(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230516BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08F220/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542265
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2021004673
(87)【国際公開番号】W WO2021210902
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044874
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0047956
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ビュングク・キム
(72)【発明者】
【氏名】サンゴン・キム
【テーマコード(参考)】
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA29
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4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】
本発明では、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく向上したバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を持続的且つ安全に示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第1表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された高吸水性樹脂であって、
前記第1表面架橋剤は、陽イオン性化合物、テルペン(terpene)系化合物、フェノール(phenol)系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物である、高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記陽イオン性化合物は、グアニジン(guanidine)系化合物である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記グアニジン(guanidine)系化合物は、グアニジンカーボネート(guanidine carbonate)、または塩酸グアニジン(guanidine hydrochloride)である、請求項2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記テルペン(terpene)系化合物は、メントール(menthol)、またはシトロネロール(citronellol)である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記フェノール(phenol)系化合物は、没食子酸(gallic acid)、タンニン酸(tannic acid)、クマル酸(Coumaric acid)、カフェ酸(Caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)またはプロトカテク酸(protocatechuic acid)である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記リン酸系化合物は、リン酸(phosphoric acid)、ホスホン酸(phosphonic acid)、アミノホスホン酸(amino phosphonic acid)、ホスフィン酸(phosphinic acid)、ビス(アミノメチル)ホスフィン酸(bis(aminomethyl)phosphinic acid)、またはビス(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸(bis(hydroxymethyl)phosphinic acid)である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項7】
第1表面架橋剤および第2表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記第2表面架橋剤は、多価アルコール系化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合生成物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート系化合物のうちから選択される1種以上を含む、請求項7に記載の高吸水性樹脂。
【請求項9】
前記第1表面架橋剤は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~10重量部で含まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
EDANA法WSP 241.3によって測定した遠心分離保水能(CRC)が28g/g~60g/gである、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項11】
EDANA法WSP 242.3によって測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)が8g/g~37g/gである、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項12】
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリア菌の増殖を抑制する、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項13】
前記高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂をコア(core)にして前記コア上に表面架橋層がシェル(shell)形態に囲むコア-シェル(core-shell)形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項14】
EDANA法WSP 241.3によって測定した遠心分離保水能(CRC)が28g/g~40g/gである、請求項7から13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項15】
EDANA法WSP 242.3によって測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)が20g/g~37g/gである、請求項7から14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項16】
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)バクテリア菌の増殖を抑制する、請求項7、14及び15のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項17】
前記高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂をコア(core)にして前記コア上に表面架橋層がシェル(shell)形態に囲むコア-シェル(core-shell)形態である、請求項7及び14から16のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項18】
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階;および
第1表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂表面を架橋する段階を含み、
前記第1表面架橋剤は、陽イオン性化合物、テルペン系化合物、フェノール系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物である、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記ベース樹脂表面を架橋する段階は、150~220℃で行われる、請求項18に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項20】
