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特表2023-536328高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法
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  • 特表-高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法 図1
  • 特表-高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/14 20060101AFI20230817BHJP
   C08F 10/10 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08F4/14
C08F10/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507564
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2021070987
(87)【国際公開番号】W WO2022028951
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189546.3
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20195544.0
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レダーホース,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミュールバッハ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】コスジュク,セルゲイ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシレンコ,イリーナ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベレツィアンコ,イヴァン エー.
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015DA14
4J015DA16
4J015DA23
4J100AA06P
4J100FA08
4J100FA12
4J100FA19
(57)【要約】
本発明は、高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する新規な方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは500~100000の数平均分子量Mn(ゲル濾過クロマトグラフィーにより求められる)、及びポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%のα-二重結合及びβ-二重結合含有率(合計で)を有する高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製するバルク又は溶液重合法であって、イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物を、重合触媒として有効である少なくとも1種のルイス酸の存在下で重合することを含み、ルイス酸が、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体、ハロゲン化アルキルアルミニウム-ドナー錯体、三ハロゲン化鉄-ドナー錯体、三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体、四ハロゲン化チタン-ドナー錯体、二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体、二ハロゲン化スズ-ドナー錯体、四ハロゲン化スズ-ドナー錯体及び三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体からなる群から選択され、前記錯体が、ドナーとして
- 少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【化1】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
の混合物を含み、
但し、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する、
方法。
【請求項2】
X1、X2及びX3がそれぞれ、単結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1~R5がそれぞれ、C2~C18アルキル又はC6~C12アリールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(II)の化合物が、酸化トリ-n-ヘキシルホスフィン、酸化トリ-n-オクチルホスフィン、酸化トリイソノニルホスフィン、酸化トリ-n-デシルホスフィン、酸化トリ-n-ドデシルホスフィン、酸化トリイソトリデシルホスフィン、酸化トリ-n-テトラデシルホスフィン、酸化トリイソヘプタデシルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン、酸化トリトリルホスフィン、酸化トリナフチルホスフィン、亜リン酸トリ(n-ブチル)エステル、亜リン酸トリ(n-ヘキシル)エステル、亜リン酸トリ(2-エチルヘキシル)エステル、亜リン酸トリ(n-オクチル)エステル、亜リン酸トリ(2-プロピルヘプチル)エステル、亜リン酸トリ(n-デシル)エステル、亜リン酸トリ(n-ドデシル)エステル、亜リン酸トリ(n-テトラデシル)エステル、亜リン酸トリ(n-ヘキサデシル)エステル、トリ-エチルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリ-n-ヘキシルホスファイト、トリ-n-オクチルホスファイト、トリイソノニルホスファイト、トリ-n-デシルホスファイト、トリ-n-ドデシルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリ-n-テトラデシルホスファイト、トリイソヘプタデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ペンタ(エトキシ)ホスホラン、ペンタ(n-ブチルオキシ)ホスホラン、ペンタ(ヘキシルオキシ)ホスホラン、ペンタ(n-オクチルオキシ)ホスホラン、ペンタ(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラン及びペンタ(フェノキシ)ホスホランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物が、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体、ハロゲン化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体の存在下で重合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物が、重合触媒として有効である三ハロゲン化鉄-ドナー錯体の存在下で重合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ルイス酸と式(I)の化合物とのモル比が、1:0.1~10である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の有機化合物(II)が、少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体が、化合物(II)として、一般式R8-O-R9(式中、可変要素R8及びR9は、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基、C1~C20ハロアルキル基、C5~C8シクロアルキル基、C6~C20アリール基、C6~C20ハロアリール基又はC7~C20アリールアルキル基である)のジヒドロカルビルエーテルである少なくとも1つのエーテル官能基を有する少なくとも1種の有機化合物を含み、前記錯体が用いられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのエーテル官能基を有する少なくとも1種の有機化合物が、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-イソプロピルエーテル及びジ-n-プロピルエーテル、ビス(2-クロロエチル)エーテル及び2-クロロエチルエチルエーテルからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
三ハロゲン化アルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウムと、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比が、三ハロゲン化アルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウムの個々の官能部位それぞれに対して、0.001:1~0.2:1である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
重合が、1つ以上のヒドロキシル基がそれぞれsp3混成炭素原子に結合している有機ヒドロキシル化合物、1個以上のハロゲン原子がそれぞれsp3混成炭素原子に結合している有機ハロゲン化合物、及び水から選択される単官能性又は多官能性の開始剤の更なる使用により行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
開始剤が、水、メタノール、エタノール、1-フェニルエタノール、1-(p-メトキシフェニル)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-フェニル-2-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、1-フェニル-1-クロロエタン、2-フェニル-2-クロロプロパン、塩化tert-ブチル及び1,3又は1,4-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
言及される開始剤と、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、若しくはイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比が、開始剤の個々の官能部位それぞれに対して、0.0005:1~0.1:1であるか、又は水が、唯一の開始剤として、若しくは更なる開始剤としての有機ヒドロキシル化合物及び/若しくは有機ハロゲン化合物と組み合わせて用いられる場合、水と、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、若しくはイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比が、0.0001:1~0.1:1である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
重合が-90℃~+30℃の温度で行われる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の三ハロゲン化鉄、
- 場合により、少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【化2】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、三ハロゲン化鉄-ドナー錯体であって、
少なくとも1種の三ハロゲン化鉄及び式(I)又は式(Ia)若しくは式(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下の融点を有する、
三ハロゲン化鉄-ドナー錯体。
【請求項17】
少なくとも1種の三ハロゲン化ホウ素、
- 場合により、少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【化3】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体であって、
少なくとも1種の三ハロゲン化ホウ素及び式(I)又は式(Ia)若しくは式(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下の融点を有する、
三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体。
【請求項18】
- 三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、三ハロゲン化ガリウム、四ハロゲン化チタン、二ハロゲン化亜鉛、二ハロゲン化スズ、四ハロゲン化スズ及び三ハロゲン化ホウ素からなる群から選択される、少なくとも1種のハロゲン化金属、
- 少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【化4】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、ハロゲン化金属-ドナー錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも70mol%の末端ビニリデン二重結合含有率を有する、高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する新規な方法に関する。本発明は更に、新規なイソブテンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる低反応性ポリマーとは対照的に、高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーは、末端エチレン性二重結合(α-二重結合)、及び後続の反応、例えば無水マレイン酸とのアルダーエン反応に対して感受性のある他の反応性二重結合、例えばβ-二重結合を、高含有率で、具体的には、実際には通常、ポリイソブテンマクロ分子の個々の鎖末端に対して少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも75mol%の含有率で含むポリイソブテンを意味すると理解される。本出願の文脈において、ビニリデン基は、ポリイソブテンマクロ分子におけるその位置が、一般式
【0003】
【化1】
により記載される末端エチレン性二重結合を意味すると理解され、即ち、二重結合はポリマー鎖のα位に存在する。「ポリマー」は、1つのイソブテン単位によって短縮されたポリイソブテン基を表す。ビニリデン基は、多くの種類の反応において、例えば立体的に嵩高い反応物質、例えば無水マレイン酸への熱付加において最も高い反応性を示すが、マクロ分子の更に内側にある二重結合は、ほとんどの場合、官能化反応においてあるとしても低い反応性を示す。高反応性ポリイソブテンの使用としては、例えば独国特許第2702604号明細書に記載されるように、潤滑剤及び燃料用の添加剤を調製するための中間体としての使用が挙げられる。
【0004】
更に、ルイス酸である三塩化アルミニウムはまた、例えばHigh Polymers、第XXIV巻(第2部)、713~733頁(Edward C.Leonard編)、J.Wiley & Sons出版、New York、1971からイソブテンの重合触媒として使用できることが以前から知られている。
【0005】
