(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】クエン酸の精製のためのプロセス及びシステム
(51)【国際特許分類】
C07C 51/42 20060101AFI20230630BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230630BHJP
C07C 59/265 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C07C51/42
B01D15/00 P
B01D15/00 N
C07C59/265
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574806
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2020094910
(87)【国際公開番号】W WO2021248271
(87)【国際公開日】2021-12-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ユシン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, シャンシン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ユー
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】デュ, チョンチョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジチェン
【テーマコード(参考)】
4D017
4H006
【Fターム(参考)】
4D017AA20
4D017BA12
4D017BA13
4D017CA17
4D017CB05
4D017DA01
4D017EA05
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB70
4H006AC46
4H006AD19
4H006BB31
4H006BN10
4H006BS10
(57)【要約】
クエン酸を、2段階濾過プロセスによって金属イオンを除去するように精製する。第1のフィルタを使用して第1の濾過を実施し、次いで、第2のフィルタを使用して、第1の濾過を受けたクエン酸溶液に対して第2の濾過を実施する。第1及び第2のフィルタは、同じフィルタ膜材料を含み得る。第1のフィルタとして使用されるフィルタは、第2のフィルタとして使用されるフィルタと比較して、比較的汚れた、より負荷の高いフィルタであり得る。第1の濾過は、クエン酸溶液を第1のフィルタに通して4時間再循環させることで実施され得、第2の濾過は、クエン酸溶液を第2のフィルタに通しておおよそ2.5時間再循環させることで実施され得る。そのような精製プロセスは、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを除去して、クエン酸を半導体加工における洗浄液として適したものにすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸を精製する方法であって、
第1のフィルタを使用してクエン酸の第1の濾過を実施すること;及び
第1の濾過に続いて、第1のフィルタとは別の第2のフィルタを使用して、クエン酸に対して実施される第2の濾過を実施すること
を含む、方法。
【請求項2】
第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じフィルタ膜材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のフィルタとして使用される相対的に多くの捕捉された金属イオンを有するフィルタ、及び第2のフィルタとして使用される相対的に少ない捕捉された金属イオンを有するフィルタを選択することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の濾過の完了後に第1のフィルタを交換することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の濾過を実施することが、クエン酸を、第1のフィルタを備える流体回路に通して、おおよそ4時間再循環させることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の濾過を実施することが、クエン酸を、第2のフィルタを備える流体回路に通して、おおよそ2.5時間再循環させることを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
クエン酸がクエン酸の30%溶液である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第2の濾過の後、クエン酸が、5パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のマグネシウムイオン及び10ppb未満のカルシウムイオンを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
クエン酸の精製システムであって、
クエン酸溶液を保持するように構成されているタンク;
