(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/22 20060101AFI20230706BHJP
C12M 3/06 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C12P7/22
C12M3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022576032
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2021065686
(87)【国際公開番号】W WO2021250192
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッペルト,エミール ジャン
(72)【発明者】
【氏名】マリッツ,ヤセク
(72)【発明者】
【氏名】カルステンセン,フレデリケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイラー,アン-カトリン
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AD21
4B064CA01
4B064CC06
4B064CC07
4B064CE06
4B064CE09
4B064DA16
4B064DA20
(57)【要約】
本発明は、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液を用意するステップ、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に低下させるステップ、バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液に吸着剤を加えるステップ、並びに第1の膜ろ過を実施して少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、以下のステップ:
(1) バイオマス及び1種以上のアロマ化合物を含む溶液を用意するステップ、
(2) 好ましくはバイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、必要に応じて溶液のpH値を7.0未満に設定するステップ、
(3) バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を加えるステップ、並びに
(4) 第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含み、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではない、方法。
【請求項2】
溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲のpH値に低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸が、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、HNO
3及びCH
3CO
2Hからなる群から選択される酸である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、0.3重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.4重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で加えられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の膜ろ過が、クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過が、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲のクロスフロー速度を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記クロスフロー速度が3m/s以下であり、好ましくは高分子膜では1.7m/s以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の膜ろ過が、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の膜ろ過が、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過若しくは限外ろ過膜を用いて実施される、又は前記第1の膜ろ過が、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜若しくは高分子限外ろ過膜を用いて実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過、任意選択で続いて逆浸透を実施するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の膜ろ過が、5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のアロマ化合物が、好ましくはアンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択され、より好ましくはバニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択される、少なくとも1種の極性アロマ化合物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
処理装置であって、i)バイオマス、少なくとも1種の吸着剤及び少なくとも1種のアロマ化合物を含有する溶液で満たされた容器であり、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではなく、溶液のpH値が7.0未満である、容器、ii.)精密ろ過又は限外ろ過膜である第1のろ過膜、iii.)精密ろ過又は限外ろ過である前記第1のろ過膜を横切って第1の膜ろ過を実施して、アロマ化合物のバルクを含有する透過液を生成する手段であり、処理装置が、第1の膜ろ過中に溶液を8℃~55℃の範囲の温度にする手段をさらに含む、手段、並びにiv.)上記i).に記載されているように溶液から第1の膜ろ過の透過液を分離する手段、v.)第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、vi.)透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、vii.)第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、viii.)第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びにix.)第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離しておく手段、並びに任意選択でx)第2の膜ろ過の透過液の逆浸透処理を実施する手段を含み、
溶液又は透過液のいずれかと接触している処理装置の部品の表面は、pH3.5という低いpH値に耐性があり、任意選択で食品等級物質の製造に適した材料でできている、処理装置。
【請求項15】
少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からのバイオマスの分離に使用される膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らす方法であって、
i. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液を用意するステップ、
ii. 溶液のpH値を3.0~5.5の範囲のpH値に調整するステップ、
iii. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液に1種以上の吸着剤を、好ましくは0.5重量%~3重量%の範囲の量で加えるステップ、
iv. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
v. 第1の膜ろ過を、3m/s以下のクロスフロー速度で実施して少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ、
vi. 任意選択で、第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過を実施するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魅力的な匂い及びフレーバーは多くの理由で人間に好まれ、魅力的な匂い又はフレーバーを有していると認められている化合物が好ましい。この魅力的な匂い又はフレーバーの原因は、アロマ化合物の知覚であり、結果としてアロマ化合物は長い間興味を持たれている。
【0003】
アロマ化合物の天然源は、需要に対して限定的すぎる可能性があり、それらの天然源からのアロマ化合物の抽出及び/又は精製は、多くの場合手間のかかるプロセスである。
【0004】
いくつかのアロマ化合物の化学合成が知られているが、全ての所望のアロマ化合物を化学合成単独で効率的に製造できるとは限らないか、又は追加の処理が必要とは限らない。例えば、欧州特許出願EP1081212は、ゼオライトを用いる化学合成後のフラネオールの精製方法を開示している。
【0005】
化学的又は生物工学的手段による生成が使用されているが、これは所望の生成物を単離する際に新たな課題をもたらす。
【0006】
例えば、1種以上のアロマ化合物は、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液をもたらす発酵を用いて生成することができる。このような溶液は、発酵ブロスと呼ぶこともできる。多くの異なるアロマ化合物が、微生物の発酵によって生成することができる(概要についてはVandamme及びSoetart 2002を参照)。
【0007】
発酵によって生成されるアロマ化合物の一例はバニリンである。特許US9,115,377及びUS6,133,033は、バニリンを生成するためにアミコラトプシス(Amycolatopsis)株の使用を開示している。CN105132472として公開された特許出願はストレプトマイセスサモチカス(Streptomyces psammoticus)の使用を開示し、一方CN1421523は黒色麹菌クロカビ(Aspergillus niger)の使用を開示している。酵母菌は、例えばWO2007099230として公開された国際特許出願又は中国特許出願CN105219806にも使用されている。バニリン生成にも使用されたのは、発酵研究及び生成における一般的な生物である大腸菌(Escherichia coli)であり、例えば韓国特許KR10-1163542又は最近公開された国際特許出願WO2020/223417及びWO2020/223418を参照のこと。
【0008】
アロマ化合物プロセスからの発酵ブロスからのバイオマス分離は、アロマ化合物の生成における最初の下流処理ステップである。このステップの現況技術の技術は、遠心分離及び又はフィルタープレスであり、凝集剤を用いる場合もある。しかしながら、精密ろ過も使用することができ、他の分離技術と比較していくつかの利点がある。遺伝子操作生物を含まない生成物溶液を可能にするためには、精密ろ過が、遺伝子操作微生物を含む全ての非溶解固体を完全に保留できるので、最良の選択肢である。しかしながら、これは、膜性能及び回収、所望の圧力及び流量を達成するためのエネルギー消費、タンパク質及び色化合物が通過し、費用のかかる後続のステップを必要とすること、並びに生成物損失に関してその独自の課題がある。
【発明の概要】
【0009】
膜ろ過は、溶液中のより小さい分子をより大きいものから分離するのにしばしば使用される。膜ろ過とそれに続く色化合物を除去するための活性炭処理を含む追加のステップも、US20110028759として公開されている米国特許出願に乳酸の生成において開示されている。クロスフローろ過は、例えば、特に酵素の生成におけるその使用を開示しているEP2583744から知られている。
【0010】
アロマ化合物の発酵生産後のバイオマスの分離は、普通pH値7~8、通常約pH7で、最初の遠心分離又はフィルタープレス及びさらなる遠心分離を用いて行われる。高分子膜が代わりに使用されることもある。
【0011】
しかしながら、膜が使用される場合、膜性能はかなり低く、透過液は多くのタンパク質及び色成分を含有し、それらは次のステップで除去する必要があり、複雑な下流プロセス、生成物収量の大幅な損失及び何らかの品質問題をもたらす。
【0012】
通常、発酵ブロスからのバイオマス分離のこれらの最初のステップの後、実施される次のステップは、通常10kDaポリエーテルスルホン膜によって完了する限外ろ過であるが、これによって全てのタンパク質及び多糖類が分離できるわけではない。限外ろ過透過液はしたがって、活性炭カラムに送られて、溶液を脱色され、1000未満のAPHA値が達成される。活性炭カラムにおける脱色は、かなり時間のかかるプロセスであり、発酵ブロスの初期量に関して約14%重量/重量の活性炭を使用する必要があることが多い。このステップは、高い生成物損失をもたらし、巨大な活性炭カラムを必要とする。
【0013】
したがって、本発明の目的は、上記の不利な点を回避することであった。特に、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する性能を向上させるのに適した、且つろ過透過液中のタンパク質の量及びろ過透過液の色を低下させるのに適した方法を提供するべきである。
【0014】
本発明によれば、この目的は、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、
- バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液を用意するステップ、
- バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満、好ましくはpH5.5未満又はそれ以下に低下させるステップ、
- バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液に吸着剤を加えるステップ、並びに
- 本明細書で第1の膜ろ過とも呼ばれる膜ろ過、通常、精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法によって解決される。好ましくは、方法ステップの順序は、前の文で示したものである。
【0015】
