(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(54)【発明の名称】電荷トラップ層が設けられたキャリア基板に薄層を転写するプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230809BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230809BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501665
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 FR2021051140
(87)【国際公開番号】W WO2022023630
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クレマンソー, ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】エカルノット, ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ゴルベル, アイメン
(72)【発明者】
【氏名】ブローカート, マルセル
(72)【発明者】
【氏名】デルプラット, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ルーシェ, セヴラン
(72)【発明者】
【氏名】ティエフリー, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】デュレ, カリーヌ
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BC02
5F058BC08
5F058BF07
5F058BF23
5F058BF29
5F058BF30
5F058BH02
(57)【要約】
本発明は、薄層(5)をキャリア基板(1)に転写するプロセスであって、電荷トラップ層(2)を主面に有するベース基板(3)を用意することと、厚さが200nmより大きな誘電体層(4)を電荷トラップ層(2)に形成することと、を含む作成プロセスを用いてキャリア基板(1)を作成するステップを含む、プロセスに関する。誘電体層(4)の形成は、誘電体層の堆積及びイオンスパッタリングを同時に実施する。また、この転写プロセスは、研磨によって誘電体層(4)の自由面を作成することなく、分子結合によって、ドナー基板をキャリア基板(1)の誘電体層(4)に接合するステップであり、ドナー基板が、薄層(5)を規定する弱化平面を特徴とした、ステップを含む。このプロセスは最後に、ドナー基板を弱化平面で分割することにより、薄層(5)を解放してキャリア基板(1)に転写するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄層(5)をキャリア基板(1)に転写するプロセスであって、
電荷トラップ層(2)を主面に有するベース基板(3)を用意することと、厚さが200nmより大きな誘電体層(4)を前記電荷トラップ層(2)に形成することと、を含む作成プロセスを用いてキャリア基板(1)を作成するステップであり、前記誘電体層(4)の形成が、前記誘電体層の堆積及びイオンスパッタリングを同時に実施する、ステップと、
研磨によって前記誘電体層(4)の自由面を作成することなく、分子結合によって、前記薄層(5)を規定する弱化平面を特徴とするドナー基板を前記キャリア基板(1)の前記誘電体層(4)に接合するステップ、
前記ドナー基板を前記弱化平面で分割することにより、前記薄層(5)を解放して前記キャリア基板(1)に転写するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記作成プロセスが、前記主面と反対の前記ベース基板(3)の背面に反り補償層(32)を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反り補償層(32)が、500nm~1000nmの厚さを有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ベース基板(3)が、600Ω・cmより高い抵抗率を示す単結晶シリコン基板である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記電荷トラップ層(2)が、多結晶シリコンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記電荷トラップ層(2)が、炭素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電荷トラップ層(2)が、1ミクロン~20ミクロンの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記誘電体層(4)が、酸化ケイ素から成る、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記誘電体層(4)が、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素で構成されたバリア層を備えた、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記誘電体層(4)が、200nm~10ミクロン、好ましくは600nm~10ミクロンの厚さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
