IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特表2023-534749少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス
<>
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図1
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図2
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図3
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図4
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図5
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図6
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図7
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図8
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図9
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図10
  • 特表-少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(54)【発明の名称】少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20230803BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504564
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2021070515
(87)【国際公開番号】W WO2022018199
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】20187244.7
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】エムゲ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HK05
4F205HK22
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
発明は、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器に関し、機器は
第1の保持機器(3)及び第2の保持機器(5)を備えそれらの間にライナー(1)を載せる支持体(7)であって、第1の保持機器(3)及び第2の保持機器(5)は、ライナー(1)が第1の保持機器(3)及び第2の保持機器(3)を通って延びる中心回転軸線(9)の周りに回転できるように形成されている支持体(7)と、
繊維構造体(13)を給送する少なくとも2つの可動アーム(17)と、を備え、
支持体(7)は、ライナー(1)が中心回転軸線(9)と平行に軸方向に移動可能であり、繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は、中心回転軸線(9)と垂直に移動可能であるように形成されている。発明は、機器を使用して、複合材部品を生産するプロセスにさらに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器であって
第1の保持機器(3)及び第2の保持機器(5)を備えそれらの間にライナー(1)を載せる支持体(7)であって、前記第1の保持機器(3)及び前記第2の保持機器(5)は、前記ライナー(1)が前記第1の保持機器(3)及び前記第2の保持機器(5)を通って延びる中心回転軸線(9)の周りに回転できるように形成されている支持体(7)と、
繊維構造体(13)を給送する少なくとも2つの可動アーム(17)と、を備え、
前記支持体(7)は、前記ライナー(1)が前記中心回転軸線(9)と平行に軸方向に移動可能であり、前記繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は、各々が曲がり可能及びねじれ可能である少なくとも2つの結合部を含むロボットアームであるように形成されている、機器。
【請求項2】
前記繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は前記繊維構造体を含侵させる機器(23)を含み、前記繊維構造体を含侵させる前記機器(23)は、好ましくはマトリックス材を収容する処理槽(31)と、前記繊維構造体(13)を前記処理槽(31)内へ押し込む偏向ユニットと、排水ユニットとを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記繊維構造体を含侵させる前記機器(23)は、繊維含有量を体積で調整するための機器(100)を含む、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記繊維構造体(13)に含侵させる少なくとも1つの機器(23)は、前記中心回転軸線(9)と垂直に移動可能でしかも前記繊維構造体を給送する各可動アーム(17)の端部に置かれている、請求項2又は3に記載の機器。
【請求項5】
前記繊維構造体を給送する前記可動アーム(17)は、前記繊維構造体を含侵させる前記機器(23)が、前記繊維構造体を給送する前記可動アーム(17)の端部の位置と無関係に水平な向きを保つように、形成されている、請求項2から4の何れか1項に記載の機器。
【請求項6】
前記支持体(7)及び前記繊維構造体を給送する前記可動アーム(17)は、中心回転軸線(9)が水平方向に対して65°から90°までの範囲の角度で延びるように配列されている、請求項1から5の何れか1項に記載の機器。
【請求項7】
前記繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は、繊維構造体用の蓄え部(21)に割り当てられる、請求項1から6の何れか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は前記繊維構造体(13)を切断する切断機器を含み、及び/又は前記繊維構造体(13)を給送する各可動アーム(17)は、前記繊維構造体(13)を前記ライナー(1)上に置くペンチを含む、請求項1から7の何れか1項に記載の機器。
【請求項9】
切断機器(12)と、含侵された繊維を前記ライナー(1)上に取り付けるペンチ(18)を備えたスリーブ(16)とが、前記第1の保持機器(3)又は前記第2の保持機器(5)上に置かれている、請求項1から7の何れか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記支持体(7)は可動アーム(11)に載せられ、これによりライナー蓄え部からライナー(1)を得ること、前記繊維構造体(13)を適用する位置に前記ライナー(1)を移動させること、及び前記繊維構造体を適用した後に、前記ライナー(25)を次の作動ユニットに置くことが可能になる、請求項1から9の何れか1項に記載の機器。
【請求項11】
マトリックス材を混合し及び計量供給する機器(201)を含み、前記マトリックス材を混合し及び計量供給する前記機器(201)は、前記繊維構造体を含侵させる機器(23)のすぐ近くに位置決めされた混合ヘッドをさらに含む、請求項2から10の何れか1項に記載の機器。
【請求項12】
少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化複合材層を含む複合材部品を生産するプロセスであって、
(a)請求項1から11の何れかに記載の機器の第1の保持機器(3)及び第2の保持機器(5)を用いてライナー蓄え部からライナー(1)を得る工程と、
(b)繊維構造体(3)を適用するための位置に前記ライナー(1)を移動させる工程と、
(c)前記ライナー上に前記繊維構造体を取り付ける工程と、
(d)前記繊維構造体を給送する前記可動アームによって前記ライナー上に前記繊維構造体を適用する工程であって、前記繊維構造体は、前記ライナー上に適用される前に前記繊維構造体を含侵させる機器内でマトリックス材を含侵され、前記ライナーは、前記繊維構造体を適用する間に前記中央回転軸線の周りに回転され及び前記中心回転軸線と平行に軸方向に移動され、こうして前記繊維構造体を前記ライナー上に予め定めたパターンで適用する工程と、
(e)前記繊維構造体の適用が終了した後に各繊維構造体を切断する工程と、
(f)前記繊維構造体が適用されたライナーを硬化場所に置く工程と、
(g)前記硬化場所のモールド内に樹脂を随意的に注入し、前記モールドには前記繊維構造体が適用された前記ライナーが置かれ、こうして表面被覆層を生成する工程と、
(h)マトリックス材と、樹脂が注入された場合は樹脂とを硬化させる工程と、を備える、プロセス。
【請求項13】
前記ライナー(1)は、堅いライナー又は膨張可能な空気袋である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ライナー(1)は、前記繊維構造体(13)を切断する前に予め定めた位置に移動される、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記繊維構造体が適用された前記ライナー(25)は、前記マトリックス材の硬化中に水平回転軸線の周りに回転される、請求項12から14の何れかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器に関する。発明は、さらに、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品は圧力タンクであり、圧力タンクは、気体、例えば水素を蓄えるために特に使用することができる。
【0003】
