(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】固体ポリマー電解質を有する二次バッテリセル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20230628BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230628BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01B1/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575333
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 US2021036133
(87)【国際公開番号】W WO2021252337
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック シュクラ
(72)【発明者】
【氏名】グラディス ロシオ モンテネグロ ガリンド
(72)【発明者】
【氏名】ケビン エム.ドノバン
(72)【発明者】
【氏名】ツーチャオ ヤン
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA23
5G301CA25
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
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5H029AL02
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5H029AM16
5H029DJ16
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ20
(57)【要約】
二次バッテリセルが、第1電極材料のカソードと、第2電極材料のアノードと、カソードとアノードとの間に配置された固体ポリマー電解質層とを含む。固体ポリマー電解質は、カソードと接触する第1表面と、アノードと接触する第2表面とを含む。固体ポリマー電解質層はセルロースポリマーマトリックスを含む。セルロースポリマーマトリックスは、セルロースポリマーネットワークを含む。リチウムイオンはセルロースポリマーマトリックス中に分散される。セラミック粒子はセルロースポリマーマトリックス中に分散される。セラミック粒子は金属酸化物を含む。1種又は2種以上の可塑剤がセルロースポリマーマトリックス中に分散される。1種又は2種以上のポリマーネットワークはセルロースポリマーマトリックスと接触している。1種又は2種以上のポリマーネットワークはアクリレート含有ポリマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次バッテリセルであって、
第1電極材料を含むカソードと、
第2電極材料を含むアノードと、
前記カソードとアノードとの間に配置された固体ポリマー電解質層であって、前記固体ポリマー電解質が、前記カソードと接触する第1表面と、前記アノードと接触する第2表面とを含み、前記固体ポリマー電解質層が、
セルロースポリマーマトリックスであって、前記セルロースポリマーマトリックスがセルロースポリマーのネットワークを含む、セルロースポリマーマトリックスと、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたリチウムイオンと、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたセラミック粒子であって、前記セラミック粒子が金属酸化物を含む、セラミック粒子と、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散された1種又は2種以上の可塑剤と、
前記セルロースポリマーマトリックスと接触している1種又は2種以上のポリマーネットワークであって、前記1種又は2種以上のポリマーネットワークが架橋アクリレート含有ポリマーを含む、1種又は2種以上のポリマーネットワークと、
をさらに含む、固体ポリマー電解質層と
を含む、二次バッテリセル。
【請求項2】
前記固体ポリマー電解質層が、前記セルロースポリマーマトリックス中に分散された、又は前記セルロースポリマーマトリックスと接触している1種又は2種以上のビニル主鎖ポリマーをさらに含み、前記1種又は2種以上のビニル主鎖ポリマーが、ビニル主鎖と、1モル当たり100,000グラム未満の分子量とを含む、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項3】
前記固体ポリマー電解質層が、25重量%~60重量%の前記セルロースポリマーマトリックスと、10重量%~25重量%の前記アクリレート含有ポリマーと、20重量%~35重量%の前記リチウムイオン源と、2重量%~7重量%の前記1種又は2種以上の可塑剤と、10重量%~25重量%の前記セラミック粒子とを含む、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項4】
前記固体ポリマー電解質層のイオン伝導率が1センチメートル当たり少なくとも1x10
-4ジーメンスである、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項5】
前記セラミック粒子が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化タングステン、及び酸化タンタルのうちの1種又は2種以上のナノ粒子を含む、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項6】
前記セルロースポリマーマトリックスの前記セルロースポリマーが、セルロースエステル、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースのうちの1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項7】
前記固体ポリマー電解質層が、硝酸リチウム(LiNO
3)、ヨウ化リチウム(LiI)、硫化リチウム(Li
2S)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ヘキサフルオロヒ酸(V)リチウム(LiAsF
6)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)からなる群から選択された1種又は2種以上のリチウムイオン源をさらに含む、請求項1に記載の二次バッテリセル。
【請求項8】
固体ポリマー電解質であって、
セルロースポリマーのネットワークを含む、セルロースポリマーマトリックスと、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたリチウムイオンと、
金属酸化物を含む、前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたセラミック粒子と、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散された1種又は2種以上の可塑剤と、
架橋アクリレート含有ポリマーを含む、前記セルロースポリマーマトリックスと接触している1種又は2種以上のポリマーネットワークと、
を含む、固体ポリマー電解質。
【請求項9】
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散された、又は前記セルロースポリマーマトリックスと接触している1種又は2種以上のビニル主鎖ポリマーをさらに含み、前記1種又は2種以上のビニル主鎖ポリマーが、ビニル主鎖と、1モル当たり100,000グラム未満の分子量とを含む、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項10】
25重量%~60重量%の前記セルロースポリマーマトリックスと、10重量%~25重量%の前記アクリレート含有ポリマーと、20重量%~35重量%の前記リチウムイオン源と、2重量%~7重量%の前記1種又は2種以上の可塑剤と、10重量%~25重量%の前記セラミック粒子とをさらに含む、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項11】
前記固体ポリマー電解質のイオン伝導率が1センチメートル当たり少なくとも1x10
-4ジーメンスである、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項12】
前記セラミック粒子が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化タングステン、及び酸化タンタルのうちの1種又は2種以上のナノ粒子を含む、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項13】
前記セルロースポリマーマトリックスの前記セルロースポリマーが、セルロースエステル、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースのうちの1種又は2種以上を含む、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項14】
硝酸リチウム(LiNO
3)、ヨウ化リチウム(LiI)、硫化リチウム(Li
2S)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ヘキサフルオロヒ酸(V)リチウム(LiAsF
6)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)からなる群から選択された1種又は2種以上のリチウムイオン源をさらに含む、請求項8に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項15】
半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質を製造する方法であって、前記方法が、
1種又は2種以上のセルロースポリマーを1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程と、
1種又は2種以上の重合性成分を前記1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程と、
1種又は2種以上の光開始剤を前記1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程であって、前記1種又は2種以上の光開始剤のうちの少なくとも1種が、光による照射に続いて、前記1種又は2種以上の重合性成分のうちの少なくとも1種の重合を促進する工程と、
1種又は2種以上のリチウムイオン源を前記1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程であって、各リチウムイオン源がリチウムイオン塩又はリチウムイオン錯体を含む工程と、
1種又は2種以上の可塑剤を前記1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程と、
1種又は2種以上のセラミック粒子を前記1種又は2種以上の有機溶媒と合体する工程であって、前記セラミック粒子が金属酸化物を含む工程と、
によって前駆体を製造することと、
前記前駆体の少なくとも一部を基板の表面に被着することと、
前記被着済前駆体を光に晒し、これにより半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質を形成することと、
を含む、半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質を製造する方法。
【請求項16】
前記被着済前駆体に熱を加えることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被着済前駆体を光に晒すことに続いて、
前記半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質を取り外すことと、
前記半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質をカソード層とアノード層との間に配置し、これによりカソード-電解質-アノードサンドイッチ構造を形成することと、
前記カソード-電解質-アノードサンドイッチ構造に圧力を加えることと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記カソード-電解質-アノードサンドイッチ構造に圧力を加えることの間に、前記カソード-電解質-アノードサンドイッチ構造に熱を加えることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基板が二次バッテリセルにおける使用のためのアノード又はカソードである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質が、
セルロースポリマーのネットワークを含む、セルロースポリマーマトリックスと、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたリチウムイオンと、
当該セラミック粒子が金属酸化物を含む、前記セルロースポリマーマトリックス中に分散されたセラミック粒子と、
前記セルロースポリマーマトリックス中に分散された1種又は2種以上の可塑剤と、
架橋アクリレート含有ポリマーを含む、前記セルロースポリマーマトリックスと接触している1種又は2種以上のポリマーネットワークと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は大まかに言えば電極に関し、そしてより具体的には固体ポリマー電解質を有する二次バッテリセルに関する。