堆積/スパッタリング比が、1~10、好ましくは2~5である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記誘電体層(4)が、300℃~450℃、好ましくは350℃~400℃の温度で形成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記誘電体層(4)が、大気圧より低い圧力を示す雰囲気中で形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
中性雰囲気中で、前記誘電体層の形成温度を超える温度、好ましくは950℃未満で前記誘電体層(4)をアニールする操作をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記誘電体層(4)の前記自由面が、10ミクロン×10ミクロンの測定領域にわたるRMS値に関して、0.5nm未満の粗さを示す、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ドナー基板が、誘電体表面層を持たない、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電荷トラップ層を備えたキャリア基板に薄層を転写するプロセスに関する。これらの基板は、特に無線周波数集積デバイス、すなわち、およそ3kHz~300GHzの周波数範囲の信号を取り扱う電子デバイスの分野(例えば、電気通信(電話、Wi-Fi、Bluetooth等)の分野)において適用可能である。また、これらの基板は、フォトニクスの分野においても適用可能である。
【従来技術の説明】
【0002】
(発明の技術的背景)
電子デバイス又はフォトニックデバイスとこのデバイスが形成されたSOI(Silicon-On-Insulator)基板のキャリア基板との間に発生し得る電磁結合の影響を防止又は制限するために、埋め込み誘電体層とSOIのキャリアとの間で誘電体層の直下に電荷トラップ層を挿入することが公知である。この層は、例えば1~10ミクロンの多結晶シリコンの層から成り得る。そして、多結晶を構成する結晶粒の境界は、電荷キャリアのトラップを構成し、トラップされた電荷キャリアは、トラップ層自体又は下部の基板に由来する可能性がある。このため、絶縁層の下側の導電面の形成が防止される。この種の周知のSOI基板の製造については、例えば仏国特許出願公開第2860341号、仏国特許出願公開第2933233号、仏国特許出願公開第2953640号、米国特許出願公開第2015115480号、米国特許第7268060号、米国特許第6544656号、米国特許出願公開第20200020520号、又は国際公開第2020/008116号といった文献に記載されている。
【0003】
このようなトラップ層を特徴とするSOI基板を構成するため、ベース基板への電荷トラップ層の形成によってキャリア基板が作成される。次に、層転写プロセス(例えば、スマートカット(Smart Cut)(登録商標)技術)を用いて、このキャリア基板に薄層が転写される。この技術によれば、通常は分子結合によって、転写対象の薄層を露出面で規定する弱化平面(weakened plane)を特徴とするドナー基板がキャリア基板に接合される。そして、ドナー基板が弱化平面で分割されることで、薄層がキャリア基板に転写される。誘電体層は、例えば接合に先立って、これらの基板の一方又は両方を酸化させることにより、キャリア基板と薄層との間に挿入されている。
【0004】
スマートカット(登録商標)技術によれば、一般的には注入により誘電体層(存在する場合)を通じて、軽量種(例えば、水素及び/又はヘリウム)をドナー基板に導入することにより、弱化平面が得られる。転写対象の薄層の厚さによって注入対象の種のエネルギー及び線量が決まり、厚さが大きいほど、エネルギー及び線量が高くなる。高エネルギーでの高線量の注入は工業的に好ましくない。したがって、この問題を回避するため、特に誘電体層が比較的厚く(例えば、200nmより厚く)なるように選定されている場合には、この誘電体層の少なくとも一部をドナー基板ではなくキャリア基板に形成することが好ましい。フォトニクスの分野においては、この厚さが1ミクロン或いは数ミクロンに達することもあるため、相当な厚さの誘電体層の存在と関連するすべての問題が深刻になる。
【0005】
