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特表2023-520226ケイ素含有薄膜の堆積のための有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン
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  • 特表-ケイ素含有薄膜の堆積のための有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ケイ素含有薄膜の堆積のための有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20230509BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230509BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230509BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
C07F7/10 W
C23C16/455
C23C16/40
H01L21/316 X
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560058
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020052635
(87)【国際公開番号】W WO2021201910
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】16/838,997
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/030,187
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アール.マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェイ.レーマン
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4H039CA71
4H039CA92
4H039CD10
4H049VN01
4H049VP04
4H049VP05
4H049VQ39
4H049VQ87
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR41
4H049VR42
4H049VR51
4H049VT17
4H049VT30
4H049VU24
4H049VW01
4K030AA01
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA29
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
5F058BA05
5F058BB02
5F058BB04
5F058BB05
5F058BB07
5F058BC02
5F058BD04
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
少なくとも3個のケイ素原子及び3個の酸素原子並びに少なくとも1つの有機アミノ基を有するアミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン並びに該オリゴシロキサンの製造方法を開示する。有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサンを用いたケイ素及び酸素含有薄膜の成膜方法も開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の、有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン化合物を含む組成物であって、前記化合物は、式A~D:
【化1】
から成る群から選択され、前記式A~D中、
は、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;
は、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、
及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;
3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
化合物を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物は、溶媒及びパージガスから成る群から選択される少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
3~9の各々は、水素及びC~Cアルキル基から成る群から独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
は、C~C10環式アルキル基及びC~C10アリール基から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、ハロゲン化物、金属イオン、金属、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン化合物は、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-メチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-メチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-iso-プロピルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-iso-プロピルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6-トリス(メチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
基材上へのケイ素及び酸素を含む薄膜の堆積方法であって、前記方法は、
a)反応器内に基材を準備する工程と;
b)式A~D:
【化2】
から成る群から選択される少なくとも1種のシリコン前駆体化合物であって、前記式A~D中、
は、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;
は、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、
及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;
3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
少なくとも1種のシリコン前駆体化合物を前記反応器内に導入する工程と;
c)前記反応器をパージガスでパージする工程と;
d)前記反応器内に酸素含有原料及び窒素含有原料のうち少なくとも1つを導入する工程と;
e)前記反応器を前記パージガスでパージする工程と、
を含み、
薄膜の所望の厚さが堆積されるまで工程bから工程eを反復し;前記方法を、約25℃~600℃の範囲の1つ以上の温度で行う、
方法。
【請求項8】
3~9の各々は、水素及びC~Cアルキル基から成る群から独立して選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
は、C~C10環式アルキル基及びC~C10アリール基から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のシリコン前駆体化合物は、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-メチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-メチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-iso-プロピルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-iso-プロピルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,6-テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8,10,10-ノナメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6-トリス(メチルアミノ)-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ケイ素及び酸素含有薄膜であって、次の特性:少なくとも約2.1g/ccの密度;水に対するHFが1:100である希釈HF(0.5質量%dHF)酸溶液中で測定されたとき、約2.5Å/秒未満の湿式エッチング速度;6MV/cm以下において約1×10-8A/cm未満の漏電;及び二次イオン質量分析(SIMS)により測定されたとき、約5×1020原子/cc未満の水素不純物のうち少なくとも1つを含む、ケイ素及び酸素含有薄膜。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を収容するステンレス鋼容器。
【請求項13】
ヘリウム、アルゴン、窒素及びこれらの組合せから選択される不活性ヘッドスペースガスを更に含む、請求項12に記載のステンレス鋼容器。
【請求項14】
前記シリコン前駆体化合物は、溶媒及び不活性ガスから成る群から選択される少なくとも1つを更に含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
この一部継続出願は、2020年4月2日に出願された米国特許仮出願第16/838,997号及び2020年9月23日に出願された米国特許仮出願第17/030,187号の利益を主張する。出願第16/838,997号及び第17/030,187号の開示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ケイ素及び酸素含有薄膜(例えば、ケイ素及び酸素含有薄膜の中でもとりわけ、酸化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素)を堆積するために使用することができる有機シリコン化合物、酸化ケイ素含有薄膜を堆積するための化合物の使用方法並びに前記化合物及び方法から得られた薄膜に関する。
【0003】
新規な、有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン前駆体化合物並びに、熱原子層堆積(ALD)若しくはプラズマ促進原子層堆積(PEALD)法、又はこれらの組合せによる、これらに限定されないが、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、又は炭素ドープ酸化ケイ素などのケイ素含有薄膜を堆積するための組成物及び方法を本明細書において記載する。より詳細には、例えば、約25℃~約300℃を含む約600℃以下の1つ以上の堆積温度において化学量論的又は非化学量論的ケイ素含有薄膜又は物質を形成するための組成物及び方法を本明細書において記載する。
【0004】
原子層堆積(ALD)及びプラズマ促進原子層堆積(PEALD)は、低温(<500℃)において、例えば、酸化ケイ素コンフォーマル薄膜を堆積するために使用される方法である。ALD法及びPEALD法の両方では、前駆体及び反応性ガス(酸素又はオゾンなど)は、各サイクルにおいて酸化ケイ素の単層を形成する特定回数のサイクルにおいて個別にパルスされる。しかしながら、これらの方法を用いて低温で堆積された酸化ケイ素は、これらに限定されないが、炭素(C)又は水素(H)などの特定レベルの不純物を含む可能性があり、これは、特定の半導体応用において有害であり得る。これを改善するため、1つの可能性のある解決法は、堆積温度を500℃以上に上昇させることである。しかしながら、これらに高温においては、半導体産業により使用される従来の前駆体は、自己反応、熱分解し、ALDモードよりむしろ化学気相成長(CVD)モードで堆積する傾向がある。CVDモード堆積は、特に、多くの半導体応用で必要とされる高アスペクト比構造のため、ALD堆積と比較してコンフォーマル性が低下する。加えて、CVDモード堆積は、ALDモード堆積より薄膜又は物質厚さを上手く制御できない。
【0005】
比較的低温(<300℃)において、及び比較的高いサイクル当たりの堆積量(GPC>1.5Å/サイクル)で原子層堆積(ALD)法及びプラズマ促進原子層堆積(PEALD)法によりケイ素含有薄膜を堆積するために使用することができる有機アミノシラン及びクロロシラン前駆体は、当技術分野において公知である。
【0006】
公知の前駆体及び方法の例は、次の出版物、特許、及び特許出願に開示されている。
【0007】
米国特許第7,084,076(B2)号明細書は、塩基触媒ALD法で使用する酸化ケイ素薄膜を堆積するためのハロゲン置換又はNCO置換ジシロキサン前駆体の使用を記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2015/087139(AA)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するためのアミノ官能基を有するカルボシランの使用を記載している。
【0009】
米国特許第9,337,018(B2)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するための有機アミノジシランの使用を記載している。
【0010】
米国特許第8,940,648(B2)号明細書及び米国特許第8,912,353(B2)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するための有機アミノシランの使用を記載している。
【0011】
