(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】組成物、これを含む電子素子および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07C 15/20 20060101AFI20230824BHJP
C07B 59/00 20060101ALI20230824BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20230824BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230824BHJP
【FI】
C07C15/20 CSP
C07B59/00
H10K50/12
H10K85/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556236
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2021010152
(87)【国際公開番号】W WO2022030952
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098142
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェヒュク・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヨン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ウチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】キホ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ヒョン・キム
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF14
4H006AA01
4H006AB90
4H006AC84
(57)【要約】
本明細書は、化学式1で表され、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物であって、前記組成物中で、前記重水素置換数が異なる2以上の化合物の質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上である組成物、これを含む電子素子および有機発光素子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物であって、
前記組成物中で、前記重水素置換数が異なる2以上の化合物の質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上である組成物:
【化1】
前記化学式1中、
a~dは重水素数を意味し、a~dの合計は1以上26以下であり、
aおよびdはそれぞれ0~7の整数であり、
bは0~8の整数であり、cは0~4の整数である。
【請求項2】
前記質量数別の同位体含有率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムを分析して導出した値である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記質量数別の同位体含有率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムの面積に基づいて算出された値である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が50%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中で、前記質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数以上である化合物の重水素数別の置換率の和が50%以上80%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物を含む電子素子。
【請求項7】
第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた有機物層を含み、前記有機物層は請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物を含む、有機発光素子。
【請求項8】
前記有機物層は発光層を含み、前記発光層は前記組成物を含む、請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記発光層はホストおよびドーパントを含み、前記ホストは前記組成物を含む、請求項8に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月5日付けで韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0098142号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、重水素化化合物を含む組成物、これを含む電子素子および有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
重水素を含む化合物は、多様な目的のために用いられている。例えば、化学反応メカニズムの究明または物質代謝の究明などの標識化合物として用いられるだけでなく、薬、殺虫剤、有機EL材料およびその他の目的のためにも重水素を含む化合物が多く用いられている。
【0004】
有機発光素子(OLED)物質の寿命向上のために、芳香族化合物を重水素置換する方法が知られている。このような効果の原理は、重水素置換の際にC-H結合よりもC-D結合のLUMOエネルギーが低くなり、OLED物質の寿命特性が向上する。
【0005】
重水素化反応により製造された重水素化化合物は、置換された重水素の数に応じて分子量が異なる2以上の同位体を有する組成物から製造され、重水素置換率および重水素数に応じた分布に応じて、これにより製造された素子の性能に影響を及ぼすため、重水素置換率および重水素数に応じた分布に対する分析、および重水素数に応じた最適の分布を有する化合物に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、重水素化化合物を含む組成物、これを含む電子素子および有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、下記化学式1で表され、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物であって、前記組成物中で、前記重水素置換数が異なる2以上の化合物の質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上である組成物を提供する。
【0008】
【0009】
