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特表2023-531406トリプルネガティブ乳がんを処置するための方法および組成物
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  • 特表-トリプルネガティブ乳がんを処置するための方法および組成物 図1
  • 特表-トリプルネガティブ乳がんを処置するための方法および組成物 図2
  • 特表-トリプルネガティブ乳がんを処置するための方法および組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(54)【発明の名称】トリプルネガティブ乳がんを処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20230714BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20230714BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A61K31/337
A61P35/00 ZNA
A61P15/14
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/704
A61K31/675
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/196
A61K31/513
A61K31/198
A61K31/4184
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577114
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021037325
(87)【国際公開番号】W WO2021257503
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/039,952
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グエン ドク, アイン
(72)【発明者】
【氏名】チュイ, スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA23
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC39
4C086BC42
4C086DA35
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA10
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA17
4C206MA24
4C206MA28
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、対象の乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置するための方法および組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。いくつかの態様では、前記方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含む。いくつかの態様では、治療レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、タキサン、アントラサイクリン、およびアルキル化剤を用いた処置と比較して、対象が病理学的完全奏効(pCR)を有する可能性を高める。対象の乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))の処置に使用のための医薬組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の早期トリプルネガティブ乳がん(eTNBC)を処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を含む処置レジメンを前記対象に投与することを含み、前記処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、前記治療レジメンが、前記PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、前記タキサン、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を用いた処置と比較して、前記対象が病理学的完全奏効(pCR)を有する可能性を高める、方法。
【請求項2】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タキサンが、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アントラサイクリンがドキソルビシンまたはエピルビシンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル化剤がナイトロジェンマスタード誘導体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナイトロジェンマスタード誘導体が、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処置レジメンが、(i)前記対象に前記PD-1軸結合アンタゴニストおよび前記タキサンを投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)前記対象に前記PD-1軸結合アンタゴニスト、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を投与することを含む第2の投与サイクルとを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処置レジメンがネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が前記eTNBCについて以前に処置されていない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、(i)以前に乳がんの処置または予防のための全身療法を受けていないか、(ii)以前に任意の悪性腫瘍に対するアントラサイクリンまたはタキサンによる治療を受けていないか、または(iii)以前に免疫療法を受けていない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象から得られた腫瘍サンプルが、前記腫瘍サンプルの約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象におけるeTNBCの処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物であって、前記処置が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を含む処置レジメンの投与を含み、前記処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、前記処置レジメンが、前記PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、前記タキサン、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、医薬組成物。
【請求項14】
対象のeTNBCを処置する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを前記対象に投与することを含み、前記処置レジメンがネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がCRを有する可能性を高める、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式にて電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年6月11日に作成された前記ASCIIコピーの名称は51177-031WO2_Sequence_Listing_6_11_21_ST25であり、サイズは23,399バイトである。
【0002】
発明の分野
本発明は、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)を含む処置レジメンを投与することによって、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、例えば、早期TNBC(eTNBC))を処置するための方法および組成物(例えば、医薬組成物)に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
がんは、依然としてヒトの健康に対する最も大きな脅威のうちの1つである。がんまたは悪性腫瘍は転移し、制御されていない様子で急速に成長し、時を得た検出および治療を極めて困難にする。米国において、がんは、毎年約130万人の新たな患者に影響を及ぼし、心疾患に続く第2の主な死亡原因であり、死亡の約4件に1件を占める。固形腫瘍が、これらの死亡の大部分の原因である。乳がんは、女性において最も一般的ながんである。乳がんの約10~15%は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2受容体の発現がトリプルネガティブであり、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)とも呼ばれる。TNBCは通常、エストロゲン受容体陽性乳がんおよびHER2陽性乳がんよりも侵襲性であり、治療が困難な場合がある。
【0004】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、がん、慢性感染症、妊娠、組織同種移植片、および自己免疫疾患における免疫系応答の抑制に関与しているタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、および単球の表面上に発現される、プログラム死1(PD-1)として知られる抑制性受容体に結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1は、別の受容体、B7-1との相互作用によっても、T細胞機能を負に制御する。PD-L1/PD-1およびPD-L1/B7-1複合体の形成は、T細胞受容体のシグナル伝達を負に制御し、その後、T細胞活性化の下方制御、および抗腫瘍免疫活性の抑制をもたらす。
【0005】
がん(例えば、乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC)))の処置における著しい進歩にもかかわらず、改善された治療法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は、特に、対象の乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置する方法、および対象の乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置に使用のための医薬組成物に関する。一般に、使用のための方法および医薬組成物は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンに関する。使用のための方法および医薬組成物は、例えば、ネオアジュバント療法およびアジュバント療法において使用され得る。
【0007】
一態様では、発明は、対象の早期トリプルネガティブ乳がん(eTNBC)を処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を含む処置レジメンを前記対象に投与することを含み、前記処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、前記処置レジメンが、前記PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、前記タキサン、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を用いた処置と比較して、前記対象が病理学的完全奏効(pCR)を有する可能性を高める、方法を特徴とする。
【0008】
別の態様では、本発明は、対象におけるeTNBCの処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物であって、前記処置が、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を含む処置レジメンの投与を含み、前記処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、前記処置レジメンが、前記PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、前記タキサン、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、医薬組成物を特徴とする。
【0009】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体である。
【0010】
いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0011】
いくつかの態様では、タキサンは、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセルである。
【0012】
いくつかの実施形態では、アントラサイクリンは、ドキソルビシンまたはエピルビシンである。
【0013】
いくつかの態様では、アルキル化剤はナイトロジェンマスタード誘導体である。
【0014】
いくつかの態様では、ナイトロジェンマスタード誘導体は、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチンである。
【0015】
いくつかの態様では、ナイトロジェンマスタード誘導体はシクロホスファミドである。
【0016】
いくつかの態様では、処置レジメンは、(i)対象にPD-1軸結合アンタゴニストおよびタキサンを投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)対象にPD-1軸結合アンタゴニスト、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を投与することを含む第2の投与サイクルとを含む。
【0017】
いくつかの態様では、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含む。
【0018】
いくつかの態様では、個体は、eTNBCに対する処置を以前に受けていない。
【0019】
いくつかの態様では、前記対象は、(i)以前に乳がんの処置または予防のための全身療法を受けていないか、(ii)以前に任意の悪性腫瘍に対するアントラサイクリンまたはタキサンによる治療を受けていないか、または(iii)以前に免疫療法を受けていない。
【0020】
いくつかの態様では、前記対象から得られた腫瘍サンプルは、前記腫瘍サンプルの約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有する。
【0021】
別の態様では、本発明は、対象のeTNBCを処置する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを前記対象に投与することを含み、前記処置レジメンがネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、方法を特徴とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、対象におけるeTNBCの処置に使用のためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、前記処置が、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを前記対象に投与することを含み、前記処置レジメンがネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって前記対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、医薬組成物を特徴とする。
【0023】
本明細書に記載の種々の実施形態の特性の1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成し得ることを理解されたい。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者に明らかであろう。本発明のこれらおよび他の態様および実施形態は、以下の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第III相試験であるIMpassion031臨床試験の試験デザインを示す概略図である。IC、腫瘍浸潤免疫細胞;IV、静脈内;pCR、病理学的完全奏効;q2w、2週間毎;q3w、3週間毎;qw、毎週;R、ランダム。IC1/2/3=IC上で1%以上のPD-L1発現;IC0=IC上で1%未満のPD-L1発現。
図2図2は、アテゾリズマブ+化学療法またはプラセボ+化学療法で処置された患者に対するIMpassion031臨床試験の治療意図(ITT)集団におけるpCRを示すグラフである。CI、信頼区間;*片側有意境界=0.0184(適応型富化設計を考慮)。
図3図3は、アテゾリズマブ+化学療法またはプラセボ+化学療法で処置された患者についてのIMpassion031臨床試験のPD-L1陽性集団におけるpCRを示すグラフである。*片側有意境界=0.0184(適応型富化設計を考慮)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の実施形態の詳細な説明
I.序文
本発明は、以前にがんの処置を受けたことがない患者を含む、がん、例えば乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))の治療方法および組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンが、他の処置レジメン、例えばPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)を用いない処置レジメンと比較して、対象に対する臨床的利益の改善において予想外に有効であるという発見に基づく。
【0026】
II.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物または生物学的系に限定されず、それらが言うまでもなく多種多様であることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
【0028】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解する、それぞれの値に対する通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」に続く値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(且つ説明する)。
【0029】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態が、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0030】
「プログラム死リガンド1」および「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチドバリアント、ならびに天然配列ポリペプチドおよびポリペプチドバリアントの断片(これらは、本明細書においてさらに定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な供給源から単離されるか、または組換え法もしくは合成法によって調製されたものであり得る。
【0031】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」は、対応する、自然界に由来するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0032】
「PD-L1ポリペプチドバリアント」またはその変化形は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般的には活性型PD-L1ポリペプチドであって、本明細書に開示される天然型配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するものを意味する。そのようなPD-L1ポリペプチドバリアントには、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD-L1バリアントポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意で、PD-L1変異型ポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0033】
本明細書で同義に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/もしくはそれらの類似体であっても、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってもしくは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であってもよい。したがって、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドとしては、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖を含むかまたは一本鎖および二本鎖領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。このような領域内の鎖は、同じ分子由来であっても、または異なる分子由来であってもよい。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重らせん領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的にはcDNAを含む。
【0034】
「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドに等しく、かつ完全に適用可能である。
【0035】
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズし得、一般に、遊離3’-OH基を提供することによって、相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0036】
「検出」という用語は、直接または間接検出を含む、検出の任意の手段を含む。
【0037】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、例えば、PLD-1のように、サンプル中で検出し得る指標、例えば予測、診断および/または予後の指標を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、および/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーとしては、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の変化(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド、およびポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、ならびに/または糖脂質に基づく分子マーカが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
個体に対する臨床的利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生物学的サンプル中で検出可能なレベルである。これらは、当業者に既知であり、かつ本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療への応答を決定し得る。
【0039】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、同義に使用され、一般に、生物学的サンプル中のバイオマーカーの量を指す。「発現」は、一般に、情報(例えば、遺伝子コードおよび/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在し、機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写またはポリペプチドへの翻訳を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に由来するかまたは例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現した遺伝子」とは、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳されるもの、およびまたRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、転移およびリボソームRNA)を含む。
【0040】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはそのレベルの増加を指す。
【0041】
「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低減した発現」、「低減した発現レベル」、または「低減したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカーの低減した発現または低減したレベルを指す。いくつかの実施形態では、低減した発現とは、発現がほとんどまたはまったくないことである。
【0042】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、通常、全ての細胞型に同様に存在する、バイオマーカーまたはバイオマーカー(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)の群を指す。いくつかの実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、通常、全ての細胞型に同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
【0043】
本明細書で使用される「増幅」とは、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーによって導入される配列改変など)、および/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
【0044】
「多重PCR」という用語は、単一の反応で2つ以上のDNA配列を増幅させる目的で、1超のプライマーセットを使用して単一の源(例えば、個体)から得られた核酸上で行われる単一のPCR反応を指す。
【0045】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」の技術は、一般に、核酸、RNA、および/またはDNAの微量の特定の一片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される、手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーが設計され得るように、目的とする領域の末端またはそれ以降からの配列情報が利用可能でなければならず、これらのプライマーの配列は、増幅される鋳型の反対側の鎖と同一また同様である。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の端部と一致し得る。PCRを用いて、特定のRNA配列、全ゲノムDNA由来の特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写したcDNA、バクテリオファージ配列、またはプラスミド配列などを増幅し得る。一般に、Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)and Erlich,編,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用されるとき、PCRは、プライマーとしての既知の核酸(DNAまたはRNA)の使用を含む、核酸試験サンプルを増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であると見なされるが、唯一の例ではなく、核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
【0046】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」とは、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定されるPCRの一形態を指す。この技術は、例えば、Croninら、Am.J.Pathol.164(1):35~42(2004)およびMaら、Cancer Cell5:607~616(2004)を含む、様々な刊行物に記載されている。
【0047】
「マイクロアレイ」という用語は、基板上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則的配置を指す。
【0048】
「診断」という用語は、本明細書では、分子的または病理学的な状態、疾患または状態(例えば、がん(例えば、乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))))の識別または分類を指すために使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプのがんの同定を指し得る。「診断」はまた、例えば組織病理学的基準によるかまたは分子的特徴による、がんの特定のサブタイプ(例えば、バイオマーカー(例えば、特定の遺伝子、または遺伝子によりコードされるタンパク質)のうちの1つまたはその組合せの発現によって特徴付けられるサブタイプ)の分類を指す場合もある。
【0049】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的および/または生理学的特性に基づいて特徴付けられるおよび/または同定される細胞実体および/または他の分子実体を含有する、目的の対象および/または個体から得られるかまたは由来する組成物を指す。例えば、「疾患サンプル」という句およびその変形は、特徴付けられるべき細胞および/または分子実体を含有することが期待されるかまたは含有することが知られている、目的の対象から得られた任意のサンプルを指す。サンプルとしては、組織サンプル、初代もしくは培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、および組織培養培地、組織抽出物、例えば、ホモジナイズされた組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「組織サンプル」または「細胞サンプル」は、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞サンプルの供給源は、新鮮な、凍結した、および/または保存された器官、組織サンプル、生検、および/または吸引液から等の固形組織;血漿等の血液または任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液等の体液;対象の妊娠または発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織サンプルは、初代または培養細胞または細胞株であってもよい。任意に、組織または細胞サンプルは、疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍サンプル」は、腫瘍または他のがん組織から得られた組織サンプルである。組織サンプルは、細胞型(例えば、腫瘍細胞および非腫瘍細胞、がん性細胞および非がん性細胞)の混合集団を含有し得る。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、または抗生物質等の天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
【0051】
「腫瘍浸潤免疫細胞」とは、本明細書で使用される場合、腫瘍またはそのサンプル中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、例えばTリンパ球(CD8+Tリンパ球および/またはCD4+Tリンパ球等)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、および好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、およびナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「腫瘍細胞」とは、腫瘍またはそのサンプル中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当技術分野で公知であり、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍サンプル中に存在し得る他の細胞、例えば、間質細胞および腫瘍浸潤免疫細胞と区別され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「参照サンプル」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照サンプル」、「対照細胞」、または「対照組織」は、比較目的のために使用されるサンプル、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康および/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態では、参照サンプルは、同じ対象または個体の身体の未処置の組織および/または細胞から得られる。さらに別の実施形態では、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態では、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未処置の組織および/または細胞から得られる。
【0054】
本明細書における目的では、組織サンプルの「切片」は、組織サンプルの単一の部分または小片、例えば、組織サンプル(例えば、腫瘍サンプル)から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織サンプルの複数の切片を、採取し、分析に供し得ることが理解され、但し、組織サンプルの同じ切片を、形態学的レベルおよび分子レベルの両方で分析し得、あるいはポリペプチド(例えば、免疫組織化学によって)および/またはポリヌクレオチド(例えば、原位置ハイブリダイゼーションによって)に関して分析し得ることが理解されるものとする。
【0055】
「相関する」または「相関すること」とは、任意の方法で、第1の解析またはプロトコルの性能および/または結果を第2の解析またはプロトコルの性能および/または結果と比較することを意味する。例えば、第1の分析もしくはプロトコルの結果を、第2のプロトコルを行う際に使用してもよく、および/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルを行うべきかどうかを決定してもよい。ポリペプチド解析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現解析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンを行うべきかどうかを判定し得る。ポリヌクレオチド解析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現解析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンを行うべきかどうかを判定し得る。
【0056】
「に基づく」という語句は、本明細書で使用される場合、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、処置の決定、添付文書に提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針等を伝えるために使用されることを意味する。
【0057】
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブまたは抗体などの試薬に直接的または間接的にコンジュゲートまたは融合され、コンジュゲートまたは融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)か、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によって、プローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によって、プローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識化の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0058】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、その結果、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、および/または標的細胞死滅)を回復または増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合拮抗剤、PD-1結合拮抗剤、およびPD-L2結合拮抗剤を含む。
【0059】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1および/またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減する、遮断する、阻害する、消失させる、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1および/またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体は、TECENTRIQ(登録商標)として市販されているアテゾリズマブであり、本明細書に記載される2015年1月16日に公開されたWHO医薬品情報(医薬品物質の国際非占有名称)、提案されたINN:List 112,Vol.28,No.4(485頁参照)である。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のMDX-1105である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のYW243.55.S70である。また別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。また別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0060】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1および/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMK-3475(ペムブロリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のPDR001である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のREGN2810である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のBGB-108である。
【0061】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介される、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させて、機能不全T細胞の機能不全を軽減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「タキサン」は、チューブリンに結合し、微小管集合および安定化を促進し、および/または微小管解重合を防止し得る薬剤(例えば、ジテルペン)である。例示的なタキサンとしては、パクリタキセル(すなわち、TAXOL(登録商標)、CAS#33069-62-4)、ドセタキセル(すなわち、TAXOTERE(登録商標)、CAS#114977-28-5)、ラロタキセル、カバジタキセル、ミラタキセル、テセタキセル、および/またはオラタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に含まれるタキサンとしては、タキソイド10デアセチルバッカチンIIIおよび/またはその誘導体も挙げられる。いくつかの実施形態では、タキサンは、アルブミンコーティングされたナノ粒子(例えば、ナノ-アルブミン結合(nab)-パクリタキセル、すなわち、ABRAXANE(登録商標)および/またはnab-ドセタキセル、ABI-008)である。いくつかの実施形態では、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。いくつかの実施態様では、タキサンは、CREMAPHOR(登録商標)(例えば、TAXOL(登録商標))および/またはTWEEN(登録商標)、例えばポリソルベート80(例えば、TAXOTERE(登録商標))に配合されている。いくつかの実施形態では、タキサンは、リポソームに封入されたタキサンである。いくつかの実施形態では、タキサンは、プロドラッグの形態および/またはタキサンのコンジュゲート形態(例えば、パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、および/または炭酸リノレイル-パクリタキセルに共有結合的にコンジュゲートしたDHA)である。いくつかの実施態様では、パクリタキセルは、実質的に界面活性剤なし(例えば、例えば、TOCOSOL(登録商標)パクリタキセルのように、CREMAPHOR(登録商標)および/またはTWEEN(登録商標)の非存在下で)で製剤化される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「アントラサイクリン」は、細胞傷害活性を示す抗生物質化合物のクラスを指す。アントラサイクリンは、DNAインターカレーション、トポイソメラーゼII媒介毒性、活性酸素種の生成、および/またはDNA付加物形成を介して細胞傷害性を引き起こし得る。例示的なアントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロンおよびバルルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アントラサイクリンは、ドキソルビシンまたはエピルビシンである。いくつかの具体的な態様では、アントラサイクリンはドキソルビシンである。他の特定の態様では、アントラサイクリンはエピルビシンである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アルキル化剤」は、アルキル基をヌクレオチド、例えばDNAに結合させる化学療法剤のクラスを指す。典型的には、アルキル基はDNAのグアニン塩基に結合している。例示的なアルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチンまたはストレプトゾシン)、アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン)、トリアジン(例えば、ダカルバジンまたはテモゾロミド、およびエチレンイミン(例えば、アルトレタミンまたはチオテパ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
