(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(54)【発明の名称】抗体-多量体融合物の発現のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230807BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230807BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230807BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230807BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230807BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504739
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021070471
(87)【国際公開番号】W WO2022018178
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シャン-ホア
(72)【発明者】
【氏名】デュール, ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーラ コラー, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ミサギ, シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】シェン, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】トールナヴィティ, スティリアニ
(72)【発明者】
【氏名】イップ, ショウ ミン
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
(57)【要約】
本発明では、抗体-多量体融合ポリペプチドを製造するための方法であって、(a)抗体重鎖及び抗体軽鎖と、(b)N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分、抗体重鎖CH1ドメイン又は抗体軽鎖定常ドメイン、抗体ヒンジ領域、抗体重鎖CH2ドメイン、及び抗体重鎖CH3ドメインを含む第1の融合ポリペプチドと、N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第2の部分、及び第1のポリペプチドが抗体重鎖CH1ドメインを含む場合は抗体軽鎖定常ドメイン、又は第1のポリペプチドが抗体軽鎖定常ドメインを含む場合は抗体重鎖CH1ドメインを含む、第2の融合ポリペプチドとを含み、(i)(a)の抗体重鎖と(b)の第1の融合ポリペプチド、(ii)(a)の抗体重鎖と(a)の抗体軽鎖、及び(iii)(b)の第1の融合ポリペプチドと(b)の第2の融合ポリペプチドが、それぞれ独立して、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに共有結合しており、抗体-多量体融合物が、哺乳動物細胞に抗体重鎖、抗体軽鎖、第1の融合ポリペプチド及び第2の融合ポリペプチドのための発現カセットを1:1:2:1の化学量論比でトランスフェクトすることによって得られる組換え哺乳動物細胞によって発現されることを特徴とする、方法が報告される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体-多量体融合ポリペプチドを製造するための方法であって、
(a)抗体重鎖及び抗体軽鎖と、
(b)N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分、抗体重鎖CH1ドメイン又は抗体軽鎖定常ドメイン、抗体ヒンジ領域、抗体重鎖CH2ドメイン、及び抗体重鎖CH3ドメインを含む第1の融合ポリペプチドと、N末端からC末端に向かって、前記非抗体多量体ポリペプチドの第2の部分、及び前記第1のポリペプチドが抗体重鎖CH1ドメインを含む場合は抗体軽鎖定常ドメイン、又は前記第1のポリペプチドが抗体軽鎖定常ドメインを含む場合は抗体重鎖CH1ドメインを含む、第2の融合ポリペプチドと
を含み、
(i)(a)の前記抗体重鎖と(b)の前記第1の融合ポリペプチド、(ii)(a)の前記抗体重鎖と(a)の前記抗体軽鎖、及び(iii)(b)の前記第1の融合ポリペプチドと(b)の前記第2の融合ポリペプチドが、それぞれ独立して、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに共有結合しており、
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の可変ドメインが、抗原に特異的に結合する結合部位を形成し、
前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、(親)哺乳動物細胞に前記抗体重鎖、前記抗体軽鎖、前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドのための発現カセットを1:1:2:1の化学量論比でトランスフェクトすることによって得られる組換え哺乳動物細胞によって発現されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、一過性又は安定的に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が、CHO細胞、好ましくはCHO-K1細胞又はHEK細胞である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスフェクトすることが4つのベクターのものであり、各ベクターが正確に1つの前記発現カセットを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トランスフェクトすることが3つのベクターのものであり、2つのベクターが正確に2つの前記発現カセットを含み、1つのベクターが正確に1つの前記発現カセットを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トランスフェクトすることが3つのベクターのものであり、第1のベクターが抗体重鎖及び抗体軽鎖のための前記発現カセットを含み、第2の発現ベクターが前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドのための前記発現カセットを含み、第3のベクターが前記第1の融合ポリペプチドのための1つの発現カセットを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分として、ペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの2つの外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、前記第2の融合ポリペプチドが、非抗体多量体ポリペプチドの第2部分として、前記TNFリガンドファミリーメンバーの1つの外部ドメイン又はそのフラグメントのみを含むか、又はその逆である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記第1の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分として、TNFリガンドファミリーメンバーの第1の外部ドメイン又はそのフラグメント、スペーサードメイン及び前記TNFリガンドファミリーメンバーの第2の外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、
- 前記スペーサードメインがポリペプチドであり、少なくとも25個のアミノ酸残基を含み、
- TNFリガンドファミリーメンバーの前記第1の外部ドメイン又はそのフラグメントが、直接に又は第1のペプチドリンカーを介してのいずれかで前記スペーサードメインのN末端に融合され、
- 前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメイン又はそのフラグメントが、直接に又は第2のペプチドリンカーを介してのいずれかで前記スペーサードメインのC末端に融合され、
(b)前記第2の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第2の部分として、前記TNFリガンドファミリーメンバーの第3の外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、これが直接若しくは第3のペプチドリンカーを介してのいずれかで、
- 前記第1の融合ポリペプチド中の前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメインのC末端、若しくは前記第2の融合ポリペプチド中のスペーサードメインのC末端のいずれかに、又は
- 抗原結合ドメインの前記第2の部分が前記第2の融合タンパク質の前記スペーサードメインの前記C末端に融合している場合、前記第1の融合ポリペプチド中の前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメインの前記C末端に融合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の融合ポリペプチドが、N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分、抗体軽鎖定常ドメイン、抗体ヒンジ領域、抗体重鎖CH2ドメイン及び抗体重鎖CH3ドメインを含み、
前記第2の融合ポリペプチドが、N末端からC末端に向かって、前記非抗体多量体ポリペプチドの前記第2の部分と、抗体重鎖CH1ドメインとを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の融合ポリペプチドがノブ変異を含み、
前記抗体重鎖がホール変異を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)の前記抗体重鎖及び(b)の前記第1の融合ポリペプチドがFc領域を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)の前記抗体重鎖及び(b)の前記第1の融合ポリペプチドが、IgG1 Fc領域又はIgG4 Fc領域を形成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記Fc領域が、位置234及び235及び/又は329におけるアミノ酸置換(Kabat EUナンバリング)を更に含むIgG1 Fc領域である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記Fc領域が、アミノ酸置換L234A、L235A及び/又はP329G(Kabat EUナンバリング)を更に含むIgG1 Fc領域である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の融合ポリペプチドにおいて、第1のペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの前記2つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第2のペプチドリンカーによってそのC末端でCH1ドメインに融合され、前記第2の融合ポリペプチドにおいて、前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記1つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で前記抗体軽鎖定常ドメインに融合される、請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の融合ポリペプチドにおいて、第1のペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの前記2つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第2のペプチドリンカーによってそのC末端で軽鎖定常ドメインに融合され、前記第2の融合ポリペプチドにおいて、前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記1つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で前記重鎖CH1ドメインに融合される、請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
非抗体多量体ポリペプチドの前記部分に隣り合うCLドメインにおいて、位置123のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がアルギニン(R)によって置き換えられ、かつ位置124のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がリジン(K)によって置換されており、非抗体多量体ポリペプチドの前記部分に隣り合う前記CH1ドメインにおいて、位置147のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)及び位置213のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がグルタミン酸(E)によって置換されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、細胞表面抗原に特異的に結合する結合部位を形成する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、上皮成長因子受容体(EGFR)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20及びCD33からなる群から選択される細胞表面抗原に特異的に結合する結合部位を形成する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記TNFリガンドファミリーメンバーがヒトT細胞活性化を共刺激する、請求項7~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記TNFリガンドファミリーメンバーが、4-1-BBL及びOX40Lから選択される、請求項7~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記TNFリガンドファミリーメンバーが4-1-BBLである、請求項7~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号56、配列番号100、配列番号101及び配列番号102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号01又は配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項7~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が、標的細胞抗原に特異的に結合することができる結合部位を形成し、
(b)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号05、配列番号57、配列番号58及び配列番号59から群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号01、配列番号56、配列番号03及び配列番号04からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記TNFリガンドファミリーメンバーがOX40Lである、請求項7~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号43又は配列番号44のアミノ酸配列、特に配列番号43のアミノ酸配列を含む、請求項7~21及び26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体-多量体融合物が、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、並びに
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結された前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドを含み、抗原結合分子が、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号99又は配列番号100のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号43又は配列番号44のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項7~21及び26~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原が線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、FAPに特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号06又は配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号07又は配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号08又は配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号09又は配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号10又は配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号11又は配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、FAPに特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン、又は配列番号66のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号67のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含むか、又は前記第1の融合ポリペプチドが配列番号97のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号98のアミノ酸配列を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
(i)前記抗体重鎖が配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記抗体重鎖が配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
(i)前記抗体重鎖が配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記抗体重鎖が配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号141のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号142のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗原がCEAである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CEAに特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号84のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号88のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、請求項1~28及び35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CEAに特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号90のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号91のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、請求項1~28及び35又は36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む重鎖及び配列番号91のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む軽鎖と、
(ii)配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1の融合ポリペプチドと、
(iii)配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む第2の融合ポリペプチドと
を含む、請求項1~28及び35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む重鎖及び配列番号91のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む軽鎖と、
(ii)配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1の融合ポリペプチドと、
(iii)配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第2の融合ポリペプチドと
を含む、請求項1~28及び35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号93のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号94のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号92のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、又は
(ii)配列番号95のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号96のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号92のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖
を含む、請求項1~28及び35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)癌胎児抗原(CEA)に特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号143のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号92のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗原がCD19である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号108又は配列番号109のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号110又は配列番号111のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号112又は配列番号113のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号114又は配列番号115のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、請求項1~28及び42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号116のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号117のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含むか、又は配列番号118のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、請求項1~28及び42~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(i)前記重鎖が配列番号116のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号117のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記重鎖が配列番号118のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号119のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、
(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(iii)前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
(i)前記重鎖が配列番号116のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号117のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記重鎖が配列番号118のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号119のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、
(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(iii)前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
(i)前記重鎖が配列番号120のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号121のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号122のアミノ酸配列を含むか、又は
(ii)前記重鎖が配列番号123のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号124のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号122のアミノ酸配列を含むか、又は
(iii)前記重鎖が配列番号125のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号126のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を含むか、又は