前記化学式1中、a~dは重水素数を意味し、a~dの合計は1以上26以下であり、aおよびdはそれぞれ0~7の整数であり、bは0~8の整数であり、cは0~4の整数である。
【0010】
また、本明細書は、上述した組成物を含む電子素子を提供する。
【0011】
なお、本明細書は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた有機物層を含み、前記有機物層は上述した組成物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書は、重水素置換化合物の重水素置換数別の置換率を導出して重水素数に応じた特徴と性能の関係を定立した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の質量数別の同位体含有率(Area%)を示す。
【
図2】実施例2の質量数別の同位体含有率(Area%)を示す。
【
図3】実施例3の質量数別の同位体含有率(Area%)を示す。
【
図4】実施例4の質量数別の同位体含有率(Area%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0015】
理論的に重水素化化合物の全ての水素が重水素で置換される場合、すなわち、重水素置換率が100%であれば、最も理想的に寿命特性が向上する。しかし、立体障害で極限条件が必要であったり、副反応により重水素化される前に化合物が分解されたりするなどの問題があり、現実的に化合物の全ての水素を100%の重水素化置換率で得ることは難しく、重水素化置換率が100%に近くなる場合にも、工程の時間、費用などを考慮すると、費用に対する効率性が良くない。
【0016】
また、重水素化置換率が一定以上になると、重水素化置換率が増加することに応じた寿命特性の向上する程度が減少するため、有効な効果を示す重水素化程度を究明することが重要である。
【0017】
本発明は、重水素化反応により製造された重水素化化合物は、置換された重水素の数に応じて分子量が異なる2以上の同位体を有する組成物から製造され、重水素置換率および重水素数に応じた分布に応じて、これにより製造された素子の性能に影響を及ぼすため、重水素置換率だけでなく、重水素数に応じた分布に対する分析を行い、有効な効果を示す重水素数に応じた置換率を究明した。
【0018】
本明細書は、下記化学式1で表され、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物であって、前記組成物中で、前記重水素置換数が異なる2以上の化合物の質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上である組成物を提供する。
【0019】
本明細書は、下記化学式1で表され、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物であって、前記組成物中で、前記重水素置換数が異なる2以上の化合物の重水素数別の置換率が最も高い同位体の重水素数が13以上である組成物を提供する。
【0020】
【0021】
前記化学式1中、a~dは重水素数を意味し、a~dの合計は1以上26以下であり、aおよびdはそれぞれ0~7の整数であり、bは0~8の整数であり、cは0~4の整数である。
【0022】
重水素置換された化合物を用いて素子を作製する場合、用いられる化合物の重水素置換率が増加するほど、これを用いた素子の性能がさらに良くなる。
【0023】
本明細書において、重水素置換率が100%に近く置換された化合物と比較して、重水素置換率が多少低くても、質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上である重水素化化合物により作製された素子は、重水素置換反応を行っていない化合物により作製された素子と比べて、素子性能が劣らず、同等以上の寿命上昇効果を示すことを確認した。
【0024】
本明細書において、質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上であることは、重水素置換された化合物を用いた素子が、重水素化反応を行っていない化合物を用いた素子と同等以上の寿命特性を発揮することを意味する。具体的に、本明細書において、質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数が13以上であることは、重水素置換反応による有意な結果を示すものである。
【0025】
本発明において、重水素数別の置換率が最も高い同位体の重水素数が13以上であることは、重水素置換された化合物を用いた素子が、重水素化反応を行っていない化合物を用いた素子と同等以上の寿命特性を発揮することを意味する。具体的には、本発明において、重水素数別の置換率が最も高い同位体の重水素数が13以上であることは、重水素置換反応による有意な結果を示すものである。
【0026】
本発明において、重水素数別の置換率が最も高い同位体の重水素数は、25以下、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、または14以下であってもよい。この場合は、過酷な重水素化反応を介して重水素置換率を高めなくても重水素置換反応による有意な結果を示しており、重水素化工程を最小化し、重水素化化合物の製造費用を下げることができる。
【0027】
重水素化反応により製造された重水素化化合物は、置換された重水素の数に応じて分子量が異なる2以上の同位体が混合されて製造されるため、重水素化反応により得られた化合物は、重水素置換数が異なる2以上の化合物を含む組成物といえる。
【0028】
本明細書において、前記質量数別の同位体含有率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムを分析して導出した値である。具体的に、前記質量数別の同位体含有率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムの面積に基づいて算出された値である。
【0029】
本明細書において、前記重水素数別の置換率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムを分析して導出した値である。具体的に、前記重水素数別の置換率は、クロマトグラフィーを用いて得られた前記組成物のマスクロマトグラムの面積に基づいて算出された前記組成物中の質量数別の同位体含有率を下記式1により重水素数別の置換率に変換した値である。
【0030】
【0031】
式1および式2中、前記重水素数は、同位体の質量数別それぞれの重水素の数を意味し、前記平均重水素置換数は、前記式2により計算された値である。
【0032】
本明細書において、前記重水素数別の置換率は、前記組成物をクロマトグラフィーにより分離した後、質量分析により得られた質量数が異なる同位体別のマスクロマトグラムの面積に基づいて前記組成物の質量数別の同位体含有率を算出し、算出された質量数別の同位体含有率を前記式1により重水素数別の置換率に変換して得ることができる。
【0033】