【背景技術】
【0002】
二次エネルギーセル、例えば再充電可能なバッテリに使用されるものは、電気エネルギーの繰り返しの消耗及び再充電を容易にする。二次バッテリ又はセルにおいて、正及び負の電極におけるエネルギー貯蔵を容易にする化学反応は可逆的である。二次バッテリ又はセルの電極は、これに電荷を印加することにより複数回にわたって再生(すなわち再充電)することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1実施態様において、固体ポリマー電解質前駆体組成物が、(i)1種又は2種以上の有機溶媒と、(ii)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解された1種又は2種以上のセルロースポリマーと、(iii)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解又は分散された1種又は2種以上の重合性成分と、(iv)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解又は分散された1種又は2種以上の光開始剤であって、前記1種又は2種以上の光開始剤のうちの少なくとも1種が、光による照射に続いて、前記1種又は2種以上の重合性成分のうちの少なくとも1種の重合を促進する、1種又は2種以上の光開始剤と、(v)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解又は分散された1種又は2種以上のリチウムイオン源であって、各リチウムイオン源がリチウムイオン塩又はリチウムイオン錯体を含む、1種又は2種以上のリチウムイオン源と、(vi)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解又は分散された1種又は2種以上の可塑剤と、(vii)前記1種又は2種以上の有機溶媒中に溶解又は分散された1種又は2種以上のセラミック粒子であって、前記セラミック粒子が金属酸化物を含む、1種又は2種以上のセラミック粒子とを含む。
【0004】
別の実施態様では、固体ポリマー電解質前駆体組成物を製造する方法が、1種又は2種以上の有機溶媒中に1種又は2種以上のセルロースポリマーを溶解し、これにより溶媒中ポリマー溶液を製造することを含む。1種又は2種以上の重合性成分を前記溶媒中ポリマー溶液と合体する。1種又は2種以上の光開始剤を前記溶媒中ポリマー溶液と合体し、前記1種又は2種以上の光開始剤のうちの少なくとも1種が、光による照射に続いて、前記1種又は2種以上の重合性成分のうちの少なくとも1種の重合を促進し、1種又は2種以上のリチウムイオン源を前記溶媒中ポリマー溶液と合体する。各リチウムイオン源がリチウムイオン塩又はリチウムイオン錯体を含む。1種又は2種以上の可塑剤を前記溶媒中ポリマー溶液と合体する。1種又は2種以上のセラミック粒子を前記溶媒中ポリマー溶液と合体する。前記セラミック粒子が金属酸化物を含む。
【0005】
さらに別の実施態様では、二次バッテリセルが、第1電極材料のカソードと、第2電極材料のアノードと、カソードとアノードとの間に配置された固体ポリマー電解質層とを含む。固体ポリマー電解質は、カソードと接触する第1表面と、アノードと接触する第2表面とを含む。固体ポリマー電解質層はセルロースポリマーマトリックスを含む。セルロースポリマーマトリックスは、セルロースポリマーネットワークを含む。リチウムイオンはセルロースポリマーマトリックス中に分散される。セラミック粒子はセルロースポリマーマトリックス中に分散される。セラミック粒子は金属酸化物を含む。1種又は2種以上の可塑剤がセルロースポリマーマトリックス中に分散される。1種又は2種以上のポリマーネットワークはセルロースポリマーマトリックスと接触している(例えばセルロースポリマーマトリックスネットワーク内へ少なくとも部分的に延びている)。1種又は2種以上のポリマーネットワークはアクリレート含有ポリマーを含む。
【0006】
さらに別の実施態様では、半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質を製造する方法が、前駆体を製造することを含む。前駆体は、1種又は2種以上のセルロースポリマーを1種又は2種以上の有機溶媒と合体することによって製造される。1種又は2種以上の重合性成分を1種又は2種以上の有機溶媒と合体する。1種又は2種以上の光開始剤を1種又は2種以上の有機溶媒と合体する。1種又は2種以上の光開始剤のうちの少なくとも1種が、光による照射に続いて、1種又は2種以上の重合性成分のうちの少なくとも1種の重合を促進する。1種又は2種以上のリチウムイオン源を1種又は2種以上の有機溶媒と合体する。各リチウムイオン源はリチウムイオン塩又はリチウムイオン錯体を含む。1種又は2種以上の可塑剤を1種又は2種以上の有機溶媒と合体する。1種又は2種以上のセラミック粒子を1種又は2種以上の有機溶媒と合体する。セラミック粒子は金属酸化物を含む。前駆体の少なくとも一部を基板の表面に被着する。被着された前駆体を光に晒す(例えば光で照射する)。
【発明の効果】
【0007】
ほとんどの二次電池は、液体電解質を採用して、アノードとカソードとの間の電荷移動を容易にする。しかしながら、このような電解質はいくつかの欠点を有する。例えば、液体電解質は毒性且つ/又は可燃性であり得るので、電解質の漏れがかなりの害をもたらすおそれがある。いくつかの別の電解質が開発されている。しかし、これらの電解質材料は、機械安定性に乏しく、且つ/又は室温でのイオン伝導率が低いため、多くの用途には概ね適していない。セラミック粒子を添加することは、伝導率を高めるには不十分である。
【0008】
本開示は、電気化学セル内の電極間のセパレータ及び電解質の両方として使用される材料が次の特性、すなわち(1)セル内に使用される電極材料との化学的適合性、(2)製造及び使用の厳しさに耐えるのに十分な機械強度(3)適宜の厚さで調製される可能性(すなわちイオン輸送距離を最小化しイオン輸送速度を最大化するためには薄い材料が望ましいといえる)、及び(4)室温における高いイオン伝導率、を含むべきであることを認識する。本開示に記載された独自の半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質(semi-IPN SPE)、及び関連する前駆体組成物は、従来の技術の問題点を解決し、上で確認された所期特性をもたらす。
【0009】
本開示に記載されたsemi-IPN SPEは、室温で1センチメートル当たり10-3ジーメンス(S/cm)又はこれに接近する値を提供し、ひいては従来の液体電解質の代わりに使用することができる。semi-IPN SPEは高い熱安定性を有している。高い熱安定性は、単純化されたケーシングモジュール及び冷却システムを備えた二次セルの生産を容易にし、これにより、このようなセルを含有するバッテリの重量及び体積を低減し、このようなバッテリのエネルギー密度を増大させる。本開示に記載されたように調製された複数のセルを組み合わせて(例えば積み重ねて)単一ユニットにし、大容量を有し且つ/又は高い電圧を提供するバッテリの調製を容易にすることができる。本開示に記載された調製プロセスは、高スループットのアプローチ、例えばロール・トゥ・ロール製作との適合性を有する。これらの調製プロセスは、比較的低い温度で進めることもでき、結果としてコストが削減され、従来の電解質調製戦略と比較して安全性が改善される。semi-IPN SPEは高い電気化学的安定性を有し、高電圧用途(例えば可搬式動力工具、電気自動車など)に適している。例えば、本開示に記載されたsemi-IPN SPEは、幅広い電気化学的ウィンドウ(例えば最大5V以上)を提供することができ、このことは、高電圧電極材料の使用を容易にする。
【0010】
ある特定の実施態様は上記技術的利点のいずれも含まず、いくつかを含み、又はすべてを含み得る。1つ又は2つ以上の他の技術的利点は、ここに含まれる図面、明細書、及び請求項から当業者には容易に明らかである。
【0011】
本開示の理解を助けるために、添付の図面と併せて下記説明をここで参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の例示的実施態様に基づく、半相互貫入ネットワーク固体ポリマー電解質フィルムを調製するための前駆体組成物を示すダイアグラムである。
【
図2】
図2は、
図1の固体ポリマー電解質フィルムを使用して調製されたセル例を示すダイアグラムである。
【
図3】
図3は、
図1の前駆体及び固体ポリマー電解質フィルムを調製するための方法例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、種々異なる前駆体組成物を使用して調製された半相互貫入ネットワーク固体ポリマー電解質フィルムを有するセルに関するインピーダンス対周波数応答を示すボード線図である。
【
図5】
図5は、固体ポリマー電解質フィルム例に対する動的機械分析を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に理解すべきなのは、開示の実施態様の実施例を以下に示しはするものの、現在既知であるか否かにかかわらず、本開示は任意の数の技術を用いて実施し得ることである。本開示は決して下記の実施例、図面、及び技術に限定されてはならない。加えて、図面は必ずしも原寸に比例してはいない。
【0014】
上述のように、可搬式電子デバイスにおける最近の進歩には、改善された特性(例えばより低いコスト、増大したエネルギー密度、改善された安全性など)を有する再充電可能なバッテリに対する需要の高まりが伴っている。リチウム金属及びリチウムイオン二次セルは典型的には、他のセルタイプ(例えばニッケル-金属水素化物)のものと比較して、高められた電気エネルギー貯蔵容量、又はエネルギー密度を有している。便宜上、「リチウム二次セル」及び「リチウムセル」という用語は本明細書中では、リチウム金属タイプ及びリチウムイオンタイプ双方のバッテリ及び二次電池を意味するために使用される。
【0015】
従来のリチウム二次セルは、セルの電極間に挿間された多孔質誘電セパレータ又はダイアフラムと、液体電解質とを含んでよい。液体電解質は、電極間で電荷を移動させ得るようなイオン伝導率を提供する。リチウムセル内に広く採用される液体電解質は概ね、十分なセル性能のために許容し得るイオン伝導率を提供する。しかしながら、液体電解質の使用はいくつかの欠点を伴う。例えば、液体電解質は、液体電解質が密封されているセルから漏れやすい。これらの電解質は有害な材料を含み得る。したがって、漏れはセル性能の低下(すなわちイオン伝導率の損失に基づく)を招くだけでなく、人々及び/又は環境に害を及ぼすおそれもある。液体電解質を採用するセルはまた、より厳密なサイズ制約を有する傾向があるので、液体電解質を有するセルは、所望され得るものよりも大きいか、又は所与の目的には非現実的な形状を成す傾向がある。他の従来の電解質は概ね、数多くのバッテリ用途(例えば可搬式電子装置、可搬式動力工具、衛星技術、電気自動車など)のために必要な電気的特性及び機械的特性との適切な組み合わせに欠けている。例えば、液体電解質の従来の代替物は概ね、ほとんどの用途において信頼性高い性能のための十分に大きいイオン伝導度及び/又は十分な機械強度に欠けていた。
【0016】
本開示に記載されたコンベンショナルでない半相互貫入ポリマーネットワーク固体ポリマー電解質(semi-IPN SPE)は、液体電解質よりも安全であり且つ現代の用途にとって十分な機械的強度及びイオン伝導率を有する電解質を提供することにより、上記のものを含む従来の電解質の技術的な問題に対する解決手段を提供する。本開示に記載された組成物及び方法の模範的な利点は、少なくとも部分的には、semi-IPN SPE前駆体中に含まれる成分の予期せぬ相乗効果に由来すると言える。semi-IPN SPE中にポリマーマトリックスを形成するために使用されるセルロースポリマーは、セルロースポリマーの各サッカリド単位中に多量の酸素原子が存在することから、リチウムイオンを効果的に可溶化する。しかしながら、このようなセルロースマトリックスから調製されたフィルムの機械的特性(強度及び安定性)は、リチウムイオンの添加により低下することがある。模範的な実施態様では、所期機械的特性を得るために、別のポリマーネットワークを、本明細書中に記載されたセルロースポリマーマトリックスと適切に合体させることによって、これらの材料から調製された固体ポリマー電解質の機械的な強度及び安定性を高めることができる。別の模範的な実施態様では、セラミック粒子の添加は、semi-IPN SPEの機械的特性を改善するだけでなく、semi-IPN SPEのイオン伝導率をも高める。イオン伝導率は本開示に記載されたプロセスを用いて改善することができる。セラミック粒子は、semi-IPN SPEフィルムの調製前に良分散状態で維持される。例えば、安定なセルローススラリーを調製することができる。セルローススラリー中では、セラミック粒子は、semi-IPN SPE形成前に良好に(例えば均質に)分散されたままである。
【0017】
Semi-IPN固体ポリマー電解質
図1は、Semi-IPN固体ポリマー電解質100の例を示している。電解質100は概ね前駆体102から調製される。前駆体は(a)1種又は2種以上のポリマー104(例えば1種又は2種以上のセルロースポリマー)と、(b)1種又は2種以上の光化学又は熱重合性成分106と、(c)1種又は2種以上のリチウムイオン源108(例えば1種又は2種以上のリチウム塩及び/又はリチウム錯体)と、(d)1種又は2種以上の有機溶媒110と、(e)1種又は2種以上の可塑剤112と、(f)1種又は2種以上の光開始剤114と、(g)1種又は2種以上の金属酸化物ナノ粒子116とを含む。いくつかの実施態様では、前駆体102は低分子量のビニル主鎖ポリマー118をさらに含んでよい。前駆体102の種々の成分104,106,108,110,112,114,116,118の例を下に詳述する。説明のための例を種々の成分104,106,108,110,112,114,116,118に関して以下に説明するが、言うまでもなく他の考えられ得るこのような成分104,106,108,110,112,114,116,118は、本開示に照らして、当業者には容易に明らかである。
