(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(54)【発明の名称】自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材
(51)【国際特許分類】
C08L 25/12 20060101AFI20230713BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20230713BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20230713BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230713BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C08L25/12
B60R7/04 C
C08L55/02
C08L67/00
B29B9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559668
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2022002755
(87)【国際公開番号】W WO2022239938
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0059760
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024264
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ、コン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ソンホ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソン-モ
【テーマコード(参考)】
3D022
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CA16
3D022CA22
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3D022CD22
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3D022CD30
4F201AA24
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4J002CF07X
4J002CF08X
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD170
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材に関し、本発明に係る自動車内装材用複合樹脂組成物は、使用する素材が変更されることで、耐熱特性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供する効果がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とする、複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体との重量比が1:1.37~1.66である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)から選択された1種以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記複合樹脂組成物は、SCE方式により求められる試験片を反射した光のLAB表色系で測定したL*値が14.00以下である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径100~500nmのジエンゴム重合体40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含む、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径800~10,000nmのジエンゴム重合体5~20重量%、芳香族ビニル化合物50~85重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含む、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物71~72重量%及びビニルシアン化合物28~29重量%を含み、重量平均分子量が130,000~180,000g/molである共重合体である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して26重量%以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項10】
前記複合樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して250℃、5kgの荷重で測定した流動指数が25g/10min以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項11】
前記複合樹脂組成物は、ISO 180/1Aに準拠して23℃で測定したアイゾット衝撃強度が14kJ/m
2以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項12】
前記複合樹脂組成物を用いて製造した1/8inchの試験片を、ISO 178に準拠して2mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が1950MPa以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項13】
前記複合樹脂組成物は、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重耐熱度が75℃以上である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項14】
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さい、複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を用いて製造される、自動車内装材。
【請求項16】
前記自動車内装材は、フロアコンソールフロントトレイまたはカップホルダーである、請求項15に記載の自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年05月10日付の韓国特許出願第10-2021-0059760号及びこれに基づいて2022年02月24日付で再出願された韓国特許出願第10-2022-0024264号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材に関し、より詳細には、使用する原料を変化させることで、耐熱特性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車内装材に使用される素材としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)を混合した複合樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA)を混合した複合樹脂、またはポリカーボネート樹脂(PC)とポリエステル樹脂を混合した複合樹脂などがあり、これらは、優れた物性を有し、自動車内装材の様々な部品に活用されている。
【0004】
しかし、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)は、耐熱性の不良により、電子製品の部品や自動車内装材などに使用が制限的であり、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA)を混合する場合には、素材自体の非結晶特性により耐化学特性が弱いため、自動車の内部で使用頻度が高い化学物質にクラックを起こす問題が発生する。
