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特表2023-536225マルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】マルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61M37/00 505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581643
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 IB2021056002
(87)【国際公開番号】W WO2022003653
(87)【国際公開日】2022-01-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514274672
【氏名又は名称】延世大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】YONSEI UNIVERSITY,UNIVERSITY-INDUSTRY FOUNDATION(UIF)
【住所又は居所原語表記】50,YONSEI-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03722, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョンイル
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジョンユン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267BB13
4C267BB23
4C267CC01
4C267FF10
4C267GG16
4C267GG47
(57)【要約】
マルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法が提供される。本発明の実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体は支持体に形成されるベース層、ベース層上に形成されて薬物を含むコア層、ベース層上でコア層を覆うように形成されるシェル層を含む。ここで、コア層の外部のシェル層の厚さTとコア層の高さH2間の関係はコア層をなす物質により決定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に形成されるベース層;
前記ベース層上に形成されて薬物を含むコア層;
前記ベース層上で前記コア層を覆うように形成されるシェル層;を含み、
前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)と前記コア層の高さH2間の関係は前記コア層をなす物質により決定される、マルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項2】
前記コア層は親水性物質からなり、
前記コア層の高さ(H2)は前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)に反比例する、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項3】
前記コア層は疏水性物質からなり、
前記コア層の高さ(H2)は前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)にかかわらず一定である、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項4】
前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)は前記コア層および前記シェル層を形成するための流動化工程時間に反比例する、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項5】
前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)は前記コア層と前記ベース層の接合面で最も小さい、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項6】
前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)は前記コア層全体に亘って均一である、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項7】
前記ベース層、前記コア層および前記シェル層の全体高さ(H)および前記ベース層の高さ(H1)が一定の場合、前記コア層の高さ(H2)と前記コア層の先端から前記シェル層の先端までの高さ(H3)は反比例する、請求項2に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項8】
前記ベース層は上側にマイクロキャビティが備えられ、
前記コア層はパウダーまたは液状からなり前記マイクロキャビティに備えられる、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項9】
前記コア層の高さ(H2)は前記マイクロキャビティの高さによって決定される、請求項8に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項10】
前記ベース層は前記支持体上に形成される微細突起上に形成される、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項11】
前記支持体は開口が形成されるペグボードであり、
前記ベース層は前記開口に充填されて形成される、請求項1に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体。
【請求項12】
