(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】循環ループ画像を用いた信号の分離及び分類のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
G01R13/20 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576549
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021036973
(87)【国際公開番号】W WO2021252873
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ピカード・ジョン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスダンワラ・セイフィー・エフ
(57)【要約】
信号分類システムは、入力波形データを受ける入力部と、メモリと、入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理、バースト検出部を使用して入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理、バースト検出部からの信号を受けて入力波形データをY軸データとしランプ掃引信号をX軸データとする循環ループ画像データをメモリに記憶させる処理、機械学習システムを利用して循環ループ画像データを受信しデータ・バーストを分類する処理を1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される1つ以上のプロセッサとを具える。信号分類方法は、入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理、入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理、入力波形データをY軸データとしランプ掃引信号をX軸データとするデータ・バーストに関する循環ループ画像データを記憶する処理、機械学習システムを利用して循環ループ画像データを受信しデータ・バーストを分類する処理を具える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を分類するためのシステムであって、
入力波形データを受信するための入力部と、
メモリと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、該1つ以上のプロセッサが、
上記入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理と、
バースト検出部を使用して上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理と、
上記バースト検出部からの信号を受信して上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の循環ループ画像データを上記メモリに記憶させる処理と、
機械学習システムを利用して、上記循環ループ画像データを受信し、上記データ・バーストを分類する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成されるシステム。
【請求項2】
被試験デバイスから上記入力波形データを取り込む試験測定装置を更に具える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記入力波形データから上記ランプ掃引信号を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、
クリッパを使用して上記入力波形データから矩形パルス信号を生成する処理と、
上記矩形パルス信号に基づいて積分回路を使用してランプ信号を生成し、上記ランプ信号をバースト・ゲートに送信する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記積分回路が、ボックスカー・フィルタを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記循環ループ画像データを用いて測定を行う測定ユニットを更に具える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記測定が、反射遅延、反射係数、シンボル間干渉、信号対ノイズ比及び非線形性のうちの1つ以上を含む請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
上記測定ユニットが、その測定値を上記機械学習システムに送信する請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
上記機械学習システムからの分類されたデータ・バーストからマルチバースト波形を作成する連結部を更に具える請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上記マルチバースト波形に適用するフィルタを更に具える請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
上記システムの動作を調整するシステム・コントローラを更に具える請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
信号を分類する方法であって、
入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理と、
上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理と、
上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の上記データ・バーストに関する循環ループ画像データを記憶する処理と、
機械学習システムを利用して、上記循環ループ画像データを受信し、上記データ・バーストを分類する処理と
を具える方法。
【請求項12】
ユーザからシステム・パラメータを受信する処理を更に具える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記ランプ掃引信号を生成する処理が、
上記入力波形データから矩形パルス信号を生成する処理と、
上記矩形パルス信号を積分して上記ランプ掃引信号を生成する処理と
を有する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記矩形パルス信号を積分する処理が、ボックスカー・フィルタによって行われる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記循環ループ画像データを用いて測定を行う処理を更に具える請求項11に記載の方法。