そのような圧力タンクは、通常フィラメントを巻き付けるプロセスによって生産され、このプロセスでは支持体に置かれたライナーが支持体上で回転し、繊維がライナーの周りに巻き付けられる。繊維は、通常、ライナーの回転軸線と平行に移動可能な、給送する機器を使用することによって適用される。繊維の適用中にライナーが回転している間に、繊維はライナーの周りに巻き付けられる。ライナーの回転速度と、繊維用の給送する機器がライナーに沿って移動する速度とに応じて、繊維がライナー上に適用されるパターンが生成される。
【0004】
フィラメントを巻き付けるプロセスの種類に応じて、繊維は、ライナーの周りに巻き付ける前にマトリックス材で含侵されることができ、又は繊維は、ライナーの周りに巻き付けた後に含侵されることができる。さらに、両方のプロセスを組み合わせることも可能である。繊維をライナーの周りに巻き付ける前に繊維に含侵させる場合、繊維をライナーの周りに巻き付けるすぐ直前に繊維に含侵させること、又は代替案として巻き付けプロセスとは分離して繊維に含侵させることが可能である。この場合、含侵によって予め含侵された繊維、いわゆるトゥプレグ(towpregs)が得られ、予め含侵された繊維はライナーの周りに巻き付けられる。
【0005】
通常繊維は、ライナーの周りに巻き付ける前に含侵される。含侵のために、繊維用の給送機器は処理槽を含むことができ、処理槽はマトリックス材を含み、繊維は、ライナー上に適用される前に処理槽を通って案内される。そのようなプロセスは、例えばS.T. Peters J. Loerie McLarty著、フィラメント巻き付けASMハンドブック、21巻、合成物、2001年、536頁~549頁に記述されている。
【0006】
R. Schledjewski著、非常に効率的な圧力容器の生産、JECマガジン#34、2007年7月-8月にはプロセスが記述され、このプロセスによりフィラメント巻き付けプロセスによってより圧力タンクを効率的に生産することが可能になり、生産は、含侵された繊維材料をライナーの周囲の周りのいくつかの位置で同時に適用することによって行う。この目的のために、繊維が通ってライナー上に適用される8個の給送穴を有する、多数給送穴リング形巻き付けヘッドが使用される。給送穴の各々は、繊維にマトリックス材を含侵させるための処理槽に接続されている。
【0007】
フィラメント巻き付け用の追加のプロセスが、例えばN.E.H. Shotton-Gale著,きれいなフィラメント巻き付け:プロセス最適化、論点、バーミンガム大学、2012年、12月、70頁から73頁に、又はA. Miaris著、無端の繊維粗紡糸における含侵メカニズムの実験及びシミュレーションによる分析、IVW-Schriftenreihe, Band 102、2012年、6頁から13頁に記述されている。Miarisには、94頁及び95頁に、圧力タンクを生産する複数の給送アームを有する、リング形巻き付けヘッドがさらに記述されている。
【0008】
フィラメント巻き付け用の追加の機器及びフィラメント巻き付けプロセスが、例えば米国特許公開第2007/0221316号、国際特許公開第2016/183073号、又は韓国特許第101906498号に開示されている。
【0009】
国際特許公開第2016/169531号は、含侵された繊維をチューブの周りに巻き付けることによって、車両用の後部開閉板を生産するプロセスについて特に記述している。巻き付けるために、チューブの周りで回転する回転円板リングが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産するには長いサイクル時間が必要であること、及びさらに複合材部品を生産するために既知の機器を使用しても、完全に自動化された生産が可能でないことは不都合である。生産プロセス全体のサイクル時間は各種時間を含み、それらは、後処理を含むライナーを生産するための時間、ライナーをフィラメント巻き付け場所に運ぶための時間、繊維強化ポリマー層を適用するための時間、繊維強化ポリマー層を備えたライナーを硬化場所へ移送するための時間、ポリマー層のポリマーを硬化させるための時間、載置部を組み付けるための時間、後処理工程を実行するための時間、及び圧力試験を含み品質を検査するための時間を含む。以下の記述において、サイクル時間は、特に繊維構造体を取り付けるための時間を指す。
【0011】
従って、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産するための機器及びプロセスであって、サイクル時間が短くしかも完全に自動化された生産が可能である機器及びプロセスを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む複合材部品を生産する機器によって実現され、機器は
第1の保持機器及び第2の保持機器を備えそれらの間にライナーを載せる支持体であって、第1の保持機器及び第2の保持機器は、ライナーが第1の保持機器及び第2の保持機器を通って延びる中心回転軸線の周りに回転するように形成されている支持体と、
繊維構造体を給送する少なくとも2つの可動アームと、を備え、
支持体は、ライナーが中心回転軸線と平行に軸方向に移動することができ、繊維構造体を給送する各可動アームは、各々が曲がり可能及びねじれ可能である少なくとも2つの結合部を含むロボットアームである、ように構成されている。
【0013】
ライナーが軸方向に移動することにより、ライナーを支持体内に収容することが簡単になる。さらに、繊維構造体を給送するための可動アームは、中心回転軸線と垂直に移動で可能に形成され、これにより繊維構造体を給送する巻き付けプロセスを自動的に開始することが可能になり、その理由は、可動アームが移動することによって、曲がりねじりの開始を可動アームによってライナーに移動することができ、こうして巻き付けプロセスの開始を自動化することが可能になるからである。
【0014】
本発明の文脈において、ライナーが中心回転軸線と平行に軸方向に移動可能であることは、他の方向における移動を排除しない。特に、ライナーが中心軸線に対して、例えば0°から35°まで、より好ましくは0°から25°まで、特に0°から15°までの角度だけ傾け得ることが好ましい。これにより繊維構造体をライナーのドーム形区分内により正確に適用することが可能になる。
【0015】
複合材部品を生産する機器は、繊維構造体を給送するために、ただ2つの可動アームを含むことができる。しかしながら、1つの複合材部品を生産するためのサイクル時間を短縮するために、複合材部品を生産する機器は、繊維構造体を給送する2つ以上の可動アームを含むことが好ましい。好ましくは、複合材部品を生産する機器は、2個~12個の繊維構造体を給送する可動アームを含み、より好ましくは3個~10個の繊維構造体を給送する可動アームを含み、そして特に3個~8個の繊維構造体を給送する可動アームを含む。巻き付けプロセスの間、繊維構造体を給送する各可動アームからの複数繊維構造体は、ライナー上で同時に適用することができ、従って例えば、同じ数の繊維層を適用するためには、繊維構造体を給送する可動アームを2倍にするとサイクル時間は半分になり、繊維構造体を給送するアームの数を3倍にするとサイクル時間は3分の1に短縮する。
【0016】
巻き付けプロセスにおいて、繊維構造体をライナー上に適用して、ライナー上に巻き付けられた後の繊維にマトリックス材を含侵させることが可能であり、或いは最初に繊維構造体を含侵させて、含侵された繊維構造体をライナー上に直接適用すること(濡れたフィラメント巻き付け)、又は含侵された繊維構造体を時間遅延をもって適用すること(トゥプレグによる乾燥したフィラメント巻き付け)が可能である。繊維構造体を、強化する繊維とマトリックス材として使用される熱可塑性プラスチック繊維との組み合わせとして適用することも可能である。さらに、含侵された繊維をライナー上に適用すること、及び含侵された繊維の適用が終了した後に追加のマトリックス材を適用することも可能である。
【0017】
好ましくは、繊維構造体は、ライナー上に適用される直前に含侵される。繊維構造体を含侵させるためには、繊維構造体を給送する可動アームに、含侵された繊維を給送することが可能である。しかしながら、繊維構造体を給送する各可動アームは、繊維構造体を含侵させる機器を含むことが好ましい。繊維構造体を含侵させるそのような機器は、例えばチューブを含むことができ、チューブを通って繊維構造体が進み、及びチューブはマトリックス材を含むことができる。繊維構造体は、マトリックス材を含むチューブを通過する間に、マトリックス材で含侵される。しかしながら、繊維に含侵させるためのこの種類の機器には、高速プロセスではチューブ内のマトリックス材中に気泡が生じ、気泡は繊維構造体に同伴し得るという不都合がある。繊維構造体上にある気泡の位置において、繊維構造体はマトリックス材で十分に含侵されておらず、それは複合材部品における欠陥に結びつくことがある。
【0018】
複合材部品に通風孔が形成されるのを回避するために、繊維構造体を含侵させる機器であって、含侵中に繊維構造体から押し出された空気を取り除くことが可能である機器を使用することが好ましい。繊維構造体を含侵させるそのような機器は、例えばマトリックス材を収容するための処理槽と、繊維構造体を処理槽内へ押し込むための偏向ユニットと、排水ユニットとを含む。繊維構造体を含侵させるそれぞれの機器は、例えば国際特許公開第2018/036790号に記述されている。
【0019】
処理槽を使用して、繊維構造体を偏向ユニットによって処理槽内へ押し込めば、繊維構造体に加わる偏向ユニットの圧力のおかげで、空気が繊維構造体から押し出され、繊維構造体がマトリックス材で完全に含侵されるという、追加の効果が得られる。さらに、複合材部品を生産する機器が作動している間に処理槽を補充することが可能であり、それによりマトリックス材を補充するために中断することが不要な、継続する作動が可能になる。マトリックス材は、それによって処理槽内へ自動的に充填することができ、充填には、例えばポンプ及びチューブを用いて、マトリックス材を中央の蓄え部からチューブを通って処理槽内へポンプ送りする。
【0020】