Polymer Bulletin 第52巻、227~234頁(2004)のSergei V. Kostjuk等の論文「Novel initiating system based on AlCl3 etherate for quasiliving cationic polymerization of styrene」には、2-フェニル-2-プロパノール及び三塩化アルミニウム/ジ-n-ブチルエーテル錯体からなるスチレン重合用の触媒系が記載されている。イソブテンをAlCl3及びジブチレンエーテルの錯体で重合して高反応性ポリイソブテンを得ることが、Sergei V. Kostjuk等、Macromolecules 2010、43、5503~5507に記載されている。
【0006】
Dmitriy I. Shiman、Irina V. Vasilenko、Sergei V. Kostjuk、Journal of Polymer Science、Part A: Polymer Chemistry 2014、52、2386~2393には、重合触媒としてのハロゲン化アルキルアルミニウム及びエーテル錯体の存在下でのイソブテンの重合によるポリイソブテンポリマーの調製が開示されている。
【0007】
国際公開第18/015306号は、ある特定のルイス酸が、少なくとも1種のドナー及び少なくとも1種のイオン液体と一緒に用いられる、高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法を開示している。
【0008】
国際公開第18/015306号に開示されるこのようなイオン液体の例は、とりわけ蛍光体含有化合物であり、そこでカチオンは、永久的第4級ホスホニウム塩である。
【0009】
しかし、このようなイオン液体の欠点は、調製するのに費用がかかり、用いられるルイス酸の反応性を劇的に減弱させることである。
【0010】
Kostjukら、Polym. Chem.、2016、7、5615~5619及びPolymer、145(2018)382~390では、イソブテン重合用の触媒としてのイオン液体が、モノマーの中程度から高い転化率を達成するためにかなり長い反応時間を必要とすることが更に指摘されている。図2は、後者の文書から抜粋した図を示しており、ここでは反応時間に対する[emim]Cl-AlCl3(1)、[emim]Cl-FeCl3(2)及び[emim]Cl-GaCl3(3)の存在下でのイソブテンの転化率及び反応のエキソ選択率が示されている。
【0011】
中国特許出願公開第102399308号明細書(機械翻訳)には、触媒として三塩化アルミニウム及び酸化トリフェニルホスフィンを用いたモノマーとしてのイソブテンのエマルジョン中でのカチオン重合が開示される。ソルビトールモノオレエートが、重合混合物中の乳化剤として用いられる。
【0012】
二重結合含有率についての情報は得られず、240,000の高分子量のポリイソブテンのみが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%の増加した末端ビニリデン二重結合(α-二重結合)及びβ-二重結合の含有率を有する高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを、許容される収率及び高い反応速度で調製する方法を提供することであった。触媒系は、十分な活性と同時に十分な寿命を有する必要があり、その調製は簡単でなくてはならない。更なる本発明の目的は、高い転化率をもたらし、高転化率でも反応性二重結合、とりわけα-二重結合の選択率を保持する触媒系を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも75mol%のα-二重結合及びβ-二重結合の含有率(合計で)を有する高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製する方法であって、イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物を、重合触媒として有効である少なくとも1種のルイス酸の存在下で重合することを含み、ルイス酸が、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体、ハロゲン化アルキルアルミニウム-ドナー錯体、三ハロゲン化鉄-ドナー錯体、三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体、四ハロゲン化チタン-ドナー錯体、二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体、二ハロゲン化スズ-ドナー錯体、四ハロゲン化スズ-ドナー錯体及び三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体からなる群から選択され、前記錯体が、ドナーとして
- 少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【0015】
【化2】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
の混合物を含み、
但し、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する、
方法により達成された。
【0016】
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立してそれぞれ、C1~C20アルキル、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子並びに/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されたC2~C20アルキル、C6~C12アリール、C5~C12シクロアルキル又は酸素、窒素及び/若しくは硫黄を含有する5員若しくは6員の複素環であるか、或いはこれらのうちの2つが、一緒になって、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子並びに/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されていてもよい不飽和、飽和又は芳香族の環を形成し、言及される基はそれぞれ、官能基であるアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環でそれぞれ置換されていてもよい。少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体がこれらの条件下で液体であるため、これはまた「液体配位錯体」又は「LCC」とも称される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】典型的な1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図2】Polymer、145(2018)382~390の文書から抜粋した、反応時間に対する[emim]Cl-AlCl3(1)、[emim]Cl-FeCl3(2)及び[emim]Cl-GaCl3(3)の存在下でのイソブテンの転化率及び反応のエキソ選択率を示すグラフである。
図3】実施例5における反応の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
J. M. Hogg、L. C. Brown、K. Matuszek、P. Latos、A. Chrobok及びM. Swadzba-Kwasny、Dalton Transaction、2017、46、11561は、酸化トリ-n-オクチルホスフィンとそれぞれAlCl3及びTiCl4とから形成される錯体の成功裏の合成及び室温での液体状態について報告している。しかし、これらの錯体のディールス-アルダー反応のみが開示されており、イソブテンの重合は明らかになっていない。
【0019】
これらの定義において、
官能基であるアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてもよいC1~C20アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、1,1-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、α,α-ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p-トリルメチル、1-(p-ブチルフェニル)エチル、p-クロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、p-メトキシベンジル、m-エトキシ(m-ethoxy)ベンジル、2-シアノエチル、2-シアノプロピル、2-メトキシカルボニルエチル、2-エトキシカルボニルエチル、2-ブトキシカルボニルプロピル、1,2-ジ-(メトキシカルボニル)エチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、2-イソプロポキシエチル、2-ブトキシプロピル、2-オクチルオキシエチル、クロロメチル、2-クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1-ジメチル-2-クロロエチル、2-メトキシイソプロピル、2-エトキシエチル、ブチルチオメチル、2-ドデシルチオエチル、2-フェニルチオエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル、2-アミノエチル、2-アミノプロピル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、6-アミノヘキシル、2-メチルアミノエチル、2-メチルアミノプロピル、3-メチルアミノプロピル、4-メチルアミノブチル、6-メチルアミノヘキシル、2-ジメチルアミノエチル、2-ジメチルアミノプロピル、3-ジメチルアミノプロピル、4-ジメチルアミノブチル、6-ジメチルアミノヘキシル、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルエチル、2-フェノキシエチル、2-フェノキシプロピル、3-フェノキシプロピル、4-フェノキシブチル、6-フェノキシヘキシル、2-メトキシエチル、2-メトキシプロピル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、6-メトキシヘキシル、2-エトキシエチル、2-エトキシプロピル、3-エトキシプロピル、4-エトキシブチル又は6-エトキシヘキシルであり、
1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子、並びに/又は1つ以上の置換若しくは非置換イミノ基で中断されたC2~C20アルキルは、例えば5-ヒドロキシ-3-オキサペンチル、8-ヒドロキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-ヒドロキシ-4-オキサヘプチル、11-ヒドロキシ-4,8-ジオキサウンデシル、15-ヒドロキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-ヒドロキシ-5-オキサノニル、14-ヒドロキシ-5,10-オキサテトラデシル、5-メトキシ-3-オキサペンチル、8-メトキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-メトキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-メトキシ-4-オキサヘプチル、11-メトキシ-4,8-ジオキサウンデシル、15-メトキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-メトキシ-5-オキサノニル、14-メトキシ-5,10-オキサテトラデシル、5-エトキシ-3-オキサペンチル、8-エトキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-エトキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-エトキシ-4-オキサヘプチル、11-エトキシ-4,8-ジオキサウンデシル、15-エトキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-エトキシ-5-オキサノニル又は14-エトキシ-5,10-オキサテトラデシルである。
【0020】
2つの基が環を形成する場合、これらは一緒になって1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、2-オキサ-1,3-プロピレン、1-オキサ-1,3-プロピレン、2-オキサ-1,3-プロピレン、1-オキサ-1,3-プロペニレン、1-アザ-1,3-プロペニレン、1-C1~C4アルキル-1-アザ-1,3-プロペニレン、1,4-ブタ-1,3-ジエニレン、1-アザ-1,4-ブタ-1,3-ジエニレン又は2-アザ-1,4-ブタ-1,3-ジエニレンであってよい。
【0021】
酸素及び/若しくは硫黄原子並びに/又はイミノ基の数は、何ら制限されない。一般に、基において5つ以下、好ましくは4つ以下、非常に特に好ましくは3つ以下が存在する。
【0022】
更に、一般に少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子が任意の2個のヘテロ原子の間に存在する。
【0023】
置換及び非置換イミノ基は、例えばイミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n-ブチルイミノ又はtert-ブチルイミノであってよい。
【0024】
更に、
官能基は、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ジ(C1~C4アルキル)アミノ、C1~C4アルキルオキシカルボニル、シアノ又はC1~C4アルキルオキシであってよく、
官能基であるアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてもよいC6~C12アリールは、例えばフェニル、トリル、キシリル、α-ナフチル、β-ナフチル、4-ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジクロロフェニル、4-ブロモフェニル、2-若しくは4-ニトロフェニル、2,4-若しくは2,6-ジニトロフェニル、4-ジメチルアミノフェニル、4-アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル又はエトキシメチル-フェニルであり、
官能基であるアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環で置換されていてもよいC5~C12シクロアルキルは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル又は飽和若しくは不飽和二環系、例えばノルボルニル若しくはノルボルネニルであり、
酸素、窒素及び/又は硫黄を含有する5員又は6員の複素環は、例えばフリル、チエニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチエニル、イソプロピルチエニル又はtert-ブチルチエニルであり、
C1~C4アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルである。
【0025】
R1~R5残基は、好ましくはC2~C18アルキル又はC6~C12アリール、より好ましくはC4~C16アルキル又はC6~C12アリール、更により好ましくはC4~C16アルキル又はC6アリールである。
【0026】
R1~R5残基は飽和又は不飽和、好ましくは飽和であってよい。
【0027】
R1~R5残基並びにX1、X2及びX3は、それぞれ同じであっても又は異なっていてもよく、本発明の一実施形態において、これらはそれぞれ同じである。
