(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(54)【発明の名称】合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/34 20060101AFI20230802BHJP
C10G 9/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C01B3/34
C10G9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550993
(86)(22)【出願日】2021-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2021018818
(87)【国際公開番号】W WO2022270700
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082421
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】シク・キ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・キュ・イ
【テーマコード(参考)】
4G140
4H129
【Fターム(参考)】
4G140EA04
4G140EA06
4G140EA07
4G140EB01
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA03
4H129FA01
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA27
(57)【要約】
本発明は、合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関し、より詳細には、ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームおよび熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームをフィードストリームとして蒸留塔に供給するステップ(S10)と、前記蒸留塔の下部排出ストリームをガス化工程のための燃焼室に供給し、上部排出ストリームはSM/BTX製造工程に供給するステップ(S20)とを含む合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームおよび熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームをフィードストリームとして蒸留塔に供給するステップ(S10)と、
前記蒸留塔の下部排出ストリームをガス化工程のための燃焼室に供給し、上部排出ストリームをSM/BTX製造工程に供給するステップ(S20)とを含む、合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記蒸留塔に供給されるフィードストリームの流量に対する前記蒸留塔の上部排出ストリームの流量の比率は、0.01~0.2である、請求項1に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記蒸留塔に供給されるフィードストリームの流量に対する前記蒸留塔の上部排出ストリームの流量の比率は、0.1~0.2である、請求項1又は2に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記蒸留塔の下部排出ストリームは、前記燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下であり、
前記蒸留塔の下部排出ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項5】
前記蒸留塔の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点温度は、20℃~90℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記蒸留塔の下部排出ストリームを前記燃焼室に供給する前に、第4熱交換器を通過させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項7】
前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上含み、
前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項8】
前記PGOストリームの引火点は、10℃~50℃であり、
前記PFOストリームの引火点は、70℃~200℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項9】
前記PGOストリームは、40℃での動粘度が1cSt~200cStであり、
前記PFOストリームは、40℃での動粘度が400cSt~100,000cStである、請求項1~8のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項10】
前記ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解ガソリン(Raw Pyrolysis Gasoline、RPG)を含むRPGストリームをSM/BTX製造工程に供給する、請求項1~9のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項11】
前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の側部から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパーに供給した後、前記第1ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームであり、
前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の下部から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパーに供給した後、前記第2ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームである、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項12】
前記ガソリン精留塔の下部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して90%以上の段から排出され、
前記ガソリン精留塔の側部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して10%~70%の段から排出される、請求項11に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項13】
前記蒸留塔の還流比は、0.01~10である、請求項1~12のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項14】
前記SM/BTX製造工程は、SM工程部およびBTX工程部を含み、前記蒸留塔の上部排出ストリームは、SM/BTX製造工程のSM工程部に供給される、請求項1~13のいずれか一項に記載の合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0082421号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関し、より詳細には、ナフサ分解工程(Naphtha Cracking Center、NCC)のガソリン精留塔から排出される熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するとともに、熱分解燃料油内の芳香族炭化水素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナフサ分解工程(Naphtha Cracking Center;以下、「NCC」とする)は、ガソリン留分であるナフサ(nathpha)を約950℃~1,050℃の温度で熱分解して、石油化学製品の基礎原料であるエチレン、プロピレン、ブチレンおよびBTX(Benzene、Toluene、Xylene)などを生産する工程である。
【0004】
従来、このようなナフサを原料としてエチレンおよびプロピレンなどを生産する過程の副生成物である熱分解ガソリン(Raw Pyrolysis Gasoline、RPG)を使用して、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレンなどを製造し、熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は燃料として使用していた。しかし、前記熱分解燃料油を前処理なしに燃料として使用するには硫黄含量が高い水準であり、二酸化炭素(CO2)排出係数が大きいため、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後の販売が不可能な状況に備えなければならない状態である。
【0005】
一方、合成ガス(synthesis gas、syngas)は、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0006】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素と一酸化炭素からなる合成ガスに変換させる工程である。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼性能を低下させるか、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0007】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用するために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には、硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。