【請求項16】
上記測定を行う処理が、反射遅延、反射係数、シンボル間干渉、信号対ノイズ比及び非線形性のうちの1つ以上を測定する処理を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
測定値を上記機械学習システムに送信する処理を更に具え、上記機械学習システムが、上記循環ループ画像データと上記測定値とを用いて上記データ・バーストを分類する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記機械学習システムからの分類されたデータ・バーストからマルチバースト波形を作成する処理を更に具える請求項11に記載の方法。
【請求項19】
上記機械学習システムをトレーニングする処理を更に具え、該トレーニングする処理が、
複数の循環ループ画像を供給する処理と、
上記循環ループ画像の夫々を分類するユーザ入力を受ける処理と、
上記機械学習システムに分類を提供させ、上記ユーザ入力に対して上記分類を検証することにより、上記機械学習システムを試験する処理と、
上記機械学習システムが上記循環ループ画像を正しく分類するまで上記試験する処理を繰り返す処理と
を有する請求項11に記載の方法。
【請求項20】
データ信号を分類するシステムであって、
入力波形データからランプ掃引信号を生成するランプ生成部と、
上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定するためのバースト検出部と、
該バースト検出部からの信号を受信し、上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の循環ループ画像データをメモリに記憶させるバースト・ゲートと、
上記循環ループ画像を受信し、上記データ・バーストを分類する機械学習システムと
を具えるシステム。
【請求項21】
上記入力波形データが、被試験メモリ・デバイスから取り込まれ、上記機械学習システムは、上記被試験メモリ・デバイスに関するライト動作又はリード動作のいずれかから生じる上記データ・バーストを分類する請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年6月11日出願の「波形データのためのPAM4循環アイ画像表示」と題する米国仮特許出願第63/038,040号、2020年6月15日出願の「斬新な循環アイ・プロット及び機械学習を用いたリード/ライト・バースト分離及び測定」と題する米国仮特許出願第63/039,360号、2020年6月18日出願の「波形データの循環アイ画像表示」と題する米国仮特許出願第63/041,041号及び2021年4月21日出願の「機械学習を用いて光送信機を測定又はチューニングするための循環アイ」と題する米国仮特許出願第63/177,930号の利益を主張するものであり、これらの夫々は、参照することにより、これらの全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、以下の特許出願に関連する。2021年6月11日出願の「循環ループ画像を用いた信号の分離及び分類のためのシステム及び方法」と題する米国特許出願第17/345,342号(Atty-Dkt 12222-US1)、2021年6月11日出願の「波形データの循環ループ画像表示」と題する米国特許出願第17/345,283号(Atty-Dkt 12223-US1)及び2021年6月11日出願の「測定と機械学習のためのマルチ・レベル信号の循環ループ画像表示のためのシステム及び方法」と題するされた特許出願第17/345,312号(Atty-Dkt No. 12224-US2)。
【0003】
本開示は、双方向バスにおけるデータの特定に関し、特に、データ方向の特定及び分類に関する。
【背景技術】
【0004】
ある状況においては、アクイジションされた(デジタル・データとして取り込まれた)双方向バス上のデータのバーストを特定し、データ信号がどの方向に進んでいるかを分類することが有益である。もしオシロスコープのような試験計測装置のチャンネル数に制限がなければ、必要な複数のコマンド・バス・ラインをアクイジションして、このような双方向バス上のリード(read)バーストとライト(write)バーストを分離することができる。しかし、使用可能なプローブが1つ又は2つしかない場合は、難問である。
【0005】
このような信号の例が、ダブル・データ・レート・メモリ・バージョン5規格のメモリであるDDR5メモリにおいてある。これは、コンピューティング・メモリの速度と密度を向上させながら、同様の寸法のDIMM(デュアル・イン・ライン・メモリ・モジュール)を維持する場合における、次の大きな変化を表している。システム・チャンネル特性は、プローブ・ポイントで見たときに、リード動作とライト動作の間では、大きく異なっている。リード信号は、ライト信号とは別に処理及び測定する必要があるため、分離する必要がある。
【0006】
ユーザは、信号を分析するために、アイ・ダイアグラム(そう呼ばれるのは、2つの波形間の開口部がアイ(eye:目)のように見えるためである)を使用することがよくある。しかし、同じプリント回路基板(PCB)材料上でメモリの速度を上げると、メモリに到着したときのライト・データ・バーストの波形図は「閉じた」アイになる。DDR5 DRAMは、3200MT/sから6400MT/sのデータ・レートをサポートする。このデータ・レートの増加は、データ・ピンのシグナリング・スキームを変更することなく実現されている。つまり、DQバスは、DDR3/4と同じシングル・エンドのままである。しかし、DDR5チャンネルには、多くのインピーダンス不整合ポイントが存在するため、反射によるシンボル間干渉(ISI)が増加すると予期される。4800MT/s以上のデータ・レートでは、DRAMのプローブ・ポイント(例えば、はんだボールなど)のデータのアイは、閉じると予期される。DDR5 DRAMのレシーバには、4タップDFEが実装されており、DQ信号を等化処理(イコライズ)し、この問題を軽減する。
【0007】
メモリがマウントされるPCBのDIMMと、ボードのサイズは同じままであるが、これらメモリのサイズは2倍になっている。更に、オシロスコープには、通常、4チャンネルしかないため、分析や試験用にアクイジションできるパラレル・データ、クロック、コマンド・アドレス・ラインの数は、制限される。
【0008】