支持体に第1組成物をディスペンシングする第1ディスペンシング段階;
前記第1組成物を乾燥してベース層を形成する乾燥段階;
前記ベース層上に薬物を含む第2組成物をディスペンシングする第2ディスペンシング段階;
前記ベース層上に前記第2組成物を覆うように第3組成物をディスペンシングする第3ディスペンシング段階;および
流動化または遠心リソグラフィ技法で前記第2組成物によるコア層および前記第3組成物によるシェル層を形成する成形段階を含む、マルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項13】
前記成形段階は流動化、前記遠心リソグラフィ技法またはドロップレットボーンエアブローイング(DAB;droplet born air blowing)で遂行される、請求項12に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項14】
前記第2組成物は親水性物質からなり、
前記コア層の高さ(H2)は流動化工程時間に比例する、請求項13に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項15】
前記第2組成物は疏水性物質からなり、
前記コア層の高さ(H2)は流動化工程時間にかかわらず一定である、請求項13に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項16】
前記コア層の外部の前記シェル層の厚さ(T)および前記コア層の先端から前記シェル層の先端までの高さ(H3)は流動化工程時間に反比例する、請求項13に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥する段階は前記ベース層上にマイクロキャビティを形成する段階をさらに含み、
前記第2組成物はパウダーまたは液状からなり
前記第2ディスペンシング段階は前記第2組成物を前記マイクロキャビティにディスペンシングする、請求項12に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項18】
前記支持体は微細突起を含み、
前記第1ディスペンシング段階は前記微細突起上に形成される前記第1組成物をディスペンシングする、請求項12に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項19】
前記支持体は開口が形成されるペグボードであり、
前記第1ディスペンシング段階は前記開口に前記第1組成物を充填する、請求項12に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【請求項20】
前記第2ディスペンシング段階は前記第2組成物を乾燥する段階をさらに含む、請求項12に記載のマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードル(DMN;Dissolving microneedle)は医療分野で薬物伝達システムとして最も広く使われる皮下注射および経口投与の有望な代案的接近法である。マイクロニードルは、薬物を表皮または真皮領域に直接誘導するメカニズムを通じて治療剤の伝達速度を向上させるとともに皮下注射より痛みが少ないため、患者の便宜性を向上させる。
【0003】
しかし、マイクロニードル構造体の製造および貯蔵過程の間に薬物の損失、特にバイオ薬剤または酸素敏感性薬物の損失は、マイクロニードル構造体が従来の薬物伝達システムを代替するのに相当な障害をもたらす。
【0004】
また、薬物の定量的伝達および維持を達成するために多くの試みが進行されたが、薬物の保全技術と薬物の定量伝達技術はそれぞれに対する一つの問題のみを解決している。したがって、これらを同時に満足できる新しい戦略が要求される。
【0005】
【特許文献1】KR2019-0123642A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明の一実施例は定量の薬物を伝達しながらも、製造過程で薬物の損失を防止できるマルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法を提供しようとする。
【0007】
ただし、本発明が解決しようとする課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような課題を解決するための本発明の一側面によると、支持体に形成されるベース層;前記ベース層上に形成されて薬物を含むコア層;前記ベース層上で前記コア層を覆うように形成されるシェル層;を含み、前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTと前記コア層の高さH2間の関係は前記コア層をなす物質により決定されるマルチレイヤマイクロニードル構造体が提供される。
【0009】
一実施例において、前記コア層は親水性物質からなり、前記コア層の高さH2は前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTに反比例し得る。
【0010】
一実施例において、前記コア層は疏水性物質からなり、前記コア層の高さH2は前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTにかかわらず一定であり得る。
【0011】
一実施例において、前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTは前記コア層および前記シェル層を形成するための流動化工程時間に反比例し得る。
【0012】
一実施例において、前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTは前記コア層と前記ベース層の接合面で最も小さくてもよい。
【0013】
一実施例において、前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTは前記コア層全体に亘って均一であり得る。
【0014】
