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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】打錠アルファ-アルミナ触媒支持体
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/04 20060101AFI20230817BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20230817BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230817BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20230817BHJP
   C07D 301/08 20060101ALI20230817BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
B01J21/04 Z
B01J37/00 C
B01J37/08
B01J32/00
C07D301/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022579953
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021067503
(87)【国際公開番号】W WO2021260185
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20182584.1
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20182577.5
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20182569.2
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スン ユン
(72)【発明者】
【氏名】カルポフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルスドルフ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】デュイッカーツ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】天川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバッハ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】カラス,カール シー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA05
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA12
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA08C
4G169BA21C
4G169BB05C
4G169BB10C
4G169BB15C
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC32A
4G169BC64A
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169BE01C
4G169BE08C
4G169CB08
4G169DA05
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC18X
4G169EC18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FB33
4G169FB64
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC05
4G169FC07
4G169FC08
4H039CA42
4H039CF10
(57)【要約】
打錠触媒支持体は、少なくとも85wt.-%のアルファ-アルミナ含有量、水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.40mL/gの細孔容積、及び0.5から5.0m2/gのBET表面積を特徴とする。打錠触媒支持体は、高い幾何学的精度で得られ、高い全細孔容積を提示し、したがって多量の銀の含浸が可能となる一方、触媒活性種、詳細には金属種を最適に分散させるように十分に大きい表面積を呈するアルファ-アルミナ触媒支持体である。本発明は、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を生成する方法であって、i)無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の遷移アルミナを含む易流動性供給混合物を形成するステップと、ii)易流動性供給混合物を打錠して、圧密体を得るステップと、iii)圧密体を、少なくとも1100℃、好ましくは少なくとも1300℃、より好ましくは少なくとも1400℃、とりわけ少なくとも1450℃の温度にて加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を得るステップと、を含む、方法をさらに提供する。本発明は、無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、判定して少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する遷移アルミナを含む、易流動性供給混合物の打錠により得られる圧密体にさらに関する。本発明は、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体に堆積させた、触媒の合計重量に対して少なくとも15wt.-%の銀を含む、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するための成形された触媒体にさらに関する。本発明は、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法であって、エチレン及び酸素を、成形された触媒体の存在下で反応させるステップを含む、方法にさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも85wt.-%のアルファ-アルミナ含有量、水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.40mL/gの細孔容積、及び0.5から5.0m2/gのBET表面積を特徴とする、打錠触媒支持体。
【請求項2】
水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1μm未満の直径を有する細孔に含有される細孔容積が、全体の細孔容積の5%未満を構成する、請求項1に記載の触媒支持体。
【請求項3】
少なくとも1本の通路が、第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する、請求項1又は2に記載の触媒支持体。
【請求項4】
第1の表側の面及び第2の表側の面の少なくとも1つが湾曲している、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒支持体。
【請求項5】
支持体が、平均高さから5%以下の試料標準偏差sを有する高さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複数の触媒支持体。
【請求項6】
支持体が、平均外径から1%以下の試料標準偏差sを有する外径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複数の触媒支持体。
【請求項7】
打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を生成する方法であって、
i)無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の遷移アルミナを含む易流動性供給混合物を形成するステップと、
ii)易流動性供給混合物を打錠して、圧密体を得るステップと、
iii)圧密体を、少なくとも1100℃、好ましくは少なくとも1300℃、より好ましくは少なくとも1400℃、とりわけ少なくとも1450℃の温度にて加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を得るステップと、を含む、方法。
【請求項8】
遷移アルミナが、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧密体を、加熱処理前に乾燥させる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
遷移アルミナが、ガンマ-アルミナ、デルタ-アルミナ及びシータ-アルミナから選択される相、特にガンマ-アルミナ及びデルタ-アルミナから選択される相を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
易流動性供給混合物が、無機固形分に対して、アルミナ水和物を、多くとも40wt.-%の量で含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルミナ水和物が、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト及び/又は擬ベーマイト、好ましくはベーマイト及び/又は擬ベーマイトを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
易流動性供給混合物が、細孔形成材料をさらに含み、細孔形成材料が、好ましくは熱分解性材料、焼却材料及び有機ポリマーから選択される、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細孔形成材料が、水溶性細孔形成剤から、好ましくはシュウ酸、マロン酸、重炭酸アンモニウム及び/又は炭酸アンモニウムから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
易流動性供給混合物が、潤滑剤をさらに含み、潤滑剤が、好ましくはグラファイト、ステアリン酸及び/又はステアリン酸アルミニウムから選択される、請求項7から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
易流動性供給混合物を打錠することにより得られる圧密体であって、易流動性供給混合物が、無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、判定して少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する遷移アルミナを含む、圧密体。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の打錠アルファ-アルミナ触媒支持体又は請求項7から15のいずれか一項に記載の方法で得られた打錠アルファ-アルミナ触媒支持体に堆積させた、触媒の合計重量に対して少なくとも15wt.-%の銀、好ましくは15から70wt.-%の銀、より好ましくは20から60wt.-%の銀、最も好ましくは25から50wt.-%又は30から50wt.-%の銀を含む、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するための成形された触媒体。
【請求項18】
成形された触媒体が、成形された触媒体の合計重量に対して、レニウム、好ましくは400から2000ppmのレニウムを含む、請求項17に記載の成形された触媒体。
【請求項19】
エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法であって、エチレン及び酸素を、請求項17又は18に記載の成形された触媒体の存在下で反応させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打錠触媒支持体、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を生成する方法、易流動性供給混合物の打錠により得られる圧密体、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するための成形された触媒体、及びエチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ(Al2O3)は、多くの不均一触媒プロセス用の支持体及び/又は触媒の至る所に存在する。これらの触媒プロセスの一部は、高温、高圧及び/又は高水蒸気圧の条件下で発生する。例えば、エチレンのエチレンオキシドへの産業的気相酸化では、多孔質アルミナ支持体に堆積させた銀を含む不均一触媒が典型的には使用される。
【0003】
