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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(54)【発明の名称】消音組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20230711BHJP
   C09D 201/08 20060101ALI20230711BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230711BHJP
   C08K 5/3412 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L101/08
C09D201/08
C09D5/02
C08K5/3412
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562577
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2020084686
(87)【国際公開番号】W WO2021207927
(87)【国際公開日】2021-10-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】チィ,ヤーロン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ホンユー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BG01W
4J002BG01X
4J002BG04W
4J002BG04X
4J002EU016
4J002FD146
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002HA07
4J038BA021
4J038CG141
4J038CG142
4J038HA166
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA17
4J038NA27
4J038PB07
(57)【要約】
消音組成物は、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物;および水を含む。異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーと、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物との間の反応は、IPN構造を形成するため、該消音組成物の硬化生成物は、効果的な減衰について幅広い温度範囲を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a)異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;
b)1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物、ここで、該アジリジニル基は互いに同一又は異なっていてよく、独立して、構造(I):
【化1】
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはC1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、好ましくは水素またはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくは水素またはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基である]
で表される;および
c)水;
を含む消音組成物。
【請求項2】
異なるガラス転移温度を有する前記カルボキシル官能性ポリマーは、-40~60℃の範囲内のT値を好ましくは有する、請求項1に記載の消音組成物。
【請求項3】
異なるガラス転移温度を有する前記少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーは、好ましくは互いに部分的に相溶性または非相溶性である、請求項1または2に記載の消音組成物。
【請求項4】
異なるガラス転移温度を有する前記少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーは、好ましくは水分散性または水溶性、より好ましくは水分散性である、請求項1~3のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項5】
前記有機化合物は、1分子あたり少なくとも3つのアジリジニル基を好ましくは含む、請求項1~4のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項6】
1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物は、構造(II):
【化2】
[式中、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、好ましくは水素またはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくは水素またはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基であり;
およびRは、それぞれ独立に、C1-20の場合により置換された二価の炭化水素基、好ましくはC1-10の場合により置換された二価の炭化水素基、より好ましくはC1-の場合により置換された二価の炭化水素基であり;
は、C1-20の場合により置換された二価または多価の炭化水素基、好ましくはC1-10の場合により置換された二価または多価の炭化水素基、より好ましくはC1-の場合により置換された二価または多価の炭化水素基であり;かつ
xは2~4の整数である]
で表される、請求項1~5のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項7】
改善すべき前記消音組成物の硬化生成物の損失係数が0~60℃の間である場合、構造(I)または(II)におけるRおよびRは、好ましくは両方とも水素である、請求項1~6のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項8】
