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特表2023-532500防眩フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】防眩フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20230721BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20230721BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B1/111
G02B5/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580507
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2021009325
(87)【国際公開番号】W WO2022019610
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0089832
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0089833
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091827
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2K009
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
2H149AA02
2H149AA17
2H149AA18
2H149AB15
2H149BA02
2H149FC06
2H149FD12
2H149FD13
2H149FD22
2H149FD47
2K009AA12
2K009BB14
2K009CC09
2K009CC24
(57)【要約】
本発明は、アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記コート層を厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出したグラフにおいて、特定のバンド面積比率の変化率を有する防眩フィルム、それを含む偏光板およびディスプレイ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、
前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、
前記グラフにおいて、下記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmである、防眩フィルム:
[式1]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式1中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【請求項2】
アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、
前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、
前記グラフにおいて、下記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである、防眩フィルム:
[式2]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式2中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【請求項3】
前記コート層は親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、有機粒子および無機粒子を含む、請求項1または2に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記コート層は、
前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の70重量%以上を含む中間層;および
前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の30重量%未満、前記多官能アクリレート系オリゴマー、前記有機粒子および前記無機粒子を含む防眩層;を含む、請求項3に記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記コート層の総量に対して前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーの含有量は20~70重量%である、請求項3または4に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記コート層に含まれた前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、および前記多官能アクリレート系オリゴマーの重量比は3:7~5:5である、請求項3~5のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
前記中間層は前記アクリル系基材と物理的に結合された、請求項4に記載の防眩フィルム。
【請求項8】
前記中間層に含まれた前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは前記アクリル系基材と物理的に結合された、請求項4または7に記載の防眩フィルム。
【請求項9】
前記中間層は、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーと物理的に結合された前記アクリル系基材の一部を含む、請求項4、7、または8に記載の防眩フィルム。
【請求項10】
前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートおよびN-ビニルピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも一つである、請求項3~9のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項11】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量が10,000~30,000である、請求項3~10のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項12】
前記中間層と防眩層は、厚さ比が7:3~3:7である、請求項4、7、8、または9に記載の防眩フィルム。
【請求項13】
前記コート層は厚さが1~10μmである、請求項4、7、8、9、または12に記載の防眩フィルム。
【請求項14】
前記防眩層は一面に凹凸が形成される、請求項4、7、8、9、12、または13に記載の防眩フィルム。
【請求項15】
前記防眩フィルムは、全体ヘイズが0.5~10%であり、内部ヘイズが0.3~7%である、請求項1~14のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の防眩フィルムを含む、偏光板。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の防眩フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月20日付の韓国特許出願第10-2020-0089832号、2020年7月20日付の韓国特許出願第10-2020-0089833号および2020年7月23日付の韓国特許出願第10-2020-0091827号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、防眩フィルム、それを含む偏光板およびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
