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特表2023-523715光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法
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  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図1
  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図2
  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図3
  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図4
  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図5a
  • 特表-光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法 図5b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(54)【発明の名称】光硬化性色変化組成物およびそれを用いた膜表面への特徴形成方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/00 20060101AFI20230531BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20230531BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20230531BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B01D69/00
C08F20/10
C08F290/00
B01D63/10
B01D69/06
B01D69/12
B01D71/02
B01D71/40
B01D71/68
B01D63/00 510
B01D69/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563925
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021025334
(87)【国際公開番号】W WO2021216265
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/013,185
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ジン、 シュファ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、 ジェシー ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 チー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 チョンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ワカマツ、 トモヨ
【テーマコード(参考)】
4D006
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA14
4D006HA61
4D006MA03
4D006MA40
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC07X
4D006MC37X
4D006MC63
4D006NA54
4D006PA01
4D006PC11
4D006PC14
4J100AL08P
4J100AL66P
4J100BA02P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100DA61
4J100FA03
4J100FA27
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA15
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD071
4J127BD141
4J127BD221
4J127BD471
4J127BG031
4J127BG03Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB281
4J127CC131
4J127EA12
4J127FA00
4J127FA08
4J127FA14
4J127FA15
(57)【要約】
硬化中に色変化を有する光硬化性組成物、ならびに、そのような組成物の調製方法および使用方法。より詳細には、本発明は、硬化中に色変化を有し、膜表面の一部、特に膜フィルタなどの浸透および逆浸透用途に用いられる膜上に、地形的特徴、例えばスペーサ特徴、および/または折り目保護コーティングを形成するのに有用な光硬化性組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜であって、
膜上の表面;および
膜表面の少なくとも一部に配置された光硬化性色変化組成物であって、
a.アクリレートオリゴマー;
b.希釈剤
c.高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤を含む硬化系;
d.任意に、フィラー;および
e.任意に、1つ以上の添加剤
を含み、硬化中に色変化を示す、光硬化性色変化組成物
を含む、ろ過膜。
【請求項2】
硬化後の組成物が黄色から橙色である、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項3】
組成物が硬化中に色変化を示し、UV光の非存在下で24時間保存すると退色し、退色した組成物は、その後の化学線へのばく露中に色変化する、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項4】
表面に配置された光硬化性色変化組成物が硬化している、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過膜。
【請求項5】
表面に配置された光硬化性色変化組成物が、複数のスペーサ、折り目保護コーティング、または複数のスペーサおよび折り目保護コーティングの両方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過膜。
【請求項6】
ろ過膜が、支持層の上に重ねられたろ過層を含む二層膜である、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過膜。
【請求項7】
ろ過膜がポリエーテルスルホン層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過膜。
【請求項8】
コア;
各ろ過膜が表面を有する、コアに取り付けられた複数のろ過膜;および
表面の少なくとも一部に配置された請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性色変化組成物
を含む、膜フィルタ。
【請求項9】
コア;
各ろ過膜が折り目領域を規定する表面を有する、コアに取り付けられた複数のろ過膜;および
折り目領域の少なくとも一部に配置された光硬化性色変化組成物であって、
a.アクリレートオリゴマー
b.希釈剤
c.高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤を含む硬化系;および
d.任意に、1つ以上の添加剤
を含み、
硬化中に色変化を示す、光硬化性色変化組成物
を含む、膜フィルタ。
【請求項10】
膜表面に地形的特徴を形成する方法であって、
膜表面を提供すること;
膜表面上にステンシルまたはスクリーンを提供することであって、ステンシルまたはスクリーンは、硬化性組成物を受け取るために膜表面を露出させる開口部を有する、こと;
光硬化性色変化組成物を提供することであって、組成物は、
a.アクリレートオリゴマー;
b.希釈剤;
c.高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤を含む硬化系;
d.任意に、フィラー;および
e.任意に、1つ以上の添加剤
を含み、
組成物は、硬化中に色変化を示す、こと;
硬化性組成物の1つ以上の層を、ステンシル開口部またはスクリーン開口部中、膜表面上に堆積させて、地形的特徴を形成することであって、開口部は、地形的特徴のおよその形状およびサイズを規定する、こと;
ステンシルまたはスクリーンを除去して、地形的特徴を膜上の所定の位置に残すこと;および、
硬化性組成物を化学線にばく露して、組成物を硬化させることを含み、
ここで、堆積ステップで堆積された硬化性組成物の単層は、約0.2~約2のアスペクト比(高さ/幅)を有する地形的特徴を生成する、方法。
【請求項11】
UV放射の非存在下で膜および硬化した特徴を保存することであって、硬化した特徴の色が保存中に変化する、こと、
膜および硬化した特徴を化学線にばく露することであって、硬化した特徴の色が変化する、こと;および
化学線へのばく露後の硬化した特徴の色によって、硬化した特徴の硬化度を評価すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ろ過膜上のポリマーベースの特徴の硬化を確認する方法であって、
表面を有する膜を提供すること;
光硬化性色変化組成物を提供することであって、組成物は、
アクリレートオリゴマー;
希釈剤;
高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤を含む硬化系;
任意に、フィラー;および
任意に、1つ以上の添加剤
を含む、こと、
膜表面の一部に組成物をコーティングすること;および
コーティングされた組成物を化学線にばく露して、コーティングされた組成物を硬化させ、硬化した特徴を形成することであって、組成物の色が硬化中に変化する、こと;および
硬化した組成物の硬化度を組成物の色によって評価すること
を含む、方法。
【請求項13】
膜フィルタにおける硬化系としての、高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤の使用。
【請求項14】
膜フィルタに光硬化性色変化組成物を提供する使用であって、光硬化性色変化組成物は、アクリレートオリゴマー;希釈剤;高分子チオキサントン誘導体光開始剤および芳香族第3級アミン共光開始剤を含む硬化系;任意に、フィラー;および、任意に、1つ以上の添加剤を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