改善すべき前記消音組成物の硬化生成物の損失係数が-40~0℃の間である場合、構造(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、好ましくは、C1-20の場合により置換された一価の炭化水素基であり、より好ましくは、C1-10の場合により置換された一価の炭化水素基であり、さらにより好ましくは、C1-の場合により置換された一価の炭化水素基である、請求項1~7のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項9】
異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーと、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物との間の重量比は、好ましくは100:0.5~100:50、より好ましくは100:1~100:25、さらにより好ましくは100:8~100:12である、請求項1~8のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの増粘剤、および/または少なくとも1つの消泡剤、および/または少なくとも1つのフィラー、および/または少なくとも1つの腐食防止剤、および/または少なくとも1つのpH調整剤をさらに含む、および/または、少なくとも1つの難燃剤が消音組成物中にさらに存在する、請求項1~9のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項11】
5~35重量%の異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;
0.1~5重量%の1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物;
10~60重量%の水;
0~30重量%の少なくとも1つの増粘剤;
0~2重量%の少なくとも1つの消泡剤;
0~10重量%の少なくとも1つのフィラー;
0~40重量%の少なくとも1つの難燃剤;
0~10重量%の少なくとも1つの腐食防止剤;および
0~5重量%の少なくとも1つのpH調整剤;
を含み、ここで、全ての成分の重量パーセントは合計して100重量%である、請求項1~10のいずれかに記載の消音組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の消音組成物の硬化生成物。
【請求項13】
請求項12に記載の消音組成物の硬化生成物で被覆または充填された物品。
【請求項14】
異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー、および、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物を、少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つのpH調整剤、少なくとも1つのフィラー、少なくとも1つの難燃剤、少なくとも1つの腐食防止剤、および少なくとも1つの消泡剤などの任意の添加剤と共に、水中で均一に混合するステップを含む、請求項1~13のいずれかに記載の消音組成物の製造方法。
【請求項15】
以下のステップ:
a)消音組成物を室内条件に1~4時間暴露するステップ;
b)該消音組成物を40~80℃で2~6時間加熱するステップ;および
c)該消音組成物を冷却し、該消音組成物を5~10日間で硬化させるステップ
を含む、請求項1~14のいずれかに記載の消音組成物の硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物;および水を含む消音組成物(sound deadener composition)に関する。本発明による消音組成物の硬化生成物は、有効な制振のための広い温度範囲を示す。
【背景技術】
【0002】
ゴム製の制振材は、振動の減衰や騒音の低減に使用されることが知られている。これは、組成物に含まれるゴムの粘弾性特性を利用して、ポリマー鎖の内部分子運動によって引き起こされる内部摩擦を通じて、外部の機械的振動または音響振動によって生成される機械的エネルギーを分散させる。通常、tanδは材料の減衰能力の有効性を示す指標であり、損失係数としても知られている。tanδが大きいほど、減衰係数が大きくなる。制振材の減衰係数が大きくなる温度域が、有効制振温度域である。
【0003】
制振材は、機械分野、建設、自動車産業などで広く使用されている。しかし、従来の制振材は単一のゴムでしか作られていないため、有効な制振温度範囲が狭く、航空機やロケットなどの、さまざまな温度で優れた制振効果を発揮する制振材が求められるハイテク分野では使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、有効な制振について広い温度範囲を有する消音組成物およびその硬化物の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を含む消音組成物に関する:
a)異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;
b)1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物;
ここで、該有機化合物の該アジリジニル基は互いに同一又は異なっていてよく、独立して構造(I):
【化1】
で表される;および
c)水;
ここで、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはC1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、好ましくは水素またはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくは水素またはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基である。
【0006】
本発明は、該消音組成物の硬化生成物にも関する。
【0007】
消音組成物の硬化生成物は、有効な制振について広い温度範囲を有する。
【0008】
本発明は、消音組成物の硬化生成物で被覆または充填された物品にも関する。
【0009】