【0008】
そのため、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替する方法が考慮されていたが、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するためには、熱分解燃料油を加熱して動粘度を下げる必要があるが、前記熱分解燃料油の動粘度が非常に高くて、引火点以下でガス化工程の原料として使用するための動粘度の条件を満たすことができない不都合があった。
【0009】
したがって、本発明者らは、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することが可能であれば、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率が向上することができる合成ガスの製造方法を提供し、前記熱分解燃料油に含まれた芳香族炭化水素を回収することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームおよび熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームをフィードストリームとして蒸留塔に供給するステップ(S10)と、前記蒸留塔の下部排出ストリームをガス化工程のための燃焼室に供給し、上部排出ストリームをSM/BTX製造工程に供給するステップ(S20)とを含む合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を前処理してガス化工程の原料として代替することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。
【0013】
また、前記熱分解ガソリン(RPG)とともに熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を前処理する過程で発生する軽質の熱分解燃料油をスチレンおよびBTXを製造する原料として使用することで、芳香族炭化水素の生産量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関する工程フローチャートである。
【
図2】本発明の比較例1による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関する工程フローチャートである。
【
図3】本発明の比較例2による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関する工程フローチャートである。
【
図4】本発明の比較例3による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法に関する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0017】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C8」という用語は、8個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#-」という用語は、#個以下の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C8-」という用語は、8個以下の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0018】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明について、
図1を参照してより詳細に説明する。
【0019】
本発明によると、合成ガス(synthesis gas、syngas)および芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbon)の製造方法が提供される。前記合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法は、ナフサ分解工程(S1)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームおよび熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームをフィードストリームとして蒸留塔50に供給するステップ(S10)と、前記蒸留塔50の下部排出ストリームをガス化工程(S3)のための燃焼室に供給し、上部排出ストリームをSM/BTX製造工程(S4)に供給するステップ(S20)とを含むことができる。
【0020】
前記合成ガスは、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0021】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素および一酸化炭素を含む合成ガスに変換させる工程である。具体的には、本発明において、合成ガスは、水素および一酸化炭素を含むことができる。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給されて700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼性能を低下させ、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0022】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用されるために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。例えば、前記精油残渣油のうち、減圧残渣油には、約3.5重量%の硫黄と、約3600ppmの窒素が含まれ、バンカーC油には、約4.5重量%の硫黄が含まれることができる。
【0023】
一方、ナフサを分解して、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎素材を製造する工程であるナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は、一般的に燃料として使用されているが、硫黄含量が、前処理なしに燃料として使用するには高い水準であるため、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後の販売が不可能な状況に備えなければならない状況である。
【0024】
そのため、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替する方法が考慮されていたが、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するためには、熱分解燃料油を加熱して動粘度を下げる必要があるが、前記熱分解燃料油の動粘度が非常に高くて、引火点以下でガス化工程の原料として使用するための動粘度の条件を満たすことができない不都合があった。
【0025】
したがって、本発明では、ナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームと熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを前記ガス化工程の原料として代替するための前処理工程(S2)を開発することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させようとした。また、前記前処理工程(S2)から排出される軽質PFOストリームを回収してスチレン(SM)およびベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)を製造することで、芳香族炭化水素の生産量を増加させることができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、前記熱分解ガソリン(Raw Pyrolysis Gasoline、RPG)を含むRPGストリーム、熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームおよび前記熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームは、ナフサ分解工程(S1)から排出されることができる。
【0027】
具体的には、前記ナフサ分解工程は、パラフィン(paraffin)、ナフテン(naphthene)および芳香族化合物(aromatics)を含むナフサ(naphtha)を分解して石油化学基礎素材として使用されるエチレン、プロピレン、ブチレンおよびBTX(Benzene、Toluene、Xylene)などを生産する工程であり、ナフサ分解工程は、大きく、分解工程、急冷工程、圧縮工程および精製工程からなることができる。
【0028】
前記分解工程は、ナフサを800℃以上の分解炉で炭素数が少ない炭化水素として熱分解反応させる工程であり、高温の分解ガスが排出され得る。この際、前記ナフサは、分解炉への進入前に高圧の水蒸気から予熱過程を経た後、分解炉に供給されることができる。
【0029】
前記急冷工程は、分解炉から排出された高温の分解ガス内の炭化水素の重合反応を抑制し、廃熱回収および後続工程(圧縮工程)の熱負荷減少のために、前記高温の分解ガスを冷却させるステップである。この際、前記急冷工程は、前記高温の分解ガスを急冷オイル(quench oil)で1次冷却するステップと、急冷水(quench water)で2次冷却させるステップとを含んで行われることができる。
【0030】
具体的には、前記1次冷却するステップにおいて、前記分解ガスをガソリン精留塔(gasoline fractionator)に供給して、水素、メタン、エチレン、プロピレンなどを含む軽質留分、熱分解ガソリン(RPG)、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を分離することができる。次に、前記軽質留分は、後続する圧縮工程に移送されることができる。