平板ディスプレイ技術の大面積化、高解像度への発展につれて適用製品もTV、モニタ、モバイルなど家庭用および事務室用から屋外広告板、電光板など大面積ディスプレイに発展している。LCDやPDP、OLED、背面投影(Rear-projection)TVなどの平板ディスプレイ(FPD;Flat Panel Display)は、自然光などの外部光に露出する場合、表面反射光によって利用者の目に疲労感を与えたり頭痛を誘発したりすることがあり、ディスプレイの内部で作られるイメージが鮮明な像として認識されない問題を抱えている。
【0004】
このような短所を解決するためにディスプレイ表面に凹凸を形成して外部の光を表面で散乱させるか、またはコート層を形成する樹脂と粒子の間の屈折率を用いて内部散乱を誘導するための防眩フィルム(Anti-Glare Film)を適用する。従来の防眩フィルムは主にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを基材フィルムとして使用したが、このようなトリアセチルセルロースフィルムは透湿度が低い短所がある。
【0005】
最近透湿度が低いトリアセチルセルロースフィルムに代えるためにアクリルフィルムを基材フィルムとして使用しているが、アクリルフィルムの機械的物性を向上させるための延伸工程を経ることによりアクリルフィルムとアクリルフィルム上に形成されるコート層間の付着性または接着性が顕著に低下する問題がある。
【0006】
これを解決するためにアクリルフィルムにプライマー層を先に形成させた後コート層を形成することができるが、プライマー層を形成するための工程が追加されてコストが上昇し、すべての基材フィルムごとに適用可能な汎用プライマーの開発が難しい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基材フィルムおよびコート層の間の向上した付着力と共に、低いヘイズ、高い光透過度および優れた防眩特性などの優れた光学特性を示しながらも、優れた耐スクラッチ性および高硬度などの機械的物性もまた、優れた防眩フィルムを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記防眩フィルムを含む偏光板を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記防眩フィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、前記グラフにおいて、下記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmである防眩フィルムが提供される。
[式1]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式1中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0011】
また、本明細書では、アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、前記グラフにおいて、下記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである防眩フィルムが提供される。
[式2]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式2中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0012】
また、本明細書では、前記防眩フィルムを含む偏光板が提供される。
【0013】
また、本明細書では、前記防眩フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による防眩フィルム、それを含む偏光板およびディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書で、(メタ)アクリレート[(Meth)acrylate]は、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(Methacrylate)を両方とも含む意味である。
【0016】
本明細書で、光重合性官能基は光が照射されると、例えば可視光線または紫外線が照射されると重合反応を起こす官能基を通称する。
【0017】
また、本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給して、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0018】
本明細書において、粒子の粒径はSEM(scanning electron microscope)イメージ、TEM(transmission electron microscope)イメージまたは粒度分析器(Malvern、日本)で測定することができる。具体的には、粒子の粒径は粒度分析器を用いて、コロイドナノ溶液相の動的光散乱によって2次粒度を測定したものであり得る。
【0019】
発明の一実施形態によれば、アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、前記グラフにおいて、下記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmである防眩フィルムが提供され得る。
[式1]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式1中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0020】
本発明者らはアクリル系基材、および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μm、0.002~0.032/μm、0.003~0.031/μm、0.004~0.031/μm、0.005~0.031/μmまたは0.006~0.031/μmである防眩フィルムの場合、アクリル系基材とコート層の間の付着力に優れ、また、低いヘイズ、高い光透過度および高い防眩特性などの優れた光学特性を示しながらも、優れた耐スクラッチ性および高硬度などの優れた機械的物性を示すことを確認して本発明を完成した。
【0021】
前記ラマン分光分析は前記コート層の一面、例えば、前記アクリル系基材と対向するコート層の一面を基準として、コート層の厚さ方向に測定する。この際、測定間隔は0.3~5μm、0.5~2μm、または1μmであり得る。
【0022】
例えば、測定間隔が1μmである場合、前記コート層の一面が基準(0μm)となり、先にラマン分光分析が行われ、二番目に前記コート層の一面に対して厚さ方向に1μmの位置でラマン分光分析が行われ、3番目に前記コート層の一面に対して厚さ方向に2μmの位置でラマン分光分析が行われる。その後、前記ラマン分光分析は、前記コート層が前記アクリル系基材と接する他面まで、コート層の厚さ方向の1μm間隔で順次行われる。または、前記アクリル系基材に対してもラマン分光分析が行われ、例えば、前記アクリル系基材の一面にコート層が形成される場合、前記コート層と対向する前記アクリル系基材の一面までラマン分光分析が行われる。
【0023】
前記ラマン分光分析によって導き出されたグラフにおいて、X軸は、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向への距離であり、X値が0μmである場合は前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面(表面)を意味する。また、前記グラフでは測定間隔によって結果値が示され、例えばラマン分光分析の測定間隔が1μmである場合、前記グラフではX軸1μm間隔で結果値が示される。
【0024】
また、前記グラフにおいて、Y軸は、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積の比率である。
【0025】
この時、前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積は、前記コート層全体に含まれた炭素-酸素二重結合の吸収ピークを意味し、前記炭素-酸素二重結合はコート層に含まれた親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーと多官能アクリレート系オリゴマーに含まれたアクリレート基に含まれた炭素-酸素二重結合であり得る。