アルミナが、いくつかの結晶性相、例えばアルファ-アルミナ(α-アルミナ又はα-Al2O3として示されることが多い)、ガンマ-アルミナ(γ-アルミナ又はγ-Al2O3として示されることが多い)、並びにいくつかのアルミナ多形体を有することは周知である。アルファ-アルミナは、高温にて最も安定であるが、最も小さい表面積を有する。
【0004】
ガンマ-アルミナは、きわめて大きい表面積を有する。これは、一般的に、アルミナ分子が、さほど高い密度で充填されていない結晶性構造であるためと考えられている。ガンマ-アルミナは、活性アルミナ又は遷移アルミナとして公知の系列の一部を構成し、これは、異なる多形体への遷移をきたし得る一連のアルミナの1つであるためそのように言われる。残念ながら、ガンマ-アルミナが高温に加熱された場合、原子の構造は崩れ、その結果、表面積は実質的に減少する。アルミナの最も高密度の結晶形態は、アルファ-アルミナである。
【0005】
アルファ-アルミナ支持体は、典型的には、アルファ-アルミナを含む前駆体材料の押出、及び後続の押出物の加熱処理により得られる。例えば、WO2006/133183A2の範例となる担体は、場合により少量のベーマイトを含むアルファ-アルミナ前駆体材料の押出物から得られたが、この押出物は乾燥させ、1400℃超の温度にて加熱した。
【0006】
押出プロセスでは、粉末状前駆体材料を、液体及びさらなる成分、例えば細孔形成剤、解膠剤及び助剤と混合して、例えば、混練機又は混合機を使用してペースト又はドウを形成する。そのようなプロセスでは、成分材料の凝集体又は粒子サイズを制御することが困難である。これは、混合に用いられる力によるだけではなく、押出ステップそのものにもよる。そのような押出プロセスを実験室規模から生産規模の設備へと拡大しようと試みると、厳しい難問に直面する可能性がある。
【0007】
一般的に、ペースト又はドウも経時変化する傾向がある。これは、性質が、産業的生成プロセスの持続時間にわたって変化し得、このため、押出プロセス及び得られた生成物の物理的性質を制御することが困難になることを意味する。鉱酸、例えば硝酸又は塩酸が解膠剤として使用される場合、他の問題が生じる。詳細には、そのような鉱酸は、腐食の問題を引き起こし得る、又は成形されたアルミナ体の後続の加熱処理において行われる追加の措置を必要とし得る。
【0008】
押出中に、ペースト又はドウは、ピストンプレス又は押出機を介して、ダイを通して押圧されて、2つの寸法で、すなわち、その断面により定義される成形体が得られる。第3の寸法、すなわち成形体の長さは、押出方向に垂直に成形体を切断することにより、又は、角度が付けられる方法で制御され得る。押出物は、好適には、湿ったままでも望ましい長さに切断する。押出により生成される成形体の間では、比較的広い分布の長さが観察されることが多い。様々な切断デバイスが公知であり、産業に使用されている。しかし、長さ分布を制御するために、切断回数及び押出速度のいずれも、厳密な制御及び調整を必要とする。より複雑なジオメトリー、例えば中空円筒又は1つ超の開口穴を有する形状を有する多数の成形体が押し出される場合、切断が行われる成形体面の形状の変形を避けることも困難である。成形体は、切断位置で容易にねじ曲がる、又は開口は変形し、若しくは傷付き、部分的に閉じられるようになる。
【0009】
さらに、押出ペーストの可鍛性の性質のため、押出プロセスが押出物を屈曲又はカールさせることにより、理想的均整からの異常を誘導する。成形体の一表面から反対面へと伸びる穴を有する成形体のケースでは、これらの異常は、有効な断面における劣化を引き起こす。
【0010】
そのような異常は、典型的にはエチレンのエチレンオキシドへの酸化に使用される気相反応器における圧力損失の増大を誘導するので望ましくない。さらに、エチレンオキシドプラントの作業は、一般的に計算、例えば数値流体力学(CFD)計算に基づく。そのような計算は、触媒体が長さ及びジオメトリーにおいて著しい異常を呈する場合、信頼性が高くない。
【0011】
WO99/48606Aは、擬ベーマイト及びガンマ-アルミナの混合物を打錠すること、及び500から800℃にて後続のか焼により得られる支持体について記載している。
【0012】
WO2006/122948A1は、発熱反応における不活性材料として使用するための成形されたアルファ-アルミナ体について記載している。これらの成形体は、ガンマ-アルミナ及び擬ベーマイトの混合物から得られた圧密体の加熱処理により得られる。これらの成形体の多孔特性は、詳細に論じられていない。参考文献は、成形されたアルファ-アルミナ体の触媒担体としての使用を示唆していない。
【0013】
アルファ-アルミナの直接打錠は、おそらく高い硬度、高い脆性、乏しい塑性、及び割合に小さいアルファ-アルミナの表面積、及び遷移アルミナ又はアルミナ水和物に利用できる、性質が酸性及び塩基性の官能基が存在しないことにより、さらに困難なことがある。
【0014】
エチレンのエチレンオキシドへの、不均一に触媒される気相酸化を実行するためには、エチレン及び酸素を含むガス、例えば空気又は純粋な酸素の混合物を、一般的に、成形された触媒体の充填物が存在する反応器に配置されている複数の管を通過させる。触媒性能は、典型的には、選択性、活性、触媒選択性及び活性の寿命、並びに機械的安定性によって特徴づけられる。選択性は、望ましいオレフィンオキシドが得られる、変換されたオレフィンのモル分率である。長時間かけた選択性及び選択性の維持における改善が乏しくても、プロセス効率の観点から莫大な配当が得られる。
【0015】
効率的に利用される多孔質支持触媒の内部表面では、供給流ガスは、細孔を通して拡散して内部表面に達しなければならず、反応生成物はその表面から離れて、また触媒体から出て、拡散しなければならない。エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法では、エチレンオキシド分子の触媒体からの拡散は、触媒により誘導される望ましくない連続反応、例えばアセトアルデヒドへの異性化、続いて二酸化炭素への完全燃焼を伴うことがあり、これにより、プロセスの全体的選択性が低下する。分子の平均細孔滞留時間、ひいては望ましくない連続反応が発生する程度は、触媒の細孔構造により影響を受ける。
【0016】
したがって、触媒の性能は、触媒の細孔構造により影響を受け、これは、触媒支持体の細孔構造により本質的に判定される。「細孔構造」という用語は、細孔のサイズ、サイズの分布、形状及び相互接続性を含む、支持体マトリックス内の空隙空間の配置に関すると理解される。これは、様々な方法、例えば水銀ポロシメトリー、窒素収着又はコンピューター断層撮影法により特徴付けられる。H. Giesche、「Mercury Porosimetry: A General (Practical) Overview、Part. Part. Syst. Charact. 23(2006年)、9~19頁は、水銀ポロシメトリーに関して役立つ見識を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2006/133183A2
【特許文献2】WO99/48606A
【特許文献3】WO2006/122948A1
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】H. Giesche、「Mercury Porosimetry: A General (Practical) Overview、Part. Part. Syst. Charact. 23(2006年)、9~19頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、高い幾何学的精度を有するアルファ-アルミナ触媒支持体を提供することである。高い幾何学的精度により、例えばエチレンオキシド生成に使用される商用の多管式反応器における、反応器のより均質な負荷、及び反応器管を通した圧力の下落が可能となる。アルファ-アルミナ触媒支持体は、高い全細孔容積も提示し、したがって、多量の銀での含浸を可能する一方、触媒活性種、詳細には金属種を最適に分散させるように十分に大きい表面積を呈するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、少なくとも85wt.-%のアルファ-アルミナ含有量、水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.4mL/gの細孔容積、及び0.5から5.0m2/gのBET表面積を特徴とする、打錠触媒支持体、すなわち、打錠により得られる触媒支持体に関する。
【0021】
細孔構造は、支持体のマトリックスを構成する顆粒のサイズ、サイズ分布及び形状を含む要因により判定される。低いかさ密度を有する高度に多孔の遷移アルミナ、特に比較的高い細孔容積及び大きい細孔径を有する遷移アルミナは、有益な細孔構造を有するアルファ-アルミナ触媒支持体を生成するのに有用な出発材料であることを今般見出した。そのような遷移アルミナは、打錠プロセスを経由して成形して、高い全体の細孔容積を有する幾何学的に正確な支持体を得るのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
適用可能な場合、本発明の態様、すなわち、打錠触媒支持体、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を調製する方法、易流動性供給混合物の打錠により得られる圧密体、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するために成形された触媒体、又はエチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法の1つについて記載されているすべての実施形態は、すべての他の態様にも適用されることは理解される。
【0023】
打錠触媒支持体は、水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.40mL/g、好ましくは少なくとも0.45mL/g、より好ましくは少なくとも0.50mL/g、最も好ましくは少なくとも0.55mL/gの全体の細孔容積を有する。打錠触媒支持体は、好ましくは、0.40から1.2mL/gの範囲、より好ましくは0.45から1.0mL/gの範囲、最も好ましくは0.50から0.80mL/gの範囲の、全体の細孔容積を有する。水銀ポロシメトリーは、Micrometrics AutoPore V 9600水銀ポロシメーター(140度の接触角、485ダイン/cm Hg表面張力、61,000psia最大ヘッド圧力)を使用して行われ得る。水銀ポロシメトリーは、本明細書では特に定めのない限りDIN 66133に従って判定される。
【0024】
好ましくは、打錠触媒支持体のかなりの比率の全体の細孔容積が、0.1から1μmの範囲の直径を有する細孔に含有される。理論に束縛されることを望まないが、0.1から1μmの範囲の直径を有する細孔は、触媒種の適用後に、例えば含浸を経由して、触媒変換に特に好適な環境を備えると考えられている。細孔は、大きい表面積を得るのに十分なほど小さい一方、出発材料及び得られた生成物の迅速な拡散を可能にし、したがって、そのような触媒支持体に基づく触媒の高い活性及び選択性を可能にするのに十分なほど大きい。大きい直径を有する細孔は、全体の表面積に顕著に寄与せず、したがって、効率的な反応空間は少なくなると考えられている。0.1μmより小さい直径を有する細孔は、得られた生成物の拡散を妨げ、これにより生成物の触媒種への曝露が延長され、連続反応が誘導され、したがって選択性が低下すると考えられている。
【0025】
打錠触媒支持体は、典型的には、水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1から1μmの範囲の直径を有する、全体の細孔容積の少なくとも25%の細孔に含有される細孔容積を有する。好ましくは、打錠触媒支持体は、0.1から1μmの範囲の直径を有する、全体の細孔容積の少なくとも30%の細孔、より好ましくは全体の細孔容積の少なくとも40%、最も好ましくは全体の細孔容積の少なくとも45%、例えば全体の細孔容積の少なくとも50%に含有される細孔容積を有する。
【0026】
好ましくは、水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1μm未満の直径を有する細孔に含有される細孔容積は、触媒支持体の全体の細孔容積の5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1%未満を構成する。
【0027】
打錠触媒支持体は、0.5から5.0m2/gの範囲のBET表面を有する。好ましくは、打錠触媒支持体は、0.5から4.5m2/gの範囲、より好ましくは1.0から4.5m2/g、最も好ましくは1.0から4.0m2/gのBET表面積を有する。本明細書では、BET表面積は、77Kにて実施される窒素の物理収着を使用してDIN ISO 9277に従って判定される。
【0028】
打錠触媒支持体は、支持体の合計重量に対して、少なくとも85wt.-%、好ましくは少なくとも90wt.-%、より好ましくは少なくとも95wt.-%、最も好ましくは少なくとも97.5wt.-%のアルファ-アルミナを含む。アルファ-アルミナの量は、例えばX線回折分析を介して判定され得る。
【0029】
一実施形態では、打錠触媒支持体が、支持体の合計重量に対して、少なくとも85wt.-%のアルファ-アルミナを含み、支持体は、