このように、本出願人が行った実験によって、多結晶シリコンで構成された電荷トラップ層を酸化させて誘電体層を形成することには、多くの問題があることが明らかとなっている。この酸化によってキャリア基板の表面状態は粗くなる傾向にあり、例えば研磨による準備が接合ステップに先立って必要となるため、プロセスがより複雑となる。また、酸化ケイ素とそれ以外のポリシリコン層との間の埋め込み界面も粗く、デバイス製造ステップにおいてSOI基板を光学的に検査する際に問題となることがある。この点、この界面には研磨を利用できず、必然的に基板の内部に保持されるため、このようなキャリア基板を採用した基板中/基板上に形成されるデバイス、特に、フォトニックデバイスの動作に悪影響が及ぶ可能性があることに留意されたい。また、酸化ステップによってキャリア基板が変形し、相当な反りが生じる傾向にある。このような反りが存在すると、後続の接合ステップ、より一般的には、従来の装置を用いた製造ラインでのキャリア基板の取り扱いが煩雑となる。
【0006】
キャリア基板の酸化に代えて、キャリアの堆積により誘電体層を形成する場合にも同様の問題が生じることに留意されたい。具体的に、PECVD(プラズマ化学気相成長)又はLPCVD(低圧化学気相成長)といった従来の技術では相当な反りが生じ、一般的には非常に粗い層が形成されるため、接合を考える前に研磨による準備が必要となる。
【0007】
Pyeらによる「High density plasma CVD and CMP for 0.25 M intermetal dielectric processing」、Solid State Technology、Penwell corporation、vol 38、no.12、1995及びMachidaらによる「New planarization technology using bias ECR plasma deposition」、Japanese journal of applied physics、329~332ページ(1985)といった文献は、機能性半導体構造の2つの金属レベル間に大略配置された金属間誘電体膜を堆積させる技術を教示している。これらの膜は、相当なアスペクト比を示すトポロジーパターンを埋めることを目的としており、その堆積後には研磨ステップが続く。
【発明の概要】
【0008】
(発明の課題)
本発明は、前述の欠点の全部又は一部の克服を目的とする。
【0009】
(発明の簡単な説明)
上記目的のうちの1つを達成するため、本発明の主題は、薄層をキャリア基板に転写するプロセスであって、
電荷トラップ層を主面に有するベース基板を用意することと、厚さが200nmより大きな誘電体層を電荷トラップ層に形成することと、を含む作成プロセスを用いてキャリア基板を作成するステップであり、誘電体層の形成が、誘電体層の堆積及びイオンスパッタリングを同時に実施する、ステップと、
研磨によって誘電体層の自由面を作成することなく、分子結合によって、薄層を規定する弱化平面を特徴とするドナー基板をキャリア基板の誘電体層に接合するステップと、
ドナー基板を弱化平面で分割することにより、薄層を解放してキャリア基板に転写するステップと、
を含む、プロセスに関する。
【0010】
本発明の他の利点及び非限定的な特徴によれば、以下が単独又は技術的に実現可能な任意の組み合わせにて提供される。
【0011】
作成プロセスは、主面と反対のベース基板の背面に反り補償層を形成することを含む。
【0012】
反り補償層は、500nm~1000nmの厚さを有する。
【0013】
ベース基板は、1000Ω・cmより低い抵抗率を示す単結晶シリコン基板である。
【0014】
ベース基板は、600Ω・cmより高い抵抗率を示す単結晶シリコン基板である。
【0015】
電荷トラップ層は、多結晶シリコンを含む。
【0016】
電荷トラップ層は、炭素を含む。
【0017】
電荷トラップ層は、1ミクロン~20ミクロンの厚さを有する。
【0018】
誘電体層は、酸化ケイ素から成る。
【0019】
誘電体層は、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素で構成されたバリア層を備える。
【0020】
誘電体層は、200nm~10ミクロン、好ましくは600nm~10ミクロンの厚さを有する。
【0021】
堆積/スパッタリング比は、1~10、好ましくは2~5である。
【0022】
誘電体層は、300℃~450℃、好ましくは350℃~400℃の温度で形成される。
【0023】
誘電体層は、大気圧より低い圧力を示す雰囲気中で形成される。
【0024】
このプロセスは、中性雰囲気中で、誘電体層の形成温度を超える温度、好ましくは950℃未満で誘電体層をアニールする操作をさらに含む。
【0025】
誘電体層の自由面、10ミクロン×10ミクロンの測定領域にわたるRMS(二乗平均平方根)値に関して、0.5nm未満の粗さを示す。
【0026】
ドナー基板は、誘電体表面層を持たない。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点については、添付の図面を参照した以下の発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る、層転写プロセスのキャリア基板を示した図である。