金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第1のフィルタ;
第1のフィルタと並列に、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第2のフィルタ;
タンクからの流体の流れを第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方に方向付けるように構成されている1つ又は複数のバルブ;
第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方からの流体をタンクに搬送するように構成されている戻りライン;及び
クエン酸溶液が最初に第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方を通って第1の所定時間循環され、次いでクエン酸溶液が第1のフィルタ又は第2のフィルタの他方を通って第2の所定時間循環されるように、1つ又は複数のバルブを制御するように構成されているコントローラ
を備える、システム。
【請求項10】
出口バルブを備え、戻りラインに接続されている出口ラインをさらに備える、請求項9に記載のクエン酸の精製システム。
【請求項11】
第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じ膜材料を含む、請求項9又は10に記載のクエン酸の精製システム。
【請求項12】
第1のフィルタが第1の交換可能なフィルタカートリッジに含まれ、第2のフィルタが第2の交換可能なフィルタカートリッジに含まれている、請求項9から11のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【請求項13】
第1の所定時間がおおよそ4時間であり、第2の所定時間がおおよそ2.5時間である、請求項9から12のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【請求項14】
コントローラが、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷に基づいて、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数をいつ交換するかを決定するようにさらに構成されている、請求項9から13のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【請求項15】
第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷が、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の最も最近に交換されて以降に実施された精製サイクルの数に基づいて決定される、請求項14に記載のクエン酸の精製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クエン酸の精製、特に複数のフィルタを使用した金属の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
クエン酸は、半導体加工中の洗浄に使用され得る。そのような使用に適するためには、クエン酸は、カルシウム及びマグネシウムを含む金属などの夾雑物が低レベルで、十分に純粋でなければならない。
【0003】
フィルタを使用して夾雑物を除去することができる。しかしながら、金属の夾雑物を除去するのに適したフィルタ膜は、効率が許容可能な閾値を下回る時点まで、早く負荷されることがある。このことは、クエン酸を調製するためのフィルタの頻繁な交換につながる可能性があり、クエン酸の高い処理コスト、構成要素の廃棄、及び必要なフィルタの取替えに対応するための遅い処理をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、クエン酸の精製、特に複数のフィルタを使用した金属の除去に関する。
【0005】
本明細書に記載の実施形態によるクエン酸の精製は、濾過膜の負荷が増大する場合でも、効率を向上させ、設定量のクエン酸を精製するのに必要なフィルタの数を減少させて、十分に純粋なクエン酸を生産することを可能にする。精製は、クエン酸が別の膜によって処理されている間に濾過膜を交換することを可能にする順序で行うことができ、中断することなくプロセスを継続することができる。
【0006】
一実施形態では、クエン酸を精製する方法は、第1のフィルタを使用してクエン酸の第1の濾過を実施すること、及び第2の濾過を実施することを含む。第2の濾過は、第1の濾過に続いて、第1のフィルタとは別の第2のフィルタを使用して、クエン酸に対して実施する。
【0007】
一実施形態では、第1のフィルタ及び第2のフィルタは各々、同じフィルタ膜材料を含む。
【0008】
一実施形態では、方法は、第1のフィルタとして使用される相対的に多くの捕捉された金属イオンを有するフィルタ、及び第2のフィルタとして使用される相対的に少ない捕捉された金属イオンを有するフィルタを選択することをさらに含む。一実施形態では、方法は、第1の濾過の完了後に第1のフィルタを交換することをさらに含む。
【0009】
一実施形態では、第1の濾過を実施することは、第1のフィルタを備える流体回路に通して、クエン酸をおおよそ4時間再循環させることを含む。一実施形態では、第2の濾過を実施することは、第2のフィルタを備える流体回路に通して、クエン酸をおおよそ2.5時間再循環させることを含む。