本発明の方法によれば、驚くべきことに、溶液のpH値を7未満に低下させた場合、膜性能を大幅に向上させることができ、タンパク質の除去を大幅に改善することができることが判明した。さらに、任意の膜ろ過の前に吸着剤を溶液に加えた場合、膜性能はさらに向上し、透過液の色は要求仕様より低い値に大幅に低下させることができることが判明した。また有利には、pH値が所望の目標値pH7未満に設定された後及び少なくとも1種の吸着剤が加えられた後に膜ろ過が行われた場合、活性炭のような吸着剤の必要量は既知の方法と比較してはるかに少なく、また脱色に要する時間は既知の方法よりもはるかに短い。
【0016】
好ましくは、吸着剤は活性炭である。活性炭(active carbon)は、活性炭(activated carbon)又は活性炭(activated charcoal)としても知られており、低コスト、大量に入手可能、取り扱いが簡単及び食料品に使用するのに安全であるため、好ましい吸着剤である。
【0017】
第1の膜ろ過が行われる場合、より好ましくは吸着剤が加えられる場合に、バイオマス及び1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液のpH値がpH7.0未満であることが、本発明の方法に有益である。したがって、発酵ブロスのpH値は通常pH7.0以上であるので、目標pH値を達成するために必要に応じて少なくとも1種の酸の添加によって通常pH値を低下させる。バイオマス及び1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液のpH値が開始時にすでにpH7.0未満である場合、必要に応じてpH値を安定してpH6.0未満に設定するために少なくとも1種の酸を使用してもよい。また、好ましくは、溶液のpH値は、任意の膜ろ過を開始する前に、pH値5.5以下に設定される。好ましくはpH値は、3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲の目標pH値に調整される(ここで、所与の範囲には所与の数値が含まれる)。さらにより好ましい実施形態では、溶液のpH値はpH3.5以上、ただしpH4.5以下に設定されており、最も好ましくはpH値は4.0以上4.5以下の範囲内の値に設定されている。必要に応じてpH値を下げるために、少なくとも1種の酸を溶液に加える。前記少なくとも1種の酸は、より好ましくは、H2SO4、H3PO4、HCl、HNO3及びCH3CO2Hからなる群から選択される酸である。基本的に、任意の酸を使用してもよい。それにもかかわらず、これらの酸は通常取り扱いが簡単である。
【0018】
前記吸着剤、好ましくは活性炭は、通常0.25重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~3.0重量%の範囲、より好ましくは0.75重量%~2.5重量%の範囲、好ましくは2.2重量%、さらにより好ましくは1.0重量%~2.0重量%の範囲の量で加えられ、ここで、パーセント値は、溶液の重量当たりの吸着剤の重量に基づいている。或いは0.5重量%~1.5重量%(両端含む)の量を本発明の方法で使用することができる。したがって、好ましくは1000APHAである上限仕様以下に色数を低下させるのには、比較的少量の前記吸着剤、好ましくは活性炭で十分である。これにより、活性炭の消費量のかなりの削減、並びに活性炭カラムと比較して生成物の損失のかなりの削減が可能になる。一実施形態では、1種以上の吸着剤は、バイオマス及び/又は多糖及び/又はタンパク質及び/又は存在し得るDNA若しくはRNAのような核酸を含む出発溶液中の色成分及び/又はタンパク質の(好ましさが高まる順に)少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、92%、94%、95%又はそれ以上に結合するのに適した量で添加される。さらに、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、通常2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲、さらにより好ましくは5μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる。d50値は、標準手順によって決定される。この寸法範囲の粒径は、膜の摩耗のリスクを軽減する。その上、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、さらに好ましくは水中の粉末の懸濁液として加えられる。これにより、粉末の懸濁液はバイオマス及びアロマ化合物を含む懸濁液とよりよく混合し得るので、吸着剤の取り扱いが容易になる。前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、通常、溶液に少なくとも1種の酸を加えた後に実施される。予想外に、最初にpH値を調整し、次に吸着剤又は少なくとも大部分の吸着剤を加える場合、色の低下及びタンパク質の減少ははるかに優れている。溶液に少なくとも1種の酸を加える前に、前記吸着剤、好ましくは活性炭を発酵ブロスに加えることが可能である。
【0019】
別の変形形態では、溶液のpH値は、少なくとも1種の適当な酸を加えることによって5.5、より好ましくは5.0、さらにより好ましくは4.5に低下させ、次いで吸着剤、好ましくは活性炭、さらに所望の最終pH値が達成されるまで酸を加える。
【0020】
また、pH値を低下させるために任意の酸を加える前に吸着剤の一部を加え、続いてpH値をpH7.0未満の目標値に設定した後に吸着剤を追加してもよい。
【0021】
本発明の一態様では、1種以上の吸着剤が水中の吸着剤粉末の懸濁液として加えられる。
【0022】
本発明の別の態様は、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることを、溶液のpH値が7未満の場合、且つ少なくとも1種の酸を溶液に加え続けている間又は少なくとも1種の酸の溶液への追加が完了した後に実施することを意味する。或いは、少なくとも1種の酸を溶液に加える前に前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることを実施する。
【0023】
好ましくは、前記バイオマス及び1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含む溶液は、通常1種以上のタイプの細胞、好ましくは細菌、植物又は酵母細胞、より好ましくは細菌、さらにより好ましくは大腸菌(Escherichia coli)、アミコラトプシス属の種(Amycolatopsis sp)又はロドバクタースフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)を、培養液、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液中で培養することによって得られる発酵ブロスである。したがって、費用効率のよい方法で十分な量の前記アロマ化合物(複数可)を生成することができる。本発明の一態様では、細胞は遺伝子改変された細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)、アミコラトプシス属の種(Amycolatopsis sp)又はロドバクタースフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)の遺伝子改変された細胞である。
【0024】
第1の膜ろ過ステップの前記精密ろ過又は限外ろ過は、通常クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される。したがって、ろ過効率は、向上している可能性がある。セラミックモノ及びマルチチャンネルエレメントを使用している場合、前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.2m/s超、好ましくは0.5m/s~6.0m/sの範囲、より好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、さらにより好ましくは2.8m/s~4.5m/sの範囲、最も好ましくは3.0m/s~4.0m/sの範囲のクロスフロー速度を含む。別の実施形態では、クロスフロー速度は、3.0m/s以下である。高分子膜を第1の膜ろ過に使用する場合、2m/s以下のクロスフロー速度を使用してもよく、0.5m/s~1.7m/の範囲のクロスフロー速度を好ましくは使用するが、0.5m/s以下のクロスフロー速度さえ使用してもよい。別の好ましい実施形態では、高分子膜を使用する場合、クロスフロー速度は、1.7m/s以下、1.6m/s以下、1.5m/s以下、1.4m/s以下、1.3m/s以下、1.2m/s以下、1.1m/s以下又は1.0m/s以下である。したがって、ろ過速度は、pH値調整及び吸着剤の添加を含まないろ過プロセスと比較した場合に最適化することができる。そうすることによって、以前に知られている方法と比較してより遅いクロスフロー速度で操作することにより、膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らすと同時に良好な分離をもたらすことができる。
【0025】
前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、通常、4℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施する。したがって、前記ろ過ステップ中の温度は、発酵中と同じである可能性があり、これは膜性能をさらに向上させ、バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液の粘度を低下させる。さらに、第1の膜ろ過はまた、好ましくは、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜を用いて実施する。耐摩耗性が向上するように設計された多層膜、例えば400nm及び200nm及び50nm孔径のAl2O3の層を使用することも可能である。したがって、所望の仕様に適合するために十分な量のタンパク質及び多糖を除去することができる。また通常、第1の膜ろ過は、カットオフが4kDa以上、好ましくは10kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~200nmの範囲、さらにより好ましくは100kDa以上の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。別の好ましい実施形態では、カットオフは100nm以下である。したがって、所望の仕様に適合するために十分な量のタンパク質及び多糖を除去することができる。
【0026】
高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜の高分子材料は、好ましくは:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。改変された高分子材料、例えば、親水化ポリエーテルスルホンも使用してもよい。
【0027】
セラミック精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜のセラミック材料は、好ましくは:TiO2、ZrO2、SiC及びAl2O3からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック材料である。
【0028】
第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、通常、吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えてから所定時間後に実施する。これにより、色成分が吸着される吸着時間をもたらすことが可能になる。一実施形態では、前記所定時間は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分である。したがって、色成分の吸着は通常、比較的速い。
【0029】
方法は、好ましくは、第2の又はさらなる膜ろ過、好ましくは限外ろ過を、第1の膜ろ過の精密ろ過又は限外ろ過によって得られたバイオマスを本質的に含まず、1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖を含み、好ましくはバイオマスも含む出発溶液、例えば発酵ブロスからのこれらの糖の大部分を含む溶液を使用して実施することをさらに含んでいてもよい。好ましくは、第2の膜ろ過は、第1の膜ろ過の透過液と第1の膜よりもカットオフが低い膜で行われる。したがって、第1の膜ろ過によって得られた透過液の有利なさらなる処理が実現される。第2の膜ろ過は、通常、限外ろ過膜を用いて実施する限外ろ過であり、限外ろ過膜は、好ましくは、少なくとも部分的に高分子材料でできており、及び/又はカットオフが1kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲である。高分子膜は、通常、より頑丈で安価であるという、目の詰まったセラミック膜に勝る利点を提供する。
【0030】
第2の膜ろ過は、カットオフが1~25kDaのセラミック膜で行ってもよい。他の実施形態では、膜が少なくとも部分的に高分子材料でできていることが好ましい。前記高分子材料は、より好ましくは:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。前記第2の膜ろ過は、通常、溶液の温度を20未満の温度、好ましくは4℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度に調整した後に実施する。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される第1の膜ろ過は、以下でさらに詳細に説明されるように、サブステップとも呼ばれる2つ又は好ましくは3つのステップを含む。第1のステップは、ダイアフィルトレーション係数DF(ダイアフィルトレーション水の量=発酵ブロスの出発量×ダイアフィルトレーション係数)が0.5以下~3以上の第1のダイアフィルトレーションを含む。例えば、2'FLを含む溶液では、DFが0.5であることは有利だったが、他のアロマ化合物分子では、濃縮ステップが続く場合には3の値がより良いことが判明した。ダイアフィルトレーションの間、加えられた水又は適当な水溶液の量は、排出された透過液の量と同一である。バッチ式ダイアフィルトレーションでは、したがって供給容器内の体積は一定に保たれる。第2のステップは、ダイアフィルトレーション水の供給を停止することによって、好ましくは2以上の係数を用いて発酵ブロスを濃縮することを含み、レベルは目標値まで低下する(目標値=発酵ブロスの開始時の体積又は質量/濃縮係数)。任意選択で、後続の第3のステップは、第2のダイアフィルトレーションを含む。第1の膜ろ過のこれらの3つのステップを用いて、透過液内での生成物のより低い希釈及び95%以上の増加した収率が実現される。第2のダイアフィルトレーションの係数を増加させることによって、収率はさらに増加し得る。しかしながら、生成物の希釈も増加することになる。
【0032】
