(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ペルツズマブにトラスツズマブを加えた固定用量配合剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20230719BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230719BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230719BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230719BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K39/395 M ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/46
A61K47/26
A61K47/22
A61P35/04
A61K31/337
A61K31/675
A61K47/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581373
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020050363
(87)【国際公開番号】W WO2022005499
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バドウィナツ-クルンジェヴィク, ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリクソン, ユイ チーエン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーソン, サラ
(72)【発明者】
【氏名】ニジェム, イザーン ハムディ
(72)【発明者】
【氏名】キルシュブラウン, ホイットニー ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】レストゥシア, エレオーノラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD09
4C076DD60
4C076DD61
4C076DD67
4C076EE23
4C084AA01
4C084AA02
4C084CA53
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA16
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4C084NA05
4C084NA06
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4C084ZC192
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG04
4C086AA01
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4C086BA02
4C086DA35
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
開示される本発明は、患者に皮下投与される、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び任意選択的に組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)に関する。FeDeriCa臨床治験の最終的な有効性及び安全性データ、米国処方情報(USPI)(家庭用を含む)の方法、及びPHranceSCa臨床治験の一次解析が開示され、特許請求される。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるHER2陽性がんを治療する方法であって、皮下投与デバイスを用いて約2mL/分の速度で約8分間にわたり患者の大腿部に皮下注射することによって、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)の負荷用量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
負荷用量のFDCが、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のrHuPH20を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
負荷用量のFDCの体積が15mLである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
負荷用量のFDCが、80mg/mLの濃度で1200mgのペルツズマブ、40mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
負荷用量のFDCの投与の後に約30分間の観察期間が続く、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
患者の大腿部に約2mL/分の速度で約5分間にわたってFDCの維持量を投与することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
維持量のFDCが、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のrHuPH20を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
維持量のFDCの体積が10mLである、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
維持量のFDCが、60mg/mLの濃度で600mgのペルツズマブ、60mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニンを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各維持量の後に約15分間の観察期間が続き、負荷用量が良好な耐容性を示した、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
皮下投与デバイスが手持ちシリンジである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
シリンジが25G-27Gの皮下注射針を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
HER2陽性がんが乳がんである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
乳がんが早期乳がん(EBC)である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
FDCがEBCのネオアジュバント又はアジュバント療法に用いられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
乳がんが転移性乳がん(MBC)である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
FDCが、
a. 早期乳がんの完全な治療レジメンの一部としてのHER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)を患う成人患者のネオアジュバント治療;
b. 再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がんを患う成人患者のアジュバント治療;又は
c. 以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていないHER2陽性転移性乳がんを患う成人患者の治療のためのドセタキセルとの併用
に用いられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
a. FDCを患者に投与すること;
b. 過敏症状又は注射関連反応について患者を監視すること;及び
c. 患者が重大な注射関連反応を有する場合に注入を減速又は一時停止すること、あるいは、患者がアナフィラキシーを経験するか又は重度の注射関連反応を有する場合にFDCを永久に中止すること
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
FDCを投与する前に患者に鎮痛剤、解熱剤、又は抗ヒスタミン剤を前投薬することを含み、FDCの以前の投与でグレード1又はグレード2の過敏症反応が起きている、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者の左右の大腿部間でFDCの各投与の皮下注射部位を交互に変えることを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
HER2陽性早期乳がん患者のネオアジュバント療法の方法であって、
a. 患者に皮下注射することによってペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)を投与すること;及び
b. 患者の治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗組換えヒトヒアルロニダーゼPH20抗体を測定することであって、治療下で発現する抗体が患者の≦約10%で発生する、測定すること
を含む、方法。
【請求項22】
治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗組換えrHuPH20抗体が、それぞれ、患者の約4.8%、0.9%、及び0.9%で発生する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
治療下で発現する抗体がペルツズマブ、トラスツズマブ、及び/又はrHuPH20の活性を中和するかどうかを測定することをさらに含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ペルツズマブとトラスツズマブとの固定用量配合剤(FDC)及び化学療法を患者に投与することを含む、HER2陽性の早期乳がんのネオアジュバント療法の方法
【請求項25】
約60%の病理学的完全奏効率(pCR)を達成する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
化学療法がアントラサイクリン及びタキサンを含む、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アントラサイクリンの完了後にFDCが投与され、FDCの投与後にタキサンが投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
化学療法が、ドーズデンスアントラサイクリン(ddAC)及びパクリタキセルを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ddACを2週間ごとに4サイクル(q2w×4)投与した後、FDCを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)と、パクリタキセルを毎週、12週間(qw×12)とを併用して投与することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
化学療法が、アントラサイクリン及びシクロホスファミド(AC)、並びにドセタキセルを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ACを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)投与した後、FDCを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)と、ドセタキセル(初回用量が良好な耐容性を示した場合は75mg/m
2から100mg/m
2まで漸増)を3週間ごとに4サイクル(q3w×4)とを併用して投与することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
手術後の患者にFDCをq3wで約1年間(最大18サイクル)投与することを含む、請求項24から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
患者がホルモン受容体陰性がんを有する、請求項24から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
患者がステージII-IIIAのがんを有する、請求項24から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
患者がリンパ節陽性がんを有する、請求項24から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
がんが、HER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)である、請求項24から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
以前にトラスツズマブ及びペルツズマブが静脈内投与されているHER2陽性がん患者を治療する方法であって、
a. 600mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブを含む固定用量配合剤(FDC)を投与することであって、患者が以前に静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを<6週間前に受けている、投与すること;又は
b. 1200mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブを含む固定用量配合剤(FDC)を投与することであって、患者が以前に静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを≧6週間前に受けている、投与すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示がここに参照することによって本願に援用される、2020年6月29日出願の米国仮特許出願第63/045712号及び2020年8月14日出願の米国仮出願出願第63/065795号に対する米国法典第35編特許法119条に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、患者に皮下投与される、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び任意選択的に組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含む、固定用量配合剤(FDC)に関する。本発明は、とりわけ、FeDeriCa臨床治験の最終的な有効性及び安全性データ、米国処方情報(USPI)(家庭用を含む)の方法、及びPHranceSCa臨床治験の一次解析に関する。
【背景技術】
【0003】
ペルツズマブ(PERJETA(登録商標))
ペルツズマブは、次の目的で静脈内注入によって投与されるHER2/neu受容体アンタゴニストである:
- 以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていない、HER2陽性転移性乳がん(MBC)を患う患者の治療のためのトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用
- 次のトラスツズマブ及び化学療法との併用:
- 早期乳がんの完全な治療レジメンの一部としてのHER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)を患う患者のネオアジュバント治療
- 再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がんを患う患者のアジュバント治療。
【0004】
ペルツズマブの米国処方情報(2020)参照。
【0005】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))
トラスツズマブは、次の目的で静脈内注入によって投与されるHER2/neu受容体アンタゴニストである:
- HER2過剰発現乳がんの治療。
- HER2過剰発現転移性の胃又は食道胃接合部腺癌の治療。
【0006】
トラスツズマブの米国処方情報(2020)参照。
【0007】
組換えヒアルロニダーゼヒト注射(HYLENEX(登録商標))
組換えヒアルロニダーゼヒト注射は:
- 水和を達成するための皮下液投与において
- 他の注入薬物の分散及び吸収を高めるために
- 放射線不透過性薬剤の再吸収を改善するための皮下尿路造影において
用いられる皮下液投与によって投与される組織透過性修飾剤である。
【0008】
組換え(ヒアルロニダーゼヒト注射)米国処方情報(2020)参照。
【0009】
トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oysk(HERCEPTIN HYLECTA(商標))
トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oyskは、次の目的で成人に提示される、トラスツズマブ、HER2/neu受容体アンタゴニスト、及びエンドグリコシダーゼである組換えヒトヒアルロニダーゼの組合せである:
- HER2過剰発現乳がんの治療。
【0010】
トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oyskの米国処方情報(2020)参照。HannaH研究では、追跡期間の中央値が60か月を超えた時点で、皮下トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oyskを受けた患者における、治療下で発現する抗トラスツズマブ抗体の発生率は16%であった。トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oysk群の3/47の患者のベースライン後の試料において、中和抗トラスツズマブ抗体が検出された。トラスツズマブ及びヒアルロニダーゼ-oysk群における、治療下で発現する抗組換えヒトヒアルロニダーゼ抗体の発生率は21%(62/295)であった。抗組換えヒトヒアルロニダーゼ抗体の検査で陽性の患者のいずれも、中和抗体の検査で陽性ではなかった。
【0011】
トラスツズマブ及びペルツズマブの固定用量配合剤(FDC)(PH FDC(商標))
HER2の過剰発現は、乳がん(BC)の約15~20%で発生し、高い再発率及び短い生存率に関連している。Wolff et al. Arch Pathol Lab Med 2018; 142(11): 1364-82、及びSlamon et al. Science 1987; 235(4785): 177-82。
【0012】
HER2陽性BCに対するペルツズマブとトラスツズマブの静脈内投与(P+H IV)と化学療法との併用は、CLEOPATRAにおける一次転移性設定の前例のない全生存期間(OS)の改善(Swain et al. N Engl J Med 2015; 372(8): 724-34)、NeoSphereの病理学的完全奏効(pCR)率の有意な増加(Gianni et al.Lancet Oncol 2012;13(1):25-32)及び、APHINTYのアジュバント治癒設定で再発リスクの高い患者の浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)の臨床的に意味のある改善(von Minckwitz et al. N Engl J Med 2017; 377(2): 122-31)をもたらした。したがって、P+H+化学療法は、HER2陽性の早期及び転移性BC(EBC/MBC)についての標準治療である。
【0013】
P IV及びH IVは、通常は治療コース全体にわたり複数のサイクルで、それぞれ、30~60分及び30~90分にわたって注入される(EBCでは最長1年;MBCでは疾患進行まで)。IVアクセスの確立には侵襲性処置が必要であり、特に繰り返し治療される場合、患者にとって不便で苦痛を伴うことがよくある。Poorter et al. Eur J Cancer 1996; 32A(13): 2262-6 and Shivakumar et al. J Clin Oncol 2009; 27(29): 4858-64。
【0014】
腫瘍学におけるIVモノクローナル抗体(mAb)の使用の増加は、点滴の準備及び投与、並びに関連物質の廃棄に必要とされる時間及び資源に関しても、医療センターに負担をかけている。De Cock et al. Cancer Med 2016; 5(3): 389-97。
【0015】
皮下(SC)注射によって投与されたmAb(SCトラスツズマブ及びリツキシマブ/ヒアルロニダーゼ・ヒト)から入手可能なデータは、経路の変更(IVからSCへ)によって、血清トラフ濃度(Cトラフ)が低下せず、一貫した抗腫瘍活性が得られ、IV投与で達成されたものと同等の安全性が得られることを示している。Ismael et al. Lancet Oncol 2012; 13(9): 869-78; Jackisch et al. Eur J Cancer 2016; 62: 62-75; Jackisch et al. JAMA Oncol 2019; 5(5): e190339; Pivot et al. Lancet Oncol 2013; 14(10): 962-70 ; Pivot et al. Ann Oncol 2014; 25(10): 1979-87; Pivot et al. Eur J Cancer 2017; 86: 82-90; Davies et al. Lancet Oncol 2014; 15(3): 343-52; Assouline et al. Br J Clin Pharmacol 2015; 80(5): 1001-9; Rummel et al. Ann Oncol 2017; 28(4): 836-42; Gligorov et al. Eur J Cancer 2017; 82: 237-46。
【0016】
大腿部へのH SC注射を伴うP IV注射は、P+H IVと同様の有効性及び安全性を維持しつつ、2~5分の短い投与時間をもたらす、より便利な選択肢を提供する。Kuemmel et al. Cancer Res 2019; 20(4 Suppl): Abstract P1-18-05。
【0017】
SC注射は、薬物投与の負担とチェアタイムの削減を実証しており、医療資源の使用を最適化する可能性を有しており(De Cock et al. Cancer Med 2016; 5(3): 389-97; Haller, M. Pharm Technol 2007; 31(10): 118-32)、患者に好まれており(PrefHerでは、圧倒的な88.9%がH IVよりもH SCを好んだ)、医療従事者にとってより満足のいくものである。Pivot et al. (2013); Pivot et al. (2014); Rummel et al. (2017); Pivot et al. Eur J Cancer 2017; 82: 230-6。
【0018】
SC投与は、腫瘍学におけるmAbの家庭での投与も可能にしうる。幾つかの研究では、SC生物学的製剤の家庭での投与に関連するコスト、資源、及び生活の質の点で、利点が実証されている。Beaute et al. Clin Exp Immunol 2010; 160(2): 240-5; Gardulf, A. BioDrugs 2007; 21(2): 105-16。これらの利点を所与として、家庭でのmAb投与の実現可能性を評価する取り組みが進行中である。
【0019】
皮下ペルツズマブ及びトラスツズマブ 固定用量配合剤(PH FDC SC)が開発されており、個別のIV点滴と比較して患者に低侵襲で迅速なP及びHの投与を提供している。承認されたP IVレジメンはHER2受容体結合を飽和状態にすることが想定されていることから、非劣性の定常状態Cトラフで P SC用量の最大の臨床的有効性を予測することは適切なはずである;非劣性Cトラフは、少なくともIV投与と同程度の標的飽和を保証するであろう;したがって、同様の有効性が保証される。Kirschbrown et al. J Clin Pharmacol 2019; 59(5): 702-16。
【0020】
PH FDC SC内のP用量は、フェーズ1b BO30185用量設定試験で確立され、これは、単回600mgのSC P用量が単回420mgのIV用量と同様の血清Cトラフ及び濃度-時間曲線下面積(AUC)の値を提供することを示した。Kirschbrown et al. (2019)。PH FDC SC内のH 600mg用量は、フェーズ1 BO22023試験で確立され、フェーズ3 HannaH治験で確認された。Ismael et al.(2012)。
【0021】
PH FDC SCは、米国特許出願公開第2018/0296470号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【0022】
静脈内ペルツズマブ(P IV)及びトラスツズマブ(H IV)点滴は、負荷用量については、それぞれ、60分及び90分にわたり、いずれの場合も維持量については30~90にわたって順次投与される。点滴後、米国外の地域の規制要件に従って、Hでは約2~6時間、Pでは30~60分の観察時間が推奨される。組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20;より大量の薬物の皮下投与を可能にする透過促進剤)と共製剤化されたHの皮下製剤(H SC)が開発され、HのIV点滴に伴う不便さの一部を克服し、HER2陽性乳がんを患う患者における経時的な反復投与を容易にするために承認された。
【0023】
PH FDC SCは、承認されたP IV及びH SC 製剤と同様に、体重に基づかない固定用量として投与されるが、投与時間はより短くなる(各IV点滴での30~90分に対し、合計5~8分)。
【0024】
第1の態様では、本発明は、皮下投与デバイスを用いて約2mL/分の速度で約8分間にわたり患者の大腿部に皮下注射することによって、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)の負荷用量を投与することを含む、患者におけるHER2陽性がんを治療する方法に関する。任意選択的に、投与の後に約30分間の観察期間が続く。
【0025】
一実施態様では、負荷用量のFDCは、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のrHuPH20を含み、例えば最大15mLに調製される。例えば、負荷用量のFDCは、次を含むことができる:80mg/mLの濃度で1200mgのペルツズマブ、40mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニン。
【0026】
一実施態様では、負荷用量のFDCの後に、各約2mL/分の速度で約5分間にわたる、患者の大腿部におけるFDCの維持量の投与が続く。一実施態様では、各維持量の後に、負荷用量が良好な耐容性を示した場合は、約15分間の観察期間が続く。
【0027】
例示的な維持量のFDCは、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のrHuPH20を含み、例えば10mLの最終容量にする。例示的な維持量のFDCは、60mg/mLの濃度で600mgのペルツズマブ、60mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニンを含む。
【0028】
別の実施態様では、本発明は、次を含む、HER2陽性早期乳がん患者のネオアジュバント療法の方法に関する:
a. 患者に皮下注射することによってペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)を投与すること、及び
b. 患者の治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗rHuPH20抗体を測定すること、ここで、治療下で発現する抗体は患者の≦約10%で発生する。
【0029】
一実施態様では、治療下で発現する抗体が、約8%未満の患者で発生する。
【0030】
一実施態様では、治療下で発現する抗体が、約5%未満の患者で発生する。
【0031】
一実施態様では、治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗rHuPH20抗体は、それぞれ、患者の約4.8%、0.9%、及び0.9%で発生する。
【0032】
一実施態様では、治療下で発現する抗体は、患者が次を用いて皮下治療された後に評価される:
a. 負荷用量のFDC(例えば、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のrHuPH20を含む);及び/又は
b. 維持量のFDCの3回投与(例えば、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のrHuPH20を含む)。
【0033】
一実施態様では、治療下で発現する抗体は、負荷用量のFDCの投与後及び/又は手術後の最初の維持量のFDCの投与前に評価される。
【0034】
一実施態様では、該方法は、任意選択的にさらに、治療下で発現する抗ペルツズマブ抗体が、ペルツズマブ、トラスツズマブ及び/又はrHuPH20の活性を中和するかどうかを測定することを含む。ペルツズマブに対するADAの検査で陽性の患者のうち、FDCによるネオアジュバント療法を受けている1人の患者で、中和抗ペルツズマブ抗体が検出された。トラスツズマブに対するADAの検査で陽性の患者のうち、FDCによるネオアジュバント療法を受けている1人の患者で、中和抗トラスツズマブ抗体が検出された。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明は、ペルツズマブとトラスツズマブとの固定用量配合剤(FDC)及び化学療法を患者に投与することを含む、HER2陽性の早期乳がんのネオアジュバント療法の方法に関する。
【0036】
一実施態様では、FDCは、約60%(例えば59.7;
図9参照)の総病理学的完全奏効率(pCR)を達成する。
【0037】
一実施態様では、化学療法は、アントラサイクリン及びタキサンを含む。
【0038】
一実施態様では、アントラサイクリンの完了後にFDCが投与され、FDCの投与後にタキサンが投与される(例えば、FDCとタキサンは同じ日に投与されるが、タキサンはDCの後に投与される)。
【0039】
一実施態様では、化学療法は、ドーズデンスアントラサイクリン(ddAC)及びパクリタキセルを含む。一実施態様では、該方法は、ddACを2週間ごとに4サイクル(q2w×4)投与した後、FDCを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)とパクリタキセルを毎週、12週間(qw×12)と併用して投与することを含む。
【0040】
一実施態様では、化学療法は、アントラサイクリン及びシクロホスファミド(AC),並びにドセタキセルを含む。一実施態様では、該方法は、ACを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)投与した後、FDCを3週間ごとに4サイクル(q3w×4)とドセタキセル(初回用量が良好な耐容性を示した場合は75mg/m2から100mg/m2まで漸増)を3週間ごとに4サイクル(q3w×4)とを併用して投与することを含む。
【0041】
実施例1のデータは、ddAC及びパクリタキセルの化学療法をFDCと併用して治療された患者が、AC及びドセタキセルをFDCと併用して治療された患者よりも高い総pCR率(66.7%対53.1%のpCR;
図13)、並びにddAC及びパクリタキセルの化学療法をペルツズマブIV及びトラスツズマブIVと併用して治療された患者よりも高い総pCR(66.7%対63.3%のpCR:
図13)を達成したことを示した。
【0042】
一実施態様では、該方法は、手術後の患者にFDCをq3wで約1年間(最大18サイクル)投与することを含む。
【0043】
一実施態様では、患者はホルモン受容体陰性がんを有する。これは、そのような患者が、エストロゲン受容体及び/又はプロゲステロン受容体陽性患者の両方と比較して、またペルツズマブIV及びトラスツズマブIVで治療されたホルモン受容体陰性患者と比較して、最高のパーセンテージのpCRを達成したことを示すデータによって裏付けられている(それぞれ、70.8%対52.3%及び66%のpCR;
図14参照)。
【0044】
一実施態様では、患者はステージII-IIIAのがんを有する。FDCは、ステージIIIB-IIICの患者の54%と比較して、そのような患者で61.1%の総pCR率を達成した(表4)。
【0045】
一実施態様では、患者はリンパ節陽性がんを有する。
【0046】
一実施態様では、がんは、HER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)である。
【0047】
さらに別の実施態様では、本発明は、以前にトラスツズマブ及びペルツズマブが静脈内投与されているHER2陽性がん患者を治療する方法であって、
a. 600mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブを含む固定用量配合剤(FDC)を投与すること(ここで、患者は以前に静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを<6週間前に受けている)、又は
