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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその外装材
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20230516BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230516BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L51/00
C08L77/00
E04F13/18 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548186
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 KR2022001826
(87)【国際公開番号】W WO2022191439
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0029878
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0014604
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【テーマコード(参考)】
2E110
4J002
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB22
2E110BA12
2E110EA06
2E110EA09
2E110GA33W
2E110GB42W
2E110GB44W
2E110GB45W
4J002BC06W
4J002BC06X
4J002BN12Y
4J002BN12Z
4J002CL01U
4J002CL03U
4J002CL05U
4J002DA026
4J002DA036
4J002DE106
4J002DE136
4J002DG026
4J002GL00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその外装材に関し、従来のASA樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び均一な屈折率の制御により自然な着色品質が優れているだけでなく、PVC共押出加工性が格段に良いので外観不良を低減させることができる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)平均粒径0.33~0.5μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)平均粒径0.05~0.2μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と、
B-1)芳香族ビニル化合物67~75重量%及びビニルシアン化合物25~33重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と、
B-2)芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体は、下記数式1で計算される発色力カバレッジ値(X)がそれぞれ20%以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
X={A/S}×100
(前記数式1において、Sは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(重量%)であり、Aは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(重量%)を示す。)
【請求項2】
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体を合わせた含量と、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を合わせた含量との重量比((A-1+A-2):(B-1+B-2))が1:0.5~1:2であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式3及び数式5で計算された白黒発色指数(Color Strength、N)が100以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式3]
白黒発色指数(N)=Σ(サンプル試料の吸収値)/Σ(標準試料の吸収値)×100
(前記数式3において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、Σは、400~700nmの全領域のスペクトル積分値である。)
[数式5]
固体サンプルの吸収値の計算値=(1-R)/2R
(前記数式5において、Rは、X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠して測定した反射係数値を用いる。)
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式4及び数式5で計算された彩色発色指数(Color Strength、C)が110以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式4]
彩色発色指数(C)=λmax(サンプル試料の吸収値)/λmax(標準試料の吸収値)×100
(前記数式4において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、λmaxは、全領域のスペクトルにわたって最も高い吸収波長である。)
[数式5]
固体サンプルの吸収値の計算値=(1-R)/2R
(前記数式5において、Rは、X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠して測定した反射係数値を用いる。)
【請求項5】
前記A-1)グラフト共重合体と前記A-2)グラフト共重合体との重量比(A-1:A-2)は1:0.54~1:1.50であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、平均粒径0.05~0.2μmのアクリレートゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が100,000~150,000g/molであり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が150,000g/mol超~200,000g/mol以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は10~30重量%含まれ、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は30~60重量%含まれることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物の下記数式6-1で計算される発色力カバレッジ値(Xa1+Xa2+Xb1+Xb2)が20~33%であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式6-1]
Xa1+Xa2+Xb1+Xb2={(Aa1/Sa1)+(Aa2/Sa2)+(Ab1/Sb1)+(Ab2/Sb2)}×100
(前記数式6-1において、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(又は重量%)であり、Aa1、Aa2、Ab1、Ab2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(又は重量%)を示す。)
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、顔料又は染料(D)を0.1~5重量部含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(D)顔料又は染料と(C)ポリアミド樹脂との重量比(D:C)が1:1超~1:10以下であることを特徴とする、請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、外装材。
【請求項13】
