び約5mMの酢酸塩で、約4.5±0.2のpH及び約0.7~0.9mS/cmの導電率あってもよい。
【0092】
一般的に、抽出は、約0℃~約10℃、または約2℃~約8℃において実行される。ある種の実施形態では、抽出は、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃において実行されてもよい。例示的な実施形態では、抽出は、約2℃~約10℃において実行される。典型的には、抽出工程は、懸濁物を継続して攪拌しながら、約60~約300分間、または約120~約240分間、または約150~約210分間行われる。ある種の実施形態では、抽出工程は、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または約300分間行われる。好ましい実施形態では、抽出工程は、攪拌を継続しながら、少なくとも約160分間行われる。
【0093】
5mMの一塩基性リン酸ナトリウム、5mMの酢酸塩、及び0.051%~0.06%の氷酢酸(v/v)を含有した抽出緩衝液を採用する方法では、最終生成物の純度を損なうことなく、最終IgG組成物における収率の相当な増大を得ることができる。好ましい実施形態では、画分II+III沈殿物は、1:15または約1:15のペースト対緩衝液比で、4.5±0.2または約4.5±0.2のpHで抽出される。
【0094】
有利なことに、5mMの一塩基性リン酸ナトリウム、5mMの酢酸塩、及び0.051%の氷酢酸(v/v)を含有した抽出緩衝液を採用する、GAMMAGARD(登録商標)LIQUID(Baxter Healthcare)のための現在の製造工程と比較して、0.06%(v/v)または約0.06%(v/v)まで氷酢酸含有量を増大させることによって、最終IgG組成物における収率の相当な増大が得られることが見出されている。第2の沈殿ステップ(GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)によって形成された沈殿物の抽出のためにこれまでに採用された方法と比較して、本発明は、いくつかの実施形態では、修正画分II+III懸濁物内で改善したIgG収率を結果としてもたらす方法を提供する。
【0095】
1つの実施形態では、改善は、修正画分II+III沈殿物の可溶化されていない画分内で損失するIgGの量が低減する方法に関連する。1つの実施形態では、5mMの一塩基性リン酸ナトリウム、5mMの酢酸塩、及び0.06%の氷酢酸(v/v)を含有した溶液との1:15の比率(沈殿物対緩衝液)において修正画分II+III沈殿物を抽出することによって、工程改善が実現される。別の実施形態では、抽出工程の間、溶液のpHを比較的一定に維持することによって、改善が実現される。1つの実施形態では、溶液のpHは、抽出工程の間、約4.1~約4.9において維持される。例示的な実施形態では、溶液のpHは、抽出工程の間、約4.2~約4.8において維持される。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、抽出工程の間、約4.3~約4.7において維持される。様々な実施形態では、溶液のpHは、抽出工程の間、約4.4~約4.6において維持される。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、抽出工程の間、4.5において維持される。
【0096】
例示的な実施形態では、改善は、画分II+III溶解ステップにおいて画分II+III沈殿物から可溶化されるIgGの量が増大する方法に関連する。1つの実施形態では、約1000Lあたり約600mLの氷酢酸を含有した溶解緩衝液内で画分II+III沈殿物を可溶化することによって、工程改善が実現される。別の実施形態では、改善は、画分II+III沈殿物内のIgGが可溶化した後に不純物が低減される方法に関連する。1つの実施形態では、微細に分割された二酸化ケイ素(SiO2)を画分II+III懸濁物と少なくとも約30分間混合することによって、工程改善が実現される。
【0097】
6.修正画分II+III懸濁物の前処理及び濾過
修正画分II+III沈殿物(すなわち、修正画分II+IIIフィルタケーキ)の可溶化されていない画分を取り除くために、懸濁物は、典型的には、深層濾過を使用して濾過される。本明細書で提供される方法において採用することができる深層フィルタは、金属性、ガラス、セラミック、有機(珪藻土など)深層フィルタなどを含む。適切なフィルタの例は、これらに限定されないが、Cuno 50SA、Cuno 90SA、及びCuno VR06フィルタ(Cuno)を含む。代替的に、濾過ではなく遠心分離によって分離ステップが実行されてもよい。
【0098】
上記説明された製造工程改善は、精製工程の初期ステップにおけるIgG損失を最小化するが、PKA活性、アミド分解活性、及びフィブリノゲン含有量を含む重要な不純物は、例えば、抽出がおおよそ4.9~5.0のpHにおいて行われるときと比較して、II+IIIペーストがpH4.5または4.6において抽出されるときにはるかに高い。
【0099】
本明細書で提供される方法において抽出された不純物を軽減するために、濾過/遠心分離の前に前処理ステップを加えることによってIgG組成物の純度を大きく高めることができることがここで発見されている。1つの実施形態では、この前処理ステップは、微細に分割された二酸化ケイ素粒子(例えば、フュームドシリカ、Aerosil(登録商標))の添加を含む。例示的な実施形態では、この処理に続き、40~80分のインキュベーション期間が続き、その間に、懸濁物が一定して混合される。ある種の実施形態では、インキュベーション期間は、約50~約70分である。様々な実施形態では、インキュベーション期間は、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80分以上である。一般的に、処理は、約0℃~約10℃、または約2℃~約8℃において実行される。ある種の実施形態では、処理は、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃において実行されてもよい。特定の実施形態では、処理は、約2℃~約10℃において実行される。
【0100】
フュームドシリカ処理は、WO2011150284A2において例示されている。この特許出願では、画分II+III沈殿物が懸濁され、2つのサンプルに分割され、その1つは、濾過の前にのみフィルタ助剤により清澄され、その1つは、フィルタ助剤の添加及び濾過の前にフュームドシリカにより処理される。クロマトグラフ及び定量化データにおいて見ることができるように、フュームドシリカにより前処理された濾液サンプルは、フィルタ助剤のみにより処理されたサンプルよりもはるかに高いIgG純度を有する。
【0101】
ある種の実施形態では、フュームドシリカは、約20g/kg II+IIIペースト~約100g/kg II+IIIペーストの濃度で添加される(例えば、1:15の比率において抽出される修正画分II+III沈殿物に対し、フュームドシリカは、約20g/16kg II+III懸濁物~約100g/16kg II+III懸濁物の濃度で、または約0.125%(w/w)~約0.625%(w/w)の最終濃度で、添加されるべきである)。ある種の実施形態では、フュームドシリカは、約20g/kg II+IIIペースト、または約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100g/kg II+IIIペーストの濃度において添加されてもよい。1つの特定の実施形態では、フュームドシリカ(例えば、Aerosil 380またはその同等物)は、約40g/16kg II+IIIの最終濃度まで修正画分II+III懸濁物に添加される。混合は、少なくとも約50~約70分間、約2℃~約8℃において行われる。
【0102】
ある種の実施形態では、SiO2は、約0.01g/gタンパク質~約10g/gタンパク質の濃度においてIgG組成物に添加される。別の実施形態では、SiO2は、約0.01g/gタンパク質~約5g/gタンパク質の濃度においてIgG組成物に添加される。別の実施形態では、SiO2は、約0.02g/gタンパク質~約4g/gタンパク質の濃度においてIgG組成物に添加される。1つの実施形態では、SiO2は、グラム総タンパク質あたり少なくとも0.1gの最終濃度で添加される。別の特定の実施形態では、フュームドシリカは、グラム総タンパク質あたり少なくとも0.2gの濃度において添加される。別の特定の実施形態では、フュームドシリカは、グラム総タンパク質あたり少なくとも0.25gの濃度において添加される。他の特定の実施形態では、フュームドシリカは、グラム総タンパク質あたり少なくとも1gの濃度において添加される。別の特定の実施形態では、フュームドシリカは、グラム総タンパク質あたり少なくとも2gの濃度において添加される。別の特定の実施形態では、フュームドシリカは、グラム総タンパク質あたり少なくとも2.5gの濃度において添加される。更なる他の特定の実施形態では、微細に分割された二酸化ケイ素は、少なくとも0.01g/g総タンパク質、またはグラム総タンパク質あたり少なくとも0.02g、0.03g、0.04g、0.05g、0.06g、0.07g、0.08g、0.09g、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0g、1.5g、2.0g、2.5g、3.0g、3.5g、4.0g、4.5g、5.0g、5.5g、6.0g、6.5g、7.0g、7.5g、8.0g、8.5g、9.0g、9.5g、10.0g、もしくはそれよりも高い濃度において添加される。