次いで透過液は、通常第1の膜ろ過のこれらの3つのステップで膜を通過する全ての溶液の組合せである。バッチプロセスでは、各ステップは、時間分離された形で透過液画分を生成し、これは混合するために1つの容器に捕集し、又は別々に処理することができる。継続的なプロセスでは、3つのステップはそれぞれ、時間的に分離されていない透過液画分を生成し、これらの画分を組み合わせて、必要に応じて組み合わせた又は別々に処理した透過液を形成することができる。
【0033】
任意選択で、第1の膜ろ過の第1のステップは、第2のステップの濃縮が終わる前に1回以上繰り返すことができる。任意選択で、第2のステップは、行ってもよく、又は溶液の濃縮が望ましくない場合は抜かしてもよい。これは、例えば、発酵ブロスが高粘度であり、及び又はバイオマス含有量が極めて高い場合、有用である。
【0034】
任意選択で、第1のステップは抜かしてもよく、或いは第2のステップは第1のステップなしで行い、それにより最初に透過液を作成しながら発酵ブロスの濃縮が行われ、次に、最後のステップのダイアフィルトレーションは、バイオマス及び1種以上のアロマ化合物を含む溶液に水又は水溶液を供給することによって行われる。
【0035】
他の実施形態は、前処理、第1の膜ろ過、第2の膜ろ過のための装置、及び任意選択で逆浸透処理又は任意のさらなる精製若しくは濃縮ステップのための装置を含む、本発明の方法を行うのに適した本発明の処理装置である。
【0036】
本発明のさらなる特徴及び実施形態は、特に従属請求項と併せて後続の説明でより詳細に開示される。その中で、それぞれの特徴は、当業者が理解しているように、独立した形並びに任意の実行可能な組合せで実現することができる。実施形態は、図に概略的に示す。その中で、これらの図中の同一の参照番号は、同一の要素又は機能的に同一の要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に基づくバイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法を示すブロック図である。
【
図2】吸着剤のための個別のインキュベーションステップS15及び上記で説明した3つのサブステップS16/1~S16/3の場合の本発明の方法の一連のステップを示すブロック図である。
【
図3】DFと供給品質の関数としての膜流量の比較を示す図である(1.0%(w/w)活性炭を用いた前処理あり及び前処理なし)。丸は前処理なし、四角は前処理ありを表す。
【
図4】CFと供給品質の関数としてのUF膜流量の傾向を示す図である(1.0%(w/w)活性炭を用いた前処理あり及び前処理なし)。丸は前処理なし、四角は前処理ありを表す。
【
図5】DFと供給品質の関数としての膜流量の比較を示す図である(1.5% w/w 活性炭を用いた前処理あり及び前処理なし。丸は前処理なし、四角は前処理ありを表す。
【
図6】CFと供給品質の関数としてのUF膜流量の比較を示す図である(前処理あり及び前処理なし)。丸は前処理なし、四角は前処理ありを表す。
【
図7】相対透過液量と供給AC濃度の関数としてのUF膜流量の比較を示す図である。丸は試験3A(0.7%(w/w)のAC)、四角は試験3B(1.5%(w/w)のAC)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下で使用するように、用語「有する(have)」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」又はその任意の文法上の変化は、非排他的な方法で使用されている。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴以外に、このような文脈において記載されている実体にはさらなる特徴が存在しない状況も、1つ以上のさらなる特徴が存在している状況も表し得る。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含む(comprises)」及び「AはBを含む(includes)」という表現は、B以外に、Aには他の構成要素は存在しない状況(すなわちAがもっぱらBだけで構成されている状況)も、B以外に、実体Aには1つ以上のさらなる構成要素、例えば構成要素C、構成要素C及びD又はさらに他の構成要素が存在する状況も表し得る。
【0039】
さらに、用語「少なくとも1つ(at least one)」、「1つ以上(one or more)」或いは特徴又は構成要素が1回又は1回よりも多く提示され得ることを示す同様の表現は、通常それぞれの特徴又は構成要素を導入する場合に1回だけ使用されることは留意されたい。以下において、ほとんどの場合、それぞれの特徴又は構成要素に言及する場合には、それぞれの特徴又は構成要素が1回又は1回よりも多く提示され得るという事実にもかかわらず、表現「少なくとも1つ」又は「1つ以上」は繰り返されない。
【0040】
さらに、以下で使用されるように、用語「特に(particularly)」、「より詳細には(more particularly)」、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」、「通常(typically)」、「より一般的には(more typically)」、「好ましくは(preferably)」、「より好ましくは(more preferably)」又は同様の用語は、追加/代替の特徴と併用され、代替の可能性を限定することはない。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、追加/代替の特徴であり、請求項の範囲を限定することは全く意図していない。本発明は、当業者に認識されるように、代替の特徴を使用することによって行ってもよい。同様に、「本発明の実施形態では」又は同様の表現によって導入される特徴は、追加/代替の特徴であることを意図しており、本発明の代替実施形態に関して全く限定されず、本発明の範囲に関して全く限定されず、このようにして導入される特徴を、本発明の他の追加/代替又は非追加/代替の特徴と組み合わせる可能性に関して全く限定されない。
【0041】
本明細書では、用語「バイオマス」は、溶液中に含まれる生物学的物質の質量を意味する。通常、本発明による前記生物学的物質は、1種類以上の原核生物若しくは真核生物、又はその一部、例えば細胞壁、タンパク質、リン脂質、細胞膜、ポリヌクレオチド及び微生物によって生成される他の大きな有機化合物である。
【0042】
特に好ましい実施形態では、バイオマスは、1種以上の生物学的な有機体を意味し、より好ましくは1種以上の生物は、細菌又は真菌又は植物細胞又は非ヒト動物細胞である。好ましい実施形態では、1種以上の生物は、a)グラム陰性菌、例えばロドバクター(Rhodobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、酢酸菌(Acetobacter)、パラコッカス(Paracoccus)、シュードモナス(Pseudomonas)又はエシェリキア(Escherichia)の群;b)グラム陽性菌、例えばアルトロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)の群から選択される細菌細胞;c)コウジカビ(Aspergillus)(例えば黒色麹菌クロカビ(Aspergillus niger))、ブラケスレア(Blakeslea)、アオカビ(Penicillium)、セラトシスチスモニリフォルミス(Ceratocysis moniliformis)、トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、Tハルジアナム(T harzianum)、ピクノポラスシンナバリナス(Pycnoporus cinnabarinus)、ファネロカエテクリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ファフィア(Phaffia)(キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces))、クリプトコックス(Cryptococcus)、ピキア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、ハイホジーマ(Hyphozyma)(例えばH.ロセオニガー(H.roseoniger))、ゲオトリクムクレバニ(Geotrichum klebahnii)、ゲオトリクムフラグランス(Geotrichum fragrans)、スポリジオボラスサルモニコラ(Sporidiobolus salmonicolor)、及びウィリオプシスサタナス変種ムラキイ(Williopsis saturnus var mrakii)の群から選択される菌類細胞;又はd)遺伝子導入植物若しくは遺伝子導入植物細胞を含む培養物であって、細胞がタバコ属の種(Nicotiana spp)、チコリ(Cichorum intybus)、レタス(lactuca sativa)、ハッカ属の種(Mentha spp)、クソニンジン(Artemisia annua)、塊茎形成植物(tuber forming plant)、油糧作物及び樹木から選択される遺伝子導入植物のもの;e)又は遺伝子導入キノコ(transgenic mushroom)若しくは遺伝子導入キノコ細胞を含む培養物であって、微生物がスエヒロタケ(Schizophyllum)、ハラタケ(Agaricus)及びプレウロティシ(Pleurotisi)から選択されるものから選択される細菌細胞である。より好ましい生物は、エシェリキア属(Escherichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)に属する微生物であり、さらにより好ましくは大腸菌(E. coli)種、酵母(S.cerevisae)種、ロドバクタースフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)種又はアミコラトプシス属の種(Amycolatopsis sp)のもの、例えばそれだけには限らないがアミコラトプシスメジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、例えば株NCIM 5008、ストレプトマイセスセトニイ(Streptomyces setonii)、ストレプトマイセスサモチカス(Streptomyces psammoticus)、及び例えばそれだけには限らないがアミコラトプシス属の種(Amycolatopsis sp)株IMI390106、Zyl 926、ATCC39116、DSM 9991、9992又はZhp06である。
【0043】
より好ましくは、前記バイオマスは、微生物、さらにより好ましくは遺伝子改変された微生物を含み、それらは培養液、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液で培養されている。
【0044】
他の実施形態では、本発明の方法は、巨大分子バイオマス、例えば木、わら、茎及びリグニン、セルロース及び/又はデンプンを含有する他の植物材料から、或いは巨大分子バイオマス又は動物若しくは微生物起源、例えば物質、多糖などを含有するキチンから、前記巨大分子バイオマスの残りから生成したアロマ化合物、二糖及び単糖を分離するために適用する。
【0045】
バイオマス及びアロマ化合物(複数可)、二糖(複数可)及び/又は単糖(複数可)の分離の成功を評価するのに最も簡単な方法は、第1の膜ろ過の透過液が光学的に透明であることをモニターすることである。分離が失敗すると、透過液の光学的検査でバイオマスが検出されることになり、透過液中の黒色活性炭などの吸着剤の存在も光学的検査で簡単に検出され、膜ろ過装置の漏れ又は故障を示すことになる。
【0046】
本明細書では、用語「アロマ化合物」は、臭気物質、アロマ、香水、又はフレーバーである任意の物質を意味し、好ましくは匂い又は臭気がある化合物であり、ここで、アロマ化合物は、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではない。好ましくは、さらにアロマ化合物は、有機化合物、通常分子量として300未満の有機化合物である。一実施形態では、アロマ化合物は、臭気物質、アロマ、香水、又はフレーバーである物質であり、好ましくは匂い又は臭気を有し、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、式(C5H8)n(式中、nは4以上の整数である)のものから選択される化合物であり、タンパク質以外の化合物であることを理解されたい。別の実施形態では、nは1~10(両端含む)の整数である。別の実施形態では、アロマ化合物は、乳酸又は酪酸ブチルではない。好ましい実施形態では、本節において定義されるアロマ化合物は、極性アロマ化合物であり、さらにより好ましくはアンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドのリストから選択され、さらに一層好ましくはそれはバニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択される。
【0047】
一実施形態では、本発明の方法は、完成されたアロマ化合物ではなく、最終アロマ化合物の精製された前駆体を生成する方法を意味し、前駆体は発酵によって生成され、本発明の処理を施した発酵ブロス中に存在する。本発明の方法及び本発明の処理装置は、本発明の一部として本発明の方法による、又は本発明の処理装置での精製後に、1つ以上の酵素的及び/又は化学的ステップによって最終アロマ化合物に変換されるような前駆体分子に適用することができる。したがって、一実施形態では、アロマ化合物へのどんな言及も前記アロマ化合物の前駆体を意味すると理解され得る。
【0048】
一実施形態では、アロマ化合物はフレーバー化合物である。別の実施形態では、アロマ化合物はフレグランス化合物である。
【0049】
本明細書では、用語「オリゴ糖」は、少数の通常3~10個の単糖(単純糖)を含有する糖ポリマーを意味する。
【0050】
本明細書では、用語「二糖」は、2個の単糖からなる糖、例えばグルコースとガラクトース部分からなるラクトース、又は1個のグルコースと1個のフルクトース分子からできているサッカロースを意味する。
【0051】
本明細書では、用語「単糖」は、単純糖、好ましくは5又は6個の炭素原子を含む糖分子、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース又はフコースを意味する。
【0052】
用語「吸着剤」は、本明細書では気体、液体、又は溶解固形物から表面への原子、イオン、又は分子の付着をもたらすように構成されたエレメントを意味する。用語「付着」は、異なる粒子又は表面が互いにくっつく傾向を意味する。好ましくは、吸着剤は、色成分の付着をもたらすように構成されている。好ましくは、吸着は活性炭である。
【0053】
本明細書では、用語「精密ろ過」は、望ましくない粒子を含む流体、例えば汚染された流体が特別な孔径の膜を通過して、微生物と懸濁粒子を処理液、特により大きい細菌、酵母菌、及び任意の固体粒子から分離する物理的ろ過プロセスの一種を意味する。精密ろ過膜は0.1μm~10μmの孔径を有する。それによって、このような膜は、100000kDaを超える分子量でカットオフを有する。
