(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ウェアラブル電子デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20230705BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230705BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/168 540
A61M5/168 550
A61M5/172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577524
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021066533
(87)【国際公開番号】W WO2021255216
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ユーグル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ブランケ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066DD12
4C066QQ77
4C066QQ78
(57)【要約】
本開示は、ハウジング(101)と、ハウジング(101)内に配置されたプロセッサ(140)と、プロセッサ(140)に接続され、手持ち式注射デバイス(1)のクリックノイズ発生器(45)によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように構成された、少なくとも第1のセンサ(160、180)とを含むウェアラブル電子デバイス(100)に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブル電子デバイス(100)であって:
ハウジング(101)と、
該ハウジング(101)内に配置されたプロセッサ(140)と、
該プロセッサ(140)に接続され、手持ち式注射デバイス(1)のクリックノイズ発生器(45)によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように構成された、少なくとも第1のセンサ(160)と
を含む前記ウェアラブル電子デバイス。
【請求項2】
ハウジング(101)に連結され、該ハウジング(101)を人の身体(202)の一部分(204)に取り付けるように構成されたリストバンド(102)をさらに含む、請求項1に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項3】
少なくとも第1のセンサ(160)は、機械的振動センサ(161)、音響センサ(162)、超音波センサ(163)、静電容量センサ(163)、および光学センサ(164)のうちの1つである、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項4】
ハウジング(101)は、電子デバイス(100)を装着している人の皮膚(200)の一部と機械的に接触するように構成された皮膚接触面(103)を含み、少なくとも第1のセンサ(160)は、皮膚接触面(103)に埋め込まれており、または少なくとも第1のセンサ(160)は、皮膚接触面(103)の上に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項5】
少なくとも第1のセンサ(160)は、皮膚接触面(103)から突出している、請求項4に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項6】
ハウジング(101)は、皮膚接触面(103)に凹部(104)を含み、少なくとも第1のセンサ(160)は、凹部(104)内に配置されている、請求項4または5に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項7】
少なくとも第1のセンサ(160)は、最大感度方向(D)を含み、該最大感度方向(D)は、皮膚接触面(103)の面法線に実質的に平行に向けられている、請求項4~6のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項8】
プロセッサ(140)に接続され、クリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズを音響的に検出するように構成された、少なくとも第2のセンサ(180)をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項9】
少なくとも第1のセンサ(160)は、手持ち式注射デバイスが操作されている間にユーザと機械的に接触しているとき、クリックノイズ発生器(45)によって引き起こされる、または発生するユーザの皮膚(200)の振動を検出するかまたは測定することができる、請求項1~8のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項10】
少なくとも第1のセンサ(160)は、手持ち式注射デバイスが操作されている間にユーザと機械的に接触しているとき、クリックノイズ発生器(45)によって引き起こされる、または発生し、ユーザの身体(202)の一部分(204)を通して伝達される音波を、検出するかまたは測定することができる、請求項1~9のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項11】
加速度センサ(190)とジェスチャ識別器(192)とをさらに含み、該ジェスチャ識別器(192)は、加速度センサ(190)によって発生した電気信号を解析するように動作可能であり、加速度センサ(190)およびジェスチャ識別器(192)のうちの少なくとも一方は、プロセッサ(140)に接続されるかまたは組み込まれている、請求項1~10のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項12】
少なくとも第1のセンサ(160)から得られた電気信号に基づいて、プロセッサ(140)は、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイス(1)の動作状態のうちの少なくとも一方を導出するかまたは決定するように動作可能である、請求項1~11のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項13】
スマートウォッチ(110)として実装される、請求項1~12のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)。
【請求項14】
用量のサイズまたは手持ち式注射デバイス(1)の動作状態のうちの少なくとも一方を決定する方法であって、手持ち式注射デバイス(1)は、手持ち式注射デバイス(1)の操作中に機械的振動または音響ノイズを発生するように構成されたクリックノイズ発生器(45)を含み:
請求項1~13のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)をユーザの身体(202)の一部分(204)に取り付ける工程と、
手持ち式注射デバイス(1)をユーザの身体(202)に機械的に接触させる工程と、
ウェアラブル電子デバイス(100)の少なくとも第1のセンサ(160、180)によって、クリックノイズ発生器(45)によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出する工程と、
機械的振動または音響ノイズの検出に応じて、少なくとも第1のセンサ(160、180)から得られる信号に基づいて、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイス(1)の動作状態のうちの少なくとも一方を決定または導出する工程と
を含む前記方法。
【請求項15】
用量のサイズおよび手持ち式注射デバイス(1)の動作状態のうちの少なくとも一方を決定するためのコンピュータプログラムであって、手持ち式注射デバイス(1)は、用量の設定中または用量の投薬中に機械的振動または音響ノイズを発生するように構成されたクリックノイズ発生器(45)を含み、コンピュータプログラムは、請求項1~14のいずれか1項に記載のウェアラブル電子デバイス(100)のプロセッサ(140)において実装されると:
手持ち式注射デバイスの操作中に少なくとも第1のセンサ(160、180)から得られる電気信号を解析するように、かつ
少なくとも第1のセンサ(160、180)から得られる電気信号の解析に基づいて、用量のサイズまたは手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも一方を決定するかまたは導出するように
動作可能なコンピュータ可読命令を含む前記コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェアラブル電子デバイス、特に、手持ち式注射デバイスのユーザによって装着されるように構成されたスマートウォッチに関する。別の態様では、本開示は、用量のサイズまたは手持ち式注射デバイスの動作状態を決定する方法に関する。本開示のさらに別の態様は、たとえば手持ち式注射デバイスによって設定もしくは投薬される、用量のサイズを決定もしくは検出する、かつ/または手持ち式注射デバイスの動作状態を検出もしくは決定するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
1回の用量または複数回の用量の液体薬剤を設定および投薬する薬物送達デバイスは、それ自体、本技術分野において周知である。一般に、こうしたデバイスは、通常のシリンジと実質的に同様の目的を有する。
【0003】
ペン型注射器などの薬物送達デバイスは、ユーザ特有の多くの要件を満たさなければならない。たとえば、糖尿病などの慢性疾患を患っている患者の場合、患者は、身体的に虚弱である可能性があり、視力も低下している可能性がある。したがって、特に自宅用医薬品のために意図された好適な薬物送達デバイスは、構造が頑強である必要があり、使用が容易でなければならない。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および全体的な取扱いは、分かりやすくかつ容易に理解可能でなければならない。こうした注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および続く投薬を提供するべきである。さらに、用量設定は用量投薬手順と共に、操作が容易でなければならず、明確でなければならない。
【0004】
機械的に実装された薬物送達デバイスの場合、電子的に実装された薬物送達デバイス、たとえば、電気駆動装置を備えた注射デバイスの場合もまた、注射デバイスの使用中に薬物送達関連データの正確な、信頼性の高い、準自動化監視および/または収集を可能にすることが望ましい。機械式の薬物送達および/または注射デバイスに、アドオンデバイスまたはデータ収集デバイスとしての役割を果たすとともに、注射デバイスのユーザが誘導する操作をモニタリングするように構成されている、電子的に実装された電子モジュールを備えることができる。こうした電子モジュールは、その幾何学的サイズに関しては、かなり小型であるべきである。一般に、こうした電子モジュールは、記憶補助として、かつ正確な用量履歴ロギングのために使用することができる。
【0005】
手持ち式注射デバイスなどの薬物送達デバイスは、通常、用量の設定、用量の投薬、または用量投薬手順の完了のうちの少なくとも1つの間に音響または触覚フィードバックを提供する。したがって、薬物送達デバイスまたは注射デバイスが動作しているとき、デバイスのユーザ、たとえば患者に、音響的または触覚的に検出可能なフィードバック信号が提供される。機械的に実装されたペン型注射器など、機械的に実装された手持ち式注射デバイスでは、典型的には、用量の設定、用量の投薬、または用量投薬手順が完了したときのうちの少なくとも1つの間、特徴的であり、そのため区別可能なクリックノイズを提供する、一種のクリックノイズ発生器が設けられている。
【0006】
