(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】3Dデバイスの検査およびレビューのための電子ビームシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/145 20060101AFI20230519BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20230519BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20230519BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20230519BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20230519BHJP
H01J 37/14 20060101ALI20230519BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01J37/145
H01J37/28 B
H01J37/06 A
H01J37/244
H01J37/147 B
H01J37/14
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561657
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2021026945
(87)【国際公開番号】W WO2021211483
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン シンロン
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ クリストファー
【テーマコード(参考)】
4M106
5C101
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DB12
4M106DB16
5C101AA03
5C101DD07
5C101EE04
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE33
5C101EE34
5C101EE38
5C101EE51
5C101EE63
5C101EE65
5C101EE67
5C101EE78
5C101FF02
5C101FF06
5C101GG04
5C101GG05
5C101HH11
(57)【要約】
3Dデバイスのウェハ検査およびレビューのための電子ビームシステムが、最大20ミクロンの焦点深度を提供する。数百から数千電子ボルトの低い着陸エネルギーでウェハ表面またはサブミクロン台前半の表面欠陥を検査およびレビューするために、3つの磁界偏向器を備えたウィーンフィルタ不使用のビーム分離光学系を、エネルギーを増強する上部ウェーネルト電極と共に使用することができ、それによって対物レンズの球面収差係数と色収差係数が低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを生成する電子ビーム源と、
前記電子ビームの光路上に配設されたビーム制限絞りと、
前記電子ビームの光路上に配設された下部ウェーネルト電極と、
前記電子ビームの光路上の、前記下部ウェーネルト電極と前記ビーム制限絞りの間に配設された上部ウェーネルト電極と、
前記上部ウェーネルト電極の、前記下部ウェーネルト電極に面した表面に配設された環状検出器と、
前記電子ビームの光路上の、前記上部ウェーネルト電極と前記ビーム制限絞りの間に配設された磁界集束レンズであって、磁極片と集束レンズコイルとを含む磁界集束レンズと、
前記電子ビームの光路上の、前記上部ウェーネルト電極と前記集束レンズの間に配設された偏向器と、
前記電子ビームの光路上の、前記偏向器と前記上部ウェーネルト電極の間に配設された磁界対物レンズコイルと、
前記電子ビームの光路上に配設された接地管であって、その周囲に前記磁界対物レンズコイルが配設された接地管と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記電子ビームの光路上の、前記集束レンズと前記ビーム制限絞りの間に配設された絞りをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電子ビーム源が、半径1μm未満の先端を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記偏向器が磁界偏向器またはウィーンフィルタである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記偏向器が磁界偏向器であり、上部磁界偏向器および中間磁界偏向器をさらに備え、前記上部磁界偏向器が、前記電子ビームの光路上の、前記偏向器と前記磁界集束レンズの間に配設され、前記中間磁界偏向器が、前記電子ビームの光路上の、前記上部磁界偏向器と前記磁界偏向器の間に配設される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記上部磁界偏向器が、前記電子ビームを前記中間磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され、前記中間磁界偏向器が、前記電子ビームを前記上部磁界偏向器の偏向方向と反対の方向に、前記磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され、前記磁界偏向器が、前記接地管へと、前記電子ビームを偏向させ前記光路に沿ってコリメートするように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁界偏向器、前記上部磁界偏向器、および前記中間磁界偏向器のそれぞれが、回転対称である8つの磁極片を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記中間磁界偏向器と前記磁界偏向器の間に配設されたサイド検出器をさらに備え、前記サイド検出器が、少なくとも2次電子を収集するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記中間磁界偏向器と前記磁界偏向器の間に配設された電子ビームベンダをさらに備え、前記電子ビームベンダが、前記サイド検出器において後方散乱電子から2次電子を取り除くように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
電子ビーム源で電子ビームを生成することと、
前記電子ビームをビーム制限絞りを介して方向付けることと、
前記電子ビームを、その光路に沿って前記ビーム制限絞りの下流に配設された磁界集束レンズを介して方向付けることと、
前記電子ビームを、その光路に沿って前記磁界集束レンズの下流に配設された偏向器を介して方向付けることと、
前記電子ビームを対物レンズを介して方向付けることであって、前記対物レンズが接地管、上部ウェーネルト電極、および下部ウェーネルト電極を含むことと、
前記電子ビームを前記下部ウェーネルト電極からウェハの表面に向かって方向付けることと、
前記ウェハからの後方散乱電子を、前記上部ウェーネルト電極の表面に配設された環状検出器において受け取ることであって、前記上部ウェーネルト電極の前記表面が前記下部ウェーネルト電極に面していることと、
含む方法。
【請求項11】