免疫機能障害に関して「機能障害」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語には、抗原認識は生じ得るが、後に続く免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」および/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「機能障害性」という用語には、抗原認識に対する不応性または無応答性、具体的には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)、および/または標的細胞死滅などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力の障害も含まれる。
【0067】
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全または不十分なシグナルに起因する抗原刺激への不応答性の状態(例えば、ras活性化の不在下での細胞内Ca+2の増加)を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激との関連においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。不応答状態は、多くの場合、インターロイキン-2の存在によって無効化され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、および/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0068】
「消耗」という用語は、多くの慢性感染およびがん発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは不十分なシグナル伝達ではく、持続的シグナル伝達に起因するという点で、アネルギーとは区別される。これは、機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なるエフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、および転写状態によって定義される。疲弊は、感染および腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)および細胞内因性の負の制御性(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方に起因し得る。
【0069】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識および排除を回避する過程を指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、そのような回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識かつ攻撃されるときに「処置される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍縮小および腫瘍排除が挙げられる。
【0070】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性を増強させることは、免疫応答による腫瘍細胞の排除を助ける。腫瘍免疫原性を増強する例としては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンによる処置が挙げられる。
【0071】
本発明の文脈における「に応答する」または「に応答する」という用語は、がん(例えば、乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))に罹患している、罹患している疑いがある、または罹患する傾向がある患者が、治療、例えばPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンに対する応答を示すことを示す。当業者は、本発明の方法によるPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンで処置された人が応答を示すかどうかを決定する立場にあることは容易であろう。例えば、応答は、腫瘍成長の減退および/もしくは停止、腫瘍のサイズの低減、ならびに/または1つ以上のがんの症状の緩和など、がん由来の苦痛の減少を反映し得る。好ましくは、応答は、がんの転移性変換のインデックスまたはがんのインデックスの減少または減退、例えば、転移の形成の防止または転移の数もしくはサイズの低減を反映し得る。応答は、例えば、完全奏効(例えば、病理学的完全奏効(pCR))、部分奏効、無増悪生存期間の改善、全生存期間の改善、浸潤性無病生存期間(iDFS)の改善、または持続奏効であり得る。
【0072】
「持続的応答」とは、処置の休止後に腫瘍成長を低減させることに対する持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるかまたはより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、処置期間と少なくとも同じ期間、処置期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍または3.0倍の期間を有する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「がんの再発を低減または阻害すること」とは、腫瘍もしくはがんの再発、または腫瘍もしくはがんの進行を低減または阻害することを意味する。本明細書に開示されるように、がんの再発および/またはがんの進行には、がん転移が含まれるが、これに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」または「CR」は、全標的病巣の消滅を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「病理学的完全奏効」または「pCR」は、乳房とリンパ節の両方から浸潤性腫瘍が消失したことを指す。pCRという用語は、乳管上皮内がんと関係なく乳房および腋窩リンパ節に浸潤がんがないこと(すなわち、ypT0/is ypN0);乳房および腋窩リンパ節に浸潤がんおよび上皮内がんがないこと(すなわち、ypT0 ypN0);ならびに乳管上皮内がんまたはリンパ節転移と関係なく乳房に浸潤がんがないこと(すなわち、ypT0/is)を含む。特定の態様では、pCRは、乳管上皮内がん(すなわち、ypT0/is ypN0)に関係なく、乳房および腋窩リンパ節に浸潤がんがないことを指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」は、ベースラインSLDを参照として、標的病巣の最長径の合計(SLD)における少なくとも30%の低下を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「安定疾患」または「SD」は、処置開始以降の最小SLDを基準として、PRと言えるほどの十分な標的病変の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」とは、処置開始以降、または1つ以上の新たな病変の存在以降、記録された最小SLDを基準として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、処置されている疾患(例えば、がん)が悪化しない、処置中および処置後の時間の長さを指す。無増悪生存期間は、患者が完全寛解または部分寛解を経験した時間の量、ならびに患者が安定した疾患を経験した時間の量を含み得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「全奏効率」または「客観的奏効率」(ORR)は、完全奏効(CR)率および部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「全生存」(OS)は、特定の期間後に生きている可能性が高い、群における個体のパーセンテージを指す。
【0082】
本明細書で使用されるとき、「処置」という用語は、臨床的病変の経過中に処置される個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および予後の寛解または改善が挙げられる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の低減、および/または個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「処置」に成功する。
【0083】
本明細書で使用される場合、疾患の「進行を遅延させる」とは、疾患(がん等)の発症を延期、妨害、減速、遅らせ、安定させ、および/または延期することを意味する。この遅延は、病歴および/または処置される個体に応じて様々な期間のものであり得る。当業者に明らかであるように、十分または著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症等の末期がんを遅延させ得る。
【0084】
本明細書で互換的に使用される「有効量」または「治療有効量」は、特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすのに必要な少なくとも最小量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する薬剤の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、処置上有益な作用が処置の任意の毒性作用または有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、および/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除または低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、および/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回または複数回の投与でもよい。本発明では、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、予防的処置または治療的な処置を直接または間接的に達成するのに充分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1種以上の治療薬(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド)))を含む処置レジメン)を投与する状況で考慮される場合があり、単一の薬剤は、1種以上の他の薬剤と組み合わせて、望ましい結果が達成され得るかまたは達成される場合、有効量で与えられると考えられる場合がある。
【0085】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」または「と併せて」は、別の処置法に加えた1つの処置法の投与を指す。したがって、「と併せて」とは、個体への1つの処置法の施行前、施行中、または施行後の別の処置法の施行を指す。
【0086】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹患させる病態を含む、慢性および急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益を得るであろういずれかの状態である。
【0087】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0088】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての新生物の細胞成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。
【0089】
「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0090】
「がん」および「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは説明する。「乳がん」という用語は、HER2+乳がん、ならびにがん細胞がエストロゲン受容体(ER-)、プロゲステロン受容体(PR-)、およびHER2(HER2-)に関して陰性である乳がんの形態であり、かつ局所進行性、切除不能、および/または転移性(例えば転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC))であり得るトリプルネガティブ乳がん(TNBC)を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法は、局所進行性および/または転移性であるがんを含む、様々なステージのがんの処置に適している。がんの病期分類において、局所進行性は一般に、限局領域から付近の組織および/またはリンパ節に広がったがんとして定義される。ローマ数字の病期分類システムでは、局所進行性は通常、ステージIIまたはIIIに分類される。転移性であるがんは、がんが身体にわたって遠隔組織および器官に広がる段階(ステージIV)である。
【0091】
本明細書で使用される場合、「早期TNBC」および「eTNBC」という用語は、ステージI~ステージIIIのTNBCを含む早期TNBCを指す。早期TNBCは、全ての新規早期乳がん診断の10%~20%を占め、ネオアジュバントであるアントラサイクリンおよびタキサン療法による処置後の3年無事象生存率は74%~76%である。
【0092】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、mTNBCなどのがんの処置に有用な化合物を含む。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラジコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen))、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナサン酸塩(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドパ、カルボクロン、メツレドーパおよびウレドパ等のアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチルメラミン等のエチレンイミン類およびメチルメラミン類;アセトゲニン類(特にブラータシンおよびブラータシノン);カンプトテシン(トポテカンおよびイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリースタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシンの合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾンおよびプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリドおよびデュタステリドを含む5α-レダクターゼ);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン、クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン等のニトロソウレア類;エンジイン系抗生物質等の抗生物質(例えば、カリチェマイシン、特にカリチェマイシンγ1Iおよびカリチェマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.33:183-186(1994));ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネート等のビスホスホネート類;エスパーマイシン;同様に、ネオカルジノスタチン発色団および関連する発色団エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン類、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝アンタゴニスト;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフリジン、エノシタビン、フロクスリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオステイン、テストラクトン等のアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタ等の抗副腎剤;フロリン酸等の葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジキオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシンおよびアンサミトシン等のマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジキオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;マイトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類;クロラムブシル、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、6-チオグアニン、メルカプトプリン;メトトレキサート;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバンドロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド類、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸および誘導体が挙げられる。
【0093】
化学療法剤には、分子の不可欠な部分として白金を含有する有機化合物を含む「白金系」化学療法剤も含まれる。典型的には、白金系化学療法剤は、白金の配位錯体である。白金系化学療法剤は、当該技術分野において「プラチン」と呼ばれることもある。白金系化学療法剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
また、化学療法剤としては、(i)抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)など、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフィン);(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メグストロール)、AROMASIN(登録商標)(エクセメスタン;Pfizer)、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(vorozole)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、およびARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca);(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロライドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ブセレリン、トリプテレリン、メドロキシプロゲステロン酢酸塩、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全トランスレチオン酸、フェンレチニドおよびトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害する薬剤、例えば、PKC-アルファ、RalfおよびH-Ras;(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))、HER2発現阻害剤などのリボザイム類;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン類、例えばALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、VAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;および(ix)前記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸および誘導体が挙げられる。
【0095】
化学療法剤にはまた、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)などの抗体、および抗体-薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物と組み合わせた剤としての治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エピラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブ・オゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブ・テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブ・セルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、およびインターロイキン12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に改変された、組換え型で専らヒト配列の完全長IgGλ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が挙げられる。
【0096】
化学療法剤には、EGFRに結合するかまたはさもなければそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を妨害または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、代わりに「EGFRアンタゴニスト」とも称される。このような剤の例としては、EGFRに結合する抗体および低分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号を参照されたい)およびそのバリアント、例えばキメラ化225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX)およびリシェイプヒト225(H225)(国際公開第96/40210号を参照されたい、Imclone Systems Inc.);完全ヒト、EGFR標的化抗体IMC-11F8(Imclone);II型突然変異型EGFRを結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されているようなEGFRを結合するヒト化抗体およびキメラ抗体;ならびにABX-EGFまたはパニツムマブ(国際公開第98/50433号を参照されたい、Abgenix/Amgen)のようなEGFRと結合するヒト抗体;EMD 55900(Stragliottoら.Eur.J.Cancer32A:636-640(1996));EGFR結合のためにEGFおよびTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対するヒト化EGFR抗体であるEMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3およびE7.6.3として知られ、米国特許第6,235,883号に記載される完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc.);ならびにmAb 806またはヒト化mAb 806(Johnsら,J Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを生成し得る(例えば、EP659439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストとしては、米国特許第5,616,582号、第5,457,105号、第5,475,001号、第5,654,307号、第5,679,683号、第6,084,095号、第6,265,410号、第6,455,534号、第6,521,620号、第6,596,726号、第6,713,484号、第5,770,599号、第6,140,332号、第5,866,572号、第6,399,602号、第6,344,459号、第6,602,863号、第6,391,874号、第6,344,455号、第5,760,041号、第6,002,008号、および第5,747,498号ならびに下記のPCT公開公報:国際公開第98/14451号、国際公開第98/50038号、国際公開第99/09016号および国際公開第99/24037号に記載されている化合物などの小分子が挙げられる。特定の低分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA、Genentech/OSI Pharmaceuticals)、PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca)、BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール)、(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド)、EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU5271、Pfizer)、および二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
【0097】
化学療法剤としては、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;低分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(PfizerおよびOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2およびEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、およびCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許公報:米国特許第5,804,396号;国際公開第1999/09016号(American Cyanamid);国際公開第1998/43960号(American Cyanamid);国際公開第1997/38983号(Warner Lambert);国際公開第1999/06378号(Warner Lambert);国際公開第1999/06396号(Warner Lambert);国際公開第1996/30347号(Pfizer,Inc);国際公開第1996/33978号(Zeneca);国際公開第1996/3397号(Zeneca);および国際公開第1996/33980号(Zeneca)のうちのいずれかに記載のものも挙げられる。
【0098】
化学療法剤としてはまた、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、生BCG、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、およびゾレドロン酸、ならにそれらの薬学的に許容され得る塩も挙げられる。
【0099】
また、化学療法剤としては、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チクソコルトールピバレート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレエート、アクロメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾンバレエート、ベタメタゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオネート、フルオコルトロンカプロエート、フルオコルトロンピバレート、およびフルプレニデンセテート、フェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)およびそのD-異性体(feG)などの炎症性ペプチド(ImSAIDs)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩類、ヒドロキシクロロキン、レフルノミデミノサイクリン、スルファサラジンなどの抗リウマチ薬;エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブペゴール(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))等の腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断薬;アナキンラ(KINERET(登録商標))等のインターロイキン1(IL-1)遮断薬;アバタセプト(ORENCIA(登録商標))等のT細胞共刺激遮断薬、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標))等のインターロイキン6(IL-6)遮断薬;レブリキズマブ等のインターロイキン13(IL-13)遮断薬;ロンタリズマブ等のインターフェロンアルファ(IFN)遮断薬;rhuMAb Beta7等のベータ7インテグリン遮断薬;抗M1 prime等のIgE経路遮断薬;分泌されたホモ三量体LTa3および抗リンホトキシンアルファ(LTa)等の膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断薬;放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体);チオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832)等の種々の治験薬;ケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸およびそれらの誘導体等のポリフェノール類;クロロキン等のオートファジー阻害剤;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))等のビスホスホネート、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));および上皮成長因子受容体(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチン等のワクチン;ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;ティピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))等のBcl-2阻害剤:ピキサントロン;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))等のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;および上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸または誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法の略であるCHOP、および5-FUとロイコボリンを組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))の処置レジメンの略であるFOLFOXのような上記の2つ以上の組合せが挙げられる。
【0100】
化学療法剤としてはまた、鎮痛効果、解熱効果、および抗炎症効果を有する非ステロイド抗炎症薬が挙げられ得る。NSAIDとしては、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤が挙げられる。NSAIDの具体的な例としては、アスピリン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、およびナプロキセンなどのプロピオン酸誘導体、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナクなどの酢酸誘導体、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、およびイソキシカムなどのエノール酸誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸などのフェナム酸誘導体、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブなどのCOX-2阻害剤が挙げられる。NSAIDは、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、炎症性関節症、強直性脊椎症、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛、および片頭痛、術後痛、炎症および組織傷害に起因する軽度から中度の疼痛、発熱、腸閉塞、および腎疝痛等の病態の症状緩和のために示され得る。
【0101】
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こすか、増殖を阻害するか、またはさもなければ細胞機能を妨害する)任意の薬剤を指す。細胞毒性剤には、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、成長阻害剤、核分解酵素等の酵素およびその断片、ならびに細菌、真菌、植物または動物由来の低分子毒素または酵素的に活性な毒素等の毒素(その断片および/またはバリアントを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な細胞毒性剤は、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類縁体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH-A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ならびにがん代謝阻害剤から選択され得る。一実施形態では、細胞傷害性剤は、白金系化学療法剤である。一実施形態では、細胞毒性剤は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態では、細胞傷害性剤は、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ、TARCEVA(商標))である。一実施形態では、細胞毒性剤は、RAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、BRAFおよび/またはCRAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、細胞毒性剤は、PI3K阻害剤である。
【0102】
本明細書で使用される場合、「成長阻害剤」とは、インビトロまたはインビボで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防または低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく減少させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。M期遮断薬としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1を停止させるこれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤にも影響を及ぼす。さらなる情報は、MendelsohnおよびIsrael編.The Molecular Basis of Cancer,第1章、Murakamiらによる「細胞周期の制御、および抗悪性腫瘍薬」(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)の例えば13頁に見出し得る。
【0103】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素的により活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,’’Prodrugs in Cancer Chemotherapy’’Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)、およびStellaら,’’Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,’’Directed Drug Delivery,Borchardtら,(編),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、場合によって置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、または場合によって置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンおよび他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されず、これらプロドラッグは、より活性な細胞毒性遊離薬物へと変換され得る。本発明で使用のためのプロドラッグ形態に誘導体化され得る細胞毒性薬物の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
「放射線治療」とは、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊する能力を制限するように、細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。線量および処置期間を決定するために、当技術分野で既知の方法が多く存在することが理解されるだろう。典型的な処置は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0105】
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」は、血管新生、脈管形成、または望まれない血管透過性を、直接的または間接的のいずれかで阻害する、低分子物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはこれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤には、血管新生因子またはその受容体の血管新生活性を、結合して遮断する薬剤が含まれることが理解されるべきである。例えば、抗血管形成剤は、上記で定義されるような血管形成剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-A(例えば、ベバシズマブ)またはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt-1受容体)に対する抗体、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFR阻害剤である。また、抗血管形成剤としては、天然の血管形成阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなども挙げられる。例えば、KlagsbrunおよびD’Amore、Annu.Rev.Physiol.、53:217-39(1991)、StreitおよびDetmar、Oncogene、22:3172-3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生治療をリストした表3)、Ferrara&Alitalo、Nature Medicine 5(12):1359-1364(1999)、Toniniら、Oncogene、22:6549~6556(2003)、ならびにSato、Int.J.Clin.Oncol.、8:200-206(2003)を参照されたい。
【0106】
治療の目的で本明細書で互換的に使用される「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、ヒト、家畜および家畜、ならびに動物園、スポーツ、またはペット動物、例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0107】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