米国特許出願公開第2015/275355(AA)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するためのモノ-及びビス(有機アミノ)アルキルシランの使用を記載している。
【0012】
米国特許出願公開第2015/376211(A)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するためのモノ(有機アミノ)置換、ハロゲン置換、及びシュードハライド置換トリシリルアミンの使用を記載している。
【0013】
国際公開第15/105337号パンフレット及び米国特許第9,245,740(B2)号明細書は、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するためのアルキル化トリシリルアミンの使用を記載している。
【0014】
国際公開第15/105350号パンフレットは、熱ALD法又はPEALD法によりケイ素含有薄膜を堆積するための少なくとも1つのS-H結合を有する4員環シクロジシラザンの使用を記載している。
【0015】
米国特許第7,084,076(B2)号明細書は、塩基触媒ALD法で使用する酸化ケイ素薄膜を堆積するためのハロゲン置換又はNCO置換ジシロキサン前駆体の使用を記載している。
【0016】
米国特許出願公開第2018/223047(A)号明細書は、ケイ素及び酸素含有薄膜を堆積するための少なくとも2個のケイ素原子及び2個の酸素原子並びに有機アミノ基を有するアミノ官能基を有する直鎖及び環式オリゴシロキサンを開示している。
【0017】
前述の特許及び特許出願の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0018】
上記開発にもかかわらず、半導体製造施設におけるスループットを最大にするために高いサイクル当たりの成長(GPC)で酸化ケイ素含有薄膜を堆積のための前駆体及び方法に対する当技術分野におけるニーズがある。特定の前駆体は>2.0Å/サイクルのGPCで堆積することができるが、これらの前駆体は、とりわけ、低品質薄膜(元素不純物、低密度、電気特性不良、高い湿式エッチング速度)、高プロセス温度などの欠点を有し、触媒を要し、費用がかかり、低コンフォーマル性薄膜を製造する。
【発明の概要】
【0019】
本開発は、ケイ素及び酸素含有前駆体、特に有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサンであって、少なくとも3個のケイ素原子及び3個の酸素原子並びにケイ素及び酸素含有薄膜の堆積方法の一部として基材表面に環式オリゴシロキサン化合物を固着させる働きをする少なくとも1種の有機アミノ基を有する、ケイ素及び酸素含有前駆体、特に有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサンを提供することにより従来の前駆体及び方法に関連する問題を解決する。本発明で開示されているマルチシリコン前駆体は、上記背景技術の項目に記載されているものと比較して新規な構造を有し、したがって、前駆体合成の費用若しくは簡便さ、熱安定性、反応性、若しくは揮発性を含む前駆体の物理特性、ケイ素含有薄膜の堆積方法、又は堆積されたケイ素含有薄膜の特性のいずれかに関する1つ以上の態様における利点を提供し得る。
【0020】
少なくとも1種の有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン化合物を含む組成物であって、前記化合物は、式A~D:
【化1】
から成る群から選択される化合物であって、
【0021】
前記式A~D中、Rは、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;Rは、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、R及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;R3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
化合物を含む組成物を本明細書において開示する。
【0022】
プラズマ促進ALD(PEALD)、プラズマ促進サイクリック化学気相成長(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ促進流動性化学蒸着(PEFCVD)、プラズマ促進ALD様法、又は酸素含有反応原料、窒素含有反応原料、若しくはこれらの組合せを用いたALD法において、比較的低温、例えば、600℃以下の1つ以上の温度で、これらに限定されないが、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素薄膜、又は炭素ドープオキシ窒化ケイ素薄膜などの化学量論的若しくは非化学量論的なケイ素及び酸素含有物質又は薄膜の堆積方法を本明細書において記載する。
【0023】
1つの態様では、基材上へのケイ素及び酸素を含む薄膜の堆積方法であって、前記方法は;(a)反応器内に基材を準備する工程と;(b)反応器内に、式A~D:
【化2】
から成る群から選択される少なくとも1種のシリコン前駆体化合物であって、
【0024】
前記式A~D中、Rは、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;Rは、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、R及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;R3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
化合物を導入する工程と;(c)反応器をパージガスでパージする工程と;(d)反応器内に酸素含有原料及び窒素含有原料のうち少なくとも1つを導入する工程と;並びに(d)反応器を前記パージガスでパージする工程と;薄膜の所望の厚さが堆積されるまで工程bから工程eを反復し;前記方法を、約25℃~600℃の範囲の1つ以上の温度で行う、工程と、
を含む、方法を本明細書において開示する。
【0025】
上記化合物の製造方法も本明細書において開示する。本発明の実施形態を、単独又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に記載のビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン並びに従来技術のBDEASを用いた前駆体パルス時間に対するGPCの飽和曲線のグラフである。
図2図2は、本発明による300℃堆積におけるビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを用いたOプラズマ出力に対する薄膜GPC及びWERを示す。
図3図3は、本発明による100℃堆積におけるビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを用いたOプラズマ出力に対する薄膜GPC及びWERを示す。
図4図4は、本発明による300℃堆積におけるビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを用いたOプラズマ時間に対する薄膜GPC及びWERを示す。
図5図5は、本発明による100℃堆積におけるビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを用いたOプラズマ時間に対する薄膜GPC及びWERを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の記載に関連して(特に次のクレームとの関連で)用語「a」及び「an」並びに「the」及び同様の指示対象は、本明細書において特に指示されない限り又は文脈上明白に矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、特に断りのない限り、オープンエンドな用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲を記述することは、本明細書において特に指示されない限り、範囲内の各個別の値をひとつひとつ言及する簡便な方法として役立つことを単に目的としており、各別々の値は、あたかも本明細書にひとつひとつ記述されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法を、本明細書において特に指示されない限り、その他何であろうと文脈上明白に矛盾がない限り、いずれもの適切な順序で行うことができる。本明細書で提供されているいずれか及び全ての例、又は好ましい言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明を単によりよく例証することを目的としており、別段にクレームされない限り、本発明の範囲を制限することを提起しない。本明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に不可欠である示すものと解釈されるべきでない。
【0028】
約600℃以下、若しくは約25℃~約600℃の1つ以上の温度で、いくつかの実施形態では、25℃~約300℃において、これらに限定されないが、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素薄膜、オキシ窒化ケイ素、又は炭素ドープオキシ窒化ケイ素薄膜又はこれらの組合せなどの化学量論的若しくは非化学量論的薄膜又は、ケイ素及び酸素を含む物質の形成に関連する組成物及び方法を本明細書において記載する。 本明細書に記載されている薄膜を、これらに限定されないが、プラズマ促進ALD(PEALD)又はプラズマ促進サイクリック化学気相成長(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、又はプラズマ促進流動性化学蒸着(PEFCVD)などの原子層堆積(ALD)又はALD様方法などの堆積方法で堆積する。本明細書に記載されている低温堆積(例えば、約環境温度~600℃の範囲の1つ以上の堆積温度)方法は、次の利点:約2.1g/cc以上の密度、低化学不純物、熱原子層堆積、プラズマ促進原子層堆積(ALD)法又はプラズマ促進ALD様方法における高コンフォーマル性、得られた薄膜中の炭素含有率の調整能力を提供し;及び/又は薄膜は、0.5質量%希釈HF中で測定された場合に5オングストローム/秒(Å/秒)以下のエッチング速度を有する。炭素ドープ酸化ケイ素薄膜のため、これらに限定されないが、約1.8g/cc以上又は約2.0g/cc以上の密度など他の特徴に加えて、0.5質量%希釈HF中2Å/秒未満の値にエッチング速度を調整するために、1%より大きい炭素が望ましい。
【0029】
本明細書に開示されている方法を、当技術分野において公知の装置を用いて実施することができる。例えば、方法は、半導体製造分野において通常使用される反応器を使用することができる。
【0030】
いかなる理論や説明にも束縛されることを望まないが、本明細書に開示されている前駆体組成物の有効性は、ケイ素原子、特にケイ素原子結合の数の関数として変わり得る。本明細書に開示されている前駆体は、典型的には、3~8個のケイ素原子、及び6~16のケイ素-酸素結合を有する。
【0031】
本明細書に開示されている前駆体は、当技術分野において公知の異なる構造を有し、したがって、従来のケイ素含有前駆体より良好に実施することができ、比較的高GPCを提供し、より高品質薄膜を得、好ましい湿式エッチング速度を有し、又は元素混入がより少ない。
【0032】
気相成長法を用いて酸化ケイ酸、炭素ドープ酸化ケイ素、又はカルボキシ窒化ケイ素薄膜から選択される薄膜を堆積するための組成物であって、前記組成物は、式A~D:
【化3】
を有する化合物であって、
前記式A~D中、Rは、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;Rは、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、R及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;R3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
化合物を含む、組成物を本明細書において開示する。
【0033】
好ましい実施形態では、R1~9の少なくとも1つは、C~Cアルキル基である。好ましい実施形態は、式A~Dの化合物を含み、R1~9の各々は、水素又はC~Cアルキル基のいずれかである。
【0034】
上式中及び本明細書を通して、用語「オリゴシロキサン」は、少なくとも2つの反復-Si-O-シロキサン単位、好ましくは少なくとも3つの反復-Si-O-シロキサン単位、を含む化合物を示し、環式又は直鎖構造であってよく、好ましくは環式構造である。
【0035】
上式中及び本明細書を通して、用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖官能基を示す。好ましい直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい分岐鎖アルキル基としては、iso-プロピル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、iso-ヘキシル、及びneo-ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、アルキル基は、これらに限定されないが、これに結合されたアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はこれらの組合せなど、これに結合された1つ以上の官能基を有してよい。他の実施形態では、アルキル基は、これに結合された1つ以上の官能基を有しない。アルキル基は、飽和であってもよく、あるいは非飽和であってもよい。
【0036】
上式中及び本明細書を通して、用語「環式アルキル」は、3~10個の炭素原子を有する環式官能基を示す。好ましい環式アルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