(iv)前記重鎖が配列番号128のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号129のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号144のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記(親)哺乳動物細胞をトランスフェクトすることが、標的化インテグレーショントランスフェクションである、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記標的化インテグレーショントランスフェクションが二重リコンビナーゼ媒介カセット交換である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記(親)哺乳動物細胞が、そのゲノムの遺伝子座内の単一部位に組み込まれたランディング部位を有するCHO細胞である、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記ランディング部位が、2つのRRSが隣接する、第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーを含み、前記第1の選択マーカーは前記第2の選択マーカーとは異なる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の選択マーカーがグルタミン合成酵素選択マーカーであり、前記第2の選択マーカーがGFP蛍光タンパク質である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記組み込まれたランディング部位が、チミジンキナーゼ選択マーカー及びHYG選択マーカーを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
両方の選択マーカーに隣接する前記2つのRRSが異なる、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ランディング部位が、Creリコンビナーゼ媒介DNA組換えのための3つのヘテロ特異的loxP部位を含む、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ヘテロ特異的loxP部位が、L3、LoxFas及び2Lである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記L3及び2Lが、それぞれ5’末端及び3’末端において前記ランディング部位に隣接し、LoxFasが前記L3部位と前記2L部位との間に位置する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ランディング部位が、IRESを介した選択マーカーの発現を蛍光GFPタンパク質の発現に連結するバイシストロン性単位を更に含む、請求項51~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、5’から3’に向かって
- 前記第1の融合ポリペプチドをコードする第1の発現カセットと、
- 前記第1の融合ポリペプチドをコードする第2の発現カセットと、
- 前記第2の融合ポリペプチドをコードする第3の発現カセットと、
- 前記抗体重鎖をコードする第4の発現カセットと、
- 前記抗体軽鎖をコードする第5の発現カセットと
を含む、前記細胞のゲノムに組み込まれたデオキシリボ核酸から発現される、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸が、単一の部位又は遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれる、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸が、
- 第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列と、
- 第5の(最も3’の)発現カセットに対して3’に位置する第2の組換え認識配列と、
- 第3の組換え認識配列であって、
- 前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列の間、かつ
- 前記第3の発現カセットと前記第4の発現カセットとの間に位置する第3の組換え認識配列と
を更に含み、
全ての組換え認識配列が異なる、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードする更なる発現カセットを更に含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して、
i)5’、又は
ii)3’、又は
iii)部分的に5’及び部分的に3’
のいずれかに位置する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’及び部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分がプロモーター及び開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が開始コドンのないコード配列及びポリAシグナルを含む、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードする更なる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’及び部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモーター及び開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列及びポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記開始コドンがATGである、請求項65又は66に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞株作製及びポリペプチド産生の分野に関する。より正確には、本明細書では、規定nの比率の抗体-多量体融合物の個々のポリペプチドに対する発現カセットで非産生哺乳動物細胞をトランスフェクトすることによる組換え哺乳動物産生細胞の作製が報告される。当該細胞は、抗体-多量体融合物の産生方法において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば抗体等の、分泌されグリコシル化されるポリペプチドは、通常、安定発現又は一過性発現のいずれかとして真核細胞において組換え発現されることにより生産される。
【0003】
産生されるポリペプチドの複雑性が高いほど、すなわち細胞内で目的のポリペプチドを形成するのに必要な異なるポリペプチド又はポリペプチド鎖の数が多いほど、異なるポリペプチド又はポリペプチド鎖の互いに対する発現比の制御がより重要になる。発現比の制御は、目的のポリペプチドの効率的な発現、正しい集合及び高発現収率での成功した分泌を可能にするために必要である。
【0004】
目的の外因性ポリペプチドを発現する組換え細胞を作製するための1つの戦略は、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のランダムなインテグレーションとそれに続く分泌工程及び単離工程を含む。
【0005】
リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)による標的指向性インテグレーションは、真核生物宿主ゲノムの予め定められた部位に特異的かつ効率的に外来DNAを導くための方法である(Turan et al.,J.Mol.Biol.407(2011)193-221)。
【0006】
Crawford et al.は、φC31インテグラーゼ技術とCRE-Lox技術を組み合わせて用いて、標的化細胞株開発のために信頼のおける宿主を限定的なゲノムスクリーニングによって迅速に同定したことを報告した(Biotechnol.Prog.29(2013)1307-1315)。
【0007】
Rajendra et al.は、単一のクワッドベクターは、安定したCHO細胞株を作製するための単純でありながら効果的な代替アプローチであり、臨床ヘテロmAb治療薬の細胞株作製を加速する可能性があることを報告している(Biotechnol.Prog.33(2017)469~477)。
【0008】
Bahr et al.は、チャイニーズハムスター卵巣細胞における標的指向性インテグレーションを使用するプラットフォーム発現系の開発を報告した(Cell Culture Engineering XVI,2018の議事録)。
【0009】
Carver et al.は、サブユニット遺伝子の投与量及び位置の最適化によって、標的指向性インテグレーション宿主における抗体産生を最大化することを報告した(Biotechnol.Prog.(2020)e2967)。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明は、以下の独立した態様及び従属する実施形態によって定義される。
【0011】
1.本発明の第1の態様は、抗体-多量体融合ポリペプチドを製造するための方法であって、
(a)抗体重鎖及び抗体軽鎖と、
(b)N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分、抗体重鎖CH1ドメイン又は抗体軽鎖定常ドメイン、抗体ヒンジ領域、抗体重鎖CH2ドメイン、及び抗体重鎖CH3ドメインを含む第1の融合ポリペプチドと、N末端からC末端に向かって、前記非抗体多量体ポリペプチドの第2の部分、及び前記第1のポリペプチドが抗体重鎖CH1ドメインを含む場合は抗体軽鎖定常ドメイン、又は前記第1のポリペプチドが抗体軽鎖定常ドメインを含む場合は抗体重鎖CH1ドメインを含む、第2の融合ポリペプチドと
を含み、
(i)(a)の前記抗体重鎖と(b)の前記第1の融合ポリペプチド、(ii)(a)の前記抗体重鎖と(a)の前記抗体軽鎖、及び(iii)(b)の前記第1の融合ポリペプチドと(b)の前記第2の融合ポリペプチドが、それぞれ独立して、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに共有結合しており、
前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の可変ドメインが、抗原に特異的に結合する結合部位を形成し、
前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、(親)哺乳動物細胞に前記抗体重鎖、前記抗体軽鎖、前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドのための発現カセットを1:1:2:1の化学量論比でトランスフェクトすることによって得られる組換え哺乳動物細胞によって発現されることを特徴とする、方法である。
【0012】
2.前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、一過性又は安定的に発現される、態様1に記載の方法。
【0013】
3.前記哺乳動物細胞が、CHO細胞、好ましくはCHO-K1細胞又はHEK細胞である、態様1又は実施形態2に記載の方法。
【0014】
4.前記トランスフェクトすることが4つのベクターのものであり、各ベクターが正確に1つの前記発現カセットを含む、態様1及び実施形態2又は3のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
5.前記トランスフェクトすることが3つのベクターのものであり、2つのベクターが正確に2つの前記発現カセットを含み、1つのベクターが正確に1つの前記発現カセットを含む、態様1及び実施形態2又は3のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
6.前記トランスフェクトすることが3つのベクターのものであり、第1のベクターが抗体重鎖及び抗体軽鎖のための前記発現カセットを含み、第2の発現ベクターが前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドのための前記発現カセットを含み、第3のベクターが前記第1の融合ポリペプチドのための1つの発現カセットを含む、実施形態4に記載の方法。
【0017】
7.前記第1の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分として、ペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの2つの外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、前記第2の融合ポリペプチドが、非抗体多量体ポリペプチドの第2部分として、前記TNFリガンドファミリーメンバーの1つの外部ドメイン又はそのフラグメントのみを含むか、又はその逆である、態様1及び実施形態2~6のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
8.(a)前記第1の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分として、TNFリガンドファミリーメンバーの第1の外部ドメイン又はそのフラグメント、スペーサードメイン及び前記TNFリガンドファミリーメンバーの第2の外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、
- 前記スペーサードメインがポリペプチドであり、少なくとも25個のアミノ酸残基を含み、
- TNFリガンドファミリーメンバーの前記第1の外部ドメイン又はそのフラグメントが、直接に又は第1のペプチドリンカーを介してのいずれかで前記スペーサードメインのN末端に融合され、
- 前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメイン又はそのフラグメントが、直接に又は第2のペプチドリンカーを介してのいずれかで前記スペーサードメインのC末端に融合され、
(b)前記第2の融合ポリペプチドが、前記非抗体多量体ポリペプチドの第2の部分として、前記TNFリガンドファミリーメンバーの第3の外部ドメイン又はそのフラグメントを含み、これが直接若しくは第3のペプチドリンカーを介してのいずれかで、
- 前記第1の融合ポリペプチド中の前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメインのC末端、若しくは前記第2の融合ポリペプチド中のスペーサードメインのC末端のいずれかに、又は
- 抗原結合ドメインの前記第2の部分が前記第2の融合タンパク質の前記スペーサードメインの前記C末端に融合している場合、前記第1の融合ポリペプチド中の前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記第2の外部ドメインの前記C末端に融合されている、実施形態7に記載の方法。
【0019】
9.前記第1の融合ポリペプチドが、N末端からC末端に向かって、非抗体多量体ポリペプチドの第1の部分、抗体軽鎖定常ドメイン、抗体ヒンジ領域、抗体重鎖CH2ドメイン及び抗体重鎖CH3ドメインを含み、
前記第2の融合ポリペプチドが、N末端からC末端に向かって、前記非抗体多量体ポリペプチドの前記第2の部分と、抗体重鎖CH1ドメインとを含む、態様1及び実施形態2~8のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
10.前記第1の融合ポリペプチドがノブ変異を含み、
前記抗体重鎖がホール変異を含む、態様1及び実施形態2~9のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
11.(a)の前記抗体重鎖及び(b)の前記第1の融合ポリペプチドがFc領域を形成する、態様1及び実施形態2~10のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
12.(a)の前記抗体重鎖及び(b)の前記第1の融合ポリペプチドがIgG1 Fc領域又はIgG4 Fc領域を形成する、態様1及び実施形態2~11のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
13.前記Fc領域が、位置234及び235及び/又は329におけるアミノ酸置換(Kabat EUナンバリング)を更に含むIgG1 Fc領域である、態様1及び実施形態2~12のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
14.前記Fc領域が、位置L234A、L235A及び/又はP329Gにおけるアミノ酸置換(Kabat EUナンバリング)を更に含むIgG1 Fc領域である、態様1及び実施形態2~13のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
15.前記第1の融合ポリペプチドにおいて、第1のペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの前記2つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第2のペプチドリンカーによってそのC末端でCH1ドメインに融合され、前記第2の融合ポリペプチドにおいて、前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記1つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で前記抗体軽鎖定常ドメインに融合される、実施形態7~14のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
16.前記第1の融合ポリペプチドにおいて、第1のペプチドリンカーによって互いに接続されたTNFリガンドファミリーメンバーの前記2つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第2のペプチドリンカーによってそのC末端で軽鎖定常ドメインに融合され、前記第2の融合ポリペプチドにおいて、前記TNFリガンドファミリーメンバーの前記1つの外部ドメイン又はそのフラグメントが、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で前記重鎖CH1ドメインに融合される、実施形態7~14のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
17.非抗体多量体ポリペプチドの前記部分に隣り合うCLドメインにおいて、位置123のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がアルギニン(R)によって置き換えられ、かつ位置124のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がリジン(K)によって置換されており、非抗体多量体ポリペプチドの前記部分に隣り合う前記CH1ドメインにおいて、位置147のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)及び位置213のアミノ酸(Kabat EUナンバリング)がグルタミン酸(E)によって置換されている、態様1及び実施形態2~16のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
18.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、細胞表面抗原に特異的に結合する結合部位を形成する、態様1及び実施形態2~17のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
19.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、上皮成長因子受容体(EGFR)、癌胎児性抗原(CEA)、CD19、CD20及びCD33からなる群から選択される細胞表面抗原に特異的に結合する結合部位を形成する、態様1及び実施形態2~18のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
20.前記TNFリガンドファミリーメンバーがヒトT細胞活性化を共刺激する、実施形態7~19のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
21.前記TNFリガンドファミリーメンバーが、4-1-BBL及びOX40Lから選択される、実施形態7~20のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
22.前記TNFリガンドファミリーメンバーが4-1-BBLである、実施形態7~21のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
23.TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号56、配列番号100、配列番号101及び配列番号102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態7~22のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
24.TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号01又は配列番号56のアミノ酸配列を含む、実施形態7~23のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
25.(a)前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が、標的細胞抗原に特異的に結合することができる結合部位を形成し、
(b)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号05、配列番号57、配列番号58及び配列番号59から群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号01、配列番号56、配列番号03及び配列番号04からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、態様1及び実施形態2~24のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
26.前記TNFリガンドファミリーメンバーがOX40Lである、実施形態7~21のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
27.TNFリガンドファミリーメンバーの前記外部ドメインが、配列番号43又は配列番号44のアミノ酸配列、特に配列番号43のアミノ酸配列を含む、実施形態7~21及び26のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
28.前記抗体-多量体融合物が、
(a)標的細胞抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、並びに
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結された前記第1の融合ポリペプチド及び前記第2の融合ポリペプチドを含み、抗原結合分子が、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号99又は配列番号100のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号43又は配列番号44のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、実施形態7~21及び26~27のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
29.前記抗原が線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)である、態様1及び実施形態2~28のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
30.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、FAPに特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号06又は配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号07又は配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号08又は配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号09又は配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号10又は配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号11又は配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、態様1及び実施形態2~29のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
31.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、FAPに特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号15のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号16のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン、又は配列番号66のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号67のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含むか、又は前記第1の融合ポリペプチドが配列番号97のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号98のアミノ酸配列を含む、態様1及び実施形態2~30のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
32.(i)前記抗体重鎖が配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記抗体重鎖が配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む、態様1及び実施形態2~31のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
33.(i)前記抗体重鎖が配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記抗体重鎖が配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記抗体軽鎖が配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、態様1及び実施形態2~32のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