【0031】
前記圧縮工程は、前記軽質留分を経済的に分離および精製するために、高圧下で軽質留分の昇圧により体積を減少させた圧縮ガスを生成する工程であることができる。
【0032】
前記精製工程は、前記高圧で圧縮された圧縮ガスを超低温に冷却させた後、沸点差によってステップ別に成分を分離する工程であり、水素、エチレン、プロピレン、プロパン、C4留分および熱分解ガソリン(RPG)などが生成されることができる。
【0033】
上述のように、前記ナフサの分解工程(S1)のうち、急冷工程では、熱分解ガソリン(RPG)、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)が排出されることができる。一般的に、前記熱分解燃料油(PFO)には、約0.1重量%以下の硫黄、および約20ppm以下の窒素が含まれており、燃料として使用した時に、燃焼過程で硫酸化物(SOx)および窒素酸化物(NOx)が排出されるため、環境問題が引き起こされ得るが、これを合成ガスの原料として使用する場合には相当低い水準である。
【0034】
したがって、本発明では、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を前処理工程(S2)により前処理して合成ガスを製造するためのガス化工程の原料として使用することで、前記問題を解決することができ、さらには、従来の精油残渣油をガス化工程の原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。加えて、前記前処理工程(S2)から排出される軽質PFOストリームをスチレンおよびBTXを製造する原料として使用することで、スチレンおよびBTXの生産量を増加させることができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、本発明のPFOストリームおよびPGOストリームは、それぞれ、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10から排出される熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を含むことができる。具体的な例として、ガソリン精留塔10の全体の段数において、最上段を1%の段、最下段を100%の段として表現すると、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して、前記熱分解燃料油(PFO)は、90%以上の段、95%以上の段、または95%~100%の段から排出されることができる。また、前記熱分解ガス油(PGO)は、10%~70%の段、15%~65%の段、または20%~60%の段から排出されることができる。例えば、前記ガソリン精留塔10の全体の段数が100段である場合、最上段が1段、最下段が100段であることができ、前記ガソリン精留塔10の全体の段数の90%以上の段は、ガソリン精留塔10の90段~100段を意味し得る。
【0036】
前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の側部から排出され、熱分解ガス油(PGO)を含む側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から排出された下部排出ストリームであることができる。また、前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の下部から排出され、熱分解燃料油(PFO)を含む下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から排出された下部排出ストリームであることができる。
【0037】
前記第1ストリッパー20および第2ストリッパー30は、液体の中に溶解している気体または蒸気を分離および除去するストリッピング(stripping)工程が行われる装置であることができ、例えば、スチームまたは不活性ガスなどによる直接接触、加熱および加圧などの方法により行われることができる。具体的な例として、前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給し、第1ストリッパー20から前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。また、前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給し、第2ストリッパー30から前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上または70重量%~95重量%含み、前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上または70重量%~98重量%含むことができる。例えば、前記C10~C12の炭化水素を70重量%以上含むPGOストリームの40℃での動粘度は、1~200cStであることができ、引火点は、10~50℃であることができる。また、例えば、前記C13+炭化水素を70重量%以上含むPFOストリームの40℃での動粘度は、400~100,000cStであることができ、引火点は、70~200℃であることができる。このように、前記PGOストリームに比べて重質の炭化水素をより多く含むPFOストリームは、同一の温度条件で、熱分解ガス油に比べて動粘度および引火点が高いことができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームの沸点は、200~288℃、または210~270℃であり、前記PFOストリームの沸点は、289℃~550℃、または300~500℃であることができる。
【0040】
前記PGOストリームおよびPFOストリームの沸点は、それぞれ、多数の炭化水素からなるバルク(bulk)状のPGOストリームおよびPFOストリームの沸点を意味し得る。この際、前記PGOストリームに含まれる炭化水素の種類とPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は、互いに相違することができ、一部の種類は同一であり得る。具体的な例として、前記PGOストリームおよびPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は、上述のように含まれることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10から排出される熱分解ガソリン(RPG)を含むRPGストリームは、SM/BTX製造工程(S4)に供給されてスチレンおよびBTXを製造することができる。前記BTXは、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)およびキシレン(Xylene)の略称であり、前記キシレン(Xylene)は、エチルベンゼン(Ethyl Benzene)、m-キシレン(m-Xylene)、o-キシレン(o-Xylene)およびp-キシレン(p-Xylene)を含むことができる。
【0042】
具体的な例として、前記RPGストリームは、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して、5%以下の段または1%~5%の段から排出される熱分解ガソリン(RPG)を含むストリームであることができる。具体的には、前記ガソリン精留塔10から排出される熱分解ガソリン(RPG)を含むRPGストリームは、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の上部から排出され、熱分解ガソリン(RPG)を含む上部排出ストリームをNCC後段工程(図示せず)に供給し、水素およびC4-炭化水素物質を除去した後、分離されたストリームであることができる。
【0043】
前記ガソリン精留塔10の上部排出ストリームは、NCC後段工程(図示せず)で分離過程を経て、前記NCC後段工程の複数のステップから複数のRPGストリームが排出されるが、前記複数のRPGストリームは成分に応じて、前記SM/BTX製造工程(S4)内に供給される位置がそれぞれ相違することができる。例えば、前記RPGストリームは、前記NCC後段工程(図示せず)のガソリンストリッパー(図示せず)の下部から排出され、スチレンを含むRPGストリームと、前記NCC後段工程(図示せず)のC4分離カラム(図示せず)の下部から排出され、スチレンを含まないRPGストリームを含むことができる。
【0044】
前記スチレンを含むRPGストリームは、C5+炭化水素混合物、具体的にはC5炭化水素~C10炭化水素が豊富な混合物であることができる。例えば、前記スチレンを含むRPGストリームは、イソペンタン(Iso-Pentane)、ノルマルペンタン(n-Pentane)、1,4-ペンタジエン(1,4-Pentadiene)、ジメチルアセチレン(Dimethylacetylene)、1-ペンテン(1-Pentene)、3-メチル-1-ブテン(3-Methyl-1-butene)、2-メチル-1-ブテン(2-Methyl-1-butene)、2-メチル-2-ブテン(2-Methyl-2-butene)、イソプレン(Iso-Prene)、トランス-2-ペンテン(trans-2-Penstene)、シス-2-ペンテン(cis-2-Penstene)、トランス-1,3-ペンタジエン(trans-1,3-Pentadiene)、シクロペンタジエン(Cyclopentadiene)、シクロペンタン(Cyclopentane)、シクロペンテン(Cyclopentene)、ノルマルヘキサン(n-Hexane)、シクロヘキサン(Cyclohexane)、1,3-シクロヘキサジエン(1,3-cyclohexadiene)、ノルマルヘプタン(n-Heptane)、2-メチルヘキサン(2-methmethylh)、3-メチルヘキサン(3-methylhexane)、ノルマルオクタン(n-Octane)、ノルマルノナン(n-Nonane)、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)、エチルベンゼン(Ethylbezene)、m-キシレン(m-xylene)、o-キシレン(o-xylene)、p-キシレン(p-xylene)、スチレン(Styrene)、ジシクロペンタジエン(Dicyclopentadiene)、インデン(Indene)およびインダン(Indane)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。この際、前記RPGストリーム内のC6~C8炭化水素の含量は、40重量%以上、45重量%~75重量%または50重量%~70重量%であることができる。この場合に、前記スチレンを含むRPGストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給されることができる。具体的には、スチレンを含むRPGストリームをSM工程部に供給してスチレンを分離し、前記SM工程部からスチレンを分離した残りの残部ストリームはBTX工程部に供給して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを分離することができる。