【0103】
ある種の実施形態では、フィルタ助剤、例えば、Celpure C300(Celpure)またはHyflo-Supper-Cel(World Minerals)は、深層濾過を促進するために、二酸化ケイ素処理の後に添加される。フィルタ助剤は、約0.01kg/kg II+IIIペースト~約1.0kg/kg II+IIIペースト、または約0.02kg/kg II+IIIペースト~約0.8kg/kg II+IIIペースト、または約0.03kg/kg II+IIIペースト~約0.7kg/kg II+IIIペーストの最終濃度で添加されてもよい。他の実施形態では、フィルタ助剤は、約0.01kg/kg II+IIIペースト~約0.07kg/kg II+IIIペースト、または約0.02kg/kg II+IIIペースト~約0.06kg/kg II+IIIペースト、または約0.03kg/kg II+IIIペースト~約0.05kg/kg II+IIIペーストの最終濃度で添加されてもよい。ある種の実施形態では、フィルタ助剤は、約0.01kg/kg II+IIIペースト、または約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、もしくは1.0kg/kg II+IIIペーストの最終濃度で添加される。
【0104】
IgGを精製するこれまでの方法では、著しい割合のIgGが、工程内の濾過ステップの間に損失してきた。フィルタプレスフレーム及びラインを清浄するために1.8死容積の懸濁緩衝液を使用した、濾過後洗浄の標準的な方法は、このステップにおけるIgGの最大の回収のために不十分であったことが発見された。驚くことに、少なくとも3.0死容積、例えば、3.6死容積の懸濁緩衝液は、修正画分II+III清澄懸濁物内のIgGの効率的な回収のために有用であったことが発見された。ある種の実施形態では、フィルタプレスは、任意の適切な懸濁緩衝液により洗浄される。例示的な実施形態では、洗浄緩衝液は、例えば、5mMの一塩基性リン酸ナトリウム、5mMの酢酸塩、及び0.015%の氷酢酸(v/v)を含む。
【0105】
1つの実施形態では、改善は、画分II+III懸濁物濾過ステップの間に損失するIgGの量が低減する方法に関連する。1つの実施形態では、1000Lあたり150mLの氷酢酸を含有した少なくとも約3.6死容積の溶解緩衝液によりフィルタを後洗浄することによって、工程改善が実現される。1つの実施形態では、後洗浄抽出緩衝液のpHは、約4.6~約5.3である。好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは、約4.7~約5.2である。別の好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは、約4.8~約5.1である。更なる別の好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは、約4.9~約5.0である。
【0106】
第2の沈殿ステップから形成された懸濁物の清澄のためにこれまでに採用された方法と比較して、本発明は、いくつかの実施形態では、清澄画分II+III懸濁物における改善したIgG収率及び純度を結果としてもたらす方法を提供する。1つの態様では、改善は、修正画分II+IIIフィルタケーキ内で損失するIgGの量が低減する方法に関連する。他の態様では、改善は、清澄画分II+III懸濁物内に見られる不純物の量が低減する方法に関連する。
【0107】
1つの実施形態では、画分II+III懸濁物の濾過または遠心分離清澄の前にフュームドシリカ処理を含めることによって、工程改善が実現される。ある種の実施形態では、フュームドシリカ処理は、約0.01kg/kg II+IIIペースト~約0.07kg/kg II+IIIペースト、または約0.02kg/kg II+IIIペースト~約0.06kg/kg II+IIIペースト、または約0.03kg/kg II+IIIペースト~約0.05kg/kg II+IIIペースト、または約0.02kg/kg II+IIIペースト、0.03kg/kg II+IIIペースト、0.04kg/kg II+IIIペースト、0.05kg/kg II+IIIペースト、0.06kg/kg II+IIIペースト、0.07kg/kg II+IIIペースト、0.08kg/kg II+IIIペースト、0.09kg/kg II+IIIペースト、もしくは0.1kg/kg II+IIIペーストの添加を含み、混合物は、約2℃~約8℃の温度において、約50分~約70分間、または約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、もしくは80分間以上、インキュベーションされる。別の実施形態では、残余フィブリノゲン、アミド分解活性、及び/またはプレカリクレイン活性剤活性のレベルを低減させたフュームドシリカ処理を含めることによって、工程改善が実現される。特定の実施形態では、免疫グロブリン調製剤においてFXI、FXIa、FXII、及びFXIIaのレベルを低減させるフュームドシリカ処理を含めることによって、工程改善が実現される。
【0108】
別の実施形態では、修正画分II+III懸濁物濾過ステップを完了した後に約3~約5ボリュームのフィルタ死容積により深層フィルタを洗浄することによって、工程改善が実現される。ある種の実施形態では、フィルタは、約3.5ボリューム~約4.5ボリューム、または少なくとも約2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0ボリュームのフィルタ死容積により洗浄される。特定の実施形態では、フィルタプレスは、少なくとも約3.6死容積の懸濁緩衝液により洗浄される。
【0109】
7.洗浄剤処理
修正画分II+III濾液からさらなる混入物質を取り除くために、サンプルを次に洗浄剤処理に供する。血漿由来画分の洗浄剤処理のための方法は、当技術分野において周知である。一般的に、本明細書で提供される方法と併せて、任意の標準的な非イオン洗浄剤処理が使用されてもよい。例えば、洗浄剤処理のための例示的なプロトコルが以下に提供される。
【0110】
簡潔にまとめると、例示的な実施形態では、洗浄剤、例えば、ポリソルベート80が、約0.2%(w/v)の最終濃度で、修正画分II+III濾液に攪拌しながら添加され、サンプルは、約2℃~約8℃の温度で少なくとも約30分間インキュベーションされる。次いで、クエン酸ナトリウム無水物を、約8g/Lの最終濃度で溶液と混合され、サンプルは、約2~8℃の温度で継続的に攪拌しながらさらに30分間インキュベーションされる。
【0111】
ある種の実施形態では、いずれかの適切な非イオン洗浄剤が使用される。適切な非イオン洗浄剤の例は、これらに限定されないが、オクチルグルコシド、ジギトニン、C12E8、Lubrol、Triton X-100、Nonidet P-40、Tween-20(すなわち、ポリソルベート20)、Tween-80(すなわち、ポリソルベート80)、アルキルポリ(エチレンオキシド)、Brij洗浄剤、アルキルフェノールポリ(エチレンオキサイド)、ポロキサマー、オクチルグルコシド、及びデシルマルトシドなどを含む。
【0112】
1つの実施形態では、流動的添加ではなく噴霧によって洗浄剤試薬(例えば、ポリソルベート80及びクエン酸ナトリウム無水物)を添加することによって、工程改善が実現される。他の実施形態では、洗浄剤試薬は、修正画分II+III濾液に固体として添加されると共に、サンプルは、添加剤の急速な分散を保証するために混合されてもよい。ある種の実施形態では、流動的添加などにおける局所的な過度の集中が発生しないように、濾液の非局在化表面領域にわたって固体を散在させることによって固体試薬を添加することが好ましい。
【0113】
8.第3の沈殿イベント-沈殿G