本発明はまた、消音組成物の製造方法および硬化方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明をより詳細に説明する。そのように記載された各態様は、そうでないことが明確に示されない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0011】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈が別段の指示をしない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0012】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他の指示をしない限り、単数形および複数形の両方を含む。
【0013】
本明細書で使用される「含む」、「含む」および「含んでなる」という用語は、「含む」、「含む」または「含有する」、「含有する」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバー、要素、またはプロセスステップを排除するものではない。
【0014】
数値エンドポイントの記載には、記載されたエンドポイントだけでなく、それぞれの範囲内に含まれるすべての数値と分数が含まれる。
【0015】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなるガイダンスにより、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
【0017】
この開示の文脈において、多くの用語が利用されるものとする。
【0018】
「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方またはいずれかを指す。
【0019】
「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の両方またはいずれかを指す。
【0020】
「エチレン性不飽和」という用語は、芳香族ではない、少なくとも不飽和の部位を指す。
【0021】
「炭化水素基」という用語は、炭素および水素からなる有機基を指す。炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、および同様の基等のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、および同様の基等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)プロピル、および同様の基等のアラルキル基;フェニル、トリル、キシキシルおよび同様の基等のアリール基;または、メチリデン、エチリデン、プロピリデンおよび同様の基等のアルキリデン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「場合により置換された炭化水素基」の用語における「場合により置換された」は、炭化水素基上の1つ以上の水素が、好ましくはハロゲン、ニトロ、アジド、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、エステル、シアノ、スルフィド、サルフェート、スルホキシド、スルホン、スルホン基などから選択される、対応する数の置換基で置換されていてよいことを意味する。
【0023】
「実質的に含まない」という用語は、材料または官能基が付随的な量で存在し得ること、または、特定の発生または反応が、所望の特性に影響を与えない、重要ではない程度でしか起こらないことを意味する。言い換えると、材料または官能基は、示された組成物に意図的に追加されたものではないが、例えば、意図した組成成分の一部として不純物として持ち越されたなどの理由で、少量または重要でないレベルで存在してよい。
【0024】
「水溶性」という用語は、組成物の関連成分または原料が分子レベルで水相に溶解できることを意味する。
【0025】
「水分散性」という用語は、組成物の関連成分または原料が水相に分散でき、安定なエマルジョンまたは懸濁液を形成できることを意味する。
【0026】
「ガラス転移温度」という用語は、ポリマーが高弾性状態とガラス状態との間で転移する温度を指す。ガラス転移温度は、例えば動的機械分析(DMA)によって測定できる。
【0027】
〔カルボキシル官能性ポリマー〕
本発明の消音組成物は、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーを含む。本発明の消音組成物は、異なるTを有する2つのカルボキシル官能性ポリマー、異なるTを有する3つのカルボキシル官能性ポリマー、異なるTを有するさらに多くのカルボキシル官能性ポリマーを有していてもよい。異なるガラス転移温度(T)を有するカルボキシル官能性ポリマーは、互いに部分的に相溶性または非相溶性であることが好ましい。
【0028】
カルボキシル官能性ポリマーは、少なくとも1つのカルボキシル官能基を有する、当技術分野で知られている任意の一般的なカルボキシル官能性ポリマーであり得る。異なるガラス転移温度を有するカルボキシル官能性ポリマーは、好ましくは水溶性または水分散性であり、水溶性または水分散性のモノマーおよびそれらの組み合わせから、ならびに場合により水不溶性のモノマーから誘導される。異なるガラス転移温度を有するカルボキシル官能性ポリマーは、開始剤の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸モノマーを重合することにより得ることができる。適当なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、これらに限定されないが、アクリル酸、氷アクリル酸、メタクリル酸、イソオクチルアクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、メタクリル酸無水物、イソオクチルアクリル酸無水物、クロトン酸無水物、フマル酸無水物、マレイン酸無水物、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。