【0045】
また、前記スチレンを含まないストリームは、例えば、シクロペンタジエン、ペンタジエン、イソプレン、シクロペンテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、シクロペンタン、2-メチル-ブテン、ノルマルペンタン、ベンゼン、トルエンおよびC6非芳香族炭化水素からなる群から選択される1種以上を含むことができる。この場合に、前記スチレンを含まないRPGストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給されることができる。具体的には、スチレンを含んでいないRPGストリームは、SM工程部を経ず、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給されることで、前記SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給した時に発生する分離、混合などの無駄な工程ステップを経ないことから、エネルギーを低減することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記ナフサ分解工程(S1)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームおよび熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを、フィードストリームとして蒸留塔50に供給することができる。
【0047】
前記蒸留塔50に供給されたフィードストリームは、PGOストリームおよびPFOストリームをすべて含むものであり、重質留分(heavies)と軽質留分(lights)の両方を含むことができる。このように、前記重質留分と軽質留分の両方を含むフィードストリームは、前記蒸留塔50に供給され、前記蒸留塔50の上部から軽質PFOストリームを含む上部排出ストリームの排出により、蒸留塔50の下部から動粘度および引火点が調節された下部排出ストリームを排出することができる。具体的な例として、前記PGOストリームに比べて重質留分の含量が高いPFOストリームは、PGOストリームに比べて動粘度および引火点が高く、前記PFOストリームに比べて軽質留分の含量が高いPGOストリームは、PFOストリームに比べて動粘度および引火点が低いことができる。このように相反する二つのストリームをすべて含む前記フィードストリーム内で上記のように軽質留分の除去により、目的とする動粘度および引火点を有するストリームを蒸留塔50の下部から排出させることができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記フィードストリームは、前記PFOストリームとPGOストリームを混合した混合油ストリームであることができる。この場合、例えば、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率(以下、「PGOストリームの流量の比率」とする。)は、0.35~0.7、0.4~0.65、または0.4~0.6であることができ、これに限定されるものではない。ここで、「流量」は、単位時間当たりの重量の流れを意味し得る。具体的な例として、前記流量の単位は、kg/hであることができる。
【0049】
前記混合油ストリームの沸点は、200℃~600℃、210~550℃または240℃~500℃であることができる。前記混合油ストリームの沸点は、多数の炭化水素からなるバルク(bulk)状の混合油ストリームの沸点を意味し得る。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記混合油ストリームを前記蒸留塔50に供給する前に、第1熱交換器40を通過させた後、前記蒸留塔50に供給することができる。前記混合油ストリームは、第1ストリッパー20または第2ストリッパー30から排出された高温のPGOストリームおよびPFOストリームを混合して生成されたものであり、前記混合油ストリームの前記蒸留塔50への供給温度を最適に調節するとともに、必要に応じて顕熱を工程内で再使用することで、工程エネルギーを低減することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記混合油ストリームは、前記蒸留塔50の全体の段数に対して、10%~70%の段、15%~60%の段、または20%~50%の段で供給されることができる。この範囲内で、蒸留塔50を効率的に運転することができ、無駄なエネルギー消費を著しく低減することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔50に供給されるフィードストリームの流量に対する前記蒸留塔50の上部排出ストリームの流量の比率(以下、「蒸留塔50の蒸留比率」とする)は、0.01~0.2、0.01~0.15、または0.03~0.15であることができる。すなわち、前記蒸留塔50の蒸留比率を0.01~0.2、0.01~0.15、0.03~0.15または0.1~0.2に調節することができる。
【0053】
上記の範囲の蒸留塔50の蒸留比率は、前記蒸留塔50の上部排出ストリームが移送される配管に設置された流量調節装置(図示せず)により調節され、前記蒸留塔50の性能は、蒸留比率、および第2熱交換器51を用いて、蒸留塔50の上部排出ストリームの還流比(reflux ratio)を調節することで行われることができる。この際、前記還流比は、流出ストリームの流量に対する還流ストリームの流量の比を意味し得、具体的な例として、前記蒸留塔50の上部排出ストリームの還流比とは、前記蒸留塔50の上部排出ストリームの一部を分岐して還流ストリームとして前記蒸留塔50に還流させ、残部は、流出ストリームとしてSM/BTX製造工程(S4)に供給する場合に、前記流出ストリームの流量に対する還流ストリーム流量の比(以下、「還流比」とする)を意味し得る。より具体的な例として、前記還流比は、0.01~10、0.1~7、または0.15~5であることができる。
【0054】
前記ガス化工程(S3)の最前段に位置する燃焼室(図示せず)には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成することができる。この際、前記合成ガス生成反応は、20~80気圧の高圧で行われ、燃焼室内で、原料は、2~40m/sの速い流速で移動しなければならない。したがって、前記合成ガス生成反応のために高い圧力で原料が速い流速でポンピングされる必要があるが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が適正範囲を超える場合、ポンパビリティー(pumpability)の低下によって高価のポンプを使用しなければならないか、エネルギー消費量が増加して費用が増加し、所望の条件でのポンピング(pumping)が不可能になり得る。さらに、ポンピングがスムーズに行われず、原料を燃焼室に均一に供給することができない問題がある。また、燃焼室内の差圧が上昇するか、小さい粒子径で原料の均一な噴霧(atomizing)がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、生産性が低下し、多量のガス化剤が必要となり、酸素過剰による爆発の恐れを高める。この際、前記動粘度の適正範囲は、合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて多少差があり得るが、一般的に、原料の動粘度は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に原料が供給される時点の原料の温度で、費用、生産性および安定性の面で、低いほど有利であり、300cSt以下の範囲を有することが好ましく、この範囲内で、燃焼室内の差圧の上昇を防止し、噴霧がスムーズに行われて燃焼性能を向上させることができ、燃焼反応がスムーズに行われて反応性を向上させることができる。
【0055】
また、前記燃焼室に供給される原料の引火点が適正範囲未満である場合、低い引火点によって燃焼反応の発生前に、バーナー(Burner)で火炎が生じ得、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷し得る。この際、前記引火点の適正範囲は、燃焼室で合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて変わることができるが、一般的に、原料の引火点は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に原料が供給される時点の原料の温度より25℃以上高い範囲を有することが好ましく、この範囲内で、原料の損失、爆発の恐れおよび燃焼室の耐火物の損傷を防止することができる。
【0056】