【0108】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定および分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の夾雑物成分は、抗体の試験的、診断的、または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニング・カップ・シークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたは銀染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体には、組換え細胞内のインサイチュ抗体が含まれるが、これは、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0109】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0110】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖C1、C2およびC3(集合的に、CH)ドメイン、ならびに軽鎖CHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0111】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「V」と称されることがある。軽鎖の可変ドメインは、「V」と称されることがある。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
【0112】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体の特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatrら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0113】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの一方に割り当てられ得る。
【0114】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的および抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0115】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、5つの腫瘍なクラス;IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAにさらに分け得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、およびμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成が周知であり、例えば、Abbasら、Cellular and Mol.Immunology,第4版.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0116】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指すために、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0117】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0118】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原-結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0119】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理は、F(ab’)断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得る。
【0120】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、柔軟なペプチドリンカーによって1の重鎖および1の軽鎖可変ドメインは共有結合性に連結し得、よって軽鎖および重鎖は、二本鎖Fv種におけるものと類似の「二量体」構造に結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0121】
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメインおよび第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を持つFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0122】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0123】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudsonら、Nat.Med.9:129~134(2003)、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448(1993)において、より十分に記載されている。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudson et al.Nat.Med.9:129~134(2003)に記載されている。
【0124】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、自然に発生する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養物におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するなどのために、さらに改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体はまた、本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
【0125】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongoら、Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);HammerlingらMonoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら,Nature,352:624-628(1991)、Marksら,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Sidhuら,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Leeら,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、およびLeeら,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有するヒトまたはヒト様抗体を動物で産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovitsら,Nature 362:255-258(1993)、Bruggemannら,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、および同第5,661,016号、Marksら,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonbergら,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-813(1994)、Fishwildら,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonbergら,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995))を含む様々な技法によって作製され得る。
【0126】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
【0127】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾を加えて、抗体の性能をさらに洗練させ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えば、Jonesら,Nature321:522-525(1986);Riechmannら,Nature332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions23:1035-1038(1995);HurleおよびGross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号を参照されたい。
【0128】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ等の当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。HoogenboomおよびWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Coleら,Monoclonal antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boernerら,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Liら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0129】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い第2の非ヒト哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。天然抗体では、H3およびL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xuら、Immunity13:37-45(2000);JohnsonおよびWu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,編,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363:446-448(1993);Sheriffら、Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0131】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含されている。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
【0132】
【0133】
HVRは、以下のように「拡張HVR」を含み得る:VL中の24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)および89~97または89~96(L3)ならびにVH中の26~35(H1)、50~65または49~65(H2)および93~102、94~102または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0134】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0135】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、およびそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。このナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0136】
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabatら.,Sequences of Immunological Interest第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、上記のKabatら.で報告されるEU指標)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0137】
「線状抗体」という表現は、Zapataら(Protein Eng,8(10):1057-1062,1995)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「~に特異的に結合する」、または「~に特異的である」という用語は、標的と抗体との間の結合等、測定可能かつ再生可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の異種集団の存在下において、標的の存在を決定づけるものである。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施態様では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、必須ではない。
【0139】
本明細書で同定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一であるパーセンテージとして定義される。パーセントのアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当技術分野の熟練の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公知のコンピュータソフトウェアを使用して達成し得る。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定し得る。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Californiaから公的に利用可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0D上で使用するために編集される必要がある。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0140】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bに対する、配列Bとの、または配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸Bに対し、配列Bと、または配列Bに対向し、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するもしくは含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、AおよびBの配列アライメントプログラムALIGN-2によって完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解されるであろう。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されているようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0141】
本明細書に記載のアミノ酸配列は、特に明記しない限り、連続したアミノ酸配列である。
【0142】
「パッケージ添付文書」という用語は、そのような治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、および/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0143】
「医薬製剤」または「医薬組成物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、内部に含まれる活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象が許容できない程度に毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。好ましい実施形態では、医薬組成物または医薬製剤をヒト対象に投与する。
【0144】
「無菌」医薬製剤は、無菌であるか、または全ての生きている微生物およびその胞子を含まないか、または本質的に含まない。
【0145】
「薬学的に許容され得る担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容され得る担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
本明細書で使用される場合、「投与する」は、化合物(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド)))または組成物(例えば、医薬組成物、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む医薬組成物であって、場合により、さらなる治療剤も含む医薬組成物)の投与量を対象に与える方法を意味する。本明細書中に記載される方法において利用される組成物は、例えば、硝子体内、筋肉内、静脈内、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、血管内(intravesicularly)、粘膜内、心膜内、臍下、眼内、眼窩内、口腔内、局所、経皮、眼周囲、結膜下、腱下、前房内、網膜下、後球内、管内に、吸入によって、注入によって、注入によって、移植によって、連続注入によって、標的細胞を直接、カテーテル、洗浄液、クリーム、または脂質組成物で局所灌流浴することによって投与し得る。本明細書に記載の方法において利用される組成物はまた、全身的または局所的に投与し得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物、および処置される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて変化し得る。
【0147】
III.乳がんの処置のための方法、使用のための組成物および使用
対象における乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置するためまたはその進行を遅延させるための方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む有効量の処置レジメンを対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、処置は対象において応答をもたらす。いくつかの実施形態では、応答は完全奏効(CR)(例えば、病理学的完全奏効(pCR))である。本明細書に記載の方法は、がんの処置のための腫瘍免疫原性の増大等の免疫原性の増強が所望される状態の処置における使用を見出し得る。乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を有する対象において免疫機能を増強する方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む有効量の処置レジメンを対象に投与することを含む方法も本明細書で提供される。当該分野で公知である、または本明細書に記載されるPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリン、またはアルキル化剤のいずれかが、本方法において使用され得る。
【0148】
一態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)を処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象が応答(例えばCR、例えばpCR)を有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0149】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)の処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による治療と比較して、対象が応答(例えばCR、例えばpCR)を有する可能性を高める。
【0150】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)の処置に使用のための医薬の製造における、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)を含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による治療と比較して、対象が応答(例えばCR、例えばpCR)を有する可能性を高める。
【0151】
例えば、いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による治療と比較して、対象が客観的奏効(例えば、CR)を有する可能性を高め、対象の無増悪生存期間(PFS)を延長し、対象の全生存期間(OS)を延長し、対象の無病生存期間(DFS)(例えば、浸潤性DFS(iDFS))を延長し、対象の無事象生存期間(EFS)を延長し、および/または対象の奏効期間(DOR)を延長する。
【0152】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象が客観的応答を有する可能性を高める。
【0153】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がCR(例えば、pCR)を有する可能性を高める。
【0154】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象のPFSaを延長する。
【0155】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象のOSを延長する。
【0156】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象のPFSを延長する。
【0157】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象の無病生存期間(DFS)を延長する。
【0158】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象の浸潤性無病生存期間(iDFS)を延長する。
【0159】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリン、および/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象の無事象生存期間(EFS)を延長する。
【0160】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象のDORを延長する。
【0161】
特定の態様では、処置レジメンは、対象がpCRを有する可能性を高め得る。
【0162】
一態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)を処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0163】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)の処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0164】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)を処置するための医薬の製造におけるPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物の使用が提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0165】
いくつかの態様では、処置レジメンは、対象の原発性がんの処置であり得る。
【0166】
別の態様では、処置レジメンは、原発性がんの処置、例えば手術の前、間、または後の任意の段階で対象に投与され得る。いくつかの態様では、原発がんの処置は手術(例えば、乳房温存手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術、定量的切除術、部分的乳房切除術または部分的乳房切除術)または乳房切除術(片方の単一乳房切除術または両乳房切除術を含む)である。いくつかの態様では、処置レジメンは、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法である。いくつかの態様では、処置レジメンはネオアジュバント処置である。いくつかの態様では、処置レジメンは、アジュバント療法である。
【0167】
一態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)を処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含み、前記処置レジメンが、前記PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、前記タキサン、前記アントラサイクリンおよび前記アルキル化剤を用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0168】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)の処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0169】
別の態様では、対象の乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC)を処置するための医薬の製造におけるPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物の使用が提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0170】
あらゆる適切な乳がんを処置し得る。いくつかの態様では、乳がんはTNBCである。
【0171】
一態様では、対象のTNBCを処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、タキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤を用いた処置と比較して、対象が病理学的完全奏効(pCR)を有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0172】
別の態様では、対象のTNBCの処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0173】
別の態様では、対象のTNBCを処置するための医薬の製造におけるPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物の使用が提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0174】
あらゆる適切なTNBCを処置し得る。いくつかの例では、TNBCはeTNBCである。
【0175】
一態様では、対象のeTNBCを処置する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンが、PD-1軸結合アンタゴニストを用いずに、タキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤を用いた処置と比較して、対象が病理学的完全奏効(pCR)を有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0176】
別の態様では、対象のeTNBCの処置に使用のためのPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0177】
別の態様では、対象のeTNBCを処置するための医薬の製造におけるPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物の使用が提供され、処置は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む処置レジメンの投与を含み、処置レジメンが、ネオアジュバント療法またはアジュバント療法であり、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストを用いないタキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤による処置と比較して、対象がpCRを有する可能性を高める。
【0178】
いくつかの態様では、pCRは、乳房組織およびリンパ節においてがんが消失したことである。
【0179】
いくつかの態様では、pCRには、非浸潤性乳管がんの存在または非存在が含まれる。
【0180】
いくつかの態様では、eTNBCは、ステージI、ステージII、またはステージIIIのeTNBCである。
【0181】
いくつかの態様では、eTNBCはステージIIまたはステージIIIのeTNBCである。
【0182】
いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))のうちの1つ、2つ、3つまたは4つ全ての任意の組み合わせを含む。
【0183】
例えば、いくつかの態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))のうちの1種を含む。例えば、1つの特定の態様では、処置レジメンはPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)を含む。別の特定の態様では、処置レジメンはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む。別の特定の態様では、処置レジメンはアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)を含む。別の特定の態様では、処置レジメンはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む。
【0184】
別の例では、いくつかの態様で、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))のうちの2つを含む。例えば、1つの具体的な態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストおよびタキサンを含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストおよびアルキル化剤を含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニストおよびアントラサイクリンを含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、タキサンおよびアルキル化剤を含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、タキサンおよびアントラサイクリンを含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、アルキル化剤およびアントラサイクリンを含む。
【0185】
別の例では、いくつかの態様で、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))のうちの3つを含む。例えば、1つの具体的な態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト、タキサンおよびアルキル化剤を含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト、タキサンおよびアントラサイクリンを含む。
【0186】
さらに別の具体的な態様では、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト、アルキル化剤およびアントラサイクリンを含む。別の特定の態様では、処置レジメンは、タキサン、アルキル化剤およびアントラサイクリンを含む。
【0187】
特定の例では、いくつかの態様で、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))の4つ全てを含む。具体的な特定の例では、いくつかの態様で、処置レジメンは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))から本質的になるか、またはそれらからなる。
【0188】
当技術分野で公知であるか、または本明細書中、例えば下記のセクションVに記載される任意のPD-1軸結合アンタゴニストを含み、任意の適切なPD-1軸結合アンタゴニストが使用され得る。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))、PD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)、またはPD-L2結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2抗体)である。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体である。
【0189】
任意の適切なPD-L1結合アンタゴニストを使用し得る。いくつかの態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。任意の適切な抗PD-L1抗体を使用し得る。1つの具体的な態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体はMDX-1105である。また別の特定の態様では、抗PD-L1抗体はYW243.55.S70である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(デュルバルマブ)である。さらに別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、MSB0010718C(アベルマブ)である。
【0190】
いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0191】
別の態様では、任意の適切なPD-1結合アンタゴニストを使用し得る。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の態様では、抗PD-1抗体はMDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様では、抗PD-1抗体はMK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様では、抗PD-1抗体はMEDI-0680(AMP-514)である。別の特定の態様では、抗PD-1抗体はPDR001である。別の特定の態様では、抗PD-1抗体はREGN2810である。別の特定の態様では、抗PD-1抗体はBGB-108である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。
【0192】
任意の適切なタキサンを使用し得る。例えば、いくつかの態様では、タキサンとしては、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル、ミラタキセル、テセタキセルおよび/またはオラタキセルが挙げられる。いくつかの態様では、タキサンは、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセルである。いくつかの特定の態様では、タキサンはnab-パクリタキセルである。別の特定の態様では、タキサンはパクリタキセルである。
【0193】
任意の適切なアントラサイクリンを使用し得る。例えば、いくつかの態様では、アントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロンおよび/またはバルルビシンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アントラサイクリンは、ドキソルビシンまたはエピルビシンである。いくつかの具体的な態様では、アントラサイクリンはドキソルビシンである。他の特定の態様では、アントラサイクリンはエピルビシンである。
【0194】
任意の適切なアルキル化剤を使用し得る。例えば、いくつかの態様では、アルキル化剤は、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチンまたはストレプトゾシン)、アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン)、トリアジン(例えば、ダカルバジンまたはテモゾロミド、およびエチレンイミン(例えば、アルトレタミンまたはチオテパ)である。いくつかの態様では、アルキル化剤はナイトロジェンマスタード誘導体である。
【0195】
任意の適切なナイトロジェンマスタード誘導体を使用し得る。いくつかの態様では、ナイトロジェンマスタード誘導体は、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチンである。いくつかの特定の態様では、ナイトロジェンマスタード誘導体はシクロホスファミドである。
【0196】
いくつかの態様では、処置レジメンは、少なくとも第1の投与サイクルおよび第2の投与サイクルを含む。いくつかの態様では、処置レジメンは、(i)対象にPD-1軸結合アンタゴニストおよびタキサンを投与することを含む第1の投与サイクル、続いて、(ii)対象にPD-1軸結合アンタゴニスト、アントラサイクリンおよびアルキル化剤を投与することを含む第2の投与サイクルを含む。
【0197】
いくつかの態様では、第1の投与サイクルは、PD-1軸結合アンタゴニストを毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与することと、タキサンを毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与することとを含む。いくつかの態様では、第1の投与サイクルは、2週間毎にPD-1軸結合アンタゴニストを投与し、1週間毎にタキサンを投与することを含む。
【0198】
第1の投与サイクルは、任意の適切な長さを有し得る。例えば、第1の投与サイクルは、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、または約24週間の長さを有し得る。特定の態様では、第1の投与サイクルは約12週間の長さを有する。
【0199】
いくつかの態様では、第2の投与サイクルは、PD-1軸結合アンタゴニストを毎週、2週間毎、3週間毎または4週間毎に投与すること;アントラサイクリンを毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与すること;およびアルキル化剤を毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に投与することを含む。いくつかの態様では、第2の投与サイクルは、PD-1軸結合アンタゴニストを2週間毎に投与すること;アントラサイクリンを2週間毎に投与すること;およびアルキル化剤を2週間毎に投与することを含む。
【0200】
第2の投与サイクルは、任意の適切な長さを有し得る。例えば、第2の投与サイクルは、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、または約24週間の長さを有し得る。いくつかの特定の態様では、投与サイクルは、約8週間の長さを有する。
【0201】
いくつかの態様では、投与レジメンは維持期をさらに含み得る。いくつかの態様では、維持期には、PD-1軸結合アンタゴニストを患者に例えば、毎週、2週間毎、3週間毎または4週間毎に投与することが含まれる。いくつかの態様では、維持期には、PD-1軸結合アンタゴニストを患者に、例えば、3週間毎に投与することが含まれる。維持期は、任意の適切な長さ、例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約25週間、約26週間、約27週間、約28週間、約29週間、約30週間、約31週間、約32週間、約33週間、約34週間、約35週間、約36週間、約37週間、約38週間、約39週間、約40週間、約41週間、約42週間、約43週間、約44週間、約45週間、約46週間、約47週間、約48週間、約49週間、約50週間、約51週間、約52週間、またはそれ以上を有し得る。いくつかの態様では、維持期には、PD-1軸結合アンタゴニストを3週間毎に合計11回投与することが含まれる。いくつかの態様では、維持期には、PD-1軸結合アンタゴニストを処置の最初の用量の後に、最大1年間にわたって3週間毎に投与することが含まれる。いくつかの例では、維持期は、応答が達成されるまで投与される。別の例では、維持期は進行が起こるまで投与される。
【0202】
いくつかの態様では、処置はネオアジュバント療法である。
【0203】
いくつかの態様では、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含む。
【0204】
いくつかの例では、処置はアジュバント療法である。
【0205】
いくつかの態様では、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約80mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシンまたは約90mg/mのエピルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含む。
【0206】
いくつかの態様では、処置レジメンは、第2の投与サイクルの後に維持期をさらに含み、維持期は、3週間毎に約1200mgのアテゾリズマブを対象に静脈内投与することを含む。
【0207】
いくつかの態様では、対象は、乳がん(例えば、TNBC、例えばeTNBC)について以前に処置されていない。
【0208】
いくつかの態様では、前記対象は、(i)以前に乳がんの処置または予防のための全身療法を受けていないか、(ii)以前に任意の悪性腫瘍に対するアントラサイクリンまたはタキサンによる治療を受けていないか、または(iii)以前に免疫療法を受けていない。
【0209】
いくつかの態様では、対象は、(i)組織学的に確認された乳がん(例えば、TNBC、例えば、eTNBC);(ii)0または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(EasternCooperativeOncologyGroup)(ECOG)パフォーマンスステータス;(iii)約2cmを超える原発性乳房腫瘍サイズ;および/または(iv)治療開始時のTNM悪性腫瘍分類(TNM)分類法によるcT2~cT4、cN0~cN3、cM0のがん病期を有している。
