IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

特表2023-528013エポキシ樹脂に基づく1成分(1K)組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂に基づく1成分(1K)組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20230626BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230626BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230626BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230626BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230626BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230626BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20230626BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230626BHJP
【FI】
C08G59/40
C09J163/00
C09D163/00
C09J11/06
C09J4/02
C09D4/02
C09D133/06
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572742
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2021063805
(87)【国際公開番号】W WO2021239686
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20176983.3
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュンフー
【テーマコード(参考)】
4J036
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AD08
4J036DA05
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC38
4J036DC40
4J036DC44
4J036EA01
4J036EA03
4J036FA10
4J036GA02
4J036GA06
4J036HA01
4J036HA02
4J036HA06
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA07
4J036KA01
4J038CG131
4J038DB001
4J038DB091
4J038FA092
4J038JB31
4J038JC30
4J038JC34
4J038JC37
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038NA26
4J038PA17
4J038PA19
4J040DF031
4J040EC001
4J040EC091
4J040FA102
4J040HC23
4J040HD30
4J040HD35
4J040HD39
4J040JA12
4J040JB02
4J040JB08
4J040KA13
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA24
4J040KA25
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA36
4J040KA42
(57)【要約】
本発明は、組成物の重量に基づいて、10~90重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;0.5~30重量%のb)第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;10~50重量%のc)式(VII)[式中、Rは、HまたはMeであり;Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;RおよびRは、C-C18アルキル、C-C18ヒドロキシアルキル、C-C18アルカルコキシ、C-C18アリールおよび-(CH-N(R)(R)から独立して選択され;nは、1~4の整数であり;RおよびRは、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される]の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;および0.05~10重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む、液体1成分(1K)組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の重量に基づいて、
10~90重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
0.5~30重量%のb)第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;
10~50重量%のc)式(VII):
【化1】
[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C18アルキル、C-C18ヒドロキシアルキル、C-C18アルカルコキシ、C-C18アリールおよび-(CH-N(R)(R)から独立して選択され;
nは、1~4の整数であり;
およびRは、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される]
の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;および
0.05~10重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤
を含む、液体1成分(1K)組成物。
【請求項2】
組成物の重量に基づいて、
20~80重量%、好ましくは30~70重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
1~25重量%、好ましくは5~15重量%のb)第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;
15~45重量%、好ましくは25~40重量%のc)前記少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;および
0.1~5重量%、好ましくは0.1~2.5重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a)部が、多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素、エステル、エーテルおよびアミドから選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
a)部が、エポキシおよび(メタ)アクリレート官能基の両方を有するエポキシ官能基含有ポリマーを含む、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
b)部が、シクロアミジニウム四置換ホウ酸塩および/またはイミダゾリウム四置換ホウ酸塩を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
b)部が、以下の一般式(III):
【化2】
[式中、
、R、R、RおよびRは、水素、C-C18アルキル、C-C18アリール、C-C18シクロアルキル、C-C20アルケニル、-C(O)R、-C(O)OH、-CNおよび-NOから独立して選択される;
は、C-Cアルキルであり;
、R、RおよびRは、C-Cアルキル、C-C18アリールおよびC-C24アルキルアリールから独立して選択される]
によって表される化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
、R、R、RおよびRは、水素、C-C12アルキル、C-C18アリール、C-C12シクロアルキル、C-Cアルケニル、-COH、-CNおよび-NOから独立して選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
b)部が、以下の一般式(VI):
【化3】
[式中、
10は、H、C-Cアルキル、C-C18アリール、C-C24アラルキル、C-C18シクロアルキルおよびC-C20アルケニルから選択され;
10は、好ましくは、H、C-Cアルキル、C-C12シクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジルまたはトリルから選択され;
、R、RおよびRは、C-Cアルキル、C-C18アリールおよびC-C24アルキルアリールから独立して選択され;
nは、1~3の整数である]
によって表される化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
、R、RおよびRがすべて同一であり、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される、請求項6~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
b)部が、イミダゾリウムテトラフェニルボレート;メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-1,4-ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エニウムテトラフェニルボレート;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボレート;および1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エンテトラフェニルボレートからなる群から選択される少なくとも1つの塩を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
c)部が、式(VII):
【化4】
[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C12アルキル、C-C12ヒドロキシアルキル、C-C12アルカルコキシおよび-(CH-NRから独立して選択され;
nは、2~4の整数であり;
およびRは、C-Cアルキルから独立して選択される]
の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマーを含む、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
c)部が、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド;N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド;N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド;N-オクチル(メタ)アクリルアミド;N-ドデシル(メタ)アクリルアミド;N-オクタデシル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド;N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド;N-(2-エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド;およびN-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマーを含む、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