【
図2】本発明に係る、層転写プロセスの完了時に得られる最終基板を示した図である。
【
図3】キャリア基板の一実施形態を示した図である。
【
図4】一実施形態の層転写プロセスの完了時に得られる最終基板を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
最終基板の提示
図2を参照して、一実施形態の最終基板Sは、ベース基板3と、ベース基板3に配置された電荷トラップ層2と、電荷トラップ層2に直接接触して配置された誘電体層4と、誘電体層4に配置された薄層5と、を備える。電荷トラップ層及び誘電体層4が設けられたベース基板3は、最終基板Sのキャリア基板1を構成する。
【0030】
図4に示す実施形態において、最終基板Sのキャリア基板1は、電荷トラップ層2及び反り補償層32が設けられたベース基板3を備える。この層の機能は、ベース基板3を変形させることであり、その目的は、特に、本明細書の主題を構成するプロセスの様々なステップにおいてベース基板3及び最終基板Sが受ける将来の変形を少なくとも部分的に補償することである。これは特に、ベース基板3に形成される際の誘電体層4により加えられる応力と、それ程ではないにせよ、電荷トラップ層2により加えられる応力と、を補償することを意味する。
【0031】
電荷トラップ層2は、ベース基板3の主面31に配置されており、補償層32は、主面31と反対のベース基板3の背面33に配置されている。補償層32は、酸化ケイ素又は窒化ケイ素で構成されているのが好ましい。その厚さは、200nmよりも大きく、500~1000nmであるのがより好ましい。
【0032】
図2及び
図4の実施形態の最終基板S(ひいては、キャリア基板1)は、標準サイズ(例えば、直径200mm、300mm、或いは450mm)の円形ウェハの形態であってもよい。これは特に、最終基板S、特に、薄層5が依然としてデバイスを持たない場合である。ただし、本発明は、これらの寸法にもこの形態にも何ら限定されるものではない。
【0033】
ベース基板3は、数百ミクロンの厚さを有する。ベース基板3は、100又は1000Ω・cmよりも高い抵抗率を示すのが好ましく、さらには3000Ω・cmよりも高いのがより好ましい。このように、ベース基板3において移動することにより最終基板SのRF性能を低下させる傾向の電荷すなわちホール又は電子の密度は限られる。ただし、本発明は、ベース基板3がこのような抵抗率を示すことに限定されない。1000Ω・cmよりも低く、数百Ω・cmのオーダー、又は100Ω・cm以下のより一般的な抵抗率をベース基板3が示す場合にも、RF性能において有利である。
【0034】
入手性及びコストを理由として、ベース基板3は、シリコン、特に、単結晶シリコンで構成されているのが好ましい。例えば、少量の格子間酸素を含むCZ基板であってもよく、この種の基板は、それ自体よく知られているように、抵抗率が1000Ω・cmよりも高くなる場合がある。或いは、ベース基板3は、別の材料により形成されていてもよく、例えば、サファイア、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、III-V材料、ガラス等で構成されていてもよい。或いは、1000Ω・cmよりも低い抵抗率を有するより標準的なCZ単結晶基板であってもよいし、多量又は中間量の格子間酸素を含むCZ基板であってもよく、これは、n-ドープ又はp-ドープされるとともに、抵抗率が500Ω・cm以下のオーダーであってもよい。
【0035】
本発明の様々な実施形態のキャリア基板1は、任意選択として、ベース基板3に直接接触して配置され、例えば二酸化ケイ素又は窒化ケイ素で構成された誘電体薄層を備えていてもよい。誘電体薄層(
図1及び
図2には示さず)は、数ナノメートルより大きな厚さ(例えば、5nm~500nm)を有する。この層は、ベース基板3の酸化又はこの基板への堆積により得ることができる。この薄層の形成に要する時間及びコストを制限するため、その厚さは、5nm~200nm(例えば、145nm等)となるように選定され得る。誘電体薄層は、キャリア基板1又は最終基板Sが高温に曝された場合の電荷トラップ層3の再結晶化を防止又は制限可能である。
【0036】
また、キャリア基板1は、ベース基板3(又は、誘電体薄層(存在する場合))に直接接触して配置された電荷トラップ層2を備える。トラップ層2は、500Ω・cmよりも高く、好ましくは1000Ω・cmよりも高く、より好ましくは10kΩ・cmよりも高い抵抗率を有する。本願の導入において前述した通り、トラップ層の機能は、キャリア1に存在する任意の電荷担体を捕捉して、それぞれの移動を制限することである。これは特に、キャリア基板1に侵入することでこれらの電荷と相互作用して移動させる傾向の電磁場を放出する半導体構造を最終基板Sが含む場合である。電荷トラップ層2は、通常は1ミクロン~15ミクロン、或いは20ミクロンの厚さを有する。
【0037】
