(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】疎水性アルコールを用いる多糖類の機械的処理
(51)【国際特許分類】
C08B 11/02 20060101AFI20230629BHJP
C08B 31/10 20060101ALI20230629BHJP
C08B 37/14 20060101ALI20230629BHJP
C08B 37/18 20060101ALI20230629BHJP
C07H 3/06 20060101ALI20230629BHJP
C07H 15/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08B11/02
C08B31/10
C08B37/14
C08B37/18
C07H3/06
C07H15/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567232
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021061166
(87)【国際公開番号】W WO2021224090
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンシュ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ゴットシュリング,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】レザー,ローマン ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,フレデリック
【テーマコード(参考)】
4C057
4C090
【Fターム(参考)】
4C057AA06
4C057AA17
4C057AA18
4C057AA19
4C057BB02
4C057BB03
4C057BB04
4C057DD01
4C057JJ03
4C090AA04
4C090AA05
4C090BA16
4C090BA28
4C090BA81
4C090BA92
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB52
4C090BB72
4C090BB82
4C090BB92
4C090BC09
4C090BC10
4C090CA28
4C090CA36
4C090DA04
4C090DA22
4C090DA26
4C090DA31
(57)【要約】
本発明は、酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む、アルキルポリグリコシドの調製の方法に関する。本発明はさらに、前記方法によって得ることが可能なアルキルポリグリコシドに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む、アルキルポリグリコシドの調製の方法であって、機械的処理を粉砕、押出又は混練によって行い、疎水性アルコールが直鎖又は分枝C
6~C
22アルカノールである、方法。
【請求項2】
機械的処理の前又は間に、酸を多糖類と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械的処理が粉砕によって行われ、粉砕がスイングミル、撹拌ミル、媒体撹拌ミル、振動ミル、アジテーターミル、アジテーターボールミル、ハンマーミル又はボールミルによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
機械的処理が、0~300℃、好ましくは0~150℃の反応温度で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
機械的処理が、1分~12時間行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
多糖類が、20wt%未満、好ましくは5wt%未満の残留水分含有量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸が、2未満、好ましくは-2未満のpK
sを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
酸が、硫酸、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、リン酸、リンタングステン酸、ハロアルカンカルボン酸、ベンゼンスルホン酸及びその誘導体、メタンスルホン酸、シュウ酸並びに硝酸である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
機械的処理の前に酸を多糖類と接触させて、酸含浸多糖類を調製する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸含浸多糖類が、有機溶媒中、酸で糖類を処理することによって得ることが可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が、水、C
1~C
22アルカノール、アルキルエーテル、C
4~18アルカン、超臨界二酸化炭素、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル又はアセトンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多糖類が、デンプン、セルロース、ヘミセルロース又はグアーに由来する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む、アルキルポリグリコシドの調製の方法であって、機械的処理を、粉砕、押出又は混練によって行う、方法に関する。本発明はさらに、前記方法によって得ることが可能であるアルキルポリグリコシドに関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルポリグリコシド(APGとも呼ばれる)は、重要な工業用非イオン性界面活性剤である。アルキルポリグリコシドは通常、生分解性であり、生物原材料、例えば、単糖類及び脂肪をベースとする。
【0003】
AGPを作製する2つの典型的方法がある。そのどちらも、グルコースからの直接的合成であり、例えば、グルコースのような単糖類又は高度に分解したグルコースシロップ及び脂肪アルコールからのフィッシャーアセタール化を介する。これは、120℃の温度及び2,000Pa. Dの圧力で起こる。
【0004】