- 水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.40mL/gの全体の細孔容積、
- 0.5から5.0m2/gの範囲のBET表面積、
- 水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1μm未満の直径を有する、全体の細孔容積の5%未満の細孔に含有される細孔容積、及び
- 水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1から1μmの範囲の直径を有する、全体の細孔容積の少なくとも25%の細孔に含有される細孔容積を有する。
【0030】
打錠触媒支持体の形状は、従来から公知の、パンチアンドダイタイプの打錠プレスにより利用可能な限り、特に限定されない。打錠触媒支持体の形状は、一般的に、それぞれが、ダイ空洞の内部壁に相当する円周面、並びに、パンチの操作ヘッドに相当する表側上面及び表側下面で構成されるようにする。打錠プロセス中に上部パンチ及び下部パンチが接近することも可能である。このケースでは、個別の円周面及び表側の面が形成されない。したがって、例えば球形又は楕円形の外部形状を有する打錠触媒支持体が得られる。
【0031】
好ましい実施形態では、打錠触媒支持体は、第1の表側の面、第2の表側の面及び円周面を有し、円周面は、触媒支持体の縦軸に本質的に並行して伸張する。触媒支持体の縦軸は、第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する軸であると理解される。典型的には、打錠触媒支持体は、Cn-対称、例えばC2-からC7-対称である、又は縦軸に対して完全な回転対称性を有する。
【0032】
触媒支持体の縦軸に本質的に並行して伸張する円周面は、理想的なジオメトリーからの多少の偏差、例えば円周面のわずかな円錐形を含むと理解される。触媒支持体の縦軸に「本質的に並行して」伸張する円周面は、円周面が、5°未満の偏差、好ましくは2.5°未満の偏差、より好ましくは1°未満の偏差で縦軸に平行に伸張することを意味すると理解される。
【0033】
別の実施形態では、打錠触媒支持体のジオメトリーは、円周面がもはや縦軸に並行に伸張しないように変更され得、様々な又は変動する角度の、円筒及び/又は湾曲又は円錐形セグメントで構造化され得る。例えば、ジオメトリーは、外側表面の幾何学的形状が、もはや円形筒のものに相当せず、円錐台又は円錐球形(frustosphere)のものに少なくとも部分的に相当するように変更され得る。関連するダイは、上部パンチがスライド式である上部円形筒、下部パンチがスライド式である、円形筒のものより小さい断面積を有する下部円形筒、及び下から上向きに広がる中間セクションを有する。下部パンチを持ち上げることによりダイ穴から形成される成形された前駆体の除去において、幾何学的状態が変化するため、ダイ穴の内部壁と、成形された前駆体の外部表面との間の摩擦は、本質的に取り除かれ得る。
【0034】
一実施形態では、少なくとも1本の通路は、打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する。成形体が複数の通路を含む場合、通路の縦軸は典型的には平行である。通路の円周面は、好ましくは通路の縦軸に「本質的に平行」である。これは、通路が円筒ではなく、少なくとも部分的に円錐形である実施形態を含むと理解される。そのようなわずかな円錐形は、打錠プロセスにおいてより良好な圧密体の突出しを可能とするのに望ましいことがある。通路の円周面は、好ましくは、5°未満の偏差、好ましくは2.5°未満の偏差、より好ましくは1°未満の偏差で縦軸に平行に伸張する。
【0035】
打錠触媒支持体は、フラットトップ型であり得る、又はドーム型端部を有し得る、すなわち、第1の表側の面及び第2の表側の面の少なくとも1つは湾曲している。ドームの、触媒支持体の直線部に対する比(すなわち、直線部の高さで割ったドームの長さ)は、0.10から0.40の範囲であり得る。湾曲した表側の面、例えばドーム型の表側の面は、支持体の角の鋭さを低下させ、摩耗を少なくし、したがって、触媒の粉塵を少なくする。
【0036】
一実施形態では、触媒支持体は、中空円筒形状又は環形の打錠物であり、少なくとも1つの表側の面、好ましくは両方の表側の面は、外縁に丸みを付けられている。一実施形態では、触媒支持体は、打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する中央通路を有する、中空円筒の形状又は環形の打錠物であり得、少なくとも1つの表側の面は、外縁及び中央通路の縁の両方に丸みを付けられており、その結果、触媒支持体は、直角の縁を含まない。そのような形状は、例えばUS6,518,220B2に記載されている。
【0037】
別の実施形態では、触媒支持体は、例えばUS9,409,160B2に記載されている形状であり得、成形された触媒体が、基部、円筒表面、円筒軸、及び円筒軸に平行に走る少なくとも1つの連続した開口(打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する通路)を有する円筒の形態を有し、円筒の基部は、少なくとも4つの突出部を有する。
【0038】
触媒支持体は、例えばWO2012/091898A2に記載されている、少なくとも3つの突出部、第1の端部、第2の端部、端部の間の壁並びに端部及び壁の交点における不均一な遷移半径を有する形状であってもよい。
【0039】
好ましい実施形態では、触媒支持体は、打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する1本超の通路を有する。そのような形状は、以下に記載されているように当業界で公知である。
【0040】
例えば、US5,861,353Aは、円筒粒体の形態の、各粒体が、互いに、また粒体の軸に実質的に平行であり、互いに実質的に等距離の軸を有する少なくとも3つの貫通穴(打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する通路)を提示することを特徴とする触媒及び触媒担体について記載している。
【0041】
US9,138,729B2は、縦軸を有する本質的円筒体を有する成形された触媒について記載しており、円筒体は、体部の円筒の軸に本質的に平行であり、体部を貫通する、少なくとも2つの平行な内部孔(打錠触媒支持体の第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する通路)を有し、内部孔は、円形又は楕円形の断面を有する。
【0042】
WO2020/108872A1は、耐火性多孔支持体に堆積させた銀を含む、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するための成形された触媒体であって、第1の表側の面、第2の表側の面及び円周面、円筒高さに沿って円筒周囲を走って、n葉構造を形成し、nが2、3、4、5又は6であり、n本の通路が、第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張し、各通路が1葉に割り付けられ、隣接する通路が互いに本質的に等距離に配置されるn個の空隙空間を有する円筒構造、n回回転対称、2つの隣接する通路の間の、1.0から2.0mmの範囲の最短距離A、並びに各通路と円周面との間の、1.1から2.0mmの範囲の最短距離Bを有する、成形された触媒体について記載している。
【0043】
打錠プロセスは、触媒支持体の正確な製造、すなわち、外形寸法において比較的少ない偏差を有する複数の触媒支持体の製造を可能とする。そのような支持体は、幾何学的にほぼ同一であり、これにより、反応プロセスにおける挙動の計算可能性がより良好になり、例えば、気相触媒における圧力損失がより少なくなる。
【0044】
一実施形態では、本発明は、支持体が、平均高さから5%以下の試料標準偏差sを有する高さ(長さ)を有する、上に記載されている複数の触媒支持体を提供する。好ましくは、支持体は、平均支持体高さから5%以下の試料標準偏差sを有する高さ、最も好ましくは平均支持体高さから3%以下の試料標準偏差sを有する高さを有する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、支持体が、平均外径から1%以下の試料標準偏差sを有する外径を有する、上に記載されている複数の触媒支持体を提供する。好ましくは、支持体は、平均支持体高さから0.7%以下の試料標準偏差sを有する外径、最も好ましくは平均支持体高さから0.5%以下の試料標準偏差sを有する高さを有する。「外径」は、支持体高さに垂直の断面の外接円の直径、すなわち、支持体断面をその内側に完全に含有する最小円の直径を意味すると理解される。
【0046】
試料標準偏差sは、補正された試料標準偏差、すなわち、Besselの補正を適用した後の標準偏差と理解される。複数のn触媒支持体の試料標準偏差sは、以下のように計算され得る。最初に、n触媒支持体の平均(アベレージ)高さ及び/又は外径が判定される。各値の平均からの偏差を計算し、各偏差のその結果が二乗される。二乗された偏差の総計を、(n-1)の値で割り、生じた値の平方根が、試料標準偏差を構成する。得られた結果は、試料平均、すなわち、試料平均値で割って得られ、試料平均のパーセンテージとして表現される値に対して報告されている。これは、相対的試料標準偏差sとも呼ばれ得る。有意な結果を得るために、相当数の触媒支持体の高さ、例えば少なくとも100例の触媒支持体が判定されるべきである。
【0047】
本発明は、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を生成する方法であって、
i)無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の遷移アルミナを含む易流動性供給混合物を形成するステップと、
ii)易流動性供給混合物を打錠して、圧密体を得るステップと、
iii)圧密体を、少なくとも1100℃、好ましくは少なくとも1300℃、より好ましくは少なくとも1400℃、とりわけ少なくとも1450℃の温度にて加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を得るステップと、を含む、方法にさらに関する。
【0048】
好ましい実施形態では、得られた打錠アルファ-アルミナ触媒支持体は、上に記載されている打錠触媒支持体である。
【0049】
供給混合物は、易流動性供給混合物、すなわち粒子がくっつかない混合物である。流れ性は、Klein, K.;Seifen, Ole, Fette, Wachse、94、849頁(1968年)のKleinの容器法を使用して判定される。これは、それぞれが底に異なる開口を有する一連の流出容器を使用する方法である。テストされる材料が容器に添加され、容器の底の開口からの流出を研究する。流れ性の認定は、粉末がなお流れることができる最小の開口により判定される。1から4の番号が付けられた分類における材料は、通常、易流動性と考えられる。易流動性供給混合物の典型的な例は、粉末である。粉末は、細かさの程度において変動し得る。
【0050】
易流動性供給混合物は、無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の遷移アルミナを含む。好ましくは、易流動性供給混合物は、無機固形分に対して少なくとも60wt.-%、より好ましくは少なくとも70wt.-%、例えば少なくとも80wt.-%又は少なくとも90wt.-%、とりわけ95から100wt.-%の遷移アルミナを含む。
【0051】
「遷移アルミナ」という用語は、準安定アルミナ相、例えばガンマ-、デルタ-、イータ-、シータ-、カッパ-又はカイ-アルミナ相を含むアルミナを意味すると理解される。好ましくは、遷移アルミナは、遷移アルミナの合計重量に対して少なくとも80wt.-%、好ましくは少なくとも90wt.-%、最も好ましくは少なくとも95wt.-%、例えば95から100wt.-%の、ガンマ-アルミナ、デルタ-アルミナ及び/又はシータ-アルミナから選択される相、特にガンマ-アルミナ及び/又はデルタ-アルミナから選択される相を含む。
【0052】
遷移アルミナは、典型的には、粉末の形態である。遷移アルミナは市販されており、水和アルミニウム化合物、特に水酸化アルミニウム及びアルミニウムオキシ-ヒドロキシドの熱脱水を経由して得られる。好適な水和アルミニウム化合物は、天然に存在する化合物及び合成化合物、例えば、ギブス石、バイヤライト及びノルドストランド石のような三水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、又は、ベーマイト、擬ベーマイト及びダイアスポアのようなアルミニウムオキシ-モノヒドロキシド(AlOOH)を含む。
【0053】
水和アルミニウム化合物を徐々に脱水することにより、格子再配置が影響を受ける。例えば、ベーマイトは、約450℃にてガンマ-アルミナに変換され得、ガンマ-アルミナは、約750℃にてデルタ-アルミナに変換され得、デルタ-アルミナは、約1,000℃にてシータ-アルミナに変換され得る。1,000℃を超えて加熱した場合、遷移アルミナは、アルファ-アルミナに変換される。
【0054】