【0010】
一実施形態では、クエン酸はクエン酸の30%溶液である。一実施形態では、第2の濾過の後、クエン酸は、5パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のマグネシウムイオン及び10ppb未満のカルシウムイオンを含む。
【0011】
一実施形態では、クエン酸の精製システムは、クエン酸溶液を保持するように構成されているタンク、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第1のフィルタ、第1のフィルタと並列に、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第2のフィルタ、タンクからの流体の流れを第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方に方向付けるように構成されている1つ又は複数のバルブ、第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方からの流体をタンクに搬送するように構成されている戻りライン、及びコントローラを備える。コントローラは、クエン酸溶液が最初に第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方を通って第1の所定時間循環され、次いでクエン酸溶液が第1のフィルタ又は第2のフィルタの他方を通って第2の所定時間循環されるように、1つ又は複数のバルブを制御するように構成される。
【0012】
一実施形態では、クエン酸の精製システムは、戻りラインに接続されている、出口バルブを備える出口ラインをさらに備える。
【0013】
一実施形態では、第1のフィルタ及び第2のフィルタは各々、同じ膜材料を含む。一実施形態では、第1のフィルタは第1の交換可能なフィルタカートリッジに含まれ、第2のフィルタは第2の交換可能なフィルタカートリッジに含まれる。
【0014】
一実施形態では、第1の所定時間はおおよそ4時間であり、第2の所定時間はおおよそ2.5時間である。
【0015】
一実施形態では、コントローラは、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷に基づいて、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数を交換する時期を決定するようにさらに構成される。一実施形態では、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷は、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の最も最近に交換されて以降に実施された精製サイクルの数に基づいて決定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、クエン酸を精製する方法のフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、一実施形態による精製システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、クエン酸の精製、特に複数のフィルタを使用した金属の除去に関する。
【0018】
図1は、クエン酸を精製する方法のフローチャートを示す。方法100では、クエン酸源は102で得られる。クエン酸源は、第1段階の濾過104で処理される。104での第1段階の濾過の後、クエン酸源は第2段階の濾過106で処理される。106での第2段階の濾過の後、精製されたクエン酸は108で出力される。
【0019】
クエン酸溶液は、102で得られる。クエン酸源は、例えば、クエン酸の30%食品グレードの溶液であり得る。クエン酸源は、例えば、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛イオンなどの金属イオンを含有し得る。クエン酸源は、102で得られるときに、処理システムのタンクに加えられ得る。クエン酸溶液は、例えば、35%未満のクエン酸濃度を有するクエン酸溶液であり得る。
【0020】
クエン酸溶液は、第1段階の濾過104で処理される。第1段階の濾過は、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている膜を備えるフィルタを使用して実施される。第1のフィルタは、交換可能なフィルタカートリッジに含まれ得る。一実施形態では、第1のフィルタは、Entegris,Inc.から入手可能なProtego(登録商標)Plus LTフィルタなどの市販のフィルタであり得る。104での第1段階の濾過は、クエン酸溶液を第1のフィルタに通して第1の所定時間再循環させることを含み得る。第1の所定時間は、第1のフィルタとして使用されている選択フィルタ及び102で得られるクエン酸溶液の特性に基づき得る。一実施形態では、第1の所定時間は、溶液の金属イオン濃度に基づき得る。一実施形態では、第1の所定時間は、処理されるクエン酸溶液の体積に基づき得る。一実施形態では、第1の所定時間は、おおよそ30分~おおよそ4時間である。一実施形態では、第1の所定時間は、おおよそ4時間である。
【0021】