代替方法として、APGはまた、アセチル基転移によって2段階で調製することができる。第一に、反応は、グルコースについては約115℃及び常圧で、原材料の代わりのデンプンについては140℃及び400,000Paで、短鎖アルコール、例えばブタノールによって起こる。第二の反応において、120℃の温度及び2,000Paの圧力で、脂肪アルコール、例えばドデカノールによって短鎖アルキルグルコシドを長鎖アルキルグルコシドへ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、先行技術に優る以下の利点を示す、アルキルポリグリコシドの調製の方法を開発することである:過剰な疎水性アルコールが必要ではなく、不溶性ポリデキストロースの抑制が可能であり、C14アルキル鎖より長いアルキル鎖を有する疎水性アルコールによってAPGを作製することができ、炭水化物の非食用供給源を使用することができ、APGが高い水溶性を有し、APGがより高い重合度を有し、APGは高いHLB値を有し、APGが高い乳化効率を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む、アルキルポリグリコシドの調製の方法によって解決された。この目的は、前記方法によって得ることが可能であるアルキルポリグリコシドによっても解決された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
疎水性アルコールは、直鎖若しくは分枝、飽和若しくは不飽和C1~C22(好ましくはC1~C18、特にC10~C16)脂肪族アルコール又はその混合物であってもよい。疎水性アルコールは、直鎖若しくは分枝C1~C22アルカノール、好ましくはC1~C18アルカノール、又は特にC10~C16アルカノール又はその混合物であり得る。別の形態において、疎水性アルコールは、直鎖若しくは分枝C6~C22アルカノール、好ましくはC8~C18アルカノールであり得る。別の形態において、疎水性アルコールは、脂肪アルコール又はその混合物である。適切な疎水性アルコールは、メタノール、エタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールの第一級アルコール、又はそれらの混合物である。
【0008】
疎水性アルコールと多糖類の単量体単位とのモル比は、通常1:10~10:1、好ましくは1:10~1:1である。
【0009】
通常、多糖類g当たりに疎水性アルコール0.01~20mmol、好ましくは0.1mmol~6.2mmolが存在する。
【0010】
機械的処理は、粉砕、押出又は混錬によって、好ましくは粉砕によって行うことができる。粉砕は、ミル、例えば、スイングミル、撹拌ミル、媒体撹拌ミル、振動ミル、アジテーターミル、アジテーターボールミル、ハンマーミル又はボールミルによって行うことができ、ボールミルが好ましい。ボールミルにおいて、400~1200、好ましくは800~1000rpmの速度が適切である。振動ミルについて、1~50Hzの振動数が適切である。
【0011】
機械的処理は、最長48、24、18、14、12、10、8、6、4、3、2、1又は0.5時間行うことができる。通常、機械的処理は、1分~12時間、好ましくは30分~6時間で行うことができる。
【0012】
機械的処理は、300、250、200、150、130、120、110、100、90、80、70、60又は50℃未満、例えば0~300℃、好ましくは0~150℃の範囲の反応温度で行われることが多い。
【0013】
多糖類は、精製された多糖類又は多糖類含有材料(例えば、木材(例えば、トウヒ、マツ、カバノキ、ブナ、ポプラから)、草、乾草、トウヒ材、サトウキビバガス、綿、靭皮繊維のような天然物)の形態で存在してもよい。
【0014】
適切な多糖類は、ホモ多糖類(例えば、アミロース、セルロース、デキストラン、ペクチン)及びヘテロ多糖類(例えば、グアー、キサンタン、キトサン、キチン)、例えば、デンプン、セルロース、ヘミセルロース又はグアー、好ましくはデンプン又はセルロースである。好ましい形態において、多糖類はアルファセルロースである。
【0015】
多糖類は、好ましくはセルロース由来であり、精製されたセルロース又はセルロース含有材料(例えば、木材、草、乾草、綿のような天然物)の形態で存在してもよい。
【0016】
多糖類は、少なくとも50、100、200、300、400、500、1000、2000又は5000の重合度を有してもよい。多糖類は、最大10000、8000、6000、4000、2000又は1000の重合度を有してもよい。多糖類は、100~2000、又は300~1200、又は500~800の重合度を有してもよい。重合度は、公知の方法、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー、粘度測定法又はカルボニル数によって判定されてもよい。
【0017】
多糖類は通常、最大1、0.5、0.3又は0.1g/lの25℃における水への溶解度を有する。多糖類は通常、20℃において固体である。多糖類は、20、15、10、8、6、4、2又は1wt%未満の残留水分(例えば、水から)含有量を有してもよい。多糖類は、少なくとも50、70、80、85、90、92又は95wt%の固形分を有してもよい。
【0018】
酸は、無機又は有機酸、好ましくは無機酸、例えば鉱酸であってもよい。酸は、2未満、好ましくは-2未満のpKaを有してもよい。好ましくは、酸は、2未満、好ましくは-2未満のpKaを有する無機酸である。
【0019】
適切な酸は、硫酸、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、リン酸、リンタングステン酸、ハロアルカンカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸)、ベンゼンスルホン酸及びその誘導体、メタンスルホン酸、シュウ酸並びに硝酸である。好ましい酸は、硫酸、塩酸及びメタンスルホン酸である。
【0020】
酸は、液体又は気体形態(例えば、気体HCl)で存在してもよい。
【0021】
酸は、触媒量で使用することができる。典型的に、酸は、多糖類g当たり0.0001~10mmol、又はg当たり0.001~1mmol、又はg当たり0.01~1mmolの量で存在する。
【0022】
方法は、酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む。
【0023】
多糖類、酸及び疎水性アルコールは、任意の順番で混合することができる。多糖類、酸及び疎水性アルコールは、機械的処理の前又は間に混合されてもよい。
【0024】
一形態において、疎水性アルコール及び酸は予め混合され、この予混合物は、機械的処理の前又は間に多糖類と混合される。
【0025】
好ましい形態において、機械的処理の前に酸を多糖類と接触させて、酸含浸多糖類を調製する。
【0026】
