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特表2023-534112ホログラム光学素子を利用した物体観測システム
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  • 特表-ホログラム光学素子を利用した物体観測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ホログラム光学素子を利用した物体観測システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/10 20060101AFI20230801BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20230801BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G01V8/10 U
G02B5/32
G01V8/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575443
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2021014600
(87)【国際公開番号】W WO2022086130
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0135094
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139197
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】デ・ハン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ブ・ゴン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ユン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジュ・ソン
【テーマコード(参考)】
2G105
2H249
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC01
2G105CC03
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH01
2G105JJ02
2H249CA01
2H249CA12
2H249CA13
2H249CA15
2H249CA24
(57)【要約】
ホログラム光学素子を利用した物体観測システムが開示される。物体観測システムは、赤外線光を出射する赤外線(IR)光源、前記IR光源から出射された赤外線光のうちの特定波長の赤外線光を物体に向けて反射および回折させる光学素子フィルムを含むホログラム光学素子、および前記物体で反射された特定波長の赤外線光を感知するIR光感知器を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線光を出射する赤外線(IR)光源、
前記IR光源から出射された赤外線光のうちの特定波長の赤外線光を物体に向けて反射および回折させる光学素子フィルムを含むホログラム光学素子、および
前記物体で反射された特定波長の赤外線光を感知するIR光感知器、
を含む物体観測システム。
【請求項2】
前記光学素子フィルムは、
ベース層、
前記ベース層の一面に積層され、前記ベース層を通じて入射した赤外線光のうちの特定波長の赤外線光を反射および回折するHOE記録層、および
前記HOE記録層の一面に積層され、前記HOE記録層を保護する保護層、
を含む、請求項1に記載の物体観測システム。
【請求項3】
前記光学素子フィルムは、660nm~1510nmの範囲に属する特定波長の赤外線光を反射する、請求項2に記載の物体観測システム。
【請求項4】
前記光学素子フィルムは、845nm~855nmまたは935nm~945nmの範囲に属する特定波長の赤外線光を反射する、請求項3に記載の物体観測システム。
【請求項5】
前記光学素子フィルムの回折角は、40°~85°の範囲で設定される、請求項2~4の何れか一項に記載の物体観測システム。
【請求項6】
前記光学素子フィルムの回折効率は、
前記光学素子フィルムに入射された赤外線光の強さ(I)に対する前記光学素子フィルムから回折された赤外線光(D)の強さの比率で示し、30%以上に設定される、請求項2~5の何れか一項に記載の物体観測システム。
【請求項7】
前記光学素子フィルムの回折効率は、60%以上に設定される、請求項6に記載の物体観測システム。
【請求項8】
前記IR光源は、赤外線光を-15°~+15°の入射角で前記ホログラム光学素子に入射させるように配置された、請求項1~7の何れか一項に記載の物体観測システム。
【請求項9】
前記物体は、光学素子フィルムの回折角の範囲内に位置し、
前記IR光感知器は、前記物体から反射された特定波長の赤外線光を感知するように前記物体と向き合うように配置される、請求項5~8の何れか一項に記載の物体観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引用)
本出願は、2020年10月19日付韓国特許出願第10-2020-0135094号および2021年10月19日付韓国特許出願第10-2021-0139197号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、ホログラム光学素子(HOE、Hologram Optical Element)を利用した物体観測システムに関し、より詳しくは、赤外線光の特定波長の光を反射させるホログラム光学素子を利用した物体観測システムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、車両の運転席に人がいるかいないかを確認するために赤外線(Infrared、IR)光源およびセンサーを利用している。IR光源を運転者に直接照射して運転者から反射または散乱された光をセンサーで感知して運転者の有無を判断するようになる。
【0004】
しかし、IR光源は、主に約850nmの波長を含む波長帯を有するLEDを利用するが、LEDは広い波長スペクトルを有するため、運転者に赤色の光が見えて運転時に運転者の視野を妨害するという問題が発生する。これを防止するために、IR光源を運転者に直接送らずに、特定波長の光のみを反射させて運転者に間接的に送れば前記のような問題を解決することができる。