【0054】
本明細書では、用語「限外ろ過」は、望ましくない粒子を含む流体、例えば汚染された流体が特別な孔径の膜を通過して、微生物と懸濁粒子を処理液、特に細菌、巨大分子、タンパク質、より大きいウィルスから分離する物理的ろ過プロセスの一種を意味する。限外ろ過膜は通常2nm~100nmの孔径を有し、2kDa~250000kDaの分子量でカットオフを有する。限外ろ過の基礎となる原理は、精密ろ過の基礎となるものと根本的に変わらない。これらの方法の両方とも、サイズ排除又は粒子保持に基づいて分離するが、粒子の大きさによってそれらの分離能力が異なる。
【0055】
本発明の方法によれば、第1の膜ろ過は、好ましくはカットオフが4kDa以上、好ましくは10kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~200nmの範囲、さらにより好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。さらに、前記第2の膜ろ過は、好ましくはカットオフが1kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施する。
【0056】
ろ過膜のカットオフは、通常所与のサイズ又は分子量の溶質の90%の保持を意味し、例えばxkDaの球状タンパク質の90%は、カットオフがxkDaの膜によって保持される。これらのカットオフ値は、例えば定義されたデキストラン又はポリエチレングリコールの使用、並びに保持液、透過液及び供給物とも呼ばれる元の溶液を当技術分野で一般的な方法及びパラメーターを使用してGPCゲル透過クロマトグラフィー分析器で分析することによって測定することができる。
【0057】
本明細書では、用語「クロスフローろ過」は、透過液側に対して正圧で、供給物流の大部分がフィルター内ではなくフィルターの表面を横切って接線方向に移動するろ過の一種を意味する。これの主な利点は、他の方法ではフィルターを目詰まりさせる可能性のあるろ過ケーキがろ過プロセス中に蓄積されず、ろ過ユニットが可動できる時間の長さが延びることである。これは、バッチ式のデッドエンドろ過とは違って、連続プロセスになり得る。大規模な用途には、連続プロセスが好ましい。デッドエンドろ過ではフィルター表面が固体材料にすぐに塞がれてしまう(目詰まりする)可能性があるので、透過液が最も重要とされる小さな粒径の固体を高い割合で含有する供給物の場合にこの種のろ過が通常選択される。本開示によれば、前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.5m/s~6.0m/s(両端含む)の範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/s(両端含む)の範囲、より好ましくは2.2m/s~4.5m/s(両端含む)の範囲、さらにより好ましくは2.5~4.5(両端含む)の範囲、又は3.0m/s~4.5m/s(両端含む)の範囲のクロスフロー速度を含む。セラミックでできた膜の場合、膜のそれぞれの形状に応じて、クロスフロー速度が高分子材料でできた膜の場合よりも高くすることができる。例えば、平坦な高分子膜、例えば平坦シートモジュールの高分子膜の場合、クロスフロー速度は0.5m/s~2.0m/s、好ましくは1.0m/s~1.7m/s、より好ましくは1.0~1.5m/sである。特定の設定及びバイオマスを含む特定溶液に応じて、場合によっては1.0m/s以下のクロスフロー速度さえも使用できるが、クロスフロー速度が低すぎる場合にろ過がデッドエンドろ過に変わるかもしれない。
【0058】
用語「カットオフ」は、本明細書では、通常ダルトン単位のMWCO、分子量カットオフの形式で指定される膜の排除限界を意味する。これは、溶質、例えば膜によって90%に保持される球状タンパク質の最小分子量として定義される。カットオフは、本方法に応じて、いわゆるD90に変換でき、それは次にメートル単位で表される。
【0059】
通過又は透過は、膜を通る化合物の移動を表すと理解されるべきである。実際には、通過は、化合物の透過液濃度と保持液濃度との比を計算することによって決定され、通常、パーセントで表される。対照的に、保持は膜ろ過中に膜の元側に残る化合物のパーセントであり、パーセントとしても表され、理想的には、所与の物質の通過及び保持は合計で約100%になる。
【0060】
第1のステップ(
図1、ステップS10)では、発酵プロセスで生成された少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液を供給している。前記少なくとも1種のアロマ化合物は、アロマ化合物、好ましくは極性アロマ化合物を含む。少なくとも1種のアロマ化合物は、アンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシド又はそれらの前駆体から選択することができる。好ましくは、前記溶液は、バイオマス並びに少なくとも1種のアロマ化合物を含み、培養液中での1種類以上の細胞の培養によって得られる。したがって、前記溶液はまた、好ましい実施形態では発酵ブロスと呼んでもよい。培養液は、好ましくは少なくとも1種の炭素供給源、少なくとも1種の窒素供給源及び無機栄養素を含む培養液である。より好ましくは、発酵ブロス又はバイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液は、微生物発酵、好ましくは好気性微生物発酵によって得られる。アロマ化合物を生成できる微生物は、例えばエシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)及びクルイベロマイセス属(Kluyveromyces)からなる群からの酵母菌又は細菌又は植物細胞又は動物細胞であってもよい。水性栄養培地は、増殖及び/又はアロマ化合物の生合成ために微生物に使用される少なくとも1種の炭素供給源(例えばグリセリン又はグルコース)を含む。その上、栄養培地は、好ましくは酵母エキス又はアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなどの形態で少なくとも1種の窒素供給源も含有し、これは微生物の増殖に必要である。培地中の他の栄養素には、例えば1つ又は複数のリン供給源としてのリン酸塩、硫黄供給
源としての硫酸塩、並びに例えばMg、Fe及び他の微量栄養素を微生物にもたらす他の無機又は有機塩がある。多くの場合、1種以上のビタミン、例えばチアミンは、最適な性能のために栄養培地に補充する必要がある。栄養培地は、任意選択で複雑な混合物、例えば酵母エキス又はペプトンを含有していてもよい。このような混合物は通常、高窒素含有化合物、例えばアミノ酸並びにビタミン及びいくつかの微量栄養素を含有する。
【0061】
栄養素は、培養開始時に培地に加えることができ、及び/又はそれらはプロセスの過程の間に供給することもできる。ほとんどの場合、炭素供給源(複数可)は、培養開始時に定義された低濃度まで培地に加えられる。炭素供給源(複数可)は次いで、微生物の増殖速度、したがって、酸素要求量を制御するために連続的又は断続的に供給される。追加の窒素供給源は、通常アンモニアを用いたpH制御によって得られる(下記参照)。培養の過程中に上記の他の栄養素を加えることも可能である。
【0062】
場合によっては、前駆体化合物を培地に加え、これはアロマ化合物の生合成に必要である。前駆体化合物は、培養開始時に培地に加えてもよく、又は培養中に連続的若しくは断続的に供給してもよく、又は最初の追加と供給の組合せによって加えてもよい。
【0063】
細胞は、撹拌槽バイオリアクター中で増殖及びアロマ化合物の生合成を可能にする条件下で培養する。好気条件の場合、微生物細胞への50mmol O2/(l*h)~180mmol O2/(l*h)の範囲の十分な酸素供給は増殖及び生合成に必須であり、したがってこのような設定では、好気条件が望ましい場合に液体培地への高速酸素移動を達成するために培養液を通気及び強烈に撹拌し、任意選択で、培地中の細胞への酸素移動の速度を増大させるために、培養液への空気流は、純粋な酸素ガスの流れによって濃縮してもよい。
【0064】
嫌気条件は、本明細書において、酸素が全くない条件、又は実質的に酸素が培養細胞、特に微生物によって消費されない条件と定義され、通常5mmol/l.h未満の酸素消費量、好ましくは2.5mmol/l.h未満の酸素消費量、又はより好ましくは1mmol/l.h未満に相当する。
【0065】
酸素制限条件は、気体から液体への酸素移動によって酸素消費量が制限される条件として定義される。酸素制限条件の下限値は、嫌気条件の上限値、すなわち通常少なくとも1mmol/l.h、特に少なくとも2.5mmol/l.h、又は少なくとも5mmol/l.hによって決定される。一部の生物は、酸素制限条件の特別な変形として微好気条件(microaerob condition)で増殖する。このような場合、実質的に5mmol/l.hを超えて使用されているが、完全な好気条件に到達するのに十分ではない。酸素制限条件の上限値は、生物及び成長温度、成長段階などのセットアップに応じて、好気条件の下限値、すなわち100mmol/l.h未満、50mmol/l.h未満、20mmol/l.h未満、又は10mmol/l.h未満によって決定される。例えば、生物は、溶存酸素レベルを10%~40%、例えば35%に保持し、その後しばらくして15%に下げてもよい。
【0066】
好気条件は、無制限の成長に十分なレベルの酸素が培地に溶解し、少なくとも10mmol/l.h、より好ましくは20mmol/l.hを超える、さらにより好ましくは50mmol/l.hを超える、最も好ましくは100mmol/l.hを超える酸素消費速度を維持できる条件である。
【0067】
条件が好気性、嫌気性、又は酸素制限のいずれであるかは、方法が実施される条件、特に入ってくるガス流の量及び組成、使用する装置の実際の混合/物質移動特性、使用する微生物の種類、及び微生物密度に依存する。
【0068】
一般に、温度は少なくとも0℃、特に少なくとも15℃、より特に少なくとも20℃である。所望の最高温度は、アロマ化合物を生成する酵素及び使用する宿主細胞に依存する。使用する細胞及び/又はアロマ化合物を生成する酵素に応じて、温度は70℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に37℃以下である。サーマスサーモフィルス(Thermus thermophilus)のような生物は、49℃~72℃に増殖に最適な温度を有し、大腸菌(Escherichia coli)は約37℃、酵母菌のような多くの真菌微生物及びロドバクタースフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)のような細菌微生物は約30℃に最適温度を有する。発酵プロセスの場合、インキュベーション条件は、細胞が十分な活性及び/又は増殖を示す限り広い範囲内で選択することができる。これには、pH範囲、温度範囲及び好気、酸素制限及び/又は嫌気条件が含まれる。
【0069】
一実施形態では、培養は、24℃~41℃、好ましくは28℃~40℃、より好ましくは30℃以上で実施する。使用する生物に応じて、約30℃又は32℃~39℃の範囲の温度を使用する。pH値は、好ましくはNH3(ガス又はNH4OHの水溶液として)の自動追加によって6.2~7.2に設定する。
【0070】
場合によっては、例えばEP 2 379 708として公開された欧州特許出願にあるように、アロマ化合物の生合成は、化合物、例えばイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の追加によって誘発する必要がある。誘発化合物は、培養開始時に培地に加えてもよく、又は培養中に連続的若しくは断続的に供給してもよく、又は最初の追加と供給の組合せによって追加してもよい。
【0071】
続いて、本発明の方法は、第2のステップ(
図1、ステップS12)でpH値の調整に進む。前記ステップでは、通常溶液のpH値を、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることによってpH7.0未満に低下させる。前記少なくとも1種の酸は、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、HNO
3(好ましくは濃縮形態ではない)及びCH
3CO
2Hからなる群から選択される酸、又は食物若しくは飼料の生産において安全と考えられる任意の他の酸であり、好ましくは酸は、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl及びCH
3CO
2Hからなる群から選択される。これらの酸単一の代わりに、これらの酸の混合物を一実施形態で使用することができる。溶液のpH値は、目標pH値、好ましくは3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲、さらにより好ましくは4.0~4.5の範囲、例えば4.0又は4.1に調整されている。
【0072】
さらに、本発明の方法の別の実施形態では、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖又は少なくとも1種の単糖を含む溶液が、すでに7未満のpH値、好ましくはpH5.5未満、より好ましくはpH5.0以下、さらにより好ましくはpH4.5以下を有している場合、これらの酸のいかなる追加も任意選択であり、ステップS12を抜かしてもよく、そのような溶液のための本発明の方法をステップS14で続ける。
【0073】
しかしながら、開始するpH値がpH7.0未満、又はさらにはpH5.5未満若しくはpH5.0未満又はさらには4.5であっても、pHを低下させると、流量が高くなり、加える圧力が少なくなり、後続のステップで色及びタンパク質がさらによく除去され、膜汚れもさらにより減少するようなさらなる利点をもたらすことになる。したがって、好ましい実施形態では、このステップの開始時のpH値がすでにpH7.0未満、又はさらにはpH6.0未満であっても、pH値は、目標pH値、好ましくは3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲、さらにより好ましくは4.0~4.5の範囲、例えば4.0又は4.1に調整されている。
【0074】
状況によっては、例えばアロマ化合物の生成に非常に低いpH値を必要とする生物又はバイオマス処理のため、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液のpH値は、pH4.0よりも低くてもよく、pH3.0よりもさらに低くてもよい。この場合には、好ましくは3.0~5.5の範囲、より好ましくは3.5~5の範囲、さらにより好ましくは4.0~4.5の範囲、例えば4.0又は4.1の目標pH値へのpHの調整は、次のステップの前にpH増加物質を添加することによってpH値の増加を伴う場合がある。これにより、機器の性能及び摩滅の平衡が保たれることになる。