酸含浸多糖類は、有機溶媒中、酸で多糖類を処理することによって得ることが可能であり得る。適切な有機溶媒は、水、C1~C22アルカノール(例えば、メタノール、エタノール又は疎水性アルコール)、アルキルエーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル)、C4~18アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン)、超臨界二酸化炭素、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル又はアセトンである。好ましくは、有機溶媒は、メタノール又は疎水性アルコール(例えば、C6~C22アルカノール、好ましくはC8~C14アルカノール)である。好ましい形態において、有機溶媒は、メタノール又はエタノールである。別の好ましい形態において、有機溶媒は、疎水性アルコールと同じである。
【0027】
有機溶媒は、疎水性アルコールの存在下の酸含浸多糖類の機械的処理の前又は間に、一部又は完全に(例えば、濾過又は蒸発によって)除去することができる。一形態において、有機溶媒は、疎水性アルコールと同一であり、この形態において、有機溶媒は除去されない。
【0028】
別の形態において、酸含浸多糖類は、有機溶媒の非存在下、酸で多糖類を処理することによって得ることが可能であり得る。この形態において、酸は気体形態で、好ましくは気体HCl又は気体SO3として存在してもよい。
【0029】
酸含浸多糖類は、1分~72時間、又は10分~24時間、又は30分~5時間、酸で多糖類を処理することによって調製することができる。酸で多糖類を処理することは、0~150℃、又は5~100℃、又は5~40℃の温度で行われてもよい。
【0030】
酸含浸多糖類は通常、20℃において固体である。酸含浸多糖類は、20、15、10、8、6、4、2又は1wt%未満の残留水分(例えば、有機溶媒又は水から)含有量を有してもよい。酸含浸多糖類は、少なくとも50、70、80、85、90、92又は95wt%の固形分を有してもよい。
【0031】
典型的に、アルキルポリグリコシドは、本発明による方法によって得ることが可能である。アルキルポリグリコシドは、1~50、又は1~30、又は1.1~30、又は1.2~20の範囲の重合度を有してもよい。アルキルポリグリコシドは、1、1.1又は1.2超の重合度を有してもよい。アルキルポリグリコシドは、最大20、15、10、5、4、3、2、1.9、1.8、1.7、1.6又は1.5の重合度を有してもよい。
【0032】
アルキルポリグリコシドは、少なくとも0.5、1、2、3、5、10又は50g/lの25℃における水への溶解度を有してもよい。
【0033】
このアルキルポリグリコシドは、最新技術によるアルキルポリグリコシドがすでに使用されている任意の用途において、例えば、ホームケア用品、化粧品、パーソナルケア用品、医薬品、洗剤、洗浄剤において、又は工業用途において、例えば乳化重合において、界面活性剤として使用することができる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
含浸α-セルロース
含浸
1リットルの一口フラスコ中で、硫酸(96%)3.1gをメタノール300gに溶解させた。α-セルロース33g(固形分:93.3%、重合度約500~700、ドイツのSigma-Aldrich GmbHから市販)を酸性メタノール溶液に加えた後で、懸濁液を室温で1時間撹拌した。溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して50℃及び10mbarにおいて蒸発させた。残留物を、乳鉢及び乳棒によって均質化した。
【0035】
A)冷却を伴う機械的処理
酸含浸セルロース4g及び1-オクタノール0.5gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで直径15mmのWCボールと一緒に、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に30分間冷却させた。残留物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析し、セルロースのオクチル化(octylization)を確認した。
【0036】
B)冷却を伴わない機械的処理
酸含浸セルロース4g及び1-オクタノール0.5gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4.5時間、30Hzで直径15mmのWCボールと一緒に中断せずに、混合物を粉砕した。残留物(試料B)を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析し、セルロースのオクチル化を確認した。
【0037】
MALDI(+)-MS分析
反応生成物のMALDI(+)-MS分析を、Bruker UltrafleXtreme TOF/TOF、Reflectron-Modeで行った。試料調製:試料の水溶液6μLを、乳鉢及び乳棒を使用して、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)スパチュラ一杯分及びNaCl水溶液1μLと混合した。以下の構造(
図3)についてのピークが検出された:オクチルポリグリコシド、メチルポリグリコシド及びポリグリコシド。表1及び2は、実施例1A及び1Bのそれぞれの種について検出されたピークをまとめている。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
界面特性
蒸留水中での実施例1A及び1Bの溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。実施例の粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、表面張力を測定した。結果を表3にまとめる。結果は、実施例1A及び1Bの反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0042】
【0043】
[実施例2]
含浸ワラ
含浸
800mlのビーカー中で、硫酸(96%)6.8gをメタノール280gに溶解させた。切断したワラ(ドイツから)19.6gを酸性メタノール溶液に加えた後で、混合物を室温で1時間撹拌した。懸濁液を濾別し、湿潤残留物を50℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させた。残留物を乳鉢及び乳棒によって均質化した。
【0044】
機械的処理