【0005】
このために、IR光源で照射される光のうちの一部の波長の光を透過し、残りの波長の光を反射させる光学素子フィルムを含むホログラム光学素子を利用して、運転者の視野を妨害しないようにする物体観測システムの開発が要求されている。
【0006】
この背景技術の部分に記載された事項は、発明の背景に対する理解を増進させるために作成されたものであり、当該技術が属する分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術ではない事項を含むことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の実施形態は、ホログラム光学素子からIR光源の特定波長の光のみを反射させて運転者の視野を妨害しないようにするホログラム光学素子を利用した物体観測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による物体観測システムは、赤外線光を出射する赤外線(IR)光源、前記IR光源から出射された赤外線光のうちの特定波長の赤外線光を物体に向けて反射および回折させる光学素子フィルムを含むホログラム光学素子、および前記物体で反射された特定波長の赤外線光を感知するIR光感知器を含むことができる。
【0009】
前記光学素子フィルムは、ベース層、前記ベース層の一面に積層され、前記ベース層を通じて入射した赤外線光のうちの特定波長の赤外線光を反射および回折するHOE記録層、および前記HOE記録層の一面に積層され、前記HOE記録層を保護する保護層を含むことができる。
【0010】
一つの様相で、前記光学素子フィルムは、660nm~1510nmの範囲に属する特定波長の赤外線光を反射することができる。
【0011】
好ましくは、前記光学素子フィルムは、845nm~855nmまたは935nm~945nmの範囲に属する特定波長の赤外線光を反射することができる。
【0012】
前記光学素子フィルムの回折角は、20°以上、30°以上、40°以上であるか、85°以下、80°以下、または75°以下であることができ、または20°~85°の範囲に設定され得る。好ましくは、前記光学素子フィルムの回折角は、30°~85°の範囲に設定され得る。より好ましくは、前記光学素子フィルムの回折角は、40°~85°の範囲に設定され得る。
【0013】
一つの様相で、前記光学素子フィルムの回折効率は、前記光学素子フィルムに入射された赤外線光の強さ(I)に対する前記光学素子フィルムから回折された赤外線光(D)の強さの比率で示し、30%以上に設定され得る。
【0014】
好ましくは、前記光学素子フィルムの回折効率は、60%以上、または70%以上、または75%以上、または80%以上に設定され得る。
【0015】
前記IR光源は、赤外線光を-15°~+15°の入射角で前記ホログラム光学素子に入射させるように配置され得る。
【0016】
前記物体は、光学素子フィルムの回折角の範囲内に位置し、前記IR光感知器は、前記物体から反射された特定波長の赤外線光を感知するように前記物体と向き合うように配置され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、IR光源から入射される光のうちの特定波長の光のみを運転者に向けて反射させることによって、運転者の視野を妨害しないようにすることができる。
【0018】
その他に本発明の実施形態により得ることができるかまたは予測される効果については本発明の実施形態に関する詳細な説明で直接的または暗示的に開示する。つまり、本発明の実施形態により予測される多様な効果については後述する詳細な説明内で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるホログラム光学素子を利用した物体観測システムを概略的に示した図面である。
図2】本発明の一実施形態によるホログラム光学素子の光学素子フィルムの積層構造を概略的に示した図面である。
図3】本発明の一実施形態による光学素子フィルムに入射されて透過および回折される光を概略的に示した図面である。
図4】本発明の一実施形態による光学素子フィルムの透過率と回折効率をスペクトロメーターを用いて実験により導き出したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0021】
また、多くの実施形態において、同一の構成を有する構成要素については同一の図面符号を使用して代表的に一実施形態で説明し、その他の実施形態では一実施形態とは異なる構成についてのみ説明する。
【0022】
図面は、概略的であり、縮尺に合うように図示されていないことを述べる。図面に示されている部分の相対的なサイズおよび比率は、図面での明確性および便宜のためにその大きさにおいて誇張または減少して示されており、任意のサイズは単に例示的なものであり、限定的なものではない。そして、二つ以上の図面に示される同一の構造物、要素または部品には同一の参照符号が類似の特徴を示すために使用される。ある部分が他の部分の「上に」にあると言及する場合、これは直ちに他の部分の上にあることもでき、その間に他の部分が存在することもできる。
【0023】
本発明の実施形態は本発明の一実施形態を具体的に示す。その結果、図解の多様な変形が予想される。したがって、実施形態は図示した領域の特定形態に限定されず、例えば製造による形態の変形も含む。
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態によるホログラム光学素子を利用した物体観測システムについて詳しく説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態によるホログラム光学素子を利用した物体観測システムを概略的に示した図面であり、図2は本発明の一実施形態によるホログラム光学素子の光学素子フィルムの積層構造を概略的に示した図面である。
【0026】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるホログラム光学素子を利用した物体観測システム100は、赤外線(IR)光源10と、ホログラム光学素子30、およびIR光感知器40を含む。
【0027】