前記ベース樹脂表面を架橋する段階は、第2表面架橋剤を追加的に含む、請求項18または19に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項21】
前記第2表面架橋剤は、多価アルコール系化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合生成物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート系化合物のうちから選択される1種以上である、請求項20に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂を含む物品。
【請求項23】
前記物品は、吸水性物品、衛生用品、土壌補修剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、鮮度保持剤、しっぷ用材料、電気絶縁体、口腔用、歯牙用物品、化粧品用または皮膚用物品のうちから選択される1種以上である、請求項22に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2020年4月13日付韓国特許出願第10-2020-0044874号および2021年4月13日付韓国特許出願第10-2021-0047956号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく向上したバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を 持続的且つ安全に示すことができる、高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは自重の5百倍から1千倍程度の水分を吸収することができる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で命名している。前記のような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料や電気絶縁分野に至るまで広く使用されている。
【0004】
しかし、このような高吸水性樹脂は子供用紙おむつや、大人用おむつのような衛生用品または使い捨ての吸水製品に最も広く適用されている。この中でも大人用おむつに適用される場合、バクテリア増殖に起因する二次的な臭いは消費者に不快感を大きく引き起こす問題を招いている。このような問題を解決するために、以前から高吸水性樹脂などに多様なバクテリア増殖抑制成分や、消臭または抗菌機能性成分を導入しようとする試みが行われたことがある。
【0005】
しかし、このようにバクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入することにおいて、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示しながらも、人体に無害であり、経済性を充足しながら、高吸水性樹脂の基本的な物性を低下させない抗菌剤成分を選択して導入することはあまり容易でなかった。
【0006】
一例として、酸化銅などのように、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属イオンを含有した抗菌剤成分を高吸水性樹脂に導入しようと試みられたことがある。このような抗菌性金属イオン含有成分はバクテリアなど微生物の細胞壁を破壊して高吸水性樹脂に悪臭を誘発することもある酵素を有するバクテリアを死滅させて消臭特性を付与することができる。しかし、前記金属イオン含有成分の場合、人体に有益な微生物まで死滅させることがあるBIOCIDE物質として分類されている。その結果、前記高吸水性樹脂を子供用または大人用おむつなどの衛生用品に適用する場合、前記金属イオン含有抗菌剤成分の導入はできる限り排除されている。
【0007】
一方、従来は前記バクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入することにおいて、前記抗菌剤を高吸水性樹脂に少量混合する方法を主に適用した。しかし、このような混合方法を適用する場合、時間の経過によってバクテリア増殖抑制特性を均一に維持しにくかったのが事実である。しかも、このような混合方法の場合、高吸水性樹脂および抗菌剤を混合する過程で抗菌剤成分の不均一な塗布性および脱離現象を招くようになり、前記混合のための新規設備を設置する必要があるなどの短所も存在した。
【0008】
これにより、高吸水性樹脂の基本的物性の低下なく優れたバクテリアの増殖抑制特性および消臭特性を示すことができる高吸水性樹脂関連技術の開発が継続的に要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明は、保水能および加圧吸水能などの基本的物性を優れるように維持しながらも、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性などを持続的且つ安全に示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、
酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第1表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された高吸水性樹脂であって、
前記第1表面架橋剤は、陽イオン性化合物、テルペン(terpene)系化合物、フェノール(phenol)系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物である、高吸水性樹脂を提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、
酸性基を含み酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階;および
第1表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂表面を追加架橋する段階を含み、
前記第1表面架橋剤は、陽イオン性化合物、テルペン系化合物、フェノール系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物である、前記高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂を含む物品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高吸水性樹脂は、人体に有害であり2次的悪臭を誘発するバクテリアのみを選択的に増殖抑制する優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示すことができる。
【0014】
また、前記高吸水性樹脂は、ベース樹脂の表面架橋時、抗菌消臭性能に優れた特定の構造の表面架橋剤を用いて表面架橋させることにより前記優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間安定的に示すことができ、他の抗菌剤の付加による物性の低下なく優れた保水能および加圧吸水能などを維持することができる。
【0015】
したがって、前記高吸水性樹脂は、子供用おむつだけでなく2次的悪臭が特に問題になる大人用おむつなど多様な衛生用品に非常に好ましく適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0017】
一方、本発明において、炭素数1~20のアルキルは、直鎖、分枝状または環状アルキル基であってもよい。具体的に、炭素数1~20のアルキル基は、炭素数1~18の直鎖アルキル基;炭素数1~10の直鎖アルキル基;炭素数1~5の直鎖アルキル基;炭素数3~20の分枝状または環状アルキル基;炭素数3~18の分枝状または環状アルキル基;または炭素数3~10の分枝状または環状アルキル基であってもよい。具体的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基またはシクロヘキシル基などであってもよいが、これらに限定されるのではない。
【0018】
発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し下記で詳細に説明する。しかし、これは発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態によって高吸水性樹脂およびその製造方法などについてより詳しく説明する。
