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特表2023-526591リモートプラズマ洗浄(RPC)方向流装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】リモートプラズマ洗浄(RPC)方向流装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569067
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021070577
(87)【国際公開番号】W WO2021237240
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,939
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャニッキー・マイケル・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー・ジェイムズ・フォレスト
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA04
4K030DA06
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030KA02
4K030KA12
4K030KA30
4K030KA45
(57)【要約】
【解決手段】様々な実施形態は、半導体および関連する分野において用いられる処理ツールの複数処理ステーションを同時に洗浄するための方向流装置を備えるリモートプラズマ洗浄システムを用いるための装置、システム、および方法を含む。一例では、マルチステーション処理チャンバにおいてリモートプラズマ洗浄(RPC)を実施するのに用いられる装置が開示され、この装置は、RPCリアクタと処理チャンバとの間に結合されたRPC方向流装置を備える。RPC方向流装置は、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を複数の処理ステーションのそれぞれの処理ステーションに方向付けるための、いくつかの傾斜ガス分流領域を含む。流入洗浄ガス分流ハブは、ラジカル種を受け取り、傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に少なくともその種を分配するためのものである。他の装置、システム、および方法も開示される。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル種を方向付けるための装置であって、
リモートプラズマ洗浄(RPC)リアクタとマルチステーション処理チャンバとの間に結合されるように構成されたRPC方向流装置であって、
複数の傾斜ガス分流領域であって、前記複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、前記RPCリアクタによって生成された少なくとも前記ラジカル種を、前記マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのそれぞれに方向付けるように構成され、前記複数の傾斜ガス分流領域の数は、前記複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい、複数の傾斜ガス分流領域と、
流入洗浄ガス分流ハブであって、前記RPCリアクタから少なくとも前記ラジカル種を受け取り、前記複数の傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に少なくとも前記ラジカル種を分配する、流入洗浄ガス分流ハブと、
を含むRPC方向流装置を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記RPC方向流装置は、4つの傾斜ガス分流領域を備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記RPC方向流装置は、8つの傾斜ガス分流領域を備える、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
前記RPC方向流装置の外周付近に形成された出口傾斜領域を備え、前記出口傾斜領域は、前記出口傾斜領域が形成された前記傾斜ガス分流領域よりも狭い、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
前記傾斜ガス分流領域の各々を分離する複数リブ付き壁と、
前記RPCリアクタによって生成された少なくとも前記ラジカル種を方向付けるために、前記傾斜ガス分流領域を分離する各複数リブ付き壁の間に位置する流路と、
を備える、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記流入洗浄ガス分流ハブは、実質的にドーム形状である、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記RPC方向流装置は、少なくとも前記ラジカル種を、前記マルチステーション処理チャンバ内の複数ガス分配シャワーヘッドの各々の上方に方向付けるように設置されている、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記RPC方向流装置は、少なくとも前記ラジカル種を、前記マルチステーション処理チャンバ内の複数ガス分配シャワーヘッドの各々とそれぞれの複数基板台座との間に方向付けるように設置されている、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
前記RPC方向流装置は、少なくとも前記ラジカル種を、前記マルチステーション処理チャンバ内の複数基板台座の各々の下方に方向付けるように設置されている、装置。
【請求項10】
流入ガス流を分配するための方向流装置であって、
複数の傾斜ガス分流領域であって、前記複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、前記流入ガス流をマルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのそれぞれに方向付けるように構成され、前記複数の傾斜ガス分流領域の数は、前記複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい、複数の傾斜ガス分流領域と、
流入ガス分流ハブであって、前記流入ガス流を受け取って実質的に均等に分流し、前記流入ガス流を前記複数の傾斜ガス分流領域の少なくとも各々に分配する、流入ガス分流ハブと、
を備える、方向流装置。
【請求項11】
請求項10に記載の方向流装置であって、
前記方向流装置は、4つの傾斜ガス分流領域を備える、方向流装置。
【請求項12】
請求項10に記載の方向流装置であって、
前記方向流装置は、8つの傾斜ガス分流領域を備える、方向流装置。
【請求項13】
請求項10に記載の方向流装置であって、
前記流入ガス分流ハブは、実質的にドーム形状である、方向流装置。
【請求項14】
リモートプラズマ洗浄(RPC)方向流装置であって、