IR光源10は、ホログラム光学素子30に向けて赤外線光を出射するように車体1内部の側面に配置され得る。また、ホログラム光学素子30は、車体1の内部前方の車両ウィンドウの下部に配置され得る。IR光源10は、車体1内部の側面から車体1内部前方に配置されたホログラム光学素子30に向けて赤外線光を出射するように設置され得る。一つの様相で、前記IR光源10は、ホログラム光学素子30であり、約-15°~約+15°の入射角で赤外線光を入射させるように配置され得る。
【0028】
ホログラム光学素子30は、光学素子フィルム20を含み、光学素子フィルム20は、IR光源10から入射された特定波長の赤外線光を反射する。この時、光学素子フィルム20から反射される赤外線光の特定波長は、約660nm~約1510nmの範囲に属するものであることができ、好ましくは、約845nm~約855nmまたは約935nm~約945nmの範囲に属するものであり得る。
【0029】
IR光感知器40は、ホログラム光学素子30から反射された特定波長の赤外線光を感知する。IR光感知器40は、車体1の内部前方の車両ウィンドウ上部に配置され得る。IR光源10から出射された赤外線光は、ホログラム光学素子30の光学素子フィルム20に入射され、光学素子フィルム20から反射された特定波長の赤外線光は物体(運転者)2に向けて入射される。また、物体2から反射された特定波長の赤外線光はIR光感知器40により感知されて物体2の有無を判断できるようになる。IR光感知器40は、IRカメラであり得る。
【0030】
図2は本発明の一実施形態によるホログラム光学素子の光学素子フィルムの積層構造を概略的に示した図面である。
【0031】
図2を参照すれば、光学素子フィルム20は、ベース層22と、HOE記録層23、および保護層25を含む。ベース層22は、光学的に透明な高分子材料で形成されることができ、シリコンOCA(optically clear adhesive)の光学接着剤層からなることができる。ベース層22は、光学プレート21上に(光学プレート21の一面に)配置され得る。前記光学プレート21は、これに限定されないが、光学レンズまたは光導波管プレート(waveguide plate)であり得る。IR光源10から出射された赤外線光は、光学プレート21を通じてベース層22に入射されてHOE記録層23に伝達され得る。
【0032】
HOE記録層23は、ベース層22上に(ベース層22の一面に)積層され、特定波長の赤外線光を反射させることができる。このHOE記録層23で反射される赤外線光の波長は、約660nm~約1510nmの範囲に属するものであることができ、約845nm~約855nmまたは約935nm~約945nmの範囲に属するものであり得る。
【0033】
HOE記録層23は、約3μm~約50μmの厚さ、好ましくは約8μm~約15μmの厚さを有するように形成され得る。
【0034】
保護層25は、HOE記録層23上に(HOE記録層23の一面に)積層され、HOE記録層23を保護するように反射防止機能、水分透過防止機能、またはこれら機能の両方を有する単層または多層の形態であり得る。保護層25は、光学的に透明な高分子材料で形成されることができ、反射防止フィルム(anti-reflection film)で形成され得る。
【0035】
図3は本発明の一実施形態による光学素子フィルムに入射されて透過および回折される光を概略的に示した図面であり、図4は本発明の一実施形態による光学素子フィルムの透過率と回折効率を、スペクトロメーターを使用して実験により導き出したグラフである。
【0036】
図3を参照すれば、光学素子フィルム20に入射される赤外線光(I)の一部は透過(T)され、一部は回折(D)される。HOE記録層23で入射される光(I)の一部が回折され、この時、回折角(θ)は20°以上、30°以上、40°以上であるか、85°以下、80°以下、または75°以下であることができ、または20°~85°の範囲に設定され得る。好ましくは、前記光学素子フィルムの回折角(θ)は、30°~85°の範囲に設定され得る。より好ましくは、前記光学素子フィルムの回折角(θ)は、40°~85°の範囲に設定され得る。物体2は、前記回折角(θ)の範囲内に位置することができる。
【0037】
また、光学素子フィルム20に入射される光(I)の入射角は、約-15°~約+15°であり得る。ここで、光学素子フィルム20に入射される光(I)の入射角は、光(I)が入射する光学素子フィルム20の表面の法線と入射する光(I)との間の角度を意味する。
【0038】
また、図4を参照すれば、光学素子フィルム20に入射された光の波長が約850nmである場合を中心に透過率が低く示されることを確認することができ、これは光学素子フィルム20から反射される波長範囲が約845nm~約855nmであることが分かる。約845nm~約855nmの波長範囲を有する赤外線光は、物体観測に使用する主要な波長であり、運転者の視野を妨害しない。
【0039】
この波長範囲で、光学素子フィルム20の回折効率(dE)は、光学素子フィルム20に入射された赤外線光の強さ(I)に対する光学素子フィルム20から回折された赤外線光(D)の強さの比率から求めることができる。
【0040】
図4で、光学素子フィルム20に入射された赤外線光の強さ(I)が100%である場合、約850nm波長範囲での透過率は約35%であることを確認できる。したがって、光学素子フィルム20の回折効率(dE)は、約65%と示される。一つの例で、IR光感知器40により物体2を感知することができるように前記光学素子フィルム20の回折効率は、約30%以上に設定され得る。好ましくは、前記光学素子フィルム20の回折効率は、約60%以上に設定され得る。より好ましくは、前記光学素子フィルム20の回折効率は、約60%以上、または70%以上、または75%以上、または80%以上に設定され得る。
【0041】
このように、本発明の実施形態によれば、ホログラム光学素子を利用した物体観測システムを利用して、IR光源から入射される特定波長の光のみを運転者に向けて反射させることによって、運転者の視野を妨害しないようにできる。
【0042】
以上で本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の実施形態から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者による容易に変更されて均等であると認められる範囲の全ての変更を含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】