【0028】
好ましくは、R1~R5残基は、炭素又は水素以外のいかなるヘテロ原子も有さない。
【0029】
式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の好ましい化合物は、酸化トリ-n-ヘキシルホスフィン、酸化トリ-n-オクチルホスフィン(P888O)、酸化トリイソノニルホスフィン、酸化トリ-n-デシルホスフィン、酸化トリ-n-ドデシルホスフィン、酸化トリイソトリデシルホスフィン、酸化トリ-n-テトラデシルホスフィン、酸化トリイソヘプタデシルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン(PPh3O)、酸化トリトリルホスフィン、酸化トリナフチルホスフィン、亜リン酸トリ(n-ブチル)エステル、亜リン酸トリ(n-ヘキシル)エステル、亜リン酸トリ(2-エチルヘキシル)エステル、亜リン酸トリ(n-オクチル)エステル、亜リン酸トリ(2-プロピルヘプチル)エステル、亜リン酸トリ(n-デシル)エステル、亜リン酸トリ(n-ドデシル)エステル、亜リン酸トリ(n-テトラデシル)エステル、亜リン酸トリ(n-ヘキサデシル)エステル、トリ-エチルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリ-n-ヘキシルホスファイト、トリ-n-オクチルホスファイト、トリイソノニルホスファイト、トリ-n-デシルホスファイト、トリ-n-ドデシルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリ-n-テトラデシルホスファイト、トリイソヘプタデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ペンタ(エトキシ)ホスホラン、ペンタ(n-ブチルオキシ)ホスホラン、ペンタ(ヘキシルオキシ)ホスホラン、ペンタ(n-オクチルオキシ)ホスホラン、ペンタ(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラン及びペンタ(フェノキシ)ホスホランである。
【0030】
対応するホスフィナイト(P(OR1)R2 2)、ホスホナイト(P(OR1)2R2)及びホスホネート(OP(OR1)2R2)、例えばジエチルフェニルホスフィナイト、ジ-n-ブチルフェニルホスフィナイト、ジ(2-エチルヘキシル)フェニルホスフィナイト、エチルジフェニルホスホナイト、n-ブチルジフェニルホスホナイト、(2-エチルヘキシル)ジフェニルホスホナイト、ジエチルフェニルホスホネート、ジ-n-ブチルフェニルホスホネート及びジ(2-エチルヘキシル)フェニルホスホネートが更に有効である。
【0031】
亜リン酸エステルの場合、アルコール成分は、天然、植物性又は動物性の油脂、特に好ましくは亜麻仁油、ココナッツ油、パーム核油、パーム油、大豆油、ピーナッツ油、ココアバター、シアバター、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、菜種油又はヒマシ油から、非常に特に好ましくは亜麻仁油、パーム油、大豆油、ピーナッツ油、ココアバター、シアバター、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、菜種油又はヒマシ油からの、天然、植物性又は動物性の油脂の後処理から工業的に得ることができる脂肪酸混合物由来の脂肪酸アルコールの混合物であってよい。
【0032】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の三ハロゲン化鉄、
- 場合により(任意選択で)、少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【0033】
【化3】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、三ハロゲン化鉄-ドナー錯体である。
【0034】
本発明のこの目的の一つの好ましい実施形態において、化合物(II)が存在する。
【0035】
本発明のこの目的の更なる実施形態は、少なくとも1種の三ハロゲン化鉄及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する、三ハロゲン化鉄-ドナー錯体である。
【0036】
本発明のこの目的の更なる実施形態において、このような三ハロゲン化鉄-ドナー錯体における三ハロゲン化鉄と式(II)の化合物と式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物とのモル比は、一般に1:0~10:0.1~10、好ましくは1:0.1~10:0.2~5、より好ましくは1:0.2~5:0.3~3である。
【0037】
本発明の別の目的は、不飽和モノマーの重合のための、好ましくは不飽和モノマーの、より好ましくはエチレン性不飽和モノマーの、更により好ましくはアルケンの、とりわけイソブテン含有モノマー混合物のカチオン重合のための触媒としてのこのような三ハロゲン化鉄-ドナー錯体の使用である。
【0038】
本発明の別のとりわけ好ましい目的は、少なくとも1種の三ハロゲン化ホウ素、
- 場合により、少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【0039】
【化4】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体である。
【0040】
本発明のこの目的の一実施形態において、化合物(II)が存在する。
【0041】
本発明のこの目的の更なる実施形態は、少なくとも1種の三ハロゲン化ホウ素及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する、三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体である。
【0042】
本発明のこの目的の更なる実施形態において、このような三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体における三ハロゲン化ホウ素と式(II)の化合物と式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物とのモル比は、一般に1:0~10:0.1~10、好ましくは1:0.1~10:0.2~5、より好ましくは1:0.2~5:0.3~3である。
【0043】
本発明の別の目的は、不飽和モノマーの重合のための、好ましくは不飽和モノマーの、より好ましくはエチレン性不飽和モノマーの、更により好ましくはアルケンの、とりわけイソブテン含有モノマー混合物のカチオン重合のための触媒としてのこのような三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体の使用である。
【0044】
本発明の別の目的は、
- 三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、三ハロゲン化ガリウム、四ハロゲン化チタン、二ハロゲン化亜鉛、二ハロゲン化スズ、四ハロゲン化スズ及び三ハロゲン化ホウ素からなる群から選択される、少なくとも1種のハロゲン化金属、
- 少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 式(I)
【0045】
【化5】
又は式(Ia)
P(OR1)(OR2)(OR3)
若しくは式(Ib)
P(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)(OR5)
(式中、
X1、X2及びX3は、互いに独立して、酸素、硫黄又は単結合、好ましくは酸素又は単結合、非常に好ましくは単結合であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、最大20個の炭素原子を有する有機残基である)
の少なくとも1種のリン含有化合物
からなる、ハロゲン化金属-ドナー錯体である。
【0046】
ハロゲン化金属は、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、四ハロゲン化チタン、四ハロゲン化スズ及び三ハロゲン化ホウ素からなる群から選択され、より好ましく三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、四ハロゲン化チタン及び三ハロゲン化ホウ素からなる群から選択され、更により好ましくは三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム及び三ハロゲン化ホウ素からなる群から選択され、とりわけハロゲン化金属は、三ハロゲン化アルミニウム又は更には三塩化アルミニウムである。
【0047】
本発明のこの目的の更なる実施形態は、少なくとも1種のハロゲン化金属及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有するようなハロゲン化金属-ドナー錯体である。
【0048】
本発明のこの目的の更なる実施形態において、このようなハロゲン化金属-ドナー錯体におけるこのようなハロゲン化金属と式(II)の化合物と式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物とのモル比は、一般に1:0~10:0.1~10、好ましくは1:0.1~10:0.2~5、より好ましくは1:0.2~5:0.3~3である。
【0049】
本発明の別の目的は、不飽和モノマーの重合のための、好ましくは不飽和モノマーの、より好ましくはエチレン性不飽和モノマーの、更により好ましくはアルケンの、とりわけイソブテン含有モノマー混合物のカチオン重合のための触媒としてのこのようなハロゲン化金属-ドナー錯体の使用である。
【0050】
イソブテンホモポリマーは、本発明の文脈において、ポリマーをベースとして、少なくとも98mol%程度、好ましくは少なくとも99mol%程度がイソブテンから形成されるポリマーを意味することが理解される。したがって、イソブテンコポリマーは、2mol%未満、好ましくは1mol%未満、非常に好ましくは0.7mol%未満、とりわけ0.5mol%未満のイソブテン以外の共重合モノマー、例えばイソプレン又は直鎖ブテン、好ましくは1-ブテン、シス-2-ブテン及びトランス-2-ブテンを含むポリマーを意味することが理解される。
【0051】
本発明の文脈において、以下の定義が、総称して定義される基に対して適用される:
C1~C8アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。その例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル及びこれらの構造異性体、例えば2-エチルヘキシルである。このようなC1~C8アルキル基はまた、わずかな程度で、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素若しくはハロゲン原子、例えば塩素、及び/又は非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基若しくはニトロ基を含んでいてもよい。
【0052】
C1~C20アルキル基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。その例は、上述のC1~C8アルキル基、並びに更にはn-ノニル、イソノニル、n-デシル、2-プロピルヘプチル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、イソトリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル及びn-エイコシルである。このようなC1~C20アルキル基はまた、わずかな程度で、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素若しくはハロゲン原子、例えば塩素、及び/又は非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基若しくはニトロ基を含んでいてもよい。
【0053】
C5~C8シクロアルキル基は、アルキル側鎖を含んでいてもよい飽和環状基である。その例は、シクロペンチル、2-又は3-メチルシクロペンチル、2,3-、2,4-又は2,5-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、2-、3-又は4-メチルシクロヘキシル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-又は3,6-ジメチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、2-、3-又は4-メチルシクロヘプチル、シクロオクチル、2-、3-、4-又は5-メチルシクロオクチルである。このようなC5~C8シクロアルキル基はまた、わずかな程度で、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素若しくはハロゲン原子、例えば塩素、及び/又は非プロトン性官能基、例えばカルボキシルエステル基、シアノ基若しくはニトロ基を含んでいてもよい。
【0054】
C6~C20アリール基又はC6~C12アリール基は、好ましくは場合により置換されているフェニル、場合により置換されているナフチル、場合により置換されているアントラセニル又は場合により置換されているフェナントレニルである。このようなアリール基は、1~5つの非プロトン性置換基又は非プロトン性官能基、例えばC1~C8アルキル、C1~C8ハロアルキル、例えばC1~C8クロロアルキル又はC1~C8フルオロアルキル、ハロゲン、例えば塩素又はフッ素、ニトロ、シアノ又はフェニルである。このようなアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、フェナントレニル、トリル、ニトロフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、(トリフルオロメチル)フェニル、ビス(トリフルオロメチル)フェニル、(トリクロロ)メチルフェニル及びビス(トリクロロメチル)フェニルである。
【0055】
C7~C20アリールアルキル基又はC7~C12アリールアルキル基は、好ましくは場合により置換されているC1~C4アルキルフェニル、例えばベンジル、o-、m-若しくはp-メチルベンジル、1-若しくは2-フェニルエチル、1-、2-若しくは3-フェニルプロピル又は1-、2-、3-若しくは4-フェニルブチル、場合により置換されているC1~C4アルキルナフチル、例えばナフチルメチル、場合により置換されているC1~C4アルキルアントラセニル、例えばアントラセニルメチル又は場合により置換されているC1~C4アルキルフェナントレニル、例えばフェナントレニルメチルである。このようなアリールアルキル基は、とりわけアリール部分に、1~5つの非プロトン性置換基又は非プロトン性官能基、例えばC1~C8アルキル、C1~C8ハロアルキル、例えばC1~C8クロロアルキル又はC1~C8フルオロアルキル、ハロゲン、例えば塩素又はフッ素、ニトロ又はフェニルを有していてもよい。
【0056】
好適な三ハロゲン化アルミニウムは、とりわけ三フッ化アルミニウム、三塩化アルミニウム又は三臭化アルミニウム、好ましくは三塩化アルミニウムである。
【0057】
有用なハロゲン化アルキルアルミニウムは、とりわけ二ハロゲン化モノ(C1~C4アルキル)アルミニウム又は一ハロゲン化ジ(C1~C4アルキル)アルミニウム、例えば二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム又は塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、好ましくは二塩化エチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム又は塩化ジイソブチルアルミニウム、非常に好ましくは二塩化エチルアルミニウム及び二塩化イソブチアルアルミニウムである。