複数の傾斜ガス分流領域であって、前記複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのそれぞれに方向付けるように構成されている、複数の傾斜ガス分流領域と、
前記複数の傾斜ガス分流領域の各々を分離する複数リブ付き壁であって、前記複数の傾斜ガス分流領域を分離する各複数リブ付き壁の間に位置する流路を有する、複数リブ付き壁と、
流入洗浄ガス分流ハブであって、前記RPCリアクタから少なくとも前記ラジカル種を受け取り、前記複数の傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に少なくとも前記ラジカル種を分配する、流入洗浄ガス分流ハブと、
を備える、RPC方向流装置。
【請求項15】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記複数の傾斜ガス分流領域の数は、前記複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい、RPC方向流装置。
【請求項16】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記流路の数は、前記複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい、RPC方向流装置。
【請求項17】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記流入洗浄ガス分流ハブは、実質的にドーム形状である、RPC方向流装置。
【請求項18】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記RPC方向流装置は、前記マルチステーション処理チャンバ内で、少なくとも前記ラジカル種を前記マルチステーション処理チャンバ内の複数ガス分配シャワーヘッドの各々の上方に方向付けるように設置されている、RPC方向流装置。
【請求項19】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記RPC方向流装置は、前記マルチステーション処理チャンバ内で、少なくとも前記ラジカル種を前記マルチステーション処理チャンバ内の複数ガス分配シャワーヘッドの各々とそれぞれの複数基板台座との間に方向付けるように設置されている、RPC方向流装置。
【請求項20】
請求項14に記載のRPC方向流装置であって、
前記RPC方向流装置は、前記マルチステーション処理チャンバ内で、少なくとも前記ラジカル種を前記マルチステーション処理チャンバ内の複数基板台座の各々の下方に方向付けるように設置されている、RPC方向流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本特許出願は、その開示の全てが参照により本明細書に援用される、2020年5月20日出願の「REMOTE-PLASMA CLEAN(RPC) DIRECTIONAL-FLOW DEVICE」と題する米国仮出願番号第63/027,939号に対する優先権を主張する。
開示の主題は、一般に、半導体分野および関連分野で使用される洗浄処理チャンバの分野に関する。より具体的には、開示の主題は、方向流装置を備えたリモートプラズマ洗浄システムを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で知られているように、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)および原子層蒸着(ALD)を含む様々な方法によって集積回路および関連デバイスを形成する際に、膜を蒸着するために様々な堆積プロセスが使用される。しかしながら、堆積プロセスの結果として、様々な材料(例えば、膜堆積)が、プロセスを受ける基板上に堆積されるだけでなく、堆積が生じる処理チャンバの内部表面上にも堆積される。その結果、堆積材料からの膜が処理チャンバの内面上に形成される。膜は、経時的に蓄積し続ける。さらに、膜は、処理チャンバを通って溶解、剥離、または他の方法で分散し、汚染を引き起こす可能性がある。したがって、蓄積した膜は、このような汚染を回避するために、当技術分野で知られている様々なプロセスによって処理チャンバから周期的に除去される。
【0003】
例えば、図1Aは、単一の処理チャンバ101の内部を洗浄するために使用される、従来技術のプラズマ直接洗浄システム100を示す。図1Aは、ガス分配シャワーヘッド103に接続されたガス入口ポート117を示す。ガス分配シャワーヘッド103の下には、膜堆積プロセスを経る基板(例えば、シリコン等の元素半導体を含むウエハ、化合物半導体を含むウエハ、または当技術分野において既知の他の種類の基板)を保持するように構成された基板台座105が存在する。基板台座105は、プロセスガスをポンプ(図示せず)に排気119するために開放できるゲート弁107に空圧的かつ機械的に結合されている。単一処理チャンバ101の様々な内面は、膜111Aでコーティングされる。
【0004】
直接洗浄プロセス中に、プラズマエッチング材料として酸素(O2)と混合されることが多い洗浄ガス(例えば、ヘキサフルオロエタン(C26、六フッ化炭素としても知られる)またはオクタフルオロプロパン(C38、ペルフルオロプロパンとしても知られる)などのフッ素含有化合物)が、ガス入口ポート117に注入される。単一処理チャンバ101内でプラズマ113を生成するために、高周波(RF)発生器109が使用される。フッ素原子は、プラズマ113内のフッ素含有化合物から容易に解離される。当技術分野で知られているように、フッ素原子は電気陰性度が高く、多くの種類の材料と高い反応性を有し、通常、処理チャンバ101から排気口119を通じてポンプによって除去されうる揮発性副生成物を形成する。
【0005】
図1Bは、図1Aによるプラズマ直接洗浄システム100を用いた、単一処理チャンバ101の内部への高圧洗浄の結果130を示す。膜の多くは、より薄いまたは非連続的な膜111Bに低減されたが、膜111Aの大部分は依然として残っている。従って、結果130は、処理チャンバ101が不完全に洗浄されていることを示す。
【0006】
図1Cは、図1Aによるプラズマ直接洗浄システム100を用いた、単一処理チャンバ101の内部への低圧洗浄の結果150を示す。高圧洗浄から残っている膜111Aの大部分は除去されたが、より薄いまたは非連続的な膜111Bは依然として残っている。よって、処理チャンバ101は、依然として完全には洗浄されていない。
【0007】
また、プラズマ直接洗浄システム100は、プラズマ生成イオンが処理チャンバ101の内面に連続的に衝突し、イオンによって関連ハードウェアに損傷を引き起こす可能性があるという、さらなる欠点を有する。加えて、図のように、プラズマ直接洗浄システム100は、単一処理チャンバ101内の周辺領域、またはリフトピン(図示せず)などのロボット部品の周囲やガス分配シャワーヘッド103内などの、アクセスが困難な領域を完全には洗浄しないことがある。さらに、プラズマ直接洗浄システム100は、半導体製造環境においてますます一般的になりつつあるマルチチャンバまたはマルチステーション処理ツール内に、首尾よく効率的に実装することがより困難になりうる。