【0020】
参考として、本明細書で「重合体」、「高分子」、または「樹脂」はアクリル酸系単量体が重合された状態のものを意味し、全ての水分含量範囲、全ての粒径範囲、全ての表面架橋状態または加工状態を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のものであって含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができる。また、前記重合体のうち、粒径が150μm以下である重合体を「微粉」と称することができる。
【0021】
本発明の明細書で、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」はアクリル酸系単量体が重合された重合体を乾燥および粉砕して粒子(particle)またはパウダー(powder)形態に作ったものであって、後述の表面改質または表面架橋段階を行わない状態の重合体を意味する。
【0022】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、
酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、第1表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された高吸水性樹脂であって、前記第1表面架橋剤は陽イオン性化合物、テルペン系化合物、フェノール系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物である。
【0023】
従来は、高吸水性樹脂での抗菌および消臭特性確保のために、抗菌機能を有する金属化合物や、陽イオンまたはアルコール官能基を含有した有機化合物を添加剤形態に導入した。しかし、この場合、高吸水性樹脂の安全性が低下するか、吸収特性などの基本物性が低下し、また抗菌特性の持続性および抗菌物質流出の問題があった。
【0024】
これに対し、本発明では、陽イオン性化合物、テルペン系化合物、アルコール系化合物、およびリン酸系化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を表面架橋剤として使用してベース樹脂の表面に表面架橋層を形成することによって高吸水性樹脂内に抗菌物質を導入(incorporation)した。その結果、保水能および加圧吸水能など高吸水性樹脂の基本的物性を低下させることなく、人体皮膚内に存在する悪臭を誘発するバクテリアの増殖を抑制する優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間持続的に示すことができ、また抗菌物質の流出に対する恐れがなくて人体安全性を高めることができることを確認した。これにより、前記高吸水性樹脂は、2次的悪臭が特に問題になる大人用おむつなど多様な衛生用品に非常に好ましく適用できる。
【0025】
具体的に、発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、酸性基を含み酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階;および第1表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂表面を追加架橋する段階を含み、前記第1表面架橋剤は陽イオン性化合物、テルペン系化合物、フェノール系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物であることを特徴とする。
【0026】
前記のような高吸水性樹脂は、酸性基を含み酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と、内部架橋剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階(段階2);および第1表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階(段階3)を含む製造方法によって製造することができる。これにより、発明の他の一実施形態によれば前記高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0027】
以下、各段階別に詳しく説明する。
【0028】
まず、発明の一実施形態による前記高吸水性樹脂の製造のための段階1は、含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0029】
具体的に、前記含水ゲル重合体は、酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と内部架橋剤を架橋重合させることによって製造することができる。このために、酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体、重合開始剤、内部架橋剤および溶媒を含む溶液状態の単量体組成物を使用することができる。
【0030】
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
【0031】
[化学式1]
R1-COOM1
【0032】
上記化学式1中、
R1は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0033】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0034】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用できる。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は40モル%以上、または約45モル%以上でありながら、95モル%以下、80モル%以下、または75モル%以下であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性によって調節できる。しかし、前記中和度が過度に高ければ中和された単量体が析出されて重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱い困難な弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0035】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体、重合開始剤、および内部架橋剤を含む前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体組成物に対して約20重量%以上、または約40重量%以上でありながら、約60重量%以下、または約50重量%以下になってもよく、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度になってもよい。但し、前記単量体の濃度が過度に低まれば高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が発生することがあり、逆に濃度が過度に高まれば単量体の一部が析出されるか重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に粉砕効率が低く示されるなど工程上問題が発生することがあり高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0036】
また、前記内部架橋剤はアクリル酸系単量体が重合された重合体の内部を架橋させるためのものであって、前記重合体の表面を架橋させるための表面架橋剤と区分される。
【0037】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートのうちから選択された1種以上を使用することができるが、上述の例に限定されない。
【0038】
このような内部架橋剤は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~1重量部で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。内部架橋剤の含量が0.01重量部未満であれば架橋による改善効果が微少であり、内部架橋剤の含量が1重量部を超過すれば高吸水性樹脂の吸収能が低下することがある。より具体的には、前記内部架橋剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、1重量部以下、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれてもよい。