上式中及び本明細書を通して、用語「アルケニル基」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を示す。
【0038】
上式中及び本明細書を通して、用語「ジアルキルアミノ」基、「アルキルアミノ」基、又は「有機アミノ」基は、RN-基を示し、前記式中、Rは、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;Rは、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択される。場合によっては、R及びRは結合して環式環構造を形成し、別の場合では、R及びRは結合せず環式環構造を形成しない。R及びRは結合して環式環構造を形成する好ましい有機アミノ基としては、R=プロピル及びR=Meであるピロリジノ、R=プロピル及びR=Etである1,2-ピペリジノ、R=iso-プロピル及びR=sec-ブチルである2,6-ジメチルピペリジノ、並びにR=R=iso-プロピルである2,5-ジメチルピロリジノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
上式中及び本明細書を通して、用語「アリール」は、4~10個の炭素原子、5~10個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する芳香族環式官能基を示す。好ましいアリール基としては、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、o-キシリル、1,2,3-トリアゾリル、ピロリル、及びフラニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書を通して、用語「アルキル炭化水素」は、直鎖又は分岐鎖C~C20炭化水素、環式C~C20炭化水素を表す。好ましい炭化水素としては、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、及びシクロデカンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書を通して、用語「アルコキシ」は、式中Rが上記定義の通りであるC~C10-OR基を表す。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、iso-プロポキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、及びフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書を通して、用語「カルボキシレート」は、式中Rが上記定義の通りであるC~C12-OC(=O)R基を表す。好ましいカルボキシレート基としては、アセテート(-OC(=O)Me)、エチルカルボキシレート(-OC(=O)Et)、iso-プロピルカルボキシレート(-OC(=O)iPr)、及びベンゾエート(-OC(=O)Ph)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書を通して、用語「芳香族炭化水素」は、C~C20芳香族炭化水素を表す。好ましい芳香族炭化水素としては、トルエン、及びメシチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
上式中及び本明細書を通して、用語「複素環式」は、環構造中の原子の1つ以上は炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素又は硫黄である、約3~約10環原子、好ましくは約5~約10環原子の非芳香族飽和単環式又は多環式環構造を意味する。好ましい複素環は、約5~約6環原子を含む。複素環の前の接頭語アザ(aza)、オキソ(oxo)又はチオ(thio)は、それぞれ、少なくとも窒素、酸素又は硫黄原子が環原子として存在することを意味する。複素環式基は置換されていてもよい。
【0045】
式A~Dを有する好ましい有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサンを、表1にリストする:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0046】
式A~Dを有する化合物を、例えば、少なくとも1つのSi-H結合を有する環式オリゴシロキサンを有機アミンと触媒デヒドロカップリング反応(例えば、シクロテトラシロキサンについては式1及びシクロペンタシロキサンなどのより大きい環式オリゴシロキサンについては式2)することによって、又は塩素化環式オリゴシロキサンと有機アミン若しくは有機アミンの金属塩との反応(例えば、シクロテトラシロキサンについては式2)、又は有機アミノシラン及び有機アミノジシランの合成に関する米国特許第9,758,534(B2)号明細書に記載されているように環式オリゴシロキサンによりイミンを触媒ヒドロシリル化し、それにより環式オリゴシロキサンをシラン若しくはジシランの代わりに使用することによって合成することができる。
【化4】
【0047】
好ましくは、反応混合物中の有機アミンに対する環式オリゴシロキサンのモル比は、約4~1、3~1、2~1、1.5~1、1~1.0、1~1.5、1~2、1~3、1~4、1~8又は1~10である。
【0048】
式1及び3中の本発明の方法で使用される触媒は、ケイ素-窒素結合の形成を促進するものである。本明細書に記載されている方法を用いて使用することができる好ましい触媒としては、次のもの:アルカリ土類金属触媒;ハロゲン化物フリー主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒;ハロゲン化物含有主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
好ましいアルカリ土類金属触媒としては、次のもの:Mg[N(SiMe、ToMMgMe[ToM=トリス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリニル)フェニルボレート]、ToMMg-H、ToMMg-NR(R=H、アルキル、アリール)Ca[N(SiMe、[(dipp-nacnac)CaX(THF)](dipp-nacnac=CH[(CMe)(2,6-iPr-CN)];X=H、アルキル、カルボシリル、有機アミノ)、Ca(CHPh)、Ca(C、Ca(α-MeSi-2-(MeN)-ベンジル)(THF)、Ca(9-(MeSi)-フルオレニル)(α-MeSi-2-(MeN)-ベンジル)(THF)、[(MeTACD)3Ca3(μ3-H)]+(MeTACD=Me[12]アンN)、Ca(η2-PhCNPh)(hmpa)(hmpa=ヘキサメチルホスホラミド)、Sr[N(SiMe、ジアルキルマグネシウム及び他のM2+アルカリ土類金属-アミド、-イミン、-アルキル、-ハライド、及び-カルボシリル錯体(M=Ca、Mg、Sr、Ba)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
好ましいハロゲン化物フリー、主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒としては、次のもの:1,3-ジ-iso-プロピル-4,5-ジメチルイミダゾ-2-イリデン、2,2’-ビピリジル、フェナントロリン、B(C、BR(R=直鎖、分岐鎖、又は環式C~C10アルキル基、C~C10アリール基、又はC~C10アルコキシ基)、AlR(R=直鎖、分岐鎖、又は環式C~C10アルキル基、C~C10アリール基、又はC~C10アルコキシ基)、(CTiR(R=アルキル、H、アルコキシ、有機アミノ、カルボシリル)、(CTi(OAr)[Ar=(2,6-(iPr))]、(CTi(SiHRR’)PMe(式中、R、R’はH、Me、Phから各々独立して選択される)、TiMe2(dmpe)(dmpe=1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン)、ビス(ベンゼン)クロミウム(0)、Cr(CO)、Mn(CO)12、Fe(CO)、Fe(CO)12、(C)Fe(CO)Me、Co(CO)、酢酸Ni(II)、ニッケル(II)アセチルアセトネート、Ni(シクロオクタジエン)、[(dippe)Ni(μ-H)](dippe=1,2-ビス(ジ-iso-プロピルホスフィノ)エタン)、(R-インデニル)Ni(PR’)Me(R=1-iPr、1-SiMe、1,3-(SiMe;R’=Me,Ph)、[{Ni(η-CH:CHSiMeO}{μ-(η-CH:CHSiMeO}]、酢酸Cu(I)、CuH、[トリス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリニル)フェニルボレート]ZnH、(CZrR(R=アルキル、H、アルコキシ、有機アミノ、カルボシリル)、Ru(CO)12、[(EtP)Ru(2,6-ジメシチルチオフェノレート)][B[3,5-(CF]、[(CMe)Ru(RP)x(NCMe)-x](式中、Rは直鎖、分岐鎖、又は環式C~C10アルキル基及びC~C10アリール基から選択される;x=0、1、2、3)、Rh(CO)16、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)カルボニル水素化物、Rh(CO)(dppm)(dppm=ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、Rh(μ-SiRH)(CO)(dppm)(R=Ph、Et、C13)、Pd/C、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸Pd(II)、(CSmH、(CMeSmH、(THF)Yb[N(SiMe、(NHC)Yb(N(SiMe[NHC=1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン)]、Yb(η2-PhCNPh)(hmpa)(hmpa=ヘキサメチルホスホラミド)、W(CO)、Re(CO)10、Os(CO)12、Ir(CO)1、(アセチルアセトナト)ジカルボニルイリジウム(I)、Ir(Me)(CMe)L(L=PMe、PPh)、[Ir(シクロオクタジエン)OMe]、PtO(アダムス触媒)、白金炭素(Pt/C)、ルテニウム炭素(Ru/C)、ルテニウム-アルミナ、パラジウム炭素、ニッケル炭素、オスミウム炭素、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(カーステッド触媒)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)白金(0)、Pt(シクロオクタジエン)、[(MeSi)N]U][BPh]、[(EtN)U][BPh]、及び他のハロゲン化物フリーMn+錯体(M=Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、U;n=0、1、2、3、4、5、6)が挙げられるが、これらに限定されない。上記リストされた触媒並びにルテニウム、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウムなどの純貴金属を、担体に固定することもできる。担体は、高表面積を有する固体である。典型的担体物質としては:アルミナ、MgO、ゼオライト、炭素、モノリスコーディエライト、珪藻土、シリカゲル、シリカ/アルミナ、ZrO、TiO、金属有機構造体(MOF)、及びポリスチレンなどの有機高分子が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい担体は、炭素(例えば、白金炭素、パラジウム炭素、ロジウム炭素、ルテニウム炭素)、アルミナ、シリカ及びMgOである。触媒の金属負荷は、約0.01質量パーセント~約50質量パーセントの範囲である。好ましい範囲は、約0.5質量パーセント~約20質量パーセントである。より好ましい範囲は、約0.5質量パーセント~約10質量パーセントである。活性化を要する触媒は、いくつかの公知の方法によって活性化してよい。真空下での触媒の加熱は、好ましい方法である。反応槽への添加前又は反応物の添加前に反応槽内で触媒を活性化してよい。触媒は、助触媒を含有してよい。助触媒は、それ自体が触媒でないが、活性触媒と少量混合された場合にその有効性(活性及び/又は選択性)を増大する物質である。助触媒は、通常、Mn、Ce、Mo、Li、Re、Ga、Cu、Ru、Pd、Rh、Ir、Fe、Ni、Pt、Cr、Cu及びAuなどの金属並びに/又はこれらの酸化物である。助触媒を、反応槽へ別々に添加することができるか又は触媒自体の一部であり得る。例えば、Ru/Mn/C(マンガンにより促進されるルテニウム炭素)又はPt/CeO/Ir/SiO(酸化セリウム及びイリジウムにより促進される白金)。いくつかの助触媒は、これらだけで触媒として作用することができるが、主触媒と組み合わせた使用は主触媒の活性を向上することができる。触媒は、他の触媒のための助触媒として作用する可能性がある。これとの関連で、触媒を、二元金属(又は多元金属)触媒と呼ぶことができる。例えば、Ru/Rh/Cを、ルテニウム・ロジウム炭素二元金属触媒又はロジウムにより促進されるルテニウム炭素のいずれかで呼ぶことができる。活性触媒は、特定の化学反応において触媒として作用する物質である。
【0051】
好ましいハロゲン化物含有主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒としては、BX(X=F、Cl、Br、I)、BF・OEt、AlX(X=F、Cl、Br、I)、(CTiX(X=F、CI)、[Mn(CO)Br]、NiCl、(CZrX(X=F、CI)、PdCl、PdI、CuCl、CuI、CuF、CuCl、CuBr、Cu(PPhCl、ZnCl、RuCl、[(C)RuX(X=Cl、Br、I)、(PhP)RhCl(ウィルキンソン触媒)、[RhCl(シクロオクタジエン)]、ジ-μ-クロロ-テトラカルボニルジロジウム(I)、ビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)カルボニルクロリド、NdI、SmI、DyI、(POCOP)IrHCl(POCOP=2,6-(RPO);R=iPr、nBu、Me)、HPtCl6・nHO(スピアー触媒)、PtCl、Pt(PPhCl、及び他のハロゲン化物含有Mn+錯体(M=Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、U;n=0、1、2、3、4、5、6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