生じた遷移アルミナの形態学的な性質は主に、それらが由来する水和アルミニウム化合物の形態学的性質によって決まると考えられている。したがって、Busca、「The Surface of Transitional Aluminas: A Critical Review」、Catalysis Today、226(2014年)、2~13頁では、多彩な擬ベーマイトに由来するアルミナは、擬ベーマイトが同様の表面積(160~200m2/g)を有するにもかかわらず、様々な細孔容積及び細孔サイズ分布を有することについて記載している。
【0055】
好ましい実施形態では、遷移アルミナは、非小板結晶を含む。「非小板」という用語は、小板形態以外の任意の形態、例えば細長い形態、例として棒状若しくは針状、又は3つの空間方向すべてでおよそ同一の寸法を有する形態を指す。好ましい実施形態では、遷移アルミナは、成形された非小板結晶、例えばWO2010/068332A1で記載されている棒状結晶、又は例えばBusca、「The Surface of Transitional Aluminas: A Critical Review」、Catalysis Today、226(2014年)、2~13頁で記載されているブロック形状の結晶を含み、図2c、2d及び2eを、図2a、2b及び2fと比較して参照されたい。好ましくは、遷移アルミナの平均結晶サイズは、XRDパターンからScherrer等式を介して判定して、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも7nm、最も好ましくは少なくとも10nmである。
【0056】
高い細孔容積及び大きい表面積を有し、高い熱安定性を有する結晶性ベーマイトアルミナを得る様々な合成方法は、例えば、WO00/09445A2、WO01/02297A2、WO2005/014482A2及びWO2016/022709A1から公知である。例えば、WO2016/022709A1は、塩基性アルミニウム塩を、酸性アルミナ塩と、制御pH及び温度下で沈殿させることにより調製される、115から166Åの平均細孔径、250から350kg/m3のかさ密度及び0.8から1.1m3/gの細孔容積を有するベーマイトアルミナについて記載している。これらのベーマイトアルミナの熱処理により生成され、本特許請求の範囲で定義されている性質を有する遷移アルミナは、本発明の方法における使用に特に好適な遷移アルミナである。
【0057】
加熱処理の前に、水和アルミニウム化合物は、不純物を減少させ、高純度遷移アルミナを得ることを可能とするように、例えば、脱塩水で洗浄してよい。例えば、Chenら、J. Solid State Chem.、265(2018年)、237から243頁に従って、水熱法によりギブス石から得られる結晶性ベーマイトは、好ましくは加熱処理前に洗浄される。
【0058】
高純度遷移アルミナは、触媒支持体における不純物、例えばナトリウム又はケイ素の含有量を限定する上で好ましい。高純度遷移アルミナは、例えば、いわゆるZiegler法を介して得られ、これはALFOL法と呼ばれることもあり、その変形は、Catalysis Today、226(2014年)、2~13頁のBusca、「The Surface of Transitional Aluminas: A Critical Review」に記載されている通りである。アルミン酸塩、例えばアルミン酸ナトリウムの沈殿に基づく他の方法は、不純物、例えばナトリウムの量が比較的多い遷移アルミナを生じる傾向がある。
【0059】
本発明に使用される遷移アルミナは、好ましくは、遷移アルミナの合計重量に対して多くとも1500ppm、より好ましくは多くとも600ppm、最も好ましくは10ppmから200ppmの合計含有量のアルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウムを有する。これにより得られた遷移アルミナ及び/又は触媒支持体のアルカリ金属含有量の減少を可能にする様々な洗浄方法が公知である。洗浄は、塩基、酸、水又は他の液体での洗浄を含み得る。
【0060】
US2,411,807Aは、アルミナ沈殿物における酸化ナトリウム含有量が、フッ化水素酸及び別の酸を含有する溶液で洗浄することにより減少し得ることについて記載している。WO03/086624A1は、担体の表面からナトリウムイオンを除去する、リチウム塩水溶液での担体の前処理について記載している。US3,859,426Aは、脱イオン熱水で繰り返しすすぐことによる、耐火性オキシド、例えばアルミナ及びジルコニアの精製について記載している。WO2019/039930は、金属不純物がアルコールでの抽出により除去される、アルミナの精製方法について記載している。
【0061】
アルカリ金属以外に、他の天然に存在する不純物のレベルが、好ましくは同様に制御される。
【0062】
本発明に使用される遷移アルミナは、好ましくは、遷移アルミナの合計重量に対して多くとも2,000ppm、より好ましくは多くとも600ppm、最も好ましくは多くとも400ppmの合計含有量のアルカリ土類金属、例えばカルシウム及びマグネシウムを有する。
【0063】
本発明に使用される遷移アルミナは、好ましくは、遷移アルミナの合計重量に対して多くとも10,000ppm、好ましくは多くとも2,000ppm、最も好ましくは多くとも700ppmの含有量のケイ素を有する。
【0064】
本発明に使用される遷移アルミナは、好ましくは、遷移アルミナの合計重量に対して多くとも1,000ppm、より好ましくは多くとも600ppm、最も好ましくは多くとも300ppmの含有量の鉄を有する。
【0065】
本発明に使用される遷移アルミナは、好ましくは、遷移アルミナの合計重量に対して多くとも1,000ppm、より好ましくは多くとも400ppm、最も好ましくは多くとも100ppmの含有量の、上で言及されているものと異なる金属、例えばチタン、亜鉛、ジルコニウム及びランタンを有する。
【0066】
遷移アルミナは、好ましくは、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度を有する。「ゆるめかさ密度」という用語は、「大まかに詰められた」又は「注がれた」密度と理解される。「ゆるめかさ密度」は、したがって、定義されている機械的タップシークエンスが適用され、より高い密度が典型的には得られる「タップ密度」と異なる。ゆるめかさ密度は、好適には漏斗を介し、目盛り付きシリンダーを動かさない又は振動させないように注意して、遷移アルミナを、目盛り付きシリンダー中に注ぐことにより判定され得る。アルミナの体積及び重量が判定される。ゆるめかさ密度は、グラム単位での重量をリットル単位での体積で割ることにより判定される。
【0067】
低いゆるめかさ密度は、高多孔質及び大きい表面積を示し得る。好ましくは、遷移アルミナは、50から600g/Lの範囲、より好ましくは100から550g/Lの範囲、最も好ましくは150から500g/L、特に200から500g/L又は200から450g/Lのゆるめかさ密度を有する。
【0068】
遷移アルミナは、少なくとも0.6mL/gの細孔容積を有する。好ましくは、遷移アルミナは、0.6から2.0mL/g又は0.65から2.0mL/g、より好ましくは0.7から1.8mL/g、最も好ましくは0.8から1.6mL/gの細孔容積を有する。
【0069】
遷移アルミナは、少なくとも15nmの中央値細孔径を有する。「中央値細孔径」という用語は、表面積により中央値細孔径を指し示すために本明細書で使用され、すなわち、中央値細孔径(面積)は、累積表面積グラフの50パーセンタイルにおける細孔径である。好ましくは、遷移アルミナは、15から500nm、より好ましくは20から450nm、最も好ましくは20から300nm、例えば20から200nmの中央値細孔径を有する。
【0070】
水銀ポロシメトリー及び窒素収着は、これらの方法が多孔度及び細孔サイズ分布の判定をワンステップで可能にするため、多孔質材料での細孔構造を特徴付けるために幅広く使用される。2つの技術は、異なる物理的相互反応に基づいており、特定の範囲の細孔サイズを最適にカバーする。
【0071】
多くのケースでは、窒素収着は、特に小さい細孔では十分に正確な判定方法を構成する。したがって、遷移アルミナの細孔容積及び中央値細孔径は、窒素収着により判定され得る。それにもかかわらず、大きい細孔は、窒素収着により実際以下に表示され得る。
【0072】
窒素収着の測定は、Micrometrics ASAP 2420を使用して行われ得る。窒素多孔度は、本明細書では、特に定めのない限りDIN 66134に従って判定される。Barrett-Joyner-Halenda(BJH)細孔サイズ及び容積分析は、全体の細孔容積(「BJH脱着累積細孔容積」)及び中央値細孔径(「BJH脱着平均細孔径」)を得るために実行される。
【0073】
水銀ポロシメトリーは、Micrometrics AutoPore V 9600水銀ポロシメーター(140度の接触角、485ダイン/cm Hg表面張力、61,000psia最大ヘッド圧力)を使用して行われ得る。遷移アルミナの全体の細孔容積及び中央値細孔径では、3nmから1μmの細孔径範囲でデータが得られる。
【0074】
十分な精度に関して、遷移アルミナの報告されている細孔容積及び中央値細孔径は、水銀ポロシメトリーからの中央値細孔径が50nm未満である場合、窒素収着からのものであり、又は、遷移アルミナの報告されている細孔容積及び中央値細孔径は、水銀ポロシメトリーからの中央値細孔径が50nm以上である場合、水銀ポロシメトリーからのものである。
【0075】
結果の改ざんを避けるために、窒素収着測定及び水銀ポロシメトリーは、物理的吸着種、例えば試料からの水分を除去するように処理した試料で実行されるべきである。好適な方法は、以下に記載されている。
【0076】
遷移アルミナは、典型的には、20から500m2/gの範囲のBET表面積を有する。BET方法は、標準的な周知の方法であり、気体分子の物理的吸着により固体の表面積を測定する表面科学において幅広く使用される方法である。BET表面は、本明細書では、特に定めのない限り77Kにて実施される窒素の物理収着を使用して、DIN ISO 9277に従って判定される。「BET表面積」及び「表面積」という用語は、本明細書では、別途注記のない限り等しく使用される。
【0077】
遷移アルミナのBET表面積は、比較的大きい範囲にわたって変動し得、遷移アルミナが得られることによる水和アルミニウム化合物の熱脱水の状態を変動させて、調整できる。好ましくは、遷移アルミナは、20から200m2/gの範囲、より好ましくは50から200m2/g又は50から150m2/gのBET表面積を有する。
【0078】
好適な遷移アルミナは市販されている。いくつかの例では、そのような市販の遷移アルミナは、「中多孔質アルミナ」、又は特に「高多孔質アルミナ」として分類される。好適な遷移アルミナは、Puralox(登録商標)TH及びPuralox(登録商標)TMシリーズ、いずれもSasolからの製品、及びUOPからのVersal VGLシリーズの製品を含む。
【0079】
遷移アルミナは、その市販(「ミリングされていない」)形態で使用され得る。アルミナの商用形態は、個々の粒子の凝集体(二次粒子)又は顆粒(一次粒子)を含む。例えば、25μmの平均(二次)粒子径(例えばD50)を有する商用アルミナ粒子は、サブミクロンサイズの一次粒子を含み得る。本明細書で言及される平均粒子径(D50)は、アルミナ二次粒子の粒子径(D50)を意味すると理解される。
【0080】
ミリングされていない遷移アルミナ粉末は、典型的には、10から100μm、好ましくは20から50μmのD50粒子径を有する。さらに、粒子を望ましいサイズに崩壊させるために摩砕を施された遷移アルミナが使用され得る。好適には、遷移アルミナは、液体の存在下でミリングされ得、好ましくは懸濁液の形態でミリングされる。或いは、摩砕は、乾式ボールミリングにより影響を受け得る。ミリングした遷移アルミナ粉末は、典型的には、0.5から8μm、好ましくは1から5μmのD50粒子径を有する。遷移アルミナの粒径は、水を分散媒体として使用して、レーザー回折粒径分析器、例えばMalvern Mastersizer 2000により測定され得る。方法は、超音波処理により粒子を分散させ、したがって二次粒子を一次粒子に細かくするステップを含む。この音波処理を、D50値におけるさらなる変化が観察されなくなるまで、例えば音波処理の3分後まで、続ける。
【0081】
好ましい実施形態では、遷移アルミナは、遷移アルミナの合計重量に対して少なくとも50wt.-%、好ましくは60から90wt.-%の、10から100μm、好ましくは20から50μmの平均粒径を有する遷移アルミナを含む。場合により、遷移アルミナは、例えば遷移アルミナの合計重量に対して多くとも50wt.-%、好ましくは10から40wt.-%の、0.5から8μm、好ましくは1から5μmの平均粒径を有する遷移アルミナを含み得る。
【0082】
易流動性供給混合物は、無機固形分に対して、多くとも40wt.-%のアルミナ水和物を含む。好ましくは、易流動性供給混合物は、無機固形分に対して、1から40wt.-%、より好ましくは1から30wt.-%、最も好ましくは1から20wt.-%、例えば3から18wt.-%のアルミナ水和物を含む。
【0083】