前記外装材は、サイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料またはデッキングボード(decking board)材料であることを特徴とする、請求項12に記載の外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年03月08日付の韓国特許出願第10-2021-0029878号及びこれに基づいて2022年02月04日付で再出願された韓国特許出願第10-2022-0014604号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその外装材に関し、より詳細には、従来のASA系樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び均一な屈折率の制御により自然な着色品質が優れているだけでなく、PVC共押出加工性が格段に良いので外観不良を低減させることができる低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその外装材に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート化合物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐老化性、耐化学性、剛性、耐衝撃性及び加工性をすべて備えており、用途が多様であるので、自動車、雑貨及び建材分野などで広範囲に用いられる。
【0004】
外装材分野において、艶消し効果及び自然な着色性に優れた成形品に対する顧客の選好度が大きく増大しているが、これを満たすことができる艶消しASA樹脂の開発が不十分なのが実情である。
【0005】
従来、ASA樹脂にシンジオタクチックポリスチレン(以下、「sPS」という)などの結晶性樹脂を投入するか、または粒子サイズが数ミクロン(μm)である大きいABS樹脂を用いて低い光沢のASA樹脂を実現したが、sPSの場合、着色性が低下し、粒子サイズが大きいABS樹脂の場合、耐候性が大きく低下するなど困難があった。
【0006】
注目すべき点として、サイディング(siding)材料又はデッキングボード(decking board)材料で成形時に、PVC樹脂との共押出を通じて提供するようになるが、このとき、共押出されるPVC樹脂の低い加工温度により、低い加工温度で不良のない外観を実現しながらも、自然な着色性及び耐熱性を提供する必要がある。
【0007】
従来、着色性を改善するためにポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」という)などの非晶質重合体を投入したが、衝撃の低下が発生し、耐熱性を改善するための耐熱SAN樹脂の投入の場合には着色性が低下するトレードオフの関係(trade-off)が確認され、依然として限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2019-0114898号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されると共に、均一でかつ低い光沢、及び均一な屈折率を提供して自然な着色品質が優れているだけでなく、PVC共押出加工性が格段に良いので外観不良を低減させることができる低光沢熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の目的は、前記の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品を提供することである。
【0011】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、
A-1)平均粒径0.33~0.5μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)平均粒径0.05~0.2μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と、
B-1)芳香族ビニル化合物67~75重量%及びビニルシアン化合物25~33重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と、
B-2)芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体は、下記数式1で計算される発色力カバレッジ値(X)がそれぞれ20%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
[数式1]
X={A/S}×100
(前記数式1において、Sは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(重量%)であり、Aは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(重量%)を示す。)
【0014】
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体を合わせた含量と、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を合わせた含量との重量比((A-1+A-2):(B-1+B-2))は1:0.5~1:2であってもよい。
【0015】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式3及び数式5で計算された白黒発色指数(Color Strength、N)が100以上であるものであってもよい。
【0016】
[数式3]
白黒発色指数(N)=Σ(サンプル試料の吸収値)/Σ(標準試料の吸収値)×100
(前記数式3において、試料の吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値の計算値であり、Σは、400~700nmの全領域のスペクトルでの積分値である。)
【0017】
[数式5]
固体サンプルの吸収値の計算値=(1-R)/2R
(前記数式5において、Rは、X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠して測定した反射係数値を用いる。)
【0018】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式4及び数式5で計算された彩色発色指数(Color Strength、C)が110以上であるものであってもよい。
【0019】
[数式4]
彩色発色指数(C)=λmax(サンプル試料の吸収値)/λmax(標準試料の吸収値)×100
(前記数式4において、吸収値は、前記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、λmaxは、全領域のスペクトルにわたって最も高い吸収波長である。)
【0020】
前記A-1)グラフト共重合体と前記A-2)グラフト共重合体との重量比(A-1:A-2)は1:0.54~1:1.50であってもよい。
【0021】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなり、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、平均粒径0.05~0.2μmのアクリレートゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなるものであってもよい。
【0022】
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が100,000~150,000g/molであり、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が150,000g/mol超~200,000g/mol以下であるものであってもよい。
【0023】
前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は10~30重量%含まれ、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は30~60重量%含まれてもよい。
【0024】
前記A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物の下記数式6-1で計算される発色力カバレッジ値(Xa1+Xa2+Xb1+Xb2)が20~33%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0025】
[数式6-1]
Xa1+Xa2+Xb1+Xb2={(Aa1/Sa1)+(Aa2/Sa2)+(Ab1/Sb1)+(Ab2/Sb2)}×100