34.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)FAPに特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号141のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号142のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、請求項1~28及び42~47のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
35.前記抗原がCEAである、態様1又は実施形態2~28のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
36.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CEAに特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号84のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号88のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、態様1及び実施形態2~28及び35のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
37.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CEAに特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号90のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号91のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、態様1及び実施形態2~28及び35又は36のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
38.前記抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む重鎖及び配列番号91のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む軽鎖と、
(ii)配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1の融合ポリペプチドと、
(iii)配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む第2の融合ポリペプチドと
を含む、態様1及び実施形態2~28及び35~37のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
39.前記抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む重鎖及び配列番号91のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む軽鎖と、
(ii)配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1の融合ポリペプチドと、
(iii)配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第2の融合ポリペプチドと
を含む、態様1及び実施形態2~28及び35~38のいずれか一項に記載の方法。
【0050】
40.前記抗体-多量体融合物が、
(i)配列番号93のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号94のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号92のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、又は
(ii)配列番号95のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号96のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号92のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖
を含む、態様1及び実施形態2~28及び35~39のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
41.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)CEAに特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号143のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号92のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、態様1又は実施形態2~28及び35~40のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
42.前記抗原がCD19である、態様1又は実施形態2~28のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
43.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、(i)配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号108又は配列番号109のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号110又は配列番号111のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号112又は配列番号113のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号114又は配列番号115のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む、態様1又は実施形態2~28及び42のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
44.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖の前記可変ドメインが、CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、配列番号116のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号117のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含むか、又は配列番号118のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号119のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む、態様1又は実施形態2~28及び42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
45.(i)前記重鎖が配列番号116のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号117のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記重鎖が配列番号118のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号119のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、
(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号13、配列番号68、配列番号71及び配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(iii)前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号14、配列番号69、配列番号70、配列番号72及び配列番号74のアミノ酸配列を含む、態様1又は実施形態2~28及び42~44のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
46.(i)前記重鎖が配列番号116のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号117のアミノ酸配列を含むVLドメインを含むか、又は前記重鎖が配列番号118のアミノ酸配列を含むVHドメインを含み、前記軽鎖が配列番号119のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、
(ii)前記第1の融合ポリペプチドが、配列番号75、配列番号77、配列番号79及び配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(iii)前記第2の融合ポリペプチドが、配列番号76、配列番号78、配列番号80及び配列番号83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、態様1又は実施形態2~28及び42~45のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
47.(i)前記重鎖が配列番号120のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号121のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号122のアミノ酸配列を含むか、又は
(ii)前記重鎖が配列番号123のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号124のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号122のアミノ酸配列を含むか、又は
(iii)前記重鎖が配列番号125のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号126のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を含むか、又は
(iv)前記重鎖が配列番号128のアミノ酸配列を含み、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号129のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を含む、態様1又は実施形態2~28及び42~45のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
48.前記抗体重鎖及び前記抗体軽鎖が(ヒト)CD19に特異的に結合する結合部位を形成し、前記抗体重鎖が配列番号144のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖が配列番号127のアミノ酸配列を有し、前記第1の融合ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を含み、前記第2の融合ポリペプチドが配列番号80のアミノ酸配列を含む、態様1又は実施形態2~28及び42~47のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
49.前記(親)哺乳動物細胞をトランスフェクトすることが、標的化インテグレーショントランスフェクションである、態様1又は実施形態2~48のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
50.前記標的化インテグレーショントランスフェクションが二重リコンビナーゼ媒介カセット交換である、実施形態49に記載の方法。
【0061】
51.前記(親)哺乳動物細胞が、そのゲノムの遺伝子座内の単一部位に組み込まれたランディング部位を有するCHO細胞である、実施形態49又は50に記載の方法。
【0062】
52.前記ランディング部位が、2つのRRSが隣接する、第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーを含み、前記第1の選択マーカーは前記第2の選択マーカーとは異なる、実施形態51に記載の方法。
【0063】
53.前記第1の選択マーカーがグルタミン合成酵素選択マーカーであり、前記第2の選択マーカーがGFP蛍光タンパク質である、実施形態52に記載の方法。
【0064】
54.前記組み込まれたランディング部位が、チミジンキナーゼ選択マーカー及びHYG選択マーカーを含む、実施形態52に記載の方法。
【0065】
55.両方の選択マーカーに隣接する前記2つのRRSが異なる、実施形態52~54のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
56.前記ランディング部位が、Creリコンビナーゼ媒介DNA組換えのための3つのヘテロ特異的loxP部位を含む、実施形態51~55のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
57.前記ヘテロ特異的loxP部位が、L3、LoxFas及び2Lである、実施形態56に記載の方法。
【0068】
58.前記L3及び2Lが、それぞれ5’末端及び3’末端において前記ランディング部位に隣接し、LoxFasが前記L3部位と前記2L部位との間に位置する、実施形態57に記載の方法。
【0069】
59.前記ランディング部位が、IRESを介した選択マーカーの発現を蛍光GFPタンパク質の発現に連結するバイシストロン性単位を更に含む、実施形態51~58のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
60.前記抗体-多量体融合ポリペプチドが、5’から3’に向かって、
- 前記第1の融合ポリペプチドをコードする第1の発現カセットと、
- 前記第1の融合ポリペプチドをコードする第2の発現カセットと、
- 前記第2の融合ポリペプチドをコードする第3の発現カセットと、
- 前記抗体重鎖をコードする第4の発現カセットと、
- 前記抗体軽鎖をコードする第5の発現カセットと
を含む、前記細胞のゲノムに組み込まれたデオキシリボ核酸から発現される、態様1又は実施形態2~59のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
61.前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸が、単一の部位又は遺伝子座で前記哺乳動物細胞のゲノムに安定的に組み込まれる、態様1又は実施形態2~60のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
62.前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードするデオキシリボ核酸が、
- 第1の(最も5’の)発現カセットに対して5’に位置する第1の組換え認識配列と、
- 第5の(最も3’の)発現カセットに対して3’に位置する第2の組換え認識配列と、
- 第3の組換え認識配列であって、
- 前記第1の組換え認識配列と前記第2の組換え認識配列の間、かつ
- 前記第3の発現カセットと前記第4の発現カセットとの間に位置する第3の組換え認識配列と
を更に含み、
全ての組換え認識配列が異なる、実施形態60又は61に記載の方法。
【0073】
63.前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードする更なる発現カセットを更に含む、実施形態60~62のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
64.選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して、
i)5’、又は
ii)3’、又は
iii)部分的に5’及び部分的に3’
のいずれかに位置する、実施形態63に記載の方法。
【0075】
65.選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’及び部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分がプロモーター及び開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が開始コドンのないコード配列及びポリAシグナルを含む、実施形態63又は64に記載の方法。
【0076】
66.前記抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする前記デオキシリボ核酸が、選択マーカーをコードする更なる発現カセットを含み、前記選択マーカーをコードする前記発現カセットが、前記第3の組換え認識配列に対して部分的に5’及び部分的に3’に位置し、前記発現カセットの前記5’に位置する部分が、プロモーター及び開始コドンを含み、前記発現カセットの前記3’に位置する部分が、開始コドンのないコード配列及びポリAシグナルを含み、前記開始コドンが、前記コード配列に作動可能に連結されている、実施形態60~65のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
67.前記開始コドンがATGである、実施形態65又は66に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0078】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、異なるポリペプチドを含む複合分子である、すなわちヘテロ多量体である抗体-多量体融合物の発現について、規定の発現カセット比の使用が、HEK又はCHO細胞等の哺乳動物細胞における抗体-多量体融合物の効率的な発現及び産生をもたらすという知見に基づく。
【0079】
本発明は、少なくとも部分的には、異なるポリペプチドを含む複合体分子、すなわちヘテロ多量体である抗体-多量体融合物の一過性及び安定な発現のために、同じ規定の発現カセット比の使用が最も高い発現収率及び製品品質をもたらすという知見に基づく。
【0080】
I.定義
本明細書において使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「ナンバリングはKabat従う」と称される。具体的には、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660頁を参照)は、カッパアイソタイプ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723頁を参照)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3であって、本明細書では、この場合には、「ナンバリングはKabat EUインデックスに従う」と称することによって更に明確にしている)に使用される。
【0081】
ノブ・イントゥー・ホール二量体化モジュール及び抗体操作におけるその使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology 2(1996)73-73(1)に記載されている。
【0082】
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に与えられる。
【0083】
本発明を実施するための有用な方法及び技術は、例えば、Ausubel,F.M.(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I to III(1997);Glover,N.D.,and Hames,B.D.,ed.,DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(1985),Oxford University Press;Freshney,R.I.(ed.),Animal Cell Culture-a practical approach,IRL Press Limited(1986);Watson,J.D.,et al.,Recombinant DNA,Second Edition,CHSL Press(1992);Winnacker,E.L.,From Genes to Clones;N.Y.,VCH Publishers(1987);Celis,J.,ed.,Cell Biology,Second Edition,Academic Press(1998);Freshney,R.I.,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,second edition,Alan R.Liss,Inc.,N.Y.(1987)に記載されている。
【0084】
組換えDNA技術の使用は、核酸の誘導体の作製を可能にする。このような誘導体は、例えば、置換、変更、交換、欠失又は挿入によって、個々の又はいくつかのヌクレオチド位置で改変することができる。改変又は誘導体化は、例えば、部位特異的突然変異誘発によって行うことができる。このような修飾は、当業者によって容易に行うことができる(例えば、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A laboratory manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,USA;Hames,B.D.,and Higgins,S.G.,Nucleic acid hybridization-a practical approach(1985)IRL Press,Oxford,Englandを参照)。
【0085】
本明細書及び添付の実施形態では使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈において特に明白な規定がない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞及び当業者に公知のその均等物等を含む。同様に、「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では相互交換可能に使用することができる。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する」という用語は、相互交換可能に使用することができることにも留意されたい。
【0086】
「約」という用語は、その後に続く数値の+/-20%の範囲を意味する。一実施形態では、約という用語は、その後に続く数値の+/-10%の範囲を意味する。一実施形態では、約という用語は、その後に続く数値の+/-5%の範囲を意味する。
【0087】
「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語も含む。
【0088】
本明細書において使用される場合、「組換え細胞」という用語は、最終的な遺伝子修飾後の細胞、例えば、目的のポリペプチドを発現し、当該目的のポリペプチドの任意の規模での産生のために使用できる細胞を意味する。例えば、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)に供され、それによって目的のポリペプチドのコード配列が宿主細胞のゲノム中に導入された「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」は、「組換え細胞」である。この細胞は、更にRMCE反応を行うことが依然としてできるが、そうすることは目的ではない。
【0089】
本明細書で使用される「組換え哺乳動物細胞」という用語は、ポリペプチドを発現することができる外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を意味する。そのような組換え哺乳動物細胞は、そのような細胞の子孫を含む、1つ以上の外因性核酸(複数可)が導入された細胞である。したがって、「異種ポリペプチドをコードする核酸を含む哺乳動物細胞」という用語は、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれ、異種ポリペプチドを発現することができる外因性ヌクレオチド配列を含む細胞を意味する。一実施形態では、外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞は、宿主細胞のゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれる外因性ヌクレオチド配列を含む細胞であり、この外因性ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1及び第2の組換え認識配列、並びに第1と第2の組換え認識配列の間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列は全て異なっている。
【0090】
「外因性ヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞」及び「組換え細胞」はどちらも、「形質転換細胞」である。この用語は、継代の回数に関わらず、初代形質転換細胞も、それに由来する子孫も含む。子孫は、例えば、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではなくてもいが、突然変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物活性を有している変異体の子孫が包含される。
【0091】
「インテグレーション部位」という用語は、外因性ヌクレオチド配列が挿入される、細胞ゲノム内の核酸配列を意味する。特定の実施形態では、インテグレーション部位は、細胞ゲノム中の隣り合う2つのヌクレオチドの間にある。特定の実施形態では、インテグレーション部位は、ヌクレオチド配列のストレッチを含む。特定の実施形態では、インテグレーション部位は、哺乳動物細胞のゲノムの特定の遺伝子座内に位置している。特定の実施形態では、インテグレーション部位は、哺乳動物細胞の内因性遺伝子内にある。
【0092】
「ベクター」又は「プラスミド」という用語は、同義的に用いることができ、本明細書において使用される場合、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を意味する。この用語は、導入された宿主細胞のゲノムに組み込んだベクターだけでなく、自己複製核酸構造物としてのベクターも含む。ある種のベクターは、動作可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
【0093】