通常、DQSクロック・ストローブ信号と、DQデータ信号は、分析に最も重要である。よって、2つのプローブが必要となる。DQS信号では、各データ・バーストの前にプリアンブルが生じ、これは、リード・データ又はライト・データのバーストの開始位置を特定するために利用できる。これまで、DDR3/DDR4などの以前のDDR DRAMプロトコルでは、リード・バーストとライト・バーストの間に位相差があり、DQSとDQは、ライト・バーストでは中央に揃えられ、リード・バーストでは、エッジで揃えられていた。また、コマンド・バスには、別々のWE(Write Enable:ライト・イネーブル)、RAS(Row Access Select:行アクセス選択)、CAS(Column Address Select:列アドレス選択)信号があって、これらは、リード・バースト又はライト・バーストを特定するために使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第2003/0235103号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3624113号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0285986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、DDR5では、WE/CAS/RAS信号がコンパクトな14ピンのコマンド・アドレス(CA)バスに置き換えられ、リード/ライト・コマンドを把握するには、デコードが必要である。これは、通常、14個のCAピン全てにアクセスすることを意味するが、これは現実的ではない。また、DDR4/DDR3のようなDQS信号とDQ信号の間の明確な位相差は、もはやない。DDR5では、ライト・パス上のDQSとDQは、最大3つのUI(ユニット・インターバル)の固定オフセットを持つことができ、これは、ブートアップ・プロセス中にプログラムされる。
【0011】
従って、バースト信号がリードかライトかを特定するのに、データ・ラインのみを使用する方法が必要とされている。開示される装置及び方法の実施形態は、従来技術における欠点に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示の実施形態は、双方向バスで取得したデータのバーストを特定し、データが伝播する方向を分類する問題に取り組むものである。DDR5メモリの場合、リード・データ・バーストとライト・データ・バーストを区別するのに必要なコマンド・バス・ラインを取得するのに十分なプローブを接続するには、オシロスコープには、概してチャンネル数が足りないか、被試験デバイス(DUT)には、十分なスペースがない。しかし、システム・チャンネル特性は、プローブ・ポイントで見られるように、リード動作とライト動作で大きく異なる。リード信号は、ライト信号とは別に処理及び測定する必要がある。本願の実施形態は、1つ又は2つのプローブのみを使用して、この分離を実行する必要性に対処する。これら実施形態のポイントの1つは、従来のアイ・ダイアグラムよりも疎な(sparse:希薄な)ユニークな循環ループ画像の利用にある。循環ループ画像は、システム応答を特徴付けるほとんどの情報を含む信号のエッジに重点を置いている。
【0013】
これら実施形態は、入ってくる信号のXYプロットとして循環ループ画像を作成する装置及び方法を利用する。実施形態の循環ループ画像は、多数の測定を容易にし、例えば、特定のデータ・バーストにおけるリード(Read)対ライト(Write)の分類のための既存の事前トレーニング済みニューラル・ネットワーク又は他の機械学習システムへの入力として使用するのに適した単純化された画像を提供する。実施形態としては、また、ノン・リターン・トゥ・ゼロ(NRZ)などの他のバイナリ符号化信号又はパルス振幅変調信号(例えば、PAM4)などのマルチレベル信号のアプリケーションがあっても良い。本実施形態は、メモリ・システムに関するリード及びライト分離を行うために機械学習と結合して循環ループ画像を利用することにも取り組む。
図1は、循環ループ・ダイアグラム10の一例を示す。
【0014】
実施形態は、単純だが堅牢なアルゴリズムを使用して、入力信号のXYプロットを作成する。垂直方向のY軸は、信号自体で構成される。DDR5のアプリケーションの場合、この信号は、通常、DQデータ・バースト信号又はDQSデータ・ストローブ・クロック信号のいずれかになる。水平方向のX軸は、DQ又はDQS信号の処理によって作成される掃引信号で構成される。この処理により、データ・パターンのエッジ遷移でのみ、固有の線形又はやや線形のランプ(ramp:傾斜)掃引信号が作成される。信号レベルが変化しない区間(ハイ(高値)の長い区間やロー(低値)の長い区間など)では、ランプ掃引信号は発生しない。これは、標準的なリサージュ図形とは異なるユニークなアプローチを取る。実施形態は、これらのランプ掃引信号を自動的に配置して、XY信号のパス(経路)が1つの閉ループの線となって、全ての立ち上がりエッジがこのループの上側に含まれ、全ての立ち下がりエッジがこのループの下側に含まれるようにする。
【0015】
システムおいて、エッジには、システムの伝達関数を定義するほとんどの情報が含まれているため、このシンプルな画像は、波形の全てのサイクルを1つの画像で捕捉する周期的な(cyclic:循環する)表示を生じるが、それでいて、これは、一般的なアイ・ダイアグラムに含まれる過剰な不要データ・ポイントの多くを排除している。結果として得られるプロットは、波形特性に応じて、磁気ヒステリシスBHプロットと外観が類似している場合がある。しかし、水平ランプ信号の作成、それらがどのように生成されるか、そして、PRBS(疑似ランダム・バイナリ・シーケンス)データ・パターンにどのように適用されるかの観点で、大きな違いがある。
【0016】
主な利点は、実現のシンプルさと、その堅牢性にある。全体的なアプローチでは、X軸ランプのような信号を作成するためのいくつかの方法を記述する。
図8に関して以下で説明する具体的な実施形態は、複雑さと処理速度の点では、シンプルな処理を扱っている。このアプローチでは、エッジの形状に歪みが生じる可能性がある。機械学習システムの認識を目的とする場合では、この方法は、計算速度を向上させると同時に、機械学習アルゴリズムによる分類も可能になる。例えば、機械学習システムは、DQS又はDQ信号のみを調べることで、メモリ・システム内のリード動作とライト動作を分類できる。
【0017】
以下の説明は、メモリの信号の分類を扱っているが、実施形態は、このアプリケーションに限定されないことに注意すべきである。そのような限定は、推測されるべきではない。実施形態は、システムの特性が信号の伝搬の方向に応じて異なることがある他の双方向システムのために使用されても良い。更に、信号は、リード又はライト・データ・バースト信号やノン・リターン・トゥ・ゼロ(NRZ)信号などの2レベルの任意のバイナリ・エンコード信号、又は、PAM4などの2レベルを超えるパルス振幅変調信号から構成されても良い。
【0018】