適当な開始剤は、過酸化アセチル、過酸化ジクミル(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシン(DBPH)、過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド(DCBP)、tert-ブチルパーオキシピバレート(BPP)、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート(DCPD)、過硫酸カリウム(KSP)、過硫酸アンモニウム(ASP)等のペルオキシド開始剤;2,2’-アゾ-ビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾ-ビス-イソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル等のアゾ化合物開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸開始剤から選択され得る。開始剤は、単独でまたは任意の組み合わせで使用できる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、異なるガラス転移温度(T)を有するカルボキシル官能性ポリマーは、1分子あたり少なくとも2つのカルボキシル官能基を好ましくは有する。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、異なるガラス転移温度(T)を有するカルボキシル官能性ポリマーは、水溶性であるよりも水分散性であることがより好ましい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、異なるガラス転移温度を有するカルボキシル官能性ポリマーは、好ましくは、-40℃~60℃の範囲、例えば、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、および60℃のT値を有する。
【0032】
市販され入手可能なカルボキシル官能性ポリマーの例は、例えば、Dowからの、Acousticryl AV 1331、Acousticryl AV 1220、およびPrimal SD68である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の、異なるガラス転移温度(T)を有するカルボキシル官能性ポリマーの量は、該消音組成物の総重量に基づいて5重量%~35重量%、好ましくは10重量%~25重量%である。
【0034】
〔少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物〕
本発明の消音組成物は、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物を含む。1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物は、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーを連結し、相互貫入(interpenetrating)ポリマーネットワーク(IPN構造)を形成する働きをする。IPN構造が形成されるメカニズムを以下に示す:
【化2】
【0035】
本発明の有機化合物のアジリジニル基は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立に構造(I):
【化3】
[式中、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、好ましくは水素またはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくは水素またはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基である]
で表される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物は、好ましくは、構造(II):
【化4】
[式中、
およびRは、それぞれ独立に、水素またはC1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、好ましくは水素またはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくは水素またはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基であり;
およびRは、それぞれ独立に、C1-20の場合により置換された二価の炭化水素基、好ましくはC1-10の場合により置換された二価の炭化水素基、より好ましくはC1-の場合により置換された二価の炭化水素基であり;
は、C1-20の場合により置換された二価または多価の炭化水素基、好ましくはC1-10の場合により置換された二価または多価の炭化水素基、より好ましくはC1-の場合により置換された二価または多価の炭化水素基であり;かつ
xは2~4の整数である]
で表される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、有機化合物は、好ましくは、1分子当たり少なくとも3つのアジリジニル基を含む。
【0038】
1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物の具体例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【化5】
または、
【化6】
または、
【化7】
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、改善すべき前記消音組成物の硬化生成物の損失係数が0~60℃の間である場合、構造(I)または(II)におけるRおよびRは、両方とも水素であることが好ましい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、改善すべき前記消音組成物の硬化生成物の損失係数が-40℃~0℃の間である場合、構造(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、好ましくは、C1-20の場合により置換された一価の炭化水素基、より好ましくはC1-10の場合により置換された一価の炭化水素基、さらにより好ましくはC1-の場合により置換された一価の炭化水素基である。
【0041】
