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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(54)【発明の名称】熱光学部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230718BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20230718BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G02F1/01 C
G02B6/13
G02B6/12 361
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580331
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 FR2021051128
(87)【国際公開番号】W WO2022003270
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2006801
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シアンカレポア, コラード
(72)【発明者】
【氏名】ギスレン, ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】デルピー, アラン
(72)【発明者】
【氏名】カイエ, セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヘリソン, デビッド
(72)【発明者】
【氏名】アラミ‐イドリッシ, アジズ
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB03
2H147AB04
2H147AB11
2H147AB15
2H147AC05
2H147BD02
2H147BD03
2H147BE01
2H147BE15
2H147DA07
2H147DA15
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA14D
2H147FC02
2H147FC03
2H147FD15
2H147GA05
2H147GA10
2K102AA28
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC10
2K102BD01
2K102CA28
2K102DA04
2K102DB02
2K102DB04
2K102DD03
2K102EA05
2K102EA16
(57)【要約】
発明は、熱光学部品を製造するための方法に関し、次のステップ:
a)SOI基板を用意するステップであって、上記SOI基板が、
単結晶シリコンから作られ、シリコン製のキャリアに配置された誘電体層に配置されると共に主平面内に広がる表面層と、
上記キャリアに形成され、上記誘電体層の下に開口する少なくとも1つの埋め込みキャビティと
を備える、ステップと、
b)上記主平面に延び、上記誘電体層を含む光閉じ込め層により囲まれ、上記表面層に形成されるコアを備える光導波路を形成するステップと、
c)上記光導波路に少なくとも1つの加熱素子を製作するステップであって、前記加熱素子が上記主平面内で、上記光導波路のセグメントと垂直に又は前記セグメントの両側に配置され、上記加熱素子及び上記光導波路の前記セグメントが上記-少なくとも1つの-埋め込みキャビティと垂直に配置される、ステップと
を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱光学部品(100)を製造するための方法であって、
a)シリコン-オン-インシュレータ(SOI)基板(10)を用意するステップであり、前記SOI基板(10)が、
単結晶シリコンから作られ、シリコン製のキャリア(1)に配置された誘電体層(3)に配置されると共に主平面(x、y)内に広がる表面層(4)と、
前記キャリア(1)内に形成され、前記誘電体層(3)の下に開口する少なくとも1つの埋め込みキャビティ(2)と
を備える、ステップと、次いで、
b)前記主平面(x、y)に延び、前記誘電体層(3)を含む光閉じ込め層(53)により囲まれ、前記表面層(4)に形成されるコア(52、52’)を備える光導波路(50)を形成するステップと、次いで、