【0026】
前記ラマンピーク1755cm-1でのバンド面積は、前記コート層に含まれた残留反応物中の硬化に参加していない炭素-酸素二重結合の伸縮振動(stretching)モードの吸収ピークを意味し、前記ピークのバンド面積が大きいほどラマン分光分析された該当領域に未硬化アクリレート基が多く分布することを意味する。また、コート層内にアクリレート基が多く分布する領域で未硬化アクリレート基も相対的に多く分布し得る。
【0027】
前記一実施形態による防眩フィルムに含まれたコート層は、バインダ成分として親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーと多官能アクリレート系オリゴマーを含み、これらは乾燥過程でバインダの相分離が発生してコート層内に中間層および防眩層が形成される。前記中間層は、前記防眩層とアクリル系基材の間に形成され、アクリル系基材、中間層および防眩層が順次積層される。
【0028】
また、前記ラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフにおいて、Y軸は、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積の比率であり、防眩層の場合、防眩層内で分析された前記バンド面積比率の変化程度が大きくない。また、前記防眩層は、前記中間層に比べて未硬化アクリレートを多く含むことにより、前記防眩層は、前記中間層に比べて相対的にバンド面積の比率が大きく示される。
【0029】
なお、前記中間層は中間層の内部で前記未硬化アクリレート基の含有量分布の勾配(gradient)が示され、防眩層と中間層の界面で最も高い未硬化アクリレート基の含有量が示されることに対して、アクリル系基材に近くなるほど未硬化アクリレート基の含有量が少なくなる。そのため、前記中間層の場合、前記防眩層と中間層の界面で最も高いバンド面積の比率を示し、アクリル系基材に近くなるほどバンド面積の比率は徐々に減って、前記中間層とアクリル系基材の界面で最も低いバンド面積の比率を示す。
【0030】
前記式1は、このような中間層内で前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1755cm-1でのバンド面積比率の変化量を示したものであり、前記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmである場合、前記コート層内に特定厚さの中間層が形成されたことを確認することができる。一方、前記式1による変化率が前記範囲を超える場合、コート層内に中間層が形成されず、前記範囲未満の場合、中間層が過度に厚く形成されたものであり得る。
【0031】
すなわち、前記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μm、0.002~0.032/μm、0.003~0.031/μm、0.004~0.031/μm、0.005~0.031/μmまたは0.006~0.031/μmであり得る。前記バンド面積比率の変化率が過度に小さいと後述する中間層が過度に厚く形成されて相対的に防眩層の厚さが過度に薄くなり、耐スクラッチ性および鉛筆硬度などの機械的特性が低下する問題があり、前記バンド面積比率の変化率が過度に大きいと後述する中間層が形成されず、アクリル系基材とコート層の間の付着性が低い問題がある。
【0032】
前記式1によるバンド面積比率の変化率はコート層の組成、例えば、コート層に含まれたモノマー、多官能アクリレート系オリゴマーなどのバインダ組成、バインダに分散した粒子の含有量または粒子の直径、またはコート層の乾燥条件などに起因するものであり得る。
【0033】
発明の他の実施形態によれば、アクリル系基材および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記コート層に対して、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向にラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフは、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率をY軸とし、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面からの厚さ方向への距離をX軸とし、前記グラフにおいて、下記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである防眩フィルムが提供され得る。
[式2]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式2中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0034】
前記アクリル系基材、および前記アクリル系基材の少なくとも一面に位置するコート層を含み、前記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~
【0035】
0.050/μm、0.002~0.04/μm、0.003~0.03/μm、0.004~0.028/μm、0.005~0.026/μmまたは0.006~0.025/μmである防眩フィルムの場合、アクリル系基材とコート層の間の付着力に優れ、また、低いヘイズ、高い光透過度および高い防眩特性などの優れた光学特性を示しながらも、優れた耐スクラッチ性および高硬度などの優れた機械的物性を示すことができる。
【0036】
また、上記式2によるラマン分光分析は、上述した上記式1のバンド面積比率の変化率を測定する方法および条件と同様の方法で分析される。
【0037】
前記ラマン分光分析によって導き出されたグラフにおいて、X軸は、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面から厚さ方向への距離であり、X値が0μmである場合は前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面(表面)を意味する。また、前記グラフでは測定間隔によって結果値が示され、例えばラマン分光分析の測定間隔が1μmである場合、前記グラフではX軸1μm間隔で結果値が示される。
【0038】
また、前記グラフにおいて、Y軸は、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率である。
【0039】
この時、前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積は、前記コート層全体に含まれた炭素-酸素二重結合の吸収ピークを意味し、前記炭素-酸素二重結合はコート層に含まれた親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーと多官能アクリレート系オリゴマーに含まれたアクリレート基に含まれた炭素-酸素二重結合であり得る。
【0040】
この時、前記ラマンピーク1632cm-1でのバンド面積は、前記コート層に含まれた残留反応物中の硬化に参加していない炭素-酸素二重結合の伸縮振動(stretching)モードの吸収ピークを意味し、前記ピークのバンド面積が大きいほどラマン分光分析された該当領域に未硬化アクリレート基が多く分布することを意味する。
【0041】
また、前記ラマン分光分析を行った結果から導き出されたグラフにおいて、Y軸は、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率であり、防眩層の場合、防眩層内で分析された前記バンド面積比率の変化程度が大きくない。また、前記防眩層は、前記中間層に比べて未硬化アクリレートを多く含むことにより、前記防眩層は、前記中間層に比べて相対的にバンド面積の比率が大きく示される。
【0042】
なお、前記中間層は中間層の内部で前記未硬化アクリレート基の含有量分布の勾配(gradient)が示され、防眩層と中間層の界面で最も高い未硬化アクリレート基の含有量が示されることに対して、アクリル系基材に近くなるほど未硬化アクリレート基の含有量が少なくなる。そのため、前記中間層の場合、前記防眩層と中間層の界面で最も高いバンド面積の比率を示し、アクリル系基材に近くなるほどバンド面積の比率は徐々に減って、前記中間層とアクリル系基材の界面で最も低いバンド面積の比率を示す。