市販され入手可能な、1分子当たり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物の例は、例えば、Shanghai Zealchem Co., Ltd.からの、XC-103、XC-105、およびXC-113である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーと、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物との間の重量比は、前記消音組成物の硬化生成物の損失係数がより改善されるために、好ましくは100:0.5~100:50、より好ましくは100:1~100:25、さらにより好ましくは100:8~100:12である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、消音組成物中の、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物の量は、消音組成物の総重量に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.3~3重量%である。
【0044】
〔水〕
本発明の消音組成物は、組成物の粘度を調整するために水を含む。本発明の水は、精製水であることが好ましい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の水の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、10~60重量%、例えば20重量%、30重量%、40重量%、および50重量%である。
【0046】
〔追加の添加剤〕
本発明の消音組成物は、任意の添加剤をさらに含んでもよい。本発明の消音組成物に適した添加剤の選択は、該消音組成物の特定の意図された用途に応じて決めることができ、個々の場合において当業者によって決定され得る。
【0047】
<増粘剤>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つの増粘剤をさらに含んでもよい。増粘剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコールおよびポリリン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0048】
市販され入手可能な増粘剤の例は、例えば、RettenmaierからのArbocel ZZ 8/1;Mikro TechnikからのCMC type 75 A powder;Ashland AqualonからのNatrosol 250 HHR;および、CP KelcoからのKelzan キサンタンガムである。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の増粘剤の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~30重量%、好ましくは0.1~1重量%である。
【0050】
<消泡剤>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つの消泡剤をさらに含んでもよい。例示的な消泡剤には、シリコーン系消泡剤およびアクリル系消泡剤が含まれるが、これらに限定されない。消泡剤は、単独で、または組み合わせて使用できる。
【0051】
市販され入手可能な消泡剤の例は、例えば、BYK-Chemie GmbHからのBYK-051、BYK-052、BYK-053、BYK-054、BYK-055;Kusumoto Chemicals, Ltd.からのDISPARLON 1930NおよびDISPARLON 1934;ならびにBASFからのFoamaster MO NXZである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の消泡剤の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~2重量%、好ましくは0.1~1重量%である。
【0053】
<腐食防止剤>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つの腐食防止剤をさらに含んでもよい。腐食防止剤の例としては、シクロヘキシルアミン、リン酸二アンモニウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸二カリウム、リン酸二カリウム、リン酸、リン酸ニッケル、およびリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。腐食防止剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0054】
市販され入手可能な腐食防止剤の例は、例えば、Polygon Chemie AGからの、PCG 1201、PCG1909、およびPCG 2390である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の腐食防止剤の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.1~5重量%である。
【0056】
<難燃剤>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つの難燃剤をさらに含んでもよい。難燃剤の例としては、リン系の可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および熱膨張性グラファイトが挙げられるが、これらに限定されない。難燃剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0057】
市販され入手可能な難燃剤の例は、例えば、Shanghai Jianghu Industry Co.,Ltd.からの水酸化アルミニウム;Shijiazhuang ADT Carbonic Material FactoryからのADT 20、ADT 150、およびADT 802;Qingdao Tianheda Graphite Co., LtdからのCX150、CX 200、およびCX 325である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中の難燃剤の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~40重量%、好ましくは15~30重量%である。