例示的な実施形態では、いくつかの残余小タンパク質、例えば、アルブミン及びトランスフェリンを取り除くために、第3の沈殿が25%のアルコールの濃度において実行される。簡潔にまとめると、洗浄剤処理II+III濾液のpHは、適切なpH調整溶液(例えば、1Mの水酸化ナトリウムまたは1Mの酢酸)により、約6.8~約7.2、例えば、約6.9~約7.1、例えば、約7.0に調整される。次いで、冷却アルコールを約25%(v/v)の最終濃度まで溶液に添加し、混合物を少なくとも1時間、攪拌しながら約-6℃~約-10℃でインキュベーションして、第3の沈殿物(すなわち、沈殿G)を形成する。1つの実施形態では、混合物は、少なくとも2時間、または少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間以上、インキュベーションされる。好ましい実施形態では、混合物は、少なくとも2時間インキュベーションされる。例示的な実施形態では、混合物は、少なくとも4時間インキュベーションされる。いくつかの実施形態では、混合物は、少なくとも8時間インキュベーションされる。
【0114】
1つの実施形態では、本発明の工程改善は、第3の沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する方法に関連する。ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の直後または添加の間に、約6.8~約7.2に溶液のpHを調整することによって、工程改善が実現される。別の実施形態では、沈殿インキュベーション期間の間に約6.8~約7.2に溶液のpHを継続して維持することによって、工程改善が実現される。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の直後もしくは添加の間に約6.9~約7.1に、または沈殿アルコールの添加の直後もしくは添加の間に約6.8、6.9、7.0、7.1、もしくは7.2のpHに調整される。特定の実施形態では、溶液のpHは、沈殿アルコールの添加の直後または添加の間に約7.0に調整される。ある種の実施形態では、溶液のpHは、沈殿インキュベーション期間の間に約6.9~約7.1において継続して維持され、または沈殿インキュベーション期間の間に約7.0のpHにおいて継続して維持される。改善された方法に従うと、ある種の実施形態では、沈殿アルコールの添加の後でなくその前に溶液のpHが調整される同様の沈殿ステップ、または沈殿インキュベーション期間の全体の間に溶液のpHが調整維持されない同様の沈殿ステップと比較して、第3の沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、pHは、溶液のpHを継続して調整することによって、沈殿保持またはインキュベーション時間の間に所望のpHにおいて維持される。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0115】
いくつかの実施形態では、多量の流動的添加ではなく、噴霧によって、沈殿アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、工程改善が実現される。したがって、ある種の実施形態では、アルコール及び/またはpHを調整するために使用される溶液が流動的添加によって導入される同様の沈殿ステップと比較して、第3の沈殿ステップの上清画分内で損失するIgGの量が低減する。1つの実施形態では、アルコールは、エタノールである。
【0116】
9.沈殿G(PptG)の懸濁及び濾過
沈殿Gに含まれるIgGを可溶化するために、冷却抽出緩衝液がPptGを再懸濁するために使用される。簡潔にまとめると、約40~95のAU280-320値を達成するために、沈殿Gは、約0℃~約8℃において注射用水(WFI)に1対3.5で溶解される。次いで、少なくとも2時間攪拌された溶液の最終pHを約5.2±0.2に調整する。1つの実施形態では、このpH調整は、1Mの酢酸により実行される。IgGの溶解度を増大させるために、懸濁物の導電率を約2.5~約6.0mS/cmまで増大させる。1つの実施形態では、導電率は、塩化ナトリウムの添加によって増大させる。懸濁したPptG溶液は次いで、すべての溶解していない粒子を取り除くために、約0.1μm~約0.4μmの名目上の細孔サイズを有する適切な深層フィルタにより濾過される。1つの実施形態では、深層フィルタの名目上の細孔サイズは、清澄濾液を得るために、約0.2μm(例えば、Cuno VR06フィルタまたはその同等物)である。別の実施形態では、懸濁したPptG溶液は、清澄濾液を回収するために遠心分離される。約2.5~約6.0mS/cmの導電率を有する塩化ナトリウム溶液を使用して、フィルタの後洗浄が実行される。典型的には、沈殿Gの抽出のための適切な溶液は、WFI及び低導電率緩衝液を含む。1つの実施形態では、低導電率緩衝液は、約10mS/cm未満の導電率を有する。好ましい実施形態では、低導電率緩衝液は、約9、8、7、6、5、4、3、2、または1mS/cm未満の導電率を有する。好ましい実施形態では、低導電率緩衝液は、約6mS/cm未満の導電率を有する。別の好ましい実施形態では、低導電率緩衝液は、約4mS/cm未満の導電率を有する。別の好ましい実施形態では、低導電率緩衝液は、約2mS/cm未満の導電率を有する。
【0117】
10.溶媒洗浄剤処理
血漿由来生成物に存在することがある様々なウイルス混入物質を不活性化するために、清澄PptG濾液を次に溶媒洗浄剤(S/D)処理に供する。血漿由来画分の洗浄剤処理のための方法は、当技術分野において公知である(レビューのために、Pelletier JP et al.,Best Pract Res Clin Haematol.2006;19(1):205-42を参照されたい)。一般的に、本明細書で提供される方法と併せて、任意の標準的なS/D処理が使用されてもよい。S/D処理のための例示的なプロトコルが以下に提供される。
【0118】
簡潔にまとめると、Triton X-100、Tween-20、及びトリ(n-ブチル)ホスフェート(TNBP)を、それぞれ約1.0%、0.3%、及び0.3%の最終濃度で清澄PptG濾液に添加する。次いで、混合物を約18℃~約25℃の温度で少なくとも約1時間攪拌する。
【0119】
1つの実施形態では、多量の流動的添加ではなく、噴霧によってS/D試薬(例えば、Triton X-100、Tween-20、及びTNBP)を添加することによって、工程改善が実現される。他の実施形態では、洗浄剤試薬は、S/D成分の急速な分散を保証するために混合されている、清澄PptG濾液に固体として添加されてもよい。ある種の実施形態では、流動的添加などにおいて局所的な過度の集中が発生しないように、濾液の非局在化表面領域にわたって固体を散在させることによって固体試薬を添加することが好ましい。
【0120】
11.イオン交換クロマトグラフィ
S/D処理PptG濾液からIgGを更に精製及び濃縮するために、カチオン交換及び/またはアニオン交換クロマトグラフィが採用されてもよい。イオン交換クロマトグラフィを使用してIgGを精製及び濃縮する方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,886,154号は、画分II+III沈殿物が低pH(約3.8~4.5)において抽出され、それに続いて、カプリル酸を使用したIgGの沈殿、最終的には2回のアニオン交換クロマトグラフィステップの実施がある方法を記載している。米国特許第第6,069,236号は、アルコール沈殿に全く依存しないクロマトグラフィによるIgG精製スキームを記載している。国際公開第WO2005/073252号は、画分II+III沈殿物の抽出、カプリル酸処理、PEG処理、及び単一のアニオン交換クロマトグラフィステップを伴うIgG精製方法を記載している。米国特許第7,186,410号は、画分I+II+IIIまたは画分IIの沈殿物のいずれかの抽出と、それに続いて、アルカリ性pHにおいて実行される単一のアニオン交換ステップを伴うIgG精製方法を記載している。米国特許第7,553,938号は、画分I+II+IIIまたは画分II+IIIの沈殿物のいずれかの抽出、カプリル酸処理、及び1回または2回のいずれかのアニオン交換クロマトグラフィステップを伴う方法を記載している。米国特許第6,093,324号は、約6.0~約6.6のpHにおいて行うマクロ多孔性アニオン交換レジンの使用を含む精製方法を記載している。米国特許第6,835,379号は、アルコール分画を含まないカチオン交換クロマトグラフィに依存する精製方法を記載している。上記公報の開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