【0210】
別の態様では、対象のeTNBCを処置する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間、にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める、方法が本明細書で提供される。
【0211】
別の態様では、対象のeTNBCの処置に使用のためのアテゾリズマブを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間、にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める。
【0212】
別の態様では、対象のeTNBCの処置のための医薬を製造における、アテゾリズマブを含む医薬組成物の使用が本明細書で提供され、処置は、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間、にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める。
【0213】
別の態様では、対象のeTNBCを治療する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはエピルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約80mg/mのパクリタキセルを毎週約12週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシンまたは約90mg/mのエピルビシンおよび約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルと、続いて(iii)3週間毎に約1200mgのアテゾリズマブを対象に静脈内投与することを含む維持期を含み、アテゾリズマブを用いないパクリタキセル、ドキソルビシンまたはエピルビシンおよびシクロホスファミドによる治療と比較して、対象のiDFSを効果的に延長する、方法が本明細書で提供される。
【0214】
別の態様では、対象のeTNBCの処置に使用のためのアテゾリズマブを含む医薬組成物が本明細書で提供され、処置は、有効量のアテゾリズマブ、パクリタキセル、ドキソルビシン、またはエピルビシン、およびシクロホスファミドを含む投与レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約80mg/mのパクリタキセルを毎週約12週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシンまたは約90mg/mのエピルビシンおよび約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルと、続いて(iii)3週間毎に約1200mgのアテゾリズマブを対象に静脈内投与することを含む維持期を含み、アテゾリズマブを用いないパクリタキセル、ドキソルビシンまたはエピルビシンおよびシクロホスファミドによる治療と比較して、対象の浸潤性無病生存期間(iDFS)を効果的に延長する。
【0215】
別の態様では、対象のeTNBCの処置のための医薬の製造における、アテゾリズマブを含む医薬組成物の使用が本明細書で提供され、処置は、有効量のアテゾリズマブ、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを含む処置レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはネオアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約125mg/mのnab-パクリタキセルを毎週約12週間、にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)約840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシン、および約600mg/mのシクロホスファミドを約8週間にわたって2週間毎に対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルとを含み、前記処置レジメンが、アテゾリズマブを用いずに、nab-パクリタキセル、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドを用いた処置と比較して、前記対象がpCRを有する可能性を高める。
【0216】
別の態様では、対象のeTNBCの処置のための医薬の製造における、アテゾリズマブを含む医薬組成物の使用が本明細書で提供され、処置は、有効量のアテゾリズマブ、パクリタキセル、ドキソルビシン、またはエピルビシン、およびシクロホスファミドを含む投与レジメンを対象に投与することを含み、処置レジメンはアジュバント療法であり、(i)約840mgのアテゾリズマブを2週間毎に、かつ約80mg/mのパクリタキセルを毎週約12週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第1の投与サイクルと、続いて(ii)840mgのアテゾリズマブ、約60mg/mのドキソルビシンまたは約90mg/mのエピルビシンおよび約600mg/mのシクロホスファミドを2週間毎に約8週間にわたって対象に静脈内投与することを含む第2の投与サイクルと、続いて(iii)3週間毎に約1200mgのアテゾリズマブを対象に静脈内投与することを含む維持期を含み、アテゾリズマブを用いないパクリタキセル、ドキソルビシンまたはエピルビシンおよびシクロホスファミドによる治療と比較して、対象の浸潤性無病生存期間(iDFS)を効果的に延長する。
【0217】
いくつかの態様では、処理レジメンは、有効量のG-CSFおよび/またはGM-CSF(例えば、フィルグラスチムおよび/またはペグフィルグラスチム)を対象に投与することを含み得る。
【0218】
有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を、疾患の予防または処置のために投与し得る。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))の適切な投与量は、処置される疾患の種類、PD-1軸結合アンタゴニストおよびタキサンの種類、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴および処置に対する反応、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0219】
がん(例えば、乳がん、例えばTNBC、例えばeTNBC)の予防または処置のために、本明細書に記載のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)の適切な投与量(単独でまたは1種以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、処置される疾患の種類、処置の重症度および経過、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)が予防目的で投与されるか処置目的で投与されるか、以前の処置、患者の病歴およびPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、一度にまたは一連の処置にわたって患者に適切に投与される。1つの典型的な1日投薬量は、上で言及した因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kg、またはそれ以上の範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与に関しては、病状に応じて、処置は一般に疾患症状の望まれる抑制が起こるまで継続されるものとする。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者が、例えば、約2~約20回、または例えば、約6回の用量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))を投与されるように、)投与され得る。最初のより高い負荷用量とそれに続く1つ以上のより低い用量を投与し得る。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この療法の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易に監視される。
【0220】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))の有効量は、約60mg~約5000mg(例えば、約60mg~約4500mg、約60mg~約4000mg、約60mg~約3500mg、約60mg~約3000mg、約60mg~約2500mg、約650mg~約2000mg、約60mg~約1500mg、約100mg~約1500mg、約300mg~約1500mg、約500mg~約1500mg、約700mg~約1500mg、約1000mg~約1500mg、約1000mg~約1400mg、約1100mg~約1300mg、約1150mg~約1250mg、約1175mg~約1225mg、または約1190mg~約1210mg、例えば、約1200mg±5mg、約1200±2.5mg、約1200±1.0mg、約1200±0.5mg、約1200±0.2mg、または約1200±0.1mg)であり得る。場合によっては、本方法は、個体にPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))を約1200mg(例えば、約1200mgまたは約15mg/kgの固定用量)で投与することを含む。
【0221】
場合によっては、個体(例えば、ヒト)に投与されるPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))の量は、約0.01~約50mg/個体の体重1kgの範囲(例えば、約0.01~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.1mg/kg~約30mg/kg、約1mg/kg~約30mg/kg、約2mg/kg~約30mg/kg、約5mg/kg~約30mg/kg、約5mg/kg~約25mg/kg、約5mg/kg~約20mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、または約12mg/kg~約18mg/kg、例えば、約15±2mg/kg、約15±1mg/kg、約15±0.5mg/kg、約15±0.2mg/kg、または約15±0.1mg/kg)であり得る。場合によっては、方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))を約15mg/kgで個体に投与することを含む。
【0222】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))を個体(例えば、ヒト)に1200mgで3週間毎に(q3w)静脈内投与する。用量は、注入物等の、単回用量として、または複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7回、または7回より多くの用量)として投与され得る。
【0223】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))は、約840mgの用量で2週間毎に、例えば静脈内投与され得る。
【0224】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))は、約1200mgの用量で3週間毎に、例えば静脈内投与され得る。
【0225】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))は、約1680mgの用量で4週間毎に、例えば静脈内投与され得る。
【0226】
場合によっては、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)またはPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体))は、60分間にわたって静脈内(例えば、注入によって)投与され得る。場合によっては、例えば、最初の用量が許容されるならば、その後の用量は30分間にわたって静脈内(例えば、注入によって)投与される場合がある。
【0227】
場合によっては、アテゾリズマブは、約840mgの用量で2週間毎に静脈内投与され得る。
【0228】
場合によっては、アテゾリズマブは、約1200mgの用量で3週間毎に静脈内投与され得る。
【0229】
場合によっては、アテゾリズマブは、約1680mgの用量で4週間毎に静脈内投与され得る。
【0230】
場合によっては、アテゾリズマブは、840mgの用量で2週間毎に静脈内投与され得る。
【0231】
場合によっては、アテゾリズマブは、1200mgの用量で3週間毎に静脈内投与され得る。
【0232】
場合によっては、アテゾリズマブは、1680mgの用量で4週間毎に静脈内投与され得る。
【0233】
アテゾリズマブは、60分間にわたって静脈内(例えば、注入によって)投与され得る。場合によっては、例えば、最初の用量が許容されるならば、その後のアテゾリズマブの用量は30分間にわたって静脈内(例えば、注入によって)投与される場合がある。
【0234】
併用処置において投与される本抗体の用量は、単剤処置と比較して減少し得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易にモニタリングされる。一例では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、がんを処置するために個体に単剤療法として投与される。他の例では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、がんを処置するために、本明細書中に記載されるような併用療法として個体に投与される。
【0235】
いくつかの態様では、有効量のタキサン(例えば、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、またはドセタキセル)が対象に投与される。タキサンは、任意の適切な用量で投与され得る。一般的な提案として、ヒトに投与されるタキサン(例えば、nab-パクリタキセル)の治療有効量は、一回以上の投与によるかどうかにかかわらず、約25~約300mg/m(例えば、約25mg/m、約50mg/m、約75mg/m、約100mg/m、約125mg/m、約150mg/m、約175mg/m、約200mg/m、約225mg/m、約250mg/m、約275mg/m、または約300mg/m)の範囲である。いくつかの態様では、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、例えば、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、各21日間サイクルの第1、8および15日目、または各28日間サイクルの第1、8および15日目に投与され得る。
【0236】
いくつかの態様では、タキサンはnab-パクリタキセルである。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは、毎週約50mg/m~約200mg/mの用量で個体に投与される。例えば、いくつかの態様では、約100mg/mのnab-パクリタキセルが投与される。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは、毎週約100mg/mの用量で個体に投与される。別の態様では、約125mg/mのnab-パクリタキセルが投与される。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは、毎週約125mg/mの用量で個体に投与される。特定の態様では、nab-パクリタキセルは、毎週約125mg/mの用量で投与され得る。いくつかの態様では、nab-パクリタキセルは、約125mg/mの用量で、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間、毎週投与され得る。特定の態様では、nab-パクリタキセルは、約12週間にわたって毎週約125mg/mの用量で投与され得る。
【0237】
別の態様では、タキサンはパクリタキセルである。いくつかの態様では、パクリタキセルは、毎週約40mg/m~約200mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの態様では、パクリタキセルは、約80mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの態様では、パクリタキセルは、毎週約80mg/mの用量で個体に投与される。別の態様では、パクリタキセルは100mg/mで投与される。他の態様では、パクリタキセルは、約125mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの態様では、パクリタキセルは、約80mg/mの用量で、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、またはそれを超える期間、毎週投与され得る。特定の態様では、パクリタキセルは、約12週間にわたって毎週約80mg/mの用量で投与され得る。
【0238】
いくつかの態様では、有効量のアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)が対象に投与される。アントラサイクリンは、任意の適切な用量で投与され得る。例えば、アントラサイクリンは、約1mg/m~約200mg/m、例えば約1mg/m、約5mg/m、約10mg/m、約15mg/m、約20mg/m、約25mg/m、約30mg/m、約35mg/m、約40mg/m、約45mg/m、約50mg/m、約55mg/m、約60mg/m、約65mg/m、約70mg/m、約75mg/m、約80mg/m、約85mg/m、約90mg/m、約95mg/m、約100mg/m、約105mg/m、約110mg/m、約115mg/m、約120mg/m、約125mg/m、約130mg/m、約135mg/m、約140mg/m、約145mg/m、約150mg/m、約155mg/m、約160mg/m、約165mg/m、約170mg/m、約175mg/m、約180mg/m、約185mg/m、約190mg/m、約195mg/mまたは約200mg/mの用量で投与され得る。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に対象に投与される。特定の態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約60mg/mの用量で2週間毎に投与される。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約60mg/mの用量で2週間毎に、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間投与される。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約60mg/mの用量で、2週間毎に約8週間にわたって投与される。他の特定の態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約90mg/mの用量で2週間毎に投与される。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約90mg/mの用量で2週間毎に、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間投与される。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、約90mg/m2の用量で、2週間毎に約8週間にわたって投与される。
【0239】
例えば、いくつかの態様では、ドキソルビシンは、約60mg/mの用量で2週間毎に、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間投与される。いくつかの態様では、ドキソルビシンは、約60mg/mの用量で2週間毎に約8週間にわたって投与される。
【0240】
別の例では、いくつかの態様で、エピルビシンは、約90mg/mの用量で2週間毎に、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間投与される。いくつかの態様では、エピルビシンは、約90mg/mの用量で、2週間毎に約8週間にわたって投与される。
【0241】
いくつかの態様では、有効量のアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))が対象に投与される。アルキル化剤は、任意の適切な用量で投与され得る。例えば、アルキル化剤は、約1mg/m~約2000mg/m、例えば約1mg/m、約50mg/m、約100mg/m、約150mg/m、約200mg/m、約250mg/m、約300mg/m、約350mg/m、約400mg/m、約450mg/m、約500mg/m、約550mg/m、約600mg/m、約650mg/m、約700mg/m、約750mg/m、約800mg/m、約850mg/m、約900mg/m、約950mg/m、約1000mg/m、約1050mg/m、約1100mg/m、約1150mg/m、約1200mg/m、約1250mg/m、約1300mg/m、約1350mg/m、約1400mg/m、約1450mg/m、約1500mg/m、約1550mg/m、約1600mg/m、約1650mg/m、約1700mg/m、約1750mg/m、約1800mg/m、約1850mg/m、約1900mg/m、約1950mg/mまたは約2000mg/mの用量で投与され得る。
【0242】
いくつかの態様では、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に対象に投与される。いくつかの態様では、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、約600mg/mの用量で2週間毎に、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間またはそれを超える期間投与される。いくつかの態様では、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、約600mg/mの用量で、約2週間毎に約2週間毎に、約8週間にわたって投与される。
【0243】
いくつかの態様では、本発明の併用療法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)の投与を含む。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、当技術分野で公知の任意の適切な方法で投与され得る。例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、連続的に(異なる時間に)または同時に(同じ時間に)投与され得る。いくつかの態様では、各薬剤は別個の組成物中にある。例えば、いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)とは別個の組成物中にある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)と同じ組成物中にある。
【0244】
PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込み投与、吸入投与、髄腔内投与、脳室内投与または鼻腔内投与される。いくつかの態様では、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込み投与、吸入投与、髄腔内投与、脳室内投与または鼻腔内投与される。いくつかの態様では、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込み投与、吸入投与、髄腔内投与、脳室内投与または鼻腔内投与される。いくつかの態様では、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、埋め込み投与、吸入投与、髄腔内投与、脳室内投与または鼻腔内投与される。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は静脈内投与される。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は注入によって静脈内投与される。
【0245】
いくつかの態様では、方法は、追加の治療をさらに含み得る。追加の治療は、放射線療法、手術(例えば、腫瘍摘出手術および乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植術、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組み合わせであり得る。追加の治療は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの態様では、追加の治療は、小分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。いくつかの態様では、追加の治療は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生および/または重症度を軽減することを意図した薬剤、例えば、抗悪心剤など)の投与である。いくつかの態様では、追加の治療は放射線療法である。いくつかの態様では、追加の治療は手術である。いくつかの態様では、追加の治療は放射線療法および手術の組合せである。いくつかの態様では、追加の治療はγ線照射である。いくつかの態様では、追加の治療は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または化学予防剤である。追加の療法は、本明細書に記載の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。追加の治療は、G-CSFおよび/またはGM-CSF(例えば、フィルグラスチムおよび/またはペグフィルグラスチム)を含み得る。
【0246】
いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中にPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中にPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0247】
いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0248】
別の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中にPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中にPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0249】
さらに他の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%以上においてPD-L 1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると決定されている。
【0250】
なおさらなる態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中にPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0251】
なおさらなる態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0252】
さらに別の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されており、および/または腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0253】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞によって構成される腫瘍サンプルの割合は、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、SP142抗体)を使用してIHCによって評価されるように、対象から得られた腫瘍サンプルの切片中の腫瘍浸潤免疫細胞によって覆われた腫瘍面積の割合であり得ることが理解されるべきである。例えば、実施例1(例えば、表4)を参照されたい。
【0254】
いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0255】
他の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%未満においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0256】
他の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%以上においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。例えば、いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%~50%未満(例えば、5%~49.5%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、10%~49.5%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、15%~49.5%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、20%~49.5%、20%~45%、20%~40%、20%~35%、20%~30%、20%~25%、25%~49.5%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~49.5%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~49.5%、35%~45%、35%~40%、40%~49.5%、40%~45%、または45%~49.5%)のPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると決定されている。
【0257】
さらに他の態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。いくつかの態様では、対象から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%~約99%(例えば、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~99%、55%~95%、55%~90%、55%~85%、55%~80%、55%~75%、55%~70%、55%~65%、55%~60%、60%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~99%、65%~95%、65%~90%、65%~85%、65%~80%、65%~75%、65%~70%、70%~99%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~95%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~95%、85%~90%、90%~99%、または90%~95%)においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0258】
本明細書に記載される方法のいずれかは、PD-L1の存在および/または発現レベルを判定することを含み得る
【0259】
前述の態様のいずれかのいくつかの態様では、腫瘍サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプルまたは凍結腫瘍サンプルである。
【0260】
本明細書に記載の任意のバイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベルは、本明細書に記載の任意の方法を使用して、または当技術分野で公知のアプローチを使用して測定し得る。
【0261】
上記のバイオマーカーのいずれか(PD-L1(例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のPD-L1発現および/または患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞(TC)のPD-L1発現)を含む)の存在および/または発現レベルは、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、および/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な基準に基づいて定性的および/または定量的に評価し得る。当該技術分野で既知であり当業者によって理解されている、このようなバイオマーカーを測定するための方法としては、IHC、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液系アッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学酵素活性アッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)、ならびに例えば、分岐DNA、SISBA、TMA、および同様のものなどの他の増幅型検出方法を含む)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、全ゲノム配列決定(WGS)、ならびに/または遺伝子発現の逐次分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、および/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子および遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubelら編(Current Protocols In Molecular Biology、1995)、Units 2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)、および18(PCR解析)において見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイ等の多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0262】
いくつかの態様では、バイオマーカーの発現レベルはタンパク質発現レベルであり得る。特定の態様では、方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、本明細書に記載のバイオマーカーに特異的に結合する抗体とサンプルを接触させること、および抗体とバイオマーカーとの間に複合体が形成されるかどうかを検出することを含む。このような方法は、インビトロ法またはインビボ法であってもよい。いくつかの態様では、抗体を使用して、PD-1軸結合アンタゴニスト、例えば抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体、例えば個体を選択するためのバイオマーカーを含む抗がん療法による処置に適格な患者を選択する。
【0263】
タンパク質発現レベルを測定する、当技術分野で公知であるか、または本明細書で提供される任意の方法を使用してもよい。例えば、いくつかの態様では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、放射免疫アッセイ、ドットブロッティング、免疫検出法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光法、質量分析およびHPLCからなる群から選択される方法を使用して測定される。
【0264】
いくつかの態様では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞において測定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞において決定される。いくつかの態様では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞および/または腫瘍細胞で測定される。いくつかの態様では、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、末梢血単核球細胞(PBMC)で測定される。
【0265】
特定の態様では、サンプル中のバイオマーカータンパク質の存在および/または発現レベル/量は、IHCおよび染色プロトコルを使用して検査される。組織切片のIHC染色は、サンプル中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であることが示されてきた。方法、アッセイおよび/またはキットのいずれかのいくつかの態様では、バイオマーカーは、PD-L1またはCD8のタンパク質発現産物のうちの1つ以上である。一実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体によってサンプル(患者から得られる腫瘍サンプルなど)のIHC分析を実行することと、(b)サンプル中のバイオマーカーの発現レベルを測定することと、を含む方法を使用して測定される。いくつかの態様では、IHC染色強度が基準に対する相対値で決定される。いくつかの実施形態では、基準は、基準値である。いくつかの態様では、基準は基準サンプル(例えば、対照細胞株染色サンプル、非がん性患者由来の組織サンプル、または目的のバイオマーカーについて陰性であると判定された腫瘍サンプル)である。
【0266】
例えば、いくつかの態様では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを使用して測定される。いくつかの態様では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を使用して検出される。任意の適切な抗PD-L1抗体を使用し得る。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はSP142である。
【0267】
IHCは、形態学的染色および/またはインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、ISH)などの追加の技術と組み合わせて行われてもよい。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイおよび間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合は、直接判定される。この直接アッセイは、さらなる抗体相互作用なしで可視化され得る、蛍光タグまたは酵素標識された一次抗体等の標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原に結合し、次いで、標識された二次抗体が該一次抗体に結合する。二次抗体が酵素的標識にコンジュゲートする場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体が、一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
【0268】
IHCに使用される一次抗体および/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリにグループ化され得る:(a)35S、14C、125I、H、131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユーロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコエリスリン、フィコシアニン、またはSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販のフルオロフォアを含むがこれらに限定されない、蛍光標識および/または上記のいずれか1種以上の誘導体、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、これらのいくつかのレビューを提供する。酵素的標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌性ルシフェラーゼ、例えば、米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0269】
酵素-基質の組み合わせの例としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)および基質としての水素ペルオキシダーゼ;発色基質としてパラ-ニトロフェニルホスフェートを有するアルカリホスファターゼ(AP);および発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの一般的なレビューについては、例えば、米国特許第4,275,149号および同第4,318,980号を参照されたい。
【0270】
検体は、例えば、手動で調製してもよいし、または自動染色機器(例えば、Ventana BenchMark XTまたはBenchmark ULTRA instrument)を使用して、調製してもよい。このようにして調製された検体は、マウントかつカバースリップされ得る。次いで、例えば、顕微鏡を使用して、スライド評価が判定され、当技術分野で日常的に使用される染色強度基準が用いられ得る。一態様では、腫瘍由来の細胞および/または組織がIHCを使用して検査される場合、(サンプル中に存在し得る間質組織または周囲組織とは対照的に)腫瘍細胞および/または組織において染色が決定または評価され得ることが理解されたい。他の態様では、染色は、サンプル中に存在し得る間質組織または周囲組織において判定または評価され得る。いくつかの実施形態では、IHCを使用して腫瘍由来の細胞および/または組織を検査する場合、染色は、腫瘍内または腫瘍周辺免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において判定または評価することを含むことを理解されたい。いくつかの態様では、バイオマーカーの存在は、サンプルの0%超、サンプルの少なくとも1%、サンプルの少なくとも5%、サンプルの少なくとも10%、サンプルの少なくとも15%、サンプルの少なくとも15%、サンプルの少なくとも20%、サンプルの少なくとも25%、サンプルの少なくとも30%、サンプルの少なくとも35%、サンプルの少なくとも40%、サンプルの少なくとも45%、サンプルの少なくとも50%、サンプルの少なくとも55%、サンプルの少なくとも60%、サンプルの少なくとも65%、サンプルの少なくとも70%、サンプルの少なくとも75%、サンプルの少なくとも80%、サンプルの少なくとも85%、サンプルの少なくとも90%、サンプルの少なくとも95%、またはそれ以上においてIHCによって検出される。サンプルは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば、病理学者によって、または自動画像分析によってスコア付けされ得る。