これにより、本発明では、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給される原料である前記蒸留塔50の下部排出ストリームの動粘度および引火点を適正範囲に制御するために、前記蒸留塔50の蒸留比率を調節することができる。すなわち、前記蒸留塔50の蒸留比率を調節することで、前記蒸留塔50の下部排出ストリームが前記燃焼室に供給される時点の温度での前記蒸留塔50の下部排出ストリームの動粘度と引火点を適正範囲に制御することができる。さらに、前記蒸留塔50の蒸留比率を調節することで、前記蒸留塔50の上部排出ストリーム内の組成が制御され、前記蒸留塔50の上部排出ストリームをSM/BTX製造工程(S4)に供給する場合、スチレンおよびBTXの生産量を増加させることができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、第3熱交換器52は、一般的なリボイラ(reboiler)として運転されることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点の温度は、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの前記燃焼室への供給時点の引火点より25℃以上低く、300cSt以下の動粘度を有する温度であることができる。すなわち、前記蒸留塔50の下部排出ストリームは、燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下または1cSt~300cStであることができ、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上または25℃~150℃高いことができる。この際、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室に供給される時点の温度は、20℃~90℃、または30℃~80℃であることができる。前記範囲内の蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点の温度で動粘度は、300cSt以下であることができ、引火点より25℃以上低いことができ、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転の条件を満たすことができる。
【0059】
具体的には、前記蒸留塔50の蒸留比率を0.01~0.2、0.01~0.15、または0.03~0.15に調節することで、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点で、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの引火点は、前記供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することができる。
【0060】
前記蒸留塔50の蒸留比率が0.01~0.2である場合には、引火点および動粘度がいずれも低い状況で引火点が低い軽い物質を除去することで、動粘度の増加幅より引火点の増加幅が増加することから、蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点での引火点および動粘度を上述の引火点および動粘度の範囲に制御することができる。一方、前記蒸留塔50の蒸留比率が0.01未満である場合には、蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点で引火点が、蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点での温度より25℃以上高く制御することが難しく、前記蒸留塔50の蒸留比率が0.2を超える場合には、引火点の増加幅より動粘度の増加幅が増加するため、動粘度を300cSt以下に制御し難い問題がある。
【0061】
このように、前記蒸留塔50の蒸留比率を調節することで、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの前記燃焼室への供給時点で引火点および動粘度を制御することができ、これにより、ガス化工程(S3)の原料としての使用に適する物性を有するようにすることができる。
【0062】
一方、例えば、
図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、
図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、または、
図4に図示されているように、前記PGOストリームおよびPFOストリームの混合油ストリームを本発明による前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給する場合には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たす温度が存在しない問題が発生し得る。このように、前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度で、PFOストリーム、PGOストリーム、または混合油ストリームが燃焼室に供給される場合には、燃焼室内差圧が上昇するか、噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高めるか、または燃焼反応の発生前に、バーナーで火炎が生じることがあり、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題が発生し得る。
【0063】
一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームは、NCC工程で最も重い残渣油であり、単純燃料として使用されており、このように、単純燃料として使用される場合には、組成および物性を調節する必要がなかった。しかし、本発明のように、合成ガスの原料として使用するためには、特定の物性、例えば、動粘度と引火点を同時に満たす必要がある。しかし、PGOストリームは、動粘度が満たされても引火点が過剰に低く、PFOストリームは、引火点は高くても動粘度が過剰に高く、それぞれのストリームは、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としての使用が難しかった。また、前記PFOストリームおよびPGOストリームの全体ストリームを合成ガスの原料として使用する場合、一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームの全体ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率は、0.35~0.7程度であり、この場合にも、引火点以下でガス化工程の原料として使用するための動粘度の条件を満たすことができず、合成ガスの原料としての使用が難しかった。これに対して、本発明では、前記PFOストリームおよびPGOストリームの全量を蒸留塔50に供給して前処理することで、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点で、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの引火点は、前記供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度より25℃以上高い範囲に制御するとともに、動粘度は、前記供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度で300cSt以下の範囲に制御することができ、これにより、合成ガスの原料として使用するための条件を満たすことができた。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔50の下部排出ストリームは、ガス化工程(S3)に供給される前に第4熱交換器53を通過させた後、ガス化工程(S3)に供給することができる。この場合、前記蒸留塔50の下部排出ストリームのガス化工程(S3)への供給温度を調節するとともに、廃熱として廃棄される前記蒸留塔50の下部排出ストリームの顕熱を、熱交換器を用いて、工程内で再使用することで、工程エネルギーを低減することができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔50の上部排出ストリームは、SM/BTX製造工程(S4)に供給してスチレンを含む芳香族炭化水素を製造することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔50の下部排出ストリームは、C10+炭化水素の含量が80重量%以上または80重量%~98重量%であり、C8-炭化水素の含量が5重量%以下または0.01重量%~5重量%であることができ、前記蒸留塔50の上部排出ストリームは、C6~C8芳香族炭化水素の含量が50重量%以上、55重量%~95重量%または55重量%~85重量%であり、スチレンの含量が20重量%~50重量%、20重量%~45重量%または25重量%~45重量%であることができる。
【0067】
例えば、前記C8-炭化水素は、ペンタン、ペンテン、ペンタジエン、メチルブテン、シクロペンタン、シクロペンテン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記C8-炭化水素は、上述のC8-炭化水素の種類をすべて含むことができ、これに限定されるものではない。
【0068】
また、例えば、前記C10+炭化水素は、ジシクロペンタジエン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラメチルベンゼン、フルオレンおよびアントラセンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記C10+炭化水素は、上述のC10+炭化水素の種類をすべて含むことができ、これに限定されるものではない。
【0069】
また、例えば、前記C6~C8芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレンからなる群から選択される1種以上を含むことができ、C8芳香族炭化水素は、スチレンを含むことができる。具体的な例として、前記C6~C8芳香族炭化水素は、上述のC6~C8芳香族炭化水素の種類をすべて含むことができ、これに限定されるものではない。