こうした手持ち式注射デバイスを用いて長期または短期治療の信頼性の高いモニタリングを行うためには、こうした注射デバイスの繰返し使用の自動化もしくは半自動化ロギングまたは監視を提供することが望ましい。ペン型注射器などの手持ち式注射デバイスの操作および使用のモニタリングを提供する多数のアドオンまたは補助デバイスが報告されている。手持ち式注射デバイスの操作をモニタリングまたは記録するのに好適なこうしたアドオンまたは補助デバイスは、それぞれの注射デバイスに機械的に、たとえば所定の方法で連結しなければならない。中に提供された薬剤が使い切られた後に廃棄されることが意図されている使い捨て注射デバイスの場合、アドオンデバイスまたは補助デバイスは、使い捨て注射デバイスから取り外さなければならず、別の注射デバイスに再度取り付けなければならない。
【0007】
機械的に実装された注射デバイスの操作をモニタリングする目的で、アドオンまたは補助デバイスの分解および組立をこのように繰り返すことは、ユーザまたは患者に負担を与える可能性がある。
【0008】
加えて、手持ち式注射デバイスとそれに取り付けられたアドオンまたは補助デバイスを含むアセンブリは、手持ち式注射デバイス自体と比較して比較的大きい幾何学的寸法を構成する。アドオンデバイスまたは補助デバイスを備えた手持ち式注射デバイスは、必要な収納スペースが大きくなり、ユーザまたは患者が注射デバイスを携帯する場合、不都合であるとみなされる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述した不都合を回避することにより、手持ち式注射デバイスの操作をモニタリングする、または動作状態を検出する、改良されたシステムおよび方法を提供することが望ましい。この解決法は、かなり費用効率が高くなければならず、エンドユーザおよび患者に高い許容レベルを提供するべきである。特に、既存のハードウェアコンポーネントを利用して、用量設定、用量投薬、または手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つの効率的で、正確かつ信頼性の高いモニタリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、ウェアラブル電子デバイスが提供される。ウェアラブル電子デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に配置されたプロセッサとを含む。ウェアラブル電子デバイスは、少なくとも第1センサをさらに含む。第1のセンサは、プロセッサに接続されている。第1のセンサは、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように構成されている。
【0011】
ウェアラブル電子デバイスは、典型的には、手持ち式注射デバイスを使用するときに患者またはユーザによって装着される。クリックノイズ発生器を備えた手持ち式注射デバイスは、それぞれのユーザまたは患者によって操作されるとき、典型的には、ユーザまたは患者の手に保持される。手持ち式注射デバイスの操作に付随して、クリックノイズ発生器のそれぞれの繰り返されるまたは定期的な起動が起こる。手持ち式注射デバイスの典型的な使用または動作に付随して、手持ち式注射デバイスの操作または取扱い中にクリックノイズ発生器によって発生する、区別可能なかつ/または検出可能な少なくも1回の、典型的には一続きの機械的振動および/または音響ノイズが起こる。
【0012】
ウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサは、特に、手持ち式注射デバイスの使用または操作中にクリックノイズ発生器によって発生する機械的振動または音響ノイズを検出するように構成されている。このように、少なくとも第1のセンサに接続され、少なくとも第1のセンサによって発生し提供される電気信号を処理するように構成されたプロセッサは、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響信号の繰り返される発生を記録するかまたはモニタリングすることができる。
【0013】
いくつかの例では、プロセッサは、手持ち式注射デバイスの操作中にクリックノイズ発生器から生じる一続きの機械的振動または音響ノイズの機械的振動または音響ノイズの数を数えるように構成されている。たとえば繰り返すクリックノイズの多数の事例を単に計数することにより、設定された用量のサイズまたは実際に投薬された用量のサイズを計算することができる。典型的には、用量の設定中、用量のサイズが所定増分だけ増大するたびに、クリックノイズ発生器は、少なくとも第1のセンサによって検出可能な機械的振動または音響ノイズを発生させる。
【0014】
同様に、用量の投薬中、クリックノイズ発生器は、手持ち式注射デバイスによって実際に投薬または排出された用量の増分を示す特徴的な振動または特徴的な音響ノイズを繰り返し発生させることができる。いくつかの例では、クリックノイズ発生器は、たとえば用量注射手順の最後にのみ、またはそのときに特にアクティブであってよく、したがって、用量を排出するプロセスが完了したことを触覚的にまたは音響的に示す。
【0015】
いくつかの例では、手持ち式注射デバイスに、少なくとも2つのクリックノイズ発生器が備えられる。ここで、第1のクリックノイズ発生器は、第1の機械的振動または第1の音響的ノイズを発生させる。第2のクリックノイズ発生器は、第2の機械的振動または第2の音響ノイズを発生させる。さらに、第1の機械的振動または第1の音響ノイズは、第2の機械的振動または第2の音響ノイズと区別可能でありうる。第1のセンサおよび/またはプロセッサは、第1の機械的振動と第2の機械的振動とを区別するようにさらに構成することができ、かつ/または、第1の音響ノイズと第2の音響ノイズとを区別するように構成することができる。このように、たとえば、第1のクリックノイズ発生器が用量の設定中に排他的にアクティブであり、第2のクリックノイズ発生器が用量の投薬中に排他的にアクティブである場合、少なくとも第1のセンサおよび/またはプロセッサは、それぞれ第1または第2のクリックノイズ発生器によって発生する第1もしくは第2の機械的振動もしくは音響ノイズを検出または記録するときに、用量の設定と用量の投薬とを区別することができる。
【0016】
典型的な使用シナリオでは、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器とウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサは、クリックノイズ発生器から少なくとも第1のセンサに向かう機械的振動または音響ノイズの伝達を提供する搬送媒体によって機械的に連結されている。搬送媒体は、手持ち式注射デバイスの機械的構成要素およびウェアラブル電子デバイスのハウジングのうちの少なくとも1つと、人体の骨構造または皮膚などの生体組織とを含むことができる。
【0017】
典型的には、操作されるとき、手持ち式注射デバイスは、ユーザの手に保持される。ウェアラブル電子デバイスは、典型的には、ユーザの注射デバイスを携帯または保持している手と同じ手で携帯または装着される。この限りにおいて、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する音響ノイズまたは音響信号、および機械的振動により、音響波または機械的振動が発生し、かつ/または手持ち式注射デバイスのハウジングを通って、手持ち式注射デバイスと機械的に接触しているそれぞれのユーザの手または腕の生体組織内およびそうした生体組織を通って伝達される可能性がある。
【0018】
いくつかの例では、ウェアラブル電子デバイスは、ユーザの手または腕によって携帯または装着され、その手または腕は、手持ち式注射デバイスを保持するものではないが、ユーザが手持ち式注射デバイスを操作する特定の手である。例として、ユーザは、左手で注射デバイスを保持し、右手を用いてデバイスを操作して、たとえば、用量を設定または投薬する場合がある。ここで、ウェアラブル電子デバイスは、ユーザの左手または右手のいずれに装着してもよい。いずれの選択肢でも、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器から生じる機械的振動および/または音響ノイズは、ユーザの右手および/または左手に機械的に伝送されることになる。
【0019】
この限りにおいて、患者の身体の一部分の皮膚または生体組織は、手持ち式注射デバイス使用中に手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって発生した音響ノイズまたは機械的振動を伝送する搬送媒体としての役割を果たすことができる。ウェアラブル電子デバイスおよび少なくとも第1のセンサは、手持ち式注射デバイスの患者またはユーザの生体組織を介して伝達されるこうした音響ノイズまたは機械的振動を検出するように特に構成することができる。
【0020】
この限りにおいて、ウェアラブル電子デバイスの周囲および/または手持ち式注射デバイスの周囲もしくは付近における環境背景ノイズは、容易に弱めることができ、または遮断することができる。ウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサは、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって発生する機械的振動または音響ノイズを排他的に検出するように特に構成することができる。クリックノイズ発生器から生じる機械的振動または音響ノイズは、たとえばユーザの手または腕の生体組織を介してのみ第1のセンサに到達することができる。
【0021】
概して、音響ノイズまたは機械的振動の伝達に概して好適な人またはユーザの各身体領域、たとえば、皮膚および/または骨構造は、電子デバイスの装着に好適である。典型的な例では、ウェアラブル電子デバイスは、ユーザの手首または腕に装着されるように構成されている。それは、典型的には、注射手順の使用前または使用中に、注射デバイスも保持しているユーザの同じ腕または手に装着される。
【0022】
典型的には、さらなる例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、ユーザの腕または手の手首に携帯または装着されるように構成されたスマートウォッチとして、またはフィットネストラッカとして実装される。手持ち式注射デバイスがユーザの同じ手または腕で携帯または保持されると想定すると、注射デバイスがユーザによって実際に操作または使用されるとき、ウェアラブル電子デバイスは本質的に手持ち式注射デバイスに近接している。
【0023】
さらに、スマートウォッチまたはフィットネストラッカなどのウェアラブル電子デバイスは、今日、最終消費者または患者によって広く使用されている。これらのデバイスは、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなど、さらなる電子デバイスとの相互接続性を提供し、スマートフォンまたはタブレットコンピュータにより、実際に注射された時間、日付および/または用量のサイズを示し、ウェアラブル電子デバイスによって収集または記憶されているデータを、評価または監督目的で医療提供者に容易に送信することができる。
【0024】
手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように構成された少なくとも第1のセンサを使用することと、こうしたセンサをスマートウォッチに実装することとにより、手持ち式注射デバイスの操作、特に用量設定または用量投薬をモニタリングしロギングするためのかなり洗練された代替手段を提供する。手持ち式注射デバイスとの専用の機械的連結またはペアリングを必要とする、特定のアドオンデバイスまたは補助デバイスを使用することは、上述したウェアラブル電子デバイスによって置き換えることができ、それは、ウェアラブル電子デバイスに、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように動作可能な好適なセンサが備えられていることが条件である。
【0025】
さらなる例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、ハウジングに連結されるとともにハウジングを人の身体の一部分に取り付けるように構成されたリストバンドを含む。リストバンドは、ブレスレットとして実装することができる。リストバンドは、ハウジングに固定して取り付けることができる。リストバンドは、可撓性があるものとすることができ、ストラップを提供することができ、ストラップにより、リストバンドを人の身体の専用部分に巻き付けることができる。典型的には、リストバンドにより、ハウジングの固定、したがって手持ち式注射デバイスにも機械的に結合されているユーザの手首、手および/または腕へのウェアラブル電子デバイス全体の固定が提供される。