104での第1段階の濾過の後、クエン酸溶液は第2段階の濾過106で処理される。第2段階の濾過は、104での第1段階の濾過に使用される第1のフィルタとは別の第2のフィルタを使用して、106で実施される。第2のフィルタはまた、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている膜を備えるフィルタであり得る。一実施形態では、第2のフィルタは、第1のフィルタと同じ膜材料を使用する。一実施形態では、第2のフィルタは、交換可能なフィルタカートリッジに含まれる。一実施形態では、第2のフィルタは、Entegris,Inc.から入手可能なProtego(登録商標)Plus LTフィルタなどの市販のフィルタである。第2段階の濾過は、クエン酸溶液を第2のフィルタに通して第2の所定時間再循環させることを含み得る。第2の所定時間は、例えば、第2のフィルタとして使用するために選択されたフィルタ、及び第1の濾過104後のクエン酸溶液中の金属イオンの濃度に基づき得る。第2の所定時間は、第1段階の濾過104の第1の所定時間とは異なる時間であり得る。第2の所定時間は、第1の所定時間と比較して、短い時間であり得る。一実施形態では、第2の所定時間は、おおよそ30分~おおよそ4時間である。一実施形態では、第2の所定時間は、おおよそ2.5時間である。
【0022】
106での第2段階の濾過の後、精製されたクエン酸は108で出力される。精製されたクエン酸は、クエン酸溶液が半導体加工での使用、例えばそのようなプロセス中に使用するため又はそのようなプロセスで使用されるツールのための洗浄液としての使用に適しているほど十分に低い金属イオンのレベルを有し得る。一実施形態では、精製されたクエン酸は、各々が10パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のカルシウムイオン及び鉄イオン、各々が5ppb未満のマグネシウムイオン及びアルミニウムイオン、並びに1ppb未満の亜鉛イオンを有する。一実施形態では、精製されたクエン酸は、例えば、方法100によって除去される金属イオン以外の、粒子状物質又は他の夾雑物を除去するために、1つ又は複数の粒子除去フィルタを使用してさらに濾過され得る。
【0023】
場合により、方法が繰り返し実行される場合、104での第1段階の濾過及び/又は106での第2段階の濾過で使用するための特定のフィルタを、110で選択することができる。一実施形態では、第1段階の濾過で使用されるように選択されるフィルタは、106で第2段階の濾過で使用されるように選択されるフィルタと比較して、比較的汚れているか負荷されたフィルタである。フィルタの相対的な負荷は、例えば、フィルタの各々が使用される方法100の反復回数に基づいて求めることができる。一実施形態では、設置されてからの使用回数が最も多いフィルタは、104で第1段階の濾過のための第1のフィルタとして使用するために選択される。設置されてからの使用回数が比較的少ないフィルタは、第2段階の濾過106のための第2のフィルタとして使用するために選択され得る。
【0024】
場合により、方法に従って、その中で使用されるフィルタのうちの1つ又は複数を、112で交換することができる。112でのフィルタの交換は、フィルタの効率又は負荷に基づき得る。一実施形態では、フィルタのうちの1つ又は複数の交換は、例えば104での第1の濾過又は106での第2の濾過の後に、クエン酸溶液から採取される試料中の金属イオンのレベルに基づいて決定することができる。一実施形態では、フィルタのうちの1つ又は複数の交換は、方法100の以前の反復においてフィルタが使用された濾過ステップの数によって測定される負荷に基づいて決定することができる。一実施形態では、104での第1の濾過のための第1のフィルタとして3回使用されたフィルタは交換され得る。一方のフィルタが交換されると、その場所にある新しいフィルタは、110での第1及び第2段階の濾過のためのフィルタの選択に関して、方法100の以前の反復に使用されたフィルタと比較して、比較的きれいで負荷がより少ないフィルタになる。一実施形態では、フィルタを交換する時期は、フィルタを使用して処理される溶液の体積に少なくとも部分的に基づき得る。一実施形態では、フィルタを交換する時期は、方法100を使用して精製される初期溶液中のイオン濃度に少なくとも部分的に基づき得る。
【0025】
図2は、一実施形態による精製システムの概略図を示す。精製システム200は、入口バルブ204によって制御される流れでタンク206に供給される入口202を備える。フィルタライン208は、タンク206を第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bに接続し、各フィルタ212a及び212bへの流れは、それぞれのフィルタの入口バルブ210a及び210bによって制御される。フィルタの出口バルブ214a及び214bは、それぞれ第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bからフィルタの出力ライン216への流れを制御する。フィルタの出力ライン216は、システムの出口バルブ218を通って出力220への出口流を供給することができる。フィルタの出力ライン216は、再循環バルブ222を通って、タンク206に接続された再循環ライン224に再循環流を供給することができる。コントローラ226は、精製システム200の動作を制御することができる。