【0271】
上記方法のいずれかのいくつかの態様では、バイオマーカーが、診断用抗体(すなわち、一次抗体)を使用する免疫組織化学によって検出される。いくつかの態様では、診断用抗体は、ヒト抗原に特異的に結合する。いくつかの態様では、診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの態様では、診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの態様では、診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの態様では、診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、診断用抗体は、直接標識される。他の態様では、診断用抗体は間接的に標識される(例えば、二次抗体によって)。
【0272】
前記方法のいずれかの他の態様では、バイオマーカーの発現レベルは核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル(例えば、mRNA発現レベル))であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が、使用され得る。いくつかの態様では、核酸発現レベルは、RNAseq、RT-qPCR、qPCR、マルチプレックスqPCRまたはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、ISH、またはそれらの組み合わせを使用して測定される。
【0273】
細胞におけるmRNAの評価のための方法は周知であり、該方法としては、例えば、遺伝子発現の連続解析(SAGE)、全ゲノム配列決定(WGS)、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(1種以上の遺伝子に特異的な標識されたリボプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、および関連する技術など)、および様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1種以上に特異的な相補的プライマーを使用するRT-PCR(例えば、qRT-PCR)、および例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなどの他の増幅型検出方法など)が挙げられる。加えて、このような方法は、生物学的サンプル中の標的mRNAのレベルを(例えば、アクチン・ファミリー・メンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)決定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る。場合によっては、増幅された標的cDNAの配列が決定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞サンプル中の標的mRNA等のmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験および対照組織サンプルからの試験および対照mRNAサンプルを逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が分かるように構成する。例えば、免疫療法および抑制性間質アンタゴニストを含む処置の臨床的利益の増加または減少と相関する発現を有する遺伝子のセレクションが、固体支持体上にアレイされ得る。標識されたプローブの、特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来するサンプルがその遺伝子を発現することを示す。
【0274】
前記態様のいずれかのいくつかの態様では、サンプルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週間)、数ヶ月、または数年前)に個体から得られる。前記方法のいずれかのいくつかの態様では、個体からのサンプルは、抗がん療法の投与後約2週間~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)で得られる。いくつかの態様では、個体からのサンプルは、抗がん療法の投与後約4~約6週間で得られる。
【0275】
いくつかの態様では、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織サンプル、初代細胞もしくは培養細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、および組織培養培地、均質化組織などの組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、またはそれらの任意の組み合わせで検出される。いくつかの態様では、サンプルは、組織サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)、細胞サンプル、全血サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、腫瘍組織サンプルは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、腫瘍組織サンプルは、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)サンプル、保存サンプル、新鮮サンプル、または凍結サンプルである。
【0276】
例えば、前記方法のいずれかのいくつかの態様では、バイオマーカーの発現レベルは、公知の技術(例えば、IHC、免疫蛍光顕微鏡法、またはフローサイトメトリー)を使用して、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはそれらの組み合わせで検出される。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、またはこれらの任意の組合せ、および他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。このような腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(例えば、CD8Tリンパ球(例えば、CD8Tエフェクター(Teff)細胞)および/またはCD4Tリンパ球(例えば、CD4Teff細胞)、Bリンパ球、または他の骨髄系列細胞、例としては、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、およびナチュラルキラー(NK)細胞であってもよい。いくつかの態様では、バイオマーカーの染色は、膜染色、細胞質染色、またはそれらの組み合わせとして検出される。他の態様では、バイオマーカーの非存在は、基準サンプルと比較して、サンプルにおいて染色されないか、または無染色として検出される。
【0277】
前記方法のいずれかの特定の態様では、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するかまたは含有することが疑われるサンプルにおいて評価される。サンプルは、例えば、がん(例えば、乳がん、(例えばTNBC(例えばeTNBC))に罹患している、それが疑われる、またはそれと診断された患者から得られた組織生検または転移性病変であってもよい。いくつかの態様では、サンプルは、乳房組織のサンプル、乳房腫瘍の生検材料、既知もしくは疑いのある転移性乳がん病変もしくは切片、または循環がん細胞、例えば乳がん細胞を含むことが既知もしくは疑いのある血液サンプル、例えば末梢血サンプルである。サンプルは、がん細胞、すなわち腫瘍細胞と非がん性細胞(例えば、リンパ球、例えばT細胞またはNK細胞)の両方を含み得、特定の態様では、がん性細胞と非がん性細胞の両方を含む。組織切除片、生検、および体液(例えば、がん/腫瘍細胞を含む血液サンプル)を含む生物学的サンプルを得る方法は、当技術分野で周知である。
【0278】
患者は、進行した、難治性の、再発性の、化学療法抵抗性および/または白金抵抗性の形態のがんを有し得る。
【0279】
特定の態様では、第1のサンプル中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、第2のサンプル中の存在/非存在および/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。特定の態様では、第1のサンプル中のバイオマーカーの存在/非存在および/または発現レベル/量は、第2のサンプル中の存在および/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。特定の態様では、第2のサンプルは、基準サンプル、基準細胞、基準組織、基準サンプル、対照細胞、または対照組織である。
【0280】
特定の態様では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、試験サンプルが得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られた同じ患者または個体からの単一のサンプルまたは組み合わせた複数のサンプルである。例えば、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、試験サンプルが得られるよりも早い時点で同じ患者または個体から得られる。このような基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、基準サンプルががんの最初の診断中に得られる場合、かつがんが転移性になったときに試験サンプルが後で得られる場合に有用であり得る。
【0281】
特定の態様では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1名以上の健康な個体からの複合多重サンプルである。特定の態様では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、患者または個体ではない疾患または障害(例えば、がん)を有する1名以上の個体からの複合多重サンプルである。特定の態様では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、正常組織からのプールRNAサンプルまたは患者ではない1名以上の個体からのプール血漿もしくは血清サンプルである。特定の態様では、基準サンプル、基準細胞、基準組織、対照サンプル、対照細胞または対照組織は、患者ではない疾患または障害(例えば、がん)を有する1名以上の個体からの腫瘍組織からのプールRNAサンプルまたはプール血漿もしくは血清サンプルである。
【0282】
IV.他の併用療法
別の抗がん剤またはがん治療と組み合わせて、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)を対象に投与する、対象の乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置または進行遅延させる方法も本明細書で提供される。いくつかの態様では、本方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、ならびに追加の治療薬を個体に投与することを含む。任意の適切な抗がん剤、がん治療、および/または追加の治療剤を使用してもよい。
【0283】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、追加の化学療法または化学療法剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、放射線療法または放射線治療剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、標的治療または標的治療薬と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、追加の免疫療法または免疫療法薬、例えば、モノクローナル抗体と併せて投与される場合がある。
【0284】
理論に拘束されることを望むものではないが、活性化する共刺激分子を促進することによるまたは陰性共刺激分子を阻害することによるT細胞刺激の増強が、腫瘍細胞死を促し、それによってがんの進行を治療または遅延し得ると考えられる。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、活性化される共刺激分子に対するアゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、活性化共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含み得る。いくつかの態様では、活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、阻害性共刺激分子としては、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼが挙げられ得る。
【0285】
いくつかの態様では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0286】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CTLA-4(CD152としても知られている)に対するアンタゴニスト、例えばブロッキング抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、B7-H3(CD276としても知られている)に対するアンタゴニスト、例えばブロッキング抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、MGA271と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、TGFベータに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)またはLY2157299と併せて投与される場合がある。
【0287】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはCTL)の養子移入を含む処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ドミナントネガティブなTGFベータ受容体、例えばドミナントネガティブなTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、HERCREEMプロトコル(例えばClinicalTrials.govIdentifierNCT00889954を参照されたい)を含む処置と併せて投与される場合がある。
【0288】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、またはILAとしても知られている)に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CD40に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CP-870893と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、OX40(CD134としても知られている)に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CD27に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CDX-1127と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対するアンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、IDOアンタゴニストとは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている)である。
【0289】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、抗体-薬物コンジュゲートと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、抗体-薬物コンジュゲートは、メルタンシンまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600AまたはRG7599としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、ado-トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)、Genentechとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、DMUC5754Aと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体-薬物コンジュゲート、例えばMMAEとコンジュゲートしたEDNBRに対する抗体と併せて投与される場合がある。
【0290】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、血管形成阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、VEGFに対する抗体、例えば、VEGF-Aと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)およびタキサン(例えば、nab-パクリタキセル)は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentechとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、アンジオポエチン2に対する抗体(Ang2としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、MEDI3617と併せて投与される場合がある。
【0291】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、抗悪性腫瘍薬と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CSF-1Rを標的とする薬剤(M-CSFRまたはCD115としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、抗CSF-1R(IMC-CS4としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンガンマと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ロフェロン-A(組換え型インターフェロンアルファ-2aとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GM-CSF(組換え型ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはLEUKINE(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-2(アルデスロイキンまたはPROLEUKIN(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-12と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CD20を標的とする抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(GA101またはGAZYVA(登録商標)としても知られている)またはリツキシマブである。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GITRを標的とする抗体と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、GITRを標的とする抗体はTRX518である。
【0292】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、がんワクチンと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、がんワクチンはペプチドがんワクチンであり、これはいくつかの態様では個別化ペプチドワクチンである。いくつかの態様では、ペプチドがんワクチンは、多価長ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチン(例えば、Yamadaら,Cancer Sci,104:14-21,2013を参照されたい)である。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、アジュバントと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られている)、LPS、MPLまたはCpGODNを含む処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-1と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、HMGB1と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-10アンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-4アンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、IL-13アンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、HVEMアンタゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ICOSアゴニストと併せて、例えば、ICOS-LまたはICOSに対するアゴニスト抗体の投与によって投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CX3CL1を標的とする処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CXCL9を標的とする処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CXCL10を標的とする処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、CCL5を標的とする処置と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、LFA-1またはICAM1アゴニストと併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、セレクチンアゴニストと併せて投与される場合がある。
【0293】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、標的療法と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、B-Rafの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ダムラフェニブ(TAFINLARF(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、MEKの阻害剤、例えば、MEK1(MAP2K1としても知られている)またはMEK2(MAP2K2としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、コビメチニブ(GDC-0973またはXL-518としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、トラメチニブ(MEKINIST(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、K-Rasの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、c-Metの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、オナルツズマブ(MetMAbとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、Alkの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、AF802(CH5424802またはアレクチニブとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、BKM120と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、イデラリシブ(GS-1101またはCAL-101としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、ペリホシン(KRX-0401としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)はAktの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、MK2206と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GSK690693と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GDC-0941と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、mTORの阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、シロリムス(ラパマイシンとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、テムシロリムス(CCI-779またはTORISEL(登録商標)としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、エベロリムス(RAD001としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、
リダフォロリムス(AP-23573、MK-8669、またはデフォロリムスとしても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、OSI-027と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、AZD8055と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、INK128と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、二重PI3K/mTOR阻害剤と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、XL765と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GDC-0980と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、BEZ235(NVP-BEZ235としても知られている)と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、BGT226と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、GSK2126458と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、PF-04691502と併せて投与される場合がある。いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)は、PF-05212384(PKI-587としても知られている)と併せて投与される場合がある。
【0294】
前述の態様のいずれかでは、PD-1軸結合アンタゴニストはヒトPD-1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0295】
前述の態様のいずれかのいくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体である。
【0296】
前述の態様のいずれかのいくつかの態様では、タキサンはnab-パクリタキセルまたはパクリタキセルである。
【0297】
前述の態様のいずれかのいくつかの態様では、アントラサイクリンはドキソルビシンまたはエピルビシンである。
【0298】
前述の態様のいずれかのいくつかの態様では、アルキル化剤はナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファランまたはベンダムスチン)である。いくつかの態様では、アルキル化剤はシクロホスファミドである。
【0299】
V.PD-1軸結合アンタゴニスト
対象における乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置するためまたはその進行を遅延させるための方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む有効量の処置レジメンを対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、処置は、対象において応答をもたらす。いくつかの態様では、応答は完全奏効(例えば、病理学的完全奏効)である。乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を有する対象において免疫機能を増強する方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む有効量の処置レジメンを対象に投与することを含む方法も本明細書で提供される。本明細書中に記載される方法のいずれかは、下記に記載されるPD-1軸結合アンタゴニストのいずれかを含み得る。
【0300】
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストとしては、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニストおよびPD-L2結合アンタゴニストが挙げられる。PD-L1(プログラム死リガンド1)はまた、当技術分野において「プログラム死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、および「PDL1」としても言及される。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.Q9NZQ7.1に示される。PD-1(プログラム死1)はまた、当該技術分野において「プログラム死1」、「PDCD1」、「CD279」、および「SLEB2」としても言及される。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.Q9BQ15116に示されている。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当技術分野で「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、および「PDL2」とも称される。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.Q9BQ51に示されている。いくつかの態様では、PD-L1、PD-1およびPD-L2はヒトPD-L1、PD-1およびPD-L2である。
【0301】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、およびMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載されている抗PD-L1抗体である。BMS-936559としても知られているMDX-1105は、WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間、および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害し得る。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、および(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はヒト抗体である。
【0302】
本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、およびそれらの作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634号、WO2007/005874、WO2011/066389、およびUS2013/034559に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明において有用な抗PD-L1抗体(このような抗体を含有する組成物を含む)は、がんを処置するためにタキサン、アントラサイクリンおよびアルキル化剤と併用して使用され得る。
【0303】
いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1および/またはPD-L2である。別の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0304】
いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペムブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、およびBGB-108からなる群から選択される。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。いくつかの態様では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブとしても知られているMDX-1106は、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。ランブロリズマブとしても知られているMK-3475は、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0305】
抗PD-L1抗体
いくつかの態様では、製剤中の抗体は、重鎖および/または軽鎖配列中に少なくとも1つのトリプトファン(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つ)を含む。いくつかの態様では、アミノ酸トリプトファンは、抗体のHVR領域、フレームワーク領域および/または定常領域にある。いくつかの態様では、抗体はHVR領域に2つまたは3つのトリプトファン残基を含む。いくつかの態様では、製剤中の抗体は抗PD-L1抗体である。PDL1、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hとしても知られているPD-L1(プログラム死リガンド1)は、膜貫通型タンパク質であり、PD-1とのその相互作用はT細胞活性化およびサイトカイン産生を阻害する。いくつかの態様では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体はヒトPD-L1に結合する。本明細書に記載される方法に使用され得る抗PD-L1抗体の例は、PCT特許出願第WO2010/077634号および米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0306】
いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間、および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害し得る。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、および(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はヒト化抗体である。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体はヒト抗体である。
【0307】
WO2010/077634および米国特許第8,217,149号に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列および/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。なお更なる態様では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、
(a)前記重鎖配列は、以下の重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し:
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:
4)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。
【0308】
一態様では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2およびHVR-H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
(a)HVR-H1配列は、GFTFSXSWIH(配列番号5)であり;
(b)HVR-H2配列は、AWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号6)であり;
(c)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり;
さらに、式中、XはDまたはGであり;XはSまたはLであり;XはTまたはSである。1つの特定の態様では、XはDであり;XはSであり、XはTである。
【0309】
別の態様では、ポリペプチドは、以下の式に従うHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、フレームワーク配列の少なくとも1つは以下の通りである:
HC-FR1はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号8)であり、
HC-FR2はWVRQAPGKGLEWV(配列番号9)であり、
HC-FR3は RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり、
HC-FR4はWGQGTLVTVSA(配列番号11)である。
【0310】
なおさらなる一態様では、重鎖ポリペプチドは、さらにHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3を含む可変領域軽鎖と組み合わせられ;
(a)HVR-L1配列は、RASQXTXA(配列番号12)であり;
(b)HVR-L2配列は、SASXLX10S、(配列番号13)であり;
(c)HVR-L3配列は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり、
式中、XはDまたはVであり;XはVまたはIであり;XはSまたはNであり;XはAまたはFであり;XはVまたはLであり;XはFまたはTであり;X10はYまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり、X15は、A、W、R、PまたはTである。なおさらなる態様では、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。
【0311】
なおさらなる一態様では、軽鎖は、以下の式に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)。なおさらなる一態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる態様では、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、フレームワーク配列の少なくとも1つは以下の通りである:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり、
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり、
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり、
LC-FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号18)である。
【0312】
別の態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片であって;
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3を含み、更に;
(i)HVR-H1配列は、GFTFSXSWIH(配列番号5)であり、
(ii)HVR-H2配列は、AWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号6)であり、
(iii)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3を含み、更に:
(i)HVR-L1配列は、RASQXTXA(配列番号12)であり、
(ii)HVR-L2配列は、SASXLX10S(配列番号13)であり、
(iii)HVR-L3配列は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり、