繊維構造体から過剰な材料を取り除くために、過剰な材料を拭き取るためのワイパーを設けることがさらに可能である。しかしながら、繊維構造体から過剰な材料を取り除くだけでなく、繊維含有量を体積で調整することが特に好ましい。繊維含有量の体積での調整に備えて、繊維構造体を含侵させる機器は、好ましくは繊維含有量を体積で調整するための機器を含む。繊維含有量を体積で調整する機器は、例えば過剰な材料を拭き取るためのワイパーにすることができる。過剰な材料を拭き取るワイパーを使用して繊維含有量を体積で調整するために、繊維構造体がワイパー上に押されて圧力が調整される。
【0021】
代替案として、マトリックス材の繊維含有量を体積で調整するために、例えば国際特許公開第2019/025439号に記述されるような機器を使用することができ、この機器は、含侵された繊維が通って案内される少なくとも1つの開口部を含む。各開口部は、最小の開口部断面積が、所望の体積による繊維含有量が実現される量のマトリックス材を、含侵された繊維構造体から取り除くのに必要な大きさに、決められている。
【0022】
繊維構造体を含侵させる機器は、繊維構造体から拭き取られたマトリックス材の再使用を可能にするために排出するユニットを含む。排出ユニットにおいて、過剰のマトリックス材は繊維構造体から拭き取られ、又は繊維含有量を体積で調整するために繊維構造体から拭き取られたマトリックス材は、処理槽内に回収されて再利用される。この目的のために、過剰なマトリックス材を取り除くワイパー又は繊維含有量を体積で調整する機器が、繊維構造体を含侵させる処理槽のすぐ背後に置かれた場合、排水ユニットは傾斜面を有し、繊維構造体から拭き取られたマトリックス材は、この傾斜面上に滴り次いで流れて処理槽に戻る。
【0023】
繊維に含侵させる機器により過剰な樹脂を効率的に取り除くことが可能になり、これによって繊維から過剰な樹脂が滴ることなく、繊維がライナーへ確実に適用できることが重要である。マトリックス材の意図しない滴りは、保持機器の可動アームの汚染につながり、汚染によりこれらの機器を掃除すべく生産を停止することが必要になる。さらに、繊維からマトリックス材が滴ると、ライナー上の材料の分布が一様でなくなり、製品の品質が劣化することがある。
【0024】
マトリックス材用の処理槽と、マトリックス材を含む処理槽内へ繊維構造体を押し込む偏向ユニットとを含む、繊維に含侵させる機器を使用する他に、マトリックス材が浸される多孔性材を含む繊維構造体を含侵させる機器、及びマトリックス材を多孔性材へ計量しながら供給するユニットを使用することも可能であり、ここで繊維構造体を多孔性材の端面に圧迫するユニットが含まれ、又はここで多孔性材はスリーブ内に収容され、繊維構造体は、スリーブ内の多孔性材を通って案内されることができる。繊維構造体を含侵させるそのような機器は、例えば国際特許公開第2019/115587号に記述されている。
【0025】
樹脂の粘度を制御するために、繊維に含侵させる機器は、随意的に温度制御部を含むことができる。例えば、繊維に含侵させる機器は、加熱用又は冷却用の媒体が流通できる底側にチャネル又は二重ジャケットを有することができる。加熱用又は冷却用のそのような媒体は、例えばサーモスタットの温度制御液体にすることができる。繊維に含侵させる機器の内部にある樹脂の温度は、15°Cと30°Cとの間の範囲に保つことが好ましい。非常に粘着性の樹脂、通常23°Cで粘度が1500mPasを超える樹脂を使用する特別な場合には、処理槽内の目標温度は30°Cから60°Cまでの範囲にすることができる。
【0026】
繊維に含侵させる機器と含侵された繊維構造体をライナー上へ適用する場所との間で、繊維構造体上のマトリックス材が硬化することを回避するために、繊維構造体を含侵させる機器とライナーとの間の距離をできるだけ短くすることが好ましい。この目的のために、繊維構造体を給送する各可動アーム上に繊維構造体を含侵させる機器を配列することが好ましい。特に好ましくは、繊維構造体を含侵させる少なくとも1つの機器が、各可動アームのうち中心回転軸線と垂直に移動可能でしかも繊維構造体を給送する端部に置かれている。中心回転軸線と垂直に移動可能でしかも繊維構造体を給送する可動アームの端部は、この可動アームのうちライナーに最も接近している部分である。従って、繊維構造体を含侵させる機器を、繊維構造体を給送する可動アームのこの端部に置くことによって、繊維構造体を含侵させる機器とライナーとの間の距離はできるだけ短くなる。
【0027】
特に、しっかり閉じていないマトリックス材用の処理槽を含む、繊維構造体を含侵させる機器が使用された場合、繊維構造体を給送する可動アームは、繊維に含侵させる機器が、繊維構造体を給送する可動アームの端部の位置と無関係に水平な向きを保つように、形成することが好ましい。水平な向きを保つことによって、可動アームの高速移動により繊維構造体を含侵させる機器の内部の液状マトリックス材が移動した場合でも、マトリックス材が処理槽から漏れることが回避される。この場合、マトリックス材の充填レベルは高いことが有利である。繊維構造体を含侵させる機器がマトリックス材で完全には充填されず、マトリックス材及びマトリックス材の上方の気相を含む場合、水平の向きを保つことがさらに有利である。この場合、処理槽が傾いたとき、偶然にも、繊維構造体がマトリックス材内へ押し込まれず、マトリックス材は、繊維構造体を含侵させる機器が傾いた位置にあることに起因して、繊維構造体を含侵させる機器の、繊維構造体が沿って案内されない位置にあることができる。
【0028】
マトリックス材は、一成分の樹脂或いは二成分の又は三成分の樹脂にすることができる。好ましくは、マトリックス材は二成分の樹脂である。二成分の樹脂を使用する場合、二成分の樹脂の二種類の成分は混合され、繊維に含侵させる機器内へ計量しながら供給される。三成分の樹脂の場合には、二種類の成分は混合され及び計量供給されるが、第3の成分は、初めの二種類の成分の混合物内へ直接計量供給される。混合は、例えば静的な又は動的な撹拌機を備えた低圧の混合によって実行することができる。代替案として、混合は、高圧プロセスによって実現することもできる。二成分の樹脂又は三成分の樹脂を混合し及び計量供給するための標準業務用機器を使用することができ、この機器は当技術において周知である。混合し及び計量供給するそのような装備は、通常混合区分及び混合ヘッドを含み、混合された二種類の成分樹脂はそこを通って計量供給される。
【0029】
給送するラインの遮断を回避し及び未成熟重合を最小限にするために、混合ヘッドは、繊維に含侵させる機器のすぐ近く、特に1メートルよりも接近して位置決めすることが特に好ましい。特に好ましくは、混合ヘッドの樹脂出口は、繊維に含侵させる機器に直接接続される。
【0030】
好ましくは、繊維がライナー上に巻き付けられる限り、樹脂は、含侵させる機器内へ連続的に計量供給される。繊維構造体の巻き付けが予定外に中断した間及び繊維構造体の適用が終了した後に、樹脂の分量供給が中止される。発明の機器よりも速い巻き付けプロセスが可能になるので、複合材部品を硬化場所に速く位置決めすることも、新しいライナーを蓄え部から得ることが自動化された場合に混合ヘッドを切り離すことも、そして繊維に含侵させる機器を手動で分解し及び掃除することも不要である。繊維構造体を次のライナー上へ適用する作業は、繊維に含侵させる機器を全く掃除することなく再開することができ、又は随意的に機器は、次のライナー上への繊維構造体の適用開始に先立って洗浄液で洗い流される。
【0031】
ライナー上への含侵された繊維の巻き付けを助長するために、特に含侵機器が、繊維構造体を給送する可動アームのうち中心回転軸線と垂直に移動可能な端部に置かれた場合、この機器は、支持体及び繊維構造体を給送する可動アームを所定状態に、即ち中心回転軸線が水平方向に対して65°から90°までの範囲の角度で延びるように、配列することが好ましい。より好ましくは、中心回転軸線は、75°から90°までの範囲、及び特に85°から90°までの範囲の角度で延びる。中心回転軸線のそのような向きによって、繊維構造体を給送する可動アームの端部は中心回転軸線と垂直に移動し得るので、この可動アームの端部は、移動時には水平に移動する。これにより、特に繊維構造体を給送する2つ以上の可動アームを使用することに関して、ライナーの生産が助長され、全ての可動アームは巻き付け位置の周りに容易に配列され、その際、繊維構造体が巻き付けられるライナーの上方又はそのライナーの下方の何れに可動アームが配置されるかを考慮することは不要である。
【0032】
本発明の文脈における「水平な」は、地理的な水平線への接線によって定まる線を意味する。特に、支持体が中心回転軸線の方向と平行に移動可能のみでない場合、繊維構造体が巻き付けられる位置にライナーがあるとき、中心回転軸線は上記定めの向きとされている。従って、中心回転軸線に関連する全ての位置も、繊維構造体を巻き付ける間の中心回転軸線の位置に基づく。
【0033】
複合材部品を生産する繊維構造体は、繊維区分を給送する可動アームの各々が繊維構造体を供給される中心の蓄え部によって供給することができる。しかしながら、この様式では巻き付け位置の周りに対称的に置かれる、繊維構造体を給送する複数の可動アームの使用によって不都合が生じ、不都合とは、繊維構造体を給送する可動アームの各々に繊維構造体を案内することが必要であり、それにより繊維構造体を給送する可動アームの各々に繊維構造体を供給するために複雑なデザインが必要になることである。
従って、繊維構造体を給送する各可動アームは、繊維構造体用の蓄え部に割り当てることが好ましい。繊維構造体用の蓄え部は例えばリールを含み、リールから繊維構造体がほどかれる。繊維構造体の各蓄え部について、繊維の張力を制御する機器を使用することが好ましい。そのような機器は織物工業では周知である。含侵された連続する繊維をライナー上に巻き付けるためには、繊維構造体用の各蓄え部が繊維構造体の2つの端部を結合するためのユニットを含む場合、現在ライナー上に巻き付けられた繊維構造体の終点と新しい繊維構造体の始点とを結合することが、さらに好ましい。それによって、新しい繊維構造体は、通常追加のリール上に巻き付けられており、従って繊維構造体用の蓄え部は、追加のリール用の支持体も含む。
【0034】