「結合する」という用語は、その標的への結合部位の結合を意味する。例えば、それぞれの抗原への、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含む抗体結合部位の結合である。この結合は、例えば、BIAcore(登録商標)アッセイ(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を使用して測定することができる。すなわち、「(抗原への)結合」という用語は、in vitroアッセイにおいて、抗体のその抗原(複数可)への結合を意味する。一実施形態では、結合は、抗体が表面に結合しており、かつ抗体への抗原の結合が表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される結合アッセイにおいて決定される。結合とは、例えば、10-8M以下、いくつかの実施形態では10-13~10-8M、いくつかの実施形態では10-13~10-9Mの結合親和性(KD)を意味する。「結合する」という用語は、「特異的に結合する」という用語も含む。
【0094】
例えば、BIAcore(登録商標)アッセイの1つの可能な実施形態では、抗原が表面に結合され、抗体、すなわちその結合部位(複数可)の結合が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される。結合の親和性は、用語ka(会合定数:複合体を形成するための会合の速度定数)、kd(解離定数、複合体の解離のための速度定数)、及びKD(kd/ka)によって定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さ及び解離挙動に関して、参照の応答シグナルと直接比較することができる。
【0095】
「結合部位」という用語は、標的への結合特異性を示す任意のタンパク質性エンティティを意味する。これは、例えば、受容体、受容体リガンド、アンチカリン、アフィボディ、抗体等であり得る。したがって、本明細書で使用される場合の「結合部位」という用語は、第2のポリペプチドに特異的に結合することができるか又は第2のポリペプチドにより特異的に結合され得るポリペプチドを表す。
【0096】
本明細書において使用される場合、「外因性」という用語は、あるヌクレオチド配列が特定の細胞に由来せず、DNA送達法、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、又は形質転換法によって当該細胞に導入されることを示す。したがって、外因性ヌクレオチド配列は人工配列であり、人工物は、例えば、起源が異なる部分配列の組み合わせ(例えば、SV40プロモーターを有するリコンビナーゼ認識配列と緑色蛍光タンパク質のコード配列との組み合わせは、人工核酸である)から、又は配列(例えば、膜結合型受容体の細胞外ドメインのみをコードする配列若しくはcDNA)の部分的な欠失若しくは核酸塩基の突然変異から、生じ得る。「内在性」という用語は、細胞に由来するヌクレオチド配列を意味する。「外因性」ヌクレオチド配列は、塩基組成が同一である「内在性」対応物を有し得るが、「外因性」配列は、例えば組換えDNA技術によって細胞に導入されている。
【0097】
本明細書で使用される場合、「選択マーカー」という用語は、対応する選択剤の存在下で、ある遺伝子を保持する細胞が特異的に選択されるか、又は特異的に排除されることを可能にする該遺伝子を意味する。例えば、限定ではないが、選択マーカーは、選択マーカー遺伝子で形質転換された宿主細胞が、それぞれの選択剤の存在下で積極的に選択されることを可能にすることができ(選択的培養条件)、形質転換されていない宿主細胞は、選択的培養条件下で増殖又は生存することができない。選択マーカーは、陽性、陰性、又は二機能性であり得る。陽性選択マーカーは、マーカーを保持する細胞の選択を可能にすることができるのに対し、陰性選択マーカーは、マーカーを保持する細胞を選択的に排除することを可能にし得る。選択マーカーは、宿主細胞において薬物に対する耐性を付与することができるか、又は代謝若しくは異化の欠陥を補うことができる。原核細胞においては、とりわけ、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、又はクロラムフェニコールに対する耐性を付与する遺伝子を使用することができる。真核細胞において選択マーカーとして有用な耐性遺伝子には、限定されないが、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD))の遺伝子、並びにピューロマイシン、ブラスチシジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。更なるマーカー遺伝子は、国際公開第92/08796号及び国際公開第94/28143号に記載されている。
【0098】
対応する選択剤の存在下での選択を容易にすることを超えて、選択マーカーは、別法として、普通は細胞に存在しない分子、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度GFP(eGFP)、合成GFP、黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度YFP(eYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphireであってよい。例えば、コードされるポリペプチドが発する蛍光の検出又は不在にそれぞれ基づいて、そのような分子を発現する細胞を、この遺伝子を内部に持たない細胞と区別することができる。
【0099】
プロリルエンドペプチダーゼFAP又はセプラーゼ(EC3.4.21)としても知られている、「線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意のネイティブFAPを意味する。この用語は、「全長」のプロセシングされていないFAP、及び細胞におけるプロセシングから生じるFAPの任意の形態を包含する。この用語は、FAPの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一実施形態では、本発明の抗原結合分子は、ヒト、マウス、及び/又はカニクイザルFAPに特異的に結合可能である。ヒトFAPのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号Q12884(バージョン149、配列番号17)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004451.2にて示されている。ヒトFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から760まで伸びている。Hisタグ付ヒトFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号14及び配列番号15に示す。マウスFAPのアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P97321(バージョン126、配列番号18)、又はNCBI RefSeq NP_032012.1に示されている。マウスFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から761まで伸びている。配列番号19及び配列番号20は、それぞれHisタグ付きマウスFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を示す。配列番号21及び配列番号22は、それぞれHisタグ付きカニクイザルFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を示す。好ましくは、抗本発明のFAP結合分子はFAPの細胞外ドメインに結合する。例示的な抗FAP結合分子が国際公開第2012/020006号に記載される。
【0100】
「TNFリガンドファミリーメンバー」又は「TNFファミリーリガンド」という用語は、炎症促進性サイトカインを指す。サイトカインは、一般に、特にTNFリガンドファミリーのメンバーは、免疫系の刺激及び調整において重要な役割を果たす。現在、19種のサイトカインが、配列、機能及び構造の類似性に基づいて、TNF(腫瘍壊死因子)リガンドスーパーファミリーのメンバーとして同定されている。これらのリガンドは全て、C末端細胞外ドメイン(外部ドメイン)、N末端細胞内ドメイン及び単一の膜貫通ドメインを有するII型膜貫通タンパク質である。TNF相同ドメイン(THD)として公知のC末端細胞外ドメインは、スーパーファミリーメンバー間で20~30%のアミノ酸同一性を有し、受容体への結合を担う。TNF外部ドメインはまた、それらの特異的受容体によって認識される三量体複合体を形成するTNFリガンドを担う。
【0101】
TNFリガンドファミリーのメンバーは、リンホトキシンα(LTA又はTNFSF1としても知られている)、TNF(TNFSF2としても知られている)、LTβ(TNFSF3としても知られている)、OX40L(TNFSF4としても知られている)、CD40L(CD154又はTNFSF5としても知られている)、FasL(CD95L、CD178又はTNFSF6としても知られる)、CD27L(CD70又はTNFSF7としても知られている)、CD30L(CD153又はTNFSF8としても知られている)、4-1-BBL(TNFSF9としても知られている)、TRAIL(APO2L、CD253又はTNFSF10としても知られている)、RANKL(CD254又はTNFSF11としても知られている)、TWEAK(TNFSF12としても知られている)、APRIL(CD256又はTNFSF13としても知られている)、BAFF(CD257又はTNFSF13Bとしても知られている)、LIGHT(CD258又はTNFSF14としても知られている)、TL1A(VEGI又はTNFSF15としても知られている)、GITRL(TNFSF18としても知られている)、EDA-A1(エクトジプラスシンA1としても知られている)、及びEDA-A2(エクトジプラスシンA2としても知られている)からなる群から選択される。特に記載のない限り、この用語は、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の天然TNFファミリーリガンドを指す。本発明の具体的な実施形態では、TNFリガンドファミリーメンバーは、OX40L、FasL、CD27L、TRAIL、4-1-BBL、CD40L及びGITRLからなる群から選択される。特定の実施形態では、TNFリガンドファミリーメンバーは、4-1-BBL及びOX40Lから選択される。
【0102】
TNFリガンドファミリーメンバーの更なる情報、特に配列は、UniProt(www.uniprot.org)等の公的にアクセス可能なデータベースから得ることができる。例えば、ヒトTNFリガンドは、以下のアミノ酸配列を有する:ヒトリンホトキシンα(UniProtアクセッション番号P01374、配列番号24)、ヒトTNF(UniProtアクセッション番号P01375、配列番号25)、ヒトリンホトキシンα(UniProtアクセッション番号Q06643、配列番号26)、ヒトOX40L(UniProtアクセッション番号P23510、配列番号27)、ヒトCD40L(UniProtアクセッション番号P29965、配列番号28)、ヒトFasL(UniProtアクセッション番号P48023、配列番号29)、ヒトCD27L(UniProtアクセッション番号P32970、配列番号30)、ヒトCD30L(UniProtアクセッション番号P32971、配列番号31)、4-1-BBL(UniProtアクセッション番号P41273、配列番号32)、TRAIL(UniProtアクセッション番号P50591、配列番号33)、RANKL(UniProtアクセッション番号O14788、配列番号34)、TWEAK(UniProtアクセッション番号O43508、配列番号35)、APRIL(UniProtアクセッション番号O75888、配列番号36)、BAFF(UniProtアクセッション番号Q9Y275、配列番号37)、LIGHT(UniProtアクセッション番号O43557、配列番号38)、TL1A(UniProtアクセッション番号O95150、配列番号39)、GITRL(UniProtアクセッション番号Q9UNG2、配列番号40)、及びエクトジプラスリンA(UniProtアクセッション番号Q92838、配列番号41)。
【0103】
「外部ドメイン」は、細胞外空間(すなわち、標的細胞の外側の空間)に伸長する膜タンパク質のドメインである。外部ドメインは、通常、シグナル伝達をもたらす表面との接触を開始するタンパク質の部分である。したがって、本明細書で定義されるTNFリガンドファミリーメンバーの外部ドメインは、細胞外空間(細胞外ドメイン)に伸長するTNFリガンドタンパク質の部分を指すが、三量体化及び対応するTNF受容体への結合を担うより短い部分又はそのフラグメントも含む。したがって、「TNFリガンドファミリーメンバーの外部ドメイン又はそのフラグメント」という用語は、細胞外ドメインを形成するTNFリガンドファミリーメンバーの細胞外ドメイン又は依然として受容体に結合することができるその部分(受容体結合ドメイン)を指す。
【0104】
「共刺激TNFリガンドファミリーメンバー」、又は「共刺激TNFファミリーリガンド」という用語は、TNFリガンドファミリーメンバーのサブグループを意味し、T細胞の増殖とサイトカイン産生を共刺激することができる。これらのTNFファミリーリガンドは、それらの対応するTNF受容体と相互作用するとTCRシグナルを共刺激することができ、それらの受容体との相互作用は、T細胞活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始するTNFR関連因子(TRAF)の動員をもたらす。共刺激TNFファミリーリガンドは、4-1-BBL、OX40L、GITRL、CD70、CD30L及びLIGHTからなる群から選択され、より特には、共刺激TNFリガンドファミリーメンバーは4-1-BBL及びOX40Lから選択される。
【0105】
本明細書において以前に記載されたように、4-1-BBLは、II型膜貫通タンパク質であり、TNFリガンドファミリーの1つのメンバーである。配列番号32のアミノ酸配列を有する完全又は完全長4-1-BBLは、細胞の表面上に三量体を形成することが記載されている。三量体の形成は、4-1-BBLの外部ドメインの特異的モチーフによって可能になる。当該モチーフは、本明細書では「三量化領域」と呼ばれる。ヒト4-1-BBL配列(配列番号42)のアミノ酸50~254は、4-1-BBLの細胞外ドメインを形成するが、そのフラグメントさえ三量体を形成することができる。本発明の具体的な実施形態では、「4-1-BBLの外部ドメイン又はそのフラグメント」という用語は、配列番号04(ヒト4-1-BBLのアミノ酸52~254)、配列番号01(ヒト4-1-BBLのアミノ酸71~254)、配列番号03(ヒト4-1-BBLのアミノ酸80~254)及び配列番号02(ヒト4-1-BBLのアミノ酸85~254)から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、又は配列番号56(ヒト4-1-BBLのアミノ酸71~248)、配列番号102(ヒト4-1-BBLのアミノ酸52~248)、配列番号101(ヒト4-1-BBLのアミノ酸80~248)及び配列番号100(ヒト4-1-BBLのアミノ酸85~248)から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指すだけでなく、三量体化が可能な外部ドメインの他のフラグメントも本明細書に含まれる。
【0106】
本明細書で以前に記載されたように、OX40Lは、別のII型膜貫通タンパク質であり、TNFリガンドファミリーの更なるメンバーである。完全長又は完全長ヒトOX40Lは、配列番号27のアミノ酸配列を有する。OX40L配列のアミノ酸51~183(配列番号43)はOX40Lの細胞外ドメインを形成するが、そのフラグメントでさえ三量体を形成することができる。本発明の具体的な実施形態では、「OX40Lの外部ドメイン又はそのフラグメント」という用語は、配列番号43(ヒトOX40Lのアミノ酸51~183)又は配列番号44(ヒトOX40Lのアミノ酸52~183)から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指すが、三量体化が可能な外部ドメインの他のフラグメントも本明細書に含まれる。
【0107】
「ペプチドリンカー」という用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当該技術分野で知られているか、又は本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G4S)n、(SG4)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、式中、「n」は一般に1~10、典型的には1~4、特に2の数であり、すなわち、GGGGS(配列番号81)、GGGGSGGGGS(配列番号12)、SGGGGSGGGG(配列番号45)及びGGGGSGGGGSGGGG(配列番号46)からなる群から選択されるが、GSPGSSSSGS(配列番号47)、GSGSGSGS(配列番号48)、GSGSGNGS(配列番号49)、GGSGSGSG(配列番号50)、GGSGSG(配列番号51)、GGSG(配列番号52)、GGSGNGSG(配列番号53)、GGNGSGSG(配列番号54)及びGGNGSG(配列番号55)も含む。特に興味深いペプチドリンカーは、(G4S)1又はGGGGS(配列番号81)、(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号12)及びGSPGSSSSGS(配列番号47)、より詳しくは(G4S)2又はGGGGSGGGGS(配列番号12)及びGSPGSSSSGS(配列番号47)である。
【0108】
「融合した」又は「接続した」とは、構成要素(例えば、当該TNFリガンドファミリーメンバーのポリペプチド及び外部ドメイン)がペプチド結合によって直接又は1つ以上のペプチドリンカーを介して連結されていることを意味する。
【0109】
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に与えられる。
【0110】
「重鎖」という用語は、本明細書ではその本来の意味で使用され、すなわち、抗体を形成する4つのポリペプチド鎖のうちの2つのより大きなポリペプチド鎖を示す(例えば、Edelman,G.M.and Gally J.A.,J.Exp.Med.116(1962)207-227を参照)。この文脈における「より大きい」という用語は、分子量、長さ、及びアミノ酸数のいずれかを指すことができる。「重鎖」という用語は、そこに存在する個々の抗体ドメインの配列及び数とは無関係である。それは、それぞれのポリペプチドの分子量に基づいてのみ割り当てられる。
【0111】
「軽鎖」という用語は、本明細書ではその本来の意味で使用され、すなわち、抗体を形成する4つのポリペプチド鎖のうちのより小さなポリペプチド鎖を示す(例えば、Edelman,G.M.and Gally J.A.,J.Exp.Med.116(1962)207-227を参照)。この文脈における「より小さい」という用語は、分子量、長さ、及びアミノ酸数のいずれかを指すことができる。「軽鎖」という用語は、そこに存在する個々の抗体ドメインの配列及び数とは無関係である。それは、それぞれのポリペプチドの分子量に基づいてのみ割り当てられる。
【0112】
本明細書において使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「ナンバリングはKabat従う」と称される。具体的には、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660頁を参照)をカッパアイソタイプ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723頁を参照)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3であって、本明細書では、この場合には、「ナンバリングはKabat EUインデックスに従う」と称することによって更に明確にしている)に使用される。
【0113】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、完全長抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体-抗体フラグメント融合物、並びにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0114】
「抗体結合部位」という用語は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインのペアを意味する。抗原への適切な結合を確実にするために、これらの可変ドメインは同族の可変ドメインであり、すなわち一緒に属している。抗体結合部位は、少なくとも3つのHVR(例えば、VHHの場合)又は3~6つのHVR(例えば、天然に存在する、すなわち、VH/VLペアを有する従来の抗体の場合)を含む。一般に、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基が、結合部位を形成している。これらの残基は通常、抗体重鎖可変ドメインと対応する抗体軽鎖可変ドメインのペアに含まれる。抗体の抗原結合部位は、「超可変領域」又は「HVR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインは、N末端からC末端に向かって領域FR1、HVR1、FR2、HVR2、FR3、HVR3及びFR4を含む。特に、重鎖可変ドメインのHVR3領域は、抗原結合に最も寄与し、抗体の結合特異性を定義する領域である。「機能的結合部位」は、その標的に特異的に結合することができる。「特異的に結合する」という用語は、in vitroアッセイにおいて、一実施形態では結合アッセイにおいて、その標的への結合部位の結合を表す。そのような結合アッセイは、結合事象が検出され得る限り、任意のアッセイであり得る。例えば、抗体を表面に結合させ、抗体への抗原(複数可)の結合が表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、結合アッセイである。あるいは、ブリッジングELISAを使用することができる。
【0115】
本明細書で用いられる「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変である、アミノ酸残基ストレッチを含む抗体可変ドメインの領域(「相補性決定領域」すなわち「CDR」)及び/又は構造的に規定されるループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」を含有する抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般的に、抗体は、6つのHVRを含み、重鎖可変ドメインVHに3つ(H1、H2、H3)、軽鎖可変ドメインVLに3つ(L1、L2、L3)である。
【0116】
HVRには、次のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.196(1987)901-917)、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に生じるCDR(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242.)、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));並びに
(d)アミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0117】
別段の指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上記のKabatらに従ってナンバリングされている。
【0118】
抗体の「クラス」は、定常ドメイン又は定常領域、好ましくは重鎖が持つFc領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラスすなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分ける場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0119】
「重鎖定常領域」という用語は、定常ドメインを含む免疫グロブリン重鎖の領域を意味し、すなわち、天然免疫グロブリンの場合は、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを意味し、又は、全長免疫グロブリンの場合は、第1の定常ドメイン、ヒンジ領域、第2の定常ドメイン及び第3の定常ドメインを意味する。一実施形態では、ヒトIgG重鎖定常領域は、重鎖のAla118からカルボキシル末端に及ぶ(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。しかし、定常領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもよく、又は存在していなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。「定常領域」という用語は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖定常領域を含む二量体を意味する。
【0120】
「重鎖Fc領域」という用語は、ヒンジ領域(中間及び下部ヒンジ領域)の少なくとも一部、第2の定常ドメイン(例えばCH2ドメイン)、及び第3の定常ドメイン(例えばCH3ドメイン)を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Asp221又はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端に及ぶ(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。このため、Fc領域は、一定の領域よりも小さいが、同じC末端部にある。しかし、重鎖Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。「Fc領域」という用語は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖Fc領域を含む二量体を示す。
【0121】
抗体の定常領域、より正確にはFc領域(及び同様に定常領域)は、補体活性化、C1q結合、C3活性化及びFc受容体結合に直接関与する。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域における規定の結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は、先行技術で公知であり、例えば、Lukas,T.J.,et al.,J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.,and Cebra,J.J.,Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.,et al.,Nature288(1980)338-344;Thommesen,J.E.,et al.,Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.,et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.,et al.,J.Virol.75(2001)12161-12168;Morgan,A.,et al.,Immunology 86(1995)319-324、及び欧州特許第0307434号において記載されている。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)である。サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は通常、補体活性化、C1q結合、及びC3活性化を示すのに対し、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qと結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて規定される。