【0070】
このように、前記蒸留塔50の下部排出ストリームを合成ガスの原料として使用し、C6~C8芳香族炭化水素の含量が50重量%以上であり、スチレンの含量が20重量%~50重量%である前記蒸留塔50の上部排出ストリームをSM/BTX製造工程(S4)に供給することで、熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するとともに、熱分解燃料油内の芳香族炭化水素を回収して、スチレンを含む芳香族炭化水素の生産量を増加させることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給された蒸留塔50の下部排出ストリームを700℃以上、700℃~2000℃、または800℃~1800℃の温度で燃消させるステップをさらに含むことができる。また、前記蒸留塔50の下部排出ストリームをガス化剤とともに前記燃焼室に供給することができる。この際、前記ガス化剤は、酸素、空気、水蒸気からなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的な例として、前記ガス化剤は、酸素および水蒸気であることができる。
【0072】
このように、前記蒸留塔50の下部排出ストリームをガス化剤の存在下で、高温で燃消させることで、合成ガスが製造されることができる。本発明の製造方法により製造された前記合成ガスは、一酸化炭素と水素を含み、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素、シアン化水素、および硫化カルボニルからなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記SM/BTX製造工程(S4)は、前記RPGストリームおよび前記蒸留塔50の上部排出ストリームの供給を受けてスチレンとともにBTXを製造する工程であり、SM工程部およびBTX工程部を含むことができる。この際、前記SM工程部は、BTX工程部の前段に位置することができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記RPGストリームのうちスチレンを含むRPGストリームおよび前記蒸留塔50の上部排出ストリームは、SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給されてスチレンを製造することができる。この際、前記スチレンを含むRPGストリームおよび蒸留塔50の上部排出ストリームは、別のストリームまたは混合されたストリームとして前記SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給されることができる。
【0075】
前記スチレンを含むRPGストリームおよび前記蒸留塔50の上部排出ストリームは、前記SM工程部のC7分離カラムに供給されることができる。前記SM工程部のC7分離カラムでは、C7-炭化水素を含む上部排出ストリームと、C8+炭化水素を含む下部排出ストリームとに分離されることができる。
【0076】
前記C8+炭化水素を含む下部排出ストリームは、前記SM工程部のC8分離カラムに供給されることができる。前記SM工程部のC8分離カラムでは、C8炭化水素を含む上部排出ストリームと、C9+炭化水素を含む下部排出ストリームとに分離されることができる。
【0077】
前記SM工程部のC8分離カラムの上部排出ストリームは、前記SM工程部の抽出蒸留カラムに供給することができ、前記SM工程部の抽出蒸留カラムでは、抽出溶媒を用いて、前記SM工程部のC8分離カラムの上部排出ストリーム内に含まれたスチレンとキシレンを含むその他の炭化水素を分離することができる。具体的には、前記SM工程部の抽出蒸留カラムから前記C8分離カラムの上部排出ストリーム内のスチレンを選択的に抽出して下部排出ストリームとして分離し、上部排出ストリームとしてその他の炭化水素を分離することができる。この際、前記SM工程部の抽出蒸留カラムの下部排出ストリームは、溶媒回収カラムに供給して抽出溶媒を除去した後、スチレンを分離することができる。
【0078】
前記SM工程部から排出される残部ストリームは、BTX工程部に供給することができる。具体的には、前記SM工程部のC7分離カラムの上部排出ストリームと、C8分離カラムの下部排出ストリームおよび抽出蒸留カラムの上部排出ストリームが混合されて、残部ストリームとしてBTX工程部の水添脱硫部に供給されることができる。また、前記BTX工程部に供給されたSM工程部の残部ストリームを用いて、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造することができる。
【0079】
本発明の一実施形態によると、前記RPGストリームのうちスチレンを含まないRPGストリームおよびSM工程部の残部ストリームは、BTX工程部に供給されて、ベンゼンまたはBTXを製造することができる。
【0080】
本発明の一実施形態によると、前記スチレンを含まないRPGストリームおよびSM工程部の残部ストリームは、BTX工程部の水添脱硫部に供給して別に供給される水素および触媒の存在下で、水添脱硫反応させることができる。前記触媒は、選択的水素化が可能な触媒であることができる。例えば、前記触媒は、パラジウム、白金、銅およびニッケルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。場合に応じて、前記触媒は、γアルミナ、活性炭およびゼオライトからなる群から選択される1種以上の担持体に担持させて使用することができる。
【0081】
前記BTX工程部の水添脱硫部排出ストリームは、BTX工程部のC5分離カラムに供給されることができる。前記C5分離カラムからC5-芳香族炭化水素を含む上部排出ストリームは排出させ、C6+芳香族炭化水素を含む下部排出ストリームはC7分離カラムに供給することができる。
【0082】
前記BTX工程部のC7分離カラムでは、C7-芳香族炭化水素を含む上部排出ストリームはBTX工程部の抽出蒸留カラムに供給し、C8+芳香族炭化水素を含む下部排出ストリームはBTX工程部のキシレン分離カラムに供給することができる。
【0083】
前記BTX工程部の抽出蒸留カラムでは、抽出溶媒を用いて、前記C7分離カラムの上部排出ストリーム内に含まれた芳香族炭化水素と非芳香族炭化水素を分離することができる。具体的には、前記BTX工程部の抽出蒸留カラムから前記BTX工程部のC7分離カラムの上部排出ストリーム内の芳香族炭化水素を選択的に抽出して下部排出ストリームとして分離し、上部排出ストリームとして非芳香族炭化水素を分離することができる。例えば、前記抽出溶媒は、スルホラン、アルキル-スルホラン、N-ホルミルモルホリン、N-メチルピロリドン、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジエチレングリコールからなる群から選択される1種以上を含むことができる。また、前記抽出溶媒は、共溶媒(co-solvent)として水をさらに含むことができる。
【0084】
前記BTX工程部の抽出蒸留カラムの下部排出ストリームは、C7-芳香族炭化水素を含むものであり、BTX工程部のベンゼン分離カラムに供給され、前記BTX工程部のベンゼン分離カラムの上部排出ストリームからベンゼンを分離し、下部排出ストリームは、BTX工程部のトルエン分離カラムに供給することができる。この際、前記BTX工程部のベンゼン分離カラムに供給される抽出蒸留カラムの下部排出ストリームは、抽出溶媒を除去するための溶媒回収カラムを経た後、ベンゼン分離カラムに供給されることができる。
【0085】
前記BTX工程部のベンゼン分離カラムの下部排出ストリームは、C7芳香族炭化水素を含むものであり、BTX工程部のトルエン分離カラムに供給され、前記トルエン分離カラムの上部排出ストリームからトルエンを分離し、下部排出ストリームは、BTX工程部のキシレン分離カラムに供給することができる。
【0086】
前記BTX工程部のキシレン分離カラムでは、前記BTX工程部のC7分離カラムの下部排出ストリームとトルエン分離カラムの下部排出ストリームの供給を受けて、上部排出ストリームからキシレンを分離し、残りのC9+炭化水素重質物質は、下部から排出させることができる。
【0087】
本発明の一実施形態によると、合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法では、必要な場合、バルブ、ポンプ、分離器および混合器などの装置をさらに設置することができる。
【0088】
以上、本発明による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示している工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による合成ガスおよび芳香族炭化水素の製造方法を実施するために適宜応用されて用いられることができる。
【0089】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0090】
実施例
実施例1~5
図1に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスとスチレンおよびBTXの製造を行った。
【0091】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して1%の段から排出された上部排出ストリームをNCC後段工程(図示せず)に供給し、前記NCC後段工程からスチレンを含むRPGストリームとスチレンを含まないRPGストリームを排出した。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、この際、前記PGOストリーム内のC10~C12炭化水素の含量は86重量%と確認された。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、この際、前記PFOストリーム内のC13+炭化水素の含量は89重量%と確認された。また、前記PGOストリームの引火点は25.5℃であり、40℃での動粘度は75cStであり、前記PFOストリームの引火点は98℃であり、40℃での動粘度は660cStであった。