繊維構造体の2つの端部を結合する作業は、当業者に公知の各プロセスに従って実施することができる。しかしながら、滑らかな接続を実現するためには、二種類の繊維構造体の端部同士を重ね継ぎによって接続することが特に好ましく、これは、例えばH. Grosse-Rechtien「Entwicklung eines Verfahrens zur Herstellung von hochdrpierfahigen Carbonfaser-Halbzeugen、aus Kurzspulen、Abschlussbericht uber eine Machbarkeitsstudie、gefordert unter dem AZ:31143 von der Deutschen Bundesstiftung Umwelt、2014年11月、2.3.1章、23頁~28頁に記述されている。このプロセスにより、粗紡糸を自動的に変更することが可能になる。
【0035】
プロセスを自動化するためには、複合材部品を生産する繊維構造体の適用が終了した後に、繊維構造体は複合材部品に接近して切断されること、及び繊維構造体の両端部は複合材部品に取り付けられること、がさらに必要である。繊維は、好ましくはそれらが樹脂処理槽を離れた後に、所定位置で切断される。これにより、次の複合材部品の巻き付けを早く開始することが可能になり、その理由は、繊維に含侵させる機器内のあらゆる単一繊維を掃除及び再配置する際に、樹脂処理槽を分解することが不要なためである。
【0036】
切断機器は、各可動アームの端部に位置決めすることができ、又は代替案として切断機器は、ライナー用の保持機器に位置決めすることもできる。切断機器がライナー用の保持機器に位置決めされる場合、可動アームが移動しているので、切断のためには、含侵された繊維はこれを切断するための切断機器へ案内される。各可動アームについて1つの切断機器を設ける場合、各可動アームはそれぞれの切断機器に移動される。他方では、2つ以上の可動アームについてただ1つの切断機器を設けることも可能である。この場合、繊維構造体を給送する全ての可動アームはその切断機器へ順に移動し、切断機器は、それらの可動アームによって給送された繊維構造体を切断することを意図している。
【0037】
切断機器は、繊維構造体を切断するために使用可能な任意の適切な機器にすることができる。それぞれの切断機器は、例えば油圧式で又は空気圧で作動するはさみ又はナイフである。さらに、自動的に作動可能な、繊維構造体を切断可能な、当業者に公知である、全ての切断機器を使用することができる。巻き付けプロセスを終了した後に繊維構造体を切断するためには、繊維構造体を給送する各可動アームが、繊維構造体を切断する切断機器を含む場合が特に好ましい。、繊維構造体を切断するための機器は、繊維構造体が複合材部品に接近して切断されるように、繊維構造体を給送する可動アームの端部に接近して位置決めされることが特に好ましい。
【0038】
さらに、巻き付け位置から複合材部品を取り除くのに十分なスペースを実現するためには、繊維構造体を給送する可動アームは、複合材部品からアームまでの距離により繊維構造体を給送する可動アームに接触することなく複合材部品を取り除くことが可能になる、所定位置に移動することが必要である。さらに、繊維構造体を給送する可動アームがこの位置にあるとき、繊維構造体を巻き付けるための位置に新しいライナーを置くことが可能である。
【0039】
自動化されたプロセスにより、繊維構造体を巻き付ける位置に新しいライナーを置いた後に、ライナーに繊維構造体を取り付け得る便宜がさらに得られる。この目的のために、例えば保持機器にライナー用のペンチが位置決めされている。巻き付けプロセスの開始時、含侵された繊維を運ぶ可動アームは、ペンチの位置に近づいている。アームの移動につれて、繊維は、ペンチに通され、次いで保持機器の周りに巻き付けられる。このように繊維は、ライナーへ自動的に取り付けることができる。好ましい実施形態において、ペンチは使い捨てスリーブに取り付けられ、スリーブは、ライナーをライナー貯蔵部から取り上げる前に、ライナーを保持する支持体とともに可動アームによって取り上げられる。
【0040】
代替案として、繊維構造体をライナー上に取り付けるために、繊維構造体を給送する各可動アームは、繊維構造体をライナー上に置くペンチを含むことができる。ペンチは、それによって繊維構造体をつかんでこれをライナーに置く作業を可能にする、あらゆるペンチにすることができる。ペンチを使用することの追加の利点は、巻き付けプロセスの終了後に、繊維構造体を、ライナー上の所望位置に置いてその位置に固定できることである。
【0041】
生産プロセスを完全に自動化するためには、ライナーを、ライナー蓄え部から取って来て巻き付け位置に移動させ、マトリックス材で含侵されていないライナー上に繊維構造体が巻き付けられた場合、ライナーを繊維に含侵させるユニット内に置くことが必要であり、又はライナー上に巻き付けられた繊維構造体がマトリックス材で含侵されている場合は、硬化させるユニットが必要である。例えば、繊維構造体を含侵させるために又はマトリックス材を硬化させるために、ライナーを巻き付け位置に移動させ、及び巻き付けた後に繊維構造体を次の作動ユニットに移動させるためには、支持体を可動アームに載せることが好ましく、それによりライナーをライナー蓄え部から得て、繊維構造体を適用する位置にライナーを移動させ、繊維構造体を適用した後に、ライナーを次の作動ユニット、例えば硬化場所に置くことが可能になる。
【0042】
繊維構造体を給送する可動アームと同様に、支持体が載せられた可動アームもロボットアームである場合が特に好ましい。所望の移動を可能にするために、支持体が載せられた可動アームは2つの結合部を含み、各々の結合部により繊維構造体を給送する可動アームと同様に、曲がり可能及びねじれ可能である場合が好ましい。各ロボットアームは、曲がり可能及びねじれ可能にする少なくとも3つの結合部を含むことが特に好ましい。さらに、複数結合部は、好ましくはロボットアーム上の別位置に置かれている。少なくとも2つの結合部、好ましくは少なくとも3つの結合部のおかげで、アームは任意の方向に移動可能であり、可動アームは高精度で制御可能である。
【0043】
複合材部品の表面を滑らかにするために、硬化場所は、例えばモールドを含むことができ、モールド内には含侵された繊維構造体が適用されたライナーが硬化のために置かれている。繊維構造体を含侵させるために使用されるマトリックス材に応じて、硬化場所は、これに加えて又は代えて、繊維構造体が適用されたライナーを加熱するための発熱体を含むことができる。硬化場所がモールドを含む場合、発熱体は、例えばモールドの電気的な加熱装置である。
【0044】
硬化場所において、熱可塑性マトリックスを含む繊維構造体を統合することも可能である。
【0045】
少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化複合材層を含む複合材部品を自動的に生産するプロセスが実行され、プロセスは
(a)上述した機器の第1の保持機器及び第2の保持機器を用いてライナー蓄え部からライナーを得る工程と、
(b)繊維構造体を適用するための位置にライナーを移動させる工程と、
(c)ライナー上に繊維構造体を取り付ける工程と、
(d)繊維構造体を給送する少なくとも2つの可動アームによってライナー上に繊維構造体を適用する工程であって、繊維構造体は、ライナー上に適用される前に繊維構造体を含侵させる機器内でマトリックス材を含侵され、ライナーは、繊維構造体を適用する間に中央回転軸線の周りに回転され及び中心回転軸線と平行に軸方向に移動され、こうして繊維構造体をライナー上に予め定めたパターンで適用する工程と、
(e)繊維構造体の適用が終了した後に各繊維構造体を切断する工程と、
(f)繊維構造体が適用されたライナーを硬化場所に置く工程と、
(g)硬化場所のモールド内に樹脂を随意的に注入し、モールドには、繊維構造体が適用されたライナーが置かれ、こうして表面被覆層を生成する工程と、
(h)マトリックス材と、樹脂が注入された場合は樹脂とを硬化させる工程と、を備える。
【0046】
このプロセスにより、複合材部品を完全に自動的に生産することが可能になる。可動アーム上に載せられた第1の保持機器及び第2の保持機器を含む支持体を備える、発明の機器を使用することによって、ライナーは、ライナー蓄え部から取って来て、繊維構造体がライナー上に適用される位置に移動することができる。さらに、繊維構造体が適用されたライナーは、後で次の作動ユニット、例えば硬化場所に置くことができる。ライナーを取って来るために、支持体は、1つの保持機器がライナーの一方端部に置かれ、第2の保持機器がライナーの他方端部に置かれるような位置に移動される。その後、両保持機器は、ライナーが第1の保持機器と第2の保持機器との間で締め付けられる位置に移動される。ライナーは、それによって両保持機器がライナーに接触する位置が各々ライナーの中心軸線上に横たわるように向けられ、この中心軸線は、繊維構造体がライナー上に適用される位置にライナーが移動した後の中心回転軸線と一致する。両保持機器及びライナーの取り付けは、好ましくは、手動による載置なしに又は手動による工具使用なしに実現される。
【0047】
複合材部品を生産するための発明の機器を使用する巻き付けプロセスには追加の利点があり、それは、複合材部品が、欠陥の形成が増えることなく、1.5m/s以上の巻き付け速度で生産することができ、巻き付け速度は、ライナー上に適用される含侵された繊維の速度に関連することである。
【0048】
特に、粗紡糸を含侵された繊維として使用して、繊維強化タンクを生産するためには、繊維強化タンクを生産する速度は、同時に適用可能な粗紡糸の量にさらに左右される。複合材部品を生産する発明の機器により、1個~12個の、好ましくは2個~12個の粗紡糸を、各可動アームを用いて適用することが可能になる。12個を超える粗紡糸を1つの可動アームを用いて適用すると、結果的にライナーのドーム区分が厚くなる。
【0049】
製品品質及び生産速度における最適条件を実現するためには、可動アームにつき12個までの粗紡糸を適用すること、及び1つのライナー上に含侵された繊維を適用するために3個~8個の可動アームを使用することが特に好ましい。
【0050】
中心回転軸線と平行にのみ移動可能な支持体を使用する場合、支持体は、好ましくは、ライナーを第1の保持機器と第2の保持機器との間に置き得る位置に移動される。この実施形態においても、両保持機器は、ライナーを正確な位置に置いた後に、ライナーが第1の保持機器と第2の保持機器との間に締め付けられる位置に移動し、後でライナーを備えた支持体は、ライナーの周りに繊維構造体が巻き付けられる位置へ中心回転軸線と平行に移動される。