本開示は、一般に、スパイラル巻き(spiral wound)ろ過アセンブリに使用される膜(membrane)の選択された領域をコーティングするために使用される光硬化性色変化材料に関する。より詳細には、本発明は、硬化中に可逆的な色変化を有し、膜表面の選択された領域、特には逆浸透用途のためのスパイラル巻きろ過アセンブリで使用される膜上に、スペーサ特徴および/または補強コーティングなどの地形的特徴(topographical features)を形成するために有用な光硬化性組成物に関する。
【0002】
関連技術の簡単な説明
硬化性組成物は、シーリング、接着剤、コーティングおよびポッティングの用途に広く使用されている。これらの用途において、ポリマー骨格およびポリマー官能基は、一般に、特定の最終使用用途およびそれが使用されることが意図されている環境に関連して選択される。
【0003】
一実施形態では、硬化性組成物は、膜表面上に間隔をあけたパターンで配置される。硬化すると、組成物は、隣接する膜を分離するスペーサを形成し、これにより水などの液体が隣接する膜の間を流れることができるようになる。膜上に形成された硬化性組成物のパターンは、より伝統的なメッシュ層セパレータに比べて利点があり、これは、特に、パターンにより、流れの妨害が減り、フィルタの破片の蓄積(一般にファウリングと呼ばれる)が減るためである。さらに、硬化組成物で形成されたスペーサは、膜の表面に直接配置されたとき、従来のメッシュスペーサと比較して、50%低い高さを有しうる。このような高さの低減は、従来のメッシュスペーサでは、エレメントの圧力損失だけでなくフィード圧も劇的に増加させるため、不可能である。印刷されたスペーサは、高さが低くなっても、フィード圧が著しく低下することはないと思われる。所定のエレメント直径に対して、印刷されたスペーサは、高さが低いことにより、従来のメッシュスペーサと比較して、より多くの膜をエレメント中に巻き込むことができるようになる。例えば、場合によっては、同じ8インチ径のエレメントで、従来のメッシュスペーサ構造の28葉に比べ、印刷されたスペーサでは追加の7葉、合計35葉を使用することができるようになる(すなわち、25%増)。また、場合により、直径4インチのエレメントで、典型的な7葉ではなく、3葉を追加して、合計10葉を使用することができる(すなわち、40%増)。
【0004】
印刷された硬化性組成物パターン、すなわち本明細書で地形的特徴またはスペーサと呼ばれるものを有する膜を商業的に製造することには多くの困難がある。地形的特徴は、覆われていない表面を通る最大限の流体の流れを可能にするための膜の表面領域の最小限の被覆範囲と均衡のとれた、隣接層からの十分な間隔をもたらすサイズおよび形状を有しなければならない。
【0005】
UVインクは、高いアスペクト比と高速硬化が可能であるが、1回のパスで印刷できる高さに限界がある。一般に、膜スペーサ用途に必要な高さを構築するためには、同じ領域上に硬化性組成物の堆積の多くのパスが必要であり、これは、印刷速度および最終製品の製造を劇的に遅くする。標準的な光硬化アクリル(LCA)、またはゲルLCAでさえ、低アスペクト比しか支持できないため、印刷高さを達成するために必要な要件を満たすことができない。ジェット印刷を使用する場合、硬化性組成物が膜に衝突する際の衝撃速度によって、さらにアスペクト比が低下する。ジェット印刷では印刷速度を2倍にすることができるが、アスペクト比は大きく損なわれる。
【0006】
グラビア印刷を用いたポリオレフィン(PO)ホットメルト組成物は、印刷膜の非常に速い生産速度を可能にするが、冷却による硬化速度が最も遅く、30秒以上かかることがある。そのため、移動する膜を保持し、冷却する間にパターンを損傷しないような広いスペースが必要となる。グラビア印刷に必要な高粘度で使用する場合、POホットメルトのアスペクト比は十分とは言えない。印刷高さは、この技術を用いて複数回の印刷はできないため、1回の印刷パスで可能な最大の印刷高さに制限される。そのため、印刷高さが制限されることによりアスペクト比が制限される。さらに、POホットメルトプロセスは、糸引きが発生しやすく、スタートアップ時間が長く、膜の廃棄が多く、この市場/用途では非常に高価である。このように、この市場では、POホットメルトプロセスは効率的なプロセスではない。
【0007】
膜表面上に多数の硬化したスペーサを印刷し、硬化させることの難しさを考えると、スペーサ印刷を迅速かつ容易に確認できることが望ましいであろう。硬化した組成物における硬化度を確認することがさらに望ましいであろう。
【0008】
別の実施形態では、膜葉が透過水管の位置で「折り目をつけられる(creased)」または「折り畳まれる(folded)」のが典型的であり、これは膜葉の弱点となる。このようなアセンブリの詳細は知られており、例えば、米国特許第4,842,736号および第7,303,675号に見出すことができ、これらの各々の内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0009】
接着剤は、折り畳み部分における膜に耐久性の改善をもたらし、使用中の漏れを防止する試みとして、折り畳まれた膜葉領域にコーティングとして使用されてきた。いくつかの用途において、膜アセンブリは、強塩素溶液または高温(70~85℃)および高pH(11.0~12.5)溶液で毎日洗浄を受ける。折り目保護に使用される接着剤は、これらの洗浄液および高温・高pH条件に対して耐性があり、割れたり膜材料から剥離したりすることなく機械的完全性を維持する必要がある。
【0010】
現在、折り目保護材料として2種類の接着剤が使用されている;1つは2成分型ポリウレタン接着剤であり、もう1つはアクリレート化学に基づく接着剤である。ポリウレタンは、良好な柔軟性と高pH/温度環境に対する耐性を有するが、長い硬化時間(8時間~数日)を要する。硬化時間が長いため、ポリウレタン系接着剤は、折り畳まれた膜パックの製造ではオフライン処理に限定される。UV硬化性アクリレート接着剤は、折り目保護材料として提案されている。いくつかのアクリレート接着剤は、この用途にはもろ過ぎる。さらに柔軟なアクリレート接着剤は、1)短時間のUVばく露ではタックフリー表面を達成できない、2)上記の要求される高温およびpH条件では、容易に、接着剤完全性を失い、接着力を失い、膜から剥離する。そのため、2成分型ポリウレタン接着剤も従来のアクリレート接着剤も、膜の折り目保護材料として最適ではない。
【0011】
重合度は、機械的強度、接着強度、非反応残渣、耐薬品性など、材料の生体適合性や移行性に大きな影響を及ぼす可能性のある硬化材料特性に関係するため、重合度を知ることは重要である。しかし、組成物の重合(硬化)度や固化度を非破壊で定量的に判断することは困難である。2成分型ポリウレタン接着剤も従来のアクリレート接着剤も、フィルタ上の硬化した接着剤の硬化度を迅速かつ容易に確認する方法はない。
【0012】
膜表面への塗布を可能にする光硬化性組成物およびそのような組成物を使用するプロセスが必要とされている。組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を有し、それにより、使用者が表面上の存在を迅速かつ容易に確認できることが望ましい。使用者が表面上の硬化した組成物の硬化度を迅速かつ容易に確認できることが好ましい。いくつかの実施形態では、光硬化性組成物は、一度塗布されると、硬化性組成物の体積が、膜表面への硬化性組成物の塗布におけるテンプレートの除去の間も、その寸法を実質的に維持できるレオロジー特性を有していることが好ましい。いくつかの実施形態では、迅速に硬化可能であり、また良好な柔軟性および高pH/温度環境に対する耐性を有する高性能な折り目保護接着剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
本開示の一態様は、光硬化性組成物(すなわち、十分な化学線にばく露されると硬化する組成物)、およびそのような組成物の調製方法および使用方法を提供する。該組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を示す。硬化した組成物の色は、硬化中および硬化後に変化するが、その後の化学線へのばく露によって再生(renewed)することができる。一態様において、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【0014】
本開示の別の態様は、膜表面の一部のみの上に塗布された色変化する光硬化性接着剤を有する膜を提供する。塗布された接着剤は、スペーサ、折り目保護、またはその両方を形成することができる。
【0015】
本開示の別の態様は、その上にスペーサのパターンを有する流体透過性膜を含む逆浸透フィルタを提供し、ここで、スペーサは、化学線にばく露されると色変化する光硬化性組成物から形成され、またスペーサは、ステンシル印刷またはスクリーン印刷によって形成される。これらの膜に使用されるいくつかの流体としては、水、乳製品、アルコール製品、飲料製品などが挙げられる。
【0016】
本開示の別の態様は、以下の第1の表面および対向する第2の表面を有する膜を提供するステップ;および、光硬化性組成物を第1および/または第2の膜表面の部分上に規定の形状および大きさで堆積させるステップを含む、その上に配置された硬化性組成物を有するろ過膜の製造方法を提供する。硬化した組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を示す。硬化した組成物の色は変化するが、その後の化学線へのばく露によって再生することができる。一態様では、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【0017】
本開示の別の態様は、膜表面上に地形的特徴を形成する方法を提供し、該方法は、膜表面を提供するステップ;膜表面上にステンシルまたはスクリーンを提供するステップであって、ステンシルまたはスクリーンは、硬化性組成物を受け取るための膜表面を露出する開口部を有する、ステップ;硬化性組成物の1つ以上の層を、ステンシル開口部またはスクリーン開口部中、かつ、膜表面上に堆積させて地形的特徴を形成するステップであって、開口部は地形的特徴のおよその形状および大きさを規定する、ステップ;ステンシルまたはスクリーンを除去して、地形的特徴を膜上の所定の位置に残すステップ;および、硬化性組成物を硬化させるステップであって、堆積ステップで堆積された硬化性組成物の単層は、約0.2~約2のアスペクト比(高さ/幅)を有する地形的特徴を生成する、ステップを含む。硬化した組成物は、硬化中に色変化を示す。一態様では、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。別の態様では、硬化した組成物の色は、およそ硬化前の色に戻るが、その後の化学線へのばく露によって再生することができる。
【0018】
