(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】高速印刷可能なカーボンインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/52 20140101AFI20230614BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20230614BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20230614BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C09D11/52
H01B1/24 A
H01B1/00 L
H01B5/14 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568851
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021060162
(87)【国際公開番号】W WO2021228507
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】オルデンゼイル,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ミューレン,インヘ
【テーマコード(参考)】
4J039
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AE06
4J039AE07
4J039AF02
4J039BA03
4J039BA04
4J039BC04
4J039BC07
4J039BC08
4J039BC16
4J039BC22
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA07
4J039EA24
4J039FA02
4J039GA03
4J039GA09
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA42
5G301DA53
5G301DA60
5G301DD02
5G301DE01
5G307GA02
5G307GB02
5G307GC02
(57)【要約】
本発明は、a)ニトロセルロース、塩素化ポリエステル、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリビニル、塩素化ポリアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される樹脂;b)グラファイトおよびカーボンブラックを含む導電性粒子、ここで、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は1:1~5:1である;ならびに、c)溶媒を含み、ここで、前記導電性粒子と前記樹脂との比率は0.20:1~4:1である、導電性組成物に関する。本発明の組成物は、フレキソ印刷およびロトグラビア印刷などの高速印刷技術において使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ニトロセルロース、塩素化ポリエステル、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリビニル、塩素化ポリアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される樹脂;
b)グラファイトおよびカーボンブラックを含む導電性粒子、ここで、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は1:1~5:1である;ならびに、
c)溶媒
を含み、ここで、前記導電性粒子と前記樹脂との比率は0.20:1~4:1である、導電性組成物。
【請求項2】
前記樹脂はニトロセルロースである、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記樹脂は、前記組成物の総重量の2~25重量%、好ましくは3~23%、より好ましくは4~21%で存在する、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
グラファイトは、1μm~75μm、好ましくは2μm~45μm、より好ましくは3μm~25μm、さらにより好ましくは3μm~10μmの粒子サイズD90、
および/または、
0.25m
2/g~25m
2/g、好ましくは4m
2/g~22m
2/g、より好ましくは7m
2/g~21m
2/gの比表面積
を有し、ここで、該粒子サイズはレーザー回折により測定され、比表面積はB.E.T窒素吸着により測定される、請求項1~3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