【0026】
リストバンドは、少なくとも用量の設定中または用量の投薬中、ウェアラブル電子デバイスを、手持ち式注射デバイスを保持しているユーザのその特定の手首または手に取り付けるのに特に好適である。このように、手持ち式注射デバイスを実際に携帯または保持しているユーザの手に接近してウェアラブル電子デバイスを取り付けることにより、ウェアラブル電子デバイスは、手持ち式注射デバイスに本質的に近接して提供される。ウェアラブル電子デバイスと手持ち式注射デバイスとの近接性は、センサの領域に十分な信号強さまたは強度で機械的振動または音響ノイズを提供するために特に有益である。
【0027】
少なくとも第1のセンサが、搬送媒体としてのユーザの生体組織によって伝達される機械的振動または音響ノイズを検出するように構成されている場合、少なくとも第1のセンサとクリックノイズ発生器との間の比較的短い距離、したがって、ウェアラブル電子デバイスと手持ち式注射デバイスとの間の比較的短い距離は、少なくとも第1のセンサによる信頼性が高く高精度の測定結果を提供するために特に有益である。
【0028】
さらなる例によれば、少なくとも第1のセンサは、機械的振動センサ、音響センサ、超音波センサ、静電容量センサ、および光学センサのうちの1つである。これらすべてのタイプのセンサで、少なくとも、クリックノイズ発生器が繰り返しアクティブである間に、実際に手持ち式注射デバイスを保持している人の生体組織の一部を通して伝達される少なくとも機械的振動または音響ノイズを、少なくとも第1のセンサで検出することができる。
【0029】
音響センサとして実装される場合、少なくとも第1のセンサは、典型的には、ウェアラブル電子デバイスがたとえば人の身体の特定の部分に装着されるときに、たとえばユーザの皮膚の一部に向けられた、指向性マイクロフォンとして実装される。したがって、手持ち式注射デバイスの使用中にクリックノイズ発生器から生じ、手持ち式注射デバイスを保持しているときにその人の生体組織を通して伝達される機械的振動または音響ノイズは、少なくとも第1のセンサによって検出し、またはさらには定量的に測定することができる。
【0030】
クリックノイズ発生器によって発生する各クリックノイズは、典型的には、クリックノイズ発生器から手持ち式注射デバイスのハウジングに伝送される可能性のある機械的振動を発生させる。さらに、こうした機械的振動は、必然的に、ハウジングから生体組織に、たとえば、実際に手持ち式注射デバイスを保持している人の皮膚に伝送される。したがって、ウェアラブル電子デバイスが実際にユーザに装着されているとき、人の皮膚または生体組織の中または上に伝送された機械的振動は、少なくとも第1のセンサの位置に到達するまで、それぞれの生体組織を介して伝達される。
【0031】
手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器の起動または使用により、たとえばユーザの皮膚の、検出可能な機械的振動が引き起こされる可能性がある。音響ノイズ、したがってクリック音は、同様に、人の生体組織内に伝送され、生体組織を通して伝達される。搬送媒体の、たとえばユーザの生体組織または皮膚の振動または音響刺激は、特に、少なくとも第1のセンサが機械的振動センサとしてまたは音響センサとして実装される場合、少なくとも第1のセンサによって典型的に検出可能である。
【0032】
ユーザの生体組織の機械的または音響的な励起は、超音波スペクトル領域においても検出可能でありうる。このように、超音波センサとして実装される場合、少なくとも第1のセンサは、手持ち式注射デバイスの使用中にクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生し、ウェアラブル電子デバイスが取り付けられているユーザの生体組織内に伝送されかつ生体組織を通して伝達された超音波信号を、等しく検出することができる。
【0033】
同様に、少なくとも第1のセンサは、静電容量センサとして実装することができる。たとえば人の皮膚の音響的または機械的な励起は、静電容量式検知配置によって、たとえば皮膚の一部と直接接触することができる静電容量センサによって、電気的にも検出可能でありうる。
【0034】
さらに、ユーザの皮膚部分の機械的振動または音響刺激は、光学的にも検出可能でありうる。ここで、たとえばともにウェアラブル電子デバイスによって提供される、光源および光検出器は、電磁放射を放出するように、かつ、電磁放射をユーザの皮膚の一部の上に伝送するように構成することができる。光学センサ、したがって光検出器は、皮膚によって反射された電磁放射の少なくとも一部を記録するか、または検出するように構成することができる。皮膚が、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる機械的振動を受ける場合、こうした振動は、特定の皮膚部分によって反射される光の方向および/または強度の測定可能な変更をもたらす。
【0035】
さらなる例によれば、ウェアラブル電子デバイスのハウジングは、皮膚接触面を含む。皮膚接触面は、電子デバイスを装着している人の皮膚の一部と機械的に接触するように構成される。少なくとも第1のセンサは皮膚接触面に埋め込まれるか、または少なくとも第1のセンサは皮膚接触面上に配置される。典型的には、皮膚接触面は、ハウジングの底部の外面に設けられる。ウェアラブル電子デバイスのハウジングは、典型的には、底部と反対側に位置する上部または上面を含む。上部において、ウェアラブル電子デバイスは、典型的には、時間、日付、または心拍数などの他の健康関連もしくは生理学的データなど、ウェアラブル電子デバイスのユーザにさまざまな情報を視覚的に示すディスプレイを含む。
【0036】
少なくとも第1のセンサを皮膚接触面の中または上に配置するかまたは埋め込むことによって、ウェアラブル電子デバイスが患者またはユーザによって好適に装着されるとき、少なくとも第1のセンサは、本質的に皮膚に向けられ、またはさらには皮膚と直接接触することができる。第1のセンサを皮膚接触面の上または中に埋め込むかまたは配置することによって、ウェアラブル電子デバイスがユーザまたは患者によって装着されるとすぐに、第1のセンサに対して即座の皮膚接触を提供することができる。
【0037】
さらなる例によれば、少なくとも第1のセンサは、皮膚接触面から突出している。典型的には、少なくとも第1のセンサは、皮膚接触面の外縁から所定の距離に、したがって、ハウジングの底部の1つの側縁またはすべての側縁から特定の距離に位置する。少なくとも第1のセンサは、ハウジングの皮膚接触面の面法線に実質的に平行に向いている方向において皮膚接触面から突出することができる。このように、ウェアラブル電子デバイスがユーザの皮膚部分に好適に取り付けられると、少なくとも第1のセンサがユーザの皮膚に直接接触することが何らかの形で保証される。
【0038】
このように、皮膚と少なくとも第1のセンサとの間の幾分か緩い接触を本来はもたらす可能性がある、皮膚の凹凸のあるまたは粗い部分から生じる可能性がある有害な影響を、効果的に補償することができる。少なくとも第1のセンサを底部の外面から少なくともわずかに外向きに突出させることにより、したがって、少なくとも第1のセンサを皮膚接触面から突出させることにより、少なくとも第1のセンサと皮膚のそれぞれの部分との間の包括的で信頼性の高い直接接触を、効果的に提供することができる。
【0039】
さらなる例によれば、ハウジングは、皮膚接触面に凹部を含む。凹部は、特定の深さを含む。凹部は、皮膚接触面の面法線の方向と平行に延びることができる。典型的には、凹部はまた、ハウジングの底部の側縁または外縁からオフセットして提供される。さらに、少なくとも第1のセンサは、凹部内に配置される。少なくとも第1のセンサは、典型的には、凹部の底部に配置される。このように、少なくとも第1のセンサは、皮膚接触面から外向きに突出することはない。むしろ、少なくとも第1のセンサは、凹部内に配置される。このようにして、ウェアラブル電子デバイスがそれぞれの皮膚部分に取り付けられたとき、少なくとも第1のセンサは、皮膚の一部と直接接触することから効果的に保護される。
【0040】
こうした構成は、少なくとも第1のセンサと皮膚との間の直接接触を回避すべきである場合に、特に有益でありうる。これは、たとえば、少なくとも第1のセンサが光源と光検出器との組合せを含む場合でありうる。皮膚接触面に対する少なくとも第1のセンサの凹状配置により、少なくとも第1のセンサとユーザの皮膚部分との間の直接接触は、効果的に回避することができる。これはまた、たとえば手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器の動作に起因する皮膚部分の振動を検出する代替方法を有効にするために、特に有益でありうる。皮膚の振動測定には、少なくとも第1のセンサと皮膚のそれぞれの部分との間の間隙が有益である場合がある。
【0041】
別の例によれば、少なくとも第1のセンサは、最大感度方向を含む。最大感度方向は、皮膚接触面の面法線に実質的に平行に向けられる。このように、ウェアラブル電子デバイスが人に好適に装着されたとき、および、ウェアラブル電子デバイスのハウジングの皮膚接触面が皮膚のそれぞれの部分と直接接触しているとき、少なくとも第1のセンサが人の皮膚に対してその最高感度を有することが、幾分か確実になる。このように、他の環境または周囲の影響によって引き起こされる背景ノイズまたは皮膚の振動などの環境的影響を無視するか、または除外することができる。少なくとも第1のセンサは、音響センサとして実装される場合、指向性マイクロフォンを含むことができ、指向性マイクロフォンの最大感度は、典型的には、皮膚接触面の面法線に平行に向けられる。
【0042】
概して、指向的に測定する第1センサの最大感度方向は、皮膚接触面の面法線の方向からわずかに逸脱していてもよい。典型的な例では、少なくとも第1のセンサの最大感度方向と皮膚接触面の面法線との間の角度オフセットは、45°未満、30°未満、20°未満、15°未満、または10°未満であるべきである。ウェアラブル電子デバイスに、たとえば皮膚接触面においてまたは皮膚接触面の上に互いに隣接して配置された、多数のセンサが備えられる場合、少なくとも第1のセンサの最大感度方向は、皮膚接触面の面法線から特に逸脱してもよく、ウェアラブル電子デバイスがユーザの身体の部分に好適に取り付けられるとき、複数のセンサのうちの少なくとも2つが、その皮膚部分の共通の仮想点または領域に有効に向けられる。
【0043】
さらなる例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、プロセッサに接続された少なくとも第2のセンサを含む。第2のセンサは、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズを音響的に検出するように構成される。少なくとも第2のセンサは、少なくとも第1のセンサに加えて設けることができる。少なくとも第2のセンサは、マイクロフォンを含むことができる。それは、指向性マイクロフォンを含むことができる。
【0044】
第2のセンサは、少なくとも第1のセンサから所定の距離に位置することができる。第2のセンサは、ハウジング内に配置して位置付けることができる。それは、ハウジング内に封入することができる。第2のセンサは、ウェアラブル電子デバイスのハウジングの側壁内にまたは側壁に隣接して配置することができる。代替的に、第2のセンサは、ウェアラブル電子デバイスのハウジングの前面の上に配置してもよく、または前面に埋め込んでもよい。第2のセンサは、前面に配置することができ、一方、第1のセンサは、ウェアラブルセンサのハウジングの中または底部に配置することができる。
【0045】
第2のセンサは、搬送媒体としての空気を介して伝達される機械的振動または音響ノイズを検出するかまたは測定するように構成することができる。この限りにおいて、第1のセンサと第2のセンサとは、機械的振動または音響ノイズの伝達のために構成された搬送媒体の特定のタイプに関して、検知能力に関して区別することができる。
【0046】
少なくとも第1のセンサは、クリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生し、生体組織を介して伝達される、機械的振動または音響ノイズを、排他的に検出するように構成することができる。少なくとも第2のセンサは、クリックノイズ発生器によって発生し、搬送媒体としての空気を介して伝達される、機械的振動または音響ノイズを、検出するようにまたは測定するように特に構成することができる。
【0047】