本開示の別の態様は、膜表面上に地形的特徴を形成する方法を提供し、該方法は、膜表面を提供するステップ;膜表面上にステンシルまたはスクリーンを提供するステップであって、ステンシルまたはスクリーンは、硬化性組成物を受け取るための膜表面を露出する開口部を有するステップ;光硬化性組成物の1つ以上の層をステンシル開口部またはスクリーン開口部中、膜表面上に堆積させて地形的特徴を形成するステップであって、開口部は地形的特徴のおよその形状およびサイズを規定する、ステップ;および、ステンシルまたはスクリーンを除去して地形的特徴を膜上の所定の位置に残すステップを含む。堆積された光硬化性組成物は、ステンシルが除去される前または後のいずれかに、その組成物を硬化させるのに十分な化学線にばく露される。硬化した組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を示す。硬化した組成物の色は変化するが、その後の化学線へのばく露によって再生することができる。一態様では、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【0019】
本開示の別の態様は、色変化する光硬化性接着剤を膜の折り目領域に塗布する方法を提供する。
【0020】
本開示の別の態様は、第1の表面および対向する第2の表面を有する膜を提供するステップ;および、光硬化性組成物を規定の形状およびサイズで第1および/または第2の膜表面の部分に堆積させるステップを含む、その上に配置された硬化性組成物を有するろ過膜の製造方法を提供する。硬化した組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を示す。硬化した組成物の色は変化するが、その後の化学線へのばく露によって再生することができる。一態様では、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
いくつかの図において同様の要素には同様の番号を付している図面を参照する。
図1図1は、膜の模式的断面図である。
図2図2は、折り線に隣接して塗布された色変化光硬化性組成物を有する切断膜の略図である。
図3図3は、フィードスペーサの周りで折り畳まれた切断膜の略図である。
図4図4は、水の脱塩または汽水(brackish water)のろ過のための地形的特徴の典型的なパターンを示す図である。
図5a図5aおよび5bは、ステンシルと膜の配置を示し、膜表面上に、所望のサイズおよび形状を有する地形的特徴(三次元を示す)の形態の硬化性組成物の堆積のための開口を有し、ここで、該地形的特徴は、他の膜表面と重ねたときにスペーシング機能を果たすのに十分なものである。該特徴のアスペクト比(所望のスペーシング能力を提供する)を示す。図5aは、膜表面に重ねられたステンシルを示し、図5bは、ステンシルが地形的特徴を残して膜から除去された後、互いに分離されたステンシルと膜とを示す。
図5b図5aおよび5bは、ステンシルと膜の配置を示し、膜表面上に、所望のサイズおよび形状を有する地形的特徴(三次元を示す)の形態の硬化性組成物の堆積のための開口を有し、ここで、該地形的特徴は、他の膜表面と重ねたときにスペーシング機能を果たすのに十分なものである。該特徴のアスペクト比(所望のスペーシング能力を提供する)を示す。図5aは、膜表面に重ねられたステンシルを示し、図5bは、ステンシルが地形的特徴を残して膜から除去された後、互いに分離されたステンシルと膜とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の参照語を含む。
【0023】
本明細書において使用される場合、数値に関連して使用される「約(about)」または「およそ(approximately)」は、数値±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%以下を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、少なくとも1つは、1以上、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上を意味する。成分に関して、表示は成分の種類を意味し、分子の絶対数を意味するものではない。したがって、「少なくとも1つのポリマー」は、例えば、少なくとも1種類のポリマーを意味し、すなわち、1種類のポリマーまたは複数の異なるポリマーの混合物が使用されうることを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「からなる(comprised of)」は、「含む(including)」、「含む(includes)」、「含む(containing)」、または「含む(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない部材、要素または方法のステップを除外するものではない。
【0026】
量、濃度、寸法および他のパラメータが、範囲、好ましい範囲、上限値、下限値または好ましい上限値および上限値の形態で表される場合、得られた範囲が文脈で明確に言及されているかどうかにかかわらず、任意の上限値または好ましい値と任意の下限値または好ましい値とを組み合わせることによって得られうる範囲もまた、具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0027】
好ましいおよび好ましくは、特定の状況下で、特定の利点を与えうる本開示の実施形態を指すために、本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つ以上の好ましいまたは好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0028】
他に示されない限り、本明細書に記載の組成物に関連して引用される全てのパーセントは、全ての成分を有する最終組成物に関する重量パーセント(wt%)を意味する。
【0029】
本文中で示される分子量とは、特に規定しない限り、数平均分子量(Mn)を指す。分子量データは、特に規定しない限り、35℃でDIN 55672-1:2007-08に従ってポリスチレン標準に対して較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により得ることができる。重量平均分子量Mは、Mについて述べたように、GPCによって測定することができる。「多分散性指数」とは、与えられたポリマー試料における分子量の分布の指標を指す。多分散性指数は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによって算出される。
【0030】
アルキルとは、炭素原子と水素原子、例えば1~8個の炭素原子を含む一価の基を指し、アルカンの基であり、鎖状および分枝の構成が挙げられる。アルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および、2-エチルヘキシルが挙げられる。本発明において、このようなアルキル基は非置換であってもよいし、任意に置換されていてもよい。好ましい置換基としては、ハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシから選ばれる1以上の基が挙げられる。上に列挙した例示的な炭化水素基のハロゲン化誘導体は、特に、適切な置換アルキル基の例として言及されうる。好ましいアルキル基としては、1~6個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C-Cアルキル)-例えば1~4個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C-Cアルキル)が挙げられる。
【0031】
アルキレンとは、炭素原子、例えば1~20個の炭素原子を含む二価の基を指し、アルカンの基であり、鎖状および分枝状の有機基を含み、これらは非置換でも任意に置換されていてもよい。好ましいアルキレン基としては、1~12個の炭素原子を含む非置換のアルキレン基(C-C12アルキレン)-例えば1~6個の炭素原子を含む非置換のアルキレン基(C-Cアルキレン)または1~4個の炭素原子を含むアルキレン(C-Cアルキレン)-が挙げられる。
【0032】
アルケニル基とは、炭素原子、例えば2~8個の炭素原子と、少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族炭素基を指す。前述のアルキル基と同様に、アルケニル基は、鎖状でも分岐状でもよく、非置換でも任意に置換されていてもよい。C-Cアルケニル基の例としては、アリル;イソプレニル;2-ブテニル;および2-ヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
単独で、またはより大きな部分(「アラルキル基」のように)の一部として用いられるアリールまたは芳香族基とは、非置換のまたは任意に置換された単環式、二環式および三環式環系を意味し、ここで、単環式環系が芳香族であるか、または二環式および三環式環系の少なくとも1つが芳香族である。二環式および三環式環系としては、ベンゾ縮合2~3員炭素環が挙げられる。例示的なアリール基としては、フェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;および、アントラセニルが挙げられる。
【0034】
アリーレンは2価のアリール基であり、非置換でも任意に置換されていてもよい。
【0035】
アラルキルとは、アリール基で置換されたアルキル基を指す。アラルキル基の例は、ベンジルである。
【0036】
アクリレートとは、1価の-O-C(O)-C=C部分を指す。メタアクリレートとは、1価の-O-C(O)-C(CH3)=C部分を指す。(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを指す。
【0037】
アクリロイル(ACR)とは、-C(O)-C=C部分を指す。メタクリロイル(MCR)とは、-C(O)-C(CH3)=C部分を指す。(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクリロイルを指す。
【0038】
アルキンまたはアルキニルとは、鎖状炭素原子間に1つ以上の三重結合を含む炭化水素鎖または基を指す。アルキンは、直鎖炭化水素鎖または分枝炭化水素基でありうる。アルキンは環状でありうる。アルキンは、1~20個の炭素原子、有利には1~10個の炭素原子、より有利には1~6個の炭素原子を含みうる。アルキンは、共役した1つ以上の三重結合を含みうる。いくつかの実施形態では、アルキンは置換されていてよい。
【0039】
無水とは、適用される混合物または成分が、混合物または成分の重量を基準にして、0.1wt%未満の水を含むことを意味する。
【0040】
触媒量とは、反応物に対する触媒の準化学量論的量を意味する。
【0041】
シクロアルキルは、3~10個の炭素原子を有する飽和した、単環、二環または三環式炭化水素基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;およびノルボルナンが挙げられる。
【0042】
エステルとは、構造R-C(O)-O-R’を指し、ここでRおよびR’は、独立に選択された、ヘテロ原子を有するかまたは有しないヒドロカルビル基を指す。ヒドロカルビル基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0043】