【0018】
図3に関連してより詳しく後述するように、前駆体102の成分の部分集合103(すなわち部分集合103は成分104,106,110,112,114,116及び/又は118のうちの1種又は2種以上を含む)は最初に(例えば適宜の条件下での混合を介して)合体されてよい。例えば、熱化学的反応(例えば熱還元)が時期尚早にかなりの程度まで進まないように、部分集合103の成分は、所定の条件下(例えば室温)で混合してよい。いくつかの実施態様では、部分集合103は前駆体102のリチウムイオン源108を除くすべてを含む。成分の部分集合103は「予混合済(premixed)」溶液として調製されてよく、そしてリチウムイオン源108(例えばリチウム塩及び/又は錯体)を、続いて室温で又は適宜の加熱下で制御された状態で、予混合済溶液に添加することができる。
図1に示されているように、結果として生じた前駆体102を基板に被着し、そして加熱し、且つ/又は光120に晒すことにより、semi-IPN SPE 100フィルム(例えば薄膜)を生成することができる。semi-IPN SPE 100フィルムの調製方法の例を、
図3に関連して、より詳細に後述する。
【0019】
下記表1は、前駆体102の組成例を示している。前駆体102は、液体溶媒110中に溶解且つ/又は分散された成分104,106,108,112,114,116,及び任意には118を含む。前駆体中に含まれる各成分104,106,108,110,112,114,116,118の量の模範的範囲が表1に示されている。模範的実施態様では、前駆体102は、1種又は2種以上の溶媒110中に溶解且つ/又は分散された、41%の酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)(すなわちポリマー104)、11%のポリエチレングリコール(200)ジアクリレート(SR 259)及び6%のアルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494)(すなわち重合性成分106としてのアクリルモノマー106)、19%のヨウ化リチウム(すなわちリチウムイオン源108)、6%のポリカプロラクトントリオール(すなわち可塑剤112)、及び17%の二酸化チタン粒子(すなわちセラミック粒子116)を含む。
【表1】
【0020】
上述のように、そして
図3に関連してより詳しく後述するように、semi-IPN SPE100は基板上で薄膜(例えば厚さが数マイクロメートル~数十マイクロメートル)として調製されてよい。前駆体102中の相対的な成分量は、結果として生じるsemi-IPN SPE 100の機械的特性及び電気的特性の改善を容易にするだけでなく、信頼性の高い効率的な薄膜処理をも可能にするように選択されてよい。例えば、固体ポリマー電解質前駆体102は少なくとも5%の固体(例えば溶媒110を除くすべての成分)、且つ90%以下の固体を含んでよい。いくつかの実施態様では、前駆体102は少なくとも15%の固体、且つ50%以下の固体を含む。いくつかの実施態様では、固体及び有機溶媒110の総量は、(例えば前駆体102の薄膜を調製するための)特定の堆積法のために前駆体102の粘度を調節するように選択されてよい。例えば、前駆体102は、粘度が少なくとも1センチポアズ(cP)であり且つ5,000cP以下である混合物であってよい。いくつかの実施態様では、前駆体102の粘度は少なくとも3cPであり且つ50cP以下である。上記粘度値の例はすべて約25℃で測定される。
【0021】
semi-IPN SPE 100は概ね、
図1に示されているような1種又は2種以上のセルロースポリマーネットワーク(すなわちポリマー104のネットワーク)を含む。semi-IPN SPE 100はまた1つ又は2つ以上の線状又は分枝状ポリマー106a(すなわち、重合性成分106の重合を介して生成されたポリマー、重合は光に晒したあとで光開始剤114によって促進することができる)を含む。ポリマーは、分子スケールでポリマーネットワークのうちの1つのネットワーク内へ少なくとも部分的に「貫入(penetrate)」し又は延びる。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100フィルムは、25~60重量%の1種又は2種以上のポリマー104と、10~25重量%の重合性成分106(及び/又はこれから誘導されたポリマー106a)と、20~35重量%のリチウム源108と、1~10重量%の可塑剤112と、0.1~5重量%の光開始剤114(及び/又はこれから誘導された副生成物)と、10~25重量%のセラミック粒子116とを含む。上記重量%値は、semi-IPN SPE 100中の成分104,106,108,112,114,及び116の総質量を基準としている。semi-IPN SPE 100は薄膜(例えば厚さが500マイクロメートル未満)であってよい。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは150マイクロメートル未満である。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは100マイクロメートル未満である。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは、約10マイクロメートル~100マイクロメートル未満である。semi-IPN SPE 100のイオン伝導率は1x10
-4S/cm以上であってよい。いくつかの実施態様では、イオン伝導率は5x10
-4S/cm以上である。いくつかの実施態様では、イオン伝導率は1x10
-3S/cm以上である。
【0022】
図2は、
図1のsemi-IPN SPE 100を使用して調製されたリチウムセル200の例(例えば二次セル又はバッテリ)を示している。セル200は、SPE100によって分離された第1電極202と第2電極204とを含む。第1及び第2電極202,204は、二次セル又はバッテリ内で使用するための任意の適宜の電極材料であってよい。例えば、第1電極202は、カソード(すなわち正電極)として作用するように形成されてよく、任意の適宜のカソード材料、例えばリチウム、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム、又はこれに類するものであってよい。第2電極204は、アノード(すなわち負電極)として作用するように形成されてよく、任意の適宜のアノード材料、例えばリチウム、黒鉛、黒鉛含有材料、ケイ素含有材料、又はこれに類するものであってよい。semi-IPNの厚さ206は200マイクロメートル未満であってよい。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さ206は150マイクロメートル未満である。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さ206は100マイクロメートル未満であってよい。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さ206は約10マイクロメートル~100マイクロメートル未満である。
【0023】
ポリマー104の例
いくつかの実施態様では、電解質前駆体102の1種又は2種以上のポリマー104は1種又は2種以上のセルロースポリマーを含む。例えば、ポリマー104は1種又は2種以上のセルロースエステルポリマーを含んでよい。ポリマー104は有機ポリマーであってよい。前駆体102中には単独のポリマー104が採用されてよい。しかしながら、いくつかの実施態様では、ポリマー104の混合物が使用される。前駆体102が複数の異なるポリマー104を含む場合には、2種又は3種以上の異なるポリマー104は同じ量又は異なる量で存在してよい。いくつかの実施態様では、ポリマー104は1種又は2種以上のセルロースエステル及び1種又は2種以上の酢酸セルロースポリマーのうちの一方又は両方を含む。いくつかの実施態様では、ポリマー104は改質セルロースエステルを含む。この改質セルロースエステルは、初期セルロースエステルを可塑剤112の少なくとも1種で改質することにより形成される。
【0024】
ポリマー104の一例としては、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらのうちの2種又は3種以上の混合物が挙げられる。いくつかの実施態様では、ポリマー104は、カルボキシメチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロース、及び酢酸セルロースのうちの1種又は2種以上に限定される。
【0025】
いくつかの実施態様では、ポリマー104はセルロースポリマー、例えばポリマー主鎖に直接結合された遊離ヒドロキシ基を有するセルロースエステルを含むことにより、ポリマー104中に存在する総ヒドロキシ基を基準として少なくとも1%、又は少なくとも2%、且つ5%以下の量で遊離ヒドロキシル含量を提供する。ポリマー104中の残存ヒドロキシ基は、遊離ヒドロキシル含量が比較的低くなるようにエステル化することができる。
【0026】
前駆体102の組成において、ポリマー104は前駆体102中に少なくとも1重量%且つ50重量%以下で存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、ポリマー104は前駆体102中に少なくとも2重量%且つ15重量%以下の量で存在してよい。いくつかの実施態様では、ポリマー104は前駆体102中に少なくとも3重量%且つ10重量%以下の量で存在してよい。
【0027】
重合性成分106の例
重合性成分106は概ね1種又は2種以上の比較的小さな分子(例えばモノマー、オリゴマー、又はこれに類するもの)を含む。これらの分子を合体することにより、より大きな分子(マクロ分子又はポリマー)を形成することができる。重合性成分106は1種又は2種以上の光化学重合性材料を含んでよい。「光化学重合性」成分という用語は、例えばより大きい分子を形成するために、(例えば特定の波長範囲及び/又は強度の)光に晒された後に共有結合を介して合体され得る分子を意味するためにここでは使用される。例えば、「光化学重合性」成分106は、1種又は2種以上の適宜の光開始剤114の存在において適宜の特性を有する光(紫外線(UV)、可視線、又は赤外線)で照射されると重合するアクリレート材料又はエポキシであってよい。さらに後述するように、光開始剤114は光に晒された後、重合性成分の重合を促進することができる。
【0028】
重合性成分106を合体することにより、線状マクロ分子及び/又は三次元マクロ分子(例えば架橋ポリマー)を形成することができる。重合性成分106は、フリーラジカル重合、酸触媒(カチオン)重合、又は両者の組み合わせを介して合体(例えば重合、硬化など)することができる。
【0029】
重合性成分106は、光重合反応に関与し得る任意の材料、例えば光重合モノマー、オリゴマー、又はポリマー、又は光開始剤又は共開始剤を含んでよい。このような重合性成分106は、光に晒されるとフリーラジカルが生成されるフリーラジカル光硬化に関与するように、又はエポキシの反応及び硬化のために光に晒されることによって酸が生成される酸触媒光硬化に関与するように、又はその両方に関与するように構成されてよい。
【0030】
重合性成分106は、1種又は2種以上のフリーラジカル重合性化合物を含んでよい。このような重合性成分106の例は、エチレン不飽和型重合性モノマー及び/又はオリゴマー及びポリマー、例えば単官能性又は多官能性アクリレート(例えばメタクリレート)を含む。このようなフリーラジカル重合性化合物は、少なくとも1つのエチレン不飽和型重合性結合を含み、2つ又は3つ以上のこのような不飽和型部分を含んでよい。これらの材料は少なくとも1つのエチレン不飽和型重合性結合を含み、付加(例えば又はフリーラジカル)重合を施すことが概ね可能である。フリーラジカル重合を介して反応する重合性成分106の例は、モノ-、ジ-、及びポリ-アクリレート及びメタクリレートを含む。モノ-、ジ-、及びポリ-アクリレート及びメタクリレートの一例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[l-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニル-ジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチル-メタン、及びトリス-ヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレートが挙げられる。重合性成分106として使用されるポリエチレングリコールのビス-アクリレート及びビス-メタクリレートの分子量は概ね200~約500である。フリーラジカル重合を介して反応する重合性成分106の他の例は、アクリレートモノマー及びアクリレートオリゴマーの共重合性混合物を含む。重合性成分106の他の例は、ビニル化合物、例えばスチレン及びスチレン誘導体、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、及びフタル酸ジビニルを含む。概ね、重合性成分106は、上記フリーラジカル重合性材料のうちのいずれか2種又は3種以上の混合物を含んでよい。
【0031】