本発明の方法の1つの実施形態では、S/D処理PptG濾液は、カチオン交換クロマトグラフィ及びアニオン交換クロマトグラフィの両方に供してもよい。例えば、1つの実施形態では、S/D処理PptG濾液は、溶液内のIgGを結合する、カチオン交換カラムを通る。S/D試薬は次いで、吸収されたIgGから洗い流されてもよく、吸収されたIgGはその後、約8.0~9.0のpHを有する高pH溶出緩衝液によりカラムから溶出される。このようにして、調製物からS/D試薬を取り除き、IgGを含有した溶液を濃縮し、またはその両方のためにカチオン交換クロマトグラフィステップが使用されてもよい。ある種の実施形態では、pH溶出緩衝液は、約8.2~約8.8のpH、または約8.4~約8.6のpH、または約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、もしくは9.0のpHを有してもよい。好ましい実施形態では、溶出緩衝液のpHは、約8.5±0.1である。
【0122】
ある種の実施形態では、カチオン交換カラムからの溶出液は、より低いpH、例えば、約5.5~約6.5に調整されてもよく、適切な緩衝液により希釈されてもよく、その結果、溶液の導電率が低減する。ある種の実施形態では、カチオン交換溶出液のpHは、約5.7~約6.3のpH、または約5.9~約6.1のpH、または約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、もしくは6.5のpHに調整されてもよい。好ましい実施形態では、溶出液のpHは、約6.0±0.1のpHに調整される。溶出液は次いで、アニオン交換カラムにロードされ、アニオン交換カラムは、調製物内に含まれるいくつかの混入物質を結合する。IgG画分を含有したカラム通過画分は、カラムロード及び洗浄の間に収集される。ある種の実施形態では、本発明のイオン交換クロマトグラフィステップは、カラムモード、バッチモード、または2つの組み合わせにおいて実行されてもよい。
【0123】
ある種の実施形態では、多量の流動的添加ではなく、噴霧によってpHを調整するために使用される溶液を添加することによって、工程改善が実現される。
【0124】
12.ナノ濾過及び限外濾過/透析濾過
本明細書で提供されるIgG組成物のウイルス量を更に低減させるために、アニオン交換カラム流出液は、いくつかの実施形態では、適切なナノ濾過デバイスを使用してナノ濾過される。ある種の実施形態では、ナノ濾過デバイスは、約15nm~約200nmの平均細孔サイズを有する。この使用に適切なナノフィルタの例は、これらに限定されないが、DVD、DV 50、DV 20(Pall)、Viresolve NFP、Viresolve NFR(Millipore)、Planova 15N、20N、35N、及び75N(Planova)を含む。特定の実施形態では、ナノフィルタは、約15nm~約72nm、または約19nm~約35nm、または約15nm、19nm、35nm、もしくは72nmの平均細孔サイズを有してもよい。好ましい実施形態では、ナノフィルタは、Asahi PLANOVA 35Nフィルタまたはその同等物など、約35nmの平均細孔サイズを有する。
【0125】
任意選択で、ナノ濾液を更に濃縮するために、限外濾過/透析濾過が実行されてもよい。1つの実施形態では、開チャネル膜が使用されると共に、生成工程のほぼ終わりでの特別に設計された後洗浄及び製剤により、収率及び貯蔵安定性に影響を及ぼすことなく、最新のIVIG(例えば、GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)と比較して、結果として生じるIgG組成物のタンパク質濃度(200mg/mL)を約2倍に高める。商業的に利用可能な限外濾過膜のほとんどでは、大幅なタンパク質損失なしに200mg/mLのIgGの濃度に到達することができない。それらの膜は、早期に遮断され、したがって、適切な後洗浄を達成するのは困難である。したがって、開チャネル膜構成が使用される必要がある。開チャネル膜によるときでさえ、著しいタンパク質損失なしに(2%未満の損失)、必要とされる濃度を得るために、特別に設計された後洗浄手順が使用される必要がある。更に驚くべきことは、200mg/mLの高いタンパク質濃度は、低pH貯蔵ステップのウイルス不活性化能力を減少させないという事実である。
【0126】
ナノ濾過に続いて、限外濾過/透析濾過によって濾液が更に濃縮されてもよい。1つの実施形態では、ナノ濾液は、約2%~約10%のタンパク質濃度(w/v)まで限外濾過によって濃縮される。ある種の実施形態では、限外濾過は、開チャネルスクリーンを備えたカセット内で行われ、限外濾過膜は、約100kDa未満、または約90、80、70、60、50、40、もしくは30kDa以下の名目上の分子質量カットオフ(NMWCO)を有する。好ましい実施形態では、限外濾過膜は、50kDa以下のNMWCOを有する。
【0127】
限外濾過ステップが完了すると、濃縮物は、静脈内投与または筋肉内投与に適切な溶液に対して透析濾過を介して更に濃縮されてもよい。ある種の実施形態では、透析濾過溶液は、安定剤及び/または緩衝剤を含んでもよい。好ましい実施形態では、安定剤及び緩衝剤は、適切な濃度、例えば、約0.20M~約0.30M、または約0.22M~約0.28M、または0.24M~約0.26mM、または約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、もしくは3.0の濃度のグリシンである。好ましい実施形態では、透析濾過緩衝液は、0.25Mまたは約0.25Mのグリシンを含有する。
【0128】
典型的には、最小交換容積は、元の濃縮物容積の少なくとも3倍であり、または元の濃縮物容積の少なくとも約4、5、6、7、8、もしくは9倍以上である。IgG溶液は、約5%~約25%(w/v)、または約6%~約18%(w/v)、または約7%~約16%(w/v)、または約8%~約14%(w/v)、または約9%~約12%の最終タンパク質濃度、または約5%、もしくは6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、もしくは25%以上の最終濃度まで濃縮されてもよい。1つの実施形態では、少なくとも約23%の最終タンパク質濃度が、濃縮溶液に後洗浄画分を添加することなく達成される。別の実施形態では、少なくとも約24%の最終タンパク質濃度が、濃縮溶液に後洗浄画分を添加することなく達成される。少なくとも約25%の最終タンパク質濃度が、濃縮溶液に後洗浄画分を添加することなく達成される。典型的には、濃縮工程の終わりに、溶液のpHは、約4.6~5.1である。
【0129】
例示的な実施形態では、IgG組成物のpHは、限外濾過の前に約4.5に調整される。溶液は、限外濾過を通じて5±2%w/vのタンパク質濃度まで濃縮される。UF膜は、50,000ダルトン以下の名目上の分子量カットオフ(NMWCO)を有する(Millipore Pellicon Polyetherスルホン膜)。濃縮物は、0.25Mのグリシン溶液、pH4.5±0.2の10容積に対して透析濾過される。限外-透析濾過操作を通じて、溶液は約2℃~約8℃の温度に維持される。透析濾過の後、溶液は、少なくとも11%(w/v)のタンパク質濃度まで濃縮される。
【0130】
13.製剤
透析濾過ステップが完了すると、溶液のタンパク質濃度は、約5%~約20%(w/v)、または約6%~約18%(w/v)、または約7%~約16%(w/v)、または約8%~約14%(w/v)、または約9%~約12%の最終濃度、または約5%、もしくは6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%の最終濃度に、透析濾過緩衝液により調整される。例示的な実施形態では、溶液の最終タンパク質濃度は、約9%~約11%、例えば、10%である。
【0131】
様々な実施形態では、製剤されたバルク溶液は、約0.22ミクロン以下、例えば、約0.2ミクロンの絶対細孔サイズを有する膜フィルタを通じた濾過によって更に滅菌される。溶液は、任意選択で、試験を行うサンプルと共に、適切に密封するために最終容器に無菌で分注される。
【0132】
1つの実施形態では、IgG組成物は、透析濾過緩衝液により約10.2±0.2%(w/v)の濃度に更に調整される。pHは、必要である場合、約4.4~約4.9に調整される。最終的に、溶液は、滅菌濾過され、約30℃で3週間インキュベーションされる。
【0133】
14.治療の方法
現代の医学において日常的に実践されているように、濃縮免疫グロブリン(特に、IgG)の滅菌調製剤は、3つの主なクラス:免疫不全、炎症性及び自己免疫疾患、並びに急性感染症に該当する医学的状態を治療するために使用される。それらのIgG調製剤はまた、多発性硬化症(特に、再発寛解型多発性硬化症またはRRMS)、アルツハイマー病、及びパーキンソン病を治療するために有用であり得る。本発明の精製IgG調製剤は、それらの目的並びにIgG調製剤の他の臨床的に許容された使用に対して適切である。
【0134】