式中、XはDまたはGであり;XはSまたはLであり;XはTまたはSであり;XはDまたはVであり;XはVまたはIであり;XはSまたはNであり;XはAまたはFであり;XはVまたはLであり;XはFまたはTであり;X10はYまたはAであり;X11は、Y、G、FまたはSであり;X12は、L、Y、FまたはWであり;X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり;X14は、H、V、P、TまたはIであり;X15は、A、W、R、PまたはTである抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供される。特定の態様では、XはDであり;XはSであり;XはTである。別の態様では、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。さらに別の態様では、XはDであり;XはSであり、XはTであり、XはDであり;XはVであり;XはSであり;XはAであり;XはVであり;XはFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、X15はAである。
【0313】
さらなる一態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、および11として記載される。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0314】
さらに特定の態様では、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。さらに特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。また更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。さらに特定の態様では、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。さらに特定の態様では、「エフェクターレスFc変異(eeffector-less Fc mutation)」または非グリコシル化(aglycosylation)に起因する。なおさらなる態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域におけるN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0315】
さらに別の態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体であって;
(a)重鎖が、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、およびRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を更に含むか、または
(b)軽鎖が、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、およびQQYLYHPAT(配列番号24)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を更に含む、抗PD-L1抗体が提供される。
【0316】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0317】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、および11として記載される。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0318】
さらに特定の態様では、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。さらに別の態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。さらに特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。さらに特定の態様では、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域におけるN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0319】
さらに別の態様では、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。
【0320】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、およびWGQGTLVTVSS(配列番号27)として記載される。
【0321】
なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0322】
なおさらなる特定医の態様では、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる態様では、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる態様では、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、原核細胞内での産生に起因する。なおさらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域におけるN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0323】
さらなる態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下のとおりである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号27)。
【0324】
なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下の通りである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)
LC-FR4 FGQGTKVEIK(配列番号28)。
【0325】
さらに特定の態様では、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる態様では、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらなる態様では、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる態様では、エフェクターレスFc変異は、定常領域におけるN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0326】
さらに別の態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体であって;
(c)重鎖はそれぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、およびRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を更に含み、ならびに/または、
(d)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、およびQQYLYHPAT(配列番号24)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を更に含む、抗PD-L1抗体が抵抗される。
【0327】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0328】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)としてHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、およびWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として記載される。
【0329】
なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0330】
さらに特定の態様では、抗体は、ヒトまたはマウスの定常領域をさらに含む。なおさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらに特定の態様では、ヒト定常領域はIgG1である。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なおさらに特定の態様では、抗体は、低下したまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらに特定の態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる一態様では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内でのN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0331】
なおさらなる態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。
【0332】
いくつかの態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。いくつかの態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する抗PD-L1抗体が提供される。いくつかの態様では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。いくつかの態様では、重鎖および/または軽鎖のN末端の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸残基が、削除、置換、または修飾され得る。
【0333】
なおさらなる態様では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、および/または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号33)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。
【0334】
いくつかの態様では、重鎖および軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であって、軽鎖配列が、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。いくつかの態様では、重鎖および軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であって、重鎖配列が、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。いくつかの態様では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体であって、軽鎖配列が、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列が、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、抗PD-L1抗体が提供される。
【0335】
いくつかの態様では、単離された抗PD-L1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合型またはO-結合型のいずれかである。N-結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が生成される。O-結合型グリコシル化とは、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはスレオニン残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)で置換することによって行われ得る。
【0336】
本明細書の態様のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒUniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるような、トPD-L1、例えば、ヒトPD-L1、またはその変異型に結合し得る。
【0337】
抗PD-1抗体
いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」に対する代替的な名称としては、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブが挙げられる。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号946414-94-4)である。なおさらなる態様では、配列番号1からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/または配列番号2からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。なおさらなる態様では、重鎖配列および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体であって、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し:
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、抗PD-1抗体が提供される。
【0338】
核酸、宿主細胞およびベクター
なおさらなる態様では、本明細書に記載の抗体のいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの態様では、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターを更に含む。なおさらなる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞内にある。さらなる特定の態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる特定の態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0339】
抗体またはその抗原結合断片は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、発現に適した形態の前述の抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を、そのような抗体または断片を産生するのに適した条件下で培養し、および抗体または断片を回収することを含む方法によって、または下記の第VI節に記載される任意の方法に従って作製され得る。
【0340】
VI.抗体の特性および調製
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するために当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節でより詳細に説明される。
【0341】
抗体は、目的の抗原(例えば、PD-L1(ヒトPD-L1など)、PD-1(ヒトPD-1など)、PD-L2(ヒトPD-L2など)など)に対するものである。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
【0342】
ある特定の態様では、本明細書において提供する抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0343】
一態様では、Kdは、以下のアッセイによって記載されるように、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)内で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する。次いで、関心のあるFabを一晩インキュベートする;しかしながら、平衡に達することを達するために、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)でプレートを10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0344】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.ピスカタウェイの、ニュージャージー州)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップを用いて25℃で測定される。簡単に説明すると、供給者の指示に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE社)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて抗原を5μg/ml(およそ0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流速で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原のインジェクション後、1Mのエタノールアミンをインジェクトして、未反応基をブロックする。キネティクス測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍段階希釈物(0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBS中)を、25℃で、およそ25μl/分の流速でインジェクトする。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合および解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって、計算する。平衡解離定数(Kd)は、kオフ/kオン比として算出される例えば、Chenら,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が10-1-1を超える場合、on速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定し得る。
【0345】
(i)抗原の調製
任意に、他の分子にコンジュゲートされる可溶性抗原またはその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体などの膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)に由来し得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技法により形質転換されている細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原およびその形態は、当業者には明らかであろう。
【0346】
(ii)ある特定の抗体に基づく方法
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連抗原およびアジュバントの複数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注入により、動物において生じる。二機能性または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl、またはRN=C=NR(式中、RおよびRは異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤とコンジュゲートすることが有用であり得る。
【0347】
動物は、例えば、タンパク質またはコンジュゲート(ウサギまたはマウスの場合、それぞれ100μgまたは5μg)を、フロイントの完全アジュバント3容量と組み合わせ、溶液を複数の部位で皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入によって完全フロイントアジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの最初の量の1/5~1/10で追加免疫される。7~14日後、動物を採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価が水平状態になるまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたものおよび/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートを、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0348】
本発明のモノクローナル抗体は、Kohlerら.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載され、例えば、ヒト-ヒトハイブリドーマに関してHongoら.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlowら.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版、1988);Hammerlingら.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas563-681(Elsevier,N.Y.,1981),およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)にさらに記載されているハイブリドーマ法を用いて作製し得る。さらなる方法としては、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の生成について、例えば米国特許第7,189,826号明細書に記載される方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、VollmersおよびBandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)、ならびにVollmersおよびBrandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0349】
様々な他のハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;第2006/183887号(完全ヒト抗体)、第2006/059575号;第2005/287149号;第2005/100546号;および第2005/026229号;ならびに米国特許第7,078,492号および第7,153,507号を参照されたい。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルが以下に記載される。一実施形態では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、またはそれを産生し得るリンパ球を誘発するように免疫化される。抗体を、本発明のポリペプチドまたはその断片、およびアジュバント、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(TDM)(RibiImmunochem.Research,Inc.,Hamilton,MT)の複数回の皮下(SC)注射または腹腔内(IP)注射によって動物において産生させる。ポリペプチド(例えば、抗原)またはその断片は、当技術分野で周知の方法、例えば組換え方法を使用して調製し得、そのいくつかは本明細書にさらに記載されている。免疫化動物由来の血清が抗抗原抗体についてアッセイされ、ブースター免疫化が任意に施される。
【0350】
抗抗原抗体を産生する動物由来のリンパ球が単離される。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。
【0351】
その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。例示的な骨髄腫細胞としては、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックビル)から入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞に由来のマウス骨髄腫株が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0352】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻害する。好ましくは、例えば、Evenら、「Trends in Biotechnology」第24巻第3号第105~108頁(2006年)に記載されるウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
【0353】
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドについては、Franek、「Trends in Monoclonal Antibody Research」第111~122頁(2005年)に記載されている。具体的には、標準の培養培地がある特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、またはタンパク質加水分解画分で富化され、アポトーシスが3~6つのアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって著しく抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモル濃度またはそれより高い濃度で存在する。
【0354】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、本明細書に開示される抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイし得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定し得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定され得る。例えば、Munsonら、Anal.Biochem.,107:220(1980)を参照されたい。
【0355】
所望の特異性、親和性、および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る。例えば、Goding(上記参照)を参照されたい。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィー等によって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からのタンパク質の単離の手順の1つが、米国特許出願公開第2005/176122号および米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスで離液性塩等の最小限の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスで少量の有機溶媒を使用することも含む。
【0356】
(iii)ライブラリ由来抗体
本明細書中に開示される抗体は、所望の1つ以上の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で知られている。さらなる方法は、例えば、Hoogenboomら.,inMethods in Molecular Biology178:1-37(O’Brienら編,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、例えば、,McCaffertyら.,Nature348:552-554;Clacksonら.,Nature352:624-628(1991);Marksら.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);MarksおよびBradbury,inMethods in Molecular Biology248:161-175(Lo編,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhuら.,J.Mol.Biol.338(2):299-310 2004);Leeら.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004);ならびにLeeら.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)にさらに記載されている。
【0357】
ある種のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に再結合され、次いでWinterら.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されているような、抗原結合ファージに対してスクリーニングすることが可能である。ファージは、典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリは、Griffithsら,EMBO J,12:725-734(1993)によって記載されているように、免疫化を行わずに、広範囲の非自己抗原およびまた自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローン化し得る。最後に、天然ライブラリはまた、HoogenboomおよびWinter、「J.Mol.Biol.」、第227巻第381~388頁(1992年)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を遂行することによって、合成的に作製し得る。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
【0358】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0359】
(iv)キメラ、ヒト化、およびヒト抗体
ある特定の態様では、本明細書で提供される抗体はキメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれらから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0360】
特定の態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性および親和性は保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体由来であり、かつFR(またはその一部)がヒト抗体配列由来である1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0361】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagroおよび Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)でレビューされ、例えば、Riechmannら,Nature 332:323-329(1988);Queenら,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号、Kashmiriら,Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフトの記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「resurfacing」の記載)、Dall’Acquaら、Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」の記載)、ならびにOsbournら、Methods 36:61-68(2005)およびKlimkaらBr.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングの「ガイド付き選択」アプローチの記載)にさら記載されている。
【0362】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、SimsらJ.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、CarterらProc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);およびPrestaらJ.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、BacaらJ.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)、およびRosokらJ.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)。
【0363】
特定の態様では、本明細書で提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な技法を使用して作製され得る。ヒト抗体は一般的に、van Dijkおよびvan de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)、ならびにLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0364】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製し得る。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含む。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載している米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号、およびVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。そのような動物によって生成されるインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に改変されてもよい。
【0365】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製し得る。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);およびBoernerら,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体もまた、Li etら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。更なる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0366】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても作製され得る。その後、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0367】
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段または組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片に関する概説については、Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129-134を参照されたい。
【0368】
抗体断片を産生するために種々の技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解を介して得られていた(例えば、MorimotoらJournal of Biochemical and Biophysical Methods24:107~117(1992)、およびBrennanらScience,229:81(1985)を参照)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生し得る。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)で発現され、大腸菌(E.coli)から分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離し得る。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成し得る(Carterら,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離し得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が増加したFabおよびF(ab’)断片については、米国特許第5,869,046号明細書に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。特定の態様では、抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であるため、それらは、インビボ使用中の非特異的結合の低減に適し得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合をもたらすように構築され得る。前記のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0369】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子が通常2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合する一方で、三重特異性抗体等のさらなる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製し得る。
【0370】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野で公知である。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(例えば、Millsteinら,Nature,305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな分類のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常親和性クロマトグラフィーステップによって行われる正しい分子の精製は、幾分厄介であり、産物収率は低い。同様の手順は、国際公開第93/08829号、およびTrauneckerら、EMBO J.、10:3655~3659(1991)に記載されている。
【0371】
二重特異性抗体を作製するための当該技術分野で公知の1つのアプローチは、「ノブ・イントゥー・ホール」または「プロチュバランス・イントゥー・キャビティ」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)。このアプローチでは、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)がそれぞれ、界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面が他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用し、それにより、2つの免疫グロブリンポリペプチドの会合を可能にする。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「プロチュバランス」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)は、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「キャビティ」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)に対応するように操作し得る。いくつかの態様では、ホールはノブと同一または同様のサイズであり、2つの界面が相互作用するときに一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に配置可能であるように適切に配置される。理論に拘束されることを望むことなく、これは、ヘテロ多量体を安定させ、かつ他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成を好むと考えられる。いくつかの態様では、このアプローチを使用して、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製し得る。
【0372】
いくつかの態様では、ノブは、小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖で置き換えることによって構築され得る。いくつかの態様では、ホールは、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖で置き換えることによって構築され得る。ノブまたはホールは、元の界面に存在し得るか、または合成的に導入され得る。例えば、ノブまたはホールは、界面をコードする核酸配列を変更させて、少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることによって合成的に導入され得る。核酸配列を改変させるための方法としては、当該技術分野で既知の標準の分子生物学技法が挙げられ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積は、以下の表に示される。いくつかの態様では、元の残基は小さい側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニンまたはバリン)を有し、ノブを形成するためのインポート残基は天然に存在するアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含み得る。いくつかの態様では、元の残基は大きな側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)を有し、ホールを形成するためのインポート残基は天然に存在するアミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、およびバリンを含み得る。
【表1】
アミノ酸の分子量は、水の分子量を差し引いたものである。値は「Handbook of Chemistry and Physics」第43版、Cleveland、Chemical Rubber Publishing Co.(1961年)より。
A.A.Zamyatnin,Prog.Biophys.Mol.Biol.24:107-123,1972.