トラップ層2は一般的に、転位、粒界、非晶質領域、隙間、含有物、細孔等の構造欠陥を有する非単結晶半導体層により形成されていてもよい。これらの構造欠陥は、例えば不完全な化学結合又はダングリングボンドの部位において、材料を流れる任意の電荷に対するトラップを構成する。このため、トラップ層では伝導が阻害される結果、高い抵抗率を示すことになる。
【0038】
前述の入手性及びコストという同じ理由から、トラップ層2は、多結晶シリコンで構成されているのが好ましい。ただし、別の多結晶半導体材料により形成されていてもよいし、別の多結晶半導体材料を含んでいてもよい。当然のことながら、この電荷トラップ層2は、多結晶シリコンで形成された層を必要とする技術以外の技術によって形成されていてもよい。また、この層は、例えば多結晶シリコンの厚みに挿入された中間層の形態で、炭素を含んでいてもよいし、炭化ケイ素又はシリコン及び炭素の合金から成っていてもよいし、炭化ケイ素又はシリコン及び炭素の合金を含んでいてもよい。トラップ層2が炭化ケイ素又はシリコン及び炭素の合金から成る場合、その厚さは、数ナノメートル(例えば、2nm)~数十ナノメートル(例えば、50nm)であるのが好ましい。或いは、ベース基板3の表面部における比較的重い種(例えば、アルゴン)のイオン衝撃によって電荷を捕捉可能な結晶欠陥を生成することにより、電気トラップが層2に形成されていてもよい。また、例えばベース基板3がシリコンで構成されている場合の表面部の多孔質化によって、電荷トラップ層2を多孔質材料で形成することも考えられる。
【0039】
いずれにせよ、トラップ層2は、500Ω・cmよりも高い高抵抗率を示す。このため、トラップ層2は、意図的にドープされていない。すなわち、1014原子/立方センチメートルよりも低い電荷担体ドーパント濃度を有する。窒素リッチ又は炭素リッチとすることで抵抗率特性を改善するようにしてもよい。
【0040】
図1及び
図4の全体説明に戻って、キャリア基板1は、トラップ層2に直接配置された誘電体層4も備える。一例として、誘電体層4は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素から成っていてもよいし、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素を含んでいてもよい。また、これらの材料の積層であってもよい。誘電体層4の厚さは、10nm~10ミクロンであってもよいが、本明細書の背景においては、この層は比較的大きな厚さ(例えば、200nm超)を有し、200nm~10ミクロン又は200nm~1ミクロンであるのが好ましい。これは特に、最終基板がフォトニクスの分野への適用を目指している場合であり、この場合は厚い誘電体層4が必要で、その厚さは通常600nmよりも大きく、10ミクロンに達するものであってもよい。
【0041】
最終基板Sは、キャリア基板1の誘電体層4に接触した薄層5を備える。薄層は通例、単結晶シリコンで構成されるが、その内部又は上部への形成を意図したデバイスの性質に応じて、(半導体であるか否かを問わず)その他任意の材料を含むことも可能である。最終基板Sが半導体集積コンポーネントの受容を意図する場合、薄層5は、単結晶シリコンで構成されていてもよいし、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、又は炭化ケイ素等のその他任意の半導体材料で構成されていてもよい。
【0042】
半導体集積コンポーネントは特に、フォトニックの性質であってもよく、例えば、導波路、リング共振器、又はマッハツェンダー干渉計等の受動又は能動コンポーネントであってもよい。この種のデバイス、特に、光移相器及びスイッチは、小型化、低消費電力、電磁結合効果の抑制、及びスイッチング速度の観点での仕様を守りつつ、大量の信号を効率的に伝達できる必要があり、最終基板S等の高機能基板によって提供され得るのが有利である。
【0043】
フォトニックデバイス51(
図4に一例として示す)は、スイッチ、導波路、移相器、変調器、レーザ発振器、増幅器、方向性結合器、フィルタ、及び/又はマルチプレクサを構成するのが有利である。
【0044】
最終基板Sが弾性表面波フィルタの受容を意図する場合、薄層5は、タンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウム等の圧電材料及び/又は強誘電体材料で構成されていてもよい。また、薄層5は、ドナー基板に形成され、最終基板Sの製造時にキャリア基板1に転写される完成又は半完成集積コンポーネントを備えていてもよい。一般的に、薄層5は、厚さが10nm~10ミクロンであってもよい。
【0045】
キャリア基板の作成
以下、
図1に示すキャリア基板1を作成するプロセスを提示する。第1のステップにおいては、電荷トラップ層2を主面に示すベース基板3が用意される。このトラップ層2は、多結晶シリコンで構成されている場合、業界標準の堆積装置を用いて製造されるようになっていてもよい。したがって、RPCVD(リモートプラズマ増殖型化学気相成長)又はPECVD(プラズマ増殖型化学気相成長法)を含むことができる。また、LPCVD(低圧化学気相成長)も含むことができる。ただし、上記のように、ベース基板3上又はベース基板3中のトラップ層の形成は、他の多くの方法(例えば、重量種の注入又はベース基板3の表面層の多孔質化)により実現されるようになっていてもよい。