「アルミナ水和物」という用語は、上に記載されている水和アルミニウム化合物、特に水酸化アルミニウム及びアルミニウムオキシ-ヒドロキシドに関すると理解される。アルミナの命名法の考察は、K. Wefers及びC. Misra、「Oxides and Hydroxides of Aluminum」、Alcoa Laboratories、1987年で見出され得る。好適な水和アルミニウム化合物は、天然に存在する化合物及び合成化合物、例えば、ギブス石、バイヤライト及びノルドストランド石のような三水酸化アルミニウム(Al(OH3)、又はベーマイト、擬ベーマイト及びダイアスポアのようなアルミニウムオキシ-モノヒドロキシド(AlOOH)を含む。
【0084】
好ましくは、アルミナ水和物は、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト、及び/又は擬ベーマイト、とりわけベーマイト及び/又は擬ベーマイトを含む。好ましい実施形態では、ベーマイト及び擬ベーマイトの合計量は、アルミナ水和物の少なくとも80wt.-%、より好ましくは少なくとも90wt.-%、最も好ましくは少なくとも95wt.-%、例えば95から100wt.-%を構成する。とりわけ好ましい実施形態では、ベーマイトの量は、アルミナ水和物の少なくとも80wt.-%、より好ましくは少なくとも90wt.-%、最も好ましくは少なくとも95wt.-%、例えば95から100wt.-%を構成する。
【0085】
好適なアルミナ水和物は市販されており、SasolからのPural(登録商標)シリーズの製品、好ましくはPural(登録商標)TH及びPural(登録商標)TMシリーズの製品、並びにUOPからのVersal(登録商標)シリーズの製品を含む。
【0086】
理論に束縛されることを望まないが、アルミナ水和物の存在が、支持体の機械的安定性を上昇させると考えられている。特に、コロイド適用に好適なナノサイズの高分散性アルミナ水和物、例えばSasolからのDisperal(登録商標)又はDispal(登録商標)シリーズのベーマイトは、高い結合力を呈し、支持体の機械的安定性をとりわけ効率的に向上し得ると考えられている。一般に、機械的安定性を改善するそのようなナノサイズの高分散性アルミナ水和物を使用すると、所定の加熱処理状態で相対的により小さいBET-表面積を得ることが可能になり得る。
【0087】
アルミナ水和物は、好適な代替アルミニウム化合物により部分的に又は完全に置き換えられる一方、支持体の機械的安定性を本質的に保ち得る。そのような好適な代替アルミニウム化合物は、アルミニウムエトキシド及びアルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートを含む。
【0088】
易流動性供給混合物は、場合により、液体を含む。液体の存在、タイプ及び量は、易流動性供給混合物の望ましい取扱性に従って選択され得る。液体の組込みは、易流動性供給混合物における分離現象を避けるために有益になり得る。供給混合物の易流動性に影響を与えないために、易流動性供給混合物は、易流動性材料の固形分に対して、例えば15wt.-%未満、好ましくは10wt.-%未満、より好ましくは5wt.-%未満、とりわけ1wt.-%未満の限定された液体含有量を有することが好ましい。好適な量は、粉末における固体成分の多孔度及び水吸収量によって決まる。好ましい実施形態では、易流動性供給混合物は、液体成分を含まない、又は液体成分を本質的に含まない、すなわち、易流動性材料の固形分に対して0.1wt.-%未満、とりわけ0.05wt.-%未満の量である。別の実施形態では、より大量の液体、例えば水を添加してよいが、これは、粉末の流動性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0089】
液体は、典型的には、水、特に脱イオン化水並びに/又は、塩、例えば酢酸アンモニウム及び炭酸アンモニウム;酸、例えばギ酸、硝酸、酢酸及びクエン酸;塩基、例えばアンモニア、トリエチルアミン及びメチルアミン;界面活性剤、例えばトリエタノールアミン、ポロキサマー、脂肪酸エステル及びアルキルポリグルコシド;金属酸化物、例えばシリカ、チタニア及びジルコニアを含むサブミクロンサイズの粒子;クレイ;及び/若しくはポリマー粒子、例えばポリスチレン及びポリアクリレートから選択される可溶性及び/若しくは分散性化合物を含む水溶液から選択される。液体は、好ましくは水、最も好ましくは脱イオン化水である。
【0090】
液体は大半が、顆粒間が易流動な(free inter-grain)液体ではなく、吸着される液体(又は水分)である。易流動性供給混合物に含まれる液体の量は、130℃にて1時間加熱した後の重量減少として判定され得る。
【0091】
易流動性供給混合物は、さらなる成分を含み得、この成分は、加工助剤であり得る、又は、最終触媒支持体の物理的性質を調整するために意図的に導入される。さらなる成分は、細孔形成材料、潤滑剤、有機結合剤及び/又は無機結合剤を含む。
【0092】
易流動性供給混合物は、有機材料、例えば細孔形成材料、潤滑剤及び有機結合剤を、易流動性供給混合物の合計重量に対して、1.0から60wt.-%、好ましくは3から50wt.-%の合計量で含み得る。
【0093】
易流動性混合物は、易流動性混合物の合計重量に対して、潤滑剤及び有機結合剤を、1.0から10wt.-%、好ましくは3から8wt.-%の量で含み得る。有利には、本発明の方法に使用される易流動性混合物は、比較的少量の潤滑剤を必要とする。
【0094】
細孔形成材料は、支持体に追加の、及び/又はより広い細孔を設けるために使用され得る。より広い細孔の追加細孔の容積も、有利なことに、触媒の生成中に、支持体のより効率的な含浸を可能にし得る。好ましくは、細孔形成材料は、圧密体の加熱処理中に本質的に完全に除去される。細孔を形成する機能は、異なる機構、例えば酸素の存在下での燃焼(すなわち焼成)、分解、昇華又は揮発により達成され得る。
【0095】
好適な細孔形成材料は、
- 熱分解性材料、例えばシュウ酸、マロン酸、炭酸アンモニウム若しくは重炭酸アンモニウム、
- 焼却材料、例えば、熱可燃性生体材料、例えばアカシア、おがくず及び穀粉、特に摩砕した堅果殻粉、例えばペカン殻粉、カシューナッツ殻粉、ウォールナッツ殻粉若しくはハシバミ殻粉、並びに/又は
- 有機ポリマー、例えば
- ポリサッカリド、例としてデンプン、ガム、置換セルロース、例えばメチルセルロース、エチルセルロース及びカルボキシエチルセルロース並びにセルロースエーテルを含むセルロースとセルロース誘導体、
- ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン、
- ポリスチレンのような芳香族炭化水素ポリマー
- ポリカーボネート、例えばポリ(炭酸プロピレン)と、
- リグニン、
- 炭素質材料、例えば
- グラファイト、
- 粉末炭素質化合物、例えばコークス又は活性炭粉末、及び、
- ミリングされている、又はミリングされていない炭素繊維を含む。
【0096】
一実施形態では、細孔形成材料は、水溶性細孔形成材料、すなわち、20℃にて少なくとも80g/Lの水溶解度を有する細孔形成材料から選択される。好適な水溶性細孔形成材料は、シュウ酸及び/又はマロン酸を含む。そのような水溶性細孔形成材料は、微粒子状態、すなわち不溶状態で好適に適用される。
【0097】
熱分解性材料、例えばシュウ酸、マロン酸、重炭酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムは、熱処理の際に分解し、可燃性であってもそうでなくてもよいより小さい揮発性分子に崩壊する。例えば、マロン酸は、熱処理の際に分解して、主に酢酸及び二酸化炭素が得られる。そのような熱分解性材料では、これらの材料は一般的に、異物を支持体に導入しない純度を有する産業用供給源から得られるので、工業プロセスにおける一定の利点が得られる。
【0098】
潜在的爆発性雰囲気の形成を避けるために、熱分解性材料が使用される場合、圧密体の加熱処理は、好ましくは酸素含有量が減少した、例えば多くとも10vol.-%又は多くとも5vol.-%の酸素の雰囲気下で実施される。熱分解が比較的低温で発生する場合、プロセスは、分解性材料を分解する際に形成される潜在的に可燃性の分子の発火温度を十分に下回って、安全に制御できる。これにより、熱処理用装置内の雰囲気下における比較的高い酸素濃度でさえも、熱処理の安全な作業が可能になる。このケースでは、空気の雰囲気は、使用され得る。
【0099】
一実施形態では、細孔形成材料は、600μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは300μm未満の中央値直径(D50)を有する。別の実施形態では、細孔形成材料は、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μmの中央値直径(D50)を有する。別の実施形態では、商用の細孔形成材料の粒子サイズ分布は、ミリング又は破砕、及びふるい分け又はスクリーニングするステップにより制御され得る。好ましくは、細孔形成材料は、狭い細孔サイズ分布幅を有する。分布幅を特徴付ける共通の値の1つは、(D90-D10)/D50と定義されるスパン値である。好ましくは、スパン値は、10未満、より好ましくは5未満、最も好ましくは3未満である。
【0100】
潤滑剤は、圧密体と打錠ダイの内部壁との間の粘着摩擦を低下させる。
【0101】
好適な潤滑剤は、
- グラファイト、
- 石油ゼリー、鉱油若しくはグリース、
- 脂肪酸、例えばステアリン酸若しくはパルミチン酸;脂肪酸の塩、例えばステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウムのようなステアリン酸塩、若しくはパルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム及びパルミチン酸アルミニウムのようなパルミチン酸塩;脂肪酸誘導体、例えば脂肪酸のエステル、特に飽和脂肪酸のエステル、例えばステアリン酸メチル及びエチルのようなステアリン酸エステル、並びに/又は
- 可鍛性有機固体、例えばパラフィンワックス、パルミチン酸セチルのようなワックスを含む。
【0102】
潤滑剤は、無機混入物を触媒支持体に導入しないことが好ましい。上で言及されている潤滑剤のうち、グラファイト、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム及びそれらの組合せが好ましい。
【0103】
有機結合剤は、「一時的結合剤」とも呼ばれることがあり、混合物が圧密体に形成される「グリーン」フェーズ、すなわち火を入れていないフェーズの完全性を維持するために使用され得る。好ましくは、有機結合剤は、圧密体の加熱処理中に、本質的に完全に除去される。
【0104】
好適な有機結合剤は、
- ポリビニルラクタムポリマー、例えばポリビニルピロリドン若しくはビニルピロリドンコポリマー、例えばビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、
- アルコール、特にポリオール、例えばグリコール若しくはグリセロール、及び/又は
- ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールを含む。
【0105】
固体の非可鍛性有機結合剤、例えばグラファイト及び/又は固体の非可鍛性潤滑剤が使用される場合、これらの有機結合剤及び潤滑剤の粒子サイズは、好ましくはアルミナ原料、例えば遷移アルミナ及びアルミナ水和物のものより小さい。典型的には、固体の非可鍛性有機結合剤、及び固体の非可鍛性潤滑剤の中央値直径(D50)は、100μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは30μm未満、最も好ましくは10μm未満である。好ましくは、スパン値は、7未満、より好ましくは5未満、最も好ましくは3未満である。
【0106】
有利には、細孔形成剤及び加工助剤、例えば、有機結合剤及び潤滑剤は、少量の灰分を呈する。「灰分」という用語は、高温の空気中での有機材料の燃焼後、すなわち圧密体の加熱処理後に残る不燃性成分に関すると理解される。灰分は、有機材料の合計重量に対して、好ましくは0.1wt.-%未満である。
【0107】
さらに、細孔形成剤及び加工助剤、例えば、有機結合剤及び潤滑剤は、好ましくは、圧密体を加熱処理する際に、すなわち熱分解又は燃焼する際に、多量のさらなる揮発性可燃性成分、例えば一酸化炭素、アンモニア又は可燃性有機化合物を形成しない。適切な安全性のコンセプトは、好ましくは燃焼又は分解プロセスのステップに適用される。
【0108】
無機結合剤は、アルミナ粒子の十分な結合に寄与し、成形されたアルファ-アルミナ体の機械的安定性を向上させる永久結合剤である。無機結合剤は、か焼する際に、酸化アルミニウムのみを生じるものを含む。本出願の目的に関して、これらの無機結合剤は、固有無機結合剤(intrinsic inorganic binders)といわれる。そのような固有無機結合剤は、上で論じたようにアルミナ水和物を含む。
【0109】
外来無機結合剤(extrinsic inorganic binders)は一方、か焼する際に酸化アルミニウムのみを生じない。好適な外来無機結合剤は、クレイ、例えばカオリナイト、又は金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩、金属酢酸塩、又は金属酸化物、例えばジルコニア、チタニア若しくはアルカリ金属酸化物を含む、当業界で従来使用されていた無機化学種のいずれか、例えばケイ素含有化学種、例としてシリカ又はシリケートと理解される。外来無機結合剤は、触媒性能に有害になり得る異物を導入するので、これらは好ましくは、制御された量で含まれる。好ましくは、前駆体材料は、前駆体材料の無機固形分に対して、外来無機結合剤を0.0から5.0wt.-%、好ましくは0.05から1.0wt.-%の量で含む。好ましい実施形態では、前駆体材料は、外来無機結合剤を含まない。