【0008】
この欄に記載される情報は、以下の開示の主題の文脈を当業者に提示するために提供されるものであり、承認された先行技術とみなされるべきでない。
【発明の概要】
【0009】
様々な実施形態において、開示の主題は、ラジカル種を方向付けるための装置を説明する。この装置は、リモートプラズマ洗浄(RPC)リアクタとマルチステーション処理チャンバとの間に結合されるように構成されたRPC方向流装置を備える。RPC方向流装置は、複数の傾斜したガス分流領域を含む。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのうちの別の処理ステーションに導くように構成される。傾斜ガス分流領域の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。流入洗浄ガス分流ハブは、RPCリアクタから少なくともラジカル種を受け取り、少なくともラジカル種を複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれに実質的に均等に分配するように配置される。
【0010】
様々な実施形態では、開示の主題は、流入ガス流を分配するための方向流装置を説明する。方向流装置は、複数の傾斜ガス分流領域を含む。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、流入ガス流をマルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションの別の処理ステーションに向けるように配置されている。傾斜ガス分流領域の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。流入ガス分流ハブは、流入ガス流を受け取り、実質的に均等に分割し、流入ガス流を複数の傾斜ガス分流領域の少なくとも各々に分配するように配置されている。
【0011】
様々な実施形態において、開示の主題は、リモートプラズマ洗浄(RPC)方向流装置を含む。RPC方向流装置は、複数の傾斜したガス分流領域を含む。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのうちの別の処理ステーションに導くように構成される。複数リブ付き壁が、傾斜ガス分流領域の各々を分離する。複数リブ付き壁は、傾斜ガス分流領域を隔てる複数リブ付き壁の各々の間に位置する流路を有する。流入洗浄ガス分流ハブは、RPCリアクタから少なくともラジカル種を受け取り、少なくともラジカル種を複数の傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に分配するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】単一処理チャンバの内部を洗浄するために用いられる、先行技術のプラズマ直接洗浄システムを示す図。
【0013】
図1B図1Aによるプラズマ直接洗浄システムを用いた単一処理チャンバの内部への高圧洗浄の結果を示す図。
【0014】
図1C図1Aによるプラズマ直接洗浄システムを用いた単一処理チャンバの内部への低圧洗浄の結果を示す図。
【0015】
図2A】単一処理チャンバの内部を洗浄するために用いられる先行技術のリモートプラズマ洗浄(RPC)システムを示す図。
【0016】
図2B図2AによるRPCシステムを用いた単一処理チャンバの内部への結果を示す図。
【0017】
図3】先行技術のマルチステーション基板処理ツールを示す図。
【0018】
図4A図3のマルチステーション基板処理ツールの1つのステーションに適用されたときの先行技術のRPC入口流のベクトル場を示す、計算流体力学(CFD)法シミュレーションを示す図。
【0019】
図4B図3のマルチステーションの1つのステーションに適用されたときの先行技術のRPC入口流の流体流を示すCFD法シミュレーションを示す図。
【0020】
図5】開示の主題によるRPC方向流装置を用いたマルチステーション基板処理ツールの1つのステーションの断面図。
【0021】
図6A】開示の主題によるRPC方向流装置の様々な実施形態例を示す図。
図6B】開示の主題によるRPC方向流装置の様々な実施形態例を示す図。
図6C】開示の主題によるRPC方向流装置の様々な実施形態例を示す図。
【0022】
図7A】開示の主題による複数壁付きRPC方向流装置の様々な実施形態例を示す図。
図7B】開示の主題による複数壁付きRPC方向流装置の様々な実施形態例を示す図。
【0023】
図8A図7Aおよび図7Bの複数壁付きRPC方向流装置の物理的寸法例を示す図。
図8B図7Aおよび図7Bの複数壁付きRPC方向流装置の物理的寸法例を示す図。
【0024】
図9A】マルチステーション基板処理ツールの1つのステーションに適用されたときの開示の主題によるRPC方向流装置を用いたRPC入口流のベクトル場を示す、CFD法シミュレーションを示す図。
【0025】
図9B】マルチステーション基板処理ツールの1つのステーションに適用されたときの開示の主題によるRPC方向流装置を用いたRPC入口流の流体流を示す、CFD法シミュレーションを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明は、開示の主題の様々な態様を具現化する例示的な例、装置、および器具を含む。以下の記載では、説明の目的のために、本発明の主題の様々な実施形態の理解を提供するためにいくつかの具体的な詳細が記載される。しかしながら、開示の主題の様々な実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施されうることが当業者には明らかだろう。さらに、様々な記載の実施形態を分かりにくくしないように、周知の構造、材料、および技術は詳細には示されていない。
【0027】
以下に記載する様々な例示的な実施形態は、マルチステーション処理ツール内の各台座およびシャワーヘッドステーションに洗浄ガス流(または、より一般的には流入ガス流)を導くことによって、処理チャンバのより効率的な洗浄を提供することに焦点を当てている。開示の主題の実施形態は、例えば、再結合が三フッ化窒素(NF3)よりもはるかに激しい、様々な種類の洗浄化合物(例えば、酸素(O2))の再結合を低減または最小化もする。様々な実施形態は、また、スピンドルおよびインデクサアセンブリの加熱を低減または最小限に抑えるように機能することもできる。
【0028】
これまでに、処理チャンバの内部のために特定の種類のリモートプラズマ洗浄(RPC)システムが検討されてきたが、特定の状況においてこれらのRPCシステムを使用する実現可能性は限られている。例えば、後述するように、マルチチャンバまたはマルチステーションシステムは、先行技術の標準的なRPCシステムを効果的に使用することができない。それでもなお、当業者は、同時のRPC洗浄システムの簡易な検討の際に、開示の主題の様々な実施形態の重要性を認識するであろう。
【0029】