循環ループ画像は、システム応答などの信号属性、立ち下がりエッジと比較した立ち上がりの非線形性、SNR、振幅、反射遅延、反射係数などを具体的に示す簡略化されたプロットである。作成されたXY画像は、波形表示の不要な部分を減らし、ライト動作のシステム応答とリード動作の応答の違いを分類するために必要な重要な属性のみを表示する方法をとっている。画像サイズが小さく、システムを表す単純化された閉ループ・パスは、既存の事前トレーニングされた画像処理ニューラル・ネットワークその他の機械学習ネットワーク又はシステムのための理想的な入力として機能する。また、循環ループ画像を用いて上記のような複数の測定を行うことができる。
【0019】
DQSバーストとDQバーストが分類され、別々の波形に分離されると、これらの波形は、時間に対する振幅であり、実際のプローブ・ポイントの表示(View)を移動するための仮想試験ポイント・フィルタを作成するなどの演算で更に処理しても良い。これにより、伝送ラインと整合しないメモリ負荷の反射によるステップ信号が除去される。これは、実際には反射を除去しないが、反射による遅延が除去されるために、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジにステップ信号が生じない。しかし、振幅は、通常、反射によって増加する。DDR5の場合、他の可能なアプリケーションと同様に、DFEイコライザが分離されたライト・バーストに適用される。最後に、処理された波形は、DDRコンプライアンス・アプリケーション又はジッタ解析アプリケーション・ソフトウェアによって処理され、更に分析(解析)される。
【0020】
このように、ニーズがあって、本実施形態で取り組むべきものは、DQS又はDQデータ・ラインのみを使用して、バースト信号がリードであるか又はライトであるかを特定する方法である。これら実施形態は、また、標準的なアイ・ダイアグラムの代わりに循環ループ画像を作成するユニークな方法を利用して、多数の測定を容易に行えるようにする。循環ループは、リード信号バーストとライト信号バーストを分類するための既存の事前トレーニング済みニューラル・ネットワークへの入力に適した単純化された画像を与える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、DDR5メモリのデータ・バースト信号の例を示す。
【
図3】
図3は、不整合負荷(mismatched load)からの反射を伴うDDR5メモリのデータ・バースト信号の例を示している。
【
図4】
図4は、不整合負荷からの反射とトレースのシンボル間干渉(ISI)損失を伴うDDR5メモリのデータ・バースト信号の例を示している。
【
図5】
図5は、ライト動作に関する試験プローブと不整合負荷の間のトレースを示している。
【
図6】
図6は、リード動作に関する試験プローブと不整合負荷の間のトレースを示している。
【
図7】
図7は、指数方程式でモデル化したトレース損失を、実際に測定された2つのトレースと比較したグラフを示している。
【
図8】
図8は、循環ループ画像の作成と分析のためのシステムの実施形態を示す。
【
図9】
図9は、循環ループ図の作成に用いた波形のオシロスコープ画面の例である。
【
図11】
図11は、反射もISIもないDQランダム・データ信号と、結果として得られる循環ループ画像の例を示している。
【
図12】
図12は、標準的なYTトレース表示に基づく測定の例を示している。
【
図15】
図15は、循環ループ図を用いて反射係数を測定する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2~4は、DQSバースト信号の例を示す。
図2は、DDR5メモリ・システムにおける理想的なDQSバースト信号12の例を示している。
図3は、不整合負荷からの反射を含むDDR5メモリのDQSバースト信号14の例を示す。
図4は、不整合負荷からの反射とトレースのシンボル間干渉(ISI)損失を伴うDDR5のDQS信号16の例を示している。
【0023】
システムの伝達関数は、通常、リードとライトのデータ・バーストの間で異なるため、システムの伝達関数によって、リードとライトのデータ・バーストを区別できる。システム・ハードウェアには、リード動作中とライト動作中で異なる特性がある。伝送ラインの端部の負荷は、異なる場合がある。メモリのトランスミッタの電圧振幅は、SOC(システム・オン・チップ)トランスミッタの電圧振幅とは異なる場合がある。反射の遅延時間が、異なる場合がある。
【0024】
更に、多くの場合、プローブは、メモリ・チップのすぐ近くで、SOCから遠く離れたインタポーザ・ボードに物理的に接続される。
図5は、試験測定装置26からのプローブ22と不整合のメモリ負荷24との間の被試験デバイス上のトレース20を示す。トレース20は短く、その信号は、大きな反射のあるプローブ22のポイントで観測される。これにより、反射係数が高くなり、遅延が小さくなる。これにより、プローブ・ポイントでのパルス振幅は、SOC28からの入射パルス振幅よりも大きくなる。しかし、SOCからプローブ22のポイントまでの長いトレース30は、SOCからの信号振幅の損失を引き起こすであろう損失を有することになる。このように、トレースのISI損失は、プローブ・ポイントでのパルス振幅を低下させる傾向があり、メモリの反射係数は、このポイントでの振幅を増加させる傾向がある。これは、メモリの負荷のインピーダンスが、伝送ラインのインピーダンスよりも大きいために発生する。これは、ライト動作中にインタポーザ32でプローブされる典型的なDDR5システムの状況である。
【0025】
図6は、リード動作を示している。この場合、メモリ24がトランスミッタとなっている。プローブ22は、典型的にはインタポーザ32を介して接続され、低損失の短いトレース34によってメモリ24から分離されるだけである。これにより、プローブ22での入射パルスは、メモリが送信したものと振幅が類似する。次に、信号は、プローブ22に何らかの信号を反射する大きなインピーダンス不整合を伴うSOC28まで長いトレース36を下って伝播する。長いトレース36は、損失が大きく、反射信号の振幅を低減する。この反射信号は、プローブ22に戻るが、SOC28の負荷のインピーダンスが伝送ラインの特性インピーダンスよりも大きいため、通常、プローブにおいて見られる振幅は増加する。この場合、遅延時間は、はるかに長く、SOCの負荷は、メモリがレシーバであったときのメモリの負荷とは異なることがある。
【0026】
反射の遅延時間及び反射係数値は、プローブ22及びオシロスコープなどの試験測定装置26によって取得された波形に対していくつかのカーソル測定を行うことによって計算できる。次に、SOC負荷がわかっている場合は、所与の反射係数と上記SOC負荷値とでトレースのインピーダンスを計算できる。又は、トレースのインピーダンス、つまり、特性インピーダンスがわかっている場合は、SOCのインピーダンスを計算できる。即ち、次の標準的な伝送ラインの理論の式を使用している。