【0059】
<pH調整剤>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つのpH調整剤をさらに含んでもよい。pH調整剤の例としては、クエン酸無水物、アルカリ金属水酸化物、および緩衝有機酸溶液(例えば、酢酸、グルタミン酸、およびクエン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。pH調整剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0060】
市販され入手可能なpH調整剤の例は、例えば、Redox Chemicals Pty. Ltd.からのピロリン酸四カリウム;およびShowa Denkoからのアンモニア水である。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中のpH調整剤の量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~5重量%、好ましくは0.1~2重量%である。
【0062】
<フィラー>
本発明の消音組成物は、少なくとも1つのフィラーをさらに含んでもよい。フィラーの例としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、結晶シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、およびカーボンブラックなどの強化フィラー;アスベスト、ガラス繊維、およびフィラメントなどの繊維状フィラー;ならびに、粉砕炭酸カルシウム、コロイド状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、珪藻土、焼き粘土、粘土、タルク、バライト、無水石膏、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウムファインパウダー、フリントパウダー、酸化亜鉛、活性亜鉛華、雲母、亜鉛華、白鉛などのその他の充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。フィラーは、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0063】
市販され入手可能なフィラーの例は、例えば、Saint-Gobainからのグラスファイバー4.5mm;Ziegler & Co. GmbHからのマスコバイトマイカ 247;Fengxian Bazi Shifenからの炭酸カルシウム;および、Evonik Specialty Chemicals (Shanghai) Co, Ltd.からのAEROSIL R 974である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物中のフィラーの量は、該消音組成物の総重量に基づいて、0~40重量%、好ましくは5~25重量%である。
【0065】
本発明の消音組成物に使用できる他の任意の添加剤としては、酸化防止剤;殺生物剤;染料;顔料;およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明の消音組成物は以下:
5~35重量%の、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマー;
0.1~5重量%の、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物;
10~60重量%の水;
0~30重量%の少なくとも1つの増粘剤;
0~2重量%の少なくとも1つの消泡剤;
0~10重量%の少なくとも1つのフィラー;
0~40重量%の少なくとも1つの難燃剤;
0~10重量%の少なくとも1つの腐食防止剤;および
0~5重量%の少なくとも1つのpH調整剤;
を含み、ここで、全ての成分の重量パーセントは合計して100重量%である。
【0067】
本発明の消音組成物は、異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーおよび1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物を、少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つのpH調整剤、少なくとも1つのフィラー、少なくとも1つの難燃剤、少なくとも1つの腐食防止剤、および少なくとも1つの消泡剤などの、任意の添加剤と共に、水中で均一に混合することによって製造してよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の消音組成物は、好ましくは、以下のステップによって製造される:
a)異なるガラス転移温度(T)を有する少なくとも2つのカルボキシル官能性ポリマーを、水中で、少なくとも1つの増粘剤および/または少なくとも1つのpH調整剤と混合し、ゲルを得るステップ;
b)該ゲルに、少なくとも1つのフィラー、および/または少なくとも1つの難燃剤、および/または少なくとも1つの腐食防止剤、および/または少なくとも1つの消泡剤を加え、全ての成分をよく混合してプレ-ミキサーを得るステップ;および
c)該プレ-ミキサーに、1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する少なくとも1つの有機化合物を加え、真空下ですべての成分をよく混合するステップ。
【0069】
本発明の消音組成物は、スカーパー、噴霧器または押出機により、基材表面に塗布され、室温で硬化させることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の消音組成物の硬化は、以下のステップを含んでいてよい:
a)消音組成物を室内条件に1~4時間暴露するステップ;
b)該消音組成物を、40~80℃の温度範囲で2~6時間加熱するステップ;および
c)該消音組成物を冷却し、室温で5~10日間放置し、消音剤を硬化させるステップ。
【0071】
本発明における前記消音組成物の硬化生成物の損失係数は、GB/T 16406に従って測定できる。
【0072】