【0110】
易流動性供給混合物は、典型的には、その成分を乾式混合すること、次いで場合により液体を添加することにより得られる。
【0111】
易流動性供給混合物を打錠して圧密体が得られ、すなわち、易流動性供給混合物は、打錠を経由して圧密体に成形される。
【0112】
打錠は、プレス凝集プロセスである。易流動性供給混合物を、2つのパンチの間にダイを有するプレス工具中に導入し、一軸圧縮により締固めし、成形して、固体圧密体を得る。打錠は、4部:計量導入、締固め(弾性変形)、塑性変形及び突出しに分けられ得る。打錠は、例えば、ロータリープレス又は偏心プレスで実行する。
【0113】
打錠触媒支持体の外部表面は、ダイ空洞の内部壁に相当する円周面、並びにパンチの操作ヘッドに相当する第1の表側の面及び第2の表側の面で構成される。打錠触媒支持体は、フラットトップ型であり得る、又はドーム型端部を有し得る、すなわち、第1の表側の面及び第2の表側の面の少なくとも1つは湾曲している。湾曲した表側の面は、例えば、凹面の下部及び/又は上部パンチを使用することにより得られる。必要に応じて、上部パンチ及び/又は下部パンチは、内部通路を形成する突出ピンを含み得る。パンチが、例えば、4つの孔(通路)を有する成形体を作り出す4本のピンでできてよいように、複数の可動ピンを有する押圧パンチを備えることも可能である。そのような工具の典型的な設計特徴は、例えば、US8,865,614B2で見出され得る。
【0114】
プレス工具は、圧密体の望ましい幾何学寸法に従って選択される。圧密体、ひいては触媒のサイズ及び形状は、反応器管中の圧密体から得られた触媒体の好適な充填を可能にするように選択される。本発明の触媒に好適な圧密体から得られる触媒は、好ましくは6から14mの長さ及び20mmから50mmの内径を有する反応器管に使用される。一般に、支持体は、3から20mmの範囲、例えば4から15mm、特に5から12mmの最大伸長を有する個々の部からなる。最大伸長は、支持体の外周における2点間の最長直線を意味すると理解される。
【0115】
圧密体の形状はとりわけ限定されず、例えば形成プロセスに応じて、技術的に実現可能な任意の形態であってよい。例えば、支持体は、固体打錠物又は中空打錠物、例えば中空円筒であり得る。別の実施形態では、支持体は、多葉構造を特徴とし得る。多葉構造は、複数の空隙空間、例えば円筒高さに沿って円筒周囲を走る凹み又は溝を有する円筒構造を表すことを意味する。一般的に、空隙空間は、円筒円周の周りに本質的に等距離に配置される。
【0116】
打錠中の押圧力は、易流動性供給混合物の締固め、ひいては、例えば圧密体の密度及び/又は機械的安定性に影響を与える。実際に、標的を定めた手段において、適切な押圧力を選択することにより打錠触媒支持体の横圧縮強度をセットすること、及び無作為抽出によりこれをチェックすることは有用と見出した。本発明の目的に関して、横圧縮強度は、平面平行板に直角な触媒支持体の2つの平面平行端面を有する、2つの平面平行板の間に位置する打錠触媒支持体を破壊する力である。
【0117】
打錠性を改善するために、易流動性供給混合物に、例えば、ふるい分け、予熱及び/又は予備造粒、すなわち予備締固めによる、さらなる加工が施され得る。予備造粒では、ロールコンパクター、例えばFitzpatrickからのChilsonator(登録商標)が使用され得る。
【0118】
打錠に関する、特に予備造粒、ふるい分け、潤滑剤及び工具に関するさらなる情報は、WO2010/000720A2で見出され得る。打錠に関するさらなる情報は、Handbook of Powder Technology、第16章:Tabletting、K. Pitt及びC. Sinka、第11巻、2007年、735から778頁で示されている。
【0119】
本発明は、上に記載されている、無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する遷移アルミナを含む易流動性供給混合物を打錠することにより得られる圧密体をさらに提供する。
【0120】
とりわけ、打錠された圧密体、すなわち素地は、押出体より機械的に安定している。打錠された圧密体は、したがって有利なことに、より良好な取扱い、及び加熱処理前の変形の抑制を可能にする。
【0121】
圧密体は、加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を形成する。加熱処理前に、詳細には易流動性供給混合物が液体を含む場合、圧密体は乾燥させてよい。好適には、乾燥は、20から400℃の範囲、特に30から300℃、例えば70から150℃の温度にて行われる。乾燥は、典型的には、100時間まで、好ましくは0.5時間から30時間、より好ましくは1時間から16時間の期間をかけて行われる。
【0122】
乾燥は、任意の雰囲気下、例えば空気のような酸素含有雰囲気下、窒素下若しくはヘリウム下、又はそれらの混合物下、好ましくは空気下で行われ得る。乾燥は、通常、オーブン中で実行される。オーブンのタイプは、とりわけ限定されない。例えば、固定循環空気オーブン、回転式円筒型オーブン又はコンベアオーブンが使用され得る。加熱は、直接的及び/又は間接的に適用され得る。
【0123】
好ましくは、好適な温度を有する燃焼プロセスからの煙道ガス(ベントガス)は、乾燥させるステップに使用される。煙道ガスは、蒸発水分及び成形体から遊離した他の成分を直接加熱するため、及びそれらを除去するために、希釈又は非希釈形態で使用され得る。煙道ガスは、典型的には、上に記載されているようにオーブンを通過する。別の好ましい実施形態では、加熱処理プロセスステップからの排ガスを、直接加熱に使用する。
【0124】
乾燥及び加熱処理は、別々の装置で順次実行され得、バッチ式又は連続プロセスで実行され得る。断続的な冷却を適用してよい。別の実施形態では、乾燥及び加熱処理は、同一の装置で実行される。バッチプロセスでは、時間分解温度傾斜(プログラム)が適用され得る。連続プロセスでは、例えば、成形体が異なる温度の領域(帯)を通って継続的に移動する場合、空間分解温度傾斜(プログラム)が適用され得る。
【0125】
好ましくは、当業界で公知の熱統合の測定は、エネルギー効率を改善するために適用される。例えば、あるプロセスステップ又は段階からの比較的熱い排ガスは、直接的(混和)又は間接的(熱交換器)手段により、別のプロセスステップ又は段階における供給流ガス、装置又は成形体を加熱するために使用できる。同じく熱統合は、比較的熱い排ガスストリームを、さらなる処理又は放出の前に冷却するためにも適用され得る。
【0126】
成形体は、加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を得る。したがって、加熱処理温度及び持続時間は、遷移アルミナの少なくとも一部をアルファ-アルミナに変換するのに十分であり、これは、遷移アルミナの準安定アルミナ相の少なくとも一部が、アルファ-アルミナに変換されることを意味する。
【0127】
得られた打錠触媒支持体は、典型的には、支持体の合計重量に対して、高い比率、例えば少なくとも85wt.-%、好ましくは少なくとも90wt.-%、より好ましくは少なくとも95wt.-%、最も好ましくは少なくとも97.5wt.-%のアルファ-アルミナを含む。アルファ-アルミナの量は、例えばX線回折分析を介して判定され得る。
【0128】
加熱処理は、少なくとも1100℃、例えば少なくとも1300℃、より好ましくは少なくとも1400℃、とりわけ少なくとも1450℃の温度にて行われる。好ましくは、加熱処理は、0.5barから35barの範囲、とりわけ0.9から1.1barの範囲の絶対圧力、例えば大気圧(およそ1013mbar)で行われる。典型的な全体の加熱時間は、0.5から100時間、好ましくは2から20時間の範囲である。
【0129】
加熱したガスに好適な流量は、例えば圧密体1kg当たり1から1,000Nm3/時の範囲、10から1,000Nm3/時、15から500Nm3/時又は20から300Nm3/時であり得る。連続プロセスでは、「圧密体1kg」という用語は、ガスストリームが圧密体上に向けられている時間(時間単位)と掛けられる圧密体の量(kg/時単位)を意味すると理解される。ガスストリームがより大量の圧密体、例えば15から150kgの圧密体上に向けられた場合、流量は、上に記載されている範囲の少量の部分で選択されることがあっても、望ましい効果を達成することを見出した。
【0130】
加熱処理は通常、炉で実行される。炉のタイプは、とりわけ限定されない。例えば炉、例として固定空気循環炉、回転式円筒型炉若しくはコンベア炉、又はキルン、例えばロータリーキルン又はトンネルキルン、特にローラハースキルンが使用され得る。一実施形態では、加熱処理は、加熱したガスストリームを圧密体上に向けるステップを構成する。加熱処理は、パススルーモードで、又は加熱したガスの少なくとも部分的なリサイクルで実行され得る。
【0131】
加熱した圧密体の温度の決定は、直接的に実務上の難題となり得る。したがって、加熱したガスが、加熱処理中に圧密体上に向けられる場合、加熱した圧密体の温度は、ガスが圧密体を通過した直後のガスの温度と考えられる。実務的な実施形態では、圧密体は、好適な表面、例えばワイヤーメッシュ又は穿孔か焼ベルトに置かれ、ガスの温度は、圧密体の反対側に隣接して位置する1つ以上の熱電対により測定され、その第1の熱電対がガスと接触する。熱電対は、例えば、圧密体から1から30mm、例えば1から3mm又は15から20mmの距離で圧密体の近くに好適に置かれる。
【0132】
加熱処理は、任意の雰囲気下、例えば空気のような酸素含有雰囲気下、窒素下若しくはヘリウム下、又はそれらの混合物下で行われ得る。好ましくは、詳細には圧密体が、熱分解性材料又は焼却材料を含有する場合、加熱処理は、酸化雰囲気下で、例えば空気のような酸素含有雰囲気下で少なくとも部分的に又は完全に実行される。
【0133】
上に記載されているように、細孔形成剤及び加工助剤、例えば、有機結合剤及び潤滑剤は、成形体を加熱処理する際に、好ましくは多量のさらなる揮発性可燃性成分、例えば一酸化炭素又は可燃性有機化合物を形成しない。爆発性雰囲気は、加熱処理中の雰囲気下の酸素濃度を、例えば、さらなる可燃性成分に対する限界酸素濃度(LOC)を下回る酸素濃度に限定することにより、さらに避けることができる。LOCは、最小酸素濃度(MOC)としても公知であり、燃焼が不可能な濃度を下回る酸素の限界濃度である。
【0134】
好適には、限定された酸素含有量を有する希薄空気又はガス状リサイクルストリームは、酸素の構成のためのストリームと一緒に使用してよく、これは、ガス状パージストリームも相殺する。代替アプローチでは、爆発性雰囲気は、さらなる可燃性成分の形成速度を限定することにより避けることができる。さらなる可燃性成分の形成速度は、緩やかな温度傾斜を経由して加熱処理温度に加熱することにより、又は段階的手段で加熱することにより、限定され得る。段階的手段において加熱する場合、温度はおよそ燃焼温度で数時間好適に保たれ、次いで温度1000℃に加熱する。連続加熱処理プロセスでは、成形体の加熱処理デバイス、例えば炉への供給流速度も、さらなる可燃性成分の形成速度を限定するように制御され得る。
【0135】
別の実施形態では、成形体に存在する有機材料、例えば細孔形成材料、潤滑剤及び有機結合剤の性質に応じて、温度は、爆発の危険性を和らげるように、関連性があるすべての有機材料が安全に除去されるまで、有機材料又はその分解生成物の発火温度を下回って制御され得る。これは、熱分解性材料、例えば、マロン酸が存在する場合、適用可能なことがある。
【0136】
細孔形成材料、潤滑剤及び有機結合剤の性質に応じて、排ガス処理は、加熱処理中に得られた任意の排ガスを精製するために適用され得る。好ましくは、酸性又はアルカリ性洗浄器、フレア又は触媒燃焼、脱硝処理又はそれらの組合せは、排ガス処理に使用され得る。
【0137】
好ましくは、加熱は、段階的手段で行う。段階的加熱では、成形体は、高純度及び不活性耐火サガーに置かれ、これに、複数の加熱帯、例えば、2から8又は2から5箇所の加熱帯を有する炉を通して移動させる。不活性耐火サガーは、アルファ-アルミナ又はコランダム、特にアルファ-アルミナでできていることがある。
【0138】
打錠触媒支持体は、不純物、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、鉄、チタン及び/又はジルコニウムを含み得る。そのような不純物は、易流動性供給混合物の成分、詳細には無機結合剤又は機械的安定性向上剤により導入され得る。一実施形態では、打錠触媒支持体は、支持体の合計重量に対して、
- 合計量が、1,500ppmwまでのナトリウム及びカリウム、
- 2,000ppmwまでのカルシウム、
- 1,000ppmwまでのマグネシウム、
- 10,000ppmwまでのケイ素、
- 1,000ppmwまでのチタン、
- 1,000ppmwまでの鉄、及び/又は
- 10,000ppmwまでのジルコニウムを含む。
【0139】
低含有量のナトリウムは、支持されている金属の分離を防止するため、及び支持されている成分の変化を防止するために好ましい。