d)部が、ベンゾインジメチルエーテル;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;4-クロロベンゾフェノン;4-メチルベンゾフェノン;4-フェニルベンゾフェノン;4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン);イソプロピルチオキサントン;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Daracur 1173);2-メチル-4-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン;メチルフェニルグリオキシレート;メチル2-ベンゾイルベンゾエート;2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;およびエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネートからなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む、請求項1~12のいずれか記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかで定義される液体1成分(1K)組成物から得られる硬化生成物。
【請求項15】
コーティング、シーラントまたは接着剤としての、請求項14で定義される硬化反応生成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂に基づく1成分(1K)組成物を対象とする。より具体的には、本発明は、エポキシ樹脂、有機ホウ酸塩化合物、(メタ)アクリルアミドモノマーおよびフリーラジカル光開始剤を含む、硬化可能な液体1成分(1K)組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、主に樹脂、改質剤および架橋剤(または硬化剤)の特定の選択により、硬化したエポキシ樹脂の特性を調整して特定の性能特性を達成できることに基づいて、幅広い用途が見出されている。
【0003】
その多用途性が認められているため、適切に硬化したエポキシ樹脂は、とりわけ以下を含む複数の他の属性も備えている:特にアルカリ環境に対する優れた耐薬品性;高い引張強度および圧縮強度;高い疲労強度;硬化時の低収縮;および電気絶縁特性および経年時または環境暴露時のそれらの保持。
【0004】
エポキシ樹脂の既知の有用性は、いわゆる「二重硬化」または光化学的および熱的の両方で硬化可能なハイブリッド樹脂系にある。このような系(従来、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリル化ビスマレイミド(BMI)樹脂または(メタ)アクリル化ウレタン樹脂との組み合わせに基づいていた)は、組成物の光化学的硬化自体が特定の基質のコーティングまたは特定のコンポーネントの接着またはシーリングには適切ではない可能性があるため生まれた:光への露出が全くないように制限される領域が基質内またはコンポーネント間に存在し得る。ハイブリッド樹脂系では、光にさらされた硬化性組成物の一部は、(例えば紫外線で)光化学的に硬化されてよく、接着、シールまたはコーティングされるコンポーネントを望ましい許容限界内で固定する:影となる領域に配置された硬化性組成物の残りの部分はその後熱処理され、硬化プロセスが完了する。
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂を含有する1成分(1K)組成物に基づく二重硬化系(a dual cure system)の開発に関する。エポキシ樹脂と硬化剤(hardener)または硬化剤(curative)が一緒にパッケージ化されているという事実のために、前記1成分(1K)組成物は潜在的な硬化を示さなければならない:硬化は、通常の保管および輸送の条件下では開始することはできず、組成物が高温または照射などの特定の硬化条件にさらされるまで遅らせる必要がある。
【0006】
1つの従来のアプローチによれば、1成分(1K)エポキシ組成物は、エポキシ樹脂中に固体硬化剤の懸濁液を含んでよく、硬化剤はエポキシマトリックスへの溶解度が低いために潜在的である。そのようなアプローチの例は、とりわけ次の文書に記載されている:米国特許第3,519,576号;米国特許第3,520,905号;および米国特許第4,866,133号。エポキシ-ジシアンジアミドに基づく複数の1成分組成物が商品化されている:例えば国際公開第2014/165423号(Air Products and Chemicals Inc.)には、以下を含む1成分組成物が記載されている:少なくとも1つの第三級アミン塩(前記塩は、少なくとも1つのカルボン酸と、N-ヒドロキシエチルピペリジン、N-ヒドロキシエチルモルホリン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-エチルピペリジン、N,N-ジメチルシクロヘキサン(N,N-dimethylcyclophexane)およびジメチルエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1つの第三級アミンとの生成物である);少なくとも1つのエポキシ樹脂;および少なくとも1つのジシアンジアミド。
【0007】
問題として、そのような固体の粒子状硬化剤の使用に基づく系は、高粘度および比較的長い硬化時間という制限を有する傾向がある。さらに、組成物内に粒子状硬化剤が不均一に分布すると、形成された生成物に未硬化領域をもたらす可能性がある:もちろん、これは、ユーザーが特にコーティング、接着剤またはシーラント内の未硬化領域を除去するために使用することを選択したハイブリッド系にとって非常に有害である。
【0008】
エポキシ樹脂用の固体の粒子状硬化剤のこれらの確認された問題から、多くの著者は1成分組成物中の硬化剤の分布を均質化しようとした。例えば、特開2004-27159号公報には、液状フェノール樹脂を主に硬化剤として、固体潜在性硬化剤と組み合わせて使用する1成分エポキシ樹脂組成物が記載されている:この組成物は優れた貯蔵安定性を提供するとされているが、液状フェノール樹脂を硬化剤の大部分に使用すると、硬化樹脂の物理的強度が低下する。
【0009】
さらなる著者は、ジシアンジアミドを可溶化しようと努めており、その点について以下に言及され得る:米国特許第4,859,761号;米国特許第4,621,128号;米国特許第3,420,794号;および欧州特許出願公開第2180012A1号。
【0010】
粒子状硬化剤を使用する代わりに、エポキシ樹脂の硬化剤の潜在性を穏やかにするための代替アプローチとして、化学的ブロッキングが考慮されてきた。その例は、米国特許出願公開第2007149727号(Okuhiraら)に見られ、架橋はイミン基の加水分解に依存してアミンを生成するため、変性アミンは低い硬化効率を示す。さらに、欧州特許出願公開第2999730A号(Inst. fur Textil und Faserforschung Dekendorf Deustche)には、不活性条件下で保存した場合、室温で数日間安定である保護されたN-複素環式カルベンが記載されている。しかし、例示されたような保護された官能基の開発は、複雑で非経済的であり得る。さらに、これらの引用は、ハイブリッド樹脂系内でのそのような潜在的硬化剤の使用を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,519,576号
【特許文献2】米国特許第3,520,905号
【特許文献3】米国特許第4,866,133号
【特許文献4】国際公開第2014/165423号
【特許文献5】特開2004-27159号公報
【特許文献6】米国特許第4,859,761号
【特許文献7】米国特許第4,621,128号
【特許文献8】米国特許第3,420,794号;
【特許文献9】欧州特許出願公開第2180012号
【特許文献10】米国特許第2007149727号
【特許文献11】欧州特許出願公開第2999730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、良好な加工性および経済的な製造との組み合わせを提供し、さらに二重硬化系における有効な有用性を提供する、エポキシ樹脂に基づく安定な1成分(1K)液体組成物を開発する必要性が当技術分野に依然としてあると考える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、組成物の重量に基づいて、
10~90重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
0.5~30重量%のb)第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;
10~50重量%のc)式(VII):
【化1】

[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C18アルキル、C-C18ヒドロキシアルキル、C-C18アルカルコキシ、C-C18アリールおよび-(CH-N(R)(R)から独立して選択され;
nは、1~4の整数であり;
およびRは、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される]
の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;および
0.05~10重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤
を含む、液体1成分(1K)組成物が提供される。
【0014】
重要な実施態様において、前記液体1成分(1K)組成物は、組成物の重量に基づいて、
20~80重量%、好ましくは30~70重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
1~25重量%、好ましくは5~15重量%のb)第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;
15~45重量%、好ましくは25~40重量%のc)式(VII):
【化2】
[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C18アルキル、C-C18ヒドロキシアルキル、C-C18アルカルコキシ、C-C18アリールおよび-(CH-N(R)(R)から独立して選択され;
nは、1~4の整数であり;
およびRは、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される]
の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;
0.1~5重量%、好ましくは0.1~2.5重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤、
0~15重量%、好ましくは0~10重量%のe1)式M:
【化3】
[式中、
Qは、水素、ハロゲンまたはC-Cアルキル基であり;
は、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C20アルケニル、C-C12アルキニル、C-C18アリール、C-C18アルカリールおよびC-C18アラルキルから選択される]
によって表される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー;
0~10重量%、好ましくは0~5重量%のe2)オリゴマーはエポキシド基を有さない、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマー
を含む。
【0015】
上で定義した液体組成物は、室温で好都合な貯蔵安定性を示す。さらに、上で定義した液体組成物は、有利に室温で低粘度を有するが、実用的な時間内(within a practicable duration)に高温での照射下で完全に硬化できる。本組成物のハイブリッド(照射および熱)硬化のために、組成物は、光硬化性(メタ)アクリレート系組成物を使用する場合に経験する不十分なシャドー硬化(poor shadow curing)という問題に悩まされない。
【0016】
液体組成物の特定の例示的な実施態様において、a)部は、以下から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む:多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素、エステル、エーテルおよびアミド。このような好ましいエポキシ樹脂とは別に、またはそれに加えて、液体組成物のa)部は、望ましくは、エポキシ官能基および(メタ)アクリレート官能基の両方を有するエポキシ官能基含有ポリマーを含んでよい。液体組成物のa)部において、以下の組合せが挙げられ得る:多価アルコールまたは多価フェノールのグリシジルエーテル;およびエポキシ官能基および(メタ)アクリレート官能基の両方を有するエポキシ官能基含有ポリマー。
【0017】