前記電子ビームは、ビーム電圧が50kV~100kVであり、50keV~100keVの着陸エネルギーを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁界集束レンズが、小焦点深度モードおよび大焦点深度モードを有する前記電子ビームを形成するように構成され、開口数は、前記大焦点深度モードの方が前記小焦点深度モードよりも小さい、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ウェハが3次元半導体構造を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電子ビームの焦点深度が最大20μmである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電子ビーム源が半径1μm未満の先端を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記偏向器が磁界偏向器またはウィーンフィルタである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記偏向器が磁界偏向器であり、さらに、前記電子ビームを、その光路上に沿って前記偏向器と前記磁界集束レンズの間に配設された上部磁界偏向器および中間磁界偏向器を介して方向付けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記上部磁界偏向器が、前記電子ビームを前記中間磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され、前記中間磁界偏向器が、前記電子ビームを前記上部磁界偏向器の偏向方向と反対の方向に、前記磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され、前記磁界偏向器が、前記接地管へと、前記電子ビームを偏向させ前記光路に沿ってコリメートするように構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記中間磁界偏向器と前記磁界偏向器の間に配設されたサイド検出器において2次電子を受け取ることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記中間磁界偏向器と前記磁界偏向器の間で前記ウェハから戻ってきた電子を曲げ、それによって前記サイド検出器において後方散乱電子から前記2次電子を取り除くことをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ビームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月15日に出願され、米国出願番号63/010,097が付与された仮特許出願に対する優先権を主張し、その開示を参照によりここに援用する。
【0003】
半導体製造業界の発展により、歩留まり管理、とりわけ計測および検査のシステムに課せられる要求が大きくなっている。パターンの線幅(CD、Critical Dimension)の微細化が進む中、歩留まりが高く高価値の製造を達成するため、時間についても短縮することが求められる。歩留まり上の問題を検出してからそれを修正するまでの総所要時間を最小限にすることが、半導体メーカの投資利益率を左右する。
【0004】
ロジックデバイスやメモリデバイスなどの半導体デバイスの製造は、その半導体デバイスの様々な機能や複数の階層を形成するために、典型的には、1枚の半導体ウェハを多数の製造プロセスで処理することを含んでいる。例えば、リソグラフィとは、レチクルから、半導体ウェハ上に配置されたフォトレジストへの、パターンの転写に関わる一半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスの例には他にも、化学機械研磨(CMP)、エッチング、成膜、およびイオン注入が含まれるが、これらに限定されない。単一の半導体ウェハ上に製造された複数の半導体デバイスの配列は、個々の半導体デバイスに切り離され得る。
【0005】
製造プロセスの歩留まりを高め、利益を高めるために、半導体製造の様々な段階で検査プロセスが使用されて、ウェハ上の欠陥を検出する。検査は、集積回路(IC)などの半導体デバイスの製造において常に重要な役割を果たしてきた。しかしながら、半導体デバイスの寸法が縮小するにつれて、より小さな欠陥がデバイス不良の原因となり得ることから、適格の半導体デバイスを順調に製造するために、検査がいっそう重要になる。例えば、半導体デバイスの寸法が縮小するにつれて、比較的小さい欠陥でさえも半導体デバイスに望ましくない逸脱を引き起こし得るため、さらに微小な欠陥の検出が必要になっている。
【0006】
しかしながら、デザインルールが縮小するにつれて、半導体製造プロセスはその性能の限界にいっそう近づいて稼働している可能性がある。それに加えて、デザインルールが縮小するにつれて、より小さい欠陥がデバイスの電気的パラメータに影響する可能性があり、それによって検査がさらに繊細になっていく。デザインルールが縮小するにつれて、潜在的に歩留まりに関連する欠陥の、検査で検出される数が劇的に増加し、検査で検出される有害な欠陥の数もまた、劇的に増加する。したがって、ウェハ上でより多くの欠陥が検出され得る。全ての欠陥をなくすようにプロセスを修正することは、困難でありコストがかかり得る。デバイスの電気的パラメータおよび歩留まりに実際に影響を与える欠陥を判定すれば、プロセス制御方法ではそれらの欠陥に集中し、それ以外の欠陥をほぼ無視することができる。さらに、いっそう小さなデザインルールでは、プロセス起因の不良が時として、システマチックなものになる傾向がある。つまり、このプロセス起因の不良は、所定の設計パターンのところで発生する傾向がある。こういった設計パターンは、1つの設計内に数多く含まれる繰り返しパターンであることが多い。空間的にシステマチックな、電気関連の欠陥をなくすことは、歩留まりに影響し得る。
【0007】
集積回路の製造に使用するシリコンウェハなどの部材の微細構造を作成または検査するには、一般に、集束電子ビームシステムが使用される。この電子ビームは、電子銃のエミッタから放出された電子で形成され、微細構造の検査のためウェハと相互作用する際に、微細なプローブとして機能する。
【0008】
ナノ加工の2D平面プロセスは、半導体チップの発展に対応しようと試みるも、IC集積密度の高まりに伴う物理的な影響に起因したボトルネックに直面している。この2Dプロセスの欠点に対処するために、チップ加工の3D立体プロセスが開発された。3Dナノ加工プロセスの開発で重要なものが、3D NANDフラッシュメモリの設計と製造である。
図1は、3D NANDフラッシュメモリの概略図を示す。
図2は、
図1の断面図であり、3D NANDフラッシュメモリデバイス内の積層されたビットとメモリホールをモデル化したものである。3D NANDフラッシュデバイスは、基板上に形成された多数の積層された薄膜(例えば、SiおよびSiO
2薄膜)と、メモリホール(またはチャネルホール)とを含む。Si薄膜はSiO
2薄膜と共にNANDデバイスの1層を形成し、この積層された薄膜の1層が1つのメモリホールと共にNANDフラッシュの1ビットを形成する。現在、96層のNANDフラッシュが市場に出回っており、近い将来には128層および最大256層のNANDフラッシュデバイスが市場に出る予定である。
【0009】
96層のNANDは、SiおよびSiO
2の薄膜が192枚必要である。一般に使用される8GBのNANDフラッシュには、約8,300万個のメモリホールが必要である(8e9/96=8.3e7)。完全なウェハを見ると、数千億のメモリホールがある。これらのメモリホールは全て、
図2に示されているように、ナノエッチング技術で生成される。エッチング結果が良ければ、
図2(c)のようなメモリホールが形成されるはずである。しかし、技術の限界により、数百層の深さを有する数千億個のメモリホールの均一性の高いエッチング結果が常に得られるとは限らない。例えば、いくつかのメモリホールは、
図2の(a)および(b)のように、オーバエッチングまたはアンダーエッチングされ得る。他のメモリホールは、それぞれ