【0005】
そのため、耐熱特性及び耐化学特性を改善して機械的物性、耐光特性などとの物性バランスを満たすことができる自動車用内装材の素材に対する開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-0068566号(公開日:2018.06.22)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、使用する素材を変えることで、原価が節減されるだけでなく、無塗装品として使用され得るので経済性に優れながらも、耐熱特性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などを含めて物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる自動車内装材用複合樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の目的は、前記の自動車内装材用複合樹脂組成物を用いた自動車内装材を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と;第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と;芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と;ポリエステル樹脂29~37重量%とを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とする自動車内装材用複合樹脂組成物を提供する。
【0011】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体との重量比が1:1.37~1.66であってもよい。
【0012】
前記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)から選択された1種以上であってもよい。
【0013】
前記複合樹脂組成物は、SCE方式により求められる試験片を反射した光のLAB表色系で測定したL*値が14.00以下であってもよい。
【0014】
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径100~500nmのジエンゴム重合体40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなることができる。
【0015】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径800~10,000nmのジエンゴム重合体5~20重量%、芳香族ビニル化合物50~85重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることができる。
【0016】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物71~72重量%及びビニルシアン化合物28~29重量%を含んでなり、重量平均分子量が130,000~180,000g/molである共重合体であってもよい。
【0017】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して26重量%以上であってもよい。
【0018】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上であってもよい。
【0019】
前記複合樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して250℃、5kgの荷重で測定した流動指数が25g/10min以上であってもよい。
【0020】
前記複合樹脂組成物は、ISO 180/1Aに準拠して23℃で測定したアイゾット衝撃強度が14kJ/m2以上であってもよい。
【0021】
前記複合樹脂組成物は、1/8inchの試験片を、ISO 178に準拠して2mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が1950MPa以上であってもよい。
【0022】
前記複合樹脂組成物は、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重耐熱度が75℃以上であってもよい。
【0023】
また、本発明は、
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と;第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と;芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と;ポリエステル樹脂29~37重量%とを含み、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さく、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して27~29重量%であり、前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上である自動車内装材用複合樹脂組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と;第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と;芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と;ポリエステル樹脂29~37重量%とを含んで押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とする複合樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と;第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と;芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と;ポリエステル樹脂29~37重量%とを含んで押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さく、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して27~29重量%であり、前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上であることを特徴とする複合樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、前述した複合樹脂組成物を含んで製造される自動車内装材を提供する。
【0027】
前記自動車内装材は、フロアコンソールフロントトレイまたはカップホルダーであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る複合樹脂組成物は自動車内装材として成形され得る。
【0029】
また、前記自動車内装材は、耐熱特性及び耐化学特性が改善されて、機械的物性、流動性、耐光特性などとの物性バランスを満たすと同時に、成形性に優れるので、外観品質が向上する効果がある。
【0030】
したがって、本発明に係る複合樹脂組成物は、特に、フロアコンソールフロントトレイ、カップホルダーをはじめとする自動車内装材分野に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0033】
本記載において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」、または「由来の単位として含む」として定義され得る。
【0034】
本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、由来する単量体の重量%を意味することができる。
【0035】