例えば、図2Aは、単一処理チャンバ101の内部を洗浄するために使用される先行技術のリモートプラズマ洗浄(RPC)システム200を示す。RPCシステム200は、RPCリアクタ205を含むようにも示されており、その中で、プラズマ201は原料ガス203とともに結合されうる。原料ガス(例えば、洗浄ガス)は、例えば、三フッ化窒素(NF3)、四フッ化炭素(CF4、テトラフルオロメタンとしても知られる)、六フッ化炭素(C26、ヘキサフルオロエタンとしても知られる)、オクタフルオロプロパン(C38、ペルフルオロプロパンとしても知られる)、および他のフッ素含有化合物を、アルゴン(Ar)および/または酸素(O2)と共に含むことができる。
【0030】
当技術分野で知られているように、1つまたは複数のラジカル種は、RPCリアクタ205内で生成され、RPCリアクタ205から単一処理チャンバ101に結合されたガス入口207を介して単一処理チャンバ101に入るように構成されてよい。ラジカル種を生成するために、RPCリアクタ205において任意の種類のプラズマ源を使用することができる。これは、容量結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、DCプラズマ、およびレーザ生成プラズマを含むが、これらに限定されない。容量結合プラズマの例は、高周波(RF)生成プラズマでありうる。高周波プラズマは、13.56MHz以上で動作するように構成することができる。そのようなRPCリアクタ205の例は、GAMMA(登録商標)ファミリー(米国94538カリフォルニア州フレモント、クッシングパークウェイ4650のLam Research(登録商標)によって製造)内の様々な製品を含むことができる。当技術分野で知られているRPCリアクタ205の別の例は、440kHzで動作させることができるASTRON(登録商標)ex反応ガス発生器(米国01810マサチューセッツ州アンドーバ、テックドライブ2のMKSインスツルメンツによって製造)である。加えて、AsTex(登録商標)(同様にMKSインスツルメンツ製)などのマイクロ波プラズマ発生器をRPC反応器205として使用することができる。マイクロ波プラズマは、2.45GHzの周波数で動作するように構成されうる。以下でより詳細に説明するように、選択されるリアクタの種類にかかわらず、開示の主題の様々な実施形態を使用することができる。様々な種類のRPCリアクタ205は、1つまたは複数の基板を同時に処理するために使用されるより大型の装置に機械的に結合されたサブユニットとして提供されうる。
【0031】
図2Bは、図2AによるRPCシステム200を使用した単一処理チャンバの内部に関する結果230を示している。結果は、ガス分配シャワーヘッド103および台座105の各々が、堆積材料(例えば、膜)を含まないか、または概ね含まないことを示す。従って、RPCプロセスは、単一処理チャンバ101の内部の実質的に完全な洗浄を提供する。しかしながら、これらの先行技術の装置の各々は、以下でより詳細に説明するように、単一処理チャンバのみで使用するために製造される。現在、ラジカル種を複数の処理ステーションに同時に供給する有効な方法はない。
【0032】
例えば、図3は、先行技術のマルチステーション基板処理ツール300を示す。しかしながら、マルチステーション基板処理ツール300が知られているが、同様のまたは同種の基板処理ツールが開示の主題の様々な実施形態とともに使用されてもよい。
【0033】
マルチステーション基板処理ツール300は、処理チャンバ303内に複数の処理ステーション301A、301B、301C、301Dを含む。4つのステーションが示されているが、当業者は、適切な変更とともに、より多数またはより少数のステーションが使用されうることを認識するだろう。当業者に知られているように、例えば、各ステーションを低圧環境内に維持することによって、膜蒸着プロセス間の真空破壊によって生じる欠陥を低減または回避することができる。
【0034】
図3に更に示すように、マルチステーション基板処理ツール300は、基板搬入ロードロック305および基板搬出ロードロック307を含み、そのいずれかまたは両方は、リモートプラズマ源(図示されていないが、当業者には理解可能)を含み得る。一般に大気圧でのロボット317は、例えば、基板キャリア319(例えば、フロントオープニングユニファイドポッド(FOUP)または他の種類の標準メカニカルインターフェース(SMIF))を介して装填されたカセットから、大気ポート315を介して基板搬入ロードロック305内に基板を移動させるように構成される。基板は、ロボット317によって選択されて、基板搬入ロードロック305の台座309上に設置される。大気ポート315は閉じられ、ロードロックは大気圧未満(例えば、数トル以下)にポンプダウンされる。
【0035】
基板搬入ロードロック305がリモートプラズマ源を含む場合、基板は、処理チャンバ303内に導入される前に、ロードロック内でリモートプラズマ処理に曝されてもよい。さらに、基板は、例えば水分および吸着ガスを除去するために、基板搬入ロードロック305内で加熱されてもよい。次に、処理チャンバ303へのチャンバ搬送口311が開き、別のロボット(図示せず)が基板を処理チャンバ303の中へ、処理ステーション301Aの台座313の上に設置する。図3に描かれた実施形態はロードロックを含んでいるが、いくつかの実施形態においては、処理チャンバ303内へのウエハ基板の直接搬入が提供されうることが理解されよう。
【0036】
上述のように、図3に示される処理チャンバ303は、4つの処理ステーション301A、301B、301C、301Dを提供する。プロセスガスは、単一プロセスガス入口321によって提供されてよい。さらに、各処理ステーションは、加熱された台座(例えば、処理ステーション301Aの台座313)および様々なガスライン注入口(注記を示す)を有することができる。マルチステーション基板処理ツール300はまた、処理チャンバ303内で基板を(例えば、処理ステーションの1つから別の処理ステーションに)移送するための基板ハンドリングシステムを含むことができる。そのような種類の基板ハンドリングシステムおよび関連するロボット機構は、当技術分野で知られている。しかしながら、上述のように、現在、ラジカル種を複数の処理ステーションに同時に供給する有効な方法はない。
【0037】
図4Aは、図3のマルチステーション基板処理ツール300の1つのステーションに適用されたときの、先行技術のRPC入口流のベクトル場を示す計算流体力学(CFD)法シミュレーション400を示す。CFD解析に精通している当業者には知られているように、結果は、2つの軸(例えば、処理ステーション301Aの後端および左端)に沿ってミラーリングされるので、この状況において処理ステーション(図示せず)の残りの1つの結果は実質的に同一であるため、単一の処理ステーションのみが示されている。
【0038】
当業者は、ベクトルが流入RPCガスの極端に不均一な速度場を示すことを直ちに認識するだろう。例えば、ベクトルは、処理チャンバ303の処理ステーション301A内のガスの相対速度を示す。単一のプロセスガス入口321では、ベクトルは比較的大きく、例えば、図2AのRPCリアクタ205内で生成されたラジカル種を含む流入ガスの高速度を示す。ラジカル種を含む流入ガスが、処理ガス入口321から設備排気口401に向かって遠くに移動するにつれて、ベクトル場内のベクトルはずっと小さくなり、それにより流入ガスがより低い速度であることを示す。ガスの速度が低下することにより、洗浄のためのラジカル種の有効性も同時に低下する。