カーボンブラックは、70ml/100g~500ml/100g、好ましくは100ml/100g~300ml/100g、より好ましくは150ml/100g ~200ml/100gの吸油量、
および/または、
30m
2/g~1400m
2/g、好ましくは100m
2/g~700m
2/g、より好ましくは150m
2/g~350m
2/gの比表面積
を有し、ここで、該吸油量はASTM D2414により測定され、該比表面積はBETにより測定される、請求項1~4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
グラファイト:カーボンブラックの前記比率は、2:1~4:1であり、好ましくは該比率は3:1である、請求項1~5のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記導電性粒子は、該組成物の総重量の3~45重量%、好ましくは4~43%、より好ましくは4.75~41%で存在する、請求項1~6のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項8】
導電性粒子:樹脂の前記比率は、0.25:1~3:1である、請求項1~7のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項9】
溶媒は、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、水およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、溶媒は、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸n-プロピルおよびそれらの混合物から選択され、より好ましくは、イソプロピルアルコール、酢酸n-プロピルおよびそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項10】
溶媒は、組成物の総重量の40~92重量%、好ましくは45~91%、より好ましくは46~90%で存在する、請求項1~9のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項11】
組成物は、600~5000mPas、好ましくは650~3000mPas、より好ましくは700~2000mPasの粘度を有する、ここで、前記粘度は、Brookfield (DV-I prime)、スピンドル#2、20で、室温で測定される、請求項1~10のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の導電性組成物が、20~70重量%、好ましくは40~50重量%の範囲で希釈された、希釈導電性組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の導電性組成物を含む導電性フィルム。
【請求項14】
前記フィルムは1つまたはそれ以上の層を有し、該層は0.5μm~3μm、好ましくは0.75μm~2μm、より好ましくは1~1.5μmの厚さを有する、請求項13に記載の導電性フィルム。
【請求項15】
フレキソ印刷またはロトグラビア印刷における、請求項1~11のいずれかに記載の導電性組成物、または、請求項12に記載の希釈導電性組成物の、使用。
【請求項16】
スマートパーソナル衛生製品、加熱要素、圧力センサー、スマートブック、スマートラベル、およびシールディング用途における、請求項1~11のいずれかに記載の導電性組成物、または、請求項12または13に記載の導電性フィルムの、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷やロトグラビア印刷などの高速印刷技術に使用可能な導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の導電性インクは、例えばスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、およびディスペンスによって基材に塗布されてきた。これらの印刷方法は、比較的遅い印刷方法と見なされる。
【0003】
例えば、スクリーン印刷は伝統的な印刷方法であり、プリンテッドエレクトロニクス業界で多く使用されてきた。スクリーン印刷により、厚さが5~15ミクロンの範囲の固体層が得られ、これらの層は、多くの用途で電流を流すのに十分な導電性を備えている。スクリーン印刷の印刷速度は約3~20m/分である。
【0004】
これらの成熟した高速印刷技術は、例えばパッケージの作成など、グラフィック業界でも使用されている。典型的には、基材上に画像を得るために、着色インクの薄層が塗布される。この方法では、色は個別のドットとして適用されるが、肉眼では、これらの個別のドットは非常に良い色の画像を提供する。導電性用途の場合、安定した電流の流れを提供するためには乾燥したインクを接続する必要があるため、導電性インクを個別のドットとして適用することはできない。
【0005】