【0051】
ライナーが繊維構造体を適用するための位置に置かれた後に、各繊維構造体は、ライナー上に取り付けられ、後でライナーが中心回転軸線の周りに回転し始め、それによって繊維構造体はライナーの周りに巻き付けられる。繊維構造体をライナー上に巻き付ける間に、支持体は中心回転軸線と平行に移動し、それによってライナーも中心回転軸線と平行に移動される。ライナーのこの移動によって、繊維構造体をライナー上に所望のパターンで横たえることが可能である。繊維構造体のパターンは、それによってライナーの回転速度、及び中心回転軸線と平行な移動の速度及び方向に左右される。
【0052】
繊維構造体は、例えば以下のように、即ち繊維構造体をライナーの周りに巻き付けることによって生産された連続する繊維強化層は、繊維構造体が例えば中心回転軸線と垂直に巻き付けられた少なくとも1つの第1の層と、繊維構造体がライナーの周りに中心回転軸線に対して10°と80°との間の角度で巻き付けられた少なくとも1つの第2の層と、を含むように配列することができる。好ましくは、少なくとも1つの第2の層の繊維構造体は、ライナーの周りに中心回転軸線に対して30°から60°までの範囲の角度で巻き付けられる。しかしながら、第1の層の及び第2の層の繊維構造体を、中心回転軸線に対して同じ角度で巻き付けること又は異なる角度で巻き付け、各層において角度は中心回転軸線に対して10°から80°までの範囲にし、複数繊維構造体の間の角度は各層において5°から90°までの範囲にすることも可能である。
【0053】
繊維構造体の共通のパターン、例えば「フープ巻き付け」、「らせん形巻き付け」及び「極の巻き付け」などは、例えばT. Sofi, S. Neunkirchen, R. Schledjewski 著、進歩した製造:ポリマー&合成科学、4巻、3番、57頁-72頁、2018年に見い出される。さらに、前の層が完了した後の位置から得た繊維を次の層の出発位置にもたらす、いわゆる「コネクター巻き付け」を含むことが必要になることがある。全ての公知の繊維構造体パターンは、繊維構造体を生成するために組み合わせることができる。
【0054】
第1の層及び第2の層を巻き付け、両層では繊維構造体をライナーの周りに中心回転軸線に対して異なる角度で巻き付け、例えば各第1の層では中心回転軸線に対して垂直に巻き付け、各第2の層では10°と80°の間の角度で巻き付けることによって、繊維構造体がライナーの周りに巻き付けられる角度に基づいて伸張力、圧縮強度及び曲げ強さにて本質的に等方性の特性を実現することができる。
【0055】
繊維構造体がライナーに適用される角度が異なる少なくとも2つの層の適用することの他に、ライナー上に、各層において繊維構造体が同じ向きにされた少なくとも二種類の繊維強化層を適用すること、又はただ1つの層を適用することも可能である。
【0056】
本質的に等方性の特性を実現するためには、第2の層において、連続する繊維は、ライナーの周りに、別の層の上方に横たわる繊維構造体が、20°と160°との間、さらに好ましくは40°と140°との間、そして特に好ましくは60°と120°との間の角度を囲む、様式で巻き付けられる場合がさらに好ましい。複数繊維構造体をライナーの周りに、それらが20°と160°との間の角度を囲むような様式で巻き付けるために、ライナーを備えた支持体が中心回転軸線と平行に移動し、結果としてライナーは、繊維構造体を給送する各可動アームの給送部がライナーの一方の端部上にある第1の位置から、繊維構造体を給送する各可動アームの給送部がライナーの他方の端部上にある第2位置に移動し、その間にライナーは、中心回転軸線の周りに回転して、ライナーの周りに第1の角度で巻き付けた繊維構造体を実現し、またライナーを第2の位置から第1の位置に後退させて繊維構造体を第2の角度で巻き付け、第2の角度は、第1の位置から第2の位置に移動したライナーの角度と反対方向で整列する。ライナーの中心回転軸線に対する繊維構造体の角度は、それによってライナーの回転速度、及びライナーを第1の位置から第2位置に又は第2の位置から第1の位置に移動させる支持体の速度に左右される。ライナーがよりゆっくり回転し、しかもライナーが中心回転軸線と平行により速く移動するにつれて、中心回転軸線に対する繊維構造体の角度はより大きくなる。
【0057】
第1の位置から第2位置への移動、及び第2位置から第1の位置への後退移動を繰り返すことによって、繊維構造体の織ったパターンが通常形成される。
【0058】
繊維強化ポリマー層を実現するためには、繊維構造体がライナーの周りに巻き付けられる前に、繊維構造体にマトリックス材を含侵させることが特に好ましい。繊維構造体を含侵させるためには、好ましくは上述した繊維構造体を含侵させる機器が使用される。
【0059】
ライナーの周りに巻き付けるべき繊維構造体は、好ましくは、繊維構造体を給送する各可動アームに割り当てられた在庫品から取り出され、在庫品は、例えば繊維構造体が巻き付けられたローラーである。ライナーの周りに巻き付けた繊維構造体は「無端の構造」であり、即ち繊維構造体は原則として無制限の長さを有し、有限の長さが必要になるのは、随意的に長い繊維構造体を在庫品に包含できないときのみである。好ましくは、繊維構造体は、1つの構造が端部に到達したとき、それに続く新しい構造を前の構造に直接的に接続することができ、接続は、例えば無端の繊維を使用するとき結び付けることによって行い、又は好ましくは粗紡糸を繊維構造体として使用するとき重ね継ぎにすることによって行うように、構成される。プロセスにおいて使用できる繊維構造体は、例えば不織布、織物、ニット、個々の繊維又は粗紡糸である。繊維構造体は粗紡糸を含むことが好ましい。
【0060】
繊維構造体は、好ましくは、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、合成繊維、例えばポリマー繊維、又は天然繊維、例えば羊毛、綿、麻又は亜麻を含む。繊維構造体は、ただ一種類の形式の繊維又は異なる形式の繊維を含むことができる。繊維の選択は、特に構成部品のための機械的要求によって決定される。しかしながら、従来例では、異なる複数繊維ではなく、一種類の材料から成る繊維のみが使用されている。特に好ましくは、繊維構造体は、カーボン繊維、ガラス繊維又はアラミド繊維を含むことである。
【0061】
繊維構造体を含侵させ得るマトリックス材は、あらゆる所望の熱可塑性ポリマーにすることができ、或いは熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの生産のための反応物を含むことができ、その場合、反応物は、液体中に存在し、溶解した形態であり、又は熱可塑性繊維として存在することが必要である。マトリックス材が熱可塑性ポリマーである場合、これは、例えば溶解物として存在する。しかしながら代替案として、マトリックス材は、モノマー溶液、オリゴマー溶液、モノマー溶解物又はオリゴマー溶解物の形態をした、ポリマーを生産するための反応物を含むことが可能であり、それは、次いで反応して所望のポリマーを形成する。繊維構造体に熱硬化性ポリマーを含侵させることを意図している場合、マトリックス材は、所望の熱硬化性ポリマーを生産する反応物を常に含む。さらに、マトリックス材は従来の触媒を含むことができる。ポリマーを生産する反応物は、一般にポリマーを作り上げるモノマー又はオリゴマーである。熱硬化性ポリマーを生産することを意図している場合、反応物は、ポリマーとして既に存在し、さらに反応して熱硬化性樹脂を形成することもできる。
【0062】
マトリックス材は、複合材部品の特性を調整するために、さらに添加剤を含むことができる。例えば、可塑剤、衝撃強さ重合調整剤、紫外線安定剤、難燃剤、粘性重合調整剤、接着助長剤、分散剤、界面活性剤、及びポリマーを調整するために従来から使用されている、当業者に公知のその他の所望の添加剤がある。
【0063】
特に好ましくは、マトリックス材は、不飽和エステル樹脂(UP)、ビニールエステル(VE)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PUR)、フェノール樹脂又はカプロラクタム樹脂、或いはそれらの組み合わせ又は試薬から選択される。ポリウレタンという用語は、ウレタン原材料、例えばポリイソシアン基、ポリ尿素、ポリアミド、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン、カルボジイミド又はポリオザリドンを用いて実現可能な公知の構造ユニットを含む。
【0064】
プロセスにおいて使用するライナーは、生産すべき複合材部品に左右される。複合材部品が圧力タンクである場合、ライナーは通常堅いライナーであり、それは、ポリマーで作られかつ生産すべき圧力タンクの内壁の形態を有する。ライナーは、複合材部品の生産を終了した後、この場合圧力タンクの内壁を形成する。ライナーは、例えば吹込み成形又は回転成形によって生産することができる。ライナーがポリマーで作られる場合、ポリマーは、マトリックス材として使用されるポリマーと同じにすることができる。ライナーが特別の特性を有する場合、繊維強化層に使用されたポリマーと異なり、しかも所望の特性を有するポリマーを使用することがさらに可能である。
ライナーを生産するために異なるポリマーをマトリックス材として使用する場合、安定した複合材部品を実現するために、しっかり接続可能なポリマーを使用することが好ましい。マトリックス材として使用するポリマーがライナーの材料に付着しない場合、ライナー上への繊維構造体の巻き付けが始まる前に、ライナーの材料上へのマトリックス材の付着を支援するプライマーをライナー上に適用し、又はライナー上に接着剤を塗布することがさらに可能である。
【0065】
ライナーは、ポリマー材料で作られることの他に、セラミック、ガラス又は金属、例えば鋼、アルミニウム又はニッケル合金から作ることもでき、そこで鋼製ライナーが非常に一般的である。しかしながら、複合材部品、特に軽量の圧力タンクを実現するためには、ポリマー材用の好ましいポリマー材料は、ポリエチレン、ポリアミド及びポリウレタンである。ライナー材料は、容器内に貯蔵すべき気体に関する浸透性に基づいて選択され、浸透性はできるだけ小さいことが必要である。