本発明の一実施態様において、前記クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィーであってもよく、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーであってもよい。具体的に、分析対象である重水素化された化学式1の化合物は、分子量が大きいため、液体クロマトグラフィーにより分離することが好ましい。
【0034】
本発明の一実施態様において、前記同位体別のマスクロマトグラムは、
前記組成物をクロマトグラフィーにより分離した後に質量分析し、
質量分析により得られたトータルイオンクロマトグラムから質量数が異なる同位体別にそれぞれの質量スペクトルを導出し、
得られた質量スペクトルから質量数が異なる同位体の個別マスクロマトグラムを導出してもよい。
【0035】
本発明の一実施態様において、前記組成物の質量数別の同位体含有率は、上述した過程により導出されたマスクロマトグラムの面積に基づいて算出してもよい。
【0036】
本発明の一実施態様において、質量数が異なる同位体別に抽出されたイオンクロマトグラムの面積を導出し、質量分析により得られたトータルイオンクロマトグラムの全体面積を基準として算出されたイオンクロマトグラムの面積の百分率が組成物の質量数別の同位体含有率である。このような方法により導出された質量数別の同位体含有率は、トータルイオンクロマトグラムの全体面積を基準として算出されているため、これらの和は100%である。
【0037】
前記組成物中で、分析対象である化学式1で表される重水素化化合物を基準として重水素が置換される個数に応じた同位体の分子量を確認し、確認された重水素数に応じた同位体の分子量を抽出されたイオンクロマトグラムの質量数(m/z)と対応させる。対応した質量数の抽出されたイオンクロマトグラムの情報を重水素が置換された個数に応じた情報にマッチングさせる。
【0038】
例えば、前記化学式1の化合物のうち重水素置換数が13個である化合物の分子量は約520g/molであり、トータルイオンクロマトグラムの全体面積を基準として、質量数520m/zとして抽出されたイオンクロマトグラムの面積の百分率は、重水素が13個である重水素化化合物の質量数別の同位体含有率である。
【0039】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が50%以上であってもよい。言い換えれば、前記組成物中で、前記重水素置換数が13個~26個である化合物それぞれの質量数別の同位体含有率の和が50%以上である。
【0040】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の重水素数別の置換率の和が50%以上であってもよい。言い換えれば、前記組成物中で、前記重水素置換数が13個~26個である化合物それぞれの重水素数別の置換率の和が50%以上である。
【0041】
水素よりも重い重水素で置換された化合物の場合、重水素置換反応を行っていない化合物よりもさらに低い零点エネルギー(zero-point energy)を有することになり、これにより振動エネルギーが減少するため、分子間相互作用による量子効率の減少が防止される。これにより、重水素置換された化合物を用いた素子の寿命が増加することになる。
【0042】
前記組成物中で、前記重水素置換数が13個~26個である化合物それぞれの質量数別の同位体含有率の和が52.6%以上から上述した量子効率の減少および寿命増加の傾向が始まることを確認した。
【0043】
前記組成物中で、前記重水素置換数が13個~26個である化合物それぞれの重水素数別の置換率の和が58.6%以上から上述した量子効率の減少および寿命増加の傾向が始まることを確認した。
【0044】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が50%以上、51%以上、52%以上、52.6%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0045】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0046】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の重水素数別の置換率の和が50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、58.6%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0047】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が13以上である化合物の重水素数別の置換率の和が53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、81%以下、82%以下、83%以下、84%以下、85%以下、86%以下、87%以下、88%以下、89%以下、90%以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0048】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が14以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、51%以上、52%以上、52.6%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0049】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が14以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、45%以下、50%以下、53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0050】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が14以上である化合物の重水素数別の置換率の和が20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、58.6%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が14以上である化合物の重水素数別の置換率の和が26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、45%以下、50%以下、53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、81%以下、82%以下、83%以下、84%以下、85%以下、86%以下、87%以下、88%以下、89%以下、90以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0052】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が15以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