一実施例において、前記ベース層、前記コア層および前記シェル層の全体高さHおよび前記ベース層の高さH1が一定の場合、前記コア層の高さH2と前記コア層の先端から前記シェル層の先端までの高さH3は反比例し得る。
【0015】
一実施例において、前記ベース層は上側にマイクロキャビティが備えられ、前記コア層はパウダーまたは液状からなり前記マイクロキャビティに備えられ得る。
【0016】
一実施例において、前記コア層の高さH2は前記マイクロキャビティの高さによって決定され得る。
【0017】
一実施例において、前記ベース層は前記支持体上に形成される微細突起上に形成され得る。
【0018】
一実施例において、前記支持体は開口が形成されるペグボードであり、前記ベース層は前記開口に充填されて形成され得る。
【0019】
本発明の他の側面によると、支持体に第1組成物をディスペンシングする第1ディスペンシング段階;前記第1組成物を乾燥してベース層を形成する乾燥段階;前記ベース層上に薬物を含む第2組成物をディスペンシングする第2ディスペンシング段階;前記ベース層上に前記第2組成物を覆うように第3組成物をディスペンシングする第3ディスペンシング段階;および前記第2組成物によるコア層および前記第3組成物によるシェル層を形成する成形段階を含むマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法が提供される。
【0020】
一実施例において、前記成形段階は流動化、前記遠心リソグラフィ技法またはドロップレットボーンエアブローイング(DAB;droplet born air blowing)で遂行され得る。
【0021】
一実施例において、前記第2組成物は親水性物質からなり、前記コア層の高さH2は流動化工程時間に比例し得る。
【0022】
一実施例において、前記第2組成物は疏水性物質からなり、前記コア層の高さH2は流動化工程時間にかかわらず一定であり得る。
【0023】
一実施例において、前記コア層の外部の前記シェル層の厚さTおよび前記コア層の先端から前記シェル層の先端までの高さH3は流動化工程時間に反比例し得る。
【0024】
一実施例において、前記乾燥する段階は前記ベース層上にマイクロキャビティを形成する段階をさらに含み、前記第2組成物はパウダーまたは液状からなり、前記第2ディスペンシング段階は前記第2組成物を前記マイクロキャビティにディスペンシングすることができる。
【0025】
一実施例において、前記支持体は微細突起を含み、前記第1ディスペンシング段階は前記微細突起上に形成される前記第1組成物をディスペンシングすることができる。
【0026】
一実施例において、前記支持体は開口が形成されるペグボードであり、前記第1ディスペンシング段階は前記開口に前記第1組成物を充填することができる。
【0027】
一実施例において、前記第2ディスペンシング段階は前記第2組成物を乾燥する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体およびその製造方法は、マルチレイヤ構造でシェル層によって薬物を含むコア層を覆うように具備することによって、シェル層によって薬物の露出と放出を遮断できるため、製造工程で薬物の損失を防止することができる。
【0029】
また、本発明は薬物を含まないベース層上にコア層を形成することによって、薬物を含むコア層が皮膚内に十分に挿入され得るため、薬物の定量伝達を保障することができる。
【0030】
また、本発明は最外郭に配置されるシェル層によってマルチレイヤマイクロニードル構造体を製造できるため、コア層に含まれる薬物の種類にかかわらず、同一の製造条件で同一の工程によって多様な薬物に対するマイクロニードル構造体を製造することができる。
【0031】
また、本発明はコア層が外部に露出しないように製造することによって、薬物の種類による製造工程の最適化が不要であるため製造工程を単純化できるので、製造効率を向上させることができる。
【0032】
また、本発明はシェル層に対する製造条件を変更することによって、マルチレイヤマイクロニードル構造体全体に対する物理的特性を向上させることができ、薬物を外部環境から安全に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の適用例を示した図面である。
図3】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の体外実験およびその結果を示した図面である。
図4】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体でコア層の例示を示した図面である。
図5】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のシェル層の役割を検証する実験結果を示すグラフである。
図6】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造工程を概略的に示した図面である。
図7】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の変形例を示した図面である。
図8】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の他の変形例を示した図面である。
図9】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のさらに他の変形例を示した図面である。
図10】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の共焦点レーザー走査顕微鏡分析を示した図面である。
図11】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の各ファクターとシェル構造を示した図面である。
図12】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のコア層物質による形成高さを示したグラフである。