反応混合物中の環式オリゴシロキサンに対する触媒のモル比は、0.1~1、0.05~1、0.01~1、0.005~1、0.001~1、0.0005~1、0.0001~1、0.00005~1、又は0.00001~1の範囲である。1つの特定の実施形態では、環式オリゴシロキサン1当量当たり触媒の0.002~0.003当量を使用する。別の特定の実施形態では、環式オリゴシロキサン1当量当たり触媒の0.001当量を使用する。
【0053】
特定の実施形態では、環式オリゴシロキサン有機アミン及び触媒を含む反応混合物は、無水溶媒を更に含む。好ましい溶媒としては、直鎖、分岐鎖、環式又はポリエーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム及び/又はテトラグライム);直鎖、分岐鎖、又は環式アルカン、アルケン、芳香族及びハロゲン化炭素(例えば、ペンタン、ヘキサン、トルエン及びジクロロメタン)を挙げることができるが、これらに限定されない。添加される場合、1つ以上の溶媒の選択は、反応混合物中に含まれる試薬との相溶性、触媒の溶解性、並びに/又は選択される中間製品の分離方法及び/若しくは最終製品によって影響を受ける可能性がある。他の実施形態では、反応混合物は、溶媒を含まない。
【0054】
本明細書に記載されている方法では、環式オリゴシロキサン及び有機アミンの反応は、約0℃~約200℃、好ましくは0℃~約100℃の範囲の1つ以上の温度で起こる。反応の好ましい温度は、次の終点:0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100℃のうちのいずれか1つ以上を有する範囲を含む。この反応のための適切な温度範囲は、試薬、及び必要に応じて溶媒の物理特性によって決定してよい。特定の反応器温度範囲の例としては、0℃~80℃又は0℃~30℃が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、20℃~60℃の反応温度を維持することは好ましい。
【0055】
本明細書に記載されている方法の特定の実施形態では、反応圧は、約1~約115psia(6.89×10~7.93×10Pa)又は約15~約45psia(1.03×10~3.10×10Pa)の範囲であってよい。環式オリゴシロキサンが環境条件下液体であるいくつかの実施形態では、大気圧で反応を実行する。環式オリゴシロキサンが環境条件下気体であるいくつかの実施形態では、15psia(1.03×10Pa)より高い圧下反応を実行する。
【0056】
特定の実施形態では、1つ以上の試薬を、液体又は蒸気として反応混合物に導入してよい。試薬のうちの1つ以上を蒸気として添加する実施形態では、窒素又は不活性ガスなどの非反応性ガスを、反応混合物に蒸気を送達するキャリアガスとして使用してよい。試薬のうちの1つ以上を液体として添加する実施形態では、試薬をニートで添加してもよく、あるいは溶媒で希釈してもよい。有機アミノシラン製品を含む粗混合物、又は粗液体への所望の変換が達成するまで、反応混合物に試薬を供給する。特定の実施形態では、反応物を補充し、反応器から反応生成物及び粗液体を取り出すことによって連続的に反応を実行してよい。
【0057】
式A~Dの化合物、触媒、及び残っているかもしれない有機アミン、溶媒、又は望ましくない生成物を含む粗混合物は、分離方法を必要とし得る。適切な分離方法の例としては、蒸留、蒸発、膜分離、ろ過、遠心分離、結晶化、気相転移、抽出、逆カラムを用いた分留、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
式1~3は好ましい代表的化学であり、式A~Dを有する化合物の準備するいかなる方法においても限定的であることを意図していない。
【0059】
本発明に記載の式A~Dを有するシリコン前駆体化合物及び本発明に記載の式A~Dを有するシリコン前駆体化合物を含む組成物は、好ましくは、ハロゲン化物イオンを実質的に含まない。本明細書で使用されるとき、例えば、塩化物(すなわち、HClなどの塩化物含有化学種又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するシリコン化合物)などのハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)並びにフッ素化物、臭化物、及びヨード化物と関連するとき用語「実質的に含まない」は、プラズマ発光-質量分析計(ICP-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、又は多の分析方法により測定されるとき、5ppm(重量基準)未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0ppmを意味する。塩化物は、式A~Dを有するシリコン前駆体化合物に対する分解触媒として作用することが知られている。最終製品中の有意なレベルの塩化物は、シリコン前駆体化合物を分解させ得る。シリコン前駆体化合物の緩やかな劣化は、半導体製造が薄膜の規格を満足させることを困難にさせる薄膜堆積方法に直接的に影響を与え得る。加えて、貯蔵寿命又は安定性は、シリコン前駆体化合物のより高い劣化速度により悪影響を受け、それにより、1~2年の貯蔵寿命を保証することが困難になる。したがって、シリコン前駆体化合物の加速された劣化は、これらの可燃性及び/又は自然発火性気体副産物の精製に関連する安全性及び性能の懸念を示す。式A~Dを有するシリコン前駆体化合物は、好ましくは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオン、並びにこれらの化合物の合成において使用される触媒由来であり得る他の金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用されるとき、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、及び他の金属不純物に関連するときの用語「実質的に含まない(substantially free)」は、ICP-MSにより測定されるときに5ppm(重量基準)未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppmを意味する。いくつかの実施形態では、式A~Dを有するシリコン前駆体化合物は、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオン、及びこれらの化合物の合成において使用される触媒由来であり得る他の金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用されるとき、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、及び合成において使用される触媒からのRu、Rh、Pd、又はPtなどの貴金属に関連するときの用語「含まない(free of)」は、ICP-MS又は金属測定のための他の分析方法により測定されるときに1ppm未満、好ましくは0.1ppm(重量基準)を意味する。
【0060】
別の実施形態では、基材上へのケイ素及び酸素を含む薄膜の堆積方法であって、前記方法は、
a)反応器内に基材を準備する工程と;
b)少なくとも1種のシリコン前駆体化合物を反応器に導入する工程であって、前記少なくとも1種のシリコン前駆体は、式A~D:
【化5】
の前駆体であって、前記式A~D中、Rは、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され;Rは、水素、C~C10直鎖アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10複素環式基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、及びC~C10アリール基から成る群から選択され、R及びRは、結合して環式環構造を形成するか又は結合しないで環式環構造を形成しないかのいずれかであり;R3~11は、水素、直鎖C~C10アルキル基、分岐鎖C~C10アルキル基、C~C10環式アルキル基、C~C10アルケニル基、C~C10アルキニル基、C~C10アリール基、及び有機アミノ基、NR、R及びRは上記に定義されている、から成る群から各々独立して選択され;n=1、2、又は3、及びm=2又は3である、
前駆体から成る群から選択される、工程と;
c)前記反応器をパージガスでパージする工程と;
d)酸素含有原料を反応器に導入する工程と;
e)前記反応器を前記パージガスでパージする工程と;
を含み、
薄膜の所望の厚さが堆積されるまで工程bから工程eを反復し;前記方法を、約25℃~600℃の範囲の1つ以上の温度で行う、
方法を提供する。
【0061】
本明細書に開示されている方法は、次の特性の少なくとも1つを含む酸化ケイ素薄膜を形成する:少なくとも約2.1g/ccの密度;水に対するHFが1:100である希釈HF(0.5質量%dHF)酸溶液中で測定されたとき、約2.5Å/秒未満の湿式エッチング速度;6MV/cm以下において約1×10-8A/cm未満の漏電;及び二次イオン質量分析(SIMS)により測定されたとき、約5×1020原子/cc未満の水素不純物のうち少なくとも1種を含む、ケイ素及び酸素含有薄膜。
【0062】
本明細書に記載されている方法及び組成物の特定の実施形態では、ケイ素含有誘電体の層を、例えば、反応チャンバーを用いて化学気相成長(CVD)により基材の少なくとも一部に堆積する。適切な基材としては、ガリウムヒ素(「GaAs」)、シリコン、並びに結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO」)、シリコンガラス、窒化ケイ素、石英ガラス、ガラス、水晶、ホウケイ酸ガラス、及びこれらの組合せなどのケイ素含有組成物が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な物質としては、クロム、モリブデン、及び半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ、及びフレキシブルディスプレー用途で通常使用される他の金属が挙げられる。基材は、例えば、シリコン、SiO、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フッ素化ケイ酸塩ガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化シリコンカーバイド、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機-無機複合材料、フォトレジスト、有機高分子、多孔質有機及び無機材料及び複合材料、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、並びに酸化ゲルマニウムなどの付加層を有してよい。なお更なる層は、ゲルマノケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、銅及びアルミニウム、並びに、これらに限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNなどの拡散隔膜材料もあり得る。
【0063】
本明細書に開示されている堆積方法は、1つ以上のパージガスを含んでよい。未消費反応物及び/又は反応副産物を追い出すために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。好ましいパージガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H)、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスを、約0.1~1000秒間、約10~約2000sccm(約0.010~約2.000L/分)の範囲の流速で反応器に供給し、それによって、未反応物質及び反応器に残存し得るいずれもの副産物をパージする。
【0064】
アルゴンなどのパージガスは、プロセスチャンバーから未吸収過剰複合物を追い出す。充分なパージ後、酸素源を反応チャンバーに導入して吸収面と反応し、次いで、更にガスパージしてチャンバーから反応副産物を除去してよい。プロセスサイクルを反復して所望の薄膜厚さを得ることができる。場合によっては、ポンピングはパージを不活性ガスと交換することもでき、又は未反応シリコン前駆体を除去するために両方を使用することもできる。
【0065】
本明細書を通して、用語「ALD又はALD様」は、これらに限定されないが、次の方法を含む方法を表す:a)シリコン前駆体及び反応ガスを含む各反応物を単一ウエハALD反応器、半バッチ式ALD反応器、又はバッチ式炉ALD反応器などの反応器に連続的に導入し;b)シリコン前駆体及び反応ガスを含む各反応物を反応器の異なる区画に基材を移動又は回転することによって基材に暴露し、各区画は不活性ガスカーテンにより分離しており、すなわち、空間ALD反応器又はロールツーロールALD反応器。
【0066】
本発明の方法を、オゾン、又はプラズマが次のうちの1つ以上などの不活性ガスを更に含むことができるプラズマを含む酸素含有原料を使用するALD法により行う:不活性ガスを用いる又は用いない酸素プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない水蒸気プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない窒素酸化物(例えば、NO、NO、NO)プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない酸化炭素(例えば、CO、CO)プラズマ、及びこれらの組合せ。
【0067】