、13%以上、15%以上、17%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、51%以上、52%以上、52.6%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0053】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が15以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が12%以下、13%以下、15%以下、17%以下、19%以下、20%以下、22%以下、23%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、45%以下、50%以下、53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、85%以下、90%以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0054】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が15以上である化合物の重水素数別の置換率の和が5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、13%以上、15%以上、17%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、58.6%以上、59%以上、60%以上、70%以上、75%以上、77.5%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%であってもよい。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素置換数が15以上である化合物の重水素数別の置換率の和が12%以下、13%以下、15%以下、17%以下、19%以下、20%以下、22%以下、23%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、45%以下、50%以下、53%以下、54%以下、55%以下、56%以下、57%以下、58%以下、59%以下、60%以下、70%以下、75%以下、76%以下、77%以下、77.5%以下、78%以下、79%以下、80%以下、81%以下、82%以下、83%以下、84%以下、85%以下、86%以下、87%以下、88%以下、89%以下、90%以下、95%以下、または100%以下であってもよい。
【0056】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記質量数別の同位体含有率が最も高い同位体の重水素数以上である化合物の質量数別の同位体含有率の和が50%以上80%以下である。
【0057】
本発明の一実施態様において、前記組成物中で、前記重水素数別の置換率が最も高い同位体の重水素数以上である化合物の重水素数別の置換率の和が50%以上90%以下である。
【0058】
本明細書は、上述した組成物を含む電子素子を提供する。
【0059】
本明細書は、上述した組成物を用いて電子素子を製造するステップを含む、電子素子の製造方法を提供する。
【0060】
前記電子素子および電子素子の製造方法は前記組成物の説明を引用することができ、重複した説明は省略する。
【0061】
前記電子素子は、重水素化化合物を使用可能な素子であれば特に限定されず、例えば、有機発光素子、有機燐光素子、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどであってもよい。
【0062】
前記電子素子は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含み、前記有機物層のうち1層以上は、上述した組成物を含んでもよい。
【0063】
前記電子素子が有機発光素子である場合、前記有機物層は発光層を含み、前記発光層は上述した組成物を含んでもよい。さらに、前記発光層は、上述した組成物をホストとして含んでもよい。
【0064】
前記電子素子が有機発光素子である場合、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などから選択された層をさらに含む構造を有してもよい。
【0065】
本明細書において、上述した組成物は、有機燐光素子、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどをはじめとする電子素子においても、有機発光素子に適用されるものと類似した原理で用いられてもよい。例えば、前記有機太陽電池は、陰極、陽極、および前記陰極と陽極との間に備えられた光活性層を含む構造であってもよく、前記光活性層は、上述した組成物を含んでもよい。
【0066】
本明細書は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた有機物層を含み、前記有機物層は上述した組成物を含む、有機発光素子を提供する。
【0067】
本明細書は、上述した組成物を用いて有機発光素子を製造するステップを含む、有機発光素子の製造方法を提供する。
【0068】
本明細書は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた有機物層を含み、前記有機物層は上述した組成物を含む有機発光素子を製造するステップを含む、有機発光素子の製造方法を提供する。
【0069】
前記有機発光素子および有機発光素子の製造方法は前記組成物の説明を引用することができ、重複した説明は省略する。
【0070】
本明細書において、前記有機物層は発光層を含み、前記発光層は上述した組成物を含んでもよい。
【0071】
本明細書において、前記有機物層はホストおよびドーパントを含む発光層を含み、前記ホストは上述した組成物を含んでもよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するためのものではない。
【0073】
[実験例1]
下記化学式2の化合物の重水素化反応を互いに異なる方法で行ってそれぞれ得た実施例1~3の組成物0.2mg/mLをそれぞれテトラヒドロフラン(THF)に溶解した後、下記表1のような条件に設定された高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(HPLC/MS)で分析した。
【0074】
【0075】
【0076】
トータルイオンクロマトグラムの全体面積を基準として、抽出されたイオンクロマトグラムの質量数別面積の百分率である質量数別の同位体含有率(%)、これを式1により変換した重水素数別の置換率(%)、および重水素平均置換率(%)を重水素数と対応づけて下記表2~表5に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