本発明の消音組成物の硬化生成物は、カルボキシル官能性ポリマーのT値の間の温度で測定した場合に、改善された損失係数を有する。本発明の消音組成物の硬化生成物は、同一のカルボキシル官能性ポリマーを含有するが組成物中に1分子あたり少なくとも2つのアジリジニル基を有する有機化合物を含有しない消音組成物の硬化生成物について測定したベンチマーク損失係数と比較して、好ましくは10%以上の損失係数の改善率を有し、より好ましくは20%以上の損失係数の改善率を有し、さらにより好ましくは40%以上の損失係数の改善率を有する。
【実施例
【0073】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明および例示する。実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実施するのを助けることを意図しているが、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。特記しない限り、実施例中のすべての数値は重量に基づく。
【0074】
〔実施例1-8〕
実施例において以下の材料を使用した。
水;
ピロリン酸四カリウム(Redox Chemicals Pty. Ltd.製);
Arbocel ZZ 8/1(天然セルロース繊維、Rettenmaier製);
グラスファイバー(4.5mm長、Saint Gobain Vetrotex製);
Acousticryl AV 1331(50重量%のアクリルポリマーおよび50重量%の水を含有する、16℃のT値を有するアクリルエマルジョン、Dow製);
Acousticryl AV 1220(50重量%のアクリルポリマーおよび50重量%の水を含有する、0℃のT値を有するアクリルエマルジョン、Dow製);
Primal SD 68(50重量%のアクリルポリマーおよび50重量%の水を含有する-20℃のT値を有するアクリルエマルジョン、Dow製);
XC-103(トリメチロールプロパントリス(3-アジリジニルプロパノエート)、Shanghai Zealchem Co., Ltd.製);
XC-113(トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)、Shanghai Zealchem Co., Ltd. 製);
Foamaster MO NXZ(消泡剤、BASF製);
CMCタイプ75A粉末(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、Mikro Technik製);
Natrosol 250 HHR(ヒドロキシエチルセルロース、Ashland Aqualon製);
マスコバイトマイカ 247(マイカ、Ziegler & Co. GmbH製);
マスコバイトマイカ N800(マイカ、Ziegler & Co. GmbH製);
水酸化アルミニウム(Shanghai Jianghu Industry製);
炭酸カルシウム(Fengxian Bazi Shifen製);
PCG 1201(腐食防止剤、Polygon Chemie製);および
Kelzan キサンタンガム(CP Kelco製)。
【0075】
消音組成物を実験例(Ex.)に示すように調製した。
【0076】
<Ex.1>
Acousticryl AV 1331(15g)、Acousticryl AV 1220(8g)、Primal SD68(15g)、Arbocel ZZ 8/1(0.6g)、CMCタイプ75A粉末(0.1g)、Natrosol 250 HHR(0.1g)、Kelzanキサンタンガム(0.1g)、ピロリン酸四カリウム(0.3g)を、水(4.6g)中、1750r/分のスピードで30分間、ミキサー(EUROATAR 60 digital、IKA製)で共に混合し、ゲルを得た。
【0077】
該ゲルに、グラスファイバー(0.8g)、Foamaster MO NXZ(0.1g)、マスコバイトマイカ247(27g)、炭酸カルシウム(10g)、水酸化アルミニウム(15g)、およびPCG 1201(0.3g)を添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、1000r/分のスピードで30秒間混合し、プレミキサーを得た。
【0078】
該プレ-ミキサーを、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、真空下で、2000r/分のスピードで60秒間混合してさらにブレンドし、Ex.1の消音組成物を得た。
【0079】
Ex.1の硬化した消音組成物の損失係数L(ベンチマーク損失係数)をGB/T 16406に従って測定した。B&K装置を使用して損失係数を試験し、カンチレバービーム法を適用した。試験片は、Ex.1の消音組成物を冷間圧延鋼(長さ200mm、幅10mm、および厚さ1mm)の表面に塗布して作製した。
【0080】
消音組成物は、以下のステップにより硬化させた:
a)消音組成物を冷間圧延鋼の上に室温で2時間放置するステップ;
b)消音組成物を60℃で4時間加熱するステップ;および
c)消音組成物を冷却し、室温で7日間放置し、消音組成物を硬化させるステップ。
【0081】
冷間圧延鋼上の硬化した消音組成物の寸法は、厚さ2mmおよび180mmフリー長を有する。
【0082】
損失係数の改善率M1は、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0083】
<Ex.2>
Acousticryl AV 1331(15g)、Acousticryl AV 1220(8g)、Primal SD68(15g)、Arbocel ZZ 8/1(0.6g)、CMCタイプ75Aパウダー(0.1g)、Natrosol 250 HHR(0.1g)、Kelzan キサンタンガム(0.1g)、ピロリン酸四カリウム(0.3g)を、水(4.1g)中で、1750r/分のスピードで30分間、ミキサー(EUROATAR 60 digital、IKA製)で共に混合し、ゲルを得た。
【0084】
該ゲルに、グラスファイバー(0.8g)、Foamaster MO NXZ(0.1g)、マスコバイトマイカ 247(27g)、炭酸カルシウム(10g)、水酸化アルミニウム(15g)、およびPCG 1201(0.3g)を添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、1000r/分のスピードで30秒間混合し、プレ-ミキサーを得た。
【0085】