酸素含有原料を、その場又は、あるいは、遠隔で生成することができる。1つの特定の実施形態では、酸素含有原料は酸素を含み、流動し、又は無制限に少なくとも1種のシリコン前駆体及び必要に応じて不活性ガスなどの他の試薬に加えて、工程b~dを通して方法の間に導入する。
【0068】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている組成物-及び開示されている方法で使用されるもの-は、溶媒を更に含む。好ましい溶媒としては、エーテル、第三級アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、シリコン前駆体の沸点及び溶媒の沸点の差は、40℃以下である。いくつかの実施形態では、組成物を、ケイ素含有薄膜のための反応器チャンバーに、直接液体注入により送達することができる。
【0069】
式A~Dを有する少なくとも1種のシリコン前駆体を、溶媒を含む組成物において使用するこれらの実施形態のため、選択された溶媒又はその混合物は、シリコン前駆体と反応しない。組成物中の溶媒の質量%の量は、0.5質量%~99.5質量%又は10質量%~75質量%の範囲である。この又は他の実施形態では、溶媒は、式A~Dのシリコン前駆体の沸点と同様な沸点(b.p.)を有し、溶媒の沸点及び式A~Dのシリコン前駆体の沸点の差は、40℃以下、30℃以下、若しくは200℃以下、又は100℃である。あるいは、沸点の差は、次の終点:0、10、20、30、又は40℃のうちのいずれか1つ以上の範囲である。b.p.差の適切な範囲の例としては、0~40℃、20~30℃、又は10~30℃が挙げられるが、これらに限定されない。組成物中の適切な溶媒の例としては、エーテル(1,4-ジオキサン、ジブチルエーテルなど)、第三級アミン(ピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなど9、ニトリル(ベンゾニトリルなど)、アルキル炭化水素(オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、メシチレンなど)、第三級ミノエーテル(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル)、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法を用いて堆積された酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素薄膜を、オゾン、水(HO)(例えば、脱イオン水、純水、及び/又は蒸留水)、過酸化水素(H)、酸素(O)、酸素プラズマ、NO、NO、NO、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)及びこれらの組合せを含む酸素含有原料の存在下形成する。酸素含有原料を、例えば、現場又は遠隔プラズマ発生器のいずれかを通過させて、酸素プラズマ、酸素及びアルゴンを含有するプラズマ、酸素及びヘリウムを含むプラズマ、オゾンプラズマ、水プラズマ、亜酸化窒素プラズマ、又は二酸化炭素プラズマなどの酸素を含む酸素含有プラズマ源を提供してよい。特定の実施形態では、酸素含有プラズマ源は、約1~約2000標準立法センチメートル毎分(sccm)(約0.001~約2.000L/分)又は約1~約1000sccm(約0.001~約1.000L/分)の範囲の流速で反応器に導入される酸素源ガスを含む。酸素含有プラズマ源を、約0.1~約100秒の範囲の時間に導入することができる。特定の実施形態では、酸素含有プラズマ源は、10℃以上の温度を有する水を含む。PEALD又はプラズマ促進サイクリックCVD法により薄膜を堆積する実施形態では、前駆体パルスは、ALD反応器の容積に応じて0.01秒超(例えば、約0.01~約0.1秒、約0.1~約0.5秒、約0.5~約10秒、約0.5~約20秒、約1~約100秒)のパルス持続時間を有することができ、酸素含有プラズマ源は、0.01秒未満(例えば、約0.001~約0.01秒)であるパルス持続時間を有することができる。
【0071】
上記1つ以上の実施形態では、酸素含有プラズマ源は、不活性ガスを用いる又は用いない酸素プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない水蒸気プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない窒素酸化物(例えば、NO、NO、NO)プラズマ、不活性ガスを用いる又は用いない酸化炭素(例えば、CO、CO)プラズマ、及びこれらの組合せから成る群から選択される。特定の実施形態では、酸素含有プラズマ源は、不活性ガスを更に含む。これらの実施形態では、不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素、又はこれらの組合せから成る群から選択される。代替の実施形態では、酸素含有プラズマ源は、不活性ガスを含まない。
【0072】
前駆体、酸素源、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、これらを供給して得られた誘電体薄膜の化学量論的組成を変更するために時間を変更することによって行ってよい。
【0073】
エネルギーを式A~Dのシリコン前駆体、酸素含有原料、又はこれらの組合せのうちの少なくとも1つに印加して反応を誘発し、基材上に誘電体薄膜又は被膜を形成する。かかるエネルギーを、これらに限定されないが、熱プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、Eビーム、光子、遠隔プラズマ法、及びこれらの組合せによって供給することができる。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を改質することができる。堆積がプラズマを含む実施形態では、プラズマ発生プロセスは、プラズマを反応器内で直接発生する直接プラズマ発生プロセスを含んでもよく、あるいはプラズマを反応器の外側で発生し、反応器に供給する遠隔プラズマ発生プロセスを含んでもよい。
【0074】
少なくとも1種のシリコン前駆体を、プラズマ促進サイクリックCVD若しくはPEALD反応器などの反応チャンバー又は様々な方法でバッチ式炉型反応器に送達してよい。1つの実施形態では、液体送達システムを利用してよい。代替の実施形態では、例えば、ミネソタ州ショアビューのMSP Corporationにより製造されたturbo vaporizerなどの液体送達及びフラッシュ蒸発の複合型プロセスユニットを使用して、低揮発性物質を体積的に送達することを可能とし、これは、前駆体の熱分解なしで再現可能な輸送及び堆積をもたらす。液体送達処方物では、本明細書に記載されている前駆体を、ニート液体で送達してもよく、あるいは、溶媒処方物又はこれを含む組成物で使用してもよい。したがって、特定の実施形態では、前駆体処方物は、基材上の薄膜を形成する所与の最終使用応用において望ましく有利であり得るとき、適切な特性の溶媒成分を含んでよい。
【0075】
前述のように、少なくとも1種のシリコン前駆体の純度レベルは、信頼ある半導体製造に許容可能であるのに充分高い。特定の実施形態では、本明細書に記載されている少なくとも1種のシリコン前駆体は、次の不純物のうちの1つ以上の2質量%未満、又は1質量%未満、又は0.5質量%未満を含む:遊離アミン、遊離ハロゲン化物又はハロゲンイオン、及びより高分子量の化学種。本明細書に記載されているシリコン前駆体のより高い純度レベルを、次の方法の1つ以上により得ることができる:精製、吸着、及び/又は蒸留。
【0076】
本明細書に記載されている方法の1つの実施形態では、PEALD様又はPEALDなどのプラズマ促進サイクリック化学気相成長を使用してよく、少なくとも1種のシリコン前駆体及び酸素プラズマ源を用いて堆積を行う。PEALD様方法は、プラズマ促進サイクリックCVD法と定義されるが、高コンフォーマルなケイ素及び酸素含有薄膜をさらに提供する。
【0077】
本発明の1つの実施形態では、基材の少なくとも1つの表面にケイ素及び酸素含有薄膜を堆積するために本明細書に記載されており、前記方法は:
a.反応器内に基材を準備する工程と;
b.上記定義の式A~Dを有する少なくとも1種のシリコン前駆体を反応器に導入する工程と;
c.前記反応器をパージガスでパージする工程と;
d.酸素含有原料を含むプラズマを反応器に導入する工程と;
e.前記反応器をパージガスでパージする工程と、
を含む。この方法では、薄膜の所望の厚さが基材上に堆積されるまで、工程b~eを反復する。
【0078】
この又は他の実施形態では、本明細書に記載されている方法の工程を、様々な順序で行ってもよく、順次行ってもよく、同時に行ってもよく(例えば、別の工程の少なくとも部分の間に)、及びこれらの組合せで行ってもよい。前駆体、酸素源を供給するそれぞれの工程を、例えば、得られた誘電体薄膜の化学量論的組成を変更するようにこれらを供給するための時間の長さを変更することによって行ってよい。更に、前駆体又は酸化体工程後のパージ時間を、スループットを向上するように<0.1秒まで最小化することができる。
【0079】
1つの特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、基材上に高品質ケイ素及び酸素含有薄膜を堆積する。方法は、次の工程:
a.反応器内に基材を準備する工程と;
b.上記の式A~Dを有する少なくとも1種のシリコン前駆体を反応器に導入する工程と;
c.パージガスで反応器をパージして未吸収前駆体の少なくとも一部を除去する工程と;
d.酸素含有プラズマ源を反応器に導入する工程と;
e.パージガスで反応器をパージして未反応酸素源の少なくとも一部を除去する工程と、
を含み、ケイ素含有薄膜の所望の厚さを堆積するまで、工程b~eを反復する。
【0080】
別の特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、600℃超の温度において基材上に高品質ケイ素及び酸素含有薄膜を堆積する。方法は、次の工程:
a.反応器内に基材を準備する工程と;
b.上記の式A~Dを有する少なくとも1種のシリコン前駆体を反応器に導入する工程と;
c.パージガスで反応器をパージして未吸収前駆体の少なくとも一部を除去する工程と;
d.酸素含有プラズマ源を反応器に導入する工程と;
e.パージガスで反応器をパージして未反応酸素源の少なくとも一部を除去する工程と、
を含み、ケイ素含有薄膜の所望の厚さを堆積するまで、工程b~eを反復する。
【0081】
Si-H基は600℃より高い温度において分解し得、望ましくない化学気相成長を引き起こす可能性があり得るので、これらはSi-H基を全く含まないか、又はSi-H基の数が限定的であるかのいずれかなので、特に、R~Rが水素でない式A~Dを有する有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン前駆体はこの方法に好ましいと考えられる。しかしながら、短い前駆体パルス又は低反応器圧を用いるなどの特定の条件下、R3~9のいずれかが水素である式A~Dを有する有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサン前駆体を用いて、著しく望ましくない化学気相成長なしで600℃を超える温度において、この方法を実行することもできることは可能である。
【0082】
本明細書に開示されている別の方法は、上記定義の式A~Dにより表される化学構造を有するシリコン前駆体化合物+酸素源を用いて炭素ドープ酸化ケイ素薄膜を形成する。
【0083】
別の好ましい方法は、次の通りに記載される:
a.反応器内に基材を準備すること;
b.上記定義の式A~Dにより表される化学構造を有する少なくとも1種のシリコン前駆体化合物から発生される蒸気を、酸素源の並行流と接触させて又は接触させないで加熱された基材上に前駆体を化学的に吸収すること;
c.いずれかの未吸収前駆体を追い出すこと;
d.加熱された基材に酸素源を導入して吸収された前駆体と反応させること;
e.いずれかの未反応酸素源を追い出すこと、
所望の厚さを達成するまで、工程b~eを反復する。
【0084】
別の特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、基材上に高品質オキシ窒化ケイ素薄膜を堆積する。方法は、次の工程:
a.反応器内に基材を準備する工程と;
b.上記の式A~Dを有する少なくとも1種のシリコン前駆体を反応器に導入する工程と;
c.パージガスで反応器をパージして未吸収前駆体の少なくとも一部を除去する工程と;
d.窒素含有プラズマ源を反応器に導入する工程と;
e.パージガスで反応器をパージして未反応窒素源の少なくとも一部を除去する工程と
を含み、オキシ窒化ケイ素含有薄膜の所望の厚さを堆積するまで、工程b~eを反復する。
【0085】
別の好ましい方法は、次の通りに記載される:
a.反応器内に基材を準備すること;
b.上記定義の式A~Dにより表される化学構造を有する少なくとも1種のシリコン前駆体化合物から発生される蒸気を、窒素源の並行流と接触させて又は接触させないで加熱された基材上に前駆体を化学的に吸収すること;
c.いずれかの未吸収前駆体を追い出すこと;
d.加熱された基材に窒素源を導入して吸収された前駆体と反応させること;
e.いずれかの未反応窒素源を追い出すこと、
所望の厚さを達成するまで、工程b~eを反復する。
【0086】
単一ウエハ、半バッチ式、又はバッチ式炉又はロールツーロール反応器などの様々な市販ALD反応器を、固体酸系ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭素ドープオキシ窒化ケイ素、又は炭素ドープ酸化ケイ素を堆積するために使用することができる。
【0087】
本明細書に記載されている方法のためのプロセス温度は、終点として次の温度:0℃、25℃、50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃、475℃、500℃、525℃、550℃、575℃、600℃、625℃、650℃、675℃、700℃、725℃、750℃、775℃、及び800℃のうちの1つ以上を使用する。好ましい温度範囲としては、次のもの:約0℃~約300℃;又は約25℃~約300℃;又は約50℃~約290℃;又は約25℃~約250℃、又は約25℃~約200℃が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