エーテルとは、2個のアルキルまたはアリール基に連結された酸素原子を有する化合物を指す。
【0044】
ハロゲンまたはハライドとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子をいう。
【0045】
ヘテロ原子は、炭素または水素以外の原子、例えば、窒素、酸素、リンまたは硫黄である。「少なくとも1つのヘテロ原子によって中断された」という表現は、残基(residue)の主鎖が鎖のメンバーとして少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいることを意味する。
【0046】
ヒドロカルビルとは、炭素原子および水素原子を含む基をいう。ヒドロカルビルは、鎖状、分岐状、または環状の基でありうる。ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールでありうる。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルは、置換されている。
【0047】
オリゴマーとは、2~5000単位、有利には約5~約2000単位などの少数の繰り返しモノマー単位を指し、これらは重合して分子を形成している。オリゴマーは、ポリマーという用語の部分集合である。「ポリマー」とは、オリゴマーよりも鎖長および分子量が大きい重合分子を指す。本明細書で使用される場合、ポリマーはオリゴマーとポリマーの両方を含みうる。
【0048】
ポリエーテルとは、エーテル基を2つ以上有する化合物を指す。例示的なポリエーテルとしては、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキサイド、およびポリプロピレンオキサイドが挙げられる。
【0049】
重合条件とは、モノマーをポリマーに結合させるのに適した反応条件を意味する。
【0050】
室温とは、約25℃の温度を指す。
【0051】
置換されているとは、分子上の任意の可能な位置の原子を1つ以上の置換基で置き換えることをいう。有用な置換基は、開示された反応を著しく低下させない基である。例示的な置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、保護C-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、モノおよびジ置換されたアミノ基およびその保護誘導体を含むアミノ、カルバメート、ハロゲン、(メタ)アクリレート、エポキシ、オキセタン、ウレア、ウレタン、N、NCS、CN、NO、NX、OX、C(X、COOX、SX、Si(OX 3-i、アルキル、アルコキシ(式中、各Xおよび各Xは、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはハロゲンを含み、iは0~3の整数である。)が挙げられる。
【0052】
他に示されない限り、本明細書に記載の組成物に関連して引用される全てのパーセントとは、全ての成分を有する最終組成物に対する重量パーセント(wt%)を指す。
【0053】
一般に、特に明示しない限り、開示された材料およびプロセスは、本明細書に開示された任意の適切な成分、部分またはステップを含む、からなる、またはから本質的になるように、交互に組み立てられてもよい。開示された材料およびプロセスは、追加的に、または代替的に、先行技術の組成物において使用される、または本開示の機能および/または目的の達成にそうでなければ必要でない任意の成分、材料、成分、アジュバント、部分、種およびステップを欠くように、または実質的に含まないように組み立てられうる。
【0054】
本発明は、光硬化性組成物およびその調製方法、ならびにろ過膜上でのそのような組成物の使用に対する。硬化した組成物は、硬化中および硬化後に可逆的な色変化を示す。硬化した組成物の色は変化するが、その後の化学線へのばく露により再生することができる。いくつかの態様において、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【0055】
一実施形態は、本発明による膜表面上に地形的特徴を形成する方法を開示し、該方法は、膜表面を提供するステップ;膜表面上にステンシルまたはスクリーンを提供するステップであって、ステンシルまたはスクリーンは、硬化性組成物を受け取るために膜表面を露出する開口部を有する、ステップ;硬化性組成物の1つ以上の層をステンシル開口部またはスクリーン開口部中、かつ膜表面上に堆積させて地形的特徴を形成するステップであって、開口部は地形的特徴のおよその形状およびサイズを規定する、ステップ;ステンシルまたはスクリーンを除去して地形的特徴を膜上の所定の位置に残すステップ;および、硬化性組成物を硬化させるステップを含む。
【0056】
本発明による膜表面上に地形的特徴を形成する別の方法は、膜表面を提供するステップ;膜表面上にステンシルまたはスクリーンを提供するステップであって、ステンシルまたはスクリーンは硬化性組成物を受け取るために膜表面を露出する開口部を有する、ステップ;硬化性組成物の1つ以上の層を、ステンシル開口部またはスクリーン開口部中に、かつ膜表面上に堆積させて地形的特徴を形成するステップであって、開口部は地形的特徴のおよその形状およびサイズを規定する、ステップ;および、ステンシルまたはスクリーンを除去して地形的特徴を膜上の所定の位置に残すステップを含む。いくつかの態様において、硬化性組成物の粘度は、25℃、10秒-1で、10,000~500,000センチポイズ(cP)であり;および/またはチキソトロピック指数(TI)(1秒-1における粘度/10秒-1における粘度)は約-1~約10であり;かつ/または、硬化性組成物は硬化前に膜表面からステンシルを除去する間、特徴のおおよそのサイズおよび形状を実質的に維持するのに十分な地形的特徴のアスペクト比(高さ/幅)を提供する。
【0057】
本発明の地形的特徴の形成方法は、当技術分野で知られている高速生産印刷法を用いて実施することができる。好ましくは、本発明の方法は、ステンシル/スクリーンを介した直接印刷またはグラビア印刷法を用いる。
【0058】
図5aに示すように、膜(10)を、膜の表面の1つ(図示せず)上のステンシル(20)と重ね合わせる。ステンシルの開口部(30)に、硬化性組成物を充填して、スペーサ(40)などの地形的特徴を形成する。組成物は、膜の他方の面から硬化される。図5bに示すように、ステンシル(20)が膜(10)から除去されると、部分的に硬化した組成物は、化学線へのばく露によってさらに硬化されて、膜表面(50)上に地形的特徴(40)を形成する。
【0059】
膜表面に形成された地形的特徴は、重ねられた膜の層間に間隔を提供するのに適した物理的特性を有する。例えば、地形的特徴は、これらの地形的特徴を有する膜を用いる逆浸透膜エレメントの操作、洗浄、および寿命を最適化するために、スパイラル逆浸透ろ過膜の層間の適切な間隔を提供することができる。さらに、地形的特徴は、典型的には、平滑または平坦であり、操作中に膜の嵌合層を損傷する可能性のある鋭い縁を有しない。
【0060】
地形的特徴のアスペクト比は、0.50より大きくてもよいし、約0.70より大きくてもよい。アスペクト比の組み合わせは、本発明の浸透デバイスにおいて膜または他の表面の層間に所定の離間した構成を提供するためのパターンで使用されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「アスペクト比」は、地形的特徴の高さの地形的特徴の幅に対する比を意味する。
【0061】
膜上に一旦形成された地形的特徴の高さは、約0.001~約0.05インチ、例えば約0.01~約0.04インチであってよい。地形的特徴の高さは、地形的特徴の基部(膜表面上または地形的特徴と膜との間の界面)から、膜表面から垂直に最も離れている地形的特徴上の点までの距離である。
【0062】
地形的特徴の幅は、膜表面上の地形的特徴のフットプリントの最小寸法と定義され、ここで、フットプリントは、基板表面上の被覆の領域(area or region)である。
【0063】
地形的特徴のパターンは、十分な膜間隔を維持し、かつ、膜の効率的な動作を確実にするために十分な膜表面を露出させるのに十分なサイズおよび形状を有しうる。特に、地形的特徴によって覆われる膜の総表面積(すなわち、膜表面の単位面積当たりの地形的特徴の数によって乗じられる個々の地形的特徴のフットプリントの面積)は、膜表面の約20%を超えない(すなわち、膜表面の少なくとも約80%は露出したままである)。地形的特徴によって覆われる膜の総表面積は、約15%以下、例えば、約10%以下、または約6%以下、または約5%以下、または約3%以下、または約2%以下、または約1%以下である。
【0064】
地形的特徴のパターンは、約0.5m/分以上の速度で膜表面上に形成されてもよい。地形的特徴のパターンは、約1m/分以上の速度、または約2m/分以上の速度で膜表面に形成されてもよい。
【0065】
光硬化性組成物の単層を堆積させるだけで(例えば、UVインクの10~20層をコーティングおよび硬化させる必要があることとは対照的に)、アスペクト比および膜全体の効率に悪影響を与えることなく、所望の高さを達成することができるので、地形的特徴の印刷速度も最適化することができる。さらに、この単層の堆積は、膜の40インチ幅全体にわたって同時に実施することもできる。したがって、1枚の葉(leaf)を印刷する時間は、葉の長さ(同じく40インチ)を移動する直線速度である。従って、複数回のパスでX方向とY方向の両方に移動する必要はない。本質的に、所望の高さを達成するために、膜上で硬化または予備硬化する前に硬化性組成物の複数の層を堆積させる必要がない。このため、他の技術に比べてスピード面で著しい利点がある。例えば、UVインクは、1パスあたり最大0.001インチの高さを堆積させることができる。ウェットプリント法のプロセスではその10倍、すなわち1パスあたり0.010インチまで、プリキュア法のプロセスではその40倍、すなわち1パスあたり0.040インチまで堆積させることができる。また、これらのプロセスは、1回のパスで最大高さ未満まで堆積させることが可能で、地形的特徴のデザインの設計自由度が高い。
【0066】
地形的特徴が堆積される表面としては、任意の表面が挙げられるが、膜表面が最も好適である。本明細書で使用される場合、「膜(membrane)」とは、ある物質の通過を許容するが、他の物質の通過を阻止する選択的な障壁を意味する。膜は、フィルタ膜、すなわち、水などの液体担体から物質をろ過するための膜であってもよい。フィルタ膜としては、逆浸透膜、順浸透膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、およびナノろ過膜が挙げられる。地形的特徴は、膜の活性表面上、膜の非活性表面上、またはその両方に印刷することができる。
【0067】
光硬化性組成物は、ステンシルまたはスクリーンの開口部内に、および/または開口部を通して、膜表面上に堆積させて、組成物の単層を堆積させることによって地形的特徴を形成してもよい。光硬化性組成物は、ステンシルまたはスクリーンの開口部内に、および/または開口部を通して、膜表面上に堆積させて、組成物の複数の層を堆積させることによって地形的特徴を形成してもよい。地形的特徴は、膜の一方の表面(フィード側または透過側のいずれか)または両方の表面に堆積させることができる。