【0046】
任意選択として、ベース基板3には、電荷トラップ層2の形成に先立って、例えば酸化又はある厚さの酸化物の堆積により誘電体薄層が形成されていてもよい。
【0047】
反り補償層を提供する実施形態の場合、この第1のステップには、トラップ層の形成の前に、補償層をベース基板のすべての露出面に形成する第1の後続サブステップを含む(
図3A及び
図3B)。前述の入手性及びコストという同じ理由から、補償層32は、例えば800~1100℃の温度でシリコンベース基板3を熱酸化することにより形成された酸化ケイ素で構成されていてもよい。
【0048】
図3Cに示す後続サブステップにおいて、補償層32は、トラップ層2及び誘電体層4の形成に先立って、前面31から少なくとも一部が除去される。このサブステップは特に、前面31の研磨により実行されるようになっていてもよい。電荷トラップ層が形成される誘電体薄層を構成するため、ベース基板の前面31の補償層32の一部を保持することも考えられる。
【0049】
この層がベース基板3の主面31及び背面33それぞれに存在することで、補償層32に存在する応力は釣り合う。少なくとも背面33に補償層32を保持しつつ主面31から層32を除去するサブステップでは、結果としてこのバランスが崩れ、ベース基板3が反ることになる。したがって、補償層32が圧縮歪みを受ける場合、ベース基板3は、その上にわずかに凹んだ形状を与える負の曲率を示すことになる。
【0050】
このため、一例として、ベース基板3がシリコンで構成され、従来の650ミクロンのオーダーの厚さを有する場合は、熱酸化シリコンで構成された補償層32を背面33のみにおよそ600nmの厚さで保持すると、-110μmのオーダーの凹曲率が生じることになる。この凹曲率によって、トラップ層及び誘電体層による変形の少なくとも一部を補償可能となる。
【0051】
したがって、補償層32の厚さは、電荷トラップ層2及び誘電体層4の形成後にキャリア基板が予め定められた許容曲率を示すように、これらの層の目標厚さに従って決定される。この許容曲率は、直径300mmの基板の場合に最大で100ミクロン(好ましくは、最大で60ミクロン又は40ミクロン)であってもよく、この最大値では、従来の装置を用いたキャリア基板の取り扱い及び処理が可能となる。補償層32の厚さは通常、500nm~1000nmである。
【0052】
図3Dは、この第1のステップの完了時、すなわち、電荷トラップ層2の形成後の本実施形態のキャリア基板を示している。
【0053】
キャリア基板1を作成するプロセスの第2のステップにおいては、ベース基板に補償層が設けられているか否かに関わらず、誘電体層4が電荷トラップ層2に形成される。このプロセスの重要な一態様によれば、誘電体層4の形成は、この誘電体層4の堆積及びイオンスパッタリングを同時に実施する。
【0054】
このような誘電体層を形成する技術は、トラップ層2及び可能性として補償層32が設けられたベース基板3をHDP CVD(高密度プラズマ化学気相成長)装置のチャンバに配置することにより実行されるようになっていてもよい。
【0055】
このようなチャンバには、当該チャンバの上部に配置され、(例えば、周波数がおよそ13MHzの)RF源による励起によって、(1010~1012個/cm3のオーダーの)非常に高い密度で存在する電子及びイオンが抽出され得るプラズマを形成するためにプラズマ源が設けられている。チャンバに導入された基板は、当分野において「バイアス源」と称することが多い(例えば、周波数がおよそ2MHzの)第2のRF源に接続された第2の電極を構成するキャリアに配置され、基板の露出面へのイオン及び電子の投射によってこの表面を軽くエッチング(スパッタリング)する効果が得られる。第1及び第2のRF源は、(直径300mmの円形ウェハの形態の基板を受容することを意図した装置の場合)通常1000W~10000Wの電力で起動する。前駆体ガスがチャンバに導入されると、基板の露出面上での相互反応によって、その上に誘電体層が徐々に形成される。チャンバは、注入ガス及び反応残留種を循環させて当該チャンバから抽出する吸引ポンプを用いることにより、1mTorr又は数十mTorrのオーダーの非常に低い圧力に保たれる。また、チャンバは、通常200℃~450℃の比較的低い温度に保たれる。こうして、酸化ケイ素の層を形成するには、ケイ素を含むガス、酸素を含むガス、及び不活性ガス(例えば、アルゴン又はヘリウム)がチャンバに導入される。チャンバのパラメータ、特に、流入ガス流及びRF源電力を制御することによって、チャンバにおける誘電体層の形成過程で同時に発生する堆積効果及びスパッタリング効果を制御することができ、その蒸着/スパッタリング比は1~10、好ましくは2~5である。