【0075】
次いで、方法は次のステップ(
図1、S14)に進む。前記ステップでは、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に1種以上の吸着剤を加える。好ましくは、吸着剤は活性炭である。前記吸着剤、好ましくは活性炭は、0.5重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.6重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.7重量%~2.0重量%の範囲、例えば1.5重量%の量で加える。この点に関して、吸着剤の粒子が小さいほど、吸着特性が良くなることに留意されたい。前記吸着剤、好ましくは活性炭は、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲、例えば5μmの直径d50の粒径分布をもつ粉末として加える。より好ましくは、前記吸着剤、好ましくは活性炭は、水中の粉末の懸濁液として加える。好ましくは、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、少なくとも1種の酸を溶液に加えてから実施する。或いは、前記吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えることは、少なくとも1種の酸を溶液に加える前に実施してもよい。言い換えると、ステップS12及びS14の順序は変えてもよく、その順序は固定されていない。しかし、最初に7未満のpHを所望のpH値に設定し、次に1種以上の吸着剤、好ましくは活性炭を加える順序の場合、タンパク質の除去及び脱色に関して最良の結果をもたらすはずである。好ましい実施形態では、少なくとも1種の酸の追加は、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭の追加に先行する。
【0076】
ステップS12とS14は任意の順序で又は繰り返して、例えばS12次いでS14次いで再度S12、又はS14次いでS12次いでS14で、実施してもよい。
【0077】
本発明の方法の好ましい実施形態では、ステップS12とS14の両方とも実施され、S12、続いてS14の順序で実施される。
【0078】
溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップと第1の膜ろ過のような後続のステップとの間に、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%を吸着するのに十分な任意選択のインキュベーションステップ(S15)を、本発明の方法で使用してもよい。場合によっては、インキュベーションステップは短くてもよく、例えば完全に別個のステップとしては必要ない。例えば、1種以上の吸着剤の添加から第1の膜ろ過の開始までの移行時間は、吸着剤が望ましくない化合物を十分に吸着するのにすでに十分な時間である可能性があるが、状況次第で、第1の膜ろ過を開始する前の時間を延長すると、結果がさらに改善されることになる。
【0079】
方法は、次いで、分離前に1種以上の吸着剤への色成分の付着に適した時間を含むさらなるステップ(
図1、ステップS16)の第1の膜ろ過、好ましくは精密又は限外ろ過に進む。第1の膜ろ過は、少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマス及び1種以上の吸着剤を少なくとも大幅に分離するために実施し、これにより、バイオマスが除去され、1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は単糖を含む透過液とも呼ばれる得られた溶液の色成分及びタンパク質が減少する。基本的に、ステップS16は精密ろ過又は限外ろ過を含む。しかしながら、精密ろ過と限外ろ過の間に円滑に移行されるので、両方とも当業者によって、片側にバイオマス、吸着剤及びタンパク質、反対側に所望の1種以上のアロマ化合物、任意選択で1種以上の二糖及び/又は1種以上の単糖のバルクを含有する透過液を分離する目的で使用可能である。ステップS16のろ過はまた、精密ろ過に代わる方法としての限外ろ過であってもよい。前記精密ろ過又は限外ろ過は、好ましくはクロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施して、膜性能を改善し、膜摩耗を減少させる。ステップS16のろ過の詳細を以下に説明する。前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過は、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲、例えば4.0m/sのクロスフロー速度を含む。一実施形態では、クロスフロー速度は、3.0m/s以下であり、好ましくは1.0~2.0(両端含む)である。本発明の方法、使用及び処理装置の1つの有利な点は、より遅いクロスフロー速度を使用して、好ましくは任意のアロマ化合物、二糖又は単糖からの溶液のタンパク質成分の良好な分離を達成できることである。したがって、エネルギー及び機器のコストを削減でき、機器の摩滅及びろ過膜の摩耗も減少する。前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲、例えば38℃の溶液の温度で実施する。前記精密ろ過又は限外ろ過は、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲、例えば100nmの孔径を有するセラミック若しくは高分子精密ろ過膜又はセラミック限外ろ過膜を用いて実施する。本発明の方法又は処理装置における前記セラミック材料は:二酸化チタン(TiO
2)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、炭化ケイ素(SiC)及び酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック材料の少なくとも1種の層であり、又はそれを有している。或いは、前記精密ろ過又は限外ろ過は、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜又は高分子限外ろ過膜を用いて実施する。前記高分子材料は:ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過は、吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加えた後の所定時間後に実施する。したがって、色成分の付着を確実にする。通常、溶液中の吸着剤、好ましくは活性炭の均一な分布が達成されるまで溶液と加えた吸着剤とを混合するのに必要な時間は、色成分の付着を可能にするのに十分であるが、これを最大にするためにより長いインキュベーション時間を使用することができる。一実施形態では、前記所定時間は、少なくとも2分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、例えば25分又は30分である。
【0080】
好ましい実施形態では、このステップにおける1種以上のアロマ化合物の透過率は、50%よりも多く、好ましくは少なくとも55%であり、より好ましくは少なくとも60%であり、さらにより好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%より多い。1種以上のアロマ化合物の保持は、好ましくは30%未満であり、より好ましくは25%未満であり、さらにより好ましくは20%、15%、10%、8%、6%、4%又は2%未満である。
【0081】
前記第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過の目的は、細胞、細胞片、粒子及び大きいサイズの他の成分の除去による少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液の精製である。
【0082】
第1の膜ろ過の前に前述のステップを行うことによって、より高い流量を達成することができるが、膜の長さ全体の圧力差をより小さくする必要がある。透過液への膜全体にわたるタンパク質及び色化合物の移行は効果的に減少し、本発明による前述のステップを含まない膜ろ過と比較して第1の膜ろ過の透過液中のアロマ化合物の収率は増加する。
【0083】
一実施形態では、本発明の方法は通常、次に第2の膜ろ過ステップ(
図1、ステップS18)に進む。好ましくはステップS16の第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液の限外ろ過を実施する。言い換えれば、ステップS16の第1の膜ろ過から導出された透過液の限外ろ過を実施する。好ましくは、前記第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過は、カットオフが1.5kDa~10kDaの範囲、好ましくは2kDa~10kDaの範囲、より好ましくは4kDa~5kDaの範囲の限外ろ過膜を用いて実施する。特に好ましい実施形態では、カットオフが4kDa又は5kDaの膜が適している。前記限外ろ過膜は、少なくとも部分的に高分子材料でできている。前記高分子材料は:ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロースからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料である。通常、第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液は、前記第2の膜ろ過前に20℃未満の温度にし、好ましくは前記第2の膜ろ過中に20℃未満の温度に維持する。本発明の一態様は、前記第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過が、溶液の温度が5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲、例えば10℃で実施されることを意味する。
【0084】
本発明の方法の前のステップの後に第2の膜ろ過を行うと、第1及び第2の膜ろ過を含むが本発明の前処理を欠いている方法と比較した場合、第2の膜ろ過後のアロマ化合物の収率が増加し、タンパク質の透過が減少し、第2の膜ろ過の透過液の色が低下し、供給物の濃縮係数が高くなり、平均流量が高くなる。
【0085】
図2は、個別のステップ(
図2のS15)として示された分離前の1種以上の吸着剤への色成分の大部分の付着に適した時間を含む本発明の方法の一連のステップを示す。このような個別のインキュベーションステップは、吸着剤への望ましくない化合物の十分な付着のために長時間が必要な場合に有利かもしれない。さらに、
図2は、第1の膜ろ過(
図1のS16である)を3つの部分からなるステップ又はサブステップとして描写しており、第1の膜ろ過の3つのサブステップは、第1のダイアフィルトレーション、濃縮、その後任意選択で第2のダイアフィルトレーションである。これらは
図2でそれぞれS16/1、S16/2及びS16/3として示されている。他のステップは、
図1と同様である。
【0086】
さらに、逆浸透の追加の、任意選択のステップをS20として示す。
【0087】
ステップS16のこれらのサブステップは、例えば活性炭に対する所定の1種以上のアロマ化合物の吸光度が観察される場合に有用である。ステップS16のサブステップを調整することにより、所望のアロマ化合物は、活性炭から非常に広範囲に放出することができ、したがって活性炭の前処理にもかかわらず、第1の膜ろ過の透過液にも見られ、活性炭に対する所望のアロマ化合物の一時的な吸光度をもたらす。
【0088】
本発明の一実施形態では、方法は、第2の膜ろ過ステップ後に、第2の膜ろ過ステップS18の透過液が逆浸透処理を受けてどんな残留固体粒子も大部分除去する別のステップ(S20)を含む。
【0089】
誤解を避けるために、溶液又は透過液又は保持液のタンパク質含有量へのいかなる言及も、溶液/透過液/保持液中の遊離タンパク質を指し、すなわちたとえあったとしてもバイオマスに含有されているタンパク質ではなく、細胞外で見つかったタンパク質である。発酵及びその後の取り扱い及び膜ろ過の間も、タンパク質は、バイオマスから遊離し、次いで遊離タンパク質と見なされることがある。
【0090】
誤解を避けるために、溶液又は透過液又は保持液中の少なくとも1種のアロマ化合物へのいかなる言及も、溶液/透過液/保持液中で結合していない少なくとも1種のアロマ化合物を指し、すなわちたとえあったとしてもバイオマスに含有されている少なくとも1種のアロマ化合物ではなく、細胞外で見つかったものである。発酵及びその後の取り扱い及び膜ろ過の間も、少なくとも1種のアロマ化合物は、バイオマスから遊離し、次いで溶液中の結合していないアロマ化合物と見なされることがある。
【0091】
好ましい実施形態では、第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップは、少なくとも1種のアロマ化合物からバイオマス及び任意選択で細胞片、粒子及び大きいサイズの他の成分を分離する精製ステップとして理解されるべきであり、ここで、少なくとも1種のアロマ化合物の大部分は、バイオマスの分離後の第1の膜ろ過の透過液に見られる。
【0092】
一実施形態では、本発明は、バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、
a. バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液を用意するステップ、
b. バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7.0未満に低下させるステップ、
c. バイオマス及び少なくともアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に1種以上の吸着剤を加えるステップ、
d. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
e. 少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離するために、第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施するステップ
を含む方法を意味する。
【0093】
好ましい実施形態では、第1の膜ろ過の後に第2の膜ろ過として限外ろ過が続き、次いで任意選択でナノろ過、イオン交換及び/又は逆浸透が続く。
【0094】
本発明の一態様では、第1の膜ろ過の後に限外ろ過が続き、次いで任意選択で限外ろ過の透過液をさらに濃縮し、さらに固体粒子を除去するための逆浸透が続く。
【0095】