また、本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、他の方法としては、全ての単量体が重合されることを前提として投入された単量体の含量を、製造された重合体中の単位などの含量として定義することができる
【0036】
他に特定されない限り、本記載で使用された成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語により修飾されるものと理解されなければならない。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、他に特定されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0037】
本記載において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む、記載された範囲内の全ての値を含むものと理解される。例えば、“5~10”の範囲は、5、6、7、8、9及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5~8.5、及び6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。また、10~30%の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。
【0038】
本発明者らは、ポリエステル樹脂、乳化共重合体、塊状共重合体などを含む複合樹脂組成物を使用して製造した自動車用内装材において、耐熱特性及び耐化学特性が改善されて、機械的物性、流動性、耐光特性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することを確認し、本発明のような機械的物性、流動性、耐光特性などの物性バランスを満たしながらも、成形性及び外観品質に優れた無塗装品として自動車用内装材の素材を完成した。
【0039】
複合樹脂組成物
本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と;第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と;芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と;ポリエステル樹脂29~37重量%とを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とし、このような場合に、従来のポリカーボネート樹脂(PC)とアクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA)を混合した複合樹脂と比較して、原価が節減されるだけでなく、無塗装品として使用され得るので経済性に優れながらも、耐熱性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などとの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質の自動車内装材用複合樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0040】
本発明の一具現例に係るポリエステル樹脂は結晶性素材であって、これを含む複合樹脂組成物に成形性を付与し、これを使用して製造した自動車内装材に耐化学特性を付与する。
【0041】
前記ポリエステル樹脂は、これに限定するものではないが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)から選択された1種以上を含むことができ、具体例として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用することが、外部から流入する化学薬品の浸透を防止しながらも、結晶化された構造として射出成形時に、これを含む複合樹脂組成物の流れ性を向上させ、外観品質を優れたものとすることができるので好ましい。
【0042】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、一例として、1.05dl/g以上、1.1dl/g以上、または1.1~1.3dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が過度に低いと、物性補強効果が低下するため、耐化学特性の改善効果が僅かであるという欠点があり、固有粘度が過度に高いと、成形性が低下して部品の外観に問題が発生し得るという欠点がある。
【0043】
本記載において、前記固有粘度は、特に断りがない限り、測定しようとする試料を0.05g/mlの濃度でメチレンクロライド溶媒に完全に溶解させた後、フィルターを使用して濾過させた濾液を、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて20℃で測定した値である。
【0044】
前記ポリエステル樹脂の含量は、複合樹脂全体(ポリエステル樹脂+第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体)100重量%を基準として、29~37重量%、具体例として33~37重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材にクラックが容易に発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0045】
本発明で使用するスチレン系樹脂は、好ましくは、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体が混合された三元系で構成されることで、前述したポリエステル樹脂と共に、これを含む複合樹脂組成物の耐化学特性を大きく左右し、これを使用して製造した自動車内装材に耐化学特性の改善効果を提供する。
【0046】
本記載において、「スチレン系樹脂」は、本発明の属する技術分野で通常認められるスチレン系樹脂の定義に従い、一例として、芳香族ビニル化合物由来の単位を含む樹脂を意味することができる。
【0047】
本記載において、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体とを合わせた重量が、前記ポリエステル樹脂よりも少量である場合に、前記ポリエステル樹脂により減少する物性を補完し、これを含む複合樹脂組成物で製造される自動車内装材の衝撃性をはじめとする機械的物性を向上させるという利点がある。
【0048】
本記載において、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を合わせた重量が、前記ポリエステル樹脂よりも過量である場合に、曲げ弾性率及び耐熱特性を向上させるという利点がある。
【0049】
具体例として、前述したポリエステル樹脂100重量部を基準として、好ましくは、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を合わせた含量は、具体例として145~209重量部、より好ましくは150~205重量部、さらに好ましくは160~205重量部、最も好ましくは165~203重量部であり、この範囲内で、前記ポリエステル樹脂により減少する物理的な特性を補完し、これを含む複合樹脂組成物で製造される自動車内装材の衝撃性をはじめとする機械的物性を向上させるという利点がある。
【0050】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体との重量比は、一例として1:1.37~1.66、好ましくは1:1.4~1.63であるが、この範囲内で、前記ポリエステル樹脂により減少する物性を補完し、これを含む複合樹脂組成物で製造される自動車内装材の衝撃性、曲げ弾性率をはじめとする機械的物性を向上させ、流動指数及び高荷重の条件下での耐熱特性も向上させるという利点がある。
【0051】