図13】本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の流動化工程時間によるコア層の高さとコア層の外部のシェル層の厚さを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は多様な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。図面で本発明を明確に説明するために説明にかかわらない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素に対しては同一の参照符号を付した。
【0035】
本発明の実施例は当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、以下で説明される実施例は多様な異なる形態に変形され得、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。かえって、これら実施例は本発明をさらに忠実かつ完全とし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0036】
以下、本発明の実施例は本発明の実施例を概略的に図示する図面を参照して説明する。図面において、例えば、製造技術および/または公差により、図示された形状の変形が予想され得る。したがって、本発明の実施例は本明細書に図示された領域の特定の形状に制限されたものと解釈されてはならず、例えば製造上もたらされる形状の変化を含まなければならない。
【0037】
図1は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体を示す斜視図であり、図2は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の適用例を示した図面であり、図3は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の体外実験およびその結果を示した図面である。
【0038】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体10はベース層12、コア層13およびシェル層14を含む。
【0039】
ベース層12は支持体11に一定の高さで形成される。ベース層12は薬物の定量伝達は助けるためのもので、図2に図示された通り、薬物を含むコア層13が皮膚に十分に挿入され得るように一定の高さで形成され得る。したがって、ベース層12は薬物を含まない。
【0040】
これを通じて、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体10は、薬物を含むコア層13が皮膚1内に十分に挿入され得るため薬物の定量伝達を高信頼性で保障することができる。
【0041】
コア層13は有効な薬物を搭載する部位であって、ベース層12上に形成される。ここで、コア層13は親水性物質または疏水性物質からなり得る。一例として、コア層13はヒアルロン酸(HA;Hyaluronic Acid)またはPCL(Polycaprolactone)を含むことができるがこれに限定されない。また、コア層13はパウダー(powder)または液状からなり得る。
【0042】
この時、コア層13は製造される物質により多様な形状を有することができる。一例として、コア層13は親水性物質からなる場合、シェル層14の形状と類似する形状を有することができる(図6参照)。すなわち、コア層13は流動化工程による影響を受けるのでシェル層14のチップ部14bの形状と類似するように形成され得る。
【0043】
これとは異なり、コア層13は疏水性物質からなる場合、図1に図示された通り、シェル層14内で円形で備えられ得る。ここで、コア層13の形状は特に限定されない。ただし、コア層13はシェル層14の形状とは無関係な形状を有する。すなわち、コア層13は親水性物質の場合とは異なって、流動化工程による影響が殆どないのでシェル層14のチップ部14bの形状と類似するように形成されない。
【0044】
シェル層14はマルチレイヤマイクロニードル構造体10の全体的な形を形成するためのものであり、ベース層12上でコア層13を覆うように形成される。ここで、シェル層14は薬物が搭載されていないポリマーからなり得る。図1に図示された通り、シェル層14はカバー層14aおよびチップ部4bを含むことができる。
【0045】
カバー層14aはコア層13の薬物を保護するためのものであり、コア層13が外部に露出しないように完全に覆うことができる。
【0046】
チップ部4bは皮膚1に挿入が容易であるように先端が尖っているように形成され得る。この時、シェル層14は物理的に高い強度(strength)を有する物質からなるか、これのための製造工程で製造され得る。
【0047】
このように、マルチレイヤマイクロニードル構造体10はコア層13が外部に露出しないため、外観上ベース層12およびシェル層14のみを含むことができる。
【0048】
これを通じて、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体10は、シェル層14によりコア層13に含まれる薬物の露出と放出を遮断できるため、製造工程および貯蔵過程で薬物の損失を防止することができる。
【0049】
ここで、シェル層14は流動化工程による遠心リソグラフィ方法によって形成され得る。したがって、シェル層14は流動化工程時間によって形が変更され得る。
【0050】
この時、コア層13の外部のシェル層14の厚さTとコア層13の高さH2間の関係はコア層13をなす物質により決定され得る。ここで、コア層13の外部のシェル層14の厚さTは流動化工程時間に影響を受け得る。すなわち、コア層13の外部のシェル層14の厚さTは流動化工程時間に反比例し得る(図11参照)。
【0051】
一例として、コア層13が親水性物質からなる場合、コア層13の高さH2は流動化工程時間に影響を受け得る。より具体的には、コア層13の高さH2はコア層13の外部のシェル層14の厚さTに反比例し得る。すなわち、コア層13の高さH2はコア層13の外部のシェル層14の厚さTが減少するほど増加し得る。