【0066】
上述した堅いライナーの代替案として、ライナーは、空気注入式の空気袋にすることもできる。空気袋は、別個に膨張可能なチャンバの小集団を含むことができる。空気袋は、完全に膨張した状態で複合材部品の内面の形態を有して載置部に取り付けられ、載置部により膨張式の空気袋を第1の保持機器と第2の保持機器との間に固定することが可能になる。完全に膨張した膨張式の空気袋は、蓄え部から取り出された後、繊維構造体を適用するための位置に移動される。繊維構造体を取り付け、繊維構造体を適用し、そして各繊維構造体を切断した後、繊維構造体が適用された膨張式の空気袋は、硬化場所に移動される。マトリックス材を硬化させた後に、空気袋は、空気を抜かれ、及び保持機器の少なくとも1つに取り付けていた載置部を取り除くことによって、繊維構造体から取り除かれる。空気袋は検査され、掃除され、そして再使用される。複雑でしかも大きい複合材部品の組み立てのために膨張式の空気袋を使用する1つの例は、例えば米国特許公開第9,669,589号に見出すことができる。
【0067】
欠陥がない複合材部品を実現するためには、繊維構造体を適用し始める前にライナーを掃除することがさらに好ましい。ライナーを掃除するためには、例えば加圧空気を使用してほこりを吹き飛ばすことが可能である。さらに、特にグリース又は油脂の痕跡、或いはライナーの表面上に付着する他の不純物を取り除くために、ライナーは、溶媒及び/又は界面活性剤入りの水を使用して洗うことができる。ライナーを溶媒で又は界面活性剤で洗った後、繊維構造体の巻き付けを始める前に、ライナーを脱イオン化された水ですすぎ及び乾かすことが好ましい。ライナーの掃除は、ライナーが通る清掃ユニットにおいて第1の保持部材及び第2の保持機器を備えた支持体を使用して行い、又は繊維構造体を巻き付ける位置にライナーが置かれる前にしかもライナーをそれが得られる蓄え部内に置く前に行う。ライナーを、ライナー用の蓄え部に置く前に掃除する場合、繊維構造体を適用し始める前にほこりを吹き飛ばすことが、特に好ましい。
【0068】
ライナーの生産を準備するために、ライナーを火災処理又はコロナ処理で処理することがさらに可能である。
【0069】
複合材部品の規定された表面を実現し、及び複合材部品の表面から繊維が突き出るのを回避するために、繊維構造体を切断する前に、複合材部品を予め定めた位置に移動させることが好ましい。繊維構造体を切断するためには、繊維構造体を給送するアームを移動してライナーにできるだけ接近させ、ライナーから突き出る繊維構造体の端部をできるだけ短くすることがさらに好ましい。可動アームがペンチを含む場合、ペンチによって繊維構造体の端部をライナー上に横たえることがさらに好ましい。これにより複合材部品を、繊維が部品の表面から突き出ることなく、自動的に生産することが可能になる。
【0070】
繊維構造体が切断された後、繊維に含侵させたマトリックス材を硬化させる。繊維構造体をライナー上に巻き付ける前に繊維構造体を含侵させなかった場合、繊維構造体は、巻き付けの終了後に含侵させられる。繊維構造体をライナー上に巻き付ける前に繊維構造体を含侵させた場合でも、複合材部品上にマトリックス材の追加の層を適用することがさらに可能である。第2の場合では、マトリックス材を硬化させる前に、繊維構造体にマトリックス材を含侵させ又はマトリックス材の追加の層が適用される。
【0071】
滑らかな表面を実現するためには、繊維強化層上に、この層を硬化させた後に、追加のポリマー層を適用することがさらに可能である。代替案として、含侵された繊維構造体が適用されたライナーが置かれる、モールドを備えた硬化場所を使用することがさらに可能である。モールドは、生産すべき複合材部品の外側形態を有する。滑らかな表面に備えて、又は特別の特性、例えば表面の特別の外観、平滑、強健さ及び/又は耐衝撃性を有する追加の層を適用するために、複合材部品上に追加の層を形成するモールドに、ポリマー材料を注入することが可能である。
【0072】
機器が複合材部品を生産する処理量を向上させるためには、以下のこと、即ち硬化場所には繊維構造体が適用されたライナーを収容するためのいくつかのユニットがあり、ユニットは移動可能であり、結果として繊維構造体が適用されたライナーがユニット内に位置決めされた後、そのユニットは別の位置に移動し、繊維構造体が適用されたライナーを収容する新しいユニットが、繊維構造体が適用されたライナーを収容する位置に移動することが好ましい。ライナー上に繊維構造体を巻き付けるとすぐに、ライナーはユニット内に置かれ、支持体は、次の複合材部品を生産するために、新しいライナーを取って来ることができる。
【0073】
マトリックス材の硬化作業が終了した後、又はマトリックス材が流動できないほど硬化が継続した後、複合材部品は硬化場所から取り除かれる。
【0074】
滑らかな表面を実現するため、及び繊維構造体が適用されたライナーからマトリックス材が流れ落ちるのを回避するために、繊維構造体が適用されたライナーは、マトリックス材を硬化させている間に、水平回転軸線の周りに回転することが好ましい。これは、繊維構造体が適用されたライナーを硬化のためにモールドに置かない場合に、特に好ましい。
【0075】
圧力タンクを生産するための他に、発明の機器及びプロセスは、少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化層、例えば異なる気体用のポール、柱、給湯器又は貯蔵タンクを有する、あらゆる複合材部品を生産するために使用可能である。圧力タンクに関して、ライナーは、完成した複合材部品内に残ることができ、又は代替案として、複合材部品の形状のおかげでライナーが取り除き可能である場合、新しい部品を生産するために再使用可能なマンドレルも使用することができる。再使用可能なマンドレルを使用する場合、マンドレルは、マトリックス材を硬化させた後に、複合材部品から取り除くことが好ましい。前の複合材部品の硬化中に、新しい複合材部品が生産可能であるので、マンドレルは、取り除いた後に蓄え部に置かれ、蓄え部からマンドレルを第1の保持機器及び第2の保持機器を備えた支持体によって取って来る。再使用可能なマンドレルがライナーとして使用される場合、新しい複合材部品のために繊維構造体の巻き付けを開始する前に、マンドレルを掃除することがさらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
圧力タンクを生産する例を使用する、発明の例示的な実施形態が、各図に示され、及び以下の記述でより詳しく説明される。
図1】繊維強化層を含む圧力タンクを生産するプロセスを示す。
図2】切断機器と、含侵された繊維をライナーに取り付けるペンチを備えたスリーブとを示す。
図3】繊維強化層を含む圧力タンクを生産するプロセスのうち、あるプロセスステップを示す。
図4】繊維強化層を含む圧力タンクを生産するプロセスのうち、別のプロセスステップを示す。
図5】繊維強化層を含む圧力タンクを生産するプロセスのうち、さらに別のプロセスステップを示す。
図6】繊維強化層を含む圧力タンクを生産するプロセスのうち、さらに別のプロセスステップを示す。
図7】繊維構造体を含侵させる機器を平面図で示す。
図8】繊維構造体を含侵させる機器の断面図を示す。
図9】繊維含有量を体積で調整する機器を閉じ位置にて示す。
図10】繊維含有量を体積で調整する機器を開き位置にて示す。
図11】マトリックス材を混合し及び計量給送する機器を備える、繊維構造体を含侵させる機器の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、繊維強化層を含む圧力タンクを生産するためのプロセスを示す。
【0078】
圧力タンクを生産するために、ライナー1が第1の保持機器3と第2の保持機器5の間に固定されている。第1の保持機器3及び第2の保持機器5は、支持体7の一部である。第1の保持機器3及び第2の保持機器5を備えた支持体7は、ライナー1が、第1の保持機器3及び第2の保持機器5を貫通する中心軸線9の周りに回転できるように設計されている。ライナー1を第1の保持機器3と第2の保持機器5との間に固定するために、例えば両保持機器3及び5を中心軸線9に沿って移動させ、ライナー1を第1の保持機器3と第2の保持機器5との間に締め付けることが可能である。両保持機器3及び5は、この場合例えば、ライナー1が両保持機器3及び5によって支持体7内に固定されるときライナーを押す、ピン又は平板を含む。
【0079】
支持体7は可動アーム11に載せられ、可動アーム11は、ライナーが中心軸線9と平行に移動するように移動できる。ライナー1が中心軸線9と平行に移動する間に、ライナー1上に繊維構造体13が取り付けられる。ライナー1に繊維構造体13を取り付ける間に、ライナーは中心軸線9の周りに回転する。同時に、ライナーは、中心軸線9と平行に前進及び後退する。この移動によって、繊維構造体13はライナー1の周りに巻き付けられる。繊維構造体は、ライナー上に織ったパターン15が形成されるように、好ましくは連続する繊維を含む。繊維強化ポリマー層を実現するためには、繊維構造体13は、マトリックス材、例えば硬化されるときポリマーを形成するモノマー又はオリゴマー、又は溶解された熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーから生産された繊維が、含侵されている。
【0080】
サイクル時間を短縮するために、繊維構造体13は2つ以上の位置で適用される。繊維構造体13を適用するための各位置は、従って好ましくは中心軸線9と垂直な同じ平面内にある。特に好ましくは、繊維構造体13は、3個~8個の位置で適用され、ここで各位置において最大12個の繊維構造体を適用することができる。
【0081】
ライナー上への繊維の適用が終了した後に繊維を切断するために、切断機器12を、支持体上に、好ましくはここに示すように第1の保持機器3上に又は第2の保持機器5上に、設けることが好ましい。さらに、巻き付けプロセスの開始時に繊維をライナー1上に取り付けるために、ペンチを備えたスリーブ14が設けられる。ペンチ備えたスリーブ14は好ましくは使い捨てスリーブであり、使い捨てスリーブは、ライナー1を取り上げる前に、可動アーム11によって、即ち保持機器3及び5の一方によって取り上げられる。特に好ましくは、ペンチを備えたスリーブ14は、切断機器12を取り付けたのと同じ保持機器3及び5から取り上げる。