【数1】
ここで、Zは、SOCメモリの負荷、Z0は長いトレース伝送ラインのインピーダンスである。Γは反射係数である。
【0027】
概して言えば、DDR5モデルの例では、パルス形状に影響を与える主なシステムの特性は、1)単一のパラメータαで表すことができる長いトレースの損失 2)反射遅延τ 3)反射係数Γ 4)トランスミッタの出力電圧ゲイン定数K である。業界のいくつかの例を見ると、このモデルは、これらのシステムで観測される波形のタイプをシミュレートできるシステムの方程式を定義するのに、かなりうまく機能しているようである。これらのパラメータは、数式6に示す周波数領域式に構成できる。このモデルは、
図5及び6に示すシステムの応答に近似している。
【0028】
モデル化した伝達関数Hを作成する最初のステップは、(2)に示すように、SOCとプローブポイント間の長いトレース長をモデル化する。
【数2】
[数式3]
n=0 … N-1
ここで、Nは、DCからfs(サンプル・レート)までの周波数領域ベクトルの長さ(サンプル数)である。nの値は、周波数領域の様々なサンプルへのインデックスである。
【0029】
αの値は、定数であり、これは、異なるPCBトレース長の損失特性を決定する。指数の項は、大きさの応答(magnitude response)のみを定義する。適切な位相応答を割り当てるために、数式4から最小位相応答を得ることができる。
[数式4]
h=rceps(ifft(H))
ここで、rcepsは、Yの最小位相インパルス応答を返すMatlab(登録商標)の関数である。
[数式5]
H=fft(h)
ここで、Hは、SOCからプローブ・ポイントまでのPCBトレースのモデル化された最小位相周波数応答である。
【数6】
ここで、fsはHz単位のサンプル・レート、nは周波数インデックス、NはDCからfsまでのサンプル数である。Γは反射係数、τは反射遅延である。数式2の指数-αn/Nの部分は、
図7に示すように、標準的なPCBトレースにかなり一致する振幅のロールオフを形成る。αは、
図7のプロットに示すような、どの損失曲線を形成するかを決定する変数であり、X(n)は、モデルへの入力での信号を表する。
【0030】
先の説明では、DDR5メモリのリードとライトの分離に必要なシステムのモデリング(モデル化)と測定の問題について説明してきた。これにより、本開示の実施形態が必要とされる理由を理解するための基礎が得られる。
【0031】
機械学習アプリケーションを設定するときに、一般的に使用される最初の手順は、データ削減である。例えば、機械学習アルゴリズムへのパラメータとデータの入力が多いほど、一意の正しい解に到達するのが難しくなる。更に、入力データが多いほど、より多くのトレーニング時間とより多くのランタイム処理が必要になる。従って、最初のステップは、全ての入力パラメータとデータを調べて、どのパラメータとどのデータが結果にほとんど影響を与えないかを判断することである。これらの項目は、システムへの入力として削除されるものとする。
【0032】
上記の説明では、DDR波形で一般的に見られる形状を理解するために必要な4つの最も基本的な要素のセットを示した。これらの4つのパラメータは、α(モデル内の長いトレースのISIを表す)、τ(反射遅延時間を表す)、Γ(反射係数を表す)、そして、K(ライト動作時のSOC伝送振幅とリード動作時のメモリからのメモリ伝送振幅と間の振幅差の定数を表す)であった。Kを除くこれら3つのパラメータは、ISI、シンボル間干渉に影響を与えることがある。αの値は、トレース損失によるISIを表し、反射係数と遅延の値は、負荷インピーダンスの不整合で生じる反射によるISIを表する。
【0033】
図8は、データ・バースト信号を分類するために使用されるシステムの実施形態を示す。システムのパルス応答は、多種多様な観点から導出できる。例えば、時間の関数としての振幅の波形プロットは、1つの方法ではある。しかし、この観点(View)を機械学習システムに与えるというのは、様々なビット・レート、様々なデータ・パターン、そして、それをどのように組み込むかという意味からデメリットもある。同様に、信号は、周波数領域とケプストラム(cepstrum)領域の観点から見ることができる。しかし、これらの観点(View:ビュー)を機械学習システムへの入力に使用しようとすると、システムの応答を見ようとするこの観点に信号パターンが干渉するという問題がある。デコンボリューション(Deconvolution:逆畳み込み処理)が必要となる。これらの観点(View)の実装をセットアップして処理するのが困難になる多くの問題と詳細(details)がある。
【0034】
例えば、複雑なクロック・リカバリ技術が必要になったり、デコンボリューション(逆畳み込み処理)の一部として複雑なゲート処理(gating)や補間が必要になることがある。インタポーザの反射遅延が短いために、ケプストラム及びスペクトル表示で分解能の問題が生じるなど、他の問題もある。ISIが大きいと、主要な特徴を抽出することがより困難になる。
【0035】
本願の実施形態は、これらの他の方法に関連する問題を解決するもので、全てのエッジ遷移を単一の閉ループXYプロットに捕捉する循環ループ画像を生成する。この循環ループ画像は、入力データ・レコードの全長にわたって、同じパス上を単純に循環する。入力データは、DDR5メモリ・システムなどにおけるバースト区間(インターバル)のクロック信号であっても良い。入力信号は、DDR5メモリ・システムにおけるDQバースト区間のようなランダム・データ・パターンであっても良い。ここでは示さないが、入力信号を補間又は間引き(デシメーション)して、生じる画像を満たすようにサンプル数を増減したり、人工知能(AI)/機械学習(machine learning)システムで使用されるデータ量を減らしたりしても良い。データ量の削減(一般に、次元削減(dimensionality reduction)と呼ばれる)により、機械学習システムをより効率的かつ正確に機能させることができる。システムは、入力信号の平均を入力信号から減算して、入力信号からDCオフセットを除去しても良い。
【0036】
上述したように、入力信号は、エッジ遷移を伴うハイ(高値)及びロー(低値)のレベル(その位置はシステム・クロックによって決定される)を有する任意の種類の波形であっても良い。X軸信号は、入力信号から導出された線形掃引ランプ信号又はランプのような信号であると考えられる。これは、標準的なオシロスコープの水平掃引ランプ信号の観点から考えることができる。このランプは、生成時に入力信号に依存するため、入力信号と直接同期する。
【0037】