このように、少なくとも第1および第2のセンサを有することにより、クリックノイズ発生器によって発生するかまたは引き起こされる機械的振動または音響ノイズを、冗長的に記録、モニタリングまたは検出することができる。それにより、機械的振動または音響ノイズに関するウェアラブル電子デバイスの感度だけでなく、検出精度も向上させることができる。
【0048】
いくつかの例では、ウェアラブル電子デバイスは、第1のセンサがなく、マイクロフォンとして実装された第2のセンサのみを含む。
【0049】
別の例によれば、少なくとも第1のセンサは、ユーザの皮膚の振動を検出するかまたは測定することができ、ここで、皮膚の振動は、手持ち式注射デバイスが、ユーザによってまたはユーザを介して操作されている間、ユーザと機械的に接触しているときに、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する。典型的な使用シナリオでは、注射デバイスは、ユーザが操作している間、ユーザの手で保持される。注射デバイスの操作は、用量の設定および用量の投薬、ならびに用量設定または用量投薬手順の開始または完了のうちの少なくとも1つを含み、これらの動作の各々に付随して、クリックノイズ発生器から生じる機械的振動または音響ノイズが発生する。
【0050】
典型的には、ウェアラブル電子デバイスが、手持ち式注射デバイスを実際に保持するユーザの同じ手または腕に取り付けられる場合、ウェアラブル電子デバイスの1つのセンサまたは複数のセンサとクリックノイズ発生器との間の空間距離は、比較的短い。こうした短い距離の場合、クリックノイズ発生器によって発生し、第1の位置で生体組織に伝送された機械的振動または音響ノイズは、生体組織を介して、ウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサが位置する少なくとも第2の位置まで、伝達することができる。
【0051】
生体組織内または生体組織を横切る比較的短い移動距離にわたり、機械的振動または音響ノイズの減衰(damping)または減衰(attenuation)の程度は比較的小さく、そのため、少なくとも第1のセンサは、たとえば第2の位置で、それぞれの信号を検出することができる。本例では、少なくとも第1のセンサは、典型的には、振動センサとして実装される。振動センサは、音響センサとして、超音波センサとして、容量センサとして、または光学センサとして実装することができる。
【0052】
別の例によれば、少なくとも第1のセンサは、手持ち式注射デバイスが操作されている間にユーザと機械的に接触しているとき、クリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生し、ユーザの身体の一部分を介して伝達される音波を、検出するかまたは測定することができる。ここで、少なくとも第1のセンサは、典型的には、音響センサとして、または、超音波センサとして実装される。クリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する音波は、生体組織を通して、たとえば、ユーザの皮膚を通してまたはユーザの骨構造を通して伝播することができる。いくつかの例では、クリックノイズ発生器から生じる音波は、ユーザの生体組織に入ることができ、第1の位置で骨構造に入ることができる。音波は、骨構造を通って、第1の位置から間隔をあけて位置する骨構造の第2の位置まで伝播することができる。第2の位置で、音波またはその一部は、生体組織を通って少なくとも第1のセンサに向かって再び伝播することができる。
【0053】
手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する音波は、ユーザの骨構造、結合組織、皮膚組織、もしくは筋肉組織のうちの少なくとも1つを通してもしくはそれに沿って、またはそれらの組合せを通して、伝播することができる。概して、ユーザの生体組織は、クリックノイズ発生器から生じ、ユーザの身体の一部分に取り付けられたときにウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサによって検出可能な、音波に対して、搬送媒体としての役割を果たすことができる。
【0054】
別の例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、加速度センサとジェスチャ識別器とを含む。ジェスチャ識別器は、加速度センサによって発生する電気信号を解析するように動作可能である。加速度センサおよびジェスチャ識別器のうちの少なくとも一方は、プロセッサに接続されるか、またはプロセッサに組み込まれる。このように、たとえばユーザの手、手首、または腕に取り付けられ、ユーザがその身体のそれぞれの部分を動かすと、ジェスチャ識別器は、それぞれの身体部分の特徴的な動きを識別することができる。通常、加速度センサによって発生する電気信号は、ジェスチャ識別器によって恒久的に解析される。
【0055】
ユーザの身体の一部分の特徴的なジェスチャまたは動きにより、加速度センサから特徴的な電子信号のシーケンスが発生することになる。ジェスチャ識別器は、たとえば、人が実際にペン型または手持ち式注射デバイスを把持しまたは持ち上げているか否かを判断するために、こうした特徴的なシーケンスを識別するように構成される。典型的には、ジェスチャ識別器は、手持ち式注射デバイスを使用するために手に取るときのユーザの手または腕の動きのジェスチャを識別することができる。
【0056】
加速度センサおよび/またはジェスチャ識別器によって提供されるジェスチャ認識は、ウェアラブル電子デバイスの電気エネルギー消費を最適化するのに役立つことができる。ジェスチャ識別はまた、クリックノイズ発生器から生じる機械的振動または音響ノイズの検出における精度および信頼性を向上させることもできる。さらに、ジェスチャ認識により、ウェアラブル電子デバイスのウェイクアップまたは起動ルーチンをトリガすることができる。
【0057】
さらなる例によれば、ジェスチャ識別器およびプロセッサのうちの少なくとも一方は、たとえばユーザによって実行される、所定のジェスチャの1つを検出または認識することに応じて、少なくとも第1のセンサを起動するように動作可能である。所定のジェスチャの検出または認識は、典型的には、ウェアラブル電子デバイスがユーザの身体のそれぞれの部分に取り付けられたときに加速度センサによって発生しかつ加速度センサから得られる電気信号に基づいて実行される。
【0058】
いくつかの例では、デフォルトで、少なくとも第1のセンサは、たとえばプロセッサによって、停止状態にすることができる。たとえばジェスチャ識別器またはプロセッサのうちの少なくとも一方によって提供される、ジェスチャ認識またはジェスチャ識別に応じる場合、プロセッサは、少なくとも第1のセンサおよび/またはウェアラブル電子デバイスが起動状態に設定されるウェイクアップルーチンを行うことができる。起動状態では、少なくとも第1のセンサは、非アクティブまたはデフォルト状態と比較して、上昇したエネルギー消費レベルを示す。
【0059】
デフォルトで、起動状態に切り替えられたとき、少なくとも第1のセンサは、所定時間間隔の間、起動状態であり続けることができる。この所定時間間隔の間に、第1および第2のセンサのうちの少なくとも一方により、機械的振動または音響ノイズが検出されるべきではない場合、それぞれのセンサは、自動的にデフォルトまたは非アクティブ状態に切り替わることができる。それぞれのセンサは、さらなるジェスチャ認識またはジェスチャ識別に応じて、再びウェイクアップすることができる。
【0060】
別の例によれば、プロセッサは、手持ち式注射デバイスによって設定または投薬される用量のサイズのうちの少なくとも1つを導出するかまたは決定するように動作可能である。代替的にまたは追加的に、プロセッサは、手持ち式注射デバイスの動作状態を決定するかもしくは導出するように動作可能であるか、または決定もしくは導出することができる。プロセッサは、たとえば、手持ち式注射デバイスのアイドルまたは起動状態を識別することができる。プロセッサは、たとえば、用量設定手順および用量投薬手順のうちの少なくとも一方の完了または開始のうちの少なくとも一方を決定することができる。手持ち式注射デバイスの動作状態の導出または決定は、設定または投薬された用量のサイズの導出または決定も含むことができ、少なくとも第1のセンサから得られる電気信号に基づいてプロセッサによって行われる。
【0061】
場合によりまたはさらに、動作状態の導出もしくは決定および/または用量のサイズの導出もしくは決定は、少なくとも第2のセンサによって発生するとともに第2のセンサから得られる電気信号に基づいて、行うことができる。いくつかの例では、プロセッサは、第1のセンサから得られた電気信号と第2のセンサから得られた電気信号との組合せに基づいて、用量のサイズまたは手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも一方を導出しかつ/または決定するように構成される。
【0062】
さらなる例では、プロセッサは、手持ち式注射デバイスの異なる動作状態を区別するように構成することができる。このために、手持ち式注射デバイスで行われる異なる動作状態または異なる操作は、クリックノイズ発生器によって引き起こされるかもしくは発生する、または異なるクリックノイズ発生器によって引き起こされるかもしくは発生する、異なるタイプの機械的振動または異なる音響ノイズを誘発することができる。
【0063】
したがって、プロセッサ、ならびに/または第1のセンサおよび第2のセンサのうちの少なくとも一方は、たとえば、クリックノイズ発生器の異なる動作モードから生じる、または、手持ち式注射デバイスの異なるクリックノイズ発生器、したがって、少なくとも第1のクリックノイズ発生器からかつ少なくとも第2のクリックノイズ発生器から生じる、引き起こされたか、または発生した異なるタイプの機械的振動および/または異なるタイプの音響ノイズを区別するように構成することができる。
【0064】
異なるタイプの機械的振動または音響ノイズを区別するために、第1および第2のセンサのうちの少なくとも一方によって提供される電気信号は、スペクトルフィルタリングなどの電子フィルタリングを受けることができる。このために、それぞれのセンサおよび/またはプロセッサに、第1および第2のタイプの機械的振動または音響ノイズの検出に応じてそれぞれのセンサによって発生する第1および第2のタイプの電気信号を区別するように動作可能な、好適な電子フィルタを備えることができる。
【0065】
別の例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、メモリおよび通信インターフェースのうちの少なくとも1つをさらに含む。通信インターフェースは、典型的には、外部電子デバイスとデータを交換するように動作可能である。通信インターフェースは、典型的には、無線通信インターフェースとして実装される。ウェアラブル電子デバイスの通信インターフェースは、典型的には、外部電子デバイスとの通信リンクを設定し維持するように構成される。外部電子デバイスは、携帯型電子デバイスまたは据置型電子デバイスのうちの一方を含むことができる。いくつかの例では、外部電子デバイスは、ウェアラブル電子デバイスの通信インターフェースを介してウェアラブル電子デバイスとの通信リンクを確立することができるスマートフォン、タブレットコンピュータ、またはパーソナルコンピュータである。
【0066】
ウェアラブル電子デバイスのメモリ、および通信インターフェースは、プロセッサに接続されている。このように、第1のセンサおよび第2のセンサのうちの少なくとも一方から得られる電気信号は、メモリに直接記憶することができ、または外部電子デバイスに送信することができる。さらに、ウェアラブル電子デバイスのプロセッサは、第1のセンサおよび第2のセンサのうちの少なくとも一方から得られる電気信号を直接処理するように動作可能でありうる。
【0067】
プロセッサは、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つを直接導出するようにまたは決定するように構成することができる。用量のサイズおよび/または動作状態は、外部電子デバイスに直接送信してもよく、または、メモリにローカルに記憶してもよい。
【0068】
いくつかの例では、ウェアラブル電子デバイスはクロックをさらに含み、クロックにより、メモリに記憶されるかまたは外部電子デバイスに送信される予定のデータに時間または日付標示を提供することができる。このように、プロセッサおよびメモリは、手持ち式注射デバイスの操作および/または使用に関連する情報のモニタリングおよび/またはロギングを提供することができる。