図2の(d)または(e)のように、エッチング後に欠陥が残るか、または傾いてエッチングされ得る。したがって、3D NANDフラッシュメモリを開発するには、これらの数千億個のメモリホールの電子ビームによるウェハ検査およびレビューが必要になり得る。
【0010】
図3は、集束電子ビームを使用して3D NANDメモリホールを検査するモデルを示している。3D NANDフラッシュによるメモリホールは、非常に高いアスペクト比(AR)が特徴である。ARは、穴の深さHに対する穴の直径Dの比率として定義される。例えば、D=0.1μm、H=20μmの場合、AR=1:200となる。H=20μmという値は、100層のNANDフラッシュにとって、各薄膜の厚さがわずか0.1μmであることを意味する。
【0011】
光学的に言えば、ARが非常に高いということはつまり、ウェハ検査およびレビューの実行に使用する電子ビームシステムの焦点深度(DOF)が大きいということである。
図3に示されているように、ARが1:200の実施例に対応するには、ビームの全ての電子をメモリホールの底部に当てるために、集束される電子ビームのDOFは20μmより大きくする必要があり得る。つまり、
図3のd(z)がメモリホールの頂部から底部までの間における電子ビームスポットサイズであるとすると、このd(z)は、全体の深さHの全域にわたってDより小さいことが求められる。
【0012】
DOFが数十ミクロンの電子ビームシステムは、設計と実装が困難である。しかしながら、ウェハの検査、レビュー、線幅(CD)計測では、大DOF電子ビームシステムが、3D NANDフラッシュだけでなく、3Dダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)電子装置や、その他全ての高アスペクト比(HAR)デバイス(例えば、ディープトレンチロジックデバイスなど)にも使用され得る。
【0013】
光子ビームは通常、HARデバイスの検査およびレビューには使用されない。というのは、集束した光子ビームの開口数(NA)がかなり大きい(例えば、最大数十度)からである。NAは、
図3のビーム半角βに等しい。集束ビームのDOFはNAに反比例し、したがって光子ビームのDOFは非常に短くなる。
【0014】
電子ビームシステムでは、信号として2次電子(SE)を使用する。それによってウェハ検査、レビュー、およびCD測定を実行し、かつ/または完結させる。しかし、2次電子信号は材料の表面からの特性しか反映できない。2次電子は、エネルギーが低いこと(例えば、数電子ボルト)と、その放出極角が大きく、メモリホールの壁によって停止させられることから、HARのメモリホールの底部からは脱出することができない。
【0015】
電子ビームシステムではまた、信号として後方散乱電子(BSE)を使用する。それによって
図4に示されているように、ARが比較的高いDRAMのコンタクトホールの底部、または数十層の薄膜が積層されたメモリホールの底部の検査およびレビューを行う。
図4では、通常約1keV~20keVの範囲にある着陸エネルギー(LE)を有する一次ビームの電子が、メモリホールの底部に衝突している。着陸エネルギーと同じエネルギーを有するBSEが生成されて、それらのエネルギーが比較的高く、放出極角が大きいことから、積層された薄膜材料を貫通し、その材料の上面から脱出する。積層された薄膜材料から貫通することによって脱出したBSEは、ウェハ上の電子ビーム光学鏡筒に配置された1つまたは複数の検出器によって収集され得る。
【0016】
HARデバイスの検査および/またはレビューにBSE信号を使用する従来の電子ビームシステムは、欠点を有する。第1に、こういったシステムは利用が制限されている。電子ビーム電圧(またはビームエネルギー)が通常、35kV未満または25kV未満に制限され、あるいはウェハ上への電子ビームの着陸エネルギーが通常、30keV未満に制限される。したがって、BSEエネルギーも通常30keV未満に制限される。したがって、積層された薄膜材料は厚くすることができない。厚くすると、材料のバルクを貫通して外に出るためのBSEの出力が不十分になる。これにより、このような電子ビームシステムは、3D NANDフラッシュデバイスの数十層の検査およびレビューに制限される。3D NANDフラッシュデバイスの数百層を検査およびレビューするには、約50keV~100keVまでの電子ビーム着陸エネルギーが必要になり得る。
【0017】
第2に、BSE信号を使用する従来の電子ビームシステムでは、1次電子ビームのDOFが制限される。DOFを大きくするには、集束電子ビームのNA(すなわち、
図3のビームの半角β)を小さくしたものが使用され得る。ビームエネルギーまたは着陸エネルギーが低いシステムは、複数の欠点を有する。NAを小さくすると、1次電子間のクーロン相互作用による光学的なぼけが支配的になる。これは、電子ビームが細くなると電子密度が高くなるからである。光学系の像側に向かうほど、NAが小さくまたは光学倍率が大きくなるため、電子銃レンズの収差が大きくなる。したがってウェハの位置での複合的な分解能が低下する。この銃レンズの収差は、NAが小さい光学系では、銃レンズが静電レンズである場合はいっそう、対物レンズの収差よりも支配的になり得る。
【0018】
図5(a)および5(b)は、市販の電子ビームシステム(ビーム電圧10kV、着陸エネルギー9keV)のモンテカルロシミュレーションを行うことによって、その電子ビームシステムの利用がどのように制限されるかを示している。1次電子は、x方向とy方向に長い裾野を有して広く分布している。0.3×0.3μmの大きなメモリホールでさえ、含まれる電子はホールの上部に95%(
図5(a))、底部に97%(
図5(b))のみであり得(各図の「表示のパーセンテージ」)、ホールの上部がz=-3.5μm、底部がz=4.5μmであることから、アスペクト比はAR=0.3:8.0=1:27にすぎない。ホールのサイズを0.1×0.1μmに狭めると、アスペクト比はAR=1:81まで高くなるが、外側の電子の多くはメモリホールの上部の縁で停止するはずである。これらの外側の電子はBSEを生成し、メモリホールの底部からのBSE信号を汚染する。
【0019】
BSEの収量は通常、SEの収量よりもはるかに少ない。十分なSN比を得るために、1次電子ビームのビーム電流を増加させてもよい。ただし、電子間のクーロン相互作用はこのビーム電流の影響をかなり受けやすく、それによって電子分布の裾野が急速に広がり、メモリホールの底部からの通常の信号がさらに汚染され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0163502号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0179151号
【特許文献3】国際公開第2014/142745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、電子ビームを生成するための改善されたシステムおよび方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の実施形態で、一システムが提供される。上記システムは、電子ビームを生成する電子ビーム源と、上記電子ビームの光路上に配設されたビーム制限絞りと、上記電子ビームの光路上に配設された下部ウェーネルト電極と、上記電子ビームの光路上の、上記下部ウェーネルト電極と上記ビーム制限絞りの間に配設された上部ウェーネルト電極と、上記上部ウェーネルト電極の、上記下部ウェーネルト電極に面した表面に配設された環状検出器と、上記電子ビームの光路上の、上記上部ウェーネルト電極と上記ビーム制限絞りの間に配設された磁界集束レンズと、上記電子ビームの光路上の、上記上部ウェーネルト電極と上記集束レンズの間に配設された偏向器と、上記電子ビームの光路上の、上記偏向器と上記上部ウェーネルト電極の間に配設された磁界対物レンズコイルと、上記電子ビームの光路上に配設された接地管と、を含む。上記磁界集束レンズは、磁極片と集束レンズコイルとを含む。上記磁界対物レンズコイルは、上記接地管の周囲に配設される。