上述の関連特許出願は、循環ループ画像及びそれらに関連するデータの生成に関する様々なアプローチを詳述している。循環ループ画像作成の具体的な実施形態の一例に関しては、水平掃引ランプは、最初に、入力信号の矩形パルス表現を作成する回路(ここではクリッパ回路42、43と呼ぶ)に入力信号を通すことによって生成される。一実施形態では、この回路は、信号に大きな値、例えば500を乗算し、次いで、信号がゼロより大きい場合、入力電圧の公称高レベルと同じとなる理想的な高値の定数に信号を割り当てる。信号がゼロ以下の場合、低レベルの定数値に信号を割り当てる。
図8の実施形態では、入力信号DQはクリッピング回路43を、DQS信号はクリッパ回路42を通過する。
【0038】
クリッピング回路の後、信号は、短期積分回路(short-term integrator)40及び45を通過する。この実施形態では、積分回路はボックスカー・フィルタ(boxcar filter)の形態をとる。ボックスカー・フィルタの幅は、入力信号の1個のUIの幅と等しく定める。係数は整数個あるので、指定されたサンプル・レートでの係数の個数は、UIの間隔に等しくなる場合もあれば、1個のUI幅より小さいサンプル間隔の量となる場合もある。これにより、入力信号の正のエッジの期間中に正方向のランプのような信号が作成され、入力信号の立ち下がりエッジの期間中に負方向のランプのような信号が作成される。エッジがない複数のUIの長い区間の場合にはランプ信号がなく、これは、このアプローチのユニークな機能である。その結果、循環ループ画像の閉ループ・パスに、正と負のエッジ位置のみが現れる。
【0039】
エッジのない複数のUI区間の全てのデータは画像内にあるが、画面上の2つの位置にのみ存在するため、システム・モデルの特性を示すエッジのみが画像内の非常にシンプルなループ・パスに完全に表示される。ISIが高い場合、ループの周りをたどるパスの変動が広がる。これにより、循環ループの中心が、より閉じる。UIごとに変化するクロック信号の場合、波形データ・セット全体がXY循環ループ表示上の同じ閉ループ・パスを繰り返しトレースする。全てのエッジがループ・パスに沿ってトレースされるため、これも新しい側面である。これにより、従来のアイ・ダイアグラムのように信号の詳細の多くを覆い隠す正と負のエッジのオーバーレイがあまりない循環ループ画像が得られる。
【0040】
バースト検出部44は、リード及びライト・データのバーストを検出する。データの各バーストを検出して処理し、リード又はライト動作として分類できるようにする必要がある。DDR5の場合、バースト検出は、DQSクロック信号を調べることで実現できる。これは、バーストが開始されるまでは、ゼロのままである。複数のUI区間からなるプリアンブルがあり、これには、2つ以上のUIで連続するロー(low:低値)がある。このプリアンブルは、DQS信号で発生する。これは、バーストの開始を検出するための基礎となる。その後、バースト内のDQS信号は、各UIでハイ(high:高値)とローを交互に繰り返す。DQ信号には、各UI区間でランダムにハイとローがある。
【0041】
バースト・ゲート46及び48は、バースト検出部からの信号に基づいて、循環ループ画像を生成するために使用されるデータを制御する。
図8の実施形態では、バースト・ゲートには、入力信号と、バースト検出部からの1又は0の入力との間の乗算器がある。メイン・システム・コントローラ76は、システム全体をシーケンスし、一度に1つのバーストのみを処理し分類する。
【0042】
システムは、50及び52のような1つ又は2つのプロットを作成するが、一方のプロット52は、取得したDQSを垂直軸に、クリッパ及びボックスカー・フィルタからの掃引ランプ出力信号を水平X軸上でDQS信号に適用したものである。第2プロット50は、DQ信号がY軸上にあり、循環ループ・アルゴリズムから作成された掃引ランプ信号をDQ信号に適用する。これら2つのプロットは、2つの比較的低解像度の循環ループ画像として表され、これらは、分類するトレーニングのためのディープ・ラーニング(深層学習)ニューラル・ネットワークへの入力として利用できる。これら2つのプロットは、表示画面にレンダリングすることで、ユーザが、入力波形DQ及びDQSの様々な特性を分析し、測定するために利用することもできる。いくつかの実施形態では、システムは、循環ループ画像データをメモリ(図示せず)に記憶しても良く、必ずしも循環ループ画像をディスプレイ上にレンダリングする必要はない。
【0043】
システムは、測定ユニット54を用いて、複数の測定を行っても良く、これら測定は、循環ループ画像、又は、循環ループ画像を形成するために用いられるデータを観測することによって行っても良い。これらの測定値は、オプションで、機械学習の一部のパラメータ入力として使用できる。いくつかの測定値は、システム・モデルが、リード又はライトのどちらで構成されているかを特定するために使用できる。測定ユニット54は、1つ以上のハードウェア回路、ソフトウェア測定ルーチン、又は、ハードウェアとソフトウェアの実装の任意の組み合わせから構成されても良い。
【0044】
測定例としては、反射遅延、反射係数、ISI、信号対ノイズ比(SNR)、非線形性などがある。システムは、ループの中心から閉ループ上の正しいポイントまでの2本の放射状線の間の角度を取得し、反射遅延を得ることができる。この角度は、反射の時間遅延に変換される。立ち上がりエッジと立ち下がりエッジがXY表示に現れるため、入射信号と反射信号の比率を測定し、反射係数を計算できる。これは、トレースISIが小さい場合に最も正確で簡単に実行できる。トレースISIが大きいと、どこから測定すればよいか、わかりにくくなり、精度が低下する。ISIの相対値は、ループの全体的な外径とループの内径を調べることで得られる。これは、ある程度までノイズによるものである。しかし、ノイズのないシステムでは、ISIは単一の細い線のループ・パスに変換されない。対照的に、ISIが高いとループが閉じ、ループ・パスの厚さが広がる。
【0045】
更に、これら他の測定値から、システムは、信号対ノイズ比を計算することができる。トランスミッタの非線形性は、立ち下がりエッジと立ち上がりエッジのエッジ形状又はスロープを異なるものにするが、この非線形性は、循環ループの対称性に容易に現れる。測定では、この線形性を単一の数値として表すことができ、この数値は、機械学習への入力として機能できる。
【0046】
実施形態の別の態様としては、表示画像への測定値の組み合わせがある。上述の様々な測定値は、機械学習の入力パラメータとして機能する。画像を処理する既存のトレーニング済みニューラル・ネットにそれらを入力するための1つの方法は、それらを棒グラフ又は他の形式のデジタル符号化データとして画像に組み込むことである。このようにして、抽出されたパラメータと実際の波形画像とが連携して、分類プロセスを支援する。
【0047】