本発明の一具現例に係る第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径100~500nmのジエンゴム重合体40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなることができる。好ましくは、ジエンゴム重合体50~70重量%、芳香族ビニル化合物20~35重量%及びビニルシアン化合物1~15重量%を含んで乳化重合されたグラフト共重合体であってもよく、より好ましくは、共役ジエン化合物55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~15重量%を含んで乳化重合されたグラフト共重合体であってもよい。前記範囲を外れてジエンゴム重合体を構成する共役ジエン化合物の含量が過度に少ないと、衝撃性が低下するという欠点があり、ジエンゴム重合体を構成する共役ジエン化合物の含量が過度に多いと、剛性(弾性率)が低下するという欠点がある。また、ビニルシアン化合物の含量が過度に少ないと、剛性補強効果が僅かであるという欠点があり、ビニルシアン化合物の含量が過度に多いと、衝撃性が低下するという欠点がある。
【0052】
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる共役ジエン化合物は、例えば、ブタジエンを含むことができ、特定の共役ジエン化合物のみを含むものに制限されない。また、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びp-メチルスチレンから選択される1種以上であってもよく、スチレンが好ましい。また、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから選択される1種以上であってもよく、アクリロニトリルが好ましい。
【0053】
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量は、複合樹脂組成物全体(ポリエステル樹脂+第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体)100重量%を基準として、16~20重量%、具体例として17~19重量%であってもよい。前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量が過度に低いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の衝撃性が弱くなるという欠点があり、含量が過度に高いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性が弱くなるという欠点がある。
【0054】
すなわち、本発明の一実施例に係る複合樹脂組成物は、特定の含量範囲を有する成分で重合された共重合体である第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体16~20重量%を含むことによって、前記複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の衝撃性と剛性、耐熱特性及び耐化学特性を均衡的に確保することができる。
【0055】
本発明の一具現例に係る第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径800~10,000nmのジエンゴム重合体5~20重量%、芳香族ビニル化合物50~85重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることができる。好ましくは、ジエンゴム重合体5~15重量%、芳香族ビニル化合物57~75重量%及びビニルシアン化合物12~28重量%を含んで塊状重合された共重合体であってもよく、より好ましくは、共役ジエン化合物10~15重量%、芳香族ビニル化合物55~75重量%及びビニルシアン化合物15~25重量%を含んで塊状重合された共重合体であってもよい。前記範囲を外れてジエンゴム重合体を構成する共役ジエン化合物の含量が過度に少ないと、衝撃性が低下するという欠点があり、ジエンゴム重合体を構成する共役ジエン化合物の含量が過度に多いと、剛性(弾性率)が低下するという欠点がある。また、ビニルシアン化合物の含量が過度に少ないと、剛性補強効果が僅かであるという欠点があり、ビニルシアン化合物の含量が過度に多いと、衝撃性が低下するという欠点がある。
【0056】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物もまた、前述した第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物に記載した種類を使用することができる。
【0057】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量は、複合樹脂組成物全体(ポリエステル樹脂+第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体)100重量%を基準として、10~14重量%、具体例として11~13重量%であってもよい。前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量が過度に低いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の射出外観の改善効果が低減されるという欠点があり、含量が過度に高いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の流動性が弱くなるという欠点がある。
【0058】
すなわち、本発明の一実施例に係る複合樹脂組成物は、特定の含量範囲を有する成分で重合された共重合体である第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体10~14重量%を含むことによって、前記複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の衝撃性と剛性、耐熱特性及び耐化学特性を均衡的に確保することができる。
【0059】
本発明の一具現例に係る芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、ビニルシアン化合物26重量%以上、及び芳香族ビニル化合物74重量%以下を含んでなる共重合体であってもよい。好ましくは、ビニルシアン化合物26~29重量%及び芳香族ビニル化合物71~74重量%を含んでなる共重合体であってもよい。より好ましくは、ビニルシアン化合物27~29重量%及び芳香族ビニル化合物71~73重量%を含んでなる共重合体であってもよい。さらに好ましくは、ビニルシアン化合物28~29重量%及び芳香族ビニル化合物71~72重量%を含んでなる共重合体であってもよい。前記範囲を外れてビニルシアン化合物の含量が過度に少ないと、剛性補強効果が僅かであるという欠点があり、ビニルシアン化合物の含量が過度に多いと、衝撃性が低下するという欠点がある。
【0060】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物もまた、前述した第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物とビニルシアン化合物に記載した種類を使用することができる。
【0061】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の含量は、複合樹脂組成物全体(ポリエステル樹脂+第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体)100重量%を基準として、32~40重量%、具体例として33~37重量%であってもよい。前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の含量が過度に低いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の曲げ弾性率が弱くなるという欠点があり、含量が過度に高いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の耐熱特性が低減されるという欠点がある。
【0062】