C.Chothia、J.Mol.Biol.105:1-14、1975からの値。アクセス可能な表面積は、この参考文献の図6~20に定義されている。
【0373】
いくつかの態様では、ノブまたはホールを形成するための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づいて同定される。当該技術分野で既知の三次元構造を得るための技法としては、X線結晶学およびNMRが挙げられ得る。いくつかの態様では、界面は免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの態様では、ヒトIgGのCH3/CH3界面は、4つの逆平行β鎖上に位置する各ドメイン上の16残基を含む。理論に拘束されることを望むことなく、変異残基は、好ましくは、ノブがパートナーCH3ドメイン内の補償ホールではなく周囲の溶媒によって収容され得る危険性を最小限に抑えるように、これらの2つの中央逆平行β鎖上に位置する。いくつかの態様では、2つの免疫グロブリンポリペプチドにおいて対応するノブおよびホールを形成する変異は、以下の表に提供される1つ以上の対に対応する。
【表2】
【0374】
変異は、元の残基、続いてEUナンバリングシステムを使用した位置、次いで導入残基によって示される(全ての残基は一文字アミノ酸コードで示される)。複数の変異は、コロンで区切られている。
【0375】
いくつかの態様では、免疫グロブリンポリペプチドは、上記の表2に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、表2の左欄に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右欄に列挙される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0376】
上述のようにDNAを変異させた後、1つ以上の対応するノブまたはホール形成変異を有する修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の標準の組換え技法および細胞系を使用して発現および精製し得る。例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、同第7,695,936号、同第8,216,805号、米国特許出願公開第2013/0089553号、およびSpiessら、Nature Biotechnology31:753~758、2013を参照されたい。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、E.coli等の原核宿主細胞またはCHO細胞等の真核宿主細胞を使用して産生し得る。対応するノブおよびホールを持つ免疫グロブリンポリペプチドは、共培養下で、宿主細胞中で発現され、ヘテロ多量体として一緒に精製され得るか、または単一培養下で発現され、別個に精製され、インビトロで組立てられ得る。いくつかの態様では、細菌宿主細胞の2つの株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)を、当技術分野で公知の標準的な細菌培養技術を使用して共培養する。いくつかの態様では、2つの株は、例えば、培養において等しい発現レベルを達成するように、特定の比率で混合され得る。いくつかの態様では、2つの株は、50:50、60:40、または70:30の比で混合され得る。ポリペプチドが発現した後、これらの細胞が一緒に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする当該技術分野で既知の標準の技法としては、サイズ排除クロマトグラフィーが挙げられ得る。いくつかの態様では、各修飾免疫グロブリンポリペプチドは、標準的な組換え技術を使用して別々に発現し、それらはインビトロで一緒に組み立てられ得る。構築は、例えば、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で一緒に混合およびインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールで処理することにより)、濃縮し、かつポリペプチドを再酸化することによって達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィー等の標準の技法を使用して精製し得、サイズ排除クロマトグラフィー等の標準の技法を使用して測定し得る。これらの方法のより詳細な説明については、Speissら、Nat Biotechnol.31:753-8、2013を参照されたい。いくつかの態様では、修飾免疫グロブリンポリペプチドをCHO細胞中で別々に発現させ、上記の方法を使用してインビトロで構築し得る。
【0377】
異なる手法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。これらの融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクションされる。これは、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の比率が等しくないと最適な収率が得られる態様では、3つのポリペプチド断片の相互比率を柔軟に調整することが可能である。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合に、またはそれらの比率が特に重要でない場合に、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0378】
このアプローチの1つの態様では、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とから構成される。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造が望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology121:210(1986)を参照されたい。
【0379】
WO96/27011に記載の別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。1つの界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって、これらの大きい側鎖(複数可)と同一または同様の大きさの代償的「空洞」が第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
【0380】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングし得る。このような抗体は、例えば、望まない細胞を免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、HIV感染の治療のために(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製し得る。好適な架橋剤が当技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0381】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も本文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製し得る。Brennanら.,Science,229:81(1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab’)断片を生成する手順を記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在の存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。その後、生成されたFab’断片は、チオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換される。その後、Fab’-TNB誘導体のうちの一方が、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用し得る。
【0382】
近年の進歩により、化学的にカップリングして二重特異性抗体を形成し得るFab’-SH断片を、大腸菌から直接回収することが容易になった。Shalabyら、J.Exp.Med.175:217-225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子の産生について記載している。各Fab’断片は、大腸菌から別個に分泌され、インビトロでの指向性化学的カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成した。
【0383】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養から直接作製および単離するための様々な技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が産生された。Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547~1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に結合させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、その後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用し得る。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448(1993)により記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機構を提供している。それらの断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、ある断片のVドメインおよびVドメインが他の断片の相補的VドメインおよびVドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用することによって二重特異性抗体断片を作製するための別の方法も報告されている。Gruberら、J.Immunol、152:5368(1994)を参照されたい。
【0384】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技法は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」またはBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、国際公開第2004/106381号、同第2005/061547号、同第2007/042261号、および同第2008/119567号を参照されたい)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に配列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一のポリペプチド鎖は、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)ドメインを各々有する2つの一本鎖Fv(scFv)断片を含み、これらのドメインは、2つのドメイン間の分子内会合を可能にする十分な長さのポリペプチドリンカーにより分離される。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片間のポリペプチドスペーサー配列をさらに含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、2つの異なる細胞型の細胞が、各scFvがその同種のエピトープと係合するときに近接近するかまたは係留されるように、これらのエピトープは、異なる細胞型に対して特異的であり得る。このアプローチの1つの特定の態様は、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原、例えば,T細胞上のCD3ポリペプチドを認識するscFvを、悪性または腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに連結することを含む。
【0385】
それが単一のポリペプチドであるため、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当該技術分野で既知の任意の原核または真核細胞発現系、例えば、CHO細胞株を使用して発現され得る。しかしながら、特定の精製技法(例えば、EP1691833を参照)が、単量体二重特異性T細胞エンゲージャーを、単量体の意図される活性以外の生物学的活性を有し得る他の多量体種から分離するために、必要であり得る。1つの例示的な精製スキームにおいて、分泌ポリペプチドを含有する溶液はまず、金属親和性クロマトグラフィーにかけられ、ポリペプチドは、イミダゾール濃度の勾配を用いて溶出される。この溶出物は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用してさらに精製され、ポリペプチドは、塩化ナトリウム濃度の勾配を用いて使用して溶出される。最後に、この溶出物は、サイズ排除クロマトグラフィーにかけられ、多量体種から単量体が分離される。
【0386】
2を超える結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。例えば、Tuftら.J.Immunol.147:60(1991)を参照されたい。
【0387】
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。特定の態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,ウェルサム、マサチューセッツ州;例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。一態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部からなる。
【0388】
(viii)抗体バリアント
いくつかの態様では、本明細書中に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(1つ以上)が意図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本抗体のアミノ酸配列変異体は、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製し得る。かかる修飾としては、例えば、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれへの挿入、および/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達し得るが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
【0389】
(ix)置換、挿入、および欠失バリアント
ある特定の態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による突然変異誘発に関して目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換が、「保存的置換」という見出しで表1に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される通りである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入し得、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングする。
【表3】
【0390】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ化し得る。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0391】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0392】
一種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般的に、さらなる試験ために選択される結果として生じるバリアントは、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、および/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有する。例示的な置換変異体は、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法等を使用して、簡便に作成されてもよい。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0393】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR内に行われてもよい。このような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196(2008)を参照)、および/またはSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られた変異体VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brienら,編.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの態様では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。その後、このライブラリがスクリーニングされて、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR-H3およびCDR-L3が標的とされることが多い。
【0394】
特定の態様では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外であり得る。上に提供したバリアントVHおよびVL配列の特定の態様では、各HVRは変化していないか、または1、2もしくは3個以下のアミノ酸置換を含む。
【0395】
変異導入の標的となり得る抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを判定するために、残基または標的残基群(例えば、荷電残基、例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGlu)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされるかまたは除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0396】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに1個または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入型変異体としては、(例えば、ADEPTのために)抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0397】
(x)グリコシル化バリアント
一部の態様において、本明細書に提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度を増減させるために変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0398】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に付着される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な糖質、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸の他、二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに付着したフコースが含まれうる。いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体中のオリゴ糖の修飾が、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0399】
一態様では、Fc領域を含む抗体バリアントが提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、還元フコースを有するか、またはフコースを欠き、ADCC機能を改善し得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフソース(fusose)が減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞等の天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。特定の態様では、抗体は、50%、40%、30%、20%、10%、5%以下のN-結合型糖鎖がフコースから構成されている抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。特定の態様では、抗体は、その上のN結合グリカンのいずれもフコースを含まないもの、すなわち、抗体が完全にフコースを含まないか、フコースを有しないか、アフコシル化(afucosylated)されているものである。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体におけるマイナーな配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。このようなフコシル化バリアントは、ADCCの機能を改善している可能性がある。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazakiら、J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnukiら、Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生し得る細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripkaら、「Arch.Biochem.Biophys.」、第249巻第533~545頁(1986年)、米国特許出願公開第2003/0157108A1号、および国際公開第2004/056312A1号、特に実施例11)、およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら、Biotech.Bioeng.、第87巻第614頁(2004年)、Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.、第94巻第4号第680~688頁(2006年)、および国際公開第2003/085107号)などのノックアウト細胞株を挙げられ得る。
【0400】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号、米国特許第6,602,684号;米国特許出願公開第2005/0123546号、およびFerraraら,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、国際公開第WO1997/30087号;同第WO1998/58964号、および同第WO1999/22764号に記載されている。
【0401】
特定の態様では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体バリアントは、FcγRIIIに結合し得る。特定の態様では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体バリアントは、ヒト野生型IgG1Fc領域を含む他の点では同じ抗体と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、またはヒトエフェクター細胞の存在下で増加したADCC活性を有する。
【0402】
(xi)Fc領域バリアント
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸改変は、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントを作成する。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0403】
特定の態様では、本発明は、全てではないが一部のエフェクター機能を有する抗体バリアントを企図し、これにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)が不要または有害である用途の望ましい候補となる。CDCおよび/またはADCC活性の低下/消失を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを実施し得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にし得る。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.、9:457~492(1991)の464頁、表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstromら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照)およびHellstrom,Iら,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.ら,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;およびCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的のADCC活性は、例えば、Clynesら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。また、抗体がC1qに結合し得ず、CDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号および国際公開第2005/100402号における、C1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoroら,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Craggら,Blood 101:1045-1052(2003);およびCraggら,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期決定も、当技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkovaら、Int’l.Immunol.18(12):1759-1769、2006を参照されたい)。
【0404】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329において1つ以上の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc突然変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうちの2つ以上に置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265および297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0405】
FcRに対する結合が改善または減少した特定の抗体バリアントが記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,およびShieldsら,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
【0406】
特定の態様では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。例示的な態様では、抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、およびK334Aを含む。
【0407】
いくつかの態様では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号およびIdusogieら,J.Immunol.164:4178-4184(2000)に開示されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞障害(CDC)の変更(すなわち、改善または減少のいずれか)をもたらすFc領域において変更がなされる。
【0408】
半減期が増大し、母体IgGを胎児に移入する役割を果たす新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyerら,J.Immunol.117:587(1976)およびKimら,J.Immunol.24:249(1994))への結合が向上した抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つ以上の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するバリアントを含む(米国特許第7,371,826号)。Fc領域のバリアントの他の例に関して、DuncanおよびWinter,Nature322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;および国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0409】
(xii)抗体誘導体
本明細書に記載される抗体は、当技術分野で公知であり、容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。特定の態様では、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に付着しているポリマーの数は様々であり、複数のポリマーが付着している場合には、それらは同じ分子であっても、異なった分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、限定するものではないが、改良される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義される条件下で治療に使用されるかどうか等を含む考慮事項に基づいて判定し得る。
【0410】
(xiii)ベクター、宿主細胞、および組換え方法
抗体は、組換え方法を使用して産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生について、本抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。本抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して(例えば、本抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0411】
(a)シグナル配列成分
本明細書に記載される抗体は、直接的に組換え生産され得るだけでなく、好ましくはシグナル配列または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え生産され得る。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識およびプロセシング(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識もプロセシングもしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核シグナル配列によって置換される。酵母分泌の場合、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycesα-因子リーダー等)、または酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載のシグナルによって置換され得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
【0412】
(b)複製起点
発現ベクターもクローニングベクターもいずれも、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは無関係にベクターの複製を可能にするものであり、これらとしては、複製起点または自己複製配列が挙げられる。かかる配列は、様々な細菌、酵母、およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322からの複製起点はほとんどのグラム陰性菌に適しており、2μのプラスミド起点は酵母に適しており、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳類発現ベクターに必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するために、典型的に使用され得る)。
【0413】
(c)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択遺伝子、別名、選択可能なマーカーを含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)例えば、桿菌のD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子などの、天然培地では得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0414】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子で形質転換に成功したTホース細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生するため、選択レジメンから生き残り得る。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
【0415】
哺乳動物細胞に適した選択マーカーの別の例は、抗体をコードする核酸を取り込む能力がある細胞の同定を可能にするもの、例えばDHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-Iおよび-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0416】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸とともに増幅される。内因性DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)が使用され得る。
【0417】
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GS阻害剤であるL-メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の共形質転換核酸と共に増幅される。GS選択/増幅系が、上述のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用され得る。
【0418】
あるいは、目的とする抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、および別の選択可能なマーカー、例えば、アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換または共形質転換された宿主細胞(具体的には、内因性DHFRを含む野生型宿主)は、選択可能なマーカー、例えば、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418用の選択剤を含有する培地中で成長した細胞によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0419】
酵母での使用に好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら,Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株に対する選択マーカー、例えば、ATCC番号44076またはPEP4-1を提供する。Jones,Genetics,85:12(1977).その後、酵母宿主細胞ゲノム中でのtrp1病変の存在により、トリプトファンの不在下での成長による形質転換の検出に有効な環境が提供される。同様に、Leu2が欠損した酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を持つ既知のプラスミドによって補完される。
【0420】
また、クルイベロマイセス属酵母の形質転換には、1.6μm環状プラスミドpKD1由来のベクターを用い得る。あるいは、組換え仔牛キモシンの大規模産生のための発現系としてK.lactisが報告された。例えば、Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)を参照されたい。クルイベロマイセス属の工業用株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定した多コピー発現ベクターも開示されている。Fleerら,Bio/Technology,9:968-975(1991)。
【0421】
(d)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、かつ抗体をコードする核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。原核宿主との使用に好適なプロモーターとしては、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用のためのプロモーターは、抗体をコードするDNAに作動可能に連結されるシャイン・ダルガノ(S.D.)配列も含有する。