【0068】
ステンシルまたはスクリーンは、硬化性組成物がステンシルによって覆われた表面の部分上ににじみ出るのを防止し、また、表面を損傷したり堆積した硬化性組成物を乱したりすることなく表面からステンシルを取り外すことができるように、表面に対するステンシルの十分なシーリングを可能にする、任意の有用な材料で構成することができる。ステンシルまたはスクリーンは、スチール、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属、ポリマーコーティングされた金属、セラミックコーティングされた金属、金属布、複合材料、ポリエステルまたはフルオロポリマーなどのポリマー材料、またはポリマー布から構成することができる。
【0069】
ステンシル印刷法では、パターンがカットされた一枚の材料から作られるステンシルを使用する。ステンシルはフレームに取り付けられ、また、タイトネス、平坦さおよび弾性(spring)をもたらすためにメッシュでフレームに取り付けてもよい。メッシュは、例えば、ステンレススチール、ナイロン、プラスチック、カーボンファイバーなど、任意の適切な材料で構成することができる。ステンシルの厚みは、印刷される特徴の高さから、印刷中に一定のファクターで高さを減少させる(典型的には、約20%)、重力および物理的現象の影響を差し引いたものになる。また、パターンや開口部のサイズ(アパーチャ)により、最大厚のステンシルからどれだけの生成物を放出できるかが決まる。表面エネルギーの低い優れた表面を持つステンシルは、ステンシルからより高い放出量を提供することができる。ウェットプリント法では、ステンシル厚より約20%程度低い高さに制限される。しかし、ステンシルを金型として用いるプリキュア法では、生成物は、ステンシルの高さまで予備硬化される。したがって、硬化性組成物が完全に硬化していないため、また、ステンシルの低表面エネルギーのコーティングのため、ステンシルのアパーチャから特徴をはずすことができる。硬化性組成物が完全に硬化した後、特徴の高さはステンシルの高さと同じになる。
【0070】
スクリーン印刷法は、ステンレススチールメッシュまたはポリエステルもしくはナイロンスクリーンを使用し、その上にエマルションを塗布してスクリーンまたはメッシュの一部を覆い、硬化性組成物が堆積されるパターンを露出させる。印刷厚は、メッシュ厚、メッシュの開口領域、およびエマルションが構築された厚みに依存する。厚みは、スキージ圧およびデュロメータ、アタック角、速度、スナップオフ距離などのプリンタ変数にも影響される。スクリーン印刷材料の粘度は、用途の要求に応じて低粘度から高粘度まで変化しうる。
【0071】
本発明のステンシルまたはスクリーンパターンにおける開口部またはアパーチャは、地形的特徴に望まれる形状を生成するために必要な任意の形状または形状の組合せをとることができる。例えば、開口部は、円、楕円、円弧、正方形、長方形、菱形、五角形、六角形、星、シェブロン、またはそれらの任意の組み合わせの形状であってよい。このような開口部の形状は、開口部の形状に対応する断面を有し、本明細書に記載の高さおよびアスペクト比を有する三次元の地形的特徴を生成する。例えば、円形の開口部は、円筒形の地形的特徴を生成する。水の脱塩または汽水のろ過のための特徴のパターンの例示的な地形を図4に示す。ステンシルの深さは、地形的特徴の高さを決定し、所望のアスペクト比に従って所望の高さに選択される。例えば、高さは約0.005~約0.04インチ、望ましくは約0.010~約0.025インチ、より望ましくは約0.012~約0.015インチとすることができる。
【0072】
地形的特徴は、形成およびステンシルの除去後に、鋭い縁を実質的に有さないものでありうる。例えば、ステンシルの開口部の縁は、堆積した硬化性組成物が鋭い縁を有さないように、鋭い縁を有さないものでありうる。さらに、ステンシルまたはスクリーンを除去する際に、硬化性組成物は、ステンシルまたはスクリーンと共に引き上げられて、地形的特徴に鋭い縁を生じさせない。本質的に、硬化性組成物は、丸みを帯びたまたは平坦な表面を維持するのに十分な程度にはまり込む(slump)が、硬化性組成物は、アスペクト比を失う程にはまり込むことはない。さらに、ステンシルコーティングは、ステンシルまたはスクリーンを除去する際に硬化性組成物を引っ張らないように、十分に低い表面エネルギーを有するように選択される。したがって、地形的特徴は、典型的には平滑または平坦であり、操作中に膜の嵌合層を損傷する可能性のある鋭い縁を有さない。
【0073】
いくつかの態様における硬化性組成物は、本明細書に記載のチキソトロピック指数値および/またはアスペクト比を生成することができ、また、化学線硬化性であり、生産印刷法における使用に適している。硬化性組成物は、好ましくは、本明細書に記載され、当技術分野で知られている高速生産印刷法に適した特性を有する。例えば、硬化性組成物は、様々な膜適用要件を満たすために、速い硬化速度、望ましいレオロジー特性、優れた接着性、耐薬品性/耐温度性、および柔軟性/耐久性を提供することが望ましい。好ましい態様において、組成物の硬化した反応生成物は、地形的特徴の検査を可能にする色を有することになる。この色は、時間の経過とともに変化しうるが、その後の化学線へのばく露によって再生することができる。いくつかの態様において、硬化した組成物の色は、その組成物の硬化度を示す。
【0074】
本実施形態における硬化性組成物は、スクリーンを通してまたはステンシルプリンタに流入するためにずり減粘を可能にするが、スクリーンまたはステンシルを除去した後にその三次元印刷寸法、例えば高さ、幅および深さを維持して(したがってその全体形状を維持する)、本明細書に記載したアスペクト比を提供することができる、効果的にバランスのとれた最適化されたレオロジーを有するべきである。本質的に、本発明の硬化性組成物は、硬化前に、その物理的構造を維持するのに十分なチキソトロピーを示し、かつ、流れたり垂れたりすべきでない。さらに、剪断力が加えられると(例えば、ステンシルまたはスクリーンへの堆積中)、硬化性組成物の粘度は低くなり、これは、硬化性組成物がステンシルまたはスクリーンの開口部を通って移動/開口部に充填されるのを助ける。本明細書で使用される場合、「チキソトロピー」は、応力(例えば、混合または振盪)が加えられると物質の粘度が低くなり、そのような応力がない場合(例えば、静的条件下)には粘度がより高くなることを意味する。
【0075】
一般に、硬化性組成物は、ステンシル開口部内および膜表面上に堆積させることができ、一旦堆積させ静置させると、ステンシルの除去中および硬化中にその形状を維持することができるものであるべきである。
【0076】
地形的特徴の形成のためのいくつかの態様では、硬化性組成物は、1~約15、好ましくは約5~約10、より好ましくは約6~約8のチキソトロピック指数(TI)を有するべきである。TIは約2より大きい、約4より大きい、約6より大きい、約7より大きい、約8より大きい、約9より大きい、約10より大きい、または約11より大きいべきである。本明細書で使用される場合、「チキソトロピック指数」は、1秒-1の速度における硬化性組成物の粘度(センチポイズ単位)と10秒-1の速度における硬化性組成物の粘度(センチポイズ単位)との比(1秒-1における粘度/10秒-1における粘度)を意味する。
【0077】
地形的特徴の形成のためのいくつかの態様において、硬化性組成物は、25°および10秒-1の速度における粘度(センチポイズ単位)が約5,000~約500,000、好ましくは10,000~50,000であるべきである。粘度は、公知の方法、例えば、コーン&プレートレオメーター、パラレルプレートレオメーター、またはブルックフィールド粘度計などの回転粘度計を使用して測定することができる。
【0078】
硬化性組成物は、光硬化性、すなわち、可視光または紫外光(UV)などの化学線にばく露されたときに硬化するものでありうる。したがって、硬化性組成物は、可視またはUV光を発生する水銀アークランプまたはLEDなどの光源を使用して硬化させることができる。硬化性組成物は、膜の地形的特徴を有しない側を光線源にばく露することによって少なくとも部分的に硬化される。
【0079】
硬化性組成物は、ステンシルまたはスクリーンの除去の前または後に、完全に硬化させることができる。
【0080】
硬化性組成物はまた、ステンシルの除去の前に、予備硬化、すなわち、部分的に硬化させることができる。ここで、この部分的硬化は、地形的特徴を有しない膜の側を可視光源にばく露することによってもたらされる。ステンシルまたはスクリーンを除去した後、硬化性組成物は、次に、UVまたは可視光源を使用して完全に硬化させることができる。
【0081】
このプリキュア法において、硬化性組成物の粘度は、ステンシルまたはスクリーンの除去の前に増大して、ステンシルの除去の間に地形的特徴の形状を維持することを助ける。いくつかの実施態様において、この予備硬化は、硬化性組成物をゲル化させるか、または硬化性組成物を半固体状態に部分的に硬化させる。上述したように、ステンシルまたはスクリーンは、予備硬化中に膜に生じる限定的な接着を介して、ステンシルから硬化性組成物をはずすことができるようにする低表面エネルギーをもたらすコーティングされた金属から作製される。
【0082】
このプリキュア法は、必要な高さに達するために複数の層の堆積を必要とする代わりに、1ステップで所望の任意の高さ(すなわち、0.005~0.040インチ)を達成できるため、ウェットプリンティングよりも劇的に向上したアスペクト比を可能にする。
【0083】
別の実施形態では、硬化性組成物は、膜基材表面の一部上にコーティングされ、硬化して折り目保護材料を形成する。図を参照すると、ろ過用途を意図した1つの典型的な膜10は、概して長方形の形状を有し、図1に模式断面として示した一般構造を有する重層からなる複合薄膜シートである。膜10は、一般に、任意の薄く密な半透過性バリア層12;微多孔質基材14;および多孔質支持層16の2層または3層を含む。薄く密な半透過性バリア層12は、使用される場合、約0.02~0.20マイクロメートルの典型的な厚さを有する。半透過性バリア層12は、一般的にポリアミドフィルムであるが、必ずしもそうである必要はない。バリア層12は、約40~50マイクロメートルの典型的な厚さを有する微多孔質基材14に重なっている。微多孔質基材14は、通常、ポリスルホンフィルムで構成されるが、必ずしもそうであるとは限らない。微多孔質基材14は、約100~200マイクロメートルの典型的な厚さを有する多孔性支持層16に重なっている。支持層16は、一般に、ろ過された流体が容易に通過できるように構成および配置され、同時に、複合膜10の他の層に物理的な支持を提供する。多孔質支持層の一例は、ポリエステル不織布材料である。構造の材料およびその厚さなどは、膜10が使用されることが意図される正確な分離用途に応じて変化させることができる。存在する場合、半透過層12は、分離される化合物の正確な性質に応じて、それ自体でまたは中間微孔質基材14と組み合わせて、分離をもたらすための膜10の活性表面となり得る。例えば、膜10が水を精製するために使用されることが意図されている場合、膜10は水を通過させるが、塩などの汚染物質を通過させない。図2を参照すると、膜10は所望のサイズに切断される。切断された膜に折り線Aが設けられる。硬化性組成物26を混合し、折り線Aに隣接した膜10に塗布する。硬化性組成物26は、半透過層12表面、支持層16表面またはその両方において折り線Aに隣接して塗布することができる。硬化性組成物26の塗布は、確立された方法によって行うことができる。塗布された硬化性組成物26の混合物は、硬化を開始させるために、化学線にばく露される。硬化性組成物26が硬化した後、フィードスペーサ材料28を、切断膜10の表面、典型的には半透過層12表面上に配置することができる。1つの変形例では、フィードスペーサ材料28は使用されず、硬化性組成物26を用いて膜表面に印刷されたスペーサ(図示せず)に置き換えられる。