スマートおむつ、RFIDアンテナ、および医療用電極などの新しいスマート消費財に対する需要が高まっている。これらの新しいスマート消費財を大量生産できるようにするには、フレキソ印刷やロトグラビア印刷などの高速印刷技術が必要である。「高速印刷」という用語は、本明細書では、200m/分以上の速度を意味する。これらの新しいスマート消費財に使用されるインクには、一定の導電率が必要であり、高い導電率が必要なインクもあれば、低い導電率で十分なインクもある。要求の厳しい用途では、インクの導電性が高くなければならないため、導電性材料として銀が使用されるが、要求が低い用途では、より低い抵抗レベルで十分であるため、カーボンまたはグラファイトを導電性材料として使用することができる。しかし、全ての導電性インクが高速印刷プロセスに適しているわけではない。実際、現在入手可能な導電性インクのほとんどは、高速印刷プロセスには適していない。
【0006】
プリンテッドエレクトロニクス業界における最近の傾向の1つは、費用対効果の高い高速印刷方法を研究することである。現在入手可能なカーボンを含む導電性インクは、高速印刷には適していないことが判明した。現在のカーボンインクは主に、薄い層で印刷した場合に十分な導電性がなく、塗布後に乾燥したコーティングがあまりにも多くの溶媒を保持するために失敗する。もう1つの失敗は、高速で印刷すると現在のカーボンインクはその機能を失うことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、良好な技術的特性を維持しながら高速印刷法によって塗布でき、費用対効果の高い導電性インクが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)ニトロセルロース、塩素化ポリエステル、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリビニル、塩素化ポリアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される樹脂;b)グラファイトおよびカーボンブラックを含む導電性粒子、ここで、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は1:1~5:1である、ならびに、c)溶媒を含む導電性組成物に関し、ここで、前記導電性粒子と前記樹脂との比率は0.20:1~4:1である。
【0009】
本発明は、本発明の導電性組成物を含む導電性フィルムを包含する。
【0010】
本発明は、フレキソ印刷またはロトグラビア印刷における本発明の導電性組成物の使用に関する。
【0011】
本発明は、スマートパーソナル衛生製品、加熱要素、圧力センサー、スマートブック、スマートラベル、およびシールディング用途における、本発明の導電性組成物または導電性フィルムの使用を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1aおよび1bは、産業用プリンターでのフレキソ印刷の試行を示している。
【
図2】
図2は、実験例3のバックライトを用いるロトグラビア印刷後のドライコーティングの顕微鏡像を示している(25倍に拡大)。
【
図3】
図3は、実験例7のバックライトを用いるロトグラビア印刷後のドライコーティングの顕微鏡画像を示している(25倍に拡大)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明をより詳細に説明する。そのように記載された各態様は、反対の明示がない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈が別段の指示をしない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0015】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他の指示をしない限り、単数形および複数形の両方を含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含んでなる(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバー、要素、または方法ステップを排除するものではない。
【0017】
数値エンドポイントの記載には、記載されたエンドポイントだけでなく、それぞれの範囲内に含まれるすべての数値と分数が含まれる。
【0018】
本明細書で言及される全てのパーセンテージ、部、割合などは、そうでないことが記載されない限り、重量に基づく。
【0019】
量、濃度、または、その他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または、好ましい上限値と好ましい下限値の形式で表現されている場合、任意の上限または好ましい値と、任意の下限または好ましい値とを組み合わせて得られるあらゆる範囲が、該範囲が文脈上明確に言及されているかどうかを考慮することなく、具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0020】