【0039】
本発明の高吸水性樹脂製造方法で重合時使用される重合開始剤は高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0040】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。但し、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含んでもよい。
【0041】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なく使用できる。
【0042】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、即ち、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドを使用することができる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著書の“UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”p.115によく明示されており、上述の例に限定されない。
【0043】
前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~1重量部で含まれてもよい。このような光重合開始剤の含量が0.001重量部未満の場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の含量が1重量部を超過すれば高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になることがある。より具体的には、前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれてもよい。
【0044】
また、前記重合開始剤として熱重合開始剤をさらに含む場合、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリアン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著書の‘Principle of Polymerization(Wiley、1981)'、p.203によく明示されており、上述の例に限定されない。
【0045】
前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~1重量部で含まれてもよい。このような熱重合開始剤の含量が0.001重量部未満であれば追加的な熱重合がほとんど起こらなくて熱重合開始剤の追加による効果が微小なこともあり、熱重合開始剤の含量が1重量部を超過すれば高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になることがある。より具体的に、前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれてもよい。
【0046】
前記重合開始剤以外にも、架橋重合時、必要によって界面活性剤、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0047】
前述のアクリル酸系単量体、内部架橋剤、重合開始剤、および選択的に添加剤を含む単量体組成物は、溶媒に溶解された溶液の形態に準備されてもよい。
【0048】
この時、使用できる前記溶媒は前述の成分を溶解することができればその構成の限定なく使用でき、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、およびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができるが、上述の例に限定されない。前記溶媒は、単量体組成物の総含量に対して上述の成分を除いた残量で含まれてもよい。
【0049】
一方、このような単量体組成物を光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0050】
具体的に、前記光重合は、60℃以上、または70℃以上でありながら、90℃以下、または80℃以下の温度で5mW以上、または10mW以上でありながら、30mW以下、または20mW以下の強さを有する紫外線を照射することによって行うことができる。上記条件で光重合時、より優れた重合効率で架橋重合体の形成が可能である。
【0051】
また、前記光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うことができるが、前述の重合方法は一例であり、本発明は前述の重合方法に限定されない。
【0052】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わるが、約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超過する場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起こらないことがある。
【0053】
また、前記方法で得られた含水ゲル状重合体の含水率は、含水ゲル状重合体総重量に対して約40~約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体で「含水率」は全体含水ゲル状重合体重量に対して占める水分の含量であって、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後に180℃で維持する方式で、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定して、含水率を測定する。
【0054】
一方、前記含水ゲル状重合体の製造後、後続の乾燥および粉砕工程遂行に先立ち、製造された含水ゲル状重合体を粉砕する粗粉砕工程が選択的に行われてもよい。
【0055】
前記粗粉砕工程は後続の乾燥工程で乾燥効率を高め、最終製造される高吸水性樹脂粉末の粒子大きさを制御するための工程であって、この時、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、小片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、ミートチョッパー(meat chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、上述の例に限定されない。
【0056】
前記粗粉砕工程は、一例として、前記含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように行うことができる。含水ゲル状重合体の粒径が2mm未満に粉砕することは前記含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が発生することもある。一方、粒径が10mm超過に粉砕する場合、以後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0057】
その次に、段階2は、前記段階1で製造した含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を形成する段階である。
【0058】
前記乾燥方法は、含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用できる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。
【0059】
具体的に、前記乾燥は、約150~約250℃の温度で行うことができる。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超過する場合、過度に重合体表面のみ乾燥されて、以後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、150℃以上、または160℃以上であり、200℃以下、または180℃以下の温度で行うことができる。
【0060】
一方、乾燥時間の場合には工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0061】
このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約5~約10重量%であってもよい。