c)前記光導波路(50)に少なくとも1つの加熱素子(60)を製作するステップであり、前記加熱素子(60)が、前記主平面(x、y)内で、前記光導波路(50)のセグメント(52’)と垂直に、又は前記セグメント(52’)の両側に配置され、前記加熱素子(60)及び前記光導波路の前記セグメント(52’)が前記-少なくとも1つの-埋め込みキャビティ(2)と垂直に配置される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップb)では、アパーチャが、外部圧力下に前記-少なくとも1つの-キャビティ(2)を配置するために前記光導波路(50)を貫通して製作される、請求項1に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項3】
前記アパーチャが、前記-少なくとも1つの-キャビティ(2)を気密に封じるように塞がれる、請求項2に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項4】
前記-少なくとも1つの-キャビティ(2)が、ステップa)、b)及びc)の全体を通して気密に封じられたままである、請求項1に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項5】
前記誘電体層(3)が、酸化シリコンから作られ、100nmと3ミクロンとの間を含む厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項6】
前記表面層(4)が、100nmと500nmとの間を含む厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項7】
前記光閉じ込め層(53)が、0.5ミクロンと1.5ミクロンとの間を含む厚さを有する追加の誘電体層(3’)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項8】
前記-少なくとも1つの-キャビティ(2)が、前記主平面(x、y)内で、10ミクロンと数ミリメートルとの間を含む横方向寸法、及び前記主平面(x、y)に垂直な軸(z)に沿って、数ミクロンと100ミクロンとの間、有利には5ミクロンと10ミクロンとの間を含む深さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱光学部品(100)を製造するための方法。
【請求項9】
スイッチ、位相シフタ、変調器、レーザエミッタ、増幅器、双方向性カプラ、フィルタ及び/又はマルチプレクサを形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法を使用して制作される熱光学部品(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、フォトニクスの分野に関する。詳細には、熱光学部品、すなわち、部品の光学的特性(一次の屈折率)が部品の内部又は外部の熱源により引き起こされる温度の局所的な変動又は全体的な変動を介して変更される部品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の技術的背景]
シリコンフォトニクスは、この技術が、スイッチ及び光位相シフタ、変調器、フィルタ、レーザなどの多くの統合された機能の提供を介して光通信リンクが改善されることを可能にするという理由で、ますます関心を持たれている。
【0003】
スイッチ及び光位相シフタは、特に、コンパクト性、低電力消費、及び高いスイッチング速度に関する仕様を満足しながら非常に多数の信号を効率的に搬送することが可能でなければならない。シリコンが高い熱光学効果を有するという理由で、小型で速い熱光学スイッチがシリコン-オン-インシュレータ(SOI)基板で開発されることを可能にしてきており、リング共振器又はマッハ-ツェンダー(Mach-Zender)干渉計などの部品に特に言及されてもよい。
【0004】