【0122】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得るバリアント抗体は例外であり、かかるバリアントは一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、いずれか特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の技術によって作製され得る。
【0123】
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、抗体中の特定の数の結合部位の存在を意味する。したがって、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、抗体中に、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を意味する。
【0124】
「単一特異性抗体」は、単一の結合特異性を有する、すなわち、1つの抗原に特異的に結合する抗体を意味する。単一特異性抗体を、完全長抗体若しくは抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2)又はそれらの組み合わせ(例えば、完全長抗体と追加のscFv又はFabフラグメント)として調製することができる。単一特異性抗体は、一価である必要はなく、すなわち、単一特異性抗体は、1つの抗原に特異的に結合する2つ以上の結合部位を含んでもよい。例えば、天然型の抗体は、単一特異性であるが二価である。
【0125】
「ノブ・イントゥー・ホール」二量体化モジュール及び抗体操作におけるその使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology 2(1996)73-73(1)に記載されている。
【0126】
抗体の重鎖のCH3ドメインを、「ノブ・イントゥー・ホール」技術によって改変することができる。例えば、国際公開第96/027011号、Ridgway,J.B.,et al.,Protein Eng.9(1996)617-621;及びMerchant,A.M.,et al.,Nat.Biotechnol.16(1998)677-681に、いくつかの例を伴って詳細に記載されている。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用表面を改変して、これら2つのCH3ドメインのヘテロ二量体化を増加させ、それによってそれらを含むポリペプチドのヘテロ二量体化を増加させる。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれは「ノブ」であることができ、他方は「ホール」である。ジスルフィドブリッジの導入は更に、ヘテロ二量体を安定化させ(Merchant,A.M.,et al.,Nature Biotech.16(1998)677-681;Atwell,S.,et al.,J.Mol.Biol.270(1997)26-35)、収率を増加させる。
【0127】
(抗体重鎖の)CH3ドメインの変異T366Wは、「ノブ変異」又は「変異ノブ」として表され、(抗体重鎖の)CH3ドメインにおける変異T366S、L368A、Y407Vは、「ホール変異」又は「変異ホール」として表される(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋(Merchant,A.M.,et al.,Nature Biotech.16(1998)677-681)も、例えば、「ノブ変異」を有する重鎖のCH3ドメインにS354C変異を導入(「ノブ-cys-変異」又は「変異ノブ-cys」と表記)すること、及び「ホール変異」を有する重鎖のCH3ドメインにY349C変異を導入(「ホール-cys-変異」又は「変異ホール-cys」と表記)することにより、使用できる(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)。
【0128】
「ドメインクロスオーバー」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体重鎖VH-CH1フラグメントとその対応する同族の抗体軽鎖とのペアにおいて、すなわち抗体Fab(フラグメント抗原結合)において、少なくとも1つの重鎖ドメインが、対応する軽鎖ドメインによって置換されている、若しくはその逆、という点について、ドメイン配列が天然型の抗体の配列から逸脱していることを意味する。ドメインクロスオーバーは、一般的に3種類あり、(i)CH1及びCLドメインのクロスオーバーであって、軽鎖中のドメインクロスオーバーによってVL-CH1ドメイン配列がもたらされ、重鎖フラグメント中のドメインクロスオーバーによってVH-CLドメイン配列(又はVH-CL-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン配列を有する完全長抗体重鎖)がもたらされるもの、(ii)VH及びVLドメインのドメインクロスオーバーであって、軽鎖中のドメインクロスオーバーによってVH-CLドメイン配列がもたらされ、重鎖フラグメント中のドメインクロスオーバーによってVL-CH1ドメイン配列がもたらされるもの、並びに(iii)完全な軽鎖(VL-CL)及び完全なVH-CH1重鎖フラグメントのドメインクロスオーバー(「Fabクロスオーバー」)であって、ドメインクロスオーバーによってVH-CH1ドメイン配列を有する軽鎖がもたらされ、ドメインクロスオーバーによってVL-CLドメイン配列を有する重鎖フラグメントがもたらされるもの(上述の全てのドメイン配列は、N末端からC末端への方向で示されている)がある。
【0129】
本明細書で使用される場合、対応する重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインに関して「互いに置き換えられた」という用語は、上述のドメインクロスオーバーを指す。そのため、CH1及びCLドメインが「互いに置き換えられた」場合、この用語は、項目(i)の下で言及されたドメインクロスオーバー、並びに結果として生じる重鎖及び軽鎖ドメイン配列を指す。したがって、VH及びVLが「互いに置き換えられた」場合、この用語は、項目(ii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指し、またCH1及びCLドメインが「互いに置き換えられ」、かつVH及びVLドメインが「互いに置き換えられた」場合、該用語は、項目(iii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指す。ドメインクロスオーバーを含む二重特異性抗体は、例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080254号、及びSchaefer,W.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci USA 108(2011)11187-11192において報告されている。このような抗体は、一般にCrossMabと呼ばれる。
【0130】
多重特異性抗体はまた、一実施形態では、上記の項目(i)で述べたCH1及びCLドメインのドメインクロスオーバー、又は上記の項目(ii)で述べたVH及びVLドメインのドメインクロスオーバー、又は上記の項目(iii)で述べたVH-CH1及びVL-VLドメインのドメインクロスオーバーのいずれかを含む、少なくとも1つのFabフラグメントを含む。ドメインクロスオーバーを伴う多重特異性抗体の場合、同じ抗原(複数可)に特異的に結合するFabは、同じドメイン配列であるように構築される。そのため、ドメインクロスオーバーを伴う1つを超えるFabが多重特異性抗体に含まれる場合、当該Fab(複数可)は同じ抗原に特異的に結合する。
【0131】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基、及びヒトFRからのアミノ酸残基を含む抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、それにおいて、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0132】
本明細書で使用される「組換え抗体」という用語は、組換え細胞等の組換え手段によって調製、発現、作成、又は単離される全ての抗体(キメラ、ヒト化及びヒト)を意味する。これには、NS0、HEK、BHK、CHO細胞等の組換え細胞から単離された抗体が含まれる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「抗体フラグメント」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指し、すなわちそれは、機能的なフラグメントである。抗体フラグメントの例としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重特異性Fab、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv又はscFab)が挙げられる。
【0134】
本明細書で使用される場合、「抗体フラグメント」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指し、すなわちそれは、機能的なフラグメントである。抗体フラグメントの例としては、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重特異性Fab、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv又はscFab)が挙げられる。
【0135】
「標的細胞抗原」は、本明細書で使用される場合、標的細胞、例えば、癌胞又は腫瘍間質の細胞等の腫瘍内の細胞の表面に提示される抗原決定基を指す。特定の実施形態では、標的細胞抗原は、腫瘍細胞の表面上の抗原である。一実施形態では、標的細胞抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、癌胎児性抗原(CEA)、黒色腫随伴コンドロイチンサルフェートプロテオグリカン(MCSP)、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD19、CD20、及びCD33からなる群より選択される。具体的には、標的細胞抗原は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)である。
【0136】
「CD19」という用語は、Bリンパ球表面抗原B4、又はT細胞表面抗原Leu-12としても知られている、Bリンパ球抗原CD19を意味し、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CD19を含む。ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P15391(バージョン160、配列番号103)に示されている。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないヒトCD19、並びに本明細書に掲載する抗体がそれに結合する限り、細胞におけるプロセシングから生じる任意の形態のヒトCD19を包含する。CD19は、限定されるものではないが、プレB細胞、初期発生のB細胞{すなわち、未成熟B細胞)、形質細胞への最終分化を通した成熟B細胞、及び悪性B細胞を含む、ヒトB細胞の表面上に発現される構造的に異なる細胞表面受容体である。CD19は、ほとんどのプレB急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、一般的な急性リンパ球性白血病、及びいくつかのヌル急性リンパ芽球性白血病によって発現される。形質細胞上のCD19の発現は、それが多発性骨髄腫等の分化B細胞腫瘍上に発現され得ることを更に示唆する。したがって、CD19抗原は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病及び/又は急性リンパ芽球性白血病の処置における免疫療法の標的である。
【0137】
プロリルエンドペプチダーゼFAP又はセプラーゼ(EC3.4.21)としても知られている、「線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意のネイティブFAPを意味する。この用語は、「全長」のプロセシングされていないFAP、及び細胞におけるプロセシングから生じるFAPの任意の形態を包含する。この用語は、FAPの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一実施形態では、本発明の抗原結合分子は、ヒト、マウス、及び/又はカニクイザルFAPに特異的に結合可能である。ヒトFAPのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号Q12884(バージョン149、配列番号17)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004451.2にて示されている。ヒトFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から760まで伸びている。Hisタグ付ヒトFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号14及び15に示す。マウスFAPのアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P97321(バージョン126、配列番号18)、又はNCBI RefSeq NP_032012.1に示されている。マウスFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から761まで伸びている。配列番号19及び20は、それぞれHisタグ付きマウスFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を示す。配列番号21及び22は、それぞれHisタグ付きカニクイザルFAP ECDのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を示す。好ましくは、抗本発明のFAP結合分子はFAPの細胞外ドメインに結合する。例示的な抗FAP結合分子が国際公開第2012/020006号に記載される。
【0138】
癌胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)としても知られている、「癌胎児性抗原(CEA)」という用語は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、並びに齧歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源に由来する、任意の天然CEAを意味する。ヒトCEAのアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P06731(バージョン151、配列番号23)に示されている。CEAは長らく、腫瘍関連抗原として識別されている(Gold and Freedman,J Exp.Med.,121:439-462,1965;Berinstein N.L.,J Clin.Oncol.20:2197-2207,2002)。元は、胎児組織のみで発現するタンパク質として分類されていたCEAは現在、いくつかの健常な成人組織にて同定されている。これらの組織は主に、胃腸、呼吸、及び泌尿器管の細胞、並びに、結腸、子宮頸、汗腺、及び前立腺の細胞を含む、元々上皮に存在する(Nap et al.,Tumour Biol.,9(1988)145-153;Nap et al.,Cancer Res.,52(1992)2329-2339)。上皮由来の腫瘍、及びこれらの転移物は、腫瘍関連抗原としてCEAを含有する。CEA自身が存在することは、癌性細胞への形質転換を意味するものではないものの、CEAが分布していることを示している。健常な組織において、CEAは一般的に、細胞の先端面にて発現し(Hammarstroem S.,Semin.Cancer Biol.9(1999)67-81)、血流中で抗体に接近できなくする。健常な組織とは対照的に、CEAは、癌性細胞の全面にわたって発現する(Hammarstroem S.,Semin Cancer Biol.9(1999)67-81)。発現パターンのこの変化により、CEAが、癌性細胞内で抗体結合をしやすくなる。さらに、CEAの発現は、癌性細胞にて増加する。さらに、CEAの発現が増加することにより、細胞間の接着性が増加し、転移につながり得る(Marshall J.,Semin Oncol.,30(2003)(a Suppl.8)30-36)。様々な腫瘍実体におけるCEA発現の有病率は、一般に非常に高い。公開されたデータに一致して、組織試料にて実施した自身の分析により、その高い有症率が確認され、結腸癌腫(CRC)において約95%、膵癌において90%、胃癌において80%、非小細胞肺癌(HER3と同時発現するNSCLC)において60%、及び乳癌において40%であり、小細胞肺癌及び神経膠芽腫においては低い発現が確認された。
【0139】
CEAは速やかに細胞表面から切断され、腫瘍から、直接又はリンパ系を介してのいずれかにより、血流に入る。この性質から、血清CEAの濃度は、癌診断のための臨床マーカー、及び、癌、特に結腸直腸癌の再発のためのスクリーニングとして使用されてきた(Goldenberg,D.M.,Int.J.Biol.Mark.7(1992)183-188;Chau I.,et al.,J.Clin.Oncol.22(2004)420-1429;Flamini,et al.,Clin.Cancer Res.12(2006)6985-6988)。
【0140】
本明細書において使用される場合、「異種」という用語は、あるポリペプチドが特定の細胞に由来せず、それぞれのコードする核酸が、DNA送達法、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、又は形質転換法によって当該細胞に導入されることを示す。したがって、異種ポリペプチドは、それを発現する細胞に対して人工的なポリペプチドであり、そのため、そのポリペプチドが異なる細胞/生物に由来する天然に存在するポリペプチドであるか、又は人工ポリペプチドであるかどうかに依存しない。
【0141】
本明細書において使用される「作動可能に連結された」という用語は、目的の様式でそれらが機能することを可能にする関係にある、2つ以上の成分の並置を指す。例えば、プロモーター及び/又はエンハンサーがコード配列の転写を調節する役割を果たす場合、そのプロモーター及び/又はエンハンサーはコード配列に作動可能に連結されている。特定の実施形態では、「作動可能に連結されて」いるDNA配列は、単一の染色体上で近接し、隣り合っている。特定の実施形態では、例えば、1つの分泌リーダーと1つのポリペプチドといった2つのタンパク質のコード領域を結合する必要があるとき、これら配列は近接し、隣り合い、かつ同じリーディングフレームに存在する。特定の実施形態では、作動可能に連結されたプロモーターは、コード配列の上流に位置しており、かつコード配列に隣り合うことができる。特定の実施形態では、例えば、コード配列の発現を調節するエンハンサー配列に関して、2つの成分は、隣り合ってはいないが、作動可能に連結され得る。エンハンサーは、それがコード配列の転写を増大させる場合、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されエンハンサーは、コード配列の上流、その中、又は下流に位置し得、またコード配列のプロモーターから相当な距離を置いて位置し得る。動作可能な連結は、当技術分野で既知の組換え法によって、例えば、PCR方法を用いて、及び/又は好都合な制限部位でのライゲーションによって、達成することができる。好都合な制限部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを従来の手順に従って使用することができる。内部リボソーム侵入部位(IRES)が、5’末端に非依存的な方法により内部位置でORFの翻訳を開始できる場合、該IRESは、オープン・リーディング・フレーム(ORF)に作動可能に連結されている。
【0142】
II.組成物及び方法
通常、例えば治療用ポリペプチドのような目的のポリペプチドの組換え大量生産のためには、当該ポリペプチドを安定に発現し分泌する細胞が必要とされる。この細胞は、「組換え細胞」又は「組換え産生細胞」と呼ばれ、このような細胞を作製するために使用される方法は「細胞株開発」と呼ばれる。細胞株開発方法の第1の工程において、例えばCHO細胞等の適切な宿主細胞に、当該目的のポリペプチドの発現に適した核酸配列をトランスフェクトする。第2の工程において、目的のポリペプチドを安定に発現する細胞を、目的のポリペプチドをコードする核酸と共にコトランスフェクトしておいた選択マーカーの共発現に基づいて選択する。
【0143】
ポリペプチドをコードする核酸、すなわちコード配列は、構造遺伝子と呼ばれる。このような構造遺伝子は単純な情報であり、その発現には追加の制御エレメントが必要とされる。したがって、普通は、構造遺伝子は発現カセットに組み込まれる。発現カセットが哺乳動物細胞において機能的となるために必要とされる最小限の制御エレメントは、構造遺伝子の上流、すなわち5’側に位置する、当該哺乳動物細胞において機能的なプロモーター、及び構造遺伝子の下流、すなわち3’側に位置する、当該哺乳動物細胞において機能的なポリアデニル化シグナル配列である。プロモーター配列、構造遺伝子配列、及びポリアデニル化シグナル配列は、作動可能に連結された形態で並べられる。
【0144】
目的のポリペプチドが、互いに異なる(単量体)ポリペプチドから構成されるヘテロ多量体ポリペプチドであるならば、1つの発現カセットだけでなく、含まれる構造遺伝子が異なる多数の発現カセット、すなわち、ヘテロ多量体ポリペプチドの異なる(単量体)ポリペプチドのそれぞれについて少なくとも1つの発現カセットが必要とされる。例えば、抗体-多量体融合ポリペプチドは、1つの軽鎖、1つの重鎖、1つの重鎖定常ドメイン融合ポリペプチド及び1つの軽鎖定常ドメイン融合ポリペプチドを含むヘテロ多量体ポリペプチドである。したがって、抗体-多量体融合ポリペプチドは、4つの異なるポリペプチドから構成される。したがって、抗体-多量体融合ポリペプチドの発現には、軽鎖用、重鎖用、重鎖定常領域融合ポリペプチド用及び軽鎖定常領域融合ポリペプチド用の4つの発現カセットが必要である。
【0145】
目的のポリペプチドのための発現カセット(複数可)は、いわゆる「発現ベクター」に順に組み込まれる。「発現ベクター」は、細菌細胞中で当該ベクターを増幅し、含まれる構造遺伝子(複数可)を哺乳動物細胞中で発現させるのに必要とされる全てのエレメントを提供する核酸である。典型的には、発現ベクターは、例えば大腸菌の場合、複製開始点及び原核生物選択マーカー、更には真核生物選択マーカー、並びに目的の構造遺伝子(複数可)の発現に必要とされる発現カセットを含む、原核生物プラスミド増殖単位を含む。「発現ベクター」は、哺乳動物細胞に発現カセットを導入するための輸送運搬体である。
【0146】
先の段落で概説したように、発現しようとするポリペプチドが複雑であるほど、必要とされる異なる発現カセットの数もまた多くなる。本質的に、発現カセットの数と共に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる核酸のサイズも大きくなる。同時に、発現ベクターのサイズも大きくなる。しかし、ベクターのサイズの実用的な上限は約15kbpの範囲にあり、それを上回ると、操作及び処理の効率が著しく落ちる。この問題は、2つ以上の発現ベクターを用いることによって対処することができる。それによって、発現カセットを、発現カセットの一部のみをそれぞれ含む異なる発現ベクター間で分け合うことができる。
【0147】
一般に、細胞株の開発(CLD)は、目的のポリペプチドに対する発現カセットのランダムなインテグレーション(RI)又は標的指向性インテグレーション(TI)に依存する。
【0148】
II.a 本発明による方法
本発明は、少なくとも部分的には、異なるポリペプチドを含む複合分子である、すなわちヘテロ多量体である抗体-多量体融合物の発現について、規定の発現カセット比の使用が、CHO又はHEK細胞等の哺乳動物細胞における抗体-多量体融合物の効率的な発現及び産生をもたらすという知見に基づく。
【0149】
本発明は、少なくとも部分的には、異なるポリペプチドを含む複合体分子、すなわちヘテロ多量体である抗体-多量体融合物の一過性及び安定な発現のために、同じ規定の発現カセット比の使用が最も高い発現収率及び製品品質をもたらすという知見に基づく。
【0150】
本発明は、組換え哺乳動物細胞による抗体-多量体融合物の発現のために、1:1:2:1の化学量論比でなければならない抗体重鎖、抗体軽鎖、第1の融合ポリペプチド及び第2の融合ポリペプチドのための発現カセットの比を用いることが有利であるという発見に少なくとも部分的に基づく。この比を用いることにより、収率及び副生成物形成に関して改善された抗体-多量体融合物発現を得ることができる。さらに、この比は発現方法とは無関係であり、すなわち、一過性及び安定な細胞株が同じ比で得られ、同様にまた、ベクター構成、すなわち、単一発現カセット又は複数発現カセットベクターを使用して得られることが見出された。
【0151】
以下において、本発明は、ヒトFAPについての結合部位を形成する抗体重鎖及び抗体軽鎖の対と、第1の融合ポリペプチド及び第2の融合ポリペプチドとを含むヘテロ多量体抗体-多量体融合物で例示され、この多量体は三量体ヒト4-1-BBLである。これらの実験は、単に本発明の概念を例示するために提示されており、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。抗体鎖の任意の対及び任意の多量体ポリペプチドも同様に使用することができる。
【0152】
ランダムインテグレーション、一過性トランスフェクション、単一発現カセットベクター
第1の一連の実験において、抗FAP抗体-4-1-BBL多量体融合物の一過性産生が行われた。それぞれが抗体-多量体融合物の単一ポリペプチドのための単一発現カセットのみを含むベクターのセットを、異なる規定の化学量論比で使用した。結果を以下の表に示す。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
【0153】
1:1:2:1の発現カセット比が最良の結果をもたらし、1:1:2:2の発現カセット比よりも全体的に20%高い有効力価並びに35%高い有効力価をもたらすことがわかる。
【0154】
ランダムインテグレーション、一過性トランスフェクション、多重発現カセットベクター
第2の一連の実験において、抗FAP抗体-4-1-BBL多量体融合物の一過性産生が行われた。抗体-多量体融合物の単一ポリペプチドに対してそれぞれ1つ又は2つの発現カセットを含むベクターのセットを、異なる規定の化学量論比で使用した。結果を以下の表に示す。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
ベクター1=HC及びLC用の発現カセットを有する二重発現カセットベクター;