本発明の他の態様は、処理装置であって、i.)バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭、及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する溶液であり、溶液のpH値が7.0未満である、溶液、ii.)第1のろ過膜、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過膜、iii.)前記第1のろ過膜を横切って第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度でアロマ化合物、二糖及び又は単糖のバルクを含有する透過液を生成する手段、並びにiv.)上記i).に記載されているように溶液から第1の膜ろ過の透過液を分離する手段を含み、さらに任意選択で以下の特徴:v.)第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、vi.)透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、vii.)第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、viii.)第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びにix.)第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離しておく手段、並びに任意選択でx)第2の膜ろ過の透過液の逆浸透処理を実施する手段の1つ以上を含み、
溶液又はいずれかの透過液と接触している処理装置の部品の表面は、pH3.5という低いpH値に耐性があり、任意選択で食品の製造に適した材料でできている、処理装置を意味する。
【0096】
本発明の別の態様は、処理装置であって、
i. バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する溶液を保持する容器、
ii. 前記溶液の温度を5℃~70℃、好ましくは8℃~55℃の範囲、より好ましくは10℃~50℃の範囲、さらにより好ましくは30℃~40℃の範囲の温度に調整する手段、
iii. 容器内の溶液のpH値を測定するための測定システム、
iv. 溶液のpH値を7.0未満の値、好ましくは5.5より低い目標pH値に設定する、好ましくは少なくとも1種の酸の追加に適している手段、
v. 少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を溶液に加える手段、
vi. 溶液中の吸着剤の本質的に均一な分布を生成する手段、
vii. 第1のろ過膜、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過膜、
viii. 前記第1のろ過膜を使用して、バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する、7.0未満のpH値を有する溶液の第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施する手段と、アロマ化合物、二糖及び/又は単糖のバルクを含有する透過液を生成するのに適している手段、並びに
ix. バイオマス、少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭及び少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含有する、7.0未満のpH値を有する溶液から生成される、第1の膜ろ過の透過液を捕集、移送及び任意選択で貯蔵する手段
を含み、さらに任意選択で:
x. 第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、
xi. 第1の透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、
xii. 第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、
xiii. 第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びに
xiv. 第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離する手段
xv. 任意選択で第2の膜ろ過の透過液の逆浸透処理を実施するための手段
を含み、溶液又は透過液のいずれかと接触している処理装置の部品の表面は、pH3.5という低いpH値に耐性があり、任意選択で食品の製造に適した材料でできている、処理装置を意味する。
【0097】
本発明の別の態様は、少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からのバイオマスの分離に使用される膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らす方法であって、
a. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液を用意するステップ、
b. 溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲のpH値に調整するステップ;例えばpH値がpH7.0以上の場合、バイオマスを含み、少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、溶液のpH値を7未満に低下させるステップ、
c. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液に1種以上の吸着剤、好ましくは活性炭を、好ましくは0.5重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.75重量%~2.5重量%の範囲、又は0.5重量%~1.5重量%(両端を含む)、より好ましくは1.0重量%~2.0重量%の範囲の量で加えるステップ、
d. 必要に応じて任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
e. 第1の膜ろ過を、好ましくは3m/s以下のクロスフロー速度で実施して少なくとも1種のアロマ化合物、任意選択で少なくとも1種の二糖及び/又は少なくとも1種の単糖を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含む、方法を意味する。
【0098】
より簡単な貯蔵及び移送のために、多くの場合、アロマ化合物は溶液よりも固形形態であることが望ましい。したがって、好ましい実施形態では、最終ステップとしての本発明の方法は、所望のアロマ化合物(複数可)、例えばアンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドの、溶液からの除去を有する。これは、例えば、1種以上の溶媒、例えばそれだけには限らないが、短鎖アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)及び/又は有機酸、好ましくは食品用有機酸、例えばそれだけには限らないが酢酸及び/又はプロピオン酸を利用した結晶化によって行うことができるが、結晶化に限定されない。或いは、本発明の方法の前記最終ステップにおいて、所望のアロマ化合物からアロマ化合物の適当な乾燥度まで水若しくは溶媒を除去する噴霧乾燥又は任意の他の方法によって凝固を達成することができる。また、溶液からアロマ化合物を除去するこのようなステップは、前記最終ステップの前に使用することができる。例えば本発明の方法は、結晶化又は噴霧乾燥、続いてアロマ化合物を再溶解して新しい溶液を作成するステップ、任意選択の他の精製ステップ又は溶液からの除去とアロマ化合物の再溶解を繰り返して新しい溶液を形成し、その後最終ステップとして再度溶液からの除去を含む。
【0099】
時々所望の少なくとも1種のアロマ化合物は室温で液体として存在し、好ましくは液体、例えば油などとして使用され;したがって代替の実施形態では、凝固ステップはそのようなアロマ化合物(複数可)には必要ではない。例えば溶媒除去を行ってもよい。
【0100】
本特許出願は、特許出願EP20179760.2の優先権の利益を主張する。16頁24行~22頁22行に他の実施形態として挙げられている優先権出願の実施形態が参照により組み込まれている。
【0101】
一実施形態では、発酵ブロスは、例えばWO2015002528として公開されている国際特許出願に開示されている二相発酵プロセスからの発酵ブロスであり、任意選択で本発明で使用される発酵ブロスは、二相発酵プロセスで使用される1種以上の水不混和性有機溶媒である。
【0102】
要約すると、本発明は、以下の実施形態を含むものであって、それらはここで定義される各相互従属により示された実施形態の特定の組合せを含む。
【0103】
[実施例]
本発明に基づく方法を以下にさらに詳細に示す。いずれにせよ、実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0104】
一般例
バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む複合溶液としての発酵ブロスを、標準的な方法によって調製する。そのpH値は、10%硫酸を加えることによって4±0.1まで低下させる。その後、食品安全性がある、活性炭Carbopal Gn-P-F(Donau Carbon GmbH, Gwinnerstraβe 27-33, 60388 Frankfurt am Main, Germany)の30%懸濁液を加え、20分撹拌する。
【0105】
このようにして調製した溶液は、プロセス装置、Sartorius AG, Otto-Brenner-Str. 20, 37079 Goettingen, Germany製の半自動MFラボユニットに供給し、目的のために改変し、透過液を密閉して37℃に循環加熱する。分離目的で、プロセス装置は、外径10mm、内径6mm、長さ1.2m及びAl2O3製の孔径50nmの膜を有するセラミックモノチャンネルエレメント(Atech Innovations GmbH, Gladbeck, Germany製)を含む。溶液の循環を実施し、溶液が目標温度37℃を有するとすぐに、透過液の排出が開始され、膜間圧の制御を起動させる。
【0106】
第1の膜ろ過の終了後、プロセス装置を停止し、濃縮液を処理し、プロセス装置を洗浄する。洗浄は、50℃~80℃の温度で0.5%~1%NaOHを用いて実施し、ここでNaOHはその後パージによって除去する。
【0107】
一実施形態では、以下でさらに詳細に説明するように、本発明の方法の第1の膜ろ過は3つのステップを含む。第1のステップは、0.5の係数(ダイアフィルトレーション水の量=発酵ブロスの出発量×ダイアフィルトレーション係数)を有する第1のダイアフィルトレーションを含む。ダイアフィルトレーションの間、加えられた水の量は、排出された透過液の量と同一である。第1のステップは継続的なステップであり、したがって供給容器内の体積は一定に保たれる。第2のステップは、ダイアフィルトレーション水の供給を停止することによって、係数2で発酵ブロスを濃縮することを含み、レベルは目標値まで低下する(目標値=発酵ブロスの開始時の体積又は質量/濃縮係数)。続いて、第3のステップは、第2のダイアフィルトレーションを含む。これら3つのステップの間に捕集した透過液は通常、組み合わせて、透過液を形成する。これらの3つのステップを用いて、透過液内での生成物のより低い希釈及び増加した収率が実現される。第2のダイアフィルトレーションの係数を増加させることによって、収率はさらに増加し得る。
【0108】
以下の分析方法を実施する。
- 生成物、すなわちアロマ化合物、及び第2の成分を測定するためのHPLC又はGC又はGC-MS
- 乾燥含有量(DC)を測定するための乾燥天秤
- 標準方法、例えばDIN EN ISO 6271を用いて色を測定するためのAPHA
- タンパク質の濃度を測定するためのブラッドフォードタンパク質アッセイ。
【0109】
以下、次の略語を使用する:
- AC=活性炭
- UF=限外ろ過
- DP=モジュールに沿った圧力降下(p供給物-p保持液)
- 流量=1m2及び1時間当たりの透過液流速(l/m2h)
- クロスフロー速度=膜チャンネル内の懸濁液の線速度(m/s)
- 膜負荷=1m2の膜面積によって生成される透過液の量(m3/m2)
【0110】
さらに、液体分離に関して、以下の記号及び説明を使用する。
【0111】
【0112】
以下に、アロマ化合物としてバニリンを用いた本発明の方法の実施例を詳細に説明して、本発明を限定することなく例示する。
【0113】
バニリンの精製実験に共通する要素を以下に記載する:
溶解成分からのバイオマスの分離は、バッチ動的クロスフロー実験室ユニット(batch dynamic cross flow lab unit)(MFと呼ばれる)で完了し、完全に自動で実行され、温度、TMP、循環流制御、並びに供給容器へのDF培地の自動投与が可能であった。透過液流速をスケールで測定した。分離バリアとしてAtech Innovations GmbH製のセラミック50nm Al2O3膜(耐摩耗性の3層膜50/200/400nm)は、単管10/6、長さ1.2m、有効膜面積0.0223m2である。定義済みのクロスフロー速度及び定義済みのろ過温度に到達した後にだけ、TMP制御透過液流は活性化された。
【0114】
各試験の前後に、25℃での水洗時に膜性能(流量)を測定した。30分間水洗した。各試験後にユニットを最初に脱イオン水で水洗し、排水し、次いで68~70℃で30分間0.5% Ultrasil(登録商標)125(Ecolab製の膜クリーナー)で清浄にした。洗浄剤溶液を排水した後、ユニットを3回水洗及び排水して洗浄剤溶液を完全に除去し、最終的に25℃で脱イオン水を用いて流量を再度測定した。
【0115】
MFからの透過液を次いで実験室UFユニットで処理して、ポリマー限外ろ過膜を用いて高分子:タンパク質、多糖、RNA、DNAなどを分離した。試験ではMicrodyn-Nadir製の4kD PES膜UH004を使用した。
【0116】
UF試験中、MF透過液の濃縮だけ施した(ダイアフィルトレーションなし)。濃縮は、ユニット内に最少保持液量が残るか又は透過液の流量が5kg/m2h未満に減少するまで実行した。
【0117】
UFテストは、0.00793m2の膜面積を有する、直列接続された3つの円形膜セルを有する平板状セルユニットで完了した。供給圧力は、供給容器内のN2の圧力制御によってもたらされ、クロスフロー速度はギアポンプによってもたらされた。透過液流をスケールで測定した。
【0118】
セラミック膜と同様の膜再生手順を高分子膜に使用した。水洗を30℃で完了し、膜洗浄は50℃で同時に完了した。
【0119】
発酵ブロス、保持液及び透過液の試料を、タンパク質(ブラッドフォード法に基づく)、色(APHAに関してPerkinElmer Lambda 35)、試料の乾燥による乾燥含有量(Mettler-Toledo HX204、湿度分析計)、及びGC法を用いてバニリン(詳細については以下の表Aを参照)について分析した。発酵ブロス及びMF保持液の試料を0.2ミクロンフィルターでろ過して、固体を含まない試料を保証した。