【0039】
図4Bは、図3のマルチステーションの1つのステーションに適用されたときの先行技術のRPC入口流の流体流を示す、CFD法シミュレーション430を示す。当業者は、図4Aのベクトル場のように、ガスがプロセスガス入口321から遠く離れ続けるにつれて流体流が減少し、それと同時に流入ガスの速度が低下することを示すことを認識するだろう。
【0040】
前述の実施例は、以下の開示の主題の内容を当業者に提示するための例として提供されるに過ぎず、承認された先行技術とみなされるべきでない。
【0041】
概要として、開示の主題の様々な実施形態は、RPCガス入口から来るRPCガスを、方向流装置を通じて、各処理ステーション内のガス分配シャワーヘッドと基板ペデスタル領域との間に導く。以下の実施形態は、4つの処理ステーションと共に使用される方向流装置を説明しているが、方向流装置の様々な実施形態によって提供される処理ステーションの実際の数は、必要に応じて所定の処理ツールについて増減可能である。例えば、開示の主題を読んで理解すると、当業者であれば、本明細書に記載の方向流装置は、方向流装置の形状において比較的わずかな変化を伴う、わずか2つの処理ステーションから6つ以上の処理ステーションに使用されうることを認識するだろう。
【0042】
例えば、ここで図5を参照すると、開示の主題の一実施形態によるRPC方向流装置511を使用するマルチステーション基板処理ツール500の1つのステーション501の断面が示されている。図5は、例えば4つの処理チャンバを備えることができる処理チャンバ503を含むように示されている。各処理ステーションは、ガス分配シャワーヘッド505と、処理を受ける基板(図5には図示せず)を保持するように構成された基板台座507とを含む。RPC方向流装置511は、洗浄ガスをガス分配シャワーヘッド505と基板台座507との間の領域に導くように示されているが、当業者は、開示の主題を読んで理解すると、洗浄ガスをマルチステーション基板処理ツール500内の1つ以上の追加領域にも導くことができることを認識するだろう。例えば、RPC方向流装置511は、洗浄サイクル中の異なる時間帯に、洗浄ガスをガス分配シャワーヘッド505の上方、ガス分配シャワーヘッド505と基板台座507との間(図示のように)、および/または基板台座507の下方に送るように配置することができる。
【0043】
1つまたは複数のラジカル種は、RPCリアクタ(図示されていないが、リアクタは図2AのRPCリアクタ205と同じまたは類似してもよい)内の様々な種類の洗浄ガス(例えば、上述のフッ素含有化合物)から生成できる。洗浄ガスおよびラジカル種は、RPCリアクタからマルチステーション基板処理ツール500に結合されているプロセスガス入口509を介して、マルチステーション基板処理ツール500の処理チャンバ503に入る。次いで、洗浄ガスおよびラジカル種は、RPC方向流装置511の両側で実質的に均等な流れ513に分割される。(当業者は、例えば、以下に説明する図6A図6Cに関してより明らかになるように、洗浄ガスの流れも、所定の断面図の前後の平面において実質的に等しく分割されることを認識するだろう。)
【0044】
図6A図6Cは、開示の主題によるRPC方向流装置の様々な例示的実施形態を示す。例えば、図6AのRPC方向流装置600の実施形態は、実質的に均一な傾斜領域603によって囲まれた流入洗浄ガス分流ハブ601(または一般に、流入ガス分流ハブ)を含むように示されている。当業者は、流入した洗浄ガスが、流入洗浄ガス分流ハブ601に衝突した後、全方向に実質的に均等に分割されることを認識するだろう。
【0045】
図6Bは、流入洗浄ガス分流ハブ631を有するRPC方向流装置630を含むように示された実施形態である。しかしながら、図6AのRPC方向流装置600とは対照的に、流入洗浄ガス分流ハブ631は、この例では4つの別個の傾斜ガス分流領域633(4つの傾斜ガス分流領域)によって囲まれている。傾斜ガス分流領域633の各々は、隆起壁635によって他の傾斜ガス分流領域633から分離される。隆起壁635は、流入する洗浄ガスおよび付随するラジカル種をより完全に分離し、傾斜ガス分流領域633内に方向付けるのに役立つ。その結果、当業者は、流入する洗浄ガスが、流入洗浄ガス分流ハブ631に衝突した後に、4つの異なる傾斜ガス分流領域633の方向に実質的に均等に分割されることを認識するだろう。
【0046】
図6Cは、流入洗浄ガス分流ハブ651を有するRPC方向流装置650を含むように示された実施形態である。複数の傾斜ガス分流領域653の各々は、隆起壁655によって他の傾斜ガス分流領域653から分離されている。隆起壁655は、流入する洗浄ガスおよび付随するラジカル種をより完全に分離し、傾斜ガス分流領域653内に方向付けるのに役立つ。従って、当業者は、流入する洗浄ガスが、流入洗浄ガス分流ハブ651に衝突した後に、4つの異なる傾斜ガス分流領域653の方向に実質的に均等に分割されることを認識するだろう。
【0047】
図6BのRPC方向流装置630とは対照的に、図6CのRPC方向流装置650は、傾斜ガス分流領域653のより小さい(例えば、より狭い)最終出口傾斜も含む。最終出口傾斜は、洗浄ガスおよび付随するラジカルを、例えば、図5のガス分配シャワーヘッド505と基板台座507との間の特定領域に供給または集束するように設計または最適化されてよい。
【0048】
当業者は、図6Bまたは図6CのRPC方向流装置630、650のいずれかが、それぞれ、4つ未満または4つを超える異なる傾斜ガス分流領域633および653と、それに付随する隆起壁635および655のうちの1つとを有してよいことを認識するだろう。
【0049】
図6A~6CのRPC方向流装置600、630、650のいずれも、例えば、様々な形態のアルミニウム、アルミニウム合金、セラミック材料(例えば、酸化アルミニウム、Al23、および窒化アルミニウム、AlNなど)、ならびに他の金属(例えば、様々なグレードのステンレス鋼)および非金属材料などの超高純度材料を含む様々な材料から形成することができる。特定の用途に応じて、他の材料を別々に、または上記の材料と組み合わせて使用することもできる。例えば、1つの特定の例示的な実施形態において、RPC方向流装置600、630、650は、当該技術分野では知られている様々な高性能合金(超合金としても知られる)から形成されうる。これらの高性能合金は、例えば、Inconel(登録商標)(米国ウエストバージニア州ハンティントンのインコアロイ・インターナショナルを含む、異なる供給元から入手可能)またはHastelloy(登録商標)(米国インディアナ州ココモのヘインズ・ステライト社、および、米国ニューヨーク州ニューヨークのユニオンカーバイド社を含む異なる供給元から入手可能)を含む。そのような材料は、例えば、所定のプロセスに応じて、例えば、約0.5μm未満、または約0.1μm未満、またはさらにはそれ未満のRaの表面粗さ値に電解研磨されうる。他の実施形態では、RPC方向流装置600、630、650は、例えば、研磨材ブラスト、ビーズブラスト、または、洗浄ガスおよび付随するラジカルをより完全に分散させるための表面テクスチャを有するように仕上げることができる。さらに、当業者は、開示の主題を読んで理解すると、使用される洗浄ガスの種類が、RPC方向流装置600、630、650が形成される材料の種類、および表面粗さまたはテクスチャにも影響を及ぼしうることを認識するだろう。上述のように、様々な他の材料もまた、これらの高性能合金(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、または特定の用途に応じた他の種類の材料など)と組み合わせて検討することができる。これらの材料のいずれも、めっき、被覆、または別の種類の被覆(例えば、陽極酸化)が加えられてもよい。