米国特許出願公開第2015/253510号という文書は、小型の熱光学スイッチを提供し、上記スイッチは、その光導波路がキャリア基板よりも上に吊り下げられ、空気により主に囲まれ、熱の流れを制限するピラーにより前記キャリア基板に取り付けられて形成されるという理由で、スイッチングを実現するために必要な電力を大幅に最小化し:熱的な閉じ込めが、スイッチの効率を改善する(電力消費を制限する)。この熱光学スイッチの構造は、SOI基板を使用して得られ、シリコン表面層及び埋め込み酸化物が、それぞれ、光導波路のコア及びコアの周りの光閉じ込め層の一部分を形成し、加熱素子が、導波路に配置される。前面側から、SOI基板を構造形成するステップ及びエッチングするステップは、深いトレンチ及び空隙が導波路とキャリア基板との間に形成されることを可能にする。このような構造の1つの欠点は、熱光学部品の複数の周辺領域が空気と接触するという事実からもたらされることがあり、温度に対するその過渡応答、加熱素子によって引き起こされる変動が低下することになる。特に、加熱素子の停止で、高い温度T1から温度T0へ戻るために導波路にとって必要とされる時間、すなわち、立下り時間は、取り囲んでいる空気によって引き起こされる熱慣性のために増加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[発明の主題]
本発明は、先行技術において知られた解決策に対する代替の解決策に関する。発明は、良い断熱を可能にし、熱光学効果の効率に対して好都合である一方で、非常に良い過渡ダイナミック部品応答を維持する熱光学部品を製造するための方法に関する。この製造方法は、部品が高い集積密度及び優れた機械的安定性を与える一方で、製造ステップを単純化することもさらに可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の簡単な説明]
本発明は、熱光学部品を製造するための方法に関し、次のステップ:
a)シリコン-オン-インシュレータ(SOI)基板を用意するステップであって、上記SOI基板が、
単結晶シリコンから作られ、シリコン製のキャリアにそれ自体が配置された誘電体層に配置されると共に主平面内に広がる表面層と、
上記キャリア内に形成され、上記誘電体層の下に開口する少なくとも1つの埋め込みキャビティと
を備える、ステップと、
b)上記主平面に延び、上記誘電体層を含む光閉じ込め層により囲まれ、上記表面層に形成されるコアを備える光導波路を形成するステップと、
c)上記光導波路に少なくとも1つの加熱素子を製作するステップであって、前記加熱素子が上記主平面内で、上記光導波路のセグメントと垂直に、又は前記セグメントの両側に配置され、上記加熱素子及び上記光導波路の上記セグメントが上記-少なくとも1つの-埋め込みキャビティと垂直に配置される、ステップと
を含む。
【0007】
発明のいくつかの有利な特徴によれば、上記特徴は、単独で又はいずれかの実現可能な組み合わせで実施されてもよく、
ステップb)では、アパーチャが、外部圧力下に上記-少なくとも1つの-キャビティを配置するために、上記光導波路を貫通して製作され、
前記アパーチャが、維持される又は上記-少なくとも1つの-キャビティを気密に封じるように塞がれ、
上記-少なくとも1つの-キャビティが、ステップa)、b)及びc)の全体を通して気密に封じられたままであり、
上記誘電体層が、酸化シリコンから作られ、100nmと3ミクロンとの間を含む厚さを有し、
上記表面層が、100nmと500nmとの間を含む厚さを有し、
上記光閉じ込め層が、0.5ミクロンと1.5ミクロンとの間を含む厚さを有する追加の誘電体層を備え、
上記-少なくとも1つの-キャビティが、上記主平面内で、10ミクロンと数ミリメートルとの間を含む横方向寸法、及び上記主平面に垂直な軸線に沿って、数ミクロンと100ミクロンとの間、有利には5ミクロンと10ミクロンとの間を含む深さを有する。
【0008】
発明は、スイッチ、位相シフタ、変調器、レーザエミッタ、増幅器、双方向性カプラ、フィルタ及び/又はマルチプレクサを形成する上記のような製造方法を使用して製作された熱光学部品にもさらに関する。
【0009】
発明の他の特徴及び利点は、添付した図を参照して次の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】発明にしたがった製造方法のステップa)のSOI基板を用意するための方法手順を示す図である。
図1b】発明にしたがった製造方法のステップa)のSOI基板を用意するための方法手順を示す図である。
図1c】発明にしたがった製造方法のステップa)のSOI基板を用意するための方法手順を示す図である。
図1d】発明にしたがった製造方法のステップa)のSOI基板を用意するための方法手順を示す図である。
図2】発明にしたがった製造方法のステップb)を示す図である。
図3】発明にしたがった製造方法のステップc)を示す図である。
図4a】発明にしたがった製造方法で製作された熱光学部品の、上から見た2つの構造を示す図である。