すなわち、本発明の一実施例に係る複合樹脂組成物は、特定の含量範囲を有する成分で重合された共重合体である芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体30~38重量%を含むことによって、前記複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の衝撃性と剛性、耐熱特性及び耐化学特性を均衡的に確保することができる。
【0063】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、重量平均分子量が130,000~180,000g/mol、より好ましくは130,000~160,000g/mol、さらに好ましくは130,000~150,000g/molであり、この範囲内で、耐熱特性などに優れるという効果がある。
【0064】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(Gel Permeation Chromatography、water breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、water breeze)を通じて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/min、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MinMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MinMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MinMix-B Guard(550×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、Refractive index検出器:Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データ処理ソフトウェア:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw、PDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0065】
本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、その流れ性の向上、及び高温又は光による分解変性の防止、耐化学特性の補完などのために、適切な添加剤をさらに含むことができる。
【0066】
具体的には、滑剤、熱安定剤及び紫外線吸収剤から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0067】
前記滑剤は、これを含む複合樹脂組成物から自動車内装材を製造するために使用される射出スクリューの取り出しの容易性及び流れ性を確保できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは、エチレンビスステアロアミド、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)またはこれらの結合を含むことができる。
【0068】
前記滑剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~10重量部、具体例として0.1~5重量部含まれてもよい。前記滑剤の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0069】
前記熱安定剤は、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の高温による変性を防止できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは、フェノール系酸化防止剤(High phenolic antioxidant)を使用することができる。
【0070】
前記フェノール系酸化防止剤は、結晶化温度(Tm)が110~130℃であるヒンダードフェノール系安定剤を含むことができ、具体例として、テトラキス[エチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、またはこれらの結合を含むことができる。
【0071】
前記熱安定剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~10重量部、具体例として0.1~5重量部含まれてもよい。前記熱安定剤の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0072】
前記紫外線吸収剤は、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の光による変性を防止できるものであれば、特に制限されず、好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などを使用することができる。
【0073】
前記トリアジン系化合物は、一例として、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,6-ジフェニル-4-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-N-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノールからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0074】
前記ベンゾトリアゾール系化合物は、一例として、2,4-ジ-t-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-オキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2-N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシル-フェノール、及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノールから選択された1種以上であってもよい。
【0075】
本記載の複合樹脂に、高荷重耐熱特性を向上させると共に耐光特性を向上させるように、重量平均分子量が400g/mol以上であるトリアジン化合物、及び重量平均分子量が400g/mol以上であるベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0076】
具体例として、波長300~400nmの紫外線を吸収可能であり、重量平均分子量が400~600g/molまたは400~500g/molであるトリアジン化合物、及び波長270~350nmの紫外線を吸収可能であり、重量平均分子量が400~600g/molまたは400~500g/molであるベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合に、物性バランスに優れると共に、耐光特性がさらに改善されるという効果がある。
【0077】
前記紫外線吸収剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~5重量部、具体例として0.05~3重量部含まれてもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、耐光性がさらに改善されるという効果がある。
【0078】
前記紫外線吸収剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~5重量部、具体例として0.05~3重量部含まれてもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、耐光特性がさらに改善されるという効果がある。
【0079】
前述した滑剤、熱安定剤及び紫外線吸収剤は、これらを合わせた含量が、ポリエステル樹脂100重量部を基準として、具体例として0.1~5重量部、好ましくは1~3重量部であってもよく、この場合に、耐熱特性と耐光特性との間に最適のバランスを維持することができる。