【0069】
別の例によれば、ウェアラブル電子デバイスは、スマートウォッチとして、またはフィットネストラッカとして実装される。上述した構成および機能性に加えて、ウェアラブル電子デバイスは、それぞれのユーザによって装着されたときにユーザの生理学的データを取得する心拍センサまたはパルスオキシメトリセンサをさらに含むことができる。ウェアラブル電子デバイスは、時間および日付などの情報をユーザに提供することができる。
【0070】
別の態様によれば、本開示は、用量のサイズまたは手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも一方を決定する方法に関する。本方法は、ウェアラブル電子デバイスをユーザの身体の一部分に取り付けることと、手持ち式注射デバイスをユーザの身体と機械的に接触させることとを含み、手持ち式注射デバイスはクリックノイズ発生器を含む。本方法は、さらに、注射デバイスがユーザによって操作されたときに、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出する工程を含む。クリックノイズ発生器から生じる機械的振動または音響ノイズは、前記用量の設定、用量の投薬、または用量投薬もしくは用量設定手順のうちの少なくとも一方を開始もしくは終了したときのうちの少なくとも1つの間に提供することができる。
【0071】
本方法は、クリックノイズ発生器から生じる機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出することをさらに含む。機械的振動または音響ノイズの検出は、ユーザまたは患者の身体の皮膚または骨構造などの生体組織によって伝達された後の振動または音響ノイズの検出を含むことができる。
【0072】
さらに、本方法は、機械的振動または音響ノイズの検出に応じて少なくとも第1のセンサから得られた信号に基づいて、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも一方を決定または導出することをさらに含むことができる。
【0073】
典型的には、用量のサイズまたは手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つを決定する方法は、上述したようにウェアラブル電子デバイスの使用によって実装される。その限りにおいて、ウェアラブル電子デバイスに関連して上述したようなすべての構成、効果および利点は、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つを決定する方法にも等しく適用され、逆もまた同様である。
【0074】
別の態様によれば、本開示はさらに、設定または投薬された用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つを決定するコンピュータプログラムに関する。ここで、手持ち式注射デバイスは、用量の設定中、用量の投薬中、または手持ち式注射デバイスの動作中に、たとえば、用量設定または用量投薬手順のうちの少なくとも一方の開始または完了の過程において、機械的振動または音響ノイズを発生させるように構成されたクリックノイズ発生器を含む。
【0075】
コンピュータプログラムは、上述したようなウェアラブル電子デバイスのプロセッサにおいて実装されるとき、用量の設定または投薬など、注射デバイスのユーザが誘導するかまたはユーザが制御する動作中に、少なくとも第1のセンサから得られる電気信号を解析するように動作可能であるコンピュータ可読命令を含む。コンピュータ可読命令は、さらに、手持ち式注射デバイスによって現在設定または投薬される用量のサイズを決定するようにもしくは導出するように、かつ/または手持ち式注射デバイスの動作状態を決定するようにもしくは導出するように、動作可能である。動作状態および/または用量サイズの導出または決定は、少なくとも第1のセンサから得られる電気信号の解析に基づき、さらなるコンピュータ可読命令によって提供される。
【0076】
典型的には、コンピュータプログラムは、上述したようにウェアラブル電子デバイスにおいて展開されるように構成されている。典型的には、ウェアラブル電子デバイスのプロセッサによって実行されるように構成されている。特に、上述した方法は、コンピュータプログラムを用いて実行可能である。この限りにおいて、ウェアラブル電子デバイスと、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも1つを決定する方法とに関連して上述したようなすべての構成、効果および利点は、コンピュータプログラムにも同様に適用され、逆も同様である。
【0077】
概して、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって定義される。注射デバイスは、特定の実施形態または例に限定されず、異なる実施形態または例の要素の任意の組合せを含む。この限りにおいて、本開示は、請求項の任意の組合せと、異なる例または実施形態に関連して開示する構成の技術的に実現可能な任意の組合せとを対象とする。
【0078】
本文脈において、「遠位」または「遠位端」という用語は、ヒトまたは動物の注射部位の方に面する注射デバイスの端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、ヒトまたは動物の注射部位から最も遠い注射デバイスの反対側の端部に関する。
【0079】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0080】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0081】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0082】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0083】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0084】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0085】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0086】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0087】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0088】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0089】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0090】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0091】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0092】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0093】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0094】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0095】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0096】
当業者であれば、本明細書に記載したAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の変更(追加および/または除去)を、こうした変更およびそのありとあらゆる均等物を包含する本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。
【0097】
当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対してさまざまな変更および変形を行うことができることがさらに明らかである。さらに、添付の特許請求の範囲で使用するいかなる参照番号も、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが留意されるべきである。
【0098】
以下では、手持ち式注射デバイスと組み合わせて使用可能なウェアラブル電子デバイスの一例について、図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】手持ち式注射デバイスの1つの例を概略的に示す図である。
【
図2】手持ち式注射デバイスの多数の構成要素を概略的に示す分解図である。
【
図3】ウェアラブル電子デバイスの論理的構成要素のブロック図である。
【
図4】ユーザが手持ち式注射デバイスを手に保持しており、ウェアラブル電子デバイスがそれぞれの手の手首に取り付けられている状態を示す概略図である。
【
図5】ウェアラブル電子デバイスの少なくとも第1のセンサによって検出および/または測定される、手持ち式注射デバイスのクリックノイズ発生器から生じる機械的振動および/または音響ノイズの伝播を概略的に示す図である。
【
図6】ウェアラブル電子デバイスのさらなる例を概略的に示す図である。
【
図7】ウェアラブル電子デバイスのさらなる例を示す図である。
【
図9】クリックノイズ発生器の1つの例を概略的に示す図である。
【
図10】用量のサイズおよび手持ち式注射デバイスの動作状態のうちの少なくとも一方を決定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1および
図2に、概してウェアラブル電子デバイスと組み合わせて使用可能である手持ち式注射デバイスの多数の例のうちの1つのみを示す。
図1および
図2に示すようなデバイスは、注射針15を取り付けることができるハウジング10を含む、充填済み使い捨て注射デバイスである。注射針15は、内側針キャップ16と、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを包囲し保護するように構成されている、外側針キャップ17または保護キャップ18のいずれかとによって保護されている。ハウジング10は、
図2に示すように、駆動機構8および/または用量設定機構9を収容するように構成された主ハウジング部材を含むとともに形成することができる。注射デバイス1は、カートリッジホルダ14として示す遠位ハウジング構成要素をさらに含むことができる。カートリッジホルダ14は、主ハウジング10に恒久的にまたは解放可能に連結することができる。カートリッジホルダ14は、典型的には、液体薬剤が充填されているカートリッジ6を収容するように構成されている。カートリッジ6は、円筒状または管状のバレル25を含み、バレル25は、バレル25内に位置する栓7によって近位方向3に封止されている。栓7は、ピストンロッド20によって、カートリッジ6のバレル25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成されるとともに注射針15の近位に向けられた先端部によって穿孔可能である穿孔可能封止部26によって封止されている。カートリッジホルダ14は、その遠位端に、注射針15の対応するねじ付部分とねじ係合するねじ付ソケット28を含む。注射針15をカートリッジホルダ14の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26が貫通され、それにより、カートリッジ6内への流体移送アクセスが確立される。
【0101】
注射デバイス1が、たとえばヒトインスリンを投与するように構成されている場合、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定された投与量を、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5μgの純結晶インスリン(1/22mg)と生物学的に同等である。用量ダイヤル12は、用量ダイヤルを含むことができ、または用量ダイヤルを形成することができる。
【0102】
図1および