別の態様では、流動性化学気相成長(FCVD)によりケイ酸及び酸素含有薄膜の堆積方法であって、前記方法は:
表面特徴部を含む基材を反応器内に配置することであって、前記基材を、約-20℃~約400℃の範囲の温度において保持し、反応器の圧を100トル(1.33×10Pa)以下に保持する、ことと;
本明細書で定義されている式A~Dから成る群から選択される少なくとも1種の化合物を導入することと;
反応器内に酸素源を提供して前記少なくとも1種の化合物と反応させて薄膜を形成し、前記表面特徴部の少なくとも一部を被覆することと;
約100℃~1000℃の1つ以上の温度で薄膜をアニールして前記表面特徴部の少なくとも一部を被覆することと;
約20℃~約1000℃の範囲の1つ以上の温度において基材を酸素源で処理して、前記表面特徴部の少なくとも一部にケイ素含有薄膜を形成することと、
を含む、方法を提供する。
【0089】
別の態様では、流動性化学気相成長(FCVD)によりケイ酸及び酸素含有薄膜の堆積方法であって、前記方法は:
表面特徴部を含む基材を反応器内に配置することであって、前記基材を、約-20℃~約400℃の範囲の温度において保持し、反応器の圧を100トル(1.33×10Pa)以下に保持する、ことと;
本明細書で定義されている式A~Dから成る群から選択される少なくとも1種の化合物を導入することと;
反応器内に窒素源及び/又は酸素源を提供して前記少なくとも1種の化合物と反応させて薄膜を形成し、前記表面特徴部の少なくとも一部を被覆することと;
約100℃~1000℃の1つ以上の温度で薄膜をアニールして前記表面特徴部の少なくとも一部を被覆することと;
約20℃~約1000℃の範囲の1つ以上の温度において基材を酸素源で処理して、前記表面特徴部の少なくとも一部にケイ素含有薄膜を形成することと、
を含む、方法を提供する。
【0090】
特定の実施形態では、酸素源は、水蒸気、水プラズマ、オゾン、酸素、酸素プラズマ、酸素/ヘリウムプラズマ、酸素/アルゴンプラズマ、酸化窒素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、過酸化水素、有機過酸化物、及びこれらの混合物から成る群から選択される。他の実施形態では、窒素源は、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、窒素/アルゴンプラズマ、窒素/ヘリウムプラズマ、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、tert-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルアミンプラズマ、ジメチルアミンプラズマ、トリメチルプラズマ、トリメチルアミンプラズマ、エチレンジアミンプラズマなどの有機アミン、及びエタノールアミンプラズマなどのアルコキシアミン、並びにこれらの混合物から成る群から選択される。更に他の実施形態では、窒素含有原料は、アンモニアプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ又は水素及び窒素源ガスを含むプラズマを含む。この又は他の実施形態では、表面特徴部がケイ素含有薄膜で充填されるまで方法の工程を反復する。流動性化学気相成長法において水蒸気を酸素源として使用する実施形態では、基材温度は、約-20℃~約40℃又は-10℃~約25℃の範囲である。
【0091】
本明細書に記載されている方法のなお更なる実施形態では、ALD、ALD様、PEALD、PEALD様又はFCVDから堆積される薄膜又は堆積されたままの薄膜を、処理工程(堆積後)に付す。処理工程を、堆積工程の少なくとも一部の間に、堆積工程後、及びこれらの組合せで行うことができる。好ましい処理工程としては、薄膜の1つ以上の特性に影響を与える高温熱アニーリングによる処理;プラズマ処理;紫外線(UV)処理;レーザー;電子ビーム処理及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
別の実施形態では、1つ以上のシリコン前駆体化合物を含むケイ素含有薄膜を堆積するための槽又は容器を本明細書に記載する。1つの特定の実施形態では、槽は、少なくとも1つの加圧可能な槽を含む(好ましくは、米国特許第7,334,595号明細書;米国特許第6,077,356号明細書;米国特許第5,069,244号明細書;及び米国特許第5,465,766号明細書(この開示は参照により本明細書に援用される)に開示されているような設計を有するステンレス鋼製)。容器は、適切な弁を装備し、CVD法又はALD法のために反応器に1つ以上の前駆体を送達することを可能とするガラス(ホウケイ酸塩又は石英ガラス)又は種類316、316L、304又は304Lステンレス鋼合金(UNS表示S31600、S31603、S30400、S30403)のいずれかを含むことができる。この又は他の実施形態では、シリコン前駆体を、ステンレス鋼から成る加圧可能な槽内に供給し、前駆体の純度は98質量%以上又は99.5質量%以上であり、大半の半導体用途に適切である。槽又は容器のヘッドスペースを、ヘリウム、アルゴン、窒素及びこれらに組合せから選択される不活性ガスで満たす。
【0093】
特定の実施形態では、前駆体容器から反応チャンバーへ結ぶガスラインをプロセス要求に応じて1つ以上の温度まで加熱し、少なくとも1種のシリコン前駆体の容器を通気のために1つ以上の温度に維持する。他の実施形態では、少なくとも1種のシリコン前駆体を含む溶液を、直接液体注入のため1つ以上の温度に維持された気化装置に注入する。
【0094】
アルゴン及び/又は他のガスの流れをキャリアガスとして使用して、前駆体パルスの間に反応チャンバーへ少なくとも1種のシリコン前駆体蒸気の送達を助けてよい。特定の実施形態では、反応チャンバープロセス圧は、約50ミリトル(66.5Pa)~10ミリトル(13.3Pa)である。他の実施形態では、反応チャンバープロセス圧は、760Torr(1.01×10Pa)以下(例えば、約50ミリトル(66.5Pa)~約100トル(1.33×10Pa))である。
【0095】
PECCVD法などの典型的なPEALD法又はPEALD様法では、酸化ケイ素基材などの基材を、最初にシリコン前駆体に暴露される反応チャンバー内においてヒータステージ上で加熱して複合物が基材表面上に化学的に吸着することを可能とする。
【0096】
本明細書に記載されている式A~Dを有するシリコン前駆体で堆積された薄膜は、同条件で以前に開示されたシリコン前駆体で堆積された薄膜と比較された場合、これらに限定されないが、処理工程前の薄膜の湿式エッチング速度より低い湿式エッチング速度又は処理工程前の密度より高い密度などの改良された特性を有する。1つの特定の実施形態では、堆積方法の間に、堆積されたままの薄膜を断続的に処理する。これらの断続的処理又は堆積中間処理を、例えば、各ALDサイクル後、これらに限定されないが、1回(1)のALDサイクル、2回(2)のALDサイクル、5回(5)のALDサイクル、又は10回(10)以上のALDサイクル後毎など、ALDサイクルの特定回数後毎に行うことができる。
【0097】
式A~Dの前駆体は、2.0Å/サイクル以上の成長速度を示す。
【0098】
薄膜を高温アニーリング工程で処理する実施形態では、アニーリング温度は、少なくとも100℃であるか又は堆積温度より高い。この又は他の実施形態では、アニーリング温度は、約400℃~約1000℃の範囲である。この又は他の実施形態では、アニーリング処理を、真空(<760トル(1.01×10Pa))、不活性環境又は酸素含有環境(HO、NO、NO、O又は環境空気など)で行うことができる。
【0099】
薄膜をUV処理に処理する実施形態では、薄膜を広帯域UV、あるいは約150ナノメートル(nm)~約400nmの範囲の波長を有するUV源に暴露する。1つの特定の実施形態では、堆積されたままの薄膜を、所望の薄膜厚さを達成した後、堆積チャンバーと異なるチャンバー内でUVに暴露する。
【0100】
薄膜をプラズマで処理する実施形態では、SiO又は炭素ドープSiOなどの不活性化層を堆積して、その後のプラズマ処理中に薄膜に浸透する塩素及び窒素混入を防止する。不活性化層を、原子層堆積又はサイクリック化学気相成長を用いて堆積することができる。
【0101】
薄膜をプラズマで処理する実施形態では、プラズマ源は、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマから成る群から選択される。水素プラズマは、薄膜比誘電率を低下させ、バルク中の炭素含有率をほとんど変化しないようになお保持しながら次のプラズマ灰化法に対する損傷抵抗を増強する。
【0102】
特定の理論に束縛される意図はないが、上記定義の式A~Dにより表される化学構造を有するシリコン前駆体化合物を、少なくとも1つの有機アミノ基を基材上のヒドロキシル基と反応させて、前駆体分子当たり複数のSi-O-Siフラグメントを得ることによって固定することができ、したがって、ケイ素原子1個しか有しないビス(tert-ブチルアミノ)シラン又はビス(ジエチルアミノ)シランなどの従来のシリコン前駆体と比較して酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素の成長速度を増強すると考えられる。2つ以上の有機アミノ基を有する式A~Dを有するシリコン化合物が基材表面上の2つ以上の隣接するヒドロキシル基と反応することができ得ることは可能である。ケイ素原子数が増加するので、本明細書に開示されている有機アミノ官能基を有する環式オリゴシロキサンがより高いサイクル当たりの堆積量(GPC)を示すだろうことも考えられる。例えば、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(4ケイ素原子)と比較して、シリコンALD前駆体として2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン(5ケイ素原子)を使用する場合、より高いGPCを得る可能性があり得る。
【0103】
特定の理論に束縛される意図はないが、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、及び2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン並びに有機アミノ基を有する他の環式オリゴシロキサンなどの環式オリゴシロキサン分子の官能化は、環式オリゴシロキサンの熱安定性を増大することができ、より長い貯蔵寿命を与え、分解の阻害によりより長い時間高純度を維持すると考えられる。場合によっては、より多くの有機アミノ基は、分子になお一層のより高い熱安定性を提供することができる。特定の応用のため、式A~Dを有する本明細書に記載されているシリコン前駆体の改良された安定性は、親環式オリゴシロキサン前駆体より優れたものにする。
【0104】
特定の理論に束縛される意図はないが、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、及び2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン並びに有機アミノ基を有する他の環式オリゴシロキサンなどの環式オリゴシロキサン分子の官能化は、特に堆積方法における酸素含有反応物が水又は過酸化水素などのマイルドな酸化体である場合、得られたケイ素含有薄膜におけるより大きなレベルのネットワークをもたらす前駆体を提供することができると考えられる。
【0105】
特定の実施形態では、上記定義の式A~Dを有するシリコン前駆体を、これらに限定されないが、金属酸化物薄膜又は金属オキシ窒化物薄膜などの金属含有薄膜のためのドーパントとして使用することもできる。これらの実施形態では、金属含有薄膜を、金属アルコキシド、金属アミド、又は揮発性有機金属前駆体を用いる本明細書に記載されているこれらの方法など、ALD法又はCVD法を用いて堆積する。本明細書に開示されている方法で使用してよい適切な金属アルコキシド前駆体の例としては、3~6族金属アルコキシド、アルコキシ及びアルキル置換シクロペンタジエニルリガンド両方を有する3~6族金属錯体、アルコキシ及びアルキル置換ピロリルリガンド両方を有する3~6族金属錯体、アルコキシ及びジケトネートリガンド両方を有する3~6族金属錯体;アルコキシ及びケトエステルリガンド両方を有する3~6族金属錯体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書に開示されている方法で使用してよい適切な金属アミド前駆体の例としては、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)、及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert-ブチルアミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert-ブチルアミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert-ブチルアミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルアミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルアミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルアミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert-アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert-アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、tert-アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル、ビス(tert-ブチルアミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert-ブチルアミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン、ビス(tert-ブチルアミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン、並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示されている方法で使用してよい適切な有機金属前駆体の例としては、3族金属シクロペンタジエニル又はアルキルシクロペンタジエニルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における好ましい3~6族金属としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu、Ti、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及びWが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