(前記数式6-1において、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(又は重量%)であり、Aa1、Aa2、Ab1、Ab2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(又は重量%)を示す。)
【0026】
さらに、顔料又は染料(D)を前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.1~5重量部含むことができる。
【0027】
前記(D)顔料又は染料と(C)ポリアミド樹脂との重量比(D:C)が1:1超~1:10以下であってもよい。
【0028】
また、本発明は、A-1)平均粒径0.33~0.5μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)平均粒径0.05~0.2μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と、
B-1)芳香族ビニル化合物67~75重量%及びビニルシアン化合物25~33重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と、
B-2)芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と、
C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、前述した熱可塑性樹脂組成物を含む外装材を提供する。
【0030】
前記外装材は、サイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料、またはデッキングボード(decking board)材料であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、従来のASA樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び均一な屈折率の制御により自然な着色品質が優れているだけでなく、PVC共押出加工性が格段に良いので外観不良を低減させることができる低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する効果がある。
【0032】
したがって、本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物及び成形品は、これを必要とするサイディング(siding)材料、屋根(roofing)材料またはデッキングボード(decking board)材料の分野に広く用いることができる。具体的には、スライディングドアまたは建具の素材として適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物及びその外装材を詳細に説明する。
【0034】
本発明者らは、所定の平均粒径を有するアクリレート系ゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体及びポリアミド樹脂を所定の比率で配合し、これに、アルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体の発色力カバレッジ値を所定の範囲内に調整する場合、従来のASA樹脂組成物と比較して機械的物性及び加工性などが低下しないながらも、ASA樹脂とポリアミド樹脂との相溶性が向上して発色性に優れ、改善された光沢度及び着色性を提供することを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)平均粒径0.33~0.5μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)平均粒径0.05~0.2μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と;B-1)芳香族ビニル化合物67~75重量%及びビニルシアン化合物25~33重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と;B-2)芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含むことを特徴とする。
【0036】
このような場合、従来のASA系樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、及び均一な屈折率の制御により自然な着色品質が優れているだけでなく、PVC共押出加工性が格段に良いので外観不良を低減させることができる低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する利点がある。
【0037】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0038】
A-1)平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-1)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくは平均粒径が0.33~0.5μmであってもよく、より好ましくは0.38~0.5μmであってもよく、さらに好ましくは0.4~0.5μmであるが、この範囲内で、耐候性が良好でありながらも、流動性、引張強度及び衝撃強度などのような機械的物性に優れるという効果がある。
【0039】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp380装備(製品名、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定することができる。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを蒸留水で1,000~5,000倍希釈して準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μsecとして測定することができる。
【0040】
また、本記載において、平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0041】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して50~90重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは50~70重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0042】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物20~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、好ましくは、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、より好ましくは、前記アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0043】
本記載において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0044】
本記載において、アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、さらに好ましくは、ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0045】
本記載において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0046】
本記載において、ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0047】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合により製造されてもよく、この場合、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0048】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0049】
前記A-1)グラフト共重合体は、好ましくは、下記数式1で算出した発色力カバレッジ値(X)が20%以上、好ましくは20~30%、より好ましくは25~30%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、光沢度及び着色性に優れ、発色性及び隠蔽力に優れるという効果がある。