【0023】
上記システムは、上記電子ビームの光路上の、上記集束レンズと上記ビーム制限絞りの間に配設された絞りを備え得る。
【0024】
上記電子ビーム源は、半径1μm未満の先端を含み得る。
【0025】
上記偏向器は磁界偏向器またはウィーンフィルタであり得る。一実施形態では、上記偏向器は磁界偏向器である。上記システムは、上部磁界偏向器および中間磁界偏向器をさらに備え得る。上記上部磁界偏向器は、上記電子ビームの光路上の、上記偏向器と上記磁界集束レンズの間に配設される。上記中間磁界偏向器は、上記電子ビームの光路上の、上記上部磁界偏向器と上記磁界偏向器の間に配設される。
【0026】
上記上部磁界偏向器は、上記電子ビームを上記中間磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記中間磁界偏向器は、上記電子ビームを上記上部磁界偏向器の偏向方向と反対の方向に、上記磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記磁界偏向器は、上記接地管へと、上記電子ビームを偏向させ上記光路に沿ってコリメートするように構成され得る。
【0027】
上記磁界偏向器、上記上部磁界偏向器、および上記中間磁界偏向器のそれぞれは、回転対称である8つの磁極片を有し得る。
【0028】
上記システムは、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間に配設されたサイド検出器を備え得る。上記サイド検出器は、少なくとも2次電子を収集するように構成され得る。
【0029】
上記システムは、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間に配設された電子ビームベンダをさらに備え得る。上記電子ビームベンダは、上記サイド検出器において後方散乱電子から2次電子を取り除くように構成され得る。
【0030】
第2の実施形態で、一方法が提供される。上記方法は、電子ビーム源で電子ビームを生成することを含む。上記電子ビームは、ビーム制限絞りを介して方向付けられる。上記電子ビームは、その光路に沿って上記ビーム制限絞りの下流に配設された磁界集束レンズによって方向付けられる。上記電子ビームは、その光路に沿って上記磁界集束レンズの下流に配設された偏向器によって方向付けられる。上記電子ビームは、対物レンズによって方向付けられ、上記対物レンズは接地管、上部ウェーネルト電極、および下部ウェーネルト電極を含む。上記電子ビームは、上記下部ウェーネルト電極からウェハの表面に向かって方向付けられる。ウェハからの後方散乱電子は、上記上部ウェーネルト電極の表面に配設された環状検出器において受け取られる。上記上部ウェーネルト電極の上記表面は上記下部ウェーネルト電極に面している。
【0031】
一例では、上記電子ビームは、ビーム電圧が50kV~100kVであり、50keV~100keVの着陸エネルギーを有する。
【0032】
上記磁界集束レンズは、小焦点深度モードおよび大焦点深度モードを有する上記電子ビームを形成するように構成され得る。開口数は、上記大焦点深度モードの方が上記小焦点深度モードよりも小さくなり得る。
【0033】
上記ウェハは3次元半導体構造を含み得る。
【0034】
一例では、上記電子ビームの焦点深度は最大20μmである。
【0035】
上記電子ビーム源は半径1μm未満の先端を含み得る。
【0036】
上記偏向器は磁界偏向器またはウィーンフィルタであり得る。一例では、上記偏向器は磁界偏向器である。上記方法はさらに、上記電子ビームを、その光路上に沿って上記偏向器と上記磁界集束レンズの間に配設された上部磁界偏向器および中間磁界偏向器を介して方向付けることを含み得る。
【0037】
上記上部磁界偏向器は、上記電子ビームを上記中間磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記中間磁界偏向器は、上記電子ビームを上記上部磁界偏向器の偏向方向と反対の方向に、上記磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記磁界偏向器は、上記接地管へと、上記電子ビームを偏向させ上記光路に沿ってコリメートするように構成され得る。
【0038】
上記方法は、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間に配設されたサイド検出器において2次電子を受け取ることを含み得る。
【0039】
上記方法は、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間で上記ウェハから戻ってきた電子を曲げ、それによって上記サイド検出器において後方散乱電子から2次電子を取り除くことを含み得る。
【0040】
本開示の性質および目的を十分に理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】例示的な3D NANDフラッシュメモリの概略図である。
【
図2】例示的な3D NANDフラッシュデバイスにおける積層されたビットおよびメモリホールのモデル図である。
【
図3】例示的なHARメモリホールにおける集束電子ビームのプロファイルのモデル図である。
【
図4】例示的なメモリホールの底部から材料を貫通し、その材料の上面から脱出するBSEの概略図である。
【
図5(a)】0.3×0.3μmのメモリホールの頂部(z=-3.5μm)における1次電子の分布図である。
【
図5(b)】0.3×0.3μmのメモリホールの底部(z=4.5μm)における1次電子の分布図である。
【
図6(a)】電子ビームシステムの第1の実施形態を示す図である。
【
図6(b)】
図6(a)の電子ビームシステムの第1の実施形態の光学系を示す図である。
【
図7(a)】0.1×0.1μmのメモリホールの頂部(z=-10μm)における1次電子の分布図である。
【
図7(b)】0.1×0.1μmのメモリホールの底部(z=10μm)における1次電子の分布図である。
【
図8】BSEを検出するためのシステムの第2の実施形態を示す図である。
【
図9】3つの磁界偏向器を備えた電子ビーム分離光学系の第3の実施形態を示す図である。
【
図10】
図9の第3の実施形態における8極磁界偏向器を示す図である。
【
図11】
図9の第3の実施形態の8極磁界偏向器における等磁位線を示す図である。
【
図12】低着陸エネルギーで使用するための
図9の第3の実施形態におけるSE/BSEの収集を示す図である。
【
図13】低着陸エネルギー利用におけるSE/BSEの光線追跡シミュレーションを示す図である。
【
図14】電子ビームベンダの一実施形態を示す図である。
【
図15】本開示による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
特許請求の範囲に記載の主題については、特定の実施形態に関して説明するが、本明細書に記載の利点および特徴の全てを提供するものではない実施形態を含むそれ以外の実施形態もまた、本開示の範囲に含まれる。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造、論理、プロセスステップ、および電子部品の変更を行うことができる。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することのみによって規定される。
【0043】