本明細書で引用されるすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなるガイダンスにより、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
【0022】
出願人は、高速印刷法によって適用される導電性インクを調査した。特に、グラビア印刷機で塗布された導電性インクの層(さまざまな厚さ)のシート抵抗を調べたところ、Ohm/sq/25μmの低いシート抵抗が、薄層において、常に最小の抵抗を提供するわけではないことがわかった。これに関して、薄層とは1~2μmの範囲の厚さを有すると考えられる。さらなる実験では、樹脂と導電性粒子の理想的な組み合わせを選択することによって、低いシート抵抗を最適化できることがわかった。樹脂と導電性粒子の理想的な組み合わせのさらなる利点は、適切な粘度、優れたコストパフォーマンス、および薄層での優れた導電性を備えたインクを提供できることである。
【0023】
本発明は、a)ニトロセルロース、塩素化ポリエステル、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリビニル、塩素化ポリアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される樹脂;b)グラファイトおよびカーボンブラックを含む導電性粒子、ここで、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は1:1~5:1である;ならびにc)溶媒を含む、導電性組成物に関し、ここで、前記導電性粒子と前記樹脂との比率は0.20:1~4:1である。
【0024】
本発明の導電性組成物は、薄層で良好な導電性を提供するように最適化された、導電性粒子の組み合わせを有する。さらに、溶媒とレオロジーにより、該組成物を印刷し、(希釈後に)高速で乾燥させることができる。
【0025】
本発明の導電性組成物は樹脂を含む。本発明での使用に適した樹脂は、ニトロセルロース、塩素化ポリエステル、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリビニル、塩素化ポリアセテート、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、該樹脂はニトロセルロースである。
【0026】
塩素化ポリビニルという用語は、本明細書では、塩化ビニルポリマー(ホモポリマー)および/または2、3、4またはそれ以上のコモノマーを含む塩化ビニルコポリマーを意味する。
【0027】
塩素化ポリエステルという用語は、本明細書では、塩化ビニルと共重合可能なポリエステルオリゴマーとのコポリマーを意味する。
【0028】
塩素化ポリエーテルという用語は、本明細書では、塩化ビニルと共重合可能なポリエーテルオリゴマーとのコポリマーを意味する。
【0029】
塩素化ポリアセテートという用語は、本明細書では、塩化ビニルとビニルアセテートとのコポリマーを意味する。
【0030】
好ましくは、塩素化ポリビニルは、以下からなる群から選択される:塩化ビニルポリマー、塩化ビニルビニルアセテートコポリマー、塩化ビニルステアリン酸ビニルコポリマー、塩化ビニル1,2-ジクロロエテンコポリマー、塩化ビニル(メタ)アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニルメチル(メタ)アクリレートコポリマー、塩化ビニルブチル(メタ)アクリレートコポリマー、塩化ビニルジカルボン酸コポリマー、塩化ビニルフマル酸コポリマー、塩化ビニルマレイン酸コポリマー、塩化ビニルジブチルフマレートコポリマー、塩化ビニルジエチルマレエートコポリマー、塩化ビニル-ビニルアセテート-ジカルボン酸ターポリマー、塩化ビニル-ビニルアセテート-ビニルアルコールのターポリマー、ならびにそれらの混合物。
【0031】
好ましくは、塩素化ポリエステルは、塩化ビニルとポリエステルアクリレートオリゴマーのコポリマーから選択される。
【0032】
好ましくは、塩素化ポリエーテルは、塩化ビニルと、ジプロピレングリコールジアクリレートなどのポリエーテルアクリレートオリゴマーとのコポリマーから選択される。
【0033】
好ましくは、塩素化ポリアセテートは、塩化ビニルとビニルアセテートとのコポリマーである。
【0034】
選択された樹脂は溶媒を容易に放出するため、消費者の使用に適した組成物になる。さらに、これらの樹脂は低抵抗および高導電性を提供するため好ましい。一般に、これらの樹脂は導電性粒子を良好に分散させる。
【0035】
非常に好ましい一実施形態では、ニトロセルロースが樹脂として使用される。ニトロセルロースは、溶解性が良く、使用した溶媒を素早く放出する一方で、優れた導電性を提供するため、特に好ましい。
【0036】
別の非常に好ましい実施形態では、塩化ビニル-ビニルアセテート-ビニルアルコールターポリマーが樹脂として使用される。
【0037】