重合性成分106のうちの1種又は2種以上が酸触媒重合性化合物であってよい。酸触媒反応に関与し得る重合性成分106の例は、光重合性エポキシ材料(例えば開環反応を介して重合され得る少なくとも1つのオキシラン環を有する有機化合物)を含む。「エポキシド」とも呼ばれるこのようなエポキシ材料は、モノマーエポキシ化合物及びポリマーエポキシドを含んでよい。重合性成分106として使用されるエポキシドは、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であってよい。このような材料は概ね、1分子当たり少なくとも1つの重合性エポキシ基を平均して含む。いくつかの実施態様では、このような材料は1分子当たり約1.5~約2の重合性エポキシ基を含む。1分子当たりの「平均」エポキシ基数は、エポキシ材料中のエポキシ基の総数を、存在するエポキシ含有分子の総数で割り算することによって判定される。重合性成分106として使用され得るポリマーエポキシ材料は、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えばポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格(主鎖)オキシラン単位を有するポリマー(例えばポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えばグリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)を含む。
【0032】
重合性成分106として使用されるエポキシ材料は、低分子量モノマー材料から高分子量ポリマーまで様々であってよい。これらのエポキシ材料は種々様々な主鎖構造と、置換(又はペンダント)基とを有していてよい。例えば、このようなエポキシ材料の主鎖は任意のタイプであってよく、主鎖上の置換基は、室温でカチオン光硬化をほとんど妨害しない任意の基であってよい。考えられ得る置換基の説明のための一例としては、ハロゲン基、エステル基、エーテル基、スルホン酸基、シロキサン基、ニトロ基、及びリン酸基が挙げられる。重合性成分106として使用されるエポキシ材料の分子量は少なくとも58~約100,000(グラム/モル)であってよい。いくつかの実施態様では、分子量は100,000超である。
【0033】
重合性成分106として使用するためのエポキシ材料例は、グリシジルエーテル(例えばビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(DGEBA))、ビスフェノールS及びビスフェノールFのグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ビスフェノール-A-拡張(extended)グリシジルエーテル、フェノール-ホルムアルデヒドグリシジルエーテル(例えばエポキシノボラック)、クレゾール-ホルムアルデヒドグリシジルエーテル(例えばエポキシクレゾールノボラック)、エポキシ化アルケン、1,2-エポキシオクタン、1,2,13,14-テトラデカンジエポキシド、1,2,7,8-オクタンジエポキシド、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキサンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3-エポキシ-シクロペンチル)エーテル、ポリプロピレングリコールで改質された脂肪族エポキシ、ジペンテンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ官能性を有するシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2-エポキシヘキサデカン、アルキルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p-tertブチルフェニルグリシジルエーテル、多官能性グリシジルエーテル、例えば1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリグリコールジエポキシド、ビスフェノールFエポキシド、及び9,9-ビス-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-フェニルフルオレノンを含む。
【0034】
重合性成分106の量は特に制限されてはいないが、これらの成分106は少なくとも1重量%且つ75重量%以下の量で前駆体102中に存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、重合性成分106は少なくとも5重量%且つ50重量%以下の量で存在する。いくつかの実施態様では、重合性成分106は少なくとも5重量%且つ10重量%以下の量で存在する。重合性成分106の量は概ね、前駆体102の所期特性(例えば前駆体102中の成分の溶解度)及び/又はsemi-IPN SPE 100の結果として生じる機械的特性(例えば機械的強度)に基づいて調節することができる。
【0035】
リチウムイオン源108の例
リチウムイオン源108は任意の1種又は2種以上のリチウム塩及び/又はリチウムイオン錯体(例えば無機及び/又は無機塩及び/又は錯体)を含んでよい。リチウムイオン源108として使用するのに適した無機塩の代表例は、アルカリ金属塩である。無機塩は弱塩基のリチウムカチオン及びアニオンを含んでよい。このようなアニオンは比較的大きいアニオン半径を有してよい。このようなアニオンの例は、I-、Br-、SCN-、CIO4
-、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、CF3COO-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、及びこれに類するものである。好適な無機リチウム塩のさらなる例は、LiSCN、(CF3SO2)2NLi、(CF3SO2)3CLi、及びこれに類するものを含む。リチウムイオン源108として使用するためのリチウム塩及び錯体の例は、硝酸リチウム(LiNO3)、ヨウ化リチウム(LiI)、硫化リチウム(Li2S)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ヘキサフルオロヒ酸(V)リチウム(LiAsF6)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)を含む。いくつかの実施態様では、リチウムイオン源108として使用するリチウム塩は、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiBF4、又はこれらの塩のうちの1種又は2種以上の混合物に限定される。リチウムイオン源は、約1重量%~約80重量%の濃度で前駆体102中に存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,10-8,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、リチウムイオン源108は、約5重量%~約40重量%の濃度で前駆体102中に存在している。リチウムイオン源108の重量%は、所与の塩の構造及び分子量に基づいて調節されてよい。
【0036】
溶媒110の例
前駆体102の溶媒110は概ね、成分104,106,108,112,114,116及び118を溶解且つ/又は分散し得る任意の溶媒(例えば有機溶媒)であってよい。大抵の実施態様では、少なくともポリマー104は溶媒110中に溶解する(すなわち溶解性である)。いくつかの実施態様では、前駆体組成物102中に使用される1種又は2種以上の溶媒110のそれぞれの沸点は90℃以上である。いくつかの実施態様では、前駆体組成物102中に使用される1種又は2種以上の溶媒110のそれぞれの沸点は少なくとも100℃である。いくつかの実施態様では、前駆体組成物102中に使用される1種又は2種以上の溶媒110のそれぞれの沸点は少なくとも150℃である。いくつかの実施態様では、前駆体組成物102中に使用される1種又は2種以上の溶媒110のそれぞれの沸点は約200℃を上回る。概ね、溶媒110の沸点は500℃未満である。溶媒110が2種又は3種以上の異なる有機溶媒を含む場合、有機溶媒のうちの任意の2種間の沸点の差は、10℃を上回ってよい。
【0037】
溶媒110の例は1種又は2種以上のヒドロキシル有機溶媒(例えばアルコール)又は非ヒドロキシル溶媒を含む。溶媒110は概ね第一級及び/又は第二級アルコール並びに一価及び/又は多価アルコールを含んでよいが、いくつかの実施態様では、溶媒110として使用されるアルコールはオレフィン不飽和を含まない。換言すれば、いくつかの実施態様では、アルコール溶媒110は炭素-炭素二重結合を含まない。ヒドロキシル溶媒110の例は、脂環式及び芳香族の炭素炭素部分のうちのいずれも有しない、いずれかを有する、又は両方とも有する直鎖又は分枝鎖アルコールを含む。好適な直鎖第一級アルコール溶媒の代表例は、エタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチル-l-ヘキサノール、1-デカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びベンジルアルコールを含む。分枝鎖アルコール溶媒110の代表例はイソブチルアルコール、イソアミルアルコール、及び第二ブチルカルビノールを含む。第二級アルコール溶媒110の代表例は、イソプロピルアルコール、第二ブチルアルコール、第二アミルアルコール、ジエチルカルビノール、メチルイソブチルカルビノール、メチル-3-ヘプタノール、ジイソブチルカルビノール、ドデカノール-Z、メチルアリルカルビノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキシルカルビノール、フェニルメチルカルビノール、及び同様の材料を含む。これらのアルコール溶媒110のいずれかの組み合わせを使用することができる。
【0038】
いくつかの実施態様では、溶媒110は同じ分子中にエーテル及びアルコール双方の官能基を有するグリコールエーテルを含む。このようなグリコールエーテル溶媒110の代表例は、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、及びメトキシイソプロパノールを含む。溶媒110はこれらの又は同様の材料の混合物を含んでよい。溶媒110のさらなる例としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ケトン溶媒、エステル溶媒、炭酸塩溶媒、及びこれに類するものが挙げられる。
【0039】
任意の適量の1種又は2種以上の溶媒110が前駆体102中に含まれてよい。溶媒110は少なくとも50重量%且つ95重量%以下の量で前駆体102中に存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、溶媒110は少なくとも70重量%且つ90重量%以下の量で前駆体102中に存在する。いくつかの実施態様では、溶媒110は少なくとも75重量%且つ90重量%以下の量で前駆体102中に存在する。
【0040】
いくつかの実施態様では、溶媒110は、溶媒110中の成分104,106,108,110,112,114,116,118のうちの1種又は2種以上の相対溶解度に基づいて選択されてよい。いくつかの実施態様では、溶媒は、溶媒110中のポリマー104の予想溶解度に少なくとも部分的に基づいて、選択されてよい。例えば、ポリマー104及び溶媒に関して、溶解度パラメータ(総ハンセンパラメータ)が判定されてよい。溶媒110は、ポリマー104が溶媒110中に可溶性であるはずであることをこれらのパラメータが示すように選択することができる。例えば、1種又は2種以上のポリマー104及び1種又は2種以上の溶媒110の溶解度パラメータは所定の範囲内にあってよい。いくつかの実施態様では、溶媒110の総溶解度パラメータは、1種又は2種以上のポリマー104の総溶解度パラメータに等しいか又はこれを上回る。このような実施態様では、溶媒110の混合物が使用される場合、この混合物の総溶解度パラメータは、ポリマー104の総溶解度パラメータに等しいか又はこれを上回る。溶媒110は、溶媒のプロフィールが前駆体102の堆積中に変化するとしても(例えば
図3の工程318に関して後述するように、溶媒が前駆体102のフィルムの調製中に蒸発する場合)、ある特定の範囲を有する所定の総溶解度パラメータを維持するようにさらに選択されてよい。
【0041】
種々の分子の溶解度パラメータは概ね、製造業者の情報(入手できる場合)から判断し、同様の材料の研究から推定し、且つ/又は溶解度研究を介して判断することができる。例えば、有機溶媒混合物の総ハンセンパラメータは、溶液中の個々の有機溶媒成分の体積分率の和を用いて計算することができる。総ハンセンパラメータは、溶解度パラメータの一例であり、1つの材料が別の材料中に溶解すると予想されるか否かに関する情報を提供する。各分子には3つのハンセンパラメータが与えられる。ハンセンパラメータのそれぞれ、は概ねMpa0.5で測定される。すなわち(1)δDパラメータは分子間の分散結合からのエネルギーを表し、(2)δPパラメータは、分子間の極性結合からのエネルギーを表し、そして(3)δHパラメータは分子間の水素結合からのエネルギーを表す。総ハンセン溶解度パラメータ(δ)は、δ=δD
2+δP
2+δPH
2によって与えられる。3つのハンセンパラメータ(δD,δP,δH)は、「ハンセン空間」としても知られる3つの次元内の点に対応する座標として処理することができる。2つの分子がこの三次元空間内で近くにあればあるほど、これらの分子は互いに溶解する(すなわち可溶性である)確率が高くなる。一例として、溶媒110及びポリマー104の総ハンセンパラメータが、ポリマー104が溶媒110中に溶解することを示すかどうかを判定するために、溶媒110及びポリマー104に対応するδD,δP及びδHの値に基づいて、相対エネルギー差(例えばハンセン空間内の溶媒及びポリマー104の座標(δD,δP,δH)間の差)を判定することができる。
【0042】
可塑剤112の例