前記表2の情報から計算された平均重水素置換数は12.4個であり、これは、式2により{(9×8.2)+(10×8.7)+(11×13.3)+(12×17.2)+(13×21.9)+(14×19.7)+(15×11.0)}/100で計算された値である。前記表2の情報から計算された重水素数別の置換率は、式1により計算された値である。質量数520m/zである場合を例に挙げると、21.9%×13個/12.4個の結果として23.0%が算出される。下記表3および
図2は、実施例2の実験結果である。
【0080】
【0081】
前記表3の情報から計算された平均重水素置換数は13.2個であり、これは、式2により{(10×6.3)+(11×5.9)+(12×10.4)+(13×45.4)+(14×10.1)+(15×15.8)+(16×6.2)}/100で計算された値である。前記表3の情報から計算された重水素数別の置換率は、式1により計算された値である。質量数520m/zである場合を例に挙げると、45.4%×13個/13.2個の結果として44.7%が算出される。下記表4および
図3は、実施例3の実験結果である。
【0082】
【0083】
前記表4の情報から計算された平均重水素置換数は24.57個であり、これは、式2により{(20×0.2)+(21×0.2)+(22×2.4)+(23×10.4)+(24×31.1)+(25×38.2)+(26×17.5)}/100で計算された値である。前記表4の情報から計算された重水素数別の置換率は、式1により計算された値である。質量数532m/zである場合を例に挙げると、38.2%×25個/24.57個の結果として38.9%が算出される。下記表5および
図4は、実施例4の実験結果である。
【0084】
【0085】
前記表5の情報から計算された平均重水素置換数は23.66個であり、これは、式2により{(20×1.6)+(21×5.3)+(22×13.2)+(23×23.5)+(24×27.1)+(25×20.6)+(26×8.7)}/100で計算された値である。前記表5の情報から計算された重水素数別の置換率は、式1により計算された値である。質量数532m/zである場合を例に挙げると、20.6%×25個/23.66個の結果として21.8%が算出される。
【0086】
[実験例2]
実施例1~4の組成物に対して、前記表2~表5の情報のうちHPLC Area%と、これと関連した特性情報を整理して下記表6に示す。
【0087】
この際、素子評価用の寿命テストのための素子は下記の順に製造し、重水素置換前/後の化合物を発光層のホストとして用いた。
1)真空チャンバの残存有機物を除去する。
2)真空チャンバ内のルツボに蒸着させようとする有機材料を1g程度ずつ真空チャンバに入れ、真空チャンバを1日間10-6~10-5Torrの真空にする。
3)真空チャンバ内にITO(Indium Tin Oxide)基板を投入して移動しつつ、各層に合う有機物を蒸着して有機物層を作る。この際、素子効率が出やすい厚さになるように各層を蒸着する。
4)前記有機物層上にAl(cathode)を蒸着し、有機発光素子を作製した。
5)真空チャンバ内で、エポキシを用いてencapsulationを行った後、真空チャンバから取り出した。
【0088】
基準素子と比べて製造された素子を時間に応じて発光輝度(Luminance)が減少する速度を介して寿命を測定して
図5~
図7に示し、ここで、y軸において、Lはリアルタイム輝度であり、L0は初期輝度である。
【0089】
寿命の測定時に用いられた基準素子は、下記化学式2で表される化合物を用いて作製された素子である。具体的には、重水素化反応を行っていない下記化学式2で表される化合物を用いて作製された素子を意味する。
【0090】
【0091】
【0092】
実施例1~4の重水素置換された化合物をそれぞれ用いた素子は、重水素化反応を行っていない前記化学式2で表される化合物を用いた素子よりも同等以上の寿命性能を示した。表6から、最大比率を有する最小限の重水素置換数(Most Abundance)は13であることを確認することができ、重水素置換率が多少低くても、前記化学式2の化合物により作製された素子よりは素子性能が劣っていないことが分かる。ここで、同一の化合物の重水素化反応を行うとしても、重水素源の種類、重水素源の含量、有機溶媒の種類、有機溶媒の量、反応時間、反応温度、触媒の種類などの因子を変更することにより、重水素平均置換率および/または重水素数別の置換率が異なり得る。本明細書において、重水素置換率の差を分析するために変更した因子は、ベンゼン-d6の含量、反応に参加する有機溶媒の含量、ベンゼン-d6の再使用回数、および/または重水素化反応時の再使用前/後のベンゼン-d6量の比率である。
【0093】
【0094】
化学式2(9-(ナフタレン-1-イル)-10-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アントラセン)(20g)、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)をベンゼン-d6(C6D6)(500ml、285eq)に入れ、70℃で2時間撹拌した。反応終了後、D2O(60ml)を入れて30分間撹拌した後、トリメチルアミン(trimethylamine)(30ml)を滴加した。反応液を分液漏斗に移し、水とトルエンで抽出した。抽出液をMgSO4で乾燥した後、エチルアセテートで再結晶し、重水素化された化学式2の化合物を51%の収率で得た[cal.m/s:532.87、exp.m/s(M+)528~532]。
【0095】
下記表7のように、ベンゼン-d6の種類を変えて、化学式2の重水素化反応をそれぞれ行い、ベンゼン-d6の重水素置換率が低いNo.4ベンゼン-d6を用いた合成例4は、低い重水素置換率を補完するためにTfOHの量を増加させた。この際、ベンゼン-d6の「重水素置換率」は、全体でのベンゼン-d6の重水素置換率であり、「D6の比率」は、ベンゼン-d6中の重水素数に応じた分布において、ベンゼン-D6の比率である。
【0096】
ここで、ベンゼン-d6は、ベンゼンの6個の水素が全て重水素で置換されたベンゼン-D6を含むが、その他にベンゼンの6個の水素のうち重水素で置換されていない水素を含むベンゼンも含む。言い換えれば、ベンゼン-d6は、ベンゼンの6個の水素のうち重水素で置換された個数に応じて、ベンゼン-D0、ベンゼン-D1、ベンゼン-D2、ベンゼン-D3、ベンゼン-D4、ベンゼン-D5およびベンゼン-D6に区分可能なそれぞれの化合物を含んでいる組成物である。
【0097】
下記化学式2の全体重水素置換率は、高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(HPLC/MS)により測定し、ベンゼン-d6の重水素置換率およびD6の比率は、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により測定した。寿命は、実験例2の素子評価方法と同様の方法で測定した。
【0098】
【0099】
表7から、ベンゼンの重水素置換率およびD6の比率が異なるベンゼン-d6を変更することにより、化学式2の重水素置換率が影響を受けることができ、さらには、これを用いた素子の性能(寿命)にも影響を及ぼすことを確認することができる。
【国際調査報告】