塩b)のアニオンは、テトラ(C-Cアルキル)ボレート、テトラフェニルボレートまたは置換テトラフェニルボレートアニオンであることが望ましい:テトラフェニルボレートが好ましいことが言及され得る。塩b)の一価カチオンはテトラアルキルアンモニウムイオンであってよいが、カチオンは、荷電窒素原子がヘテロ脂肪族またはヘテロ芳香族環系の一部である、単環式、二環式または多環式であり得る複素環式部分であることが好ましい。したがって、特定の実施態様において、組成物のb)部は、シクロアミジニウム四置換ホウ酸塩および/またはイミダゾリウム四置換ホウ酸塩を含む。例えば、c)部が以下からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含む場合、良好な結果が得られた:イミダゾリウムテトラフェニルボレート;メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-1,4-ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エニウムテトラフェニルボレート;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボレート;および1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エンテトラフェニルボレート。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、上記および添付の特許請求の範囲で定義される液体1成分(1K)組成物から得られる硬化生成物が提供される。本発明の硬化生成物は、有害な硬化収縮を示さない。
【0019】
本発明は、コーティング、シーラントまたは接着剤としての、上記および添付の特許請求の範囲で定義された硬化反応生成物の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」、「含む(containing)」または「含む(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、非列挙されたメンバー、要素またはメソッド工程を除外しない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語は、特定されていない要素、成分、メンバーまたはメソッド工程を除外する。
【0023】
量、濃度、寸法およびその他のパラメータが範囲、好ましい範囲、上限値、下限値または好ましい上限値および限定値の形で表される場合、得られた範囲が文脈中で明確に言及されているかどうかに関係なく、任意の上限値または好ましい値と任意の下限値または好ましい値とを組み合わせることによって得られる任意の範囲が、具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0024】
さらに、標準的な理解によれば、「0から(from 0)」として表される重量範囲は、具体的には0重量%を含む:前記範囲によって定義される成分は、組成物中に存在してもしなくてもよい。
【0025】
「好ましい(preferred)」、「好ましくは(preferably)」、「望ましくは(desirably)」および「特に(particularly)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施態様を指すために、本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つまたは複数の好ましい(preferable)、好ましい(preferred)、望ましい(desirable)または特定の(particular)実施態様の列挙は、他の実施態様が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施態様を開示の範囲から除外することを意図していない。
【0026】
本出願全体で使用されているように、「~得る(may)」という言葉は、強制的な意味ではなく、許容的な意味、すなわち、可能性があるという意味で使われている。
【0027】
本明細書で使用される室温は、23℃±2℃である。
【0028】
本明細書で使用される「一官能性」という用語は、1つの重合性部分を有することを指す。本明細書で使用される「多官能性」という用語は、2つ以上の重合性部分を有することを指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「当量(eq.)」は、化学表記法では通常であるように、反応中に存在する反応性基の相対数に関係する。
【0030】
本明細書で使用する「当量(equivalent weight)」という用語は、分子量を関係する官能基の数で割ったものを指す。このように、「エポキシ当量」(EEW)は、1当量のエポキシを含む樹脂のグラム単位の重量を意味する。
【0031】
本明細書で使用する用語「エポキシド」は、少なくとも1つの環状エーテル基の存在によって特徴付けられる化合物、すなわち、エーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成する化合物を意味する。この用語は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物(2つ以上のエポキシド基を有する)およびエポキシド末端プレポリマーを包含することを意図している。「モノエポキシド化合物」という用語は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ポリエポキシド化合物」という用語は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ジエポキシド化合物」という用語は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。
【0032】
エポキシドは非置換であってよいが、不活性に置換されていてもよい。不活性置換基の例としては、塩素、臭素、フッ素およびフェニルが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を指す略語である。したがって、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドを集合的に指す。
【0034】
本明細書で使用される「C-Cアルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基を指す、すなわちアルカンの基であり、直鎖および分岐有機基を含む。したがって、「C-C30アルキル」基は、1~30個の炭素原子を含む一価の基を指す、すなわちアルカンの基であり、直鎖および分岐有機基を含む。アルキル基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および2-エチルヘキシル。本発明において、そのようなアルキル基は、置換されていなくてもよく、またはハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシなどの1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。該当する場合、所与の置換基の優先度が明細書に記載される。しかしながら、一般に、1~18個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C-C18アルキル)、例えば、1~12個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C-C12アルキル)または1~6個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C-Cアルキル)が好ましいことに注意する必要がある。
【0035】
本明細書で使用される「C-C18ヒドロキシアルキル」という用語は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指し、置換基の結合点は酸素原子を介しており、アルキル基は上記で定義した通りである。
【0036】
「アルコキシ基」は、-OAで表される一価の基を指し、Aはアルキル基である:その非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基およびイソ-プロピルオキシ基である。本明細書で使用される「C-C18アルカルコキシ」という用語は、上で定義したアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し、ここで、部分(アルキル-O-アルキル)は、合計で1~18個の炭素原子を含む:このような基には、メトキシメチル(-CHOCH)、2-メトキシエチル(-CHCHOCH)および2-エトキシエチルが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される用語「C-Cアルキレン」は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素基として定義される。
【0038】
「C-C30シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子を有する、任意に置換された飽和の単環式、二環式または三環式炭化水素基を意味すると理解される。一般に、3~18個の炭素原子を含むシクロアルキル基(C-C18シクロアルキル基)が好ましいことに注意する必要がある。シクロアルキル基の例には以下が含まれる:シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;およびノルボルナン。
【0039】
本明細書で使用される、単独で、またはより大きな部分の一部として(「アラルキル基」のように)使用される「C-C18アリール」基は、単環式環系が芳香族または二環式または三環式環系の環の少なくとも1つが芳香族である、任意に置換された単環式、二環式または三環式環系を指す。二環式および三環式環系には、ベンゾ縮合2~3員炭素環が含まれる。例示的なアリール基には以下が含まれる:フェニル;(C-C)アルキルフェニル、例えばトリルおよびエチルフェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;およびアントラセニル。また、フェニル基が好ましいことが言及され得る。
【0040】
本明細書で使用される「C-C20アルケニル」は、2~20個の炭素原子および少なくとも1単位のエチレン性不飽和を有するヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、直鎖、分枝または環状であることができ、場合により置換されていてもよい。「アルケニル」という用語は、当業者によって理解されるように、「シス」および「トランス」立体配置、または「E」および「Z」立体配置を有する基も包含する。しかしながら、一般に、2~10個(C2-10)または2~8個(C2-8)の炭素原子を含む非置換アルケニル基が好ましいことに注意すべきである。前記C-C12アルケニル基の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:-CH=CH;-CH=CHCH;-CHCH=CH;-C(=CH)(CH);-CH=CHCHCH;-CHCH=CHCH;-CHCHCH=CH;-CH=C(CH;-CHC(=CH)(CH);-C(=CH)CHCH;-C(CH)=CHCH;-C(CH)CH=CH;-CH=CHCHCHCH;-CHCH=CHCHCH;-CHCHCH=CHCH;-CHCHCHCH=CH;-C(=CH)CHCHCH;-C(CH)=CHCHCH;-CH(CH)CH=CHCH;-CH(CH)CHCH=CH;-CHCH=C(CH;1-シクロペント-1-エニル;1-シクロペント-2-エニル;1-シクロペント-3-エニル;1-シクロヘキサ-1-エニル;1-シクロヘキサ-2-エニル;および1-シクロヘキシル-3-エニル。
【0041】
本明細書で使用される「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を指し、「置換アルキルアリール」は、上記の1つまたは複数の置換基をさらに有するアルキルアリール基を指す。さらに、本明細書で使用される「アラルキル」は、上で定義したアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0042】
本明細書で使用される「ヘテロ」という用語は、N、O、SiおよびSなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含む基または部分を指す。したがって、例えば「ヘテロ環式」は、例えばN、O、SiまたはSを環構造の一部として有する環状基を指す。「ヘテロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」部分は、それぞれ上記で定義したアルキルおよびシクロアルキル基であり、それらの構造の一部としてN、O、SiまたはSを含む。