ベクター2=FH及びFL用の発現カセットを有する二重発現カセットベクター;
ベクター3=FH用の発現カセットを有する単一発現カセットベクター
【0155】
1:1:2:1の発現カセット比が最良の結果をもたらし、1:1:2:2の発現カセット比よりも全体的に40%高い有効力価並びに67%高い有効力価をもたらすことがわかる。
【0156】
安定なランダムインテグレーション、多重発現カセットベクター
第3の一連の実験において、抗FAP抗体-4-1-BBL多量体融合物の安定な産生が行われた。抗体-多量体融合物の単一ポリペプチドに対してそれぞれ1つ又は2つの発現カセットを含むベクターのセットを、異なる規定の化学量論比で使用した。結果を以下の表に示す。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
ベクター1=HC及びLC用の発現カセットを有する二重発現カセットベクター;
ベクター2=FH及びFL用の発現カセットを有する二重発現カセットベクター;
ベクター3=FH用の発現カセットを有する単一発現カセットベクター
【0157】
単一細胞クローンを含む60個のプレートを実験1及び実験2の比のそれぞれについて培養した。プレートのウェルの回収率、力価及び製品品質、並びにバッチ培養製品品質(CE-SDS中の%メインピーク)を分析した。これらの結果を下記の表に提示する。
【0158】
1:1:2:1発現カセット比(1:1+1ベクター比)の場合、1:1:2:2発現カセット比(1:2ベクター比)と比較して、より良好な増殖(回収)、20%を超えるコンフルエンスを有する2倍数のウェル、並びに2倍数の力価陽性クローンが得られることがわかる。
【0159】
より詳細には、選択はコンフルエンス及び力価(>5%コンフルエンス及びIgG陽性)に基づいた。全ての力価陽性クローンを次の選択工程に対して処理を行った。2倍数のクローンを、1:1:2:1の発現カセット比(1:1+1ベクター比)でトランスフェクトした細胞を含むプレートから得た。
【0160】
合計1056個のクローンを更なるELISA再試験分析のために選択した。その中で、1/3が1:1:2:2(ベクター比1:2;352クローン)の発現カセット比で得られたクローンであり、2/3が1:1:2:1(ベクター比1:1+1,704クローン)の発現カセット比で得られたクローンである。
【0161】
第2の選択は、ELISA結合及び架橋アッセイに基づいた。
【0162】
合計1056個のクローンのうち、220個のクローンが抗体-多量体融合物の両方の部分(主生成物)を発現することが見出された。4倍超のクローンが1:1:2:1(ベクター比1:1+1)の発現カセット比に由来した(20%(45クローン)が発現カセット比1:1:2:2(ベクター比1:2)由来し、80%(175クローン)が発現カセット比1:1:2:1(プラスミド比1:1:1(1:1+1))に由来する)。
【0163】
概要では、
(45/352)*100%=12.78%の1:1:2:2の発現カセット比:(プラスミド比1:2)で得られたクローンは、ELISA再試験において良好な製品品質を有することを示すのに対して、
(175/704)*100%=24.86%の1:1:2:1の発現カセット比(1:1:1のベクター比)で得られたクローンは、ELISA再試験で良好な製品品質を示す。
【0164】
したがって、安定なトランスフェクションにおいても、一過性トランスフェクションで得られた結果が確認される。
【0165】
ランダムインテグレーション、一過性トランスフェクション、単一発現カセットベクター
第4の実験セットでは、抗CEA抗体-4-1-BBL多量体融合物の一過性産生を行った。それぞれが単一の発現カセットを含むベクターのセットを、異なる規定の化学量論比で使用した。結果を以下の表に示す。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
【0166】
1:1:2:1の発現カセット比が最良の結果をもたらし、1:1:2:2の発現カセット比よりも全体的に15%高い有効力価並びに24%高い有効力価をもたらすことがわかる。
【0167】
標的指向性インテグレーション、安定なトランスフェクション、二重RMCE
第5の実験セットでは、抗FAP抗体-4-1-BBL多量体融合物の安定な産生が、標的指向性インテグレーションを使用して行われた。ベクターのセット、すなわちフロントベクター及びバックベクターが使用されている。Creリコンビナーゼとの二重リコンビナーゼ媒介カセット交換反応を使用して、標的指向性インテグレーションを行った。フロントベクター及びバックベクターは、HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチドにより以下の表に概説されるような異なる発現カセットを含んでいた。
【0168】
フロントベクター及びバックベクターにそれぞれ含まれる異なる数の発現カセットに基づいて、異なる規定の化学量論比を使用した。安定なトランスフェクト細胞プールから得られた結果を以下の表に示す(n=2)。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
【0169】
1:1:2:1の発現カセット比が最良の結果をもたらし、1:1:2:2の発現カセット比よりも全体的に45%高い有効力価並びに45%高い有効力価をもたらすことがわかる。
【0170】
ランダムインテグレーション、一過性トランスフェクション、単一発現カセットベクター
第6の実験セットでは、抗CD19抗体-4-1-BBL多量体融合物の一過性産生を行った。それぞれが抗体-多量体融合物の単一ポリペプチドのための単一発現カセットのみを含むベクターのセットを、異なる規定の化学量論比で使用した。結果を以下の表に示す。HC=抗体重鎖、LC=抗体軽鎖、FH=第1の融合ポリペプチド、FL=第2の融合ポリペプチド、exp.=実験数、eff.titer=有効力価(力価及びメインピークの生成)、rel.eff.titer=相対有効力価(1:1:2:2の発現カセット比に対して正規化された相対力価)。
【0171】
1:1:2:1の発現カセット比が最良の結果をもたらし、1:1:2:2の発現カセット比よりも全体的に9%高い有効力価並びに23%高い有効力価をもたらすことがわかる。
【0172】
概要:
したがって、細胞株の作製に使用される方法とは無関係に、1:1:2:1(HC:LC:FH:FL)の発現カセット比は、製品品質の改善、すなわち有効力価をもたらす。さらに、抗体-多量体融合物を発現するための適切で安定なクローンの数の増加を得ることができる。
【0173】
II.b TNFの分子と相互作用するリガンド
TNF(腫瘍壊死因子)受容体スーパーファミリーの分子と相互作用するリガンドは、免疫系の組織化及び機能において極めて重要な役割を有する。免疫応答、造血及び形態形成等の正常な機能を調節しながら、TNFファミリーリガンド(サイトカインとも呼ばれる)は、腫瘍形成、移植拒絶、敗血症性ショック、ウイルス複製、骨吸収、関節リウマチ及び糖尿病において役割を果たす(Aggarwal,2003)。TNFリガンドファミリーは、「TNF相同ドメイン」(THD)を創出した保存されたC末端ドメインの存在を特徴とする、19個のII型(すなわち、細胞内N末端及び細胞外C末端)膜貫通タンパク質をコードする18個の遺伝子を含む。このドメインは、受容体結合に関与し、したがってTNFリガンドファミリーメンバーの生物学的活性にとって重要である。ファミリーメンバー間の配列同一性は約20~30%(Bodmer,2002)である。TNFリガンドファミリーのメンバーは、自己集合性の非共有結合性三量体(Banner et al,Cell 73(1993)431-445)としての生物学的機能を発揮する。したがって、TNFファミリーリガンドは、TNFRスーパーファミリーの対応する受容体に結合し、それを活性化することができる三量体を形成する。
【0174】
TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである4-1-BB(CD137)は、その発現がT細胞活性化によって誘導される分子として最初に同定された(Kwon and Weissman,1989)。その後の研究は、Tリンパ球及びBリンパ球(Snell et al.,2011;Zhang et al.,2010)、NK細胞(Lin et al.,2008)、NKT細胞(Kim et al.,2008)、単球(Kienzle and von Kempis,2000;Schwarz et al.,1995)、好中球(Heinisch et al.,2000)、肥満(Nishimoto et al.,2005)及び樹状細胞、並びに内皮細胞及び平滑筋細胞等の非造血起源の細胞(Broll et al.,2001;Olofsson et al.,2008)における4-1-BBの発現を実証した。種々の細胞型において4-1-BBの発現は大部分が誘発性であり、T細胞受容体(TCR)又はB細胞受容体のトリガリング、並びに炎症促進性サイトカインの共刺激分子又は受容体を通して誘発されるシグナル伝達等の、様々な刺激性シグナルにより駆動される(Diehl et al.,2002;von Kempis et al.,1997;Zhang et al.,2010)。
【0175】
4-1-BBリガンド(4-1-BBL又はCD137L)の発現はより制限されており、B細胞、樹状細胞(DC)及びマクロファージ等のプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)上で観察される。4-1-BBLの誘導性発現は、αβ及びγδ T細胞サブセットの両方を含むT細胞、並びに内皮細胞に特徴的である(Shao and Schwarz,2011で総説される)。
【0176】
CD137シグナル伝達は、NK細胞のIFNγ分泌及び増殖を刺激し(Buechele et al.,2012;Lin et al.,2008;Melero et al.,1998)、並びにそれらの生存率の増加及び分泌サイトカインに対する能力の増加によって示されるDC活性化を促進し、共刺激分子を上方制御することが知られている(Choi et al.,2009;Futagawa et al.,2002;Wilcox et al.,2002)。しかし、CD137はT細胞のCD4+及びCD8+サブセットの両方で、TCRにより誘発される活性化を制御する共刺激分子として、最も特性決定されている。TCRトリガリングと組み合わせて、アゴニスト性4-1-BB特異性抗体は、T細胞の増殖を増強し、リンホカイン分泌を刺激し、活性化誘導細胞死に対するTリンパ球の感受性を低下させる(Snell et al.,2011で総説される)。
【0177】
インビトロでの、T細胞上での4-1-BB抗体のこれらの同時刺激効果と共に、これらを、腫瘍を有するマウスに投与することにより、多くの実験腫瘍モデルにおける、強力な抗腫瘍効果がもたらされる(Melero et al.,1997;Narazaki et al.,2010)。しかし、4-1-BBは通常、他の免疫調節化合物(Curran et al.,2011;Guo et al.,2013;Morales-Kastresana et al.,2013;Teng et al.,2009;Wei et al.,2013)、化学療法剤(Ju et al.,2008;Kim et al.,2009)、腫瘍特異的ワクチン接種(Cuadros et al.,2005;Lee et al.,2011)、又は放射線療法(Shi and Siemann,2006)と組み合わせて投与した場合にのみ抗腫瘍剤としての効力を示す。CD8+T細胞は、4-1-BB特異性抗体の抗腫瘍効果において、最も重要な役割を果たすことをin vivo枯渇実験は示した。しかし、抗4-1-BBを含む腫瘍モデル又は併用療法に応じて、DC、NK細胞又はCD4+T細胞等の他の種類の細胞の寄与が報告されている(Melero et al.,1997;Murillo et al.,2009;Narazaki et al.,2010;Stagg et al.,2011)。
【0178】
異なるリンパ球サブセットに対する直接的な効果に加えて、4-1-BBアゴニストはまた、腫瘍血管内皮(Palazon et al.,2011)上の細胞間接着分子1(ICAM1)及び血管細胞接着分子1(VCAM1)の4-1-BB媒介性上方制御を介して、腫瘍内の活性化T細胞の浸潤及び保持を誘導することができる。
【0179】
4-1-BBの誘発はまた、腫瘍微小環境又は慢性感染(Wilcox et al.,2004)中の免疫寛容の破壊に寄与し得る可溶性抗原への曝露によって誘導されるT細胞アネルギーの状態を逆転させ得る。
【0180】
in vivoでの4-1-BBアゴニスト抗体の免疫調節特性は、抗体分子上の野生型Fc部分の存在を必要とし、それにより、Fc受容体結合が、TNFR-スーパーファミリーの他のアポトーシス誘導性又は免疫調節性メンバーに特異的なアゴニスト抗体について記載されているような試薬の薬理学的活性に必要な重要な事象として暗示されるようである(Li and Ravetch,2011;Teng et al.,2009)。しかしながら、機能的に活性なFcドメインを有する4-1-BB特異的アゴニスト抗体の全身投与はまた、マウスにおいて機能的Fc受容体の非存在下で減少又は有意に改善される肝毒性(Dubrot et al.,2010)に関連するCD8+T細胞の拡大を誘導する。ヒト臨床試験(ClinicalTrials.gov、NCT00309023)では、3週間に1回12週間投与されるFcコンピテント4-1-BBアゴニスト抗体(BMS-663513)は、黒色腫、卵巣又は腎細胞癌を有する患者において疾患の安定化を誘導した。しかし、別の試験で投与された同じ抗体(NCT00612664)はグレード4の肝炎を引き起こし、試験を終了した(Simeone and Ascierto,2012)。
【0181】
まとめると、利用可能な前臨床及び臨床データは、有効な4-1-BBアゴニストに対する高い臨床的必要性があることを明確に実証している。しかしながら、新世代薬物候補は、造血細胞及び内皮細胞の表面上の4-1-BBに効果的に係合するだけでなく、制御不能な副作用を回避するために、Fc受容体への結合以外の機構を介してそれを達成することもできるべきである。後者は、腫瘍特異的部分又は腫瘍関連部分への優先的な結合及びオリゴマー化によって達成され得る。
【0182】
4-1-BBリガンドの1つの細胞外ドメインと、一本鎖抗体フラグメント(Mueller et al.,2008;Hornig et al.,2012)、又は重鎖のC末端に融合した単一の4-1-BBリガンド(Zhang et al,2007)とで構成される融合タンパク質が作製されている。国際公開第2010/010051号は、互いに連結され、抗体部分に融合された3つのTNFリガンド外部ドメインからなる融合タンパク質の作製を開示している。
【0183】
しかし、腫瘍特異的標的又は腫瘍関連標的への好ましい結合が可能な部分と、共刺激TNFリガンド三量体を形成することが可能な部分とを組み合わせ、薬学的に有用であるのに十分な安定性を有する新たな抗原結合分子が依然として必要とされている。本発明の抗原結合分子は、両方を含み、驚くべきことに、それらは三量体の、したがって生物学的に活性なTNFリガンドを提供するが、三量体化TNFリガンド外部ドメインの1つは、分子の他の2つのTNFリガンド外部ドメインとは別のポリペプチド上に位置する。
【0184】
II.c 組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているような組換え方法及び組成物を用いて製造することができる。これらの方法のために、抗体をコードする1つ以上の単離された核酸(複数可)が提供される。
【0185】
一態様では、抗体-多量体融合ポリペプチドを作製する方法であって、本発明による方法で得られた抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする核酸(複数可)を含む宿主細胞を、抗体-多量体融合ポリペプチドの発現に適した条件下で培養すること、及び任意に、抗体-多量体融合ポリペプチドを宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することを含む方法が提供される。
【0186】
抗体-多量体融合ポリペプチドの組換え産生のため、例えば、本明細書中に記載されるような抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする核酸を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定され得るか、又は組換え方法によって産生され得るか、又は化学合成によって得られることができる。
【0187】
通常、例えば治療用抗体-多量体融合ポリペプチドのような目的のポリペプチドの組換え大量生産のためには、当該ポリペプチドを安定に発現し分泌する細胞が必要とされる。この細胞は、「組換え細胞」又は「組換え産生細胞」と呼ばれ、このような細胞を作製するために使用される方法は「細胞株開発」と呼ばれる。細胞株開発方法の第1の工程において、例えばCHO細胞等の適切な宿主細胞に、当該目的のポリペプチドの発現に適した核酸配列をトランスフェクトする。第2の工程において、目的のポリペプチドを安定に発現する細胞を、目的のポリペプチドをコードする核酸と共にコトランスフェクトしておいた選択マーカーの共発現に基づいて選択する。
【0188】
ポリペプチドをコードする核酸、すなわちコード配列は、構造遺伝子と呼ばれる。このような構造遺伝子は単純な情報であり、その発現には追加の制御エレメントが必要とされる。したがって、通常、構造遺伝子はいわゆる発現カセットに組み込まれる。発現カセットが哺乳動物細胞において機能的となるために必要とされる最小限の制御エレメントは、構造遺伝子の上流、すなわち5’側に位置する、当該哺乳動物細胞において機能的なプロモーター、及び構造遺伝子の下流、すなわち3’側に位置する、当該哺乳動物細胞において機能的なポリアデニル化シグナル配列である。プロモーター配列、構造遺伝子配列、及びポリアデニル化シグナル配列は、作動可能に連結された形態で並べられる。
【0189】
先の段落で概説したように、発現しようとするポリペプチドが複雑であるほど、必要とされる異なる発現カセットの数もまた多くなる。本質的に、発現カセットの数と共に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる核酸のサイズも大きくなる。同時に、発現ベクターのサイズも大きくなる。しかし、ベクターのサイズの実用的な上限は約15kbpの範囲にあり、それを上回ると、操作及び処理の効率が著しく落ちる。この問題は、2つ以上の発現ベクターを用いることによって対処することができる。それにより、発現カセットは、それぞれが発現カセットの一部のみを含む異なる発現ベクター間で分割することができ、その結果サイズの縮小をもたらす。
【0190】
抗体-多量体融合ポリペプチド等の異種ポリペプチドを発現する組換え細胞を作製するための細胞株開発(CLD)は、目的の標的指向性インテグレーションの発現及び産生に必要なそれぞれの発現カセットを含む核酸(複数可)のランダムインテグレーション(RI)又は標的指向性インテグレーション(TI)のいずれかを使用する。
【0191】
RIを使用すると、一般に、複数のベクター又はそのフラグメントが、同一又は異なる遺伝子座で細胞のゲノムに組み込まれる。
【0192】
TIを使用すると、一般に、異なる発現カセットを含む導入遺伝子の単一コピーが、宿主細胞のゲノムの所定の「ホットスポット」に組み込まれる。
【0193】
(グリコシル化された)抗体の発現に適した宿主細胞は、一般に、例えば脊椎動物等の多細胞生物に由来する。
【0194】
II.d 宿主細胞
懸濁液中で増殖するように適合された任意の哺乳動物細胞株を、本発明による方法で使用することができる。さらに、インテグレーション方法とは無関係に、すなわち、RI及びTIの場合、任意の哺乳動物宿主細胞を使用することができる。
【0195】
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、ヒト羊膜細胞(例えば、Woelfel,J.et al.,BMC Proc.5(2011)P133に記載されているCAP-T細胞);SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(例えば、Graham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74)に記載されたHEK293細胞又はHEK293T細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスのセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23(1980)243-252)に記載されるTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えばMather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載のTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)、及び、骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki,P.and Wu,A.M.,Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2004),pp.255-268を参照されたい。
【0196】
一実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO K1、CHO DG44等)、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、リンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)、又はヒト羊膜細胞(例えば、CAP-T等)である。好ましい一実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である。
【0197】
標的指向性インテグレーションにより、哺乳動物細胞ゲノムの予め定められた部位に外因性ヌクレオチド配列が組み込まれることが可能になる。特定の実施形態では、標的指向性インテグレーションは、ゲノム及び組み込まれる外因性ヌクレオチド配列に存在する1つ以上の組換え認識配列(RRS)を認識するリコンビナーゼによって媒介される。特定の実施形態では、標的指向性インテグレーションは、相同組換えによって媒介される。
【0198】
「組換え認識配列」(RRS)は、リコンビナーゼによって認識され、リコンビナーゼに媒介された組換え事象のために必要かつ十分である、ヌクレオチド配列である。RRSは、組換え事象が起こると考えられるヌクレオチド配列中の位置を定めるために使用することができる。
【0199】
特定の実施形態では、RRSは、Creリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、FLPリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、Bxb1インテグラーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、RRSは、φC31インテグラーゼによって認識され得る。
【0200】
特定の実施形態では、RRSがLoxP部位である場合、細胞は、組換えを行うためにCreリコンビナーゼを必要とする。特定の実施形態では、RRSがFRT部位である場合、細胞は、組換えを行うためにFLPリコンビナーゼを必要とする。特定の実施形態では、RRSがBxb1 attP部位又はBxb1 attB部位である場合、細胞は、組換えを行うためにBxb1インテグラーゼを必要とする。特定の実施形態では、RRSがφC31 attP部位又はφC31attB部位である場合、細胞は、組換えを行うためにφC31インテグラーゼを必要とする。これらのリコンビナーゼは、これらの酵素のコード配列を含む発現ベクターを用いて、あるいはタンパク質又はmRNAとして細胞中に導入することができる。
【0201】
TIに関して、ゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた、本明細書に記載のランディング部位を含む、TIに適した任意の既知又は将来の哺乳動物宿主細胞を、本発明において使用することができる。このような細胞は、哺乳動物TI宿主細胞と呼ばれる。特定の実施形態では、哺乳動物TI宿主細胞は、本明細書に記載されるように、ランディング部位を含むハムスター細胞、ヒト細胞、ラット細胞、又はマウス細胞である。好ましい一実施形態では、哺乳動物TI宿主細胞は、CHO細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物TI宿主細胞は、ゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれた、本明細書に記載のランディング部位を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、CHO DG44細胞、CHO DUKXB-11細胞、CHO K1S細胞、又はCHO K1 M細胞である。
【0202】
特定の実施形態では、哺乳動物TI宿主細胞は、組み込まれたランディング部位を含み、ランディング部位は、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含む。RRSは、リコンビナーゼ、例えば、Creリコンビナーゼ、FLPリコンビナーゼ、Bxb1インテグラーゼ、又はφC31インテグラーゼによって認識され得る。RRSは、互いに独立して、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択され得る。複数のRRSが存在しなければならない場合、同一でないRRSが選択される限りにおいて、各配列の選択は他方に依存する。
【0203】
特定の実施形態では、ランディング部位は、1つ以上の組換え認識配列(RRS)を含み、RRSはリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は、少なくとも2つのRRSを含む。特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は3つのRRSを含み、第3のRRSは第1のRRSと第2のRRSの間に位置する。特定の好ましい実施形態では、3つのRSSは全て異なる。特定の実施形態では、ランディング部位は、第1のRRS、第2のRRS、及び第3のRRS、並びに第1のRRSと第2のRRSの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含み、かつ第3のRRSは、第1のRRS及び/又は第2のRRSとは異なる。特定の実施形態では、ランディング部位は更に第2の選択マーカーを含み、かつ第1及び第2の選択マーカーは異なる。特定の実施形態では、ランディング部位は、第3の選択マーカー及び配列内リボソーム進入部位(IRES)も更に含み、該IRESは該第3の選択マーカーに作動可能に連結されている。第3の選択マーカーは、第1又は第2の選択マーカーとは異なり得る。
【0204】
本発明は本明細書においてHEK及びCHO細胞を用いて例示されているが、これは本発明を例示するためだけに提示されており、決して限定として解釈されるべきではない。本発明の真の範囲は、特許請求の範囲に記載されている。
【0205】
本発明による方法における使用に適した例示的な哺乳動物TI宿主細胞は、そのゲノムの遺伝子座内の単一の部位に組み込まれたランディング部位を有するCHO細胞であり、ランディング部位はCreリコンビナーゼを介したDNA組換えのための3つの異種特異的loxP部位を含む。