【0050】
[数式1]
X={A/S}×100
(前記数式1において、Sは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(重量%)であり、Aは、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(重量%)を示す。)
【0051】
前記数式1において、前記グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(重量%)は、ゲル含量を求める過程で採取した溶解分中のビニルシアン化合物の含量(投入されたグラフト共重合体の総100重量%基準)を示す。ここで、ゲル含量は、グラフト共重合体の総100重量%を基準とした不溶分の含量を示す。
【0052】
前記溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量は、NMR分析器又はFT-IRを用いて測定することができる。
【0053】
具体的に、前記ゲル含量は、グラフト共重合体1gをアセトン60mlに加えた後、常温で12時間撹拌し、これを遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して12時間乾燥させた後に重量を測定し、下記数式2で算出する。詳細には、グラフト共重合体1gをアセトン60mlに加えた後、常温で12時間、撹拌機(Orbital Shaker、装備名:Lab companion SKC-6075)を用いて210rpmで撹拌し、これを遠心分離機(ハンイル科学社のSupra R30)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けなかった不溶分のみを採取して、オーブン(Forced Convection Oven;装備名:Lab companion OF-12GW)で85℃で強制循環乾燥方式で12時間乾燥させた後、重量を測定することができる。
【0054】
[数式2]
ゲル含量(重量%)=[不溶分(ゲル)の重量(g)/試料の重量(g)]×100
【0055】
本記載において、発色力カバレッジ値(X)は、グラフト共重合体中の未グラフトのビニルシアン化合物、及びアルキルアクリレートゴムにグラフトされたビニルシアン化合物の分散の程度を示すパラメータである。この値が高いほど、ビニルシアン化合物が適正の含量で均一に分散して、光沢性が低く、着色性及び発色性がいずれも優れるという効果がある。但し、発色力カバレッジ値が過度に大きい場合、隠蔽力が低下し得るため、最適の相溶性を発揮できないことがある。
【0056】
A-2)平均粒径0.05~0.2μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-2)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくは平均粒径が0.05~0.2μmであってもよく、より好ましくは0.05~0.17μm、さらに好ましくは0.1~0.17μm、より一層好ましくは0.1~0.15μmであり、この範囲内で、最終製品に、優れた耐候性、着色性、衝撃強度、発色性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0057】
前記A-2)グラフト共重合体は、前記A-1)及びA-2)グラフト共重合体の総重量に対して、一例として10~50重量%、好ましくは9~35重量%、より好ましくは12~22重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0058】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物20~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、好ましくは、前記アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、より好ましくは、前記アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~50重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなり、さらに好ましくは、前記アクリレートゴム47~57重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0059】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合により製造されてもよく、この場合、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0060】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0061】
前記A-2)グラフト共重合体は、好ましくは、前記数式1で算出した発色力カバレッジ値(X)が20%以上、好ましくは20~30%、より好ましくは25~30%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、光沢度及び着色性に優れ、発色性及び相溶性に優れるという効果がある。
【0062】
本記載において、発色力カバレッジ値は、グラフト共重合体中の未グラフトのビニルシアン化合物、及びアルキルアクリレートゴムにグラフトされたビニルシアン化合物の含量を示すパラメータである。この値が高いほど、ビニルシアン化合物が均一に分散するようになり、光沢性が低く、発色性に優れるという効果がある。但し、発色力カバレッジ値が過度に大きい場合、隠蔽力が低下し得るため、最適の発色性及び隠蔽力を発揮できないことがある。
【0063】
A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の配合
前記A-1)平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、A-2)平均粒径0.05~0.2μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体との混合である場合、従来のASA系樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、着色性特性を大幅に改善して品質信頼性に優れるという利点がある。
【0064】
前記A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、前記A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体との重量比(A-1:A-2)は、一例として1:0.54~1:1.50の重量比、好ましい例として1:0.55~1:1.30、さらに好ましい例として1:0.56~1:1.20を満たすものであってもよく、このような場合、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0065】
B)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本記載において、B)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、B-1)重量平均分子量が100,000~150,000g/molである芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体;及びB-2)重量平均分子量が150,000g/mol超~200,000g/mol以下である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体;からなる群から選択された1種以上を含み、より好ましくは、前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の単独使用;または前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体との混合使用であり、この場合、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0066】
前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して0~30重量%、より好ましくは0~25重量%、さらに好ましくは0~20重量%、具体的な例としては1~30重量%、より具体的な例としては10~25重量%、さらに具体的な例としては15~20重量%含まれ、この場合、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0067】