【0082】
切断機器12と、ペンチを備えたスリーブ14とは、図2により詳しく示されている。
【0083】
含侵された繊維構造体を新しいライナー上へ取り付けるために、ペンチ18が取り付けられたスリーブ16が使用される。スリーブ16は好ましくは使い捨てスリーブであり、使い捨てスリーブは、ライナー1を取り上げる前に、可動アーム11の第1の保持機器3又は第2の保持機器5によって取り上げる。使い捨てスリーブを使用する場合、巻き付けプロセスの間に、繊維構造体13はスリーブ16の周りにも少なくとも部分的に巻き付けられ、スリーブ16のうち巻き付けが終了した複合材部品から突き出た部分は切断される。
【0084】
切断機器12は、第1の保持機器3上に又はスリーブ16上にそれぞれ載せられ、載せ方は、ライナー上への含侵された繊維構造体の巻き付けが終了した後に、含侵された繊維構造体を給送する機器が切断機器12に移動可能な様式である。切断機器は、例えばナイフ又はブレードにすることができる。この場合、含侵された繊維構造体をナイフ又はブレード上で移動させることによって、含侵された繊維構造体は切断される。切断機器12の位置がライナーに近いおかげで、切断作業の後に長い繊維がライナーからぶら下がることが回避される。
【0085】
繊維構造体13をライナー1上に取り付けるために、繊維構造体は可動アームによってペンチ18の位置に向かって移動される。可動アームの移動につれて、一種類の繊維構造体13が1つのペンチ18内に通され、次いでライナーが回転し始め、巻き付けプロセスが開始する。
【0086】
使い捨てスリーブを使用することの他に、多角使用スリーブを使用することも可能である。しかしながら、多角使用スリーブを使用するときでも、巻き付けプロセスを開始する前にスリーブ16を取り上げ、巻き付けプロセスを終了した後にスリーブ16を備えたライナーを取り除き、そして次のライナー1を備えた新しいスリーブ16を使用することが好ましい。巻き付けプロセスの後、多角使用スリーブは、巻き付けた繊維構造体13を備えたライナーから取り除かれ、随意的に掃除され、次いで再使用される。
【0087】
巻き付けプロセスを終了した後に又は巻き付けプロセスの間に、繊維構造体をペンチ18から完全に取り除くことが可能であり、またペンチ18を第1の保持機器3又は第2の保持機器5上に直接載せることがさらに可能である。この場合、スリーブ16を使用することは不要である。
【0088】
少なくとも一種類の巻き付けた繊維強化ポリマー層を含む、複合材部品としての圧力タンクを生産するための各ステップが図3図6に示されている。
【0089】
図3に示す第1のステップにおいて、ライナー1は、第1の保持機器3及び第2の保持機器5を備えた支持体7によって、ライナー蓄え部から得られる。支持体7は、可動アーム11上に、好ましくは図示するようなロボットアーム上に載せられている。
【0090】
図3図6に示す複合材部品を生産する機器は、蓄え部と、繊維構造体を給送する3個の可動アーム17とを備える、ロボットアームを含む。繊維構造体を給送するために、可動アーム17には繊維構造体13用の給送部19が接続されている。繊維構造体13は、繊維強化ポリマー層を生産するために使用可能な任意の繊維構造体にすることができる。繊維構造体は、例えば単一繊維又は粗紡糸を含むことができる。粗紡糸を使用する場合、ライナー1の周りに粗紡糸を巻き付けること、又は分離された繊維をライナー上に巻き付ける前に粗紡糸の繊維を分離することが可能である。
【0091】
繊維構造体を給送する可動アーム17はロボットアームであり、ロボットアームによりライナーに対して繊維構造体を給送部19を正確に位置決めすることが可能になる。繊維構造体を給送する各可動アーム17には繊維構造体13用の蓄え部21が接続されている。繊維構造体13は、蓄え部21から取り出され、繊維構造体を給送する可動アーム17に沿って進み、繊維構造体13に含侵させる機器23を通過する。
【0092】
ライナー1を得るために、第1の保持機器3及び第2の保持機器5は、各々ライナー1の一側面に置かれ、ライナー1は第1の保持機器3と第2の保持機器5との間に固定される。ライナーを固定する際に、手仕事及び工具の使用は不要である。
【0093】
ライナー1が第1の保持機器3と第2の保持機器5との間に固定された後、ライナー1は、支持体7が載せられた可動アーム11を用いて、繊維構造体13がライナー1上に適用される位置に移動される。これは図4に示される。
【0094】
繊維を適用するために、ライナー1が繊維構造体13を巻き付ける位置に移動した後、繊維構造体用の給送部19は、移動してライナー1に接近し、含侵された繊維構造体13の端部をライナー上に固定する。繊維構造体13がライナー1上に固定された後、ライナー1は回転し始め、及び繊維構造体13はライナー1上に巻き付けられ、ここでライナー1は、図1に示すように中心軸線と平行に移動される。
【0095】
ライナー上への繊維構造体13の巻き付け作業が終了した後に、巻き付けた繊維強化ポリマー層が完成し、巻き付けた繊維構造体が適用されたライナーは硬化させる場所に移動される。これは図5に示される。巻き付けた繊維構造体25を備えたライナーを硬化場所に移動させるために、繊維構造体を給送する可動アーム17は、巻き付けた繊維構造体25を備えたライナーから立ち去る。その後、支持体を備えた可動アーム11は、回転して、巻き付けられた繊維構造体25を備えたライナーを硬化場所27に運ぶ。
【0096】
複合材部品を連続的に生産するために、硬化作業がライナー1の周りに繊維構造体13を巻き付け作業よりも長く続く場合、硬化場所27が複数のモールド29を含み、その各々において1つの複合材部品を硬化できることが好ましい。生産を自動化するためには、巻き付けた繊維構造体25を備えた1つのライナーをモールド29内に置いた後に、次のモールド29が所定位置に移動して、この位置では巻き付けた繊維構造体25を備えた次のライナーをモールド内に置くことが必要である。この目的のために、硬化場所は、図6に示すような特に水平な又は垂直な回転テーブルの形態をしている。複合材部品上に、特に圧力タンクのような軸方向に対称な部品に引裂きが形成されるのを回避するために、複合材部品は、硬化の間に対称軸線の周りに回転することが好ましい。
【0097】
随意的に、巻き付けられた構造25を備えたライナー1をモールド29内に置いた後、モールド29内に樹脂が注入され、巻き付けられた構造25の表面上に被覆を形成することができる。被覆は、好ましくは厚さが0.1mmから5mmまでの範囲である。樹脂は、不飽和ポリエステル、ビニールエステル、エポキシ又はポリウレタンにすることができる。好ましい実施形態では、樹脂はポリウレタンである。ポリウレタン樹脂は、モールド29に注入された後にその内部で硬化する。
【0098】
繊維強化ポリマー層を及び随意的に樹脂を硬化させた後に、複合材部品はモールドから取り除かれる。取り除きは、ポリマーが完全に硬化する前に行うことができる。この場合、ポリマーは、ポリマー前駆体がもはや液体でも粘着性でもない状態に硬化させることが必要である。
【0099】
複合材部品、例えば圧力容器を生産するためにスリーブ16が使用された場合、スリーブ16は硬化の後に取り除かれる。この段階において、弁のような他の載置部が組み付けられている。
【0100】
図7は繊維構造体を含侵させる機器を平面図にて示す。
【0101】
繊維構造体を含侵させるために、繊維構造体13は、繊維が含侵されるマトリックス材を含む処理槽31を通って案内される。多くの繊維が含侵させる機器内に給送される場合、繊維は、好ましくは分離され、偏向ユニット33に沿って案内される。複数偏向ユニット33は、繊維構造体13が1つの偏向ユニット33によって近隣の偏向ユニット33に向かって押されるように、処理槽に置かれている。これにより繊維構造体は、処理槽31によってジグザグに案内されることになる。繊維構造体13をそのようにジグザグに案内することは、繊維構造体が平坦な繊維テープ又はカーボン繊維粗紡糸の形態をしている場合、特に好ましい。偏向ユニット33は、繊維含有量を体積で調整するためのワイパーとして同時に作動する。
【0102】
図8は繊維に含侵させる機器の断面図を示す。
【0103】
繊維に含侵させる機器23は、好ましくは下側部35及び蓋37を含む。処理槽31は、繊維構造体13が含侵されるマトリックス材を有し、下側部35内に位置している。処理槽31にワイパーがさらに設けられ、これは、繊維構造体13に可能な限りに完全に含侵させるため、及びまだ繊維構造体内に含まれている気体、特に空気を放出させるためである。本明細書において、ワイパーは、ここに例示するように、好ましくは繊維構造体13の上方及び下方に配置され、ここで繊維構造体13が沿って案内される両方の拭く端が整列し、結果として繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1は、繊維構造体13を、繊維構造体13に下方から作用するワイパー39.2上に押し、また対応する様式で、繊維構造体13に下方から作用するワイパー39.2は、繊維構造体13を、繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1に向かって押している。繊維構造体13に作用する圧力、従って気体を放出するためのワイパー39.1及び39.2の有効性は、ワイパー39.1及び39.2が互いに係合する高さで設定することができる。
【0104】
繊維構造体13は、そらせローラー41を介して上方から処理槽31内へ案内される。そらせローラー41の後方の繊維構造体13を処理槽31内へ案内するように、第1のワイパー39.1が繊維構造体13の進む方向43に設けられ、このワイパー39.1は、繊維構造体13に上方から作用する。繊維構造体13は、そらせローラー41を通った後に、繊維構造体に上方から作用するワイパー39.1を介して処理槽31内に押し込まれる。繊維構造体13に上方から作用する第1のワイパー39.1には、繊維構造体13に下方から作用する少なくとも1つのワイパー39.2が隣接し、及び繊維構造体13に上方から作用する追加のワイパー39.1が隣接している。さらに追加のワイパーをも設けることができ、そこで繊維構造体13の進む方向43にて最後のワイパーは、繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1である。最後のワイパー39.1の後方の繊維構造体13は、繊維含有量を体積で調整する機器100を通って案内され、この機器の一側面はマトリックス材に沈められ、繊維構造体13が繊維含有量を体積で調整する機器100から出る他端部はマトリックス材の外部に横たわっている。含侵された繊維構造体は、繊維含有量を体積で調整する機器100に続いて、追加のそらせローラー45を介して案内される。