【0026】
精製システム200は、
図1に示し、上述した第1及び第2の濾過ステップ104及び106の両方を実施するように構成されているシステムであり得る。精製システム200を使用してクエン酸溶液を精製して、金属イオンをクエン酸溶液から除去することができる。
【0027】
入口202は、クエン酸溶液をタンク206に供給することを可能にする。入口202は、クエン酸溶液を含む別のベッセルなどの供給源からクエン酸溶液を受け取るように構成されているインターフェースを備え得る。入口バルブ204は、入口202に接続された流体ラインに沿って備えられ、タンク206への流れを制御し、例えば、進行中の精製プロセス中にタンク206への流れを禁止し、精製されたクエン酸溶液がタンク206から除去された後にタンク206を再充填することを可能にすることができる。
【0028】
タンク206は、クエン酸溶液を保持するように構成されているベッセルである。タンク206は、クエン酸を貯蔵するのに適した任意の材料を含むことができる。クエン酸と接触するタンク206の材料は、クエン酸での腐食又はクエン酸との他の反応に対して耐性があり得、夾雑物又は粒子状物質をクエン酸溶液に放出しない。クエン酸の貯蔵に適した材料の非限定的な例には、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、及びペルフルオロアルコイアルカンポリマー(perfluoroalkoyalkane polymers)(PFA)が含まれる。一実施形態では、タンク206は、クエン酸溶液を精製システム200から除去することを可能にするドレインを備える。一実施形態では、タンク206は、ドレインライン、洗浄プロセス後にタンク206からの水のドレインを可能にするように構成されているバルブを備える。
【0029】
フィルタライン208は、タンク206をフィルタの入口バルブ210a及び210bに接続する。フィルタライン208は、フィルタライン208を枝分かれさせるジョイントを備え、一方の分岐はフィルタの入口バルブ210aに接続されており、他方の分岐はフィルタの入口バルブ210bに接続されている。
【0030】
第1及び第2のフィルタの入口バルブ210a及び210bはそれぞれ、フィルタライン208から第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bへの流れを制御するように構成されているバルブである。フィルタの入口バルブ210a及び210bの各々は、それを通る流れを禁止する閉位置及びそれを通る流れを可能にする開位置を有する任意の適切なバルブであり得る。上述の第1又は第2の濾過104又は106などの濾過中、第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bの一方は開位置にあり、他方は閉位置にあり、精製システム200が第1又は第2の濾過ステップのいずれを実施しているかに基づいて、第1及び第2のフィルタ212a及び212bの一方が、クエン酸溶液をフィルタライン208から受け取っている。一実施形態では、精製システム200を使用して実施される精製プロセスの前にタンク206が充填されている場合、第1及び第2のフィルタの入口バルブ210a及び210bの両方を閉じることができる。
【0031】
第1のフィルタ212aは、通過するクエン酸溶液から金属イオンを分離するフィルタである。第1のフィルタ212aは、損傷を受けたり汚染を生じたりすることなくクエン酸と共に使用するのに適した任意のフィルタであり得、少なくともカルシウム及びマグネシウムイオンを含む金属イオンを捕捉することができる。第1のフィルタ212aは、入れ替えできる交換可能なカートリッジに含められ得、例えば、第1のフィルタの入口バルブ210a及び第1のフィルタの出口バルブ214aが閉じられている場合、流れは第1のフィルタ212aに到達しない。第1のフィルタ212aは、例えば、Entegris,Incから入手可能なProtego(登録商標)Plus LTフィルタであり得る。
【0032】
第2のフィルタ212bは、第1のフィルタ212aとは別個かつ並列な別のフィルタである。第2のフィルタ212bは、損傷を受けたり汚染を生じたりすることなくクエン酸と共に使用するのに適した任意のフィルタであり得、少なくともカルシウム及びマグネシウムイオンを含む金属イオンを捕捉することができる。第2のフィルタ212bは、入れ替えできる交換可能なカートリッジに含められ得、例えば、第2のフィルタの入口バルブ210b及び第2のフィルタの出口バルブ214bが閉じられている場合、流れは第2のフィルタ212bに到達しない。第2のフィルタ212bは、例えば、Entegris,Inc.から入手可能なProtego(登録商標)Plus LTフィルタであり得る。一実施形態では、第2のフィルタ212bは、第1のフィルタ212aと同じフィルタ材料を含む。一実施形態では、第2のフィルタ212bは、第1のフィルタ212aと同じタイプの交換可能なフィルタカートリッジである。
【0033】