本発明で使用するのに適した市販の樹脂としては、これらに限定されないが、ShinEtsuのSolbin AおよびDowのNC-E560 IPA 30%が挙げられる。
【0038】
樹脂は、本発明の導電性組成物中に、該組成物の総重量の2~25重量%、好ましくは3~23%、より好ましくは4~21%の量で存在し得る。
【0039】
樹脂の量が25%を超える場合、組成物の粘度が上昇して、組成物がもはや高速印刷可能でなくなる可能性があり、一方、2%未満と、量が少なすぎる場合、コーティングが不十分になり、粘度が低くなり、樹脂と導電性粒子が沈降する可能性がある。
【0040】
本発明の導電性組成物は、グラファイトおよびカーボンブラックを含む導電性粒子を含み、ここで、前記グラファイトと前記カーボンブラックの比率は1:1~5:1である。
【0041】
出願人は、導電性粒子としてグラファイトとカーボンブラックの組み合わせを使用することにより、良好な結果が得られることを発見した。
【0042】
本発明での使用に適したグラファイトは、好ましくは1μm~75μm、より好ましくは2μm~45μm、より好ましくは3μm~25μm、さらにより好ましくは3μm~10μmの粒子サイズD90を有する。ここで、粒子サイズはレーザー回折によって測定される。この方法では、水に懸濁したグラファイトのサンプルを含むセルをレーザービームで照らし、生成された回折パターンをシステムによって収集し、Mieによって開発された光散乱を使用して分析する。粒子サイズ分布が計算され、90%の量で報告される。
【0043】
粒子サイズD90に加えて、または本発明での使用に適したグラファイトの別の特徴は、比表面積であり、好ましくは0.25m2/g~25m2/g、より好ましくは4m2/g~22m2/g、より好ましくは7m2/g~21m2/gの比表面積である、ここで、該比表面積は、B.E.T窒素吸着によって測定される。測定は、Brunauer-Emmet-Tellerアルゴリズムを用いて材料表面の窒素の吸脱着等温線を測定することによって行われ、一定量(精度0.01mg)の粉末がサンプルチューブに秤量される。その後、サンプルは、サンプルチューブ内の圧力の変化から一連の加熱と冷却を受け、異なるステップで吸着された窒素の量が計算される;このデータから比表面積が計算され、m2/gで報告される。
【0044】
好ましい実施形態において、グラファイトは、1μm~75μm、好ましくは2μm~45μm、より好ましくは3μm~25μm、さらにより好ましくは3μm~10μmの粒子サイズD90、および/または、0.25m2/g~25m2/g、好ましくは4m2/g~22m2/g、より好ましくは7m2/g~21m2/gの比表面積を有し、ここで、該粒子サイズはレーザー回折により測定され、該比表面積はB.E.T窒素吸着により測定される。
【0045】
グラファイトの好ましい比表面積および粒子サイズは、別個の特徴として、または組み合わせとして、薄層での低抵抗および良好な導電性、ならびに良好な印刷適性を提供する。
【0046】
一般に、グラファイトの粒子サイズが大きすぎると、比表面積が小さくなり、さらに、印刷プロセス中にセルから粒子を放出することが困難になる場合がある。一方、グラファイトの粒子サイズが小さすぎると、製造コストが高すぎる可能性があり、比表面積が大きくなり、粘度が高くなる可能性がある。高粘度は高速印刷には理想的ではなく、適用前に大量の希釈が必要になり、印刷層の導電率に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0047】
グラファイトの比表面積が0.25m2/gより低いと導電率が低下する可能性があり、比表面積が25m2/gより高いと組成物の粘度に問題が生じる可能性があり、さらにコスト効果の高い成分ではない。
【0048】
本発明に使用するのに適した市販のグラファイトとしては、これらに限定されないが、TIMCAL Graphite & CarbonからのTimrex SFG6が挙げられる。
【0049】
本発明で使用するのに適したカーボンブラックは、好ましくは70ml/100g~500ml/100g、より好ましくは100ml/100g~300ml/100g、より好ましくは150ml/100g~200ml/100gの給油量を有し、ここで、上記の給油量は、ASTM D2414に従い測定される。
【0050】
吸油量に加えて、または別の特徴として、本発明で使用するのに適したカーボンブラックは、好ましくは30m2/g~1400m2/g、より好ましくは100m2/g~700m2/g、より好ましくは150m2/g~350m2/gの比表面積を有し、ここで、該比表面積はBETにより測定される。該方法は、77Kでの窒素の吸着の記載に基づいている。Brunauer、EmmetおよびTeller(BET)により提案されたモデルに従って、単層容量を決定することができる。窒素分子の断面積、単層容量およびサンプル重量に基づいて、比表面積を計算することができる。
【0051】