特定の実施形態では、本明細書に記載されているケイ素含有薄膜は、6以下、5以下、4以下、及び3以下の比誘電率を有する。これらの又は他の実施形態では、薄膜は、約5以下、又は約4以下、又は約3.5以下の比誘電率を有し得る。しかしながら、他の比誘電率(例えば、より高い又はより低い)を有する薄膜を、薄膜の所望の最終用途に応じて形成することができる。式A~Dを有するシリコン前駆体及び本明細書に記載されている方法を用いて形成されるケイ素含有薄膜の例は、組成Siを有し、例えば、XPS又は他の手段により決定されるとき、Siは約10%~約40%の範囲であり;Oは約0原子質量%~約65原子質量%の範囲であり;Cは約0原子質量%~約75原子質量%又は約0原子質量%~約50原子質量%の範囲であり;Nは約0原子質量%~約75原子質量%又は約0原子質量%~50原子質量%の範囲であり;Hは約0原子質量%~約50原子質量%の範囲であり、x+y+z+v+w=100原子質量%である。式A~Dのケイ素前駆体及び本明細書に記載されている方法を用いて形成されるケイ素含有薄膜の別の例は、炭素オキシ窒化ケイ素であり、XPSにより測定されるとき、炭素含有率は1原子%~80原子%である。更に、式A~Dのケイ素前駆体及び本明細書に記載されている方法を用いて形成されるケイ素含有薄膜の別の例は、アモルファスシリコンであり、XPSにより測定されるとき、窒素及び炭素含有率の合計は<10原子%、好ましくは<5原子%、最も好ましくは<1原子%である。
【0108】
前述のように、本明細書に記載されている方法を使用して、基材の少なくとも一部にケイ素含有薄膜を堆積してよい。適切な基材の例としては、シリコン、SiO、Si、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化オキシ炭化ケイ素、水素化オキシ窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、水素化オキシ炭窒化ケイ素、反射防止膜、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、フレキシブル基板、有機高分子、多孔質有機及び無機材料、銅及びアルミニウムなどの金属、並びに、これらに限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNなどの拡散隔膜層が挙げられるが、これらに限定されない。薄膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチング法などの様々なその後の処理工程に適合する。
【0109】
堆積された薄膜は、これらに限定されないが、コンピュータチップ、光学デバイス、磁気情報ストレージ、担体材料又は基材上のコーティング、微小電子機械システム(MEMS)、ナノ電子機械システム、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、IGZO、及び液晶ディスプレイ(LCD)を含む応用を有する。得られた固体酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素の可能性のある用途としては、浅いトレンチ絶縁体、層間誘電体、不活性化層、エッチング停止層、デュアルスペーサの一部、及びパターニング用犠牲層が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本明細書に記載されている方法は、高品質酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭素ドープオキシ窒化ケイ素、又は炭素ドープ酸化ケイ素薄膜を提供する。擁護「高品質」は、次の特性:約2.1g/cc以上、2.2g/cc以上、2.25g/cc以上、の密度;水に対するHFが1:100である希釈HF(0.5質量%dHF)酸溶液中で測定されるとき、希釈HF2.5Å/秒以下、2.0Å/秒以下、1.5Å/秒以下、1.0Å/秒以下、0.5Å/秒以下、0.1Å/秒以下、0.05Å/秒以下、0.01Å/秒以下の湿式エッチング速度;6MV/cm以下の印加で約1×10-8A/cm以下の漏電;SIMSにより測定されるとき、約5×1020原子/cc以下の水素不純物;及びこれらの組合せのうちの1つ以上を示す薄膜を意味する。エッチング速度に関して、熱成長酸化ケイ素薄膜は、0.5質量%HF中、0.5Å/秒のエッチング速度を有する。
【0111】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている式A~Dを有する1つ以上のシリコン前駆体を使用して、固体であり、非多孔質であるか又は実質的に細孔を含まないケイ素及び酸素含有薄膜を形成することができる。
【0112】
本発明の特定の態様を例証するために次の例を示すが、添付のクレームの範囲を限定しない。
【実施例
【0113】
例1a.2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
【0114】
室温においてTHF(200mL)、Ru(CO)12(1.12g、0.00175mol、2.2モル%)及び2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(192g、0.792mol)の撹拌溶液に、THF中のジメチルアミン溶液(396mL、2.0M溶液、2当量)を室温において4時間にわたって滴下した。反応溶液を室温において一夜撹拌を続けた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を分留(6トル(7.98×10Pa)/94℃)により精製して2,4-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物を得た。GC-MSは両化合物に関して次のピークを示した:326(M)、311(M-15)、282、266、252、239、225、209、193、179、165、149、141、133、119、111、104、89、73、58、44。
【0115】
例1b.ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの熱安定性。
【0116】
ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(異性体混合物)のいくつかの精製サンプルを、80℃で7日間加熱した。GC分析により決定されたビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンのアッセイは、96.47%から平均値96.37%に低下し、ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンが優れた熱安定性を有し、気相成長法のための前駆体として適していることを示した。
【0117】
例2.2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
【0118】
同様な手順を、ジメチルアミンの代わりにジエチルアミンを使用したこと以外例1に従って、2,4-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(ジエチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物を得た。GC-MSは、両化合物に関して次のピークを示した:m/z=382(M)、367(M-15)、353、340、326、310、296、280、266、252、239、225、207、193、179、165、147、133、119、111、104、86、72、59、42。
【0119】
例3.2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
同様な手順を、ジメチルアミンの代わりにN-エチルメチルアミンを使用したこと以外例1に従って、2,4-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物を得た。GC-MSは、両化合物に関して次のピークを示した:m/z=355(M)、340(M-15)、324、312、297、283、267、253、240、226、194、179、163、141、133、119、111、103、89、73、58、44。
【0120】
例4.2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
同様な手順を、ジメチルアミンの代わりにiso-プロピルアミンを使用したこと以外例1に従って、2,4-ビス(iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(N-iso-プロピルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物を得た。GC-MSは、両化合物に関して次のピークを示した:m/z=356(M)、341(M-15)、325、313、296、282、253、240、223、208、193、180、164、150、141、134、120、112、103、87、74、59、44。
【0121】
例5.2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
【0122】
同様な手順を、ジメチルアミンの代わりにメチルアミンを使用したこと以外例1に従って、2,4-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,6-ビス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの混合物を得た。GC-MSは、両化合物に関して次のピークを示した:m/z=298(M)、283(M-15)、268、252、239、225、209、193、179、165、149、135、127、119、112、104、97、89、75、59、44。
【0123】
例6a.2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンの合成。
室温においてTHF(200mL)、Ru(CO)12(1.12g、0.00172mol、)及び2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン(240g、0.798mol)の撹拌溶液に、THF中のジメチルアミン溶液(176mL、2.0M溶液)を窒素の保護下4時間にわたって添加した。反応溶液を室温において一夜撹拌を続けた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を分留(1.5トル(2.00×10Pa)/60℃)により精製して所望の生成物、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンを無色液体として得た。GC-MSは次の質量ピークを示した:m/z=344(M)、329(M-15)、313、300、286、268、254、240、226、210、193、179、165、149、134、119、102、88、73、59、45。
【0124】
例6b.2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンの熱安定性。
2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンのいくつかの精製サンプルを、80℃で7日間加熱した。GC分析により決定した2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンのアッセイは、97.57%から平均値97.23%に低下し、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンが優れた熱安定性を有し、気相成長のための前駆体として適していることを示した。
【0125】
例7.2-ジエチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンの合成。
室温においてTHF(1mL)、Ru(CO)12(0.010g、0.000016mol、)及び2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン(1.0g、0.0033mol)の撹拌溶液に、ジエチルアミン(0.22g、0.0030mol)を窒素の保護下添加した。反応溶液を室温において一夜撹拌を続けた。GC-MSにより、溶液が主生成物として2-ジエチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンを含むことを決定した。GC-MSは次の質量ピークを示した:m/z=371(M)、357、341、327、311、300、286、268、254、240、226、210、193、179、165、149、133、116、102、86、73、59、45。
【0126】
例8.2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンの合成。