【0422】
真核生物のプロモーター配列が既知である。実質的に全ての真核遺伝子が、転写が始まる部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70~80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域である。大半の真核遺伝子の3’末端には、AATAAA配列があり、これはコード配列の3’末端にポリAテールを付加するためのシグナルであり得る。これらの配列の全てが真核細胞発現ベクターに好適に挿入される。
【0423】
酵母宿主との使用に好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、およびグルコキナーゼが挙げられる。
【0424】
成長条件によって制御された転写の更なる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に好適なベクターおよびプロモーターは、欧州特許第73,657号に更に記載されている。酵母エンハンサーも酵母プロモーターとともに有利に使用される。
【0425】
哺乳類宿主細胞中のベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから、または異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御され得るが、但し、かかるプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0426】
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号明細書に開示されている。この系の変形は、米国特許第4,601,978号明細書に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現に関して、Reyesら,Nature 297:598-601(1982)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復がプロモーターとして使用され得る。
【0427】
(e)エンハンサーエレメント成分
より高次の真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増大する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるであろう。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核プロモーターの活性化のための増強エレメントに関しては、Yaniv,Nature 297:17-18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、抗体コード配列の5’位または3’位でベクターにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’部位に位置する。
【0428】
(f)転写終結成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含む。かかる配列は、一般に、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写されたクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際特許出願公開第94/11026号およびそれに開示される発現ベクターを参照されたい。
【0429】
(g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクター中でのDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、またはより高次の真核生物細胞である。この目的に適した原核生物としては、真正細菌、例えばグラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば腸内細菌科、例えばエシェリヒア、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えばセラチア・マルセスキャンおよび赤痢菌、ならびにバチルス、例えばB.スブチリスおよびB.リケニフォルミス(例えば、1989年4月12日に公開されたDD 266,710に開示されているB.licheniformis 41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌およびストレプトミセス菌が挙げられる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は、大腸菌294(ATCC31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)、および大腸菌W3110(ATCC27,325)などの他の株も好適である。これらの例は、限定するものではなく、例示的なものである。
【0430】
全長抗体、抗体融合タンパク質、および抗体断片は、具体的には、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合に、例えば、治療抗体が、単独で腫瘍細胞破壊における効果を示す細胞毒性薬(例えば、毒素)にコンジュゲートする場合に、細菌内で産生され得る。全長抗体は、より優れた血中半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速であり、より費用効率が高い。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を説明している、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照されたい。また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245-254も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の大腸菌細胞ペーストから単離し得、例えば、アイソタイプに応じてプロテインAまたはGカラムにより精製され得る。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に行われ得る。
【0431】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物が、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である。より下位の真核宿主微生物の中でサッカロミセス・セレビシエまたは一般的なパン酵母が最も一般的に使用されている。しかしながら、シゾサッカロミセス・ボンベ、クルイベロマイセス宿主、例えば、K.ラクティス、K.フラギリス(ATCC 12,424)、K.ブルガリカス(ATCC 16,045)、K.ウィッカラミ(wickeramii)(ATCC 24,178)、K.ワルチー(waltii)(ATCC 56,500)、K.ドロソフィラルム(drosophilarum)(ATCC 36,906)、K.サーモトレランス(thermotolerans)、およびK.マルシアナスなど、ヤロウイア属(EP 402,226)、ピキア・パストリス(EP 183,070)、カンジダ属、トリコデルマ・リーシア(EP 244,234)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、シュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)などのシュワニオマイセス属(Schwanniomyces)、ならびに糸状真菌、例えば、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、トリコクラジウム属、およびアスペルギルス宿主、例えば、A.ニドゥランスおよびA.ニガーなどのいくつかの他の属、種、および菌株が本明細書において一般的に利用可能であり、有用である。治療用タンパク質の生産のための酵母および糸状菌の使用を議論するレビューについては、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)を参照されたい。
【0432】
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、結果として部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらすある特定の真菌および酵母株が選択され得る。たとえば、Liら,Nat.Biotech.24:210-215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化について説明)、およびGerngrossら(上記参照)を参照されたい。
【0433】
また、グリコシル化抗体を発現させるのに適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変異形、ならびに宿主、例えば、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、およびBombyx mori由来の対応する許容昆虫宿主細胞が特定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1バリアントおよびBombyx mori NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、かかるウイルスは、具体的には、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、本発明による本明細書におけるウイルスとして使用され得る。
【0434】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、ムラサキウマゴヤシ(M.truncatula)、およびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0435】
脊椎動物細胞が宿主として使用され得、培養下での脊椎動物細胞の繁殖(組織培養)が日常的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS-7、ATCCCRL1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎細胞株(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Grahamら.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCCCCL10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1ATCCCCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCCCRL-1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA,ATCCCCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCCCCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCCCRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCCCCL75);ヒト肝細胞(HepG2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562,ATCCCCL51);TRI細胞(Matherら.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌細胞株(HepG2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFRCHO細胞(Urlaubら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにNS0およびSp2/0などのミエローマ細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、YazakiおよびWu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.255-268を参照されたい。
【0436】
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換対の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された従来の栄養素培地中で培養される。
【0437】
(h)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養される。市販の培地、例えば、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に好適である。さらに、Hamら,Meth.Enz.58:44(1979),Barnesら,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;または第5,122,469号明細書;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;または米国再発行特許第30,985号明細書に記載の培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用し得る。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物など)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終密度で存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは等価エネルギー源が補添され得る。任意の他の必要な補充物も当業者に既知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞で既に使用したものであり、当業者に明らかであろう。
【0438】
(xiv)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、本抗体は、細胞内で産生され得るか、ペリプラズム空間で産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。本抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、微粒子残屑(宿主細胞または溶解断片のいずれか)が、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carterら,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載する。簡潔には、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって融解する。細胞残屑が遠心分離によって除去され得る。本抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清が、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して最初に濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、PMSF等のプロテアーゼ阻害剤が前述のステップのいずれかに含まれてもよく、外来性混入物の増殖を防止するために、抗生物質が含まれてもよい。
【0439】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得、親和性クロマトグラフィーが典型的に好ましい精製ステップのうちの1つである。プロテインAの親和性リガンドとしての好適性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖をベースとする抗体を精製するために使用し得る(Lindmarkら,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨される(Gussら,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスにより、アガロースで達成され得るよりも速い流速および短いプロセシング時間が可能になる。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質を精製するための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0440】
一般に、研究、試験、および臨床で使用のための抗体を調製するための様々な方法論が当該技術分野で十分に確立されており、上述の方法論と一致しており、かつ/または当業者によって目的とする特定の抗体に適切であると見なされる。
【0441】
(xv)生物学的に活性な抗体の選択
上述のように産生された抗体は、1つ以上の「生物学的活性」アッセイに供されて、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するか、または本抗体の生物学的活性を保持する製剤および条件を選択し得る。本抗体は、それが産生される抗原に結合するその能力について試験され得る。例えば、当該技術分野で既知の方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット等)が使用され得る。
【0442】
例えば、抗PD-L1抗体の場合、抗体の抗原結合特性は、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイで評価され得る。いくつかの態様では、抗体の結合は、例えば、飽和結合;ELISA;および/または競合アッセイ(例えば、RIAの)により決定され得る。抗体はまた、例えば、治療薬としてのその効果を評価するために、他の生物学的活性アッセイにも供され得る。そのようなアッセイは、当技術分野で既知であり、抗体に対する標的抗原および意図される使用に依存する。例えば、本抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル、および/または同系腫瘍モデル、例えば、米国特許第8,217,149号に記載のモデルにおいて評価され得る。
【0443】
目的とする抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、例示的な抗PD-L1抗体の、PD-L1への結合を遮断するもの)に関してスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるものなどの通常の交差遮断アッセイが行われ得る。あるいは、例えば、Champeら,J.Biol.Chem.270:1388-1394(1995)に記載されるようなエピトープマッピングを、抗体が目的とするエピトープに結合するかどうかを決定するために実施し得る。
【0444】
VII.医薬組成物および製剤
PD-1軸結合アンタゴニストおよび/または本明細書中に記載される抗体(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)と、場合により、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物および製剤も本明細書で提供される。本発明は、タキサン、例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、またはドセタキセルを含む薬学的組成物および製剤も提供する。本発明はまた、アントラサイクリン、例えばドキソルビシンまたはエピルビシンを含む医薬組成物および製剤を提供する。本発明はまた、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む医薬組成物および製剤を提供する。
【0445】
本明細書に記載の医薬組成物および製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する活性成分(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド)))を1種以上の任意の薬学的に許容され得る担体(Remington’sPharmaceuticalSciences第16版,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって調製し得る。薬学的に許容され得る担体は一般的に、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わせる。
【0446】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号および国際出願公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジンバッファーを含む。
【0447】
本明細書の組成物および製剤は、治療されている特定の適応症に対して必要に応じて1つを超える活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性成分も含有してもよい。そのような有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0448】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにより、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、およびナノカプセル)内、またはマクロ乳濁液中にも取り込まれ得る。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences第16版,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0449】
徐放性調製物を調製してもよい。持続放出調製物の好適な例としては、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌状態は、例えば滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成し得る。
【0450】
VIII.製品またはキット
別の態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を含む製造品またはキットが提供される。いくつかの態様では、製造品またはキットには、対象における乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置するために、もしくはその進行を遅延させるために、または、乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を有する対象の免疫機能を高めるために、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を使用するための指示を含む添付文書がさらに含まれる。いくつかの態様では、製造品またはキットには、本明細書中に記載される方法のいずれか1つに従って対象における乳がん(例えば、TNBC(例えば、eTNBC))を処置するため、もしくはその進行を遅延させるためにPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))を使用するための指示を含む添付文書がさらに含まれる。本明細書中に記載されるPD-1軸結合アンタゴニスト、タキサン、アントラサイクリンおよび/またはアルキル化剤のいずれかを、製造品またはキットに含有させてもよい。
【0451】
いくつかの態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)および/またはアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、シクロホスファミド))は、同じ容器または別々の容器に入っている。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルもしくはポリオレフィン等)、または金属合金(ステンレス鋼もしくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの態様では、容器は、製剤およびラベルを容器に保持するか、または容器に関連付けられて、使用のための指示を示し得る。製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用上の指示を有する添付文書等の商業的視点および使用者の視点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの態様では、製造品は、1つ以上の別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗悪性腫瘍薬)をさらに含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。
【0452】
実施例
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、本実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態が例示のみを目的とするものであり、それを考慮に入れたさまざまな改変または変化が当業者に提案され、本出願精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることは理解されよう。
【0453】
実施例1:早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する対象におけるネオアジュバント療法の状況でプラセボおよび化学療法と比較したアテゾリズマブおよび化学療法を調査した第III相IMpassion031試験の結果
TNBCは、乳がんタイプの中で最も悪い予後を有する。初期TNBC(eTNBC)では、アントラサイクリン-タキサンをベースとする治療の投与にもかかわらず、5年無転移生存率はわずか約70%である。IMpassion031は高リスク侵襲性eTNBC患者におけるグローバル第III相、多施設、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験であり、nab-パクリタキセル(nP)を用いたネオアジュバントであるアテゾリズマブ(アテゾ)またはプラセボ(P)、続いてドキソルビシン+シクロホスファミドを用いたアテゾまたはPの有効性および安全性を評価するものである。ここでは、IMpacison031からの主要評価項目を報告する。
【0454】
方法
概要
適格患者は、18歳以上であり、新たに診断され、以前に処置されておらず、中枢で確認された浸潤性eTNBCであり、cT2-T4dで任意のN、M0、ECOGPS0-1で、PD-L1状態について評価可能な腫瘍組織を有している(VENTANASP142IHCアッセイによる)患者である。Impasion 031の試験スキームを図1に示す。患者(n=205)を、アテゾを6回投与するために、アテゾ840mgまたはP 2週毎+np 125mg/m毎週投与、続いてアテゾを4回投与するために、アテゾ840mgまたはP 2週毎+ドキソルビシン60mg/m+シクロホスファミド600mg/m 2週毎、続いて手術を行う群に1:1に無作為に割り付けた。手術後、病理学的完全奏効(pCR;乳房およびリンパ節の両方における腫瘍根絶[ypT0/isおよびypN0])をす全患者において評価し、治験責任医師は試験治療について盲検化されていなかった。アテゾ群の患者は、アテゾ1200mg 3週毎をを11回投与し続けた。Pを投与された患者は臨床経過観察のみを受けた。共同主要評価項目として、ネオアジュバント処置および手術後のITTまたはPD-L1+患者において局所的にpCRを評価し、安全性を評価した。pCR率の推定値を、カイ二乗検定を使用して、ITT集団およびPD-L1+(IC上の≧1%PD-L1)集団におけるアテゾ+化学療法とP+化学療法との間で比較した。
【0455】
主要な選択基準としては、組織学的にTNBCと確認された患者(中央検査室でHER2、ER、PgR陰性と評価)、18歳以上の女性または男性、ECOGパフォーマンスステータス0または1、原発乳がんサイズ2cm以上、登録時のステージがcT2-cT4、cN0-cN3、cM0、PD-L1発現を評価できるFFPE腫瘍組織標本などが挙げられる。主要な除外基準としては、乳がんの処置または予防のための以前の全身療法および任意の悪性腫瘍のためのアントラサイクリンまたはタキサンによる以前の処置が挙げられる。
【0456】
処置および患者の評価
患者を1:1に無作為化して、化学療法と組み合わせてアテゾリズマブまたはプラセボを投与した(図1)。層別化因子は、診断時の病期(II対III)および腫瘍PD-L1状態(IC0対IC1/2/3)であり、ICで1%以上のPD-L1発現(IC1/2/3)を層別化カットオフとした。
【0457】
VENTANA SP 142 IHCアッセイを製造者の説明書に従って実施した。VENTANA SP 142 IHCアッセイのICおよびTC IHC診断基準をそれぞれ表4および5に記載する。例えば、実施例1の国際公開第2016/183326号および国際公開第2016/196298号も参照されたい。
【表4】
【表5】
【0458】
手術後、患者は非盲検化され、アテゾリズマブ群の患者は、3週間毎にアテゾリズマブ(1200mg)の投与を11回受け続けた。
腫瘍サンプル、血漿および血液を探索的バイオマーカー分析のために収集した。腫瘍生検は、ベースライン時、治療中(任意)、手術時、および再発後に採取した。
【0459】
有効性目的
● 主要評価項目は、全患者において病理学的完全奏効(pCR)であった。
○ pCRは、乳房およびリンパ節の両方からの浸潤性腫瘍の消失と定義される(ypT0/はypN0である)。
● 二次有効性評価項目には、以下が含まれる。
○ PD-L1選択されたIC1/2/3腫瘍サブグループにおけるpCR
○ 無イベント生存期間:全患者およびPD-L1選択IC1/2/3サブグループにおいて、無作為化後、最初に実証された疾患の再発、進行、または何らかの原因による死亡までの期間と定義
○ OS:全患者およびPD-L1選択IC1/2/3サブグループにおいて、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間と定義
○ 患者報告による転帰は、欧州癌研究治療機関(EORTC)QLQ-30の機能的および健康関連QOL(HRQoL)尺度に準じて測定された。
● 機能および全体的な健康状態/KRQoLのベースラインスコアからの平均値および平均値の変化をサイクルおよび治療群間で評価した。
【0460】
安全性目的
●nab-パクリタキセル+アテゾリズマブとそれに続くドキソルビシン+シクロホスファミド+アテゾリズマブの安全性および忍容性を、nab-パクリタキセル+プラセボとそれに続くドキソルビシン+シクロホスファミド+プラセボと比較した。
○ 有害事象の発生および重症度は、国立がん研究所有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0によって定義した通りとした。
【0461】
重要な探索目的
● 保管および/または新鮮な腫瘍組織および血液における予測的、予後的および薬力学的探索的バイオマーカー、ならびにpCRを含むがこれに限定されない有効性評価項目とのそれらの関連性
【0462】
登録
世界中で約204人の患者が約66の施設に登録された。
【0463】
結果の概要
有効性
IMpassion031は、化学療法(nab-パクリタキセル、続いてドキソルビシンおよびシクロホスファミド(AC))と組み合わせたアテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))の肯定的な試験であり、治療意図(ITT)集団においてpCRの統計的に有意で臨床的に有意な改善を伴うeTNBCのネオアジュバント治療である(図2)。pCRを有するITT集団の患者の割合は、プラセボ+化学療法群の41.1%(95%CI:33.55,48.91)と比較して、アテゾリズマブ+化学療法群では57.6%(95%CI:49.65,65.22)であった(P=0.0044)(図2
【0464】
PD-L1陽性集団のpCRは、臨床的に有意な数値的改善を示したが、統計的有意差はなかった(図3)。pCRを有するPD-L1陽性集団における患者の割合は、プラセボ+化学療法群の49.3%(95%CI:37.58,61.14)と比較して、アテゾリズマブ+化学療法群では68.8%(95%CI:57.26,78.91)であった(P=0.0206)(図3)。
【0465】
安全性
アテゾリズマブをネオアジュバント化学療法と併用すると忍容性が高く、各個々の試験薬の既知のリスクと一致していた。新たな安全性シグナルは同定されなかった。
【0466】
実施例2:手術可能なTNBC患者における化学療法単独に対するアジュバントアントラサイクリン/タキサン系化学療法と組み合わせたアテゾリズマブを比較する試験(IMpassion030)
IMpassion030試験(ClinicalTrials.gov識別子NCT 03498716)は、手術可能なステージII~IIIのTNBC患者における化学療法単独に対するアジュバントアントラサイクリン/タキサン系化学療法と併用したアテゾリズマブの有効性、安全性および薬物動態を評価する多施設ランダム化非盲検研究である。
【0467】
参加者は、840mgのアテゾリズマブ(以下に記載される化学療法との併用)を2週間毎に点滴静注による投与を10回受け、続いて1200mgの点滴静注によって投与されるアテゾリズマブ維持療法を3週間毎に受け、最初の投与から1年間の処置を完了する。化学療法は、パクリタキセル(80mg/mを毎週静脈内投与)を12週間投与した後、(i)ドキソルビシン(60mg/mを静脈内投与)+シクロホスファミド(600mg/mを2週間毎に静脈内投与)を、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をサポートして4回行なう、または(ii)エピルビシン(90mg/mを静脈内投与)+シクロホスファミド(600mg/mを2週間毎に静脈内投与)を、G-CSFまたはGM-CSFをサポートして4回行なうことを含む。
【0468】
IMpassion030の主要転帰尺度は、浸潤性無病生存期間(iDFS)(時間枠:試験終了(約7年)までの、iDFS事象または死亡の最初の発生までの無作為化)である。iDFS事象は以下のように定義される:
1.同側の浸潤性乳房腫瘍の再発
2.同側の局所領域への浸潤性乳がんの再発
3.同側の第2原発性浸潤性乳がん
4.対側浸潤性乳がん
5.遠隔再発
6.何らかの原因に起因する死亡
【0469】
IMpacison030の副次評価項目には以下が含まれる:
1.全生存期間(OS)(時間枠:全生存期間(OS)(時間枠:任意の原因から試験終了(約7年)までのあらゆる原因による死亡まで)
2.無病生存率(DFS)(時間枠:無作為化後、最初のDFS事象が発生するまで、試験終了(約7年)まで)。DFSは、主要評価項目の任意の事象および同側または反対側の非浸潤性乳がんの新規診断として定義される。
3.無再発生存期間(RFI)(時間枠:試験終了まで(約7年)の乳がんの局所、領域または遠隔疾患再発までの無作為化期間)
4.遠隔RFI(時間枠:無作為化から遠隔転移まで、試験終了(約7年)まで)
5.有害事象が発生した参加者の割合(タイムフレーム。ベースラインから試験終了まで(約7年))
6.アテゾリズマブの血清濃度(時間枠:注入前(0時間)、第1週第1日目の注入後30分(注入長=60分);5、9、13、21、33および45週目の1日目のプレインフュージョン;治療中止時(約1年まで)、最終投与から120日後)
7.PDL1選択患者における無浸潤生存期間(iDFS)(TimeFrame:ランダム化後、最初のiDFSイベント発生または死亡まで、試験終了まで(約7年間)。
8.リンパ節陽性疾患における無浸潤生存期間(iDFS)(TimeFrame:ランダム化後、最初のiDFSイベント発生または死亡まで、試験終了まで(約7年間)。
9.二次原発性非乳房浸潤がんを含む無浸潤生存期間(iDFS)(TimeFrame:ランダム化後、最初のiDFSイベント発生または死亡まで、試験終了まで(約7年間)。
10.アテゾリズマブに対する抗薬物抗体(ADA)を有する参加者の割合(タイムフレーム。1、5、9、13、21、33、45週目の1日目の注入前(0時間)、治療中止時(51週目まで)、最終投与から120日後)。
11.患者報告機能(役割、身体)のベースラインからの平均変化(時間枠:ベースライン、サイクル4の1日目、サイクル16までの1サイクルおきの1日目(サイクル=21日間)、治療/中断訪問の終了時((約1年まで)、試験追跡調査中(約7年まで))。
12.欧州癌研究治療機構QLQ-C30(EORTCQLQ-C30)を用いて、役割、身体機能のベースラインからの平均変化量を評価する。
13.患者が報告する健康に関連する生活の質(HRQoL)のベースラインからの平均変化(時間枠:時間枠:ベースライン、サイクル4の1日目、サイクル16までの1サイクルおきの1日目(サイクル=21日間)、治療/中止訪問の終了時(約1年間まで)、および試験追跡調査中(約7年間まで))。
14.欧州癌生活品質治療研究機構コア30(EORTCQLQ-C30)を使用して、HRQoLにおけるベースラインスコアからの平均変化を評価する。
【0470】
選択基準には以下が含まれる:
● 非転移性の手術可能なステージII~IIIの乳がん
● 組織学的に実証されたTNBC(トリプルネガティブ乳がん)
● 代表的な腫瘍組織標本の中央検査によって実証された腫瘍PD-L1評価の確認
● 十分に切除されていること:患者は乳房温存手術、乳房切除術、乳房温存手術のいずれかを受けているにちがいないこと。
【0471】
他の実施形態
上述の発明は、理解を明確にする目的のために説明および実施例によってある程度詳細に記載されているが、これらの記載および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参考として明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
【配列表】
2023531406000001.app
【国際調査報告】