【0058】
とりわけ好適な三ハロゲン化鉄は、三フッ化鉄、三塩化鉄又は三臭化鉄、好ましくは三塩化鉄である。
【0059】
とりわけ好適な三ハロゲン化ガリウムは、三フッ化ガリウム、三塩化ガリウム又は三臭化ガリウム、好ましくは三塩化ガリウムである。
【0060】
とりわけ好適な四ハロゲン化チタンは、四フッ化チタン、四塩化チタン又は四臭化チタン、好ましくは四塩化チタンである。
【0061】
とりわけ好適な二ハロゲン化亜鉛は、二フッ化亜鉛、二塩化亜鉛又は二臭化亜鉛、好ましくは二塩化亜鉛である。
【0062】
とりわけ好適な二ハロゲン化スズは、二フッ化スズ、二塩化スズ又は二臭化スズ、好ましくは二塩化スズである。
【0063】
とりわけ好適な四ハロゲン化スズは、四フッ化スズ、四塩化スズ又は四臭化スズ、好ましくは四塩化スズである。
【0064】
とりわけ好適な三ハロゲン化ホウ素は、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素及び三臭化ホウ素、好ましくは三フッ化ホウ素及び三塩化ホウ素、より好ましくは三フッ化ホウ素である。
【0065】
これらのルイス酸の中でも、三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、三ハロゲン化鉄、四ハロゲン化チタン及び三ハロゲン化ホウ素が好ましい。
【0066】
三ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、三ハロゲン化鉄及び三ハロゲン化ホウ素が非常に好ましく、三ハロゲン化アルミニウム、とりわけ三塩化アルミニウムが特に好ましい。
【0067】
好ましい実施形態において、イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物は、重合触媒として有効である二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体の存在下で、非常に好ましくは三塩化アルミニウム-ドナー錯体又は三塩化鉄-ドナー錯体の存在下で重合される。
【0068】
ルイス酸と式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物とのモル比は、一般に1:0.1~10、好ましくは1:0.2~5、より好ましくは1:0.3~3、更により好ましくは1:0.4~2、とりわけ1:0.5~1であり、但し、上述したように、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体は、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する。
【0069】
本発明の必然的な態様は、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体が、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下の融点を有することである(示差走査熱量測定により5℃/分の加熱速度で-20℃~150℃の範囲で決定される)。
【0070】
本発明によれば、重合触媒として有効である三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体又は四ハロゲン化チタン-ドナー錯体又は二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体又は二ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は四ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体は、ドナーとして、
- 少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素又は窒素原子を含み、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機化合物(II)、並びに
- 上に定義される式(I)又は式(Ia)若しくは式(Ib)の少なくとも1種の化合物
の混合物を含み、
但し、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体は、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する。
【0071】
式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib)の化合物よりも好ましい。
【0072】
化合物(II)は、少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1つの酸素及び/又は窒素原子、好ましくは少なくとも1つの孤立電子対を有する少なくとも1個の酸素原子を含み、非常に好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物からなる群から選択される。
【0073】
酸素のみを含有する化合物(II)は、窒素含有化合物(II)よりも好ましい。
【0074】
好ましくは、化合物(II)は、少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つのケト官能基を有する有機化合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物及び少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物からなる群から選択され、非常に好ましくは化合物(II)は、少なくとも1つのエーテル官能基を有する有機化合物、とりわけちょうど1つのエーテル官能基を有する有機化合物である。
【0075】
少なくとも1つのエーテル官能基を有する化合物はまた、アセタール及びヘミアセタールを意味することが理解される。エーテル化合物は、1つ以上のエーテル官能基、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は更にそれ以上のエーテル官能基、好ましくは1つ又は2つのエーテル官能基及び非常に好ましくは1つのエーテル官能基を含んでいてもよい。
【0076】
ドナーの混合物は、1種、2種、3種、4種又は更にそれ以上の異なる化合物(II)、好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する化合物、好ましくは1種又は2種の異なる化合物、非常に好ましくは1種の化合物を含んでいてもよい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体又は四ハロゲン化チタン-ドナー錯体又は二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体又は二ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は四ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体、非常に好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体、とりわけ三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体が用いられ、これらはドナーとして
- 一般式R8-O-R9(式中、可変要素R8及びR9は、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基、好ましくはC1~C8アルキル基、とりわけC1~C4アルキル基、C1~C20ハロアルキル基、好ましくはC1~C8ハロアルキル基、とりわけC1~C4ハロアルキル基、C5~C8シクロアルキル基、好ましくはC5~C6シクロアルキル基、C6~C20アリール基、とりわけC6~C12アリール基、C6~C20ハロアリール基、とりわけC6~C12ハロアリール基又はC7~C20アリールアルキル基、とりわけC7~C12アリールアルキルである。C1~C4アルキル基、C1~C4ハロアルキル基、C6~C12アリール基及びC7~C12アリールアルキルが優先される)の少なくとも1種のジヒドロカルビルエーテル、及び
- 式(I)又は式(Ia)若しくは式(Ib)の少なくとも1種の化合物、
の混合物を含み、
但し、少なくとも1種のルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種のリン含有化合物から形成される錯体は、60℃以下、好ましくは40℃以下、とりわけ20℃以下の融点を有する。
【0078】
ハロアルキル及びハロアリールは、好ましくはクロロアルキル又はブロモアルキル及びクロロアリール又はブロモアリール、非常に好ましくはクロロアルキル及びクロロアリールを意味する。ω-ハロアルキル基がとりわけ好ましい。
【0079】
好ましい例は、クロロメチル、1-クロロエタ-1-イル、2-クロロエタ-1-イル、2-クロロプロパ-1-イル、2-クロロプロパ-2-イル、3-クロロプロパ-1-イル及び4-クロロブタ-1-イルである。
【0080】
クロロアリールについての好ましい例は、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル及び4-クロロフェニルである。
【0081】
言及されるジヒドロカルビルエーテルは、開鎖状又は環状であってよく、ここで2つの可変要素R8及びR9は、環状エーテルの場合、結合して環を形成してもよく、このような環はまた、2個又は3個のエーテル酸素原子を含んでいてもよい。このような開鎖状及び環状ジヒドロカルビルエーテルの例は、ジメチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、ビス(クロロメチル)エーテル、ジエチルエーテル、クロロメチルエチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル(CEE)、ビス(2-クロロエチル)エーテル(CE)、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、ジ-n-ヘプチルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル、ジ-(2-エチルヘキシル)エーテル、メチルn-ブチルエーテル、メチルsec-ブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルn-ブチルエーテル、エチルsec-ブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、n-プロピル-n-ブチルエーテル、n-プロピルsec-ブチルエーテル、n-プロピルイソブチルエーテル、n-プロピルtert-ブチルエーテル、イソプロピルn-ブチルエーテル、イソプロピルsec-ブチルエーテル、イソプロピルイソブチルエーテル、イソプロピルtert-ブチルエーテル、メチルn-ヘキシルエーテル、メチルn-オクチルエーテル、メチル2-エチルヘキシルエーテル、エチルn-ヘキシルエーテル、エチルn-オクチルエーテル、エチル2-エチルヘキシルエーテル、n-ブチルn-オクチルエーテル、n-ブチル2-エチルヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-、1,3-及び1,4-ジオキサン、ジシクロヘキシルエーテル、ジフェニルエーテル、アルキルアリールエーテル、例えばアニソール及びフェネトール、ジトリルエーテル、ジキシリルエーテル及びジベンジルエーテルである。
【0082】
更に、二官能性エーテル、例えばジアルコキシベンゼン、好ましくはジメトキシベンゼン、非常に好ましくはベラトロール及びエチレングリコールジアルキルエーテル、好ましくはエチレングリコールジメチルエーテル及びエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0083】
言及されるジヒドロカルビルエーテルの中でも、ジエチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル及びジフェニルエーテルは、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体又は四ハロゲン化チタン-ドナー錯体又は二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体又は二ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は四ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体のためのドナーとして、非常に好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体のためのドナーとして、とりわけ三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体のためのドナーとして、特に有利であることが判明した。
【0084】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの第2級又は第3級ジヒドロカルビル基を有するジヒドロカルビルエーテルは、第1級基のみを有するジヒドロカルビル基よりも好ましい。第1級ジヒドロカルビル基を有するエーテルは、両方のジヒドロカルビル基が第1級炭素原子によりエーテル官能基に結合しているエーテルであり、一方で少なくとも1つの第2級又は第3級ジヒドロカルビル基を有するエーテルは、少なくとも1つのジヒドロカルビル基が第2級又は第3級炭素原子によりエーテル官能基に結合しているエーテルである。
【0085】
明確にするために、例えばジイソブチルエーテルは、イソブチル基の第2級炭素原子がエーテル官能基の酸素には結合していないが、ヒドロカルビル基が第1級炭素原子を介して結合しているため、第1級ジヒドロカルビル基を有するエーテルであると考えられる。
【0086】
第1級ジヒドロカルビル基を有するエーテルについての好ましい例は、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル及びジ-n-プロピルエーテルである。
【0087】
少なくとも1つの第2級又は第3級ジヒドロカルビル基を有するエーテルについての好ましい例は、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル及びアニソールである。
【0088】
加えて、三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体のドナーとして特に有利なジヒドロカルビルエーテルは、ドナー化合物が3~16、好ましくは4~16、とりわけ4~12、特に4~8の総炭素数を有するものであることが判明した。
【0089】
別の好ましい実施形態において、ハロゲン化置換エーテルは、ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化鉄-ドナー錯体又はハロゲン化ホウ素-ドナー錯体との組合せが好ましい。
【0090】
少なくとも1つのカルボン酸エステル官能基を有する有機化合物は、好ましくは一般式R10-COOR11(式中、可変要素R10及びR11は、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基、とりわけC1~C8アルキル基、C5~C8シクロアルキル基、C6~C20アリール基、とりわけC6~C12アリール基、又はC7~C20アリールアルキル基、とりわけC7~C12アリールアルキルである)のヒドロカルビルカルボキシレートである。
【0091】