【0206】
この例では、異種特異的loxP部位は、L3、LoxFas、及び2Lであり(例えば、Lanza et al.,Biotechnol.J.7(2012)898-908;Wong et al.,Nucleic Acids Res.33(2005)e147を参照)、その際、L3及び2Lはランディング部位の5’末端及び3’末端にそれぞれ隣接し、LoxFasはL3部位と2L部位の間に位置している。ランディング部位は、IRESを介した選択マーカーの発現を蛍光GFPタンパク質の発現に結び付けて、陽性選択によってランディング部位を安定化すること並びにトランスフェクション及びCre組換え後に部位が存在しないものを選択すること(陰性選択)を可能にする、バイシストロン性単位を更に含む。緑色蛍光タンパク質(GFP)は、RMCE反応をモニターするのに役立つ。
【0207】
先の段落で概説したようにランディング部位がこのように編成されていることによって、2つのベクター、例えば、いわゆる、L3部位及びLoxFas部位を有するフロントベクター並びにLoxFas部位及び2L部位を内部に持つバックベクターの同時インテグレーションが可能になる。ランディング部位に存在するものとは異なる、選択マーカー遺伝子の機能的エレメントは、両方のベクター間に分配させることができ:プロモーター及び開始コドンはフロントベクター上に位置することができるに対し、コード化領域及びポリAシグナルはバックベクター上に位置している。両方のベクターに由来する当該核酸の正しいリコンビナーゼ媒介性インテグレーションのみが、それぞれの選択剤に対する耐性を誘導する。
【0208】
通常、哺乳動物TI宿主細胞は、哺乳動物細胞のゲノムの遺伝子座内の1つの部位に組み込まれるランディング部位を含む哺乳動物細胞であって、該ランディング部位が、少なくとも1つの第1の選択マーカーに隣接する第1の組換え認識配列及び第2の組換え認識配列、並びに第1の組換え認識配列と第2の組換え認識配列の間に位置する第3の組換え認識配列を含み、かつ組換え認識配列が全て異なっている、ランディング部位を含む哺乳動物細胞である。
【0209】
選択マーカー(複数可)は、アミノグリコシド系ホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、並びにピューロマイシン、ブラスチシジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され得る。また、選択マーカー(複数可)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度GFP(eGFP)、合成GFP、黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度YFP(eYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald6、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphireからなる群から選択される蛍光タンパク質であってもよい。
【0210】
外因性ヌクレオチド配列は、特定の細胞に由来しないが、DNA送達法、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、又は形質転換法等によって当該細胞に導入することができるヌクレオチド配列である。特定の実施形態では、哺乳動物TI宿主細胞は、哺乳動物細胞のゲノム中の1つ以上のインテグレーション部位に組み込まれた少なくとも1つのランディング部位を含む。特定の実施形態では、ランディング部位は、哺乳動物細胞のゲノムの特定の遺伝子座内の1つ以上のインテグレーション部位に組み込まれる。
【0211】
特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は、少なくとも1つの選択マーカーを含む。特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は、第1、第2及び第3のRRS、並びに少なくとも1つの選択マーカーを含む。特定の実施形態では、選択マーカーは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置している。特定の実施形態では、2つのRRSは、少なくとも1つの選択マーカーに隣接する。すなわち、第1のRRSが選択マーカーの5’側(上流)に位置し、第2のRRSが選択マーカーの3’側(下流)に位置している。特定の実施形態では、第1のRRSは選択マーカーの5’末端と隣り合っており、第2のRRSは、選択マーカーの3’末端に隣り合っている。特定の実施形態では、ランディング部位は、第1のRRS、第2のRRS、及び第3のRRS、並びに第1のRRSと第3のRRSの間に位置する少なくとも1つの選択マーカーを含む。
【0212】
特定の実施形態では、選択マーカーは、第1のRRSと第2のRRSとの間に位置し、2つの隣接するRRSは異なる。特定の好ましい実施形態では、第1の隣接RRSはLoxP L3配列であり、第2の隣接RRSはLoxP 2L配列である。特定の実施形態では、LoxP L3配列は、選択マーカーの5’に位置し、LoxP 2L配列は、選択マーカーの3’に位置する。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSは、野生型FRT配列であり、第2の隣接するRRSは、変異体FRT配列である。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSは、Bxb1 attP配列であり、第2の隣接するRRSは、Bxb1 attB配列である。特定の実施形態では、第1の隣接するRRSはφC31 attP配列であり、第2の隣接するRRSは、φC31 attB配列である。特定の実施形態では、2つのRRSは、同じ向きに位置決めされている。特定の実施形態では、2つのRRSは、両方が順方向又は逆方向に向いている。特定の実施形態では、2つのRRSは、反対の向きに位置決めされている。
【0213】
特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は、2つのRSSが隣接する、第1の選択マーカー及び第2の選択マーカーを含み、該第1の選択マーカーは該第2の選択マーカーとは異なる。特定の実施形態では、2つの選択マーカーのどちらも、相互に独立して、グルタミン合成酵素選択マーカー、チミジンキナーゼ選択マーカー、HYG選択マーカー、及びピューロマイシン耐性選択マーカーからなる群から選択される。特定の実施形態では、組み込まれたランディング部位は、チミジンキナーゼ選択マーカー及びHYG選択マーカーを含む。特定の実施形態では、第1の選択マーカーは、アミノグリコシド系ホスホトランスフェラーゼ(APH)(例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HYG)、ネオマイシン、及びG418 APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)、並びにピューロマイシン、ブラスチシジン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、ゼオシン、及びミコフェノール酸に対する耐性をコードする遺伝子からなる群から選択され、第2の選択マーカーは、GFP、eGFP、合成GFP、YFP、eYFP、CFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-red、DsRed単量体、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、mCFPm、Cerulean、及びT-Sapphire蛍光タンパク質からなる群から選択される。特定の実施形態では、第1の選択マーカーはグルタミン合成酵素選択マーカーであり、第2の選択マーカーはGFP蛍光タンパク質である。特定の実施形態では、両方の選択マーカーに隣接する2つのRRSは異なっている。
【0214】
特定の実施形態では、選択マーカーは、プロモーター配列に作動可能に連結されている。特定の実施形態では、選択マーカーは、SV40プロモーターに作動可能に連結されている。特定の実施形態では、選択マーカーは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに作動可能に連結されている。
【0215】
II.e 標的指向性インテグレーション
本発明による組換え哺乳動物細胞を作製するための1つの方法は、標的指向性インテグレーション(TI)である。
【0216】
標的指向性インテグレーションでは、哺乳動物TI宿主細胞のゲノムの特定の遺伝子座に外因性核酸を導入するために部位特異的組換えが用いられる。これは、ゲノムにおけるインテグレーション部位の配列が外因性核酸と交換される酵素プロセスである。このような核酸交換を行うために使用される1つのシステムは、Cre-loxシステムである。交換を触媒する酵素はCreリコンビナーゼである。交換される配列は、ゲノム内並びに外因性核酸内の2つのlox(P)部位の位置によって定義される。これらのlox(P)部位は、Creリコンビナーゼによって認識される。これ以上何も必要としない。つまりATP等は必要としない。元々Cre-loxシステムはバクテリオファージP1で発見された。
【0217】
Cre-loxシステムは、哺乳動物、植物、細菌、酵母等、様々な種類の細胞で機能する。
【0218】
一実施形態では、抗体-多量体融合ポリペプチドをコードする外因性核酸は、単一又は二重リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)によって哺乳動物TI宿主細胞に組み込まれている。それにより、組換えCHO細胞等の組換え哺乳動物細胞が得られ、その中で、定義された特異的な発現カセット配列が単一の遺伝子座でゲノムに組み込まれ、それが次に抗体-多量体融合ポリペプチドの効率的な発現及び産生をもたらす。
【0219】
Cre-LoxP部位特異的組換え系は、多くの生物学的実験系において広く使用されている。Creリコンビナーゼは、34bpのLoxP配列を認識する38kDaの部位特異的DNAリコンビナーゼである。CreリコンビナーゼはバクテリオファージP1に由来し、チロシンファミリーの部位特異的リコンビナーゼに属する。Creリコンビナーゼは、LoxP配列間の分子内組み換え及び分子間組換えの両方を媒介することができる。LoxP配列は、2つの13bp逆方向反復に隣接する8bpの非パリンドロームコア領域から構成される。Creリコンビナーゼは、13bpの反復に結合し、それによって8bpのコア領域内での組換えを媒介する。Cre-LoxP媒介組換えは、高い効率で起こり、他のいかなる宿主因子も必要としない。2つのLoxP配列が同じヌクレオチド配列上で同じ方向に配置されている場合、Creリコンビナーゼ媒介性組換えは、2つのLoxP配列の間に位置するDNA配列が共有結合で閉じた環として切り取るであろう。2つのLoxP配列が同じヌクレオチド配列上で逆方向の位置に配置されている場合、Creリコンビナーゼ媒介性組換えは、2つの配列の間に位置するDNA配列の向きを反転するであろう。2つのLoxP配列が2つの異なるDNA分子上にあり、1つのDNA分子が環状である場合、Creリコンビナーゼ媒介性組換えにより、環状DNA配列のインテグレーションをもたらすであろう。
【0220】
「一致RRS」という用語は、2つのRRS間で組換えが起こることを示す。特定の実施形態では、2つの一致RRSは同じである。特定の実施形態では、どちらのRRSも、野生型LoxP配列である。特定の実施形態では、どちらのRRSも、変異体LoxP配列である。特定の実施形態では、どちらのRRSも、野生型FRT配列である。特定の実施形態では、どちらのRRSも、変異体FRT配列である。特定の実施形態では、2つの一致RRSは、異なる配列であるが、同じリコンビナーゼによって認識され得る。特定の実施形態では、第1の一致RRSはBxb1 attP配列であり、第2の一致RRSはBxb1 attB配列である。特定の実施形態では、第1の一致RRSはφC31 attB配列であり、第2の一致RRSはφC31 attB配列である。
【0221】
本発明の特定の実施形態では、「2プラスミドRMCE」戦略又は「二重RMCE」は、2ベクターの組み合わせを使用して使用される。例えば、限定されるものではないが、組み込まれたランディング部位は、3つのRRS、例えば、第3のRRS(「RRS3」)が第1のRRS(「RRS1」)と第2のRRS(「RRS2」)の間に存在する並びを含むことができ、第1のベクターは、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列上の第1のRRS及び第3のRRSと一致する2つのRRSを含み、第2のベクターは、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列上の第3のRRS及び第2のRRSと一致する2つのRRSを含む。
【0222】
2プラスミドRMCE戦略では、3つのRRS部位を使用して、2つの独立したRMCEを同時に実行することを含む。したがって、2プラスミドRMCE戦略を用いる哺乳動物TI宿主細胞のランディング部位は、第1のRRS部位(RRS1)に対しても第2のRRS部位(RRS2)に対しても交差活性を有していない第3のRRS部位(RRS3)を含む。標的化される2つのプラスミドは、効率的な標的指向のために同じ隣接RRS部位を必要とし、一方のプラスミド(フロント)にはRRS1及びRRS3が隣接し、他方(バック)にはRRS3及びRRS2が隣接している。さらに、2プラスミドRMCEでは、2つの選択マーカーも必要とされる。1つの選択マーカー発現カセットは、2つの部分に分割された。フロントプラスミドは、プロモーターと、それに続く開始コドン及びRRS3配列を含む。バックプラスミドは、開始コドン(ATG)を欠き、選択マーカーコード化領域のN末端に融合されたRRS3配列を有する。融合タンパク質のインフレーム翻訳、すなわち作動可能な連結を確実にするために、RRS3部位と選択マーカー配列の間に付加的なヌクレオチドを挿入する必要がある場合がある。両方のプラスミドが正確に挿入された場合にのみ、選択マーカーの完全な発現カセットが組み立てられ、したがって、各選択剤に対する耐性が細胞に与えられる。
【0223】
2プラスミドRMCEは、リコンビナーゼによって触媒される、標的ゲノム遺伝子座内の2つの異種特異的RRSとドナーDNA分子の間の二重組換えクロスオーバー事象を伴う。2プラスミドRMCEは、フロントベクター及びバックベクターに由来する組み合わせられたDNA配列のコピーを、哺乳動物TI宿主細胞ゲノムの予め定められた遺伝子座に導入するように設計されている。RMCEは、原核生物ベクターの配列が哺乳動物TI宿主細胞ゲノム中に導入されず、したがって、宿主の免疫又は防御機構の望まれない誘発を低減させ、及び/又は防ぐように、実行することができる。RMCE手順は、複数のDNA配列を用いて繰り返すことができる。
【0224】
特定の実施形態では、標的指向性インテグレーションは、2回のRMCEによって実現され、その際、2つの異なるDNA配列が両方とも、哺乳動物TI宿主細胞に一致するRRSのゲノムの予め定められた部位に組み込まれ、各DNA配列は、抗体-多量体融合ポリペプチドの一部分及び/又は2つの異種特異的RRSが隣接する少なくとも1つの選択マーカー若しくはその一部分をコードする、少なくとも1つの発現カセットを含む。特定の実施形態では、標的指向性インテグレーションは、複数回のRMCEによって実現され、その際、複数のベクターに由来するDNA配列が全て、哺乳動物TI宿主細胞のゲノムの予め定められた部位に組み込まれ、各DNA配列は、抗体-多量体融合ポリペプチドの一部分及び/又は2つの異種特異的RRSに隣接する少なくとも1つの選択マーカー若しくはその一部分をコードする、少なくとも1つの発現カセットを含む。特定の実施形態では、選択マーカーは、一部が第1のベクターにおいてコードされ、一部が第2のベクターにおいてコードされてよく、その結果、二重RMCEによって両方が正確に組み込まれた場合にのみ、その選択マーカーの発現が可能になる。
【0225】
特定の実施形態では、リコンビナーゼに媒介された組換えによる標的指向性インテグレーションにより、原核生物ベクターに由来する配列を含まずに、宿主細胞ゲノムの1つ以上の予め定められたインテグレーション部位に、選択マーカー及び/又は抗体-多量体融合ポリペプチドの様々な発現カセットが組み込まれる。
配列番号130:L3リコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号131:2Lリコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号132:LoxFasリコンビナーゼ認識配列の例示的配列
配列番号133~5:ヒトCMVプロモーターの例示的なバリアント
配列番号136:例示的なSV40ポリアデニル化シグナル配列
配列番号137:例示的なbGHポリアデニル化シグナル配列
配列番号138:例示的なhGTターミネーター配列
配列番号139:例示的なSV40プロモーター配列
配列番号140:例示的なGFP核酸配列
【0226】
図示及び具現化された様々な実施形態に加えて、開示された主題はまた、本明細書に開示及び具現化された特徴の他の組み合わせを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、本開示の主題が本明細書に開示される特徴の任意の適切な組み合わせを含むように、本開示の主題の範囲内において他の様式で互いに組み合わせることができる。本開示の主題の具体的な実施形態の前述の説明は、例証及び説明目的のために提示されている。網羅的であること、又は本開示の主題を開示されたそれらの実施形態に限定することは、意図されていない。
【0227】
本開示の主題の趣旨又は範囲を逸脱することなく、本開示の主題の組成物及び方法に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかである。したがって、本開示の主題が実施形態及びそれらの等価物の範囲内の修正及び変形を含むことが意図されている。
【0228】
様々な刊行物、特許、及び特許出願が本明細書に引用されており、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0229】
以下の実施例及び配列は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、添付の実施形態に記載されている。
【0230】
引用
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【実施例】
【0231】
実施例1
一般的技術
組換えDNA技術
Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y,(1989)において説明されるように、標準的な方法を使用してDNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の説明書に従って使用した。
【0232】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントを、Geneart GmbH(レーゲンスブルク、ドイツ)での化学合成によって調製した。合成した遺伝子フラグメントを増殖/増幅のために大腸菌プラスミドにクローニングした。サブクローニングされた遺伝子フラグメントのDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。代替的に、短い合成DNAフラグメントを、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより、又はPCRを介して構築した。それぞれのオリゴヌクレオチドを、metabion GmbH(プラネグ-マルティンスリート、ドイツ)によって調製した。
【0233】
DNA配列決定
DNA配列を、MediGenomix GmbH(マルティンスリート、ドイツ)又はSequiserve GmbH(ファターシュテッテン、ドイツ)で行われた二本鎖配列決定によって決定した。
【0234】
DNA及びタンパク質配列分析及び配列データ管理
EMBOSS(欧州分子生物学オープンソフトウェアスイート)ソフトウェアパッケージ及びInvitrogenのVector NTIバージョン11.5又はGeneious primeを、配列の作成、マッピング、解析、アノテーション、及び図示のために使用した。
【0235】
試薬
特に明記されていない限り、全ての市販の化学物質、抗体、及びキットは、製造業者のプロトコルに従って提供されたとおりに使用された。
【0236】
タンパク質定量
精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度を、Pace,et al.,Protein Science 4(1995)2411-1423に従って、アミノ酸配列に基づいて計算されるモル吸光係数を用い、280nmでの光学密度(OD)を決定することによって決定した。
【0237】
上清中の抗体濃度決定
1)プロテインAビーズ
細胞培養上清中の抗体の濃度を、プロテインAアガロースビーズ(Roche Diagnostics GmbH(マンハイム、ドイツ))による免疫沈降によって推定した。したがって、60μLのプロテインAアガロースビーズをTBS-NP40(50mM NaCl及び1%Nonidet-P40を補充した150mM Tris緩衝液、pH7.5)で3回洗浄した。その後、1~15mLの細胞培養物上清を、TBS-NP40中で予め平衡状態にしたプロテインAアガロースビーズに適用した。室温で1時間インキュベートした後、ビーズを、Ultrafree-MC-フィルターカラム(Amicon)上で、0.5mL TBS-NP40で1回、0.5mLの2xリン酸緩衝化生理食塩水(2×PBS、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)で2回洗浄し、0.5mL 100mM クエン酸Na緩衝液(pH5.0)で4回、簡単に洗浄した。結合した抗体を、35μLのNuPAGE(登録商標)LDS試料緩衝液(Invitrogen)を加えることによって溶出させた。試料の半分をそれぞれNuPAGE(登録商標)試料還元剤と合わせ、又は還元させず、70℃で10分間加熱した。その結果、5~30μLを4~12%NuPAGE(登録商標)Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)(非還元SDS-PAGE用のMOPS緩衝液及び還元SDS-PAGE用のNuPAGE(登録商標)抗酸化ランニング緩衝液添加剤(Invitrogen)を含むMES緩衝液を含む)に適用し、クーマシーブルーで染色した。
【0238】
2)親和性HPLC
細胞培養物上清中の抗体の濃度を、アフィニティHPLCクロマトグラフィーによって定量的に測定した。簡単に説明すると、プロテインAに結合する抗体を含有する細胞培養物上清を、200mM KH2PO4、100mM クエン酸ナトリウム(pH7.4)中、Applied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、Agilent HPLC 1100システムで、200mM NaCl、100mMクエン酸(pH2.5)を用いて溶出させた。溶出した抗体をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。精製された標準IgG1抗体を、標準として与えた。
【0239】
3)サンドイッチELISA
細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度は、サンドイッチ-IgG-ELISAによって測定された。簡単に説明すると、StreptaWell High Bind Streptavidin A-96ウェルマイクロタイタープレート(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を、100μL/ウェルのビオチン化抗ヒトIgG捕捉分子F(ab’)2<h-Fcγ>BI(Dianova)で、0.1μg/mLで室温で1時間かけて、又は4℃で一晩かけてコーティングし、その後、200μL/ウェルのPBS、0.05% Tween(PBST、Sigma)を用いて3回洗浄した。その後、それぞれの抗体含有細胞培養上清のPBS(Sigma)における希釈系列の100μL/ウェルをウェルに加え、室温で振盪機で1~2時間インキュベートした。ウェルを200μL/ウェルPBSTで3回洗浄し、結合した抗体を、室温の振盪機で1~2時間インキュベートすることにより、検出抗体として0.1μg/mLの100μL F(ab’)2<hFcγ>POD(Dianova)を用いて検出した。未結合の検出抗体を、200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄することによって除去した。結合した検出抗体を、100μL ABTS/ウェルを添加し、続いてインキュベートすることによって検出した。吸光度の決定は、Tecan Fluor Spectrometerで、測定波長405nm(参照波長492nm)で行った。
【0240】
CHO宿主細胞株の培養
CHO宿主細胞を、湿度85%、5%CO2の加湿インキュベーター内で37℃で培養した。それらは、300μg/mLのハイグロマイシンB及び4μg/mLの第2の選択マーカーを含む独自のDMEM/F12ベースの培地で培養された。細胞を3日又は4日ごとに0.3x10E6細胞/mlの濃度で総量30mLに分割した。培養のため、125mLの非バッフルErlenmeyer振盪フラスコを使用した。細胞を5cmの振盪振幅で150rpmで振盪した。Cedex HiRes Cell Counter(Roche Diagnostics GmbH(マンハイム、ドイツ))を用いて細胞数を決定した。細胞を60日齢に達するまで培養を続けた。
【0241】
形質転換10ベータコンピテント大腸菌(E.coli)細胞
形質転換のために、10ベータコンピテント大腸菌(E.coli)細胞を氷上で解凍した。その後、2μLのプラスミドDNAを細胞懸濁液へ直接ピペットで移した。チューブを弾き、氷上に30分間置いた。その後、細胞を42℃の温かいサーマルブロックに入れ、正確に30秒間熱ショックを与えた。直後、細胞を氷上で2分間冷却した。950μLのNEB10ベータ増殖培地を細胞懸濁液に添加した。細胞を37℃で1時間振盪しながらインキュベートした。次に、50~100μLを予め温めた(37℃)LB-Amp寒天プレートにピペットで移し、使い捨てスパチュラで広げた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。プラスミドの組み込みに成功しアンピシリンに対する耐性遺伝子を持っている細菌だけが、これらのプレート上で増殖可能である。翌日に単一コロニーを拾い、その後のプラスミド調製のためにLB-Amp培地で培養した。
【0242】
細菌培養物
大腸菌の培養は、Luria Bertaniの略であるLB培地で行い、1mL/Lの100mg/mLアンピシリンを添加して、0.1mg/mLのアンピシリン濃度にした。異なるプラスミド調製量について、以下の量を単一の細菌コロニーに播種した。
【0243】
ミニプレップの場合、96ウェル2mLディープウェルプレートにウェルあたり1.5mLのLB-Amp培地を充填した。コロニーを採取し、つまようじを培地に押し込んだ。全てのコロニーを採取したら、プレートを粘着性の空気多孔質膜で閉じた。プレートを37℃のインキュベーター中で200rpmの振盪速度で23時間インキュベートした。
【0244】