【0043】
前記式2は、このような中間層内で前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積比率の変化量を示したものであり、前記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである場合、前記コート層内に特定厚さの中間層が形成されたことを確認することができる。一方、前記式2による変化率が前記範囲を超える場合、コート層内に中間層が形成されず、前記範囲未満の場合、中間層が過度に厚く形成されたものであり得る。
【0044】
前記他の実施形態による防眩フィルムは、前記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μm、0.002~0.04/μm、0.003~0.03/μm、0.004~0.028/μm、0.005~0.026/μmまたは0.006~0.025/μmであり得る。前記バンド面積比率の変化率が過度に小さいと後述する中間層が過度に厚く形成されて相対的に防眩層の厚さが過度に薄くなり、耐スクラッチ性および鉛筆硬度などの機械的特性が低下する問題があり、前記バンド面積比率の変化率が過度に大きいと後述する中間層が形成されず、アクリル系基材とコート層の間の付着性が低い問題がある。
【0045】
前記式2によるバンド面積比率の変化率はコート層の組成、例えば、コート層に含まれたモノマー、多官能アクリレート系オリゴマーなどのバインダ組成、バインダに分散した粒子の含有量または粒子の直径、またはコート層の乾燥条件などに起因するものであり得る。
【0046】
図1は、乾燥前後の本発明の一実施形態による防眩フィルムの断面を模式的に示す図である。図1を参照すると、乾燥前の前記防眩フィルムは、アクリル系基材10および前記アクリル系基材上に形成されたコート層20を含み、前記コート層は親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100、多官能アクリレート系オリゴマー200および粒子300が含まれて混在されている。なお、前記粒子は有機粒子および/または無機粒子が含まれ得る。
【0047】
このような乾燥前の防眩フィルムに対して乾燥段階を行う場合、前記コート層20に含まれたバインダ成分(親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100、および多官能アクリレート系オリゴマー200)の相分離が発生し、中間層30および防眩層40が形成される。前記中間層は前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の70重量%以上を含むことができ、前記防眩層は前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の30重量%未満、前記多官能アクリレート系オリゴマー、前記有機粒子および前記無機粒子を含むことができる。
【0048】
前記乾燥段階を行う場合、バインダ成分中の前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーの大部分、例えば総量に対して概ね70重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上は前記コート層とアクリル系基材の界面に偏在する。また、前記界面に偏在した親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーが硬化または架橋して前記中間層が形成される。また、前記中間層に含まれた前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは前記アクリル系基材10と物理的に結合される。
【0049】
したがって、前記中間層30は前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100総量中の70重量%以上を含み得、前記中間層は前記アクリル系基材10と物理的に結合されている。例えば、前記中間層と前記アクリル系基材の物理的な結合は、前記中間層に含まれた前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基が前記アクリル系基材と物理的に結合されることによってなすことができる。
【0050】
また、前記中間層30は前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100総量中の70重量%以上を含み、かつ前記コート層に含まれた多官能アクリレート系オリゴマーを一部含むか、全く含まなくてもよい。例えば、前記中間層には前記コート層に含まれた多官能アクリレート系オリゴマー総量中の10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.01重量%以下で含むことができる。また、前記中間層に前記多官能アクリレート系オリゴマーが含まれず、前記防眩層に前記多官能アクリレート系オリゴマー全体が含まれ得、このような場合、防眩層の架橋密度が高くなり、耐スクラッチ性、鉛筆硬度など機械的物性が向上することができる。
【0051】
また、前記中間層30は前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100と物理的に結合された前記アクリル系基材10の一部を含むことができる。例えば、前記中間層は前記アクリル系基材を、前記アクリル系基材の全体厚さに対して5%以下、3%以下、または1%以下で含むことができる。
【0052】
また、前記中間層30上には、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー100総量中の30重量%以下、20重量%以下、または10重量%以下、前記多官能アクリレート系オリゴマー200、前記有機粒子および前記無機粒子300を含む防眩層40が形成される。
【0053】
上述したように、前記中間層30は前記アクリル系基材10と物理的に結合されている。また、前記コート層20に含まれたバインダ成分の相分離により前記中間層と防眩層40がそれぞれ形成されることで、前記中間層と防眩層は互いに架橋結合がなされた状態で形成される。そのため、前記中間層を含む前記一実施形態による防眩フィルムは、前記アクリル系基材と防眩層の付着性が大きく向上することができる。なお、前記中間層の存在の有無はラマン分光分析法(Raman spectroscopy)を用いて確認することができ、上述したグラフにおいて、前記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmであり、前記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである場合、中間層が存在する。
【0054】
前記中間層30と防眩層40は、厚さ比が7:3~3:7、6.5:3.5~3.5:6.5、または6.2:3.8~4:6であり得る。前記中間層に比べて防眩層の厚さが過度に薄いと硬度および耐スクラッチ性が低下する問題があり、前記中間層に比べて防眩層の厚さが過度に厚いと基材とコート層の間の物理的な結合が低くなり、付着性が低下する問題がある。
【0055】
前記中間層30と防眩層40を含むコート層20の厚さは1~10μm、1.5~9μmまたは2~8μmであり得る。前記コート層の厚さが1μm未満であれば所望の硬さ(硬度)を得ることが困難であり、10μmを超えるとコート層形成時に樹脂を硬化させる過程でカール(curl)が発生し得る。
【0056】
また、前記中間層30は、厚さが300nm~7μm、1μm~6μm、2μm~5μm、または2.5μm~4μmであり得る。なお、前記防眩層40は、厚さが300nm~7μm、1μm~6μm、2μm~5μm、または2.5μm~4μmであり得る。
【0057】
上述したように、前記中間層および防眩層を含むコート層は、親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、有機粒子および無機粒子を含むことができる。
【0058】