前記B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して30~70重量%、より好ましくは30~60重量%、さらに好ましくは35~60重量%含まれ、この場合、耐熱度、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0068】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/min、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0069】
前記B-1)及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなり、好ましくは、芳香族ビニル化合物67~80重量%及びビニルシアン化合物20~33重量%を含んでなり、より好ましくは、芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなり、この範囲内で、耐化学性、衝撃強度、引張強度、及び加工性に優れるという効果がある。
【0070】
前記B-1)及びB-2)芳香族ビニル重合体は、一例として、懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合で製造されてもよく、この場合、耐熱性及び流動性などに優れるという効果がある。
【0071】
前記懸濁重合、乳化重合、溶液重合及び塊状重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合及び塊状重合方法による場合、特に制限されない。
【0072】
本記載において、前述したB-1)及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体以外に、耐熱スチレン系樹脂、またはメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の使用は排除することが、着色性及び発色性特性を十分に実現しながら隠蔽力を維持できるので好ましいが、これに制限されるものではない。
【0073】
A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の配合
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総合計量10~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~90重量%を含むことができ、より好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総合計量20~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~80重量%を含み、さらに好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総合計量30~50重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~70重量%を含み、より一層好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総合計量30~45重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体55~70重量%を含み、最も好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の総合計量30~40重量%、及びB)重量平均分子量が異なる2種の芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~70重量%を含むが、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが低下しないながらも耐候性に優れ、光沢が低く、着色性特性を改善して共押出製品の表面外観が改善された感じを与えるという効果がある。
【0074】
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体を合わせた含量と、前記B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を合わせた含量との重量比((A-1+A-2):(B-1+B-2))が1:0.5~1:2である場合、光沢が低く、着色性及び発色性特性を改善して共押出製品の表面外観が美麗であるという効果がある。
【0075】
前記A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、及びB-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物の下記数式6で計算される発色力カバレッジ値(X)が20~33%、好ましくは25~30%である場合、着色性及び発色性特性を改善して共押出製品の表面外観が美麗であるという効果がある。
【0076】
【数1】
(前記数式6において、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(又は重量%)であり、Aa1、Aa2、Ab1、Ab2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(又は重量%)を示す。)
【0077】
ポリアミド
本記載のポリアミド樹脂は、熱可塑性樹脂組成物を基準として、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%、最も好ましくは5~7重量%であり、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、粘弾性特性の改善により表面外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0078】
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、溶融温度(Tm)が250℃以上であり、具体例として250~280℃、好ましい例として250~270℃であり、この範囲内で、特に光沢が低く、表面光沢が均一であり、表面粗さの値が低いので感性的に柔らかい感じを与えるという利点がある。
【0079】
本記載において、溶融温度(Tm、Melting Temperature)は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、具体的に動的走査熱量計(Dynamic Scanning Calorimeter;DSC)方式で測定することができる。
【0080】
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、相対粘度(硫酸96%溶液)が2.5以下であり、具体例として2.0~2.5、好ましい例として2.2~2.5であり、この範囲内で、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一であり、表面粗さの値が低いので感性的に柔らかい感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0081】
本記載において、%は、別途に定義しない限り、重量%を意味する。
【0082】
本記載において、相対粘度は、ISO 307硫酸法によりウベローデ(Ubbelohde)粘度計で測定することができ、具体的に説明すると、96重量%濃度の硫酸水溶液100mlに測定しようとする試料1gを溶解させて製造された溶液を、ブルックフィールド回転粘度計(Brookfield rotational viscometer)を用いて20℃で測定することができる。
【0083】
本記載において、ポリアミド樹脂は、本発明に係る溶融温度を満たす場合、その種類には特に制限がなく、具体例として、ポリアミド6、ポリアミド66(PA6.6)、ポリアミド46、ポリアミドll、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド12及びポリアミド66からなる群から選択された1種以上である。
【0084】
前記ポリアミド樹脂の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリアミドの定義に符合する場合、商業的に購入して用いても構わない。
【0085】
熱可塑性樹脂組成物