【0052】
この時、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はコア層13の外部のシェル層14の厚さTが小さいほど減少し得る。したがって、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はコア層13の外部のシェル層14の厚さTに比例し得る。
【0053】
ここで、ベース層12、コア層13およびシェル層14の全体高さHおよびベース層12の高さH1が一定の場合、コア層13の高さH2とコア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3は流動化工程時間に影響を受け得る。この時、コア層13の高さH2に流動化工程時間に比例して増加するので、コア層13の高さH2とコア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3は互いに反比例し得る。
【0054】
他の例として、コア層13が疏水性物質からなる場合、コア層13の高さH2は流動化工程時間に影響を受けない。すなわち、コア層13の高さH2はコア層13の外部のシェル層14の厚さTにかかわらず一定であり得る。
【0055】
この時、コア層13の外部のシェル層14の厚さTは1~50μmであり得る。ここで、コア層13の外部のシェル層14の厚さTが1μm未満である場合、シェル層14は十分な強度を提供できないため、コア層13の外部に露出するかカバー層14aから漏洩し得る。したがって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は薬物の安全な保護を保障できない。
【0056】
反面、コア層13の外部のシェル層14の厚さTが50μmを超過する場合、必要以上にシェル層14が形成されてシェル層14による効果が向上せず、材料が浪費され得る。
【0057】
また、コア層13の外部のシェル層14の厚さTはコア層13の物性または形状によって位置別に異なり得る。一例として、コア層13の外部のシェル層14の厚さTはコア層13とベース層12の接合面で最も小さくてもよい(図11参照)。これによって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は流動化工程条件を最適化することなく容易に製造され得る。
【0058】
他の例として、コア層13の外部のシェル層14の厚さTはコア層13全体に亘って均一であり得(図6参照)。これによって、シェル層14はコア層13に含まれた薬物の保護をさらに安全に保障することができる。
【0059】
図2を参照すると、マルチレイヤマイクロニードル構造体10が皮膚1に挿入される場合、コア層13が皮膚1内に位置する((a)参照)。以後、ベース層12が皮膚1により溶解したり物理的にまたは化学的に支持体11から分離されると((b)参照)、シェル層14のカバー層14aとチップ部4bが皮膚1で溶解して薬物13aが皮膚1に伝達される((c)参照)。これによって、コア層13に含まれた薬物13aが損失なしに定量的に皮膚1に伝達され得る。
【0060】
図3を参照すると、すべてのコア層13が皮膚1内に伝達されることを示す。マルチレイヤマイクロニードル構造体10の各層に異なる蛍光物質を搭載した後、体外挿入実験(in vitro insertion test)を遂行した((a)参照)。ここで、コア層13は赤色蛍光物質を搭載し、シェル層14は緑色蛍光物質を搭載した((b)参照)。皮膚伝達面の写真に図示された通り、すべてのコア層13が皮膚1内に伝達されたことが分かる。
【0061】
一方、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体10は多様な形態で構成され得る。
【0062】
一例として、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は微細突起が備えられた支持体11上に形成され得る。この時、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は微細突起上に形成され得る。
【0063】
他の例として、マルチレイヤマイクロニードル構造体10はアプリケータに装着されるペグボードに備えられ得る。この時、ペグボードは開口が形成され、このペグボードを支持体として利用することができる。すなわち、ベース層12はペグボードの開口に充填されて形成され得る。その結果、マルチレイヤマイクロニードル構造体10はペグボードの開口上に備えられ得る。
【0064】
図4は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体でコア層の例示を示した図面である。
【0065】
図4を参照すると、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は薬物を含むコア層13がパウダーまたは液状からなり得る。
【0066】
この時、ベース層12は上側にマイクロキャビティ121が備えられ得る。ここで、パウダーコア層131または液状のコア層132はマイクロキャビティ121に備えられ得る。マイクロキャビティ121はベース層12の上側で中央に備えられ得る。また、マイクロキャビティ121はパウダーコア層131または液状のコア層132を収容するための形状であれば特に限定されない。
【0067】
ここで、コア層13の高さH2はマイクロキャビティ121の高さによって決定され得る。すなわち、パウダーコア層131または液状のコア層132はマイクロキャビティ121に充填され、特性上マイクロキャビティ121の上側に高く形成できないため、コア層13の高さH2はマイクロキャビティ121の高さと実質的に同一であるかり数μmだけ高くてもよい。
【0068】
これによって、薬物を含むコア層13は、シェル層14だけでなくベース層12によっても完全に囲まれるので、マルチレイヤマイクロニードル構造体10は薬物を安全に保護することができる。