【0105】
ここに例示されたそらせローラー41及び45の代わりに、好ましくは少なくとも繊維構造体13と接触する領域が丸められた端部のみを有する棒を、特に丸い棒を使用することも可能である。
【0106】
含侵された繊維の繊維含有量を体積で設定するために、ここに例示した実施形態における繊維含有量を体積で調整する機器100は、ノズル123及びダクト125を有する。ノズルは、所望の体積による繊維含有量が実現されるような大きさにされた、最小の横断面表面を有する。ノズル123にはダクト125が隣接し、ダクト125は、ダクト125を通って案内される含侵された繊維構造体がダクト125の壁と接触しないほど非常に大きい横断面の表面を有する。含侵時に繊維構造体内に空気泡又は気体泡が混ざるのを防ぐために、繊維含有量を体積で調整する機器100は、ノズル123を介して処理槽31内のマトリックス材中に沈んでいる。含侵された繊維構造体は、ノズル123を通った後に、ノズル123に隣接するダクト125を通って処理槽31内のマトリックス材の外部へ案内されることができ、この繊維構造体がマトリックス材と再度接触することはなく、結果としてノズル123を通った後の繊維含有量は体積でそれ以上変化しない。この目的のために、ダクト125は、処理槽31の外に出たいかなるマトリックス材もダクト125内に入らない、液密方式でノズル123に接続されている。作動時に繊維構造体が通って出るダクト125の端部は、マトリックス材の外部に位置している。
【0107】
繊維を、繊維構造体を含侵させる機器23に簡単な様式で置き得るように、繊維構造体に上方から作用するワイパー39.1、及び繊維含有量を体積で調整する機器100は、好ましくは処理槽31に、この処理槽31から回収可能に収納されている。含侵されるべき繊維構造体12は、初めは処理槽31の上方で、マトリックス材の外部に位置している。繊維構造体13は、初めに繊維含有量を体積で調整する機器100に置かれている。繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1も、同様にまだ処理槽31の外部に位置している。繊維構造体13が、繊維含有量を体積で調整する機器100に置かれると、繊維構造体13はこの繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1を介して下方へ押される。この目的のために、ワイパー39.1は、処理槽31を含む下側部35上に置かれた蓋37に好ましくは収納される。繊維含有量を体積で調整する機器100は、以下のように、即ち一側面が好ましくはノズル123を有する側面が、処理槽31に含まれたマトリックス材内に沈むことができ、繊維含有量を体積で調整する機器100のうち含侵された繊維構造体が出ることができる他端部は、再びマトリックス材の外部にあり、また繊維含有量を体積で調整する機器100は、好ましくは適切な載置部上で移動可能に収納され、繊維含有量を体積で調整する機器100は、処理槽31を含む容器内に載置部を介して収納できるように、位置決めされている。
【0108】
この目的のために、本明細書において、繊維含有量を体積で調整する機器100は、第1のアーム127を介して蓋37内に収納され、第2のアーム129を介して下側部35に収納されている。第1のアーム127及び第2のアーム129は、各場合に、繊維含有量を体積で調整する機器100のダクト125に、繊維構造体13と垂直に延びる軸線の周りに回転可能に留められている。このおかげで、繊維含有量を体積で調整する機器100は、蓋37を閉じたとき所望位置に移動される。繊維構造体は、蓋37に固定されて繊維構造体13に上方から作用するワイパー39.1を介して処理槽31のマトリックス材内に押され、蓋を閉じたとき、繊維構造体13は上方から作用するワイパー39.1を介して、繊維構造体に下方から作用するワイパー39.2に向かって押される。本明細書において、繊維構造体13に下方から作用するワイパー39.2は、下側部35に固定されている。
【0109】
繊維構造体は、繊維束として又は複数の個々の粗紡糸から成る束として給送することができ、及び繊維に完全に含侵させるために処理槽31において個々の繊維に、少数の繊維から成る単一体又は個々の粗紡糸に分割することができ、ここで浸された後の繊維又は粗紡糸は、この繊維又は粗紡糸が、繊維含有量を体積で調整する機器を通って案内される前に、再び集められる。本明細書において、分割は、個々の繊維、少数の繊維から成る単一体又は粗紡糸が沿って案内され得る、偏向ユニット33を使用して実行することができる。
【0110】
図9及び10は、繊維含有量を体積で調整する機器を、閉じた位置及び開いた位置にて示す。
【0111】
繊維含有量を体積で調整する機器100は、上側部101及び下側部103を含む。各場合において、上側部101及び下側部103に1つの間隔105が位置している。上側部101及び下側部103を組み立てたとき、間隔105が開口部107を形成する。作動時に、マトリックス材で含侵された繊維は開口部107を通って案内され、過剰のマトリックス材は開口部の周縁109で拭き取られる。
【0112】
上側部101及び下側部103を有する、繊維含有量を体積で調整する機器100の構造のおかげで、図10に例示するように、繊維含有量を体積で設定するユニット100が開くことができる。これにより、繊維含有量を体積で設定するユニット100内に繊維をより簡単な様式で置くことが可能になる。
【0113】
本明細書において、含侵中の最小の開口部横断面は
【数1】
という条件を満たし、式中
nは、作動時に開口部を通って案内される繊維の数、
Texは、g/1000m単位の繊維総計Tex、
φは、体積による繊維含有量、
ρは、繊維の密度である。
【0114】
体積による繊維含有量φは
【数2】
で表され、式中
VFiberは繊維体積であり、VMatrixはマトリックス体積である。
【0115】
粗紡糸又は平坦な繊維構造体を含侵させたとき、繊維の数及びTex総計の代わりに、開口部を通って案内される粗紡糸又は平坦な繊維構造体の数及びTex総数を、それぞれ代入することができる。
【0116】
連続的なプロセスを可能にするためには、マトリックス材を継続的に供給することが必要である。この目的のために、繊維に含侵させる機器23上に、マトリックス材を計量しながら供給するユニットを設けることが好ましい。特に、二種類以上の成分樹脂を使用する場合、これらの成分は繊維構造体13に含侵させられる前に混合することが必要である。この目的のために、マトリックス材を混合し及び計量供給する機器201を使用することが好ましい。
【0117】
マトリックス材を混合し及び計量供給する機器を備えた、繊維構造体を含侵させる機器の側面図が図11に示される。
【0118】
二種類の成分樹脂において、一般に二種類の成分は、接触させられた後に反応し始めてポリマーを形成するので、混合物はもっぱら滞留時間が短いことが必要とされる。従って、繊維構造体を含侵させる機器13の処理槽は、マトリックス材としてただ少量の二種類の成分樹脂を含む。従って、連続的なプロセスのためには、処理槽内へ新しいマトリックス材を連続的に加えることが必要である。
【0119】
二種類の成分樹脂の成分を給送するために、マトリックス材を混合し及び計量供給する機器201は、第1の成分用の第1の循環路203及び第2成分用の第2循環路205を含む。作動時に、第1の成分は第1の循環路203を通って、第2の成分は第2の循環路205を通って循環する。
【0120】
第1の成分及び第2の成分のうち第1の循環路203及び第2の循環205中を循環する部分は、混合するヘッド207内に給送される。混合ヘッド207において、第1の成分と第2の成分とは混合され、次いで給送するためのライン209を介して、繊維構造体を含侵させる機器23の処理槽内に計量供給される。混合された第1の成分及び第2成分の滞留時間をできるだけ短くするために、混合ヘッド207は、繊維構造体を含侵させる機器23にできるだけ接近して位置決めされている。この目的のために、給送ラインする209もできるだけ短くなっている。代替案として、給送するライン209を省略し、混合ヘッド207を繊維構造体を含侵させる機器23上に直接載せることが可能である。
122 混合ヘッド207は、二種類の成分樹脂の第1の成分と第2の成分とを混合するために、任意の適切なミキサーを含むことができる。そのようなミキサーは、動的なミキサー又は静的なミキサーにすることができる。特に好ましくは、混合ヘッド207は静的なミキサーを含む。
【符号の説明】
【0121】
1 ライナー
3 第1の保持機器
5 第2の保持機器
7 支持体
9 中心軸線
11 可動アーム
12 切断機器
13 繊維構造体
14 ペンチを備えたスリーブ
15 織ったパターン
16 スリーブ
17 可動アーム
18 ペンチ
19 連続的な繊維用の給送部
21 繊維蓄え部
23 繊維に含侵させる機器
25 巻き付けた繊維構造体を備えたライナー
27 硬化場所
29 モールド
31 処理槽
33 偏向ユニット
35 下側部
37 蓋
39.1 繊維構造体に上方から作用するワイパー
39.2 繊維構造体に下方から作用するワイパー
41 そらせローラー
43 延び方向
45 そらせローラー
100 繊維含有量を体積で調整する機器
101 上側部
103 下側部
105 間隙
107 開口部
109 開口部の周縁
123 ノズル
125 ダクト
127 第1のアーム
129 第2のアーム
201 マトリックス材を混合し及び計量供給する機器
203 第1の循環路
205 第2の循環路
207 混合ヘッド
209 給送するライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】