ナノテクノロジの2D平面プロセスに欠点が多くみられるようになるにつれて、チップのナノ加工3D立体プロセスの開発が進みつつある。3D NANDフラッシュ、3D DRAM、3Dロジックのようなチップデバイスの多くが、製造中に検査およびレビューを必要とし得るメモリホール、チャネルホール、ステアケースの段、およびディープトレンチを含むように構成されている。例えば、96層3D NANDフラッシュ用のウェハには、深さ数十ミクロンのメモリホールが数千億個存在する。
【0044】
本明細書で開示する各実施形態は、3Dチップデバイスの高AR構造(例えば、AR=1:100以上)のための数十ミクロンのDOFを提供することができる。これらの実施形態は、60kV電子ビームシステムで、20μmのDOFを提供することができる。これは、AR=1:200のウェハの検査およびレビューに適合する。これらの実施形態はまた、ウェハの表面を検査およびレビューするための高分解能のシステムを提供することもできる。この検査およびレビューでは、SEとBSEの像を同時に形成する。
【0045】
従来のシステムの欠点に対処するために、一電子ビームシステムが、高い分解能と、電子分布の短い裾野と、高AR電子デバイスを検査およびレビューするための大きなDOFを提供するように構成され得る。ビーム電圧(BV)が約50kVから100kVまで高められ得る。これは調整可能でもよい。この電圧によって、約50keV~100keVの電子着陸エネルギーが可能になり得る。この機械的設計は、高電圧(HV)のアーク放電を回避し得る。ビーム電圧と着陸エネルギーを一組与えると、ビーム電流が増加させられ得る。それによってBSEの生成量を増やし、スループットとSN比を高める。最大のビーム電流の選択が、メモリホールの頂部の縁と底部の縁の両方に衝突する外側の電子を、例えば全1次電子の2%未満に制限することによって行われ得る。
【0046】
図6(a)は、電子ビームシステム100の第1の実施形態を示している。
図6(b)は、
図6(a)の実施形態の光学系の概略図を示している。電子ビームシステム100では、磁界銃レンズが使用され得る。この磁界銃レンズの使用により、銃レンズの収差を低減することができる。したがって、NAが小さいまたはDOFが大きい場合に光学倍率が高くなっても、ウェハ側における銃レンズからのぼけの影響はほとんどない。また、磁界銃レンズを使用することによって、所望のビーム電流を選択する目的で高電圧電子ビームの焦点を合わせたり外したりすることも可能になり得る。
【0047】
電子ビームシステム100は、電子ビーム103を生成する電子ビーム源101を含む。電子ビーム103はウェハ110に向かって方向付けられる。ウェハ110はプラテン上に配置され得る。電子ビーム源101は、半径が1μm未満、例えば約0.3μmから1.0μm未満の先端を含み得る。電子ビーム源101はまた、引出器115、アノード116、銃磁界レンズコイル117、および銃磁界レンズ磁極片118を含み得る。これらの構成部品は、銃レンズ(GL)の一部であり得る。
【0048】
熱電界放出(TFE)電子源の先端の半径が小さいことにより(例えば、サブミクロン台前半)、高い輝度と、小さな仮想光源が得られ得る。光学倍率が高く(例えば、約1.0X)NAが小さい光学系では、仮想光源の大きさが分解能の低下に影響を与え得る。色収差は、高BVおよび高LEの光学系ではそれほど重要ではないかもしれないが、光源エネルギーの広がりは、TFE電子源の先端の半径が小さいことによって大きくなり得る。
【0049】
ビーム制限絞り(BLA)102が、電子ビーム103の光路上に配設される。ビーム制限絞り102は、特定の利用における最大のビーム電流を選択し得る。ビーム制限絞り102は、様々なビーム電流向けに約50μm~約100μmの直径または断面長を有する絞りを含み得る。
【0050】
絞り104が、電子ビーム103の光路上の、集束レンズ105とビーム制限絞り102の間に配設され得る。絞り104は、約10μm~約30μmの直径または断面長を有し得る。クロスオーバ(xo)の位置は、銃レンズの強度に基づいて調整可能であり得る。絞り104は、鏡筒絞りであり得る。
【0051】
磁界集束レンズ105が、電子ビーム103の光路上の、上部ウェーネルト電極107とビーム制限絞り102の間に配設される。例えば、磁界集束レンズ105は、電子ビーム103の光路上の、絞り104と偏向器106の間に配設され得る。磁界集束レンズ105は、磁極片111、集束レンズコイル112、およびシールド125を含み得る。
【0052】
磁界集束レンズ105を使用すると、最適なNAか、DOFを大きくする場合は小さなNAかを選択することができる。静電集束レンズでは、高エネルギー電子ビームを集束させるには強さが不十分な場合がある。というのは、アーク放電の問題を回避するために、集束電圧が制限され得るからである。磁界集束レンズ105は、ビームをそれ以上に集束させることができる。磁界集束レンズ105は、磁極片111およびコイル112を含む。
【0053】
偏向器106が、電子ビーム103の光路上の、上部ウェーネルト電極107と集束レンズ105の間に配設される。偏向器106は、磁界偏向器またはウィーンフィルタであり得る。
【0054】
対物レンズ(OL)119が含まれ得る。磁界対物レンズコイル113が、電子ビーム103の光路上の、偏向器106と上部ウェーネルト電極107の間に配設される。接地管114が、その周囲に磁界対物レンズコイル113が配設されるように、電子ビーム103の光路上に配設される。接地管114は、電子ビーム103に面し得る。したがって接地管114は、電子ビーム103と磁界対物レンズコイル113の間に存在する。
【0055】
対物レンズ119は、静電対物レンズと磁界対物レンズとを含む複合レンズである。対物レンズ119は、接地管114、上部ウェーネルト(UW)電極107、および下部ウェーネルト(LW)電極108を含む。上部ウェーネルト電極107および/または下部ウェーネルト電極108は、静電式であり得る。対物レンズ119は、対物レンズ磁極片120を飽和させることなくレンズ収差を最小限に抑える適当な作動距離を有し得る。一例では、上記作動距離は約1mm~3mmである。着陸エネルギーが低い場合は(例えば、約0.1~10keV)、約1mmの作動距離が使用され得る。LEが高い場合は(例えば、約30~60keV)、約3mmの作動距離が使用され得る。対物レンズ119はまた、磁極片120およびコイル113を含み得る。一例では、下側の磁極片は、下部ウェーネルト(LW)電極108として使用され得る。
【0056】
上部ウェーネルト電極107が、電子ビーム103の光路上の、下部ウェーネルト電極108とビーム制限絞り102の間に配置される。例えば、上部ウェーネルト電極107は、電子ビーム103の光路上の、偏向器106と下部ウェーネルト電極108の間に配設され得る。上部ウェーネルト電極107は、様々な利用に応じて、接地、負にフローティング、または正にフローティングされ得る。
【0057】
上部ウェーネルト電極107は、正電圧で動作し得る。これは、対物レンズの色収差を減少させるため、クーロン相互作用の効果を減少させるため、またはBSEの収集を助けるためである。上部ウェーネルト電極107の形状は、環状検出器109を収容するように構成され得る。環状検出器109は、BSEの収集効率を高めるために使用される。上部ウェーネルト電極107の中央の開口サイズは、約1mmであり得る(
図12に示されているように)。これにより、全てのSEおよび角度の小さいBSEが通過し、それらをサイド検出器123で収集することが可能になる。
【0058】
下部ウェーネルト電極108が、電子ビーム103の光路上に配設される。下部ウェーネルト電極108は、ウェハ110にウェハ層の様々な検査に適した引出電界を印加し得る。この引出電界は、約0V/mm~2000V/mmにし得る。低い引出電界(例えば、約0~500V/mm)は典型的には検査用であり、高い引出電界(例えば、約1000~2000V/mm)は典型的にはレビュー用である。
【0059】