b. 1200mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブを含む固定用量配合剤(FDC)を投与すること(ここで、患者は以前に静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを≧6週間前に受けている)
を含む、方法に関する。
【0048】
開示されたさまざまな発明によれば、例示的な実施態様は、次を含む:HER2陽性がんが乳がんである;乳がんが早期乳がん(EBC)である;乳がんが転移性乳がん(MBC)である。
【0049】
開示されたさまざまな発明によれば、FDCは、EBCのネオアジュバント又はアジュバント療法;早期乳がんの完全な治療レジメンの一部としてのHER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)を患う成人患者のネオアジュバント治療;再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がんを患う成人患者のアジュバント治療;以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていないHER2陽性転移性乳がんを患う成人患者の治療のためのドセタキセルとの併用に用いられる。
【0050】
別の実施態様によれば、本発明は、
a. FDCを患者に投与すること、
b. 過敏症状又は注射関連反応について患者を監視すること、及び
c. 患者が重大な注射関連反応を有する場合に注入を減速又は一時停止すること、又は患者がアナフィラキシーを経験するか又は重度の注射関連反応を有する場合にFDCを永久に中止すること
を含む方法に関する。
【0051】
一実施態様によれば、例えばFDCの以前の投与でグレード1又はグレード2の過敏症反応が起きている場合、患者は、FDCを投与する前に、鎮痛剤、解熱剤、及び/又は抗ヒスタミン剤を前投薬される。
【0052】
一実施態様では、該方法は、患者の左右の大腿部間でFDCの各投与の皮下注射部位を交互に変えることに関する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】HER2タンパク質構造の概略図、及びその細胞外ドメインのドメインI-IVのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1-4)
【
図2】A及びBは、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽(V
L)(
図2A)及び可変重(V
H)(
図2B)ドメインのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び6);バリアント574/ペルツズマブのV
L及びV
Hドメイン(それぞれ、配列番号7及び8)、並びにヒトV
L及びV
Hコンセンサスフレームワーク(hum κ1、軽κサブグループI;humIII、重サブグループIII)(それぞれ、配列番号9及び10)のアラインメントを示す図である。アスタリスクは、ペルツズマブの可変ドメインとマウスモノクローナル抗体2C4との間、又はペルツズマブの可変ドメインとヒトフレームワークとの間の違いを示している。括弧内は相補性決定領域(CDR)である。
【
図3】A及びBは、ペルツズマブ軽鎖(
図3A;配列番号11)及び重鎖(
図3B;配列番号12)のアミノ酸配列を示す図である。CDRは太字で示されている。軽鎖及び重鎖の計算分子量は、23,526.22Da及び49,216.56Daである(還元型のシステイン)。炭水化物部分は、重鎖のAsn299に結合している。
【
図4A】トラスツズマブの軽鎖(配列番号13)のアミノ酸配列を示す図である。可変軽ドメインと可変重ドメインの境界は矢印で示されている。
【
図4B】重鎖(配列番号14)のアミノ酸配列を示す図である。可変軽ドメインと可変重ドメインの境界は矢印で示されている。
【
図5A】バリアントペルツズマブ軽鎖配列(配列番号15)を示す図である。
【
図5B】バリアントペルツズマブ重鎖配列(配列番号16)を示す図である。
【
図6A】FeDeriCa研究のための研究設計を示す図である。無作為化は、ホルモン受容体の状態、発症時の段階、および化学療法の種類によって階層化された。略語:(dd)AC=(ドーズデンス)ドキソルビシン+シクロホスファミド。FDC=固定用量配合剤。FPI=最初の患者登録。H=トラスツズマブ。IV=静脈内。LPI=最後の患者登録。P=ペルツズマブ。Qw=毎週。q2w=2週間ごと。q3w=3週間ごと。SC=皮下。研究投薬:PH FDC SC q3w:15mL中、1200mg P SC/600mg H SCの負荷用量、10mL中、600mgの各維持;P IV q3w:840mgの負荷用量、420mgの維持;H IV q3w:8mg/kgの負荷用量、6mg/kgの維持;H SC q3w:600mg;ddAC q2w:60mg/m
2のA/600mg/m
2のC;パクリタキセル qw:80mg/m
2;ドセタキセル q3w:75mg/m
2、耐容性がある場合は100mg/m
2まで上昇;AC q3w:ddACと同じ用量。
【
図6B】FeDeriCa研究の点滴、投与、及び観察時間を示すグラフである。
【
図7】FeDeriCa研究の治験プロファイルを示している。
*スクリーニングと無作為化との間の除外理由:中央研究所によるHER2-陰性(n=46);非ステージII-IIICの早期疾患/炎症性疾患の針コア生検なし(n=1);ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織ブロックなし(n=1);不十分な肝機能(n=6);同意書なし(n=16);転移性疾患(n=16);プロトコールへの準拠不能(n=5);ネオアジュバント療法前のセンチネルリンパ節生検(n=1);以前に乳がんの全身療法/放射線療法を受けた(n=2);活動性肝疾患(n=2);原発腫瘍が≦2cm又はリンパ節転移陰性(n=1);妊娠(n=1);重篤な心臓病又は医学的状態(n=2);無作為化の前28日以内の主要な外科的処置/研究の過程で予想される主要な手術(n=1);両側乳がん(n=2);不十分な骨髄機能(n=1);ベースライン左室駆出率<55%(n=2);心室性不整脈の病歴又は心室性不整脈の危険因子(n=1)。
†死亡した患者1人を含む。
‡3人の患者は、手術を受ける前に研究を中止した。
【
図8】FeDeriCa(*n=202)のプロトコールごとの薬物動態集団(*n=202)における薬物動態パラメータを示している。AUC
0-21日=0-21日の血清濃度-時間曲線下の面積。CI=信頼区間。C
max=最大血清濃度;C
トラフ=血清トラフ濃度。CV=変動係数。GMR=幾何平均比。H=トラスツズマブ。P=ペルツズマブ。P+H IV=静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブ。PH FDC SC=皮下ペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤。SD=標準偏差。T
max=C
maxまでの時間。
【
図9】FeDeriCaの治療意図集団における総病理学的完全奏効率(pCR)を示している。CI=信頼区間。P+H IV=静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブ。PH FDC SC=皮下ペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤。tpCR=総病理学的完全奏効率。
【
図10】FeDeriCa研究の視覚的な要約を提供している。
【
図11】FeDeriCaの治療意図集団における総pCRの探索的多重ロジスティック回帰分析のオッズ比及び95%Wald信頼限界を示している。
【
図12A】NCI-CTCAEのグレード1-2の患者の≧10%で発生したすべての有害事象、及びFeDeriCaのグレード3-5のすべての有害事象(安全性集団)を示している。
【
図12B】NCI-CTCAEのグレード1-2の患者の≧10%で発生したすべての有害事象、及びFeDeriCaのグレード3-5のすべての有害事象(安全性集団)を示している。
【
図12C】NCI-CTCAEのグレード1-2の患者の≧10%で発生したすべての有害事象、及びFeDeriCaのグレード3-5のすべての有害事象(安全性集団)を示している。
【
図12D】NCI-CTCAEのグレード1-2の患者の≧10%で発生したすべての有害事象、及びFeDeriCaのグレード3-5のすべての有害事象(安全性集団)を示している。
【
図13】化学療法のタイプに基づく、FeDeriCaの総病理学的完全奏効率(pCR)を示している。CI=信頼区間。(dd)AC=(ドーズデンス)ドキソルビシン+シクロホスファミド。
【
図14】ホルモン受容体の状態に基づくFeDeriCaの総(pCR)を示している。ER=エストロゲン受容体。PgR=プロゲステロン受容体。
【
図15】実施例3のPHranceSCaプロトコールを示している。患者は全員女性であった;年齢の中央値は49歳であった。
*必要に応じて、P IV負荷用量:840mg;維持:420mg q3w。必要に応じて、H IV負荷用量:8mg/kg;維持:6mg/kg IV q3w。
†必要に応じて、PH FDC SC負荷用量:15mL中、P 1200mg/H 600mg;維持:10mL中、P 600mg/H 600mg q3w。負荷用量は、研究登録時のP+H IVの最後のネオアジュバント投与から≧6週間経過した患者、又は研究中の最後の研究治療から≧6週間経過した患者にのみ必要であった。維持量は、その後の投与又は<6週間の投与遅延に使用された。H、トラスツズマブ;HCP、医療専門家;HR、ホルモン受容体;IV、静脈内;NACT、ネオアジュバント化学療法;P、ペルツズマブ;PH FDC SC、皮下注射用のペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤;PPQ、患者の選好性に関するアンケート;SC、皮下;TASQ、治療投与満足度アンケート。
【
図16】PHranceSCaに対する患者の選好性の一次分析を示している。CI、信頼区間;H、トラスツズマブ;IV、静脈内;P、ペルツズマブ;PH FDC SC、皮下注射用のペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤;PPQ、患者の選好性に関するアンケート;SC、皮下。
【
図17】PHranceSCaの一次分析における有害事象を示している。AE、有害事象;H、トラスツズマブ;IV、静脈内;P、ペルツズマブ;PH FDC SC、皮下注射用のペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤;SAE、重篤な有害事象;SC、皮下。
【
図18】PHranceSCaへの切り替え前後の有害事象を示している。AE、有害事象;H、トラスツズマブ;IV、静脈内;P、ペルツズマブ;PH FDC SC、皮下注射用のペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量配合剤。
【
図19】ペルツズマブ及びトラスツズマブ中和抗薬剤抗体(ADA)アッセイを示している。ECD=細胞外ドメイン;HER2=ヒト上皮増殖因子受容体2;HRP=ホースラディッシュペルオキシダーゼ;NAb=中和抗体;TMB=テトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ。注:左の図は、試料中にNAbが検出されない場合のアッセイを示している。右の図はNAbが検出された場合のアッセイを示している。ペルツズマブNAbアッセイでは、トラスツズマブドメインは突然変異体HER2 ECDから除去され、トラスツズマブNAbアッセイは、ペルツズマブドメインが除去される。
【
図20】FeDeriCa研究中の重要な抗薬剤抗体(ADA)収集時点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
I. 定義
「HER受容体」は、HER受容体ファミリに属し、EGFR、HER2、HER3、及びHER4受容体を含む、受容体タンパク質チロシンキナーゼである。HER受容体は、一般に、HERリガンドに結合し、及び/又は別のHER受容体分子と二量体化することができる細胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;及び、リン酸化可能な幾つかのチロシン残基を含むカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含む。HER受容体は、「天然配列」HER受容体、又はその「アミノ酸配列バリアント」でありうる。好ましくは、HER受容体は天然配列ヒトHER受容体である。
【0055】
「ErbB2」及び「HER2」という表現は、本明細書では交換可能に用いられ、例えば、Semba et al., PNAS (USA) 82:6497-6501 (1985)、及びYamamoto et al. Nature 319:230-234 (1986)に記載されるヒトHER2タンパク質(Genebankアクセッション番号X03363)を指す。「erbB2」という用語は、ヒトErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」は、ラットp185neuをコードする遺伝子を指す。好ましいHER2は天然配列ヒトHER2である。
【0056】
本明細書では、「HER2細胞外ドメイン」又は「HER2 ECD」は、細胞外にあり、細胞膜に固定されているHER2のドメイン、又はその断片を含む循環中のHER2のドメインを指す。HER2のアミノ酸配列は
図1に示されている。一実施態様では、HER2の細胞外ドメインは、4つのドメインを含みうる:「ドメインI」(約1-195のアミノ酸残基;配列番号1)、「ドメインII」(約196-319のアミノ酸残基;配列番号2)、「ドメインIII」(約320-488のアミノ酸残基:配列番号3)、及び「ドメインIV」(約489-630のアミノ酸残基;配列番号4)(シグナルペプチドを含まない残基の番号付け)。Garrett et al. Mol. Cell. 11: 495-505 (2003), Cho et al. Nature 421: 756-760 (2003), Franklin et al. Cancer Cell 5:317-328 (2004)、及びPlowman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 90:1746-1750 (1993)、並びに本明細書の
図1参照。
【0057】
本明細書の「HER3」又は「ErbB3」は、例えば、米国特許第5,183,884号及び同第5,480,968号、並びにKraus et al. PNAS (USA) 86:9193-9197 (1989)に開示される受容体を指す。
【0058】
本明細書の「HER二量体」は、少なくとも2つのHER受容体を含む、非共有結合二量体である。このような複合体は、2つ以上のHER受容体を発現する細胞がHERリガンドに曝露されたときに形成される可能性があり、免疫沈降によって単離することができ、例えば、Sliwkowski et al., J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665 (1994)に記載されるSDS-PAGEによって分析することができる。サイトカイン受容体サブユニット(例えば、gp130)などの他のタンパク質は、二量体と関連しうる。好ましくは、HER二量体はHER2を含む。
【0059】
本明細書における「HERヘテロ二量体」は、EGFR-HER2、HER2-HER3、又はHER2-HER4ヘテロ二量体などの少なくとも2つの異なるHER受容体を含む、非共有結合ヘテロ二量体である。
【0060】
「HER抗体」は、HER受容体に結合する抗体である。任意選択的に、HER抗体はさらに、HERの活性化又は機能に干渉する。好ましくは、HER抗体はHER2受容体に結合する。本明細書における目的のHER2抗体は、ペルツズマブ及びトラスツズマブである。
【0061】
「HER活性化」は、任意の1つ以上のHER受容体の活性化又はリン酸化を指す。概して、HER活性化はシグナル伝達をもたらす(例えば、HER受容体のチロシン残基又は基質ポリペプチドをリン酸化するHER受容体の細胞内キナーゼドメインによって引き起こされる)。HER活性化は、目的のHER受容体を含むHER二量体に結合するHERリガンドによって媒介されうる。HER二量体に結合するHERリガンドは、二量体中の1つ以上のHER受容体のキナーゼドメインを活性化することができ、それによって1つ以上のHER受容体におけるチロシン残基のリン酸化及び/又はAkt又はMAPK細胞内キナーゼなどの追加の(一又は複数の)基質ポリペプチドにおけるチロシン残基のリン酸化をもたらす。
【0062】
「HER二量体化を阻害する」抗体は、HER二量体の形成を阻害又はそれに干渉する抗体である。好ましくは、このような抗体は、そのヘテロ二量体結合部位でHER2に結合する。本明細書で最も好ましい二量体化を阻害する抗体は、ペルツズマブ又はMAb 2C4である。HER二量体化を阻害する抗体の他の例には、EGFRに結合し、1つ以上の他のHER受容体との二量体化を阻害する抗体(例えば、活性化した又は「繋がれていない」EGFRに結合する、EGFRモノクローナル抗体806、MAb806;Johns et al., J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004)参照);HER3に結合し、1つ以上の他のHER受容体との二量体化を阻害する抗体;並びに、HER4に結合し、1つ以上の他のHER受容体との二量体化を阻害する抗体が含まれる。
【0063】
「HER2二量体化阻害剤」は、HER2を含む二量体又はヘテロ二量体の形成を阻害する薬剤である。
【0064】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位」とは、EGFR、HER3、又はHER4の細胞外ドメイン内の領域と二量体を形成する際に接触又は相互作用する、HER2の細胞外ドメイン内の領域を指す。その領域は、HER2のドメインII(配列番号2)に見出される。Franklin et al. Cancer Cell 5:317-328 (2004)。
【0065】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位に結合する」HER2抗体は、ドメインII(配列番号2)の残基に結合し、任意選択的に、ドメインI及びIII(配列番号1及び3)などのHER2細胞外ドメインの他のドメインの残基にも結合し、HER2-EGFR、HER2-HER3、又はHER2-HER4ヘテロ二量体の形成を少なくともある程度立体的に妨げることができる。Franklin et al. Cancer Cell 5:317-328 (2004)は、RCSBタンパク質データバンク(ID Code IS78)に寄託されたHER2-ペルツズマブの結晶構造の特徴を明らかにし、HER2のヘテロ二量体結合部位に結合する例示的な抗体を示している。
【0066】
HER2の「ドメインIIに結合する」抗体は、ドメインII(配列番号2)の残基、及び任意選択的にドメインI及びIII(それぞれ、配列番号1及び3)など、HER2の(一又は複数の)他のドメインの残基に結合する。好ましくは、ドメインIIに結合する抗体は、HER2のドメインI、II、及びIII間の接合部に結合する。
【0067】
本明細書の目的のため、交換可能に用いられる「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」は、それぞれ、配列番号7及び8の可変軽及び可変重アミノ酸配列を含む抗体を指す。ペルツズマブがインタクトな抗体である場合、それは、好ましくは、IgG1抗体を含む;一実施態様では、配列番号11又は15の軽鎖アミノ酸配列、及び配列番号12又は16の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意選択的に、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書の「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」という用語は、米国一般名(USAN)又は国際一般名(INN):ペルツズマブを有する薬物のバイオシミラー版を包含する。
【0068】
本明細書の目的のため、交換可能に用いられる「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5」は、それぞれ、配列番号13及び14内の可変軽及び可変重アミノ酸配列を含む抗体を指す。トラスツズマブがインタクトな抗体である場合、それは、好ましくは、IgG1抗体を含む;一実施態様では、配列番号13の軽鎖アミノ酸配列、及び配列番号14の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意選択的に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書の「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5」という用語は、米国一般名(USAN)又は国際一般名(INN):トラスツズマブを有する薬物のバイオシミラー版を包含する。
【0069】
「薬学的製剤」という用語は、有効成分の生物活性を有効にするような形態であり、製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含まない、調製物を指す。このような製剤は滅菌されている。
【0070】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又はすべての生きている微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0071】
「安定な」製剤とは、その中のタンパク質が保管時にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物活性を本質的に保持するものである。好ましくは、製剤は、保管時にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物活性を本質的に保持する。保管期間は、概して、製剤の意図された貯蔵寿命に基づいて選択される。タンパク質の安定性を測定するためのさまざまな分析技法が当技術分野で利用可能であり、ペプチド及びタンパク質で概説されている。例えば、Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs.(1991)、及びJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)。安定性は、選択した時間、選択した温度で測定することができる。好ましくは、製剤は、約40℃で少なくとも約2~4週間安定であり、及び/又は約5.0及び/又は15℃で少なくとも3か月間安定であり、及び/又は約-20℃で少なくとも3か月又は少なくとも1年間安定である。さらには、製剤は、好ましくは、製剤の凍結(例えば、-70℃まで)後及び解凍後、例えば、凍結及び解凍の1、2、又は3サイクル後に安定である。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーの使用、濁度の測定、及び/又は目視検査による);陽イオン交換クロマトグラフィー又はキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷の不均一性を評価することによって;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元抗体とインタクトな抗体とを比較するためのSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物活性又は抗原結合機能の評価;などを含む、さまざまな方法で定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性には、次のいずれか1つ以上が含まれうる:凝集、脱アミド化(例えば、Asnの脱アミド化)、酸化(例えば、Metの酸化)、異性化(例えば、Aspの異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミド形成、(一又は複数の)不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の違いなど。
【0072】
「脱アミド化の影響を受けやすい」抗体は、脱アミド化しやすいことが分かっている1つ以上の残基を含む抗体である。
【0073】
「凝集の影響を受けやすい」抗体は、とりわけ、凍結及び/又は撹拌時に、(一又は複数の)他の抗体分子と凝集することが分かっている抗体である。
【0074】
「断片化の影響を受けやすい」抗体は、例えばそのヒンジ領域で、2つ以上の断片に切断されることが分かっている抗体である。
【0075】
「脱アミド化、凝集、又は断片化を減少させる」とは、異なるpH又は異なるバッファーで製剤化されたモノクローナル抗体と比較して、脱アミド化、凝集、又は断片化を防止又はそれらの量を減少させることを意図する。
【0076】
本明細書では、モノクローナル抗体の「生物活性」とは、抗体が抗原に結合し、in vitro又はin vivoで測定することができる測定可能な生物学的応答をもたらす能力を指す。ペルツズマブの場合、一実施態様では、生物活性とは、製剤化された抗体がヒト乳がん細胞株MDA-MB-175-VIIの増殖を阻害する能力を指す。
【0077】
「等張」とは、目的の製剤がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、概して、約250から350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧型又は氷凍結型の浸透圧計を使用して測定することができる。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「バッファー」とは、その酸塩基コンジュゲート成分の作用によるpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。本発明のバッファーは、好ましくは、約5.0から約7.0の範囲のpH、好ましくは約5.5から約6.5、例えば約5.5から約6.2、例えば5.5又は5.7などのpHを有する。pHをこの範囲に制御するバッファーの例には、酢酸、コハク酸、コハク酸、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸、グリシルグリシン、及び他の有機酸バッファーが含まれる。本明細書の好ましいバッファーは、ヒスチジンバッファーである。
【0079】
「ヒスチジンバッファー」は、ヒスチジンイオンを含むバッファーである。ヒスチジンバッファーの例としては、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンが挙げられる。本明細書の実施例で特定された好ましいヒスチジンバッファーは、酢酸ヒスチジンであることが分かった。好ましい実施態様では、酢酸ヒスチジンバッファーは、L-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を酢酸(液体)で滴定することによって調製される。好ましくは、ヒスチジンバッファー又は酢酸ヒスチジンバッファーは、pH5.5から6.5、又はpH5.7から6.2、例えばpH5.7である。
【0080】
本明細書における「糖類」は、一般組成(CH2O)n及びその誘導体を含み、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。本明細書における糖類の例としては、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロースなどが挙げられる。本明細書における好ましい糖類は、トレハロース又はスクロースなどの非還元二糖類である。
【0081】
本明細書では、「界面活性剤」とは、表面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウム、又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;及び、MONAQUAT(商標)系(Mona Industries, Inc.、米国ニュージャージー州パターソン所在);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールとの共重合体(例えば、Pluronics、PF68など)などが含まれる。本明細書で好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、概して、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24-34(L1)、50-56(L2)、及び89-97(L3)、並びに重鎖可変ドメインの31-35(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))、及び/又は「超可変ループ」由来の残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26-32(L1)、50-52(L2)及び91-96(L3)、並びに重鎖可変ドメインの26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク領域」又は「FR」の残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0083】
本明細書の「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられ、天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、又はPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義されている。Fc領域のC末端リジン(EU番号付与体系による残基447)は、例えば、抗体の産生若しくは精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって除去されうる。したがって、インタクトな抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を含む抗体と含まない抗体の混合物を有する抗体集団を含みうる。
【0084】
別途指示がない限り、本明細書における免疫グロブリン重鎖の残基の番号付与は、参照することによって本明細書に明示的に組み込まれる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)と同様にEUインデックスのものである。「KabatのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付与を指す。
【0085】
「がん」及び「がん性」という用語は、通常、調節されていない細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物の生理的状態を指し、又は説明する。
【0086】
「進行性」のがんは、局所浸潤(「局所進行性」)又は転移(「転移性」)のいずれかによって、発生部位または臓器の外側に広がったがんである。したがって、「進行性」のがんという用語には、局所進行性疾患及び転移性疾患の両方が含まれる。
【0087】
「転移性」のがんとは、体のある部分(乳房など)から体の別の部分に広がったがんを指す。
【0088】
「難治性」のがんは、化学療法などの抗腫瘍剤又は免疫療法などの生物学的療法ががん患者に投与されているにもかかわらず進行するがんである。難治性のがんの一例は、プラチナ製剤難治性のがんである。
【0089】
「再発性」のがんは、手術などの初期治療に反応した後、最初の部位又は離れた部位のいずれかで再増殖したがんである。
【0090】
「局所再発性」のがんとは、治療後に以前に治療したがんと同じ場所に再発するがんである。
【0091】
「摘出不能」又は「切除不能」ながんは、手術によって取り除く(切除する)ことができない。
【0092】
本明細書の「早期の乳がん」とは、乳房又は腋窩リンパ節を越えて広がっていない乳がんを指す。このようながんは、概して、ネオアジュバント療法又はアジュバント療法で治療される。
【0093】
「局所進行性乳がん」は、乳房を越えて胸壁若しくは乳房の皮膚、又は脇の下の多くのリンパ節(腋窩リンパ節)に広がっているが、他の臓器には広がっていない。
【0094】
「炎症性乳がん」は、がん細胞が乳房の皮膚のリンパ管をブロックする、まれで非常に侵攻性疾患である。このタイプの乳がんは、乳房がしばしば腫れたり赤くなったり、又は炎症を起こしたりするため、「炎症性」と呼ばれる。
【0095】
本明細書の目的では、「再発のリスクが高い」EBCには、リンパ節陽性乳がんが含まれ、直径2cmを超える腫瘍、局所進行乳がん、炎症性乳がん、及び/又はホルモン受容体陰性乳がんを含む。一実施態様では、再発リスクの高いEBCは、リンパ節陽性であるか、又は直径2cmを超える腫瘍を含む。
【0096】
「ネオアジュバント療法」又は「ネオアジュバント治療」又は「ネオアジュバント投与」は、手術前に施される全身療法を指す。
【0097】
「アジュバント療法」又は「アジュバント治療」又は「アジュバント投与」は、手術後に施される全身療法を指す。
【0098】
本明細書では、「患者」又は「対象」は、ヒト患者である。患者は、「がん患者」、すなわち、がん、特に乳がんの1つ以上の症状を患っているか、又はそのリスクがある患者でありうる。
【0099】
「患者集団」とは、がん患者のグループを指す。このような集団を使用して、ペルツズマブ及び/又はトラスツズマブなどの薬物の統計的に有意な有効性及び/又は安全性を実証することができる。
【0100】
「再発」患者とは、寛解後にがんの徴候又は症候を有する患者である。任意選択的に、患者は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法後に再発している。