【0069】
図5は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のシェル層の役割を検証する実験結果を示すグラフである。
【0070】
本発明者はシェル層14の役割を確認するために下記のような実験を遂行した。まず、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体10を準備した。比較例として、シェル層が備えられず、ベース層上に薬物を含むコア層13のみを具備したマイクロニードル構造体を準備した。この時、マイクロニードル構造体に含む薬物としてアスコルビン酸(ascorbic acid)を使った。
【0071】
図5に図示された通り、マイクロ構造体を形成する前のドロップレットの場合、シェル層を有する場合やシェル層を有さない場合のいずれもアスコルビン酸の活性率が100%であるが、製造が完了したマイクロニードル構造体ではシェル層を有する場合のアスコルビン酸の活性率が91%で、シェル層を有さない場合のアスコルビン酸の活性率が65%に示された。その結果、シェル層によって薬物の損失を効果的に防止することが分かる。
【0072】
図6は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造工程を概略的に示した図面である。
【0073】
図6を参照すると、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造工程は、まず、支持体11に第1組成物12’をディスペンシングする((a)第1ディスペンシング段階)。ここで、支持体11は生体適合性物質からなり得る。また、第1組成物12’は薬物を搭載しない。
【0074】
次に、第1組成物12’を乾燥してベース層12を形成する((b)乾燥段階)。この時、ベース層12は薬物の定量伝達は助けるためのもので、薬物を含むコア層13が皮膚に十分に挿入され得るように一定の高さで形成され得る。
【0075】
選択的に、第2組成物13’がパウダーまたは液状からなる場合、ベース層12上にマイクロキャビティを形成することができる(図4参照)。この時、マイクロキャビティ121はベース層12の上側で中央に備えられ得る。
【0076】
次に、ベース層12上に第2組成物13’をディスペンシングする((c)第2ディスペンシング段階)。この時、第2組成物13’は活性を有する薬物が搭載され得る。
【0077】
選択的に、第2組成物13’がパウダーまたは液状からなる場合、第2組成物13’をマイクロキャビティにディスペンシングすることができる(図4参照)。この時、第2組成物13’は親水性物質または疏水性物質からなり得る。
【0078】
この時、第2組成物13’を乾燥することができる。これによって、第2組成物13’により形成されるコア層13の拡散を防止することができる。
【0079】
次に、ベース層12上に第2組成物13’を覆うように第3組成物14’をディスペンシングする((d)第3ディスペンシング段階)。この時、第3組成物14’は薬物が搭載されていないポリマーからなり得る。
【0080】
次に、流動化、遠心リソグラフィ技法またはドロップレットボーンエアブローイング(DAB;droplet born air blowing)で第2組成物13’によるコア層13および第3組成物14’によるシェル層14を形成する((e)成形段階)。一例として、溶媒を通じて第3組成物14’を流動化し、支持体11に対向する側に上板を配置して遠心リソグラフィ技法でシェル層14を形成することができる。
【0081】
他の例として、支持体11に対向する側に上板を配置して低温で風によって乾燥させるドロップレットボーンエアブローイング(DAB)によりシェル層14を形成することができる。
【0082】
ここで、第2組成物13’が親水性である場合、流動化工程に影響を受けるため、コア層13はシェル層14と類似する形態で製造され得る。
【0083】
これを通じて、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法はシェル層14の製造条件に応じてマルチレイヤマイクロニードル構造体10を製造することができ、したがってコア層13に含まれる薬物の種類にかかわらず、同一の製造条件でマルチレイヤマイクロニードル構造体10を製造できるため、同一の工程によって多様な薬物に対するマイクロニードル構造体を製造することができる。
【0084】
また、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法は、コア層13がシェル層14によって外部に露出しないため、薬物の種類による製造工程の最適化が不要であり、したがって製造工程を単純化できるため製造効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の製造方法はシェル層14に対する製造条件を変更することによって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10全体に対する物理的特性を向上させることができ、薬物を外部環境から安全に保護することができる。
【0086】
図7は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の変形例を示した図面である。
【0087】
図7を参照すると、本発明の製造方法はマルチレイヤマイクロニードル構造体10-1~10-4を多様な形状で製造することができる。
【0088】
図7の(a)に図示された通り、前記第1ディスペンシング段階および乾燥段階は半円状ベース層12-1、台形状ベース層12-2、中間が凹んでいるベース層12-3および円筒状ベース層12-4を製造することができる。
【0089】
図7の(b)に図示された通り、それぞれのベース層12-1~12-4上に薬物を含む第2組成物13’をディスペンシングする。
【0090】
図7の(c)に図示された通り、第3組成物14’をベース層12-1~12-4上で第2組成物13’を覆うようにディスペンシングする。この時、第3組成物14’はベース層12-1~12-4の形態により多様なディスペンシングされる範囲が変わり得る。