前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、および前記多官能アクリレート系オリゴマーの重量比は3:7~5:5、3.5:6.5~5:5、または4:6~5:5であり得る。前記重量比が3:7未満であるとコート層とアクリル系基材の間の付着が低下する問題が発生し得、前記重量比が5:5を超えると硬度と耐スクラッチ性が低下する問題が発生し得る。
【0059】
前記コート層は、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーを含むことができる。上述したように、前記コート層は中間層および防眩層を含み、前記中間層には親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の70重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上が含まれ得、前記防眩層には前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の30重量%未満、20重量%以下、または10重量%以下が含まれ得る。
【0060】
例えば、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは、親水性官能基を1個以上、2個以上、または3個以上含み、1個の光硬化性官能基を含み得、前記アクリル系基材と物理的な結合が可能な化合物である。
【0061】
前記親水性官能基の具体的な種類はこれらに限定されるものではないが、ヒドロキシ基、アルコキシ基、テトラヒドロフルフリル基およびピロリドンを含む群より選ばれた一つ以上であり得る。
【0062】
前記光硬化性官能基の具体的な種類はこれらに限定されるものではないが、ビニル基および(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた一つ以上であり得る。
【0063】
前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーの具体的な種類はこれらに限定されるものではないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートおよびN-ビニルピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも一つであり得る。
【0064】
このような親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは、前記コート層(固形分)100重量%に対して20~70重量%、30~60重量%、または35~55重量%で含まれ得る。前記コート層に対する前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーの含有量が過度に少ない場合、前記コート層とアクリル系基材の間の付着性が低下する問題があり、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーの含有量が過度に多い場合、硬度と耐スクラッチ性が低下する問題がある。
【0065】
前記コート層は多官能アクリレート系オリゴマーが含まれ得る。例えば、前記防眩層に前記多官能アクリレート系オリゴマーが含まれ得る。
【0066】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量が10,000~30,000、11,000~27,000、または1,3000~25,000であり得る。前記多官能アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量が過度に小さいとバインダ成分の相分離がよく起きず、耐スクラッチ性と硬度が低下する問題があり、前記重量平均分子量が過度に大きいと中間層とアクリル系基材の間の結合力および/または中間層と防眩層の間の結合力が弱くなり、内部剥離(Cohesive Failure)が起きる問題がある。
【0067】
前記多官能アクリレート系オリゴマーの具体的な種類はこれらに限定するものではないが、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群より選ばれる1種以上を含むことができる。
【0068】
このような多官能アクリレート系オリゴマーは、前記コート層100重量%に対して20~80重量%、30~70重量%、35~60重量%であり得る。前記コート層に対する前記多官能アクリレート系オリゴマーの含有量が過度に少ない場合、硬度および耐スクラッチ性が低下する問題があり、前記多官能アクリレート系オリゴマーの含有量が過度に多い場合は前記コート層とアクリル系基材の間の付着性が低下する問題がある。
【0069】
前記コート層は有機粒子および無機粒子が含まれ得る。例えば、前記防眩層に前記有機粒子および無機粒子が含まれ得る。前記防眩層に前記有機粒子および無機粒子が含まれることによって、前記防眩層の一面に凹凸形状が形成される。例えば、前記中間層と接する面と対向する一面に前記凹凸形状が形成される。
【0070】
前記防眩層に含まれる有機粒子は、直径が1~10μm、1.2~4μm、1.5~5μmであり得る。前記有機粒子の直径が過度に小さいと防眩性が低下する問題があり、前記有機粒子の直径が過度に大きいと凹凸が過度に大きく形成されてスパークリング(Sparkling)などが発生し得る問題がある。
【0071】
前記有機粒子は500~600nmの波長を基準として1.480~1.620、1.490~1.610、または1.500~1.600の屈折率を有する。前記防眩層にこのような高い屈折率を有する有機粒子を含むことによって、優れた防眩特性を示しながらも、スパークリング不良、ランプの結像と光の広がりを防止することができる。
【0072】
前記有機粒子の具体的な種類はこれらに限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート-co-スチレン、ポリメチルアクリレート-co-スチレン、ポリメチルメタクリレート-co-スチレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン-co-スチレン、ポリジビニルベンゼン-co-アクリレート、ポリジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌレートポリマーより選択された一つの単一物またはこれらの2以上のコポリマー(copolymer)であるものを使用することができる。
【0073】
このような有機粒子は、前記コート層100重量%に対して0.1~10重量%、0.5~7重量%、1~5重量%であり得る。前記コート層に対する前記有機粒子の含有量が過度に少ない場合、防眩性が低下する問題があり、前記有機粒子の含有量が過度に多い場合、像鮮明度が低下する問題がある。
【0074】
なお、前記防眩層に含まれる無機粒子は、直径が5~300nm、7~200nm、10~100nmであり得る。前記無機粒子の直径が過度に小さいと分散性が良くなくて凹凸不良が発生し得る問題があり、前記無機粒子の直径が過度に大きいと均一な表面凹凸形成が難しい問題がある。
【0075】
前記無機粒子の具体的な種類はこれらに限定されるものではないが、例えば、シリカ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛およびポリシルセスキオキサン粒子(具体的には、ケージ構造のシルセスキオキサン粒子)からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0076】
このような無機粒子は、前記コート層100重量%に対して0.01~5重量%、0.03~3重量%、0.05~2重量%であり得る。前記コート層に対する前記無機粒子の含有量が過度に少ない場合、凹凸が形成されず防眩性が低下する問題があり、前記無機粒子の含有量が過度に多い場合、過凝集により凹凸不良が生じる問題がある。
【0077】
前記防眩層に含まれる無機粒子および有機粒子の重量比は1:1~100、1:2~90、または1:5~80であり得る。前記無機粒子および有機粒子の重量比が1:1を超えると像鮮明度が低下するかまたはスパークリング不良が発生し、1:100未満であると防眩層の表面に形成される凹凸形状の大きさが小さくなり、グレアを誘発し得る。
【0078】