【0050】
RPC方向流装置を形成するための他の材料も検討することができる。例えば、使用される洗浄ガスからのエッチングに対して少なくともいくらか耐性がある材料を検討することができる。特定の用途では、そのような材料は、約6℃/分~約10℃/分の温度傾斜率で、約250℃~約550℃の温度に著しい変形なしに耐えることができなければならない。様々な用途では、温度の傾斜率は考慮しなくてよい。特定の例示的な実施形態では、RPC方向流装置を形成するために使用される材料は、最低5年間、約100μm(約0.004インチ(0.01016センチメートル))未満の面平坦度クリープを有しうる。様々な用途において、クリープまたは全体平坦度は考慮しなくてよい。これらの用途では、クリープや平坦度の変化が洗浄ガス流に影響することはないだろう。
【0051】
図7Aおよび図7Bは、開示の主題による多層RPC方向流装置の様々な例示的実施形態を示す。例えば、図7Aは、流入洗浄ガス分流ハブ701を有する多層RPC方向流装置700を含む実施形態を示す。流入洗浄ガス分流ハブ701は、この例では、4つの異なる傾斜ガス分流領域703によって囲まれている。傾斜ガス分流領域703の各々は、複数リブ付き壁705によって他の傾斜ガス分流領域703とは分離されている。複数リブ付き壁705は、流入洗浄ガスおよびそれに付随するラジカル種をより完全に分離し、傾斜ガス分流領域703に向けるのに役立つ。従って、当業者は、流入洗浄ガスが、流入洗浄ガス分流ハブ701(例えば、ガスが流入できる合計8つの異なる領域または流路、8つの傾斜ガス分流領域)に衝突した後に、4つの異なる傾斜ガス分流領域703の方向と、複数リブ付き壁705部分の間の4つの別個の領域とに、実質的に均等に分流されるだろうことを認識するだろう。
【0052】
次に図7Bを参照すると、流入洗浄ガス分流ハブ731を有する多層RPC方向流装置730を含む実施形態が示されている。流入洗浄ガス分流ハブ731は、この例では、4つの異なる傾斜ガス分流領域733によって囲まれている。傾斜ガス分流領域733の各々は、複数リブ付き壁735によって他の傾斜ガス分流領域733とは分離されている。複数リブ付き壁735は、流入する洗浄ガスおよびそれに付随するラジカル種をより完全に分離し、傾斜ガス分流領域733に向けるのに役立つ。従って、当業者は、流入する洗浄ガスが、流入洗浄ガス分流ハブ731に衝突した後に、4つの異なる傾斜ガス分流領域733の方向と、複数リブ付き壁735部分の間の4つの異なる領域とに実質的に均等に分割されることを認識するだろう(例えば、ガスが流れることができる合計8つの異なる領域または流路、8つの傾斜ガス分流領域)。
【0053】
様々な実施形態では、4つの追加流路(例えば、複数リブ付き壁部分705および735の間の4つの異なる領域)を有する様々な方向流装置は、方向流装置によって、例えば、ポケットを形成する処理チャンバ内の隆起リブ、または図5に示されるような台座周囲の他の領域の洗浄が方向付けられることを可能にする。
【0054】
図7Aの多層RPC方向流装置700と対照的に、図7Bの多層RPC方向流装置730は、より小さい(例えば、より狭い)出口傾斜領域737も含む。出口傾斜領域737は、例えば、図5のガス分配シャワーヘッド505と基板台座507との間の特定の領域に、洗浄ガスおよび付随するラジカルを供給または集束するように設計または最適化されうる。
【0055】
多層RPC方向流装置700および730の各々は、上記の図6A~6Cに関して説明したのと同じまたは同様の材料、または材料の組合せを使用して構築されうる。さらに、図7Aおよび7Bの複数リブ付き壁705および735は、ヒートシンクとして機能することができ、より効果的な冷却(図6Bおよび図6Cの隆起壁635および655と比較して、複数リブ付き壁705および735の面積の増加により、熱伝導性および熱対流性の両方)を提供することができる。複数リブ付き壁705および735により提供されるこの冷却機能は、特定の用途において有利となりうる。他の用途においては、複数リブ付き壁705および735は、洗浄ガス種の再結合効果を低減または防止するために、加熱(例えば、当該技術分野で既知の技術により底面から)することができる。
【0056】
図8Aおよび8Bは、図7Aおよび7Bの多層RPC方向流装置の例示的な物理的寸法を示す。これらの物理的寸法は、当業者が開示の主題をより良く理解するのを助けるための例としてのみ提供される。しかしながら、開示の主題を読んで理解すると、当業者は、この物理的寸法が様々な処理ステーションのサイズに基づいて著しく変化しうることを認識するだろう(例えば、300mmまたは450mmの円形基板、正方形または長方形のフラットパネルディスプレイ、処理ステーション内で遭遇する流量および圧力、処理ステーション内の構成要素間の物理的分離、処理ステーションの総数、およびいくつかの他の要因に対応するように、ステーションが設計されるかどうか)。従って、本明細書で提供される物理的寸法は、例示に過ぎない。
【0057】
例えば、図8Aは、図7Aおよび図7Bの多層RPC方向流装置と同じまたは類似しうる多層RPC方向流装置の平面図800を示す。図8Aは、この例では、4つの異なる傾斜ガス分流領域803によって囲まれた流入洗浄ガス分流ハブ801を含むように示されている。傾斜ガス分流領域803の各々は、複数リブ付き壁805によって他の傾斜ガス分流領域803とは分離されている。流入洗浄ガス分流ハブ801は、特定の寸法を伴わない実質的にドーム形状(例えば、凸形状)として示されているが、当業者は、流入洗浄ガス分流ハブ801(または、他の流入洗浄ガス分流ハブ601、631、651、701、および731のいずれか)のドーム形状および暗示半径以外の形状が使用されてよいことを認識するだろう。例えば、形状および寸法(例えば、流入洗浄ガス分流ハブの内径)は、所定の用途、ガスの種類、およびガスの物理的特性(例えば、ガス粘度、ガスの流量等)について決定されてよい。これらの形状および寸法の設計は、経験的技術を介して、またはCFD解析を介して、または2つの技術の組み合わせなど、様々な技術によって決定されてよい。当業者は、開示の主題を読んで理解することに基づいて、形状および寸法がどのように決定されうるかを認識するだろう。
【0058】
例示的な物理的寸法は、約241mm(約9.5インチ)の第1の全体幅d1、約112.8mm(約4.44インチ)の多層RPC方向流装置の中心線から側部のくぼみまでの距離d2、約241mm(約9.5インチ)の第2の全体幅d3、約35.6mm(約1.4インチ)の多層RPC方向流装置の別の中心線から複数リブ付き壁805の上部までの距離d4、および、約135.9mm(約5.35インチ)の多層RPC方向流装置の別の中心線から傾斜ガス分流領域803の最上部までの距離d5を含む。多層RPC方向流装置の中心線から第1の角度α1(複数リブ付き壁805のリブ間)は、約45°である。図8Aは、以下の図8Bに関して説明される断面A-Aも示す。