環状の検出器109が、上部ウェーネルト電極107の、下部ウェーネルト電極108に面した表面に配設される。環状検出器109は、BSEを収集できる検出装置である。光軸を中心とした環状検出器109は、メモリホールの底部で生成され積層薄膜材料を貫通したBSEを収集することができる。光軸を中心とした環状検出器109(例えば、半導体検出器)は、上部ウェーネルト電極107の底部に埋め込まれてもよい。環状検出器109の作動領域はウェハ110に面することができ、その裏側は一般に、検出信号回路形成用に数百ボルト(例えば、約100~300V)にバイアスされ得る。
【0060】
電子ビーム源101の先端の半径は、サブミクロン台前半であり得る。引出器115の電圧は、光源の十分な輝度および角度強度(angular intensity)が得られるように、先端のバイアスよりも高く設定され得る。先端から放出された電子は、アノード116によって約50kV~100kVに加速され、磁界集束レンズ105によって集束されて、ビーム制限絞り102と絞り104の間に電子ビームのクロスオーバを形成する。絞り104は、ウェハ110に実際に届くビーム電流を選択することができる。
図6(a)では、1次電子(PE)からSEおよび/またはBSEを分離するためのウィーンフィルタまたは磁界偏向器が配置され得る。絞り104は、複数の絞りを含んだ独立した絞りロッドであり得る。1つの絞りが損傷または汚染された場合、その損傷または汚染された絞りに置き換わるように、別の絞りが移動させられ得る。
【0061】
図6(b)には、異なる利用のための2つの結像モードが存在し得る。1つの結像モードは、DOFが比較的小さい高分解能(RES)モードである。もう1つの結像モードは、分解能が比較的低い大DOFモードである。高分解能モードでは、集束レンズ105が、最適なNA(例えば、
図6(b)のNA
2)を形成するように電子ビーム103を集束させる。この最適なNAで、ウェハでの電子ビームスポットサイズが最小となる。大DOFモードでは、集束レンズ105が、ビームをさらに集束させてより小さなNA(例えば、
図6(b)のNA
1)を形成する。このNAでDOFが最大となり、したがって、3D NAND、3D DRAM、ディープトレンチロジックなどの高ARデバイスの検査およびレビューの要件が満たされる。
【0062】
図7(a)および7(b)は、
図6(a)の電子光学鏡筒の、大DOFモードによるモンテカルロシミュレーションの結果を示している。ここでビームエネルギーは60kV、着陸エネルギーは55keVである。このシミュレーションでは、上部ウェーネルト電極は接地されている。
図7(a)および7(b)のシミュレーションでは、
図5(a)および5(b)と比較するために、ウェハでのビーム電流および引出電界が、
図5(a)および5(b)と同じに設定されている。
【0063】
図7(a)および7(b)では、1次電子が狭い範囲に分布しており、x方向およびy方向の裾野が短い。これは、高いビーム電圧を有する電子間では、クーロン相互作用が低減するためである。
図7(a)および7(b)に示されているように、メモリホールサイズが0.1×0.1μmと小さくても、含まれる電子はホールの上部(
図7(a))と底部(
図7(b))でそれぞれ98%を超え(各図の「表示のパーセンテージ」)、ホールの上部がz=-10μm、底部がz=10μmであることから、アスペクト比はAR=0.1:20=1:200と高い。この利用における20μmというDOFは大きい。それでもその分解能は、20~80%と12~88%の電流の量で測定した
図7(a)および7(b)のスポットサイズを
図5(a)および5(b)のものと比較すると、
図5(a)および5(b)の分解能よりも良好である。
【0064】
高い着陸エネルギー(例えば、約50keV~100keV)を有する電子がメモリホールの底部に衝突すると、同じ高エネルギーのBSEが生成され、そのBSEは、
図4に示されているように数百の3D NAND層の薄膜からなる積層材料を貫通して外へ出る。これらのBSEは、1次電子ビーム鏡筒内にあるBSE検出器によって収集され得る。
【0065】
図8は、BSEを検出するためのシステムの第2の実施形態である。BSEを検出するための、光軸を中心とした環状の検出器109は、少なくとも部分的に上部ウェーネルト電極107の内部に存在し得る。一例では、環状検出器109の表面がBSEに対して露出し得る。別の例では、環状検出器109は、完全に上部ウェーネルト電極107の内部に存在し、BSEに対して露出していないが、それでもBSE収集は可能である。
【0066】
上部ウェーネルト電極107は、フローティングされていても、接地されていてもよい。下部ウェーネルト電極108は、必要な引出電界をウェハに印加するために使用され得る。
図7(a)および7(b)と同じ条件を用いると、3D NANDのメモリホールの底部からのBSEの光線追跡を行うシミュレーションは、高い収集効率を示している。したがって、極角が約10度~60度のBSEが検出され得る。BSEの角度分布特性により、放出されるBSEの総量のほとんどは、約10~60度の角度に含まれている。
【0067】
図9は、3つの磁界偏向器を備えた電子ビーム分離光学系の第3の実施形態である。
図9の実施形態では、偏向器106は磁界偏向器(MD-3)である。3D NANDメモリなどの高ARデバイスを検査するために高エネルギーのBSEを収集して使用するだけならば、PE(1次電子)からBSEを分離するための従来のウィーンフィルタのような光学設計は必要ない。
【0068】
上記システムはまた、上部磁界偏向器121(MD-1)および中間磁界偏向器122(MD-2)を含み、これらは、電子ビーム103の光路上の、偏向器106と磁界集束レンズ105の間に配設される。上部磁界偏向器121は、電子ビーム103の光路上の、偏向器106と磁界集束レンズ105の間に配設される。中間磁界偏向器122は、電子ビーム103の光路上の、上部磁界偏向器121と磁界偏向器106の間に配設される。
【0069】
上部磁界偏向器121は、電子ビーム103を中間磁界偏向器121に向かって偏向させるように構成され得る。中間磁界偏向器は、電子ビーム103を上部磁界偏向器121の偏向方向と反対の方向に、磁界偏向器106に向かって偏向させるように構成され得る。上記磁界偏向器は、接地管114へと、電子ビーム103を偏向させ光路に沿ってコリメートするように構成される。
【0070】
図6の構成からなる実施形態の動作には、2つの光学的モードがあり得る。1つのモードは、HARのNANDフラッシュメモリを検査およびレビューするための、NAが小さい大DOFモードである。もう1つのモードは、ウェハ表面の物理的欠陥、またはウェハ表面下数十から数百ナノメートル内側における電位コントラスト欠陥の、検査およびレビューに最適なNAによる高分解能モードである。高分解能モードでは、全てのレンズ収差、および電子間のクーロン相互作用によって引き起こされる全てのぼけのバランスがとれている。ウェハ表面を検査するための着陸エネルギー(LE)は、数百から数千エレクトロンボルト内に低くすることが求められる。SEが、検査およびレビューのために収集される信号であり得る。SEは、放出エネルギーが低いため(例えば、数電子ボルト)、対物レンズによる磁場によって強く集束され得る。したがって、SEは、必ずしも環状検出器によって十分に収集されるとは限らず、その代わりにサイド検出器によって収集され得る。
【0071】
PEからSEを分離するには、従来通りウィーンフィルタが使用される。ただし、ウィーンフィルタは、光源エネルギーの広がりにより、送り色ぼけを発生させ得る。この送り色ぼけを除去するには、もう一つのウィーンフィルタが使用され得る。それによって、光源エネルギーの広がりによって引き起こされる軌道のずれを補償するのである。これにより、所望の動作が実現できるが、光学系の複雑さが増し得る。
【0072】