酸含浸ワラ2gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れ、Retsch MM400によって10分間30Hzで15mmのWCボールとともに粉砕した。酸含浸ワラの追加の2gを入れ、30Hzでさらに60分間粉砕した。粉砕されたワラに1-オクタノール/H2SO4混合物(95/5、w/w)1gを入れ、混合物を60分間粉砕した。ペースト様の残留物を、クロロホルム中に1時間懸濁し、濾別した。50℃及び50mbarにおいて2時間乾燥した後で、残留物を1H-NMR(D2O/NaOD中)及びMALDI-MSによって分析し、ワラのオクチル化を確認した。
【0045】
蒸留水中の溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。σ(1g/L、25℃) = 45mN/mの結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0046】
[実施例3]
含浸α-セルロース
含浸
800mlのビーカー中で、硫酸(96%)6.6gをメタノール300gに溶解させた。α-セルロース(実施例1に記載された通り)33gを酸性メタノール溶液に加えた後で、混合物を室温で1時間懸濁した。懸濁液を濾別し、湿潤残留物を50℃及び30mbarにおいて3時間乾燥させた。残留物を乳鉢及び乳棒によって均質化した。
【0047】
A)機械的処理(追加のアルコールなし)
酸含浸セルロース4gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって90分間30Hzで直径15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。残留物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された(参照、表4):メチルポリグリコシド及びポリグリコシド。
【0048】
【0049】
B)追加のオクタノールを用いる機械的処理
実施例3Aからの粉砕されたセルロース4g及び1-オクタノール/H2SO4混合物(90/10、w/w)1gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで直径15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された:オクチルポリグリコシド、メチルポリグリコシド及びポリグリコシド。
【0050】
【0051】
C)含浸なしの機械的処理
α-セルロース(固形分:93.3%)4g及び1-オクタノール/H2SO4混合物(80/20、w/w)1gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで直径15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された:オクチルポリグリコシド及びポリグリコシド。
【0052】
【0053】
界面特性
蒸留水中で実施例3A、B及びCの溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。結果を表7にまとめる。結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0054】
【0055】
[実施例4]
含浸なし
α-セルロースは、実施例1と同じであった。トウモロコシデンプンは、固形分86.5wt%を有しドイツのRoquette GmbHから市販されていた。粉砕する前に、リストアップされている多糖類を、100℃及び50mbarで3時間乾燥させた。乾燥した後で、多糖類及び酸性ドデカノール溶液を、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで、15mmのWCボールとともに混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に15~30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。
【0056】
残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された:ドデシルポリグリコシド及びポリグリコシド。処方を表8にリストアップする。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
蒸留水中の実施例4A~Dの溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。結果を表13にまとめる。結果は、実施例4の反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0063】
【0064】
[実施例5]
ワラ又は木材からの多糖類
以下の原材料を使用した。
ワラ:ドイツからの自然のワラを、小片に切断し、1.5~2gを25mlのステンレス鋼粉砕ビーカー中に入れた。Retsch MM400によって3分間30Hzで15mmのステンレス鋼ボールとともに、ワラを粉砕した。この手順を数回繰り返した後で、予め粉砕したワラを、100℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させた。固形分は88.5%であった。
【0065】
ストローミール:Hackselstroh dust-freeとしてオランダのAgri-Stro B.V.から市販。2~2.5gを25mlのステンレス鋼粉砕ビーカー中に入れた。Retsch MM400によって5分間30Hzで15mmのステンレス鋼ボールとともに、ストローミールを粉砕した。この手順を数回繰り返した後で、予め粉砕したストローミールを、100℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させた。固形分は89.2%であった。
【0066】
カバノキ、マツ又はブナ(全てドイツから):貯蔵木材をのこぎりで切り、木くずを集めた。木くずを、100℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させた。適切な木材の固形分は、カバノキが82.9%、マツが85.7%、及びブナが87.0%であった。
【0067】
ワラ(A)、ストローミール(B)、カバノキ(C)、マツ(D)及びブナ(E)からの木くずを使用した。乾燥させた残留物及び酸性ドデカノール溶液を、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に15~30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物の可溶性部分を、1H-NMR(D2O中)によって分析した。処方を表6にリストアップする。蒸留水中の溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。結果を表14及び15にまとめる。結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0068】