【0084】
図3を参照すると、切断膜10は、折り畳まれた膜の隣接する表面の間にフィードスペーサ材料28が配置された状態で、折り線Aに沿って折り畳まれる。硬化した組成物26は、折り線Aに沿って膜10を補強する。膜10、硬化した組成物26、フィードスペーサ28の組み合わせは、ろ過アセンブリに使用されるようなスパイラル巻きフィルタにおけるサブアセンブリとして使用される。
【0085】
光硬化性組成物は、典型的には、化学線硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマー;希釈剤;高分子チオキサントン光開始剤;アミン共開始剤;フィラー、および任意の添加剤を含む。
【0086】
(メタ)アクリレートオリゴマー
一実施形態では、(メタ)アクリレートオリゴマーの骨格は、様々な単官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、単官能C1-10アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよび単官能C1-10アルキル(メタ)アクリレートのコポリマーから形成される。使用される特に有用なモノマーとしては、エチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、およびそれらのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。有用なモノマーの追加の例としては、(メタ)アクリルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート)、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、ガンマ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2ーパーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、など;スチレン系モノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、アルファ-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩;含フッ素ビニルモノマー、例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなど;シリコン含有ビニルモノマー、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミドモノマー、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルウマレイミド フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなど;ニトリル含有ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;アミド含有ビニルモノマー、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなど;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニルなど;アルケン、例えば、エチレン、プロピレンなど;共役ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレンなど;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールが挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、それらの複数を共重合させてもよい。
【0087】
さらに、(メタ)アクリレートオリゴマーの骨格は、ポリウレタン、スチレン、ポリオレフィン、アクリルアミド、ナイロン、(メタ)アクリロニトリルおよび/または置換(メタ)アクリロニトリルの1つまたはセグメントまたは単位から形成されてもよく、またはこれらを含んでもよい。有用な(メタ)アクリレート官能化ウレタンとしては、テトラメチレングリコールウレタンアクリレートオリゴマーおよびプロピレングリコールウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。他の(メタ)アクリレート官能化ウレタンは、芳香族、脂肪族、またはシクロ脂肪族ジイソシアネートと反応させ、ヒドロキシアクリレートでキャップしたポリエーテルまたはポリエステルに基づくウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。いくつかの有用な例としては、二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー、例えば、イソホロンジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸とジエチレングリコールのポリエステル;トリエン-2,6-ジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたポリプロピレングリコール;4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸とジエチレングリコールのポリエステル;トリレン-2,4-ジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸、1,2-エタンジオール、および1,2-プロパンジオールのポリエステル;4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたヘキサン二酸、1,2-エタンジオール、および1,2-プロパンジオールのポリエステル;および、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で終端され、2-ヒドロキシエチルアクリレートでキャップされたポリテトラメチレングリコールエーテルが挙げられる。さらに他の(メタ)アクリレート官能化ウレタンは、単官能性ウレタンアクリレートオリゴマー、例えば、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で終結され、2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび1-ドコサノールでキャップされたポリプロピレンである。(メタ)アクリレート官能化ウレタンとしては、また、二官能性ウレタンメタクリレートオリゴマー、例えば、トルレン-2,4-ジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたポリテトラメチレングリコールエーテル;イソホロンジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたポリテトラメチレングリコールエーテル;4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)で終端され、2-ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたポリテトラメチレングリコールエーテル;および、トリレン-2,4-ジイソシアネートで終端され、2-ヒドロキシエチルメタクリレートでキャップされたポリプロピレングリコールが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーは、硬化したコーティングに増大した柔軟性を提供するとともに、硬化したコーティングに増大した耐薬品性、耐温度性および耐pH性を提供するため、他のオリゴマータイプよりも好ましい。
【0088】
(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、1000~100,000、より望ましくは2000~50,000であってよい。
【0089】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、当技術分野で知られている標準的な技法を用いて調製することができ、または適切な商業的供給源から入手することができる。調製技術としては、単一電子移動リビングラジカル重合(SET-LRP: Single Electron Transfer Living Radical Polymerization)を含む制御ラジカル重合プロセス、カップリングによる可逆的不活性化などの安定フリーラジカル重合(SFRP: stable free radical polymerization)によるもの、または交換移動(DT: degenerative transfer)によるものが挙げられる。重合が完了したら、方法は、得られたポリマーをさらに反応させて、ポリマーに官能性末端基を形成することを含んでもよい。ポリマー上に官能性末端を形成することは、例えば、エンドキャッピング反応または置換反応のいずれかを行うことによって行うことができる。
【0090】
希釈剤
硬化性組成物は、任意に、少なくとも1つの希釈剤または反応性希釈剤を含むことができる。有用な希釈剤は、単官能性および多官能性(メタ)アクリレートを含むことができる。有用な(メタ)アクリレートの例示的な例としては、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、ヘテロシクロアルキル(メタ)アクリレート、ヘテロアルキルメタクリレート、アルコキシポリエーテルモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0091】
(メタ)アクリレート上のアルキル基は、1~20個の炭素原子、望ましくは1~10個の炭素原子を有し、任意に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個の炭素原子、望ましくは1~10個の炭素原子を有する置換または非置換のシクロアルキル基、1~20個の炭素原子、望ましくは1~15個の炭素原子を有する置換または非置換のビシクロまたはトリシクロアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する、置換または非置換のアルキル基であってよい。