前記有機粒子および無機粒子は球形、楕円球形、棒形または不定形などの粒子形態を有することができる。棒形や不定形である場合、最も大きい次元の長さが前記範囲の粒径などを満たし得る。
【0079】
前記一実施形態の防眩フィルムの基材フィルムはアクリル系基材であり得る。このようなアクリル系基材は透湿性および透明性に優れるが、アクリル系基材上に形成されたコート層との付着性が低い問題がある。しかし、前記一実施形態による防眩フィルムは、前記アクリル系基材上に前記アクリル系基材と物理的に結合された中間層が形成され、前記中間層上に前記中間層と互いに架橋結合された防眩層が形成される。したがって、このような中間層は、防眩層とアクリル系基材の間の付着性および接着性を向上させることができる。
【0080】
前記アクリル系基材のより具体的な例としてはこれに限定するものではないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含むアクリル系基材であり得る。例えば、前記アルキル(メタ)アクリレートはメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびエチルメタクリレートからなる群より選ばれた1以上であり得る。
【0081】
なお、前記アクリル系樹脂は前記アルキル(メタ)アクリレートとともに(メタ)アクリル酸、マレイン酸無水物、およびマレイミド系からなる群より選択された1種以上の成分をさらに含むことができる。
【0082】
前記アクリル系基材は2軸延伸されたものであり得、例えば、縦方向(MD;Machine Direction)の延伸比は1.1~2.5、1.2~2.0、または1.3~1.95であり得る。なお、前記アクリル系基材の横方向(TD;Transverse Direction)の延伸比は1.1~3.5、1.2~3.0、または1.3~2.8であり得る。前記アクリル系基材が上述した延伸比を満たすことによってフィルムの靱性などの優れた機械的物性を示すことができる。
【0083】
前記アクリル系基材の優れた機械的物性と、耐水性、低透湿性、前記一実施形態による防眩フィルムの優れた光学特性などを考慮して前記アクリル系基材の厚さは10~300μm、30~250μmまたは40~200μmであり得るが、これらに限定するものではない。
【0084】
前記一実施形態による防眩フィルムは、光透過度が90.0%以上、90.5%以上、または91.0%以上であり得る。
【0085】
また、前記防眩フィルムは、全体ヘイズが0.5~10%、0.7~8%、または0.9~5%であり得る。
【0086】
また、前記防眩フィルムは、内部ヘイズが0.3~7%、0.7~5%、または0.9~3%であり得る。
【0087】
前記中間層および防眩層は、アクリル系基材に、親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、有機粒子および無機粒子を含むコート層形成用樹脂組成物を一面に塗布し、乾燥および硬化する工程によって形成される。
【0088】
また、前記コート層形成用樹脂組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。そのため、上述したコート層形成用樹脂組成物から製造されるコート層には前記光開始剤が残留し得る。前記光開始剤としては、コート層形成用樹脂組成物に使用できると知られている化合物であれば大きな制限なく使用可能であり、具体的には、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0089】
前記組成物100重量%に対して、前記光開始剤は0.1~10重量%、0.5~9重量%、または1~8重量%の含有量で使用することができる。前記光開始剤の量が過度に小さいと、光硬化段階で未硬化される残留物質が発生し得る。前記光開始剤の量が過度に多いと、未反応開始剤が不純物として残留するか架橋密度が低くなり、製造されるフィルムの機械的物性が低下するか反射率が非常に高くなる。
【0090】
また、前記コート層形成用樹脂組成物は有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒の非制限的な例としてはケトン類、アルコール類、アセテート類、エーテル類、ベンゼン誘導体類またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0091】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレン、アニリンなどのベンゼン誘導体類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0092】
前記有機溶媒は、前記コート層形成用樹脂組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか、または各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されて前記コート層形成用樹脂組成物に含まれ得る。前記コート層形成用樹脂組成物中の有機溶媒の含有量が過度に小さいと、前記コート層形成用樹脂組成物の流れ性が低下して最終的に製造されるフィルムに縞模様が生じるなど不良が発生し得る。また、前記有機溶媒を過量添加すると固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分に行われずフィルムの物性や表面特性が低下し得、乾燥および硬化の過程で不良が発生し得る。そのため、前記コート層形成用樹脂組成物は含まれる成分の全体固形分の濃度が10~50重量%、または15~40重量%となるように有機溶媒を含むことができる。
【0093】
一方、前記コート層形成用樹脂組成物を塗布するために通常用いられる方法および装置を格別な制限なく用いることができ、例えば、Meyer barなどのバーコート法、グラビアコーティング法、2 roll reverseコート法、vacuum slot dieコート法、2 rollコート法などを用いることができる。
【0094】
前記コート層形成用樹脂組成物を乾燥する段階で、上述したようにバインダ成分(親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、多官能アクリレート系オリゴマー)の相分離が発生し得る。例えば、前記コート層形成用樹脂組成物に含まれた前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の70重量%以上は前記アクリル系基材と物理的に結合し、前記アクリル系基材とコート層の界面に偏在し得る。そのため、前記界面に偏在した親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーは前記アクリル系基材と物理的に結合された状態で光硬化されて中間層が形成される。したがって、前記中間層は、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー、前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーと物理的に結合された一部のアクリル系基材を含むことができる。なお、前記中間層上には防眩層が形成され、このような防眩層には前記親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー総量中の30重量%未満、前記多官能アクリレート系オリゴマー、前記有機粒子および前記無機粒子が含まれ得る。
【0095】
このような乾燥工程は60~100℃、65~95℃または70~93℃の温度で30秒~30分、1分~25分または2分~15分間行われる。
【0096】
前記乾燥工程後、光硬化させる段階では200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射し得、照射時の露光量は100~4,000mJ/cm、150~2,000mJ/cmまたは200~1,000mJ/cmが好ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適宜変化させることができる。また、前記光硬化させる段階では窒素大気条件を適用するために窒素パージなどを行うことができる。
【0097】
発明の他の実施形態によれば、前記防眩フィルムを含む偏光板が提供される。前記偏光板は偏光膜と前記偏光膜の少なくとも一面に形成された防眩フィルムを含むことができる。