FDAは、同種骨髄移植、慢性リンパ性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、小児HIV、原発性免疫不全、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIDP)、及び高抗体レシピエントまたはABO不適合ドナーによる腎移植を含む、様々な適応症を治療するために、IVIGの使用を承認してきた。ある種の実施形態では、本明細書で提供されるIVIG組成物は、それらの病気及び状態の治療または管理に対して有用である。
【0135】
IVIGについての適応外使用は、様々な適応症、例えば、慢性疲労症候群、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、皮膚筋炎及び多発性筋炎、グレーブス眼症、ギラン・バレー症候群、筋ジストロフィー、封入体筋炎、ランバート・イートン症候群、エリテマトーデス、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、新生児同種免疫性血小板減少症、パルボウイルスB19感染症、天疱瘡、輸血後紫斑病、腎移植拒絶反応、自然流産/流産、スティッフパーソンシンドローム、オプソクローヌスミオクローヌス、重症成人における重度の敗血症および敗血症性ショック、中毒性表皮壊死融解症、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、X連鎖無ガンマグロブリン血症、並びに低ガンマグロブリン血症の治療または管理のために患者に一般的に提供される。ある種の実施形態では、本明細書で提供されるIVIG組成物は、それらの病気及び状態の治療または管理に対して有用である。
【0136】
最後に、原発性免疫不全、RRMS、アルツハイマー病、及びパーキンソン病を含む病気の治療または管理のためのIVIGの実験的な使用が提案されている(全ての目的のためにその全体が参照により本明細書で組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0148463号)。ある種の実施形態では、本明細書で提供されるIVIG組成物は、原発性免疫不全、RRMS、アルツハイマー病、またはパーキンソン病の治療または管理に対して有用である。日々の投与を含むある種の実施形態では、対象に投与される有効量は、年齢、体重、病気の重度、投与の経路(例えば、静脈内対皮下)、及び療法に対する応答における個人差を考慮して医師によって決定され得る。ある種の実施形態では、本発明の免疫グロブリン調製剤は、1日約5mg/キログラム~約2000mg/キログラムで対象に投与され得る。追加の実施形態では、免疫グロブリン調製剤は、少なくとも約10mg/キログラム、少なくとも15mg/キログラム、少なくとも20mg/キログラム、少なくとも25mg/キログラム、少なくとも30mg/キログラム、または少なくとも50mg/キログラムの量で投与され得る。追加の実施形態では、免疫グロブリン調製剤は、1日最大で約100mg/キログラム、約150mg/キログラム、約200mg/キログラム、約250mg/キログラム、約300mg/キログラム、約400mg/キログラムの用量で対象に投与され得る。他の実施形態では、免疫グロブリン調製剤の用量は、より大きくてもよく、またはより少なくてもよい。更に、免疫グロブリン調製剤は、1日あたり1回以上の用量で投与されてもよい。IgG調製剤によって処置される病気に精通した臨床医は、当技術分野において既知の基準に従って患者のために適切な用量を決定することができる。
【0137】
本発明に従って、治療コースを完了するために必要な時間を医師によって決定することができ、1日の短期間から1か月超の範囲であり得る。ある種の実施形態では、治療コースは、1~6か月であり得る。
【0138】
IVIG調製剤の有効量は、静脈内手段によって対象に投与される。用語「有効量」は、対象における病気または状態の改善または回復を結果としてもたらすIVIG調製剤の量を指す。対象に投与される有効量は、年齢、体重、治療される病気または状態、病気の重度、及び療法に対する応答における個人差を考慮して医師によって決定され得る。ある種の実施形態では、IVIG調製剤は、投与ごとに約5mg/キログラム~約2000mg/キログラムの用量において対象に投与されてもよい。ある種の実施形態では、用量は、少なくとも約5mg/kg、または少なくとも約10mg/kg、または少なくとも約20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、1500mg/kg、1600mg/kg、1700mg/kg、1800mg/kg、1900mg/kg、または少なくとも約2000mg/kgであってもよい。
【0139】
IVIG治療の投薬量及び頻度は、いくつかの要素の中でも特に、治療される病気または状態及び患者における病気または状態の重症度に依存する。一般的に、原発性免疫機能障害について、約100mg/kg体重~約400mg/kg体重の用量が約3~4週間ごとに投与される。神経系及び自己免疫疾患に対しては、最大で2g/kg体重が、1か月に1回、5日間のコースで、3~6か月間実施される。これは一般的に、3~4週間ごとに約1回、約100mg/kg体重~約400mg/kg体重の投与を含む維持療法により補完される。一般的に、患者は、約14~35日ごとに1回、または約21~28日ごとに1回、投薬または治療を受ける。治療の頻度は、いくつかの要素の中でも特に、治療される病気または状態及び患者における病気または状態の重症度に依存する。
【0140】
好ましい実施形態では、免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症の治療を必要とするヒトにおける免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症を治療する方法が提供され、方法は、本発明のIVIG医薬組成物を投与することを含む。関連する実施形態では、本発明は、免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症の治療を必要とするヒトにおける免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症の治療のための本明細書で提供される方法に従って製造されたIVIG組成物を提供する。
【0141】
ある種の実施形態では、免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症は、同種骨髄移植、慢性リンパ性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、小児HIV、原発性免疫不全症、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、高抗体レシピエントまたはABO不適合ドナーによる腎移植、慢性疲労症候群、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、皮膚筋炎及び多発性筋炎、グレーブス眼症、ギラン・バレー症候群、筋ジストロフィー、封入体筋炎、ランバート・イートン症候群、エリテマトーデス、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、新生児同種免疫性血小板減少症、パルボウイルスB19感染症、天疱瘡、輸血後紫斑病、腎移植拒絶反応、自然流産/流産、スティッフパーソンシンドローム、オプソクローヌスミオクローヌス、重症成人における重症敗血症及び敗血症性ショック、中毒性表皮壊死融解症、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、X-関連無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、原発性免疫不全、RRMS、アルツハイマー病、並びにパーキンソン病から選択される。
【0142】
15.医薬組成物
別の態様では、本発明は、本明細書で提供される方法によって調製された精製IgGを含む医薬組成物及び製剤を提供する。一般的に、本明細書で説明される新規の方法によって調製されたIgG医薬組成物及び製剤は、高いIgG含有量及び純度を有する。例えば、本明細書で提供されるIgG医薬組成物及び製剤は、少なくとも約7%(w/v)のタンパク質濃度及び約95%超の純度のIgG含有量を有し得る。それらの高純度のIgG医薬組成物及び製剤は、療法学的投与に対して、例えば、IVIG療法に対して適切である。好ましい実施形態では、IgG医薬組成物は、静脈内投与(例えば、IVIG療法)のために製剤される。
【0143】