前駆体102中に任意の可塑剤112を使用することができる。1種又は2種以上の可塑剤112は概ね、ポリマー104の溶融温度及び/又は溶融粘度を低下させるように選択される。可塑剤112はモノマー又はポリマーであってよい。いくつかの実施態様では、可塑剤112は少なくとも1種のリン酸塩可塑剤、安息香酸塩可塑剤、アジピン酸塩可塑剤、フタル酸塩可塑剤、グリコール酸エステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、及び/又はヒドロキシル官能化可塑剤を含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112は、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸クレシルジフェニル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸ジフェニルビフェニル、リン酸トリオクチル、リン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジベンジル、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、クエン酸トリエチル、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル-トリ-n-ブチルシトレート、及びアセチル-トリ-n-(2-エチルヘキシル)シトレート、のうちの1種又は2種以上を含む。
【0043】
いくつかの実施態様では、可塑剤112は、(1)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、及び/又はリン酸の残基を含む少なくとも1つの酸残基と、(2)炭素原子数が最大約20の脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールの1つ又は2つ以上の残基を有するアルコール残基とを含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112はアルコール残基、例えばステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコール残基を含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112は、安息香酸塩、フタル酸塩、リン酸塩、アリーレン-ビス(ジアリールホスフェート)、及びイソフタル酸塩のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施態様では、可塑剤はジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)を含む。
【0044】
いくつかの実施態様では、可塑剤112は(1)C2-10二酸残基、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸を含有する脂肪族ポリエステルと、(2)C2-10ジオール残基とを含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112は、ジオール残基、例えばC2-C10ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,5-ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール)のうちの少なくとも1種の残基を含む。
【0045】
いくつかの実施態様では、可塑剤112はポリグリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールを含む。これらのポリグリコールは、低分子量二量体及び三量体及び/又は高分子量オリゴマー及びポリマーからの分子を含んでよい。いくつかの実施態様では、可塑剤112中に含まれるポリグリコールの分子量は約200~約2,000であってよい。
【0046】
いくつかの実施態様では、可塑剤112は、Resoflex(登録商標)R296可塑剤、Resoflex(登録商標)804可塑剤、ソルビトールヘキサプロピオネート(SHP)、キシリトールペンタプロピオネート(XPP)、キシリトールペンタアセテート(XPA)、グルコースペンタアセテート(GPP)、グルコースペンタプロピオネート(GPA)、及びアラビトールペンタプロピオネート(APP)のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112は、(1)約5~約95重量%のC2-C12炭水化物有機エステルであって、炭水化物が約1~約3の単糖単位を含むものと、(2)約5~約95重量%のC2-C12ポリオールエステルであって、ポリオールがC5又はC6炭水化物から誘導されたものと、を含む。いくつかの実施態様では、可塑剤112のポリオールエステルは酢酸ポリオールを含まず、又は含有しない。
【0047】
いくつかの実施態様では、可塑剤112は少なくとも1種の炭水化物エステルを含み、そして炭水化物エステルの炭水化物部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、及びラフィノースのうちの1種又は2種以上から誘導される。いくつかの実施態様では、ポリマー104(例えばセルロースエステル)は、可塑剤112のうちの1種又は2種以上を使用して改質される。可塑剤112は、約1重量%~10重量%の量で前駆体102中に存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、可塑剤112は前駆体102の約5重量%以下である。
【0048】
光開始剤114の例
前駆体102の光開始剤114はフリーラジカル重合のための1種又は2種以上の光開始剤を含んでよい。光開始剤は重合性成分106の少なくとも1種の存在においてフリーラジカルを発生させる。このようなフリーラジカル光開始剤114は、光重合放射線、例えば紫外線又は可視線に晒されるとフリーラジカルを発生させ得る任意の化合物を含む。フリーラジカル光開始剤114の例は、トリアジン化合物、チオキサントン化合物、ベンゾイン化合物、カルバゾール化合物、ジケトン化合物、ホウ酸スルホニウム化合物、ジアゾ化合物、ビイミダゾール化合物、及びこれらの任意の化合物であってよい。光開始剤114は、ベンゾフェノン化合物、例えばベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アントラキノン化合物、及びアセトフェノン化合物(例えば2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオ-フェノン、パラ-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、パラ-t-ブチルジクロロアセトフェノン、ベンゾフェノン、4-クロロ-アセトフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン)を含んでよい。光開始剤144として使用し得るさらなる化合物は、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、チオキサントン化合物、ベンゾイン化合物、カルバゾール化合物、ジケトン化合物、ホウ酸スルホニウム化合物、ジアゾ化合物、及びビイミダゾール化合物を含む。
【0049】
前駆体102の光開始剤114は、酸重合のための1種又は2種以上の光開始剤を含んでよい。重合性成分106(例えば具体的には上記エポキシ重合性成分106)の重合に関与するのに適した酸を発生させるために、種々の化合物を使用することができる。このような「光酸発生剤」は酸性であってよいのに対して、他のものは非イオン性であってよい。酸発生剤の例は、オニウム塩酸発生剤、例えばジアゾニウム塩(例えばポリアリールジアゾニウム)、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、及び/又はスルホニウム塩を含む。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の例は、ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩を含む。このような塩中の対アニオンは、錯体金属ハロゲン化物、例えばテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、及びアレーンスルホン酸塩を含む。オニウム塩は、1種又は2種以上のオニウム塩部分を有するオリゴマー又はポリマー化合物であってよい。
【0050】
上記光開始剤114は、約0.1重量%~約10重量%の量で、個別に又は組み合わせた状態で前駆体102中に分散されてよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。
【0051】
いくつかの実施態様では、セラミック粒子116(下記)は光開始剤114として機能することができる。例えばTiO2及び/又はZnO粒子は、光重合反応を開始するように機能することができる。
【0052】
セラミック粒子116の例
上述のように、セラミック粒子116は、semi-IPN SPE 100に、改善された機械的強度及びイオン伝導率を提供する。具体的には、セラミック粒子116は、semi-IPN SPE 100のイオン伝導率及び機械的強度の両方を予期せぬほどに大きく高めることが判った(下記試験例)。セラミック粒子116は、金属酸化物粒子、例えば、TiO2、Al2O3、SiO2、ZrO2、SnO2、WO3、Ta2O3又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0053】
セラミック粒子116は任意の形状を有してよい。例えば、セラミック粒子116は球形、楕円形、四面体形、ピラミッド形、立方八面体形、円筒形、多面体形、多腕形、及び/又は立方体形を有してよい。セラミック粒子116は、約1nm~約100nmの特徴的サイズ(例えば直径)を有するナノ粒子であってよい。いくつかの実施態様では、セラミック粒子116の直径は約0.5nm~約100nmである。いくつかの実施態様では、セラミック粒子116の直径は約1nm~約5nmである。上記粒径範囲の例は、セラミック粒子116に対する測定済粒径群からの平均粒径であってよい。いくつかの事例では、平均粒径は数平均直径を意味する。「平均直径」はD50粒径であってよい(すなわち測定された半分の粒子がより大きい直径を有しており、そして半分がより小さな直径を有している)。
【0054】
セラミック粒子116は概ね、約1重量%~約25重量%の量で前駆体102中に分散される(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。いくつかの実施態様では、セラミック粒子116は、約2重量%~約7重量%の量で前駆体102中に含まれる。いくつかの実施態様では、セラミック粒子116は、約3重量%~約5重量%の量で前駆体102中に含まれる。
【0055】
ビニル主鎖ポリマー118の例
上記のように、いくつかの実施態様では、前駆体はビニル主鎖及び約100,000未満の分子量を有する1種又は2種以上のポリマー118を含む。いくつかの実施態様では、ポリマー118の分子量は50,000未満である。いくつかの実施態様では、ポリマー118の分子量は25,000未満である。このようなポリマー118の例は、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(アルファオレフィン)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリスチレン、ポリ(アクリル酸)(及びこれらの塩)、ポリ(メタクリル酸)(及びこれらの塩)、及びこれに類するものを含む。これらの任意のビニル主鎖ポリマー118は、約1重量%~約10重量%の量で前駆体102中に存在してよい(重量%は前駆体102の成分104,106,108,110,112,114,116,118の総重量を基準とする)。
【0056】
semi-IPN SPEの調製方法及びこれを含む電極の例
図3は、
図1のsemi-IPN SPE 100を調製するためのプロセス300の例を示している。方法300は工程302で始まってよい。1種又は2種以上のポリマー104を溶媒110と合体する。例えば、所定の量のポリマー104(例えば酢酸セルロース)を所定の体積の溶媒110に添加してよい。上記のように、溶媒110は、ポリマー104が溶媒110中に溶解するように選択されてよい。結果として生じた、溶媒110中に溶解されたポリマー104を含む溶液の、ポリマー104の濃度は0.1重量%~30重量%であってよい(重量%は、溶媒中ポリマー溶液の総質量当たりのポリマー104の質量を基準とする)。
【0057】
工程304において、セラミック粒子116が調製される。セラミック粒子116は任意の適宜の方法を用いて調製されてよい。例えばセラミック材料粉末をボールミリング処理することにより、セラミック粒子116を調製することができる。いくつかの実施態様では、工程304が必要とならないように、セラミック粒子116が予め調製された形態で得られる。
【0058】
工程306において、セラミック粒子116のスラリーを調製する。例えば、セラミック粒子116は、工程302においてポリマー104を溶解するために使用された所定の体積の溶媒110及び/又は他の溶媒110と合体してよい。セラミック粒子116及び溶媒110をボールミリング処理を介して合体することにより、溶媒110中にセラミック粒子116を分散することができる。セラミック粒子116のこの初期スラリーを次いで、工程302において調製された溶媒中ポリマー溶液のすべて又は一部と合体することができる。例えば、工程302の溶媒中ポリマー溶液を初期スラリーと合体してよい。いくつかの実施態様では、工程302の溶媒中ポリマー溶液の第1部分を、セラミック粒子116のスラリーを調製するためのセラミック粒子116のミリング処理の終了間際に初期スラリーと合体してよい。ミリング処理終了後、溶媒中ポリマー溶液の第2部分をこの混合物と合体してよい。セラミック粒子116に対するポリマー104の質量の比は約1~約600であってよい。いくつかの実施態様では、セラミック粒子116に対するポリマー104の質量の比は約1~約400であってよい。