【0101】
「HERの発現、増幅、又は活性化を示す」がん又は生物学的試料とは、診断試験において、HER受容体を発現する(過剰発現を含む)、HER遺伝子を増幅している、及び/又はそうでなければHER受容体の活性化又はリン酸化を示すものである。
【0102】
「HER活性化を示す」がん又は生物学的試料とは、診断試験において、HER受容体の活性化又はリン酸化を示すものである。このような活性化は、直接的に(例えば、ELISAによるHERリン酸化の測定により)、又は間接的に(例えば、遺伝子発現プロファイリングにより、若しくは本明細書に記載されるHERヘテロ二量体の検出により)決定することができる。
【0103】
「HER受容体の過剰発現又は増幅」を伴うがん細胞とは、同じ組織タイプの非がん性細胞と比較して、有意に高いレベルのHER受容体タンパク質又は遺伝子を有するものである。このような過剰発現は、遺伝子増幅又は転写若しくは翻訳の増加によって引き起こされうる。HER受容体の過剰発現又は増幅は、細胞の表面に存在するHERタンパク質の増加レベルを評価することによる診断アッセイ又は予後アッセイにおいて(例えば、免疫組織化学アッセイ;IHCによって)決定することができる。あるいは、又は加えて、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月公開の国際公開第98/45479号を参照)及びクロモジェニックin situハイブリダイゼーション(CISH;例えば、Tanner et al., Am. J. Pathol. 157(5): 1467-1472 (2000); Bella et al., J. Clin. Oncol. 26: (May 20 suppl; abstr 22147) (2008))を含む、in situハイブリダイゼーション(ISH)、サザンブロット法、又は定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法によって、細胞内のHERをコードする核酸のレベルを測定することができる。また、血清などの生体液中の脱落抗原(例えば、HER細胞外ドメイン)を測定することにより、HER受容体の過剰発現又は増幅を研究することもできる(例えば、1990年6月12日発行の米国特許第4,933,294号;1991年4月18日公開の国際公開第91/05264号;1995年3月28日発行の米国特許第5,401,638号;及び、Sias et al. J. Immunol. Methods 132: 73-80 (1990)参照)。上記のアッセイとは別に、さまざまなin vivoアッセイが当業者に利用可能である。例えば、患者の体内の細胞は、例えば、放射能のin situでの放射性検査、又は以前に抗体に曝露された患者から採取された生検を分析することにより、検出可能な標識で任意選択的に標識された抗体に曝露することができる。
【0104】
「HER2陽性」がんは、正常レベルより高いHER2を有するがん細胞を含む。任意選択的に、HER2陽性がんは、2+又は3+の免疫組織化学(IHC)スコアを有し、及び/又はin situハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)又はクロモジェニックin situハイブリダイゼーション(CISH)陽性であり、例えば≧2.0のISH/FISH/CISH増幅比を有する。
【0105】
「ホルモン受容体陰性」患者は、例えば免疫組織化学(IHC)によって測定して、エストロゲン及びプロゲステロン受容体陰性である。
【0106】
「ステージII-IIIA」の乳がんは、例えば実施例1のように、熟練したがん専門医によって決定される。
【0107】
「リンパ節陽性」乳がんは、元の乳房腫瘍から1つ以上の腋窩リンパ節に広がったたがんである。
【0108】
「HER2突然変異」がんは、例えば、次世代シーケンシング(NGS)又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって同定することができる、キナーゼドメイン突然変異を含む、HER2活性化突然変異を有するがん細胞を含む。「HER2突然変異」がんは、具体的には、HER2のエクソン20への挿入、HER2のアミノ酸残基755-759付近の欠失、突然変異G309A、G309E、S310F、D769H、D769Y、V777L、P780-Y781insGSP、V842I、R896Cのいずれか(Bose et al., Cancer Discov 2013; 3:1-14)、並びに2つ以上の固有の標本に見られたCOSMICデータベースで以前に報告された同一の非同義の推定活性化突然変異(又はインデル)を特徴とするがんを含む。さらなる詳細については、例えば、Stephens et al., Nature 2004;431:525-6; Shigematsu et al., Cancer Res 2005; 65:1642-6; Buttitta et al., Int J Cancer 2006; 119:2586-91; Li et al., Oncogene 2008; 27:4702-11; Sequist et al., J Clin Oncol 2010; 28:3076-83; Arcila et al., Clin Cancer Res 2012; 18:4910-8; Greulich et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109:14476-81; 及びHerter-Sprie et al., Front Oncol 2013;3:1-10を参照されたい。
【0109】
「エピトープ2C4」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されているようなルーチンのクロスブロッキングアッセイを実施することができる。好ましくは、抗体は、HER2への2C4の結合を約50%以上ブロックする。あるいは、抗体が本質的にHER2の2C4エピトープに結合するかどうかを評価するために、エピトープマッピングを実施することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン内のドメインII(配列番号2)に由来する残基を含む。2C4及びペルツズマブは、ドメインI、II、及びIII(それぞれ、配列番号1、2、及び3)の接合部でHER2の細胞外ドメインに結合する。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328 (2004)。
【0110】
「エピトープ4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近く、HER2のドメインIV(配列番号4)内にある。4D5エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されているようなルーチンのクロスブロッキングアッセイを実施することができる。あるいは、抗体が本質的にHER2の4D5エピトープに結合するかどうかを評価するために、エピトープマッピングを実施することができる(例えば、HER2 ECDを含めて約残基529から約残基625までの領域にある任意の1つ以上の残基、残基番号付与はシグナルペプチドを含む)。
【0111】
「治療」とは、治療的処置及び予防措置又は防止措置の両方を指す。治療が必要な人には、すでにがんを患っている人だけでなく、がんを予防する人も含まれる。したがって、本明細書で治療される患者は、がんを有すると診断されている可能性があるか、又はがんの素因がある、若しくはがんになりやすい可能性がある。
【0112】
「有効量」という用語は、患者のがんを治療するのに有効な薬物の量を指す。薬物の有効量は、がん細胞の数を減少させる;腫瘍のサイズを縮小する;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは止める);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは止める);腫瘍の増殖をある程度阻害する;及び/又は、がんに関連する症候の1つ以上をある程度緩和することができる。薬物が増殖を妨げ、及び/又は既存のがん細胞を死滅させる可能性がある限り、それは、細胞分裂停止性及び/又は細胞傷害性でありうる。有効量は、無増悪生存期間を延長することができ(例えば、固形腫瘍、RECIST、又はCA-125の変化に対する反応評価基準で測定)、客観的反応(病理学的完全奏効率pCRを含めた、部分反応PR、又は完全反応CRを含む)をもたらすことができ、全生存期間を延長することができ、がんの1つ以上の症候を改善することができる(例えば、FOSIで評価)。
【0113】
本明細書で用いられる場合、「病理学的完全奏効率」(pCR)又は総pCRは、乳房及び腋窩リンパ節に浸潤性新生物細胞が存在しないことと定義される。
【0114】
「化学療法」とは、がんの治療に有用な化合物の使用である。化学療法に用いられる化学療法剤の例には、次のものが含まれる:チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メトレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメルアミン類;TLK286(TELCYTA(商標));アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標)を含む)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロ尿素類;ロドロネートなどのビスフォスフォネート類;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、とりわけ、カリケアミシンガンマ1I及びカリケアミシンオメガI1(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照)、及びアントラサイクリン類、例えば、アナマイシン、AD 32、アルカルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、デクスラゾキサン、DX-52-1、エピルビシン、GPX-100、イダルビシン、バルルビシン、KRN5500、メノガリル、ダイネマイシンAを含むダイネマイシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、及びゾルビシン;デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;並びに、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタンなどの抗副腎類;葉酸(ロイコボリン)などの葉酸補充剤;アセグラトン;ALIMTA(登録商標)、LY231514ペメトレキセドなどの抗葉酸抗腫瘍剤、メトトレキセートなどのジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤並びにUFT、S-1、及びカペシタビンなどのそのプロドラッグ、並びにチミジル酸シンターゼ阻害剤及びラルチトレキセド(TOMUDEX(商標)、TDX)などのグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ阻害剤;エニルウラシルなどのジヒドロピリミジン脱水素酵素の阻害剤;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デフォアミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサマイトシンなどのメイタンシノイド類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK7多糖類複合体(JHS Natural Products社、米国オレゴン州ユージーン所在);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(とりわけ、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類;クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金類似体又は白金ベースの類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメトルヒロルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体;並びに、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法の略称であるCHOP、及び5-FUとロイコボリンとを組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))による治療レジメンの略称であるFOLFOXなどの上記の2つ以上の組み合わせ。
【0115】
また、この定義には、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、リオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む、抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM);アロマターゼ阻害剤;及びフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン類;並びに、トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド類、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGF-R);遺伝子治療ワクチンなどのワクチン類、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;及び、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体など、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
【0116】
「タキサン」は、有糸分裂を阻害し、微小管に干渉する化学療法である。タキサンの例には、パクリタキセル(TAXOL(登録商標);Bristol-Myers Squibb Oncology社、米国ニュージャージー州プリンストン所在);パクリタキセル又はnab-パクリタキセルのクレモフォールを含まない、アルブミン処理されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標);American Pharmaceutical Partners社、米国イリノイ州シャンバーグ所在);及び、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標);Rhone-Poulenc Rorer社、フランス国アントニー所在)が含まれる。一実施態様では、タキサンはパクリタキセルである。一実施態様では、タキサンはドセタキセルである。
【0117】
「アンササイクリン」は、菌類ストレプトコッカス・ペウセチウス(Streptococcus peucetius)に由来する抗生物質の一種で、例としては次のものが挙げられる:ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及び前に挙げたものを含む他の任意のアントラサイクリン化学療法剤。
【0118】
「アントラサイクリンをベースとした化学療法」とは、1つ以上のアントラサイクリンからなる、又はそれらを含む、化学療法レジメンを指す。例には、5-FU、エピルビシン、及びシクロホスファミド(FEC);5-FU、ドキソルビシン、及びシクロホスファミド(FAC);ドキソルビシン及びシクロホスファミド(AC);エピルビシン及びシクロホスファミド(EC);ドーズデンスドキソルビシン及びシクロホスファミド(ddAC)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
本明細書の目的では、「カルボプラチンをベースとした化学療法」は、1つ以上のカルボプラチン類からなる、又はそれらを含む、化学療法レジメンを指す。一例として、TCH(ドセタキセル/TAXOL(登録商標)、カルボプラチン、及びトラスツズマブ/HERCEPTIN(登録商標))がある。
【0120】
「アロマターゼ阻害剤」は、副腎でのエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害剤の例には次のものが含まれる:4(5)-ミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール。一実施態様では、本明細書のアロマターゼ阻害剤は、レトロゾール又はアナストロゾールである。
【0121】
「化学療法抵抗性」がんとは、がん患者が化学療法レジメンを受けている間に進行したか(すなわち、患者は「化学療法難治性」である)、又は患者が化学療法レジメンを完了してから12か月以内(例えば、6か月以内)に進行したことを意味する。
【0122】
「プラチン」という用語は、本明細書では、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含むがこれらに限定されない、白金ベースの化学療法を指すために用いられる。
【0123】
「フルオロピリミジン」という用語は、本明細書では、カペシタビン、フロクスウリジン、及びフルオロウラシル(5-FU)を含むがこれらに限定されない、代謝拮抗化学療法を指すために用いられる。
【0124】
本明細書における治療剤の「固定」又は「フラット」用量は、患者の体重(WT)又は体表面積(BSA)に関係なく、ヒト患者に投与される用量を指す。したがって、固定用量又はフラット用量は、mg/kg用量又はmg/m2用量としてではなく、治療剤の絶対量として提供される。
【0125】
本明細書における「初回」又は「負荷」用量は、概して、患者に投与される治療剤の初回用量を含み、その後にその1回以上の維持量が続く。概して、単回負荷用量が投与されるが、本明細書では複数回の負荷用量が企図されている。通常、投与される(1回又は複数回の)負荷用量の量は、投与される(1回又は複数回の)維持量の量を超える、及び/又は(1回又は複数回の)負荷用量は、(1回又は複数回の)維持量よりも頻繁に投与され、(1回又は複数回の)維持量で達成することができるよりも早く、治療剤の所望の定常状態を達成する。皮下ペルツズマブの例示的な負荷用量は1200mgである。皮下トラスツズマブの例示的な負荷用量は600mgである。
【0126】
本明細書における「維持」量は、治療期間にわたって患者に投与される治療剤の1回又は複数回の用量を指す。通常、維持量は、ほぼ毎週、ほぼ2週間ごと、ほぼ3週間ごと、又はほぼ4週間ごと、好ましくは3週間ごとなど、間隔をあけた治療間隔で投与される。皮下ペルツズマブの例示的な維持量は600mgである。皮下トラスツズマブの例示的な維持量は600mgである。
【0127】
本明細書で用いられる「固定用量配合剤」(FDC)は、固定用量のペルツズマブと固定用量のトラスツズマブ、並びに任意選択的に、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含む、すぐに使用可能な共製剤を指す。FDCは、好ましくは皮下投与される。
【0128】
「負荷用量のFDC」とは、ペルツズマブ及びトラスツズマブの初回用量を提供するFDCを指す。一実施態様では、このような負荷用量のFDCは、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び任意選択的に30,000単位のrHuPH20を、例えば15mLの体積で含む。
【0129】
「維持量のFDC」とは、ペルツズマブ及びトラスツズマブの維持量を提供するFDCを指す。一実施態様では、このような維持量のFDCは、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び任意選択的に20,000単位のrHuPH20を、例えば10mLの体積で含む。
【0130】
「バイアル」は、液体又は凍結乾燥した調製物を保持するのに適した容器である。一実施態様では、バイアルは、単回使用バイアル、例えば、20mmのストッパー付きの10mlの単回使用のガラスバイアルなど、ストッパー付きの10ml又は20mlの単回使用バイアルである。
【0131】
「添付文書」は、食品医薬品局(FDA)又は他の規制当局の命令により、すべての処方薬のパッケージ内に配置する必要があるリーフレットである。リーフレットには、概して、薬の商標、その一般名、及びその作用機序が含まれ;その適応症、禁忌、警告、注意事項、有害作用、及び剤形が記載され;かつ、推奨される用量、時間、及び投与経路に関する指示が含まれている。
【0132】
「安全性データ」という表現は、薬物の有害反応を監視及び予防する方法に関するガイダンスを含む、薬物の安全性に関して使用者を導くための有害事象の有病率及び重症度を示す対照臨床治験で得られたデータに関するものである。
【0133】
「有効性データ」とは、薬物ががんなどの疾患を効果的に治療することを示す対照臨床治験で得られたデータを指す。
【0134】
ペルツズマブ及びトラスツズマブなどの2つ以上の薬物の混合物を指す場合の「安定な混合物」とは、混合物中の各薬物が、1つ以上の分析アッセイで評価して、混合物中でその物理的及び化学的安定性を本質的に保持していることを意味する。この目的のための例示的な分析アッセイには、色、外観、及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、微粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、画像キャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)、並びに効力アッセイが含まれる。一実施態様では、混合物は、5℃又は30℃で最大24時間安定であることが示されている。
【0135】
「併用」投与は、組合せ投与及び個別投与を包含し、この場合、ある治療剤の投与は、別の治療剤の投与の前、同時、及び/又は後に行うことができる。したがって、FDCと化学療法を併用投与することは、組合せ投与及びいずれかの順序での個別投与を包含する。
【0136】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同じ治療サイクル中に、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、及び任意選択的に、1つ以上の他の薬物と同時に、投与される。例えば、3週間ごとに施されるがん治療では、同時に投与される薬物は、それぞれ3週間のサイクルの1日目に投与される。
【0137】
「皮下投与デバイス」とは、患者への皮下投与によって、本明細書に開示されるFDCを投与することができるデバイスを指す。本明細書で企図される例示的なデバイスには、次のものが含まれる:シリンジ、注入デバイス、点滴ポンプ、注射ペン、無針デバイス、自動注射器、及び皮下パッチ送達システム。一実施態様では、デバイスは、例えば、シリンジに取り付けられた、又は取り付け可能な25G-27G(3/8”-5/8”)皮下注射針を備えた、手持ち式のシリンジである。
【0138】
「観察期間」とは、FDCを投与した患者を医療専門家が監視する、FDCの投与後の期間を指す。医療専門家は、過敏症状又は注射関連反応などの有害反応について患者を評価する。初回投与後の例示的な観察期間は約30分であり、維持投与後の例示的な観察期間は約15分である。
【0139】
本明細書の目的では、「注射関連反応」又は「投与関連反応」(ADR)とは、とりわけ、過敏症、アナフィラキシー、注射部位反応、及び注射部位疼痛を含む有害事象を指し、以下のものを含む:グレード1、グレード2、グレード3、及び/又はグレード4の注射関連反応。一実施態様では、注射関連反応は有意である(及び、例えば、FDCの投与は、減速又は一時停止することができ、及び/又はFDCのその後の投与は、鎮痛剤、解熱剤、及び/又は抗ヒスタミン剤による前投薬を先行させることができる)。別の実施態様では、注射関連反応は、重度、又はグレード3若しくはグレード4である(及び、例えば、FDCの投与は永久に中止されるべきである)。本明細書のFeDeriCa研究では、FDC群の患者の約21%がADR(グレード1-4)を有していた。
【0140】
本明細書における「過敏症」とは、患者に投与される一又は複数の薬物に対する(一又は複数の)免疫介在性の反応を指す。例には、アナフィラキシー、発疹、じん麻疹、及び/又は発熱が含まれる。一実施態様では、過敏症状は重度、又はグレード3及び4であり、例えば、FDCの投与は、永久に中止されるべきである。別の実施態様では、過敏反応は、軽度又はグレード1若しくはグレード2であり、例えば、投与は、一時停止又は減速することができ、及び/又はFDCのその後の投与は、鎮痛剤、解熱剤、及び/又は抗ヒスタミン剤による前投薬を先行させることができる。本明細書のFeDeriCa研究では、過敏症の発生率はFDC群で1.2%であった。
【0141】
「注射部位反応」とは、紅斑、かゆみ、不快感、及び疼痛などの皮下注射部位周辺で生じる特定の局所反応を指し、潰瘍又は壊死などのより重篤な症状を含む。本明細書のFeDeriCa研究では、FDCに対する注射部位反応の発生率は約15%であり、FDC投与による注射部位疼痛の発生率は約2%であった(グレード3又はグレード4の注射部位反応なし)。
【0142】
「鎮痛剤」は、痛みを和らげる薬物である。例示的な鎮痛剤には、アセトアミノフェン又はサリチル酸などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれる。
【0143】
「解熱剤」は熱を下げる薬物である。例には、アセトアミノフェン又は非ステロイド性抗炎症性薬、例えば、アスピリン、イブプロフェン、又はナプロキセンが含まれる。
【0144】
「抗ヒスタミン剤」は、アレルギーの症候を治療するために、ヒスタミンを減少又はブロックする薬物である。例には、次のものが含まれる:ブロムフェニラミン、セチリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン。
【0145】
「治療下で発現する抗体」とは、FDC中のペルツズマブ、トラスツズマブ、及び/又はrHuPH20などの薬物に結合する、患者が産生する抗体である。一実施態様では、FDCで治療された患者の約≦10%で、治療下で発現する抗体が測定される。一実施態様では、FDCで治療された患者の8%未満で、治療下で発現する抗体が測定される。一実施態様では、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びrHuPH20に対して治療下で発現する抗体は、FDCで治療された患者において、それぞれ、約4.8%、0.9%、及び0.9%である。
【0146】
一実施態様では、治療下で発現する抗体は「中和」しており、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び/又はrHuPH20の生物活性を阻害する。FeDeriCa研究では、抗ペルツズマブ抗体の検査で陽性の患者のうち、FDCで治療された1人の患者において、中和抗ペルツズマブ抗体が検出され;抗トラスツズマブ抗体の検査で陽性の患者のうち、FDCで治療された1人の患者において、中和抗トラスツズマブ抗体が検出され;抗rHuPH20抗体の検査で陽性の患者のうち、中和抗rHuPH20抗体が検出された患者はいなかった。
【0147】
II. 抗体及び化学療法組成物
(i)HER2抗体
抗体の産生に用いられるHER2抗原は、例えば、所望のエピトープを含む、HER2受容体の細胞外ドメイン又はその一部の可溶性形態でありうる。あるいは、細胞表面でHER2を発現する細胞(例えば、HER2を過剰発現するように形質転換されたNIH-3T3細胞;又はSK-BR-3細胞などの癌細胞株、Stancovski et al.PNAS (USA) 88:8691-8695 (1991)参照)を使用して、抗体を生成することができる。抗体の生成に有用なHER2受容体の他の形態は、当業者には明らかであろう。
【0148】
本明細書におけるモノクローナル抗体を製造するためのさまざまな方法が当技術分野で利用可能である。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって製造することができる。
【0149】
本発明に従って用いられる抗HER2抗体であるペルツズマブ及びトラスツズマブは市販されている。
【0150】
米国特許第6,949,245号には、HER2に結合し、HER受容体のリガンド活性化をブロックする、例示的なヒト化HER2抗体の産生が記載されている。
【0151】
ヒト化HER2抗体には、具体的には、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、本明細書で定義されている、米国特許第5,821,337号の表3に記載されるトラスツズマブ;及び、本明細書に記載及び定義されるペルツズマブなどのヒト化2C4抗体が含まれる。
【0152】
本明細書のヒト化抗体は、例えば、ヒト可変重ドメインに組み込まれた非ヒト超可変領域残基を含んでもよく、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載される可変ドメイン番号付けシステムを利用して、69H、71H、及び73Hからなる群より選択される位置にフレームワーク領域(FR)置換をさらに含みうる。一実施態様では、ヒト化抗体は、位置69H、71H、及び73Hのうち2つ又はすべてにFR置換を含む。
【0153】
本明細書の目的の例示的なヒト化抗体は、可変重ドメイン相補性決定残基GFTFTDYTMX(配列番号17)を含み、ここで、Xは、好ましくは、D又はS;DVNPNSGGSIYNQRFKG(配列番号18);及び/又はNLGPSFYFDY(配列番号19)であり、任意選択的にCDR残基のアミノ酸修飾を含み、例えば、ここで、修飾は、抗体の親和性を本質的に維持又は改善する。例えば、本発明の方法で使用するための抗体バリアントは、上記可変重CDR配列において約1から約7又は約5のアミノ酸置換を有しうる。このような抗体バリアントは、例えば以下に説明するように、親和性成熟によって調製することができる。
【0154】
ヒト化抗体は、例えば前の段落の可変重ドメインCDR残基に加えて、可変軽ドメイン相補性決定残基KASQDVSIGVA(配列番号20);SASYX1X2X3、ここで、X1は好ましくはR又はLであり、X2は好ましくはY又はEであり、X3は好ましくはT又はSであり(配列番号21);及び/又は、QQYYIYPYT(配列番号22)を含みうる。このようなヒト化抗体は、任意選択的に、上記のCDR残基のアミノ酸修飾を含み、例えば、ここで修飾は、抗体の親和性を本質的に維持又は改善する。例えば、目的の抗体バリアントは、上記可変軽CDR配列において約1から約7又は約5のアミノ酸置換を有しうる。このような抗体バリアントは、例えば以下に説明するように、親和性成熟によって調製することができる。
【0155】
本出願はまた、HER2に結合する親和性成熟抗体も企図している。親抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体、例えば、それぞれ配列番号7及び8の可変軽配列及び/又は可変重配列を含むものでありうる(すなわち、ペルツズマブのVL及び/又はVHを含む)。ペルツズマブの親和性成熟バリアントは、好ましくはマウス2C4又はペルツズマブよりも優れた親和性でHER2受容体に結合する(例えばHER2-細胞外ドメイン(ECD)ELISAを使用して評価して、親和性は、例えば、約2倍又は約4倍から約100倍又は約1000倍まで改善された)。置換のための例示的な可変重CDR残基には、H28、H30、H34、H35、H64、H96、H99、又は2つ以上の組合せ(例えば、これらの残基の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ)が含まれる。改変のための可変軽CDR残基の例には、L28、L50、L53、L56、L91、L92、L93、L94、L96、L97、又は2つ以上の組合せ(例えば、これらの残基の2つから3つ、4つ、5つ、又は最大で約10)が含まれる。
【0156】
トラスツズマブを含む、そのヒト化バリアントを生成するためのマウス4D5抗体のヒト化は、米国特許第5,821,337号、同第6,054,297号、同第6,407,213号、同第6,639,055号、同第6,719,971号、及び同第6,800,738号、並びにCarter et al. PNAS (USA), 89:4285-4289 (1992)に記載されている。HuMAb4D5-8(トラスツズマブ)は、マウス4D5抗体よりも3倍強くHER2抗原に結合し、ヒトエフェクター細胞の存在下でヒト化抗体の指向性細胞傷害活性を可能にする二次免疫機能(ADCC)を有していた。HuMAb4D5-8は、VLκサブグループIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変軽(VL)CDR残基、及びVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変重(VH)CDR残基を含んでいた。抗体は、VHの位置71、73、78、及び93としてフレームワーク領域(FR)置換(FR残基のKabat番号付与);及び、VLの位置66にFR置換(FR残基のKabat番号付与)をさらに含んでいた。トラスツズマブは、非Aアロタイプのヒトγ1Fc領域を含む。
【0157】
ヒト化抗体又は親和性成熟抗体のさまざまな形態が企図されている。例えば、ヒト化抗体又は親和性成熟抗体は、抗体断片でありうる。あるいは、ヒト化抗体又は親和性成熟抗体は、インタクトなIgG1抗体など、インタクトな抗体でありうる。
【0158】
(ii)ペルツズマブ組成物