第1及び第2のフィルタの出口バルブ214a及び214bはそれぞれ、第1及び第2のフィルタ212a及び212bからフィルタの出力ライン216への流れを可能にする。フィルタの出口バルブ214a及び214bは各々、それを通る流れを禁止する閉位置及びそれを通る流れを可能にする開位置を有する任意の適切なバルブであり得る。第1及び第2のフィルタ212a及び212bのいずれか又は両方が使用されていない場合に、第1及び第2のフィルタの出口バルブ214a及び214bをそれぞれ閉じて、流れが第1及び第2のフィルタ212a及び212bに入るのを防止することができる。例えば、104などの第1の濾過ステップ中に、使用されているフィルタに対応するフィルタの出口バルブ214a及び214bは開位置にあり、使用されていないフィルタに対応するフィルタの出口バルブ214a及び214bは閉位置にある。別の例では、タンク206が空である場合、第2の濾過プロセスに使用されるフィルタに関連するフィルタの出口バルブ214a及び214bの一方は、開位置にあり得る。
【0034】
フィルタの出力ライン216は、フィルタの出口バルブ214a及び214bから流体を受け取り、流体を再循環バルブ222に搬送するように構成されている流体ラインである。場合により、出口バルブ218は、フィルタの出力ライン216に沿って備えられ、フィルタの出力ライン216を出口220に接続することができる。出口バルブ218は、それを通る流れを禁止する閉位置及びそれを通る流れを可能にする開位置を有するバルブである。出口220は、例えば試験のためにクエン酸の試料を取り出すために、又は精製システム200によって実施される精製プロセスが完了したときに精製されたクエン酸を取り出すために、クエン酸溶液を精製システム200から取り出すことを可能にし得る。
【0035】
再循環バルブ222は、それを通る流れを禁止する閉位置及び流体がそれを通過することを可能にする開位置を有する任意の適切なバルブであり得る。再循環バルブ222は、精製システム200によって実施される精製プロセスの濾過ステップ中に開位置にすることができる。再循環バルブ222は、例えば、精製されたクエン酸溶液が出口バルブ218及び出口220を通って精製システム200を出るときに閉じることができる。
【0036】
再循環ライン224は、再循環バルブ222からタンク206に流体を戻して搬送するように構成されている流体ラインである。再循環ライン224を通る流体の戻りは、例えば上述のように104での第1の濾過及び106での第2の濾過を実行するために、流体が時間をかけて第1及び第2のフィルタ212a及び212bの一方を通って再循環されることを可能にする。一実施形態では、再循環ライン224によるタンク206への流体の戻りは、精製システム200によって実施される精製プロセスの終わりに流体を戻すことができ、その結果、精製されたクエン酸溶液をタンク206から排出することができる。
【0037】
コントローラ226は、例えば、フィルタの入口バルブ210a及び210b、フィルタの出口バルブ214a及び214b、出口バルブ218、並びに再循環バルブ222の動作を制御することによって、精製システム200の動作を制御するために設けられ得る。コントローラ226は、制御シグナルがコントローラ226によってそれらのバルブに提供されることができるように、それらのバルブに動作可能に接続され得る。コントローラ226は、上述し、
図1に示す方法100を実行するように精製システム200に指示するように構成することができる。例えば、コントローラ226は、適切な濾過ステップ、104での第1の濾過ステップ又は106での第2の濾過ステップ中に、第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bの一方がクエン酸溶液を受けるようにバルブを開閉するように構成することができる。一実施形態では、コントローラ226は、第1のフィルタ212a又は第2のフィルタ212bのいずれかに基づいて、それらのフィルタのいずれかが比較的汚れているか、又はより多く負荷されているかに基づいて、第1の濾過104で使用される第1のフィルタ212a又は第2のフィルタ212bの一方を選択することができる。一実施形態では、フィルタの汚れ/清浄度又は負荷の判定は、そのフィルタが使用されたいくつかの精製プロセスに基づくことができる。一実施形態では、コントローラ226は、第1のフィルタ212a又は第2のフィルタ212bが最も最近に交換されて以降に処理された精製プロセス又はバッチの数を追跡することができる。一実施形態では、この追跡されたプロセスの数を使用して、上述のように、第1のフィルタ212a及び第2のフィルタ212bのいずれを第1の濾過104で使用し、他方を第2の濾過106で使用するかを選択することができる。一実施形態では、コントローラ226は、フィルタの負荷又は除去効率に基づいて、第1のフィルタ212a又は第2のフィルタ212bの少なくとも一方を交換する時期をさらに決定することができる。一実施形態では、除去効率を使用して、フィルタを含む、濾過ステップ後のクエン酸溶液の試料中の1つ又は複数の金属イオンの測定値に基づいて、フィルタを交換する時期を決定することができる。一実施形態では、1つ又は複数の金属イオンの測定値は、フィルタ性能の閾値と比較される。閾値は、クエン酸溶液が半導体加工ツールの洗浄剤として、又は半導体加工中に使用するのに適するように、金属イオンの許容レベルに基づき得る。一実施形態では、フィルタの負荷を使用して、設置以降にそのフィルタによって精製されたクエン酸の精製プロセス又はバッチの数に基づいて、フィルタを交換する時期を決定することができる。一実施形態では、精製プロセスの数が閾値と比較され、閾値と一致又は閾値を超える数の精製プロセスに使用された場合にフィルタが交換される。閾値は、繰り返しの精製プロセスにわたる除去効率又はフィルタ負荷の測定値に基づいて決定することができる。一実施形態では、閾値は、3つの精製プロセスにおけるフィルタの使用を含む。閾値は、時間をかけて処理される溶液の量及び/又はフィルタ212a及び212bを使用して処理される溶液の初期金属イオン濃度に関してであり得る。