【0092】
(メタ)アクリレート上のアルケニル基は、2~20個の炭素原子、望ましくは2~10個の炭素原子を有し、任意に1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、2~10個の炭素原子を有するエポキシ基、ヒドロキシルなどから選ばれた少なくとも1つの置換基を有する、置換または非置換アルケニル基であってよい。
【0093】
(メタ)アクリレート上のヘテロシクロ基は、2~20個の炭素原子、望ましくは2~10個の炭素原子を有し、NおよびOから選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含み、任意に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、または2~10個の炭素原子を有するエポキシ基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する、置換または非置換のヘテロシクロ基であってよい。
【0094】
アルコキシポリエーテルモノ(メタ)アクリレートは、炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよく、ポリエーテルは1~10の繰り返し単位を有しうる。
【0095】
いくつかの例示的な(メタ)アクリレートモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、および、2-パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明の一態様において、(メタ)アクリレートモノマーは、ポリエチレングリコールジアクリレート、例えば、SR259(Sartomerからのポリエチレングリコール(200)ジアクリレート)である。いくつかの有用な多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、望ましくはトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノールA(メタ)アクリレート(「EBIPA」または「EBIPMA」)、およびテトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、シトロネリルアクリレートおよびシトロネリルメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(「HDDA」または「HDDMA」)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(「ETTA」)、トリエチレングリコールジアクリレートおよびトリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)が挙げられる。
【0096】
光開始剤および共開始剤
硬化性組成物は、光開始剤として少なくとも1つの高分子チオキサントン誘導体、および共光開始剤として少なくとも1つの芳香族第3級アミンを含む。
【0097】
高分子チオキサントン光開始剤は、十分な量の化学線にばく露されると、硬化性組成物の硬化を開始させ、誘導する。有用な高分子チオキサントン誘導体光開始剤としては、Rahnから入手可能なGenopolTX(下記式);
【0098】
【化1】

IGMより入手可能なOMNIPOLTX(下記式);
【0099】
【化2】

および、Lambsonから入手可能なSPEEDCURE 7010-Lが挙げられる。他の光開始剤は、米国特許出願第9,278,949、8,883,873、7,354,957および国際特許公開第WO2009060235に記載されており、これらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。光開始剤は、全組成物に対して約0.1重量%~約重量5%の量で用いることができる。より望ましくは、光開始剤は、全組成物の1.0重量%~約4重量%の量で存在する。
【0100】
UV照射に応答して硬化性組成物の硬化を開始し、および光開始剤と協働して硬化性組成物の硬化を誘導するために有用な共光開始剤としては、これらに限定されるものではないが、芳香族第3級アミン、例えば、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエートGenocure EPD、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、高分子アミノベンゾエート誘導体、例えば、Genopol AB-2、Omnipol ASA、アミンアクリレート、例えば、Genomer 5142、Genomer 5161、5271、6275および5695、Photomer 4250、4771、4775、4780、4967および5006が挙げられる。有用な共光開始剤の1つは、Rahnから入手可能なGenopol AB-2である。共光開始剤は、全組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で用いることができる。より望ましくは、光開始剤は、全組成物の1.0重量%~約4重量%の量で存在する。
【0101】
フィラー
硬化性組成物は、任意に、少なくとも1種類のフィラーを含むことができる。好適なフィラーは、有機または無機であることができる。いくつかの有用なフィラーとしては、例えば、リトポン、ケイ酸ジルコニウム、珪藻土、カルシウム粘土、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄の水酸化物などの水酸化物、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの炭酸塩、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、クロム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、鉄およびケイ素の金属酸化物などの金属酸化物が挙げられる。別の有用なフィラーは、シリカである。シリカはヒュームドシリカであってもよく、これは未処理のもの、例えばDegussaから入手可能なAEROSIL R 8200、またはアジュバントで処理したもの、例えばWacker-Chemieから入手可能なHDK2000などであってもよい。フィラーは、全組成物の約5.0重量%~約50重量%の量で用いることができる。より望ましくは、フィラーは、全組成物の15.0重量%~約40重量%の量で存在する。ポリマー粉末または繊維などの有機フィラーも使用することができる。異なるフィラーの組合せも有用である。
【0102】
添加剤
硬化性組成物は、任意に、1つ以上の添加剤を含むことができる。任意選択の添加剤としては、例えば、安定剤、阻害剤、酸素捕捉剤、染料、着色剤、顔料、接着促進剤、可塑剤、強靭化剤、補強剤、蛍光剤、湿潤剤、抗酸化剤、レオロジー改質剤、熱可塑性ポリマー、タッキファイヤー、希釈剤、反応希釈剤およびそれらの組合せが挙げられる。また、硬化性組成物は、これらの添加剤のいずれかまたは全てを含まないことも可能である。
【0103】
いくつかの実施形態において、光硬化性色変化組成物は、以下の範囲の1つ以上に含まれる配合を有する。
【0104】
【表1】
【0105】
いくつかの実施形態において、光硬化性色変化組成物は、以下の特性を有する。
【0106】
【表2】
【0107】
組成物は、化学線へのばく露によって硬化させると発色する。いくつかの実施形態では、硬化した組成物を化学線の非存在下で保存すると、色が変化し退色する。退色した硬化組成物をその後約405nmの化学線にばく露すると、元の硬化した色が再び現れる。この色の変化は再現性があるようである。
【0108】
硬化中の色変化は、硬化した組成物の硬化度を評価するために使用することができる。組成物をスペーサまたは折り目保護などの地形的特徴を形成するために使用する場合、形成された特徴の色変化により、製造者がその特徴の硬化度を迅速に確認することをできるようになる。典型的には、膜は、シートの製造後に保存され、加工業者に出荷されてろ過アセンブリに形成される。加工業者は、受け取った膜シートを化学線にばく露して、特徴の存在と硬化度を迅速に確認することができる。この能力は、硬化状態を評価するために高度かつ高価な試験レジメを必要とする従来の硬化性組成物に対する改善である。
【0109】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、一旦硬化すると、約80℃の温度で約12.5のpH範囲の水溶液中に24時間~14日間浸漬したときに膜表面から剥離、または完全性を失うべきではない。
【0110】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、硬化前に約0.5より大きいアスペクト比(高さ/幅)を有する地形的表面特徴を形成し維持することができるべきである。
【0111】
いくつかの実施形態では、その上に印刷された硬化性組成物スペーサのパターンを有する流体透過性膜を含む逆浸透フィルタが提供され、ここで、硬化性組成物スペーサは、10秒-1で、粘度が5,000~500,000センチポイズ(cP)、好ましくは10,000~50,000cPであり、かつ/または、チキソトロピック指数(TI)(1秒-1での粘度/10秒-1での粘度)が約1~約15である開示された光硬化性組成物から形成されており;かつ/または、1つ以上のスペーサ層は、約0.2~約2のアスペクト比(高さ/幅)を有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、印刷された硬化性組成物スペーサを有するろ過膜の製造方法が提供され、該方法は、第1の表面および対向する第2の表面を有する膜を提供するステップ;および第1および/または第2の膜表面上に色変化放射線硬化性組成物を堆積させて、規定の形状およびサイズを有するスペーサ特徴を形成するステップを含み、ここで、放射線硬化性組成物は、10秒-1における粘度が5,000~500,000センチポイズ(cP)であり;かつ/またはチキソトロピック指数(TI)(1秒-1における粘度/10秒-1における粘度)が約1~約15であり;かつ/または硬化性組成物のアスペクト比(高さ/幅)が約0.2~約2である。
【実施例
【0113】
実施例で使用した材料の一覧。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
試料調製:試料をポリエチレンフィルム上に置いた。材料は、50ミル(2.27mm)の厚さを有する試料を作製するために、50ミルの高さでドローダウンバーを使用してフィルム全体に広げた。
【0117】