【0059】
次に図8Bを参照すると、図8Aの多層RPC方向流装置の立面図830が示される。図8Bは、図8AのA-Aにおける断面を示す。例示的な物理的寸法は、約80.0mm(約3.15インチ)の全高d9、および、約96.5mm(約3.8インチ)の多層RPC方向流装置の中心線から出口傾斜領域の上部(例えば、図7Bの出口傾斜領域737)までの距離を含む。出口傾斜領域の上部から多層RPC方向流装置の最下部までの例示的な距離は、約9.91mm(約0.39インチ)であるように示され、多層RPC方向流装置の最下部から複数リブ付き壁805の上部までの高さは、約63.5mm(約2.5インチ)である。出口傾斜領域の例示的な角度α2は、約16.7°である。
【0060】
上記のRPC方向流装置(例えば、図6A~6Cおよび図7Aおよび7Bに示す装置)のいずれかは、RPC方向流装置のおおよその所望の温度を維持するために、内部冷却(例えば、水冷または例えばヘリウム等の別の流体による冷却)することができる。図示されていないが、流動液体またはその側を通る他の流体によって対流的に冷却されるヒートシンクとして作用するように、装置の内部表面上に冷却フィンを追加してもよい。他の実施形態では、流動液体による装置からの対流冷却を高めるために、RPC方向流装置の内部表面上に、螺旋状の経路で冷却フィンを形成することができる。さらに他の実施形態では、同様の種類の内部冷却フィンがRPC方向流装置の内部表面上に形成され、その側を通るガスによって対流的に冷却されてもよい。そのようなガスは、ヘリウム(He)などの高い比熱容量を有するように選択することができる。
【0061】
特定の例示的な実施形態では、RPC洗浄ガスは、例えば、約3トルの圧力で約12標準リットル/分(slpm)で流れることができる。他の実施形態では、RPC洗浄ガスは、例えば、約3トルの圧力で約27.5slpmで流れることができる。さらに他の実施形態では、洗浄ガスは、約12slpm未満または約27.5slpmを超える流量で流れることができる。様々な実施形態において、洗浄ガスは、約3トルよりも低い圧力または約3トルよりも高い圧力で処理チャンバに注入されてもよい。
【0062】
同時に図5を参照すると、図9Aは、マルチステーション基板処理ツールの1つのステーションに適用されたときの、開示の主題によるRPC方向流装置を用いたRPC入口流のベクトル場を示すCFD法シミュレーション900を示す。図4Aおよび図4Bを参照して上述したように、また、CFD解析に精通した当業者には周知のように、結果は2つの軸(例えば、処理ステーションの後端および左端)に沿って酷似するため、処理ステーションの残りの1つ(図示せず)における結果は、この状況においては実質的に同一であるとして、単一の処理ステーションのみが示されている。
【0063】
当業者は、図9Aのベクトルが、流入するRPCガスの実質的に均一な速度場を示すことを直ちに認識するだろう。例えば、ベクトルは、処理チャンバ503の処理ガス入口509内のガスの相対速度を示す。ガスおよびラジカル種が処理ガス入口509に入り、ガス分配シャワーヘッド505と基板台座507(図5参照)との間の空間に、設備排気ポート901に向けて導かれた後、ベクトルは、特に図4Aおよび4BのCFDシミュレーション400および430と比較したときに比較的一様である。実質的に一様であるため、ガスおよびラジカル種の速度によって示されるように、洗浄のためのラジカル種の比較的高い有効性も存在する。
【0064】
引き続き図5を参照すると、図9Bは、マルチステーション基板処理ツールの1つのステーションに適用されたときの、開示の主題によるRPC方向流装置を使用するRPC入口流の流体流を示す、CFD法シミュレーション930を示す。当業者は、図9Aのベクトル場のような流体流が、ガス分配シャワーヘッド505と基板台座507(図5参照)との間の空間に沿って、設備排気ポート901に向かう流入ガスの実質的に均一な速度を示すことを認識するだろう。
【0065】
図9Aおよび9Bの例では、CFD法シミュレーション900および930は、洗浄ガスの流入流量を、約3トルの圧力で約27.5slpm(または、ステーションあたり約6.875slpm、すなわち(27.5slpm)/4)と考えて実行された。ガス分配シャワーヘッドの最下部と基板台座の最上部との間の空間は、約24.6mmである。他の様々なパラメータを用いて、他の多数のCFDシミュレーションも実行された。
【0066】
本明細書全体を通して、複数の例は、一例として説明される構成要素、動作、または構造を含みうる。1つまたは複数の方法の個々の動作が別個の動作として図示および説明されているが、個々の動作のうちの1つまたは複数は同時に実行されてもよく、動作は必ずしも図示の順序で実行される必要はない。例示的な構成において別個の構成要素として提示される構造および機能は、組み合わせられた構造または構成要素として実装されうる。同様に、単一の構成要素として提示される構造および機能(例えば、RPC方向流装置の様々な実施形態)は、別個の構成要素として実装されうる。これらおよび他の変形、修正、追加、および改善は、本明細書に記載される主題の範囲に該当する。
【0067】
さらに、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的または排他的な意味で解釈されうる。さらに、他の実施形態は、提供される開示を読んで理解することにより、当業者によって理解されるだろう。加えて、当業者は、本開示を読んで理解すると、本明細書で提供される技法および例の様々な組合せが、すべて様々な組合せで適用されうることを容易に理解するだろう。
【0068】
様々な実施形態が別々に論じられるが、これらの別々の実施形態は、独立した技術または設計とみなされることを意図するものではない。上記で示したように、様々な部分の各々は相互に関連することができ、各々は別々に、または本明細書で説明するRPC方向流装置の他の実施形態と組み合わせて使用されうる。例えば、方法、動作、およびプロセスの様々な実施形態が説明されたが、これらの方法、動作、およびプロセスは、別々に、または様々な組合せで使用されうる。
【0069】
従って、本明細書で提供される開示を読んで理解すれば当業者には明らかであるように、多くの修正および変更を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等な方法および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態の一部および特徴は、他のものに含まれてよい、または他のものと置き換えられてよい。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に該当することが意図される。よって、本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0070】