【0038】
実施形態による精製は、濾過の効率及びフィルタの効率的な使用を有意に改善することができる。単一のフィルタを使用したクエン酸の典型的な1段階濾過では、1バッチのクエン酸を処理した後、フィルタの負荷が、フィルタを使用して処理される後続のバッチが金属イオン含有量に関して純度の仕様を満たすことを妨げる。対照的に、実施形態による2段階の濾過は、フィルタの交換が必要になる前に少なくとも3つのバッチを処理することを可能にする。2段階の濾過で使用されるフィルタは、はるかに高い負荷を達成し、クエン酸溶液から吸収できる金属イオンの量をそれぞれ増加させ、したがって交換が必要になる前に処理できる溶液の量を増加させる。これにより、処理されるクエン酸の量あたりのフィルタ消費量を大幅に低減することができる。さらに、第1段階の濾過に比較的汚れたフィルタを使用し、フィルタを交換するときにその比較的汚れたフィルタのみを交換することによって、利点を増加させることができる。得られたクエン酸は、10ppb未満の多くの金属イオン、例えばカルシウムイオン及び鉄イオンを有し、いくつかの金属イオン、例えばマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンは5ppb未満の量でのみ含み、そのようなクエン酸に対する要件及び仕様を満たすエレクトロニクスグレードのクエン酸である。
【0039】
態様:
態様1~8のいずれかを態様9~15のいずれかと組み合わせることができることが理解される。
【0040】
態様1.クエン酸を精製する方法であって、
第1のフィルタを使用してクエン酸の第1の濾過を実施すること;及び
第1の濾過に続いて、第1のフィルタとは別の第2のフィルタを使用して、クエン酸に対して実施される第2の濾過を実施すること
を含む、方法。
【0041】
態様2.第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じフィルタ膜材料を含む、態様1に記載の方法。
【0042】
態様3.第1のフィルタとして使用される相対的に多くの捕捉された金属イオンを有するフィルタ、及び第2のフィルタとして使用される相対的に少ない捕捉された金属イオンを有するフィルタを選択することをさらに含む、態様2に記載の方法。
【0043】
態様4.第1の濾過の完了後に第1のフィルタを交換することをさらに含む、態様3に記載の方法。
【0044】
態様5.第1の濾過を実施することが、第1のフィルタを備える流体回路に通して、クエン酸をおおよそ4時間再循環させることを含む、態様1~4のいずれかに記載の方法。
【0045】
態様6.第2の濾過を実施することが、第2のフィルタを備える流体回路に通して、クエン酸をおおよそ2.5時間再循環させることを含む、態様1~5のいずれかに記載の方法。
【0046】
態様7.クエン酸がクエン酸の30%溶液である、態様1~6のいずれかに記載の方法。
【0047】
態様8.第2の濾過の後、クエン酸が、5パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のマグネシウムイオン及び10ppb未満のカルシウムイオンを含む、態様1~7のいずれか一項記載の方法。
【0048】
態様9.クエン酸の精製システムであって、
クエン酸溶液を保持するように構成されているタンク;
金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第1のフィルタ;
第1のフィルタと並列に、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第2のフィルタ;
タンクからの流体の流れを第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方に方向付けるように構成されている1つ又は複数のバルブ;
第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方からの流体をタンクに搬送するように構成されている戻りライン;及び
クエン酸溶液が最初に第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方を通って第1の所定時間循環され、次いでクエン酸溶液が第1のフィルタ又は第2のフィルタの他方を通って第2の所定時間循環されるように、1つ又は複数のバルブを制御するように構成されているコントローラ
を備える、システム。
【0049】
態様10.戻りラインに接続されている、出口バルブを備える出口ラインをさらに備える、態様9に記載のクエン酸の精製システム。
【0050】
態様11.第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じ膜材料を含む、態様9~10のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【0051】