【0080】
本記載の複合樹脂組成物は、下記数式1で示した耐光特性の偏差(△E)が2.0以下、具体例として1.0以下、好ましくは0.1~0.5であってもよく、この場合に、耐熱特性と耐光特性との間に最適のバランスを維持することができる。
【0081】
【数1】
(前記式において、光沢度は、MS210-05に準拠して、温度89±3℃、相対湿度50±5%の条件で、照射量84MJ/m
2及び照射照度0.55±0.02W/m
2・nm(300~400nm)で測定し、
光沢試験片は、2,000~40,000グリットで鏡面処理された金型を用いて、射出温度230~250℃、金型温度50℃で製造され、エンボス試験片は、表面にエンボスサイズ15~21μmが形成される金型を使用して、前記光沢試験片と同様に製造される。)
【0082】
前記光沢度は、他に特定しない限り、ハンターLabカラーメータを用いて、光沢試験片及びエンボス試験片のそれぞれの色を測定し、下記数式2によって求めた色差変化(△E)を指すことができる。
【0083】
【0084】
前記耐光特性の偏差は、MS210-05に準拠して正反射光を含めて測定するSCI(specular component include)によって光沢度を測定し、このときに用いるSCI評価法は、表面状態に関係なく素材自体の色評価という点で、後述するSCEを反映した目視に近い評価とは区分される。
【0085】
複合樹脂組成物の製造方法
以下では、本発明の複合樹脂組成物の製造方法に関して説明する。本発明の複合樹脂組成物の製造方法を説明するにおいて、上述した複合樹脂組成物の内容を全て含む。
【0086】
本記載の複合樹脂組成物の製造方法は、一例として、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを含んで押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とする。
【0087】
具体例として、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを含んで押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量よりも小さく、前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して27~29重量%であり、前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上であることを特徴とする。
【0088】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述したその他の添加剤を含むことができる。
【0089】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサからなる群から選択された1種以上を用いて行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、これを用いて組成物を均一に混合した後、押出して、一例としてペレット状の複合樹脂組成物を収得することができ、この場合に、機械的物性の低下及び熱的特性の低下が防止され、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0090】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、一例として、押出温度210~280℃、押出速度30~90kg/hr、スクリュー回転数200~350rpm下で行うことができ、好ましくは、押出温度210~250℃、押出速度30~70kg/hr、スクリュー回転数200~300rpm下で行うことができる。
【0091】
前記複合樹脂組成物を押出した後、製造されたペレットを対流オーブンで、一例として60~90℃下で4時間以上乾燥させた後、射出成形することができる。
【0092】
前記射出成形は、射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて、射出温度240~280℃、具体例として240~260℃、金型温度40~80℃、具体例として50~70℃下で、射出速度10~50mm/sec、具体例として20~40mm/sec下で射出するステップを含むことができる。
【0093】
さらに、本発明の複合樹脂組成物を含む自動車内装材に関して説明する。本発明の複合樹脂組成物を含む自動車内装材を説明するにおいて、上述した複合樹脂組成物の内容を全て含む。
【0094】
自動車内装材
本発明の複合樹脂組成物は、成分間の十分な補完を通じて、成形性、機械的物性、低荷重耐熱特性、高荷重耐熱特性及び耐化学特性を必要とする自動車内装材に有用に使用することができる。
【0095】
前記自動車内装材の製造方法は、当業界で通常用いる方法により製造することができる。一例として、本発明に係る複合樹脂組成物の溶融混練物、ペレットまたはこれから成形されたシート(板材)を原料として、射出成形法(インジェクションモールディング)、射出圧縮成形法、押出成形法(シートキャスティング)、プレス成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、または回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0096】
本記載の複合樹脂組成物は、一例として、250℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を使用して、250rpm下で、主投入口に第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、ポリエステル樹脂、及び添加剤を供給速度50kg/hで投入し、溶融混練及び押出してペレットを製造することができる。
【0097】
前記ペレットを射出成形機に投入して自動車内装材を製造することができる。
【0098】
製造された自動車内装材の物性を間接的に確認するために、前記ペレットを射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて、射出温度250℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出し、ISO規格の試験片を製造することができる。
【0099】
製造された試験片は、一例として、ISO 1133に準拠して250℃下で5kgの荷重で測定した流動指数(Melt Flow Rate)が25g/10min以上、具体例として25~27g/10minであってもよい。
【0100】
また、前記試験片は、一例として、ISO 180/1Aに準拠して23℃下で測定したアイゾットノッチ衝撃強度が14kJ/m2以上、具体例として14~15kJ/m2であってもよい。
【0101】
また、前記試験片は、一例として、ISO 527に準拠して5mm/minの速度で測定した引張強度が49MPa以上、具体例として53~60MPaであってもよい。
【0102】
また、1/8inchの試験片を、一例として、ISO 178に準拠してSPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が61MPa以上、具体例として63~64MPaであってもよく、曲げ弾性率が1950MPa以上、具体例として2000~2070MPaであってもよい。
【0103】
また、前記試験片は、ISO 75に準拠して1.82MPaの荷重下で測定した高荷重の熱変形温度(HDT)が75℃以上、具体例として76~77℃であってもよい。
【0104】
また、前記試験片は、ISO 75に準拠して0.45MPaの荷重下で測定した低荷重の熱変形温度(HDT)が93℃以上、具体例として95~96℃であってもよい。
【0105】
また、前記試験片は、ISO 1183に準拠して測定した密度が1.10g/cm3、具体例として1.10~1.12g/cm3であってもよい。
【0106】