【0059】
工程308において、可塑剤112を工程306の混合物と合体する。例えば、可塑剤112を、機械的撹拌機/ミキサー及び/又はボールミリング処理によって混合することを介して混合物と合体してよい。大まかに言えば、可塑剤112が混合物中に分散又は溶解されるのに十分な混合が提供される。ポリマー104に対する可塑剤112の質量比は概ね約0.001~約32である。
【0060】
工程310において、重合性成分106を工程308の混合物と合体する。例えば、重合性成分106を(例えば機械的ミキサー及び/又はボールミルを使用した)混合を介して、混合物と合体してよい。重合性成分106に対するポリマー104の質量比は概ね約0.1~約20である。
【0061】
工程312において、リチウムイオン源108を工程310の混合物と合体する。例えば、リチウムイオン源108を(例えば機械的ミキサー及び/又はボールミルを使用した)混合を介して、混合物と合体してよい。いくつかの実施態様では、リチウムイオン源108を溶媒110のうちの1種又は2種以上の中に先ず溶解し、そして結果として生じた溶媒中リチウム溶液を、工程310の混合物と合体する。ポリマー104に対するリチウムイオン源108の質量比は約0.01~100である。上記
図1に関して記載したように、いくつかの実施態様では、工程312におけるリチウムイオン源108の添加は、後にsemi-IPN SPE 100の調製が望まれるときまで遅らされる。例えば、前駆体103の予混合部分103(
図1参照)を、(例えば工程302,304,306,308,310,314及び/又は316を実施することにより)先ず調製することができる。この予混合前駆体部分103は、適宜の貯蔵条件下(例えば重合性成分106及び/又は光開始剤114の反応を誘発し得る光が存在しないという条件下)で貯蔵され、そして所望されるときに使用されてよい。
【0062】
工程314において、光開始剤112を工程312の混合物と合体する。例えば、光開始剤112を(例えば機械的ミキサー及び/又はボールミルを使用した)混合を介して、混合物と合体してよい。重合性成分106に対する光開始剤112の質量比は概ね約0.001~約10である。いくつかの実施態様では、工程314における光開始剤112の添加は、後にSPE 100の調製が望まれるときまで遅らされてよい。例えば、光開始剤112を有しない前駆体102の一部(又は予混合前駆体部分103)を、semi-IPN SPE 100の調製が所望される前に光化学反応がかなりの程度まで発生するリスクなしに貯蔵することができる。
【0063】
工程316において、ビニル主鎖ポリマー118を、任意には工程314の混合物と合体してよい。例えば、ビニル主鎖ポリマー118を(例えば機械的ミキサー及び/又はボールミルを使用した)混合を介して、混合物と合体してよい。ビニル主鎖ポリマー118に対するポリマー104の質量比は約1重量%~約10重量%である。
【0064】
工程318において、先行の工程の前駆体102の1つ又は2つ以上の層を基板に被着する。基板は任意の適宜の材料(例えばアルミニウム)であってよい。前駆体102は、任意の適宜の方法を用いて基板に被着してよい。このような方法の一例としては、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ホッパー塗布、ローラ塗布、スプレー塗布、電気化学的塗布、インクジェット印刷、及びフレキソグラフィック印刷が挙げられる。いくつかの実施態様では、前駆体102の層を所望のパターンでコンタクトプリントしてよい(例えばこれにより、所望のパターンを成すsemi-IPN SPE 100の薄膜を調製し、且つ/又は適宜のサイズ、形状、パターンなどのセル200を調製する)。このようなコンタクトプリント・アプローチはsemi-IPN SPE 100を相対的に低いコストで大量生産するための規模拡大を容易にすることができる。例えば、このコンタクトプリント・アプローチは前駆体102の層が供与部材に被着され、熱及び/又は圧力を加えることを介して受容部材に移動させられることに関与し得る。前駆体102の層と受容部材との間に、接着層が存在してよい。大まかに言えば、被着された前駆体102は、工程320へ進む前に所定の時間にわたって(例えば約100℃)の高められた温度で乾燥させておいてよい。
【0065】
工程320において、工程318で被着された前駆体102が硬化される。例えば、前駆体102を熱及び/又は光に晒してよい。例えば、工程318の前駆体102の層に、所定の時間(例えば約1秒~10分以上)にわたって、光(例えばUV光)を照射することができる。大まかに言えば、硬化プロセスは、タックフリーのsemi-IPN SPE 100を調製するために必要とされる限り続行してよい。重合に続いて、semi-IPN SPE 100をさらに乾燥させ、そして所定の時間にわたって加熱する(例えば1時間又は2時間以上にわたって100℃~150℃)ことによりアニールしてよい。結果として生じるsemi-IPN SPE 100は薄膜(例えば厚さが200マイクロメートル未満)であってよい。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは150マイクロメートル未満である。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは100マイクロメートル未満である。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100の厚さは、約10マイクロメートル~100マイクロメートル未満である。
【0066】
工程322において、工程320のsemi-IPN SPE 100を使用して、セル(例えば
図2に示されたリチウムセル200)を調製する。例えば、SPEフィルム100を2つの電極202,204間に配置(サンドイッチ)することにより、
図2に示されたセル200と同じ又は同様のセルを得ることができる。いくつかの実施態様では、複数のセル200を調製し、そして適宜に組み合わせる(例えば直列に積み重ねる)ことにより、所望の電圧のバッテリを調製することができる。セル200を消費し充電するために、適宜の電気的接点を設けてよい。
【0067】
工程322において調製されたセル200は任意の適宜の形態を有していてよい。例えば、セル200は、使用される電極のタイプに基づいて形成されてよい。例えば、セル200の電極202,204のうちの一方又は両方は、リチウムイオンが通過しないブロッキング電極であってよい。ブロッキング電極の例はアルミニウムフォイル又はステンレス鋼フォイルを含む。このようなフォイルの厚さは約5マイクロメートル~約50マイクロメートルであってよい。電極202,204としてブロッキング電極を有するセル200は、イオン伝導率測定のために使用することができる。いくつかの事例では、電極202,204のうちの一方又は両方がリチウム金属フォイルであってよい。リチウム金属フォイルの厚さは約25~約100マイクロメートルであってよい。リチウムフォイル電極202,204を有するセル200を、例えばsemi-IPN SPE 100の電気化学的安定性ウィンドウを判定するために、semi-IPN SPE 100の存在と関連するリチウムめっき及び/又はストリッピング挙動を判定するために、そして類似の目的のために使用してよい。いくつかの実施態様では、カソード202は任意の他の適宜のカソード材料(例えば厚さが約20~200マイクロメートルの酸化リチウムニッケルマンガンコバルト)であってよく、そしてアノード204は任意の適宜のアノード材料(例えば上記のような、厚さが約20~200マイクロメートルの黒鉛、又はリチウム金属)であってよい。
【0068】
一例としては、セル200は、前駆体102を金属フォイル(例えばアルミニウムフォイル、ステンレス鋼フォイル、又はこれに類するもの)上、又は他の表面(例えばガラス)上に塗布することにより調製されてよい。前駆体102のフィルムは次いで、(例えば光開始剤114を活性化するために)所定の時間にわたって適宜の出力及び波長を有する光(例えばUV光)で照射してよい。次いで、フィルムを(例えば50~100℃の温度で)硬化させ乾燥させることにより、厚さが約5マイクロメートル~約500マイクロメートルの薄膜semi-IPN SPE 100を生成する。フィルムsemi-IPNM SPE 100を金属フォイル又は他の表面から(例えば剥離を介して)取り除いてよい。フィルムsemi-IPN SPE 100を次いでアノード204とカソード202との間にサンドイッチする。
【0069】
上記のように、カソード202は、任意のカソード活性材料及び/又は成分を含んでよい。例えば、カソード活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(LiNixMnyCozO2)、酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム(LiNixCoyAlzO2)、又はこれらの混合物を含んでよい。他のカソード成分は導電性カーボン、ポリマーバインダー、他の添加剤、及びこれらの任意の組み合わせを含んでよい。ポリマーバインダーは例えばポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カルボキシメチルセルロース、ポリ(アクリル酸)、スチレン-ブタジエンゴム、又はこれらのうちの任意の1種又は2種以上の混合物を含んでよい。カソード202は、任意の適宜の厚さを有するフィルムであってよい。いくつかの実施態様では、カソード202の厚さは約20~約500マイクロメートルである。
【0070】
また上記のように、アノード204は、任意のアノード活性材料及び/又は他のアノード成分からなっていてよい。アノード活性材料は例えば黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、シリコン、ドープ型シリコン、酸化ケイ素(SiOx)、スズ、酸化スズ、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、又はこれらの混合物を含んでよい。他のカソード成分は、導電性カーボン、ポリマーバインダー、及び/又は他の添加剤のいずれかを含んでよい。ポリマーバインダーは例えばポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カルボキシメチルセルロース、ポリ(アクリル酸)、スチレン-ブタジエンゴム、又はこれらの混合物を含んでよい。アノード204は、任意の適宜の厚さを有するフィルムであってよい。いくつかの実施態様では、アノード204の厚さは約20~約500マイクロメートルである。
【0071】
semi-IPN SPE 100のフィルムがカソード202とアノード204との間にサンドイッチされた後、semi-IPN SPE 100をカソードとアノードとの間に積層するように圧力を加えることにより、完成済セル200を形成する。この積層プロセスは、semi-IPN SPE 100とカソード及びアノードとの間に生じるのに適した界面を生成することができる。加えられる圧力は、1平方メートル当たり約1~108ニュートンであってよい。いくつかの実施態様では、加えられる圧力は約103~105N/m2である。圧力を加えられている間、熱を加えることができる。熱は例えば電気的加熱及び/又は赤外加熱を介して提供されてよい。この加熱を介して達成される温度は約25~250℃であってよい。いくつかの実施態様では、カソード202とアノード204との間にサンドイッチされたsemi-IPN 100に圧力を加えている間の温度は、約40~約80℃であってよい。
【0072】
積層フィルムは、所望の形状のセル200を生成するために、適宜に成形された片にカットすることができる。例えば、セル200は(例えばパウチセルとして使用するための)方形形状、又は(例えばコインセルとして使用するための)円筒形状又は円形ディスク形状を有してよい。例えば、パウチセルの場合、アルミニウム/銅タブをセル200のカソード202及びアノード204に溶接することができる。結果として生じたセル200を積み重ねてパウチ内に入れることができる。パウチは真空シールされる。円筒形セルの場合、セルを巻くことにより、円筒体を形成し、そして円筒形の缶内に入れ、これらの缶を次いでシールする。コインセルの場合、セル200の円形ディスクをコインセルケーシング内に入れる。これらのケーシングをクリンプすることにより、コインセルをもたらす。これらのタイプのセルのいずれかを、充填-放電動作を実施するために標準的な充填-放電回路に接続することができ、あるいはインピーダンス分光法測定のために、ポテンショスタット又は誘電分光計に接続することができる。
【0073】
いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100はカソード202上に直接に調製されてよい。例えば、セル200は、前駆体102で(上記のような)カソード202を塗布することにより調製されてよい。前駆体で塗布されたカソード202は、(例えば光開始剤114を活性化するために)所定の時間にわたって適宜の出力及び波長を有する光で照射してよい(例えばUV光及びマイクロ波照射)。次いで、フィルムを(例えば50~100℃の温度で)硬化させ乾燥させることにより、厚さが約5マイクロメートル~約500マイクロメートルの薄膜semi-IPN SPE 100を生成する。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100のフィルムの厚さは約50~150マイクロメートルである。結果として生じる構造(すなわち、semi-IPN SPE 100フィルムで塗布されたカソード202)は、上記のように圧力及び/又は熱を加えることにより、アノード204と積層されてよい。結果として生じたセル200をカットして組み立てることにより、上記のような任意のセルタイプにすることができる。