【0120】
【0121】
典型的な条件下で、大腸菌(E. coli)が増殖して増殖期から生物変換期へ至る既知の時間に相当する時間増殖させた大腸菌(E. coli)細胞の標準実験室株の発酵ブロスである。アロマ化合物バニリンを生成した大腸菌(E. coli)の発酵ブロスを刺激するために、バニリンを約10g/lの濃度まで発酵ブロスに加え、穏やかに混合した。
【0122】
このバニリン含有発酵ブロスを以下の実験に使用した。
【0123】
[実施例1]
発酵ブロスバッチのアリコートを2つの部分に分けた。第1の部分(試験1A)は、脱イオン水を用いてDF(ダイアフィルトレーション係数)4で直接ダイアフィルトレーションした。発酵ブロスの第2の部分(試験1B)は、20% H2SO4で酸性化してpH4.5に到達させ、次いで多量のAC活性炭粉末Carbopal Gn-P-Fを加えて1.0%(g/g)AC濃度を得た。その後、この懸濁液は、脱イオン水を用いてDF 4で同様にダイアフィルトレーションした。
【0124】
前処理なしの発酵ブロスを用いたMF条件(試験1A):
T=35℃
TMP=1バール
クロスフロー速度4m/s(400l/h)
前処理ありの発酵ブロスを用いたMF条件(試験1B):
T=35℃
TMP=1バール
クロスフロー速度3.5m/s(350l/h)
両方の透過液を用いたUF条件
T=10℃
TMP=10バール
クロスフロー速度1.5m/s
【0125】
精密ろ過(MF)による第1の膜ろ過による溶解成分からのバイオマスの分離の結果
表1は、前処理なし(試験1A)及び前処理あり(試験1B)の発酵ブロスのセラミック膜を用いたバイオマス分離の性能データを示す。クロスフロー速度が低下してもpH調整と1%のAC粉末の添加で発酵ブロスを前処理した場合、膜性能は2.5倍高い。このクロスフロー速度の低下によって、長さ1.2mの膜に沿った圧力差(DP)は25%低下する。これにより、工業単位による電気エネルギー需要が大幅に削減される。
【0126】
【0127】
表2は、各試験前、試験後の水洗中、及び膜再生後に脱イオン水で測定した膜性能を示す。結果は、膜性能が簡単に再確立され、1% ACによる試験後はわずかに良好になったことを示す。
【0128】
【0129】
表3(次のページを参照)は、APHA、タンパク質、溶解成分の乾燥含有量、及びバニリンについての両方の試験の物質収支を示す。データは、発酵ブロスの前処理により、透過液だけでなく供給物と保持液の色成分も大幅に減少することを明らかに示す。タンパク質の濃度は、>5分の1に減少し、前処理なしの試験と比較してそれらの保持率が大幅に高くなる。
【0130】
試験1Aの透過液中のタンパク質量は供給物中の量と同様だが、試験1Bからの透過液ではタンパク質の量は3分の1に減少する。
【0131】
供給物中の分析されたバニリン濃度は、前処理した発酵ブロス中の供給物において著しく低く、バニリンがACに部分的に吸着することを示している。しかしながら、ダイアフィルトレーションステップの間にそれを洗い流すことができ、それによって同様の量のバニリンが透過液中に見出された。
【0132】
図3は、両方の試験のダイアフィルトレーション係数の関数としての流量の傾向を示す。傾向から、より高い固体負荷(1% AC)でも、試験1Bの膜性能は大幅に高いことが示されている。活性炭の有無に関わらず安定したろ過性能を達成した。
【0133】
第2の膜ろ過として限外ろ過(UF)を用いた第1の膜ろ過の透過液の濃縮の結果
表4は、到達した濃縮係数と試験中の平均流量を示す。結果は、発酵ブロスの前処理の利点を明らかに示す。発酵ブロスを前処理した場合、濃縮係数は7倍高くなり、同様に平均膜性能はほぼ3倍高くなる。
【0134】
【0135】
表5は、膜再生データを提供し、選択された膜が試験1Aのようにひどく汚れていても簡単に再生できることを示す。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
表6(前のページを参照)は、APHA、乾燥含有量、タンパク質及びバニリンについての両方の試験の物質収支を示す。前処理後の透過液(試験1B)では、試験1A(前処理なし)と比較して、APHAは2分の1に減少し、タンパク質の濃度は25分の1に減少する。試験1Bの乾燥含有量はわずかに高くなり、タンパク質濃度が大幅に低くその汚れ傾向があるため、溶解成分がより低い保持率で膜を通過することを示している。その調査期間中、多糖を分析しなかったが、それらは膜汚れによって重要な役割を果たすことは確かである。試験1Bのバニリン回収率は97%で、試験1Aの78%よりも著しく高かった。試験1Bにおけるその保持率は、試験1Aの27に対して、0%であった。
【0140】
図4は、両方の試験の濃縮係数の関数としての流量の傾向を提供する。試験1Bの膜性能は、CF 4.6後の試験1Aよりも、CF 34.8後でも2倍高かった。試験1Bのオンラインデータ収集の問題のために、流量値の一部が欠落している。UFユニットの操作量が1.5リットルに制限されていたため、ユニットを停止し、供給溶液を補充する必要があった。これは1B試験の間に3回行った。各再始動後に流量は増加したが、比較的早く以前の値に達した。
【0141】
その後の逆浸透
UF試験1A及び1Bからの透過液は、異なる逆浸透膜を使用して撹拌試験セルで逆浸透によって濃縮した。両方の試料に2種類の膜(AlfaLaval RO99及びMicrodyn-Nadir ACM2)を使用した。
【0142】
両方の実験をほぼ同じ固形物含量(活性炭ありの実験で1.24%、活性炭なしの実験で1.20%)の供給物で開始した。結果から、逆浸透はpH調整及び活性炭で処理したブロスでより優れた性能を示すことが示された。第1の膜ろ過の前に試料をpH調整及び活性炭で前処理した場合、固体保持率及びバニリン保持率は両方の膜でより高く、流量は継続的に改善された。
【0143】
まとめ:前処理の利点
前処理及び第1の膜ろ過によるバイオマス分離:
・流量が2.5倍高い
・膜の長さによる圧力差の低下
・透過液中のタンパク質が5.5分の1に減少
・APHAが2.5分の1に低下
・透過液のバニリン収率が高い
【0144】
高分子のUF分離:
・供給物の濃縮係数が7倍高い
・平均流量が2.8倍高い
・APHAが2分の1に低下
・透過液中のタンパク質が25分の1に減少
・バニリン収率が大幅に高い(97%対78%)
【0145】
逆浸透
固体保持がより良い
バニリン保持がより良い
【0146】
[実施例2]
新しい発酵ブロスバッチは、バニリンを約10g/lまで加えた後に再度2つの部分に分けた。実施例1と比較して異なる量の活性炭を使用したことを除いて、実施例1と同様に試験を行った。第1の部分(試験2A)は、脱イオン水を用いてDF 4で直接ダイアフィルトレーションした。発酵ブロスの第2の部分(試験2B)は、20% H2SO4で酸性化してpH4.5に到達させ、次いで多量のAC活性炭粉末Carbopal Gn-P-Fを加えてその1.5%の濃度を得た。その後、前処理した発酵ブロスは、脱イオン水を用いてDF 4でダイアフィルトレーションした。
【0147】
前処理なしの発酵ブロスを用いたMF条件(試験2A):
T=35℃
TMP=1バール
クロスフロー速度4m/s(400l/h)
前処理ありの発酵ブロスを用いたMF条件(試験2B):
T=35℃
TMP=1バール
クロスフロー速度3.5m/s(350l/h)
両方のMF透過液を用いたUF条件
T=10℃
TMP=10バール
クロスフロー速度1.5m/s
【0148】
溶解成分からのバイオマスの分離の結果(MF)
表7は、前処理なし(試験2A)及び前処理あり(試験2B)の発酵ブロスのセラミック膜を用いたバイオマス分離の性能データを示す。第1の実施例における試験1Bと同様に、クロスフロー速度が低下してもpH調整と1%のAC粉末の添加で発酵ブロスを前処理した場合、膜性能は2.5倍高い。
【0149】
【0150】
表8は、各試験前、試験後の水洗中、及び膜再生後に脱イオン水で測定した膜性能を示す。結果は、膜性能が簡単に再確立されたことを示す。
【0151】
【0152】
表9(次のページを参照)は、APHA、タンパク質、溶解成分の乾燥含有量、及びバニリンについての両方の試験の物質収支を示す。データは、4.5へのpH調整及び1.5%ACの添加による発酵ブロスの前処理により、透過液だけでなく供給物と保持液の色成分も大幅に減少することを明らかに示す。前処理した発酵ブロスからの透過液において:APHAは3分の1に減少し、タンパク質の濃度は35分の1に減少し、それらの保持率が大幅に高くなる。しかしながら、供給物中のバニリン濃度は、前処理した発酵ブロス中の供給物において非常に低く、バニリンがACに部分的に吸着することを示している。しかしながら、ダイアフィルトレーションステップの間にそれを洗うことができ、それによってさらに15%のバニリンを回収でき、保持液中のその濃度は2.5分の1に低下した。試験2Bのバニリン収率及び保持率を供給物中の溶解バニリン濃度で計算し、そのためそれらは実体を描写していない。
【0153】
図5は、両方の試験のダイアフィルトレーション係数の関数としての流量の傾向を示す。傾向から、より高い固体負荷(1.5% AC)でも、試験2Bの膜性能は大幅に高いことが示されている。どちらの場合も、安定したろ過性能を達成した。第1の実施例と同様の傾向が測定された。
【0154】
UFを用いたMF透過液の濃縮の結果
表10は、到達した濃縮係数と試験中の平均流量を示す。結果は、発酵ブロスの前処理の利点を明らかに示す。発酵ブロスを前処理した場合、濃縮係数は13倍高くなり、同様に膜性能は5倍高くなる。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
表11は、膜再生データを提供し、選択された膜が試験2Aのようにひどく汚れていても簡単に再生できることを示す。
【0159】
【0160】
表12(前のページを参照)は、APHA、乾燥含有量、タンパク質及びバニリンについての両方の試験の物質収支を示す。前処理後の透過液(試験2B)では、試験2A(前処理なし)と比較して、APHAは2分の1に減少し、タンパク質の濃度は19分の1に減少する。試験2Bにおける乾燥含有量はわずかに高くなり、溶解成分がより低い保持率で膜を通過することを示している。試験2Bのバニリン回収率は97%で、試験2Aの66%よりも著しく高かった。試験2Bのその保持率は、試験2Aの33に対して、5%であった。
【0161】
図6は、両方の試験の濃縮係数の関数としての流量の傾向を提供する。試験2Bの膜性能は、CF 2.9後の試験2Aよりも、CF 39後でも2.5倍高かった。各再始動後に流量は増加したが、比較的早く以前の値に達した。
【0162】
まとめ:前処理の利点
バイオマス分離:
・流量が70%高い
・膜の長さによる圧力差の15%低下
・透過液中のタンパク質が15分の1に減少
・APHAが3分の1に低下
・透過液のバニリン収率が少なくとも10%高い
【0163】
高分子のUF分離:
・供給物の濃縮係数が13倍高い
・平均流量が5倍高い
・APHAが2分の1に低下
・透過液中のタンパク質が19分の1に減少
・バニリン収率が大幅に高い(97%対67%)
【0164】
[実施例3]
この実施例では、バニリン分離に対する活性炭(AC)濃度の依存性を調査した。AC濃度を、試験3Aで0.7%に調整し、試験3Bで1.5%に調整した。その上、バイオマス分離の手順を改変した。第1の膜ろ過では、DF=5の後、追加のCFステップをユニットの死容積に達するまで実施した(試験3AのCF=2.65、試験3BのCF=2.71)。
【0165】
UFステップの手順の変更はなかった。
【0166】
溶解成分からのバイオマスの分離の結果(MF)
表13は、2つのAC濃度の発酵ブロスのセラミック膜を用いたバイオマス分離の性能データを示す:試験3A:AC=0.7%及び試験3B:AC=1.5%。膜性能が両方の試験で類似しており、すでに0.7% ACが膜性能を大幅に改善することを示している。(実施例1及び2の結果を比較する)。
【0167】
【0168】
表14は、両方の試験の膜再生データを示す。試験3Bでわずかに優れた性能が得られた。
【0169】
【0170】
表15(次のページを参照)は、APHA、タンパク質、溶解成分の乾燥含有量、及びバニリンについての両方の試験の物質収支を示す。データは、より高いAC濃度(1.5% ACを用いた試験3B)を用いた前処理により、色成分がはるかに多く減少することを明らかに示す。前処理した発酵ブロスの色成分の濃度(APHAとして)は、0.7% ACを使用する場合にすでに4分の1に降下し、1.5% ACを添加する場合に12分の1に降下する。MFプロセスの間にさらに色の減少が達せられ、1.5% ACを使用する場合、透過液のAPHA値は0.7% ACを使用する場合の2分の1に低下する。
【0171】
前処理(酸性条件及びAC)に応じて、溶解したタンパク質の濃度は、AC濃度と関係なく、前処理した発酵ブロスですでに8分の1に降下する。MFプロセスの間にさらにタンパク質の減少が起こり、0.7% ACを使用する場合に透過液のタンパク質が約50%減少し、1.5% ACを使用する場合にタンパク質が約70%減少する。
【0172】
【0173】
DFステップの間に、タンパク質及び色成分は再溶解しておらず、それらの濃度がさらに減少しているため、よりきれいな透過液が得られる。
【0174】
両方の保持液中のバニリンは検出限界未満であり、DF=5とそれに続くCF=2.5からなる膜手順が、透過液中のバニリン収率が>98%に達することを示している。このような高収率は、前の実施例ですでに観察されていた。それにもかかわらず、ACはバニリンを吸着し、バニリンはDFステップの間にダイアフィルトレーション媒体として脱イオン水で洗い流す。
【0175】
図7は、両方の試験の相対透過液量の関数としての流量の傾向を示す。傾向から、両方の流量は実質的に等しく、AC濃度が高くても流量が高くならないことが示されている。相対透過液量が4に達した場合に開始する最終濃縮ステップの間、流量は一定のままである。
【0176】
まとめ:
・発酵ブロスの前処理(酸性化及びAC添加)により、流量が高くなる。しかしながら、0.7% AC及び1.5% ACの両方の試験で、膜性能に有意差は観察されなかった
・前処理は、発酵ブロス中に存在する色成分及びタンパク質の減少に非常に効果的である
・AC濃度が増加すると、色の減少(APHA)が増加する
・タンパク質の減少は、両方のAC濃度で類似している
・クロスフローろ過(MF)により、色及びタンパク質の膜をさらに減少させることができる
・バニリンがACに吸着しても、透過液中のバニリン収率がほぼ100%に達することが可能である。ダイアフィルトレーション及び濃縮ステップを適切に調整することにより、透過液の量を減少させることができる。
【0177】
引用文献
- CN105132472
- CN105219806
- EP 2 379 708
- EP1081212
- EP2583744
- KR10-1163542
- US20110028759
- US6133033- CN105132472,
- US9115377