図2にさらに示すように、ハウジング10は、ハウジング10におけるアパーチャの形態でありうる投与量窓13を含む。投与量窓13により、ユーザは、用量ダイヤル12が回されたときに動いて現在設定されている用量の視覚的標示を提供するように構成されている数字スリーブ80の、限られた部分を見ることができる。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されると、ハウジング10に対して螺旋状の経路上を回転する。
【0103】
注射デバイス1は、用量ダイヤル12を回すと機械的なクリック音が発生して、ユーザに音響的フィードバックを与えるように構成することができる。クリック音は、典型的には、クリックノイズ発生器45によって発生する。概して、クリックノイズ発生器45は、さまざまな異なる方法で実装することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に突き刺されているとき、トリガ11または注射ボタンが押されると、表示窓13に表示された用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押された後、注射デバイス1の針15が皮膚部分に一定時間留まると、用量が実際に患者の体内に注射される。液体薬剤の用量の排出によってもまた、機械的クリック音が発生する可能性があるが、これは用量ダイヤル12を使用する際に生成されるクリック音とは異なる。このために、注射デバイス1は、別個の、したがって第2のクリックノイズ発生器(図示せず)を含むことができる。
【0104】
この実施形態では、インスリン用量の送達中に、用量ダイヤル12が軸方向運動で、すなわち回転なしに初期位置まで回され、その間、数字スリーブ80は、その初期位置に戻るように、たとえば0単位の用量を表示するように回転する。
【0105】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるか、または注射デバイス1内の薬剤の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。
【0106】
図2には、駆動機構8の一例をより詳細に示す。駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22とねじ係合したねじ付軸方向貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、その上で、押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として自由に回転する。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位に面する推力受け面に軸方向に当接するように構成されている。投薬動作中、ピストンロッド20は、ハウジング10に対して回転し、それによって、ハウジング10に対する、したがってカートリッジ6のバレル25に対する、遠位に向けられた前進運動が生じる。その結果、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20のハウジング10とのねじ係合により、明確に定義された距離だけ遠位方向2に変位する。
【0107】
ピストンロッド20の近位端に、第2のねじ山24がさらに設けられている。遠位ねじ山22と近位ねじ山24は、反対の巻きである。
【0108】
ピストンロッド20を受ける中空内部を有する駆動スリーブ30がさらに設けられている。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24とねじ係合する雌ねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、その遠位端に雄ねじ付セクション31を含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離に位置する別のフランジ部分33との間に軸方向に制限されている。2つのフランジ部分32、33の間には、駆動スリーブ30のねじ付セクション31と嵌合する雌ねじ山を有する半円形ナットの形態の最終用量リミッタ35が設けられている。
【0109】
最終用量リミッタ35は、その外周に半径方向の凹部または突出部をさらに含み、それらは、ハウジング10の側壁の内側にある相補的な形状の凹部または突出部と係合する。このように、最終用量リミッタ35は、ハウジング10にスプライン連結される。連続する用量設定手順の間の用量増加方向4すなわち時計回り方向における駆動スリーブ30の回転により、駆動スリーブ30に対する最終用量リミッタ35が累積的に軸方向に変位することになる。フランジ部分33の近位に面する面と軸方向に隣接している環状ばね40がさらに設けられている。さらに、管状クラッチ60が設けられている。第1の端部において、クラッチ60には、円周方向に向けられた一連の鋸歯が設けられている。クラッチ60の第2の反対側の端部に向かって、半径方向内向きに向けられたフランジが位置している。
【0110】
さらに、数字スリーブ80としても示す用量ダイヤルスリーブが設けられている。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ60の外側に設けられ、ハウジング10の半径方向内向きに位置する。数字スリーブ80の外面の周囲に螺旋状の溝81が設けられている。ハウジング10には投与量窓13が設けられ、そこを通して、数字スリーブ80の外面の一部を見ることができる。ハウジング10には、挿入片62の内側側壁部分に螺旋状リブがさらに設けられており、この螺旋状リブは、数字スリーブ80の螺旋状溝81に着座する。管状の挿入片62は、ハウジング10の近位端に挿入される。挿入片は、ハウジング10に回転不能かつ軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転する用量設定手順を制限するように、ハウジング10に第1および第2の止め具が設けられている。
【0111】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12は、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応しかつ一致する。用量ダイヤル12は、用量ダイヤル12と数字スリーブ80との間の相対運動を防止するために、数字スリーブ80に固定される。用量ダイヤル12には、中心開口部を設けられている。
【0112】
用量ボタンとしても示すトリガ11は、実質的にT字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられている。トリガ11のステム64が、用量ダイヤル12内の開口部を通って、駆動スリーブ30の延長部の内径を通って、ピストンロッド20の近位端の受け凹部内に延びている。ステム64は、駆動スリーブ30内での軸方向運動が制限されるように駆動スリーブ30に対して回転しないように保持される。トリガ11のヘッドは、略円形である。トリガ側壁またはスカートが、ヘッドの周辺部から延び、用量ダイヤル12の近位にアクセス可能な環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
【0113】
用量をダイヤル設定するために、ユーザは、用量ダイヤル12を回転させる。クリックノイズ発生器45としても作用するばね40とクラッチ60とが係合した状態で、駆動スリーブ30、ばね40、クラッチ60、および数字スリーブ80は、用量ダイヤル12とともに回転する。ばね40およびクラッチ60により、ダイヤル設定されている用量の可聴および触覚フィードバックが提供される。トルクは、ばね40とクラッチ60との間の鋸歯を介して伝達される。数字スリーブ80の螺旋状溝81と駆動スリーブ30の螺旋状溝とは、同じリードを有する。これにより、同じ速度で、数字スリーブ80がハウジング10から延び、駆動スリーブ30がピストンロッド20を登ることができる。行程の限界において、数字スリーブ80上の半径方向止め具が、ハウジング10に設けられた第1の止め具または第2の止め具のいずれかと係合し、第1の回転の向きにおける、たとえば用量増加方向4における、さらなる動きを防止する。ピストンロッド20の回転は、ピストンロッド20上の全体的な従動ねじ山の方向が反対であることによって防止される。
【0114】
ハウジング10にキー連結された最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30の回転によってねじ付セクション31に沿って前進する。最終用量投薬位置に達すると、最終用量リミッタ35の表面に形成された半径方向止め具が駆動スリーブ30のフランジ部分33上の半径方向止め具に当接し、最終用量リミッタ35および駆動スリーブ30の両方がそれ以上回転するのを防止する。
【0115】
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合、ペン型注射器として構成された注射デバイス1は、カートリッジ6から薬剤を投薬することなく投与量を減らすようにダイヤル設定することができる。このために、用量ダイヤル12は、単に逆回転する。これによって、システムは逆に作用する。そして、ばねまたはクリッカ40の可撓性アームが、ばね40が回転するのを防止するラチェットとして作用する。クラッチ60を介して伝達されるトルクにより、鋸歯は互いを乗り越え、ダイヤル設定された用量減少に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の周方向範囲が単位用量に対応するように配置される。ここで、クラッチはラチェット機構としての役割を果たすことができる。
【0116】
代替的にまたは追加的に、ラチェット機構90は、管状のクラッチ60の側壁上の可撓性アームなどの少なくとも1つのラチェット機能91を含むことができる。少なくとも1つのラチェット機能91は、たとえば可撓性アームの自由端に、半径方向外向きに延びる突出部を含むことができる。この突出部は、数字スリーブ80の内側における対応する形状のカウンタラチェット構造と係合するように構成されている。数字スリーブ80の内側は、鋸歯状輪郭を構成する長手方向に形付けられた溝または突出部を含むことができる。ラチェット機構90は、用量のダイヤル設定または設定の間、第2の回転の向き5に沿ってクラッチ60に対する数字スリーブ80の回転を可能にするとともに支持し、この回転に伴って、クラッチ60の可撓性アームの規則的なクリック音が発生する。第1の回転の向きに沿って数字スリーブ80に加えられた角運動量は、クラッチ60に不変に伝達される。ここで、ラチェット機構90の相互に対応するラチェット機能により、数字スリーブ80からクラッチ60にトルク伝達がなされる。
【0117】
所望の用量がダイヤル設定されると、ユーザは、単にトリガ11を押すことによって、設定用量を投薬することができる。これにより、クラッチ60が数字スリーブ80に対して軸方向に変位し、その鋸歯が係合解除される。しかしながら、クラッチ60は、駆動スリーブ30に対して回転に関してキー連結されたままである。数字スリーブ80および用量ダイヤル12は、このとき、螺旋状溝81に従って自由に回転する。
【0118】
軸方向運動により、ばね40の可撓性アームが変形して、投薬中に鋸歯が緩まないことが確実になる。これにより、駆動スリーブ30は、依然としてハウジング10に対して軸方向に自由に動くことができるが、ハウジング10に対して回転することは防止される。後に、遠位に向けられた投薬圧力がトリガ11から除去されたときに、この変形を使用して、ばね40およびクラッチ60を駆動スリーブ30に沿って戻るように付勢して、クラッチ60と数字スリーブ80との間の連結を回復させる。
【0119】
駆動スリーブ30の長手軸方向運動により、ピストンロッド20はハウジング10の支持体の貫通口を通して回転し、それにより、カートリッジ6内で栓7が前進する。ダイヤル設定された用量が投薬されると、数字スリーブ80は、用量ダイヤル12から延びる少なくとも1つの止め具が、ハウジング10の少なくとも1つの対応する止め具と接触することにより、さらなる回転が阻止される。ゼロ用量位置は、数字スリーブ80の軸方向に延びる縁部または止め具のうちの1つが、ハウジング10の少なくとも1つまたはいくつかの対応する止め具と当接することによって決定することができる。
【0120】
上述したような排出機構または駆動機構8は、使い捨てペン型注射器に一般的に実装可能である複数の異なるように構成された駆動機構のうちの1つを単に例示するものである。上述したような駆動機構は、たとえば、国際公開第2004/078239A1号、同第2004/078240A1号、または同第2004/078241A1号においてより詳細に説明されており、それらの全体は参照により本明細書に組み入れる。