【0062】
前記乾燥工程後には粉砕工程が行われる。
【0063】
前記粉砕工程は、重合体粉末、即ち、ベース樹脂の粒径が約150~約850μmになるように行うことができる。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョッグミル(jog mill)などを使用することができるが、上述の例に本発明が限定されるのではない。
【0064】
また、前記のような粉砕段階後、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、粉砕された重合体粉末を粒径によって分級する工程をさらに経てもよい。
【0065】
好ましくは、粒径が約150~約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有する重合体のみをベース樹脂にして表面架橋反応段階を経て製品化することができる。
【0066】
前記工程の結果として得られるベース樹脂は、アクリル酸系単量体と内部架橋剤を媒介として架橋重合された架橋重合体を含む粉末形態を有することができる。具体的に、前記ベース樹脂は、150~850μmの粒径を有する粉末形態を有することができる。
【0067】
その次に、段階3は、前記段階2で製造したベース樹脂を第1表面架橋剤および選択的に第2表面架橋剤の存在下で熱処理して表面架橋する段階である。
【0068】
前記表面架橋は、粒子内部の架橋結合密度と関連してベース樹脂表面付近の架橋結合密度を増加させる段階である。一般に、表面架橋剤はベース樹脂の表面に塗布される。したがって、この反応は主にベース樹脂の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えず粒子の表面上での架橋結合性を改善させる。したがって、表面架橋結合されたベース樹脂は内部より表面付近でさらに高い架橋結合度を有する。
【0069】
このような表面架橋段階では、前記第1表面架橋剤を含む表面架橋液を使用して行う。
【0070】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造に使用される第1表面架橋剤は、抗菌性を有し、同時にベース樹脂のカルボキシル基(carboxylic acid)と結合可能な官能基を有する化合物であってもよい。または、カルボキシル基と結合可能な官能基がない抗菌性化合物に対してカルボキシル基(carboxylic acid)と結合可能な官能基を1つ以上導入して製造できる。その結果、前記ベース樹脂の表面に抗菌性を有する表面架橋層を形成することができる。
【0071】
前記第1表面架橋剤において、カルボキシル基と架橋重合を形成する官能基は、具体的に、水酸化基、エポキシ基、カーボネート基、金属塩、またはアミン基などであってもよく、前記第1表面架橋剤はこれらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の官能基を含むことができる。
【0072】
また、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造に使用される第1表面架橋剤は、高吸水性樹脂本来の吸収物性が低下することを防止するために親水性化合物を使用するのが好ましい。但し、第1表面架橋剤が疎水性化合物である場合も使用可能であり、疎水性程度によって含量の調節を通じて吸収物性の低下を最少化し抗菌性を付与することができる。
【0073】
このような第1表面架橋剤として使用可能な化合物は、陽イオン性化合物、テルペン系化合物、フェノール系化合物、およびリン酸系化合物のうちから選択される1種以上の化合物であってもよい。これら化合物は、優れた抗菌特性を示すと同時に、ベース樹脂表面のカルボキシル基と共有結合を形成してよって表面架橋層内に安定的に含まれて抗菌剤溶出による問題発生の恐れがない。
【0074】
前記陽イオン性化合物は、具体的に、グアニジン(guanidine)系化合物が使用できる。
【0075】
前記テルペン系化合物は、具体的に、メントール系化合物、またはシトロネロール系化合物であってもよく、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0076】
また、前記リン酸系化合物は、具体的に、リン酸(phosphoric acid)、ホスホン酸(phosphonic acid)、またはアミノホスホン酸(amino phosphonic acid)などのホスホン酸(phosphonic acid)系化合物、またはホスフィン酸(phosphinic acid)、ビス(アミノメチル)ホスフィン酸(bis(aminomethyl) phosphinic acid)、ビス(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸(bis(hydroxymethyl) phosphinic acid)などのホスフィン酸(phosphinic acid)系化合物であってもよい。
【0077】
本発明の一実施例によれば、前記第1表面架橋剤として陽イオン性化合物を使用することができ、前記陽イオン性化合物のうちのグアニジン(guanidine)系化合物をより好ましく使用することができる。
【0078】
使用可能なグアニジン系化合物の例としては、グアニジン(guanidine)、グアニジンカーボネート(guanidine carbonate)、または塩酸グアニジン(guanidine hydrochloride)が挙げられ、好ましくはグアニジンカーボネート(guanidine carbonate)を使用することができる。
【0079】
本発明の他の一実施例によれば、前記第1表面架橋剤としてテルペン系化合物を使用することができ、メントール(menthol)またはシトロネロール(citronellol)をより好ましく使用することができる。
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記第1表面架橋剤としてフェノール系化合物の1つの没食子酸(gallic acid)、タンニン酸(tannic acid)、クマル酸(Coumaric acid)、カフェ酸(Caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)またはプロトカテク酸(protocatechuic acid)を使用することができ、没食子酸(gallic acid)をより好ましく使用することができる。
【0081】
前記第1表面架橋剤は、ベース樹脂と架橋重合して表面架橋層に導入されることによって高吸水性樹脂に含まれる。よって、第1表面架橋剤の適切な含量制御を通じて高吸水性樹脂の吸収物性を下落させないながら抗菌性および消臭特性を増進させることができる。
【0082】
具体的に、発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、前記第1表面架橋剤を前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~10重量部で含むことができる。より具体的には、前記第1表面架橋剤は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、または0.1重量部以上、または0.5重量部以上であり、10重量部以下、または5重量部以下、または3重量部以下、または2重量部以下の量で含まれてもよい。
【0083】
前記第1表面架橋剤が前記含量範囲で含む場合、高吸水性樹脂の物性低下の恐れなく優れた抗菌および消臭特性を持続的且つ安定的に示すことができる。
【0084】
一方、発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、高吸水性樹脂本来の吸収物性向上のために表面処理時第2表面架橋剤をさらに含むことができる。前記第2表面架橋剤は、抗菌性官能基を有しない点から、前記第1表面架橋剤と区別される。
【0085】
また、発明の好ましい一例として、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく向上したバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示すためには、第1および第2表面架橋剤を全て含む。
【0086】
前記第2表面架橋剤としては、前記重合体が有する官能基と反応可能な化合物であればその構成の限定がない。好ましくは、生成される高吸水性樹脂の特性を向上させるために、前記第2表面架橋剤として多価アルコール系化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合生成物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート系化合物のうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0087】