【0140】
本発明は、エチレンの選択的気相酸化(エポキシ化)により、エチレンオキシドを生成するための成形された触媒体、すなわち、上に記載されている打錠アルファ-アルミナ触媒支持体に、又は上に記載されている方法で得られた打錠アルファ-アルミナ触媒支持体に堆積させた、成形された触媒体の合計重量に対して少なくとも15wt.-%の銀を含むエポキシ化触媒にさらに関する。
【0141】
成形された触媒体は、典型的には、成形された触媒体の合計重量に対して、15から70wt.-%の銀、好ましくは20から60wt.-%の銀、より好ましくは25から50wt.-%又は30から50wt.-%の銀を含む。この範囲の銀含有量は、各成形された触媒体により誘導されるターンオーバーと、成形された触媒体を調製するコスト効率との間の好都合なバランスを可能とする。
【0142】
銀以外に、成形された触媒体は、1つ以上の促進化学種を含み得る。促進化学種は、触媒の触媒性質の1つ以上において、前記成分を含有しない触媒と比較した場合、改善を生じる成分を表す。促進化学種は、銀触媒の触媒性質を改善するように作用する、当業界で公知の化学種のいずれかであり得る。触媒性質の例は、実現性(暴走に対する耐性)、選択性、活性、ターンオーバー及び触媒寿命を含む。
【0143】
成形された触媒体は、遷移金属又は2つ以上の遷移金属の混合物の量の増大を含み得る。好適な遷移金属は、例えば、元素周期表のIIIB族(スカンジウム族)、IVB族(チタン族)、VB族(バナジウム族)、VIB族(クロム族)、VIIB族(マンガン族)、VIIIB族(鉄、コバルト、ニッケル族)、IB族(銅族)及びIIB族(亜鉛族)からの元素、並びにそれらの組合せを含み得る。より典型的には、遷移金属は、前周期遷移金属であり、すなわちIIIB、IVB、VB又はVIB族、例えば、ハフニウム、イットリウム、モリブデン、タングステン、レニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、ニオブ又はそれらの組合せからのものである。一実施形態では、遷移金属プロモーターは、成形された触媒体の合計重量に対して金属で表現して、合計量150ppmから5,000ppm、典型的には225ppmから4,000ppm、最も典型的には300ppmから3,000ppmで存在する。
【0144】
列挙されている遷移金属プロモーターのうち、レニウム(Re)は、エチレンのエポキシ化高選択性触媒に対して特に効果のあるプロモーターである。成形された触媒体におけるレニウム成分は、任意の好適な形態であってよいが、より典型的には、1つ以上のレニウム含有化合物(例えば酸化レニウム)又は錯体である。
【0145】
いくつかの実施形態では、成形された触媒体は、促進量のアルカリ金属又は2つ以上のアルカリ金属の混合物を含み得る。好適なアルカリ金属プロモーターは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はそれらの組合せを含む。アルカリ金属、例えばカリウムの量は、成形された触媒体の合計重量に対してアルカリ金属で表現して、典型的には50ppmから5,000ppmの範囲、より典型的には300ppmから2,500ppm、最も典型的には500ppmから1,500ppmである。アルカリ金属の量は、打錠触媒支持体が寄与するアルカリ金属の量、及び以下に記載されている含浸溶液が寄与するアルカリ金属の量により判定される。
【0146】
セシウム(Cs)又はルビジウム(Rb)のような重アルカリ金属と、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)のような軽アルカリ金属の組合せは、特に好ましい。
【0147】
成形された触媒体は、IIA族アルカリ土類金属又は2つ以上のIIA族アルカリ土類金属の混合物も含み得る。好適なアルカリ土類金属プロモーターは、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム又はそれらの組合せを含む。アルカリ土類金属プロモーターの量は、アルカリ又は遷移金属プロモーターに使用されるものと同様の量で使用され得る。
【0148】
成形された触媒体は、促進量の主族元素又は2つ以上の主族元素の混合物も含み得る。好適な主族元素は、元素周期表のIIIA族(ホウ素族)からVIIA族(ハロゲン族)における元素のいずれかを含む。例えば、成形された触媒体は、促進量の硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン(例えばフッ素)、ガリウム又はそれらの組合せを含み得る。
【0149】
成形された触媒体は、促進量の希土類金属又は2つ以上の希土類金属の混合物も含み得る。希土類金属は、57から103の原子数を有する元素のいずれかを含む。これらの元素のいくつかの例は、ランタン(La)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)を含む。希土類金属プロモーターの量は、遷移金属プロモーターに使用されるものと同様の量で使用できる。
【0150】
上に記載されている成形された触媒体は、
a)上に記載されている触媒支持体に銀含浸溶液を、好ましくは減圧下で含浸させ、場合により含浸させた触媒支持体に乾燥を施すステップ、及び
b)含浸させた触媒支持体に、含浸後加熱処理を施すステップを含み、
ステップa)及びb)が、場合により繰り返される、方法により得られる。
【0151】
高い銀含有量を有する成形された触媒体を得るために、ステップi)及びii)は、数回繰り返してよい。このケースでは、第1の(又は後続して最後の2つ前までの)含浸/含浸後加熱処理サイクル後に得られた中間産物が、標的Ag及び/又はプロモーター濃縮物の合計量の一部を含むことは理解される。中間産物に、次いで銀含浸溶液を再度含浸させ、含浸後加熱処理して標的Ag及び/又はプロモーター濃縮物を得る。
【0152】
当業界で公知の耐火性支持体に含浸させるのに好適な任意の銀含浸溶液を使用してよい。銀含浸溶液は、典型的には、カルボン酸銀、例えばシュウ酸銀、又はカルボン酸銀及びシュウ酸銀の組合せを、C1~C10-アルキレンジアミン、特にエチレンジアミンのようなアミン系錯化剤の存在下で含有する。好適な含浸溶液は、EP0716884A2、EP1115486A1、EP1613428A1、US4,731,350A、WO2004/094055A2、WO2009/029419A1、WO2015/095508A1、US4,356,312A、US5,187,140A、US4,908,343A、US5,504,053A及びWO2014/105770A1に記載されている。好適な銀含浸溶液の考察に関しては、Kunz, C.ら、On the Nature of Crystals Precipitating from Aqueous Silver Ethylenediamine Oxalate Complex Solutions.、Z. Anorg. Allg. Chem.、2021年、647頁、DOI: 10.1002/zaac.202100079も参照されたい。
【0153】
含浸後加熱処理中、銀含浸溶液の液体成分は蒸発させ、銀イオンを含む銀化合物を溶液から沈殿させ、支持体に堆積させる。堆積させた銀イオンの少なくとも一部を、続いてさらに含浸後加熱して金属銀に変換する。好ましくは、銀の合計モル量に対して少なくとも70mol-%、好ましくは少なくとも90mol-%、より好ましくは少なくとも95mol-%、最も好ましくは少なくとも99.5mol-%又は少なくとも99.9mol-%の銀化合物、すなわち本質的にすべての銀イオンはそれぞれ、含浸させた触媒支持体中にある。金属銀に変換される銀イオンの量は、例えば、X線回折(XRD)パターンを介して判定され得る。
【0154】
含浸後加熱処理は、か焼プロセスとも呼ばれ得る。この目的のために当業界で公知である任意のか焼プロセスを使用してよい。か焼プロセスの好適な例は、US5,504,052A、US5,646,087A、US7,553,795A、US8,378,129A、US8,546,297A、US2014/0187417A1、EP1893331A1又はWO2012/140614A1に記載されている。含浸後加熱処理は、パススルーモードで、又はか焼ガスの少なくとも部分的なリサイクルで実行され得る。
【0155】
含浸後加熱処理は通常、炉で実行される。炉のタイプは、とりわけ限定されない。例えば、固定空気循環炉、回転式円筒型炉又はコンベア炉が使用され得る。一実施形態では、含浸後加熱処理は、加熱したガスストリームを含浸体上に向けるステップを構成する。含浸後加熱処理の持続時間は、一般的に5分から20時間の範囲、好ましくは5分から30分である。
【0156】
含浸後加熱処理の温度は、一般的に200から800℃の範囲、好ましくは210から650℃、より好ましくは220から500℃、最も好ましくは220から350℃である。好ましくは、40から200℃の温度範囲における含浸後加熱速度は、少なくとも20K/分、より好ましくは少なくとも25K/分、例えば少なくとも30K/分である。高い含浸後加熱速度は、加熱したガスを高速ガス流で、含浸させた耐火性支持体又は含浸させた中間触媒上に向けることにより達成され得る。
【0157】
ガスの好適な流量は、例えば、含浸体1kg当たり1から1,000Nm3/時の範囲、10から1,000Nm3/時、15から500Nm3/時又は20から300Nm3/時であり得る。連続プロセスでは、「含浸体1kg」という用語は、ガスストリームが含浸体上に向けられている時間(時間単位)と掛けられる含浸体の量(kg/時単位)を意味すると理解される。ガスストリームがより大量の含浸体、例えば15から150kgの含浸体上に向けられた場合、流量は、上に記載されている範囲の少量の部分で選択されることがあっても、望ましい効果を達成することを見出した。
【0158】
加熱した含浸体の温度の決定は、直接的に実務上の難題となり得る。したがって、加熱したガスが、含浸後加熱処理中に含浸体上に向けられる場合、加熱した含浸体の温度は、ガスが含浸体を通過した直後のガスの温度と考えられる。実務的な実施形態では、含浸体は、好適な表面、例えばワイヤーメッシュ又は穿孔か焼ベルトに置かれ、ガスの温度は、含浸体の反対側に隣接して位置する1つ以上の熱電対により測定され、その第1の熱電対がガスと接触する。熱電対は、例えば、含浸体から1から30mm、例えば1から3mm又は15から20mmの距離で含浸体の近くに好適に置かれる。
【0159】
複数の熱電対を使用すると、温度測定の精度を改善できる。いくつかの熱電対が使用される場合、これらは、含浸体が載せられたワイヤーメッシュ又は穿孔か焼ベルトの幅の面積にわたって均等な間隔を置かれ得る。平均値は、ガスが含浸体を通過した直後のガスの温度と考えられる。含浸体を上に記載されている温度に加熱するために、ガスは、典型的には220から800℃、より好ましくは230から550℃、最も好ましくは240から350℃の温度を有する。
【0160】
好ましくは、含浸後加熱は、段階的手段で行われる。段階的含浸後加熱では、含浸体は、複数の加熱帯、例えば2から8又は2から5箇所の加熱帯を有する炉を通して移動させる可動ベルトに置かれる。含浸後加熱処理は、好ましくは不活性雰囲気、例えば窒素、ヘリウム、又はそれらの混合物下、特に窒素下で行われる。
【0161】
本発明は、エチレンの気相酸化により、エチレンオキシドを生成する方法であって、エチレン及び酸素を、上に記載されている成形された触媒体の存在下で反応させるステップを含む、方法にさらに関する。
【0162】
エポキシ化は、当業者に公知であるすべてのプロセスにより実行され得る。従来技術のエチレンオキシド生成プロセスに使用され得るすべての反応器を使用することが可能である。エポキシ化は、好ましくは少なくとも1つの管反応器で、好ましくはシェルアンドチューブ式反応器で実行される。商用規模では、エチレンエポキシ化は、好ましくは、数千本の管を含有する多管式反応器で実行される。触媒を管に満たし、これをクーラントで満たされているシェルに置く。
【0163】
エチレン及び酸素からエチレンオキシドを調製するために、反応を、従来の反応条件下で実行することが可能である。不活性ガス、例えば窒素、又は反応条件下で不活性であるガス、例えば蒸気、メタン、また場合により反応モデレーター、例えばハロゲン化炭化水素、例として塩化エチル、塩化ビニル又は1,2-ジクロロエタンは、エチレン及び分子酸素を含む反応ガスにさらに混合できる。
【0164】
供給流(すなわち反応器に供給されるガス混合物)における二酸化炭素の濃度は、典型的には、触媒選択性及び二酸化炭素除去設備の効率によって決まる。供給流における二酸化炭素濃度は、供給流の合計体積に対して、好ましくは多くとも3vol.-%、より好ましくは2vol.-%未満、最も好ましくは1vol.-%未満である。
【0165】
エチレンのエチレンオキシドへの反応又は酸化は、通常、上昇触媒温度にて実行される。150から350℃の範囲、より好ましくは180から300℃、特に好ましくは190から280℃、とりわけ好ましくは200から280℃の触媒温度が好ましい。本発明は、したがって、酸化を180から300℃の範囲、好ましくは200から280℃の触媒温度にて実行する、上に記載されている方法も提供する。
【0166】