ミニプレップの場合、15mLのチューブ(換気された蓋付き)に3.6mLのLB-Amp培地を充填し、細菌コロニーを均等に接種した。つまようじは取り除かず、インキュベーションの間チューブ内に残した。96ウェルプレートと同様に、チューブを37℃、200rpmで23時間インキュベートした。
【0245】
マキシプレップの場合、200mLのLB-Amp培地をオートクレーブ処理したガラス製の1L三角フラスコに充填し、約5時間経過した1mLの細菌の日中培養物を接種した。三角フラスコを紙栓で閉じ、37℃、200rpmで16時間インキュベートした。
【0246】
プラスミド調製
ミニプレップの場合、50μLの細菌懸濁液を1mLのディープウェルプレートに移した。その後、細菌細胞をプレート内で3000rpm、4℃で5分間遠心分離した。上清みを除去し、細菌ペレットを含むプレートをEpMotionに入れた。およそ90分後、分析を行い、溶出されたプラスミドDNAを更なる使用のためにEpMotionから取り出すことができた。
【0247】
ミニプレップの場合、15mLのチューブをインキュベーターから取り出し、3.6mLの細菌培養物を2つの2mLのエッペンドルフチューブに分割した。チューブを卓上マイクロ遠心機で6,800×gで室温で3分間遠心分離した。その後、Qiagen QIAprep Spin Miniprepキットを用いて、製造業者の説明書に従ってMini-Prepを実施した。プラスミドDNA濃度をNanodropで測定した。
【0248】
Macherey-Nagel NucleoBond(登録商標)Xtra Maxi EFキットを用いて、製造業者の説明書に従って、Maxi-Prepを実施した。DNA濃度をNanodropで測定した。
【0249】
エタノール沈殿
DNA溶液の体積を2.5倍体積のエタノール100%と混合した。混合物を、-20℃で10分間インキュベートした。次に、DNAを14,000rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清を注意深く除去し、ペレットを70%(v/v)エタノールで洗浄した。この場合も、チューブを14,000rpm、4℃で5分間遠心分離した。上清をピペッティングにより注意深く除去し、ペレットを乾燥させた。エタノールを蒸発させたら、適量のエンドトキシンフリー水を加えた。DNAを4℃で一晩、水に再溶解する時間を与えた。少量のアリコートを採取し、NanodropデバイスでDNA濃度を測定した。
【0250】
分取抗体精製
抗体を、標準プロトコルを参照して、フィルタにかけた細胞培養物上清から精製した。簡潔に述べると、抗体を、Protein A Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出をpH2.8で達成した後、直ちに中和した。凝集したタンパク質を、PBS又は150mM NaClを含む20mMヒスチジン緩衝液(pH6.0)中のサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200,GE Healthcare)によって単量体抗体から分離した。単量体抗体画分をプールし、(必要な場合)例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し、-20℃又は-80℃で凍結保存した。これらの試料の一部が、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析によるその後のタンパク質解析及び分析的特徴付けのために提供された。
【0251】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造業者の説明書に従って、使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)、及びNuPAGE(登録商標)MES(還元型ゲル、NuPAGE(登録商標)酸化防止剤ランニング緩衝助剤を添加)又はMOPS(非還元型ゲル)ランニング緩衝液を使用した。
【0252】
CE-SDS
純度及び抗体完全性を、マイクロ流体Labchip技術(PerkinElmer、米国)を使用してCE-SDSによって分析した。したがって、製造業者の説明書に従ってHT Protein Express Reagent Kitを使用して、CE-SDS分析用の5μLの抗体溶液を調製し、HT Protein Expressチップを使用してLabchip GXIIシステムで分析した。Labchip GX Softwareを使用してデータを分析した。
【0253】
分析用サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、HPLCクロマトグラフィーによって行った。簡潔に述べると、プロテインA精製抗体を、Dionex Ultimate(登録商標)システムで300mM NaCl、50mM KH2PO4/K2HPO4(pH7.5)中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-Systemの2×PBS中のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出した抗体をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901を標準とした。
【0254】
質量分析法
この章では、抗体/融合タンパク質の特徴付けを、それらの正しいアセンブリに重点を置いて説明する。予想される一次構造を、脱グリコシル化インタクト抗体、及び特別な場合には脱グリコシル化/制限LysC消化抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって分析した。
【0255】
抗体/融合タンパク質を、リン酸緩衝液又はTris緩衝液中、37℃で最大17時間、1mg/mLのタンパク質濃度でN-グリコシダーゼFで脱グリコシル化した。制限LysC(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)消化は、Tris緩衝液(pH8)中、100μgの脱グリコシル化抗体を用いて、それぞれ室温で120時間又は37℃で40分間行った。質量分析の前に、試料を、Sephadex G25カラム(GE Healthcare)でのHPLCによって脱塩した。合計質量は、TriVersa NanoMate source(Advion)が取り付けられたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-MSによって決定された。
【0256】
実施例2
ランダムインテグレーションのためのプラスミド作製
抗体/融合タンパク質の発現のため、CMV-イントロンAプロモーターを含む若しくは含まないcDNA構成、又はCMVプロモーターを含むゲノム構成のいずれかに基づく一過性発現(例えばHEK293細胞において)のための発現ベクターを適用することができる。
【0257】
発現カセットの組成
抗体鎖の発現には、以下の機能的要素を含む転写単位を使用した:
- イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の前初期エンハンサー及びプロモーター、
- ヒト重鎖免疫グロブリン5’非翻訳領域(5’UTR)、
- マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
- それぞれの抗体鎖をコードする核酸、
- ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)、及び
- 任意に、ヒトガストリンターミネーター(hGT)。
【0258】
発現される所望の遺伝子を含む発現ユニット/カセットの他に、基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、
- 大腸菌(E.coli)におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18からの複製起点、及び
- 大腸菌にアンピシリン耐性を付与するベータラクタマーゼ遺伝子を含む。
【0259】
抗体鎖をコードする融合遺伝子は、PCR及び/又は遺伝子合成によって作製され、それぞれのベクター中の固有の制限部位を用いて、核酸セグメントに従って接続することにより、既知の組換え方法及び技術でアセンブリされた。サブクローン化された核酸配列を、DNA配列決定によって確認する。一過性トランスフェクションの場合、形質転換された大腸菌培養物からのベクター調製によって、より大量のベクターを調製する(NucleoBond AX,Macherey-Nagel)。
【0260】
全ての構築物について、ノブ-イントゥ-ホールヘテロ二量体化技術を、第1のCH3ドメインにおける典型的なノブ(T366W)置換及び第2のCH3ドメインにおける対応するホール置換(T366S、L368A及びY407V)(及び2つの更なる導入されたシステイン残基S354C/Y349C)と共に使用した(上に記載するそれぞれの対応する重鎖(HC)配列に含まれる)。
【0261】
実施例3
一過性発現
HEK 293細胞
一過性発現を、トランスフェクション試薬293を含まない(Novagen)懸濁液適合HEK293F(FreeStyle 293-F細胞;Invitrogen)細胞において行った。
【0262】
125ml振盪フラスコ(37℃、7%CO2、湿度85%、135rpmでインキュベート/振盪)中で解凍後、細胞を希釈により少なくとも4回(体積30mL)希釈することにより継代した。
【0263】
細胞を250mL容量で3×10E5細胞/mLまで増殖させた。3日後、細胞を分割し、1リットルの振盪フラスコ内において250mL容量で7*105細胞/mLの密度で新たに播種した。トランスフェクションを、約1.4~2.0×106細胞/mLの細胞密度で24時間後に行う。
【0264】
トランスフェクションの前に、プラスミドDNA 250μgを、予熱した(水浴、37℃)Opti-MEM(Gibco)で最終体積10mlに希釈した。溶液を穏やかに混合し、室温で5分間以下インキュベートした。次いで、333.3μLの293遊離トランスフェクション試薬をDNA-OptiMEM溶液に添加した。その後、溶液を穏やかに混合し、室温で15~20分間インキュベートした。全体積の混合物を1L振盪フラスコに添加した。細胞を37°C、7%CO2、85%湿度、135rpmで6日間又は7日間インキュベートした。
【0265】
2,000rpm、4℃で10分間の最初の遠心分離工程によって上清を回収した。次いで、上清を新しい遠心フラスコに移し、4,000rpm、4℃で20分間の第2の遠心分離を行った。その後、無細胞上清を0.22μmボトルトップフィルターでフィルタにかけ、冷凍庫(-20℃)で保存した。
【0266】
CHO-K1細胞
一過性発現を、エレクトロポレーションのためのトランスフェクション試薬Nucleofector溶液V(Lonza)及びAmaxa nucleoporatorを用いて懸濁液適合CHO-K1細胞において行った。
【0267】
125ml振盪フラスコ(37℃、7%CO2、湿度85%、140rpmでインキュベーション)中で解凍後、細胞を希釈により少なくとも4回(体積30mL)希釈することにより継代した。
【0268】
細胞を250mL振盪フラスコ内で60mL容量で3×105細胞/mLに増殖させた。細胞は、約1.2-2.0×106細胞/mLの細胞密度でトランスフェクションの準備が整う。1000rpm、室温で10分間の遠心分離によって、総量1×107個の細胞を収集した。細胞ペレットを100μLの予め温めた(室温)Nucleofector溶液(Lonza)に溶解した。合計1.2pmol又は最大10μgのプラスミドDNA(水に希釈)を10μLの最終容量で混合し、続いて100μLのトランスフェクション試薬及び1×107細胞と混合した。次いで、プラスミドDNA、トランスフェクション試薬及び細胞の混合物をエレクトロポレーションキュベットに移した。インキュベーション時間なしで直接、キュベットをNucleofectorシステムに入れた。プログラム「U-24」によるエレクトロポレーション後、500μLの予め温めた(37℃)培地をキュベットに加えた。混合物全体を、30mLの予熱した(37℃)既知組成培地(Invitrogen)を含む125mL振盪フラスコに移した。
【0269】
CHO-K1 TI細胞
一過性発現を、エレクトロポレーションのためのトランスフェクション試薬PE緩衝液及びMaxCyte(OC-400 processing assembly)を用いて懸濁液適合CHO-K1 TI宿主細胞において行った。
【0270】
125mL振盪フラスコ(37℃、5%CO2、湿度85%、150rpmでのインキュベーション)中で解凍後、細胞を少なくとも4回継代した。
【0271】
細胞を振盪フラスコ内で1日目に4×105細胞/mLに増殖させた。3日目において、細胞は、およそ1-2×106細胞/mLの細胞密度でトランスフェクションの準備が整う。
【0272】
1000rpm、室温で10分間の遠心分離によって、総量3×106個の細胞を収集した。細胞ペレットを300μLのPE緩衝液(MaxCyte)に溶解し、続いて最大25μgのプラスミドDNAを添加した。次いで、プラスミドDNA、トランスフェクション試薬及び細胞の混合物をエレクトロポレーションキュベットに移し、続いて「CHO-2」及びプロセスアセンブリプロトコルを使用してエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後、混合物全体を撹拌せずに37℃で30分間振盪フラスコに移した。30分後、30mLの回収培地を添加する。
【0273】
トランスフェクトした細胞を、37℃、5%CO2、85%湿度、100rpmで7日間振盪しながらインキュベートした。
【0274】
ExpiCHO細胞
ExpiCHO-S発現系(A29133;Gibco)を用いて一過性発現を行った。
【0275】
解凍、継代及びトランスフェクションを製造業者の説明書に従って行った(ExpiCHO Expression System(A 29133)ユーザーガイドを参照)。トランスフェクションには、「標準プロトコル」(12頁、A29133、マニュアルを参照)を使用した。
【0276】
トランスフェクトした細胞を、37℃、7%CO2、85%湿度、140rpmで7日間振盪しながらインキュベートした。
【0277】
1,000rpm、4℃で10分間の最初の遠心分離工程によって上清を回収した。上清を新しい遠心フラスコに移し、4,000rpm、4℃で20分間の第2の遠心分離を行った。その後、無細胞上清を0.22μmボトルトップフィルターでフィルタにかけ、更に使用するまで冷凍庫(-20℃)で保存した。
【0278】
実施例4
安定な発現及び精製
安定した細胞株の作製
2つの二重プラスミド及び1つのプラスミドを使用して、宿主細胞株CHO K1-Mを同時トランスフェクトした。二重プラスミドは、FAPのVL、VH、並びに4-1-BBL融合タンパク質の単量体及び二量体、並びにFAP及び4-1-BBLのCH及びCLをコードするDNAフラグメントを含んでいたが、単一プラスミドは4-1-BBLの二量体のみを含んでいた。全ての配列を化学的に合成し、それによって以下を含む異種DNAエレメントと組み合わせた:a)5’-Kozak配列を含む5’-UTR、b)リーダー配列(LL)をコードするDNAセグメント、c)合成されるDNAセグメントの5’-及び3’-末端に付加されるクローニングに適した制限エンドヌクレアーゼ部位。
【0279】
宿主細胞株は、Puck et al.によって導入されたCHO細胞株から確立されたプロリン栄養要求性株K1(Kao and Puck,1967)に由来する。CHO K1細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から凍結ストック(登録番号CCL-61)として入手し、続いてペンツベルクのRoche Pharmaで既知組成培地及び懸濁液中で増殖するように適合させ、次いで「CHO K1-M」と表記した。
【0280】
CHO K1-M WCBの1アンプルをトランスフェクションに使用した。トランスフェクションは、既知組成培地中で線状化DNAを使用して行った。DHFR/MTX発現系に基づいて、組換えDNAを安定に組み込まれたクローンを選択した。安定なトランスフェクタントの選択のために、細胞を384細胞/ウェルの密度で500ウェルプレートに移し、400nMのMTXを含有する既知組成培地中で培養した。これらの条件は、二重プラスミド及び単一プラスミドからDHFR遺伝子を過剰発現した細胞のみが生存したことを保証した。
【0281】
トランスフェクションの3週間後、抗ヒトFc ELISAによってヒトIgGの存在について上清をスクリーニングした。抗体力価について陽性のクローンを96ウェルフォーマットに拡大し、次いで、MTX濃度を250nmol/L MTXに減少させた。1週間後、産生されたFAP抗体-4-1-BBL融合タンパク質分子の機能性を確実にするために、クローンを、FAP抗原及び4-1-BB受容体への結合についてELISAによって試験した。陽性クローンを増殖させ、バンクに入れた。
【0282】
抗体の精製
抗体含有培養上清をフィルタにかけ、2つのクロマトグラフィー工程によって精製した。PBS(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl)、pH7.4で平衡化したHiTrap MabSelectSuRe(GE Healthcare)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、抗体を捕捉した。未結合タンパク質を平衡化緩衝液で洗浄することによって除去し、抗体を50mMクエン酸緩衝液(pH2.8)で回収し、溶出直後に1M Tris塩基(pH9.0)でpH6.0に中和した。Superdex 200(商標)(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーを第2の精製工程として使用した。サイズ排除クロマトグラフィーを、20mMヒスチジン緩衝液、0.14M NaCl、pH6.0で行った。抗体を含む溶液を、Biomax-SKメンブレン(Millipore、ビレリカ、マサチューセッツ州)を備えたUltrafree-CL遠心フィルターユニットで濃縮し、-80℃で保存した。
【0283】
実施例5
標的指向性インテグレーションのためのプラスミド作製
2プラスミド抗体コンストラクトを構築するため、それぞれの構造遺伝子を、L3及びLoxFas配列を含むフロントベクター骨格、並びにLoxFas及び2L配列並びにpac選択マーカーを含むバックベクターにクローニングした。Creリコンビナーゼプラスミド(Wong,E.T.,et al.,Nucl.Acids Res.33(2005)e147;O’Gorman,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)14602-14607を参照)を、全てのRMCEプロセスに使用した。また、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/126634号も参照されたい。
【0284】
それぞれのポリペプチドをコードするcDNAを、遺伝子合成(Geneart、Life Technologies Inc.)によって作製した。37℃で1時間、遺伝子合成物及びバックボーンベクターをHindIII-HF及びEcoRI-HF(NEB)で消化し、アガロースゲル電気泳動によって分離した。挿入フラグメント及びバックボーンのDNAフラグメントをアガロースゲルから切り取り、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて抽出した。製造業者のプロトコルに従って迅速ライゲーションキット(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を用いて、3:1の挿入フラグメント/バックボーン比で、精製した挿入フラグメント及びバックボーンフラグメントをライゲーションした。次いで、42℃で30秒間の熱ショックによってライゲーションアプローチをコンピテント大腸菌DH5αに形質転換し、37℃で1時間インキュベートした後、選択用のアンピシリンを含む寒天プレートに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0285】
翌日、クローンを採取し、Mini又はMaxi-Preparationのために振盪しながら37℃で一晩インキュベートし、これは、EpMotion(登録商標)5075(Eppendorf)を用いて、又はそれぞれQIAprepスピンミニプレップキット(Qiagen)/NucleoBond Xtra Maxi EFキット(Macherey&Nagel)を用いて、実施した。望ましくない突然変異がないことを確実にするために、全てのコンストラクトを配列決定した。
【0286】
第2のクローニング工程において、第1のクローニングの場合と同じ条件を用いて、予めクローニングしたベクターをKpnI-HF/SalI-HF及びSalI-HF/MfeI-HFで消化した。TI骨格ベクターをKpnI-HF及びMfeI-HFで消化した。分離及び抽出を、前述したようにして実施した。精製されたインサート及び骨格のライゲーションを、T4 DNAリガーゼ(NEB)を使用して、インサート/インサート/骨格比が1:1:1の製造プロトコルに従って4°Cで一晩行い、65℃で10分間不活性化した。前述したようにして、下記のクローニング工程を実施した。
【0287】
実施例6
標的指向性インテグレーションによる安定な細胞株の作製
TIランディング部位にGFP発現カセットを含むCHO-K1 TI宿主細胞を、独自のDMEM/F12ベースの培地で、150rpmの一定の撹拌速度、標準的な加湿条件下(95%rH、37℃、及び5%CO2)で、使い捨て125mlベント・シェイク・フラスコ内にて増殖させた。3~4日ごとに、細胞を、選択マーカー1及び選択マーカー2を有効濃度で含む既知組成培地に、3x10E5細胞/mLの濃度で播種した。培養物の密度と生存率を、Cedex HiRes細胞カウンタ(F.Hoffmann-La Roche Ltd,バーゼル、スイス)で測定した。
【0288】
安定したトランスフェクションのために、等モル量のフロントベクターとバックベクターを混合した。混合物5μgあたり1μgのCre発現プラスミドを添加した(つまり、5μgのCre発現プラスミド又はCre mRNAを25μgのフロント及びバックベクター混合物に添加した)。
【0289】
トランスフェクションの2日前に、TI宿主細胞を、4x10E5細胞/mLの密度で、新鮮な培地に播種した。トランスフェクションは、NucleofectorキットV(Lonza、スイス)を使用して、製造元のプロトコルに従ってNucleofectorデバイスで実施した。3×10E7細胞に、合計30μgの核酸、すなわち30μgのプラスミド(5μgのCreプラスミド並びに25μgのフロントベクター及びバックベクター混合物)をトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を、選択剤を含まない30mLの培地に播種した。
【0290】
播種後5日目に細胞を遠心分離し、組換え細胞の選択のために6x10E5細胞/mlの有効濃度のピューロマイシン(選択剤1)と1-(2’-デオキシ-2’-フルオロ-1-ベータ-D-アラビノフラノシル-5-ヨード)ウラシル(FIAU;選択剤2)を含む既知組成培地80mLに移した。細胞を、37℃、150rpm、5%CO2、及び85%湿度でこの日から分割せずに培養した。培養物の細胞密度及び生存率を定期的にモニターした。培養物の生存率が再び増加し始めたとき、選択剤1及び2の濃度を、以前に使用した量の約半分に減少させた。より詳細には、細胞の回収を促進するために、生存率が40%より高く、かつ生細胞濃度(VCD)が0.5×10E6細胞/mLより高い場合は選択圧を下げた。したがって、4×10E5細胞/mLを遠心分離し、40mlの選択培地II(既知組成培地、1/2選択マーカー1及び2)に再懸濁した。これらの細胞を以前と同じ条件で、かつこの場合も分割せずに、インキュベートした。
【0291】
選択を開始してから10日後、細胞内GFP及び細胞表面に結合した細胞外異種融合ポリペプチドの発現を測定するフローサイトメトリによって、Cre媒介性カセット交換の成功を確認した。ヒト抗体の軽鎖及び重鎖に対するAPC抗体(アロフィコシアニン標識F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG)を、FACS染色に用いた。フローサイトメトリは、BD FACS Canto IIフローサイトメータ(BD、ハイデルベルク、ドイツ)を使用して実施した。試料あたり1万事象を測定した。生細胞を、側方散乱(SSC)に対する前方散乱(FSC)のプロットでゲートした。生細胞ゲートは、トランスフェクトされていないTI宿主細胞で定義され、FlowJo 7.6.5 ENソフトウェア(TreeStar、オルテン、スイス)を用いて、全ての試料に適用された。GFPの蛍光を、FITCチャネル(488nmでの励起、530nmでの検出)で定量化した。異種融合ポリペプチドを、APCチャネル(645nmでの励起、660nmでの検出)で測定した。親CHO細胞、すなわちTI宿主細胞の作製に使用した細胞を、GFP及び融合ポリペプチドの発現に関して陰性対照として使用した。選択開始から14日後、生存率は90%を超え、選択は完了したと見なされた。
【0292】
実施例7
FACSスクリーニング
FACS解析を実施して、トランスフェクション効率及びトランスフェクションのRMCE効率を調べた。トランスフェクトされたアプローチの4×10E5細胞を遠心分離し(1200rpm、4分)、1mLのPBSで2回洗浄した。PBSを用いる洗浄工程の後、沈殿物を400μLのPBSに再懸濁し、FACSチューブ(セルストレーナーキャップ付きのFalcon(登録商標)丸底チューブ、Corning)に移した。FACS Canto IIを用いて測定を実施し、ソフトウェアFlowJoを用いてデータを解析した。
【0293】
実施例8
フェドバッチ培養
フェドバッチ生産培養は、独自の既知組成培地を含む振盪フラスコ又はAmbr15容器(Sartorius Stedim)で実施した。細胞を0日目に1×10E6細胞/mLで播種した。3、7、及び10日目に、培養物に独自のフィード培地を加えた。Cedex HiRes装置(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を使用して、0、3、7、10、及び14日目に、培養物中の細胞の生存細胞数(VCC)及び生存率割合を測定した。グルコース、乳酸及び生成物力価の濃度を、3、5、7、10、12及び14日目にCobasアナライザー(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を使用して測定した。流加開始後14日目に、遠心分離(10分、1000rpm及び10分、4000rpm)によって上清を採取し、濾過(0.22μm)によって清澄化した。UV検出を伴うプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、14日目の力価を決定した。製品の品質は、CaliperのLabchip(Caliper Life Sciences)によって決定した。
【0294】
実施例9
融合ポリペプチドの定量
培養培地中の力価を抗ヒトIgGサンドイッチELISAで測定した。簡単に説明すると、融合ポリペプチドを、MaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc(商標)、Sigma-Aldrich)に結合した抗ヒトFc抗体で細胞培養液から捕捉し、捕捉抗体とは異なるエピトープに結合する抗ヒトFc PODコンジュゲートで検出した。二次抗体を、BM化学発光ELISA基質(POD)(Sigma-Aldrich)を用いた化学発光によって定量した。
【配列表】
【国際調査報告】