この複合効果によって、基板の表面に存在し得るトポロジーが補償され、特に均一で滑らかな層が形成される傾向にある。この点、分子結合により接合可能な表面を得るために、この表面は、10ミクロン×10ミクロンの測定領域で0.5nmRMS(二乗平均平方根)未満の粗さを示す必要があることが想起される。特に驚くべきこととして、特に200nm超の比較的厚い誘電体層の場合は、このような形成プロセスによって、この低粗度の要求が満たされ得る。具体的に、HDP CVD装置の通常の使用において、形成される層は、相当なアスペクト比を示すトポロジーパターンを埋めることを目的としており、これらの堆積には必ず研磨ステップが後続することが想起される。したがって、電荷トラップ層に誘電体層を形成することにより、10ミクロン×10ミクロンの測定領域で0.5nmRMSという低い表面粗さを示す層が形成されるとは考えられていなかった。
【0056】
したがって、キャリア基板1を作成するプロセスに戻ると、このプロセスには、このような堆積及びイオンスパッタリング同時技術の実施による誘電体層4の形成を含む。好ましい一実施態様において、誘電体層4は、酸化ケイ素から成る。この場合、サイズが300mmのキャリア基板1の場合は、チャンバに導入されるガスがシラン(SiH4)、酸素、及びアルゴン(又は、ヘリウム等の別の不活性ガス)含み、質量流量が20~80sccm(標準立方センチメートル/分)であってもよい。RF源の電力は、1000W~5000Wとなるように選定され得る。誘電体層4は、300℃~450℃、好ましくは350℃~400℃の温度で形成され、チャンバの圧力は、大気圧未満、好ましくは5mTorr未満に保たれる。これらのパラメータは、好ましくは2~5の堆積/スパッタリング比を規定するように制御され得る。
【0057】
当然のことながら、チャンバに導入されるガス(本例では、酸素の代わりにN2、NH3、又はN2O)の性質を改質し、プロセスの他のパラメータを調整することによって、酸化ケイ素層以外の誘電体層4(例えば、窒化ケイ素層又は酸窒化ケイ素層)を形成するために選ぶことができる。
【0058】
特に、酸化ケイ素の第1の基本層並びに酸窒化ケイ素若しくは窒化ケイ素の第2の基本層で形成された少なくとも1つの交互層を含む誘電体層4を形成するように、チャンバに流入するガス流を制御することができる。このため、特定の一実施態様においては、主に酸化ケイ素で形成された誘電体層の厚みに酸窒化ケイ素又は窒化ケイ素の層が埋め込まれていてもよい。このようにして、誘電体層4内に組み込まれたバリア層が形成され、このバリアによれば特に、最終基板を製造する後続ステップにおいて、誘電体層の深さ方向における水素等の特定種の拡散を制限可能となる。この酸窒化ケイ素又は窒化ケイ素のバリアは、誘電体層の自由面の近く(例えば、酸化ケイ素の表面層の10nm~50nm下側)に配置されているのが有利である。
【0059】
いずれにせよ、誘電体層4の厳密な性質に関わらず、堆積チャンバは、選定厚さの誘電体層4を形成するのに十分長く動作し続けることになる。本明細書の背景において、この厚さは比較的厚く(例えば、200nm超)、200nm~1ミクロン或いは10ミクロンが有利である。補足的な一例として、400nmの厚さの誘電体層4を形成することが問題となる場合がある。
【0060】
本出願人が行ったテストによって、このような400nmの酸化ケイ素層を直径300mmの円形ウェハ状の多結晶シリコンのトラップ層2に形成することで、最終基板Sの形成に特に適した特性を有するキャリア基板1を作成可能となることが示されている。
【0061】
したがって、特に意外なことに、前述の通り、このキャリア基板1の露出面すなわち酸化ケイ素で構成された誘電体層4の自由面は、10ミクロン×10ミクロンの測定領域及び30ミクロン×30ミクロンの測定領域で2オングストロームRMS(二乗平均平方根)未満の表面粗さを示した。この粗さは、多結晶シリコンで構成されたトラップ層を研磨ステップにより粗さを整えた後に酸化させて得られる粗さに類似する。これは、分子結合によって接合するステップに十分適合する低粗度である。このように、誘電体層4を形成する提案のプロセスは、研磨ステップを省略可能であるため、キャリア基板1を作成するプロセスが簡素化され得る点において非常に有利である。
【0062】
また、酸化ケイ素の誘電体層4と多結晶シリコンのトラップ層との間の界面が(同じ10ミクロン×10ミクロン及び30ミクロン×30ミクロンの測定領域で)2オングストロームRMS未満の粗さを示す一方、多結晶シリコンのトラップ層の酸化により形成された同じ400nmの厚さの酸化ケイ素の誘電体層は、50オングストロームRMSのオーダーの粗さを示した。
【0063】
誘電体層4を形成するプロセスは、400℃未満で380℃前後の比較的低い温度で実行され、酸化ケイ素の誘電体層が形成される。電荷トラップ層2の再結晶化及び電気トラップの喪失はこのように回避されるが、これは、この層が固相再エピタキシによって高温に曝された場合に起こる可能性がある。
【0064】