好ましい実施形態において、カーボンブラックは、70ml/100g~500ml/100g、好ましくは100ml/100g~300ml/100g、より好ましくは150ml/100g ~200ml/100gの給油量、および/または、30m2/g~1400m2/g、好ましくは100m2/g~700m2/g、より好ましくは150m2/g~350m2/gの比表面積を有し、ここで、前記給油量はASTM D2414に従い測定され、前記比表面積は、BETにより測定される。
【0052】
好ましい比表面積および吸油量は、別々に、または組み合わせて、良好な印刷適性特性と薄層での低抵抗を提供する。
【0053】
カーボンブラックの吸油量が低すぎる場合、カーボンブラックの分岐が少ないことを意味し、そのため、薄層での接触点が少なくなり、導電性に悪影響を及ぼし、一方、カーボンブラックの吸油量が高すぎる場合(主に500を超える)、印刷プロセスで問題が発生する可能性がある。
【0054】
カーボンブラックの比表面積サイズが小さすぎる場合(主に30未満)、導電率が低下する可能性があり、カーボンブラックの比表面積が大きすぎる場合(主に1400を超える)、印刷プロセスが困難になる可能性がある。
【0055】
本発明で使用するのに適した市販のカーボンブラックとしては、これらに限定されないが、CabotからのVulcan XC72およびImerysからのEnsaco 250Gが挙げられる。
【0056】
本発明によれば、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は、1:1~5:1、好ましくは2:1~4:1、より好ましくは、前記グラファイトと前記カーボンブラックとの比率は3:1である。
【0057】
出願人は、これらのグラファイト:カーボンブラックの比率が、本発明による組成物に理想的な粘度および導電特性を提供することを見出した。グラファイトに対してカーボンブラックの濃度が高すぎると、印刷された層が厚くなり得ることがわかった。さらに、カーボンブラックの量が多すぎると、組成物の粘度が高くなりすぎて、組成物を高速印刷できなくなる可能性がある。
【0058】
導電性粒子は、本発明の導電性組成物中に、該組成物の総重量の3~45重量%、好ましくは4~43%、より好ましくは4.75~41%の量で存在し得る。
【0059】
導電性粒子の量が少なすぎる場合、主に3%未満である場合、該量は所望の導電性を提供しない可能性があり、一方、量が多すぎる場合、主に45%を超える場合、印刷プロセスで組成物を処理するのが困難になる可能性がある。
【0060】
本出願人は、前記導電性粒子と前記樹脂との比率が0.20:1~4:1、好ましくは0.25:1~3:1の比率である場合に、特に良好な特性が得られ、該組成物を高速印刷に使用できることを見出した。
【0061】
出願人は、導電性粒子と樹脂との該比率が良好な粘度と良好な導電特性を与えることを見出した。
【0062】
本発明の導電性組成物は溶媒を含む。組成物は、1種の溶媒または2つ以上の溶媒の混合物を含み得る。溶媒は比較的低い沸点、好ましくは119℃未満の沸点を有することが好ましく、より好ましくは、該沸点は80℃~105℃である。 比較的低い沸点を有する溶媒は、乾きが早く、速い印刷速度が可能となるため好ましい。
【0063】
好ましい実施形態では、溶媒は、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、水およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、溶媒は、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸n-プロピルおよびそれらの混合物から選択され、より好ましくは、イソプロピルアルコール、酢酸n-プロピルおよびそれらの混合物から選択される。
【0064】
これらの溶媒は、樹脂をよく溶解し、乾燥プロセス中に容易に放出されるので好ましい。
【0065】
本発明で使用するのに適した市販の溶媒としては、これらに限定されないが、Eastmanからの酢酸エチルおよびEastmanからの酢酸ブチルが挙げられる。
【0066】
溶媒は、本発明の導電性組成物中に、該組成物の総重量の40~92重量%、好ましくは45~91%、より好ましくは46~90%の量で存在してよい。
【0067】
溶媒の量が40%未満である場合、該組成物の粘度が高くなりすぎるため、組成物の印刷特性に悪影響を与える可能性があり、該量が高すぎる場合(90%より多い)、組成物の導電性に悪影響を与える可能性がある。
【0068】
本発明の導電性組成物は、ペブルミル法により製造されることが好ましい。ペブルミル法において、導電性粒子、樹脂および溶媒は、大型ミル中で、小石(pebble)により約15時間かけて粉砕される。
【0069】
本発明の一態様では、本発明の導電性組成物を含む導電性フィルムを形成できる。
【0070】
本発明に係る導電性フィルムは、1層以上の層を有し、各層の厚さは0.5μm~3μm、好ましくは0.75μm~2μm、より好ましくは1~1.5μmである。
【0071】