【0092】
前記PGOストリームおよびPFOストリームを混合した混合油ストリームは蒸留塔50に供給した後、前記蒸留塔50の蒸留比率を調節して蒸留塔50の上部排出ストリームを排出させ、蒸留塔50の下部排出ストリームは酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給し、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを製造した。この際、前記混合油ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率は0.42であり、引火点は70℃、40℃での動粘度は365cStであった。また、前記混合油ストリームの蒸留塔50の還流比は2.5に制御した。
【0093】
前記スチレンを含むRPGストリームと前記蒸留塔50の上部排出ストリームは、SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給し、C7分離カラム、C8分離カラムおよび抽出蒸留カラムを用いてスチレンを製造し、前記SM工程部の残部ストリームはBTX工程部に供給した。
【0094】
前記スチレンを含まないRPGストリームおよび前記SM工程部の残部ストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給し、水添脱硫部、C5分離カラム、C7分離カラム、抽出蒸留カラム、ベンゼン分離カラム、トルエン分離カラムおよびキシレン分離カラムを用いて、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造した。
【0095】
下記表1には、前記蒸留塔50の下部排出ストリームおよび上部排出ストリームでのC6~C8芳香族炭化水素の含量比率、前記蒸留塔50の蒸留比率、蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点温度および引火点を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点は、第4熱交換器53を用いて、動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。具体的には、動粘度を300cStに制御する温度条件を導き出すために、当該サンプルの動粘度を温度別に測定した後、温度と粘度関係式(Correlation)を設けて内挿法(Interpolation)を用いて計算した。
【0096】
また、下記表3には、前記SM/BTX製造工程(S4)で生産されるスチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの生産量を示した。
【0097】
動粘度と引火点は、下記のように測定し、これは、実施例および比較例の両方で適用した。
【0098】
(1)動粘度:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、Anton Paar社製のSVM 3001を使用してASTM D7042に準じて測定した。また、前記各サンプルは動粘度測定温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0099】
(2)引火点:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、TANAKA社製のapm-8を使用してASTM D93に準じて測定した。また、前記各サンプルは、引火点の予想温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0100】
比較例
比較例1
図2に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0101】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出した。
【0102】
前記PFOストリームは、酸素および蒸気とともに、ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。この際、前記PFOストリーム内のC13+の含量は89重量%と確認され、前記PFOストリームの引火点は98℃であり、40℃での動粘度は660cStであった。
【0103】
また、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して1%の段から排出された上部排出ストリームをNCC後段工程(図示せず)に供給し、前記NCC後段工程からスチレンを含むRPGストリームとスチレンを含まないRPGストリームを排出した。
【0104】
前記スチレンを含むRPGストリームはSM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給し、C7分離カラム、C8分離カラムおよび抽出蒸留カラムを用いてスチレンを製造し、前記SM工程部の残部ストリームはBTX工程部に供給した。
【0105】
前記スチレンを含まないRPGストリームおよびSM工程部の残部ストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給して、水添脱硫部、C5分離カラム、C7分離カラム、抽出蒸留カラム、ベンゼン分離カラム、トルエン分離カラムおよびキシレン分離カラムを用いて、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造した。
【0106】
下記表2には、前記PFOストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記PFOストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0107】
また、下記表3には、前記SM/BTX製造工程(S4)で生産されるスチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの生産量を示した。
【0108】
比較例2
図3に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0109】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出した。
【0110】
前記PGOストリームは、酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。この際、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は86重量%と確認され、前記PGOストリームの引火点は25.5℃であり、40℃での動粘度は75cStであった。
【0111】
また、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して1%の段から排出された上部排出ストリームをNCC後段工程(図示せず)に供給し、前記NCC後段工程からスチレンを含むRPGストリームとスチレンを含まないRPGストリームを排出した。
【0112】
前記スチレンを含むRPGストリームは、SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給して、C7分離カラム、C8分離カラムおよび抽出蒸留カラムを用いてスチレンを製造し、前記SM工程部の残部ストリームはBTX工程部に供給した。
【0113】
前記スチレンを含まないRPGストリームおよびSM工程部の残部ストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給して、水添脱硫部、C5分離カラム、C7分離カラム、抽出蒸留カラム、ベンゼン分離カラム、トルエン分離カラムおよびキシレン分離カラムを用いて、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造した。
【0114】
下記表2には、前記PGOストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記PGOストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0115】
また、下記表3には、前記SM/BTX製造工程(S4)で生産されるスチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの生産量を示した。
【0116】
比較例3
図4に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0117】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、この際、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は86重量%と確認された。前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、この際、前記PFOストリーム内のC13+の含量は89重量%と確認された。
【0118】
その後、前記PGOストリームおよびPFOストリームを混合することで、混合油ストリームを生成した。この際、前記PGOストリームの引火点は25.5℃であり、40℃での動粘度は75cStであり、前記PFOストリームの引火点は98℃であり、40℃での動粘度は660cStであった。また、前記混合油ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率は0.42であった。その後、前記混合油ストリームを酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。
【0119】
また、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して1%の段から排出された上部排出ストリームをNCC後段工程(図示せず)に供給し、前記NCC後段工程からスチレンを含むRPGストリームとスチレンを含まないRPGストリームを排出した。