言及されるヒドロカルビルカルボキシレートの例は、メチルホルメート、エチルホルメート、n-プロピルホルメート、イソプロピルホルメート、n-ブチルホルメート、sec-ブチルホルメート、イソブチルホルメート、tert-ブチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、sec-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、n-プロピルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、sec-ブチルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、tert-ブチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、n-プロピルブチレート、イソプロピルブチレート、n-ブチルブチレート、sec-ブチルブチレート、イソブチルブチレート、tert-ブチルブチレート、メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチルシクロヘキサンカルボキシレート、n-プロピルシクロヘキサンカルボキシレート、イソプロピルシクロヘキサンカルボキシレート、n-ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、sec-ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、イソブチルシクロヘキサンカルボキシレート、tert-ブチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、n-プロピルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、n-ブチルベンゾエート、sec-ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、tert-ブチルベンゾエート、メチルフェニルアセテート、エチルフェニルアセテート、n-プロピルフェニルアセテート、イソプロピルフェニルアセテート、n-ブチルフェニルアセテート、sec-ブチルフェニルアセテート、イソブチルフェニルアセテート及びtert-ブチルフェニルアセテートである。言及されるヒドロカルビルカルボキシレートの中でも、エチルアセテートが、錯体のためのドナーとして特に有利であることが判明した。
【0092】
加えて、ドナーとして特に有利なヒドロカルビルカルボキシレートは、ドナー化合物が3~16、好ましくは4~16、とりわけ4~12、特に4~8の総炭素数を有するものであることが判明し、特に合計3~10個、とりわけ4~6個の炭素原子を有するものが優先される。
【0093】
少なくとも1つのアルデヒド官能基、好ましくはちょうど1つのアルデヒド官能基を有する有機化合物、及び少なくとも1つのケト官能基、好ましくはちょうど1つのケト官能基を有する有機化合物は、1~20個、好ましくは2~10個の炭素原子を典型的には有する。カルボニル基以外の官能基は好ましくは存在しない。
【0094】
少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する好ましい有機化合物は、式R10-CHO(式中、R10は、上述の意味を有する)のものであり、非常に好ましくはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド及びベンズアルデヒドからなる群から選択される。
【0095】
少なくとも1つのケト官能基を有する好ましい有機化合物は、式R10-(C=O)-R11(式中、R10及びR11は、上述の意味を有する)のものであり、非常に好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン及びベンゾフェノンからなる群から選択される。アセトンが最も優先される。
【0096】
少なくとも1つの窒素含有複素環を有する有機化合物は、好ましくは飽和、部分不飽和又は不飽和の窒素を含有する5員又は6員の複素環であり、これは1個、2個又は3個の環窒素原子を含み、酸素及び硫黄の群からの1個若しくは2個の更なる環ヘテロ原子並びに/又はヒドロカルビル基、とりわけC1~C4アルキル基及び/若しくはフェニル、並びに/又は置換基としての官能基若しくはヘテロ原子、とりわけフッ素、塩素、臭素、ニトロ及び/若しくはシアノを有していてもよく、例えばピロリジン、ピロール、イミダゾール、1,2,3-若しくは1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、ピペリジン、ピラザン、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3-、1,2,4-若しくは1,2,5-トリアジン、1,2,5-オキサチアジン、2H-1,3,5-チアジアジン又はモルホリンである。
【0097】
しかし、非常に特に好適なこの種の窒素含有塩基性化合物は、ピリジン又はピリジンの誘導体(とりわけモノ、ジ、又はトリ-C1~C4アルキル置換ピリジン)、例えば2-、3-若しくは4-メチルピリジン(ピコリン)、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-若しくは3,6-ジメチルピリジン(ルチジン)、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)、2-、3-若しくは4-tert-ブチルピリジン、2-tert-ブチル-6-メチルピリジン、2,4-、2,5-、2,6-若しくは3,5-ジ-tert-ブチルピリジン又は他に2-、3-若しくは4-フェニルピリジンである。
【0098】
言及されるドナー化合物(混合物中の化合物(II)の合計、好ましくはエーテルの合計に式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物の合計を加えて算出される)と、ドナー錯体における三ハロゲン化アルミニウムとの、又はハロゲン化アルキルアルミニウムとの、又は三ハロゲン化鉄との、又は三ハロゲン化ガリウムとの、又は四ハロゲン化チタンとの、又は二ハロゲン化亜鉛との、又は二ハロゲン化スズとの、又は四ハロゲン化スズとの、又は三ハロゲン化ホウ素とのモル比は、一般に0.4:1~2.0:1、とりわけ0.5:1~1.8:1、特に0.7:1~1.6:1の範囲で変動し、ほとんどの場合、これは0.9:1~1.5:1である。しかし、より過剰なドナー化合物、しばしば最大10倍、とりわけ3倍モル過剰のドナー化合物で処理することも可能である。この場合には、過剰量のドナー化合物は、更に溶媒又は希釈剤として作用する。
【0099】
混合物中の化合物(II)、好ましくはエーテル化合物(それぞれ化合物(II)の合計、エーテルの合計として算出される)と、式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物(式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物の合計として算出される)とのモル比は、一般に0.1:1~1:0.1、好ましくは0.2:1~1:0.2、非常に好ましくは0.25:1~1:0.5、より好ましくは0.3:1~1:0.66、とりわけ0.3:1~1:1、更に0.35:1~1:1で変動する。好ましい実施形態において、化合物(II)、エーテルはそれぞれ等モルのモル比で存在する。
【0100】
言及されるルイス酸、好ましくは言及される三ハロゲン化アルミニウム若しくはハロゲン化アルキルアルミニウムと、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比は、言及されるルイス酸、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウムの個々の官能部位それぞれに対して、一般に0.001:1~0.2:1、好ましくは0.002:1~0.1:1、非常に好ましくは0.003:1~0.08:1、とりわけ0.005:1~0.05:1、特に0.007:1~0.03:1である。
【0101】
典型的には、ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体は、重合前に、各ハロゲン化金属、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウム、とりわけ無水二塩化アルキルアルミニウム又は塩化ジアルキルアルミニウム及びドナー化合物から別個に調製され、次いで、-通常は、不活性溶媒、例えばハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン又はより好ましくは非ハロゲン化炭化水素中に溶解され-、重合媒体に添加される。しかし、あまり好ましくない実施形態において、錯体はまた、重合前にその場で(in situ)調製されてもよい。
【0102】
本発明の利点は、ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物の錯体が液体であり、したがって反応媒体に簡単に適用できることである。
【0103】
ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物の錯体の更なる利点は、ルイス酸及びイオン液体の錯体と比較して、ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物を単に混合することによりはるかに簡単に製造され、ルイス酸と式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物との比を調整することにより錯体の反応性を広範に変更できることである。
【0104】
重合触媒が、用いられる溶媒に完全に可溶でない場合、例えば分散液を激しく撹拌することにより、重合触媒を不活性溶媒中に分散させるのが有利であり得る。分散は、分散に好適な任意の装置でなされ得る。例えばSkandex製等の振とう装置が、例として言及され得、又は例えば超音波装置、高圧ホモジナイザー、2本、3本、4本又は5本ロールミル、ミニミル、Henschelミキサー、振とうミル、オングミル、ギアミル、ビーズミル、ウェットミル、サンドミル、アトライタ、コロイドミル、Ultra Turraxスターラーを備えた超音波ホモジナイザーにおいて、及び特に例えば2本、3本、4本又は5本ロールミル、ミニミル、振とうミル、オングミル、ギアミル、ビーズミル、ウェットミル、サンドミル、コロイドミル、ボールミル、具体的には撹拌ボールミルにおいて粉砕することによりなされ得る。
【0105】
好ましい実施形態において、重合前の不活性溶媒中でのルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又はハロゲン化ホウ素-ドナー錯体の超音波処理は、重合転化率の改善の一助となる。
【0106】
本発明の好ましい実施形態において、重合は、有機ヒドロキシル化合物、有機ハロゲン化合物及び水から選択される単官能性又は多官能性、とりわけ単官能性、二官能性又は三官能性の開始剤の更なる使用により行われる。言及される開始剤の混合物、例えば2種以上の有機ヒドロキシル化合物の混合物、2種以上の有機ハロゲン化合物の混合物、1種以上の有機ヒドロキシル化合物及び1種以上の有機ハロゲン化合物の混合物、1種以上の有機ヒドロキシル化合物及び水の混合物、又は1種以上の有機ハロゲン化合物及び水の混合物も使用することが可能である。開始剤は、単官能性、二官能性又は多官能性であってよく、即ち重合反応を開始する1つ、2つ又はそれ以上のヒドロキシル基又はハロゲン原子が開始剤分子中に存在してもよい。二官能性又は多官能性開始剤の場合、2つ以上の、とりわけ2つ又は3つのポリイソブテン鎖末端を有するテレケリックイソブテンポリマーが典型的には得られる。
【0107】
分子内に1つのヒドロキシル基のみを有し、単官能性開始剤として好適である有機ヒドロキシル化合物としては、とりわけアルコール及びフェノール、特に一般式R12-OH(式中、R12はC1~C20アルキル基、とりわけC1~C8アルキル基、C5~C8シクロアルキル基、C6~C20アリール基、とりわけC6~C12アリール基又はC7~C20アリールアルキル基、とりわけC7~C12アリールアルキル基を示す)のものが挙げられる。加えて、R12基はまた、上述の構造の混合物を含んでいてもよく、並びに/或いは既に言及されたもの以外の他の官能基、例えばケト官能基、ニトロキシド若しくはカルボキシル基、及び/又は複素環構造要素を有していてもよい。
【0108】
このような有機モノヒドロキシル化合物の典型的な例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、p-メトキシフェノール、o-、m-及びp-クレゾール、ベンジルアルコール、p-メトキシベンジルアルコール、1-及び2-フェニルエタノール、1-及び2-(p-メトキシフェニル)エタノール、1-、2-及び3-フェニル-1-プロパノール、1-、2-及び3-(p-メトキシフェニル)-1-プロパノール、1-及び2-フェニル-2-プロパノール、1-及び2-(p-メトキシフェニル)-2-プロパノール、1-、2-、3-及び4-フェニル-1-ブタノール、1-、2-、3-及び4-(p-メトキシフェニル)-1-ブタノール、1-、2-、3-及び4-フェニル-2-ブタノール、1-、2-、3-及び4-(p-メトキシフェニル)-2-ブタノール、9-メチル-9H-フルオレン-9-オール、1,1-ジフェニルエタノール、1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール、1,1-ジフェニルプロパノール、4-(1-ヒドロキシ-1-フェニルエチル)ベンゾニトリル、シクロプロピルジフェニルメタノール、1-ヒドロキシ-1,1-ジフェニルプロパン-2-オン、ベンジル酸、9-フェニル-9-フルオレノール、トリフェニルメタノール、ジフェニル(4-ピリジニル)メタノール、α,α-ジフェニル-2-ピリジンメタノール、4-メトキシトリチルアルコール(とりわけ固相としてポリマー結合したもの)、α-tert-ブチル-4-クロロ-4'-メチルベンズヒドロール、シクロヘキシルジフェニルメタノール、α-(p-トリル)-ベンズヒドロール、1,1,2-トリフェニルエタノール、α,α-ジフェニル-2-ピリジンエタノール、α,α-4-ピリジルベンズヒドロールN-オキシド、2-フルオロトリフェニルメタノール、トリフェニルプロパルギルアルコール、4-[(ジフェニル)ヒドロキシメチル]ベンゾニトリル、1-(2,6-ジメトキシフェニル)-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノール、1,1,2-トリフェニルプロパン-1-オール及びp-アニスアルデヒドカルビノールである。
【0109】
分子内に2つのヒドロキシル基を有し、二官能性開始剤として好適である有機ヒドロキシル化合物は、2~30、とりわけ3~24、特に4~20の総炭素数を有するとりわけ2価アルコール又はジオール、並びに6~30、とりわけ8~24、特に10~20の総炭素数を有するビスフェノール、例えばエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(o-、m-又はp-ジクミルアルコール)、ビスフェノールA、9,10-ジヒドロ-9,10-ジメチル-9,10-アントラセンジオール、1,1-ジフェニルブタン-1,4-ジオール、2-ヒドロキシトリフェニルカルビノール並びに9-[2-(ヒドロキシメチル)フェニル]-9-フルオレノールである。
【0110】
分子内に1個のハロゲン原子を有し、単官能性開始剤として好適である有機ハロゲン化合物は、特に一般式R13-Hal(式中、Halは、フッ素、ヨウ素、とりわけ塩素及び臭素から選択されるハロゲン原子であり、R13は、C1~C20アルキル基、とりわけC1~C8アルキル基、C5~C8シクロアルキル基又はC7~C20アリールアルキル基、とりわけC7~C12アリールアルキル基を示す)の化合物である。加えて、R13基はまた、上述の構造の混合物を含んでいてもよく、並びに/又は既に言及されたもの以外の他の官能基、例えばケト官能基、ニトロキシド若しくはカルボキシル基及び/若しくは複素環構造要素を有していてもよい。