1つの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で提供される方法を使用して単離された水性IgG組成物を製剤することによって調製される。一般的に、製剤化組成物は、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは3回の、ウイルス不活性化または除去のステップに供されることになる。本明細書で提供される方法とともに用いることができるウイルス不活性化または除去のステップの非限定的な例としては、溶媒洗浄剤処理(全ての目的のためにその全体が参照によりともに本明細書に明示的に組み込まれる、Horowitz et al.,Blood Coagul Fibrinolysis 1994(5 Suppl 3):S21-S28及びKreil et al.,Transfusion 2003(43):1023-1028)、ナノ濾過(全ての目的のためにその全体が参照によりともに本明細書に明示的に組み込まれる、Hamamoto et al.,Vox Sang 1989(56)230-236及びYuasa et al.,J Gen Virol.1991(72(pt8)):2021-2024)、並びに高温での低pHインキュベーション(Kempf et al.,Transfusion 1991(31)423-427及びLouie et al.,Biologicals 1994(22):13-19)を含む。
【0144】
ある種の実施形態では、約80g/LのIgG~約220g/LのIgGのIgG含有量を有する医薬製剤が提供される。一般的に、それらのIVIG製剤は、本明細書で説明される方法を使用して血漿からIgG組成物を単離し、組成物を濃縮し、静脈内投与に対して適切な溶液内で濃縮組成物を製剤することによって調製される。IgG組成物は、当業者に既知のいずれかの適切な方法を使用して濃縮されてもよい。1つの実施形態では、組成物は、限外濾過/透析濾過によって濃縮される。いくつかの実施形態では、組成物を濃縮するために使用される限外濾過デバイスは、約100kDa未満、または約90、80、70、60、50、40、もしくは30kDa未満の名目上の分子量カットオフ(NMWCO)を有する限外濾過膜を採用する。好ましい実施形態では、限外濾過膜は、50kDa以下のNMWCOを有する。当業者に既知のいずれかの適切な技術を使用して、緩衝液交換を達成することができる。特定の実施形態では、緩衝液交換は、透析濾過によって達成される。
【0145】
1つの特定の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、IgG組成物は、IgGを含むC1-INH欠乏上清画分から精製されており、方法は、
(a)C1-INH欠乏上清画分をヘパリンと接触させ、それによって、ヘパリン添加画分を形成することと、
(b)ヘパリン添加画分からIgGを単離し、それによって、IgG濃縮画分を形成することと
を含む。
【0146】
特定の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、IgG組成物は、(a)第1の沈殿ステップにおいて、約7.0~7.5のpHで、約6%~約10%エタノールにより、ヘパリン添加画分を沈殿させ、第1の沈殿物及び第1の上清を得ることと、(b)約-5℃~約-9℃の温度においてステップ(a)のヘパリン添加画分のエタノール濃度を約25%(v/v)に調整し、それによって、混合物を形成することと、(c)ステップ(b)の混合物から液体及び沈殿物を分離することと、(d)リン酸塩及び酢酸塩を含有した緩衝液によりステップ(c)の沈殿物を再懸濁することであって、緩衝液のpHは、1000Lの緩衝液あたり600mlの氷酢酸により調整され、それによって、懸濁物を形成することと、(e)微細に分割された二酸化ケイ素(SiO2)をステップ(d)からの懸濁物と少なくとも約30分間混合することと、(f)フィルタプレスにより懸濁物を濾過し、それによって、濾液を形成することと、(g)少なくとも3フィルタプレス死容積のリン酸塩及び酢酸塩を含有した緩衝液によりフィルタプレスを洗浄することであって、緩衝液のpHは、1000Lの緩衝液あたり150mlの氷酢酸により調整され、それによって、洗浄溶液を形成することと、(h)ステップ(f)の濾液をステップ(g)の洗浄溶液と合わせ、それによって、溶液を形成し、洗浄剤により溶液を処理することと、(i)ステップ(h)の溶液のpHを約7.0に調整し、エタノールを約25%の最終濃度まで添加し、それによって、沈殿物を形成することと、(j)ステップ(i)の混合物から液体及び沈殿物を分離することと、(k)溶媒または洗浄剤を含む水溶液内で沈殿物を溶解し、少なくとも60分間、溶液を保持することと、(l)ステップ(k)の後の溶液をカチオン交換クロマトグラフィカラムに通し、カラム上に吸収されたタンパク質を溶出液に溶出させることと、(m)ステップ(l)からの溶出液をアニオン交換クロマトグラフィカラムに通し、流出液を生成することと、(n)ステップ(m)からの流出液をナノフィルタに通し、ナノ濾液を生成することと、(o)ステップ(n)からのナノ濾液を限外濾過膜に通し、限外濾過液を生成することと、(p)ステップ(o)からの限外濾過液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過し、約8%(w/v)~約12%(w/v)のタンパク質濃度を有する透析濾過液を生成し、それによって、濃縮IgGの組成物を得ることとのステップを含む方法を使用してヘパリン添加画分から精製されている。
【0147】
ある種の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、IgG組成物は、上記説明された分画工程ステップの2つ以上における改善を含む、本明細書で提供される方法を使用して調製される。例えば、ある種の実施形態では、第1の沈殿ステップ、修正画分II+III沈殿ステップ、修正画分II+III溶解ステップ、及び/または修正画分II+III懸濁物濾過ステップにおいて改善を見い出すことができる。
【0148】
ある種の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、IgG組成物は、本明細書で説明される精製方法を使用して調製され、方法は、流動的添加によって血漿画分に導入される場合がある1種または複数種の溶液を噴霧添加することを含む。例えば、ある種の実施形態では、方法は、噴霧による血漿画分へのアルコール(例えば、エタノール)の導入を含む。他の実施形態では、噴霧によって血漿画分に添加することができる溶液は、これらに限定されないが、pH調整溶液、溶媒溶液、洗浄剤溶液、希釈緩衝液、及び導電率調整溶液などを含む。好ましい実施形態では、1つまたは複数のアルコール沈殿ステップは、噴霧による血漿画分へのアルコールの添加によって実行される。第2の好ましい実施形態では、1つまたは複数のpH調整ステップは、噴霧による血漿画分へのpH調整溶液の添加によって実行される。
【0149】
ある種の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、IgG組成物は、本明細書で説明される精製方法によって調製され、方法は、沈殿剤(例えば、アルコールまたはポリエチレングリコール)の添加の後またはそれと同時に沈殿される血漿画分のpHを調整することを含む。いくつかの実施形態では、pHの継続的な監視及び調整によって、沈殿インキュベーションまたは保持ステップの全体を通じて、能動的に沈殿される血漿画分のpHが維持される、工程改善が提供される。好ましい実施形態では、pHの調整は、pH調整溶液の噴霧添加によって実行される。
【0150】
1つの実施形態では、本発明は、約70g/L~約130g/Lのタンパク質濃度を含むIgGの医薬組成物を提供する。ある種の実施形態では、IgG組成物のタンパク質濃度は、約80g/L~約120g/L、例えば、約90g/L~約110g/L、例えば、約100g/L、またはそれらの範囲内のいずれかの適切な濃度、例えば、約70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、もしくは130g/Lである。好ましい実施形態では、100g/Lまたは約100g/Lのタンパク質濃度を有する医薬組成物が提供される。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、102g/Lまたは約102g/Lのタンパク質濃度を有する。
【0151】
別の実施形態では、本発明は、約170g/L~約230g/Lのタンパク質濃度を含むIgGの医薬組成物を提供する。ある種の実施形態では、IgG成分のタンパク質濃度は、約180g/L~約220g/L、例えば、約190g/L~約210g/L、例えば、約200g/L、またはそれらの範囲内のいずれかの適切な濃度、例えば、約170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、200g/L、205g/L、210g/L、215g/L、220g/L、225g/L、もしくは230g/Lである。好ましい実施形態では、200g/Lまたは約200g/Lのタンパク質濃度を有する医薬組成物が提供される。