【0098】
前記偏光膜の材料および製造方法は特に限定されず、当技術分野に知られている通常の材料および製造方法を用いることができる。例えば、前記偏光膜はポリビニルアルコール系偏光膜であり得る。
【0099】
前記偏光膜と防眩フィルムの間には保護フィルムが備えられる。前記保護フィルムの例は限定されるものではなく、例えば、COP(cycloolefin polymer)系フィルム、アクリル系フィルム、TAC(triacetylcellulose)系フィルム、COC(cycloolefin copolymer)系フィルム、PNB(polynorbornene)系フィルムおよびPET(polyethylene terephtalate)系フィルムのいずれか一つ以上であり得る。
【0100】
前記保護フィルムは、前記防眩フィルムの製造時に単一コート層を形成するための基材がそのまま使用されることもできる。前記偏光膜と前記防眩フィルムは、水系接着剤または非水系接着剤などの接着剤によって貼り付けられる。
【0101】
発明のさらに他の実施形態によれば、上述した防眩フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0102】
前記ディスプレイ装置の具体的な例は限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display])、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であり得る。
【0103】
一つの一例として、前記ディスプレイ装置は互いに対向する1対の偏光板;前記1対の偏光板の間に順次積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタおよび液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であり得る。前記防眩フィルムを含むディスプレイ装置は、1対の偏光板のうち、相対的にバックライトユニットと距離が遠い偏光板の一面に防眩フィルムが位置し得る。
【0104】
前記ディスプレイ装置において前記防眩フィルムは、ディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外郭の表面に備えられる。より具体的には、前記ディスプレイ装置はノートパソコン用ディスプレイ装置、TV用ディスプレイ装置、広告用大面積ディスプレイ装置であり得、前記防眩フィルムは前記ノートパソコン用ディスプレイ装置、TV用ディスプレイ装置、広告用大面積ディスプレイ装置の最外郭面に位置し得る。
【発明の効果】
【0105】
本発明によれば、基材フィルムおよびコート層の間の向上した付着力と共に、低いヘイズ、高い光透過度および優れた防眩特性などの優れた光学特性を示しながらも、優れた耐スクラッチ性および高硬度などの機械的物性もまた、優れた防眩フィルムと、それを含む偏光板およびディスプレイ装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】乾燥前後の本発明の一実施形態による防眩フィルムの断面を模式的に示す図である。
図2】実施例1の防眩フィルムを電子顕微鏡で撮影した写真である。
図3】実施例2の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式1によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
図4】比較例1の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式1によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
図5】実施例2の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式2によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
図6】比較例1の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式2によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は例示に過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0108】
(製造例1:コート層形成用樹脂組成物の製造)
テトラヒドロフルフリルアクリレート50g、CN9013NS(ウレタン変性9官能アクリレート系オリゴマー、重量平均分子量:20,000、製造会社:Sartomer)50g、開始剤であるIrgacure184(製造会社:Ciba)5g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100g、MA-ST(シリカナノ粒子、粒径:12nm、メタノールに30%で分散した分散液)0.4gおよび第1有機粒子(ポリスチレン-ポリメチルメタクリレートの共重合球形有機粒子、直径:2μm、屈折率n=1.515)2gを混合して、製造例1のコート層形成用樹脂組成物を製造した。
【0109】
(製造例2:コート層形成用樹脂組成物の製造)
2-ヒドロキシエチルアクリレート50g、CN8885NS(多官能アクリレート系オリゴマー、重量平均分子量:14,000、製造会社:Sartomer)50g、開始剤(Irgacure184)5g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100g、MA-ST 0.2gおよび第1有機粒子2gを混合して、製造例2のコート層形成用樹脂組成物を製造した。
【0110】
(製造例3:コート層形成用樹脂組成物の製造)
2-ヒドロキシエチルアクリレート20g、4-ヒドロキシブチルアクリレート20g、CN8885NS 60g、開始剤(Irgacure184)5g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100g、MA-ST 0.3gおよび第2有機粒子(ポリスチレン-ポリメチルメタクリレートの共重合球形有機粒子、直径:2μm、屈折率n=1.555)2gを混合して、製造例3のコート層形成用樹脂組成物を製造した。
【0111】
(比較製造例1:コート層形成用樹脂組成物の製造)
2-ヒドロキシエチルアクリレート20g、CN8885NS 80g、開始剤(Irgacure184)5g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100g、MA-ST 0.7gおよび第1有機粒子4gを混合して、比較製造例1のコート層形成用樹脂組成物を製造した。
【0112】
(比較製造例2:コート層形成用樹脂組成物の製造)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)50g、1,6-ヘキサジオールジアクリレート(HDDA)50g、開始剤(Irgacure184)5g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100g、MA-ST 0.7gおよび第1有機粒子4gを混合して、比較製造例2のコート層形成用樹脂組成物を製造した。
【0113】
(実施例および比較例:防眩フィルムの製造)
このように得られた製造例1~3および比較製造例1~2のコート層形成用樹脂組成物をアクリル基材(製造会社:LG Chem、厚さ:40μm、延伸比MD×TD:1.95×1.8)に#12 meyer barでコートして90℃で2分間乾燥した。このような乾燥物に水銀ランプで200mJ/cmの紫外線を照射してコート層を形成した。この時、コート層の厚さはデジタルマイクロメータ装置を用いて測定して、下記表1に示した。
【0114】
一方、前記コート層(固形分)総量に対して親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー(テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートまたは4-ヒドロキシブチルアクリレート)の含有量を確認し、その結果を下記表1の[コート層に対する単官能モノマーの含有量]に記載した。