本発明による反応(酸化)は、好ましくは5から30barの範囲の圧力で実行される。本明細書におけるすべての圧力は、別途注記のない限り絶対圧力である。酸化は、より好ましくは5から25barの範囲、例えば10barから24bar、特に14barから23barの圧力で実行される。
【0167】
成形された触媒体の物理的特性、とりわけBET表面積及び細孔サイズ分布は、触媒選択性に著しく好影響を及ぼしたことを見出した。この効果は、きわめて高い作業量で触媒が作用する、すなわち、高いレベルでオレフィンオキシドが生成される場合、とりわけ識別される。
【0168】
本発明による方法は、好ましくは、少なくとも2.3vol.-%のエチレンオキシドを含有する反応混合物を得ることにつながる条件下で実行される。言い換えれば、エチレンオキシド出口濃度(反応器出口におけるエチレンオキシド濃度)は、好ましくは少なくとも2.3vol.-%である。エチレンオキシド出口濃度は、より好ましくは2.5から4.0vol.-%の範囲、最も好ましくは2.7から3.5vol.-%の範囲である。
【0169】
酸化は、好ましくは連続プロセスで実行される。反応が継続的に実行される場合、GHSV(ガス毎時空間速度)は、選択される反応器のタイプ、例えば反応器のサイズ/断面積、触媒の形状及びサイズに応じて、好ましくは800から10,000/時の範囲、好ましくは2,000から8,000/時の範囲、より好ましくは2,500から6,000/時の範囲、最も好ましくは4,500から5,500/時の範囲であり、指し示されている値は、触媒の体積に基づく。
【0170】
エチレン及び酸素からのエチレンオキシドの調製は、有利にはリサイクルプロセスで実行され得る。各通過後に、新たに形成されたエチレンオキシド及び反応において形成された副生成物を生成ガスストリームから除去する。残りのガスストリームに、必要とされる量のエチレン、酸素及び反応モデレーターを補充し、反応器中に再導入する。
【0171】
本発明は、添付の図面及び後続の実施例によってより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0172】
図1】本発明の打錠触媒支持体Aの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
図2】本発明の打錠触媒支持体Bの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
図3】本発明の打錠触媒支持体Cの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
図4】本発明の打錠触媒支持体Dの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
図5】本発明の打錠触媒支持体Eの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
図6】本発明の押出触媒支持体Fの細孔サイズ直径[mL/g]に対する累積圧入[mL/g]を示す図である。
【実施例
【0173】
方法1:窒素収着
窒素収着測定は、Micrometrics ASAP 2420を使用して行った。窒素多孔度を、DIN 66134に従って判定した。試料を、測定前に真空下で200℃にて16時間脱気した。
【0174】
方法2:水銀ポロシメトリー
水銀ポロシメトリーは、Micrometrics AutoPore V 9600水銀ポロシメーター(140度の接触角度、485ダイン/cm Hg表面張力、61,000psia最大ヘッド圧力)を使用して行った。水銀多孔度を、DIN 66133に従って判定した。
【0175】
試料を110℃にて2時間乾燥させ、分析前に真空下で脱気して、いかなる物理的吸着種、例えば水分も試料表面から除去した。
【0176】
方法3:ゆるめかさ密度
ゆるめかさ密度は、漏斗を介し、目盛り付きシリンダーを動かさない又は振動させないように注意して、遷移アルミナ又はアルミナ水和物を、目盛り付きシリンダー中に注ぐことにより判定した。遷移アルミナ又はアルミナ水和物の体積及び重量を判定した。ゆるめかさ密度は、ミリリットル単位の体積をグラム単位の重量で割ることにより判定された。
【0177】
方法4:BET表面積
BET表面積は、77Kにて実施される窒素の物理収着を使用して、DIN ISO 9277に従って判定した。表面積は、5点BETプロットから得た。試料を、測定前に真空下で200℃にて16時間脱気した。成形されたアルファ-アルミナ支持体のケースでは、比較的BET表面積が小さいため、4g超の試料が適用された。
【0178】
方法5:成形体の寸法及び試料標準偏差s
成形体の寸法は、デジタルキャリパー(Holex 412811)を使用して測定した。「長さ」は、成形体の、すなわち縦軸に沿った高さであった。「外径」は、支持体高さに垂直の断面の外接円の直径であった。幾何学的正確さは、以下のように計算された触媒支持体100例のうち複数の長さ及び外径の試料標準偏差sとして記載されている。最初に、触媒支持体100例の平均(アベレージ)の長さ及び外径を判定した。長さ及び外径各値の平均からの偏差を計算し、各偏差の結果を二乗した。二乗した偏差の総計を99の値で割り、生じた値の平方根は、長さ及び外径の試料標準偏差sを構成する。得られた結果は、試料平均に対して報告されている、すなわち、得られた値は、試料平均値で割り、試料平均のパーセンテージとして表現される。
【0179】
打錠触媒支持体A、B、C、D及びEの調製
多孔質アルファ-アルミナ触媒支持体を得るために使用されるアルミナ原料の性質は、表1に示されている。遷移アルミナ及びアルミナ水和物は、Sasol(Puralox(登録商標)及びPural(登録商標))、及びUOP(Versal(登録商標))から得た。
【0180】
【表1】
【0181】
表1で指定されているアルミナ原料及び細孔形成剤は、加工助剤としてCutina(登録商標)HR(BASFからの水添ヒマシ油ワックス塊)及びTimrex(登録商標)T44(TimCal Graphite & Carbonからのグラファイト)と混合して、粉末混合物を得た。すべての成分の量は、表2に示されている。
【0182】
使用される細孔形成剤は、表2で列挙されている。オリーブ種子粒体(オリーブ種子粒体、BioPowder)、パルプ粒体(Technocel(登録商標)200G、CFF)及び微結晶セルロースビーズ(MCC 200、Zhongbao Chemicals)を、いかなる前処理もせずに、受け取ったままで使用した。細孔形成剤の粒子サイズは、100μmから300μmの範囲であった。マロン酸(M1296、純度99.0%、Sigma-Aldrich)を乳鉢中で穏やかに摩砕し、使用前にふるい分けした。試料調製に使用されるマロン酸の粒子は、60メッシュから200メッシュで収集した。
【0183】
粉末混合物を、6.6mmの外径及び3.7mmの内径を有する中空円筒パンチを備えた打錠機にかけた。得られた打錠物をマッフル炉において熱処理した。炉の温度を、5℃/分の加熱速度で600℃まで傾斜させ、600℃にて2時間保ち、次いで2℃/分の加熱速度で1,464℃まで傾斜させ、1,464℃にて4時間保った。続いて、作動中の加熱のスイッチを切り、炉を室温(約23℃)に終夜冷却した。加熱処理は、5vol.-%の酸素を有する希薄空気下で行った。
【0184】
【表2】
【0185】
比較の押出物Fの調製
エチレンオキシド触媒のための商用アルファ-アルミナ支持体は、EXACER s.r.l.からロット番号COM46/20で得られた(Puglia 2/4、41049 Sassuolo (MO)、Italyを介して)。支持体は、押出により生成された。
【0186】
図1から6は、支持体AからFの細孔サイズ直径に対する対数微分圧入及び累積圧入を示す。
【0187】
表3は、支持体AからFの物理的性質を示す。
【0188】
【表3】
【0189】
打錠により調製される本発明の支持体AからEが、比較の支持体Fと同様のBET表面積及び全体の細孔容積を呈することは明白である。さらに、比較の支持体Fより著しく高い幾何学的精度を有する、支持体AからEが得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも85wt.-%のアルファ-アルミナ含有量、水銀ポロシメトリーにより判定して、少なくとも0.40mL/gの細孔容積、及び0.5から5.0m2/gのBET表面積を特徴とする、打錠触媒支持体。
【請求項2】
水銀ポロシメトリーにより判定して、0.1μm未満の直径を有する細孔に含有される細孔容積が、全体の細孔容積の5%未満を構成する、請求項1に記載の触媒支持体。
【請求項3】
少なくとも1本の通路が、第1の表側の面から第2の表側の面へと伸張する、請求項1又は2に記載の触媒支持体。
【請求項4】
第1の表側の面及び第2の表側の面の少なくとも1つが湾曲している、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒支持体。
【請求項5】
支持体が、平均高さから5%以下の試料標準偏差sを有する高さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複数の触媒支持体。
【請求項6】
支持体が、平均外径から1%以下の試料標準偏差sを有する外径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複数の触媒支持体。
【請求項7】
打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を生成する方法であって、
i)無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の遷移アルミナを含む易流動性供給混合物であって、細孔形成材料をさらに含む該易流動性供給混合物を形成するステップと、
ii)易流動性供給混合物を打錠して、圧密体を得るステップと、
iii)圧密体を、少なくとも1100℃、好ましくは少なくとも1300℃、より好ましくは少なくとも1400℃、とりわけ少なくとも1450℃の温度にて加熱処理して、打錠アルファ-アルミナ触媒支持体を得るステップと、を含む、方法。
【請求項8】
遷移アルミナが、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧密体を、加熱処理前に乾燥させる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
遷移アルミナが、ガンマ-アルミナ、デルタ-アルミナ及びシータ-アルミナから選択される相、特にガンマ-アルミナ及びデルタ-アルミナから選択される相を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
易流動性供給混合物が、無機固形分に対して、アルミナ水和物を、多くとも40wt.-%の量で含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルミナ水和物が、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト及び/又は擬ベーマイト、好ましくはベーマイト及び/又は擬ベーマイトを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
孔形成材料が、好ましくは熱分解性材料、焼却材料及び有機ポリマーから選択される、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細孔形成材料が、水溶性細孔形成剤から、好ましくはシュウ酸、マロン酸、重炭酸アンモニウム及び/又は炭酸アンモニウムから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
易流動性供給混合物が、潤滑剤をさらに含み、潤滑剤が、好ましくはグラファイト、ステアリン酸及び/又はステアリン酸アルミニウムから選択される、請求項7から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
易流動性供給混合物を打錠することにより得られる圧密体であって、易流動性供給混合物が、無機固形分に対して少なくとも50wt.-%の、多くとも600g/Lのゆるめかさ密度、判定して少なくとも0.6mL/gの細孔容積、及び少なくとも15nmの中央値細孔径を有する遷移アルミナを含む、圧密体。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の打錠アルファ-アルミナ触媒支持体又は請求項7から15のいずれか一項に記載の方法で得られた打錠アルファ-アルミナ触媒支持体に堆積させた、触媒の合計重量に対して少なくとも15wt.-%の銀、好ましくは15から70wt.-%の銀、より好ましくは20から60wt.-%の銀、最も好ましくは25から50wt.-%又は30から50wt.-%の銀を含む、エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成するための成形された触媒体。
【請求項18】
成形された触媒体が、成形された触媒体の合計重量に対して、レニウム、好ましくは400から2000ppmのレニウムを含む、請求項17に記載の成形された触媒体。
【請求項19】
エチレンの気相酸化によりエチレンオキシドを生成する方法であって、エチレン及び酸素を、請求項17又は18に記載の成形された触媒体の存在下で反応させるステップを含む、方法。
【国際調査報告】