【0111】
このようなモノハロゲン化合物の典型的な例は、塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル、1-クロロプロパン、1-ブロモプロパン、2-クロロプロパン、2-ブロモプロパン、1-クロロブタン、1-ブロモブタン、塩化sec-ブチル、臭化sec-ブチル、塩化イソブチル、臭化イソブチル、塩化tert-ブチル、臭化tert-ブチル、1-クロロペンタン、1-ブロモペンタン、1-クロロヘキサン、1-ブロモヘキサン、1-クロロヘプタン、1-ブロモヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモオクタン、1-クロロ-2-エチルヘキサン、1-ブロモ-2-エチルヘキサン、塩化シクロヘキシル、臭化シクロヘキシル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、1-フェニル-1-クロロエタン、1-フェニル-1-ブロモエタン、1-フェニル-2-クロロエタン、1-フェニル-2-ブロモエタン、1-フェニル-1-クロロプロパン、1-フェニル-1-ブロモプロパン、1-フェニル-2-クロロプロパン、1-フェニル-2-ブロモプロパン、2-フェニル-2-クロロプロパン、2-フェニル-2-ブロモプロパン、1-フェニル-3-クロロプロパン、1-フェニル-3-ブロモプロパン、1-フェニル-1-クロロブタン、1-フェニル-1-ブロモブタン、1-フェニル-2-クロロブタン、1-フェニル-2-ブロモブタン、1-フェニル-3-クロロブタン、1-フェニル-3-ブロモブタン、1-フェニル-4-クロロブタン、1-フェニル-4-ブロモブタン、2-フェニル-1-クロロブタン、2-フェニル-1-ブロモブタン、2-フェニル-2-クロロブタン、2-フェニル-2-ブロモブタン、2-フェニル-3-クロロブタン、2-フェニル-3-ブロモブタン、2-フェニル-4-クロロブタン及び2-フェニル-4-ブロモブタンである。
【0112】
分子内に2個のハロゲン原子を有し、二官能開始剤として好適である有機ハロゲン化合物は、例えば1,3-ビス(1-ブロモ-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(2-クロロ-2-プロピル)ベンゼン(1,3-ジクミルクロリド)及び1,4-ビス(2-クロロ-2-プロピル)ベンゼン(1,4-ジクミルクロリド)である。
【0113】
開始剤は、より好ましくは1つ以上のヒドロキシル基がそれぞれsp3混成炭素原子に結合している有機ヒドロキシル化合物、1個以上のハロゲン原子がそれぞれsp3混成炭素原子に結合している有機ハロゲン化合物、及び水から選択される。これらの中でも、特に1つ以上のヒドロキシル基がそれぞれsp3混成炭素原子に結合している有機ヒドロキシル化合物から選択される開始剤が優先される。
【0114】
開始剤としての有機ハロゲン化合物の場合、更に、1個以上のハロゲン原子がそれぞれ第2級又はとりわけ第3級のsp3混成炭素原子に結合しているものが特に優先される。
【0115】
このようなsp3混成炭素原子上に、ヒドロキシル基に加えて、R12、R13及びR14基を有していてもよい開始剤が特に優先され、R12、R13及びR14基は、それぞれ独立して、水素、C1~C20アルキル、C5~C8シクロアルキル、C6~C20アリール、C7~C20アルキルアリール又はフェニルであり、ここで、いずれの芳香環も、置換基として1つ以上の、好ましくは1つ又は2つのC1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル又はC1~C4ハロアルキル基を有していてもよく、可変要素R12、R13及びR14のうちの1つ以下が水素であり、可変要素R12、R13及びR14の少なくとも1つが、置換基として、1つ以上の、好ましくは1つ又は2つのC1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル又はC1~C4ハロアルキル基を有していてもよいフェニルである。
【0116】
本発明について、水、メタノール、エタノール、1-フェニルエタノール、1-(p-メトキシフェニル)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-フェニル-2-プロパノール(クメン)、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、1-フェニル-1-クロロエタン、2-フェニル-2-クロロプロパン(塩化クミル)、塩化tert-ブチル及び1,3又は1,4-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンから選択される開始剤が、非常に特に優先される。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、1-フェニルエタノール、1-(p-メトキシフェニル)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-フェニル-2-プロパノール(クメン)、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、1-フェニル-1-クロロエタン及び1,3-又は1,4-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンから選択される開始剤が、非常に特に優先される。
【0117】
言及される開始剤と、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比は、開始剤の個々の官能部位それぞれに対して、一般に0.0005:1~0.1:1、とりわけ0.001:1~0.075:1、特に0.0025:1~0.05:1である。水が、唯一の開始剤として、又は更なる開始剤としての有機ヒドロキシル化合物及び/若しくは有機ハロゲン化合物と組み合わせて用いられる場合、水と、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマーとの、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比は、とりわけ0.0001:1~0.1:1、特に0.0002:1~0.05:1、好ましくは0.0008:1~0.04:1、非常に好ましくは特に0.001:1~0.03:1である。
【0118】
好ましい実施形態において、モノマー混合物中の開始剤の量は、10重量%以下、好ましくは7.5重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更により好ましくは3重量%以下、とりわけ2重量%以下である。
【0119】
水が唯一の開始剤として、又は有機ヒドロキシル化合物と組み合わせて用いられる場合、モノマー混合物中の開始剤の量は、3.2重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更により好ましくは1.5重量%以下、とりわけ1重量%以下である。
【0120】
有機ヒドロキシル又はハロゲン化合物として添加された一定割合の開始剤分子は、ポリマー鎖内に組み込まれる。このように組み込まれた有機開始剤分子により開始されるポリマー鎖の割合(Ieff)は、最大100%となり得、一般に5~90%である。残りのポリマー鎖は、微量の水分に由来する開始剤分子としての水、又は連鎖移動反応のいずれかから生じる。
【0121】
本発明の更に好ましい実施形態において、重合は、イソブテンの単独重合の場合に用いられるイソブテンモノマー1mol、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量1molに対して、0.01~10mmol、とりわけ0.05~5.0mmol、特に0.1~1.0mmolの窒素含有塩基性化合物の存在下で行われる。
【0122】
用いられるこのような窒素含有塩基性化合物は、一般式R14-NR15R16(式中、可変要素R14、R15及びR16は、それぞれ独立して水素、C1~C20アルキル基、とりわけC1~C8アルキル基、C5~C8シクロアルキル基、C6~C20アリール基、とりわけC6~C12アリール基又はC7~C20アリールアルキル基、とりわけC7~C12アリールアルキル基である)の脂肪族、脂環式若しくは芳香族のアミン又は他にアンモニアであってよい。これらの可変要素がいずれも水素でない場合、アミンは第3級アミンである。これらの可変要素のうちの1つが水素である場合、アミンは第2級アミンである。これらの可変要素のうちの2つが水素である場合、アミンは第1級アミンである。これらの可変要素全てが水素である場合、アミンはアンモニアである。
【0123】
一般式R14-NR15R16のこのようなアミンの典型的な例は、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-tert-アミルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-tert-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-tert-アミルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-(2-エチルヘキシル)アミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルエチルアミン、メチル-n-ブチルアミン、N-メチル-N-フェニルアミン、N,N-ジメチル-N-フェニルアミン、N-メチル-N,N-ジフェニルアミン又はN-メチル-N-エチル-N-n-ブチルアミンである。
【0124】
加えて、用いられるこのような窒素含有塩基性化合物はまた、複数の窒素原子を有し、とりわけ2個又は3個の窒素原子を有し、2~20個の炭素原子を有する化合物であってよく、これらの窒素は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族、脂環式若しくは芳香族の置換基を有していてもよい。このようなポリアミンの例は、1,2-エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-メチル-1,2-エチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,2-エチレンジアミン、N,N'-ジメチル-1,2-エチレンジアミン又はN,N-ジメチル-1,3-プロピレンジアミンである。
【0125】
しかし、好適なこの種の窒素含有塩基性化合物は、とりわけ飽和、部分不飽和又は不飽和の窒素を含有する5員又は6員の複素環であり、これは1個、2個又は3個の環窒素原子を含み、酸素及び硫黄の群からの1個若しくは2個の更なる環ヘテロ原子並びに/又はヒドロカルビル基、とりわけC1~C4アルキル基及び/若しくはフェニル、並びに/又は置換基としての官能基若しくはヘテロ原子、とりわけフッ素、塩素、臭素、ニトロ及び/若しくはシアノを有していてもよく、例えばピロリジン、ピロール、イミダゾール、1,2,3-若しくは1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、ピペリジン、ピラザン、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3-、1,2,4-若しくは1,2,5-トリアジン、1,2,5-オキサチアジン、2H-1,3,5-チアジアジン又はモルホリンである。
【0126】
しかし、非常に特に好適なこの種の窒素含有塩基性化合物は、ピリジン又はピリジンの誘導体(とりわけモノ、ジ、又はトリ-C1~C4アルキル置換ピリジン)、例えば2-、3-若しくは4-メチルピリジン(ピコリン)、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-若しくは3,6-ジメチルピリジン(ルチジン)、2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)、2-、3-若しくは4-tert-ブチルピリジン、2-tert-ブチル-6-メチルピリジン、2,4-、2,5-、2,6-若しくは3,5-ジ-tert-ブチルピリジン又は他に2-、3-若しくは4-フェニルピリジンである。
【0127】
単一の窒素含有塩基性化合物又はこのような窒素含有塩基性化合物の混合物を使用することが可能である。
【0128】
重合されるモノマーとしてのイソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物の使用について、好適なイソブテン源は、純イソブテン並びに、イソブテン系C4炭化水素流、例えばC4ラフィネート、とりわけ「ラフィネート1」、イソブタン脱水素からのC4留分、スチームクラッカーからの及びFCCクラッカー(流動接触分解)からのC4留分の両方であるが、但しこれらから実質的にそこに存在する1,3-ブタジエンが除去される。FCC精製ユニットからのC4炭化水素流は、「b/b」流としても知られている。更に好適なイソブテン系C4炭化水素流は、例えばプロピレン-イソブタン共酸化の生成物流又はメタセシスユニットからの生成物流であり、これらは一般に慣例的な精製及び/又は濃縮後に用いられる。好適なC4炭化水素流は、一般に500ppm未満、好ましくは200ppm未満のブタジエンを含む。1-ブテン並びにシス-及びトランス-2-ブテンの存在は、実質的には重要ではない。典型的には、言及されるC4炭化水素流におけるイソブテン濃度は、40重量%~60重量%の範囲にある。例えば、ラフィネート1は、一般に本質的に30重量%~50重量%のイソブテン、10重量%~50重量%の1-ブテン、10重量%~40重量%のシス-及びトランス-2-ブテン並びに2重量%~35重量%のブタンからなり、本発明による重合法において、ラフィネート1における非分岐鎖のブテンは、一般に事実上不活性に挙動し、イソブテンのみが重合される。
【0129】
好ましい実施形態において、重合に用いられるモノマー源は、1重量%~100重量%、とりわけ1重量%~99重量%、特に1重量%~90重量%、より好ましくは30重量%~60重量%のイソブテン含有率を有する工業用C4炭化水素流、とりわけラフィネート1流、FCC精製ユニットからのb/b流、プロピレン-イソブタン共酸化からの生成物流又はメタセシスユニットからの生成物流である。
【0130】
とりわけラフィネート1流がイソブテン源として用いられる場合、唯一の開始剤として又は更なる開始剤としての水の使用は、特に重合が-20℃~+30℃、とりわけ0℃~+20℃の温度でなされる場合に有用であることが判明した。しかし、-20℃~+30℃、とりわけ0℃~+20℃の温度で、ラフィネート1流がイソブテン源として用いられる場合、開始剤の使用を省くことも可能である。
【0131】
言及されるイソブテン系モノマー混合物は、重大な収率又は選択率の損失なしに、少量の不純物、例えば水、カルボン酸又は鉱酸を含んでいてもよい。例えば固体吸着材、例えば活性炭、分子ふるい又はイオン交換体への吸着により、このような有害な物質をイソブテン系モノマー混合物から除去することによって、これらの不純物の濃縮を防ぐことが適当である。
【0132】
イソブテン又はイソブテン系炭化水素混合物のモノマー混合物を、イソブテンと共重合可能なオレフィン性不飽和モノマーとともに転化させることも可能である。イソブテンのモノマー混合物が、好適なコモノマーと共重合される場合、モノマー混合物は、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、とりわけ少なくとも20重量%のイソブテン、好ましくは最大95重量%、より好ましくは最大90重量%、とりわけ最大80重量%のコモノマーを含む。
【0133】