【0115】
【表1】
【0116】
(1.ラマン分光グラフでの式1によるバンド面積比率の変化率測定)
前記実施例および比較例の防眩フィルムのコート層の表面(具体的には、コート層の前記アクリル系基材と対向する一面)から厚さ方向の1μm間隔で、ラマン分光分析を行い、ラマン分光分析の分析条件は次のとおりである。ラマン分光分析のためにサンプルは1~2μm幅でミクロトーミング(microtoming)を行った。
【0117】
<ラマン分光分析条件>
-装置:RAMANtouch(製造会社:Nanophoton)
-顕微鏡モード(Microscope mode):180°後方散乱(back scattering)
-対物レンズ(Objective Lens):TU Plan Fluor 100x/NA 0.90
-光源:Arレーザ、波長532nm
-格子(Grating):600gr/mm
-分光解像度(Spectral resolution):2.1cm-1(@532nm、600gr/mm)
-検出装置:TE-cooled CCD 1340×400 pixel format
【0118】
その後、厚さ方向の1μm間隔で分析された前記ラマン分光分析結果において、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積およびラマンピーク1755cm-1でのバンド面積を積分により求め、前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対してラマンピーク1755cm-1でのバンド面積比率を計算してグラフで示した。この時、グラフにおけるX軸は、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面(表面)からの厚さ方向への距離(Distance from surface)であり、Y軸は前記バンド面積の比率(Band Area Ratio)に該当する。
【0119】
図3は、実施例2の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式1によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフであり、図4は、比較例1の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式1によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
【0120】
実施例および比較例の防眩フィルムに対するラマン分光分析を用いた上述したグラフにおいて、下記式1によるバンド面積比率の変化率を測定し、その結果を下記表2に示した。この時、前記バンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmである場合、防眩フィルム内に中間層が形成されたことを意味する。
[式1]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
前記式1中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0121】
(2.ラマン分光グラフでの式2によるバンド面積比率の変化率測定)
前記「1.ラマン分光グラフでの式1によるバンド面積比率の変化率測定」と同様の測定条件で式2によるバンド面積比率の変化率を測定した。
【0122】
ただし、厚さ方向の1μm間隔で分析された前記ラマン分光分析結果において、ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積およびラマンピーク1632cm-1でのバンド面積を積分により求め、前記ラマンピーク1722cm-1でのバンド面積に対するラマンピーク1632cm-1でのバンド面積の比率を計算してグラフで示した。この時、グラフにおけるX軸は、前記アクリル系基材と対向する前記コート層の一面(表面)からの厚さ方向への距離(Distance from surface)であり、Y軸は前記バンド面積の比率(Band Area Ratio)に該当する。
【0123】
図5は、実施例2の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式2によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフであり、図6は、比較例1の防眩フィルムに対するラマン分光分析結果(式2によるバンド面積比率の変化率)から導き出されたグラフである。
【0124】
実施例および比較例の防眩フィルムに対するラマン分光分析を用いた上述したグラフにおいて、下記式2によるバンド面積比率の変化率を測定し、その結果を下記表2に示した。この時、前記バンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmである場合、防眩フィルム内に中間層が形成されたことを意味する。
[式2]
バンド面積比率の変化率=|A-A|/3
上記式2中、
はX値が4μmである時のY値であり、
はX値が7μmである時のY値である。
【0125】
(3.中間層の厚さの測定)
実施例および比較例の防眩フィルムを電子顕微鏡で撮影して、中間層の厚さを測定した。図2は、実施例1の防眩フィルムを電子顕微鏡で撮影した写真であり、これにより中間層の厚さを測定した。
【0126】
一方、下記表2における「-」は、中間層が生成されなかった場合に該当する。
【0127】
(4.透過度およびヘイズの評価)
実施例および比較例の防眩フィルムから4cm×4cmの試験片を準備し、ヘイズ測定装置(HM-150、A光源、村上社)で3回測定して平均値を計算し、これを全体ヘイズ値として算出した。この時、透光度と全体ヘイズは同時に測定され、透光度はJIS K 7361規格、ヘイズはJIS K 7136規格によって測定した。
【0128】
(5.付着性(Cross-Cut)の評価)
ASTM D3359に基づいて実施例および比較例の防眩フィルムのコート層に対して、横および縦がそれぞれ1mmとなるように100個(10×10個)の切り込みを入れ、テープ(商品名:CT-24、製造会社:Nichiban)を付けた後、剥離してテープとともに剥がれずに残ったコート層のマス目の個数を数えた。剥がれずに残ったマス目の個数が全体マス目に対して100%であれば5B、95%以上100%未満であれば4B、85%以上95%未満であれば3B、65%以上85%未満であれば2B、35%以上65%未満であれば1B、0%以上35%未満であれば0Bと表記した。
【0129】
(6.耐スクラッチ性評価)
実施例および比較例の防眩フィルムのコート層に対し、スチールウール(#0000)に500gの荷重をかけて、30rpmの速度で10回往復して擦った後の傷の有無を肉眼で確認した。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチが1個以下が観察されると良好と判定し、スクラッチが1個を超えて観察されると不良と判定した。
【0130】
【表2】
【0131】
上記表2によると、実施例1~3の上記式1によるバンド面積比率の変化率は0.001~0.033/μmであり、上記式2によるバンド面積比率の変化率は0.001~0.050/μmであり、高い透過度および低いヘイズを示して光学特性に優れ、アクリル基材とコート層の間の付着性に優れ、耐スクラッチ性が良好であることを確認した。
【0132】
なお、比較例1および比較例2は、親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマーが過度に少なく含まれるかまたは使用されないので、上記式1によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.033/μmを満たさず、かつ、上記式2によるバンド面積比率の変化率が0.001~0.050/μmを満たさず、アクリル基材とコート層の間の付着性が低下することを確認した。
【符号の説明】
【0133】
10 アクリル系基材
20 コート層
30 中間層
40 防眩層
100 親水性官能基および1個の光硬化性官能基を有するモノマー
200 多官能アクリレート系オリゴマー
300 粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】