室温においてTHF(1mL)、Ru(CO)12(0.010g、0.000016mol、)及び2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン(1.0g、0.0033mol)の撹拌溶液に、N-エチルメチルアミン(0.17g、0.0029mol)を窒素の保護下添加した。反応溶液を室温において一夜撹拌を続けた。GC-MSにより、溶液が主生成物として2-(N-エチルメチルアミノ)-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンを含むことを決定した。GC-MSは次の質量ピークを示した:m/z=357(M)、343、327、316、300、283、273、253、239、225、209、193、179、165、149、135、116、102、88、73、59、45。
【0127】
例9.2,4,6,8-テトラクロロ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及びメチルアミンから2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
THF中のメチルアミン溶液(3.0mL、2.0M溶液)をヘキサン(3mL)で希釈し、撹拌した。この溶液に、2,4,6,8-テトラクロロ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン固体(0.20g、0.000529mol)を10分にわたってゆっくりと添加し、この間に沈殿物が生成した。30分間この反応混合物を撹拌後、白色固体をろ過により除去して、減圧下でろ液を濃縮した。得られた油状残渣から、室温に放置することにより無色結晶の生成物、2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを得た。GC-MSは次の質量ピークを示した:355(M)、340(M-15)、326、311、296、282、267、253、240、225、209、193、179、165、147、133、120、112、105、94、82、73、59、44。
【0128】
例10.2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及びメチルアミンから2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成(予言的(prophetic))。
THF中のRu(CO)12(1.33g、0.00208mol、)及びメチルアミン溶液(1.04L、2.0M溶液)の撹拌溶液に、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(100g、0.417mol)を室温で4時間にわたって滴下する。反応溶液を室温において一夜撹拌を続ける。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を分留により精製して所望の生成物、2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを得る。
【0129】
例11.2,4,6,8-テトラクロロ-2,4,6,8-テトラクロロ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及びジメチルアミンから2,4,6,8-テトラキス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンの合成。
THF中のジメチルアミン溶液(3.0mL、2.0M溶液)をヘキサン(3mL)で希釈し、撹拌した。この溶液に、2,4,6,8-テトラクロロ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン固体(0.20g、0.000529mol)を10分にわたってゆっくりと添加し、この間に沈殿物が生成した。30分間この反応混合物を撹拌後、白色固体をろ過により除去して、減圧下でろ液を濃縮した。GC-MSにより、得られた油状残渣が単独生成物として2,4,6,8-テトラキス(メチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを含むことを決定した。GC-MSは次の質量ピークを示した:413(M)、398(M-15)、384、369、355、339、326、310、296、283、267、253、240、225、209、194、179、163、155、141、134、119、111、103、89、73、58、44。
【0130】
例12.27.1MHzプラズマを含む層流反応器内のビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(2,4-及び2,6-異性体の混合物を含む)を用いたPEALD酸化ケイ素。
【0131】
電極間の3.5mm固定スペーシングを有する27.1MHz直接プラズマ能力を装備された市販側方流反応器(ASMにより製造された300mm PEALDツール)でプラズマ促進ALD(PEALD)を行った。前駆体は、ステンレス鋼バブラーにおいて62℃まで加熱された液体であり、Arキャリアガスを用いてチャンバーに送達した。この試験で報告された全堆積を、Si基材を含む天然酸化物上で行った。FilmTek 2000SEエリプソメーターを用いて薄膜の厚さ及び屈折率を測定した。1:99(0.5質量%)希釈フッ化水素(HF)酸溶液の使用によって湿式エッチング速度(WER)測定を行った。実験の各セットについて標準物質として熱酸化ウェハを使用してエッチング溶液活性を確認した。サンプルを全て15分間エッチングしてバルク薄膜WERの収集開始前にいずれかの表面層を除去した。1:99(0.5質量%)dHF水溶液についての典型的な熱酸化ウェハ湿式エッチング速度は、この手順により0.5Å/秒であった。
【0132】
シリコン前駆体としてビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(2,4-及び2,6-異性体の混合物を含む)及び表2中の上記の条件下Oプラズマを用いて堆積を行った。200sccm(約0.200L/分)のキャリアガスAr流でシリコン前駆体をチャンバーに送達した。工程b~eを何度も反復して、計測のため酸化ケイ素の所望の厚さを得た。
【0133】
【表2】
【0134】
薄膜堆積パラメータ及び堆積GPCを、100℃堆積に関して表3に及び300℃堆積に関して表4に示す。堆積1~6及び13~18は、100℃及び300℃における前駆体パルス時間堆積の関数としてGPCを示す。図1は、前駆体パルス数に対するビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンGPCの飽和曲線を示す。GPCが前駆体パルスと共に増加し、次いで、飽和し、前駆体のALD挙動を示すことが分かる。100℃堆積は、300℃堆積より高いGPCを示す。BDEAS(ビス(ジエチルアミノ)シラン)堆積を、図1に比較のために示した。BDEAS容器を28℃まで加熱し、62℃においてビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン容器と同様な内部蒸気圧を有した。200sccm(0.200L/分)のキャリアガスAr流でBDEASをチャンバーに送達した。ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンは、BDEASよりずっと高いGPCを示す。堆積7~12及び19~24は、様々な堆積圧、酸素プラズマ時間、又は酸素プラズマ出力においてGPC及び薄膜相対的WERを示す。図2及び図3は、シリコン前駆体としてビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用した場合に、それぞれ、300℃及び100℃堆積温度においてOプラズマ出力に対する薄膜GPC及びWERを示す。GPCは酸素プラズマ出力の増加と共に僅かに減少し、WERは酸素プラズマ出力の増加と共に減少した。高温で堆積された薄膜は、より低いWERを示す。図4及び図5は、シリコン前駆体としてビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用した場合に、それぞれ、300℃及び100℃堆積においてOプラズマ時間に対する薄膜GPC及びWERを示す。GPCは酸素プラズマ時間の増加と共に僅かに減少し、WERは酸素プラズマ時間の増加と共に減少した。薄膜のより低いWERはより高い薄膜品質を示す。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
比較例12a.27.1MHzプラズマ層流反応器におけるTMCTS(2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン)を用いたPEALD酸化ケイ素
【0138】
シリコン前駆体としてTMCTS及びOプラズマ反応物を用いて堆積を行った。TMCTSを蒸気吸込法によりチャンバーに送達し、キャリアガスを使用しなかった。表2の工程b~eを何度も反復して、計測のため酸化ケイ素の所望の厚さを得た。薄膜堆積パラメータ及び堆積GPC及びウェハ均一性を表5に示す。堆積ウェハは均一性不良を示し、GPCは前駆体パルスの増加と共に飽和を示さなかった。これはTMCTSに関するCVD堆積を示しており、したがって、ALD前駆体として適していなかった。
【0139】
【表5】
【0140】
比較例12b.27.1MHzプラズマ層流反応器におけるBDEAS(ビス(ジエチルアミノ)シラン)を用いたPEALD酸化ケイ素。
【0141】
表2中上記の条件下、シリコン前駆体としてBDEAS及びOプラズマを用いて堆積を行った。200sccm(0.200L/分)のキャリアガスAr流で前駆体をチャンバーに送達した。工程b~eを何度も反復して、計測のため酸化ケイ素の所望の厚さを得た。薄膜堆積パラメータ及び堆積GPCを表6に示す。図1は、異なる前駆体流時間に対するGPCを示す。これは、ビス(ジメチルアミノ)-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンよりずっと低いGPCを示す。
【0142】
【表6】
【0143】
例13.27.1MHzプラズマ層流反応器における2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンを用いたPEALD酸化ケイ素。
表2中上記の条件下、シリコン前駆体として2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン及びOプラズマを用いて堆積を行った。200sccm(0.200L/分)のキャリアガスAr流で前駆体をチャンバーに送達した。容器を50℃まで加熱した。工程b~eを何度も反復して、計測のため酸化ケイ素の所望の厚さを得た。薄膜堆積パラメータ及び堆積GPC、薄膜RI及び熱酸化物に対する相対的WERを表7及び表8に示す。図1は、前駆体パルス数に対する2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサンGPCの飽和曲線を示す。GPCが前駆体パルスと共に増加し、次いで、飽和し、前駆体のALD挙動を示すことが分かる。100℃堆積は、300℃堆積より高いGPCを示す。BDEAS(ビス(ジエチルアミノ)シラン)堆積を、図1に比較のために示した。2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン前駆体を用いた場合、薄膜GPCは非常に高い:300℃堆積温度でおよそ3.6Å/サイクル及び100℃堆積温度でおよそ4.6Å/サイクル。より高いOプラズマ時間又はより長いOプラズマ時間は、成長速度を低下させ薄膜相対的WERを低下させて、改良された薄膜品質を示す。
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
【0146】
例14.2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン及びオゾンを用いた熱ALD酸化ケイ素(予言的)。
酸化ケイ素薄膜の熱原子層堆積を、実験室規模ALD加工ツールで行う。シリコン前駆体、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン及びオゾンを、蒸気吸込によりチャンバーに送達する。全ガス(例えば、パージ及び反応ガス又は前駆体及び酸素源)を堆積ゾーンに入る前に100℃まで予備加熱する。ガス及び前駆体流速を、高速作動式ALDダイヤフラム弁で制御する。堆積で使用された基材は12インチ(30.48cm)長シリコンストリップである。サンプルホルダーに熱電対を結合して基材温度を確認する。酸素源ガスとしてオゾンを用いて堆積を行う。正常な堆積法及びパラメータを表9に示す。所望の厚さが達成するまで工程1~6を反復する。
【0147】
【表9】
300℃の堆積温度のため、堆積された薄膜のサイクル当たりの堆積量(GPC)は、2.5Å/サイクルより大きいと期待される。純酸化ケイ素薄膜を、XPSにより測定されるとき、<0.1原子%炭素及び<0.1原子%窒素不純物を含んで形成する。100℃の堆積温度のため、薄膜は、XPSにより測定されるとき、>10原子%の炭素含有率を含む炭素ドープ酸化ケイ素薄膜であると期待され、薄膜WERは、1:99(0.5質量%)希釈フッ化水素(HF)酸溶液を用いた熱酸化膜WERより小さいと期待される。300℃~650℃の温度における熱アニーリング又は水素プラズマ処理を用いて、薄膜は<3.5のk値を有すると期待される。
【0148】
本開示は特定の好ましい実施形態を参照して記載されているが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行ってよく、均等物はその要素の代わりになることを当業者は理解するだろう。加えて、その特定の状況又は材料を本発明の本質的な範囲から逸脱することなくその教示に適応させるように多くの修正を行ってよい。したがって、本発明は特定の実施形態に限定されないが、本発明は添付の特許請求の範囲内にある全ての実施形態を包含するだろうことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】