具体的に、多価アルコール系化合物の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0088】
また、エポキシ化合物としてはエチレングリコールジグリシジルエポキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリシドールなどを使用することができ、ポリアミン化合物類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘクサミン、ポリエチレンイミンおよびポリアミドポリアミンのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0089】
そして、ハロエポキシ化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリンを使用することができる。一方、モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物としては、例えば、2-オキサゾリジノンなどを使用することができる。
【0090】
前記アルキレンカーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート、またはプロピレンカーボネートなど炭素数2~6のアルキレンカーボネートを使用することができる。これらをそれぞれ単独で使用するかまたは互いに異なる炭素数を有するアルキレンカーボネートを2種以上混合して使用することもできる。
【0091】
また、前記多価金属塩としては、具体的に、アルミニウムなどの金属含有硫酸塩、またはカルボン酸塩などが使用でき、この中でもアルミニウムスルフェートがより好ましく使用できる。
【0092】
前記第2表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.001~5重量部で投入することができる。例えば、前記第2表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、3重量部以下、または2重量部以下、または1重量部以下、または0.3重量部以下の含量で使用できる。第2表面架橋剤の含量範囲を上述の範囲に調節して優れた吸収性能および通液性など諸般物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0093】
前記第1および第2表面架橋剤をベース樹脂と混合する方法についてはその構成の限定はない。第1および第2表面架橋剤とベース樹脂を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂に第1および第2表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と第1および第2表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0094】
これにより、前記ベース樹脂上には、前記第1表面架橋剤、または第1および第2表面架橋剤を媒介として前記ベース樹脂の少なくとも一部が追加架橋されて形成された表面架橋層が形成される。好ましくは、前記ベース樹脂上には、前記第1表面架橋剤、または第1および第2表面架橋剤を媒介として前記ベース樹脂の表面全体が均一に架橋されて形成された表面架橋層が形成できる。
【0095】
よって、本発明の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂をコア(core)とし、コア上に表面架橋層がシェル(shell)形態に囲むコア-シェル(core-shell)形態であってもよい。より具体的に、前記高吸水性樹脂は、第1表面架橋剤によって形成されたシェル(shell)形態の表面架橋層、または第1および第2表面架橋剤によって形成されたシェル形態の表面架橋層が囲むコア-シェル(core-shell)形態を形成することができる。
【0096】
本発明の他の一実施形態によれば、前記高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂をコア(core)とし、コア上に不連続的な表面架橋構造がアイランド(island)形態に位置する海-島(sea-island)形態であってもよい。より具体的に、前記高吸水性樹脂は前記ベース樹脂をコア(core)とし、コア上に第1表面架橋剤によって形成された表面架橋構造がアイランド(island)形態に不連続的に存在するか、または第1および第2表面架橋剤によって形成された表面架橋構造がアイランド(island)形態に不連続的に存在する海-島(sea-island)構造を形成することができる。
【0097】
前記第1および第2表面架橋剤以外に追加的に水およびアルコールを共に混合して前記表面架橋溶液の形態として添加することができる。水およびアルコールを添加する場合、第1および第2表面架橋剤がベース樹脂に均一に分散できる利点がある。この時、追加される水およびアルコールの含量は第1および第2表面架橋剤の均一な分散を誘導しベース樹脂の塊り現象を防止すると同時に架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的でベース樹脂100重量部に対して、約5~約12重量部の比率で添加されることが好ましい。
【0098】
前記第1および第2表面架橋剤が添加されたベース樹脂に対して約150~約220℃温度で約15~約100分間加熱させることによって表面架橋結合反応が行われることになる。架橋反応温度が150℃未満である場合、表面架橋反応が十分に起こらないことがあり、220℃を超過する場合、過度に表面架橋反応が行われることがある。また、架橋反応時間が15分未満であって過度に短い場合、十分な架橋反応を行うことができず、架橋反応時間が100分を超過する場合、過度な表面架橋反応によって粒子表面の架橋密度が過度に高まって物性低下が発生することがある。より具体的には、150℃以上、または160℃以上であり、220℃以下、または200℃以下の温度で、20分以上、または40分以上であり、70分以下、または60分以下に加熱させることによって行うことができる。
【0099】
前記追加架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、本発明がこれらに限定されるのではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述の例に本発明が限定されるのではない。
【0100】
前記製造工程を通じて高吸水性樹脂が製造および提供できる。
【0101】
製造される高吸水性樹脂は、酸性基を含み前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体と内部架橋剤との架橋重合体を含むベース樹脂と、前記ベース樹脂が第1表面架橋剤、または第1および第2表面架橋剤を媒介として追加架橋されて、前記ベース樹脂上に形成された表面架橋層を含む。このようにベース樹脂の表面架橋層に抗菌剤由来単位を含むことによって、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく向上したバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を持続的且つ安全に示すことができる。また、この時、前記抗菌物質は前記ベース樹脂に物理的または化学的に堅く固定または結合された状態で含まれるため、従来抗菌剤を高吸水性樹脂と単純混合する場合とは異なり、抗菌剤の不均一な塗布、脱離および運送中の分離などが発生しなく、全体的に抗菌剤成分が均一に含まれて長時間優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を安定的に示すことができる。
【0102】
前記高吸水性樹脂が第1表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された高吸水性樹脂である場合、EDANA法WSP 241.3によって測定した遠心分離保水能(CRC)が約28g/g以上、または約29g/g以上、または約30g/g以上でありながら、約60g/g以下、または約55g/g以下、または約50g/g以下、または約40g/g以下、または約38g/g以下、または約35g/g以下の範囲を有することができる。