【0120】
前記スチレンを含むRPGストリームはSM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給し、C7分離カラム、C8分離カラムおよび抽出蒸留カラムを用いてスチレンを製造し、前記SM工程部の残部ストリームはBTX工程部に供給した。
【0121】
前記スチレンを含まないRPGストリームおよびSM工程部の残部ストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のBTX工程部に供給して、水添脱硫部、C5分離カラム、C7分離カラム、抽出蒸留カラム、ベンゼン分離カラム、トルエン分離カラムおよびキシレン分離カラムを用いて、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを製造した。
【0122】
下記表2には、前記混合油ストリームの引火点、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0123】
また、下記表3には、前記SM/BTX製造工程(S4)で生産されるスチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの生産量を示した。
【0124】
比較例4
前記実施例1で、前記蒸留塔50の上部排出ストリームをSM/BTX製造工程(S4)に供給しない以外は、前記実施例1と同じ方法でスチレンおよびBTXを製造した。
【0125】
また、下記表3には、前記SM/BTX製造工程(S4)で生産されるスチレン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの生産量を示した。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
前記表1および表2において、工程運転基準を満たすか否かは、実施例1~5および比較例1~3それぞれで燃焼室に供給されるストリームに対して、前記燃焼室への供給時点での動粘度が300cStになるようにする前記燃焼室への供給時点での温度が引火点より25℃以上低い場合には〇、そうではない場合には×と表示した。
【0130】
また、前記表3で、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレン生産量それぞれに対しては、比較例1でのベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレン生産量(100%)を基準に計算された相対的なベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレン生産量の比率で示した。
【0131】
前記表1および表2を参照すると、本発明の合成ガスの製造方法にしたがって、蒸留塔50の蒸留比率を適正範囲(0.01~0.2)に調節して下部排出ストリームを生成した後、前記蒸留塔50の下部排出ストリームをガス化工程(S3)のための燃焼室に供給した実施例2~4の場合、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点で、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記燃焼室への供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することを確認することができる。このような引火点および動粘度範囲を同時に有することで、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転条件を満たすことを確認した。
【0132】
特に、前記
図1に図示されているように、前処理工程(S2)で蒸留塔50の蒸留比率が0.03~0.15の範囲内に制御された実施例3は、蒸留塔50の下部排出ストリームの燃焼室への供給時点で、前記蒸留塔50の下部排出ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度より30℃以上高く、より安定的な運転が可能であることを確認した。
【0133】
また、前記蒸留塔50の蒸留比率を適正範囲(0.01~0.2)に調節していない状態で排出される蒸留塔50の下部排出ストリームを形成した実施例1および5を参照すると、前記燃焼室への供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリーム温度で動粘度を300cStに制御する時に、前記燃焼室への供給時点の蒸留塔50の下部排出ストリームの温度が引火点より25℃以上低く制御されないことを知ることができる。
【0134】
一方、
図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給するか(比較例1)、
図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給するか(比較例2)、または、前記
図4に図示されているように、PGOストリームおよびPFOストリームの混合油ストリームを本発明による前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給する場合(比較例3)には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たす温度が存在しないことを確認することができる。このように、適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たすことができない比較例1~3それぞれのストリームは、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転条件を満たすことができないことを確認した。
【0135】
前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度でガス化工程(S3)の原料が燃焼室に供給される場合には、燃焼室内差圧が上昇するか噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高めるか、または燃焼反応の発生前に、バーナーで火炎が生じ得、燃焼室内火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題が発生する問題がある。
【0136】
また、前記表3を参照すると、前記実施例1~5で、前記蒸留塔50の蒸留比率に応じて、前記SM/BTX製造工程(S4)でのベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレンの生産量が変化し、比較例に比べて生産量を増加したことを確認することができる。具体的には、前記蒸留塔50の蒸留比率が0.01以上に制御される場合には、蒸留塔50の上部排出ストリームにC6~C8芳香族炭化水素が排出され、特に、前記蒸留塔50の蒸留比率が0.1以上である場合には、C6~C8芳香族炭化水素の全量が蒸留塔50の上部から排出されることを確認することができた。したがって、前記蒸留塔50の蒸留比率を0.1~0.2に制御することが、合成ガスとともにスチレンおよびBTXを製造するための最適の工程条件であることを確認することができた。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
前記スチレンを含むRPGストリームは、C5+炭化水素混合物、具体的にはC5炭化水素~C10炭化水素が豊富な混合物であることができる。例えば、前記スチレンを含むRPGストリームは、イソペンタン(Iso-Pentane)、ノルマルペンタン(n-Pentane)、1,4-ペンタジエン(1,4-Pentadiene)、ジメチルアセチレン(Dimethylacetylene)、1-ペンテン(1-Pentene)、3-メチル-1-ブテン(3-Methyl-1-butene)、2-メチル-1-ブテン(2-Methyl-1-butene)、2-メチル-2-ブテン(2-Methyl-2-butene)、イソプレン(Iso-Prene)、トランス-2-ペンテン(trans-2-Pentene)、シス-2-ペンテン(cis-2-Pentene)、トランス-1,3-ペンタジエン(trans-1,3-Pentadiene)、シクロペンタジエン(Cyclopentadiene)、シクロペンタン(Cyclopentane)、シクロペンテン(Cyclopentene)、ノルマルヘキサン(n-Hexane)、シクロヘキサン(Cyclohexane)、1,3-シクロヘキサジエン(1,3-cyclohexadiene)、ノルマルヘプタン(n-Heptane)、2-メチルヘキサン(2-methylhexane)、3-メチルヘキサン(3-methylhexane)、ノルマルオクタン(n-Octane)、ノルマルノナン(n-Nonane)、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)、エチルベンゼン(Ethylbezene)、m-キシレン(m-xylene)、o-キシレン(o-xylene)、p-キシレン(p-xylene)、スチレン(Styrene)、ジシクロペンタジエン(Dicyclopentadiene)、インデン(Indene)およびインダン(Indane)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。この際、前記RPGストリーム内のC6~C8炭化水素の含量は、40重量%以上、45重量%~75重量%または50重量%~70重量%であることができる。この場合に、前記スチレンを含むRPGストリームは、前記SM/BTX製造工程(S4)のSM工程部に供給されることができる。具体的には、スチレンを含むRPGストリームをSM工程部に供給してスチレンを分離し、前記SM工程部からスチレンを分離した残りの残部ストリームはBTX工程部に供給して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを分離することができる。
【国際調査報告】