HER2抗体組成物の一実施態様では、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体とその1つ以上のバリアントとの混合物を含む。ペルツズマブの主要種抗体の本明細書の好ましい実施態様は、配列番号7及び8の可変軽及び可変重アミノ酸配列を含み、最も好ましくは、配列番号11の軽鎖アミノ酸配列、及び配列番号12の重鎖アミノ酸配列を含むものである(これらの配列の脱アミド化及び/又は酸化バリアントを含む)。一実施態様では、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体と、アミノ末端リーダー伸長を含むそのアミノ酸配列バリアントとの混合物を含む。好ましくは、アミノ末端リーダー伸長は、抗体バリアントの軽鎖上(例えば、抗体バリアントの1つ又は2つの軽鎖上)にある。主要種HER2抗体又は抗体バリアントは、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2断片のFab)でありうるが、好ましくは両方とも完全長抗体である。本明細書における抗体バリアントは、その重鎖又は軽鎖の任意の1つ以上の上にアミノ末端リーダー伸長を含みうる。好ましくは、アミノ末端リーダー伸長は、抗体の1つ又は2つの軽鎖上にある。アミノ末端リーダー伸長は、好ましくは、VHS-を含む、又はVHS-からなる。組成物中のアミノ末端リーダー伸長の存在は、N末端配列分析、電荷不均一性のアッセイ(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー又はキャピラリーゾーン電気泳動)、質量分析などを含むがこれらに限定されないさまざまな分析技法によって検出することができる。組成物中の抗体バリアントの量は、概して、バリアントを検出するために用いられる任意のアッセイ(好ましくはN末端配列分析)の検出限界を構成する量から、主要種抗体の量よりも少ない量までの範囲である。概して、組成物中の抗体分子の約20%以下(例えば、約1%から約15%、例えば5%から約15%)がアミノ末端リーダー伸長を含む。このようなパーセンテージ量は、好ましくは、定量的N末端配列分析又は陽イオン交換分析(好ましくは、PROPAC WCX-10(商標)陽イオン交換カラムなどの高分解能弱陽イオン交換カラムを使用する)を使用して決定される。アミノ末端リーダー伸長バリアントとは別に、その重鎖の一方又は両方にC末端リジン残基を含む抗体、脱アミド化抗体バリアントなどを含むが、これらに限定されない、主要種抗体及び/又はバリアントのさらなるアミノ酸配列変化が企図されている。
【0159】
さらには、主要種抗体又はバリアントは、グリコシル化のバリエーションをさらに含むことができ、その非限定的な例には、そのFc領域に結合したG1若しくはG2オリゴ糖構造を含む抗体、その軽鎖に結合した炭水化物部分を含む抗体(例えば、抗体の1つ又は2つの軽鎖に結合した(例えば1つ以上のリジン残基に結合した)、グルコース又はガラクトースなどの1つ又は2つの炭水化物部分)、1つ又は2つの非グリコシル化重鎖を含む抗体、又はその1つ若しくは2つの重鎖に結合したシアリデート化(sialidated)オリゴ糖を含む抗体などが含まれる。
【0160】
組成物は、例えば、HER2抗体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株などの遺伝子操作された細胞株から回収することができ、又はペプチド合成によって調製することができる。
【0161】
例示的なペルツズマブ組成物に関する詳細については、米国特許第7,560,111号及び同第7,879,325号、並びに米国特許出願公開第2009/0202546号を参照されたい。
【0162】
(iii)トラスツズマブ組成物
トラスツズマブ組成物は、概して、主要種抗体の混合物(それぞれ、配列番号13及び14の軽鎖及び重鎖配列を含む)、及びそれらの変異型、特に酸性バリアント(脱アミド化バリアントを含む)を含む。好ましくは、組成物中のこのような酸性バリアントの量は、約25%未満、又は約20%未満、又は約15%未満である。米国特許第6,339,142号参照。ピークA(両方の軽鎖でAsn30がAspに脱アミド化される);ピークB(1つの重鎖でAsn55がisoAspに脱アミド化される);ピーク1(1つの軽鎖でAsn30がAspに脱アミド化される);ピーク2(1つの軽鎖でAsn30がAspに脱アミド化され、かつ1つの重鎖でAsp102がisoAspに異性化される);ピーク3(主ピーク形態、又は主要種抗体);ピーク4(1つの重鎖でAsp102がisoAspに異性化される);及び、ピークC(1つの重鎖でAsp102スクシンイミド(Asu))を含む、陽イオン交換クロマトグラフィーによって分離可能なトラスツズマブの形態に関する、Harris et al., J. Chromatography, B 752:233-245 (2001)も参照されたい。このような変異型及び組成物は、本明細書の発明に含まれる。
【0163】
(iv) ヒアルロニダーゼ酵素を含む皮下製剤
ヒアルロニダーゼ酵素は、主に浸透促進剤として作用し、他の同時投与薬物の分散及び吸収を増加させる。ヒアルロニダーゼは、SCマトリックスの成分であるヒアルロナンを一時的に加水分解し、皮下組織の細胞外マトリックスの粘度を低下させ、したがって、皮下投与された薬物の体循環への送達の改善をもたらす。
【0164】
可溶性ヒアロロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、その調製方法、及び薬学的組成物におけるそれらの使用は、国際公開第2004/078140号に記載されている。例えばトラスツズマブなどのさまざまな例示的な抗体と組み合わせた可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質の使用は、国際公開第2006/091871号に記載されている。
【0165】
本発明の製剤中のヒアルロニダーゼ酵素は、例えば活性物質(透過促進剤として機能する)の吸収を高めることにより、一又は複数の抗HER2抗体(例えば、ペルツズマブ及び/又はトラスツズマブ)の全身循環への送達を増強する。ヒアルロニダーゼ酵素はまた、SC間質組織の細胞外成分であるヒアルロナンの可逆的加水分解による皮下適用経路を介して、全身循環への一又は複数の治療用HER2抗体(例えば、ペルツズマブ及び/又はトラスツズマブ)の送達を増加させる。皮下組織におけるヒアルロナンの加水分解は、一時的にSC組織の間質腔内のチャネルを開き、それによって体循環への治療用抗HER2抗体の送達を改善する。加えて、投与により、ヒトの疼痛が軽減され、SC組織の体積に由来する腫れが少なくなる。
【0166】
ヒアルロニダーゼは、局所的に投与すると、完全な効果を局所的に発揮する。言い換えれば、ヒアルロニダーゼは数分で局所的に不活性化及び代謝され、全身性効果又は長期的な効果があることは指摘されていない。ヒアルロニダーゼが血流に入ると数分以内に急速に不活化されるため、異なるヒアルロニダーゼ製品間で同等の体内分布研究を行うための現実的な能力を不可能にする。また、ヒアルロニダーゼ製品は離れた部位では作用することができないため、この特性により潜在的な全身の安全性に関する懸念が最小限に抑えられる。
【0167】
すべてのヒアルロニダーゼ酵素の共通の特徴は、化学構造、種源、組織源、又は同じ種及び組織に由来する医薬品のバッチにおける違いに関係なく、ヒアルロナンを解重合する能力である。それらは、異なる構造を有しているにもかかわらず、それらの活性が(力価を除いて)同じであるという点でまれである。
【0168】
本発明の製剤によるヒアルロニダーゼ酵素添加剤は、本明細書に記載される安定な薬学的製剤中の一又は複数のHER2抗体の分子完全性に有害作用を及ぼさないことを特徴とする。さらには、ヒアルロニダーゼ酵素は、全身循環への一又は複数のHER2抗体の送達を単に変更するだけであり、全身に吸収された一又は複数のHER2抗体の治療効果を提供又は寄与することができる特性を有していない。ヒアルロニダーゼ酵素は、全身的に生物学的に利用可能ではなく、本発明による安定な薬学的製剤の推奨される保管条件において一又は複数のHER2抗体の分子完全性に悪影響を及ぼさない。
【0169】
本発明による幾つかの適切なヒアルロニダーゼ酵素は、先行技術から知られている。好ましい酵素はヒトヒアルロニダーゼ酵素であり、最も好ましくはrHuPH20として知られる組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。rHuPH20は、N-アセチルグルコサミンのC1位とグルクロン酸のC4位との間のβ-1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを解重合する中性及び酸活性β-1,4グリコシルヒドロラーゼのファミリの成員である。ヒアルロナンは、皮下間質組織などの結合組織、並びに臍帯及び硝子体液などのある特定の特殊な組織の細胞内基質に見られる多糖である。ヒアルロナンの加水分解は、間質組織の粘度を一時的に低下させ、注入された液体又は局所的な浸出液又は滲出液の分散を促進し、したがって吸収を促進する。ヒアルロニダーゼの効果は局所的かつ可逆的であり、組織のヒアルロナンの完全な再構成が24から48時間以内に起こる(Frost, G. I., “Recombinant human hyaluronidase (rHuPH20): an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”, Expert Opinion on Drug Delivery, 2007; 4:427-440)。ヒアルロナンの加水分解による結合組織の透過性の増加は、同時投与された分子の分散及び吸収を増加させる能力について、ヒアルロニダーゼの有効性と相関する。
【0170】
ヒトゲノムには幾つかのヒアルロニダーゼ遺伝子が含まれている。PH20遺伝子産物のみが生理的細胞外条件下で効果的なヒアルロニダーゼ活性を有し、展着剤として作用するが、酸活性ヒアルロニダーゼはこの特性を有していない。
【0171】
rHuPH20は、現在治療用途に利用可能な最初で唯一の組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。天然に存在するヒトPH20タンパク質は、原形質膜に固定するカルボキシ末端アミノ酸に結合した脂質アンカーを有する。Halozyme社によって開発されたrHuPH20酵素は、脂質結合に関与するカルボキシ末端にそのようなアミノ酸を欠く、トランケーションされた欠失バリアントである。これにより、ウシの精巣調製物に見られるタンパク質に似た、可溶性の中性pH活性酵素が得られる。rHuPH20タンパク質は、分泌の過程でN末端から除去される35アミノ酸のシグナルペプチドで合成される。成熟rHuPH20タンパク質は、幾つかのウシヒアルロニダーゼ調製物に見られるものとオーソロガスな真のN末端アミノ酸配列を含む。
【0172】
動物由来のPH20及び組換えヒトrHuPH20を含むPH20ヒアルロニダーゼは、N-アセチルグルコサミンのC1位とグルクロン酸のC4位との間のβ-1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを解重合する。四糖は最小の消化産物である(Weissmann, B., “The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”, J. Biol. Chem., 1955; 216: 783-94)。このN-アセチルグルコサミン/グルクロン酸構造は、組換え生物学的産物のN-結合グリカンには見られず、したがって、rHuPH20は、例えば、ペルツズマブ又はペルツズマブ及びトラスツズマブなどで製剤化された抗体のグリコシル化に影響を与えないであろう。rHuPH20酵素自体は、モノクローナル抗体に見られるものと同様のコア構造を備えた1分子あたり6つのN-結合型グリカンを有している。予想どおり、これらのN-結合型構造は経時的に変化せず、これらの-結合型グリカン構造に対するrHuPH20の酵素活性の欠如が確認された。rHuPH20の半減期が短く、ヒアルロナンが一定に合成されるため、組織に対する酵素の作用は短く局所的である。
【0173】
本発明による皮下製剤中に存在するヒアルロニダーゼ酵素は、組換えDNA技術を用いて調製することができる。このようにして、同じタンパク質(同一のアミノ酸配列)が常に得られ、アレルギー反応(例えば、組織からの抽出中に共精製されたタンパク質の混入によって引き起こされる)が回避されることが保証される。本明細書に例示される製剤に用いられるヒアルロニダーゼ酵素は、ヒト酵素、すなわちrHuPH20である。
【0174】
rHuPH20(HYLENEX(商標))のアミノ酸配列はよく知られており、CAS登録番号75971-58-7の下で入手可能である。おおよその分子量は61kDaである。
【0175】
ヒアルロニダーゼ製品の安全性及び有効性は確立されているが、ヒアルロニダーゼを含む製剤を使用した皮下送達が承認されているモノクローナル抗体は2つしかない(Herceptin(登録商標)及びMabThera(登録商標))。同じ製剤中に2つの抗体を含むヒアルロニダーゼ含有皮下製剤(2つの抗体の共製剤)は知られていない。
【0176】
ヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、本発明による製剤の調製に用いられる実際のヒアルロニダーゼ酵素に依存する。ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は、以下の開示に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0177】
ヒアルロニダーゼ酵素は、ペルツズマブ及び/又はトラスツズマブなどの同時投与される一又は複数の抗HER2抗体の分散及び吸収の増加をもたらすのに十分な量で提供されるべきである。ヒアルロニダーゼ酵素の最小量は、少なくとも約150U/mlである。より詳細には、ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は、約150U/mlから約16,000U/ml、又は約600U/mlから約16,000ml、又は約1000から16,000U/mlであり、後者は、100,000U/mgの推定比活性に基づいて、約0.01mgから0.16mgのタンパク質に相当する。あるいは、ヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、約1,500から12,000U/ml、又はより具体的には約2000U/ml、又は約12,000U/mlである。指定された量は、製剤に最初に添加されたヒアルロニダーゼ酵素の量に対応する。最終的な製剤で測定されたヒアルロニダーゼ酵素濃度は、特定の範囲内で変化しうる。ヒアルロニダーゼ酵素の一又は複数の抗HER2抗体に対する比(w/w)は、概して、1:1000から1:8,000の範囲、又は1:4,000から1:5,000又は約1:6,000の範囲である。
【0178】
ヒアルロニダーゼ酵素は、動物、ヒト試料に由来するか、又は以下でさらに説明する組換えDNA技術に基づいて製造することができる。
【0179】
幾つかの実施態様では、本明細書の皮下HER2抗体製剤は、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を、約600U/mLから約16,000U/mL、若しくは約1000U/mLから約16,000U/mL、若しくは約1000から約2000U/mlの濃度で、又は約600U/ml、若しくは約667U/mL、若しくは約1000U/mL、若しくは約2000U/mL、好ましくは約2000U/mLの濃度で含む。
【0180】
幾つかの実施態様では、本発明の高濃度で安定なペルツズマブ製剤は、固定用量の600mg又は1200mgのペルツズマブ及び1000U/mLの濃度の組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含む。
【0181】
上記のように、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、抗HER2製剤におけるさらなる添加剤であるとみなすことができる。可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、抗HER2製剤の製造時に抗HER2製剤に添加することができ、あるいは注入の直前に添加してもよい。あるいは、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、別個の注入として提供されてもよい。後者の場合、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、皮下注射が行われる前に適切な希釈剤で再構成しなければならない凍結乾燥形態の別のバイアルで提供されてもよく、又は製造業者によって液体製剤として提供することもできる。抗HER2製剤及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、別個の実体として入手することができ、又は皮下投与のための注入成分及び適切な説明書の両方を含むキットとして提供されてもよい。製剤の一方又は両方の再構成及び/又は投与のための適切な説明書も提供することができる。
【0182】
rHuPH20などのヒアルロニダーゼ酵素に加えて、本発明の皮下製剤は、1つ以上のバッファー剤、1つ以上の安定剤、及び/又は1つ以上の界面活性剤など、1つ以上の追加の添加剤を含む。
【0183】
本発明による製剤に用いられるバッファーは、約5.0から約7.0、又は約5.0から約6.0、又は約5.3から約5.8、又は約5.5から約5.7の範囲のpHを有する。
【0184】
皮下(SC)ペルツズマブ製剤では、約5.7のpHが最も適していることが分かった。皮下(SC)トラスツズマブ製剤の好ましいpHは約5.5である。
【0185】
pHをこの範囲に制御するバッファー剤の例には、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、グリシルグリシン、及び他の有機酸バッファーが含まれる。本発明による最も適切なバッファーは、例えば塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンなどのヒスチジンバッファーであり、好ましくは塩化ヒスチジンバッファーである。塩化ヒスチジンバッファーは、L-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を希塩酸で滴定することにより調製することができる。特に、ヒスチジンバッファー又は塩化ヒスチジンバッファーは、pH5.5±0.6のL-ヒスチジンバッファーであり、より具体的にはpH約5.3から約5.8、最も具体的には5.5又は5.7のpHを有する。
【0186】
安定剤は、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む、糖類又は糖類の組合せでありうる。本明細書における糖類の例としては、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルツロースが挙げられる。トラスツズマブSC製剤での使用に特に適した糖類はトレハロースであり、ペルツズマブSC製剤での使用に特に適した糖類はスクロースである。
【0187】
界面活性剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤である。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート;ポロキサマー(例えばポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル--スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウム、又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;及び、MONAQU AT(商標)系(Mona Industries, Inc.、米国ニュージャージー州パターソン所在);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールとの共重合体(例えば、Pluronics、PF68など)などが含まれる。ポリソルベート20(PS20)及びポリソルベート80(PS80)は、それぞれ、本明細書に記載される製剤での使用に特に適している。
【0188】
III. 治療のための患者の選択
HER2の発現又は増幅の検出を使用して、本発明に従った治療のための患者を選択することができる。HER2陽性、HER2発現、HER2過剰発現、又はHER2増幅のがん患者を特定するために、幾つかのFDAで承認された商用アッセイが利用可能である。これらの方法には、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)及びPATHWAY(登録商標)HER2(免疫組織化学(IHC)アッセイ)、並びにPathVysion(登録商標)及びHER2 FISH pharmDx(商標)(FISHアッセイ)が含まれる。利用者は、各アッセイの検証及び性能に関する情報について、特定のアッセイキットの添付文書を参照する必要がある。
【0189】
例えば、HER2発現又は過剰発現は、例えばHERCEPTEST(登録商標)(Dako)を使用して、IHCによって分析することができる。腫瘍生検由来のパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、次のようにHER2タンパク質染色強度基準を適用することができる:
スコア0:染色が観察されないか、又は腫瘍細胞の10%未満に膜染色が観察される。
スコア1+:腫瘍細胞の10%超でかすかな/かろうじて知覚できる程度の膜染色が検出される。細胞は膜の一部のみが染色される。
スコア2+:弱から中等度の完全な膜染色が10%以上の腫瘍細胞で観察される。
スコア3+:腫瘍細胞の10%超で中程度から強い完全な膜染色が観察される。
【0190】
HER2過剰発現評価のスコアが0又は1+の腫瘍は、HER2陰性と特徴付けることができ、スコアが2+又は3+の腫瘍は、HER2陽性と特徴付けることができる。
【0191】
HER2を過剰発現する腫瘍は、細胞あたりに発現するHER2子のコピー数に対応する免疫組織化学スコアによって評価され、次のように生化学的に決定される:
0=0-10,000コピー/細胞、
1+=少なくとも約200,000コピー/細胞、
2+=少なくとも約500,000コピー/細胞、
3+=少なくとも約2,000,000コピー/細胞。
【0192】
チロシンキナーゼのリガンド非依存性活性化をもたらす3+レベルのHER2の過剰発現(Hudziak et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7159-7163 (1987))は、乳がんの約30%で発生し、これらの患者では、無再発生存期間及び全生存期間が減少する(Slamon et al., Science, 244:707-712 (1989); Slamon et al., Science, 235:177-182 (1987))。
【0193】
HER2タンパク質の過剰発現及び遺伝子増幅の存在は高度に相関しており、したがって、代替的に又は追加的に、遺伝子増幅を検出するための例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などのin situハイブリダイゼーション(ISH)アッセイの使用も、本発明による治療に適した患者の選択に使用することができる。INFORM(商標)(米国アリゾナ州所在のVentana社により販売)又はPathVysion(登録商標)(Vysis社、米国イリノイ州所在)などのFISHアッセイは、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織で実施して、腫瘍におけるHER2増幅の程度(もしあれば)を決定することができる。
【0194】
最も一般的には、HER2陽性状態は、前述の方法のいずれかを使用して、アーカイブパラフィン包埋腫瘍組織を使用して確認される。
【0195】
好ましくは、2+又は3+のIHCスコアを有する、及び/又はFISH又はISH陽性である、HER2陽性患者が、本発明による治療のために選択される。3+のIHCスコアを有し、FISH/ISH陽性の患者は、本発明による治療に特に適している。
【0196】
HER2を対象とした治療に対する反応性に関連するHER2突然変異も特定されている。このような突然変異は、HER2のエクソン20への挿入、HER2のアミノ酸残基755-759付近の欠失、突然変異G309A、G309E、S310F、D769H、D769Y、V777L、P780-Y781insGSP、V842I、R896Cのいずれか(Bose et al., Cancer Discov 2013; 3:1-14)、並びに2つ以上の固有の標本に見られたCOSMICデータベースで以前に報告された同一の非同義の推定活性化突然変異(又はインデル)を含むが、これらに限定されない。
【0197】
ペルツズマブによる治療のために患者をスクリーニングするための代替アッセイについての米国特許第7,981,418号及び実施例も参照されたい。
【0198】
IV. 薬学的製剤
一般に凍結乾燥製剤又は水溶液の形態である、本発明に従って使用されるHER2抗体の治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を任意選択的な薬学的に許容される担体、添加剤、又は安定剤と混合することによって保管用に調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容される担体、添加剤、又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、次のものが含まれる:リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及び、m-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0199】
本出願は、皮下(SC)投与のためのペルツズマブ及びトラスツズマブの安定な固定用量共製剤(FDC)を具体的に企図している。
【0200】
次のSC FDC負荷及び維持製剤は安定しており、ペルツズマブ及びトラスツズマブの単回共製剤のヒト患者への皮下投与に適していることが分かった:
負荷用量
ペルツズマブ
用量:1200mg
濃度:80mg/mL
トラスツズマブ
用量:600mg
濃度:40mg/mL
rHuPH20
濃度:2000U/mL
pH:5.5
20mMのL-ヒスチジン/HCl
トレハロース:70mM
スクロース:133mM
ポリソルベート20(PS20):0.04%;0.4mg/mL
10mMのメチオニン
公称充填量 15mL
バイアル:20mL/20mm
維持量:
ペルツズマブ
用量:600mg
濃度:60mg/mL
トラスツズマブ
用量:600mg
濃度:60mg/mL
rHuPH20
濃度:2000U/mL
pH:5.5
20mMのL-ヒスチジン/HCl
トレハロース:105mM
スクロース:100mM
ポリソルベートPS20:0.04%;0.4mg/mL
10mMのメチオニン
公称充填量:10mL
バイアル:15mL/20mm
【0201】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症のために必要に応じて、複数の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する活性化合物を含むことができる。HER二量体化阻害剤と組み合わせることができるさまざまな薬物は、以下の方法のセクションに記載されている。このような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0202】
in vivoでの投与に使用する製剤は滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0203】
V. 治療方法
本発明は、皮下投与デバイスを用いて約2mL/分の速度で約8分間にわたり患者の大腿部に皮下注射することによって、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)を投与することを含む、患者におけるHER2陽性がんを治療する方法に関する。これは、FDCの初回投与又は負荷投与と見なすことができる。任意選択的に、投与の後に約30分間の観察期間が続く。
【0204】
該方法は、任意選択的に、さらに、約2mL/分の速度で約5分間にわたり患者の大腿部にFDCの1回以上の維持量を投与することを含む。任意選択的に、維持量の投与の後、負荷用量が良好な耐容性を示した場合は、約15分間の観察期間が続く。例えば、FDCの2から10回(例えば約4回)の投与が患者に施され(例えば、手術前のネオアジュバント療法として)、任意選択的に、さらなる手術後の投与、例えば、FDCの約10から20回(例えば約18回)の維持投与が、手術後に患者に施される。
【0205】
ある特定の実施態様では、がんは、乳がん、卵巣がん、腹膜がん、卵管がん、肺がん、前立腺がん、結腸直腸がん、胆道がん、及び膀胱がんである。他の実施態様では、がんは、乳がん、腹膜がん、卵管がん、肺がん、結腸直腸がん、胆道がん、及び膀胱がんである。特定の実施態様では、がんは、早期乳がん又は転移性乳がんなどの乳がんである。
【0206】
一実施態様では、HER2陽性がん乳がん、例えば早期乳がん(EBC)又は転移性乳がん(MBC)。
【0207】
一実施態様では、FDCは、80mg/mLの濃度で1200mgのペルツズマブ、40mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニンを含む液体薬学的組成物を含み、初回又は負荷FDC製剤を含む。
【0208】
一実施態様では、FDCは、60mg/mLの濃度で600mgのペルツズマブ、60mg/mLの濃度で600mgのトラスツズマブ、2000U/mLのrHuPH20、20mMのHis-HCl pH5.5、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び10mMのメチオニンを含む液体の薬学的組成物を含み、後続の又は維持FDC製剤を含む。
【0209】
別の実施態様では、本発明は、FDCを患者に投与すること、注射関連反応について患者を監視すること、及び注射関連反応が起こる場合に注入を減速又は一時停止することを含む。一実施態様では、該方法は、重度の注射関連反応が起こる場合に、FDCの投与を永久に中止することを含む。
【0210】
一実施態様では、該方法は、患者の左右の大腿部間でFDCの各投与の皮下注射部位を交互に変えることを含む。
【0211】
別の実施態様では、本発明は、患者に皮下注射することによってペルツズマブ、トラスツズマブ、及び組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の固定用量配合剤(FDC)を投与すること、並びに治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗組換えヒトヒアルロニダーゼPH20抗体を測定することを含む、HER2陽性がんを治療する方法に関する。
【0212】
本発明はまた、ペルツズマブとトラスツズマブとの固定用量配合剤(PH FDC)及び化学療法(例えば、ドーズデンスアントラサイクリン(ddAC)及びパクリタキセル)を投与すること、例えば:ddACを2週間ごとに4週間(q2w×4)投与し、その後、PH FDCをq3w×4と、パクリタキセルを毎週(qw)12週間と組み合わせて投与することを含む、HER2陽性の早期乳がんの治療方法にも関する。
【0213】
一実施態様では、患者は、ホルモン受容体陰性疾患を有する、及び/又はステージII~IIIAの疾患を有する。
【0214】
FeDeriCaデータは、ホルモン受容体陰性のEBC患者、ステージII-IIIAのEBC患者、及びddAC→パクリタキセルを受けたEBC患者でより効果的(tpCR)であることを示した。
【0215】
一実施態様では、該方法は、PH FDCを手術後の患者にq3wで約1年間(最大18サイクル)投与することを含む。
【0216】
本明細書のPH FDCは、以下を治療するために皮下投与される:
以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていないHER2陽性転移性乳がん(MBC)。
トラスツズマブと化学療法との併用における使用のための:
- 早期乳がんの完全な治療レジメンの一部としてのHER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)を患う患者のネオアジュバント治療
- 再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がんを患う患者のアジュバント治療。
【0217】
維持投与では、FDCは、典型的には約3週間ごとに皮下注射として投与され、約1200mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブの固定負荷用量から開始し、その後、2回目以降の約600mgのペルツズマブと600mgのトラスツズマブとの固定維持量が続く。
【0218】
注射部位は、左右の大腿部間で交互にする必要がある。新しい注射は、健康な皮膚の古い部位から少なくとも2.5cm離して行う必要があり、皮膚が赤くなったり、打撲傷があったり、圧痛があったり、又は硬くなったりしている領域には注射すべきではない。
【0219】
VI. 製造品
本発明の別の実施態様は、がんの治療に有用な材料を含む製造品である。製造品は、患者への皮下投与によって本明細書に開示されるFDCを投与することができる皮下投与デバイスを含み、例えば、シリンジ、注射装置、点滴ポンプ、注射ペン、無針デバイス、自動注射器、及び皮下パッチ送達システムである。
【0220】
一実施態様では、デバイスは、例えば25G-27G(3/8”-5/8”)皮下注射針を備えた、手持ち式のシリンジである。
【0221】