図4b】発明にしたがった製造方法で製作された熱光学部品の、上から見た2つの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の詳細な説明]
図は、読み易さのために、必ずしも等尺である必要がない模式的な表記である。特に、z軸に沿った層の厚さは、x軸及びy軸に沿った横方向寸法に対して等尺ではない。図では、同じ参照符号が、同じ性質の要素に対して使用されてもよい。
【0012】
様々な可能性(下記の説明で図示される及び/又は詳細に説明される変形形態及び実施形態)が、互いに排他的ではないように理解されなければならず、一緒に結びつけられてもよい。
【0013】
発明は、熱光学部品を製造するための方法に関する。熱光学部品により意味するものは、スイッチ、位相シフタ、変調器、方向性カプラ、フィルタ及び光マルチプレクサなどのいずれかのタイプのオプトエレクトロニクスデバイス、レーザエミッタ、増幅器、等であり、その光学的特性(特に、一次の屈折率)は、デバイスの内部又は外部の熱源により引き起こされる局所的な(又は全体的な)温度変動によって変えられる。
【0014】
製造方法は、単結晶シリコンに基づく光導波路50及び、導波路50のあるセグメントに接近して、加熱素子60を製作するための準備を行い、導波路50のシリコンコアのあるセグメント52’において加熱素子60により引き起こされる温度変動が、シリコンの屈折率を変える効果を有することになる、したがって前記導波路50の光学モードの実効的な屈折率を変える。
【0015】
製造方法は、単結晶シリコンから作られ、主平面(x、y)内に広がり、シリコンキャリア1にそれ自体配置された誘電体層3に配置された表面層4を備えるシリコン-オン-インシュレータ(SOI)基板10を用意するステップa)を含む(図1d)。SOI基板10は、150mmと450mmとの間を含む直径、300ミクロンと1000ミクロンの間で典型的に変わるキャリア1の厚さを有する円形ウェハの形態を優先的に取る。
【0016】
フォトニック用途の必要条件を満足させるために、表面層4は、100nmと500nmとの間を含む厚さを有することが有利である。この表面層4は、光導波路50のコアを形成するものである。
【0017】
しかし非限定的には、誘電体層3が、シリコン酸化物から作られ、100nmと3ミクロンとの間を含む厚さを有することが再び有利である。
【0018】
SOI基板10は、キャリア1に形成され誘電体層3の下に開口する少なくとも1つの埋め込みキャビティ2をさらに備える。下記は、平易さのために、埋め込みキャビティ2が参照されるが、SOI基板10が複数のキャビティ2を備えることが有利であり、上記キャビティが、前記SOI基板10に設けられようとする熱光学部品100の構造、タイプ及び数にしたがって主平面(x,y)内に分散されることになることが理解されよう。埋め込みキャビティ2が部品の様々な構造又はタイプに関係してもよいという理由で、すべての埋め込みキャビティ2が、同じ寸法(主平面(x,y)内の長さ及び幅、並びに主平面(x,y)に垂直なz軸に沿った深さ)を必ずしも有する必要がないことにもさらに留意されたい。
【0019】
埋め込みキャビティ2は、主平面(x,y)内で、10ミクロンと数ミリメートルとの間を含む横方向寸法、及び数ミクロンと100ミクロンとの間、有利には5ミクロンと10ミクロンとの間を含む深さを有してもよい。埋め込みキャビティ2は、主平面(x,y)内では任意の形状、例えば、正方形、長方形、多角形、円形、環状、等を有してもよい。
【0020】
SOI基板10の埋め込みキャビティ2は、犠牲固体材料で埋められてもよい又は犠牲固体材料がなくてもよい。後者のケースでは、埋め込みキャビティ2は、大気圧の又は定められ制御された圧力の空気又はガスで満たされてもよい。
【0021】
例として、犠牲材料は、シリコン酸化物、例えば、低密度又はドープしたシリコン酸化物、ドープしたポリシリコン、多孔質シリコンなどからおそらく選択されることになる。犠牲材料は、この犠牲材料がプロセスにおいてその後に除去されるときに基板10の著しいエッチングを避けるために十分に高いSOI基板10の他の材料に対する、すなわち熱シリコン酸化物及び単結晶シリコンに対するエッチ速度を任意選択的に有することになる。
【0022】
埋め込みキャビティ2を有するこのようなSOI基板10の製作は、スマートカット(Smart Cut)(商標)プロセスとして知られた薄層移転プロセスに好ましくは基づく。
【0023】