図9に示されているように、ウィーンフィルタ不使用の電子ビーム分離光学系を使用することができる。3つの磁界偏向器(上部磁界偏向器121、中間磁界偏向器122、および偏向器106)が、集束レンズ105と対物レンズ119の間に配置される。上部磁界偏向器121は電子ビーム103を光源から中間磁界偏向器122へと偏向させ、中間磁界偏向器122は電子ビーム103を偏向器106に向かって上記とは反対方向に偏向させ、偏向器106は電子ビーム103を偏向させて再び元に戻し、対物レンズ119へと光軸に沿ってコリメートする。上記の偏向角度は、サイド検出器123に関連付けられ得る。
図12または
図14では、xoz平面内にサイド検出器123があるので、1次電子はそれと反対方向に同じxoz平面内で偏向される。この1次電子のxozの偏向に対しては、磁界偏向器の磁束の場がyoz平面にあり得る。つまり、
図11による磁界偏向器の回転角度は固定である。
【0073】
上部磁界偏向器121、中間磁界偏向器122、および偏向器106はそれぞれ、同じ構造および/または構成を有し得る。これには、
図10および
図11に示されている構造および/または構成などがある。
図10は、磁界偏向器の断面図である。8つの磁極片が、8極偏向器として回転対称に配置されている。同じ巻き数のコイル巻(
図11の「N」)が各磁極片の周りに巻き付けられている。磁極片は図のように遮蔽される。コイルを流れる電流を適切に設定すると、偏向磁場の分布が広い領域でかなり均一になり得る。したがって、大きな角度の偏向によるコマぼけが最小限に抑えられる。
図11は、等磁位線を用いて、コイル電流がIx=1単位、Ixy=1/√2単位、およびIy=0単位として印加される均一な偏向磁界のシミュレーションを示している。
図9に示されているように、x軸の磁界の磁束が、y軸の1次電子ビームを偏向させる。
【0074】
着陸エネルギーが低くても、本明細書で開示する実施形態を使用すると、1次電子ビームの、像を形成させる分解能を高めることができる。というのは、NAが大きく最適であると(
図6(b)のNA
2)、電子間のクーロン相互作用が低減されるからである。総スポットサイズの半分は、対物レンズの収差によってもたらされ、もう半分はクーロン相互作用によってもたらされ得る。対物レンズの収差とクーロン相互作用の影響は、
図9に開示されているように上部ウェーネルト電極107を使用することによってさらに低減され得る。上部ウェーネルト電極107は、エネルギー増強管と見なされ得る。上部ウェーネルト電極107に印加される電圧は、ビーム電圧より高いものであり得る。それと同じ引出電界が下部ウェーネルト電極108を介してウェハ110に印加されているとすると、シミュレーションによって、上部ウェーネルト電極107の電圧がビーム電圧よりも高いことにより、対物レンズ119の球面収差係数および色収差係数がより小さくなることと、クーロン相互作用効果も同時に低くなることが示される。
【0075】
図9の構成の3つの磁界偏向器の実施形態では、光源エネルギーの広がりによりウィーンフィルタで通常発生する送り色ぼけをなくすことができる。ウィーンフィルタベースの光学系では、光源エネルギーの広がりによる軌道のずれを補償するために、もう1つ追加のウィーンフィルタが使用され得る。
図9の3つの磁界偏向器構成では、最終的な合計磁界偏向角はゼロであり、それによって、光源エネルギーの広がり、電子ノイズ、および/または熱ノイズの全てによる電子の軌道のずれの合計がゼロになる。
【0076】
図12は、低い着陸エネルギーで使用するための
図9の第3の実施形態におけるSE/BSEの収集を示している。
図13は、低い着陸エネルギーに対するSE/BSEの光線追跡シミュレーションを示している。サイド検出器123が、中間磁界偏向器122と磁界偏向器106の間に配設される。通常、偏向器106からのSEの偏向角θは約6°~12°であり、つまり、偏向器106からサイド検出器123までの距離は約100mm以上である。
【0077】
サイド検出器123は、少なくともSEを収集するように構成される。サイド検出器123は、中間磁界偏向器122と磁界偏向器106の間に示されているが、上部磁界偏向器121と中間磁界偏向器122の間にあってもよい。サイド検出器123はまた、上部磁界偏向器121の上流にあってもよい。サイド検出器123は、半導体検出器、高速シンチレータ検出器、または他のシステムであり得る。
【0078】
図12および13は、SE/BSEの収集を示している。PEとSEの移動方向が反対であるため、
図12に角度θで示されているSEの偏向器106の偏向角度は、PEと反対になる。サイド検出器123は、
図12の実施形態では、中間磁界偏向器122の下に配設されている。偏向器106の励起の選択は、所与のビーム電圧および着陸エネルギーに対して、SEを角度θで偏向し、サイド検出器123の中心に向かって案内することが可能になるように行われ得る。この偏向器106の励起を考慮して、上部磁界偏向器121および中間磁界偏向器122の励起が、光源から放出されたビームを対物レンズの光軸に対してコリメートするように調整され得る。
【0079】
数百から数千電子ボルトの低い着陸エネルギーで使用される高分解能では、低いエネルギーのBSEも、
図13に示されている方法で収集され得る。全てのSEは、低い放出エネルギー(数eV)を有し、
図13の中央のビームに示されているように、対物レンズの磁場によって即座に細いビームに集束される。SEは、偏向器106によって偏向され、サイド検出器123によって収集される。BSEは、それより高い放出エネルギー(着陸エネルギーと同じエネルギー)を有し、サイド検出器123および環状検出器109の両方によって収集され得る。極角(例えば、10度未満)が小さいBSEは、
図13のBSE-1の光線によって示されているように、集束され、加速されて上部ウェーネルト電極107の孔を通過し得る。BSE-1の電子もやはり、サイド検出器123によって収集されて、明視野像を形成し得る。極角が大きい(例えば、45度より大きい)BSEは、
図13のBSE-2の光線によって示されているように、環状検出器109によって収集されて、暗視野像を形成し得る。
【0080】
図14は、電子ビームベンダ124の一実施形態である。電子ビームベンダ124は、中間磁界偏向器122と磁界偏向器106の間、またはサイド検出器123に近接する他の位置に配設される。電子ビームベンダ124は、2つの円筒形の表面を有し、サイド検出器123においてBSEからSEを取り除くように構成される。したがって、電子ビームベンダ124は、BSEからSEを取り除くために、またはその逆のために使用され得る。
【0081】
SEまたはBSEは、サイド検出器123が配置されている場所に応じて曲げられ得る。例えば、
図14では、ビームは90度曲げられる(偏向器106の偏向により約10度、残りは電子ビームベンダ124により)。曲げ電圧は曲げ角度と無関係であり得るため、どの曲げ角度でも同じ電圧が使用され得る。曲げ電圧は、SE/BSEのエネルギーと電子ビームベンダ124の間隙に応じて決まり得る。この間隙が小さいほど、曲げ電圧は低くなる。上記間隙は、約8mm~16mmの範囲にあり得る。着陸エネルギーが低い、SEを収集する用途では、曲げ電圧は2~3kVであり得る。
【0082】
図12では、着陸エネルギーが低い利用のため、SEビームとBSE-1ビームとのエネルギーの差は、わずか数百から数千電子ボルトと狭い。SEとBSE-1の電子は、サイド検出器123で一緒に収集される可能性があり、それによって互いの結像信号が汚染される。
図14の電子ベンダ124を用いると、適切な曲げ電圧Vbによって、BSE-1ビームからSEビームが取り除かれ得る。SEビームは、エネルギーがより低いためベンダによって大きめに偏向され、BSE-1電子は出口絞りを通過してサイド検出器123に向かう。SEもまた、BSE-1ビームから選び出すことができる。その選択は、より低い曲げ電圧Vbを使用することによって、BSE-1ビームを小さめに偏向させて電子ビームベンダ124の円筒形の表面で停止させることによって行う。