該プレ-ミキサーにXC-103(0.5g)をさらに添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、真空下で、2000r/分のスピードで60秒間混合して、Ex.2の消音組成物を得た。
【0086】
Ex.2の消音組成物を、Ex.1と同様にして放置し硬化させた。Ex.2の硬化した消音組成物の損失係数Lは、Ex.1と同様にして測定した。
【0087】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0088】
<Ex.3>
3.6gの水を使用してゲルを形成し、該ゲルに1gのXC-103を添加して、プレ-ミキサーを形成したこと以外は、Ex.2と同様の方法で、Ex.3の消音組成物を調製した。
【0089】
Ex.3の消音組成物を、Ex.1と同様にして放置し硬化させた。Ex.3の硬化した消音組成物の損失係数Lは、Ex.1と同様にして測定した。
【0090】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
M3=(L-L)/L
【0091】
<Ex.4>
2.6gの水を使用してゲルを形成し、該ゲルに2gのXC-103を添加して、プレ-ミキサーを形成したこと以外は、Ex.2と同様の方法で、Ex.4の消音組成物を調製した。
【0092】
Ex.4の消音組成物を、Ex.1と同様にして放置し硬化させた。Ex.4の硬化した消音組成物の損失係数Lは、Ex.1と同様にして測定した。
【0093】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0094】
<Ex.5>
1.6gの水を使用してゲルを形成し、該ゲルに3gのXC-103を添加して、プレ-ミキサーを形成したこと以外は、Ex.2と同様の方法で、Ex.5の消音組成物を調製した。
【0095】
Ex.5の消音組成物を、Ex.1と同様にして放置し硬化させた。Ex.5の硬化した消音組成物の損失係数Lは、Ex.1と同様にして測定した。
【0096】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0097】
<Ex.6>
Acousticryl AV 1331(15g)、Acousticryl AV 1220(8g)、Primal SD68(15g)、Arbocel ZZ 8/1(0.6g)、CMCタイプ75A粉末(0.1g)、Natrosol 250 HHR(0.1g)、Kelzanキサンタンガム(0.1g)、ピロリン酸四カリウム(0.3g)を、水(4.6g)中、1750r/分のスピードで30分間、ミキサー(EUROATAR 60 digital、IKA製)で共に混合し、ゲルを得た。
【0098】
該ゲルに、グラスファイバー(0.8g)、Foamaster MO NXZ(0.1g)、マスコバイトマイカ N800(27g)、炭酸カルシウム(10g)、水酸化アルミニウム(15g)、および PCG 1201(0.3g)を添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、1000r/分のスピードで30秒間混合し、プレ-ミキサーを得た。
【0099】
該プレ-ミキサーを、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、真空下で、2000r/分のスピードで60秒間、さらにブレンドし、Ex.6の消音組成物を得た。
【0100】
Ex.6の消音組成物を、Ex.1と同様の方法で硬化させた。Ex.6の硬化した消音組成物の損失係数L(ベンチマーク損失係数)をEx.1と同様の方法で測定した。
【0101】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0102】
<Ex.7>
Acousticryl AV 1331(15g)、Acousticryl AV 1220(8g)、Primal SD68(15g)、Arbocel ZZ 8/1(0.6g)、CMCタイプ75A粉末(0.1g)、Natrosol 250 HHR(0.1g)、Kelzanキサンタンガム(0.1g)、ピロリン酸四カリウム(0.3g)を、水(2.6g)中、1750r/分のスピードで30分間、ミキサー(EUROATAR 60 digital、IKA製)で共に混合し、ゲルを得た。
【0103】
該ゲルに、グラスファイバー(0.8g)、Foamaster MO NXZ(0.1g)、マスコバイトマイカ N800(27g)、炭酸カルシウム(10g)、水酸化アルミニウム(15g)、およびPCG 1201(0.3g)を添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、1000r/分のスピードで30秒間混合し、プレ-ミキサーを得た。
【0104】
該プレ-ミキサーに、XC-113(2g)をさらに添加し、スピードミキサー(SpeedMixer DAC 600.2 VAC-P、Flack Tek Inc.製)を用いて、真空下で、2000r/分のスピードで60秒間混合し、Ex.7の消音組成物を得た。
【0105】
Ex.7の消音組成物を、Ex.1と同様の方法で硬化させた。Ex.7の硬化した消音組成物の損失係数LをEx.1と同様の方法で測定した。
【0106】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0107】
<Ex.8>
0.6gの水を使用してゲルを形成し、該ゲルに4gのXC-113を添加して、プレ-ミキサーを形成したこと以外は、Ex.7と同様の方法で、Ex.8の消音組成物を調製した。
【0108】
Ex.8の消音組成物を、Ex.1と同様にして放置し硬化させた。Ex.8の硬化した消音組成物の損失係数LをEx.1と同様にして測定した。
【0109】
損失係数の改善率Mは、以下のようにして算出した:
=(L-L)/L
【0110】
Ex.1~Ex.8の試験結果を表1に示す。XC-103(Ex.2-5)またはXC-113(Ex.7-8)のいずれかを配合した消音組成物は、Ex.1またはEx.6の消音組成物よりも良好な損失係数を有していた。硬化した消音組成物の改善すべき損失係数が10℃におけるものの場合、XC-103を配合した消音組成物がより好ましかった。硬化した消音組成物の改善すべき損失係数が-10℃におけるものの場合、XC-113を配合した消音組成物がより好ましかった。
【0111】
【表1】
【国際調査報告】