【0043】
本明細書で使用する「触媒量」という用語は、特に断りのない限り、反応物に対して準化学量論の触媒量を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「一級アミノ基」は、有機基に結合したNH基を指し、「二級アミノ基」は、2つの有機基に結合したNH基を指し、これらは一緒になって環の一部となってもよい。したがって、「第三級アミン」という用語は、窒素原子が水素原子に結合していない窒素含有部分を指す。使用される場合、「アミン水素」という用語は、第一級および第二級アミノ基の水素原子を指す。
【0045】
本明細書で使用される「光開始剤」という用語は、エネルギーを運ぶ活性化ビーム(例えば電磁放射線)によって、例えば照射時に活性化される化合物を意味する。この用語は、光酸発生剤および光塩基発生剤の両方を包含することを意図している。具体的には、「光酸発生剤」という用語は、化学線への曝露時に酸硬化樹脂系の触媒作用のための酸を発生する化合物またはポリマーを指す。「光塩基発生剤」という用語は、適切な放射線にさらされたときに1つまたは複数の塩基を発生させる任意の物質を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「ルイス酸」という用語(求電子剤と呼ばれる)は、第2の分子またはイオンからの2つの電子と共有結合を形成することにより、別の分子またはイオンと結合できる、任意の分子またはイオンを意味する:したがって、ルイス酸は電子受容体である。
【0047】
本明細書で言及される分子量は、ASTM 3536に従って行われるように、ポリスチレン校正標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0048】
本明細書で使用される「無水」は、関連する組成物または反応混合物が0.25重量%未満の水を含むことを意味する。例えば、組成物は、0.1重量%未満の水を含有するか、または完全に水を含まなくてよい。
【0049】
本明細書に記載のコーティング組成物の粘度は、別段の規定がない限り、ブルックフィールド粘度計、モデルRVTを用いて、23℃および相対湿度(RH)50%の標準条件で測定される。粘度計は、5,000cpsから50,000cpsまで変化する既知の粘度のシリコーンオイルを使用して校正される。粘度計に取り付けられたRVスピンドルのセットが、キャリブレーションに使用される。コーティング組成物の測定は、粘度計が平衡に達するまで、毎分20回転の速度で1分間、No.6スピンドルを使用して行われる。平衡測定値に対応する粘度は、キャリブレーションを使用して計算される。
【0050】
発明の詳細な説明
a)エポキシド化合物
本発明の組成物は、エポキシ樹脂a)を、組成物の重量に基づいて10~90重量%、好ましくは20~80重量%の量で含む。例えば本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、25~75重量%、または30~70重量%の前記エポキシ樹脂a)を含有し得る。
【0051】
本明細書で使用されるエポキシ樹脂には、単官能性エポキシ樹脂、多官能性(multi-functional)または多官能性(poly-functional)エポキシ樹脂、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。エポキシ樹脂は、純粋な化合物であってよいが、同様に、分子当たり異なる数のエポキシ基を有する化合物の混合物を含む、エポキシ官能性化合物の混合物であってもよい。エポキシ樹脂は、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってよく、置換されていてよい。さらに、エポキシ樹脂は単量体または重合体であってもよい。
【0052】
本発明を限定する意図はないが、例示的なモノエポキシド化合物には以下が含まれる:アルキレンオキシド;シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノキシド、(+)-cis-リモネンオキシド、(+)-cis,trans-リモネンオキシド、(-)-cis,trans-リモネンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシドおよびα-ピネンオキシドなどのエポキシ置換脂環式炭化水素;エポキシ置換芳香族炭化水素;脂肪族、脂環式および芳香族アルコールのグリシジルエーテルなどの一価アルコールまたはフェノールのモノエポキシ置換アルキルエーテル;脂肪族、脂環式および芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステルなどのモノカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;他のカルボキシ基がアルカノールでエステル化されているポリカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;エポキシ置換モノカルボン酸のアルキルおよびアルケニルエステル;他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化された多価アルコールのエポキシアルキルエーテル;および他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化された多価アルコールとエポキシモノカルボン酸とのモノエステル。
【0053】
例として、以下のグリシジルエーテルは、本明細書で使用するのに特に適したモノエポキシド化合物として挙げられ得る:メチルグリシジルエーテル;エチルグリシジルエーテル;プロピルグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;ペンチルグリシジルエーテル;ヘキシルグリシジルエーテル;シクロヘキシルグリシジルエーテル;オクチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;ベンジルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル;1-ナフチルグリシジルエーテル;2-ナフチルグリシジルエーテル;2-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-ブロモフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリクロロフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリブロモフェニルグリシジルエーテル;ペンタフルオロフェニルグリシジルエーテル;o-クレシルグリシジルエーテル;m-クレシルグリシジルエーテル;およびp-クレシルグリシジルエーテル。
【0054】
重要な実施態様において、前記モノエポキシド化合物は、以下の式(I):
【化4】
[式中、R、R、RおよびRは、同一または異なっていてよく、水素、ハロゲン原子、C-Cアルキル基、C-C10シクロアルキル基、C-C12アルケニル、C-C18アリール基またはC-C18アラルキル基から独立して選択される(ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素ではないことを条件とする)]
に一致する。
、RおよびRは水素であり、Rはフェニル基またはC-Cアルキル基のいずれか、より好ましくはC-Cアルキル基であることが好ましい。
【0055】
この実施態様に関して、例示的なモノエポキシドには以下が含まれる:エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド(プロピレンオキシド);1,2-ブチレンオキシド;cis-2,3-エポキシブタン;trans-2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシペンタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-ヘプチレンオキシド;デセンオキシド;ブタジエンオキシド;イソプレンオキシド;およびスチレンオキシド。
【0056】
本発明において、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノエポキシド化合物を使用することが言及される:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;(+)-cis-リモネンオキシド;(+)-cis,trans-リモネンオキシド;(-)-cis,trans-リモネンオキシド;シクロオクテンオキシド;およびシクロドデセンオキシド。
【0057】
再度本発明を限定することを意図するものではないが、適切なポリエポキシド化合物は、液体であっても溶媒中の溶液であってもよい。さらに、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシド当量を有するべきである。一般に、500g/eq未満、または400g/eq未満のエポキシド当量を有するジエポキシド化合物が好ましい:これは主にコストの観点からであり、その製造において、より低分子量のエポキシ樹脂は精製においてより限定されたプロセスを必要とするためである。
【0058】
本発明において重合され得るポリエポキシド化合物のタイプまたは群の例として、以下のものが挙げられ得る:多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素、エステル、エーテルおよびアミド。
【0059】
適切なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族または脂環式であってよく、したがって、二価フェノールおよび二価アルコールから誘導できる。このようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは以下である:脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオール;ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ポリアルキレングリコール系ジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;およびポリカーボネートジオール系グリシジルエーテル。
【0060】
さらに例示的なポリエポキシド化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;およびソルビトールポリグリシジルエーテル。
【0061】
本発明において有用なポリカルボン酸のグリシジルエステルは、少なくとも2つのカルボン酸基を含み、エポキシド基と反応する他の基を含まないポリカルボン酸から誘導される。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式であり得る。好ましいポリカルボン酸は、カルボン酸基当たり18個以下の炭素原子を含有するものであり、その適切な例には以下が含まれるが、これらに限定されない:シュウ酸;セバシン酸;アジピン酸;コハク酸;ピメリン酸;スベリン酸;グルタル酸;不飽和脂肪酸の二量体および三量体酸、例えばアマ脂肪酸(linseed fatty acids)の二量体および三量体酸;フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;トリメリット酸;トリメシン酸;フェニレン二酢酸;クロレンド酸;ヘキサヒドロフタル酸、特にヘキサヒドロオルトフタル酸(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸);ジフェン酸;ナフタル酸;二塩基酸および脂肪族ポリオールの多酸末端エステル;(メタ)アクリル酸のポリマーおよびコポリマー;およびクロトン酸。
【0062】
挙げられ得る他の適切なジエポキシドには以下が含まれる:二重不飽和脂肪酸C-C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;およびリモネンジエポキシド。
【0063】