【0152】
本明細書で提供される方法は、非常に高いレベルの純度を有するIgG医薬組成物の調製を可能にする。例えば、1つの実施形態では、本明細書で提供される組成物内の総タンパク質の少なくとも約95%がIgGである。他の実施形態では、タンパク質の少なくとも約96%がIgGであり、または組成物の総タンパク質の約97%、98%、99%、もしくは99.5%以上がIgGである。好ましい実施形態では、組成物の総タンパク質の少なくとも97%がIgGである。別の好ましい実施形態では、組成物の総タンパク質の少なくとも98%がIgGである。別の好ましい実施形態では、組成物の総タンパク質の少なくとも99%がIgGである。
【0153】
同様に、本明細書で提供される方法は、極めて低いレベルの混入剤を含むIgG医薬組成物の調製を可能にする。例えば、ある種の実施形態では、含まれるIgAが約100mg/L未満であるIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は、含まれるIgAが約50mg/L未満であり、好ましくは含まれるIgAが約35mg/L未満であり、最も好ましくは含まれるIgAが約20mg/L未満である。
【0154】
本明細書で提供される医薬組成物は、典型的には、静脈内投与、皮下投与、及び/または筋肉内投与に対して適切な1種もしくは複数種の緩衝剤またはpH安定剤を含む。本明細書で提供されるIgG組成物を製剤するために適切な緩衝剤の非限定的な例は、適切なpHに調整されたグリシン、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、ヒスチジンもしくは他のアミノ酸、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、炭酸塩、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一般的に、緩衝剤は、製剤内で適切なpHを長期間維持するために十分である。好ましい実施形態では、緩衝剤は、グリシンである。
【0155】
いくつかの実施形態では、製剤内の緩衝剤の濃度は、約100mM~約400mM、例えば、約150mM~約350mM、例えば、約200mM~約300mM、例えば、250mMである。特に好ましい実施形態では、IVIG組成物は、約200mM~約300mMのグリシン、例えば、約250mMのグリシンを含む。
【0156】
ある種の実施形態では、製剤のpHは、約4.1~約5.6、例えば、約4.4~約5.3、例えば、4.6~約5.1である。特定の実施形態では、製剤のpHは、約4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、または5.6であってもよい。好ましい実施形態では、製剤のpHは、約4.6~約5.1である。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、任意選択で、組成物のオスモル濃度を調整するための剤を更に含んでもよい。オスモル濃度調節剤の非限定的な例は、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、スクロース、グルコース、デキストロース、レブロース、フルクトース、ラクトース、ポリエチレングリコール、リン酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グルコノグルコヘプトン酸カルシウム、及びジメチルスルホンなどを含む。
【0158】
典型的には、本明細書で提供される製剤は、生理的オスモル濃度に相当するオスモル濃度、約285~295mOsmol/kgを有する(Lacy et al.,Drug Information Handbook - Lexi-Comp 1999:1254)。ある種の実施形態では、製剤のオスモル濃度は、約200mOsmol/kg~約350mOsmol/kg、好ましくは約240~約300mOsmol/kgである。特定の実施形態では、製剤のオスモル濃度は、約200mOsmol/kg、または210mOsmol/kg、220mOsmol/kg、230mOsmol/kg、240mOsmol/kg、245mOsmol/kg、250mOsmol/kg、255mOsmol/kg、260mOsmol/kg、265mOsmol/kg、270mOsmol/kg、275mOsmol/kg、280mOsmol/kg、285mOsmol/kg、290mOsmol/kg、295mOsmol/kg、300mOsmol/kg、310mOsmol/kg、320mOsmol/kg、330mOsmol/kg、340mOsmol/kg、340mOsmol/kg、もしくは350mOsmol/kgである。
【0159】
本明細書で提供されるIgG製剤は一般的に、液体で長期間安定である。ある種の実施形態では、製剤は、室温において少なくとも約3か月間安定であり、または室温において少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24か月間安定である。製剤はまた、一般的に、冷蔵状態(典型的には、約2℃~約8℃)で6もしくは少なくとも約18か月間安定であり、または冷蔵状態で少なくとも約21、24、27、30、33、36、39、42、もしくは45か月間安定である。
【実施例】
【0160】
以下の実施例は、限定を目的としたものではなく、例示の目的のみに提供される。当業者は、本質的に同一または類似の結果を生み出すように変更または修正され得る様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0161】
使用される略語:
CAE、セルロースアセテート膜電気泳動;CZE、キャピラリーゾーン電気泳動;FC、最終容器;NAPTT、非活性化部分トロンボプラスチン時間;NP、正常血漿;PKA、プレカリクレイン活性;PL-1、発色基質PL-1により測定されたアミド分解活性;PptG、沈殿G;TGA、トロンビン生成アッセイ、TP、総タンパク質
【0162】
実施例1
本実施例は、C1-INH欠乏血漿上清(DDCPP)から得られたPptG沈殿物から多量のフィブリノゲン、アミド分解活性、プレカリクレイン活性を取り除くことができることを証明する。
【0163】
出発原料から上清Iへのフィブリノゲン含有量は、バリアント天然において0.94g/L DDCPPから0.26g/L DDCPPに低減し(表1を参照)、バリアントヘパリンにおいて1.23g/L DDCPPから0.34g/L DDCPPに低減し(表2を参照)、バリアントNaClにおいて1.4g/L DDCPPから0.37g/L DDCPPに低減する(表3を参照)。エアロゾル処理及び濾過の間に、バリアントヘパリンにおいて0.01g/L DDCPPへの更なる低減(表2)、及び他の両方のバリアントにおいて0.02g/L DDCPPへの更なる低減(表1及び表3)が発生する。6ロットからの溶解されたPptGサンプル内のフィブリノゲンは、総タンパク質の0.1%~0.3%である(表4)。このステップにおけるフィブリノゲン含有量は、PptGから生成された適合ロット内の含有量に等しい(総タンパク質の0.1%~0.3%)。フィブリノゲンは、最終容器でのレベルで検出限界を下回っていた(表15を参照)。
【0164】
分画II+IIIは、未精製のアルブミン(II+III上清)から未精製の免疫グロブリン(II+III沈殿物)を分離する。ハプトグロビン及びトランスフェリンは、II+III上清内で主に保持される(表1,表2,及び表3を参照)。C3補体は、出発Cohnプール内で低く、Aerosil処理及び濾過ステップの間に、0.03~0.05g/L DDCPPから、ヘパリンにおいて0.004g/L DDCPPまで、他の両方のバリアントにおいて0.01g/L DDCPPまで取り除かれる。FXIタンパク質は、約1000U/L DDCPPから、ヘパリンにおいて148U/L DDCPPに低減し、天然において383U/L DDCPPに低減し、NaClバリアントにおいて461U/L DDCPPに低減する。Aerosil処理及び濾過ステップは、IgA、IgM、及びFXIタンパク質の一部と共に、フィブリノゲン、ハプトグロビンを低減させる。
【0165】
PptG内で、分子サイズ分布によって測定されるように、低分子量成分が低含有量で含まれる(表4を参照)。トランスフェリン及びα2マクログロブリンは、PptG上清内に留まる(表1~表3)。溶解されたPptG中のIgA含有量(総タンパク質(TP)の7.7%~10.9%、ELISAで測定)は、VIE内の適合ロットと比べてわずかに低い範囲を有する(TPの9.6%~12.7%)。溶解されたPptG内で、α2-マクログロブリンレベルは、TPの4.7%~5.6%の間で変化する(表4)。FXIタンパク質は、PptG内ではバリアント天然及びバリアントNaClで全てのロットについて同様の高さであるが(37.5~41.9U/gタンパク質)、ヘパリンが添加されたロットでは低い(12.1~12.4U/gタンパク質)(表4を参照)。これは、表4に示されるg/L DDCPP値によってより大きく反映されている。