表面層4の移転に先立って、使用されるキャリア1は、単結晶シリコン基板であり、その前面側1aは、-少なくとも1つの-キャビティ2を形成するためにエッチされている(図1a)。キャビティ2が犠牲材料で埋められる変形形態では、前記材料は、前面側1aのシリコン表面と同一平面になるようにキャビティ2内にそのときには堆積される。ここでは説明されないフォトリソグラフィ、マスキング、エッチング、堆積及びポリッシングの従来のステップが、キャビティを形成するため、また必要であればキャビティを埋めるために使用される。
【0024】
単結晶シリコン製のドナー基板40は、前面側40aに実質的に平行であり、移転されるべき薄層3、4を前面側40aとともに輪郭を描く埋め込み弱化面41を画定するようにドナー基板の前面側40aを介して注入される(図1b)。注入は、水素イオン又はヘリウムイオン又はこれら2つの元素種の組み合わせなどの軽元素種を用いて通常行われる。弱化面41は、注入された軽元素種により生成されるレンズ状の形態のナノクラックを含むという理由でそのように名付けられる。
【0025】
1つの好ましい選択肢によれば、移転されるべき薄層3、4は、ドナー基板40の前面側40aから埋め込み弱化面41へ、誘電体層3及びシリコン層4を含み、これらの層は、それぞれ、SOI基板10の埋め込み誘電体層3及びシリコン表面層4を形成することになる。軽元素種に関する注入エネルギーは、前記層4の材料のいくらかを消費する仕上げステップ(下に述べる)を考慮して、表面層4の望まれる厚さに対応する深さのところに(注入ピークのところに相対的に局在する)埋め込み弱化面を形成するように選択され調節されることが理解されよう。
【0026】
ドナー基板40及びキャリア1は、張り合わせ構造を形成するために前記基板40、1の前面側40a、1a間の直接ボンディングにより次いで接合される(図1c)。直接ボンディングの分野では良く知られるように、前面側40a、1aの表面の清浄化及び/又は活性化が、優れた品質の張り合わせを得るためにおそらく実行されることになる。制御された雰囲気下で接合されることが基板に対して可能である;これは、前記キャビティが犠牲材料のないときに、(前記接合操作に続いて埋められる)キャビティ内の圧力が制御されることを特に可能にする。
【0027】
埋め込み弱化面41におけるへき開は、ガス状元素種の合体及び加圧を介したマイクロクラックの成長という理由で、中間温度、典型的には350℃と500℃との間での熱処理の適用から好ましくはもたらされる(図1d)。あるいは又は連動して、へき開は、張り合わせ構造に機械的圧力の加圧からもたらされてもよい。
【0028】
このへき開の最後に、一方には中間SOI基板、他方にはドナー基板の残部40’が得られる。洗浄、表面処理(エッチング、ポリッシング、等)及び/又は熱処理を含む仕上げ手順が、シリコン表面層4が良い表面仕上げ(粗さ及び欠陥の数)並びに良い結晶品質を再び有することを確実にするように、中間SOI基板に従来の方式で適用される。この後で、SOI基板10が利用可能である。
【0029】
埋め込みキャビティ2を有するSOI基板10の生産がスマートカットプロセスを参照してここでは説明されてきているけれども、このようなSOI基板10は、この技術で知られている他の薄層移転プロセスを使用して生産されてもよい。
【0030】
発明による製造方法は、主平面(x、y)に延び、表面層4に形成され誘電体層3を含む光閉じ込め層53により取り囲まれたコア52、52’を備える光導波路50を形成するステップb)を次いで含む(図2)。
【0031】
光導波路50の形成は、主平面(x、y)内の導波路の寸法及び形状を定めるように、表面層4を局所的にエッチすることを必要とする。
【0032】
図4a及び図4bは、上から見た、すなわち主平面(x、y)内の、それぞれ、マッハ-ツェンダー干渉計のケース及びリング共振器のケースでの導波路50の2つの異なる構造を図示する。導波路50のコアの1つ又は複数のセグメント52’が1つ又は複数のキャビティ2(図4a及び図4bの破線)と垂直に配置される、導波路50のコア52、52’が、図に見られてもよい。主平面(x、y)内のコア52の長さは、目標とする構造に依存して変わってもよく、コアの幅は、0.2ミクロンと1ミクロンとの間、好ましくは0.3ミクロンと0.6ミクロンとの間が従来の方式では含まれる。
【0033】
光導波路50の形成は、SOI基板10の誘電体層3を含み、光閉じ込め層53とここでは呼ばれるクラッディングにコア52、52’をカプセル化するように、コア52、52’に追加の誘電体層3’が堆積されることもさらに必要とする。追加の誘電体層3’は、シリコン酸化物から好ましくは作製される。その厚さは、0.5ミクロンと1.5ミクロンとの間を典型的には含む。