非常に好ましいポリエポキシド化合物の例には以下が含まれる:ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)331、DER(登録商標)332、DER(登録商標)383、JER(登録商標)828およびEpotec YD 128;ビスフェノールFエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)354;ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド、例えばDER(登録商標)353;脂肪族グリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)736;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)732;固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)661およびDER(登録商標)664 UE;ビスフェノールA固体エポキシ樹脂の溶液、例えばDER(登録商標)671-X75;エポキシノボラック樹脂、例えばDEN(登録商標)438;臭素化エポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)542;ヒマシ油トリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-35H;ポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-38;ソルビトールグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-60;および、Lapox Arch-11として入手可能なビス(2,3-エポキシプロピル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート。
【0064】
完全を期すために、本発明は、エポキシ官能基含有ポリマーの使用を包含することを意図しており、前記ポリマーは、エポキシ官能基と(メタ)アクリレート官能基の両方を有する。このような多官能性エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、従来、多官能性エポキシド化合物に存在するエポキシド基に(メタ)アクリル酸を付加することによって得られる。例えば、2種類の官能基を有するそのような樹脂の1つが、米国特許第4,751,138号(Tumey et al.)に記載されている。商業的な例は、部分的にアクリル化されたビスフェノールAエポキシ樹脂(CAS No. 55127-80-5)であるpolymer HCT-1である。
【0065】
好ましい実施態様を表すものではないが、本発明は、以下からなる群から選択される1つまたは複数の環状モノマーをさらに含む硬化性組成物を排除するものではない:オキセタン;環状カーボネート;環状無水物;およびラクトン。以下の引用の開示は、適切な環状カーボネート官能性化合物を開示する上で有益であり得る:米国特許第3,535,342号;米国特許第4,835,289号;米国特許第4,892,954号;英国特許第GB-A-1,485,925号;および欧州特許出願公開第EP-A-0119840号。しかしながら、そのような環状コモノマーは、エポキシド化合物の総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満または5重量%未満を構成すべきである。
【0066】
b)有機ホウ素化合物
本発明の組成物は、b)以下に定義される少なくとも1つの有機ホウ素化合物を含む。より具体的には、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、0.5~30重量%、好ましくは1~25重量%のb)以下に定義される少なくとも1つの有機ホウ素化合物を含む。例えば本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、b)前記少なくとも1つの有機ホウ素化合物を5~20重量%または5~15重量%含有し得る。
【0067】
前記少なくとも1つの有機ホウ素化合物は、第三級アミンの一価カチオンの四置換ホウ酸塩から選択される。前記それらの四置換ボレートアニオンは、一般式(II)によって表されてよく、式中、R、R、RおよびRは、C-Cアルキル、C-C18アリールおよびC-C24アルキルアリールから独立して選択される。一価カチオンはテトラアルキルアンモニウムイオンであり得るが、前記カチオンは、荷電窒素原子がヘテロ脂肪族またはヘテロ芳香族環系の一部である、単環式、二環式または多環式であってよい複素環部分であることが好ましい。
【化5】
【0068】
一価カチオンが誘導され得る複素環第三級アミンの例には以下が含まれる:ピリジン、例えばピコリン(メチルピリジン)、イソキノリン、キノリン(1-ベンゾピリジン)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ビピリジンおよび2,6-ルチジン;イミダゾール;ピラゾール類、例えばピラゾールおよび1,4-ジメチルピラゾール;モルホリン、例えば4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリンおよび2,2’-ジモルホリンジエチルエーテル;ピペラジン、例えば1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンおよびN,N-ジメチルピペラジン;ピぺリジン、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピペリジン、N-ヘキシルピペリジン、N-シクロヘキシルピペリジンおよびN-オクチルピペリジン;ピロリジン、例えばN-ブチルピロリジンおよびN-オクチルピロリジン;およびシクロアミジン。複素環式アミンのさらなる例には、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサエチレンテトラミンおよびヘキサプロピルテトラミンが含まれる。しかしながら、シクロアミジニウムおよびイミダゾリウムカチオンが好ましいことが言及され得る。
【0069】
第1の実施態様において、前記組成物のこの部分の有機ホウ素化合物は、以下の一般式(III):
【化6】
[式中、
、R、R、RおよびRは、水素、C-C18アルキル、C-C18アリール、C-C18シクロアルキル、C-C20アルケニル、-C(O)R、-C(O)OH、-CNおよび-NOから独立して選択され;
は、C-Cアルキルであり;および
、R、RおよびRは、C-Cアルキル、C-C18アリールおよびC-C24アルキルアリールから独立して選択される]
によって表される。
【0070】
好ましくは、R、R、R、RおよびRは、水素、C-C12アルキル、C-C18アリール、C-C12シクロアルキル、C-Cアルケニル、-COH、-CNおよび-NOから独立して選択される。イミダゾール部分に対する好ましい記述の代わりに、またはそれに加えて、ボレート部分のR、R、RおよびRの少なくとも3つは同じである。より好ましくは、R、R、RおよびRはすべて同じであり、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される。テトラフェニルボレートアニオンが特に好ましい。
【0071】
単独でまたは混合して使用され得る式(III)による例示的な化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:イミダゾリウムテトラフェニルボレート;メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;2-エチル-1,4-ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-ビニル-2-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-ビニル-2,4-ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-β-ヒドロキシ-エチル-2-メチル-イミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-アリル-2-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;1-アリル-2-フェニルイミダゾリウムテトラフェニルボレート;および1-アリル-2-ウンデシルイミダゾリウムテトラフェニルボレート。イミダゾリウムテトラフェニルボレート、メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートおよび2-エチル-1,4-ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートが特に好ましいことに留意されたい。
【0072】
式(III)の化合物の合成方法を限定する意図はないが、例示的な調製手順は、
i)式(IV):
【化7】
[式中、R-Rは、上記で定義した通りであり、Xn-はカウンターアニオンである]
のイミダゾール塩と
ii)式(V):
【化8】
[式中、R-Rは上記で定義した通りであり、Mはアルカリ金属カチオンである]
の四置換ボレート
との反応を含む。
好ましくは、Xn-は、クロリド、ブロミド、ヨージド、サルフェート、ニトレートまたはアセテートアニオンである。独立にまたは付加的に、Mは、好ましくはLi、NaまたはKである。
【0073】
前述の反応は、通常、次のような極性プロトン性溶媒中で行ってよい:水;酢酸;メタノール;エタノール;n-プロパノール;およびn-ブタノール。さらに、前記反応温度は、通常、10℃~100℃、例えば20℃~80℃であってよい。
【0074】
完全を期すために、式(IV)のイミダゾール塩は、以下に示されるイミダゾール:
【化9】
と、
無機酸、例えば塩酸、硫酸および硝酸;有機酸、例えば酢酸、シュウ酸およびコハク酸;ならびに酸性芳香族ニトロ化合物、例えばピクリン酸およびピクロロン酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸;および
四級化剤、例えばハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アリールアルキル(arylalkylhalide)
との反応によって調製されてよい。
【0075】
この反応によるイミダゾール塩(IV)の合成は、通常、次のような極性プロトン性溶媒中で行ってよい:水;酢酸;メタノール;エタノール;n-プロパノール;およびn-ブタノール。さらに、前記反応温度は、通常、10℃~100℃、例えば20℃~80℃であってよい。
【0076】
前記組成物のこの部分の第2の実施態様において、前記有機ホウ素化合物は、以下の一般式(VI):
【化10】
[式中、
10は、H、C-Cアルキル、C-C18アリール、C-C24アラルキル、C-C18シクロアルキルおよびC-C20アルケニルから選択され;
、R、RおよびRは、C-Cアルキル、C-C18アリールおよびC-C24アルキルアリールから独立して選択され;および
nは、1~3の整数、例えば1または2である]
によって表される。
【0077】
好ましくは、R10は、H、C-Cアルキル、C-C12シクロアルキル、フェニル、ナフチル、またはC-C12アラルキルから選択される。より好ましくは、R10は、H、C-Cアルキル、C-C12シクロアルキル、フェニル、ナフチル、ベンジルまたはトリルから選択される。二環式部分に対する好ましい記述の代わりにまたはそれに加えて、ボレート部分のR、R、RおよびRの少なくとも3つは同じである。より好ましくは、R、R、RおよびRはすべて同じであり、C-Cアルキルおよびフェニルから選択される。テトラフェニルボレートアニオンが特に好ましい。
【0078】
上記の式(VI)による化合物の例としては、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エニウムテトラフェニルボレート;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボレート;および1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノン-5-エンテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0079】
c)(メタ)アクリルアミドモノマー
本発明の組成物は、c)少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。より具体的には、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、10~50重量%、好ましくは15~45重量%のc)前記少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。例えば本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、15~40重量%または25~40重量%のc)前記少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマーを含有し得る。
【0080】
前記(メタ)アクリルアミドモノマーは単官能性であり、以下の一般式(VII):
【化11】