皮下投与デバイスは、例えば、約600mg又は約1200mgのペルツズマブを約600mgのトラスツズマブと組み合わせて含み、任意選択的に20,000又は30,000単位のrHuPH20をさらに含む、ペルツズマブ及びトラスツズマブのFDCを含み、送達する。
【0222】
製造品は、添付文書をさらに含むことが好ましい。添付文書は、例えば、HER2陽性、HER2増幅型、又はHER2突然変異型の皮下がんなど、HER2を発現している患者に、FDCを投与するための指示を提供することができる。ある特定の実施態様では、がんは、乳がん、卵巣がん、腹膜がん、卵管がん、肺がん、前立腺がん、結腸直腸がん、胆道がん、及び膀胱がんである。他の実施態様では、がんは、乳がん、腹膜がん、卵管がん、肺がん、結腸直腸がん、胆道がん、及び膀胱がんである。特定の実施態様では、がんは、早期乳がん又は転移性乳がんなどの乳がんである。
【0223】
製造品の別の形態は、投与される製剤を含み、皮下投与のためにステンレス鋼の皮下注射針に取り付けることができる、シリンジである。
【0224】
任意選択的に、皮下投与デバイスは、25G-27G(3/8”-5/8”)皮下皮下注射針を含む。
【0225】
任意選択的に、皮下投与デバイス内の製剤の体積は、初回又は負荷用量では15mLに、その後又は維持量では10mLに調整される。
【0226】
一実施態様では、製造品は、2つのバイアルを含み、ここで、第1のバイアルは負荷用量のFDC(例えば、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、30,000単位のrHuPH20を含み、例えば総体積約15mL)を含み、第2のバイアルは維持量のFDC(例えば、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、30,000単位のrHuPH20を含み、例えば総体積約10mL)を含む。
【0227】
VII. 生体物質の寄託
以下のハイブリドーマ細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209, USA所在)(ATCC)に寄託されている:
【実施例】
【0228】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例によって例示される。本明細書におけるすべての引用の開示は、参照することによって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0229】
実施例1:HER2陽性の早期乳がん(FeDeriCa)における化学療法と併用した、ペルツズマブ及びトラスツズマブのFDCの皮下投与
1つの即時使用可能な固定用量配合剤バイアル(PH FDC SC)に、ペルツズマブ及びトラスツズマブの2つのモノクローナル抗体と組換えヒトヒアルロニダーゼとを初めて組み合わせた、新しい皮下製剤が開発された。PH FDC SCの投与は、ペルツズマブ及びトラスツズマブの2つの別々の静脈内注入と比較して、より侵襲性が低く、より迅速である(P+H IV;各抗体の点滴あたり、5~8分対30~90分)。この実施例では、ネオアジュバント-アジュバントの設定でHER2陽性の早期乳がんを患う患者における、P+H IVと比較して、この新規PH FDC SCの薬物動態、有効性、及び安全性を評価するために設計された、極めて重要なフェーズ3のFeDeriCa研究の一次分析結果を報告している。この研究は、ClinicalTrials.govに番号NCT03493854で登録されている。
【0230】
方法
FeDeriCaは、ネオアジュバント-アジュバントの設定における、無作為化、非盲検、国際的、多施設、2群のフェーズ3非劣性試験である。患者は19か国の106施設で登録された。18歳以上で、米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスが0又は1であり、HER2陽性、手術可能、局所進行性、又は炎症性のステージII-IIIC乳がんの患者は、音声又はウェブベースの応答システムを使用して、P IV(840mgの負荷用量、420mgの維持量)+H IV(8mg/kgの負荷用量、6mg/kgの維持量)、又はPH FDC SC(15mL中、1200mg/600mgの負荷用量、10mL中、600mg/600mgの維持量)を受けるように無作為に割り当てられ(1:1)、両方ともネオアジュバント化学療法と組み合わせて3週間ごとに投与された。患者は、ホルモン受容体の状態(エストロゲン又はプロゲステロン受容体陽性、又はエストロゲン及びプロゲステロン受容体陰性);臨床病期(II-IIIA又はIIIB-IIIC);及び、化学療法レジメン(2週間ごとにドーズデンスドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を4サイクル、その後、週1回のパクリタキセル80mg/m2を12週間、又は3週間ごとにドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を4サイクル(AC)、その後3週間ごとにドセタキセル75~100mg/m2を4サイクル)によって階層化した。治験責任医師は、無作為化の前に、プロトコールで承認された2つの標準化学療法レジメンのうちの1つを選択した。タキサンと同時に4サイクルのHER2標的療法を実施した。手術後、患者はHER2標的療法を継続し、さらに14サイクル、合計18サイクルを受けた。主要評価項目は、プロトコールごとの薬物動態集団におけるP IVに対するPH FDC SC内のサイクル7P血清トラフ濃度(Cトラフ;すなわち、サイクル8の投与前のP濃度)の非劣性であった。幾何平均比の90%信頼区間(CI)の下限が≧0.8の場合、非劣性と結論付けた。登録、ネオアジュバント療法、及び手術が完了した;アジュバント治療及びフォローアップが進行中である。この治験は、ClinicalTrials.govに番号NCT03493854で登録されている。
【0231】
臨床データ
500人の患者を無作為化した:252人はP+H IVを受け、248人はPH FDC SCを受けた。P血清CトラフSC/血清CトラフIVの幾何平均比は1.22(90%CI 1.14-1.31)であり、90%CIの下限は事前に指定された非劣性マージン0.8を超えていた。総病理学的完全奏効率は、P+H IV群では150/252の患者で達成され(59.5%、95%CI 53.18-65.64)、PH FDC SC群では148/248の患者で達成された(59.7%、95%CI 53.28-65.84)。両群の差は0.15%(95%CI -8.67-8.97)であった。HER2標的療法+化学療法によるネオアジュバント治療中に少なくとも5%の患者で発生した最も一般的なグレード3-4の有害事象は、好中球減少症(P+H IV群13.5%[34/252]対PH FDC SC群14.1%[35/248])、好中球数の減少(12.3%[31/252]対10.9%[27/248])、発熱性好中球減少症(5.6%[14/252]対6.5%[16/248])、下痢(4.8%[12/252]対6.9%[17/248])、及び白血球数の減少(7.1%[18/252]対3.6%[9/248])であった。少なくとも1つの治療関連の重篤な有害事象がP+H IV群の患者の9.9%(25/252)で報告されたのに対し、PH FDC SC群では10.5%(26/248)であった。各治療群で1人の患者が死亡した;どちらの死亡もHER2標的療法に関連していなかった。
【0232】
結論
この研究は主要評価項目を満たした:PH FDC SCは、サイクル7のP血清Cトラフ濃度に基づいて、P+H IVに対して非劣性であった。2つのレジメンは、ほぼ同一の総病理学的完全奏効率をもたらした。安全性は両群間で同等であり、他のP、H、及び化学療法の治験と一致していた。全体として、PH FDC SCは、HER2陽性乳がん患者にP+Hを投与するための、より迅速で便利で侵襲性の低い方法を提供する。
【0233】
方法
研究デザイン及び参加者
FeDeriCaは、19か国の106施設で実施された無作為化、非盲検、国際的、多施設、2群のフェーズ3非劣性治験である。
【0234】
適格な患者はHER2陽性EBCを有し、術前ネオアジュバント治療の候補であった。選択基準は、以前の P IV+H IV研究で使用されたものと同様であった:≧18歳、手術可能、局所進行性、又は炎症性HER2陽性(免疫組織化学3+又はin situハイブリダイゼーション陽性)のステージII-IIIC BC with a 原発腫瘍の直径>2cm、又はリンパ節陽性疾患、米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータス0又は1、及び左室駆出率(LVEF)≧55%(心エコー検査又はマルチゲート取得スキャンによる)。HER2及びホルモン受容体の状態を中央で確認した。患者は、BCの治療又は予防のための全身療法、又はがんの放射線治療を受けている場合、不適格であった。また、重篤な心臓の状態、肝機能障害、又は腎機能若しくは骨髄機能が不十分な患者も不適格であった。
【0235】
ランダム化及びマスキング
患者は、中央の音声又はウェブベースの応答システムを介してP+H IV又はPH FDC SCを受けるように並べ替えられたブロックに1:1でランダムに割り当てられた。階層化因子は、ホルモン受容体の状態(エストロゲン又はプロゲステロン受容体陽性、又はエストロゲン及びプロゲステロン受容体陰性);臨床病期(II-IIIA又はIIIB-IIIC);並びに、化学療法レジメン(ドキソルビシン+シクロホスファミドを2週間ごと(ddAC)→パクリタキセルを毎週、又はACを3週間ごと→ドセタキセルを3週間ごと)であった。
【0236】
手順
患者は、4回のddACサイクル(ドキソルビシン60mg/m
2+シクロホスファミド600mg/m
2を2週間ごと、地域のガイドラインに従って、必要に応じて顆粒球コロニー刺激因子と共に)→パクリタキセル80mg/m
2を週1回、12週間、又は4回のACサイクル(ドキソルビシン60mg/m
2+シクロホスファミド600mg/m
2を3週間ごと)→4回のドセタキセルサイクル75-100mg/m
2を3週間ごと(
図6A)を含む、8回のネオアジュバント化学療法サイクルを受けた。化学療法レジメンの選択肢の選択は、無作為化前の治験責任医師の裁量に任されていた。4回のP+H IV又はPH FDC SCサイクルを、いずれかのレジメンのタキサン成分と同時に3週間の間隔で投与した。ネオアジュバントレジメンの完了後、患者は手術を受け、その後、さらに14回のP+H IV/H SC又はPH FDC SCサイクルを受けた(最大で合計18回)。X線検査又は臨床的疾患の進行又は再発又は管理不能な毒性を評価した場合は、治療を中止することとした。
【0237】
P+H IVに無作為に割り付けられた患者では、Pが、初回負荷用量840mg→維持量420mgを3週間ごとに投与された。H IVは、8mg/kg負荷用量→6mg/kgの維持量を3週間ごとに投与された。研究者の選好によるmAb投与順序。同日に、HER2標的治療後に化学療法が行われた。
【0238】
PH FDC SCに無作為に割り付けられた患者では、FDCが、15mL中、P/H1200mg/600mgの初回負荷用量→10mL中、P/H600mg/600mgの維持量を3週間ごとに投与された。負荷用量は、BO30185のデータのおおよその用量比例性に基づいて選択した。
24 PH FDC SCには、2000U/mLの組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)が含まれていた。SC注射は、手持ちのシリンジを使用して、8分(負荷)及び5分(維持)にわたって約2mL/分の速度で大腿部に投与され、その後、最初の投与後30分間の観察期間が続き、良好な耐容性を示した場合は、その後の投与から観察期間は15分とした(
図6B)。
【0239】
HER2標的療法の用量変更は許可しなかった。HER2標的療法が>2サイクル(投与間隔>9週間)中断された場合、又は治療関連の毒性のために永久に中止する必要があった場合、患者はすべての試験治療から除外された。
毒性のために化学療法を中止した患者は、試験治療を自動的に中止したわけではない。このような場合、手術は前倒ししてもよく、割り当てられたHER2標的療法は、スケジュールに従って合計で最大18サイクルまで完了することとした。
【0240】
PK評価のための血液試料は、HER2標的療法の IV点滴/SC注射の前、及び投与後に、
図8に示される時点で採取した。PK試料の正確な採取時間を記録した。
【0241】
転帰
主な目的は、P IVに対するPH FDC SC内のサイクル7(すなわち、サイクル8の投与前)のP血清Cトラフの非劣性であった。PH FDC SC内のサイクル7のH血清CトラフのH IVに対する非劣性(複数の統計試験を調整するために主要評価項目で階層的に試験した)は、二次評価項目であった。主要な探索的PK評価項目には、P及びHの最大血清濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、及び0-21日のAUC(AUC0-21日)が含まれていた。
【0242】
有効性に関する主な評価項目は、総pCR(tpCR;地域の病理学者の評価による乳房及び腋窩の浸潤性疾患の根絶であった[tpCR;ypT0/is、ypN0])。追加の二次有効性評価項目には次のものが含まれる:IDFS(最初の無病日[すなわち、一次手術日]から浸潤性疾患の最初の発生まで又は何らかの原因による死亡までの時間)、二次原発非BCを含むIDFS(IDFSと同じ方法で定義されるが、イベントとして二次原発非乳浸潤性がんを含む[非黒色腫皮膚がん及び任意の部位の上皮内癌を除く])、無イベント生存(登録からBC進行、再発、又は何らかの原因による死亡の最初の発生までの時間)、二次原発非BCを含む無イベント生存、遠隔再発のない間隔(手術から遠隔BC再発日までの時間)、及び全生存期間(無作為化から何らかの原因による死亡までの時間)。イベントまでの時間の評価項目は、データが成熟したら後日報告される。臨床検査又はマンモグラフィーによって局所的に評価された臨床反応(完全/部分的)は、探索的有効性評価項目であった。
【0243】
安全性、有害事象(AE)の発生率及び重症度に関して、米国立がん研究所の共通用語-有害事象の基準(NCI-CTCAE)v4に従って決定された重篤なAE及び臨床検査異常が評価された。主要な心臓安全性評価項目は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)のクラスIII又はIVの症候性駆出率低下(「心不全」)の発生率、及びLVEFのベースラインから≧10パーセントポイントの低下、絶対値<50%、心臓死に至ると定義された。絶対LVEF<50%までLVEFの≧10パーセントポイントの低下として定義され、2回目の評価で確認された、無症候性又は軽度の症候性左心室収縮機能不全(NYHAクラスIIの心不全)の発生率も、二次心臓評価項目として報告された。
【0244】
ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び抗rHuPH20(PH FDC SC群)に対する抗薬剤抗体(ADA)の検出のために、ベースライン時、治療中、及び治療後のフォローアップ段階で試料を採取した。ペルツズマブ及びトラスツズマブに対するADAは、検証済みの酵素結合免疫吸着アッセイを使用して血清試料中に検出された。抗rHuPH20抗体は、検証済みの電気化学発光アッセイを使用して、血漿試料中に検出された。すべての免疫原性試料を、中央研究所で分析した。ADAとtpCR及び安全性との関連性は、探索的に評価された。
【0245】
統計分析
一次分析は、すべての患者がネオアジュバント療法を完了し手術を受けたときに実施した(時期尚早に除外されない限り)。一次PK分析は、プロトコールごとのPK(PPP)集団で行われ、これには、事前に指定されたPK評価の基準を遵守したすべての登録患者が含まれていた(患者は、サイクル7のCトラフ(すなわち、サイクル8の投与前)のPK試料が欠落している場合、21日目の計画日から≧2日ずれて(すなわち、19日目より前又は23日目以降)採取されたCトラフ試料を有していた場合、3サイクル以内に(サイクル5から)計画用量から>20%逸脱した用量が投与された場合、>7日の投与遅延、大腿部以外へのSC注射、サイクル8の投与前と投与後の試料がP+H IV群で切り替えられた場合、又はCトラフ測定に影響を与えるアッセイエラーがあった場合は、除外された)。無作為化されたすべての患者を含む治療意図(ITT)集団に対して有効性分析を実施した。安全性の集団には、化学療法又はHER2標的療法を含む、≧1回用量の治験薬を受けたすべての患者が含まれていた。
【0246】
この研究は、P+H IVの一部としてのPに対するPH FDC SCの一部として投与された場合のPのサイクル7の血清Cトラフの非劣性を実証するために、≧80%の検出力を有するように設計された。以前の研究に基づいて、P血清Cトラフの変動係数(CV)を60%と仮定すると、2つの製剤の真の平均値に>5%の差がない場合、非劣性を示すには、研究群あたり最低130人の患者が必要であった。tpCRと安全性プロファイルを評価するための実質的なデータベースを提供するために、さらに240人の患者を募集した。したがって、全体の計画された登録は500人の患者であった。
【0247】
主要PK評価項目については、非劣性は片側検定手順によって評価した。サイクル7のP血清Cトラフ皮下/Cトラフ静脈内の観察された幾何平均比(GMR)の両側90%CIの下限が≧0.8である場合、非劣性と結論付けた。
【0248】
トラスツズマブのSC及びIV用量の非劣性は、一次分析と同じ基準を使用して評価され、5% の片側有意水準でタイプIの過誤確率を制御する階層的手順で試験した。したがって、H投与前サイクル7の血清CトラフSC/血清CトラフIVは、主要評価項目について非劣性が結論付けられた場合にのみ試験した。
【0249】
有効性評価項目は記述的に分析した。各群のtpCR率、グループ間の差、及び対応する95%Hauck-Anderson CIを計算した。CIの下限は、可能性が低いと考えられる最大のtpCR差を反映するために使用した。
【0250】
探索的分析の一環として、結果が未調整の結果と依然として一致しているかどうかを調査するために、階層化因子及び選択されたベースライン特性(年齢、人種、閉経状態、及び体重)を調整して、tpCRの多重ロジスティック回帰分析を実施した。
【0251】
統計分析は、SASソフトウェア(バージョン9.4)を使用して実施した。
【0252】
結果
500人の患者が登録された。臨床的カットオフで、登録が完了し、すべての患者がネオアジュバント治療を完了し、手術を受け、アジュバント療法を開始したが、フォローアップを完了した患者はいなかった(
図7)。
【0253】
ベースラインの人口統計学的特性及び腫瘍特性は、概して、ITT集団(表1)及びPPP集団でバランスが取れていた。両群において、~48%の患者がddAC→パクリタキセルを受け、~52%がAC→ドセタキセルを受けた。
【0254】
両群において、98%を超える患者が、割り当てられたアントラサイクリンレジメンを完了し、~90%-95%が、割り当てられたタキサンレジメンを完了し、~97%が、ネオアジュバント期間中にHER2を標的とした治療の予定された4回のサイクルを完了した。
【0255】
用量強度は、各レジメンのすべての薬物で98.0%を超えた。ほとんどの患者は、化学療の遅延を経験せず、又は用量変更を必要としなかった(~60-94%)、若しくは、抗HER2療法の遅延を経験しても用量変更を必要としなかった(~71-74%)。合計473人の患者(P+H IV群で239人、PH FDC SC群で234人)がサイクル7のPK測定を受けた。64人の患者(P+H IV群で36人、PH FDC SC群で28人)は、プロトコール違反のために一次PK分析から除外された;したがって、PPP集団は409人の患者で構成された(P+H IV群で203人、PH FDC SC群で206人)。サイクル7の血清P C
トラフのGMRは1.22であった(90%CI 1.14-1.31)(
図8)。サイクル7の血清H C
トラフのGMRは1.33であった(90%CI 1.24-1.43)(
図8)。観察された両側90%CIの下限は、事前に指定された非劣性マージンの0.8を上回っていた。
【0256】
・P及びH曝露は、血清AUC
0-21日の値で示されるように、両群において類似していた。血清P AUC
0-21日のGMRは1.00(90%CI 0.96-1.05)であり、H AUC
0-21日のGMRは1.04(90%CI 0.99-1.09)であった(
図8)。平均のサイクル7のP及びH C
maxは、PH FDC SCと比較して、P+H IVにおいて、より高かった(
図8)。
【0257】
tpCRは、P+H IV群の150/252の患者(59.5%、95%CI 53.2-65.6)、及びPH FDC SC群の148/248の患者(59.7%、95%CI 53.3-65.8)で達成された(
図9)。両群の差は0.15%(95%CI-8.67-8.97)であった。
【0258】
治療意図集団における患者サブグループの総pCRを
図13-14及び表4に示す。両群において、総pCR率は、ホルモン受容体陰性疾患を有する患者;ステージII~IIIAの疾患を有する患者;又はddAC→パクリタキセルを受けた患者で高かった(
図13-14及び表4)。最近の研究では、トラスツズマブによるHER2陽性疾患におけるアジュバントddACの利点の増加は報告されていない;
31,32しかしながら、ddACに続いてパクリタキセルを受けた患者は、ACに続いてドセタキセルを受けた患者よりもよりも、FeDeriCaにおいて数値的に高い総pCR率を有するように見えた。この研究では、化学療法の選択は地域に依存しているように思われた(例えば、ddAC数が多いのはアジアであった)。化学療法のタイプによる総pCRの違いは、偶然の発見である可能性が最も高い。アジア人患者の総pCRを評価するために、追加の分析(図示せず)を実施し、静脈内投与群では48.1%がpCRを達成し、皮下投与群では60.8%が総pCRを達成した。生物学的又は薬物動態的パラメータに基づいてこの違いを説明する理由は見つからなかった。
【0259】
臨床応答率は、静脈内投与群で85.3%(215/252)、皮下投与群で83.1%(206/248)であった。
【0260】
表5に示す多重ロジスティック回帰分析の結果は、未調整の分析と一致し、tpCRに対する体重の影響は示されなかった。
【0261】
安全性の概要を表2に示す;
図15A-DにおけるグレードごとのAEを経験している患者の数。ほとんどすべての患者がAEを経験し、これは、それぞれ、P+H IV群及びPH FDC SC群の事例の97.2%(245/252)及び99.2%(246/248)で化学療法に関連しており、それぞれ、65.9%(166/252)及び66.1%(164/248)でHER2を標的とした療法に関連していた(表2)。
【0262】
最も一般的なAE(任意のグレード、>30%の患者)は、脱毛症(P+H IV群70.2%[177/252]対PH FDC SC群77.0%[191/248])、吐き気(60.3%[152/252]対58.9%[146/248])、下痢(55.2%[139/252]対58.5%[145/248];下痢事象の大多数は低悪性度であり、HER2を標的とした治療の初回サイクル中に発生した)、及び貧血(40.9%[103/252]対33.9%[84/248])であった(表2)。最も一般的なHER2を標的とした治療関連のAE(任意のグレード、>30%の患者)は、下痢であった(それぞれ、32.5%[82/252]対30.6%[76/248])。HER2を標的とした治療に関連し、24時間に発生する全身の注射/点滴関連反応は、P+H IV群の患者の10.3%(26/252)に対してPH FDC SC群では1.2%(3/248)と報告され、そのほとんどはグレード1又は2であった(24/26対3/3)。24時間以内の全身反応の発生率は、HER2を標的とした治療及び発生率の初回投与後に最も高く、その後の投与では発生率は減少した。
【0263】
AEカテゴリ「24時間以内に発生する点滴関連及び投与関連反応」内で、P+H IV群の0/252の患者が注射部位反応を報告したのに対し、PH FDC SC群では12.9%(32/248)であった。すべて、グレード1又は2であり(それぞれ、29/32及び3/32)、注射部位疼痛及び紅斑が最も一般的な症候であった。
【0264】
最も一般的なグレード3-4のAEは、好中球減少症(P+H IV群の13.5%[34/252]対PH FDC SC群の14.1%[35/248])、好中球数の減少(12.3%[31/252]対10.9%[27/248])、発熱性好中球減少症(5.6%[14/252]対6.5%[16/248])、下痢(4.8%[12/252]対6.9%[17/248])、及び白血球数の減少(7.1%[18/252]対3.6%[9/248])であった。最も一般的なHER2を標的とした治療関連のグレード3-4のAEは、下痢であった(それぞれ、2.0%[5/252]対3.6%[9/248])。
【0265】
最も一般的な重篤なAEは、発熱性好中球減少症(P+H IV群の4.0%[10/252]対PH FDC SC群の3.6%[9/248])、発熱 (1.6%[4/252]対0.8%[2/248])、好中球減少性敗血症(0.4%[1/252]対1.2%[3/248])、好中球減少症(1.2%[3/252]対0.4%[1/248])、好中球数の減少(0.4%[1/252]対1.2%[3/248])、及び心不全(0.8%[2/248]対0.8%[2/248])であった。
【0266】
各群で1人の患者が、死亡に至ったAEを経験した(P+H IV群では尿路性敗血症;PH FDC SC群では急性心筋梗塞)。どちらもHER2標的療法の開始前に発生したため、どちらの死亡も、PH FDC SC群のHER2標的療法に関連しているとは見なされなかった。
【0267】
PH FDC SC群の248人の患者のうちの2人(0.8%)は、一次心臓イベントを経験した:1人は心不全(臨床的カットオフにより解決)、もう1人は心臓死(HER2を標的とした療法の開始前であり、PH FDC SCには関係しない)であった(表2)。P+H IV群では0.8%の患者(252人のうちの2人)、PH FDC SC群では0.4%の患者(248人のうちの1人)において、二次心臓イベントが報告された。
【0268】
ベースライン時にすべての患者においてLVEFを評価し、ベースライン後に494人の患者(98.8%)において評価した。ベースラインから最悪のLVEF値までの平均変化は、P+H IV群で-5.50%(標準偏差5.74)、PH FDC SC群で-5.17%(標準偏差5.56)であった(平均差0.33%;95%CI -0.7-1.3)。P+H IV群の7人の患者(2.8%)及びPH FDC SC群の5人の患者(2.0%)が、少なくとも1つの有意なLVEF低下(ベースラインから少なくとも10の駆出率ポイントの低下、及び50%未満への低下)を経験した。
【0269】
治療下で発現する抗体ADAの全体的な発生率は、各群で<5%であった(表6)。探索的分析では、ADAの存在が、tpCR率又は臨床的カットオフでの安全性(注射/点滴関連反応又は投与関連反応)に有害作用を及ぼすことは示唆されなかった。
【0270】
考察
FeDeriCaの一次分析は、サイクル7のP及びHの血清Cトラフ濃度に基づいて、PH FDC SCがP+H IVに対して非劣性であったことを示した。
【0271】
PH FDC SCのP及びHのサイクル7のCトラフはP+H IVよりも高く、H CトラフのGMRはHannaH研究で報告されたものと非常に類似していた。9AUCに基づく全体的な曝露は、PH FDC SCとP + H IVとの間で同等であった。
【0272】
PH FDC SC群のすべての患者は、20μg/mlの治療目標閾値を超えるCトラフ濃度を示し、これは、非臨床マウス異種移植モデル及び早期臨床応答データから特定された有効濃度であり25、固定用量が適切であり、適切な受容体飽和が確実に行われたことを示唆している。
【0273】
有効性分析は、PH FDC SCがtpCRに関してP+H IVに匹敵することを実証し、サブグループ分析は主な有効性の結果と一致していた。特に、体重とtpCR率との間に識別可能な関連はなかった。複数のロジスティック回帰分析は、対応する未調整の結果と一致していた。さらに、tpCR率は、HER2陽性BCを患う患者におけるP+H IVを用いた他の治験の結果と一致しており、ここで、P+H IVは、手術前にアントラサイクリン/タキサンをベースとしたレジメンと組み合わせて投与され、tpCR率は54%から64%の範囲であった。26-29
【0274】
各群の患者の約半数がグレード3-5のAEを経験したが、これにより、臨床的カットオフ時に(それ自体が良好な忍容性を示す)、ネオアジュバント治療を完了した多数の患者によって証明されるように、HER2を標的とした療法からの早期離脱を生じることはなかった。
【0275】
PH FDC SCの全体的な安全性プロファイルは、異なる投与経路に関連するAE(すなわち、注射部位反応)を除き、P+H IVの安全性プロファイルと同等であった。新しい又は予想外の毒性は観察されなかった。予想どおり、PH FDC SCでの最も一般的なグレード3-4のAEは、好中球減少症、好中球数の減少、発熱性好中球減少症、下痢、及び白血球数の減少であった。下痢が中止につながることはほとんどなかった。PH FDC SC群で報告された局所注射部位反応はまれであり、すべて低悪性度であり、その割合はH SCで報告された注射部位反応と一致している。9対照的に、全身性点滴関連反応は、P+H IV群でより頻繁であった。この数値の違いは、全身性吸収の違いとSC投与に関連する低いCmaxとに起因する可能性がある(PH FDC SC群のP及びHの平均のサイクル7のCmaxは、P+H IV群よりも低かった)。
【0276】
一次及び二次心臓イベントの発生率は両群で低く、有意な差はなく、同様の化学療法レジメンを用いた以前の研究で報告された発生率と一致していた。26LVEFに変化が見られた患者の範囲及び割合も、両群で同様であった。唯一の心臓死がPH FDC SC群で報告されたが、これは、アントラサイクリンによる治療中及びHER2を標的とした療法の開始前に発生した。HER2治療に関連する致命的な事象はなかった。
【0277】
免疫原性分析は、PH FDC SC群におけるADAの発生率が低く、P+H IV群に匹敵し、PK、有効性、及び安全性に関して有害な臨床結果を有するようには見えなかったことを示した。
【0278】
全体として、この研究からの化学療法と組み合わせたPH FDC SCの有効性及び安全性のデータは、HER2陽性のBCを患う患者における化学療法と組み合わせたP+Hの既知の有効性及び安全性プロファイルと一致していた。26-29
【0279】
現在の分析には限界がある。一次分析はネオアジュバントフェーズの完了後に実施された;しかしながら、HER2を標的とした治療は、標準治療に従って、最大18サイクルまで継続されている。したがって、アジュバントフェーズの安全性、有効性、及びPKの結果、並びに3年間のフォローアップの結果はまだ入手可能ではない。しかしながら、FeDeriCaにおけるPH FDC Scの長期的な安全性及び有効性プロファイルは、P+H IVに匹敵すると予想される。
【0280】
FeDeriCaのアジュバント設定では、化学療法は施されない;したがって、P+H IVが化学療法と併用された場合に最も頻繁に報告されるAEのパターン及び発生率に関する多数の証拠に基づいて、より長いフォローアップ中に安全性が悪化することは予想されない。HannaH試験の長期有効性結果は、H SCのH IVに対する確立された非劣性を支持し、安全性プロファイルはIV投与に関連するものと経時的に一致したままであった。11さらに、MetaPHER試験(以前に未治療であった進行性BCを患う患者において、P IV及びドセタキセルと併用したH SCの安全性を評価するフェーズ3単群試験)の最終結果は、このレジメンの安全性(長期的な安全性を含む)が、HER2陽性の進行性BCを患う患者におけるP+H IV及びドセタキセルからの病歴データに匹敵することを示した。1926.7か月(最長45か月)のフォローアップでは、H SCでの累積毒性又は後期心臓安全性の問題は観察されなかった。
【0281】
結論として、PH FDC SCは、サイクル7のP及びHの血清Cトラフ濃度に基づいて、P+H IVに対して非劣性であった。2つのレジメンは、ほぼ同一のtpCR率を生成し、心臓の安全性を含め、同等の安全性プロファイルを有していた。P+H IVと比較してPH FDC SCの投与期間が短いため、患者、医師、看護師、及び薬局スタッフの時間の大幅な節約をもたらす可能性がある。H SCの在宅投与の肯定的な経験に基づいて、PH FDC SCも将来的に自宅で投与される可能性がある。30
【0282】
PH FDC SCは、HER2陽性のBCに対するP+H投与のより迅速でより便利な侵襲性の低い方法を提供し、リソースを解放し、医療システムの能力を向上させる可能性をもたらす。
【0283】
P IV及びH IVは任意の順序で施すことができる。15分間のPH FDC SCの維持量の観察期間は、負荷用量の注射が良好な耐容性を示したと仮定している;患者は、現地の要件に従って、調査員の裁量でより長く観察することができる。
【0284】
値は、サブグループにおける応答者数/患者総数(n/N)、tpCR率(%、95%信頼区間)である。
AC=ドキソルビシン+シクロホスファミド。CI=信頼区間(ピアソン・クロッパー法により算出)。ddAC=ドーズデンスドキソルビシン+シクロホスファミド。NST=特別なタイプなし。WHO=世界保健機構。
【0285】
実施例1で引用された出版物:
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3. Swain et al. Pertuzumab, trastuzumab, and docetaxel in HER2-positive metastatic breast cancer. N Engl J Med 2015; 372(8): 724-34.