本記載の熱可塑性樹脂組成物((A-1)+(A-2)+(B-1)+(B-2)+(C))は、一例として、前記熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して無機顔料を0.1~5重量部、好ましくは0.1~2重量部、より好ましくは0.1~1重量部、さらに好ましくは0.3~0.6重量部含むことができ、この範囲内で、耐候性及び隠蔽力に優れるという効果がある。
【0086】
前記無機顔料は、一例として、Ti、Pb、Fe、Crなどの金属化合物及びカーボンブラックからなる群から選択された1種以上であってもよく、前記金属化合物は、好ましくは、金属酸化物または金属水酸化物であり、前記無機顔料の具体例としては、白色無機顔料としてTiO、酸化亜鉛(Zinc Oxide);黒色無機顔料としてカーボンブラック、グラファイト;赤色無機顔料としてIOR、カドミウムレッド(Cadmium Red)、レッドリード(Red Lead)(Pb);黄色無機顔料としてクロムイエロー(Chrome Yellow)、ジンククロメート(Zinc Chromate)、カドミウムイエロー(Cadmium Y.);及び緑色無機顔料としてクロムグリーン(Chrome Green)、ジンクグリーン(Zinc Green)からなる群から選択された1種以上であってもよく、最も好ましい無機顔料は、白色無機顔料であるTiOであってもよい。
【0087】
本発明において、前記(D)顔料又は染料と、前記(C)ポリアミド樹脂との重量比(D:C)は、一例として1:1超~1:10以下、好ましくは1:2~1:10であり、具体例として1:5~1:10であってもよく、このような場合、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0088】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D648に準拠して、HDTテスター6M-2K(Toyoseiki社製)機器で18.5kg/cmの荷重で測定した軟化点が90℃以上、より好ましくは90.5℃以上であってもよく、具体例としては91~93℃であってもよく、この範囲内で、耐熱特性、共押出性などに優れるという効果がある。
【0089】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM 256に準拠したアイゾット衝撃強度(1/8inch)が5kg・cm/cm以上、好ましくは6kg・cm/cm以上であり、具体例として6~13kg・cm/cmであってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0090】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、280℃下で押出されたペレットを、バレル部の温度150℃、190℃、190℃、190℃及びダイ部の温度200℃、200℃、200℃の条件下でフィルム加工して作製したフィルムを、グロスメーターにより60°で測定したグロス値が5.0~11.0、好ましくは5.5~10.0であり、具体例として5.5~9.0であってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0091】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ハンターLab(Hunter Lab)でCIE Labの方法に準拠して測定したL値が90以上、好ましくは91以上であり、具体例として91~93であってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0092】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ハンターLab(Hunter Lab)でCIE Labの方法に準拠して測定したb値が8以上、好ましくは8.1以上であり、具体例として8.1~10であってもよく、この範囲内で、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0093】
前記熱可塑性樹脂組成物は、グロスメーターにより60°で測定した光沢度(G)と、CIE Labで測定した色度b値(C)との相関関係(G/C)が0.5~1.1、好ましくは0.8~1.1であり、具体例として0.8~1.0を満たす場合に、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適するという利点がある。
【0094】
本記載において、発色力指数は、染料、顔料の発色力(coloring power)または発色率(color yield)を示すパラメータであって、染料、顔料の吸収を直接的に示すように標準試料とサンプル試料との吸収比で表現する。
【0095】
前記発色指数の測定法は、当該分野で公知のものであり、一例として、λ maxima color strength方式、Apparent color strength方式、Integrated color strength方式などがあり、ホワイトとブラックをはじめとする無彩色の測定にはApparent color strength方式を主に用い、有彩色の測定にはλ maxima color strength方式を主に用いるようになる。
【0096】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式3で計算された白黒発色指数(Color Strength、C/S)が100以上、好ましくは100~130、具体例として100~116であってもよく、下記数式4及び数式5で計算された彩色発色指数(Color Strength、C/S)が110以上、好ましくは113~130、具体例として114~119であってもよい。これらの範囲内で、サイディング、屋根及びデッキングボードの材料に適した無彩色又は有彩色のカラー発色力を提供するという利点がある。
【0097】
[数式3]
白黒発色指数(N)=Σ(サンプル試料の吸収値)/Σ(標準試料の吸収値)×100
(前記数式3において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、Σは、400~700nmの全領域のスペクトル積分値である。)
【0098】
[数式4]
彩色発色指数(C)=λmax(サンプル試料の吸収値)/λmax(標準試料の吸収値)×100
(前記数式4において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、λmaxは、全領域のスペクトルにわたって最も高い吸収波長である。)
【0099】
[数式5]
固体サンプルの吸収値の計算値=(1-R)/2R
(前記数式5において、Rは、 X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠して測定した反射係数値を用いる。)
【0100】
前記数式5から分かるように、色の吸収及び散乱は、直接測定されずに、反射、吸収、散乱との関係式で与えられるようになる。
【0101】
また、前記数式3において、Σは、400~700nmの全領域のスペクトル積分値を指すものと定義される。
【0102】
また、本記載において、前記数式5のR(反射係数値)は、具体的に、 X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠してUV D65光源でSCI法によりDegree Observer 10°で、LAV Aperture、LAV LENS、CIE GANZ 82 whiteness、YI ASTM E313-73(D1965)の条件で測定することができる。L値及びb値は、マンセル表色系(Munsell System)に基づいて、CIE Labの方法に準拠して反射モード(Reflectance Mode)で値を得て測定した。Lは、0~100の数字で表現され、0に近いほど黒色(black)を、100に近いほど白色(white)を示すものである。a値は、Red-Green値を、b値は、Yellow-Blue値を示す。C/S値は、GretagMacbeth LLC社のPropalett Paint/Plastics Formulation Platinum 5.2.5.1.のソフトウェアによって数式に基づいて自動で計算された値をそのまま使用した。再現性のある実験値を得るために、サンプル3個の平均値を得た。発色性(C/S)は、標準(standard)を100としたとき、着色性が良い場合に100よりも大きい値を示す。
【0103】