また、前記試験片は、ISO 7724に準拠して、正反射光を除去し、拡散光のみを測定して目視に近い評価法であるSCE(specular component exclude)反映のLAB表色系で測定したL*値が16.22以下、具体的には11.00~13.77であってもよい。このとき、L*値は、0に近いほど、ブラックカラーに近接し、射出時にガス発生の程度が低減されて、外観品質に優れることを示す。
【0107】
また、前記試験片は、ISO 4599に準拠した環境応力亀裂(ESC)試験によって、応力2.0%のジグにASTM D638による引張強度測定用試験片と同じ大きさの試験片(長さ165mm、幅19mm、厚さ3.2mm)を固定させた後、芳香剤(酢酸イソアミル、リモネン及びリナロールを、体積比4:1:1で混合した混合液)25μlをマイクロピペットで塗布し、2時間経過した後にもクレーズ(craze)またはクラック(crack)が発生せず、この場合に耐化学特性に優れることを示す。
【0108】
前記試験片は、ISO 7724に準拠して、正反射光を除去し、拡散光のみを測定して目視に近い評価法であるSCE反映のLAB表色系で測定したa値が-0.25~-0.55であってもよく、b値が-3.52~-4.03であってもよい。
【0109】
前記自動車内装材は、具体的にフロアコンソールフロントトレイまたはカップホルダーであってもよいが、特定の種類に限定されない。
【0110】
すなわち、本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、所定の乳化共重合体、塊状共重合体及び熱可塑性共重合体を含むことを特徴とし、前記組成物から製造された自動車内装材は、従来の自動車内装材とは異なって、耐熱特性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという利点がある。
【0111】
本発明の複合樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装材を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0112】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0113】
[実施例]
実施例1~5、比較例1~9、参考例1~2:複合樹脂組成物の製造
実施例で用いた原料は、次の通りである。
A-1)ポリブチレンテレフタレート:固有粘度(IV)1.0
A-2)ポリブチレンテレフタレート:固有粘度(IV)1.2
B)乳化重合ジエンゴム-スチレン-アクリロニトリル(ブタジエン60wt%、スチレン30wt%、アクリロニトリル10wt%)
C)塊状重合ジエンゴム-スチレン-アクリロニトリル(ブタジエン11wt%、スチレン62wt%、アクリロニトリル27wt%)
D-1)スチレン-アクリロニトリル(スチレン72wt%、アクリロニトリル28wt%、重量平均分子量133,000g/mol)
D-2)スチレン-アクリロニトリル(スチレン76wt%、アクリロニトリル24wt%、重量平均分子量121,000g/mol)
E)アミド滑剤
F)熱安定剤(High Phenolic Antioxidant)
G)ベンゾトリアゾール系化合物(重量平均分子量448g/mol)
【0114】
下記表1に記載された複合樹脂組成物の原材料を混合した後、押出を通じて、均一な分散度の複合樹脂組成物をペレット状に製造した後、前記ペレットに熱を加えて金型枠に注入した後、冷却させて部品を生産する射出工程を通じて、自動車内装材として利用可能な試験片を作製した。
【0115】
具体的には、下記表1に示した各成分を含めてミキサーで混合した後、230℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、バレル温度230℃、押出速度50kg/hr、スクリュー回転数250rpm、SM Platek装備)の主投入口に投入し、1~3分間押出加工して複合樹脂組成物ペレットを製造した。
【0116】
製造されたペレットを対流オーブンで80℃で4時間以上乾燥させた後、射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて射出温度260℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出して、ISO試験片を作製した。
【0117】
【0118】
参考に、前記表1で用いた原料は、A-1~Gまで全て合わせた重量%が総100重量%となる。
【0119】
実験例:自動車内装材試験片の物性の評価
前記実施例1~5、比較例1~9、参考例1~2で製造された自動車内装材試験片の物性を評価した。評価の基準は、次の通りである。
【0120】
-流動性(Melt Flow Rate):ISO 1133に準拠して行う(250℃、5kg)
【0121】
-衝撃強度(IZOD):ISO 180/1Aに準拠して行う(Notched、23℃)
【0122】
-引張強度:ISO 527に準拠して行う(50mm/min)
【0123】
-曲げ強度、曲げ弾性率:ISO 178に準拠して行う(1/8inch、SPAN64、速度2mm/min)
【0124】
-熱変形温度:ISO 75に準拠して行う(高荷重1.82MPa、低荷重0.45MPa)
【0125】
-密度:ISO 1183に準拠して測定
【0126】
-耐化学特性:ESC(Environmental Stress Cracking)、ISO 4599に準拠して行う(応力2.0%のジグにASTM D638による引張強度測定用試験片と同じ大きさの試験片(長さ165mm、幅19mm、厚さ3.2mm)を固定させた後、芳香剤(酢酸イソアミル、リモネン及びリナロールを、体積比4:1:1で混合した混合液)25μlをマイクロピペットで塗布した後、2時間後にクレーズ(craze)またはクラック(crack)の発生の有無を目視で測定し、発生しない場合にNormalと表示し、クレーズ又はクラックが発生する場合にcraze又はcrackと表示した。)
【0127】
-耐光特性の偏差(△E):MS210-05に準拠して行う(正反射光を含めて表面状態に関係なく素材自体の色を評価する方式であるSCI(specular component include)を適用して、温度89±3℃、相対湿度50±5%の条件で照射量84MJ/m2及び照射照度0.55±0.02W/m2・nm(300~400nm)で光沢試験片とエンボス試験片との間の耐光特性の偏差を、下記数式1によって求めた。計算値が2.0を超える場合に、耐光特性が不良であると判断する。)
【0128】
【0129】
ここで、光沢試験片は、2,000~40,000グリットで鏡面処理された金型を用いて、射出温度230~250℃、金型温度50℃で製造され、エンボス試験片は、表面にエンボスサイズ15~21μmが形成される金型を使用して、前記光沢試験片と同様に製造した。
【0130】
また、前記光沢度は、光沢試験片及びエンボス試験片のそれぞれの色差変化(△E)を、ハンターLabカラーメータを用いて試験片の色を測定し、下記数式2によって求めた。
【0131】
【0132】
-Lab表色系テスト:ISO 7724に準拠して行う(正反射光を除去し、拡散光のみを測定して目視に近い評価方式であるSCE(specular component exclude)を適用して、試験片のL値、a値、b値を測定した。L*値が0に近いほど、ブラックカラーに近接し、射出時にガス発生の程度が低減されて、外観品質に優れることを示す。
【0133】
前記評価基準で測定した結果は、下記表2の通りである。
【0134】
【0135】
前記表2を参照すると、本発明に係る実施例1~5の複合樹脂組成物は、適切な範囲内の密度を実現すると共に、衝撃強度及び曲げ弾性率、高荷重の熱変形温度、耐光特性の偏差をはじめとする耐光特性がいずれも高いので、これを用いて製造された自動車内装材が、衝撃強度及び引張強度、曲げ強度などの物理的物性を基本的に満たしながらも、耐化学特性、高荷重耐熱特性及び耐光特性に優れ、射出時にガス発生の程度が低減されて、優れた製品信頼性及び外観品質を共に提供することを確認できる。
【0136】
反面、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を使用せず、残りの3つの成分を過量使用した比較例2は、実施例1~5と比較したとき、衝撃強度が著しく不良であることが確認できた。