有用な共重合性モノマーとしては、ビニル芳香族、例えばスチレン及びα-メチルスチレン、C1~C4アルキルスチレン、例えば2-、3-及び4-メチルスチレン並びに4-tert-ブチルスチレン、ハロスチレン、例えば2-、3-又は4-クロロスチレン及び5~10個の炭素原子を有するイソオレフィン、例えば2-メチルブテン-1、2-メチルペンテン-1、2-メチルヘキセン-1、2-エチルペンテン-1、2-エチルヘキセン-1及び2-プロピルヘプテン-1が挙げられる。更に有用なコモノマーとしては、シリル基を有するオレフィン、例えば1-トリメトキシシリルエテン、1-(トリメトキシシリル)プロペン、1-(トリメトキシシリル)-2-メチルプロペン-2、1-[トリ(メトキシエトキシ)-シリル]エテン、1-[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペン及び1-[トリ(メトキシエトキシ)シリル]-2-メチルプロペン-2が挙げられる。加えて、-重合条件に応じて-有用なコモノマーとしてはまた、イソプレン、1-ブテン並びにシス-及びトランス-2-ブテンが挙げられる。
【0134】
本発明による方法がコポリマーの調製に用いられる場合、本方法は、ランダムポリマーを優先的に形成するように、又はブロックコポリマーを優先的に形成するように構成されてもよい。ブロックコポリマーを調製するために、例えば、異なるモノマーが、連続的に重合反応に供給されてもよく、その場合には、第2のコモノマーはとりわけ、第1のコモノマーが既に少なくとも部分的に重合されるまで添加されない。この様式では、ジブロック、トリブロック及びより高次のブロックコポリマーを得ることができ、モノマーの添加の順序に従って、末端ブロックとして、一方又は他方のコモノマーのブロックを有する。しかし、場合によっては、ブロックコポリマーはまた、全てのコモノマーが同時に重合反応に供給された場合に形成されるが、これらのうちの1種は、他のもの(多数可)より著しく速く重合する。これは、とりわけイソブテン及びビニル芳香族化合物、とりわけスチレンが本発明による方法において共重合される場合に当てはまる。これにより、好ましくは末端ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマーが形成される。これはビニル芳香族化合物、とりわけスチレンがイソブテンより著しくゆっくり重合するという事実に起因する。
【0135】
重合は、連続式又はバッチ式のいずれかでなされ得る。連続式の方法は、液相における三フッ化ホウ素系触媒の存在下でのイソブテンの連続重合のための公知の先行技術の方法と同様に行われ得る。
【0136】
本発明による方法は、低温、例えば-90℃~0℃、又は高温、即ち少なくとも0℃、例えば0℃~+30℃若しくは0℃~+50℃での実施にも好適である。しかし、本発明による方法における重合は、好ましくは比較的低温、一般に-70℃~-10℃で、とりわけ-60℃~-15℃で行われる。
【0137】
本発明による方法における重合が、重合されるモノマー又はモノマー混合物の沸点で、又はそれを上回ってなされる場合、これは、圧力容器、例えばオートクレーブ又は圧力反応器内で好ましくは行われる。
【0138】
本発明によれば、重合は、バルク中又は溶液中での重合として行われる。
【0139】
本発明による方法における重合は、好ましくは不活性希釈剤の存在下で行われる。用いられる不活性希釈剤は、一般に重合反応中に生じる反応溶液の粘度の増大を、進行する反応の熱の除去が確保され得るような程度に低下させるのに好適でなくてはならない。好適な希釈剤は、用いられる試薬に対して不活性である溶媒又は溶媒混合物である。好適な希釈剤は、例えば脂肪族炭化水素、例えばn-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン及びイソオクタン、脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン及びシクロヘキサン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、並びにハロゲン化炭化水素、とりわけハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチル、ジクロロメタン及びトリクロロメタン(クロロホルム)、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエタン及び1-クロロブタン、更にはハロゲン化芳香族炭化水素及びアルキル側鎖においてハロゲン化されたアルキル芳香族、例えばクロロベンゼン、モノフルオロメチルベンゼン、ジフルオロメチルベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼン、並びに上述の希釈剤の混合物である。用いられる希釈剤又は言及される溶媒混合物において用いられる成分はまた、イソブテン系C4炭化水素流の不活性成分である。非ハロゲン化溶媒は、ハロゲン化溶媒のリストよりも好ましい。
【0140】
本発明の重合は、不活性希釈剤として、ハロゲン化炭化水素中で、とりわけハロゲン化脂肪族炭化水素中で、又はハロゲン化炭化水素の、とりわけハロゲン化脂肪族炭化水素の混合物中で、又は少なくとも1種のハロゲン化炭化水素、とりわけハロゲン化脂肪族炭化水素、及び少なくとも1種の脂肪族、脂環式若しくは芳香族の炭化水素の混合物中で、例えば、典型的には10:90~90:10、とりわけ50:50~85:15の体積比でのジクロロメタン及びn-ヘキサンの混合物中で行われ得る。使用前に、希釈剤から、不純物、例えば水、カルボン酸又は鉱酸が、例えば固体吸着材、例えば活性炭、分子ふるい又はイオン交換体への吸着により好ましくは除去される。
【0141】
好ましい実施形態において、本発明の重合は、ハロゲンを含まない脂肪族又はとりわけハロゲンを含まない芳香族の炭化水素、とりわけトルエン中で行われる。本実施形態について、言及される有機ヒドロキシル化合物及び/若しくは言及される有機ハロゲン化合物と組み合わせた又はとりわけ唯一の開始剤としての水が、特に有利であることが判明した。
【0142】
別の好ましい実施形態において、本発明の重合は、ハロゲンを含まない脂肪族又は脂環式、好ましくは脂肪族の炭化水素、とりわけヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン及びこれらを含む混合物中で行われる。
【0143】
本発明による方法における重合は、好ましくは実質的に非プロトン性反応条件下で、とりわけ実質的に無水反応条件下で行われる。実質的に非プロトン性反応条件、及び実質的に無水反応条件は、それぞれ、反応混合物中のプロトン性不純物の含有量及び含水量が、50ppm未満、とりわけ5ppm未満であることを意味すると理解される。したがって、一般に、供給原料は、物理的及び/又は化学的な手段により使用前に乾燥される。より詳細には、微量の水を溶媒から実質的に除去するのに十分な量で、有機金属化合物、例えば有機リチウム、有機マグネシウム又は有機アルミニウム化合物による慣例的な予備精製及び予備乾燥後に、溶媒として用いられる脂肪族又は脂環式の炭化水素を混合するのが有用であることが判明した。次いで、このように処理された溶媒は、好ましくは反応容器内で直接濃縮される。また、重合されるモノマー、とりわけイソブテン又はイソブテン系混合物で類似の様式で進行することが可能である。他の慣例的な乾燥材、例えば分子ふるい又は予備乾燥酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム又は酸化バリウムによる乾燥も好適である。金属、例えばナトリウム若しくはカリウムによる、又は金属アルキルによる乾燥が選択肢でないハロゲン化溶媒からは、その目的に好適な乾燥材、例えば塩化カルシウム、五酸化リン又は分子ふるいにより水又は微量の水が除去される。金属アルキルによる処理が同様に選択肢でない供給原料、例えばビニル芳香族化合物を同様の様式で乾燥させることも可能である。用いられる開始剤の一部又は全てが水である場合でも、開始剤である水を制御された特定の量で使用することを可能にするために、反応前の乾燥により、溶媒及びモノマーから残留水分を非常に大幅に又は完全に除去することが好ましく、その結果として、より高いプロセス制御及びその結果の高い再現性が得られる。
【0144】
ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体が、イソブテン又はイソブテン系モノマー混合物と所望の反応温度で接触すると同時に、イソブテン又はイソブテン系出発材料の重合は一般に進行する。ここで手順は、最初に、モノマーを、場合により希釈剤中に充填し、反応温度にし、次いでルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体を添加するものであってよい。手順はまた、最初に、ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体を、場合により希釈剤中に充填し、次いでモノマーを添加するものであってよい。その場合に、重合の開始は、全ての反応物が反応容器に存在する時点であると考えられる。
【0145】
イソブテンコポリマーを調製するために、手順は、最初に、モノマーを、場合により希釈剤中に充填し、次いでルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体を添加するものであってよい。反応温度は、ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体の添加の前後に確立され得る。手順はまた、最初に、モノマーのうちの1種のみを、場合により希釈剤中に充填し、次いでルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体を添加し、ある特定の時間後にのみ、例えばモノマーの少なくとも60%、少なくとも80%又は少なくとも90%が転化された時点でのみ、更なるモノマー(複数可)を添加するものであってよい。或いは、ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体が最初に、場合により希釈剤中に充填され得、次いでモノマーが、同時又は連続的に添加され得、次いで所望の反応温度が確立され得る。その場合には、重合の開始は、ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体、及びモノマーの少なくとも1種が反応容器に存在する時点であると考えられる。
【0146】
ここに記載されたバッチ式手順に加えて、本発明による方法における重合はまた、連続式の方法として構成されてもよい。この場合には、供給原料、即ち重合されるモノマー(複数可)、場合により希釈剤及び場合によりルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体が、重合反応に連続的に供給され、反応生成物は、ほぼ定常状態の重合条件が反応器内で確立されるように、連続的に取り出される。重合されるモノマー(複数可)は、そのまま供給されてもよく、希釈剤若しくは溶媒により希釈されて供給されてもよく、又はモノマー含有炭化水素流として供給されてもよい。
【0147】
重合触媒として有効であるルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体は、一般に重合媒体において、溶解、分散又は懸濁された形態で存在する。ルイス酸-ドナー錯体、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体を慣例的な担体材料に担持させることも可能である。本発明の重合法に好適な反応器の種類は、典型的には撹拌槽型反応器、ループ式反応器及び管型反応器、更には流動層(流動床)型反応器、溶媒を含む又は含まない撹拌槽型反応器、流動層型反応器、連続式固定層(固定床)型反応器及びバッチ式固定層型反応器(バッチ式様式)である。
【0148】
本発明による方法において、重合触媒として有効である三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体又はハロゲン化アルキルアルミニウム錯体又は三ハロゲン化鉄-ドナー錯体又は三ハロゲン化ガリウム-ドナー錯体又は四ハロゲン化チタン-ドナー錯体又は二ハロゲン化亜鉛-ドナー錯体又は二ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は四ハロゲン化スズ-ドナー錯体又は三ハロゲン化ホウ素-ドナー錯体、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体又は塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体は、一般に、ルイス酸-ドナー錯体における金属、好ましくは三ハロゲン化アルミニウム-ドナー錯体若しくはハロゲン化アルキルアルミニウム錯体における、とりわけ二塩化アルキルアルミニウム-ドナー錯体若しくは塩化ジアルキルアルミニウム-ドナー錯体におけるアルミニウムと、イソブテンの単独重合の場合におけるイソブテンとの、又はイソブテンの共重合の場合に用いられる重合性モノマーの全量とのモル比が、1:5~1:5000、好ましくは1:10~1:5000、とりわけ1:15~1:1000、特に1:20~1:250の範囲にあるような量で用いられる。
【0149】
本発明の好ましい実施形態において、反応条件は、モノマーの転化率が少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%であるように選択される。
【0150】
本発明の利点は、本発明による錯体が、このように高い転化率でも、末端エチレン性二重結合(α-二重結合)及び他の反応性二重結合、例えばβ-二重結合、好ましくは末端エチレン性二重結合(α-二重結合)を有するポリマーに対して高い選択率を示すことである。とりわけα-二重結合に対する選択率は、モノマーの転化率が上述の値を超えると低下することがしばしば観察される。また、反応の過程で形成される反応性二重結合、とりわけα-二重結合の量が高い転化率で減少することが観察され得る。本発明による錯体の利点は、それぞれ、高い選択率が、高い転化率で維持されること、及び形成される反応性二重結合が、他の触媒の場合より劣化が少ないことである。
【0151】
反応を停止するために、反応混合物は、好ましくは、例えばプロトン性化合物を添加することにより、とりわけ水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール若しくはそれらの水との混合物を添加することにより、又は水性塩基、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム若しくは水酸化カルシウム、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム若しくは炭酸カルシウム、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム若しくは炭酸水素カルシウムの水溶液を添加することにより不活性化させる。
【0152】
本発明による方法は、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも75mol%の末端ビニリデン二重結合(α-二重結合)及び他の反応性二重結合、例えばβ-二重結合含有率を有する高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを調製するのに役立つ。より詳細には、イソブテン及び少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、とりわけスチレンから形成され、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%の末端ビニリデン二重結合(α-二重結合)及び他の反応性二重結合、例えばβ二重結合含有率を有する高反応性イソブテンコポリマーを調製するのに役立つ。イソブテン及び少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、とりわけスチレンのこのようなコポリマーを調製するために、イソブテン又はイソブテン系炭化水素留分は、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと、5:95~95:5、とりわけ30:70~70:30のイソブテンとビニル芳香族化合物との重量比で共重合される。