【0074】
いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100はアノード204上に直接に調製されてよい。例えば、セル200は、前駆体102で(上記のような)アノード204を塗布することにより調製されてよい。前駆体で塗布されたアノード204は、(例えば光開始剤114を活性化するために)所定の時間にわたって適宜の出力及び波長を有する光で照射してよい(例えばUV光及びマイクロ波照射)。次いで、フィルムを(例えば50~100℃の温度で)硬化させ乾燥させることにより、厚さが約5マイクロメートル~約500マイクロメートルの薄膜semi-IPN SPE 100を生成する。いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100のフィルムの厚さは約50~150マイクロメートルである。結果として生じる構造(すなわち、semi-IPN SPE 100フィルムで塗布されたアノード204)は、上記のように圧力及び/又は熱を加えることにより、カソード202と積層されてよい。結果として生じたセル200をカットして組み立てることにより、上記のような任意のセルタイプにすることができる。
【0075】
いくつかの実施態様では、semi-IPN SPE 100は、スタンドアローン・フィルムとして調製し、上記のようにカソード202とアノード204との間に積層することができる。例えば、semi-IPN SPE 100は、適宜の電流コレクタ、例えば金属シート又はフォイル上に予め塗布されてよい。いくつかの事例では、前駆体混合物をカソード及びアノードフィルムと合体し、そしてその場で硬化させてよい。
【0076】
試験例
semi-IPN SPE 100の例の調製が下記実施例に記載されている。これらの実施例では、ヒュームドシリカ粒子の一次粒径は10~20nmである。ヒュームドアルミナ粒子の一次粒径は80nmである。ヒュームドチタニア(すなわち二酸化チタン)粒子の一次粒径は21nmである。ヒュームドチタニア粒子は80~90%がアナターゼであり、より小さな部分がルチルである。
【0077】
実施例1:酢酸セルロース(CA)及び重合性オリゴマーを含むSemi-IPN固体ポリマー電解質前駆体の調製
酢酸セルロース(0.72g)を2-メトキシエタノール(7.73g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、セルロースエステル溶液(8.45g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,0.20g)、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR 9035,0.04g)、LiClO4(0.24g)、及びアセトン中の光開始剤2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンの9重量%溶液(0.09g)と合体した。結果として生じた溶液を撹拌を介して均質化した。
【0078】
この前駆体組成物中の成分の重量パーセンテージは、8.0%のCA、2.6%のLiClO4、2.2%のSR 259、0.4%のSR 9035、及び0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物中の成分は、59.7%のCA、19.8%のLiClO4、16.6%のSR 259、3.3%のSR 9035、及び0.7%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンであった。
【0079】
実施例2:酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)及び重合性オリゴマーを含むSemi-IPN固体ポリマー電解質前駆体の調製
酢酸プロピオン酸セルロース(0.68g)を1-メトキシ-2-プロパノール(6.13g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、セルロースエステル溶液(6.8g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,0.20g)、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR 9035,0.05g)、LiClO4(0.24g)、及びアセトン中の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンの9重量%溶液(0.10g)と合体した。溶液を撹拌を介して均質化した。
【0080】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、9.1%のCAP、3.3%のLiClO4、2.2%のSR 259、0.6%のSR 9035、及び0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、57.4%のCAP、20.5%のLiClO4、17.0%のSR 259、4.3%のSR 9035、及び0.8%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンであった。
【0081】
実施例3:酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、重合性オリゴマー、及びポリカプロラクトントリオール可塑剤を含むSemi-IPN固体ポリマー電解質前駆体の調製
酢酸プロピオン酸セルロース(16.30g)をジメチルホルムアミド(83.7g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、第1セルロースエステル溶液(16.3%,6.24g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,0.29g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.145g)、ポリカプロラクトントリオール(Mw=300 0.076g)、ヨウ化リチウム(0.48g)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(0.01g)、及び1-メトキシ-2-プロパノール(2.83g)と合体した。溶液を撹拌を介して均質化した。
【0082】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、10.1%のCAP、4.8%のLiI、2.9%のSR 259、1.4%のSR 494、0.8%のポリ(カプロラクトン トリオール)、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、28.1%の1-メトキシ-2-プロパノール、及び51.8%のジメチルホルムアミドであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、50.2%のCAP、23.9%のLiI、14.3%のSR 259、7.2%のSR 494、3.1%のポリカプロラクトントリオール、及び0.8%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンであった。
【0083】
実施例4:酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、重合性オリゴマー、及びシリカを含むSemi-IPN固体ポリマー電解質前駆体102
酢酸プロピオン酸セルロース(CAP,16.30g)をジメチルホルムアミド(83.7g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、第1セルロースエステル溶液(16.3%,31.18g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,1.45g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.73g)、ポリカプロラクトントリオール(Mw=300,0.72g)、及び1-メトキシ-2-プロパノール(11.25g)と合体することにより、第2溶液を調製した。溶液を撹拌を介して均質化した。別個に、ヨウ化リチウム(0.24g)をヒュームドシリカ(0.22g)と合体し、そしてこの固形混合物を均質化することにより、シリカ粒子を分散した。固形混合物(0.46g)を4.54gの上記第2溶液と合体し、そして撹拌を介して均質化した。
【0084】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、10.2%のCAP、4.8%のLiI、2.9%のSR 259、1.5%のSR 494、1.4%のポリ(カプロラクトントリオール)、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、22.5%の1-メトキシ-2-プロパノール、52.2%のジメチルホルムアミド、及び4.4%のシリカであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、40.2%のCAP、19.1%のLiI、11.5%のSR 259、5.7%のSR 494、5.7%のポリカプロラクトントリオール、0.5%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、及び17.2%のシリカであった。
【0085】
実施例5:酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、重合性オリゴマー、及びアルミナを含むSemi-IPNナノ複合体固体ポリマー電解質前駆体組成物
酢酸プロピオン酸セルロース(CAP,16.30g)をジメチルホルムアミド(83.7g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。別個に、ヨウ化リチウム(1.10g)をアルミナ(1.00g)と合体し、そしてその結果生じた固形混合物を均質化することにより、アルミナ粒子を分散した。セルロースエステル溶液(16.3%,3.12g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,0.14g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.07g)、ポリカプロラクトントリオール(Mw=300 0.04g)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(0.06g)、ヨウ化リチウムとアルミナとの固形混合物、及び1-メトキシ-2-プロパノール(1.19g)と合体した。スラリーを撹拌を介して均質化した。
【0086】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、10.1%のCAP、4.8%のLiI、2.9%のSR 259、1.4%のSR 494、0.8%のポリ(カプロラクトントリオール)、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロ-フェノン、23.7%の1-メトキシ-2-プロパノール、51.8%のジメチルホルムアミド、及び4.4%のシリカであった。ドライダウン形態において、重量パーセンテージは次の通り、すなわち41.2%のCAP、19.6%のLiI、11.8%のSR 259、5.9%のSR 494、3.1%のポリカプロラクトントリオール、0.5%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、及び17.9%のアルミナである。
【0087】
実施例6:酢酸プロピオン酸セルロース、重合性オリゴマー、チタニア、及びアルミナを含むSemi-IPNナノ複合体固体ポリマー電解質前駆体組成物
酢酸プロピオン酸セルロース(CAP,16.30g)をジメチルホルムアミド(83.7g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、第1セルロースエステル溶液(16.3%,31.18g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,1.45g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.73g)、ポリカプロラクトントリオール(Mw=300,0.72g)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(0.06g)、及び1-メトキシ-2-プロパノール(11.25g)と合体することにより、第2溶液を調製した。溶液を撹拌を介して均質化した。別個に、ヨウ化リチウム(0.24g)をアルミナ(0.11g)及びチタニア(0.11g)と合体した。結果として生じた固形混合物を均質化することにより、これらの粒子を分散した。第2溶液(4.54g)を、ヨウ化リチウムとアルミナとチタニアとの固形混合物(0.46g)に添加した。結果として生じたスラリーを撹拌を介して均質化した。