【0121】
ウェアラブル電子デバイス100は、ハウジング101とリストバンド102とを含む。リストバンド102は、ハウジング101に連結され、ハウジング101の、したがってウェアラブル電子デバイス100全体の、ユーザの身体202の専用または選択された部分204への取付けを可能にする。典型的にはブレスレットとして構成され、典型的には可撓性ストラップを含むリストバンド102は、ハウジング101が少なくともユーザの皮膚200と機械的に接触するように、ユーザの身体部分204にウェアラブル電子デバイス100を取外し可能に固定する役割を果たす。
【0122】
一続きの
図5~
図8に示すように、ウェアラブル電子デバイス100のハウジング101は、皮膚接触面103を含む。皮膚接触面103は、ハウジング101の底部105に設けることができる。皮膚接触面面103は、ハウジング101の底部105と一致してもよい。ハウジング101は、底部105の反対側に位置する上部106をさらに含む。上部106と底部105は、一体的に形成してもよく、または、ハウジング101の側壁107によって相互連結してもよい。皮膚接触面103内に埋め込まれるかまたは皮膚接触面103対して配置されて、少なくとも第1のセンサ160が設けられている。少なくとも第1のセンサは、ハウジング101内に配置されたプロセッサ140に接続されている。
【0123】
少なくとも第1のセンサ160は、手持ち式注射デバイス1のクリックノイズ発生器45によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するように構成されている。機械的振動または音響ノイズは、典型的には、手持ち式注射デバイス1の操作の過程で発生する。音響ノイズまたは機械的振動は、典型的には、手持ち式注射デバイス1のハウジング10を介して、ユーザの皮膚200にかつ/または身体202内に伝送される。その後、機械的振動または音響ノイズは、ユーザの身体202を通してかつ/または皮膚200を通して、少なくとも第1のセンサ160に向かって伝達することができる。少なくとも第1のセンサ160は、クリックノイズ発生器45から生じる機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を、身体202を通ってまたは身体202を介して伝達された後に検出することができる。
【0124】
少なくとも第1のセンサは、特に、ユーザの身体202を介して伝達された機械的振動または音響ノイズを排他的に検出するように構成されている。特に、少なくとも第1センサ160は、皮膚200を通って伝達された機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方を検出するようにまたは定量的に決定するように動作可能である。特に、少なくとも第1のセンサは、ユーザの皮膚200または身体202のうちの少なくとも一方を通って伝達された機械的振動または音響ノイズに対して排他的に高感度でありうる。少なくとも第1のセンサは、ウェアラブル電子デバイスの周囲または付近に提供される背景ノイズに対して実質的に低感度でありうる。このように、無関係な背景ノイズを効果的に抑制または無視することができる。したがって、ユーザの身体202を介して伝達される音響ノイズまたは機械的振動の検出に応じて第1のセンサ160によって発生する電気信号は、優れた信号対ノイズ比を示すことができる。
【0125】
少なくとも第1のセンサは、典型的には、機械的振動センサ161、音響センサ162、超音波センサ163、静電容量センサ164、および光学センサ165のうちの1つとして実装される。少なくとも第1のセンサ160とプロセッサ140との組合せおよび相互作用は、クリックノイズ発生器45から生じる一続きの後続して発生する機械的振動または音響ノイズの計数も提供することもできる。典型的な手持ち式注射デバイスでは、クリックノイズは、用量の設定中または用量の投薬中、各増分工程に対して発生する。このように、身体202を通って伝達されるとともにクリックノイズ発生器45から生じる特徴的な機械的振動または音響ノイズの数を計数することにより、現在設定されているかまたは投薬される用量のサイズを定量的に決定することができる。
【0126】
典型的には、少なくとも第1のセンサ160は、ウェアラブル電子デバイス100が身体202のそれぞれの部分204に取り付けられるとき、皮膚200の表面に向けられる。
図5に示すように、第1のセンサ160の最大感度方向Dは、典型的には、ウェアラブル電子デバイス100が身体部分204に取り付けられたときに、皮膚200の方にかつ/または皮膚200の上に向けられる。典型的には、少なくとも第1のセンサの最大感度方向Dは、皮膚接触面103の面法線に実質的に平行に延びる。いくつかの例では、最大感度方向Dは、ウェアラブル電子デバイス100の皮膚接触面103の面法線に対して45°未満、30°未満、20°未満、15°未満、または10°未満の角度で延びることができる。
【0127】
典型的には、ウェアラブル電子デバイス100は、ディスプレイ118をさらに含む。ディスプレイ118は、典型的には、ハウジング101の上部に設けられる。ディスプレイは、時間および日付情報だけでなく、心拍数などのユーザ自身の生理学的なパラメータに関する情報などの情報をユーザに提供することができる。第1のセンサ160が実際に、クリックノイズ発生器45から生じる機械的振動または音響ノイズを検出しているとき、プロセッサ140およびディスプレイ118は、たとえばリアルタイムでも、それぞれの視覚的フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。このように、ユーザが手持ち式注射デバイスで用量を設定しているときに、クリックノイズ発生器によって発生するそれぞれのクリックノイズを、少なくとも第1のセンサ160によって記録または検出することができる。
【0128】
プロセッサ140が、現在使用されている手持ち式注射デバイスの特定のタイプに適切に較正されている場合、プロセッサは、クリックノイズ発生器によって発生した各クリックノイズに相関する用量サイズ増分に関する知識を有している。このように、プロセッサは、第1のセンサ160が手持ち式注射デバイス1から生じる特徴的な機械的振動または音響ノイズを検出するとすぐに、用量のサイズを計算し、ディスプレイ118上で視覚化するように動作可能でありうる。
【0129】
図5にさらに示すように、ウェアラブル電子デバイス100に、少なくとも第2のセンサ180も備えることができる。少なくとも第2のセンサ180もまた、プロセッサ140に接続されている。第2のセンサ180は、特に、クリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズを音響的に検出するように構成されている。第2のセンサ180は、マイクロフォン181として、たとえば、指向性マイクロフォンとして実装することができる。第2のセンサ180は、ユーザからの音声コマンドの処理をさらに可能にすることができる。従来のウェアラブル電子デバイス100が、たとえばスマートウォッチ110として実装される場合、第2のセンサ180を従来のウェアラブル電子デバイス100に本質的に提供することができる。
【0130】
第1および第2のセンサ160、180を有することにより、手持ち式注射デバイス1のクリックノイズ発生器によって引き起こされる、または発生する機械的振動または音響ノイズを、冗長に記録またはモニタリングすることができる。このように、クリックノイズの検出の測定精度および信頼性を大幅に向上させることができる。第1のセンサ160から得ることができる信号および第2のセンサ180から同時に得ることができる信号は、たとえば、クリックノイズ発生器から生じるかまたは他の発生源から生じる機械的振動と音響ノイズとを区別するために、プロセッサ140によって相関することができる。
【0131】
図5に示すように、第2のセンサ180は、第1のセンサ160から空間的にオフセットして設けることができる。このように、第1のセンサ160および第2のセンサ180によって発生する電気信号の実行時間差を使用して、クリックノイズ発生器などの共通の発生源から生じる第1のセンサ160の電気信号か第2のセンサ180の電気信号かを決定することができる。ここで、生体組織を通る音の伝播または機械的振動の伝播のかなり限定された速度を考慮することができる。第1のセンサ160および第2のセンサ180によって発生する電気信号の測定可能な実行時間差は、それぞれの音または振動信号が沿ってまたは通って伝送される、異なる長さ部分または異なる搬送媒体に起因する場合がある。
【0132】
第2のセンサ180は、ハウジング101の皮膚接触面103の外側かつオフセットして位置することができる。第2のセンサ180は、ハウジング101の内側に位置することができる。それは、側壁107に隣接してまたは上部106に隣接して位置することができる。
【0133】
いくつかの例では、特にウェアラブル電子デバイス100がスマートウォッチ110としてまたはフィットネストラッカとして実装される場合、ウェアラブル電子デバイス100は、機械的振動または音響ノイズを検出するように動作可能な1つのセンサのみを含むことができる。ここで、第1のセンサ160は、マイクロフォン、たとえば指向性マイクロフォンを含むことができる。第1のセンサ160は、皮膚接触面103からオフセットして位置することができる。それは、たとえば、
図5に示すような第2のセンサ180の位置と一致してもよい。ここで、特に身体装着型の電子デバイスとして実装される場合、少なくとも第1のセンサ160は、クリックノイズ発生器45から生じ搬送媒体としての空気を通して主に伝達される機械的振動または音響ノイズを検出するように構成されたマイクロフォンを含む。
【0134】
図6において、ウェアラブル電子デバイス100のさらなる例を示す。そこでは、少なくとも第1のセンサ160は、ハウジング101の底部105において皮膚接触面103から突出している。このように、ウェアラブル電子デバイス100がユーザの身体202のそれぞれの部分204に取り付けられたときに、少なくとも第1のセンサ160が皮膚200と直接接触することが、何らかの形で確実になる。第1センサ160の直接的な皮膚接触により、それぞれの測定結果の精度および信頼性を向上させることができる。
【0135】
図7のさらなる例では、少なくとも第1のセンサ160は、皮膚接触面103に設けられた凹部104内に位置している。この例では、たとえば凹部104の底部に配置された、少なくとも第1のセンサ160と、皮膚200の表面との直接接触を、効果的に回避することができる。ここで、
図8の拡大図に示すように、第1のセンサ160は、光学センサ165として実装することができる。光学センサ165は、皮膚200の部分204の表面の方にかつ表面の上に向けられる光または電磁放射を発生させる光源166を含むことができる。光学センサ165は、光学検出器167をさらに含み、光学検出器167により、光源166によって発生し皮膚200の表面から反射される電磁放射の少なくとも一部を検出することができる。反射され検出された光の変動は、クリックノイズ発生器45がユーザの身体202のそれぞれの部分204と直接または間接的に機械的に結合していることによって引き起こされる可能性がある、たとえば皮膚200の振動を、直接示す。
【0136】
概して、
図5および
図6に示すように、センサ160は、振動センサ161、音響センサ162、超音波センサ163、静電容量センサ164、または光学センサ165のうちの1つとして実装することができる。第1のセンサ160の多数の代替的な実施態様のいくつかは、
図6のウェアラブル電子デバイス100の1つの例のみを用いて概略的に示す。それらが、第1のセンサ160または第2のセンサ180のタイプおよび具体的な実施態様によって相互に区別される、多数のウェアラブル電子デバイスを提供することができることは、自明である。
【0137】
図9では、クリックノイズ発生器45の1つの例を概略的に示す。クリックノイズ発生器45は、典型的には、突出部47が設けられた可撓性または弾性部材46を含む。突出部47は、第2の構成要素48の構造と可聴的かつ機械的に係合するように構成されている。第2の構成要素は、第1の構成要素46と第2の構成要素48とが互いに対して動くかまたは回転する際に、第1の構成要素の突出部47と嵌合する歯付き構造49を含むことができる。
【0138】