【0034】
ステップb)では、光導波路50が形成された後で、アパーチャ(図示せず)が、外部圧力下に-少なくとも1つの-キャビティ2を配置するために、光導波路50を貫通して製作されてもよいことが有利である。アパーチャは、シリコンコア52、52’を含む領域の外側に閉じ込め層53を貫通して典型的に製作される。このアパーチャは、外部圧力下でのこの配置の後で、おそらく維持される、又はキャビティ2を封じるために塞がれることになる。
【0035】
埋め込みキャビティ2が犠牲材料で埋められるケースでは、(少なくとも)1つのアパーチャは、前記材料がアクセスされることを可能にし、上記材料を除去し、その固体材料の埋め込まれたキャビティ2を空にすることを目指したウェット又はドライエッチが実行されることを可能にするように形成される。もう一度、アパーチャは、おそらく維持される又はキャビティ2が空にされた後で塞がれることになる。
【0036】
キャビティ2は、ステップa)の最後に気密に封じられ、ある種の実施形態では、ステップb)及び/若しくはステップc)において、又は熱光学部品の製造後でさえ、熱光学部品の使用中にこの状態のままであってもよいことが思い出されることになる。キャビティ2の気密特性は、製造方法中にこのキャビティ2へとガス状の又は液体元素種の望まれない侵入に起因する効果を回避することを可能にさせ、これらの効果が、乾燥、上側膜組織の張り合わせ、様々なタイプの汚染、上側膜組織の劣化などに伴う問題を可能性として引き起こす。部品の使用中にキャビティ2を気密に保つことは、(特に、熱環境及び機械的変形の点で)作業点の再現性が保証されることもまた可能にできる。
【0037】
製造方法は、光導波路50に、少なくとも1つの加熱素子60を製作するステップc)を次いで含む(図3)。この加熱素子60は、埋め込みキャビティ2と垂直に主平面(x、y)に配置される。加熱素子60のこの平面内の寸法は、図3図4a及び図4bに図示したように、キャビティ2の寸法よりも小さいことが有利である。
【0038】
このように、主平面(x、y)には再び、加熱素子60が、いずれか、光導波路50のコアセグメント52’と垂直に、又は前記セグメント52’の両側に配置される(図4a、図4b)。このセグメント52’は、加熱素子60によって加えられる温度変動を受け、加熱素子の熱光学特性を有する部品100をそれゆえに与えることになる導波路50の部分に対応する。
【0039】
1つの特定の例示的な実施形態によれば、加熱素子60は、導波路のセグメント52’と垂直に、閉じ込め層53に直接Ti/TiN積層体を堆積することにより形成される。積層体は、約100nmの厚さを有することがある。
【0040】
加熱素子60は、電流源に接続されるものである2つの金属コンタクトパッドをさらに備える。電流が印加されると、加熱素子60は、ジュール加熱を介して熱を放散し、したがって導波路50のコアセグメント52’により経験される温度を高める。
【0041】
発明による製造方法は、単純で効果的であり:熱光学部品100を画定し、絶縁するために要求される技術ステップを制限し、これらのステップは、制御することがしばしば困難である化学エッチに特に基づき、高集積密度が実現されることもさらに可能にする。SOI基板10内の(少なくとも)1つの埋め込みキャビティ2の存在は、熱光学効果を引き起こさせるものである導波路セグメント52’の熱絶縁を容易にし、これが伝導を介した熱損失を制限することを可能にし、キャビティ内の空気又はガスが優れた絶縁体を形成する。並行して、光導波路50のコア52の周りの光閉じ込め層53の熱連続性が、加熱素子60の温度変化中の短い過渡応答時間を確実にし、したがって非常に良い応答性を有する部品100を与える。光導波路のコア52’の下の誘電体層3の存在が、導波路制御の部品応答速度とエネルギー効率との間で良い妥協点が得られることを可能にする。
【0042】
発明による製造方法は、SOI基板10の前面側又は裏面側を介した複雑なエッチが絶縁体を形成するために要求されないという理由で長持ちする熱光学部品100をさらに手に入れ、これらのエッチは、部品の機械的強度を低下させがちである。
【0043】
言うまでもないが、発明は、記載した実施形態に限定されない、変形の実施形態が、特許請求の範囲により規定されるような発明の範囲から逸脱せずに利用されてもよい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】