本開示の要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。要約は、特許請求の範囲の解釈または限定に使用されないという理解に基づいて提出される。加えて、前述の発明を実施するための形態では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴が単一の実施形態にまとめられうることが理解されうる。この開示の方法は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。よって、以下の特許請求の範囲は発明を実施するための形態に組込まれ、各請求項は、別々の実施形態として独自に成立する。
以下の番号付けされた例は、開示の主題の実施形態を含む。
【0071】
実施例1:一実施形態では、開示の主題は、ラジカル種を方向付ける装置を含む。装置は、リモートプラズマ洗浄(RPC)リアクタとマルチステーション処理チャンバとの間に結合されるように構成されたRPC方向流装置を備える。RPC方向流装置には、複数の傾斜ガス分流領域がある。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのうちの別の処理ステーションに導くように構成される。傾斜ガス分流領域の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。流入洗浄ガス分流ハブは、RPCリアクタから少なくともラジカル種を受け取り、少なくともラジカル種を複数の傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に分配するように配置される。
【0072】
実施例2:実施例1の装置であって、RPC方向流装置は4つの傾斜ガス分流領域を含む。
【0073】
実施例3:実施例1の装置であって、RPC方向流装置は8つの傾斜ガス分流領域を含む。
【0074】
実施例4:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、RPC方向流装置の外周近くに形成された出口傾斜領域をさらに備え、出口傾斜領域は、出口傾斜領域が形成される傾斜ガス分流領域よりも狭い。
【0075】
実施例5:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、傾斜ガス分流領域の各々を分離する複数リブ付き壁をさらに含む。装置はまた、RPCリアクタによって生成された少なくともラジカル種を導くために、傾斜ガス分流領域を分離する各複数リブ付き壁の間に配置された流路も含む。
【0076】
実施例6:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、流入洗浄ガス分流ハブは実質的にドーム形状である。
【0077】
実施例7:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、RPC方向流装置は、マルチステーション処理チャンバ内の複数のガス分配シャワーヘッドの各々の上に少なくともラジカル種を向けるように配置される。
【0078】
実施例8:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、RPC方向流装置は、マルチステーション処理チャンバ内の複数のガス分配シャワーヘッドの各々とそれぞれの複数の基板台座との間に少なくともラジカル種を方向付けるように配置される。
【0079】
実施例9:上記実施例のいずれか1つに記載の装置であって、RPC方向流装置は、マルチステーション処理チャンバ内の複数の基板台座の各々の下に少なくともラジカル種を向けるように配置される。
【0080】
実施例10:一実施形態では、流入ガス流を分配するための方向流装置が開示される。方向流装置は、複数の傾斜ガス分流領域を含む。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、流入ガス流を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションの別の処理ステーションに向けるように配置されている。傾斜ガス分流領域の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。流入ガス分流ハブは、流入ガス流を受け取り分割し、流入ガス流を複数の傾斜ガス分流領域の少なくとも各々に実質的に均等に分配するように配置されている。
【0081】
実施例11:実施例10に記載の装置であって、方向流装置は4つの傾斜ガス分流領域を含む。
【0082】
実施例12:実施例10の装置であって、RPC方向流装置は8つの傾斜ガス分流領域を備える。
【0083】
実施例13:実施例10から実施例12のいずれか1つに記載の装置であって、流入ガス分流ハブは実質的にドーム形状である。
【0084】
実施例14:一実施形態では、リモートプラズマ洗浄(RPC)方向流装置が開示される。RPC方向流装置には、複数の傾斜ガス分流領域がある。複数の傾斜ガス分流領域のそれぞれは、RPCリアクタによって生成された少なくとも1つのラジカル種を、マルチステーション処理チャンバ内の複数の処理ステーションのうちの別の処理ステーションに導くように構成される。複数リブ付き壁が、傾斜ガス分流領域の各々を分離する。複数リブ付き壁は、傾斜ガス分流領域を隔てる各複数リブ付き壁の間に位置する流路を有する。流入洗浄ガス分流ハブは、RPCリアクタから少なくともラジカル種を受け取り、少なくともラジカル種を複数の傾斜ガス分流領域の各々に実質的に均等に分配するように配置される。
【0085】
実施例15:実施例14のRPC方向流装置であって、複数の傾斜ガス分流領域の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。
【0086】
実施例16:実施例14または実施例15のいずれかのRPC方向流装置であって、流路の数は、複数の処理ステーションの数に少なくとも等しい。
【0087】
実施例17:実施例14から実施例16のいずれか1つに記載のRPC方向流装置であって、流入洗浄ガス分流ハブは実質的にドーム形状である。
【0088】
実施例18:実施例14から実施例17のいずれか1つに記載のRPC方向流装置であって、RPC方向流装置は、マルチステーション処理チャンバ内の複数のガス分配シャワーヘッドの各々の上に少なくともラジカル種を向けるように、マルチステーション処理チャンバ内に配置される。
【0089】
実施例19:実施例14から実施例18のいずれか1つに記載のRPC方向流装置であって、RPC方向流装置は、少なくともラジカル種をマルチステーション処理チャンバ内の複数のガス分配シャワーヘッドの各々とそれぞれの複数の基板台座との間に方向付けるように、マルチステーション処理チャンバ内に配置される。
【0090】
実施例20:実施例14から実施例18のいずれか1つに記載のRPC方向流装置であって、RPC方向流装置は、少なくともラジカル種をマルチステーション処理チャンバ内の複数の基板台座の各々の下に向けるように、マルチステーション処理チャンバ内に配置される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】