概して、用量設定または用量投薬手順のうちの少なくとも一方の間に注射デバイス1の駆動機構8の任意の2つの部材46、48が互いに対して動くことにより、クリックノイズ発生器45を形成または構成することができる。
【0139】
図10に、用量のサイズおよび手持ち式注射デバイス1の動作状態の少なくとも一方を決定または推定する方法のフローチャートを示す。第1の工程300において、ウェアラブル電子デバイス100は、ユーザの身体202の一部分204に取り付けられる。典型的には、たとえばスマートウォッチとして実装される、ウェアラブル電子デバイス100は、ユーザの手201の手首に取り付けられるかまたは固定される続く工程302において、ユーザにより、手持ち式注射デバイスが手に取られる。これは、典型的には、ウェアラブル電子デバイス100が取り付けられている手と同じ手によって取られる。
【0140】
続く工程304において、ユーザは、手持ち式注射デバイス1を操作する。ユーザは、用量設定手順、用量投薬手順、または何らかのタイプの他のルーチン、たとえば手持ち式注射デバイスのチェックのうちの少なくとも1つを誘導またはトリガすることができる。手持ち注射デバイスのユーザが開始する操作により、手持ち式注射デバイス1のクリックノイズ発生器45から生じる機械的振動または音響ノイズのうちの少なくとも一方が発生することになる。
【0141】
工程306において、それぞれの機械的振動または音響ノイズは、身体202を通して、たとえば、ユーザの皮膚200を通して伝達される。続く工程308において、身体202を通って伝播した機械的振動または音響ノイズは、第1のセンサ160によって検出される。工程310において、ウェアラブル電子デバイス100のプロセッサ140は、手持ち式注射デバイスの動作状態を決定または推定し、かつ/または手持ち式注射デバイスによって実際に設定または投薬される用量のサイズを決定または推定する。場合により、動作状態および/または用量のサイズは、ウェアラブル電子デバイス100のディスプレイ118に視覚的に表示される。
【0142】
図3に、ウェアラブル電子デバイス100のブロック図を概略的に示す。ウェアラブル電子デバイス100は、ハウジング101を含む。ウェアラブル電子デバイス100は、メモリ114と共に、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサ140をさらに含む。メモリ114は、プログラムメモリとメインメモリとを含むことができ、プロセッサ140が実行するソフトウェアと、計数されたパルス、導出された用量サイズ、タイムスタンプなど、ウェアラブル電子デバイス100の使用中に生成または捕捉されたデータとを記憶することができる。任意選択的なスイッチ122が、電源120をウェアラブル電子デバイス100の電子コンポーネントに連結する。ディスプレイ118は、存在してもしなくてもよい。
【0143】
典型的にはスマートウォッチ110として実装されるウェアラブル電子デバイス100は、プロセッサ140に接続されたインターフェース124を含む。インターフェース124は、Wi-FiまたはBluetooth(登録商標)、RFID、NFC(近距離無線通信)またはBLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)などの無線通信プロトコルまたはネットワークを介して、たとえば携帯型電子デバイスの形態の、別の外部電子デバイス65と通信する無線通信インターフェースでありうる。無線通信インターフェースは、無線周波数範囲で動作可能でありうる。たとえば、無線通信インターフェースは、無線周波数識別技術(RFIDとして知られる)に基づいてもよく、これにより、互換性のあるハードウェアがラジオ波を使用して、本来電力が供給されず受動的な電子タグに電力を供給するとともにそれと通信することができる。そのため、無線通信インターフェースは、識別、認証、および追跡に使用することができる。
【0144】
他の例では、インターフェース124は、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、またはマイクロUSBコネクタを受けるソケットなど、有線通信リンクとして実装される。このために、インターフェース124は、データを送受信するように構成されたトランシーバ126を含む。
図3は、データ転送のために通信リンク66を介して外部電子デバイス65に接続されたまたは接続可能なウェアラブル電子デバイス100の一例を示す。データ接続66は、有線式であっても無線式であってもよい。
【0145】
たとえば、プロセッサ140は、ユーザによって投与される際の注射に対する、決定された送達薬剤量およびタイムスタンプを記憶し、その後、その記憶されたデータを外部電子デバイス65に転送することができる。デバイス65は、治療ログを維持し、かつ/または治療履歴情報を、たとえば医療専門家が検討するために、遠隔地に転送する。
【0146】
ウェアラブル電子デバイス100は、データ収集デバイスとして作用することができ、35回以上の注射イベントなど、多数の注射イベントの送達薬剤量およびタイムスタンプなどのデータを記憶するように構成することができる。1日1回の注射療法によれば、これは、約1カ月の治療履歴を記憶するのに十分である。データメモリ114は、最近の注射イベントがウェアラブル電子デバイス100のメモリに常に存在することを確実にして、先入れ先出し方式で編成することができる。外部電子デバイス65に転送されると、ウェアラブル電子デバイス100内の注射イベント履歴は削除される。代替的に、そうしたデータはウェアラブル電子デバイス100に残り、新しいデータが記憶されると、最も古いデータが自動的に削除される。このように、データ収集デバイス内のログは、使用中に経時的に蓄積され、常に最新の注射イベントを含むことになる。代替的に、他の構成は、70(毎日2回)、100(3カ月)、または治療要件および/もしくはユーザの好みに応じて他の任意の好適な数の注射イベントの記憶容量を有することができる。
【0147】
別の実施形態では、インターフェース124は、無線通信リンクを用いて情報を送信するように構成することができ、かつ/または、プロセッサ140は、そうした情報を外部電子デバイス65に周期的に送信するように構成することができる。
【0148】
プロセッサ140は、決定された薬剤用量情報を表示するように、かつ/または最後の薬剤用量が送達されてからの経過時間を表示するように、任意選択的なディスプレイ118を制御することができる。たとえば、プロセッサ140は、ディスプレイ118に、最新の決定された薬剤投与量情報の表示と経過時間の表示とを周期的に切り替えさせることができる。
【0149】
電源120は、電池でありうる。電源120は、コイン電池であってもよく、または、直列もしくは並列に配置された複数のコイン電池であってもよい。タイマまたはクロック115も設けることができる。ウェアラブル電子デバイス100をオンとオフとに切り替えることに加えて、またはその代わりに、スイッチ122は、係合および/または係合解除されたときにクロック115をトリガするように配置することができる。たとえば、スイッチの第1および第2の電気接点の係合または係合解除の両方、またはスイッチ122の動作および動作停止の両方で、タイマまたはクロック115がトリガされる場合、プロセッサ140は、タイマ115からの出力を使用して、トリガ11が押された時間の長さを決定し、たとえば、注射の持続時間を決定することができる。
【0150】
代替的に、または追加的に、プロセッサ140は、タイマまたはクロック115を使用して、それぞれのスイッチ構成要素の係合解除またはスイッチ122の動作の停止の時間によって示されるように、注射が完了してから経過した時間の長さをモニタリングすることができる。場合により、経過時間はディスプレイ118に表示することができる。同様に場合により、スイッチ122が次に操作されるとき、プロセッサ140は、経過時間を所定の閾値と比較して、ユーザが以前の注射の後、過度に早く別の注射を投与しようとしている可能性があるか否かを判断し、そうである場合、ディスプレイ118にまたは出力116を介して可聴信号および/または警告メッセージなどの警報を発生させることができる。出力160は、たとえば、ユーザに警報を出すために、可聴音を発生させるか、または振動を誘発し、すなわち触覚信号を生成するように構成することができる。
【0151】
ウェアラブル電子デバイスに、センサ配置150をさらに備えることができる。
図3の例示では、センサ配置150は、第1のセンサ160と第2のセンサ180との組合せを含む。上述したように、第1のセンサ160は、振動センサ161、音響センサ162、および超音波センサ163のうちの1つとして実装される。第1のセンサ160は、容量センサ164または光学センサ165も含むことができる。第2のセンサ180は、典型的には、マイクロフォン181として実装される。センサ160、180のうちの少なくとも一方または両方は、電子フィルタ182に連結または結合することができる。電子フィルタ182は、第1または第2のセンサ160、180のうちの少なくとも一方によって受信される、または発生する異なる特徴的な信号を区別する役割を果たすことができる。プロセッサ140に統合してもよい電子フィルタ182は、第1のセンサ160および第2のセンサ180のうちの少なくとも一方によって検出された異なるタイプの機械的振動または音響ノイズを区別するのに役立つことができる。
【0152】
典型的には、ウェアラブル電子デバイス100の電子コンポーネントは、電子回路112によって相互に接続されている。電子回路112は、プリント基板に設けることができる。さらに、ウェアラブル電子デバイス100は、加速度センサ190およびジェスチャ識別器192も含むことができる。ジェスチャ識別器192もまた、プロセッサ140に実装するかまたは統合することができる。加速度センサ190は、ウェアラブル電子デバイス100に存在する加速度力の測定値を提供することができる。プロセッサ140と組み合わせて、またはジェスチャ識別器192と組み合わせて、ウェアラブル電子デバイス100の特徴的な動きに応じて加速度センサ190から得られる信号を使用して、特定のジェスチャを識別するかまたは認識することができる。こうしたジェスチャの認識または識別をさらに使用して、センサ配置150を起動しかつ/または停止状態にすることができる。たとえば加速度センサ190が、ウェアラブル電子デバイス100が動きの状態にないことを検出した場合、センサ配置150はアイドルモードまたはスリープモードに移行することができる。ウェアラブル電子デバイス100の動きを検出している場合、プロセッサ140は、センサ配置150またはセンサ160、180のうちの少なくとも一方をウェイクアップするように構成することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増加方向
5 用量減少方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
9 用量設定機構
10 ハウジング
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側針キャップ
17 外側針キャップ
18 保護キャップ
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 バレル
26 封止部
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量リミッタ
36 肩部
40 ばね
41 凹部
45 クリックノイズ発生器
46 第1の部材
47 突出部
48 第2の部材
49 歯付き構造
60 クラッチ
62 挿入片
64 ステム
80 数字スリーブ
88 溝
90 ラチェット機構
91 ラチェット機能
65 電子デバイス
66 データ接続
100 ウェアラブルデバイス
101 ハウジング
102 リストバンド
103 皮膚接触面
104 凹部
105 ボタン
106 上部
107 側壁
110 スマートウォッチ
112 電子回路
114 メモリ
115 クロック
116 出力
118 ディスプレイ
120 電源
122 スイッチ
124 インターフェース
126 トランシーバ
140 プロセッサ
150 センサ配置
160 センサ
161 振動センサ
162 音響センサ
163 超音波センサ
164 容量センサ
165 光学センサ
166 光源
167 光学検出器
180 センサ
181 マイクロフォン
182 電子フィルタ
190 加速度センサ
192 ジェスチャ識別器
200 皮膚
201 手
202 身体
204 部分
【国際調査報告】