[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C18アルキル、C-C18ヒドロキシアルキル、C-C18アルキルアルコキシ、C-C18アリールおよび-(CH-N(R)(R)から独立して選択され;
nは、1~4の整数であり;
およびRは、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される]
を満たす。
【0081】
式(VII)による(メタ)アクリルアミドモノマーの実施態様において:
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C12アルキル、C-C12ヒドロキシアルキル、C-C12アルキルアルコキシおよび-(CH-NRから独立して選択され;
nは、2~4の整数であり;
およびRは、C-Cアルキルから独立して選択される。
【0082】
式(VII)による適切な(メタ)アクリルアミドモノマーの例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド;N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド;N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド;N-オクチル(メタ)アクリルアミド;N-ドデシル(メタ)アクリルアミド;N-オクタデシル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド;N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド;N-(2-エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド;およびN-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド。
【0083】
好ましい実施態様を表すものではないが、本発明は、1つまたは複数の多官能性(メタ)アクリルアミド化合物をさらに含む硬化性組成物を排除するものではない。しかしながら、硬化性組成物内で、そのような多官能性(メタ)アクリルアミドモノマーは、c)前記単官能性(メタ)アクリルアミドモノマーの総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満または5重量%未満を構成すべきである。
【0084】
例示的な多官能性(メタ)アクリルアミド化合物は、以下の式(VIII):
【化12】
[式中、
Rは、HまたはMeであり;
Lは-O-、C-Cアルキレン基またはこれらを組み合わせて形成される二価の連結基である]
によって表され得る。
後者の二価の連結基の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:-OCHCH-、-OCHCHCH-、-OCHCHCHCH-、-CHOCH-、-CHOCHCH-および-CHOCHCHCH-。
【0085】
d)フリーラジカル光開始剤
本発明の組成物は、d)化学線の照射時に組成物の重合または硬化を開始させる少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤化合物を含む。本発明の組成物は、カチオン重合性またはフリーラジカル重合性であり得ることが確立されている:エポキシ基はカチオン活性であるが、本発明者らは、組成物中のフリーラジカル活性の不飽和基の存在に基づくフリーラジカル重合メカニズムを選択した。
【0086】
通常、フリーラジカル光開始剤は、「ノリッシュI型」として知られる開裂によってラジカルを形成するものと、「ノリッシュII型」として知られる水素引き抜きによってラジカルを形成するものに分けられる。
【0087】
ノリッシュII型光開始剤は、フリーラジカル源として機能する水素ドナーを必要とする:開始は二分子反応に基づくため、ノリッシュII型光開始剤は、ラジカルの単分子形成に基づくノリッシュI型光開始剤よりも一般的に遅くなる。一方、ノリッシュII型光開始剤は、近紫外分光領域でより優れた光吸収特性を有している。本発明による組成物には活性水素種が実際に存在するが、当業者は、硬化に使用される化学線およびその波長での光開始剤の感度に基づいて、適切なフリーラジカル光開始剤を選択するはずである。
【0088】
本発明の一実施態様によれば、前記組成物はd)以下からなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む:ベンゾイルホスフィンオキシド;アリールケトン;ベンゾフェノン;ヒドロキシル化ケトン;1-ヒドロキシフェニルケトン;ケタール;およびメタロセン。完全を期すために、これらの光開始剤の2つ以上の組み合わせは、本発明において排除されない。
【0089】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記組成物はd)以下からなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む:ベンゾインジメチルエーテル;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;4-クロロベンゾフェノン;4-メチルベンゾフェノン;4-フェニルベンゾフェノン;4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン);イソプロピルチオキサントン;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Daracur 1173);2-メチル-4-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン;メチルフェニルグリオキシレート;メチル2-ベンゾイルベンゾエート;2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;およびエチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート。ここでも確かに、これらの光開始剤の2つ以上の組み合わせは、本発明において排除されない。
【0090】
前記光開始剤d)は、組成物の重量に基づいて、0.05~10.0重量%、例えば0.1~5.0重量%または0.1~2.5重量%の量で組成物中に存在すべきである。
【0091】
前記硬化性組成物の照射の目的は、前記光開始剤d)から硬化反応を開始する活性種を生成することである。その化学種が生成されると、硬化化学は他の化学反応と同じ熱力学の規則に従う:反応速度は熱によって加速され得る。モノマーの化学線硬化を促進するために熱処理を使用する慣例は、一般に当技術分野で知られている。
【0092】
前記光開始剤d)(および本明細書で後述する光塩基発生剤および光酸発生剤)の使用は、最終硬化生成物中に光化学反応からの残留化合物を生成し得る。前記残留物は、赤外、紫外およびNMR分光法;ガスまたは液体クロマトグラフィー;および質量分析などの従来の分析技術によって検出され得る。
【0093】
したがって、本発明は、硬化したマトリックス(コ)ポリマーならびにフリーラジカル光開始剤および光塩基/酸発生剤からの検出可能な量の残留物を含み得る。このような残留物は少量で存在し、通常は最終硬化生成物の望ましい物理化学的特性を妨げない。
【0094】
当業者によって認識されるように、光増感剤を組成物に組み込んで、光開始剤d)が送達されたエネルギーを使用する効率を改善できる。「光増感剤」という用語は、その標準的な意味に従って使用され、光開始重合の速度を増加させるか、または重合が起こる波長をシフトさせる任意の物質を表す。光増感剤は、d)前記少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤の重量に基づいて、0~25重量%の量で使用されるべきである。
【0095】
e1)任意の(メタ)アクリレートモノマー
特定の実施態様において、前記組成物は、組成物の重量に基づいて、最大15重量%の量で、e1)式M:
C=CQCO (M)
[式中、
Qは、水素、ハロゲンまたはC-Cアルキル基であり;
は、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C20アルケニル、C-C12アルキニル、C-C18アリール、C-C18アルカリルおよびC-C18アラルキルから選択される]
によって表される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーをさらに含んでよい。
【0096】
前記組成物は、例えば0~10重量%または0~5重量%のe1)前記式Mによって表される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。望ましくは、前記モノマー(M)は、RがC-C18アルキルおよびC-C18シクロアルキルから選択されることを特徴とする。この好ましい記述は、RがC-Cヒドロキシルアルキルである実施態様を含むことを明確に意図している。
【0097】
単独でまたは組み合わせて使用され得る、式(M)による例示的な(メタ)アクリレートモノマーには以下が含まれるが、これらに限定されない:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ドデシル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA);2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノドデシルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)クリレート(diethylene glycol monomethyl ether (meth)crylate);トリフルオロエチル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;およびフェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート。
【0098】
e2)任意の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー
上記の(メタ)アクリレートモノマー(M)の存在とは独立して、またはその存在に加えて、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、10重量%までの量で、e2)オリゴマーがエポキシド基を有さない、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーをさらに含んでよい。前記組成物は、例えば、0~10重量%または0~5重量%のe2)前記少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含んでよい。前記オリゴマーは、オリゴマー主鎖に結合した1つまたは複数のアクリレートおよび/またはメタクリレート基を有してよく、その(メタ)アクリレート官能基は、オリゴマーの末端位置にあってもよく、および/またはオリゴマー主鎖に沿って分布していてもよい。
【0099】
e2)前記少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは:i)1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有すること;および/またはii)300~1000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
【0100】
単独でまたは組み合わせて使用され得るそのようなオリゴマーの例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、例えば(メタ)アクリレート官能化ポリエステルウレタンおよび(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン;(メタ)アクリレート官能化ポリブタジエン;(メタ)アクリルポリオール(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー;ポリアミド(メタ)アクリレートオリゴマー;およびポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー。このような(メタ)アクリレート官能化オリゴマーおよびそれらの調製方法は、とりわけ:米国特許第4,574,138号;米国特許第4,439,600号;米国特許第4,380,613号;米国特許第4,309,526号;米国特許第4,295,909号;米国特許第4,018,851号;米国特許第3,676,398号;米国特許第3,770,602号;米国特許第4,072,529号;米国特許第4,511,732号;米国特許第3,700,643号;米国特許第4,133,723号;米国特許第4,188,455号;米国特許第4,206,025号;米国特許第5,002,976号に開示されている。