機械学習システム56は、循環ループ画像を入力として受信する。システム又はネットワーク56の主な目的は、画像に配置された任意のデジタル符号化された抽出パラメータと共に循環ループ画像を調べ、次いで、画像に表された波形を、ライト・バースト又はライト・バーストのいずれかに分類することである。トレーニング段階(phase)57が存在しても良く、ここでは、リード及びライト循環ループ画像の複数の例が、どのように分類するかネットワークをトレーニングするために、ネットワークに提供される。トレーニング期間の後、入力画像はトレーニングされたネットワークによって分析され、リード又はライトのいずれかに分類される。
【0048】
機械学習システム56は、以下の入力を有しても良い。循環ループXYプロット画像は、循環する閉ループ・パスを示し、全てのエッジがこのパスにオーバーレイしている。抽出された測定パラメータが、もしある場合は、別個の何らかの別の形態の画像で、若しくは、数字のベクトルとして循環ループ画像に挿入されて提供されるか、又は、他の形態が考案されても良い。画像に挿入される場合、単純な棒グラフ、複数の棒グラフ、円周率チャートの形をしたオブジェクトなどの形式としても良い。ユーザ入力メニュー72により、ユーザは、トレーニング・プロセス57の一部として、例えば、取得されたバーストに関する循環ループ画像を見て、どれがリードで、どれがライトであるかをマシンに伝えることができる。マシンがどちらであるかを理解したら、ランタイム・プロセス58において、その時点からそれらを分類できる。
【0049】
これは、リードとライトの間にあまり大きな違いがないシステムや、上記の主要なモデルの仮定が同じではないシステムに有益である。例えば、インタポーザがなく、リード反射の遅延がライト反射と同じになる中央バス(mid bus)の近くにプローブを配置する、などである。システムには、また、ユーザ入力メニュー74があり、これにより、メモリ負荷、トレース・インピーダンス、インタポーザの使用及び位置などの様々なシステム・パラメータの入力が可能になる。
【0050】
機械学習システム56は、分類されたデータ・バースト信号をリード又はライトのいずれかとして出力する。ブロック66又は62は、マルチバースト波形を作成する。一実施形態では、これは、検出された各バーストを、リード・バースト又はライト・バーストのみを含む単一の波形に連結する処理をしていても良い。マルチバースト波形が作成された後、ディエンベッド処理フィルタ64及び68が、各波形に関して計算されても良い。リードとライトのシステム伝達関数が異なるため、波形ごとに異なるフィルタがある。また、これらのフィルタは、インタポーザのプローブ試験ポイントを、メモリ又はSOCの仮想プローブ試験ポイントに移動させる。最も好ましい場合としては、DQ信号に対して、DFEイコライザ70を適用しても良い。機械学習システム56は、また、測定60の結果を提供しても良い。
【0051】
システム・コントローラ76は、システム全体を制御及びシーケンスする汎用プロセッサ若しくは試験測定装置上のプロセッサ、又は、これらの間で分散されたプロセッサから構成されても良い。また、システム・コントローラは、複数のプロセッサ、クラウド・コンピューティングなどに分散することもできる。これらプロセッサは、測定及びニューラル・ネットワーク又は採用されても良い他のタイプの機械学習に関する全ての処理機能をプロセッサが提供するようにさせるコード(プログラム)を実行するように構成されても良い。言うまでも無く、このシステムのどの部分も、ASIC、GPU、FPGAなどの他のタイプのプロセッサで実装されても良い。
【0052】
図9は、循環ループ画像の作成に使用される波形のオシロスコープ画面上の例を示している。この表示では、やや正弦波に見える波形は、DQSクロック信号80である。クリッパの出力信号は、矩形波82として示されている。ランプ信号は、84のボックスカー・フィルタの出力信号である。
【0053】
図10に循環ループ画像の例を示す。左側は、高ISIのDQSライト信号である。中央には、反射が見られるDQSリード信号がある。右側には、リードとライトの両方のDQSのオーバーレイがある。
図11は、DQランダム・パルス・レベル信号90及びその関連するランプ掃引信号92(複数のランプは、DQ信号のエッジ遷移中にのみ発生)、並びに、DQ信号90及びランプ掃引信号92から構成される循環ループ画像94の例を示す。
【0054】
プローブとメモリ負荷との間の反射遅延は、
図12に示すように、標準的なYTトレース表示から測定できる。トレース遅延は、数式7から次のように計算される。
[数式7]
遅延=T/2
【0055】
図13は、循環ループ画像を使用してトレース遅延を測定する方法を示し、遅延が度数単位のθで表される。どちらの場合も、反射遅延時間を計算するための位相角度θを測定するポイントを示す表示を簡略化するために、波形をトレースISI損失なしで示している。
【0056】
遅延時間は、数式8から算出しても良い。ループを通る1つのフル・パスは360度で、これが1サイクルである。1サイクルは、NRZタイプの信号の場合は、2つのUI又は2ビットである。
[数式8]
遅延=θ/(360*ビット・レート)
ここで、θの単位は度、遅延の単位は秒である。信号のデータ・レートは、NRZタイプの信号ついてはビット・レートである。
【0057】
プローブとメモリ間の短いトレースの反射係数は、
図14に示すように、標準のYTタイプの波形表示で測定できる。次いで、反射係数は、次のように計算される。
[数式9]
Γ=(v2-v1)/v1
【0058】
反射係数がわかれば、負荷のインピーダンスZ又は特性インピーダンスZ0は、これらのいずれかがわかっていれば、計算できる。
[数式10]
Z=Z0*(1+Γ)/(1-Γ)
【0059】
反射係数は、
図15に示すように、循環ループ画像を用いて測定できる。
【0060】
このようにして、このシステムは、新しい循環ループ画像を作成して利用でき、オプションで、測定値が符号化された棒グラフを、この画像中に含めることができる。次に、これらの画像は、ディープ・ラーニング(深層学習)環境で利用されて、分析やその他の用途のために、これら信号を分離して分類することにより、信号の特性が決定及び分類される。
【0061】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0062】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0063】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0064】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0065】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。例えば、ある特定の特徴が特定の態様に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様との関連においても利用できる。