4. Gianni et al. Efficacy and safety of neoadjuvant pertuzumab and trastuzumab in women with locally advanced, inflammatory, or early HER2-positive breast cancer (NeoSphere): a randomised multicentre, open-label, phase 2 trial. Lancet Oncol 2012; 13(1): 25-32.
5. von Minckwitz et al. Adjuvant pertuzumab and trastuzumab in early HER2-positive breast cancer. N Engl J Med 2017; 377(2): 122-31.
6. Poorter et al. Complications of an implantable venous access device (Port-a-Cath) during intermittent continuous infusion of chemotherapy. Eur J Cancer 1996; 32A(13): 2262-6.
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8. De Cock et al. A time and motion study of subcutaneous versus intravenous trastuzumab in patients with HER2‐positive early breast cancer. Cancer Med 2016; 5(3): 389-97.
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14.Pivot et al.Efficacy and safety of subcutaneous trastuzumab and intravenous trastuzumab as part of adjuvant therapy for HER2-positive early breast cancer: Final analysis of the randomised, two-cohort PrefHer study. Eur J Cancer 2017; 86: 82-90.
15. Davies et al. Pharmacokinetics and safety of subcutaneous rituximab in follicular lymphoma (SABRINA): Stage 1 analysis of a randomised phase 3 study. Lancet Oncol 2014; 15(3): 343-52.
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26. Swain et al. Pertuzumab, trastuzumab, and standard anthracycline- and taxane-based chemotherapy for the neoadjuvant treatment of patients with HER2-positive localized breast cancer (BERENICE): A phase II, open-label, multicenter, multinational cardiac safety study. Ann Oncol 2018; 29(3): 646-53.
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29. Hurvitz et al. Neoadjuvant trastuzumab, pertuzumab, and chemotherapy versus trastuzumab emtansine plus pertuzumab in patients with HER2-positive breast cancer (KRISTINE): A randomised, open-label, multicentre, phase 3 trial. Lancet Oncol 2018; 19(1): 115-26.
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31. Papakonstantinou et al. Efficacy and Safety of Tailored and Dose-Dense Adjuvant Chemotherapy and Trastuzumab for Resected HER2-positive Breast Cancer: Results From the Phase 3 PANTHER Trial. Cancer 2020; 126(6): 1175-82.
32. Lambertini et al. Dose-dense Adjuvant Chemotherapy in HER2-positive Early Breast Cancer Patients Before and After the Introduction of Trastuzumab: Exploratory Analysis of the GIM2 Trial. Int J Cancer 2020; 147(1): 160-9.
【0286】
実施例2:
ペルツズマブ-トラスツズマブ固定用量配合剤(PH FDC)の完全な処方情報
警告:心筋ミオパシー、胚・胎児毒性、及び肺毒性
心筋ミオパシー
PH FDCの投与は、無症候性及び臨床性心不全を引き起こす可能性がある。発生率及び重症度は、アントラサイクリンを含む化学療法レジメンでPH FDCを受けている患者で最も高かった。
1.PH FDCによる治療前及び治療中の心機能を評価する。アジュバント療法を受けている患者ではPH FDC治療を中止し、左心室機能が臨床的に有意に低下している転移性疾患を患う患者ではPH FDCを控える[用法・用量(2.3)及び警告及び注意事項(5.1)参照]。
【0287】
胚・胎児毒性
PH FDCへの曝露は、肺形成不全、骨格異常、及び新生児死亡として現れる羊水過少症及び羊水過少配列を含む、胚・胎児死亡及び先天性欠損症を引き起こす可能性がある。これらのリスクと効果的な避妊の必要性について患者に助言する[警告及び注意事項(5.2)及び特定の患者集団への投与(8.1),(8.3)参照]。
【0288】
肺毒性
PH FDCの投与は、重篤かつ致命的な肺毒性を引き起こす可能性がある。アナフィラキシー、血管浮腫、間質性肺炎、または急性呼吸窮迫症候群の場合は、PH FDCを中止すること。症状が完全に解消するまで患者を監視すること[警告及び注意事項(5.3)参照]。
【0289】
1.効能・効果
1.1 早期乳がん(EBC)
PH FDCは、以下の治療のための化学療法との併用に適応とされている。
・早期乳がんの完全な治療レジメンの一部としてのHER2陽性、局所進行性、炎症性、又は早期の乳がん(直径が2cmを超える又はリンパ節陽性のいずれか)を患う成人患者のネオアジュバント治療[用法・用量(2.2)及び臨床研究(14.2)参照]。
・再発リスクの高いHER2陽性の早期乳がんを患う成人患者のアジュバント治療[用法・用量(2.2)及び臨床研究(14.2)参照]。
FDA承認のコンパニオン診断検査に基づいて療法のための患者を選択する[[用法・用量(2.1)参照]。
【0290】
1.2 転移性乳がん(MBC)
PH FDCは、以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていないHER2陽性転移性乳がんを患う成人患者の治療のためにドセタキセルと併用して使用することが適応とされている[用法・用量(2.2)及び臨床研究(14.1)参照]。
【0291】
FDA承認済みのコンパニオン診断検査に基づいて療法のための患者を選択する[用法・用量(2.1)参照]。
【0292】
2.用法・用量
2.1 患者の選択
腫瘍標本におけるHER2タンパク質の過剰発現又はHER2遺伝子の増幅に基づいて患者を選択する[効能・効果(1)及び臨床研究(14)参照]。HER2タンパク質の過剰発現及びHER2遺伝子の増幅の評価は、FDA承認済みの乳がんに特化した検査を使用して、熟練度が実証された検査室で実施する必要がある。HER2タンパク質の過剰発現及びHER2遺伝子の増幅を検出するためのFDA承認済み検査に関する情報は、http://www.fda.gov/CompanionDiagnosticsで入手可能である。
最適に固定されていない組織の使用、指定された試薬の不使用、特定のアッセイ指示からの逸脱、及びアッセイ検証のための適切な対照の欠如などの不適切なアッセイ性能は、信頼できない結果をもたらす可能性がある。
【0293】
2.2 用法・用量に関する重要な情報
PH FDCは、大腿部の皮下にのみ使用するものである。静脈内投与はしないこと。
【0294】
PH FDCには、単独でペルツズマブを静脈内投与、トラスツズマブを静脈内投与、及びトラスツズマブを皮下投与する場合とは異なる用法・用量の指示がある。
【0295】
PH FDCをペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ・エムタンシン、又はトラスツズマブ・デルクステカンで代用しないこと、あるいはペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ・エムタンシン、又はトラスツズマブ・デルクステカンをPH FDCで代用しないこと。
【0296】
PH FDCは常に医療専門家によって管理されなければならない。
【0297】
早期乳がんに対してアントラサイクリンをベースとしたレジメンを受けている患者では、アントラサイクリンの完了後にPH FDCを投与すること。
【0298】
ドセタキセル又はパクリタキセルによる早期乳がんのPH FDCを受けている患者では、PH FDCの後にドセタキセル又はパクリタキセルを投与すること。
【0299】
ドセタキセルによる転移性乳がんのPH FDCを受けている患者では、PH FDCの後にドセタキセルを投与すること。
【0300】
PH FDCの負荷投与後は最低30分間、PH FDCの各維持投与後は15分間、徴候又は過敏症状又は投与関連反応について、患者を観察すること。そのような反応を治療するための医薬並びに緊急装備は、すぐに使用できるようにする必要がある[警告及び注意事項(5.5)参照]。
【0301】
2.3 推奨される用量及びスケジュール
PH FDCの推奨される用量及び投与スケジュールを表7に示す。
【0302】
患者の体重又は併用化学療法レジメンには、PH FDCの用量調整は必要ではない。
【0303】
ペルツズマブ及びトラスツズマブの静脈内を現在受けている患者は、PH FDCに移行することができる。ペルツズマブ及びトラスツズマブの静脈内投与を受けており、最終投与から<6週間の患者では、維持量として600mgのペルツズマブ/600mgのトラスツズマブのPH FDCを投与し、その後の投与では3週間ごとに投与する。ペルツズマブ及びトラスツズマブの静脈内投与を受けており、最終投与から≧6週間経過している患者では、初回用量として1200mgのペルツズマブ/600mgのトラスツズマブのPH FDCを投与し、その後の投与では600mgのペルツズマブ/600mgのトラスツズマブの維持量3週間ごとに投与する。
【0304】
乳がんのネオアジュバント治療
早期乳がんの治療レジメンの一環として、PH FDCを3週間ごとに3から6サイクル投与すること[臨床研究(14.2)参照]。
【0305】
推奨用量及び投薬量の調整については、トラスツズマブ及び化学療法と組み合わせ投与されるペルツズマブの処方情報を参照されたい。
手術後、患者は、早期乳がんの完全なレジメンの一部として、1年間の治療(最大18サイクル)を完了するために、又は疾患の再発若しくは管理不能な毒性のいずれか早い方が発生するまで、PH FDCを受け続ける必要がある。
【0306】
乳がんのアジュバント治療
標準的なアントラサイクリン及び/又はタキサンをベースとした化学療法を含む、早期乳がんの完全なレジメンの一部として、合計1年間(最大18サイクル)、又は疾患の再発若しくは管理不能な毒性のいずれか早い方が発生するまで、PH FDCを3週間ごとに投与すること。最初のタキサン含有サイクルの1日目にPH FDCを開始すること[臨床研究(14.2)参照]。
【0307】
転移性乳がん(MBC)
PH FDCとともに投与される場合には、ドセタキセルの推奨初回投与量は、静脈内注入として投与される、75mg/m2である。初回用量が良好な耐容性を示した場合は、用量は、3週間ごとに、100mg/m2まで増量して投与することができる。PH FDCは、疾患の進行又は管理不能な毒性のいずれか早い方が発生するまで投与すること。
【0308】
2.4 用量変更
遅延した又は誤った用量についての用量変更
PH FDCの遅延した又は誤った用量については、2回の連続した注射間の間隔が<6週間の場合、600mg、600mg、及び20,000単位/10mLの維持量を投与すること。次の予定用量まで待たないこと。
【0309】
2回の連続した注射間の間隔が≧6週間の場合、1200mg、600mg、及び30,000単位/15mLの負荷用量を再投与し、その後、3週間ごとに600mg、600mg、及び20,000単位/10mLの維持量を投与すること。
【0310】
化学療法の用量変更については、関連する処方情報を参照されたい。
【0311】
心筋ミオパシー[枠組み警告、警告、及び注意事項(5.1)参照]
表8に示されるように、PH FDC の開始前及び治療中に一定の間隔で、左室駆出率(LVEF)を評価すること。
【0312】
LVEF機能不全の場合の用量変更に関する推奨事項を表8に示さす[警告及び注意事項(5.1)参照]。
【0313】
約3週間以内で繰り返し評価した後、LVEFが改善しない場合、さらに低下した場合、及び/又は患者に症候がある場合は、PH FDCを永久に中止すること[警告及び注意事項(5.1)参照]。
【0314】
過敏症及び投与関連反応
患者が重篤な過敏反応(例えば、アナフィラキシー)を経験した場合は直ちに注射を中止すること[警告及び注意事項(5.5)参照]。
【0315】
2.5 投与準備
投薬過誤を防ぐために、バイアルのラベルをチェックして、調製及び投与される薬物がPH FDCであり、静脈内ペルツズマブ、又は静脈内トラスツズマブ、又は皮下トラスツズマブではないことを確実にすることが重要である。
【0316】
非経口薬物製品は、溶液及び容器が許す限り、投与前に粒子状物質及び変色について目視検査する必要がある。粒子又は変色が存在する場合は、バイアルを使用しないこと。振盪しないこと。バイアルに残っている未使用の部分を廃棄すること。
【0317】
初回用量及び維持量の両方について、対応する各PH FDCバイアルは、1回の皮下注射に即時使用可能であり、希釈する必要はない。
【0318】
バイアルからPH FDC溶液を取り出し、それを皮下に注射するために、シリンジ、トランスファーニードル、及び注射針が必要である。PH FDCは、25G-27G(3/8”-5/8”)の皮下注射針を使用して注射することができる。
【0319】
針の目詰まりを避けるために、投与直前に皮下注射針をシリンジに取り付け、その後、15mL(負荷用量)及び10mL(維持量)に容量を調整すること。用量がすぐに投与されず、PH FDCの溶液がバイアルからシリンジに取り出された場合は、トランスファーニードルをシリンジ閉栓キャップに交換すること。シリンジを剥離式のステッカーで標識し、シリンジを冷蔵庫[2℃から8℃(36°Fから46°F)]で最大24時間、及び室温[20℃から25℃(68°Fから77°F)]で最大4時間保管し、不必要な保管を避けること。
【0320】
PH FDCは、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、及びフッ素化エチレンポリプロピレンと適合性である。 is と適合性である。
【0321】
投与
・1200mg、600mg、30,000単位/15mLのPH FDCを約8分かけて皮下投与すること。
・600mg、600mg、20,000単位/10mLのPH FDCを約5分かけて皮下投与すること。
【0322】
皮下注射部位は、左右の大腿部間で交互にする必要がある。新しい注射は、健康な皮膚の以前の部位から少なくとも1インチ(2.5cm)離して行う必要があり、皮膚が赤くなったり、打撲傷があったり、圧痛があったり、又は硬くなったりしている領域には注射すべきではない。2つのシリンジ間又は2つの投与部位間で用量を分割しないこと。PH FDCによる治療過程では、皮下投与のための他の薬剤は、好ましくは、別の部位に注射する必要がある。
【0323】
3. 剤形及び強度
注射:PH FDCは、透明から乳白色、及び無色からわずかに茶色がかった溶液で、次のように提供される:
・単回投与バイアル中、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のヒアルロニダーゼ/15mL(80mg、40mg、及び2,000単位/mL)の溶液
・単回投与バイアル中、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のヒアルロニダーゼ/10mL(60mg、60mg、及び2,000単位/mL)の溶液
【0324】
4.禁忌
PH FDCは、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ、又はヒアルロニダーゼ、又はその添加剤のいずれかに対して既知の過敏症を有する患者には禁忌である。
【0325】
5 警告及び注意事項
5.1 心筋ミオパシー
PH FDCは、高血圧症、不整脈、左心室心機能不全、障害を引き起こす心不全、心筋ミオパシー、及び心臓死を引き起こす可能性がある[枠組み警告:心筋ミオパシー参照]。PH FDCは、LVEFの無症候性の低下を引き起こす可能性がある。
【0326】
静脈内ペルツズマブ、静脈内トラスツズマブ、及びドセタキセルで治療された患者では、LVEF低下の発生率の増加が観察されている。トラスツズマブを受けている患者では、症候性心筋機能不全の発生率が4-6倍増加したことが報告されており、最高の絶対発生率は、トラスツズマブをアントラサイクリンと共に投与した場合に起こっている。
【0327】
PH FDCを中止した後にアントラサイクリンを受ける患者は、心機能不全のリスクも高くなる可能性がある[薬物相互作用(7)及び臨床薬理学(12.2)参照]。
【0328】
心臓モニタリング
PH FDCの開始前に、病歴、身体検査、及び心エコー図又はMUGAスキャンによるLVEFの決定を含む、徹底的な心臓評価を実施すること。
【0329】
PH FDCによる治療中は、LVEFを一定の間隔で評価すること[用法・用量(2.4)参照]。
【0330】
約3週間以内で繰り返し評価した後、LVEFが改善しない場合、さらに低下した場合、及び/又は患者に症候がある場合は、PH FDCを永久に中止すること。
【0331】
PH FDCの完了後、心筋ミオパシーのモニタリングを継続し、アジュバント療法の要素として少なくとも2年間、6か月ごとにLVEF測定値を評価すること。
【0332】
PH FDC
FeDeriCa研究では、少なくとも1つの心疾患を有する患者の割合は、PH FDC群で22%であった。PH FDC群で最も頻繁な心臓の有害反応は、駆出率の低下であった。
【0333】
心不全(NYHAクラスIII/IV)の発生率(PH FDC群では、LVEFが≧10%低下し、50%未満まで下降した)は、0.8%であった。無症候性又は軽度の症候性(NYHAクラスII)であることが確認されたLVEFの≧10%の低下、及び50%未満への下降は、PH FDC群で1.2%であった[有害反応(6.1)参照]。
【0334】
PH FDC及び/又は静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブは、治療前のLVEF値が<55%(EBC)又は<50%(MBC)の患者(CHFの既往歴、左心室機能を損なう可能性のある状態、例えば、制御不能な高血圧症、最近の心筋梗塞、治療を必要とする重篤な心不整脈、又は>360mg/m2のドキソルビシン又はその等価物への以前のアントラサイクリンの累積曝露など)では研究されていない。
【0335】
5.2 胚・胎児毒性
PH FDCは、妊婦に投与すると胎児に害を及ぼす可能性がある。市販後報告では、妊娠中の静脈内トラスツズマブの使用は、肺低形成、骨格異常、及び新生児死亡として現れる羊水過少及び羊水過少配列の症例をもたらした。動物の繁殖研究では、器官形成期の妊娠中のカニクイザルへのペルツズマブの静脈内投与は、Cmaxに基づいた、推奨用量でのヒトへの曝露の2.5から20倍の曝露で、羊水過少症、胎児の腎臓発達の遅延、及び胚・胎児の死亡をもたらした。
【0336】
PH FDCの開始前に、生殖能力のある女性の妊娠状態を確認すること。妊娠中又は受胎前7か月以内でのPH FDCへの曝露が胎児に害を及ぼす可能性があることを、妊娠中の女性及び生殖能力のある女性に助言すること。生殖能力のある女性に、治療中及びPH FDCの最終投与後7か月間は効果的な避妊法を使用するように助言すること[特定の患者集団への投与(8.1、8.3)及び臨床薬理学(12.3)参照]。
【0337】
5.3 肺毒性
PH FDCは、重篤かつ致命的な肺毒性を引き起こす可能性がある。これらの有害反応は、静脈内トラスツズマブで報告されている。肺毒性には、呼吸困難、間質性肺炎、肺浸潤、胸水、非心原性肺水腫、肺機能不全及び低酸素症、急性呼吸窮迫症候群、並びに肺線維症が含まれる。症候性内因性肺疾患又は肺の広範な腫瘍病変を有する患者は、安静時の呼吸困難を引き起こし、より重度の毒性を有するように思われる。
【0338】
5.4 化学療法誘導性の好中球減少症の憎悪
PH FDCは、化学療法誘導性の好中球減少症を憎悪させる可能性がある。静脈内トラスツズマブでのランダム化対照臨床治験では、グレード3-4の好中球減少症及び発熱性好中球減少症は、化学療法のみを受けた患者と比較して、トラスツズマブを骨髄抑制化学療法と併用して受けている患者で高かった。敗血症による死亡の発生率は、トラスツズマブを投与された患者と投与されていない患者間で同様であった。
【0339】
5.5 過敏症及び投与関連反応
過敏症、アナフィラキシー、及び致死的転帰を伴う事象を含む、重度の投与関連反応(ARR)は、静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブに関連付けられている。進行した悪性腫瘍及び併存疾患の合併症に起因する安静時の呼吸困難を経験している患者は、重度又は致命的なARRのリスクが高くなる可能性がある。
【0340】
FeDeriCa研究では、過敏症の発生率はPH FDC群で1.2%であった。投与関連反応は、PH FDCを受けた患者の21%で発生した。PH FDC群では、最も一般的な投与関連反応は、注射部位反応(15%)及び注射部位疼痛(2%)であった。
【0341】
初回投与量の注射中及び注射後30分間、並びにその後のPH FDCの維持量の注射中及び注射後15分間は、患者を注意深く監視すること。重大な注射関連反応が発生した場合は、注射を遅延させるか又は一時停止し、適切な医学療法を施すこと。徴候及び症候が完全に解消されるまで、患者を評価し、注意深く監視すること。
【0342】
アナフィラキシー又は重度の注射関連反応を経験した患者には、PH FDCを永久に中止すること。そのような反応を治療するための医薬並びに緊急装備は、すぐに使用できるようにする必要がある。可逆的なグレード1又は2の過敏反応を経験している患者には、PH FDCの再投与の前に、鎮痛剤、解熱剤、又は抗ヒスタミン剤による前投薬を検討すること[有害反応(6.1)参照]。
【0343】
PH FDCは、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ヒアルロニダーゼ又はその添加剤のいずれかに対して既知の過敏症を有する患者には禁忌である[禁忌(4)参照]。
【0344】
6. 有害反応
次の有害反応については、ラベルの他のセクションで詳細に論じられる:
・心筋症[警告及び注意事項(5.1)参照]
・胚・胎児毒性[警告及び注意事項(5.2)参照]
・肺毒性[警告及び注意事項(5.3)参照]
・化学療法誘導性の好中球減少症の憎悪[警告及び注意事項(5.4)参照]
・過敏症及び投与関連反応[警告及び注意事項(5.5)参照]
【0345】
6.1 臨床治験の経験
臨床治験はさまざまな条件下で行われるため、ある薬物の臨床治験で観察された有害反応率は別の薬物の臨床治験における率と直接比較することはできず、実際に観察された率を反映していない可能性がある。
【0346】
乳がんのネオアジュバント及びアジュバント治療
PH FDCの安全性は、HER2過剰発現早期乳がんを患う500人の患者に実施された、非盲検多施設無作為化試験において評価した[臨床研究(14.2)参照]。
【0347】
患者は、PH FDC(1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のヒアルロニダーゼ/15mL)、続いて3週間ごとに600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のヒアルロニダーゼ/10mLの維持量、又は静脈内ペルツズマブ及び静脈内トラスツズマブの推奨用量のいずれかを受けるように無作為化された。患者は、無作為化されて、8サイクルのネオアジュバント化学療法と、サイクル5-8の間に4サイクルのPH FDCの同時投与か、又は静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブの同時投与を受け、その後、手術を受けた。手術後、患者は、PH FDC又は静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブ(静脈内投与又は皮下投与)による療法を手術前と同様にさらに14サイクル継続し、18サイクルを完了した。PH FDCの治療期間の中央値は24週間であった(範囲:0-42週間)。
【0348】
PH FDCを受けた患者の16%に重篤な有害反応が発生した。>1%の患者の重篤な有害反応には、発熱性好中球減少症(4%)、好中球減少性敗血症(1%)、及び好中球数減少(1%)が含まれていた。1/248(0.4%)の患者で1件の致命的な有害反応が発生したが、これは急性心筋梗塞によるものであり、PH FDCでのHER2標的治療の開始前に発生した。
【0349】
治験薬の永久中止につながる有害反応は、PH FDC群の患者の8%に発生した。PH FDCの永久中止に至った有害反応は、駆出率の低下(1.2%)、心不全(0.8%)、及び肺炎/肺線維症(0.8%)であった。
【0350】
PH FDCを受けた患者の40%に、有害反応による投薬の中断が発生した。PH FDCを受けた患者の>1%において投薬の中断を必要とした有害反応には、好中球減少症(8%)、好中球数減少(4%)、及び下痢(7%)が含まれていた。