【0101】
特定の実施態様において、部分e2)は、式(O):
【化13】
[式中、
は、水素、C-Cアルキルおよび
【化14】

から選択されてよく;
は、水素、ハロゲンおよびC-Cアルキルから選択されてよく;
は、水素、ヒドロキシおよび
【化15】
から選択されてよく;
mは、≧1、好ましくは1~8の整数であり;
vは、0または1であり;および
nは、整数であり、nは≧3、好ましくは3~30である]
に対応する少なくとも1つの(メタ)アクリレートエステルを含むか、またはそれからなってよい。
【0102】
このような式Oのポリエーテル(メタ)アクリレートのうち、特に、以下の構造を有するポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが挙げられ得る。
【化16】
[式中、nは≧3、好ましくは3~30、より好ましくは3~20である]
したがって、特定の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:PEG200DMA(n≒4);PEG400DMA(n≒9);PEG600DMA(n≒14);およびPEG800DMA(n≒19)であり、割り当てられた番号(例えば400)は分子のグリコール部分の重量平均分子量を表す。
【0103】
f)添加物および補助成分
本発明で得られる前記組成物は、典型的には、かかる組成物に改善された特性を与えることができる補助剤および添加剤をさらに含むであろう。例えば、前記補助剤および添加剤は、以下の1つまたは複数を付与し得る:改善された弾性特性;改善された弾性回復;より長い可使加工時間;より速い硬化時間;およびより低い残留タック。このような補助剤および添加剤に含まれるものは、触媒、可塑剤、カップリング剤、接着促進剤、UV安定剤を含む安定剤、酸化防止剤、二次強化剤、充填剤、反応性希釈剤、乾燥剤、殺菌剤、難燃剤、レオロジー補助剤、着色顔料または着色ペーストおよび/または場合により少量の非反応性希釈剤である。
【0104】
適切な触媒は、エポキシド化合物の(ホモ)重合を促進する物質である。本発明で使用される触媒を限定する意図はないが、以下の適切な触媒を挙げることができる:i)酸または酸に加水分解可能な化合物、特にa)有機カルボン酸、例えば酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸および乳酸;b)有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸および4-ドデシルベンゼンスルホン酸;c)スルホン酸エステル;d)リン酸などの無機酸;e)ルイス酸化合物、例えばBFアミン錯体、SbFスルホニウム化合物、ビスアレーン鉄錯体;f)ブレンステッド酸化合物、例えばペンタフルオロアンチモン酸錯体;およびe)前述の酸および酸エステルの混合物;ii)フェノール、特にビスフェノール;iii)フェノール樹脂;iv)マンニッヒ塩基;ならびにv)ホスファイト、例えばジフェニルホスファイトおよびトリフェニルホスファイト。
【0105】
一実施態様において、エポキシ樹脂に基づく組成物を硬化させるためのアミン触媒は、光塩基発生剤であり得る:UV放射(典型的には320~420nmの波長)に曝露されると、前記光塩基発生剤はアミンを放出する。光塩基発生剤は、光照射により直接または間接的にアミンを発生するものであれば特に限定されない。しかし、言及され得る適切な光塩基発生剤には以下が含まれる:ベンジルカルバメート;ベンゾインカルバメート;o-カルバモイルヒドロキシアミン;O-カルバモイルオキシム;芳香族スルホンアミド;アルファ-ラクタム;N-(2-アリルエテニル)アミド;アリールアジド化合物、N-アリールホルムアミドおよび4-(オルト-ニトロフェニル)ジヒドロピリジン。
【0106】
完全を期すために、光塩基発生剤化合物の調製は当技術分野で知られており、有益な参考には米国特許第5,650,261号(Winkel)が含まれる。
【0107】
別の実施態様において、酸触媒は、光酸発生剤(PAG)から選択してよい:光エネルギーを照射すると、イオン性光酸発生剤はフラグメンテーション反応を受け、開環およびペンダントエポキシド基の付加を触媒して架橋を形成する、ルイス酸またはブレンステッド酸の1つまたは複数の分子を放出する。有用な光酸発生剤は熱的に安定であり、形成するコポリマーとの熱誘導反応を受けず、硬化性組成物に容易に溶解または分散する。
【0108】
本発明のイオン性PAGのカチオン部分として使用され得るカチオンの例としては、有機オニウムカチオン、例えば米国特許第4,250,311号、米国特許第3,113,708号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,216,288号、米国特許第5,084,586号、米国特許第5,124,417号および米国特許第5,554,664号に記載されているものが挙げられる。これらの参考文献は、具体的には、脂肪族または芳香族の第IVA族および第VIIA族(CASバージョン)中心のオニウム塩を包含し、I、S、P、Se、NおよびC中心のオニウム塩、例えばスルホキソニウム、ヨードニウム、スルホニウム、セレノニウム、ピリジニウム、カルボニウムおよびホスホニウムから選択されるものが好ましくは言及される。
【0109】
当技術分野で知られているように、イオン性光酸発生剤(PAG)中のカウンターアニオンの性質は、エポキシド基のカチオン付加重合の速度および程度に影響を及ぼし得、説明のために、一般的に使用される求核性アニオン間の反応性の順序は、SbF>AsF>PF>BFである。反応性に対するアニオンの影響は、当業者が本発明において補償すべき3つの主要な要因に起因する:(1)生成されたプロトン酸またはルイス酸の酸性度;(2)伝搬するカチオン鎖におけるイオン対分離の程度;および(3)フッ化物の引き抜きおよびその結果としての連鎖停止に対するアニオンの感受性。
【0110】
d)前記少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤と組み合わせた光塩基発生剤および光酸発生剤の存在が本発明において排除されないことは、当業者には明らかである。しかしながら、全体として、光開始剤は組成物の重量に基づいて、12重量%未満、好ましくは10重量%未満の量で組成物中に存在すべきである。
【0111】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがってその加工性を促進する物質である。ここで、前記可塑剤は、組成物の総重量に基づいて、最大10重量%または最大5重量%を構成してよく、好ましくは以下からなる群から選択される:ポリジメチルシロキサン(PDMS);ジウレタン;単官能性直鎖状または分枝状C4-C16アルコールのエーテル、例えばCetiol OE(Cognis Deutschland GmbH、デュッセルドルフから入手可能);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステルおよびクエン酸のエステル;ニトロセルロースおよびポリビニルアセテートに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基を有するまたはエポキシ化脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエーテル可塑剤、例えばエンドキャップされたポリエチレンまたはポリプロピレングリコール;ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;およびそれらの混合物。原則として、フタル酸エステルを可塑剤として使用できるが、毒性の可能性があるため好ましくないことに留意されたい。
【0112】
特定の実施態様において、前記組成物は、硬化組成物の所与の表面への接着を強化する働きができる少なくとも1つのエポキシシランカップリング剤を、組成物の重量に基づいて5重量%まで含む。前記カップリング剤の加水分解性基は、表面と反応して不要なヒドロキシル基を除去できる:そのエポキシ基はフィルム形成ポリマーと反応して、該ポリマーを表面と化学的に結合する。好ましくは、前記カップリング剤は1~3個の加水分解性官能基および少なくとも1つのエポキシ基を有する。
【0113】
適切なエポキシシランカップリング剤の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:グリシドキシポリメチレントリアルコキシシラン、例えば3-グリシドキシ-1-プロピル-トリメトキシシラン;(メタ)アクリロキシポリメチレントリアルコキシシラン、例えば3-メタクリリロキシ-1-プロピルトリメトキシシラン(3-methacrylyloxy-1-propyltrimethoxysilane);γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE Siliconesから入手可能なA-174);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materials, Inc.から入手可能なA-187);α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(Momentive Performance Materials, Inc.から入手可能なA-2287);ビニル-トリス-(2-メトキシエトキシ)シラン(Momentive Performance Materials, Inc.から入手可能なA-172);およびα-クロロプロピルトリメトキシシラン(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.から入手可能なKBM-703)。
【0114】
本発明の目的のための「安定剤」は、抗酸化剤、UV安定剤または加水分解安定剤として理解されるべきである。本明細において、安定剤は、組成物の総重量に基づいて、全体で最大10重量%または最大5重量%を構成してよい。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な市販例には以下が含まれる:立体障害フェノール;チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;およびそれらの混合物。
【0115】
前述のように、本発明による組成物は、追加的に充填剤を含むことができる。ここで適しているものは、例えば、白亜、石灰粉末、沈降および/または焼成ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、アルミナ、クレイ、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラス粉およびその他の粉砕された鉱物物質である。有機充填剤、特にカーボンブラック、グラファイト、木材繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、刻んだわら、もみがら、すりつぶしたクルミの殻、および他の刻んだ繊維も使用できる。ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維またはポリエチレン繊維などの短繊維も添加できる。アルミニウム粉末も同様に充填剤として適している。
焼成および/または沈殿ケイ酸は、有利には、10~90m/gのBET表面積を有する。使用する場合、それらは本発明による組成物の粘度をさらに増加させないが、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0116】
同様に、より大きいBET表面積、有利には100~250m/g、特に110~170m/gを有する焼成および/または沈降ケイ酸を充填剤として使用することが考えられる:これは、より大きいBET表面積であれば、硬化組成物を強化する効果がケイ酸のより少ない重量割合で達成されるからである。
【0117】
充填剤として同様に適しているものは、鉱物シェルまたはプラスチックシェルを有する中空球である。これらは、例えばGlass Bubbles(登録商標)の商品名で市販されている中空ガラス球であり得る。Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)などのプラスチック系中空球を使用してよく、それらは欧州特許第 0 520 426 B1に記載されている:それらは無機または有機物質で構成され、それぞれ1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する。
【0118】