- Vandamme & Soetart, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 77:1323-1332 2002
- WO2007099230
- WO2015002528
- WO2020/223417
- WO2020/223418
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、以下のステップ:
(1) バイオマス及び1種以上のアロマ化合物を含む溶液を用意するステップ、
(2) 好ましくはバイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、必要に応じて溶液のpH値を7.0未満に設定するステップ、
(3) バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を加えるステップ、並びに
(4) 第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を
この順で含み、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではない、方法。
【請求項2】
溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲のpH値に低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸が、H
2SO
4、H
3PO
4、HCl、HNO
3及びCH
3CO
2Hからなる群から選択される酸である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、0.3重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.4重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で加えられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の膜ろ過が、クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過が、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲のクロスフロー速度を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記クロスフロー速度が3m/s以下であり、好ましくは高分子膜では1.7m/s以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の膜ろ過が、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の膜ろ過が、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過若しくは限外ろ過膜を用いて実施される、又は前記第1の膜ろ過が、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜若しくは高分子限外ろ過膜を用いて実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過、任意選択で続いて逆浸透を実施するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の膜ろ過が、5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のアロマ化合物が、好ましくはアンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択され、より好ましくはバニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択される、少なくとも1種の極性アロマ化合物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
処理装置であって、i)バイオマス、少なくとも1種の吸着剤及び少なくとも1種のアロマ化合物を含有する溶液で満たされた容器であり、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではなく、溶液のpH値が7.0未満である、容器、ii.)精密ろ過又は限外ろ過膜である第1のろ過膜、iii.)精密ろ過又は限外ろ過である前記第1のろ過膜を横切って第1の膜ろ過を実施して、アロマ化合物のバルクを含有する透過液を生成する手段であり、処理装置が、第1の膜ろ過中に溶液を8℃~55℃の範囲の温度にする手段をさらに含む、手段、並びにiv.)上記i).に記載されているように溶液から第1の膜ろ過の透過液を分離する手段、v.)第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、vi.)透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、vii.)第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、viii.)第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びにix.)第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離しておく手段、並びに任意選択でx)第2の膜ろ過の透過液の逆浸透処理を実施する手段を含み、
溶液又は透過液のいずれかと接触している処理装置の部品の表面は、pH3.5という低いpH値に耐性があり、任意選択で食品等級物質の製造に適した材料でできている、処理装置。
【請求項15】
少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からのバイオマスの分離に使用される膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らす方法であって、
i. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液を用意するステップ、
ii. 溶液のpH値を3.0~5.5の範囲のpH値に調整するステップ、
iii. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液に1種以上の吸着剤を、好ましくは0.5重量%~3重量%の範囲の量で加えるステップ、
iv. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
v. 第1の膜ろ過を、3m/s以下のクロスフロー速度で実施して少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ、
vi. 任意選択で、第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過を実施するステップ
を
この順で含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0177】
引用文献
- CN105132472
- CN105219806
- EP 2 379 708
- EP1081212
- EP2583744
- KR10-1163542
- US20110028759
- US6133033- CN105132472,
- US9115377
- Vandamme & Soetart, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 77:1323-1332 2002
- WO2007099230
- WO2015002528
- WO2020/223417
- WO2020/223418
(付記)
(付記1)
バイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離する方法であって、以下のステップ:
(1) バイオマス及び1種以上のアロマ化合物を含む溶液を用意するステップ、
(2) 好ましくはバイオマス及び少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の酸を加えることにより、必要に応じて溶液のpH値を7.0未満に設定するステップ、
(3) バイオマス及びアロマ化合物を含む溶液に少なくとも1種の吸着剤、好ましくは活性炭を加えるステップ、並びに
(4) 第1の膜ろ過、好ましくは精密ろ過又は限外ろ過を実施して、少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ
を含み、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではない、方法。
(付記2)
溶液のpH値を3.0~5.5の範囲、好ましくは3.5~5の範囲、より好ましくは4.0~4.5の範囲のpH値に低下させる、請求項1に記載の方法。
(付記3)
前記少なくとも1種の酸が、H
2
SO
4
、H
3
PO
4
、HCl、HNO
3
及びCH
3
CO
2
Hからなる群から選択される酸である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
(付記4)
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、0.3重量%~3重量%の範囲、好ましくは0.4重量%~2.5重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で加えられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
前記吸着剤、好ましくは活性炭が、2μm~25μmの範囲、好ましくは3μm~20μmの範囲、より好ましくは3μm~7μmの範囲の直径d50の粒径分布をもつ粉末として加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記第1の膜ろ過が、クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過として実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
前記クロスフロー精密ろ過又はクロスフロー限外ろ過が、0.5m/s~6.0m/sの範囲、好ましくは2.0m/s~5.5m/sの範囲、より好ましくは3.0m/s~4.5m/sの範囲のクロスフロー速度を含む、請求項6に記載の方法。
(付記8)
前記クロスフロー速度が3m/s以下であり、好ましくは高分子膜では1.7m/s以下である、請求項6に記載の方法。
(付記9)
前記第1の膜ろ過が、8℃~55℃の範囲、好ましくは10℃~50℃の範囲、より好ましくは30℃~40℃の範囲の溶液の温度で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
前記第1の膜ろ過が、20nm~800nmの範囲、好ましくは40nm~500nmの範囲、より好ましくは50nm~200nmの範囲の孔径を有するセラミック精密ろ過若しくは限外ろ過膜を用いて実施される、又は前記第1の膜ろ過が、カットオフが10kDa~200nmの範囲、好ましくは50kDa~200nmの範囲、より好ましくは50kDa~100nmの範囲の高分子精密ろ過膜若しくは高分子限外ろ過膜を用いて実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過、任意選択で続いて逆浸透を実施するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
前記第2の膜ろ過が、5℃~15℃の範囲、好ましくは8℃~13℃の範囲、より好ましくは8℃~12℃の範囲である溶液の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
(付記13)
前記少なくとも1種のアロマ化合物が、好ましくはアンブロックス、アンブロックス-1,4-ジオール、フラネオール、安息香酸、フェニルエタノール、ラズベリーケトン、ピラジン、スクラレオール、バニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択され、より好ましくはバニリン、バニリルアルコール及びバニラグリコシドから選択される、少なくとも1種の極性アロマ化合物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
処理装置であって、i)バイオマス、少なくとも1種の吸着剤及び少なくとも1種のアロマ化合物を含有する溶液で満たされた容器であり、少なくとも1種のアロマ化合物が、1つのグリコシド結合を有するか又はグリコシド結合を有さず、タンパク質ではなく、溶液のpH値が7.0未満である、容器、ii.)精密ろ過又は限外ろ過膜である第1のろ過膜、iii.)精密ろ過又は限外ろ過である前記第1のろ過膜を横切って第1の膜ろ過を実施して、アロマ化合物のバルクを含有する透過液を生成する手段であり、処理装置が、第1の膜ろ過中に溶液を8℃~55℃の範囲の温度にする手段をさらに含む、手段、並びにiv.)上記i).に記載されているように溶液から第1の膜ろ過の透過液を分離する手段、v.)第1の膜ろ過の前記透過液を第2のろ過膜に移送する手段、vi.)透過液の温度を20℃未満の温度に調整する手段、vii.)第2のろ過膜、好ましくは限外ろ過膜、viii.)第2の膜ろ過、好ましくは限外ろ過を20℃未満の温度で実施する手段、並びにix.)第2の膜ろ過の透過液を第1の膜ろ過の透過液から分離しておく手段、並びに任意選択でx)第2の膜ろ過の透過液の逆浸透処理を実施する手段を含み、
溶液又は透過液のいずれかと接触している処理装置の部品の表面は、pH3.5という低いpH値に耐性があり、任意選択で食品等級物質の製造に適した材料でできている、処理装置。
(付記15)
少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からのバイオマスの分離に使用される膜ろ過装置の摩滅及び/又はエネルギー消費を減らす方法であって、
i. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液を用意するステップ、
ii. 溶液のpH値を3.0~5.5の範囲のpH値に調整するステップ、
iii. バイオマス及びアロマ化合物(複数可)を含む溶液に1種以上の吸着剤を、好ましくは0.5重量%~3重量%の範囲の量で加えるステップ、
iv. 任意選択で、1種以上の吸着剤が溶液中の色成分に結合するのに十分なインキュベーションステップ、並びに
v. 第1の膜ろ過を、3m/s以下のクロスフロー速度で実施して少なくとも1種のアロマ化合物を含む溶液からバイオマスを分離するステップ、
vi. 任意選択で、第1の膜ろ過によって得られたアロマ化合物を含む溶液を用いた第2の膜ろ過、好ましくは、第1の膜ろ過の膜よりもカットオフが低い膜を用いた限外ろ過を実施するステップ
を含む、方法。
【国際調査報告】