【0083】
SEからBSEを取り除く(またはその逆)という利点に加えて、電子ビームベンダ124を備える実施形態は、電子ビームベンダ124の出口とサイド検出器123の間に空間を設けることができる。この空間にローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドフィルタを構成することによって、SEまたはBSEのエネルギーフィルタ処理をさらに実施することができる。この処理は、SEまたはBSEのいずれかをサイド検出器123に向かって方向付ける前に行われ、それによって、欠陥の特性の分析と学習サイクルをより慎重に行うことができるようになる。
【0084】
SE/BSEを90度に曲げる場合、サイド検出器123は、電子ビームベンダ124の出口から特定の距離だけ離して配置され得る。信号処理光学系が、電子ビームベンダ124の出口とサイド検出器123の間に配置され得る。信号処理光学系は、ローパスエネルギーフィルタ、ハイパスエネルギーフィルタ、バンドパスエネルギーフィルタ、デスキャン偏向器、またはより詳細なウェハ欠陥の特徴を評価するための他のシステムであってもよい。
図12のように電子ビームベンダ124がなければ、SE/BSEを大きな角度で偏向させることができず、こういった信号処理光学系を収容するようにサイド検出器123を配置することはできない。
【0085】
図14の電子ビームベンダ124は、静電式でも磁界式でもよい。電子の曲げが一平面内で行われる場合、それと垂直な平面に磁束が方向付けられ得る。
【0086】
図15は、方法200のフローチャートである。方法200は、本明細書で開示する電子ビームシステムの一実施形態を使用して実行され得る。201で電子ビームが生成され、202でその電子ビームがビーム制限絞りを介して方向付けられる。この電子ビームは、ビーム電圧が50kV~100kVであり得、50keV~100keVの着陸エネルギーを有し得る。ビームエネルギーまたは着陸エネルギーの選択は、利用に応じて決まる。ビームエネルギーは通常、着陸エネルギーと等しいかそれよりも大きい。薄膜の層数が多い深いメモリホールの場合は、高いBSEエネルギーが得られるように、より高い着陸エネルギーが使用され得る。これは、BSEが、厚く積層された薄膜を貫通して表面から脱出できるようにするためである。50keVは約96~124層用であり得る。100keVは256層超用であり得る。
【0087】
203で、電子ビームは、その光路に沿って上記ビーム制限絞りの下流に配設された磁界集束レンズを介して方向付けられる。204で、電子ビームは、その光路に沿って上記磁界集束レンズの下流に配設された偏向器を介して方向付けられる。上記偏向器は、磁界偏向器またはウィーンフィルタであり得る。205で、電子ビームは対物レンズを介して方向付けられる。上記対物レンズは、接地管、上部ウェーネルト電極、および下部ウェーネルト電極を含む。206で、電子ビームは、上記下部ウェーネルト電極からウェハの表面に向かって方向付けられる。電子ビームの焦点深度は最大20μmであり得る。上記ウェハは、3D NAND、3D DRAM、3Dステアケースの段、または3Dディープトレンチロジックなどの3次元半導体構造を含み得る。207で、ウェハからの後方散乱電子が、下部ウェーネルト電極に面する上部ウェーネルト電極の表面に配設された環状検出器で受け取られる。
【0088】
磁界集束レンズは、小焦点深度モードおよび大焦点深度モードを有する電子ビームを形成するように構成され得る。開口数は、大焦点深度モードの方が小焦点深度モードよりも小さい。
【0089】
一例では、上記偏向器は磁界偏向器である。電子ビームはさらに、その光路に沿って上記偏向器と上記磁界集束レンズの間に配設された上部磁界偏向器および中間磁界偏向器を介して方向付けられ得る。上記上部磁界偏向器は、電子ビームを上記中間磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記中間磁界偏向器は、電子ビームを上記上部磁界偏向器の偏向方向と反対の方向に、上記磁界偏向器に向かって偏向させるように構成され得る。上記磁界偏向器は、接地管へと、電子ビームを偏向させ光路に沿ってコリメートするように構成され得る。
【0090】
2次電子を、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間に配設されたサイド検出器で受け取ることができる。ウェハから戻ってきた電子を、上記中間磁界偏向器と上記磁界偏向器の間で曲げることができ、それによって上記サイド検出器において後方散乱電子から2次電子を取り除く。電子ビームを曲げることにより、SEからBSEを取り除くことができ(またはその逆)、それによって、有用な信号から電子的な汚染が除去され得る。
【0091】
本明細書に記載のシステムおよび方法の各実施形態は、深いメモリホールの検査およびレビューに使用され得る。例えば、60kVでの動作では、AR=1:200の用途のために、20μmのDOFが提供される。これは、従来の設計よりも5倍以上優れている。高いBVと高いLEを使用しており、従来の相対的にLEが低いBSEの収集と比較してBSEはそれほど集束しないため、環状の検出器を使用して、高いBSE収集効率を実現することができる。BSE信号が十分であるという利点により、使用するビーム電流を相対的に少なくすることができる。それによって、電子間のクーロン相互作用がさらに減り、DOFが大きく延びると同時に、電子分布の裾野が短くなる。
【0092】
ウィーンフィルタ不使用の電子ビームを、3つの磁界偏向器を備えた光学系で分離し得る。この光学系は、最終的な合計偏向角がゼロの場合に、光源エネルギーの広がりと電子および/または熱のノイズとによる送り色収差をなくすことができる。
【0093】
上部ウェーネルト電極が使用され得る。これは、ビームエネルギーを、ウェハに対して減速する前に増強(すなわち加速)するためである。それによって対物レンズの球面収差係数と色収差係数を低減する。ビームエネルギーの増強により、電子間のクーロン相互作用が同時に減少する。これにより、着陸エネルギーが低い用途での分解能が向上する。
【0094】
方法200は、3Dデバイス(例えば、3D NAND、3D DRAM、3Dステアケースの段、および3Dディープトレンチロジック)の検査およびレビューに使用され得る。
図6および
図8の実施形態は、AR=1:200の3Dデバイスの検査およびレビューのために、最大20ミクロンの大きなDOFを提供する。これは、次世代の3D NANDメモリの数百層の開発に使用され得る。
【0095】
数百から数千電子ボルトの低い着陸エネルギーでウェハ表面またはサブミクロン台前半の表面欠陥を検査およびレビューするために、本明細書で開示する実施形態は、
図9~11の3つの磁界偏向器を備えたウィーンフィルタ不使用のビーム分離光学系を使用することができ、エネルギー増強用の上部ウェーネルト電極が、対物レンズの球面および色収差係数を減少させることができる(
図12および13)。電子ビームベンダが、SEからBSEを、またはBSEからSEを取り除くことができる(
図14)。したがって、SEとBSEの高分解能の像形成および高い収集効率が同時に達成され得る。
【0096】
電子ビームに関して説明したが、本明細書で開示する実施形態はまた、イオンビームまたは粒子ビームと共に使用され得る。
【0097】
本開示を1つまたは複数の特定の実施形態に関して説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態が構成され得ることが理解されよう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその合理的な解釈のみによって限定されるとみなされる。
【国際調査報告】