【0153】
本発明による方法により調製される高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマー、及び具体的にはイソブテンホモポリマーは、好ましくは1.05~3.5未満、好ましくは1.05~3.0未満、好ましくは1.05~2.5未満、好ましくは1.05~2.3、更に好ましくは1.05~2.0、とりわけ1.1~1.85の多分散度(PDI=Mw/Mn)を有する。最適なプロセス計画の場合、典型的なPDI値は、1.2~1.7である。
【0154】
本発明による方法により調製される高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーは、好ましくは500~100000、更により好ましくは500~25000、とりわけ500~5000の数平均分子量Mn(ゲル濾過クロマトグラフィーにより求められる)を有する。イソブテンホモポリマーは、更により好ましくは500~10000、とりわけ500~5000、例えば約1000又は約2300の数平均分子量Mnを有する。
【0155】
末端ビニリデン二重結合を有し、また組み込まれた開始剤分子を含み、本発明に従って調製されるイソブテンホモポリマーにおいて優勢な割合として生じるイソブテンポリマーの一部は、新規な化合物である。したがって、本発明はまた、一般式III
【0156】
【化6】
(式中、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素、C1~C20アルキル、C5~C8シクロアルキル、C6~C20アリール、C7~C20アルキルアリール又はフェニルであり、いずれの芳香環も、置換基として1つ以上のC1~C4アルキル-若しくはC1~C4アルコキシ基又は一般式IV
【0157】
【化7】
の部分を有していてもよく、そこで可変要素R17、R18又はR19のうちの1つ以下は、水素であり、可変要素R17、R18又はR19の少なくとも1つは、置換基として1つ以上のC1~C4アルキル-又はC1~C4アルコキシ基又は一般式IIの部分を有していてもよいフェニルであり、
nは、9~4500、好ましくは9~180、とりわけ9~100、特に12~50の数である)
のイソブテンポリマーも提供する。
【0158】
好ましい実施形態において、R17、R18又はR19は、それぞれ独立して、水素、C1~C4アルキル、とりわけメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルであるか、或いは置換基として1つ又は2つのC1~C4アルキル-若しくはC1~C4アルコキシ基又は一般式IIの部分を有していてもよいフェニルであり、ここで、可変要素R17、R18及びR19のうちの1つ以下は水素であり、可変要素R17、R18及びR19の少なくとも1つは置換基として1つ若しくは2つのC1~C4アルキル若しくはC1~C4アルコキシ基又は一般式IIの部分を有していてもよいフェニルであり、nは、9~4500、好ましくは9~180、とりわけ9~90、特に15~45の数である。
【0159】
本発明による方法は、イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物をカチオン条件下で満足の行く状態で、一般に20~100%、とりわけ35~90%の高転化率で、一般に5~120分間、とりわけ30~120分間の短い反応時間で成功裏に重合して、ポリイソブテン鎖末端あたり少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも75mol%のα-及びβ-二重結合含有率を有する高反応性イソブテンホモポリマー又はコポリマーを得る。
【0160】
本発明による方法の利点は、ドナーとしての、少なくとも1種の有機化合物(II)、好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有する少なくとも1種の有機化合物及び一般式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の少なくとも1種の化合物の混合物によって、同等の反応条件下でドナーとして単独での一般式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物の存在下で行った同じ反応と比較して、ポリイソブテン鎖末端あたり高いα-及びβ-二重結合含有率を有する生成物が得られることである。
【0161】
本発明の更なる利点は、ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物から形成される錯体が液体であり、したがって簡単に取り扱うことができることである。
【0162】
更に、イオン液体が化学的な反応及び精製を必要とする一方で、ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物は、所望される比で混合するだけでよいため、本発明による錯体は、先行技術に開示されたイオン液体より簡単に製造できる。ルイス酸及び式(I)又は(Ia)若しくは(Ib)の化合物及び少なくとも1種の有機化合物(II)から形成される錯体の反応性を、錯体におけるこれらのモル比を単に変更することにより調整することが更に可能である。
【実施例
【0163】
以下の例は本発明を詳細に例示することを意図しており、本発明はこれに限定されない。
【0164】
材料
イソブチレン(「IB」、Aldrich、99.99%)を、実験室用気体乾燥ユニットを通過させることにより、気体の状態で乾燥させた。n-ヘキサン(Sigma-Aldrich、>95%)及びCH2Cl2(Sigma-Aldrich、>99.5%)を硫酸で処理し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、CaCl2上で乾燥し、不活性雰囲気下でCaH2から2回蒸留した。BF3(BASF、>99%)を、更なる精製なしに気体の状態で使用した。ジイソプロピルエーテル(iPr2O、Fluka、≧98.5%)を、不活性雰囲気下でCaH2から蒸留した。2-クロロエチルエチルエーテル(CEE、Aldrich、99%)及びビス(2-クロロエチル)エーテル(CE、Alrdich、>99%)を、減圧下でCaH2から蒸留した。エチルアセテート(EtOAc、Aldrich、99.8%)を還流し、不活性雰囲気下でP2O5上で蒸留した。酸化トリ-n-オクチルホスフィン(P888O、Acros Organics、99%)、酸化トリフェニルホスフィン(PPh3O、Acros Organics、99%)を使用前に5時間真空乾燥した。AlCl3(Aldrich、99.999%)、FeCl3(Sigma-Aldrich、>97%)、CDCl3(Euriso-top(登録商標))、エタノール(Sigma-Aldrich、>96%)、テトラヒドロフラン(無水、Sigma-Aldrich、≧99.9%)を、受け取ったままの状態で使用した。TiCl4(Sigma-Aldrich、≧99.9%)を銅チップ上で51~52℃及び40mmHgで蒸留した。
【0165】
計測手段
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、30℃恒温としたAgilent PLgel 5μm MIXED-C(300×7.5mm)及び1つのプレカラム(PL Gel 5μm guard 50×7.5mm)を備えたUltimate 3000 Thermo Scientific装置で行った。検出を、示差屈折計(RI)及びダイオードアレイ検出器(UV)により達成した。テトラヒドロフラン(THF)を1.0ml/分の流速で溶出した。分子量及び多分散度Dの算出を、ポリスチレン標準(Polymer Labs、Germany)を用いて行った。1H NMR(500 MHz)スペクトルを、CDCl3において25℃でBruker AC-500分光計に記録し、内部の(residual)溶媒共鳴に対して補正した。UV-Vis吸収スペクトルを、SM2203(Solar)分光光度計を用いて記録した。
【0166】
触媒調製
液体配位錯体を、F. Coleman、G. Srinivasan及びM. Swadzba-Kwasny、Angew. Chem.、2013、52、12582に報告された手順に従って、アルゴン雰囲気下で、必要量の乾燥したリン含有電子ドナー及び対応する無水ルイス酸の単純な混合により合成した。次いで、混合物を、30℃~80℃の温度範囲で0.5~5時間撹拌した。
【0167】
P888O-AlCl3 LCC(χ(AlCl3)=0.6)の合成を、以下の通りに行った:0.52gのAlCl3を、アルゴン雰囲気下で1gのP888Oに添加した。次いで、反応混合物を、40℃で均質になるまで(1時間)撹拌した。
【0168】
P888O-FeCl3 LCC(χ(FeCl3)=0.6)の合成は、以下を含む:0.63gのFeCl3を、アルゴン雰囲気下で1gのP888Oに添加した。次いで、反応混合物を、50℃でホスフィンが完全に溶解するまで(0.5時間)撹拌した。
【0169】
P888O×0.67AlCl3ドナー-アクセプター錯体の合成を、以下の通りに行った:3mLの乾燥CH2Cl2を、アルゴン雰囲気下で0.52gのAlCl3及び1gのP888Oの混合物に添加した。次いで、反応混合物を、室温で均質になるまで(0.5時間)撹拌した。
【0170】
P888O×0.67FeCl3ドナー-アクセプター錯体の合成を、以下の通りに行った:3mLの乾燥CH2Cl2を、アルゴン雰囲気下で0.63gのFeCl3及び1gのP888Oの混合物に添加した。次いで、反応混合物を、室温でP888が完全に溶解するまで(0.5時間)撹拌した。
【0171】
P888O×0.58BF3ドナー-アクセプター錯体の合成を、以下の通りに行った:11.3mLの乾燥CH2Cl2を、アルゴン雰囲気下で4gのP888Oに添加した。反応混合物を、-20℃にて、不活性条件下で、気体状のBF3により、P888OとBF3との所望の比に達するまでパージした。
【0172】
重合手順
重合反応を、コールドフィンガー型冷却器を備えたガラス管内で、アルゴン雰囲気下で0℃~20℃の温度で行った。典型的な手順の一例として、重合を、0.11mLのn-ヘキサン中のジイソプロピルエーテルの溶液(1M)、0.11mLのP888O-FeCl3(χ(FeCl3)=0.6)及びn-ヘキサン(4.8mL)からなる合計体積5mLの混合物へのイソブチレン(2.86g、5.1×10-2mol)の添加により開始した。反応混合物をモノマーの添加前に3~5分間撹拌した。所定の時間後、約2mLのアンモニア水(25%)を、ガラス反応器に注入して、重合を停止した。クエンチした反応混合物を、n-ヘキサンで希釈し、遠心分離して、微量のLCCをポリマー溶液から分離し、最終的に冷エタノールに沈殿させた。溶媒は減圧下で蒸発させて、生成物ポリマーを得、次いでこれを真空乾燥した(≦60℃)。モノマーの転化率を重量測定で求めた。
【0173】
PIB末端基含有率を、1H NMR分光法(典型的な1H NMRスペクトルについて、図1を参照のこと)により求めた。エキソオレフィン末端基(b、b')のプロトンのシグナルが、4.64及び4.85ppmに出現し、一方でエンドオレフィン末端基(d)のものは5.15ppmに出現した。三置換(e)及び四置換(g)のオレフィン性末端基のプロトンのシグナルは5.15及び2.84ppmに出現したが、塩素を末端とする末端基に属するCH2(l)及びCH3(k)基のプロトンのシグナルは、それぞれ1.96及び1.68ppmに位置する。4.80ppmの小さいシグナルは、共役(coupled)PIB鎖(m)のプロトンに対応する。エキソオレフィン末端基含有率を、以下の方程式に従って算出した:
エキソ(%)=I[(b+b')/2]/I[k/6+(b+b'+n)/2+d+e+g](図1)。
【0174】
本発明の文脈において、用語「エキソ」は、1頁の式に示される末端エチレン性二重結合、ビニリデン基又はα-二重結合を指す。これらの用語は、本文書全体を通じて同義的に用いられる。
【0175】
用語「全ビニリデン」は、上でエキソと称された末端エチレン性二重結合、及び以下の式
【0176】
【化8】
で示されるポリマー骨格の内部に位置する更なる二重結合を意味する。
【0177】
用語「エンド」及び「三置換」は、図1の第2行に示すβ-二重結合を指す。これらの用語は、本文書全体を通じて同義的に用いられる。
【0178】
更に、図1の右上の式に示すように「四置換」構造要素が見出され得る。更に、塩素化ポリイソブテン(PIBCl)が見出された。
【0179】
[実施例]
[実施例1]
液体錯体の形成
式(II)によるリンを含有する電子ドナー及びルイス酸の以下の組合せを、LCCを調製する可能性について簡単に試験した。
【0180】
【表1】
【0181】
表1に列挙した液体錯体を、イソブテンの重合において更に調査した。
【0182】
[実施例2]
上に概説した一般的な手順に従って、イソブチレンを、n-ヘキサン中の触媒としてのPPh3O-AlCl3の存在下で重合した。更に、表2に言及される条件について、重合を以下の通りに行った:
モル分率χ(AlCl3)=0.6;[IB]=5.2M;T=0℃;反応時間=30分。
【0183】
【表2】
【0184】
[実施例3]
上に概説した一般的な手順に従って、イソブチレンを、n-ヘキサン中の触媒としてのP888O-AlCl3の存在下で重合した。更に、表3に言及される条件について、重合を以下の通りに行った:
モル分率χ(AlCl3)=0.6;[IB]=5.2M;[P888O-AlCl3]=44mM;[エーテル]=11mM;時間=30分。
【0185】
【表3】
【0186】
[実施例4]
上に概説した一般的な手順に従って、イソブチレンを、n-ヘキサン中の触媒としてのP888O-FeCl3の存在下で0℃で重合した。更に、表4に言及される条件について、重合を以下の通りに行った:
モル分率χ(FeCl3)=0.6;[P888O-FeCl3]=22mM;[IB]=5.2M。
【0187】
【表4】
【0188】
[実施例5]
重合機序について更に洞察を得るために、[iPr2O]/[P888O-FeCl3]=0.5でのP888O-FeCl3/iPr2O開始系によるイソブチレン重合の動態を簡単に調査した。
【0189】
結果を図3に示す。
【0190】
本発明による反応は、図2に示すPolymer、145(2018)382~390に従った[emim]Cl-FeCl3(2)による反応よりはるかに高い転化率を生じることが容易に分かる。
【0191】
P888O-FeCl3/iPr2O錯体は、[emim]Cl-FeCl3系より短い時間でイソブテンの高い転化率をもたらすだけではない。
【0192】
同時に、ある特定の転化率でのエキソ選択率は、図2による反応に使用したものより本発明による錯体の方が高い。
【0193】
[実施例6]
重合反応を、コールドフィンガー型冷却器を備えたスチール容器内で、不活性雰囲気下で-20℃で行った。重合を、0.02mLのMeOH、10.00mLのP888O-BF3(χ(BF3)=0.58)及びn-ヘキサン(140.00mL)からなる合計体積150.02mLの混合物へのイソブチレン(25.20g、45.0×10-2 mol)の添加により開始した。1時間後、5mLのMeOHを、スチール容器に注入して、重合を停止した。クエンチした反応混合物を、n-ヘキサンで希釈し、MeOHで3回洗浄した。溶媒を減圧下で190℃で蒸発させて、生成物ポリマーを得た。モノマーの転化率を重量測定で求めた。
【0194】
【表5】
図1
図2
図3
【国際調査報告】