FeDeriCaの有害反応を表9にまとめる。
【0351】
FeDeriCaの検査値の異常を表10にまとめる。
【0352】
他の臨床試験経験
化学療法と組み合わせたトラスツズマブへの静脈内ペルツズマブの追加の安全性は、HER2過剰発現早期乳がん患者で実施された研究で確立されている。ペルツズマブ及びトラスツズマブの静脈内投与後に、次の有害反応が報告されている:下痢、脱毛症、吐き気、疲労感、好中球減少症、嘔吐、末梢神経障害、便秘、貧血、無力症、粘膜の炎症、筋肉痛、及び血小板減少症。さらなる情報については、ペルツズマブの処方情報を参照されたい。
【0353】
静脈内ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びドセタキセルの安全性は、HER2過剰発現転移性乳がんを患う患者において確立されている。ペルツズマブ及びトラスツズマブの静脈内投与後に、次の有害反応が報告されている:下痢、脱毛症、好中球減少症、吐き気、疲労感、発疹、及び末梢神経障害。さらなる情報については、ペルツズマブの処方情報を参照されたい。
【0354】
6.2 免疫原性
すべての治療用タンパク質と同様に、PH FDCには免疫原性の可能性がある。抗体形成の検出は、アッセイの感度及び特異性に大きく依存する。加えて、アッセイにおいて観察された抗体(中和抗体を含む)の陽性の発生率は、アッセイ方法、試料の取り扱い、試料採取のタイミング、併用薬、及び基礎疾患を含む幾つかの因子による影響を受ける可能性がある。これらの理由から、FeDeriCa研究におけるPH FDC及び静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブに対する抗体の発生率と、他の研究における又は他の製品に対する抗体の発生率との比較は、誤解を招く可能性がある。
【0355】
FeDeriCa研究では、1~4サイクルの療法を完了したほとんどの患者における治療下で発現した抗ペルツズマブ及び抗トラスツズマブ抗体の発生率は、静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブで治療された患者において、それぞれ、3%(7/237)及び0.4%(1/237)であった。1~4サイクルの療法を完了したほとんどの患者における治療下で発現する抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗組換えヒトヒアルロニダーゼPH20抗体の発生率は、PH FDCで治療された患者において、それぞれ、4.8%(11/231)、0.9%(2/232)、及び0.9%(2/225)であった。抗ペルツズマブ抗体に対して陽性だった患者のうち、静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブで治療された1人の患者及びPH FDCで治療された1人の患者において、中和抗ペルツズマブ抗体が検出された。抗トラスツズマブ抗体に対して陽性だった患者のうち、PH FDCで治療された1人の患者において中和抗トラスツズマブ抗体が検出された。
【0356】
PH FDCによる治療後の抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、又は抗組換えヒトヒアルロニダーゼPH20抗体の発生の臨床的関連性は不明である。
【0357】
6.3 市販後調査
静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブの使用により、次の有害反応が特定されている。これらの反応は、不確実な規模の集団から自発的に報告されるため、その頻度を確実に推定すること、又は薬物曝露との因果関係を確立することは、常に可能であるとは限らない。
・糸球体症
・免疫性血小板減少症
・腫瘍崩壊症候群(TLS):重大な腫瘍負荷(例えば、巨大な転移)を有する患者は、リスクがより高くなりうる。患者は、TLSの可能性を示しうる、高尿酸血症、高リン血症、及び急性腎不全を呈する可能性がある。医療提供者は、臨床的に示されているように、追加の監視及び/又は治療を検討する必要がある。
【0358】
7.薬物相互作用
PH FDCを中止した後にアントラサイクリンを受ける患者は、PH FDCのウォッシュアウト期間が長いために、心機能不全のリスクが高くなる可能性がある[臨床薬理学(12.3)参照]。可能であれば、PH FDCを中止した後、最大7か月間、アントラサイクリンをベースとした療法を避けること。アントラサイクリンを使用する場合は、患者の心機能を注意深く監視すること。
【0359】
8.特定の患者集団への投与
PH FDCを中止した後にアントラサイクリンを受ける患者は、PH FDCのウォッシュアウト期間が長いために、心機能不全のリスクが高くなる可能性がある[臨床薬理学(12.3)参照]。可能であれば、PH FDCを中止した後、最大7か月間、アントラサイクリンをベースとした療法を避けること。アントラサイクリンを使用する場合は、患者の心機能を注意深く監視すること。
【0360】
8.1 妊娠
妊娠に関する医薬品安全性プログラム
PH FDCには、妊娠に関する医薬品安全性プログラムが存在する。妊娠中にPH FDCを投与する場合、又はPH FDCを受けている間に若しくはPH FDCの最終投与後7か月以内に患者が妊娠した場合、医療提供者及び患者は、PH FDCへの暴露をGenentech社(1-888-835-2555)に直ちに報告する必要がある。
【0361】
リスクの概要
PH FDCは、妊婦に投与すると胎児に害を及ぼす可能性がある。市販後報告では、妊娠中の静脈内トラスツズマブの使用は、肺低形成、骨格異常、及び新生児死亡として現れる羊水過少及び羊水過少配列の症例をもたらした(データ参照)。動物の繁殖研究では、器官形成期の妊娠中のカニクイザルへのペルツズマブの投与は、Cmaxに基づいた、推奨用量を受けるヒトへの曝露の2.5倍から20倍の臨床関連の曝露で、羊水過少症、胎児の腎臓発達の遅延、及び胚・胎児の死亡をもたらした(データ参照)。胎児への潜在的なリスクについて患者に知らせる。PH FDCを妊娠中又は受胎前7か月以内に使用する場合は、臨床的な考慮事項が存在する(臨床的考慮事項を参照)。
【0362】
示された集団についての主要な先天性欠損及び流産の推定背景リスクは不明である。米国の一般集団では、臨床的に認識された妊娠における重大な先天性欠損及び流産の推定背景リスクは、それぞれ、2-4%及び15-20%は、である。
【0363】
臨床的考慮事項
胎児/新生児有害反応
妊娠中又は受胎前7か月以内にPH FDCを受けた女性は、羊水過少症について監視すること。羊水過少症が発生した場合は、在胎期間に適切で、コミュニティのケア基準と一致する胎児検査を実施すること。
【0364】
データ
ヒトデータ
市販後報告では、妊娠中のトラスツズマブの使用は、肺低形成、骨格異常、及び新生児死亡として現れる、羊水過少症及び羊水過少配列の症例をもたらした。これらの症例報告には、トラスツズマブを単独で、又は化学療法と組み合わせて受けた妊娠女性の羊水過少症が記載されていた。一部の症例報告では、トラスツズマブの停止後に羊水指数が増加した。ある症例では、羊水指数が改善し、羊水過少症が再発した後に、トラスツズマブ療法が再開された。
【0365】
動物データ
皮下注射用のPH FDCには、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びヒアルロニダーゼが含まれる[説明(11)参照]。
【0366】
ペルツズマブ:
妊娠中のカニクイザルを、妊娠(GD)19日目に30から150mg/kgの負荷用量のペルツズマブで治療し、続いて隔週で10から100mg/kgの用量で治療した。これらの用量レベルは、Cmaxに基づいて、推奨用量を受けたヒトの曝露よりも 2.5倍から20倍高い臨床関連の曝露をもたらした。GD19からGD50(器官形成期)までのペルツズマブの静脈内投与は胚毒性があり、GD25からGD70までの間で胚・胎児の死亡が用量依存的に増加した。胚胎児喪失の発生率は、33、50、及び85%であった。GD100の帝王切開では、羊水過少症、相対肺重量及び腎臓重量の減少、並びに腎発達の遅延と一致する腎低形成の顕微鏡的証拠が、すべてのペルツズマブ投与群で確認された。GD100での母体血清レベルの29%から40%のレベルで、すべての治療群の子孫において、ペルツズマブ曝露が報告された。
【0367】
トラスツズマブ:
器官形成期の妊娠中のカニクイザルに週2回、最大25mg/kg(ヒトの推奨週用量である2mg/kgの最大25倍)の用量で静脈内トラスツズマブを投与した研究では、トラスツズマブは、妊娠初期(妊娠から20日から50日)及び後期(妊娠から120日から150日)に胎盤関門を通過した。結果として得られた胎児血清及び羊水中のトラスツズマブの濃度は、母体血清に存在する濃度のそれぞれ約33%及び25%であったが、発生への有害作用とは関連していなかった。
【0368】
ヒアルロニダーゼ:
胚・胎児の研究では、ヒアルロニダーゼ(組換えヒト)を、それぞれ、負荷用量及び維持量に基づいて、ヒトの用量より>2,400倍及び>3,600倍高い、最大2,200,000U/kgの用量レベルで、器官形成中にマウスに毎日皮下注射で投与した。この研究では、催奇形性の証拠は見つからなかった。胎児の体重の減少と胎児の再吸収数の増加が観察されたが、それぞれ、負荷用量及び維持量に基づいて、ヒトの用量より400倍及び600倍を超えて高い、360,000U/kgの1日用量で影響は見られなかった。
【0369】
周産期及び出生後の繁殖研究では、ヒアルロニダーゼ(組換えヒト)を、それぞれ、負荷用量及び維持量に基づいて、ヒトの用量より>1200倍及び>1,800倍高い、最大1,100,000U/kgの用量レベルで、着床から授乳期及び離乳期を通じてマウスに毎日皮下注射で投与した。この研究では、性的成熟、学習及び記憶、又は子孫の生殖能力に有害作用は見られなかった。
【0370】
8.2 授乳
リスクの概要
ヒト母乳中のペルツズマブ、トラスツズマブ、又はヒアルロニダーゼの存在、母乳育児への影響、又は母乳産生への影響に関する情報はない。公開されたデータは、ヒトIgGが母乳中に存在するが、新生児及び乳児の循環に大量には入らないことを示唆している。トラスツズマブは、授乳中のカニクイザルの乳中に存在していたが、新生児毒性とは関連していなかった(データ参照)。PH FDC治療に対する母親の臨床的必要性、及びPH FDC又は基礎となる母体の状態から母乳で育てられた子供への任意の潜在的な有害作用とともに、母乳育児の発達上及び健康上の利点を考慮すること。この考慮事項は、7か月のペルツズマブ及びトラスツズマブのウォッシュアウト期間の排出半減期も考慮する必要がある[臨床薬理学(12.3)参照]。
【0371】
データ
授乳中のカニクイザルでは、分娩前(妊娠120日目から)及び分娩後(分娩後28日目まで)に週2回、25mg/kg(静脈内トラスツズマブの2mg/kgの推奨週間ヒト用量の25倍)を投与した後、トラスツズマブは、母体血清濃度の約0.3%で母乳中に存在していた。トラスツズマブの血清レベルが検出可能な幼児サルは、出生日から生後1ヶ月まで、成長又は発達に有害作用を示さなかった。
【0372】
8.3 生殖能力のある雌及び雄
PH FDCは、妊娠中に投与すると、胚・胎児に害を及ぼす可能性がある。
【0373】
妊娠検査
PH FDCの開始前に、生殖能力のある女性の妊娠状態を確認すること。
【0374】
避妊
女性
治療中及びPH FDCの最終投与後7か月間は、生殖能力のある女性に効果的な避妊法を使用するように助言すること[特定の患者集団への投与(8.1)及び臨床薬理学(12.3)参照]。
【0375】
8.4 小児への投与
小児患者におけるPH FDCの安全性及び有効性は確立されていない。
【0376】
8.5 高齢者への投与
PH FDCで治療されたFeDeriCa研究の患者の総数(n=500)のうち、11%が65歳以上であり、1.6%が75歳以上であった。PH FDCの臨床研究には、65歳以上の患者が若い患者とは異なる反応を示すかどうかを判断するのに十分な数の患者が含まれていなかった。
【0377】
静脈内トラスツズマブの治験では、アジュバント療法又は転移性疾患の治療を受けている患者の両方で、若い患者と比較して高齢の患者で、心機能不全のリスクが増加した。高齢患者と若い患者との間で、安全性又は有効性に他の違いは観察されなかった。静脈内ペルツズマブをトラスツズマブと併用した治験では、食欲不振、貧血、体重減少、無力症、味覚異常、末梢性ニューロパチー、及び低マグネシウム血症のリスクは、65歳未満の患者と比較して65歳以上の患者で増加した。
【0378】
11.説明
PH FDCは、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びヒアルロニダーゼの組合せである。
【0379】
ペルツズマブは、ヒト上皮増殖因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とする組換えヒト化モノクローナル抗体である。ペルツズマブは、哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣)培養において、組換えDNA技術によって産生される。ペルツズマブは約148kDaの分子量を有している。
【0380】
トラスツズマブは、ヒト上皮増殖因子受容体2タンパク質であるHER2の細胞外ドメインに高い親和性で選択的に結合するヒト化IgG1カッパモノクローナル抗体である。トラスツズマブは、哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣)培養において、組換えDNA技術によって産生される。トラスツズマブは約148kDaの分子量を有している。
【0381】
ヒアルロニダーゼ(組換えヒト)は、皮下投与した場合に、同時投与された薬物の分散及び吸収を増加させるために用いられるエンドグリコシダーゼである。これは、ヒトヒアルロニダーゼ(PH20)の可溶性断片をコードするDNAプラスミドを含む、哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞によって産生される、グリコシル化された単鎖タンパク質である。ヒアルロニダーゼ(組換えヒト)は約61kDaの分子量を有している。
【0382】
PH FDC(ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びヒアルロニダーゼ-zzxf)注射は、皮下投与用の単回投与バイアルで供給される、無菌で、防腐剤を含まない、透明から乳白色、及び無色からわずかに茶色がかった溶液である。
【0383】
PH FDC注射は、次の2つの異なる構成で供給される:
・PH FDCは、1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のヒアルロニダーゼ、並びにα,α-トレハロース(397mg)、L-ヒスチジン(6.75mg)、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物(53.7mg)、L-メチオニン(22.4mg)、ポリソルベート20(6mg)、及びスクロース(685mg)を5.5のpHで含む、15mLの単回投与バイアルで供給される。
・PH FDCは、600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のヒアルロニダーゼ、並びにα,α-トレハロース(397mg)、L-ヒスチジン(4.4mg)、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物(36.1mg)、L-メチオニン(14.9mg)、ポリソルベート20(4mg)、及びスクロース(342mg)を5.5のpHで含む、10mLの単回投与バイアルで供給される。
【0384】
12 臨床薬理学
12.1 作用機序
ペルツズマブは、HER2の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とし、それによって、EGFR、HER3、及びHER4を含む他のHERファミリの成員とのHER2のリガンド依存性ヘテロ二量体化をブロックする。その結果、ペルツズマブは、2つの主要なシグナル伝達経路であるマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ及びホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)を介して、リガンドによって開始される細胞内シグナル伝達を阻害する。これらのシグナル伝達経路の阻害は、それぞれ細胞増殖の停止及びアポトーシスを引き起こしうる。
【0385】
トラスツズマブは、HER2タンパク質の細胞外ドメインのサブドメインIVに結合して、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞におけるリガンド非依存性のHER2媒介細胞増殖及びPI3Kシグナル伝達経路を阻害する。
【0386】
ペルツズマブ及びトラスツズマブの両方を媒介した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、HER2を過剰発現していないがん細胞と比較して、HER2を過剰発現しているがん細胞に選択的に作用することが示されている。
【0387】
ペルツズマブ単独ではヒト腫瘍細胞の増殖を阻害したが、ペルツズマブとトラスツズマブとの組合せは、HER2過剰発現異種移植モデルにおける抗腫瘍活性を増強した。
【0388】
ヒアルロナンは、皮下組織の細胞外マトリックスに見られる多糖類である。これは、天然に存在する酵素ヒアルロニダーゼによって解重合される。間質マトリックスの安定した構造成分とは異なり、ヒアルロナンは約0.5日の半減期を有する。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナンを解重合することにより、皮下組織の透過性を高める。投与された用量では、PH FDCのヒアルロニダーゼは一時的かつ局所的に作用する。
【0389】
ヒアルロニダーゼの効果は可逆的であり、皮下組織の透過性は24から48時間以内に回復する。
【0390】
ヒアルロニダーゼは、ゲッティンゲンのミニブタの皮下組織に施すと、体循環へのトラスツズマブ製品の吸収率を高めることが示されている。
【0391】
12.2 薬力学
心臓電気生理学
HER2陽性乳がん(NCT00567190)を患う20人の患者のサブグループに、840mgの初回投与量、その後3週間ごとに420mgの維持量でペルツズマブを静脈内投与した場合のQTc間隔に対する影響を評価した。Fridericia補正法に基づくプラセボからの平均QT間隔(すなわち、20ミリ秒を超える)の大きな変化は、治験において検出されなかった。治験デザインの制限のため、平均QTc間隔の小さい増加(すなわち、10ミリ秒未満)を除外することはできない。
【0392】
QTc間隔持続時間を含む心電図(ECG)評価項目に対するトラスツズマブの効果は、HER2陽性固形腫瘍を有する患者において評価された。トラスツズマブは、QTc間隔持続時間に対して臨床関連の効果は有しておらず、HER2陽性固形腫瘍を有する患者の血清トラスツズマブ濃度とQTcF間隔持続時間の変化との間に明らかな関係は存在しなかった。
【0393】
12.3 薬物動態
ペルツズマブ及びトラスツズマブの薬物動態(PK)は、PH FDCの皮下投与(1200mgのペルツズマブ/600mgのトラスツズマブの初回投与に続き、3週間ごとに600mgのペルツズマブ/600mgのトラスツズマブ)、及びペルツズマブとトラスツズマブの静脈内投与(840mgのペルツズマブ/8mg/kgのトラスツズマブの初回投与に続き、3週間ごとに420mgのペルツズマブ/6mg/kgのトラスツズマブ)の後のFeDeriCa研究によって特徴が明らかとなった。ペルツズマブ及びトラスツズマブの薬物動態パラメータを表11に示す。トラスツズマブは、少なくとも95%の患者において、7か月までに、<1mcg/mLの濃度に達すると推定されている。
【0394】
ペルツズマブのサイクル7のCトラフ(すなわち、サイクル8の投与前)は、PH FDC内のペルツズマブ(88.7mcg/mL)が静脈内ペルツズマブ(72.4mcg/mL)に対して非劣性であることを示し、幾何平均比は1.22であった(90%CI:1.14-1.31)。トラスツズマブのサイクル7のCトラフは、PH FDC内のトラスツズマブ(58.7mcg/mL)が静脈内トラスツズマブ(44.1mcg/mL)に対して非劣性であることを示し、幾何平均比は1.33であった(90%CI:1.24-1.43)。[臨床研究(14.2)参照]。
【0395】
集団PK分析では、PH FDCの皮下投与後、ペルツズマブの平均のサイクル7のC
max及びAUC
0-21日が、ペルツズマブの静脈内投与後の値よりも、それぞれ、34%低く、5%高いことが報告された。トラスツズマブの平均のサイクル7のC
max及びAUC
0-21日は、トラスツズマブの静脈内投与後の値よりも、それぞれ、31%低く、9%高かった。
【0396】
特定の集団
除脂肪体重及びベースライン血清アルブミンレベルは、ペルツズマブ集団PKモデルの有意な共変量として含まれていた。しかしながら、曝露の変化は臨床的に関連性があるとは見なされないため、体重又はベースラインアルブミンレベルに基づく用量調整は必要ではない。
【0397】
体重は、トラスツズマブのPKに対して統計的に有意な影響を示した。体重が<58kgの患者では、トラスツズマブの平均のサイクル7のAUC0-21日は、静脈内トラスツズマブ治療後よりもPH FDC後の方が約34%高かったのに対し、最高BW群(>77kg)では、サイクル7のAUC0-21日は、静脈内トラスツズマブ治療後よりもPH FDC後の方が24%低かった。しかしながら、曝露の変化は臨床的に関連性があるとは見なされないため、体重をベースとした用量調整は必要ではない。
【0398】
ペルツズマブ及びトラスツズマブの薬物動態には、年齢(25から80歳)、人種(アジア人及び非アジア人)、及び腎障害(Cockcroft-Gaultで決定してクレアチニンクリアランスが30mL/分以上)による臨床的に有意な差は観察されなかった。ペルツズマブ及びトラスツズマブの薬物動態に対する肝障害の影響は不明である。
【0399】
薬物相互作用研究
ヒトにおいてPH FDCを使用した正式な薬物相互作用研究は実施されていない。ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び臨床治験で用いられる併用薬の間で、臨床的に有意な相互作用は観察されていない。
【0400】
13. 非臨床毒性学
13.1 発癌性、突然変異誘発、受胎能障害
PH FDCは、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びヒアルロニダーゼを含む。
【0401】
ペルツズマブ
ペルツズマブの発癌又は突然変異誘発の可能性を評価する研究は実施されていない。ペルツズマブの効果を評価するための、動物における特定の受胎能試験は実施されていない。
【0402】
カニクイザルを用いた最長6か月間の反復投与毒性試験では、雌雄の生殖器官への有害作用は観察されなかった。
【0403】
トラスツズマブ
トラスツズマブの発癌可能性についてはテストされていない。
【0404】
トラスツズマブを標準的なAmes細菌及びヒト末梢血リンパ球の突然変異誘発性アッセイで、最大5000mcg/mLの濃度で試験した場合、突然変異誘発活性の証拠は観察されなかった。in vivoの小核アッセイでは、トラスツズマブを最大118mg/kgでボーラス静脈内投与した後、マウス骨髄細胞への染色体損傷の証拠は観察されなかった。
【0405】
メスのカニクイザルにおいて、静脈内トラスツズマブの2mg/kgの毎週推奨されるヒト用量の最大25倍の用量で受胎能試験が実施され、月経周期期間及び女性ホルモンレベルで測定して、受胎能障害の証拠は明らかにされていない。
【0406】
ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは体のほとんどの組織に見られる。ヒアルロニダーゼの発癌性又は突然変異誘発性を評価するための長期の動物実験は行われていない。さらに、皮下ヒアルロニダーゼ(組換えヒト)をカニクイザルに最大220,000U/kgの用量レベル(これは、負荷用量及び維持量に基づいて、それぞれ、ヒトの用量より>223倍及び>335倍高い)で39週間投与した場合、男性又は女性の生殖器系に対する毒性の証拠は、例えば、精液分析、ホルモンレベル、月経周期などの生存中のパラメータ、並びに肉眼的病理学、組織病理学、及び臓器重量データの定期的なモニタリングを通じて発見されなかった。
【0407】
14 臨床研究
14.1 乳がんのネオアジュバント治療及びアジュバント治療
化学療法との併用のためのPH FDCの有効性は、HER2陽性の早期乳がんの患者の治療において確立されている。この適応症に対するPH FDCの使用は、HER2過剰発現早期乳がん(NCT00545688、NCT00976989、NCT02132949、NCT01358877)を患う成人患者に化学療法と併用して投与された静脈内ペルツズマブ及び静脈内トラスツズマブを実施した、適切かつ十分に管理された研究の証拠によって、並びにFeDeriCaにおけるPH FDCと静脈内ペルツズマブ及び静脈内トラスツズマブとの間の同等の薬物動態及び安全性プロファイルを示す追加の薬物動態及び安全性データによって裏付けられている[有害反応(6.1)及び臨床薬理学(12.3)参照]。
【0408】
FeDeriCa
FeDeriCa研究(NCT03493854)は、手術可能又は局所進行性(炎症性を含む)のHER2陽性乳がんで、腫瘍サイズが>2cmであるか、又はリンパ節陽性の患者500人に実施された、非盲検多施設無作為試験であった。HER2の過剰発現は、免疫反応性細胞の>10%におけるIHC3+、又はFDA承認の検査を使用したISHによるHER2遺伝子の増幅(HER2遺伝子シグナルのセントロメア17シグナルに対する比率が≧2.0)として定義された。患者は、無作為化されて、8サイクルのネオアジュバント化学療法と、サイクル5-8の間に4サイクルのPH FDCの同時投与か、又は静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブの同時投与を受け、その後、手術を受けた。治験責任医師は、個々の患者に対して次の2つのネオアジュバント化学療法レジメンのうちの1つを選択した:
・ドキソルビシン(60mg/m2)及びシクロホスファミド(600mg/m2)を2週間ごとに4サイクル、続いてパクリタキセル(80mg/m2)を毎週12週間
・ドキソルビシン(60mg/m2)及びシクロホスファミド(600mg/m2)を3週間ごとに4サイクル、続いてドセタキセル(初回サイクルでは75mg/m2、その後のサイクルでは治験責任医師の裁量で100mg/m2)を3週間ごとに4サイクル
【0409】
手術後、患者は手術前の治療と同様にPH FDC又は静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブによる治療をさらに14サイクル継続し、18サイクルの抗HER2療法を完了した。患者はまた、治験責任医師の裁量により、アジュバント放射線療法及び内分泌療法も受けた。アジュバント期間には、治験責任医師の裁量により、皮下トラスツズマブを静脈内トラスツズマブに置き換えることが許可された。患者は、表12に従い、次のように3週間ごとにHER2を標的とした治療を受けた:
【0410】
FeDeriCaは、PH FDCペルツズマブから静脈内ペルツズマブへのサイクル7(すなわち、サイクル8の投与前)のペルツズマブ血清Cトラフ(主要評価項目)の非劣性を示すように設計された[臨床薬理学12.3参照]。二次評価項目には、サイクル7の血清トラスツズマブCトラフ、有効性(病理学的完全奏効率[pCR]、乳房及び腋窩リンパ節に浸潤性腫瘍細胞が存在しないことと定義)、及び安全性が含まれていた。年齢の中央値は51歳(範囲:25~81)であり、患者の大多数は白人であった(66%)。患者の大多数は、ホルモン受容体陽性疾患(61%)又はリンパ節陽性疾患(58%)を有していた。
【0411】
pCR率は、PH FDC群で59.7%(95%CI:53.3、65.8)、静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブ群で59.5%(95%CI:53.2、65.6)であった。
【0412】
14.2 転移性乳がん
ドセタキセルとの併用のためのPH FDCの有効性は、以前に抗HER2療法又は転移性疾患についての化学療法を受けていないHER2陽性転移性乳がんの患者の治療において確立されている。この適応症に対するPH FDCの使用は、HER2過剰発現転移性乳がん(NCT00567190)を患う成人患者に化学療法と併用して投与された静脈内ペルツズマブ及び静脈内トラスツズマブを実施した、適切かつ十分に管理された研究の証拠によって、並びにFeDeriCaにおけるPH FDCと静脈内ペルツズマブ及び静脈内トラスツズマブとの間の同等の薬物動態及び安全性プロファイルを示す追加の薬物動態及び安全性データによって裏付けられている[有害反応(6.1)、臨床薬理学(12.3)、及び臨床研究(14.2)参照]。
【0413】
14.3 患者経験価値
PHranceSCa研究(NCT03674112)は、アジュバント治療を受けているHER2陽性乳がんの患者160人に実施された、無作為化多施設非盲検クロスオーバー治験であった。すべての患者は、ペルツズマブ、トラスツズマブ、及び化学療法によるネオアジュバント治療を完了し、無作為化の前に手術を受けた。無作為化後、群Aの患者80人は、3サイクルの静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブ、続いて3サイクルのPH FDCを受け、及び群Bの患者80人は、3サイクルのPH FDC、続いて3サイクルの静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを受けた。すべての患者が、合計18サイクルのHER2を標的とした療法を受けた。サイクル6の後、患者160人のうち136人(85%)が、静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブよりもPH FDCの皮下投与を好むと報告し、その最も一般的な理由は、診療所での投与に必要な時間が短いことであった。サイクル6の後、患者160人のうち22人(14%)が、PH FDCよりも静脈内ペルツズマブ及びトラスツズマブを好むと報告し、その最も一般的な理由は、投与中により快適に感じられることであった。患者160人のうち2人(1%)は投与経路に好みがなかった。患者160人のすべて(100%)が好みに関するアンケートを完了した。
【0414】
16.供給方法/保管及び取り扱い
16.1 供給方法
PH FDC(ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びヒアルロニダーゼ-zzxf)の注射は、次の単回投与バイアル1つを含む各カートンとして供給される、皮下投与用の単回投与バイアル内に、無菌で、防腐剤を含まない、透明から乳白色、及び無色からわずかに茶色がかった溶液である:
・1200mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び30,000単位のヒアルロニダーゼ/15mL(80mg、40mg、及び2,000単位/mL)(NDC 50242-245-01)。
・600mgのペルツズマブ、600mgのトラスツズマブ、及び20,000単位のヒアルロニダーゼ/10mL(60mg、60mg、2,000単位/mL)(NDC 50242-260-01)。
【0415】
16.2 保管及び取り扱い
PH FDCバイアルは、光から保護するため、元のカートンのまま、2℃から8℃(36°Fから46°F)の冷蔵庫に保管すること。
【0416】
凍結しないこと。振盪しないこと。
【0417】
17.患者カウンセリング情報
心筋ミオパシー
・次のいずれかの場合は、医療専門家に直ちに連絡するよう患者に助言すること:息切れ、咳、足首/脚のむくみ、顔のむくみ、動悸、24時間で5ポンド以上の体重増加、眩暈、又は意識喪失の新たな発症又は悪化[警告及び注意事項(5.1)参照]。
【0418】
胚・胎児毒性
・妊娠中又は受胎前7か月以内でのPH FDCへの曝露が胎児に害を及ぼす可能性があることを、妊娠中の女性及び生殖能力のある女性に助言すること。妊娠が判明している又は妊娠の疑いがある場合は、医療提供者に連絡するように女性患者に助言すること[特定の患者集団への投与(8.1)参照]。
・妊娠中又は受胎前7か月以内にPH FDCに曝露される女性に、妊娠の転帰を監視する妊娠に関する医薬品安全性プログラムがあることを助言すること。これらの患者に、Genentechに妊娠を報告するよう奨励すること[特定の患者集団への投与(8.1)参照]。
・生殖能力のある女性に、治療中及びPH FDCの最終投与後7か月間は効果的な避妊法を使用するように助言すること[特定の患者集団への投与(8.3参照
【0419】
過敏症及び投与関連反応
・患者に、すぐに担当の医療提供者に連絡し、眩暈、吐き気、悪寒、発熱、嘔吐、下痢、じん麻疹、血管浮腫、呼吸障害、又は胸痛を含めた過敏症及び投与関連反応の症候を報告するように助言すること[警告及び注意事項(5.5)参照]。
【0420】
実施例3:非盲検無作為化クロスオーバーPHranceSCa試験の一次分析
PHranceSCaは、P+H IVに対する、PH FDC SCの非盲検無作為化クロスオーバー試験であった。プロトコールは、2018年9月18日にNCT03674112として投稿された。患者は、HER2陽性EBCを有しており、ネオアジュバントP IV+H IV+化学療法+手術を完了し、
図15に示されるように治療された。
【0421】
主要目的及び副次的目的:
主要目的:
- PH FDC SCに対する患者の選好性
【0422】
主な副次的目的:
- 患者の満足度
- 継続期間における患者の製剤選択
- 健康関連の生活の質、
- 時間/資源に関するHCPの認識、
- 安全性及び忍容性(SCからIV製剤への切り替え及びその逆についての安全性を含む)、
- 有効性
【0423】
階層化因子:
- NACTレジメン
- pCR対非pCR
- HRの状態
【0424】
患者の選好性
図16は、一次分析での患者の選好性を示している。一次分析では、シークエンシングに関係なく、85%の患者(95%CI:79-90)がPH FDC SCを好んだ。PPQのQ1は、「すべてを考慮して、どの投与方法を好みましたか?」であった。Cが好まれる主な理由は次のとおりである:
- 診療時間の短縮(42%)
- 投与中の快適性の向上(26%)
【0425】
一次分析での所見は中間分析と一致していた(O’Shaughnessy J, et al.ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020; abstract 800)。PPQの所見は、治療継続の選択と一致していた:87%のPH FDC SC対13%のP+H IV。
【0426】
安全性データ
図17は、PHranceSCaの一次分析での有害事象を報告している。一次分析でPH FDC SCに新しい安全性シグナルは観察されず、及びAEはP+H IV(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med 2017;377:122-131; Baselga J, et al. N Engl J Med 2012;366:109-119)、及びPH FDC SC(Tan AR, et al. SABCS 2019, Abstract PD4-07)の以前の研究と一致していた。両方の治療期間にわたって、PH FDC SCでのSAE及びグレード≧3のAEの発生率は低かった。臨床カットオフ日の試験中、グレード4又は5のAEは報告されていなかった。予想どおり、PH FDC SCではより多くの注射部位反応があった(すべてグレード1又は2)が、PH FDC SCでの局所注射部位反応に起因した中断はなかった。
【0427】
図18は、切り替え前後の一次分析でのAEを報告している。切り替え前後のAE率は類似しており(P+H IV→PH FDC SC:78%→73%;PH FDC SC→P+H IV:78%→64%)、新しい安全性シグナルはなかった。これらのデータは、実施例2のUSPIに含まれるように、P+H IVに続くPH FDC SCの承認された使用を裏付けている。
【0428】
実施例4:固定用量配合剤(FDC)の抗薬剤抗体(ADA)アッセイ
臨床的抗薬物抗体(ADA)戦略には、検証済みのアッセイを使用して、血清中のペルツズマブ及びトラスツズマブに対するADAと、FeDeriCaにおける患者の血漿試料中のrHuPH20に対するADAを検出することが含まれていた。
【0429】
ADAアッセイ戦略では、分析に段階的手法を使用した。検証済みアッセイのパネルを使用して試料を順次試験し、ヒトマトリックスでの抗体応答をスクリーニング、確認、および力価測定した。
【0430】
方法の各パネルは、次の方法で使用した:
a. 血清試料中のペルツズマブ及びトラスツズマブに対するADA、又は血漿試料中のrHuPH20に対するADAを検出するための抗体スクリーニングアッセイ。
b. 過剰なペルツズマブ、トラスツズマブ、又はrHuPH20との競合によるスクリーニング陽性結果の特異性を評価するための確認アッセイ。
c. 確認された陽性試料の抗体力価を決定するための滴定アッセイ。
【0431】
ペルツズマブ、トラスツズマブ、及びrHuPH20に対するADAの確認アッセイで陽性であった試料は、中和活性についてさらに分析される。
【0432】
ペルツズマブに対する抗体を検出するためのELISA法
ヒト血清中のペルツズマブに対するADAは、標識されたペルツズマブ分子との架橋抗体複合体の形成に基づいた、検証済みの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を使用して検出した。このアッセイでは、ビオチンにコンジュゲートしたペルツズマブとジゴキシン(DIG)にコンジュゲートしたペルツズマブの2つの結合試薬を使用して、ペルツズマブに対するADAを捕捉した。次いでペルツズマブに結合したADAを、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたマウス抗DIG抗体で検出した。発色にはペルオキシダーゼ基質(テトラメチルベンジジン)を使用した。
【0433】
スクリーニングでADA陽性と判定された試料に対する免疫応答の特異性は、ペルツズマブとの競合的結合によって確認した。ADA確認アッセイには、スクリーニングアッセイと同じブリッジングELISAを使用した。
【0434】
確認された陽性試料は、滴定分析を受けた。滴定アッセイ中、試料を必要最小限の希釈まで希釈し、続いて、希釈系列がカットポイント未満の少なくとも1回の希釈を有するように、分析前に十分な1/2段階希釈を行った。抗体力価の値は、評価項目希釈係数のlog 10として報告された。報告可能な力価の最小値は、1.30力価単位であった。
【0435】
FeDeriCaからの493のベースライン試料(すなわち、ペルツズマブの投薬を受けていない個人)からのデータを使用して、FeDeriCaのスクリーニングカットポイントを確立した。偽陰性結果の可能性を最小限に抑えるために、スクリーニングカットポイントは、未治療の陽性率が約5%になるように設定され、これは0.735であると決定された。FeDeriCaからの100のベースライン試料からのデータを使用して、FeDeriCaの確認カットポイントを確立した(これは未治療の陽性率が約1%になるように設定され、13.5%であると決定された)。陽性対照としてペルツズマブに対する抗イディオタイプMAbを使用して、FeDeriCaのスクリーニングアッセイ及び確認アッセイの相対感度は、それぞれ、3.59ng/mL及び0.598ng/mLであると決定された。
【0436】
【0437】
トラスツズマブに対する抗体を検出するためのELISA法
ヒト血清中のトラスツズマブに対するADAは、標識されたトラスツズマブ分子との架橋抗体複合体の形成に基づいた、検証済みのELISAを使用して検出した。このアッセイでは、ビオチンにコンジュゲートしたトラスツズマブとDIGにコンジュゲートしたトラスツズマブの2つのコンジュゲート試薬を使用して、トラスツズマブに対するADAを捕捉した。次いで、トラスツズマブに結合したADAを、HRPとコンジュゲートしたマウス抗DIG抗体で検出した。発色にはペルオキシダーゼ基質(テトラメチルベンジジン)を使用した。
【0438】
スクリーニングでADA陽性と判定された試料に対する免疫応答の特異性は、トラスツズマブとの競合的結合によって確認した。ADA確認アッセイには、スクリーニングアッセイと同じブリッジングELISAを使用した。
【0439】
確認されたADA陽性試料は、滴定分析を受けた。滴定アッセイ中、ADA陽性試料を必要最小限の希釈まで希釈し、続いて、希釈系列がカットポイント未満の少なくとも1回の希釈を有するように、分析前に十分な1/2段階希釈を行った。FeDeriCaで用いられるアッセイ法では、抗体力価の値は評価項目希釈係数のlog 10として報告された。報告可能な力価の最小値は、1.30力価単位であった。
【0440】
FeDeriCaで用いられるアッセイ法では、FeDeriCaからの100のベースライン試料(すなわち、トラスツズマブの投薬を受けていない個人)からのデータを使用して、スクリーニングカットポイントを確立した。偽陰性結果の可能性を最小限に抑えるために、スクリーニングカットポイントは、未治療の陽性率が約5%になるように設定され、これは0.995であると決定された。FeDeriCaからのベースライン試料の同じパネルからのデータを使用して、確認カットポイントを確立した(これは未治療の陽性率が約1%になるように設定され、31.2%であると決定された)。陽性対照としてトラスツズマブに対するウサギポリクローナルIgG抗体を使用して、FeDeriCaのスクリーニングアッセイ及び確認アッセイの相対感度は、それぞれ、14.6ng/mL及び8.06ng/mLであると決定された。検証パラメータを表15にまとめる。
【0441】
rHuPH20に対する抗体を検出するためのECLA法
ヒト血漿中のrHuPH20に対するADAは、Meso Scale Discoveryプラットフォーム技術を用いたECLイムノアッセイ法を使用して検出した。このアッセイでは、ルテニル化(スルホタグ付き)rHuPH20とビオチン化rHuPH20の2つのコンジュゲート試薬を使用して、rHuPH20に対するADAを捕捉した。抗rHuPH20結合抗体の検出は、抗体の二価特性に基づくものであった。抗rHuPH20抗体と標識されたrHuPH20との固定化複合体をトリプロピルアミンで検出し、試料中に存在する抗rHuPH20抗体の量に比例する化学発光シグナルを生成した。
【0442】
スクリーニングでADA陽性と判定された試料に対する免疫応答の特異性は、非標識のrHuPH20との競合的結合によって確認した。ADA確認アッセイには、スクリーニングアッセイと同じECLイムノアッセイを使用した。
【0443】
確認されたADA陽性試料は、滴定分析を受けた。確認された抗体応答の大きさは、プレート固有のカットポイント以上の希釈係数として定義される、評価項目力価をもたらす段階希釈によって決定した。報告可能な力価の最小値は、5であった。
【0444】
50の正常な個々のヒトK
3EDTA血漿試料のパネルからのデータを使用して、アッセイ決定閾値又はスクリーニングカットポイントを確立した。偽陰性結果の可能性を最小限に抑えるために、スクリーニングカットポイントは、未治療の陽性率が約5%になるように設定され、これは1.17であると決定され、確認カットポイント(rHuPH20との競合的結合を介して陽性のスクリーニング応答を確認するために用いられる)は、未治療の陽性率が約1%になるように設定され、これは32%であると決定された。陽性対照としてrHuPH20に対するウサギポリクローナルIgG抗体を使用して、スクリーニングアッセイ及び確認アッセイの相対感度は、それぞれ、0.697ng/mL及び1.21ng/mLであると決定された。検証パラメータを表16にまとめる。
【0445】
中和抗体(NAb)アッセイ
ELISAは、抗ペルツズマブ及び抗トラスツズマブNAbsの検出について検証され、ヒアルロニダーゼ活性アッセイは、抗rHuPH20 NAbを検出するために検証された。
【0446】
ペルツズマブNAbアッセイ
ペルツズマブNAbアッセイは、ELISAの前に酸解離処理による磁気ビーズ抽出を使用して、ヒト血清中のペルツズマブに対するNAbを検出するように設計された定性的アッセイである。過免疫BALB/cマウスからのペルツズマブに対するアフィニティー精製されたマウスmAbを陽性対照のソースとして使用した。NAb対照(正規化対照[NC]、低陽性対照[LPC]、及び高陽性対照[HPC])、並びに研究試料を2M酢酸中でインキュベートし、ペルツズマブから抗ペルツズマブ抗体を解離させた。解離した試料を、ビオチン化ペルツズマブを含む2MのTris-HCl溶液で中和し、室温でインキュベーションした。抗ペルツズマブ抗体は、ビオチン化ペルツズマブに結合することによって捕捉し、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ上に固定化した。次に、このビーズ複合体を磁石で分離し、洗浄した。次に、100mMグリシンHCl/150mM NaClを含む酸性溶液を用いて、抗体をビーズ複合体から放出させた。次に、酸性試料及びNAb対照溶液を100mMのTrizma Baseで中和し、20.0ng/mLのペルツズマブとともに一晩インキュベートした(試料中の最終薬物濃度は10.0ng/mLであった)。一晩のインキュベーションの後、中和されたNAb対照及び研究試料を、プレコートされ、プレブロックされたELISAプレートに移し、インキュベートした。インキュベーション中に、試料中のペルツズマブは、ペルツズマブ結合のみに特異的な固定化突然変異体HER2 ECDに結合した。試料中のNAbの存在は、ペルツズマブの突然変異体HER2 ECDへの結合をブロックし、その結果、吸光度の読み取り値が減少する。結合していない物質は、洗浄ステップで除去した。次いで、結晶化可能な抗ヒトIgG断片(Fc;Fcγ-パン:10061[R10Z8E9])にコンジュゲートしたホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)をプレートに添加し、インキュベートした。最後に、テトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ(TMB)基質を加えて発色させた。1Mリン酸を添加して、基質の発色を停止した。検出吸光度については450nm、基準吸光度については630nmで、プレートをプレートリーダーで読み取った。
図19参照。
【0447】
このアッセイに必要な最小希釈(MRD)は1/2であると決定され、すべての研究試料はアッセイMRDで分析された。カットポイント以下の生の光学濃度(OD)応答(平均NC×確立されたカットポイント係数、0.903)を有する試料はNAb陽性と見なされ、カットポイントを上回る生のOD応答を有する試料は陰性と見なされた。試料中のペルツズマブの存在は、アッセイにおけるNAbsの検出に干渉する可能性があり、このアッセイでは、最大50μg/mLのペルツズマブの存在下で、500ng/mLのサロゲート陽性ソース物質を検出することができると決定された。
【0448】
トラスツズマブNAbアッセイ
トラスツズマブNAbアッセイは、ELISAの前に酸解離処理による磁気ビーズ抽出を使用して、ヒト血清中のトラスツズマブに対するNAbを検出するように設計された定性的アッセイである。過免疫ニュージーランド白ウサギ由来のトラスツズマブに対するアフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体を陽性対照のソースとして使用した。NAb対照(NC、LPC、及びHPC)及び研究試料を2M酢酸でインキュベートし、トラスツズマブから抗トラスツズマブ抗体を解離させた。解離した試料を、ビオチン化トラスツズマブを含む2MのTris-HCl溶液で中和し、室温でインキュベーションした。抗トラスツズマブ抗体は、ビオチン化トラスツズマブに結合することによって捕捉し、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ上に固定化した。次に、このビーズ複合体を磁石で分離し、洗浄した。次に、100mMグリシンHCl/150mM NaClを含む酸性溶液を用いて、抗体をビーズ複合体から放出させた。次に、酸性試料及びNAb対照溶液を100mMのTrizma Baseで中和し、24.0ng/mLのトラスツズマブとともに一晩インキュベートした(試料中の最終薬物濃度は12.0ng/mLであった)。一晩のインキュベーションの後、中和されたNAb対照及び研究試料を、プレコートされ、プレブロックされたELISAプレートに移し、インキュベートした。インキュベーション中に、試料中のトラスツズマブは、トラスツズマブ結合のみに特異的な固定化突然変異体HER2 ECDに結合した。試料中のNAbの存在は、トラスツズマブの突然変異体HER2 ECDへの結合をブロックし、その結果、吸光度の読み取り値が減少する。結合していない物質は、洗浄ステップで除去した。次いで、抗ヒトIgG Fc(Fcγ-パン:10061[R10Z8E9])にコンジュゲートしたHRPをプレートに添加し、インキュベートした。最後に、TMB基質を加えて発色させた。1Mリン酸を添加して、基質の発色を停止した。検出吸光度については450nm、基準吸光度については630nmで、プレートをプレートリーダーで読み取った。
【0449】
このアッセイのMRDは1/2であると決定され、すべての研究試料はアッセイMRDで分析された。カットポイント以下の生のOD応答(平均NC×確立されたカットポイント係数、0.905)を有する試料はNAb陽性と見なされ、カットポイントを上回る生のOD応答を有する試料は陰性と見なされた。試料中のトラスツズマブの存在は、アッセイにおけるNAbsの検出に干渉する可能性があり、このアッセイでは、最大100μg/mLのトラスツズマブの存在下で、500ng/mLのサロゲート陽性ソース物質を検出することができると決定された。
【0450】
rHuPH20 NAbアッセイ
in vitroでのrHuPH20活性を中和可能なヒトK3EDTA血漿中に存在する抗体を検出する方法は、評価項目アッセイである。このアッセイは、プラスチック製のマルチウェルマイクロタイタープレートに非共有結合した大きい分子量(約1.2MDa)のビオチン化ヒアルロナン基質の加水分解の減少を測定することによって、ヒト血漿試料中に存在する抗体がrHuPH20のin vitroヒアルロニダーゼ機能を中和する能力を測定する。中和性のポリクローナルウサギ抗rHuPH20 IgGを、3つの品質管理レベルでアッセイ陽性対照として使用した;プールされたヒト血漿は、陰性対照として機能したた。試験血漿並びに陽性及び陰性対照をアッセイMRD(1/100)に希釈し、規定濃度のrHuPH20でプレインキュベートして、抗rHuPH20 NAbを結合させた。プレインキュベーション期間の後、ビオチン化ヒアルロナンでコーティングされたマイクロタイタープレートの個々のウェルに試料を移した。一定時間の酵素反応の後、未結合の複合体はすべて洗い流され、残りの結合したビオチン化ヒアルロナンは、ストレプトアビジンにコンジュゲートしたHRPを添加し、その後にTMB基質を添加することによって検出された。各ウェルの発色は、rHuPH20の活性に反比例し、マイクロプレート分光光度計を使用して測定され、450nmでの光学濃度として報告された。
【0451】
0.1%の偽陽性エラー率(FPER)を有するNAbカットポイント係数は、4.275であると決定された。その後、低濃度の陽性対照試料を使用して、1.0%のFPERを確立した。SCの投与後、rHuPH20は循環で検出されず、したがって、薬物干渉の可能性はない。
【0452】
ADA/NABの結果
治療下で発現する抗体ADAの発生率は、P+H IV治療群とPH FDC SC治療群の両方で同程度であった。重要なADA収集時点を
図20に示す。最初の時点はサイクル6の投与前であり、2番目の時点はサイクル9の投与前であった。分析された追加のADA収集時点は、サイクル13の投与前(アジュバントフェーズ中)及び3か月のフォローアップ中であった(特定のフェーズなし)(抗ペルツズマブ、抗トラスツズマブ、及び抗rHuPH20について、それぞれ、231人、232人、及び225人の患者から、1回のADAはサイクル13の投与前の時点で試験し、4回のADAは3か月のフォローアップの時点で試験した)。P+H IV群では、ペルツズマブ及びトラスツズマブによる治療下で発現した抗体ADAの発生率は、それぞれ、3.0%(7/237の患者)及び0.4%(1/237の患者)であった。PH FDC SC群では、ペルツズマブ及びトラスツズマブによる治療下で発現した抗体ADA、並びに抗rHuPH20抗体の発生率は、それぞれ、4.8%(11/231の患者)、0.9%(2/232の患者)、及び0.9%(2/225の患者)であった。評価可能な患者数の不一致は、試料が収集されなかった又は誤って収集された、及び/又は他の試料運用ロジスティクスを含む、試料収集の問題によるものであった。ペルツズマブに対するADAの検査で陽性の患者のうち、P+H IV群の1人の患者及びPH FDC SC群の1人の患者において、中和抗ペルツズマブ抗体が検出された。トラスツズマブに対するADAの検査で陽性の患者のうち、PH FDC SC群で治療された1人の患者において、中和抗トラスツズマブ抗体が検出された。
【0453】
探索的解析では、ペルツズマブ及びトラスツズマブによる治療下で発現した抗体ADAの発生、及び/又は抗rHuPH20抗体(中和抗体を含む)は、PK、有効性(すなわち、tpCR)、又は安全性(すなわち、IRR又はARR)に関して臨床的影響を及ぼさないようであることが示された。しかしながら、ADA陽性患者の数が少ないことに起因して、堅牢な評価にはデータが不十分である。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】