【0166】
(表1)上流中間結果(CohnプールからPptG上清まで)-天然
【0167】
(表2)上流中間結果(CohnプールからPptG上清まで)-バリアントヘパリン
【0168】
(表3)上流中間結果(CohnプールからPptG上清まで)-バリアントNaCl
【0169】
【0170】
溶解されたPptGにおけるPKAは、定量限界以下から最大9.4U/mLの間で変化する。バルクでは、PKAは、全ての工程のオプションについて定量限界を下回る(表5を参照)。カリクレイン様活性は、PptG溶解ステップにおいて高いが(490~733nmol/mL*min)、下流工程によって大きく低減することがあり、CM Sepharoseクロマトグラフィに35mMの溶出緩衝液を使用することで、レベルは、定量限界を下回る(<10nmol/mL*min)。FXI欠乏血漿において試験される非活性化部分トロンボプラスチン時間は、いずれのオプションについても、溶解されたPptGにおいて短縮されていない。発色性基質PL-1によって測定されるアミド分解活性は、溶解されたPptGで高いが(97.2~163.1nmol/mL*min)、ほとんどのケースでは、最終バルクレベルにおいて定量限界を下回るレベルに低減する(<10nmol/mL*min)。トロンビン生成は、参考のみのためにPptG溶解のレベルで測定された。試験は変化するが、このステップにおいて測定されたTGAは、ヘパリンがDDCPPに添加されたロットについて、より低い(正常血漿の113.14%及び103.33%)(FCについては132%NPの観察限界)。バルク(低pHインキュベーションの前のサンプル)では、TGA値は、全てのサンプルについて、132%の所定の最終容器についての観察限界を上回る。TGA値は、NaCl添加、ヘパリン添加、または天然に関わらず、35mMの溶出緩衝液での実施について、正常血漿の185%~195%である。FXIa値は、溶解されたPptGで、ヘパリンバリアントにより生成されたロットで定量限界を下回る。他の両方のロットでは、他の試験と比較して、値がかなり高い(10.3~16.7ng/gタンパク質)。全てのロットで、FXIa値が最終バルクにおいて検出された。この場合でも、ヘパリンがDDCPPに添加されたもので、最小値が確認された。
【0171】
溶解されたPptGにおける高カリクレイン様活性は、アミド分解活性プロファイルによっても反映される。基質は、カリクレイン、FXIa、及びFXIIaを特異的に測定し、測定値は570~1780nmol/ml*minである。これらの値は、最終バルクにおいて8~22nmol/ml*minに低減する(表5を参照)。
【0172】
(表5)PptG及びバルクにおけるPKA、プロコアグラント不純物、及びアミド分解活性の結果
【0173】
実施例2
Cohnプール、II+III上清(アルブミン)及び中間PptGペーストにおける純度は、セルロースアセテート膜電気泳動によって決定される(表6を参照)。現在のGammagard Liquid/KIOVIG規格に従って、中間生成物、沈殿Gは、CAE電気泳動またはその同等手段による測定で、≧86%のガンマグロブリンの純度規格を満たす必要がある。DDCPPから得られたPptGペースト(C1インヒビター吸着後の血漿)は、>86%のGammagard Liquid/KIOVIGの中間規格限界を明らかに満たす(表6を参照)。ヘパリン及び塩化ナトリウムの添加は、純度を88%から93%に増大させる。
【0174】
また、純度は、PptG溶解ステップ及び最終容器でCZEによって測定される。Ppt Gは、92%~93%のγ-グロブリン純度を有し、最終容器純度は、100%のγ-グロブリンであった(表7を参照)。
【0175】
(表6)CAEによって測定したCohnプール、II+III上清、及びPptGの純度
【0176】
(表7)CZEによって測定したPptG溶解及び最終容器(FC)の純度
【0177】
実施例3
出発原料がIgGの生成のための使用に適切であることを確認するために、高IgG回収及びタンパク質収率を決定する。タンパク質及びIgG収率は、%及びg/L血漿で与えられ、工程の効率性を示す。Cohnプールからバルクまでの高IgG回収は、非常に良好な工程の効率性を反映する。IgGの測定に基づく68%~75%の回収が得られた(表8~表10)。導電率の調整のためのCohnプールへの塩化ナトリウム添加は、他の2つのオプションと比較して、わずかに低い全体的な回収を結果としてもたらす(68%対70%超)。
【0178】
(表8)タンパク質及びIgG回収-35mMのCM溶出緩衝液を使用した天然
1)QC VIEにより測定
【0179】
(表9)タンパク質及びIgG回収-35mMのCM溶出緩衝液を使用したバリアントヘパリン
1)QC VIEにより測定
【0180】
(表10)タンパク質及びIgG回収-35mMのCM溶出緩衝液を使用したバリアントNaCl
1)QC VIEにより測定
2)PSP/PSTOにより測定
【0181】
実施例4
最終容器リリースパラメータを、Gammagard Liquid/KIOVIGの製造方法に従って試験し、35mMの溶出緩衝液での実施について、表11にまとめた。リリースパラメータの抗体力価の結果は、表12及び表13にまとめられている。
【0182】
(表11)35mMのCMセファロース溶出緩衝液を使用した最終容器規格試験の結果
【0183】
実施例5
最終容器ロットについて、抗A/抗Bヘマグルチニン及び抗D抗体、ジフテリア(USのみ)、HAV(EUのみ)、HBsAg、はしか(USのみ)、パルボB19(EUのみ)、及びポリオ(USのみ)に対する抗体についてのリリース試験を行った(表12を参照、35mMの溶出緩衝液)。全ての抗体試験が要件を満たした。
【0184】
(表12)FCにおける抗体レベル(総タンパク質に対して計算されたIU/gタンパク質)-35mMの溶出緩衝液
【0185】
実施例6
血漿由来タンパク質組成物に存在する残余セリンプロテアーゼ含有量及び活性を決定するために、C1-INH欠乏血漿上清からのIgG調製剤に対してアミド分解活性プロファイルを決定した。簡潔にまとめると、血漿由来タンパク質組成物についてのアミド分解活性プロファイルが決定された。PL-1、アミド分解活性プロファイル、TGA、NAPTT、FXIa、及びFXIタンパク質が試験され、結果を表13にまとめた(35mMの溶出緩衝液)。表13に示されるように、発色性基質PL-1によって測定されたアミド分解活性は、全てのロットで定量限界を下回り、それは、CM溶出緩衝液のリン酸塩濃度に関わらず、下流工程の高い低減能力を証明する。異なる発色性基質を用いて生成されたアミド分解活性データも、非常に低い値を示す。FXI欠乏血漿において試験されるNAPTTは、最終容器サンプルにおいて短縮されていない。FXIaは、ヘパリンが添加された場合に、35mMのCM-溶出緩衝液の使用で、定量限界を下回る。FXIのみでなくFXIaも検出するFXIタンパク質試験は、35mMのCM溶出緩衝液の使用で、ヘパリンがDDCPPに添加される場合に非常に低い値を有する。
【0186】
(表13)35mMの溶出緩衝液を使用してFCで測定されたアミド分解活性及びプロコアグラント活性
【0187】
実施例7
FXIタンパク質試験は、製造工程の全体を通じた指標でもある。表14では、最終容器までのDDCPPからのFXIタンパク質の全体的な減少がまとめられている。出発原料におけるFXIタンパク質値を、100%に設定する。主な減少は、Aerosil処理とその後の濾過において生じる。下流工程により、FXIタンパク質含有量が初期値の0.01%のレベルに更に減少された。
【0188】
(表14)DDCPP出発原料からFCまでのFXIタンパク質の全体の減少(%回収)
【0189】
実施例8
次いで、C1-INH欠乏血漿上清由来のIgG調製剤における様々なタンパク質不純物のレベルを測定した。表15に示されるように、フィブリノゲンは、検出限界を下回り(<0.03μg/mL)、補体C3レベル(0.04~0.07mg/dL)は、観察限界(<19.4mg/dL)をはるかに下回る。
【0190】
(表15)35mM溶出緩衝液を使用した最終容器におけるトレースタンパク質含有量
【0191】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書に引用される全ての出版物、特許、及び特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】