【0066】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0067】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0068】
実施例1は、信号を分類するシステムであって、入力波形データを受信するための入力部と、メモリと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、上記入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理と、バースト検出部を使用して上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理と、上記バースト検出部からの信号を受信して上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の循環ループ画像データを上記メモリに記憶させる処理と、機械学習システムを利用して、上記循環ループ画像データを受信し、上記データ・バーストを分類する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように構成される。
【0069】
実施例2は、実施例1のシステムであって、被試験デバイスから上記入力波形データを取り込む試験測定装置を更に具える。
【0070】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかのシステムであって、上記入力波形データから上記ランプ掃引信号を生成する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、クリッパを使用して上記入力波形データから矩形パルス信号を生成する処理と、上記矩形パルス信号に基づいて積分回路を使用してランプ信号を生成し、上記ランプ信号を上記バースト・ゲートに送信する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを更に有する。
【0071】
実施例4は、実施例3のシステムであって、上記積分回路が、ボックスカー・フィルタを有する。
【0072】
実施例5は、実施例1から4のいずれかのシステムであって、上記循環ループ画像データを用いて測定を行う測定ユニットを更に具える。
【0073】
実施例6は、実施例5のシステムであって、上記測定が、反射遅延、反射係数、シンボル間干渉、信号対ノイズ比及び非線形性のうちの1つ以上を含む。
【0074】
実施例7は、実施例5のシステムであって、上記測定ユニットが、その測定値を上記機械学習システムに送信する。
【0075】
実施例8は、実施例1から7のいずれかのシステムであって、上記機械学習システムからの分類されたデータ・バーストからマルチバースト波形を作成する連結部を更に具える。
【0076】
実施例9は、実施例8のシステムであって、上記マルチバースト波形に適用するフィルタを更に具える。
【0077】
実施例10は、実施例1から9のいずれかのシステムであって、上記システムの動作を調整するシステム・コントローラを更に具える。
【0078】
実施例11は、信号を分類する方法であって、入力波形データからランプ掃引信号を生成する処理と、上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定する処理と、上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の上記データ・バーストに関する循環ループ画像データを記憶する処理と、機械学習システムを利用して、上記循環ループ画像データを受信し、上記データ・バーストを分類する処理とを具える。
【0079】
実施例12は、実施例11の方法であって、ユーザからシステム・パラメータを受信する処理を更に具える。
【0080】
実施例13は、実施例11又は12のいずれかの方法であって、上記ランプ掃引信号を生成する処理が、上記入力波形データから矩形パルス信号を生成する処理と、上記矩形パルス信号を積分して上記ランプ掃引信号を生成する処理とを有する。
【0081】
実施例14は、実施例13の方法であって、上記矩形パルス信号を積分する処理が、ボックスカー・フィルタによって行われる。
【0082】
実施例15は、実施例11から14のいずれかの方法であって、上記循環ループ画像データを用いて測定を行う処理を更に具える。
【0083】
実施例16は、実施例15の方法であって、上記測定を行う処理が、反射遅延、反射係数、シンボル間干渉、信号対ノイズ比及び非線形性のうちの1つ以上を測定する処理を含む。
【0084】
実施例17は、実施例15の方法であって、測定値を上記機械学習システムに送信する処理を更に具え、上記機械学習システムは、上記循環ループ画像データと上記測定値とを用いて上記データ・バーストを分類する。
【0085】
実施例18は、実施例11から17のいずれかの方法であって、上記機械学習システムからの分類されたデータ・バーストからマルチバースト波形を作成する処理を更に具える。
【0086】
実施例19は、実施例11から18のいずれかの方法であって、上記機械学習システムをトレーニングする処理を更に具え、該トレーニングする処理が、複数の循環ループ画像を供給する処理と、上記循環ループ画像の夫々を分類するユーザ入力を受ける処理と、上記機械学習システムに分類を提供させ、上記ユーザ入力に対して上記分類を検証することにより、上記機械学習システムを試験する処理と、上記機械学習システムが上記循環ループ画像を正しく分類するまで上記試験する処理を繰り返す処理とを有する。
【0087】
実施例20は、データ信号を分類するシステムであって、入力波形データからランプ掃引信号を生成するランプ生成部と、上記入力波形データ内のデータ・バーストの位置を特定するためのバースト検出部と、該バースト検出部からの信号を受信し、上記入力波形データをY軸データとし、上記ランプ掃引信号をX軸データとする形の循環ループ画像データをメモリに記憶させるバースト・ゲートと、上記循環ループ画像を受信し、上記データ・バーストを分類する機械学習システムとを具える。
【0088】
実施例21は、実施例20のシステムであって、上記入力波形データは、被試験メモリ・デバイスから取り込まれ、上記機械学習システムは、上記被試験メモリ・デバイスに関するライト動作又はリード動作のいずれかから生じる上記データ・バーストを分類する。
【0089】
明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0090】
説明の都合上、本開示技術の具体的な実施形態を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】