【0091】
一例として、半円状ベース層12-1の場合、第3組成物14’は半円状ベース層12-1の一定の高さまで形成され得る。すなわち、第3組成物14’は半円状ベース層12-1の中央を中心に両側に一定の角度まで形成され得る。台形状ベース層12-2の場合、第3組成物14’は台形状ベース層12-2の上面全体に形成され得る。中間が凹んでいるベース層12-3の場合、第3組成物14’は中間が凹んでいるベース層12-3の両側を除いた一部にのみ形成され得る。円筒状ベース層12-4の場合、第3組成物14’は円筒状ベース層12-4の上面全体に形成され得る。
【0092】
図7の(d)に図示された通り、流動化および遠心リソグラフィ技法によってシェル層14-1~14-4を形成する。この時、ベース層12-1~12-4の形態によりマルチレイヤマイクロニードル構造体10-1~10-4全体の形態を異なるように製造することができる。
【0093】
一例として、半円状ベース層12-1の場合、シェル層14-1は半円状ベース層12-1に続いて円錐状に形成され得る。したがって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10-1は断面上外部に膨らんだ下側と中心側に凹んでいる上側の連続的な曲線を有する形態で製造され得る。
【0094】
台形状ベース層12-2の場合、シェル層14-2は台形状ベース層12-2の上面に続いて円錐状に形成され得る。したがって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10-2は断面上一定の高さまで直線をなしてから中心に収束する曲線の形態で形成され得る。
【0095】
中間が凹んでいるベース層12-3の場合、シェル層14-3は中間が凹んでいるベース層12-3の上側で円錐状に形成され得る。したがって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10-3は断面上中間が凹んでいるネック部に続いて中心に収束する曲線の形態で形成され得る。
【0096】
円筒状ベース層12-4の場合、シェル層14-4は円筒状ベース層12-4の上面に続いて円錐状に形成され得る。したがって、マルチレイヤマイクロニードル構造体10-4は一定の高さで直線状の下部に続いて曲線で中心に収束する曲線の形態で形成され得る。
【0097】
図8は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の他の変形例を示した図面である。
【0098】
図8の(a)に図示された通り、マルチレイヤマイクロニードル構造体20はアプリケータ100に装着されるペグボード21に備えられ得る。ここで、アプリケータ100は微細突起110およびピストン120を含むことができる。ピストン120が下降するにつれて微細突起110がペグボード21の開口21aに挿入されて、マルチレイヤマイクロニードル構造体20が皮膚1に挿入され得る。
【0099】
図8の(b)に図示された通り、支持体は開口21aが備えられたペグボード21である。前述したような本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造の製造方法において、第1ディスペンシング段階は開口21aに第1組成物22’を充填することができる。
【0100】
図8の(c)に図示された通り、乾燥段階で第1組成物22’は開口21aに形成されるベース層22を形成することができる。
【0101】
図8の(d)に図示された通り、前述したような本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造の製造方法と類似するように、第2ディスペンシング段階はベース層22上に第2組成物23’をディスペンシングする。
【0102】
図8の(d)に図示された通り、前述したような本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造の製造方法と類似するように、第3組成物をディスペンシングした後、流動化および遠心リソグラフィによってベース層22、コア層23およびシェル層24を含むマルチレイヤマイクロニードル構造体20をペグボード21に形成することができる。
【0103】
図9は、本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のさらに他の変形例を示した図面である。
【0104】
図9の(a)に図示された通り、マルチレイヤマイクロニードル構造体は微細突起31aが備えられた支持体31上に形成され得る。前述したような本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造の製造方法と類似するように、支持体31の微細突起31a上に第1組成物、第2組成物および第3組成物を順次ディスペンシングすることができる。
【0105】
図9の(b)に図示された通り、微細突起31a上に組成物34’に対する流動化および遠心リソグラフィを遂行できる。
【0106】
図9の(c)に図示された通り、支持体31から突出形成された微細突起31a上にシェル層34を形成することができる。
【0107】
図10は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の共焦点レーザー走査顕微鏡分析を示した図面であり、図11は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の各ファクターとシェル構造を示した図面である。
【0108】
図10を参照すると、前述した方法により製造されたマルチレイヤマイクロニードル構造体10を共焦点レーザー走査顕微鏡で分析した。
【0109】
図10の(a)に図示されたマルチレイヤマイクロニードル構造体10の各高さに対する断面イメージが図10の(b)に図示される。この時、図10の(c)のように、マルチレイヤマイクロニードル構造体を上端から見た場合の距離を基礎とした。図10および図11で、緑色はシェル層14を示し、赤色は薬物を含むコア層13を示す。シェル層14と薬物を含むコア層13の混合部分は黄色で示される。