【0069】
【0070】
[実施例6]
パルプからの多糖類
スエーデンからのトウヒをベースとする、工業的紙生産からの洗浄パルプ(リファイナー(8bar、170℃、12インチのディスクリファイナーにおいて)及び洗浄ステップ後に得られたパルプ)を、100℃及び50mbarにおいて4時間乾燥させた。固形分は27.2%であった。乾燥パルプ2gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れ、Retsch MM400によって5分間30Hzで15mmのWCボールとともに粉砕した。乾燥パルプの追加の2gを入れ、30Hzでさらに5分間粉砕した。粉砕されたパルプにH2SO4/1-ドデカノール混合物(30/70、w/w)0.52gを入れ、混合物を全部で4時間類似の方法で粉砕した。混合物を1時間毎に15分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)によって分析した。
【0071】
蒸留水中の溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。σ(1g/L、25℃) = 44.3mN/mの結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0072】
[実施例7]
ヘキサデシルポリグリコシド及びオクタデシルポリグリコシド
粉砕する前に、実施例1において使用されたα-セルロースを、100℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させて、固形分93%にした。乾燥させたセルロース4g及びC16/C18アルコール/H2SO4混合物(70/30、w/w)(C16/C18アルコールの水酸基価:217.4mg KOH/g)0.70gを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で5時間、30Hzで15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された、表16も参照されたい:ポリグリコシド、ヘキサデシルポリグリコシド及びオクタデシルポリグリコシド。
【0073】
蒸留水中の溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。σ(1g/L、25℃) = 43.8mN/mの結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0074】
【0075】
[実施例8]
ベヘニルポリグリコシド
粉砕する前に、実施例1と同様のα-セルロースを、100℃及び50mbarにおいて3時間乾燥させた。乾燥させたセルロース4054mg、ベヘニルアルコール(1-ドコサノール)411mg及びMeSO3H 156mgを、25mlの炭化タングステン(WC)粉砕ビーカーに入れた。Retsch MM400によって全部で4時間、30Hzで直径15mmのWCボールとともに、混合物を粉砕した。混合物を1時間毎に30分間冷却させた。粗生成物を、クロロホルムで洗浄することによって未反応アルコールから精製した。残留物を乾燥させた後で、生成物を1H-NMR(D2O中)及びMALDI-MSによって分析した。以下の構造についてのピークが検出された:ポリグリコシド、ベヘニルポリグリコシド。
【0076】
蒸留水中の溶液の表面張力を、ウィルヘルミープレート法を使用して判定した。σ(1g/L、25℃) = 67.9mN/mの結果は、反応生成物が表面活性を示すことを示した。
【0077】
【手続補正書】
【提出日】2022-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸及び疎水性アルコールの存在下、多糖類を機械的に処理するステップを含む、アルキルポリグリコシドの調製の方法であって、機械的処理を粉砕、押出又は混練によって行い、疎水性アルコールが直鎖又は分枝C
6~C
22アルカノールであ
り、疎水性アルコールと多糖類の単量体単位とのモル比が、1:10~1:1である、方法。
【請求項2】
機械的処理の前又は間に、酸を多糖類と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械的処理が粉砕によって行われ、粉砕がスイングミル、撹拌ミル、媒体撹拌ミル、振動ミル、アジテーターミル、アジテーターボールミル、ハンマーミル又はボールミルによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
機械的処理が、0~300℃、好ましくは0~150℃の反応温度で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
機械的処理が、1分~12時間行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
多糖類が、20wt%未満、好ましくは5wt%未満の残留水分含有量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸が、2未満、好ましくは-2未満のpK
sを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
酸が、硫酸、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、リン酸、リンタングステン酸、ハロアルカンカルボン酸、ベンゼンスルホン酸及びその誘導体、メタンスルホン酸、シュウ酸並びに硝酸である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
機械的処理の前に酸を多糖類と接触させて、酸含浸多糖類を調製する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸含浸多糖類が、有機溶媒中、酸で糖類を処理することによって得ることが可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が、水、C
1~C
22アルカノール、アルキルエーテル、C
4~18アルカン、超臨界二酸化炭素、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル又はアセトンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多糖類が、デンプン、セルロース、ヘミセルロース又はグアーに由来する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】