態様12.第1のフィルタが第1の交換可能なフィルタカートリッジに含まれ、第2のフィルタが第2の交換可能なフィルタカートリッジに含まれる、態様9~11のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【0052】
態様13.第1の所定時間がおおよそ4時間であり、第2の所定時間がおおよそ2.5時間である、態様9~12のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【0053】
態様14.コントローラが、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷に基づいて、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数を交換する時期を決定するようにさらに構成される、態様9~13のいずれかに記載のクエン酸の精製システム。
【0054】
態様15.第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷が、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の最も最近に交換されて以降に実施された精製サイクルの数に基づいて決定される、態様14に記載のクエン酸の精製システム。
【0055】
本出願で開示される例は、すべての態様において例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され;特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内にあるすべての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸を精製する方法であって、
第1のフィルタを使用してクエン酸の第1の濾過を実施すること;及び
第1の濾過に続いて、第1のフィルタとは別の第2のフィルタを使用して、クエン酸に対して実施される第2の濾過を実施すること
を含む、方法。
【請求項2】
第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じフィルタ膜材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のフィルタとして使用される相対的に多くの捕捉された金属イオンを有するフィルタ、及び第2のフィルタとして使用される相対的に少ない捕捉された金属イオンを有するフィルタを選択することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の濾過の完了後に第1のフィルタを交換することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の濾過を実施することが、クエン酸を、第1のフィルタを備える流体回路に通して、おおよそ4時間再循環させることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の濾過の後、クエン酸が、5パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のマグネシウムイオン及び10ppb未満のカルシウムイオンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
5パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のマグネシウムイオン及び10ppb未満のカルシウムイオンを含む、精製されたクエン酸。
【請求項8】
クエン酸の精製システムであって、
クエン酸溶液を保持するように構成されているタンク;
金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第1のフィルタ;
第1のフィルタと並列に、金属イオンをクエン酸溶液から除去するように構成されている第2のフィルタ;
タンクからの流体の流れを第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方に方向付けるように構成されている1つ又は複数のバルブ;
第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方からの流体をタンクに搬送するように構成されている戻りライン;及び
クエン酸溶液が最初に第1のフィルタ又は第2のフィルタの一方を通って第1の所定時間循環され、次いでクエン酸溶液が第1のフィルタ又は第2のフィルタの他方を通って第2の所定時間循環されるように、1つ又は複数のバルブを制御するように構成されているコントローラ
を備える、システム。
【請求項9】
出口バルブを備え、戻りラインに接続されている出口ラインを更に備える、請求項8に記載のクエン酸の精製システム。
【請求項10】
第1のフィルタ及び第2のフィルタが各々、同じ膜材料を含む、請求項8又は9に記載のクエン酸の精製システム。
【請求項11】
コントローラが、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数の負荷に基づいて、第1のフィルタ及び第2のフィルタのうちの1つ又は複数をいつ交換するかを決定するように更に構成されている、請求項8から10のいずれか一項に記載のクエン酸の精製システム。
【国際調査報告】