【0103】
また、前記高吸水性樹脂が第1表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された高吸水性樹脂である場合、EDANA法WSP 242.3によって測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)が約8g/g以上、または10g/g以上、または約20g/g以上、または約23g/g以上、または約25g/g以上でありながら、約37g/g以下、または約35g/g以下、または約32g/g以下の範囲を有することができる。
【0104】
前記高吸水性樹脂が第1表面架橋剤および第2表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された樹脂である場合、EDANA法WSP 241.3によって測定した遠心分離保水能(CRC)が約28g/g以上、または約29g/g以上、または約30g/g以上でありながら、約40g/g以下、または約38g/g以下、または約35g/g以下の範囲を有することができる。
【0105】
また、前記高吸水性樹脂が第1表面架橋剤および第2表面架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が表面処理された樹脂である場合、EDANA法WSP 242.3によって測定した0.7psiの加圧吸水能(AUP)が約20g/g以上、または約23g/g以上、または約25g/g以上でありながら、約37g/g以下、または約35g/g以下、または約32g/g以下の範囲を有することができる。
【0106】
よって、このような高吸水性樹脂は、多様な衛生用品、例えば、子供用紙おむつや、大人用おむつまたは生理用ナプキンなどに好ましく含まれおよび使用でき、特に、バクテリア増殖に起因した2次的悪臭が特に問題になる大人用おむつに非常に好ましく適用できる。
【0107】
このような衛生用品は、吸収体中に一実施形態の高吸水性樹脂が含まれることを除いては通常の衛生用品の構成によってもよい。
【0108】
また、このような高吸水性樹脂は、衛生用品以外に、多様な物品、例えば、吸水性物品、土壌補修剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、鮮度保持剤、しっぷ用材料、電気絶縁体、口腔用、歯牙用物品、化粧品用または皮膚用物品に使用できる。
【0109】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0110】
<実施例>
高吸水性樹脂の製造
実施例1
攪拌機、窒素投入機、温度計を装着した3Lガラス容器にアクリル酸518g、ポリエチレングリコールジアクリレート(Polyethyleneglycol (400) diacrylate)1.2gとジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.04gを添加して溶解させた後、24.5%水酸化ナトリウム溶液822.2gを添加して窒素を連続的に投入しながら水溶性不飽和単量体水溶液を製造した。前記水溶性不飽和単量体水溶液を40℃に冷却した後、4% 過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)水溶液15.54gを添加した後、この水溶液を横250mm、縦250mm、高さ30mmのステンレス材質の容器に加え、80℃のUVチャンバーで紫外線を60秒間照射(照射量:10mV/cm2)し、2分間エージング(aging)させて含水ゲル状重合体を得た。得られた含水ゲル状重合体を2mm×2mm大きさに粉砕した後、得られたゲル型樹脂を600μmの孔大きさを有するステンレスワイヤーガーゼの上に約30mm厚さに広げておいて185℃熱風オーブンで32分間乾燥した。このように得られた乾燥重合体を粉砕機を使用して粉砕し、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子大きさを有するベース樹脂を得た。
【0111】
前記ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、グアニジンカーボネート0.5重量部を含む表面架橋溶液を噴射して混合し、これを攪拌機と二重ジャケットからなる容器に入れて180℃で70分間表面架橋反応を行って。その後、表面処理された粉末をASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子大きさを有する高吸水性樹脂粉末を得た。
【0112】
実施例2
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、メントール(menthol)0.5重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。以後の全ての過程は実施例1と同様な方法で行って高吸水性樹脂粉末を得た。
【0113】
実施例3
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、没食子酸(gallic acid)0.5重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。以後の全ての過程は実施例1と同様な方法で行って高吸水性樹脂粉末を得た。
【0114】
実施例4
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、シトロネロール(citronellol)0.5重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。以後の全ての過程は実施例1と同様な方法で行って高吸水性樹脂粉末を得た。
【0115】
実施例5
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、リン酸(phosphoric acid)2重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。以後の全ての過程は実施例1と同様な方法で行って高吸水性樹脂粉末を得た。
【0116】
実施例6
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部、リン酸(phosphoric acid)2重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。以後の全ての過程は実施例1と同様な方法で行って高吸水性樹脂粉末を得た。
【0117】
比較例1
前記実施例1と同様な方法でベース樹脂を製造した後、ベース樹脂100重量部に水4.4重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、ポリカルボン酸塩界面活性剤0.075重量部、硫酸アルミニウム0.3重量部を含む表面架橋溶液を使用して実施例1と同様な方法で表面架橋を行った。
【0118】
その後、表面処理された粉末をASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子大きさを有する高吸水性樹脂粉末を得た。
【0119】
比較例2
比較例1の方法で製造した高吸水性樹脂粉末100重量部にグアニジンカーボネート0.5重量部を25℃の温度で溶媒なくVortex mixer(Vortex-Genie 2 mixer、Scientific Industries)機器を用いて乾式混合した。
【0120】
比較例3
比較例1の方法で製造した高吸水性樹脂粉末100重量部にメントール0.5重量部を比較例2と同様な方法で乾式混合した。
【0121】
比較例4
比較例1の方法で製造した高吸水性樹脂粉末100重量部に没食子酸0.5重量部を比較例2と同様な方法で乾式混合した。
【0122】
比較例5
比較例1の方法で製造した高吸水性樹脂粉末100重量部にシトロネロール0.5重量部を比較例2と同様な方法で乾式混合した。
【0123】
比較例6
比較例1の方法で製造した高吸水性樹脂粉末100重量部にリン酸2重量部を比較例2と同様な方法で乾式混合した。
【0124】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、次のような方法で物性を評価した。
【0125】
別段の表記がない限り、下記物性評価は全て恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0126】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3によって測定した。