また、提案の技術に係る誘電体層4の形成では、多結晶シリコンのトラップ層の酸化による変形(150ミクロンのオーダー)と比較して、キャリア基板1の変形が大きく抑えられる(400nmの酸化ケイ素層が設けられた300mmのキャリア基板1で100ミクロンのオーダー)。上記と同様に、この特性によれば、本発明に係るプロセスによって得られるキャリア基板1は、分子結合によって接合するステップとの適合性がはるかに高くなる。この特性はキャリア基板に補償層が設けられている場合にさらに改善されるが、この層の厚さは、誘電体層4と、それ程ではないにせよ、電荷トラップ層と、によってもたらされる変形を厳密に補償するように選定され得る。本実施形態は、誘電体層が相当な厚さ(600nm超)を示す場合に特に有用である。
【0065】
また、キャリア基板1を作成するプロセスは、誘電体層4をアニールするステップを含み得ることに留意されたい。このアニーリングは、脱気又は高密度化アニーリングと称するが、中性雰囲気中で実行されるのが有利である。これは、1時間未満(例えば、30分)の比較的短い時間にわたって、誘電体層4の堆積温度よりも高く、好ましくは950℃未満の温度で実行される。このアニーリングの時間及び温度は、トラップ層2の再結晶化を回避又は少なくとも制限するように選定されることになる。このアニーリングステップは、キャリア基板の曲率に影響を及ぼす可能性があるため、補償層の厚さの決定において考慮されることになる。
【0066】
最終基板の製造
上記提示の作成プロセスが完了すると、少なくとも1つのトラップ層2及び1つの誘電体層4がベース基板3に連続して配置されたキャリア基板1が得られる。また、キャリア基板は、例えば600nmの厚い誘電体層が存在する場合でも、この基板の曲率を100ミクロン以下(例えば、100~60ミクロン)に保ち得る補償層32を具備していてもよい。
【0067】
前述の通り、キャリア基板1は、転写により薄層5を受容して最終基板Sを構成することが意図される。キャリア基板1は、(特に、表面粗さ及び変形に関して)このような薄層5の受容に適した特性を示す。
【0068】
それ自体よく知られているように、この転写は通例、好ましくは分子結合によって、ドナー基板の自由面をキャリア基板1に接合することにより実現される。誘電体層4がキャリア基板1に形成済みであることから、ドナー基板自体には、このような誘電体層を設ける必要がない。それにも関わらず、このドナー基板には、(例えば、150nmよりも薄い)誘電体薄層が設けられていてもよい。ただし、いずれにせよ、この厚さは常に、キャリア基板1に形成された誘電体層4によってこの厚さの一部が与えられることになるため、最終基板Sの誘電体層4の厚さよりもはるかに小さくなる。したがって、ドナー基板は、意図的に形成された誘電体表面層を持たないのが好ましい。本明細書の上記項において記載した通り、ドナー基板の性質は、薄層5の所望の性質に従って選定される。したがって、ドナー基板は、単結晶半導体(例えば、シリコン)で形成された基板であってもよいし、圧電材料で形成された基板又はこのような圧電材料の表面層を備えた基板であってもよい。
【0069】
この接合ステップの後は、薄層5を形成するため、ドナー基板の厚さが低減される。この低減ステップは、機械的又は化学的薄化によって実行されるようになっていてもよい。ただし、本明細書の背景においては、キャリア基板1の有利な特性を最大限に活用するため、本願の導入において説明した通り、例えばスマートカット(商標)技術の原理に従って、事前に導入された弱化平面での分割によりドナー基板の厚さが低減される。この弱化平面は、ドナー基板の自由面とともに、薄層5を規定する。
【0070】
ドナー基板が表面誘電体層を有さない(又は、厚さが比較的小さな層を有する)のが好ましいため、最終基板Sが200nm以上の厚い誘電体層4を示す場合であっても、弱化平面を形成するために注入される種の線量及びエネルギーは、妥当な値に保たれ得ることに留意されたい。
【0071】
薄層を転写しても応力の釣り合いは変わらないため、この段階で最終基板は、キャリア基板と非常に類似した曲率を示す。
【0072】
この薄化ステップ、好ましくは分割ステップの後は、研磨ステップ、還元雰囲気若しくは不活性雰囲気下での熱処理、並びに犠牲酸化等、薄層5を仕上げるステップが厚さ低減ステップの後に実行されるようになっていてもよい。
【0073】
ドナー基板が単なる基板である場合、すなわち、集積デバイスを含まない場合は、「On-Insulator」最終基板Sがこのように形成され、薄層5は、本発明に係るキャリア基板1を構成する未加工材料層となる。そして、この最終基板Sは、
図4に示すように、集積デバイス又はフォトニックデバイスの構成に用いられるようになっていてもよい。ドナー基板が予め処理され、その表面に集積デバイスが形成されている場合は、このプロセスの最後に、これらのデバイスを備えた薄層5が得られる。
【0074】
当然のことながら、本発明は、記載の実施態様に限定されず、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、改良が可能である。
【国際調査報告】