組成物にチキソトロピーを付与する充填剤は、多くの用途に好ましい場合がある:このような充填剤はレオロジー補助剤としても記載され、例えば水素化ヒマシ油、脂肪酸アミドまたはPVCなどの膨潤性プラスチックである。
【0119】
本発明の組成物中に存在する充填剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~40重量%、より好ましくは0~20重量%である。液体の硬化性組成物の所望の粘度は、通常、添加される充填剤の総量を決定し得る:本発明において、液体の硬化性組成物は、200~150,000、好ましくは200~50,000mPas、または200~10000mPasの粘度を有することが望ましい。
【0120】
適切な顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄またはカーボンブラックである。
【0121】
貯蔵寿命をさらに延ばすために、乾燥剤を使用することにより、水分の浸透に関して本発明の組成物をさらに安定化させることがしばしば推奨される。反応性希釈剤を使用することにより、特定の用途のために、本発明によるコーティング、接着剤またはシーラント組成物の粘度を下げる必要も時として存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、典型的には15重量%まで、好ましくは1~5重量%である。
【0122】
本発明の組成物中の非反応性希釈剤の存在も、それがその粘度を有効に緩和できる場合には排除されない。例えば、ただし例示のためだけに、前記組成物は以下の1つまたは複数を含み得る:キシレン;2-メトキシエタノール;ジメトキシエタノール;2-エトキシエタノール;2-プロポキシエタノール;2-イソプロポキシエタノール;2-ブトキシエタノール;2-フェノキシエタノール;2-ベンジルオキシエタノール;ベンジルアルコール;エチレングリコール;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールジフェニルエーテル;ジエチレングリコール;ジエチレングリコール-モノメチルエーテル;ジエチレングリコール-モノエチルエーテル;ジエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジ-n-ブチリルエーテル;プロピレングリコールブチルエーテル;プロピレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコール;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル;N-メチルピロリドン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;石油留分、例えばSolvesso(登録商標)製品(Exxonから入手可能);アルキルフェノール、例えばtert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールおよび8,11,14-ペンタデカトリエニルフェノール;スチレン化フェノール;ビスフェノール;芳香族炭化水素樹脂、特にエトキシル化またはプロポキシル化フェノールなどのフェノール基を含むもの;アジペート;セバケート;フタレート;ベンゾエート;有機リン酸またはスルホン酸エステル;およびスルホンアミド。
【0123】
上記は別として、前記非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、特に5重量%未満または2重量%未満を構成することが好ましい。
【0124】
1成分(1K)組成物の例示的な実施態様
本発明の例示的な実施態様において、前記液体1成分(1K)組成物は、組成物の重量に基づいて、
30~70重量%のa)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
5~15重量%のb)シクロアミジニウム四置換ホウ酸塩およびイミダゾリウム四置換ホウ酸塩から選択される少なくとも1つの有機ホウ素化合物;
25~40重量%のc)式(VII):
【化17】
[式中、
は、HまたはMeであり;
Gは、-NH、-NHRおよび-N(R)(R)から選択され;
およびRは、C-C12アルキル、C-C12ヒドロキシアルキル、C-C12アルカルコキシおよび-(CH-NRから独立して選択され;
nは、2~4の整数であり;
およびRは、C-Cアルキルから独立して選択される]
の少なくとも1つの(メタ)アクリルアミドモノマー;および
0.1~2.5重量%のd)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤
を含む。
【0125】
方法および用途
組成物を形成するために、上記の部を一緒にして混合する。当技術分野で知られているように、1成分(1K)硬化性組成物を形成するには、反応性成分の反応を抑制または防止する条件下で、組成物の要素を一緒にして均一に混合する:当業者によって容易に理解されるように、これには、湿気、熱または放射線への曝露を制限または防止する混合条件、または構成要素の潜在的な触媒の活性化を制限または防止する混合条件が含まれ得る。そのため、硬化剤成分を手で混合するのではなく、意図的な加熱または光照射を行わずに、無水条件下で所定の量を例えば静的または動的ミキサーなどの機械で混合することがしばしば好ましい。
【0126】
本発明の最も広い方法の態様によれば、上記の組成物は基材に適用され、次いでその場で硬化される。組成物を適用する前に、関連する表面を前処理してそこから異物を除去することがしばしば推奨される:このステップは、該当する場合、その後の組成物の接着を容易にできる。このような処理は、当技術分野で知られており、例えば、以下の1つまたは複数を使用することによって構成される一段階または多段階の方法で行うことができる:基質に適した酸および場合により酸化剤によるエッチング処理;超音波処理;化学プラズマ処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理およびフレームプラズマ処理を含むプラズマ処理;水性アルカリ脱脂浴への浸漬;水性洗浄エマルジョンによる処理;洗浄溶液、例えば四塩化炭素またはトリクロロエチレンによる処理;および水(好ましくは脱イオン水または脱塩水)でのすすぎ。水性アルカリ脱脂浴を使用する場合、表面に残っている脱脂剤は、基質表面を脱イオン水または脱塩水ですすぐことによって除去することが望ましい。
【0127】
いくつかの実施態様において、好ましくは前処理された基質への本発明のコーティング組成物の接着は、それにプライマーを適用することによって容易にされ得る。当業者は適切なプライマーを選択できる一方、プライマーの選択に関する有益な参考文献には、米国特許第3,671,483号;米国特許第4,681,636号;米国特許第4,749,741号;米国特許第4,147,685号;および米国特許第6,231,990号が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
次いで、組成物は、好ましくは前処理され、任意に下塗り(primed)された基質の表面に、以下のような従来の適用方法によって適用される:はけ塗り(brushing);例えば、組成物が無溶媒である場合は4塗布ロール装置または溶媒含有組成物用の2塗布ロール装置を使用するロールコーティング;ドクターブレードアプリケーション;プリンティング法;および空気噴霧スプレー、空気補助スプレー、エアレススプレーおよび大容量低圧スプレーが含まれるがこれらに限定されないスプレー法。コーティングおよび接着剤の用途では、組成物を10~500μmの湿潤膜厚で適用することが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用することはより経済的であり、コーティング用途では研磨が必要となり得る厚い硬化領域の可能性が低くなる。しかしながら、不連続な硬化フィルムの形成を回避するために、より薄いコーティングまたは層を適用する際には、十分な制御が行われなければならない。
【0129】
従来、適用された組成物の硬化を開始するために使用されるエネルギー源は、紫外線(UV)放射、赤外線(IR)放射、可視光、X線、ガンマ線または電子ビーム(eビーム)のうちの少なくとも1つを放出する。その適用に続いて、放射線硬化性コーティング組成物は、市販の硬化装置を使用して照射される際、典型的には5分未満、通常は1~60秒の間、例えば3~12秒の間で活性化されてよい。
【0130】
照射する紫外線は、通常、波長150~600nm、好ましくは波長200~450nmである。UV光の有用な光源には、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低強度蛍光ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波駆動ランプ、キセノンランプ、UV-LEDランプおよびレーザービーム源、例えばエキシマレーザーおよびアルゴンイオンレーザーが含まれる。
【0131】
適用されたコーティングを硬化するためにeビームが利用される場合、動作デバイスの標準パラメータは以下であってよい:0.1~100keVの加速電圧;10~10-3Paの真空;0.0001~1アンペアの電子流;および0.1ワット~1キロワットの電力。
【0132】
個々のコーティング組成物を十分に硬化させる(例えば前記コーティングが固定されるように)ために必要な放射線の量は、放射線への露出角度およびコーティング層の厚さを含むさまざまなファクターに依存し得る。しかしながら、大まかには、5~5000mJ/cmの硬化線量が典型的であるとして挙げられ得る:50~400mJ/cmなどの50~500mJ/cmの硬化線量は、非常に効果的であると見なされ得る。
【0133】
照射の目的は、硬化反応を開始する光開始剤から活性種を生成することである。その化学種がひとたび生成されると、硬化化学は他の化学反応と同じ熱力学の規則に従う:前記反応速度は熱によって加速され得る、または低温によって遅くなり得る。
【0134】
適用された硬化性組成物の完全な硬化は、通常、100℃~200℃、好ましくは100℃~170℃、特に120℃~160℃の範囲の温度で起こるべきである。適切な温度は、存在する特定の化合物および所望の硬化速度に依存し、必要に応じて簡単な予備試験を使用して、当業者が個々の場合に決定できる。該当する場合、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用して、硬化性組成物の温度を混合温度および/または適用温度よりも高くしてよい。
【0135】
発明による硬化性組成物は、とりわけ以下に有用性を見出され得る:ワニス;インク;繊維および/または粒子の結合剤;ガラスのコーティング;石灰および/またはセメント結合プラスター、石膏含有表面、繊維セメント建材およびコンクリートなどの鉱物建材のコーティングおよび結合;合板、ファイバーボードおよび紙などの木および木材材料のコーティング、シーリングまたは接着;金属表面のコーティングまたは接着;アスファルトおよびビチューメンを含む舗装のコーティング;さまざまなプラスチック表面のコーティング、シーリングまたは接着;ならびに皮革および織物のコーティング。
【0136】
特に好ましい実施態様において、本発明の組成物を構造基材に適用すると、接着性で、高い耐摩耗性コーティングまたは結合を生成する。接着作業はしばしば200℃未満で実行することができ、硬化後に効果的な耐摩耗性が得られる。さらに、機械構造の表面または床もしくは舗道に結合する場合、コーティング組成物は、強力で信頼性の高い結合を提供することができ、表面に熱安定性および腐食保護を提供することができ、特定の構造の操作または効率に有害な化合物が表面に接触することを防ぐことができる。
【0137】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0138】
以下の化合物および材料が実施例で使用される:
【0139】
以下の表1に記載の調製物は、混合下で形成された。
【表1】
【0140】
各調製物は無色透明の液体で、室温で28日間保管しても粘度の顕著な増加は見られなかった。形成時に、調製物1は25℃で330mPasの初期粘度を有した。形成時に、調製物2は、25℃で2400mPasの初期粘度を有した。両方の調製物は、UV照射および熱硬化条件下の両方で独立して硬化可能であることが分かった。
【0141】
特定の試験において、150℃の温度で60分間のポスト加熱下で高圧水銀ランプから100mW/cmの強度で1秒間UV照射にさらすことにより、各調製物を硬化させた。得られた硬化生成物はいずれも透明な琥珀色の固体であった。
【0142】
前述の説明および実施例に鑑みて、当業者には特許請求の範囲から逸脱することなく、それらの同等の修正を行うことができることが明らかであろう。
【国際調査報告】