【0127】
具体的に、高吸水性樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を切って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を使用せず同一な操作を行った後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によって遠心分離保水能(CRC)(g/g)を算出した。
【0128】
[数式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0129】
(2)加圧吸水能(AUP:Absorption Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法WSP 242.3によって測定した。
【0130】
具体的に、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400mesh鉄網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で鉄網上に高吸水性樹脂W0(g)(0.90g)を均一に撒布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与することができるピストンは外径60mmより若干小さく円筒の内壁と隙間がなく上下動きが妨害されないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0131】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターを配置し、0.9重量%塩化ナトリウムから構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚をのせた。ろ過紙の上に前記測定装置をのせて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を取り上げて、その重量W4(g)を測定した。
【0132】
得られた各質量を用いて以下の式によって加圧吸水能(AUP)(g/g)を算出した。
【0133】
[数式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
【0134】
(3)バクテリア増殖抑制性能テスト1
Proteus mirabilis(ATCC 29906)が3000CFU/mlで接種された人工尿50mlを37℃培養器で16時間培養した。菌接種直後の人工尿および16時間後の人工尿を対照群とし、150mlの塩水でよく洗浄してNutrient broth agar(BD DIFCO.) plateに培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定して、これによって対照群の物性として算出した。
【0135】
より具体的に、実施例1~4および比較例1~5の高吸水性樹脂2gを前記Proteus mirabilis(ATCC 29906)が3000CFU/mlで接種された人工尿50mlに加えて、1分間振って均一に混合されるようにした。これを37℃培養器で16時間培養した。このような16時間培養した後の人工尿を150mlの塩水でよく洗浄してNutrient broth agar plateに培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定した。
【0136】
このような各測定結果を下記式1で表されるバクテリアProteus mirabilis(ATCC 29906)増殖率として算出して、これを根拠にして各実施例および比較例のバクテリア増殖抑制特性を評価した:
【0137】
バクテリア増殖率を測定することに使用した菌株であるProteus mirabilisはウレアーゼ(urease)を分泌し、ウレアーゼは小便内ウレア(urea)を分解して悪臭の原因になるアンモニアを発生させる。したがって、Proteus mirabilis増殖率で高吸水性樹脂の抗菌および消臭効果を適切に評価することができる。一方、消臭効果のためにProteus mirabilis増殖を過度に抑制する場合、他の人体有益菌まで殺して皮膚発疹などの問題を引き起こすことがあって適切な水準の増殖抑制が必要である。
【0138】
[式1]
バクテリア増殖率(%)=[CFU(16h)]/[CFU(0h)]×100
【0139】
上記式1中、CFU(0h)は高吸水性樹脂に初期接種されたバクテリア(Proteus mirabilis;ATCC29906)の単位人工尿体積当り個体数(3000CFU/ml)を示し、CFU(16h)は前記高吸水性樹脂を37℃で16時間維持させた時、増殖したバクテリアの単位人工尿体積当り個体数(CFU/ml)を示す。
【0140】
前記実施例と比較例に関する物性値を下記表1に記載した。
【0141】
【0142】
表1を参照すれば、本願の第1表面架橋剤を使用して表面架橋を実施した実施例1~3の場合、吸収物性の低下なく優れたバクテリア増殖抑制特性を示すのを確認することができる。
【0143】
同一な化合物を表面架橋された高吸水性樹脂に乾式混合した比較例2~4の場合、抗菌性化合物を添加しない比較例1よりはバクテリア増殖率が低いが、実施例1~3のそれぞれと比較しては約20%程度バクテリア増殖率が高かった。したがって、本発明のように所定の抗菌性化合物を表面架橋剤として用いて表面架橋させる場合、高吸水性樹脂と単純混合した場合より優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を長時間安定的に示すことを実験的に確認することができる。
【0144】
(4)バクテリア増殖抑制性能テスト2
Proteus mirabilis(CCUG 4637)が3000CFU/mlで接種された人工尿50mlを35℃培養器で12時間培養した。菌接種直後の人工尿および12時間後の人工尿を対照群とし、150mlの塩水でよく洗浄してNutrient broth agar(BD DIFCO.) plateに培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定して、これによって対照群の物性として算出した。
【0145】
より具体的に、実施例5~6および比較例1、6~7の高吸水性樹脂2gを前記Proteus mirabilis(CCUG 4637)が3000CFU/mlで接種された人工尿50mlに加えて、1分間振って均一に混合されるようにした。これを35℃培養器で12時間培養した。このような12時間培養した後の人工尿を150mlの塩水でよく洗浄してNutrient broth agar plateに培養してCFU(Colony Forming Unit;CFU/ml)を測定した。
【0146】
このような各測定結果を下記式2で表されるバクテリアProteus mirabilis(CCUG 4637)増殖率として算出して、これを根拠にして各実施例および比較例のバクテリア増殖抑制特性を評価した:
【0147】
[式2]
バクテリア増殖率(%)=[CFU(12h)]/[CFU(0h)]×100
【0148】
上記式2中、CFU(0h)は高吸水性樹脂に初期接種されたバクテリア(Proteus mirabilis;CCUG 4637)の単位人工尿体積当り個体数(3000CFU/ml)を示し、CFU(12h)は前記高吸水性樹脂を35℃で12時間維持させた時、増殖したバクテリアの単位人工尿体積当り個体数(CFU/ml)を示す。
【0149】
【0150】
表2を参照すれば、第1表面架橋剤としてリン系化合物の場合にも優れたバクテリア増殖抑制特性を示すのを確認することができる。一方、第2表面架橋剤を使用せず第1表面架橋剤のみで表面架橋を行った実施例6の場合には実施例5と類似の抗菌性能を示すが、高吸水性樹脂の物性において差があることを確認した。
【0151】
人工尿に存在する微生物は高吸水性樹脂の内部と外部に均等に存在するが、同一な化合物を表面架橋された高吸水性樹脂に乾式混合した場合には抗菌性化合物が高吸水性樹脂周辺に不均一に分布するようになる。反面、抗菌性化合物が表面架橋処理によって高吸水性樹脂の表面に均一に分布する場合、微生物と抗菌性化合物間の接触を増加させてより効果的な抗菌性能を発現することを確認した。
【0152】
表1と表2の増殖率を比較した時、表面処理なく単純混合した比較例に比べて表面架橋を通じて結合させた実施例で12時間または16時間の長い培養時間微生物の成長抑制効果があることを確認した。
【国際調査報告】