【0088】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、10.2%のCAP、4.8%のLiI、2.9%のSR 259、1.5%のSR 494、1.4%のポリ(カプロラクトントリオール)、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロ-フェノン、22.5%の1-メトキシ-2-プロパノール、52.2%のジメチルホルムアミド、及び2.2%のシリカ及び2.2%のチタニアであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、40.2%のCAP、19.1%のLiI、11.5%のSR 259、5.7%のSR 494、5.7%のポリカプロラクトントリオール、0.5%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、8.6%のアルミナ、及び8.6%のチタニアであった。
【0089】
実施例7:酢酸プロピオン酸セルロース、重合性オリゴマー、及びチタニアを含むSemi-IPNナノ複合体固体ポリマー電解質前駆体組成物
酢酸プロピオン酸セルロース(16.30g)をジメチルホルムアミド(83.7g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、第1セルロースエステル溶液(16.3%,31.18g)を、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(SR 259,1.45g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.73g)、ポリカプロラクトントリオール(Mw=300,0.72g)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン(0.06g)、及び1-メトキシ-2-プロパノール(11.25g)と合体することにより、第2溶液を調製した。
溶液を撹拌を介して均質化した。別個に、ヨウ化リチウム(0.24g)をチタニア(0.22g)と合体し、そして結果として生じた固形混合物を均質化することにより、粒子を分散した。第2溶液(4.54g)を、ヨウ化リチウムとチタニアとの固形混合物(0.46g)に添加した。スラリーを撹拌を介して均質化した。
【0090】
この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、10.2%のCAP、4.8%のLiI、2.9%のSR 259、1%のSR 494、1.4%のポリ(カプロラクトントリオール)、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロ-フェノン、22.5%の1-メトキシ-2-プロパノール、52.2%のジメチルホルムアミド、及び4.4%のチタニアであった。ドライダウン形態において、この前駆体組成物例中の成分の重量パーセンテージは、40.2%のCAP、19.1%のLiI、11.5%のSR 259、5.7%のSR 494、5.7%のポリカプロラクトントリオール、0.5%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、及び17.2%のチタニアであった。
【0091】
実施例8:酢酸プロピオン酸セルロース、重合性オリゴマー、チタニア、及び可塑剤としてのビス(2-エチルヘキシルアジペート)を含むSemi-IPNナノ複合体固体ポリマー電解質前駆体組成物
酢酸プロピオン酸セルロース(12.23g)を1-メトキシ-2-プロパノール(87g)中に撹拌しながら溶解することによって、セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(0.80g)を溶液に添加し、そして溶液を撹拌を介して均質化した。第1セルロースエステル溶液(12.2%,32.60g)を、ポリ(エチレングリコール)200ジアクリレート(SR 259,1.20g)、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(SR 494,0.6g)、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(4.80g)と合体することにより、第2溶液を調製した。溶液を撹拌を介して均質化した。別個に、酢酸プロピオン酸セルロース(3.10g)を1-メトキシ-2-プロパノール(96.90g)中に撹拌しながら溶解することにより、第3セルロースエステル溶液を調製した。完全な溶解後、チタニア(3.00g)を第3セルロースエステル溶液(9.68g)及び1-メトキシ-2-プロパノール(4.00g)と合体した。結果として生じたスラリーを撹拌を介して均質化することにより、粒子を分散した。ヨウ化リチウム(0.24g)をチタニア(0.22g)と合体し、そして結果として生じた固形混合物を均質化することにより、粒子を分散した。別個に、チタニアスラリー(0.57g)と、第2溶液(2.00)と、ヨウ化リチウム(0.21g)と、アセトン中の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノンの5%溶液(0.06g)とを合体した。結果として生じたスラリーを撹拌を介して均質化した。
【0092】
この前駆体組成物中の成分の重量パーセンテージは、7.2%のCAP、0.5%のビス(2-エチルヘキシル)アジペート、7.3%のLiI、2.2%のSR 259、1.1%のSR 494、0.1%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、3.6%のチタニア、67.5%の1-メトキシ-2-プロパノール、8.7%のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及び1.9%のアセトンであった。ドライダウン形態において、この例における成分の重量パーセンテージは、32.7%のCAP、2.1%のビス(2-エチルヘキシル)アジペート、33.2%のLiI、10.0%のSR 259、5.0%のSR 494、0.4%の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、及び16.6%のチタニアであった。
【0093】
実施例9:semi-IPN固体ポリマー電解質の調製及びイオン伝導率試験
上記例の前駆体組成物をアルミニウム基板上に塗布することにより、対応するsemi-IPN固体ポリマー電解質フィルムを得た。フィルムを塗布する前に、基板を30秒間にわたって5重量%KOH水溶液中に浸漬し、水で3回濯ぎ、イソプロパノールで濯ぎ、そして乾燥させた。前駆体組成物を、清浄化されたアルミニウムフォイルの表面上へ種々異なる湿潤被覆率でブレード塗布することにより、約75μm~150μmの乾燥フィルム厚をもたらした。重合性成分(例えばアクリレート)を光重合するために窒素流又はアルゴン流下で15秒間にわたってXe-Hg 1000Wを使用してUV光に晒す前に、5分間にわたって100℃で各塗膜を乾燥させた。次いで、試料を乾燥させ100℃~150℃の温度で1~2時間にわたってアニールすることにより、乾燥semi-IPN固体ポリマー電解質フィルムを得た。
【0094】
典型的には、乾燥semi-IPN固体ポリマー電解質フィルムは、25~60重量%の
図1のポリマー成分104と、2~7重量%の
図1の可塑剤112と、20~35重量%の
図1のリチウム塩及び/又は錯体108と、10~25重量%の重合性成分106(又はこれらの副生成物)と、10~25重量%の
図1のセラミック粒子116と、1~5重量%の
図1の光開始剤114(又はこれらの副生成物)とを含んだ。
【0095】
フィルムを2つのアルミニウム電極間に配置(例えばサンドイッチ)し、そして交流(AC)電圧10mV及び周波数掃引1MHz~1mHzで、電気化学的インピーダンススペクトルを記録することによって、semi-IPN固体ポリマー電解質フィルム例のイオン伝導率を試験した。
【数1】
に基づいて、ボード線図のプラトー領域内の測定されたインピーダンス値(R)からイオン伝導率値(σ)を判定した。式中、lはフィルムの厚さであり、Aはフィルムの接触面積である。イオン伝導率は室温(例えば約25℃)で判定された。
【0096】
図4は、上記実施例3~8の異なる前駆体組成物を使用して調製されたsemi-IPN SPEを含むセルのボード線
図400を示している。
【0097】
表2は、上記種々異なる固体ポリマー電解質フィルム例に関して判定されたイオン伝導率を示す。表2の情報は、電解質前駆体中にセラミック粒子を含むことによって、改善されたイオン伝導率が得られたことを示している。セラミック粒子を有する実施例4~7の前駆体から調製された固体ポリマー電解質フィルムのそれぞれは、セラミック粒子を欠いている実施例3の前駆体から調製された固体ポリマー電解質フィルムのものと比べてイオン伝導率が高められた。
【表2】
【0098】
下記表3は、種々異なるタイプの可塑剤を有する上記固体ポリマー電解質フィルム例に関して判定されたイオン伝導率を示している。表3の情報は、ポリカプロラクトントリオールの代わりに可塑剤としてビス(2-エチルヘキシル)アジペートを含むことにより、イオン伝導率が改善されることを示している。
【表3】
【0099】
実施例10:semi-IPN固体ポリマー電解質の動的機械分析
semi-IPN固体ポリマー電解質フィルム例の機械的及び熱的な特性を、温度掃引2℃/min、周波数1Hz(6.28rad/s)、歪み0.4%、及び加えられる力3.0グラムの張力下で動的機械分析(DMA)によって試験した。
図5は、実施例1~8の前駆体組成物を使用して調製されたsemi-IPN SPEのDMAデータのプロット500を示している。
図5に示されているように、本開示に記載された固体ポリマー電解質は、高いガラス転移温度135℃を有する。このことは、これらのsemi-IPN SPEを高温用途に適したものにする。さらに、semi-IPN SPEは約0.45Gpaの貯蔵弾性率を呈する。これは固体ポリマー電解質フィルムに有用である。
【0100】
本明細書中に記載されたシステム、装置、及び方法に改変、追加、又は省略を施してよい。システム及び装置の構成部分は一体化しても分離してもよい。さらに、システム及び装置の動作は、より多くの、より少ない、又は他の構成部分によって実施されてよい。方法は、より多くの、より少ない、又は他の工程を含んでよい。これに加えて、工程は任意の適宜の順序で実施されてよい。加えて、システム及び装置の動作を、任意の適宜の論理を用いて実施してよい。本明細書中に使用される「それぞれの」は、ある集合のそれぞれの員、又はある集合の部分集合のそれぞれの員を意味する。
【0101】
本明細書中では「又は(or)」は明示的に別段の指示がない限り、又は文脈により別段の指示がない限り、包含的であり且つ排他的ではない。したがって本明細書中では、「A又はB」は、明示的に別段の指示がない限り、又は文脈により別段の指示がない限り、「A、B、又はその両方」を意味する。さらに、「及び(and)」は明示的に別段の指示がない限り、又は文脈により別段の指示がない限り、共同的であり且つ個別的である。したがって、本明細書中では、「A及びB」は、「共同的又は個別的に、A及びB」であることを意味する。
【0102】
本開示の範囲は、本明細書中に記載され例示された実施態様に対する、当業者には明らかなすべての変更、置換、変化、修正、及び改変を含む。本開示の範囲は、本明細書中に記載又は例示された実施態様に限定されることはない。さらに、本開示は具体的な成分、エレメント、特徴、機能、動作、又は工程を含むものとして、本明細書中にそれぞれの実施態様を記載し例示してはいるものの、これらの実施態様のいずれも、本明細書中のいずれかの個所に記載又は例示された成分、エレメント、特徴、機能、動作、又は工程のいずれかの、当業者には明らかな任意の組み合わせ又は置換を含んでよい。さらに、添付の請求項において、装置又はシステム又は装置又はシステムの構成部分が特定の機能を発揮するように構成されるか、配置されるか、発揮可能であるか、発揮するように形成されるか、発揮可能にされるか、発揮するように動作可能であるか、又は発揮するように動作するかに関する言及は、その装置、システム、構成部分がそのように構成されるか、配置されるか、可能であるか、形成されるか、可能にされるか、動作可能であるか、又は動作する限り、装置、システム、構成部分、又はその特定の機能が活性化されるか、ターンオンされるか、又はロック解除されるか否かにはかかわらず、その装置、システム、構成部分を含む。加えて、本開示は特定の利点をもたらすものとして特定の実施態様を記載又は例示してはいるものの、特定の実施態様がこれらの利点の何ももたらさないことがあり、いくつかをもたらすことがあり、又はすべてをもたらすこともある。
【0103】
本発明を記述する文脈における(特に下記請求項の文脈における)「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示対象は、別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾するのではない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンド用語(すなわち「含むが、しかしこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中に値の範囲を記述することは、別段の指示がない限りは、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値に個別に言及することの省略法として役立とうとしているのにすぎない。そして各別個の値は、あたかもそれが個別にここに記述されているかのように本明細書中に援用される。本明細書中に提供されたありとあらゆる例、又は例を示す言語(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、開示内容をより良く説明しようとしているのにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。
【国際調査報告】