試料の硬化:未硬化の50ミル試料を、以下の硬化光ユニットのうちの1つを使用して硬化させた:Loctite LED 405nmフラッド、Loctite LED 375nmフラッド、およびLoctite UV LOC 1000チャンバー(水銀アークランプ付き)。各光の試料硬化時間は30秒であった。硬化後、評価のために試料をポリエチレンフィルムから取り外した。
【0118】
各硬化ユニットの硬化光強度を以下に示す。LOCTITE LED 405nmフラッドの強度は、UV Vラジオメータを使用して測定した。LOCTITE LED 375nmフラッドの強度は、UV BAラジオメータを使用して測定した。LOCTITE UV LOC 1000チャンバーの強度は、UV Power Puck IIを使用して測定した。
【0119】
【表5】
【0120】
試験方法
後述する実施例では、以下の試験方法を用いた。
【0121】
粘度およびチキソトロピック指数
コーン・プレート型レオメーター(Anton Paar)を用いて、せん断速度1秒-1および10秒-1での粘度を測定した。チキソトロピック指数は、1秒-1および10秒-1における粘度の比として算出した。
【0122】
耐薬品性-粘着力損失
試料のうちの1つの硬化反応生成物で片方の表面を各々コーティングした膜試料を高pH水溶液に浸漬し、温度制御したオーブン内に置いた。コーティングした試料を観察した。接着剤の膜表面からの何らかの目に見える剥離、または硬化した接着剤の溶液中への溶出を、不合格と判定した。
【0123】
曲げ試験
曲げ接着性を、曲げ試験により試験した。この試験は、膜の片面または両面に接着剤組成物を塗布することを含む。使用した膜は、市販のもので、3インチX3インチの試料サイズに切断したものである。膜の表面には、約0.2~0.3mmの厚さで試料材料を塗布し、硬化させた。
【0124】
UV硬化は、膜の各面に、405nmの波長を有するUV光を0.844W/cmで10秒間、各面の合計エネルギー7.85J/cmで照射することにより試験した。硬化後、試料表面の粘着性を直ちに触感で試験した。コーティングされた膜を、1回めは、硬化したコーティングが曲げの内側になるように折り畳み、平らな開始位置に戻し、そして2回めは、硬化したコーティングが曲げの外側になるように折り畳む。試料は、硬化したコーティングの亀裂や膜からの剥離が観察されない場合、合格とみなした。
【0125】
ショアD硬度
ショアD硬度はASTM D2240に従って測定した。試験材料を2枚のPEフィルムの間に挟み、2枚のガラス板で被覆して1mm厚のシートを形成し、次いでガラス板の両面に強度1.5W/cmのLED光を用いて硬化させた。その後、硬化したシートを4片にカットし、積層してショアデュロメーターで測定した。
【0126】
色変化評価
試験材料を2枚のPEフィルムの間に挟み、2枚のガラス板で被覆して1mm厚のシートを形成し、ガラス板の上面から強度1.5W/cmのLED光を用いて硬化させた。硬化した試料を、1)目視の色観察、および2)L、a、b値での色調測定によって評価した。L、a、b値は、Datacolor Corporationから入手可能なDatacolor装置を用いて、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0127】
重合度
重合度(または硬化度)試験は、典型的にはATRアクセサリを使用してFTIRによって行う。IRスペクトルが得られたら、C=Oピークを内部標準として、C=Cピークの積分ピーク面積を用いて相対的硬化度を算出する。式は以下の通りである。

重合度(%)=(A0-A1)/A0×100

(式中、A0は未硬化試料のC=Cピークの面積とC=Oピークの面積の比、A1は硬化試料のスペクトルの同じ2つのピークの面積の比である。)
【0128】
比較例1 ホスフィンオキサイドを光開始剤として用いた光硬化性組成物
この例では、チオキサントン誘導体を含まない光硬化性アクリレート配合物を以下の表に示す。使用した可視光開始剤はホスフィンオキサイド系のOmnirad TPO-LおよびOmnirad 819である。
ホスフィンオキサイド系光開始剤を用いた光硬化性配合物
【0129】
【表6】
【0130】
組成物AおよびBを、3つの硬化光ユニットすべてを用いて30秒間硬化させる。色を外観により評価し、以下の表に記録した。
光硬化後の色変化
【0131】
【表7】
【0132】
ホスフィンオキサイド可視光開始剤を用いた組成物は,LED405nm、375nm、または水銀アークランプの光のいずれかに硬化露光した後に淡黄色になった。露光後、各試料を室温で24時間保存した。24時間経過後も淡黄色は維持されていた。さらにUV/可視光にばく露しても、それ以上の色変化は観察されなかった。
【0133】
例2
高分子チオキサントン光開始剤Genopol TX-2、ならびに、異なるアクリレートオリゴマーおよびモノマーを含む光硬化性組成物を、以下に示すように調製した。全ての量はwt%である。全ての組成物は、405nm LEDフラッドを用いて硬化させた。色を外観で評価し、記録した。
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】

試料1~10はいずれも硬化前は淡黄色~淡褐色であった。
【0136】
組成物1~10の全てを、405nm LEDフラッドを用いて硬化させた。色を外観により評価し、記録した。
【0137】
ウレタンアクリレートおよび高分子光開始剤Genopol TX-2を含む配合物1、4、5、および6は、硬化後(LED 405nm光)、橙色を呈する。
【0138】
非ウレタンアクリレートオリゴマーおよび高分子光開始剤Genopol TX-2を含む配合物2および3は、硬化後(LED 405nm光)、淡橙色または淡黄色を呈する。
【0139】
非ウレタン連結モノマーおよび高分子光開始剤Genopol TX-2を含む配合物8、9、および10は、硬化後(LED 405nm光)、淡橙色または淡黄色を呈する。
【0140】
上記の配合物のすべてにおいて、硬化材料を室温で24時間保存した後、色は驚くほど退色した。さらに驚くべきことに、硬化した試料を再び405nm光にばく露すると、色が再び現れる。
以下の表において、高分子アミン相乗剤Genopol AB-2を上記組成物の各々に添加した。
【0141】
【表10】
【0142】
【表11】

組成物1A~10Aの全てを405nm LEDフラッドで硬化させた。色は外観で評価し、記録した。
【0143】
硬化後の試料1A~10Aはいずれも淡黄色~淡橙色~橙色を呈していた。驚くべきことに、この色は、硬化物を室温で24時間保存した後、退色した。さらに驚くべきことに、硬化試料を再び405nmの光にばく露すると、この色は再び現れる。
【0144】
例3
高分子チオキサントン光開始剤Genopol TX-2、高分子アミン相乗剤Genopol AB-2、およびウレタンアクリレートオリゴマーおよび非ウレタン連結モノマーを含む光硬化性製剤を調製した。配合量はすべてwt%単位である。
【0145】
実施例11~14は組成物中にフィラーを有しないが、実施例15~18はシラン処理ヒュームシリカフィラーを含む。全ての組成物を硬化させ、異なる時間間隔で色を外観により評価し、記録した。
【0146】
【表12】
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
【表15】
【0150】
その結果、高分子光開始剤Genopol TX-2および高分子アミン相乗剤Genopol AB-2を含む配合物は全て、水銀アークランプまたは405nmのLEDランプもしくは375nmのLEDランプの下で硬化させた場合、橙色を呈することが示された。硬化した材料をUV光非存在下、室温で24時間保存すると、すべての試料で橙色が黄色に退色した。375nmのLEDランプおよび405nmのLEDランプで硬化させた試料では、硬化試料を2回めに405nmのLEDに露光すると橙色が再び現れた。水銀アークランプで硬化させた試料では、硬化試料を2回めにLED405nmの光に露光しても再び橙色は現れなかった。
【0151】
例4
異なる高分子チオキサントン系光開始剤を有する光硬化性アクリレート配合物を調製した。全ての量はwt%である。全ての組成物を、水銀アークランプおよび405nmLEDフラッドを用いて硬化させた。色を外観により評価し、記録した。
【0152】
【表16】
【0153】
驚くべきことに、Genopol TX-2高分子チオキサントン光開始剤を用いた試料16は黄色に硬化し、一方、比較試料C、DおよびEは黄色に硬化した。また、試料C、D、Eの黄色は硬化後に退色せず、硬化後にUV照射に露光しても変化しなかった。
【0154】
例5
いくつかの硬化した試料配合物の色を、L、a、b値を用いて評価した。各試料を405nmのLEDランプの下で20秒間硬化させた。L、a、b値を、硬化直後、および、硬化した試料を黄色光領域に置いた24時間後に再び、および、硬化した試料を405nmの光でLED光にさらに10秒間再露光した後に保存した後に再び読み取った。3つのサンプルのL、a、b値を以下にまとめた。
【0155】
【表17】
【0156】
硬化直後の試料16は、比較試料C、Fが硬化後それぞれ黄色および透明な外観であったのに比べ、橙色を呈した。各試料のL、a、b値は、視覚的に明らかな色に対応する。24時間後、硬化した試料16の材料は、橙色から淡橙色への著しい、視覚的に明らかな色の変化を示し、これはL、a、b値でも同様に示された。405nmのLEDランプに試料16を露光した後、色は視覚的に淡橙色から橙色に変化し、これはL、aおよびb値でも同様に示された。比較組成物CおよびFは、試験において、目視および計器のいずれにおいても、橙色の発色を示さなかった。
【0157】
例6
この例では、試料16の配合物を、LEDランプからの405nmの光に異なる時間露光した。色を露光の直後に視覚的および計器的に評価した。重合度も各露光後に測定した。
【0158】
【表18】
【0159】
これらの結果は、硬化後の目視による色観察および計器によるL、a、b値の両方が、硬化時間、二重結合転換率および硬化度を表すことを示している。露光量が増加するにつれて、二重結合変換率は増大し(試料の重合の増大を示す)、硬化した試料は、わずかな淡黄色から淡橙食および橙色への色変化を示す。この色変化は、重合の程度を表す。
【0160】
例7
高分子チオキサントン光開始剤を含む光硬化性アクリレート配合物を調製した。全ての量はwt%である。全ての組成物を、膜の各面で、LEDランプを用いて、405nm、0.844w/cm、10秒間、片面あたりの総エネルギー:7.85J/cmで硬化させた。
【0161】
【表19】
【0162】
【表20】
1 pH10.5の溶液に70℃で24時間浸漬した後に試験。
2 pH12.5の溶液に80℃で24時間浸漬した後に試験。
【0163】
ホスフィンオキサイド光開始剤を使用した比較試料GおよびHは、曲げ試験に不合格であり、膜の折り畳みコーティングは許容できなかった。高分子チオキサントン光重合開始剤およびアミン共開始剤を含む組成物19、20および21は、いずれも曲げ試験に合格し、膜折り畳みコーティングとして許容可能であった。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
【国際調査報告】