本記載において、白黒発色指数値(N)は、ブラック又はホワイト系統の顔料、染料に対する発色の程度を示すパラメータである。この値が高いほど、少ない量の顔料で同じレベルの着色性を示すことができる効果がある。
【0104】
本記載において、彩色発色指数値(C)は、ブラック及びホワイトを除いて、グレー系統を含む有彩色系統の顔料、染料に対する発色の程度を示すパラメータである。この値が高いほど、少ない量の顔料で同じレベルの着色性を示すことができる効果がある。
【0105】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に、滑剤、顔料、熱安定剤、光安定剤、染料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、前記熱可塑性樹脂組成物(A-1)~(C)の総100重量部を基準として、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部、または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという利点がある。
【0106】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記数式1で計算される発色力カバレッジ値(X)が20%以上、好ましくは20~30%、より好ましくは25~30%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性、光沢度及び着色性に優れ、発色性及び隠蔽力に優れるという効果がある。
【0107】
本記載において、発色力カバレッジ値(X)は、値が高いほど、ビニルシアン化合物が均一に分散して、光沢性が低く、着色性及び発色性に優れるという効果がある。
【0108】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、A-1)平均粒径0.33~0.5μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びA-2)平均粒径0.05~0.2μmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を合わせた総重量10~50重量%と;B-1)芳香族ビニル化合物67~75重量%及びビニルシアン化合物25~33重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体0~30重量%と;B-2)芳香族ビニル化合物70~75重量%及びビニルシアン化合物25~30重量%を含んでなる芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体20~70重量%と;C)溶融温度(Tm)が250℃以上であるポリアミド樹脂0.5~10重量%とを含み、前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体は、下記数式1で計算される発色力カバレッジ値(X)がそれぞれ20%以上になるように混合した後、220~280℃の条件下で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とし、このような場合、従来のASA系樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一であり、着色性及び発色性がいずれも優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0109】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0110】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは220~290℃下で、より好ましくは250~290℃下で、さらに好ましくは270~290℃下で行うものであってもよく、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0111】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0112】
<外装材>
本記載の外装材は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、従来のASA樹脂と比較して機械的物性及び加工性などが同等以上であると共に、均一でかつ低い光沢、着色性及び発色性の改善により外観品質に優れるという利点がある。
【0113】
前記外装材は、一例として、共押出成形品または射出成形品であってもよく、好ましくは、サイディング(siding)材料、デッキングボード(decking board)材料、屋根(roofing)材料であってもよく、より好ましくは、スライディングドアまたは建具であってもよい。
【0114】
前記外装材は、好ましくは本記載の熱可塑性樹脂組成物を成形温度190~250℃下、より好ましくは190~230℃下、さらに好ましくは190~220℃下で共押出又は射出するステップを含んで製造されてもよく、この範囲内で、製品に艶消し効果が良好に発現されるという利点がある。
【0115】
前記共押出は、一例として、PVC樹脂との共押出であってもよい。具体例として、PVCは0.5~3.0mmの厚さであってもよく、本記載の熱可塑性樹脂組成物は、薄膜の厚さである0.05~0.5Tであってもよい。本記載の熱可塑性樹脂組成物による厚さが薄い場合、隠蔽力が低下して、TiOなどの顔料の含量が増加し得、顔料の含量が増加する場合、成形品の着色性及び隠蔽力が優れ得る。
【0116】
本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び外装材を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0117】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0118】
[実施例]
下記の実施例1~4、及び比較例1~5で用いられた物質は、次の通りである。
A-1)乳化重合方式の大粒径のグラフト共重合体(ゴム:平均粒径500nmのブチルアクリレート重合体50重量%、スチレン35重量%、アクリロニトリル15重量%)
A-2)乳化重合方式の小粒径のグラフト共重合体(ゴム:平均粒径130nmのブチルアクリレート重合体50重量%、スチレン37重量%、アクリロニトリル13重量%)
A-3)乳化重合方式の小粒径のグラフト共重合体(ゴム:平均粒径130nmのブチルアクリレート重合体50重量%、スチレン32.5重量%、アクリロニトリル17.5重量%)
B-1)バルク重合方式の重量平均分子量100,000~150,000g/molのSAN樹脂(90HR、スチレン73重量%、アクリロニトリル27重量%)
B-2)バルク重合方式の重量平均分子量150,000g/mol超~200,000g/mol以下のSAN樹脂(97HC、スチレン70重量%、アクリロニトリル30重量%)
B-3)バルク重合方式の重量平均分子量150,000g/mol超~200,000g/mol以下のSAN樹脂(スチレン65重量%、アクリロニトリル35重量%)
C-1)溶融温度(Tm)261℃のPA6.6
C-2)溶融温度(Tm)221℃のPA6
D-1)耐熱SAN樹脂(バルク重合方式の重量平均分子量80,000~100,000g/mol、メチル置換スチレン71重量%、アクリロニトリル29重量%、製品名200UH)
D-2)ポリメタクリレート樹脂(LGMMA社のIF850)
D-3)sPS表面調節剤(製造社:Polyone社、商品名:QT-20MN)
【0119】
実施例1~4及び比較例1~5
それぞれ、下記表1に記載された成分及び含量を、280℃下で28ファイ、L/D36規格の押出混練機(二軸押出機)を用いてペレットに製造した。
【0120】
【表1】
(前記表において、TiOの含量は、A-1)、A-2)、A-3)、B-1)、B-2)、B-3)、C-1)、C-2)、D-1)、D-2)及びD-3)の総100重量部に対する重量部である。)
【0121】