【0110】
マルチレイヤマイクロニードル構造体10の上端部(0μmおよび200μm)は薬物を含まず、下端部(400μmおよび600μm)は薬物を含む。600μmの断面イメージを通じてコア層13がシェル層14により完全に囲まれた形状を確認することができる。
【0111】
図11の(a)に図示された通り、マルチレイヤマイクロニードル構造体10の部位別ファクター(factor)を定義する。ここで、Hはベース層12、コア層13およびシェル層14の全体高さであり、H1はベース層12の高さであり、H2はコア層13の高さ、H3はコア層13の先端からシェル層14の先端までの高さである。また、D1はベース層12の直径であり、D2はコア層13の下面の直径である。
【0112】
図11の(b)に図示された通り、シェル層14はマルチレイヤマイクロニードル構造体10の外形を形成する。この時、シェル層14はコア層13を囲むのでコア層13に対応する内部空間を有する。
【0113】
図11の(c)に図示された通り、Tはコア層13の外部のシェル層14の厚さである。すなわち、Tは水平断面上コア層13を囲んでいるシェル層14の厚さである。
【0114】
図12は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体のコア層物質による形成高さを示したグラフであり、図13は本発明の一実施例に係るマルチレイヤマイクロニードル構造体の流動化工程時間によるコア層の高さとコア層の外部のシェル層の厚さを示したグラフである。
【0115】
製造工程の条件がマルチレイヤマイクロニードル構造体10に及ぼす影響を確認するために次のような実験を遂行した。
【0116】
まず、製造工程によるコア層13の形態の変化を確認するために、互いに異なるコア層13を有するマルチレイヤマイクロニードル構造体10を準備した。ここで、コア層13はヒアルロン酸(HA)、PCLおよびパウダーを使った。
【0117】
図12に図示された通り、ヒアルロン酸(HA)の場合、親水性であるのでマルチレイヤマイクロニードル構造体10の製造工程(特に、流動化工程)によりコア層13の高さの変化があった。これは流動化工程時間によって変わるが流動化工程時間を30秒に固定した場合、コア層13の高さは280μmであった。
【0118】
PCLの場合、疏水性であるのでマルチレイヤマイクロニードル構造体10の製造工程(特に、流動化工程)によりコアの高さの変化が殆どなかった。流動化工程時間を30秒に固定した場合、コア層13の高さは250μmであった。
【0119】
パウダーの場合、マルチレイヤマイクロニードル構造体10の製造工程(特に、流動化工程)によりコアの高さの変化が殆どなかった。この場合、ベース層12のマイクロキャビティの高さによって決定される。コア層13の高さは200μmであった。
【0120】
これを通じて分かるように、マルチレイヤマイクロニードル構造体10はコア層13の組成物により製造工程の影響を受ける。特に、コア層13が親水性である場合、製造工程はコア層13の形態に影響を与え得る。
【0121】
次に、流動化工程に大きな影響を受ける親水性コア層13に対する形態の変化を実験した。この時、コア層13としてヒアルロン酸(HA)を使った。マルチレイヤマイクロニードル構造体10の全体高さH、ベース層12の高さH1およびベース層12の直径D1を固定させた状態で、流動化工程時間を10秒から60まで増加させてマルチレイヤマイクロニードル構造体10を製造した。
【0122】
ここで、マルチレイヤマイクロニードル構造体10の全体高さHは800μm、ベース層12の高さH1は200μm、ベース層12の直径D1は400μmにした。
【0123】
図13に図示された通り、コア層13の高さH2は流動化工程時間に比例するものと示された。反面、コア層13の外部のシェル層14の厚さTは流動化工程時間に反比例するものと示された。
【0124】
すなわち、流動化工程時間が長くなると、コア層13がシェル層14と類似するように変形するためコア層13の高さH2は少しずつ増加する。また、流動化工程時間が長くなると、シェル層14が高さ方向を変形されるためコア層13の外部のシェル層14の厚さTは少しずつ減少する。したがって、コア層13の高さH2はコア層13の外部のシェル層14の厚さTに反比例する。
【0125】
この時、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はマルチレイヤマイクロニードル構造体10の全体高さHおよびベース層12の高さH1が固定されるため、コア層13の高さH2に影響を受けることが分かる。
【0126】
すなわち、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はマルチレイヤマイクロニードル構造体10の全体高さHからベース層12の高さH1とコア層13の高さH2を差し引いた値である。したがって、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はコア層13の高さH2が増加するほど減少する。すなわち、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はコア層13の高さH2に反比例する。その結果、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3は流動化工程時間に反比例する。
【0127】
また、コア層13の先端からシェル層14の先端までの高さH3はシェル層14の厚さTに比例する。
【0128】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案できるであろうが、これもまた本発明の思想範囲内に入ると言える。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12
図13
【国際調査報告】