【0137】
また、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、及びビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物をそれぞれ本発明の範囲を外れて使用した比較例3~5は、実施例1~5と比較したとき、衝撃強度、流動指数などが不良であることが確認できた。
【0138】
特に、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を極少量使用した比較例5は、実施例1~5と比較したとき、流動指数が低下し、曲げ強度、曲げ弾性率、及び高荷重下での熱変形温度が不良であることが確認できた。
【0139】
また、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を本発明の範囲を超えて使用し、かつ、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を使用しなかった比較例6は、実施例1~5と比較したとき、流動指数及び曲げ弾性率が不良であることが確認できた。
【0140】
また、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を本発明の範囲を超えて使用し、かつ、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を本発明の範囲よりも少量使用し、ポリエステル樹脂を過量使用した比較例7は、実施例1~5と比較したとき、流動指数、曲げ強度、及び曲げ弾性率がそれぞれ不良であることが確認できた。
【0141】
また、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を本発明の範囲を超えて使用した比較例8は、実施例1~5と比較したとき、曲げ強度、曲げ弾性率、高荷重の熱変形温度及び耐化学特性が不良であることが確認できた。
【0142】
また、ポリエステル樹脂を本発明の範囲を超えて使用し、かつ、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を少量使用した比較例9は、実施例1~5と比較したとき、曲げ強度、曲げ弾性率、低荷重の熱変形温度及び高荷重の熱変形温度がそれぞれ不良であることが確認できた。
【0143】
また、ポリエステル樹脂を本発明の範囲を超えて使用し、かつ、第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を本発明の範囲よりも少量使用した比較例10は、実施例1~5と比較したとき、曲げ強度、曲げ弾性率、低荷重の熱変形温度及び高荷重の熱変形温度がそれぞれ不良であることが確認できた。
【0144】
さらに、固有粘度が本発明の範囲を外れたポリエステル樹脂の種類を使用した参考例1は、実施例1~5と比較したとき、衝撃強度及び曲げ弾性率が低下したことが確認できた。
【0145】
また、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物を本発明の範囲よりも少量の含量で使用した参考例2は、実施例1~5と比較したとき、衝撃強度が不良であることが確認できた。
【0146】
すなわち、本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、特定の成分の含量が調節された乳化共重合体、塊状共重合体及び熱可塑性共重合体を含むことによって、前記組成物から製造された自動車内装材が、耐熱特性及び耐化学特性を改善して、機械的物性、流動性、耐光特性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという利点がある。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さいことを特徴とする、複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と、前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体との重量比が1:1.37~1.66である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)から選択された1種以上である、
請求項1または2に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記複合樹脂組成物は、SCE方式により求められる試験片を反射した光のLAB表色系で測定したL*値が14.00以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径100~500nmのジエンゴム重合体40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、平均粒径800~10,000nmのジエンゴム重合体5~20重量%、芳香族ビニル化合物50~85重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物71~72重量%及びビニルシアン化合物28~29重量%を含み、重量平均分子量が130,000~180,000g/molである共重合体である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物は、その共重合体の総重量に対して26重量%以上である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度(intrinsic viscosity)は1.05dl/g以上である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項10】
前記複合樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して250℃、5kgの荷重で測定した流動指数が25g/10min以上である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項11】
前記複合樹脂組成物は、ISO 180/1Aに準拠して23℃で測定したアイゾット衝撃強度が14kJ/m
2以上である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項12】
前記複合樹脂組成物を用いて製造した1/8inchの試験片を、ISO 178に準拠して2mm/minの速度で測定した曲げ弾性率が1950MPa以上である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項13】
前記複合樹脂組成物は、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重耐熱度が75℃以上である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項14】
第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体15~20重量%と、第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体9~15重量%と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体32~40重量%と、ポリエステル樹脂29~37重量%とを押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含み、
前記第1ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)は、前記第2ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の含量(%)よりも小さい、複合樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を用いて製造される、自動車内装材。
【請求項16】
前記自動車内装材は、フロアコンソールフロントトレイまたはカップホルダーである、請求項15に記載の自動車内装材。
【国際調査報告】