また、製造されたペレットを、フィルム押出機を通じて厚さ0.15Tで均一にフィルムとして作製し、これを試料(sample)として、フィルムの光沢(film gloss)などを下記の方法により測定した。このとき、フィルム押出機は、シート成形用一軸押出機(Collin社製、E20T製品、20ファイ、L/D:25)を用い、温度条件は、押出機の投入口から順にバレル部の温度150℃、200℃、210℃、210℃及びダイ部の温度220℃、220℃、230℃にセットした。ペレットは、フィルム押出機に投入する前に80℃のオーブンで3時間以上十分に乾燥させて水分の影響を除去した後、フィルム押出機の投入口に投入し、厚さ0.15Tで均一にフィルムとして作製した。使用された後段ローラ(Roller)の温度は、水を媒質として用いて85℃にセットし、ローラの構成は、Tダイ(T-Die)を通じて押し出される樹脂の片面のみがロール(Roll)と接触するタイプを使用した。ここで、フィルム押出機のスクリュー(Screw)のRPMは100に固定し、ロールの線速度を調節してシートの厚さが0.15Tになるようにした。ここで、押出されたシートの面のうち一番目のロールと接触した面に対してフィルムの光沢(Film Gloss)及び表面粗さの値(Ra)などを測定した。参考に、一番目のロールと接触していない面を測定する場合、表面粗さに差が発生することがある。
【0122】
さらに、前記製造されたペレットを成形温度220℃で射出して物性測定用試験片を作製し、これを用いて衝撃強度を測定した。
【0123】
[試験例]
前記実施例1~4、及び比較例1~5で製造されたペレット、シート及び試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0124】
*アイゾット衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM 256方法により測定した。
【0125】
*フィルムの光沢(Film Gloss):グロスメーター(gloss meter)VG7000により60°で測定した。
【0126】
*軟化点(℃):ASTM D648に準拠して、HDTテスター6M-2K(Toyoseiki社製)機器で18.5kg/cmの荷重で測定した。
【0127】
*フィルムの光沢(Film Gloss):前述した190℃で加工して製造された厚さ0.15Tのシートを、グロスメーター(gloss meter)VG7000により60°で測定した。
【0128】
*L値、b値、C/S値:ハンターLab(Hunter Lab)でCIE Labの方法に準拠して測定した。具体的には、 X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠してUV D65光源でSCI法によりDegree Observer 10°で、LAV Aperture、LAV LENS、CIE GANZ 82 whiteness、YI ASTM E313-73(D1965)の条件で測定した。L値及びb値は、マンセル表色系(Munsell System)に基づいて、CIE Labの方法に準拠して反射モード(Reflectance Mode)で値を得て測定した。Lは、0~100の数字で表現され、0に近いほど黒色(black)を、100に近いほど白色(white)を示すものである。a値は、Red-Green値を、b値は、Yellow-Blue値を示す。C/S値は、GretagMacbeth LLC社のPropalett Paint/Plastics Formulation Platinum 5.2.5.1.のソフトウェアによって数式に基づいて自動で計算された値をそのまま使用した。再現性のある実験値を得るために、サンプル3個の平均値を得た。発色性(C/S)は、標準(standard)を100としたとき、着色性が良い場合に100よりも大きい値を示す。
【0129】
*発色性(単位%):発色性の計算は、白黒に対して下記数式3に代入して計算し、白黒以外の有色に対しては下記数式4に代入して計算した。
【0130】
[数式3]
白黒発色指数(N)=Σ(サンプル試料の吸収値)/Σ(標準試料の吸収値)×100
(前記数式3において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、Σは、400~700nmの全領域のスペクトル積分値である。)
【0131】
[数式4]
彩色発色指数(C)=λmax(サンプル試料の吸収値)/λmax(標準試料の吸収値)×100
(前記数式4において、吸収値は、下記数式5で示すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)方程式で計算された固体サンプルの吸収値であり、λmaxは、全領域のスペクトルにわたって最も高い吸収波長である。)
【0132】
[数式5]
固体サンプルの吸収値の計算値=(1-R)/2R
(前記数式5において、Rは、 X-rite Color-eye 7000AによりCIE Labの方法に準拠して測定した反射係数値を用いる。)
【0133】
*発色指数(単位%):発色指数の計算は、下記数式6-1に代入して計算した。
【0134】
[数式6-1]
Xa1+Xa2+Xb1+Xb2={(Aa1/Sa1)+(Aa2/Sa2)+(Ab1/Sb1)+(Ab2/Sb2)}×100
(前記数式6-1において、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)の含量(重量%)であり、Aa1、Aa2、Ab1、Ab2は、A-1)グラフト共重合体、A-2)グラフト共重合体、B-1)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、B-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体をそれぞれアセトンに溶解させ、遠心分離した後の溶解性物質(sol)中のビニルシアン化合物の含量(重量%)を示す。)
【0135】
【表2】
【0136】
前記表2に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~4参照)は、本発明に係る組成を含まない比較例1~5と比較して、衝撃強度などのような機械的物性、さらに、軟化点などのような耐熱特性は同等又はそれ以上を維持しながらも、フィルムの光沢度などから分かるように、自然な艶消しを提供すると共に、L値、b値及び発色性が適正の範囲内に調節され、自然な着色品質を提供することが分かる。
【0137】
具体的に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~4参照)は、衝撃強度5.5以上、軟化点90以上、光沢10以下及び高い着色度を満たすもので、これより衝撃強度が低いと、外部衝撃によりクラックが発生することがあり、軟化点がこれより低いと、夏季及び太陽光による反りが発生することがあり、光沢が提示された値よりも高いと、反射光が発生して眩しさ現象があり、最近のデザイントレンドとも符合せず、特に発色性が改善されることによって、少量の顔料を使用しても同等レベルのカラーを実現することができる効果がある。
【0138】
一方、比較例1及び2によれば、実施例1、2及び4と比較して、L値が低くて暗く、b値が高くて黄色を帯びるので、着色度が劣ることを確認することができる。具体的には、比較例1と比較して実施例1及び2のライトグレー(light grey)発色性が優れ、比較例2と比較して実施例4のダークグレー(dark grey)発色性が優れることが分かる。これは、樹脂の全体屈折率をほぼ同一に合わせ、発色力カバレッジ(X)を高めるために、ビニルシアン化合物の含量を増加させてb値が高くなるようにする方向よりも、発色性が優れることが分かる。したがって、発色力カバレッジ(X)の最適の範囲内で発色性に優れることを確認した。
【0139】
また、比較例3と関連して、(D-3)成分を使用すれば発色性が低下することが公知となっており、これを解消するように(D-2)成分を使用した場合には、着色性は改善されるが、衝撃が低下する点を考慮して、(a)バイモーダルグラフト共重合体成分を増量させた場合であって、軟化点が低下することが分かる。
【0140】
また、比較例4によれば、実施例2と比較して、軟化点を改善させるために(D-1)成分を使用した場合、数式1から計算された発色力指数が15.4%であって、発色性が低下することを確認することができる。
【0141】
また、比較例5によれば、(C-1)成分を過量使用した場合、衝撃強度及び軟化点がそれぞれ低下することを確認することができる。
【0142】
さらに、発色指数は29.1以下の望みのレベルであったが、当該用途に使用しにくい物性を示すことを確認することができる。
【0143】
このような結果をまとめると、スチレン系樹脂とポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物で発色力カバレッジ及び発色指数の特性を満たすことによって、成形品に使用されるベース樹脂が有する基本的な物性を維持し、自然な艶消しを提供しながら、外装材成形品として必要な着色及び発色品質を改善すると共に、相溶性を改善することができるので、優れた外装材としての製品の信頼性を有する樹脂組成物に適することが確認できた。
【国際調査報告】