薄層は、費用対効果の観点から望ましいが、プロセスの観点からも望ましい。層が薄いということは、印刷プロセスで使用されるロールに蓄積する材料が少なくなることを意味し、このようにして印刷の品質が向上する。
【0072】
本発明の導電性組成物は、フレキソ印刷またはロトグラビア印刷などの高速印刷に使用することができる。
【0073】
フレキソ印刷では、インクが(インクで満たされた小さなセルを含む)金属シリンダーから、(スタンプのように画像を保持する)ポリマースリーブに転写され、続いて該スリーブがインク(スタンプ)を基材に転写する。このプロセスは高速であり、このプロセスを可能にするには、使用されたインクの粘度が低くなければならない。フレキソ印刷またはグラビア印刷でインクを塗布すると、約1ミクロンの範囲内の厚さを有する薄い乾燥層が得られる。
【0074】
本発明の導電性組成物は、200m/minまで、またはこれを超えるスピードで印刷することができる。
【0075】
本発明の導電性組成物は、600~5000mPas、好ましくは650~3000、より好ましくは700~2000mPasの粘度を好ましくは有し、ここで、前記粘度は、Brookfield(DV-I prime)、スピンドル#2、20で、室温で測定される。
【0076】
出願人は、この粘度範囲が本発明の導電性組成物を製造するために使用される製造プロセスにとって理想的であり、さらに、この粘度範囲が貯蔵中の組成物の沈降を防止することを見出した。
【0077】
フレキソ印刷またはロトグラビア印刷では、セルからの良好な放出を得るために、組成物の粘度を比較的低くする必要がある。したがって、好ましい一実施形態では、本発明による組成物は、適用前に希釈される。したがって、本発明は希釈された導電性組成物にも関し、ここでは、本発明の導電性組成物が20~70重量%、好ましくは40~50重量%の範囲で希釈されている。
【0078】
好ましい希釈範囲は約40~50重量%であり、これは100mPa.sの範囲の粘度をもたらす。低粘度にもかかわらず、本発明による希釈された組成物は、薄層において良好な導電性を提供する。
【0079】
希釈に使用するのに適した溶媒は、本発明による組成物に使用される溶媒である。非常に好ましい実施形態では、希釈に使用される溶媒は酢酸n-プロピルである。
【0080】
本発明による組成物は、高速で印刷されてもその機能を失わない。
【0081】
本発明は、本発明の導電性組成物または導電性フィルムの、スマートパーソナル衛生製品、加熱要素、圧力センサー、スマートブック、スマートラベル、およびシールディング用途における使用も包含する。
【0082】
スマートパーソナル衛生製品は、スマートおむつ/吸収性製品などである。
【実施例】
【0083】
【0084】
組成物の粘度は、約200mPa.sである。
【0085】
サンプルをバーコーターで基材に塗布し、空気中で乾燥させた。塗布前に、サンプルを固形分が23%になるまで希釈した。結果は表2にまとめられている。実験例1は、厚い緻密な層において最小の抵抗を与えた。
【0086】
【0087】
表1および2の実験例は、90μmのアプリケータによって塗布された。
続いて、コーティングを風乾し、層の厚さをミツトヨ デジタル厚さ計を使用して測定した。
フィルムを15分間静置し、10×1cmのトラックを分離し、このトラックの抵抗を測定した。抵抗測定は、デジタルKeithley電位計を使用して4点プローブで行った。
抵抗を測定した後、以下の式に従ってシート抵抗を計算した。
【数1】
R=オーム/スクエア/25μm単位のシート抵抗
R(tr)=オーム単位でのトラックの抵抗
H(tr)=μm単位でのコーティング厚
N(tr)=スクエア数
25=標準コーティング厚
【0088】
結果を表2に示す。実験例2は、最小の抵抗を与えた。厚さが薄い程、実験例2の処方は他のインクと比較して良好である。
【0089】
【0090】
図1aと1bは、産業用プリンターでのフレキソ印刷の試行を示している。実験例1および実験例2は共に、グラビアプルーファーを使用してPET上に同じ状況で印刷された。印刷後、50×2mm(=25スクエア)のトラックの抵抗が測定され、kOhm/sqが計算される。
【0091】
実験例2は最小の抵抗を与える(実験例1 6.3kOhm/sq、および、実験例2 2.0kOhm/sq)。
【0092】
以下の表4は別の組成物を例示する。
【0093】
【0094】
固形分が16%になるまでサンプルを希釈した。続いて、実験例3~7をグラビア印刷機で基材上に塗布し、空気中で乾燥させた。結果を表5にまとめる。
【0095】
【0096】
図2および3は、実験例3(
図2)および実験例7(
図3)のバックライトを用いたロトグラビア印刷後の乾燥コーティングの顕微鏡画像を示す(25倍拡大)。
【0097】
実験例3~5の粘度は約200mPa・sである。実験例7は高い粘度を有し、粘度が高いため、高速印刷には適さない。これは
図3に示され、形成されたフィルムは均一な層ではなく、ピンホールでいっぱいのフィルムであり、これは所望の特徴ではない。
【国際調査報告】